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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114443
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】電力管理システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/35 20060101AFI20240816BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
H02J7/35 J
H02J7/00 P
H02J7/35 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020222
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋吉 宏一
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA06
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA08
5G503CB05
5G503DA05
5G503EA05
5G503FA06
5G503GD03
5G503GD04
(57)【要約】
【課題】状況に応じて電気自動車を含めた建物の電力の供給先において選択の幅を広げることが可能な管理する電力管理システムを得る。
【解決手段】制御装置32では、モード切替部53が設けられており、節約優先モード又はレジリエンス優先モードの選択が可能とされ、建物12内の電力が制御される。節約優先モードでは、電力供給エリア内におけるピーク電力を抑制するように設定されている。一方、レジリエンス優先モードでは、例えば、避難所に対して電気自動車14の走行を可能とする移動用電力が確保される。つまり、状況に応じて、必要最小限の電力が確保された状態で建物12内で避難する在宅避難以外に避難所へ移動するという選択肢を得ることができる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物に設置されると共に太陽光で発電可能な太陽光発電装置と、
前記太陽光発電装置で発電された電力を蓄積可能な蓄電装置と、
前記建物側から電気自動車に搭載された蓄電部への電力の供給又は当該蓄電部から当該建物側の負荷への供給が可能な充放電装置と、
電力供給エリア内におけるピーク電力を抑制する節約優先モード又は予め設定された所定の地点に対して前記電気自動車の走行を可能とする移動用電力を確保しておくレジリエンス優先モードに選択可能なモード切替部が設けられ、当該建物内の電力を制御する制御装置と、
を備えている電力管理システム。
【請求項2】
前記制御装置の初期設定では、前記節約優先モードが選択されている請求項1に記載の電力管理システム。
【請求項3】
気象情報を取得する気象情報取得部を備え、
前記制御装置は、前記気象情報取得部から取得された気象情報に基づいて停電が予測された場合、前記レジリエンス優先モードに設定する請求項1に記載の電力管理システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記太陽光発電装置が正常に動作しない場合、前記レジリエンス優先モードに設定する請求項1に記載の電力管理システム。
【請求項5】
前記建物の居住者に対してメッセージを報知する報知部を備え、
前記制御装置は、前記太陽光発電装置が正常に動作しない場合、前記報知部を介してその旨を報知する請求項4に記載の電力管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、電気自動車が有するメインバッテリユニットの電力を住宅側に設けられた負荷へ供給することが可能な電源システムに関する技術が開示されている。この先行技術では、商用電力系統が停電した際、電源切替操作によって電気自動車の電力が住宅側の負荷へ供給されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-51909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のように、先行技術では、商用電力系統が停電した際、電気自動車の電力が住宅側の負荷へ供給されるようになっているが、災害等により商用電力系統が停電した際は、避難する必要も生じる。