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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114434
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】取引支援システム
(51)【国際特許分類】
   H04L 9/08 20060101AFI20240816BHJP
   H04L 9/32 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
H04L9/08 A
H04L9/32 200Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020207
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】520262582
【氏名又は名称】合同会社暗号屋
(74)【代理人】
【識別番号】110002790
【氏名又は名称】One ip弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】紫竹 佑騎
(57)【要約】
【課題】作品をブロックチェーンで管理することの納得感を得られることができるようにする。
【解決手段】作品の取引を支援する取引支援システムであって、ブロックチェーンネットワークにおいて作品に対応する非代替トークンを発行するトークン発行部と、暗号鍵及び復号鍵を生成し、復号鍵を分割した鍵断片を鍵管理ネットワークにおけるトランザクションを検証する複数の検証者に送信する鍵登録部と、暗号鍵を用いて作品を暗号化した暗号化作品を作成し、作成した暗号化作品を作品の所有者に提供する暗号化作品提供部と、を備え、鍵断片が検証者から非代替トークンの所有者に提供され、提供された鍵断片から復号鍵が導出され、復号鍵により暗号化作品が復号されること、を特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作品の取引を支援する取引支援システムであって、
ブロックチェーンネットワークにおいて前記作品に対応する非代替トークンを発行するトークン発行部と、
暗号鍵及び復号鍵を生成し、前記復号鍵を分割した鍵断片を鍵管理ネットワークにおけるトランザクションを検証する複数の検証者に送信する鍵登録部と、
前記暗号鍵を用いて前記作品を暗号化した暗号化作品を作成し、作成した前記暗号化作品を前記作品の所有者に提供する暗号化作品提供部と、
を備え、
前記鍵断片が前記検証者から前記非代替トークンの所有者に提供され、提供された前記鍵断片から前記復号鍵が導出され、前記復号鍵により前記暗号化作品が復号されること、
を特徴とする取引支援システム。
【請求項2】
作品の取引を支援する取引支援システムであって、
ブロックチェーンネットワークにおいて前記作品に対応する非代替トークンが発行され、
前記作品を暗号化するための暗号鍵及び復号鍵が作成され、
前記復号鍵を分割した鍵断片が鍵管理ネットワークにおけるトランザクションを検証する複数の検証者に送信され、
前記暗号鍵を用いて前記作品を暗号化した暗号化作品が前記作品の所有者に提供され、
前記鍵断片を前記検証者から取得し、取得した前記鍵断片から前記復号鍵を導出する鍵取得部と、
前記復号鍵により前記暗号化作品を復号する作品復号部と、
を備えることを特徴とする取引支援システム。
【請求項3】
作品の取引を支援する取引支援システムであって、
ブロックチェーンネットワークにおいて前記作品に対応する非代替トークンが発行され、

前記復号鍵を分割した鍵断片が前記鍵管理ネットワークにおけるトランザクションを検証する複数の検証者に送信され、
前記暗号鍵を用いて前記作品を暗号化した暗号化作品が前記作品の所有者に提供され、
前記鍵管理ネットワークにおけるトランザクションを検証する検証処理部と、
前記鍵断片を受信する鍵断片受信部と、
前記鍵断片を前記非代替トークンの所有者に提供する鍵断片提供部と、
を備え、
前記鍵断片から前記復号鍵が導出され、前記復号鍵により前記暗号化作品が復号されること、
を特徴とする取引支援システム。
【請求項4】
作品の取引を支援する方法であって、
ブロックチェーンネットワークにおいて前記作品に対応する非代替トークンを発行し、
前記作品を暗号化するための暗号鍵及び復号鍵を作成し、
前記復号鍵を分割した鍵断片を鍵管理ネットワークにおけるトランザクションを検証する複数の検証者に送信し、
