(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114431
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】座位補助クッション材、座位補助クッション、三次元造形用データ、座位補助クッションの製造方法、型紙設計装置、型紙設計方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A47C 27/00 20060101AFI20240816BHJP
A61G 5/12 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
A47C27/00 K
A61G5/12 707
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020201
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】523050863
【氏名又は名称】株式会社InterGate
(74)【代理人】
【識別番号】100137394
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】織田 岳郎
(72)【発明者】
【氏名】菅原 義雅
【テーマコード(参考)】
3B096
【Fターム(参考)】
3B096AA01
3B096AB05
(57)【要約】
【課題】 効率的に製造することができる座位補助クッション材、及び、使用者への負担がより少ないクッション材のカバーの型紙を設計する型紙設計装置を提供する。
【解決手段】 本実施形態における座位補助クッション材10は、線条の熱可塑性樹脂を規則的に複数積層して立体的に形成したクッション本体100と、クッション本体100に設けられ、当該クッション本体100に座位する使用者の下半身の一部の後面を支持する支持面120と、クッション本体100複数の部材に分割する分割位置150とを有する。クッション本体100、及び、支持面120は、当該支持面120により使用者を支持した状態において、分割位置150により使用者の前後方向、及び、左右方向の少なくとも一方の方向に分割される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線条の熱可塑性樹脂を規則的に複数積層して立体的に形成したクッション本体と、
前記クッション本体に設けられ、当該クッション本体に座位する使用者の下半身の一部の後面を支持する支持面と、
前記クッション本体を複数の部材に分割する分割位置と
を有し、
前記クッション本体は、前記分割位置により分割された複数の部材を組み合わせてなる
座位補助クッション材。
【請求項2】
前記クッション本体は、前記分割位置により、前記支持面と、当該支持面と隣接する当該支持面以外の部分とに分割される
請求項1に記載の座位補助クッション材。
【請求項3】
前記クッション本体、及び、前記支持面は、当該支持面により使用者を支持した状態において、前記分割位置により使用者の前後方向、及び、左右方向の少なくとも一方の方向に分割される
請求項1に記載の座位補助クッション材。
【請求項4】
前記支持面は、臀部及び大腿部の後面を支持し、前記クッション本体を組み合わせた状態において、座位する状態の使用者の臀部及び大腿部の少なくとも一方の後面における外形形状に対応した凹曲面状であり、
隣り合う2つの前記支持面は、前記分割位置において段差のない状態となっている
請求項3に記載の座位補助クッション材。
【請求項5】
前記分割位置は、
使用者が前記支持面に座位する状態において、使用者の臀部と大腿部との境目に位置し、使用者の前後方向に前記クッション本体を分割する第1の分割位置と、
使用者が前記支持面に座位する状態において、使用者の一対の坐骨の間に位置し、使用者の左右方向に前記クッション本体を分割する第2の分割位置とを含む
請求項4に記載の座位補助クッション材。
【請求項6】
前記分割位置により分割された隣り合う2つの前記クッション本体は、互いに弾性が異なる
請求項5に記載の座位補助クッション材。
【請求項7】
前記クッション本体は、線条の太さ、線条の間隔、線条の線密度、線条の素材、又は、これらの組み合せにより、弾性を調整されてなる
請求項6に記載の座位補助クッション材。
【請求項8】
前記クッション本体は、線条の熱可塑性エラストマーにより、網目状であり、かつ、ジャイロイド構造を形成してなる
請求項7に記載の座位補助クッション材。
【請求項9】
座位補助クッション材と、前記座位補助クッション材を覆うカバーとを含む座位補助クッションであって、
前記座位補助クッション材は、
線条の熱可塑性樹脂を規則的に複数積層して立体的に形成したクッション本体と、
前記クッション本体に設けられ、当該クッション本体に座位する使用者の下半身の一部の後面を支持する支持面と、
前記クッション本体を複数の部材に分割する分割位置と
を有し、
前記クッション本体は、前記分割位置により分割された複数の部材を組み合わせてなる
座位補助クッション。
【請求項10】
線条の熱可塑性樹脂を規則的に複数積層して立体的に形成したクッション本体と、
前記クッション本体に設けられ、当該クッション本体に座位する使用者の下半身の一部の後面を支持する支持面と、
前記クッション本体を複数の部材に分割する分割位置と
を有し、
前記クッション本体は、前記分割位置により分割された複数の部材を組み合わせてなる
三次元造形用データ。
【請求項11】
線条の熱可塑性樹脂を規則的に複数積層して立体的に造形し、使用者の下半身の一部の後面を支持するクッション本体を部材毎に出力する工程と、
出力した前記クッション本体の各部材を組み合わせる工程と、
各部材を組み合わせてなる前記クッション本体にカバーをかける工程と
を有する座位補助クッションの製造方法。
【請求項12】
座位する使用者の下半身の一部の後面を支持するクッション材の3次元形状データに基づいて、当該クッション材の3次元骨格を特定する骨格特定部と、
前記骨格特定部により特定された3次元骨格に基づいて、使用者と接触する接触面を含んだ前記クッション材の平面形状を特定する平面形状特定部と、
前記クッション材を覆うカバーの生地の特性に応じて、前記平面形状特定部により特定された平面形状を補正する形状補正部と
を有する型紙設計装置。
【請求項13】
前記骨格特定部は、前記クッション材に座位する使用者の前後方向又は左右方向に設けた基準線と、当該基準線と直交する方向に設けた複数の補助線とを含む3次元骨格を特定し、
前記平面形状特定部は、3次元骨格から、3次元形状データのクッション材における接触面のうち最も凹んだ位置に少なくとも1つの前記補助線が位置する、2次元骨格を特定し、
前記平面形状特定部は、3次元骨格における隣り合う2つの前記補助線の間に位置する3次元形状データのクッション材の稜線の長さと、2次元骨格における隣り合う2つの前記補助線の先端間の距離とが等しくなるように、2次元骨格における前記補助線の傾きを調整する
請求項12に記載の型紙設計装置。
【請求項14】
前記平面形状特定部により特定された平面形状を立体化した場合に生じる歪量を算出する歪量算出部
をさらに有し、
前記形状補正部は、前記歪量算出部において算出された歪量と、前記生地の伸長率とに基づいて、前記平面形状特定部により特定された平面形状の外形を補正する
請求項12に記載の型紙設計装置。
【請求項15】
前記歪量算出部は、歪量を算出する対象となる所定の前記補助線において、前記3次元形状データにおける補助線の両端間距離と、2次元骨格での長さとの差に基づいて歪量を算出する
請求項14に記載の型紙設計装置。
【請求項16】
前記生地は、経糸方向及び緯糸方向の少なくとも一方に伸縮する伸縮性を有し、
前記生地の各伸縮方向における伸長限界に基づいて、当該生地の伸長率を算出する伸長率算出部
をさらに有し、
前記形状補正部は、前記伸長率算出部により算出された伸長率に応じて、2次元骨格に含まれる前記基準線および前記補助線の長さを補正し、
前記平面形状特定部は、前記形状補正部により長さを補正した当該基準線および当該補助線を含む2次元骨格から前記平面形状の外形を特定する
請求項14に記載の型紙設計装置。
【請求項17】
前記クッション材の3次元形状データにおいて、所定の基準面から前記接触面までの離間距離を、所定の間隔毎に特定する離間距離特定部と、
前記離間距離特定部により特定された隣り合う2つの地点において、2つの地点の離間距離と、各地点における所定の基準面から前記接触面までの離間距離とに基づいて、2つの地点間における前記補助線の形状を特定する補助線形状特定部と
をさらに有し、
前記骨格特定部は、前記補助線形状特定部により特定された前記補助線の形状に基づいて、3次元骨格を特定し、
前記平面形状特定部は、前記骨格特定部により特定された前記補助線の形状に基づいて、前記平面形状の外形を特定する
請求項13に記載の型紙設計装置。
【請求項18】