つまり、災害時における状況を含めて電力の供給先を考慮すると、さらなる改善の余地がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、状況に応じて電気自動車を含めた建物の電力の供給先において選択の幅を広げることが可能な管理する電力管理システムを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係る電力管理システムは、建物に設置されると共に太陽光で発電可能な太陽光発電装置と、前記太陽光発電装置で発電された電力を蓄積可能な蓄電装置と、前記建物側から電気自動車に搭載された蓄電部への電力の供給又は当該蓄電部から当該建物側の負荷への供給が可能な充放電装置と、電力供給エリア内におけるピーク電力を抑制する節約優先モード又は予め設定された所定の地点に対して前記電気自動車の走行を可能とする移動用電力を確保しておくレジリエンス優先モードに選択可能なモード切替部が設けられ、当該建物内の電力を制御する制御装置と、を備えている。
【0007】
第1の態様に係る電力管理システムでは、太陽光発電装置、蓄電装置、充放電装置及び制御装置を備えている。太陽光発電装置は、建物に設置されると共に太陽光で発電可能とされており、蓄電装置は、太陽光発電装置で発電された電力を蓄積可能としている。
【0008】
また、充放電装置は、建物側から電気自動車に搭載された蓄電部への電力の供給又は当該蓄電部から当該建物側の負荷への供給を可能としている。
【0009】
さらに、制御装置では、モード切替部が設けられており、節約優先モード又はレジリエンス優先モードの選択が可能とされ、当該制御装置によって建物内の電力が制御される。
【0010】
当該節約優先モードでは、電力供給エリア内におけるピーク電力を抑制するように設定されている。例えば、電力需要が少ない時間帯では蓄電装置等により電力が蓄電され、電力需要が多い時間帯では、当該蓄電装置等に蓄電された電力が建物側の負荷へ供給されることによって、電気料金を削減することが可能となる。
【0011】
一方、レジリエンス優先モードでは、予め設定された所定の地点に対して電気自動車の走行を可能とする移動用電力が確保される。レジリエンス優先モードでは、電気自動車の蓄電部において、移動用電力が常に確保された状態で、それ以外の電力が建物側の負荷への電力として供給可能とされる。
【0012】
なお、本態様における「予め設定された所定の地点」とは、例えば、避難所、家族、親戚等の住宅等のことである。また、本態様における「レジリエンス」とは、停電等により商用電力系統による電力が供給されない状況下での対応力をいう。
【0013】
つまり、本態様では、状況に応じて、建物内で避難する以外に避難所へ移動するという選択肢を得ることができる。
【0014】
第2の態様に係る電力管理システムは、第1の態様に係る電力管理システムにおいて、前記制御装置の初期設定では、前記節約優先モードが選択されている。
【0015】
第2の態様に係る電力管理システムでは、制御装置の初期設定では、節約優先モードが選択されており、電力供給エリア内におけるピーク電力を抑制するように設定されている。
【0016】
第3の態様に係る電力管理システムは、第1の態様に係る電力管理システムにおいて、気象情報を取得する気象情報取得部を備え、前記制御装置は、前記気象情報取得部から取得された気象情報に基づいて停電が予測された場合、前記レジリエンス優先モードに設定する。
【0017】
第3の態様に係る電力管理システムでは、気象情報取得部を備えており、当該気象情報取得部によって気象情報が取得される。制御装置は、当該気象情報取得部から取得された気象情報に基づいて停電が予測された場合、レジリエンス優先モードに設定する。
【0018】
つまり、本態様では、予め設定された所定の地点に対して電気自動車の走行を可能とする移動用電力が確保された状態で、それ以外の電力が建物側の負荷への電力として供給可能とされる。したがって、本態様では、建物の居住者の判断によって、いつでも予め設定された所定の地点への移動が可能となる。
【0019】
第4の態様に係る電力管理システムは、第1の態様に係る電力管理システムにおいて、前記制御装置は、前記太陽光発電装置が正常に動作しない場合、前記レジリエンス優先モードに設定する。
【0020】
第4の態様に係る電力管理システムでは、太陽光発電装置が正常に動作しない場合、制御装置では、蓄電装置への蓄電ができないと判断し、レジリエンス優先モードに設定する。つまり、予め設定された所定の地点に対して電気自動車の走行を可能とする移動用電力が確保するため、商用電力系統からの充電が行われる。