前記暗号鍵を用いて前記作品を暗号化した暗号化作品を前記作品の所有者に提供し、
前記鍵断片を前記検証者から前記非代替トークンの所有者に提供し、
提供された前記鍵断片から前記復号鍵を導出し、
前記復号鍵により前記暗号化作品を復号すること、
を特徴とする取引支援方法。
【請求項5】
ブロックチェーンネットワークにおいて作品に対応する非代替トークンを発行するステップと、
暗号鍵及び復号鍵を生成し、前記復号鍵を分割した鍵断片を鍵管理ネットワークにおけるトランザクションを検証する複数の検証者に送信するステップと、
前記暗号鍵を用いて前記作品を暗号化した暗号化作品を作成し、作成した前記暗号化作品を前記作品の所有者に提供するステップと、をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記鍵断片が前記検証者から前記非代替トークンの所有者に提供され、提供された前記鍵断片から前記復号鍵が導出され、前記復号鍵により前記暗号化作品が復号されること、
を特徴とするプログラム。
【請求項6】
作品の取引を支援するためのプログラムであって、
ブロックチェーンネットワークにおいて前記作品に対応する非代替トークンが発行され、
前記作品を暗号化するための暗号鍵及び復号鍵が作成され、
前記復号鍵を分割した鍵断片が鍵管理ネットワークにおけるトランザクションを検証する複数の検証者に送信され、
前記暗号鍵を用いて前記作品を暗号化した暗号化作品が前記作品の所有者に提供され、
コンピュータに、
前記鍵断片を前記検証者から取得し、取得した前記鍵断片から前記復号鍵を導出するステップと、
前記復号鍵により前記暗号化作品を復号するステップと、
を実行させるためのプログラム。
【請求項7】
作品の取引を支援するためのプログラムであって、
ブロックチェーンネットワークにおいて前記作品に対応する非代替トークンが発行され、
前記作品を暗号化するための暗号鍵及び復号鍵が作成され、
前記復号鍵を分割した鍵断片が前記鍵管理ネットワークにおけるトランザクションを検証する複数の検証者に送信され、
前記暗号鍵を用いて前記作品を暗号化した暗号化作品が前記作品の所有者に提供されており、
コンピュータに、
前記鍵管理ネットワークにおけるトランザクションを検証するステップと、
前記鍵断片を受信するステップと、
前記鍵断片を前記非代替トークンの所有者に提供するステップと、
を実行させ、
前記鍵断片から前記復号鍵が導出され、前記復号鍵により前記暗号化作品が復号されること、
を特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取引支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、ブロックチェーン技術を用いて作品の二次流通や利用を管理する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6581327号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、流通されるデジタルアート等の作品は誰にでも閲覧可能であり、ブロックチェーンに管理される権利は単なる名誉権となってしまう。
【0005】
本発明はこのような背景を鑑みてなされたものであり、暗号化した作品を復号する鍵をブロックチェーンで適切に管理することができるようにする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の主たる発明は、作品の取引を支援する取引支援システムであって、ブロックチェーンネットワークにおいて前記作品に対応する非代替トークンを発行するトークン発行部と、暗号鍵及び復号鍵を生成し、前記復号鍵を分割した鍵断片を鍵管理ネットワークにおけるトランザクションを検証する複数の検証者に送信する鍵登録部と、前記暗号鍵を用いて前記作品を暗号化した暗号化作品を作成し、作成した前記暗号化作品を前記作品の所有者に提供する暗号化作品提供部と、を備え、前記鍵断片が前記検証者から前記非代替トークンの所有者に提供され、提供された前記鍵断片から前記復号鍵が導出され、前記復号鍵により前記暗号化作品が復号されること、を特徴とする。
【0007】
その他本願が開示する課題やその解決方法については、発明の実施形態の欄及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、暗号化した作品を復号する鍵をブロックチェーンで適切に管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態の取引支援システムの全体構成例を示す図である。