前記クッション材の3次元形状データにおける前記接触面のうち、使用者の臀部と接触する凹曲面を含む第1の領域と、使用者の大腿部の後面と接触する凹曲面を含む第2の領域との接合部分に位置する前記補助線が前記基準線となす境界角度に基づいて、所定の位置で前記平面形状を分割する分割部と、
前記第1の領域と、前記第2の領域との前記境界角度に応じて、前記分割部により分割された各領域同士の接合位置を調節する領域調節部と、
前記領域調節部により調節された調節量に基づいて、前記平面形状のうち、使用者に接触しない位置に前記生地の余りを補正するダーツを設けるダーツ設定部と
をさらに有する
請求項12に記載の型紙設計装置。
【請求項19】
前記領域調節部は、前記境界角度に基づいて、互いに接合する前記第1の領域、及び、前記第2の領域を相対的に回転して接合位置を調節し、
前記分割部は、前記領域調節部により回転させる領域が複数ある場合に、使用者と接しない位置で前記平面形状を分割する
請求項18に記載の型紙設計装置。
【請求項20】
前記平面形状は、前記接触面と、当該接触面の周縁に位置し、使用者の下半身の一部の後面と接触しない周縁部とを含み、
前記平面形状特定部は、前記接触面の外形形状のうち、前記第1の領域における凸曲線状に形成した凸曲部と、この凸曲部と接合する前記周縁部における凹曲線状に形成した凹曲部とが同じ長さであり、かつ、凹曲部の曲率より凸曲部の曲率が大きくなるよう、外形形状を特定する
請求項12に記載の型紙設計装置。
【請求項21】
前記平面形状特定部により特定された平面形状における前記補助線の先端と前記基準線の先端とを結ぶ直線を形成する直線形成部と、
前記直線の中点と直交し、且つ、前記補助線の先端と前記基準線の先端とを結ぶ曲線に相当する3次元形状データ上の円弧と交わる垂線を形成する垂線形成部と、
前記直線形成部により形成された直線と前記基準線と前記補助線とにより三角形を形成する三角形形成部と、
前記垂線形成部により形成された垂線が円弧と交わる交点と、前記基準線の先端、及び当該交点と前記補助線の先端とを曲線で結ぶ曲線形成部と
をさらに有し、
前記平面形状特定部は、前記曲線形成部により形成された曲線に基づいて、平面形状の外形を特定する
請求項12に記載の型紙設計装置。
【請求項22】
座位する使用者の下半身の一部の後面を支持するクッション材の3次元形状データに基づいて、当該クッション材の3次元骨格を特定する骨格特定ステップと、
前記骨格特定ステップにより特定された3次元骨格に基づいて、使用者と接触する接触面を含んだ前記クッション材の平面形状を特定する平面形状特定ステップと、
前記クッション材を覆うカバーの生地の特性に応じて、前記平面形状特定ステップにより特定された平面形状を補正する形状補正ステップと
を有する型紙設計方法。
【請求項23】
座位する使用者の下半身の一部の後面を支持するクッション材の3次元形状データに基づいて、当該クッション材の3次元骨格を特定する骨格特定ステップと、
前記骨格特定ステップにより特定された3次元骨格に基づいて、使用者と接触する接触面を含んだ前記クッション材の平面形状を特定する平面形状特定ステップと、
前記クッション材を覆うカバーの生地の特性に応じて、前記平面形状特定ステップにより特定された平面形状を補正する形状補正ステップと
をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座位補助クッション材、座位補助クッション、三次元造形用データ、座位補助クッションの製造方法、型紙設計装置、型紙設計方法、及び、プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、シート本体と、前記シート本体に形成された穴部に装填されており、少なくとも一部が前記シート本体と接着されている装填体と、を備える、座席シート用のクッション材における、前記装填体であって、前記装填体は、可撓性のある樹脂又はゴムから構成された、多孔質構造体であり、前記装填体は、3Dプリンタを用いて造形されたものである、装填体が開示されている。
また、特許文献2には、支柱によって互いに接合された節点の三次元ネットワークと、前記支柱の間に存在する空隙体積とを含む多孔質体であって、前記支柱が、200μm以上50mm以下の平均長さを有し、前記支柱が、100μm以上5mm以下の平均厚さを有し、前記多孔質体が、少なくとも1つの空間方向において、10kPa以上100kPa以下の圧縮硬度(40%圧縮、DIN EN ISO 3386-1:2010-09)を有することを特徴とする、多孔質体が開示されている。
【0003】
例えば、特許文献3には、手作業もしくは機械を使ってモデルを制作し、次いでモデルの形状データを3次元形状デジタイジング装置により測定し、測定されたモデルの形状データをCADへ取り込むか、或いはCAD上で直接モデル形状データを作成したあと、3次元CAD上で製品デザイン設計を行い、次いでその3次元デザインから2次元パターンへパターンメーキングを行なう事を特徴とするボディファッション並びに人体の形状情報を盛り込んだ医療・介護用衣服の設計と型紙の作成手法が開示されている。
【0004】
また、文献2には、軟質ウレタンフォームからなる芯材の周囲のうち、少なくとも人体に接触する面を覆うように構成されるカバー部材であって、前記カバー部材は、伸縮性のある繊維布の表面にウレタン層を積層することで構成され、前記繊維布のJIS K 6772による破断時の伸び率は、タテ方向80~150%、ヨコ方向150~250%であり、前記ウレタン層表面のJIS K 7125による静摩擦係数は0.6~0.8、動摩擦係数は0.5~0.7であることを特徴とするマットレス等のカバー部材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】再表2020/116326号公報
【特許文献2】特表2019-534064号公報
【特許文献3】特開2005-036371号公報
【特許文献4】特開2005-046405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、効率的に製造することができる座位補助クッション材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る座位補助クッション材は、線条の熱可塑性樹脂を規則的に複数積層して立体的に形成したクッション本体と、前記クッション本体に設けられ、当該クッション本体に座位する使用者の下半身の一部の後面を支持する支持面と、前記クッション本体を複数の部材に分割する分割位置とを有し、前記クッション本体は、前記分割位置により分割された複数の部材を組み合わせてなる。
【0008】
好適には、前記クッション本体は、前記分割位置により、前記支持面と、当該支持面と隣接する当該支持面以外の部分とに分割される。
【0009】
好適には、前記クッション本体、及び、前記支持面は、当該支持面により使用者を支持した状態において、前記分割位置により使用者の前後方向、及び、左右方向の少なくとも一方の方向に分割される。
【0010】
好適には、前記支持面は、臀部及び大腿部の後面を支持し、前記クッション本体を組み合わせた状態において、座位する状態の使用者の臀部及び大腿部の少なくとも一方の後面における外形形状に対応した凹曲面状であり、隣り合う2つの前記支持面は、前記分割位置において段差のない状態となっている。
【0011】
好適には、前記分割位置は、使用者が前記支持面に座位する状態において、使用者の臀部と大腿部との境目に位置し、使用者の前後方向に前記クッション本体を分割する第1の分割位置と、使用者が前記支持面に座位する状態において、使用者の一対の坐骨の間に位置し、使用者の左右方向に前記クッション本体を分割する第2の分割位置とを含む。
【0012】
好適には、前記分割位置により分割された隣り合う2つの前記クッション本体は、互いに弾性が異なる。
【0013】
好適には、前記クッション本体は、線条の太さ、線条の間隔、線条の線密度、線条の素材、又は、これらの組み合せにより、弾性を調整されてなる。
【0014】
好適には、前記クッション本体は、線条の熱可塑性エラストマーにより、網目状であり、かつ、ジャイロイド構造を形成してなる。
【0015】
また、本発明に係る座位補助クッションは、座位補助クッション材と、前記座位補助クッション材を覆うカバーとを含む座位補助クッションであって、前記座位補助クッション材は、線条の熱可塑性樹脂を規則的に複数積層して立体的に形成したクッション本体と、前記クッション本体に設けられ、当該クッション本体に座位する使用者の下半身の一部の後面を支持する支持面と、前記クッション本体を複数の部材に分割する分割位置とを有し、前記クッション本体は、前記分割位置により分割された複数の部材を組み合わせてなる。
【0016】