【0021】
第5の態様に係る電力管理システムは、第4の態様に係る電力管理システムにおいて、前記建物の居住者に対してメッセージを報知する報知部を備え、前記制御装置は、前記太陽光発電装置が正常に動作しない場合、前記報知部を介してその旨を報知する。
【0022】
第5の態様に係る電力管理システムでは、建物の居住者に対してメッセージを報知する報知部を備えており、太陽光発電装置が正常に動作しない場合、当該報知部を介して当該居住者にその旨が報知される。これにより、居住者は、太陽光発電装置が正常に動作しないことを把握することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明に係る電力管理システムは、状況に応じて電気自動車を含めた建物の電力の供給先において選択の幅を広げることが可能な管理する電力管理システムを得ることが目的である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本実施形態に係る電力管理システムの構成を模式的に示す概略図である。
図2】本実施形態に係る電力管理システムにおいて建物の制御装置のハードウェア構成並びにその周辺機器との関係を示すブロック図である。
図3】本実施形態に係る電力管理システムにおいて車両制御装置のハードウェア構成並びにその周辺機器との関係を示すブロック図である。
図4】本実施形態に係る電力管理システムにおいてデータサーバのハードウェア構成を示すブロック図である。
図5】本実施形態に係る電力管理システムの機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を用いて、本実施の形態に係る電力管理システムについて説明する。
【0026】
図1に示されるように、本実施形態に係る電力管理システム10は、建物12に配置された各種機器と、建物12の敷地内に駐車された車両としての電気自動車14に搭載された各種機器と、インターネット上の情報を収集可能なデータサーバ16と、を含んで構成されている。
【0027】
具体的には、建物12側の電力管理システム10の一部を構成する機器として、太陽光発電装置18、分電装置20、蓄電装置22、建物12の近傍に配置された充放電装置24、電気自動車14に搭載されたバッテリパック(蓄電部)26と、が挙げられる。
【0028】
太陽光発電装置18は、建物12の屋根面に設置されると共に、太陽光が照射されることで発電可能とされている。そして、太陽光発電装置18で発電された電力は、分電装置20を介して、蓄電装置22、バッテリパック26及び建物12内の複数の負荷30に供給されるようになっている。なお、負荷30としては、種々の家電機器等が挙げられる。
【0029】
また、分電装置20は、制御装置32、計測部34、切替部36、電力変換部38、報知部39及び分電盤40を備えている。
【0030】
図2に示されるように、制御装置32は、CPU(Central Processing Unit)32A、ROM(Read Only Memory)32B、RAM(Random Access Memory)32C、ストレージ32D、通信I/F(Inter Face)32E及び入出力I/F32Fを含んで構成されている。そして、CPU32A、ROM32B、RAM32C、ストレージ32D、通信I/F32E及び入出力I/F32Fは、バス32Gを介して相互に通信可能に接続されている。
【0031】
CPU32Aは、中央演算処理ユニットとされており、各種プログラムの実行によって各種機器を制御し、建物12内における電力に関する制御を行っている。具体的には、CPU32Aは、ROM32Bからプログラムを読み出し、RAM32Cを作業領域としてプログラムを実行可能とされている。そして、ROM32Bに記憶された実行プログラム
【0032】
が、CPU32Aで読み出されて実行されることで、制御装置32は、後述するように、種々の機能を発揮することが可能となっている。
【0033】
ストレージ32Dは、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)を含んで構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム及び各種データが記憶されている。また、ストレージ32Dには、後述する計測部34による計測結果が一時的に記憶されるようになっている。
【0034】