図2】本実施形態の取引支援システムの概要を説明する図である。
図3】クリエイター端末10、バイヤー端末20、バリデーター端末70などを実現するコンピュータのハードウェア構成例を示す図である。
図4】クリエイター端末10のソフトウェア構成例を示す図である。
図5】バイヤー端末20のソフトウェア構成例を示す図である。
図6】バリデーター端末70のソフトウェア構成例を示す図である。
図7】NFTの発行処理について説明する図である。
図8】作品の流通処理について説明する図である。
図9】トランザクションの内容を説明する図である。
図10】NFTの発行に係るクリエイター端末10の動作を説明する図である。
図11】作品の流通に係るバイヤー端末20の動作を説明する図である。
図12】作品の流通に係るバリデーター端末70の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<発明の概要>
本発明の実施形態の内容を列記して説明する。本発明は、たとえば、以下のような構成を備える。
[項目1]
作品の取引を支援する取引支援システムであって、
ブロックチェーンネットワークにおいて前記作品に対応する非代替トークンを発行するトークン発行部と、
暗号鍵及び復号鍵を生成し、前記復号鍵を分割した鍵断片を鍵管理ネットワークにおけるトランザクションを検証する複数の検証者に送信する鍵登録部と、
前記暗号鍵を用いて前記作品を暗号化した暗号化作品を作成し、作成した前記暗号化作品を前記作品の所有者に提供する暗号化作品提供部と、
を備え、
前記鍵断片が前記検証者から前記非代替トークンの所有者に提供され、提供された前記鍵断片から前記復号鍵が導出され、前記復号鍵により前記暗号化作品が復号されること、
を特徴とする取引支援システム。
[項目2]
作品の取引を支援する取引支援システムであって、
ブロックチェーンネットワークにおいて前記作品に対応する非代替トークンが発行され、
前記作品を暗号化するための暗号鍵及び復号鍵が作成され、
前記復号鍵を分割した鍵断片が鍵管理ネットワークにおけるトランザクションを検証する複数の検証者に送信され、
前記暗号鍵を用いて前記作品を暗号化した暗号化作品が前記作品の所有者に提供され、
前記鍵断片を前記検証者から取得し、取得した前記鍵断片から前記復号鍵を導出する鍵取得部と、
前記復号鍵により前記暗号化作品を復号する作品復号部と、
を備えることを特徴とする取引支援システム。
[項目3]
作品の取引を支援する取引支援システムであって、
ブロックチェーンネットワークにおいて前記作品に対応する非代替トークンが発行され、

前記復号鍵を分割した鍵断片が前記鍵管理ネットワークにおけるトランザクションを検証する複数の検証者に送信され、
前記暗号鍵を用いて前記作品を暗号化した暗号化作品が前記作品の所有者に提供され、
前記鍵管理ネットワークにおけるトランザクションを検証する検証処理部と、
前記鍵断片を受信する鍵断片受信部と、
前記鍵断片を前記非代替トークンの所有者に提供する鍵断片提供部と、
を備え、
前記鍵断片から前記復号鍵が導出され、前記復号鍵により前記暗号化作品が復号されること、
を特徴とする取引支援システム。
[項目4]
作品の取引を支援する方法であって、
ブロックチェーンネットワークにおいて前記作品に対応する非代替トークンを発行し、
前記作品を暗号化するための暗号鍵及び復号鍵を作成し、
前記復号鍵を分割した鍵断片を鍵管理ネットワークにおけるトランザクションを検証する複数の検証者に送信し、
前記暗号鍵を用いて前記作品を暗号化した暗号化作品を前記作品の所有者に提供し、
前記鍵断片を前記検証者から前記非代替トークンの所有者に提供し、
提供された前記鍵断片から前記復号鍵を導出し、
前記復号鍵により前記暗号化作品を復号すること、
を特徴とする取引支援方法。
[項目5]
ブロックチェーンネットワークにおいて作品に対応する非代替トークンを発行するステップと、
暗号鍵及び復号鍵を生成し、前記復号鍵を分割した鍵断片を鍵管理ネットワークにおけるトランザクションを検証する複数の検証者に送信するステップと、
前記暗号鍵を用いて前記作品を暗号化した暗号化作品を作成し、作成した前記暗号化作品を前記作品の所有者に提供するステップと、をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記鍵断片が前記検証者から前記非代替トークンの所有者に提供され、提供された前記鍵断片から前記復号鍵が導出され、前記復号鍵により前記暗号化作品が復号されること、
