(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114447
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】給電設備
(51)【国際特許分類】
H02J 50/10 20160101AFI20240816BHJP
B60L 13/00 20060101ALI20240816BHJP
B60M 7/00 20060101ALI20240816BHJP
B60L 5/00 20060101ALN20240816BHJP
【FI】
H02J50/10
B60L13/00 E
B60M7/00 X
B60L5/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020227
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】野間 恒星
【テーマコード(参考)】
5H105
5H125
【Fターム(参考)】
5H105BA02
5H105BB07
5H105CC02
5H105DD10
5H105EE14
5H125AA11
5H125AC04
(57)【要約】
【課題】給電線又はその周辺に生じた問題の発生個所の特定の迅速化を図り易い給電設備が望まれる。
【解決手段】移動体の移動経路に沿って配置されて移動体に対して非接触で電力を供給する給電線2と、給電線2と共に移動経路に沿って配置された感熱ユニット3と、を備えた給電設備であって、給電線2は、交流電流が流れる導体線21を複数束ねた導体線束22と、導体線束22の周囲を覆う絶縁被覆23と、を備え、感熱ユニット3は、給電線2における絶縁被覆23の内側に内蔵され、導体線束22と共に給電線2の延在方向に沿って延在する第1感熱線31と、給電線2に隣接する位置に配置され、給電線2と共に給電線2の延在方向に沿って延在する第2感熱線32と、を備えている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の移動経路に沿って配置されて前記移動体に対して非接触で電力を供給する給電線と、前記給電線と共に前記移動経路に沿って配置された感熱ユニットと、を備えた給電設備であって、
前記給電線は、交流電流が流れる導体線を複数束ねた導体線束と、前記導体線束の周囲を覆う絶縁被覆と、を備え、
前記感熱ユニットは、前記給電線における前記絶縁被覆の内側に内蔵され、前記導体線束と共に前記給電線の延在方向に沿って延在する第1感熱線と、前記給電線に隣接する位置に配置され、前記給電線と共に前記給電線の前記延在方向に沿って延在する第2感熱線と、を備えた、給電設備。
【請求項2】
前記第1感熱線は、前記導体線束に囲まれた前記給電線の中心部に配置され、
前記第2感熱線は、前記給電線の前記絶縁被覆に接するように配置されている、請求項1に記載の給電設備。
【請求項3】
前記移動経路に沿って配置されていると共に前記給電線及び前記第2感熱線を支持する支持部材を更に備え、
前記支持部材は、前記給電線を保持する第1保持部と、前記第2感熱線を保持する第2保持部とを備え、
前記第2保持部に前記第2感熱線が配置された状態で、前記第1保持部に前記給電線を配置することで、前記第2感熱線が脱落しないように前記第2保持部に保持される、請求項1に記載の給電設備。
【請求項4】
前記第1保持部は、前記給電線が嵌合する凹溝状に形成され、
前記第2保持部は、前記第2感熱線が収容される凹溝状であって、前記第1保持部の内面に開口するように形成されている、請求項3に記載の給電設備。
【請求項5】
前記第1感熱線による異常発熱の検知を行う第1検知部と、前記第2感熱線による異常発熱の検知を行う第2検知部と、前記給電線に電力を供給する交流電源を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記第1検知部及び前記第2検知部のいずれか一方により異常発熱を検知した場合に警報を出力し、前記第1検知部及び前記第2検知部の双方により異常発熱を検知した場合に前記交流電源による前記給電線への電力供給を停止する、請求項1から4のいずれか一項に記載の給電設備。
【請求項6】
複数の前記給電線が、端子台を介して互いに電気的に接続され、前記第1感熱線及び前記第2感熱線の少なくとも一方である対象感熱線が、前記端子台に接するように配置された端子台対応部を備え、