通信I/F32Eは、制御装置32とネットワークN(図1参照)との接続に用いられるインターフェースとされており、データサーバ16等と通信することが可能とされている。このインターフェースには、例えば、イーサネット(登録商標)、FDDI、Wi-Fi(登録商標)等の通信規格が用いられる。また、通信I/F32Eは、無線装置を備えていてもよい。
【0035】
入出力I/F32Fは、制御装置32が、計測部34、切替部36、電力変換部38及び報知部39と通信するためのインターフェースとされている。
【0036】
一方、図1に示す計測部34は、図示しない検電器等を含んで構成されており、太陽光発電装置18で発電された電力、分電盤40を介して複数の負荷30で消費される電力、蓄電装置22に蓄積されている電力及びバッテリパック26に蓄えられた電力を計測し、これらの計測結果を計測信号として制御装置32に送信可能とされている。
【0037】
切替部36は、図示しない複数のリレーを含んで構成されており、制御装置32による制御に基づいて、太陽光発電装置18と分電盤40との接続状態、太陽光発電装置18と蓄電装置22との接続状態、太陽光発電装置18と充放電装置24との接続状態、蓄電装置22と分電盤40との接続状態並びに充放電装置24と分電盤40との接続状態を切り替え可能とされている。
【0038】
電力変換部38は、太陽光発電装置18から供給された直流電力を蓄電装置22に供給可能な直流電力に変換可能な図示しないDC/DCコンバータと、太陽光発電装置18から供給された直流電力を充放電装置24に供給可能な直流電力に変換可能な図示しないDC/DCコンバータと、太陽光発電装置18、蓄電装置22、充放電装置24から供給された直流電力を負荷30に供給可能な交流電力に変換可能な図示しないインバータとを備えている。
【0039】
報知部39は、居住者に対してメッセージを報知する機能を備えており、例えば、太陽光発電装置18が正常に動作しない場合、当該報知部39を介して居住者にその旨を報知する。なお、報知する手段としては、居住者が所持するスマートフォン等でもよい。
【0040】
分電盤40は、複数の負荷30と電力変換部38との間に介在しており、太陽光発電装置18から供給された電力は、例えば、分電盤40を介して各負荷30に供給されるようになっている。なお、分電盤40には、図示しない送電施設からも電力が供給されるようになっている。
【0041】
蓄電装置22は、図示しない複数のバッテリモジュールを含んで構成されており、切替部36及び電力変換部38を介して太陽光発電装置18から供給された電力を蓄積可能とされている。また、蓄電装置22に蓄積された電力は、太陽光発電装置18が発電できない状態において、電力変換部38及び分電盤40を介して各負荷30に供給されるようになっている。
【0042】
充放電装置24は、制御装置42及び電力変換部44を備えている。そして、制御装置42は、電気自動車14のバッテリパック26の充電時において、電力変換部44の図示しないDC/DCコンバータを制御して、分電装置20から供給された直流電力をバッテリパック26に供給可能な直流電力に変換可能とされている。
【0043】
また、制御装置42は、バッテリパック26から分電装置20への電力の供給時において、電力変換部44のDC/DCコンバータを制御して、バッテリパック26から供給された直流電力を分電装置20に供給可能な直流電力に変換可能とされている。
【0044】
次に、図1及び図5を用いて、制御装置32の機能構成について説明する。制御装置32は、図2に示すCPU32AがROM32Bに記憶された実行プログラムを読み出し、これを実行することによって、通信部46、建物電力量取得部48、充放電切替部52及びモード切替部53の集合体として機能する。
【0045】
通信部46は、ネットワークNを介して各種機器と通信可能とされており、データサーバ16及び電気自動車14の車両制御装置54と種々の情報を送受信可能とされている。
【0046】
建物電力量取得部48は、計測部34から送信される計測信号に基づいて蓄電装置22及び充放電装置24に蓄積されている蓄積電力量を取得可能とされている。そして、この蓄積電力量に基づく蓄積電力信号が、通信部46を介してデータサーバ16に送信されるようになっている。
【0047】
また、建物電力量取得部48は、計測部34による計測結果に基づき、例えば、建物12における1時間毎の消費電力情報を記憶している。さらに、建物電力量取得部48は、蓄電装置22に蓄積されている蓄積電力量が所定の値以下であるときに、通信部46を介して車両制御装置54に、蓄電装置22に蓄積されている蓄積電力量が所定の値以下であることを示す警報信号を送信するようになっている。