を特徴とするプログラム。
[項目6]
作品の取引を支援するためのプログラムであって、
ブロックチェーンネットワークにおいて前記作品に対応する非代替トークンが発行され、
前記作品を暗号化するための暗号鍵及び復号鍵が作成され、
前記復号鍵を分割した鍵断片が鍵管理ネットワークにおけるトランザクションを検証する複数の検証者に送信され、
前記暗号鍵を用いて前記作品を暗号化した暗号化作品が前記作品の所有者に提供され、
コンピュータに、
前記鍵断片を前記検証者から取得し、取得した前記鍵断片から前記復号鍵を導出するステップと、
前記復号鍵により前記暗号化作品を復号するステップと、
を実行させるためのプログラム。
[項目7]
作品の取引を支援するためのプログラムであって、
ブロックチェーンネットワークにおいて前記作品に対応する非代替トークンが発行され、
前記作品を暗号化するための暗号鍵及び復号鍵が作成され、
前記復号鍵を分割した鍵断片が前記鍵管理ネットワークにおけるトランザクションを検証する複数の検証者に送信され、
前記暗号鍵を用いて前記作品を暗号化した暗号化作品が前記作品の所有者に提供されており、
コンピュータに、
前記鍵管理ネットワークにおけるトランザクションを検証するステップと、
前記鍵断片を受信するステップと、
前記鍵断片を前記非代替トークンの所有者に提供するステップと、
を実行させ、
前記鍵断片から前記復号鍵が導出され、前記復号鍵により前記暗号化作品が復号されること、
を特徴とするプログラム。
【0011】
<システム概要>
以下、本発明の一実施形態に係るデジタルアート(以下、作品とも称する。)の取引支援システムについて説明する。本実施形態の取引支援システムでは、ブロックチェーンが発行するNFT(Non-Fungible Token;非代替性トークン)を用いて作品の所有者を証明する。デジタルアートは、例えば、静止画像データ、動画像データ、音声データ、3DCGモデルなどとすることができる。なお、本実施形態では一例としてデジタルアートを想定しているが、アートでなくとも電子データとして管理可能なオブジェクトであれば証明対象とすることができる。
【0012】
作品は暗号化されて所有者に届けられる。所有者はNFTにより証明される。作品の復号鍵は分割され、その断片(以下、鍵断片という。)はブロックチェーンのトランザクションを検証する検証者(バリデーター)に提供される。NFTの所有者、すなわち作品を購入した購入者(バイヤー)は、バリデーターから鍵断片を取得することができる。NFTの所有者(バイヤー)は鍵断片を集めて鍵断片から復号鍵を導出する。復号鍵の断片化及び鍵断片から復号鍵の導出は、例えば、秘密分散法により行うことができる。
【0013】
このように、本実施形態では、NFTにより証明される作品を正当に所有する所有者のみが鍵断片から再構築した復号鍵を用いて作品を復号することができる。したがって、作品は、現在又は過去の所有者のみが復号して閲覧することができるようになる。
【0014】
図1は、本実施形態の取引支援システムの全体構成例を示す図である。本実施形態の取引支援システムは、クリエイター端末10、バイヤー端末20、ファイルストレージ30、ブロックチェーン40、鍵管理ネットワーク50、サービスサーバ60、バリデーター端末70を含んで構成される。これらはそれぞれ通信ネットワークを介して通信可能に接続される。通信ネットワークは、たとえばインターネットであり、公衆電話回線網や携帯電話回線網、無線通信路、イーサネット(登録商標)などにより構築される。
【0015】
ファイルストレージ30は、データを記憶する。ファイルストレージ30は、例えば、P2Pで実装される分散ファイルシステムである、IPFS(InterPlanetary File System)とすることができる。ファイルストレージ30は、例えば、複数のコンピュータノードにより実現することもできる。
【0016】
ブロックチェーン40及び鍵管理ネットワーク50はいずれも分散台帳管理を行うブロックチェーンネットワークである。ブロックチェーンネットワークは、複数のコンピュータノードにより構成され得る。ブロックチェーンネットワークは、例えば、イーサリアムとすることができる。ブロックチェーンで発行されるトークンには代替性(fungible;ファンジブル)を有するファンジブルトークンと、非代替性のトークン(NFT;Non-Fungible Token)とがある。NFTは、例えば、ERC721規格により発行されうる。NFTは、一意に識別される識別子を有し、ブロックチェーンネットワークにおいて取引可能である。NFTには、所有者を示す情報が記録されるとともに、所有者の履歴も記録される。NFTには、作品を特定する識別情報も記録され、NFTにより作品の所有者を証明することができる。