また、本発明に係る三次元造形用データは、線条の熱可塑性樹脂を規則的に複数積層して立体的に形成したクッション本体と、前記クッション本体に設けられ、当該クッション本体に座位する使用者の下半身の一部の後面を支持する支持面と、前記クッション本体を複数の部材に分割する分割位置とを有し、前記クッション本体は、前記分割位置により分割された複数の部材を組み合わせてなる。
【0017】
また、本発明に係る座位補助クッションの製造方法は、線条の熱可塑性樹脂を規則的に複数積層して立体的に造形し、使用者の下半身の一部の後面を支持するクッション本体を部材毎に出力する工程と、出力した前記クッション本体の各部材を組み合わせる工程と、
各部材を組み合わせてなる前記クッション本体にカバーをかける工程とを有する。
【0018】
また、本発明に係る型紙設計装置は、座位する使用者の下半身の一部の後面を支持するクッション材の3次元形状データに基づいて、当該クッション材の3次元骨格を特定する骨格特定部と、前記骨格特定部により特定された3次元骨格に基づいて、使用者と接触する接触面を含んだ前記クッション材の平面形状を特定する平面形状特定部と、前記クッション材を覆うカバーの生地の特性に応じて、前記平面形状特定部により特定された平面形状を補正する形状補正部とを有する。
【0019】
好適には、前記骨格特定部は、前記クッション材に座位する使用者の前後方向又は左右方向に設けた基準線と、当該基準線と直交する方向に設けた複数の補助線とを含む3次元骨格を特定し、前記平面形状特定部は、3次元骨格から、3次元形状データのクッション材における接触面のうち最も凹んだ位置に少なくとも1つの前記補助線が位置する、2次元骨格を特定し、前記平面形状特定部は、3次元骨格における隣り合う2つの前記補助線の間に位置する3次元形状データのクッション材の稜線の長さと、2次元骨格における隣り合う2つの前記補助線の先端間の距離とが等しくなるように、2次元骨格における前記補助線の傾きを調整する。
【0020】
好適には、前記平面形状特定部により特定された平面形状を立体化した場合に生じる歪量を算出する歪量算出部をさらに有し、前記形状補正部は、前記歪量算出部において算出された歪量と、前記生地の伸長率とに基づいて、前記平面形状特定部により特定された平面形状の外形を補正する。
【0021】
好適には、前記歪量算出部は、歪量を算出する対象となる所定の前記補助線において、前記3次元形状データにおける補助線の両端間距離と、2次元骨格での長さとの差に基づいて歪量を算出する。
【0022】
好適には、前記生地は、経糸方向及び緯糸方向の少なくとも一方に伸縮する伸縮性を有し、前記生地の各伸縮方向における伸長限界に基づいて、当該生地の伸長率を算出する伸長率算出部をさらに有し、前記形状補正部は、前記伸長率算出部により算出された伸長率に応じて、2次元骨格に含まれる前記基準線および前記補助線の長さを補正し、前記平面形状特定部は、前記形状補正部により長さを補正した当該基準線および当該補助線を含む2次元骨格から前記平面形状の外形を特定する。
【0023】
好適には、前記クッション材の3次元形状データにおいて、所定の基準面から前記接触面までの離間距離を、所定の間隔毎に特定する離間距離特定部と、前記離間距離特定部により特定された隣り合う2つの地点において、2つの地点の離間距離と、各地点における所定の基準面から前記接触面までの離間距離とに基づいて、2つの地点間における前記補助線の形状を特定する補助線形状特定部とをさらに有し、前記骨格特定部は、前記補助線形状特定部により特定された前記補助線の形状に基づいて、3次元骨格を特定し、前記平面形状特定部は、前記骨格特定部により特定された前記補助線の形状に基づいて、前記平面形状の外形を特定する。
【0024】
好適には、前記クッション材の3次元形状データにおける前記接触面のうち、使用者の臀部と接触する凹曲面を含む第1の領域と、使用者の大腿部の後面と接触する凹曲面を含む第2の領域との接合部分に位置する前記補助線が前記基準線となす境界角度に基づいて、所定の位置で前記平面形状を分割する分割部と、前記第1の領域と、前記第2の領域との前記境界角度に応じて、前記分割部により分割された各領域同士の接合位置を調節する領域調節部と、前記領域調節部により調節された調節量に基づいて、前記平面形状のうち、使用者に接触しない位置に前記生地の余りを補正するダーツを設けるダーツ設定部とをさらに有する。
【0025】
好適には、前記領域調節部は、前記境界角度に基づいて、互いに接合する前記第1の領域、及び、前記第2の領域を相対的に回転して接合位置を調節し、前記分割部は、前記領域調節部により回転させる領域が複数ある場合に、使用者と接しない位置で前記平面形状を分割する。
【0026】
好適には、前記平面形状は、前記接触面と、当該接触面の周縁に位置し、使用者の下半身の一部の後面と接触しない周縁部とを含み、前記平面形状特定部は、前記接触面の外形形状のうち、前記第1の領域における凸曲線状に形成した凸曲部と、この凸曲部と接合する前記周縁部における凹曲線状に形成した凹曲部とが同じ長さであり、かつ、凹曲部の曲率より凸曲部の曲率が大きくなるよう、外形形状を特定する。
【0027】
好適には、前記平面形状特定部により特定された平面形状における前記補助線の先端と前記基準線の先端とを結ぶ直線を形成する直線形成部と、前記直線の中点と直交し、且つ、前記補助線の先端と前記基準線の先端とを結ぶ曲線に相当する3次元形状データ上の円弧と交わる垂線を形成する垂線形成部と、前記直線形成部により形成された直線と前記基準線と前記補助線とにより三角形を形成する三角形形成部と、前記垂線形成部により形成された垂線が円弧と交わる交点と、前記基準線の先端、及び当該交点と前記補助線の先端とを曲線で結ぶ曲線形成部とをさらに有し、前記平面形状特定部は、前記曲線形成部により形成された曲線に基づいて、平面形状の外形を特定する。
【0028】
また、本発明に係る型紙設計方法は、座位する使用者の下半身の一部の後面を支持するクッション材の3次元形状データに基づいて、当該クッション材の3次元骨格を特定する骨格特定ステップと、前記骨格特定ステップにより特定された3次元骨格に基づいて、使用者と接触する接触面を含んだ前記クッション材の平面形状を特定する平面形状特定ステップと、前記クッション材を覆うカバーの生地の特性に応じて、前記平面形状特定ステップにより特定された平面形状を補正する形状補正ステップとを有する。
【0029】
また、本発明に係るプログラムは、座位する使用者の下半身の一部の後面を支持するクッション材の3次元形状データに基づいて、当該クッション材の3次元骨格を特定する骨格特定ステップと、前記骨格特定ステップにより特定された3次元骨格に基づいて、使用者と接触する接触面を含んだ前記クッション材の平面形状を特定する平面形状特定ステップと、前記クッション材を覆うカバーの生地の特性に応じて、前記平面形状特定ステップにより特定された平面形状を補正する形状補正ステップとをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、効率的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本実施形態における座位補助クッション1を例示する斜視図である。
【
図2】組合せ後のクッション本体100を例示する図である。
【
図3】組合せ前のクッション本体100を例示する図である。
【
図5】本実施形態における座位補助クッション1の製造方法(S10)を説明するフローチャートである。
【
図6】本実施形態の座位補助クッション1における変形例1を例示する図である。
【
図7】本実施形態の座位補助クッション1における変形例2を例示する図である。
【
図8】型紙設計装置1のハードウェア構成を例示する図である。
【
図9】型紙設計装置1の機能構成を例示する図である。
【
図11】(a)は、3次元骨格と2次元骨格とを例示する図であり、(b)は、2次元骨格における補助線7の傾きの調整を例示する図である。
【
図12】(a)基準線5に対する補助線7bのなす角度の決定方法を例示する図であり、(b)は、平面形状9の外形形状Oの特定方法を例示する図である。
【
図13】(a)臀部領域に生じる歪みによるシワを説明する図であり、(b)は、3次元骨格と2次元骨格との補助線7bを例示する図であり、(c)は、歪量の算出方法を説明する図である。
【
図14】(a)は、生地の伸長限界を説明する図であり、(b)は、生地の伸長率に基づいた2次元骨格の短縮を例示する図である。
【
図15】(a)は、分割部112による形状毎の平面形状の領域分割を例示する図であり、(b)は、領域の回転を例示する図であり、(c)は、補助線7と基準線52とのなす角度が90°を超える場合と回転角度について説明する図である。
【
図16】(a)は、3次元形状データ上の基準面mと所定間隔で形成された垂線Dを例示する図であり、(b)は、直線の補助線7dの求め方を説明する図であり、(c)は、曲線の補助線7dの求め方を説明する図である。
【
図17】型紙設計装置1による型紙設計処理(S10)を説明するフローチャートである。
【