【0048】
充放電切替部52は、計測信号に基づいて、太陽光発電装置18で発電された電力量と複数の負荷30で消費される電力量とを比較するようになっている。そして、充放電切替部52が、太陽光発電装置18で発電された電力が、複数の負荷30で消費される電力よりも大きいと判定した場合、充放電切替部52は、切替部36を制御することで、余剰電力を蓄電装置22又は充放電装置24に供給するようになっている。
【0049】
詳しくは、充放電切替部52は、太陽光発電装置18と蓄電装置22とが接続されている第1状態と、太陽光発電装置18と充放電装置24とが接続されている第2接続状態とを切り替えることが可能とされている。
【0050】
そして、充放電切替部52は、計測部34から送信された計測信号に基づいて蓄電装置22が満充電ではないと判定した場合に、切替部36を制御することで上記第1状態に切り替えるようになっている。
【0051】
また、充放電切替部52が、計測信号に基づいて蓄電装置22が満充電であると判定した場合には、充放電切替部52は、切替部36を制御することで上記第2状態に切り替えるようになっている。
【0052】
一方、充放電切替部52が、計測信号に基づいて、太陽光発電装置18で発電された電力が、複数の負荷30で消費される電力よりも小さいと判定した場合、充放電切替部52は、切替部36を制御することで、蓄電装置22に蓄えられた電力又はバッテリパック26に蓄えられた電力を負荷30に対して供給させるようになっている。なお、本実施形態において、充放電切替部52は、蓄電装置22から負荷30への電力の供給よりも、バッテリパック26から負荷30への電力の供給を優先するようになっている。
【0053】
モード切替部53では、節約優先モード及びレジリエンス優先モードが設定可能とされている。簡単に説明すると、節約優先モードでは、電力供給エリア内におけるピーク電力を抑制するように設定されており、電力需要が多い時間帯(いわゆるピーク電力時)は蓄電された電力が負荷30に対して供給されるように設定されている。
【0054】
一方、レジリエンス優先モードでは、バッテリパック26において、予め設定された所定の地点、例えば、避難所に対して電気自動車14の走行を可能とする移動用電力を確保した状態で、当該移動用電力に対して余剰となる電力が負荷30に対して供給されるように設定されている。
【0055】
例えば、後述する気象情報取得部74による気象に関する警報や注意報等の情報により、商用電力系統による電力が供給されない状況が予測される場合、レジリエンス優先モードとされる。なお、ここでは、移動用電力として、電気自動車14が建物12と避難所の間を往復移動するために必要とされる電力が確保されるように設定されているが、避難所へ移動するために必要な往路移動用の電力に設定されてもよい。
【0056】
また、モード切替部53では、気象情報取得部74による気象情報以外にも太陽光発電装置18が正常に動作しない場合、蓄電装置22への蓄電ができないと判断され、レジリエンス優先モードに切り替える。なお、モード切替部53の初期設定では、節約優先モードに設定されている。
【0057】
ところで、図1に示す電気自動車14は、モータ等を含んで構成された図示しないパワーユニットを備えており、このパワーユニットは、バッテリパック26から供給された電力で駆動するようになっている。また、電気自動車14には、車両制御装置54が搭載されている。
【0058】
バッテリパック26は、図示しない複数のバッテリモジュールを含んで構成されており、その容量は蓄電装置22の容量よりも大きい。そして、このバッテリパック26は、電気自動車14に設けられた図示しない接続部及びこの接続部にケーブル24Aを介して充放電装置24と電気的に接続されることで、建物12側との電力の受け渡しが可能とされている。
【0059】
一方、車両制御装置54は、図3に示されるように、CPU54A、ROM54B、RAM54C、ストレージ54D、通信I/F54E及び入出力I/F54Fを含んで構成されている。また、CPU54A、ROM54B、RAM54C、ストレージ54D、通信I/F54E及び入出力I/F54Fは、バス54Gを介して相互に通信可能に接続されている。
【0060】
なお、CPU54A、ROM54B、RAM54C、ストレージ54D、通信I/F54E及び入出力I/F54Fは、上述した制御装置32を構成しているものと基本的に同様の機能を備えている。そして、ROM54Bに記憶された実行プログラムが、CPU54Aで読み出されて実行されることで、車両制御装置54は、種々の機能を発揮することが可能となっている。