【0017】
クリエイター端末10は、デジタルアートの作成者(クリエイターC)が操作するコンピュータである。クリエイター端末10は、例えば、スマートフォンやタブレットコンピュータ、パーソナルコンピュータなどとすることができる。
【0018】
バイヤー端末20は、作品を購入する者(バイヤーB、すなわちNFTの作品の所有者となる者)が操作するコンピュータである。バイヤー端末20は、例えば、スマートフォンやタブレットコンピュータ、パーソナルコンピュータなどとすることができる。バイヤー端末20は潜在的な所有者(作品を購入することのできるユーザ)の数だけ存在しうる。
【0019】
サービスサーバ60は、クリエイター端末10の機能を実現するプログラム(以下、サービスクライアントという。)を提供するコンピュータである。
【0020】
バリデーター端末70は、鍵管理ネットワーク50におけるトランザクションの検証者(バリデーターV)が操作するコンピュータである。本実施形態では、鍵管理ネットワーク50では、プルーフオブステークによるブロックの検証が行われることを想定しており、バリデーター端末70は、この検証を行うノードとして鍵管理ネットワーク50を構成することができる。
【0021】
<取引概要>
図2は、本実施形態の取引支援システムの概要を説明する図である。
【0022】
デジタルコンテンツは暗号化されてファイルストレージ30に格納されるとともに、復号鍵が鍵管理ネットワーク50で管理される。本実施形態では、鍵管理ネットワーク50におけるバリデーターの端末が復号鍵を分割した鍵断片を管理する。デジタルコンテンツに紐付けられるNFTはブロックチェーン40においてミントされる。
【0023】
NFTの所有者(バイヤー)は、暗号化されたデジタルコンテンツをファイルストレージ30から取得するとともに、鍵管理ネットワーク50から復号鍵を取得し(バリデーターから鍵断片を取得して復号鍵を復元し)、暗号化されたデジタルコンテンツを復号鍵で復号することができる。
【0024】
以上のようにして、NFTを所有しているバイヤーB(又は過去に所有していたバイヤーB)のみが暗号化作品を復号化することができるようにすることができる。
【0025】
<ハードウェア>
図3は、クリエイター端末10、バイヤー端末20、バリデーター端末70などを実現するコンピュータのハードウェア構成例を示す図である。なお、図示された構成は一例であり、これ以外の構成を有していてもよい。クリエイター端末10は、CPU101、メモリ102、記憶装置103、通信インタフェース104、入力装置105、出力装置106を備える。記憶装置103は、各種のデータやプログラムを記憶する、例えばハードディスクドライブやソリッドステートドライブ、フラッシュメモリなどである。通信インタフェース104は、通信ネットワークに接続するためのインタフェースであり、例えばイーサネット(登録商標)に接続するためのアダプタ、公衆電話回線網に接続するためのモデム、無線通信を行うための無線通信機、シリアル通信のためのUSB(Universal Serial Bus)コネクタやRS232Cコネクタなどである。入力装置105は、データを入力する、例えばキーボードやマウス、タッチパネル、ボタン、マイクロフォンなどである。出力装置106は、データを出力する、例えばディスプレイやプリンタ、スピーカなどである。なお、クリエイター端末10、バイヤー端末20、バリデーター端末70などが備える各機能部はCPU101が記憶装置103に記憶されているプログラムをメモリ102に読み出して実行することにより実現され、これらが備える各記憶部はメモリ102及び記憶装置103が提供する記憶領域の一部として実現される。
【0026】
<クリエイター端末10>
図4は、クリエイター端末10のソフトウェア構成例を示す図である。クリエイター端末10は、トークン発行部111、暗号化作品提供部112、トークン移転部113、鍵登録部114を備える。
【0027】
トークン発行部111は、ブロックチェーンネットワークで作品に対応するNFTをクリエイターCのウォレットに発行させる。本実施形態では、トークン発行部111は、ブロックチェーン40のスマートコントラクトを呼び出して、ブロックチェーン40においてNFTをミントさせることができる。