前記端子台対応部は、前記対象感熱線における前記給電線の前記絶縁被覆に沿う部分に対して、コネクタを介して着脱自在に接続されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の給電設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の移動経路に沿って配置されて前記移動体に対して非接触で電力を供給する給電線と、前記給電線と共に前記移動経路に沿って配置された感熱ユニットと、を備えた給電設備に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特開平10-201006号公報(特許文献1)には、このような給電設備に関する技術が開示されている。以下、背景技術の説明において括弧内に示す符号は特許文献1のものである。
【0003】
特許文献1の給電設備(無接触給電設備)は、移動体(搬送用車体V)の走行経路に沿って配置された給電線(誘導線路14)と、給電線と共に走行経路に沿って配置された感熱線(15)とを備えている。給電線は、移動体に対して非接触で電力を給電する。また、感熱線(15)は、周囲の温度が一定温度に達すると、感熱線(15)の内部において、絶縁体(18)が軟化し、撚り合わされた一対の導線(17)が接触して短絡する。そして、感熱線(15)が短絡すると、給電線への電力供給が停止されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のような給電設備では、感熱線が短絡する要因として、給電線又は給電線の周辺に、異常発熱が発生したことが考えられる。ここで、給電線の異常発熱の原因としては、例えば、給電装置の過負荷に起因する過電流や短絡による給電線の温度上昇が挙げられる。この場合、給電設備に何等かの問題が生じている可能性が高い。また、給電線の周辺での異常発熱の原因としては、例えば、給電線の周辺に存在する金属が、給電線の周囲に発生する磁界の影響を受けて温度上昇したこと等が挙げられる。このようなことは、例えば、給電線の周辺に、作業者が誤って金属製の工具を置き忘れた場合等に生じ得る。いずれにしても、給電線又は給電線の周辺の異常発熱が検知された場合には、問題の発生箇所を迅速に特定し、適切な対処を速やかに行うことが好ましい。しかし、上記給電設備では、感熱線は、給電線の外周面に接するように給電線の延在方向に沿って配置されている。このような感熱線の配置では、当該感熱線により異常発熱が検知された場合、当該異常発熱が、給電線の温度上昇によるものか、或いは、給電線の周辺の温度上昇によるものかを特定することが困難であり、そのため、問題の発生個所の特定に時間を要する場合があった。
【0006】
そこで、給電線又はその周辺に生じた問題の発生個所の特定の迅速化を図り易い給電設備が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る給電設備は、移動体の移動経路に沿って配置されて前記移動体に対して非接触で電力を供給する給電線と、前記給電線と共に前記移動経路に沿って配置された感熱ユニットと、を備えた給電設備であって、
前記給電線は、交流電流が流れる導体線を複数束ねた導体線束と、前記導体線束の周囲を覆う絶縁被覆と、を備え、
前記感熱ユニットは、前記給電線における前記絶縁被覆の内側に内蔵され、前記導体線束と共に前記給電線の延在方向に沿って延在する第1感熱線と、前記給電線に隣接する位置に配置され、前記給電線と共に前記給電線の前記延在方向に沿って延在する第2感熱線と、を備えている。
【0008】
本構成によれば、第1感熱線により異常発熱が検知され、第2感熱線により異常発熱が検知されていない場合には、給電線の内部に問題が生じている可能性が高いと推定でき、第2感熱線により異常発熱が検知され、第1感熱線により異常発熱が検知されていない場合には、給電線の外部に問題が生じている可能性が高いと推定できる。また、第1感熱線と第2感熱線との双方により異常発熱が検知された場合には、給電線又はその周辺に比較的大きな問題が生じている可能性が高いと推定できる。
このように本構成によれば、第1感熱線と第2感熱線との双方による検知結果を参照することにより、給電線又はその周辺における問題の発生個所の特定の迅速化を図り易い。
【0009】
給電設備のさらなる特徴と利点は、図面を参照して説明する例示的且つ非限定的な実施形態についての以下の記載から明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】支持部材、給電線、及び感熱ユニットの断面図
【
図4】端子台及び端子台対応部を模式的に表した平面図
【
図7】別実施形態における支持部材、給電線、及び感熱ユニットの断面図
【
図8】別実施形態における支持部材、給電線、及び感熱ユニットの断面図
【
図9】別実施形態における端子台及び端子台対応部を模式的に表した平面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、物品搬送設備において物品搬送車に電力を供給する形態を例として、給電設備の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1及び