【0061】
詳しくは、CPU54Aは、ROM54Bからバッテリパック26の充放電及び後述する表示装置58の制御に係る各種プログラムを読み出し、RAM54Cを作業領域として当該プログラムを実行可能とされている。
【0062】
また、通信I/F54Eは、車両制御装置54とネットワークNとの接続に用いられるインターフェースとされており、データサーバ16及び制御装置32等と通信することが可能とされている。そして、通信I/F54Eが受信した各種情報は、ストレージ54Dに一時的に記憶されるようになっている。
【0063】
入出力I/F54Fは、車両制御装置54が電気自動車14に搭載された各装置と通信するためのインターフェースとされている。そして、車両制御装置54は、入出力I/F54Fを介して後述する各装置に相互に通信可能に接続されている。
【0064】
車両制御装置54に接続される装置には、上述したバッテリパック26の図示しない制御装置、GPS(Global Positioning System)装置56及び表示装置58が挙げられる。
【0065】
バッテリパック26の制御装置は、バッテリパック26の貯留電力量情報を後述する貯留電力量取得部68から取得し、この貯留電力量情報に基づく電力残量信号を所定時間毎に車両制御装置54に送信可能とされている。
【0066】
GPS装置56は、図示しないGPS衛星からの信号を受信する図示しないアンテナを備えており、電気自動車14の現在位置を測定可能とされている。そして、GPS装置56で測定された電気自動車14の位置情報は、ストレージ54Dに一時的に記憶されるようになっている。
【0067】
表示装置58は、車両制御装置54による制御に基づき、電気自動車14の運転者(乗員)に対して種々の情報を表示可能とされている。この表示装置58には、例えば、ヘッドアップディスプレイやメーターディスプレイを採用することが可能である。
【0068】
ここで、図5を用いて車両制御装置54の機能構成について説明する。
【0069】
車両制御装置54は、通信部60、移動先設定部62、走行経路生成部64、消費電力設定部66及び貯留電力量取得部68を備えている。そして、車両制御装置54は、CPU54AがROM54Bに記憶された実行プログラムを読み出し、これを実行することによって、通信部60、移動先設定部62、走行経路生成部64、消費電力設定部66及び貯留電力量取得部68の集合体として機能する。
【0070】
通信部60は、データサーバ16及び制御装置32と種々の信号を送受信可能とされており、後述するように、これらと電力の供給に関する情報等の伝達が可能とされている。
【0071】
移動先設定部62は、データサーバ16の通信部70を介して取得された地図情報に基づき、避難所等、予め災害時(予測も含む)における移動先を設定可能としており、移動先の位置情報については、ストレージ54Dに一時的に記憶されるようになっている。
【0072】
走行経路生成部64は、移動先設定部62によって設定された移動先の位置情報及びデータサーバ16の通信部70を介して取得された地図情報から電気自動車14の走行経路に設定可能な道路情報を生成する。
【0073】
消費電力設定部66は、走行経路生成部64により生成された走行経路を電気自動車14走行することで消費される消費電力、いわゆる移動用電力を算出し設定する。制御装置32によるレジリエンス優先モードの際は、この移動用電力が確保された状態で、当該移動用電力に対して余剰となる電力が負荷30に対して供給されるようになっている。
【0074】
貯留電力量取得部68は、図示しないバッテリパック26の制御装置からバッテリパック26の貯留電力量を取得する。
【0075】
次に、図4図5を用いて、データサーバ16の構成について説明する。
【0076】
データサーバ16は、CPU16A、ROM16B、RAM16C、ストレージ16D及び通信I/F16Eを含んで構成されている。そして、CPU16A、ROM16B、RAM16C、ストレージ16D及び通信I/F16Eは、バス16Fを介して相互に通信可能に接続されている。
【0077】
なお、CPU16A、ROM16B、RAM16C、ストレージ16D及び通信I/F16Eは、上述した制御装置32を構成しているものと基本的に同様の機能を備えている。そして、ROM16Bに記憶された実行プログラムが、CPU16Aで読み出されて実行されることで、データサーバ16は、種々の機能を発揮することが可能となっている。
【0078】