【0028】
暗号化作品提供部112は、暗号化作品を提供することができる。暗号化作品提供部112は、暗号鍵及び復号鍵を生成して、暗号鍵を用いて作品のデータを暗号化することができる。暗号化作品提供部112は、ファイルストレージ30に暗号化作品を登録し、ファイルストレージ30において暗号化作品を特定する作品特定情報をNFTに設定することができる。ファイルストレージ30は、IPFS、NFS、クラウドによるバケット管理、オブジェクトデータベース、リレーショナルデータベースなど、データを管理可能なものであればその実装を問わない。また、本実施形態において作品特定情報は、ファイルストレージ30が提供するハッシュ値を想定するが、URLやファイル名などであってもよい。
【0029】
トークン移転部113は、バイヤーBのウォレットにNFTを移転する。トークン移転部113は、ブロックチェーン40のスマートコントラクトのTransferメソッドを呼び出すことによりNFTを移転させることができる。
【0030】
鍵登録部114は、暗号鍵及び復号鍵(対称鍵)を生成する。また、鍵登録部114は、暗号化作品の復号鍵を分割した鍵断片を生成して登録する。本実施形態では、鍵登録部114は、鍵断片を鍵管理ネットワーク50に送信し、鍵管理ネットワーク50から鍵断片をバリデーターVに送る。鍵登録部114は、復号鍵をN個に分割した鍵断片を生成する。復号鍵は、M個の鍵断片から導出可能であるものとし、N≧Mである。鍵登録部114は、鍵断片N個をそれぞれバリデーター端末70に送信する。鍵断片には、NFTを特定する情報を付帯させて送信することができる。
<バイヤー端末20>
【0031】
図5は、バイヤー端末20のソフトウェア構成例を示す図である。バイヤー端末20は、トークン移転部211、購入処理部212、作品取得部213、鍵取得部214、作品復号部215を備える。
【0032】
トークン移転部211は、他のバイヤーBのウォレットにNFTを移転する。トークン移転部211は、クリエイター端末10が備えるトークン発行部111と同じ機能として実現してもよい。
【0033】
購入処理部212は、作品に対応するNFTの購入に関する処理を行う。購入処理部212は、例えば、バイヤーBからの指示に応じて作品の購入を行うことができる。なお、購入処理部212の機能は、一般的なデジタルコンテンツの購入を行うための機能とすることができる。
【0034】
鍵取得部214は、バリデーターV(バリデーター端末70)から鍵断片を取得する。鍵取得部214は、取得した鍵断片から復号鍵を生成することができる。
【0035】
作品復号部215は、鍵取得部214が鍵断片から導出した復号鍵を用いて暗号化作品を復号することができる。作品復号部215は、ファイルストレージ30から暗号化作品を取得することができる。
【0036】
<バリデーター端末70>
図6は、バリデーター端末70のソフトウェア構成例を示す図である。バリデーター端末70は、検証処理部711、鍵断片受信部712、鍵断片提供部713、鍵断片記憶部731を備える。
【0037】
鍵断片記憶部731は、鍵断片を記憶する。鍵断片記憶部731は、NFTを特定する情報に対応付けて、鍵断片を記憶することができる。
【0038】
検証処理部711は、ブロックチェーンネットワークにおけるトランザクションの検証を行うことができる。検証処理部711は、例えば、プルーフオブステークによるブロックの検証に関する一般的な処理を行うことができる。
【0039】
鍵断片受信部712は、鍵管理ネットワーク50から鍵断片を受信する。なお、鍵断片受信部712は、クリエイター端末10から鍵断片を受信するようにしてもよい。鍵断片には、NFTを特定する情報が付帯され、鍵断片受信部712は、NFTを特定する情報に対応付けて鍵断片記憶部731に登録することができる。
【0040】
鍵断片提供部713は、鍵断片をNFTの所有者(バイヤーB)に提供する。鍵断片提供部713は、リクエストに応じて、NFTの所有者の正当性を確認し(例えば、署名により確認することができる。)鍵断片をNFTの所有者であるバイヤー端末20に送信することができる。
【0041】
<動作>
以下、本実施形態の取引支援システムの動作について説明する。
【0042】
<NFT発行処理>
図7は、NFTの発行処理について説明する図である。
【0043】