図2に示すように、物品搬送設備200における物品搬送車である移動体5は、走行経路である移動経路51に沿って配置された走行レール52上を走行する。
図1に示すように、給電設備1は、移動体5の移動経路51に沿って配置されて移動体5に対して非接触で電力を供給する給電線2と、給電線2と共に移動経路51に沿って配置された感熱ユニット3と、を備えている。
【0012】
図2に示すように、例えば移動体5は、天井から吊り下げ支持されて配置された一対の走行レール52に案内されて移動経路51に沿って走行する走行部59と、走行レール52の下方に位置して走行部59に吊り下げ支持された搬送車本体53と、移動経路51に沿って配設された給電線2から非接触で駆動用電力を受電する受電装置40とを備えている。搬送車本体53には、搬送車本体53に昇降自在に備えられて物品を吊り下げ状態で支持する物品支持部(不図示)が備えられている。移動体5による搬送対象の物品は、例えば、半導体基板を収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)や、ディスプレイの材料となるガラス基板等である。
【0013】
走行部59には、
図2に示すように、電動式の駆動モータ54にて回転駆動される一対の走行輪55が備えられている。走行輪55は、走行レール52のそれぞれの上面にて形成される走行面を転動する。また、走行部59には、上下方向に沿う軸心周り(上下軸心周り)で自由回転する一対の案内輪56が、一対の走行レール52における内側面に当接する状態で備えられている。また、走行部59は、走行用の駆動モータ54やその駆動回路等を備えて構成されており、移動体5を走行レール52に沿って走行させる。搬送車本体53には、物品支持部を昇降させるアクチュエータ、物品を把持する把持部を駆動するアクチュエータ等、及び、それらの駆動回路等が備えられている。
【0014】
これらの駆動モータ54や、種々のアクチュエータ、これらを駆動する駆動回路等への電力は、給電線2から非接触で受電装置40に供給される。受電装置40を介して移動体5に駆動用電力を供給する給電線2は、本実施形態では、受電装置40に対して水平面に沿うと共に移動経路51沿う方向に直交する経路幅方向(以下、単に「経路幅方向」と称する。)の両側に配置されている。
【0015】
受電装置40は、本実施形態では、HID(High Efficiency Inductive Power Distribution Technology)と称されるワイヤレス給電技術を用いて、移動体5に駆動用電力を供給する。具体的には、誘導線である給電線2に高周波電流を流し、給電線2の周囲に磁界を発生させる。受電装置40は、ピックアップコイル40aや磁性体コアを備えて構成されており、ピックアップコイル40aは磁界からの電磁誘導によって誘起される。誘起された交流の電力は、全波整流回路などの整流回路や、平滑コンデンサ等を備えた受電回路(不図示)により直流に変換され、アクチュエータや駆動回路に供給される。
【0016】
なお、本明細書では、移動体5としていわゆる天井搬送車である物品搬送車を例示したが、当然ながら移動体5は地上を走行する物品搬送車であってもよく、シャトルラックや、スタッカークレーンの走行台車等であってもよい。移動体5は、移動経路51に沿って配置された給電線2から電力を供給されて動作するものであれば、どのような形態であってもよい。勿論、移動体5は物品搬送車に限るものではない。
【0017】
図3に示すように、給電線2は、交流電流が流れる導体線21を複数束ねた導体線束22と、導体線束22の周囲を覆う絶縁被覆23と、を備えている。本実施形態では、これら複数の導体線21は、非接触で電力供給を行う誘導線である。そのため、絶縁被覆23内の導体線束22を構成する全ての導体線21に、同じ向きの電流が流れるように構成されている。ここで、複数の導体線21のそれぞれは、導体線本体21a(芯線)と、絶縁体により形成されて導体線本体21aを覆う導体線被覆21bとを備えている。給電線2の内部における、これらの導体線21の配置については、後述する。
【0018】
図1から
図3に示すように、感熱ユニット3は、給電線2における絶縁被覆23の内側に内蔵され、導体線束22と共に給電線2の延在方向に沿って延在する第1感熱線31と、給電線2に隣接する位置に配置され、給電線2と共に給電線2の延在方向に沿って延在する第2感熱線32と、を備えている。本実施形態では、
図1に示すように、第1感熱線31は、給電設備1における給電線2の全域に配置されている。また、第2感熱線32は、給電設備1における給電線2の配置領域の全域に配置されている。