また、ストレージ16Dには、建物12の制御装置32や車両制御装置54等から取得した種々の情報が記憶されるようになっている。また、ストレージ16Dには、地図情報が一時的に記憶されるようになっている。なお、上記地図情報は、所定の期間毎に更新されるようになっている。
【0079】
詳しくは、データサーバ16は、CPU16AがROM16Bに記憶された実行プログラムを読み出し、これを実行することによって、通信部70、地図情報取得部72及び気象情報取得部74の集合体として機能する。
【0080】
通信部70は、ネットワークNを介して各種機器と通信可能とされており、制御装置32及び車両制御装置54と種々の情報を送受信可能とされている。
【0081】
地図情報取得部72は、ストレージ16Dに記憶された地図情報から電気自動車14の走行経路に設定可能な道路情報を取得する。
【0082】
気象情報取得部74は、気象台における気象に関する警報や注意報等の情報が随時更新された状態で取得可能とされている。
【0083】
<本実施形態の作用及び効果>
次に、本実施形態の作用並びに効果を説明する。
【0084】
本実施形態では、図1に示されるように、本実施の形態に係る電力管理システム10は、太陽光発電装置18、蓄電装置22、充放電装置24及び制御装置32を備えている。 太陽光発電装置18は、建物12に設置されると共に太陽光で発電可能とされており、蓄電装置22は、太陽光発電装置18で発電された電力を蓄積可能としている。
【0085】
充放電装置24は、建物12側から電気自動車14に搭載されたバッテリパック26への電力の供給又は当該バッテリパック26から当該建物12側の負荷への供給を可能としている。
【0086】
制御装置32では、モード切替部53が設けられており、節約優先モード又はレジリエンス優先モードの選択が可能とされ、建物12内の電力が制御される。
【0087】
節約優先モードでは、電力供給エリア内におけるピーク電力を抑制するように設定されている。例えば、電力需要が少ない時間帯では蓄電装置22等により電力が蓄電され、電力需要が多い時間帯では、当該蓄電装置22等に蓄電された電力が建物12側の負荷30へ供給されることによって、電気料金を削減することが可能となる。
【0088】
一方、レジリエンス優先モードでは、例えば、避難所に対して電気自動車14の走行を可能とする移動用電力が確保される。レジリエンス優先モードでは、停電等により商用電力系統による電力が供給されない状況が想定され、電気自動車14のバッテリパック26において、移動用電力が常に確保された状態で、それ以外の電力が建物12側の負荷30への電力として供給可能とされる。
【0089】
つまり、本実施形態では、状況に応じて、必要最小限の電力が確保された状態で建物12内で避難する在宅避難以外に避難所へ移動するという選択肢を得ることができる。
【0090】
なお、モード切替部53の初期設定では、節約優先モードが選択されている。これにより、通常時は、電力供給エリア内におけるピーク電力を抑制するように設定されている。
【0091】
ところで、本実施形態では、例えば、データサーバ16において気象情報取得部74を備えている。当該気象情報取得部74によって気象情報が取得される。制御装置32は、当該気象情報取得部74から取得された気象情報に基づいて停電が予測された場合、レジリエンス優先モードに設定する。
【0092】
つまり、本実施形態では、予め設定された避難所に対して電気自動車14の走行を可能とする移動用電力が確保された状態で、それ以外の電力が建物12側の負荷30への電力として供給可能とされる。したがって、本実施形態では、建物12の居住者の判断によって、いつでも予め設定された避難所への移動が可能となる。
【0093】
例えば、台風・大雪等の接近時は気象警報と連動させ、1週間前ぐらいから自動的にモードが節約優先モードからレジリエンス優先モードに切り替えられるように設定されてもよい。
【0094】
節約優先モードでは、電力供給エリア内におけるピーク電力を抑制するように設定されている。つまり、太陽光発電装置18で発電された電力、蓄電装置22に蓄電された電力及び電気自動車14のバッテリパック26に充電された電力は、建物12側の負荷30に供給され、建物12と避難所の間を電気自動車14が往復するために必要とされる電力(移動用電力)を考慮せず電力は使用される。
【0095】
このような節約優先モードにおいて、気象情報取得部74により気象に関して台風や大雪等による警報や注意報等の情報が取得されると、商用電力系統による電力が供給されない状況が予測される。この場合、モード切替部53では、節約優先モードからレジリエンス優先モードに切り替えられる。