クリエイター端末10は、サービスサーバ60からサービスクライアントを取得する(S401)。サービスクライアントは、例えば、クリエイター端末10の各種機能を実現するためのプログラムである。クリエイター端末10はサービスクライアントを実行することにより上述した各種機能を実現することができる。
【0044】
クリエイター端末10は、クリエイターCから作品のデータ(ファイル等)の入力を受け付けて(S402)、ブロックチェーン40のスマートコントラクトを呼び出すことにより(S403)、ブロックチェーン40においてNFTをミントさせる(S404)。クリエイター端末10は、ミントされたNFTを特定する情報を受信する(S405)。クリエイター端末10は、鍵管理ネットワーク50からバリデーターVの公開鍵を取得し(S406)、鍵管理ネットワーク50から、分割鍵の閾値m、バリデーターVの数nを取得する(S407)。クリエイター端末10は、暗号鍵及び復号鍵を生成し(S408)、n個のうちm個で復元できるように(m of n)、暗号鍵及び復号鍵を分割鍵に分割する(S409)。クリエイター端末10は、分割鍵のそれぞれを、保管対象のバリデーターVの公開鍵で暗号化し(S410)、公開鍵で暗号化された鍵断片を鍵管理ネットワーク50に送信し(S411)、鍵管理ネットワーク50は、クリエイター端末10から受信した、公開鍵で暗号化された鍵断片をバリデーター端末70に送信する(S412)。バリデーター端末70は、バリデーターVの秘密鍵で暗号化された鍵断片を復号し(S413)、復号した鍵断片を鍵断片記憶部731に登録して管理する(S414)。図7のS415~S421の処理の記述をお願いいたします。
【0045】
クリエイター端末10は、鍵管理ネットワーク50から受信した暗号鍵を用いて作品を暗号化し(S415)、暗号化した作品をファイルストレージ30にアップロードする(S416)。クリエイター端末10は、ファイルストレージ30から、暗号化された作品を特定する情報を取得する(S417)。クリエイター端末10は、NFTのプレビュー画像をファイルストレージ30にアップロードし(S418)、ファイルストレージ30から、プレビュー画像を特定する情報を取得する(S419)。クリエイター端末10は、プレビュー画像、暗号化された作品を特定する情報とNFTに関する情報からメタデータを作成し(S420)、メタデータをファイルストレージ30にアップロードする(S421)。
【0046】
<流通処理>
図8は、作品の流通処理について説明する図である。
【0047】
クリエイター端末10は、サービスサーバ60からサービスクライアントを取得して実行する(S420)。クリエイター端末10は、ブロックチェーン40のスマートコントラクトが提供するTransferメソッドを呼出し(S421)、NFTの移転(Transfer)メソッドが実行されて(S422)、NFTはバイヤーBのウォレットに格納される。
【0048】
バイヤー端末20は、サービスサーバ60からサービスクライアントを取得して実行し(S423)、バリデーター端末70に鍵断片のリクエストを送信し(S424)、バリデーターVからの鍵断片がバイヤー端末20に提供される(S426)。ここでバリデーター端末70は、NFTの所有者がバイヤーBであることを、署名等により確認することができる。
【0049】
バイヤー端末20は、鍵断片から復号鍵を復元し(S427)、ファイルストレージ30から暗号化作品を取得し(S429)、鍵断片から復元した復号鍵を用いて暗号化作品を復号し(S430)、バイヤーBの閲覧に供することができる。
<トランザクション内容>
図9は、トランザクションの内容を説明する図である。図9では上述した図7のNFT発行処理及び図8の流通処理が行われた場合にどのようなブロックがブロックチェーン40に登録されるかを示している。
【0050】
図9に示すように、NFT発行処理が行われると、ブロックチェーンを連結するハッシュ値及びナンス値に加えて、スマートコントラクトにより生成された新規NFTの生成トランザクション、及び新規NFTの所有者をクリエイターCに設定するトランザクションブロックに取り込まれる。
【0051】
また、流通処理が行われると、ブロックチェーンを連結するハッシュ値及びナンス値に加えて、スマートコントラクトによりNFTの所有者をバイヤーB(バイヤーBのウォレットアドレス)に設定するトランザクションがブロックに取り込まれる。
【0052】
<クリエイター端末の動作>
図10は、NFTの発行に係るクリエイター端末10の動作を説明する図である。
【0053】