図18】(a)は、変形例における分割された平面形状9を例示する図であり、(b)は、凸曲部150と凹曲部170との差異を例示する図である。
【
図19】変形例における、型紙設計装置1の機能構成を例示する図である。
【
図20】(a)は、凸曲部150の形状の求め方を説明する図であり、(b)は、凸曲部170を楕円とした場合の各部位を説明する図であり、(c)は、短径C/長径Pと弦g1/弓Gの相関関係を表すグラフであり、(d)は、短径C/長径Pと垂線g2/弦g1の相関関係を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
まず、本発明がなされた背景を説明する。
例えば、車椅子を使用する使用者には、身体障害又は知的障害により姿勢保持が困難な使用者が含まれる。姿勢保持が困難な使用者は、車椅子に着座するにあたり、座クッションを使用する。座クッションには、基本的仕様で製作された規格品と、座位時における臀部から大腿後面の身体表面形状(接触面)に合わせたオーダーメイド品とがあり、座り心地の観点からオーダーメイド品の需要が高まっている。
オーダーメイドの座クッションの製造は、例えば、大きなウレタンの塊からの削り出しであり、座面においては使用者の接触面の形状に合わせて、手作業で削り出している。そのため、実際に使用者が試座及び調整を行う必要があるため、製作期間全体として数カ月単位でかかってしまうことがある。その理由として、使用者によっては、時間経過と共に座位姿勢が刻々と変化するため、座クッションの試座及び調整の繰り返しとなり、一向に座クッションが完成せずなかなか入手できない状態となってしまう現状がある。
そこで、上記事情を一着眼点にして本発明の実施形態を創作するに至った。本発明の実施形態によれば、使用者の下半身後面の外形形状や座位姿勢の三次元データに基づいた座クッションの三次元造形用データを生成し、生成した座クッションの三次元造形用データを読み込ませた立体造形装置(いわゆる3Dプリンター)で座クッションを造形することにより、使用者の下半身後面の外形形状に対応した座クッションを効率的に製作することができる。以下、このような本発明の実施形態による座位補助クッション1を、図面を参照して説明する。
【0033】
次に、
図1~
図4を参照し、本実施形態における座位補助クッション1の構成を説明する。
図1は、本実施形態における座位補助クッション1を例示する斜視図である。
図1に例示するように、使用者は、車椅子WCの座面Sの上に座位補助クッション1を配置して着座する。この座位補助クッション1は、座位補助クッション材10と、カバー30とを有する。座位補助クッション材10は、着脱自在にカバー30を掛けた状態となっている。
座位補助クッション材10は、クッション本体100と基礎プレート200とを含む。クッション本体100及び基礎プレート200は、接着して一体となっている。
【0034】
図2は、組合せ後のクッション本体100を例示する図であり、
図2(A)は、クッション本体100を例示する斜視図であり、
図2(B)は、クッション本体100を例示する平面図である。
図3は、組合せ前のクッション本体100を例示する図であり、
図3(A)は、クッション本体100を例示する斜視図であり、
図3(B)は、クッション本体100を例示する平面図である。
図2及び
図3に例示するように、クッション本体100は、線条の熱可塑性樹脂を規則的に複数積層して立体的に形成した、座位補助クッション1の中材である。具体的には、クッション本体100は、3Dプリンターにより、線条の熱可塑性エラストマーであるフィラメント材料(エラストマーフィラメント)を規則的に複数積層して立体的に形成される。ここで、エラストマーフィラメントとは、例えばTPU(ポリウレタン系)フィラメント、TPS(スチレン系)フィラメント、又は、TPO(オレフィン系)フィラメントであり、本例のエラストマーフィラメントは、TPUフィラメントである。
また、クッション本体100は、エラストマーフィラメントを規則的に複数積層して網目状をしたジャイロイド構造を形成してなる。
【0035】
クッション本体100は、大腿部支持部105と、臀部支持部110と、支持面120と、分割位置150とを含む。クッション本体100は、大腿部支持部105、及び、臀部支持部110を組み合わせて構成される。
大腿部支持部105は、着座する使用者の大腿部の後面(以下、裏面ともいうこともある)を支持する。大腿部支持部105は、右大腿部支持部105A、及び、左大腿部支持部105を含む。
右大腿部支持部105Aは、クッション本体100を構成する一部品であり、座位する使用者の右大腿部の後面を支持する。右大腿部支持部105Aは、後述する支持面120の一部を構成する右大腿部支持面120Aを含む。また、右大腿部支持部105Aは、クッション本体100を組み合わせた状態において、左大腿部支持部105Bと、後述す右臀部支持部120Aと隣接して設置される。
左大腿部支持部105Bは、クッション本体100を構成する一部品であり、座位する使用者の左大腿部の後面を支持する。左大腿部支持部105Bは、後述する支持面120の一部を構成する左大腿部支持面120Bを含む。また、左大腿部支持部105Bは、クッション本体100を組み合わせた状態において、右大腿部支持部105Aと、後述す左臀部支持部110Bと隣接して設置される。
【0036】
臀部支持部110は、着座する使用者の臀部を支持する。臀部支持部110は、右臀部支持部110A、及び、左臀部支持部110Bを含む。
右臀部支持部110Aは、クッション本体100を構成する一部品であり、座位する使用者の右臀部を支持する。右臀部支持部110Aは、後述する支持面120の一部を構成する右臀部支持面120Cを含む。また、右臀部支持部110Aは、クッション本体100を組み合わせた状態において、右大腿部支持部105Aと、左臀部支持部110Dと隣接して設置される。
左臀部支持部110Bは、クッション本体100を構成する一部品であり、座位する使用者の左臀部を支持する。左臀部支持部110Bは、後述する支持面120の一部を構成する左臀部支持面120Dを含む。また、左臀部支持部110Bは、クッション本体100を組み合わせた状態において、右臀部支持部110Aと、左大腿部支持部105Bと隣接して設置される。
【0037】
支持面120は、クッション本体100に設けられ、クッション本体100に座位する使用者の下半身の一部の後面を支持する支持する面である。支持面120は、座位する使用者の臀部及び大腿部の後面を支持し、クッション本体100を組み合わせた状態において、座位する状態の使用者の臀部及び大腿部の少なくとも一方の後面における外形形状に対応した凹曲面状となっている。支持面120は、右大腿部支持面120A、左大腿部支持面120B、右臀部支持面120C、及び、左大腿部支持面120Dを含む。右大腿部支持面120A、左大腿部支持面120B、右臀部支持面120C、及び、左大腿部支持面120Dは、組み合わせた状態において、滑らかに連続した1つの支持面となる。
【0038】
右大腿部支持面120Aは、支持面120を構成する面であり、座位する使用者の右大腿部の後面を支持する支持面である。右大腿部支持面120Aは、使用者の右大腿部の後面の外形形状に合わせた凹曲面状に形成される。右大腿部支持面120Aは、クッション本体100を組み合わせた状態において、左大腿部支持面120Bと、後述する右臀部支持面120Cと隣接し、後述する分割位置150のある位置において段差のない状態となっている。すなわち、隣り合う2つの支持面は、分割位置150において段差のない状態となっている。つまり、右大腿部支持面120A、左大腿部支持面120B及び右臀部支持面120Cは、滑らかに連続した支持面となっている
【0039】
左大腿部支持面120Bは、支持面120を構成する面であり、座位する使用者の左大腿部の後面を支持する支持面である。左大腿部支持面120Bは、使用者の左大腿部の後面の外形形状に合わせた凹曲面状に形成される。左大腿部支持面120Bは、クッション本体100を組み合わせた状態において、右大腿部支持部120Aと、後述する左臀部支持面120Dと隣接し、後述する分割位置150のある位置において段差のない状態となっている。すなわち、隣り合う2つの支持面は、分割位置150において段差のない状態となっている。つまり、左大腿部支持面120B、右大腿部支持面120A、及び左臀部支持面120Dは、滑らかに連続した支持面となっている
【0040】
右臀部支持面120Cは、支持面120を構成する面であり、座位する使用者の右臀部を支持する支持面である。右臀部支持面120Cは、使用者の右臀部の外形形状に合わせた凹曲面状に形成される。右臀部支持面120Cは、クッション本体100を組み合わせた状態において、右大腿部支持面120Aと、後述する左臀部支持面120Dと隣接し、後述する分割位置150のある位置において段差のない状態となっている。すなわち、隣り合う2つの支持面は、分割位置150において段差のない状態となっている。つまり、右臀部支持面120C、右大腿部支持面120A、及び左臀部支持面120Dは、滑らかに連続した支持面となっている。