図1の例では、給電設備1において、複数の給電線2が後述する端子台10を介して連結されている。第1感熱線31及び第2感熱線32は、連結された複数の給電線2に沿うように配置されている。
【0019】
図3に示すように、本例では、第1感熱線31と第2感熱線32とは、互いに同じ構造である。第1感熱線31は、予め設定された温度で軟化する感熱線絶縁体33bで覆われた一対の導線33を備えている。1本の導線33は、導体により形成された芯線33aが感熱線絶縁体33bで被覆された被覆導体線として構成されている。そして、2本の導線33を捻っていわゆるツイストペアとした撚り線を更に感熱線被覆材35によって被覆することで一対の導線33を備えた第1感熱線31が形成されている。一対の導線33は、感熱線絶縁体33bが軟化すると導体により形成された芯線33a同士が互いに接触して短絡するように構成されている。なお、感熱線絶縁体33bが軟化しても一対の導線33を備えた第1感熱線31は感熱線被覆材35によって被覆されているため、芯線33aが外部に露出することは抑制されている。第2感熱線32も、第1感熱線31の上記構成と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0020】
図3に示すように、第1感熱線31は、導体線束22に囲まれた給電線2の中心部に配置されている。具体的には、第1感熱線31は、給電線2の中心部において、複数の導体線21に囲まれるように配置されている。そして、複数の導体線21で構成される導体線束22と、第1感熱線31との双方の周囲を覆うように、給電線2の絶縁被覆23が配置されている。図示の例では、6つの導体線21がまとまって1つの導体線束22として給電線2の内部に配置されている。そして、第1感熱線31が、6つの導体線21に囲まれるように配置されている。また、
図2に示すように、第2感熱線32は、給電線2の絶縁被覆23に接するように配置されている。本実施形態では、
図1に示すように、第2感熱線32は、給電線2に対して、経路幅方向における受電装置40とは反対の側に配置されている。そして、第2感熱線32の感熱線被覆材35が、給電線2の絶縁被覆23に接触した状態になっている。
図1の例では、受電装置40に対して経路幅方向の両側に配置された一対の給電線2に対して、経路幅方向の両外側に第2感熱線32がそれぞれ配置されている。また、第2感熱線32は、上下方向の位置が、給電線2の中心部よりも下側になるように配置されている。
【0021】
図2及び
図3に示すように、給電設備1は、移動経路51に沿って配置されていると共に給電線2及び第2感熱線32を支持する支持部材4を更に備えている。支持部材4は、一対の走行レール52のそれぞれに沿って複数、配置されており、給電線2及び第2感熱線32を下側から支持している。上記のとおり、給電線2には、第1感熱線31が内蔵されている。そのため、支持部材4は、第1感熱線31及び第2感熱線32(すなわち、感熱ユニット3)を下側から支持しているともいえる。
図2の例では、支持部材4は、経路幅方向に沿う姿勢で、走行レール52に支持されている。また、支持部材4は、受電装置40と走行レール52との間に配置されている。このような支持部材4は、一対の走行レール52に対応するように一対設けられている。そして、一対の支持部材4は、移動体5の移動経路51に沿って、規定の間隔毎に複数設けられている。
【0022】
図3に示すように、本実施形態では、支持部材4は、給電線2を保持する第1保持部41と、第2感熱線32を保持する第2保持部42とを備えている。第1保持部41と第2保持部42とは、支持部材4における経路幅方向の内側(受電装置40が配置されている側)の端部(先端部)に設けられている。また、本実施形態では、第2保持部42に第2感熱線32が配置された状態で、第1保持部41に給電線2を配置することで、第2感熱線32が脱落しないように第2保持部42に保持される。本例では、第1保持部41は、第2保持部42よりも経路幅方向の内側(先端側)に設けられている。また、第1保持部41と第2保持部42とは、隣り合うように配置されている。
【0023】
本実施形態では、