【0096】
レジリエンス優先モードでは、移動用電力を確保した状態で、バッテリパック26から負荷30に対して電力が供給可能とされる。台風や大雪の場合、予め予測ができるため、いつでも避難所への避難が可能となるように準備しておくことができる。
【0097】
また、レジリエンス優先モードでは、不測の事態を考慮する必要があるため、電力供給エリア内におけるピーク電力の抑制に関係なく、蓄電装置22及びバッテリパック26に対して、必要と判断されれば商用電力系統からの充電が行われる。例えば、子供、高齢者等、世帯構成によっては在宅避難を選択する可能性があるため、在宅避難が可能となるよう電力を確保しておく。
【0098】
一方、地震、電力網異常等、予測不能な事態により停電が発生した場合、図1に示す計測部34によりバッテリパック26に貯留された貯留電力量が計測される。バッテリパック26に貯留された貯留電力が、移動用電力よりも少ない場合(貯留電力<移動用電力)、在宅避難が推奨される。
【0099】
また、貯留電力が移動用電力よりも多い場合(貯留電力>移動用電力)、避難所への移動が可能とされる。これらの情報に基づき、居住者は避難所へ避難するか在宅で避難するかを正しく選択することが可能となる。
【0100】
以上のように、レジリエンス優先モードでは、気象情報取得部74による気象に関する警報や注意報等の情報により、商用電力系統による電力が供給されない状況が予測されると、移動用電力を確保した状態で、バッテリパック26から負荷30に対して電力が供給可能とされる。台風や大雪の場合、予め予測ができるため、いつでも避難所への避難が可能となるように準備しておくことができる。
【0101】
また、本実施形態では、太陽光発電装置18が正常に動作しない場合、制御装置32では、蓄電装置22への蓄電ができないと判断し、レジリエンス優先モードに設定する。つまり、予め設定された避難所に対して電気自動車14の走行を可能とする移動用電力が確保された状態で、それ以外の余剰電力が建物12側の負荷への電力として供給可能とされる。
【0102】
報知部39は、居住者に対してメッセージを報知する機能を備えており、例えば、太陽光発電装置18が正常に動作しない場合、当該報知部39を介して居住者にその旨を報知する。これにより、居住者は、太陽光発電装置18が正常に動作しないことを把握することができる。なお、報知部39は、太陽光発電装置18が正常に動作しない旨の報知以外にも居住者に対して必要とされるメッセージを報知することが可能とされる。
【0103】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【0104】
<付記>
なお、下記の構成を適宜組み合わせて本発明に係る電力管理システムとしてもよい。
【0105】
(構成1)
電力管理システムは、建物に設置されると共に太陽光で発電可能な太陽光発電装置と、 前記太陽光発電装置で発電された電力を蓄積可能な蓄電装置と、前記建物側から電気自動車に搭載された蓄電部への電力の供給又は当該蓄電部から当該建物側の負荷への供給が可能な充放電装置と、電力供給エリア内におけるピーク電力を抑制する節約優先モード又は予め設定された所定の地点に対して前記電気自動車の走行を可能とする移動用電力を確保しておくレジリエンス優先モードに選択可能なモード切替部が設けられ、当該建物内の電力を制御する制御装置と、を備えている。
【0106】
(構成2)
電力管理システムは、前記制御装置の初期設定では、前記節約優先モードが選択されている。
【0107】
(構成3)
電力管理システムは、気象情報を取得する気象情報取得部を備え、前記制御装置は、前記気象情報取得部から取得された気象情報に基づいて停電が予測された場合、前記レジリエンス優先モードに設定する。
【0108】
(構成4)
電力管理システムは、前記制御装置は、前記太陽光発電装置が正常に動作しない場合、前記レジリエンス優先モードに設定する。
【0109】
(構成5)
電力管理システムは、前記建物の居住者に対してメッセージを報知する報知部を備え、前記制御装置は、前記太陽光発電装置が正常に動作しない場合、前記報知部を介してその旨を報知する。
【符号の説明】
【0110】
10 電力管理システム
12 建物
14 電気自動車
18 太陽光発電装置
20 分電装置
22 蓄電装置
24 充放電装置
26 バッテリパック(蓄電部)
30 負荷
32 制御装置
39 報知部
53 モード切替部
74 気象情報取得部
図1
図2
図3
図4
図5