【0041】
左大腿部支持面120Dは、支持面120を構成する面であり、座位する使用者の右臀部を支持する支持面である。左臀部支持面120Dは、使用者の左臀部の外形形状に合わせた凹曲面状に形成される。右臀部支持面120Dは、クッション本体100を組み合わせた状態において、左大腿部支持面120Bと、右臀部支持面120Cと隣接し、後述する分割位置150のある位置において段差のない状態となっている。すなわち、隣り合う2つの支持面は、分割位置150において段差のない状態となっている。つまり、臀部支持面120D、右臀部支持面120C、及び、左大腿部支持面120Bは、滑らかに連続した支持面となっている。
【0042】
また、クッション本体100は、弾性(硬度)を調整することができる。具体的には、クッション本体100は、線条の太さ、線条の間隔、線条の線密度、線条の素材、製造時のエラストマーフィラメントの溶融温度、又は、これらの組み合せにより、弾性を調整することができる。これにより、使用者に合わせて部材毎に弾性を適宜変更することができる。例えば、クッション本体100は、複数に分割された部位が全て同じ弾性であってもよいし、複数に分割された部位毎に弾性を変更してもよい。詳細には、隣り合う位置にある大腿部支持部105、及び、臀部支持部110は、互いに同じ弾性であってもよし、互いに異なる弾性であってもよい。また同様に、隣り合う位置にある右大腿部支持部105A、及び、左大腿部支持部105Bは、互いに同じ弾性であってもよし、互いに異なる弾性であってもよい。また同様に、隣り合う位置にある右臀部支持部110A、及び、左臀部支持部110Bは、互いに同じ弾性であってもよし、互いに異なる弾性であってもよい。
【0043】
分割位置150は、クッション本体100を複数の部材に分割する。分割位置150は、分割位置150Aと分割位置150Bとを含む。
分割位置150Aは、クッション本体100の幅方向において、クッション本体100を複数の部材に分割する。換言すると、分割位置150Aは、使用者が支持面120に座位する状態において、使用者の左右方向にクッション本体100を複数の部材に分割する。本例の分割位置150Aは、クッション本体100の幅方向(使用者の左右方向)に、大腿部支持部105を右大腿部支持部105Aと左大腿部支持部105Bとに分割する。また同様に、分割位置150Aは、臀部支持部110を右臀部支持部110Aと左臀部支持部110Bとに分割する。分割位置150Aは、使用者が支持面120に座位する状態において、使用者の一対の坐骨の間に位置にてクッション本体100を分割する。なお、分割位置150Aは、本発明に係る第1の分割位置の一例である。
分割位置150Bは、クッション本体100の奥行方向において、クッション本体100を複数の部材に分割する。換言すると、分割位置150B、使用者が支持面120に座位する状態において、使用者の前後方向にクッション本体100を複数の部材に分割する。本例の分割位置150Bは、クッション本体100の奥行方向(使用者の前後方向)に、大腿部支持部105と臀部支持部110とに分割する。分割位置150Bは、使用者が支持面120に座位する状態において、使用者の臀部と大腿部との境目にてクッション本体100を分割する。なお、分割位置150Bは、本発明に係る第2の分割位置の一例である。
分割位置150は、床ずれ等を防止する観点から、使用者が支持面120に座位する状態において、体重が掛かり身体表面の所定の場所に一点に集中して負荷がかからないように、圧力を分散させる必要があるため、身体表面に負荷がかからない位置に設けることが好ましい。よって、分割位置150Aは、使用者の一対の坐骨の間に位置し、分割位置150Bは、使用者の臀部と大腿部との境目に位置することが好ましい。
なお、分割位置150は、クッション本体100の幅方向及び奥行方向に分割する場合に限定するものではなく、例えば、クッション本体100の厚み方向に第1の部材と、第2の部材とに分割してもよい。また、分割位置150は、支持面120と、支持面120と隣接する支持面120以外の部分とに分割してもよいし、クッション本体100の稜線に沿って第1の部材と、第2の部材とに分割してもよい。また、分割位置150は、これら上記の分割位置を複数組み合わせてもよい。
【0044】
図4は、カバー30を例示する図であり、
図4(A)は、カバー30を例示する斜視図であり、
図4(B)は、カバー30を例示する平面図である。
図4に例示するように、カバー30は、座位補助クッション材10を覆うカバーである。カバー30は、伸縮性のある生地の生地で形成され、本例のカバー30は、ダブルラッセル生地で形成される。また、カバー30は、線ファスナー備え、線ファスナーを開閉して、その内部に座位補助クッション材10を配置することができる。
また、カバー30の座面は、使用者を支持するカバー支持面300と、カバー支持面300に隣接する、支持面300以外の部分であるカバー周縁部310とを含む。
カバー支持面300は、座位補助クッション1に座位する使用者を支持する面であり、座位補助クッション材10に被せた状態において、クッション本体100における支持面120に位置する。またカバー支持面300は、座位補助クッション材10に被せた状態において、縫い目、シワ、又はダーツがないよう形成される。カバー支持面300は、床ずれ等を防止する観点から、使用者がカバー支持面300に座位する状態において、体重が掛かり身体表面の所定の場所に、一点に集中して負荷がかからないように、圧力を分散させる必要があるため、縫い目、シワ、又はダーツがないよう形成することが好ましい。なお、カバー30の座面は、支持面300以外の位置であれば、縫い目又はダーツを設けてもよい。
このように、座位補助クッション1は、複数の部位を組み合わせた座位補助クッション材10にカバー30を着脱自在に掛けた構成となっている。
【0045】
次に、
図5を参照し、本実施形態における座位補助クッション1の製造方法を説明する。
図5は、本実施形態における座位補助クッション1の製造方法(S10)を説明するフローチャートである。
以下、
図5に例示するステップS100~S106における工程を説明する。なお、本例の製造方法のうち、ステップS102において、立体造形装置(以下、3Dプリンター)によりクッション本体100を出力する場合を具体例とする。ここで、クッション本体100を形成する3Dプリンターとは、例えば、熱溶解積層(FDM)方式、光造形方式、インクジェット方式、粉末燃結方式、又は、粉末固着(接着)方式の3Dプリンターであり、本例ではFDM方式の3Dプリンターである。
また、クッション本体100を形成するフィラメント材料は、例えば、例ABS[Acrylonitrile Butadiene Styrene(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)]フィラメント、PLA(Poly Lactic Acid)フィラメント、PC(ポリカーボネート)フィラメント、PET[Poly Ethylene Terephthalate(ポリエチレンテレフタレート)]/PETG[Poly Ethylene Terephthalate Glycol modified(グリコール変性ポリエチレンテレフタレート)]フィラメント、エラストマーフィラメント、ナイロンフィラメント、又は、ABS又はPLAに異素材を含む合成フィラメントのフィラメント材料である。なお、本例のフィラメント材料は、クッションとして弾性が必要である観点から熱可塑性エラストマーであるエラストマーフィラメントであり、具体的にはTPUフィラメントである。
【0046】
図5に例示するように、ステップ100(S100)において、座位補助クッション1を製造する製造者(以下、製造者)は、例えば、立体形状毛測定装置(3Dスキャナ)を用いて、座位姿勢時における使用者の下半身後面の外形形状を三次元的に測定し、三次元形状データ(CADデータ等)を生成する。
【0047】
ステップ101(S101)において、製造者は、コンピュータを用いて、生成した三次元形状データに基づいてクッション本体100の三次元造形用データを生成する。そして、製造者は、クッション本体100の三次元造形用データを3Dプリンターに読み込ませる。
【0048】
ステップ102(S102)において、製造者は、三次元造形用データを読み込ませた3Dプリンターを用いて、線条のTPU樹脂を規則的に複数積層して立体的に造形させる。製造者は、3Dプリンターを用いて、クッション本体100を部位毎に出力する。具体的には、製造者は、第1の3Dプリンターにより、クッション本体100の三次元造形用データのうち、使用者の右大腿部を支持する右大腿部支持部105Aの三次元造形用データから右大腿部支持部105Aを出力する。また並行して、製造者は、第2の3Dプリンターにより、クッション本体100の三次元造形用データのうち、使用者の左大腿部を支持する左大腿部支持部105Bの三次元造形用データから左大腿部支持部105Bを出力する。また並行して、製造者は、第3の3Dプリンターにより、クッション本体100の三次元造形用データのうち、使用者の右臀部を支持する右臀部支持部110Aの三次元造形用データから右臀部支持部110Aを出力する。また並行して、製造者は、第4の3Dプリンターにより、クッション本体100の三次元造形用データのうち、使用者の左臀部を支持する左臀部支持部110Bの三次元造形用データから左臀部支持部110Bを出力する。すなわち、製造者は、複数の3Dプリンターで、クッション本体100の各部材を同じタイミングで別々に出力する。