図3に示すように、第1保持部41は、給電線2が嵌合する凹溝状に形成されている。図示の例では、支持部材4の先端部の一部が移動経路51に沿う方向に貫通すると共に、経路幅方向の内側及び上側に開口するように切り欠かれており、これにより凹溝状の第1保持部41が形成されている。そして、給電線2は、第1保持部41の開口部分から押し込まれることで、第1保持部41の凹溝状部分に嵌合する。また、第2保持部42は、第2感熱線32が収容される凹溝状であって、第1保持部41の内面41aに開口するように形成されている。図示の例では、第2保持部42は、支持部材4において、第1保持部41に対して経路幅方向の外側に隣接する部分が、移動経路51に沿う方向に貫通すると共に、第1保持部41の内面41aに開口するように切り欠かれており、これにより凹溝状の第2保持部42が形成されている。そして、第2感熱線32は、第1保持部41の内面41aに開口した部分から押し込まれることで、第2保持部42の凹溝状部分に嵌合する。ここでは、第2感熱線32を第2保持部42に装着してから、給電線2を第1保持部41に装着することで、装着後の第2感熱線32が、支持部材4(ここでは、第2保持部42を構成する部分)と、第1保持部41に保持された状態の給電線2とに囲まれる。このようにして、第2感熱線32が、第2保持部42から抜け落ちてしまうことを回避している。図示の例では、第1保持部41と第2保持部42とのそれぞれの形状は、給電線2や第2感熱線32の外周の形状に沿うように形成されている。なお、第1保持部41や第2保持部42を構成する凹溝の断面形状は、
図3に示すような曲線状ではなく、折れ線状であってもよい。
【0024】
なお、物品搬送設備200の規模が大きい場合などでは、当然ながら給電設備1の規模も大きくなり、例えば、複数の給電線2を互いに連結して使用することがあり得る。また、給電線2を制御盤等の配線に接続して使用することも有り得る。このような場合には、本実施形態では、
図1及び
図4に示すように、複数の給電線2が、端子台10を介して互いに電気的に接続される。そして、
図4に示すように、給電設備1は、第1感熱線31及び第2感熱線32の少なくとも一方である対象感熱線9が、端子台10に接するように配置された端子台対応部91を備えている。本例では、第1感熱線31が、端子台対応部91を備えている。すなわち、本例では、対象感熱線9は、第1感熱線31である。ここで、端子台対応部91は、対象感熱線9における給電線2の絶縁被覆23に沿う部分に対して、コネクタ92を介して着脱自在に接続されている。本例では、端子台対応部91は、第1感熱線31における、給電線2の絶縁被覆23の内側に内蔵された部分に対して、コネクタ92を介して着脱自在に接続されている。
【0025】
本例では、
図4に示すように、第1感熱線31の端子台対応部91は、1つの端子台10に対応するように独立して形成されている。端子台対応部91は、端子台10を介して電気的に接続される複数の給電線2に内蔵されているそれぞれの第1感熱線31同士を、コネクタ92を介して電気的に接続する。この端子台対応部91は、第1感熱線31と構造は同じである。
図4の例では、端子台10における端子台対応部91の配置を模式的に示している。この一例では、端子台10の金属部分及びその周辺に沿うように、複数(ここでは2つ)の端子台対応部91が配置されている。図示の例では、端子台10を挟んで、給電線2が、2本ずつ配置されている。そして、各端子台対応部91は、端子台10を挟んで向かい合う第1感熱線31同士(給電線2に内蔵されている第1感熱線31同士)を、接続している。具体的には、給電線2から引き剥がされて剥き出しになった第1感熱線31の端部と、端子台対応部91との一端部とが、コネクタ92を介して接続されている。そして、当該給電線2と端子台10を介して接続された別の給電線2(ここでは、向かい合う給電線2)から引き剥がされて剥き出しになった第1感熱線31の端部と、端子台対応部91の他端部とが、コネクタ92を介して接続されている。そして、2本の端子台対応部91が、経路幅方向に分かれて、端子台10の金属部分及びその周辺に沿うように配置されている。このように、端子台対応部91を設けることで、端子台10やその周辺に生じた異常発熱を検知することが可能になる。
【0026】
なお、端子台対応部91を端子台10に配置する場合には、結束バンド等を用いて、端子台対応部91を端子台10に縛り付けるようにしてもよい。このような場合では、第1感熱線31のうちの端子台対応部91については、端子台10に支持され、それ以外の部分(ここでは、給電線2の絶縁被覆23の内側に内蔵された部分)については、給電線2を介して支持部材4に支持される。また、
図4では、第2感熱線32の配置を模式的に示している(
図4の1点鎖線)。この第2感熱線32は、端子台10とは無関係に、支持部材4に支持された状態で、移動経路51に沿って配置されている。
【0027】
本実施形態では、
図1及び
図5に示すように、給電設備1は、第1感熱線31による異常発熱の検知を行う第1検知部6と、第2感熱線32による異常発熱の検知を行う第2検知部7と、給電線2に電力を供給する交流電源13を制御する制御部8と、を備えている。また、給電設備1は、報知部14を更に備えている。
【0028】