クリエイター端末10は、作品のファイルを読み取り(S151)、ブロックチェーン40においてスマートコントラクトのトークンミントメソッドを呼び出して、作品に対応するNFTを発行する(S152)。NFTのミントに成功すると(S153:YES)、クリエイター端末10は、鍵管理ネットワーク50からバリデーターVの公開鍵を取得する(S154)。なお、バリデーター端末70から取得するようにしてもよい。クリエイター端末10は、鍵管理ネットワーク50から、分割鍵の閾値m、バリデーターVの数nを取得する(S155)。クリエイター端末10は、暗号鍵及び復号鍵を生成する(S156)、n個のうちm個で復元できるように(m of n)、暗号鍵及び復号鍵を分割鍵に分割する(S157)。クリエイター端末10は、分割鍵のそれぞれを、保管対象のバリデーターVの公開鍵で暗号化し(S158)、公開鍵で暗号化された鍵断片を鍵管理ネットワーク50に送信する(S159)。この鍵断片は、鍵管理ネットワーク50からバリデーター端末70に送信され、バリデーター端末70で管理される。
【0054】
クリエイター端末10は、生成した暗号鍵で作品を暗号化し(S160)、暗号化された作品をファイルストレージ30にアップロードし(S161)、アップロードに成功すると(S162:YES)、ファイルストレージ30から暗号化された作品を特定する情報(例えば、ハッシュ値やURLなど)を取得する(S163)。また、クリエイター端末10は、作品のプレビュー画像をファイルストレージ30にアップロードし(S164)、アップロードに成功すると(S165:YES)、アップロードしたプレビュー画像を特定する情報をファイルストレージ30から取得する(S166)。クリエイター端末10は、プレビュー画像、暗号化された作品を特定する情報、NFTに関する情報からメタデータを作成し(S167)、メタデータをファイルストレージ30にアップロードする(S168)。アップロードに成功すると(S169:YES)、処理を終了する。
【0055】
<バイヤー端末の動作>
図11は、作品の流通に係るバイヤー端末20の動作を説明する図である。
【0056】
バイヤー端末20は、NFTが移転された後、鍵断片をバリデーター端末70から取得する(S253)。バイヤー端末20は、バリデーター端末70から取得した鍵断片から復号鍵を導出し(S254)、暗号化された作品をファイルストレージ30から取得し(S257)、復号鍵を用いて暗号化された作品を復号し(S258)、例えば、バイヤーBの閲覧に供することができる。
【0057】
<バリデーター端末の動作>
図12は、作品の流通に係るバリデーター端末70の動作を説明する図である。
【0058】
バリデーター端末70は、NFTの所有者(クリエイター端末10又はバイヤー端末20)から鍵断片のリクエストを受信すると(S751)、NFTの所有者の秘密鍵による署名データ等を参照して所有者の正当性を確認する(S752)。所有者(クリエイターC又はバイヤーB)が正当なNFTの所有者であることが検証された場合(S753:YES)、バリデーター端末70は、管理している鍵断片を鍵断片記憶部731から読み出して、NFTの所有者の公開鍵で鍵断片を暗号化し(S754)、バイヤー端末20(又はクリエイター端末10)に送信する(S755)。
【0059】
以上説明したように、本実施形態の取引支援システムによれば、NFTの所有者(オーナー)として登録されているユーザ(バイヤー)だけがファイルストレージ30に格納されている暗号化作品を復号することができる。これにより作品の所有者は復号した作品を保存しておき、私的利用の範囲内で自由に楽しむことができる。手元にデータを残したまま作品及びNFTを流通させることが可能となり、二次流通することで作品を閲覧できる人を増やすようにすることができる。
【0060】
以上、本実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物も含まれる。
【0061】
例えば、本実施形態ではブロックチェーンとは異なる鍵管理ネットワークを用いることを前提としたが、これに限らず、1つのブロックチェーンにおいて、バリデーターVに対して鍵断片を管理させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0062】
10 クリエイター端末
20 バイヤー端末
30 ファイルストレージ
40 ブロックチェーン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12