出力した大腿部支持部105(右大腿部支持部105A、左大腿部支持部105B)及び臀部支持部110(右臀部支持部110A、左臀部支持部110B)は、網目状をしたジャイロイド構造となっている。
3Dプリンターによる1つの部材を出力する出力時間は、約15~16時間かかるため、クッション本体100を一体物として出力するとその4倍の時間を要するが、各部材を複数台の3Dプリンターで並行作業させることで全体として15~16時間で出力できる。これにより、クッション本体100の製造時間を短縮することができる。
【0049】
ステップ104(S104)において、製造者は、出力したクッション本体の各部材を組み合わせる。具体的には、製造者は、接着剤により、出力した大腿部支持部105、及び、臀部支持部110を互いに組み合わせ接着する共に、基礎プレート200に接着する。これにより、製造者は、座位補助クッション材10を得る。なお、製造者は、右大腿部支持部105A、左大腿部支持部105B、右臀部支持部110A、及び、左臀部支持部110Bを互いに接着する作業は省略することもできる。
【0050】
ステップ106(S106)において、製造者は、座位補助クッション材10に対して、ダブルラッセル生地で形成されたカバー30を掛ける。これにより、製造者は、座位補助クッション1を得る。
このように、製造者は、クッション本体100の部材毎に同じタイミングで別々に形成し、形成した部材を組み合わせることで、効率的に座位補助クッション1を製造することができる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態における座位補助クッション1によれば、複数の座位を組み合わせて座位補助クッション材10を構成することにより、短時間で製造することができる。
また、従来では、ウレタンの塊からの削り出しのため部分的に硬さを変える考えはなかったが、本例の座位補助クッション1によれば、クッション性と通気性とを兼備しながら硬さを変更できる。硬さが異なる部材を適宜組み合わせることができるため、使用者のニーズに合わせた独自の座クッションを提供することができる。
【0052】
また、座位補助クッション材10のうち構成するクッション本体100を網目状のジャイロイド構造とすることにより、全方向に対応したクッション性を備えることができると共に、通気性がよいため、洗浄することができる。
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、これらに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、追加等が可能である。
【0053】
次に、上記実施例における変形例を説明する。
なお、変形例では、上記実施例と実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
[変形例1]
図6は、本実施形態の座位補助クッション1における変形例1を例示する図である。
図6(A)は、組合せ後のクッション本体100を例示する斜視図であり、
図2(B)は、組合せ前のクッション本体100を例示する斜視図である。
上記実施形態では、クッション本体100を幅方向及び奥行方向に計4分割した場合を説明したが、これに限定するものではなく、クッション本体100をさらに厚み方向に分割してもよい。
図6に例示するように、クッション本体100は、支持面120を含む大腿部支持部105及び臀部支持部110に加えて、基底部112をさらに有する。
クッション本体100は、分割位置150Cにより、クッション本体100の厚み方向に分割される。厚み方向の分割とは、使用者が支持面120に座位する状態において、使用者の上下方向に分割する意味である。これにより、クッション本体100は、幅方向、奥行方向及び厚み方向に8分割される。
基底部112は、基底部112A~112Dを含む。基底部112Aは、右大腿部支持部105Aの下方に位置し、右大腿部支持部105Aを支持する。また、基底部112Bは、左臀部支持部110Bの下方に位置し、左臀部支持部110Bを支持する。また、基底部112Cは、右臀部支持部110Aの下方に位置するし、右臀部支持部110Aを支持する。基底部112Dは、左臀部支持部110Bの下方に位置するし、左臀部支持部110Bを支持する。
このように、本変形例1におけるクッション本体100によれば、基底部112をさらに備えることにより、詳細に組み合わせを選択することができるため、より独自の座クッションを製造することができる。
【0054】
[変形例2]
図7は、本実施形態の座位補助クッション1における変形例2を例示する図である。
上記実施形態では、クッション本体100を幅方向及び奥行方向に分割した場合を説明したが、これに限定するものではなく、クッション本体100のうち、支持面120と、支持面120と隣接する支持面120以外の部分とで分割してもよい。
図6に例示するように、クッション本体100は、分割位置150A及び分割位置150Bに加えて、分割位置150Dで分割される。クッション本体100は、分割位置150Dにより、支持面120と、支持面120以外の部分である周縁部160とを分割される。支持面120は、身体表面に体重が掛かる部分であり、臀部及び大腿部に係る体重を分散させる。また、周縁部160は、身体表面に体重が掛からない部分であり、クッション本体100の形状や強度を維持する。
このように、本変形例1におけるクッション本体100によれば、支持面120と周縁部160とを組み合わせた構成とすることができる。
【0055】
次に、カバー30を形成するための型紙の設計を説明する。
本発明に係る実施形態の型紙設計装置は、使用者への負担がより少ないクッション材のカバーの型紙を設計する型紙設計装置を提供することを目的とし、使用者への負担がより少ないクッション材のカバーの型紙を効率的に設計することができる。
【0056】
体位を変えることのできない使用者による車椅子の利用は、長時間同じ姿勢で使用者が座るため、車椅子のクッションカバーに生じるシワやクッションカバーの生地の縫い目により、使用者に褥瘡ができてしまうという課題があった。
【0057】
そこで、本発明における型紙設計装置1は、上記課題を解決するため、使用者が座った状態おいて、使用者と接する位置に、シワが寄ることなく、且つ、縫い目のない、クッション材にフィットする車椅子用クッションカバーの型紙を設計するものである。
【0058】
型紙形状装置1は、コンピュータ端末であり、クッション材3を覆うカバーの型紙を設計する。クッション材3は、座位する使用者の下半身の一部の後面を支持するクッションである。
図8は、型紙設計装置1のハードウェア構成を例示する図である。
図8に例示するように、型紙設計装置1は、CPU200、メモリ202、HDD204、ネットワークインタフェース206(ネットワークIF206)、表示装置208、及び入力装置210を有し、これらの構成はバス212を介して互いに接続している。
CPU200は、例えば、中央演算装置である。
メモリ202は、例えば、揮発性メモリであり、主記憶装置として機能する。
HDD204は、例えば、ハードディスクドライブ装置であり、不揮発性の記録装置としてコンピュータプログラムやその他のデータファイルを格納する。
ネットワークIF206は、有線又は無線で通信するためのインタフェースであり、固定装置5との通信を実現する。
表示装置208は、例えば、液晶ディスプレイである。
入力装置210は、例えば、キーボード及びマウスである。
【0059】
図9は、型紙設計装置1の機能構成を例示する図である。
図9に例示するように、本例の型紙設計装置1には、型紙設計プログラム10がインストールされる。
型紙設計プログラム10は、取得部100、骨格特定部102、平面形状特定部104、及び形状補正部106を有する。平面形状特定部104は、さらに、離間距離特定部118、及び補助線形状特定部120を有し、形状補正部106は、さらに、歪量算出部108、伸長率算出部110、分割部112、領域調節部114、及びダーツ設定部116を有する。
取得部100は、スキャンされたクッション材3の3次元形状データを取得する。3次元形状データの表現方法として、ワイヤフレーム、サーフェス、ソリッド等があるが、本実施例における3次元形状データは、ワイヤフレームを使用する。