第1検知部6は、第1感熱線31が通電されている状態で、第1感熱線31の短絡が発生したことを検出することによって、給電線2の異常(温度上昇)を検出することができる。また、第2検知部7は、第2感熱線32が通電されている状態で、第2感熱線32の短絡が発生したことを検出することによって、給電線2及び給電線2の周辺の異常(温度上昇)を検出することができる。なお、図示はしていないが、給電設備1は、第1感熱線31及び第2感熱線32に電力を供給するための電源を有している。この電源は、第1感熱線31及び第2感熱線32の双方に対応した単一の電源であってもよい。また、第1感熱線31及び第2感熱線32のそれぞれに対応した複数の電源が備えられていてもよい。
【0029】
制御部8は、第1検知部6、第2検知部7による検出結果に基づいて、交流電源13や報知部14に対する異常時制御を実行する。制御部8は、移動体5の走行制御等を行う物品搬送設備200が備える制御装置(不図示)に設けられていてもよく、給電設備1が備える制御装置とされていてもよい。本実施形態では、制御部8は、第1検知部6及び第2検知部7のいずれか一方により異常発熱を検知した場合に警報を出力し、第1検知部6及び第2検知部7の双方により異常発熱を検知した場合に交流電源13による給電線2への電力供給を停止する。すなわち、制御部8は、異常時制御として、警報を出力するように報知部14を制御する警報制御と、給電線2への電力供給を停止するように交流電源13を制御する停止制御と、を実行可能である。
【0030】
図6に示すように、制御部8は、第1感熱線31の短絡を第1検知部6が検知したと判定した場合には(S01:Yes)、第2感熱線32の短絡を第2検知部7が検知したか否かを判定する(S02)。そして、制御部8は、第2感熱線32の短絡を第2検知部7が検知したと判定した場合には(S02:Yes)、停止制御を実行する。これにより、移動体5の移動も停止される。また、制御部8は、第2感熱線32の短絡を第2検知部7が検知していないと判定した場合には(S02:Nо)、警報制御を実行する(S05)。この警報制御としては、例えば、物品搬送設備200で作業をする作業者が携帯する端末や、物品搬送設備200に設けられた制御コンピュータの表示器などに警報を表示してもよいし、警告音としてブザーや音声を出力するようにしてもよい。また、警報として光を発するようにしてもよく、表示器への表示や音、光等を組み合わせて報知するようにしてもよい。
【0031】
制御部8は、第1感熱線31の短絡を第1検知部6が検知していないと判定した場合には(S01:Nо)、第2感熱線32の短絡を第2検知部7が検知したか否かを判定し(S04)、第2感熱線32の短絡を第2検知部7が検知した場合には(S04:Yes)、警報制御を実行する。なお、
図6に示す例とは異なり、第1感熱線31の短絡を第1検知部6が検知したか否かの判定よりも前に、第2感熱線32の短絡を第2検知部7が検知したか否かの判定を行ってもよく、或いは、これら2つの判定を並行して行ってもよい。
【0032】
〔その他の実施形態〕
次に、給電設備のその他の実施形態について説明する。
【0033】
(1)上記の実施形態では、
図1に示すように、給電線2の全域に、感熱ユニット3(第1感熱線31、第2感熱線32)が配置されている構成を例として説明したが、これには限定されない。例えば、給電線2の一部の領域に、感熱ユニット3が配置されるようにしてもよい。また、複数の給電線2を端子台10で電気的に接続した場合には、互いに接続された複数の給電線2の全域に感熱ユニット3を配置してもよいし、端子台10を含む規定の領域にのみ、感熱ユニット3を配置してもよい。このように、感熱ユニット3を配置する範囲は、適宜変更することができる。
【0034】
(2)上記の実施形態では、第1感熱線31は、導体線束22に囲まれた給電線2の中心部に配置され、第2感熱線32は、給電線2の絶縁被覆23に接するように配置されている構成を例として説明したが、これには限定されない。第1感熱線31の給電線2における位置は、適宜変更可能である。このような例を
図7に示している。
図7の一例では、第1感熱線31は、給電線2の絶縁被覆23に対し、給電線2の内部から接するように配置されている。図示の例では、第1感熱線31は、導体線束22と絶縁被覆23との間に配置されている。このような場合、第1感熱線31は、第2感熱線32からできるだけ離れるように配置すると好適である。また、第2感熱線32の位置も、適宜変更可能である。このような例を
図8に示している。
図8の一例では、第2感熱線32は、給電線2の絶縁被覆23に接触せずに、離間するように配置されている。そして、支持部材4の第2保持部42についても、第2感熱線32の位置に応じて、凹溝形状を変更することができる。
【0035】