骨格特定部102は、クッション材3の3次元形状データに基づいて、クッション材3の3次元骨格を特定する。具体的には、骨格特定部102は、
図10に例示するように、クッション材3に座位する使用者の前後方向又は左右方向に設けた基準線5と、基準線5と直交する方向に設けた複数の補助線7とを含む3次元骨格を特定する。骨格特定部102は、基準線5と補助線7とを、クッション材3における使用者との接触面の3次元データ上に配置し、さらに、補助線7を、所定の間隔で複数設ける。骨格特定部102は、補助線7の一つを、3次元形状データのクッション材3における接触面のうち、最も凹んだ位置である最低部を通るように配置する。
【0060】
平面形状特定部104は、骨格特定部102により特定された3次元骨格に基づいて、使用者と接触する接触面を含んだクッション材3の平面形状9を特定する。ここで、平面形状9とは、クッション材3の座面のカバーの型紙の形状をいう。
具体的には、平面形状特定部104は、
図11(a)に例示するように、3次元骨格から2次元骨格を特定する。2次元骨格とは、骨格特定部102により特定された3次元骨格を平面化した基準線5と補助線7とからなる骨格である。
さらに、平面形状特定部104は、基準線5に対する、特定した2次元骨格の補助線7の傾きを調整する。具体的には、平面形状特定部104は、
図11(b)に例示する、3次元骨格における隣り合う2つの補助線7aと補助線7bとの間に位置する3次元形状データのクッション材3の稜線の長さBと、2次元骨格における隣り合う2つの補助線7aと補助線7bとの先端間の距離B´とが等しくなるように、2次元骨格における補助線7の傾きを調整する。
より具体的には、
図12(a)に例示するように、平面形状特定部104は、基準線5に対する補助線7のなす角度を、
図11(b)の長さBと長さB´とが等しくなるまで、0度から増加させていき、基準線5に対する補助線7のなす角度を決定する。
平面形状特定部104は、骨格特定部102により特定された補助線7の形状に基づいて、平面形状9の外形形状Oを特定する。具体的には、
図12(b)に例示するように、平面形状特定部104は、基準線5と補助線7との隣り合う先端同士を繋げて平面形状9の外形形状Oを特定する。
【0061】
ここで、平面形状特定部104により特定された平面形状9を立体化すると、
図13(a)に例示するように、臀部領域に歪みによるシワが生じる。本来であれば、シワが生じる領域にダーツを形成し、シワを取り除くが、ダーツの形成位置に縫い目ができてしまう。そこで、形状補正部106は、クッション材3を覆うカバーの生地の特性に応じて、平面形状特定部104により特定された平面形状9を補正する。具体的には、形状補正部106は、歪量算出部108において算出された歪量Dと、伸長率算出部110により算出された生地の伸長率Eとに基づいて、平面形状特定部104により特定された平面形状9の外形形状Oを補正する。より具体的には、形状補正部106は、伸長率算出部110により算出された伸長率Eに応じて、2次元骨格に含まれる基準線5及び補助線7の長さを補正する。
基準線5及び補助線7の長さを補正することにより、シワが生じる部分にダーツを形成することなく、生地の伸びによりシワを取り除くことができ、さらに生地の伸長率に応じた適切な伸びを考慮することで、生地の伸長によりクッション材3にかかる負荷を広範囲に分散することができる。
【0062】
歪量算出部108は、平面形状特定部104により特定された平面形状9を立体化した場合に生じる歪量Dを算出する。歪量Dとは、
図13(a)に例示するように、平面形状特定部104により特定された平面形状9を立体化した場合に、臀部領域にシワを発生させる歪みの歪量をいう。
歪量算出部108は、
図13(b)に例示するように、歪量Dを算出する対象となる所定の補助線7において、クッション材3の3次元形状データにおける補助線7の両端間距離と、2次元骨格における補助線7の長さとの差に基づいて、歪量Dを算出する。
さらに、
図13(c)に例示するように、歪量算出部108は、クッション材3の座面に接する使用者の臀部が球体形状であるとし、球体形状の半径rと、球体形状の最深部Hを頂点とした円錐を3次元形状データ上に仮定する。歪量算出部108は、円錐の母線R=Sqr(r^2+H^2)の式を用いて、歪量D=2πR-2πrの式から、歪量Dを算出する。
【0063】
伸長率算出部110は、生地の各伸縮方向における伸長限界に基づいて、生地の伸長率Eを算出する。ここで、クッション材3のカバーに用いる生地は、経糸方向及び緯糸方向の少なくとも一方に伸縮する伸縮性を有するものであり、例えば、ダブルラッセル生地である。具体的には、伸長率算出部110は、歪量算出部108により算出された歪量Dと、平面形状9の外形Oの長さL1とを用いて、伸長率E(%)=D/L1により伸長率Eを算出する。
より具体的には、伸長率算出部110は、生地のX軸方向(緯糸方向)の伸長限界とY軸方向(経糸方向)の伸長限界に応じて、平面形状特定部104により特定された2次元骨格をX軸方向及びY軸方向に短縮する。
図14(a)に例示するように、緯糸方向の伸長限界をTX、経糸方向の伸長限界をTYとした場合、緯糸方向の伸長率EX=(E×2)×TX/(TX+TY)により、緯糸方向の伸長率EY=(E×2)×TY/(TX+TY)により算出される。例えば、伸長率E=5%で、TY=10%、TX=15%である場合、EX=(5×2)×15/(15+10)=6%であり、EY=(5×2)×10/(15+10)=4%である。したがって、
図14(b)に例示するように、形状補正部106は、生地のX軸方向(緯糸方向)に6%、緯Y軸方向(経糸方向)に4%、2次元骨格を短縮する。
【0064】
また、形状の異なる曲面同士を接合する場合に、接合箇所にダーツを入れるが、ダーツを入れることで縫い目が生じてしまうという課題がある。そこで、型紙設計装置1は、接合位置にダーツを入れることなく、形状の異なる曲面同士を接合することを実現する。
具体的には、分割部112は、平面形状特定部104により特定された平面形状9を、クッション材3の3次元形状データの曲面の形状に基づいて、所定の位置で分割する。ここで、クッション材3の3次元形状データにおいて、座面領域には、複数の異なる形状の曲面がある。例えば、
図15(a)に例示する、クッション材3の3次元形状データの座面領域は、2種類の形状の曲面を有する。一つは、使用者の臀部と接触する凹曲面である臀部領域であり、もう一つは、使用者の大腿部の後面と接触する凹曲面である大腿部領域である。分割部112は、
図15(a)に例示されるように、座面領域を、球状の臀部領域と円柱状の大腿部領域とに分割する。臀部領域は、本発明に係る第1の領域であり、大腿部領域は、本発明に係る第2の領域である。
【0065】
領域調節部114は、第1の領域と、前記第2の領域との接合部分に位置する補助線7が基準線5となす境界角度に基づいて、分割部112により分割された各領域同士の接合位置を調節する。具体的には、領域調節部114は、各領域同士の接合領域の境界角度に基づいて、互いに接合する第1の領域、及び、第2の領域を相対的に回転して接合位置を調節する。より具体的には、
図15(b)に例示するように、複数の異なる形状の領域が接合する場合、分割部112により分割された領域のうち、一つの領域(臀部領域)を固定し、固定した領域以外の領域(大腿部領域)を、境界角度に基づいて、回転させて、接合部分にダーツを設けることなく、臀部領域と大腿部領域と接合させる。さらに具体的には、
図15(c)を用いて説明すると、補助線7cは、臀部領域と大腿部領域との接合位置に相当する補助線7であり、基準線5と補助線7cとのなす角が90度を超える場合、領域調節部114は、基準線5と補助線7cとのなす角が90度になるように交点pを軸に、大腿部領域を臀部領域方向へと角度θだけ回転させる。交点pは、基準線5と補助線7cとの交点である。
なお、領域調節部114により回転させる領域が複数ある場合に、分割部112は、使用者と接しない位置で平面形状9を分割する。
【0066】
ダーツ設定部116は、平面形状特定部104により特定された平面形状9のうち、使用者に接触しない位置に生地の余りを補正するダーツを設ける。具体的には、ダーツ設定部116は、領域調節部114により大腿部領域が回転した領域を、ダーツとする。
これにより、形状の異なる曲面の接合位置にダーツを入れることなく、平面形状9を設計することができる。
【0067】
次に、3次元形状データから2次元骨格の補助線7の長さを算出する方法について説明する。
図16(a)に例示するように、基準面mは、3次元形状データの座面上に設けられた仮想水平面である。
離間距離特定部118は、クッション材3の3次元形状データにおいて、
図16(a)に例示する、基準面mから3次元形状データの接触面までの離間距離を、所定の間隔毎に特定する。具体的には、基準面mと接触面とを結ぶ垂線Dを等間隔で設け、