(3)上記の実施形態では、第2保持部42に第2感熱線32が配置された状態で、第1保持部41に給電線2を配置することで、第2感熱線32が脱落しないように第2保持部42に保持される構成を例として説明したが、これには限定されない。例えば、給電線2を保持する第1保持部41が設けられる支持部材と、第2感熱線32を保持する第2保持部42が設けられる支持部材とを、それぞれ別体のものとすることもできる。
【0036】
(4)上記の実施形態では、第1保持部41は、給電線2が嵌合する凹溝状に形成され、第2保持部42は、第2感熱線32が収容される凹溝状に形成されている構成を例として説明した。しかしこのような例に限定されることなく、第1保持部41と第2保持部42とのそれぞれの形状は、適宜変更できると好適である。
【0037】
(5)上記の実施形態では、制御部8は、第1検知部6及び第2検知部7のいずれか一方により異常発熱を検知した場合に警報を出力し、第1検知部6及び第2検知部7の双方により異常発熱を検知した場合に交流電源13による給電線2への電力供給を停止する構成を例として説明したが、これには限定されない。例えば、第1検知部6及び第2検知部7のいずれか一方により異常発熱を検知した場合に、交流電源13による給電線2への電力供給を停止するように制御することもできる。また、例えば、第1検知部6及び第2検知部7のうちの少なくとも第1検知部6により異常発熱を検知した場合には、交流電源13による給電線2への電力供給を停止し、第1検知部6及び第2検知部7のうちの第2検知部7のみにより異常発熱を検知した場合には、警報を出力する構成とすることもできる。
【0038】
(6)上記の実施形態では、給電設備1は、第1感熱線31である対象感熱線9が、端子台10に接するように配置された端子台対応部91を備えている構成を例として説明したが、これには限定されない。第2感熱線32を対象感熱線9として第2感熱線32が、端子台対応部91を備えていてもよい。このような一例を
図9に示している。
図9に示すように、第2感熱線32の端子台対応部91は、1つの端子台10に対応するように独立して形成されている。端子台対応部91は、第2感熱線32における、給電線2の絶縁被覆23の外側で絶縁被覆23に沿って配置された部分に対して、コネクタ92を介して着脱自在に接続されている。この端子台対応部91は、第2感熱線32と構造は同じである。この一例では、端子台10の金属部分及びその周辺に沿うように複数(ここでは、2つ)の端子台対応部91が配置されている。図示の例では、端子台10を挟んで、第2感熱線32が2本ずつ配置されている。そして、各端子台対応部91は、端子台10を挟んで向かい合う第2感熱線32同士(給電線2に沿って配置されている第2感熱線32同士)を、接続している。端子台10は、コネクタ92を介して、これらの第2感熱線32に接続されている。なお、端子台10を挟んで向かい合う給電線2に内蔵された第1感熱線31同士は、例えば、コネクタ等を介して、接続用の別の第1感熱線31によって電気的に接続されている。
図9では、端子台10を挟んで向かい合う第1感熱線31同士が電気的に接続されている状態を、図面上の端子台対応部91に重複しない位置に模式的に示している(
図9の一点鎖線)。
【0039】
(7)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用すること(その他の実施形態として説明した実施形態同士の組み合わせを含む)も可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0040】
〔上記実施形態の概要〕
以下、上記において説明した給電設備の概要について説明する。
【0041】
本開示に係る給電設備は、移動体の移動経路に沿って配置されて前記移動体に対して非接触で電力を供給する給電線と、前記給電線と共に前記移動経路に沿って配置された感熱ユニットと、を備えた給電設備であって、
前記給電線は、交流電流が流れる導体線を複数束ねた導体線束と、前記導体線束の周囲を覆う絶縁被覆と、を備え、
前記感熱ユニットは、前記給電線における前記絶縁被覆の内側に内蔵され、前記導体線束と共に前記給電線の延在方向に沿って延在する第1感熱線と、前記給電線に隣接する位置に配置され、前記給電線と共に前記給電線の前記延在方向に沿って延在する第2感熱線と、を備えている。
【0042】
本構成によれば、第1感熱線により異常発熱が検知され、第2感熱線により異常発熱が検知されていない場合には、給電線の内部に問題が生じている可能性が高いと推定でき、第2感熱線により異常発熱が検知され、第1感熱線により異常発熱が検知されていない場合には、給電線の外部に問題が生じている可能性が高いと推定できる。また、第1感熱線と第2感熱線との双方により異常発熱が検知された場合には、給電線又はその周辺に比較的大きな問題が生じている可能性が高いと推定できる。