図16(b)に例示する、垂線D1の長さ、垂線D1と隣り合う垂線D2との長さ、及び垂線D1と垂線D2との距離Aに基づいて、補助線7dの長さの近似値を、L2=SQRT(A^2+|D1-D2|^2)により求める。
補助線形状特定部120は、直線である補助線7dを3次元形状データの曲線Cに補正する。ここで、
図16(c)のKは、直線である補助線7dの傾きであり、K1は、補助線7dに隣り合う補助線7eの傾きであり、K2は、補助線7fの傾きである。具体的には、補助線形状特定部120は、離間距離特定部118により特定された補助線7dの長さの近似値L2を、傾きK1と傾きK2とに基づいて補正する。より具体的には、補助線形状特定部120は、式|K1-K|+|K-K2|∝C-L2に基づいて、直線である補助線7dを曲線Cに補正する。補助線形状特定部120は、各間隔の補正されたL2の積算により、1本の補助線7の長さを求める。
この補助線7の算出方法によれば、3次元形状データのフォーマットによらず、2次元骨格の長さを求めることができる。
【0068】
図17は、型紙設計装置1による、型紙設計処理(S10)を説明するためのフローチャートである。
図17に例示するように、ステップ100(S100)において、型紙設計装置1の取得部100は、スキャンされたクッション材3の3次元形状データを取得する。
ステップ105(S105)において、骨格特定部102は、取得部100により取得された3次元形状データ上に、基準線5と、複数の補助線7とを直交させて配置し、3次元骨格を特定する。
ステップ110(S110)において、平面形状特定部104は、特定された3次元骨格を2次元へ変換し、2次元骨格を特定する。具体的には、平面形状特定部104は、3次元骨格の基準線5及び補助線7の長さを算出し、2次元骨格を特定する。
【0069】
ステップ115(S115)において、平面形状特定部104は、基準線5に対する補助線7の角度を調整する。具体的には、平面形状特定部104は、3次元データ上の補助線間の距離と、2次元骨格上の補助線間の距離とが等しくなるように、2次元骨格において、補助線7の基準線5に対する角度を調整する。平面形状特定部104は、角度が調整された補助線7と基準線5との先端をつなげて平面形状9の外形形状Oを特定する。
ステップ120(S120)において、伸長率算出部110は、歪量算出部108により算出される歪量Dを用いて、クッション材のカバー生地の緯糸方向の伸長率EXと経糸方向の伸長率EYとを算出する。形状補正部106は、S115において、平面形状特定部104により特定された基準線5及び補助線7を、X軸方向及びY軸方向に短縮し、短縮した基準線5及び補助線7をつなげて平面形状9を補正する。
ステップ125(S125)において、領域調整部114は、平面形状9における、臀部領域と大腿部領域との接合位置を調節する。具体的には、領域調整部114は、分割部112により分割された臀部領域と大腿部領域との接続位置に対応する補助線7と、基準線5とのなす角が、90度になるように、大腿部領域を回転させ、ダーツ設定部116は、回転により欠けた領域をダーツとする。これにより、平面形状9にダーツが形成され、型紙となる平面形状9が決定する。
ステップ130(S130)において、ダーツ設定部116は、S125において設けたダーツに基づいて、平面形状9の外形形状Oを補正し、外形形状Oが特定される。
【0070】
以上説明したように、型紙設計装置1は、クッション材3の3次元形状データに基づいて、クッション材3のカバーの型紙を、1つのパーツからなる型紙として設計する。その際に、型紙設計装置1は、3次元形状データを2次元化するだけではなく、平面形状9を立体化した場合に生じる歪みを、生地の特性に応じて取り除くよう平面形状9を補正する。また、型紙設計装置1は、2次元骨格において、異なる形状の曲面の接合位置を調節し、使用者に接しない位置にダーツを形成するよう平面形状9を補正する。これらにより、型紙設計装置1は、1枚の生地を、使用者が座った状態で、シワを生じさることなく、立体化することを可能にした。
したがって、型紙設計装置3よれば、1パーツの型紙から1枚の生地でクッションカバーを形成するため、車椅子の使用者と接する位置に縫い目やシワが寄らず、使用者とクッションカバーとの接触位置において、縫い目及びシワによる褥瘡を防ぐことができる。
【0071】
[変形例]
上記実施形態では、曲面を含む平面形状9を1つのパーツからなる型紙として設計しているが、これに限定されず、平面形状9を、使用者と接触する曲面部と、それ以外の平面部とに分けて設計し、2つのパーツを接合して、クッション材3の座面部分のカバーを形成してもよい。
図18(a)に例示するように、変形例において、平面形状特定部304により特定される平面形状9は、使用者と接触する接触面15(曲面部)と、接触面15の周縁に位置し、使用者の下半身の一部の後面と接触しない周縁部17(平面部)とを含む。
ここで、
図18(b)に例示するように、接触面15の臀部領域における凸曲線状に形成した凸曲部150、及び凸曲部150と接合する周縁部17における凹曲線状に形成した凹曲部170において、凸曲部150と凹曲部170の長さが異なり、さらに、凸曲部150の曲率が凹曲部170の曲率より小さいため、凸曲部150と凹曲部170との接合位置にシワが生じるという課題がある。
そこで、平面形状特定部304は、接触面15の外形形状Sのうち、凸曲部150と凹曲部170の長さが等しく、さらに、凸曲部150の曲率が凹曲部170の曲率より小さくなるよう、接触面15の外形形状Sを特定する。これにより、凸曲部150と凹曲部170との接合位置にシワが生じることを防ぐ。
【0072】
図19及び
図20を用いて、具体的に、接触面15における凸曲部150の形状の特定方法を説明する。
図19に例示するように、型紙設計プログラム30は、
図9に例示する型紙設計プログラム10の機能構成に加え、平面形状特定部304が、さらに、直線形成部122、垂線形成部124、三角形部126、及び曲線形成部128を有する。
変形例における平面形状特定部304は、接触面15の2次元骨格を特定する。
直線形成部122は、平面形状特定部304により特定された接触面15における、凸曲部150の基準線5と補助線7の先端とを繋ぐよう弦g1を形成する。その際、直線形成部122は、決められた長さで弦g1を形成する。具体的には、直線122は、
図20(b)に示されるように、凹曲部170を楕円の一部と仮定し、
図20(c)に示される楕円における短径C/長径Pと弦g1/弓Gの相関関係に基づいて、弦g1の長さを決定する。弓Gは、凹曲部170を楕円の一部と想定した場合の円弧の一部であり、
図20(b)において、楕円と短軸との交点t1と、楕円と長軸との交点t2とを結ぶ円弧である。
【0073】
垂線形成部124は、弦g1の中点と直交し、且つ、弓Gと交わる垂線g2を形成する。垂線形成部124は、
図20(d)に示される、短径C/長径Pと垂線g2/弦g1の相関関係に基づいて、垂線g2の長さを決定する。
三角形部126は、
図20(a)に示されるように、直線形成部122により形成された弦g1と基準線5(C)と補助線7g(P)とにより三角形が形成されるように、補助線7g(P)と弦g1とを傾きを調節し、補助線7g(P)と基準線5(C)とのなす角度θを決定する。
曲線形成部128は、垂線形成部124により形成された垂線g2が弓Gと交わる交点と、基準線5の先端とを曲線で結び、さらに、垂線g2が弓Gと交わる交点と、補助線7gの先端とを曲線で結ぶ。具体的には、曲線形成部128は、基準線5(C)の先端、垂線g2の先端、及び補助線7gの先端を通るスプライン曲線により凸曲部150の形状を特定する。
平面形状特定部304は、曲線形成部128により形成された曲線に基づいて、接触面15の外形形状Sを特定する。
【符号の説明】
【0074】
[座位補助クッション]
1…座位補助クッション
10…座位補助クッション材
100…クッション本体
105…大腿部支持部
105A…右大腿部支持部
105B…左大腿部支持部
110…臀部支持部
110A…右臀部支持部
110B…左臀部支持部
120…支持面
120A…右大腿部支持面
120B…左大腿部支持面
120C…臀部支持面
120D…左大腿部支持面
150…分割位置
200…基礎プレート
30…カバー
300…カバー支持面
310…カバー周縁部
112…基底部
[型紙設計装置]
1…型紙設計装置
3…クッション材
5…基準線
7…補助線
15…接触面
17…周縁部
10、30…型紙設計プログラム
100…取得部
102…骨格特定部
104、304…平面形状特定部
106…補正計上部
108…歪量算出部
110…伸長率算出部
112…分割部
114…領域調節部
116…ダーツ設定部
118…離間距離特定部
120…補助線形状特定部
122…直線形成部
124…垂線形成部
126…三角形部
128…曲線形成部
150…凸曲部
170…凹曲部
200…CPU
202…メモリ
204…HDD
206…ネットワークIF
208…表示装置
210…入力装置
212…バス