このように本構成によれば、第1感熱線と第2感熱線との双方による検知結果を参照することにより、給電線又はその周辺における問題の発生個所の特定の迅速化を図り易い。
【0043】
ここで、前記第1感熱線は、前記導体線束に囲まれた前記給電線の中心部に配置され、
前記第2感熱線は、前記給電線の前記絶縁被覆に接するように配置されていると好適である。
【0044】
本構成によれば、第1感熱線により給電線の内部の異常発熱を適切に検知することができると共に、第2感熱線により給電線の表面の異常発熱を適切に検知することができる。
従って、給電線の内部及びその周辺における問題の発生を適切に検知し易い。
【0045】
また、前記移動経路に沿って配置されていると共に前記給電線及び前記第2感熱線を支持する支持部材を更に備え、
前記支持部材は、前記給電線を保持する第1保持部と、前記第2感熱線を保持する第2保持部とを備え、
前記第2保持部に前記第2感熱線が配置された状態で、前記第1保持部に前記給電線を配置することで、前記第2感熱線が脱落しないように前記第2保持部に保持されると好適である。
【0046】
本構成によれば、支持部材の第2保持部に第2感熱線を配置し、その後、第1保持部に給電線を配置することで、第2感熱線の保持を完了することができる。従って、給電線及び第2感熱線の設置作業を簡略化し易い。
【0047】
また、前記第1保持部は、前記給電線が嵌合する凹溝状に形成され、
前記第2保持部は、前記第2感熱線が収容される凹溝状であって、前記第1保持部の内面に開口するように形成されていると好適である。
【0048】
本構成によれば、支持部材の第2保持部に第2感熱線を収容し、その後、第1保持部に給電線を嵌合させることで、支持部材に対する給電線の保持及び第2感熱線の保持の双方を完了することができる。従って、給電線及び第2感熱線の設置作業を更に簡略化し易い。
【0049】
また、前記第1感熱線による異常発熱の検知を行う第1検知部と、前記第2感熱線による異常発熱の検知を行う第2検知部と、前記給電線に電力を供給する交流電源を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記第1検知部及び前記第2検知部のいずれか一方により異常発熱を検知した場合に警報を出力し、前記第1検知部及び前記第2検知部の双方により異常発熱を検知した場合に前記交流電源による前記給電線への電力供給を停止すると好適である。
【0050】
本構成によれば、給電線又はその周辺に大きな問題が生じる前に警報を出力することができる。従って、実際に大きな問題が生じる前に何らかの対処を行うことが可能となる。一方、第1検知部及び第2検知部の双方により異常発熱を検知した場合には、給電線又はその周辺に大きな問題が生じている可能性が高いため、交流電源による前記給電線への電力供給を停止する。これにより、給電線やその周辺に損傷が発生する可能性を低減することができる。
また、第1検知部及び第2検知部のいずれか一方により異常発熱を検知した場合には、警報を出力した上で合、給電線への電力供給を停止することなく継続することも可能であり、第1検知部及び第2検知部の少なくとも一方により異常発熱を検知した場合に給電線への電力供給を停止する構成に比べて、設備全体の稼働効率に与える影響を小さくし易い。
【0051】
また、複数の前記給電線が、端子台を介して互いに電気的に接続され、前記第1感熱線及び前記第2感熱線の少なくとも一方である対象感熱線が、前記端子台に接するように配置された端子台対応部を備え、
前記端子台対応部は、前記対象感熱線における前記給電線の前記絶縁被覆に沿う部分に対して、コネクタを介して着脱自在に接続されていると好適である。
【0052】
一般的に、端子台部分は、給電線の他の部分に比べて異常発熱が起こる可能性が高い。また、一般的な感熱線は、異常発熱を検知した後は交換が必要になることが多い。
本構成によれば、そのような端子台部分において異常発熱が生じた場合であっても、感熱線の該当部分のみを容易に交換することができる。従って、給電線の配置領域の全体に亘って感熱線を交換する場合に比べて、交換作業の手間及び費用を低減できる。
【0053】
本開示に係る給電設備は、上述した各効果のうち、少なくとも1つを奏することができればよい。
【符号の説明】
【0054】
1 :給電設備
2 :給電線
3 :感熱ユニット
4 :支持部材
5 :移動体
6 :第1検知部
7 :第2検知部
8 :制御部
9 :対象感熱線
10 :端子台
13 :交流電源
21 :導体線
22 :導体線束
23 :絶縁被覆
31 :第1感熱線
32 :第2感熱線
41 :第1保持部
41a :内面
42 :第2保持部
51 :移動経路
91 :端子台対応部
92 :コネクタ