(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114451
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
H01M 50/103 20210101AFI20240816BHJP
H01M 50/15 20210101ALI20240816BHJP
H01M 50/342 20210101ALI20240816BHJP
H01G 11/78 20130101ALI20240816BHJP
H01G 9/12 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
H01M50/103
H01M50/15
H01M50/342 101
H01G11/78
H01G9/12 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020237
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】内田 陽三
(72)【発明者】
【氏名】藤村 哲史
【テーマコード(参考)】
5E078
5H011
5H012
【Fターム(参考)】
5E078AA11
5E078AB02
5E078AB06
5E078CA06
5E078DA03
5E078DA06
5E078FA02
5E078FA13
5E078HA04
5E078HA22
5E078HA24
5H011AA13
5H011KK04
5H012AA07
5H012BB02
5H012DD05
(57)【要約】
【課題】蓄電デバイスの安全性を高める技術の提供。
【解決手段】蓄電デバイス1は、一対の矩形面20aを有する電極体20と、六面体形状のケース10とを備えている。ケース10は、第1面12aと開口12hとを有するケース本体12と、開口12hの封口板14とを有している。ケース10内では、第1面12aと一方の矩形面とが対向し、封口板14と他方の矩形面20aとが対向するように、電極体20が第1面12aと封口板14との間に挟み込まれている。ケース10には、内圧が第1閾値に達したときに開裂する排出弁123が設けられている。第1面12aおよび/または封口板14には、矩形面20aに向かって張り出した張り出し部142が設けられている。張り出し部142は、ケース10の内圧が第1閾値よりも小さい第2閾値に達したときに反転し、ケース10の外側に向かって張り出すように構成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電デバイスであって、
対向する一対の矩形面を有する、扁平な電極体と、
前記電極体を収容する六面体形状のケースであって、六面のうちの最も幅広な第1面および該第1面に対向する開口を有するケース本体と、該開口を封口する、該開口の形状に応じた形状を有する封口板と、を有するケースと、
を備えており、
前記ケース内では、前記第1面と前記一対の矩形面のうちの一方とが対向し、前記封口板と前記一対の矩形面のうちの他方とが対向するように、前記電極体が前記第1面と前記封口板との間に挟み込まれており、
前記ケースには、前記ケースの内圧が第1閾値P1に達したときに開裂する排出弁が設けられており、
前記第1面と前記封口板とのうちの少なくともいずれか一方には、前記矩形面に向かって張り出した張り出し部が設けられており、
前記張り出し部は、前記ケースの内圧が前記第1閾値P1よりも小さい第2閾値P2に達したときに反転し、前記ケースの外側に向かって張り出すように構成されている、蓄電デバイス。
【請求項2】
前記張り出し部は、前記反転をしていないときには、対向する前記矩形面に向かってドーム状に張り出している、請求項1に記載の蓄電デバイス。
【請求項3】
前記第1面と前記封口板とのうちのいずれか一方にのみ、前記張り出し部が設けられている、請求項1に記載の蓄電デバイス。
【請求項4】
前記張り出し部は、前記反転をしていないときには、対向する前記矩形面に接している、請求項1に記載の蓄電デバイス。
【請求項5】
前記第1閾値P1と前記第2閾値P2との比(P2/P1)は、0.5以上0.8以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1で開示される扁平角形電池では、金属板を加工して凹部の開口周囲にフランジを設けた半殻体に本体ケースが形成されている。また、極板群が凹部内に収容されている。さらに、金属製の蓋板が、フランジに周辺部を重ね合わせられて配設されるとともに、フランジと溶接により接合されている。この電池では、本体ケースおよび/または蓋板に、電池厚さを減少させる方向に窪みが形成されている。この公報の記載によれば、窪みが凹部内に収容された極板群を圧縮するように押圧するため、極板群の膨張を抑制することができる。また、深さが予想される膨らみ量以上になるように窪みを形成することによって、窪みの形成深さ内で外方に膨出することが記載されている。これによって、窪みが膨出しても、電池としての厚さに変化が生じ難いため、電池の膨らみによる機器への影響を抑制することができると記載されている。
【0003】
また、同公報には、窪みが設けられた蓋板の変形強度を、本体ケースの変形強度よりも低く形成することが提案されている。こうすることで、電池内部からの膨らむ方向への圧力は、蓋板側に及びやすくなり、本体ケース側に膨らみが生じにくくなると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、本発明者は、蓄電デバイスの安全性を高めたいと考えている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここで開示される蓄電デバイスは、対向する一対の矩形面を有する、扁平な電極体と、電極体を収容する六面体形状のケースであって、六面のうちの最も幅広な第1面および第1面に対向する開口を有するケース本体と、開口を封口する、開口の形状に応じた形状を有する封口板と、を有するケースと、を備えている。ケース内では、第1面と一対の矩形面のうちの一方とが対向し、封口板と一対の矩形面のうちの他方とが対向するように、電極体が第1面と封口板との間に挟み込まれている。ケースには、ケースの内圧が第1閾値P1に達したときに開裂する排出弁が設けられている。第1面と封口板とのうちの少なくともいずれか一方には、矩形面に向かって張り出した張り出し部が設けられている。張り出し部は、ケースの内圧が第1閾値P1よりも小さい第2閾値P2に達したときに反転し、ケースの外側に向かって張り出すように構成されている。かかる構成の蓄電デバイスでは、安全性が高められている。
【0007】
ここで開示される蓄電デバイスの好ましい一態様では、張り出し部は、反転をしていないときには、対向する矩形面に向かってドーム状に張り出している。かかる構成によると、蓄電デバイスの安全性をより高めることができる。
【0008】
ここで開示される蓄電デバイスの好ましい他の一態様では、第1面と封口板とのうちのいずれか一方にのみ、張り出し部が設けられている。かかる構成によると、張り出し部が設けられていない面を平坦面とすることができる。このため、平坦面と対向する電極体の矩形面の全体に、常にある程度の拘束圧を付与することができる。
【0009】
ここで開示される蓄電デバイスの好ましい他の一態様では、張り出し部は、反転をしていないときには、対向する矩形面に接している。かかる構成によると、蓄電デバイスの安全性向上効果に加えて、電極体の膨張を抑制する効果を実現することができる。
【0010】
ここで開示される蓄電デバイスの好ましい他の一態様では、第1閾値P1と第2閾値P2との比(P2/P1)は、0.5以上0.8以下である。比(P2/P1)を上記範囲に設定することによって、蓄電デバイスの安全性向上効果をより好ましく実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、ここで開示される技術の一実施形態を説明する。ここで説明される実施形態は、特にここで開示される技術を限定することを意図したものではない。ここで開示される技術は、特に言及されない限りにおいて、ここで説明される実施形態に限定されない。図面は模式的に描かれており、必ずしも実物を反映していない。また、同一の作用を奏する部材・部位には、適宜に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、数値範囲を示す「A~B」の表記は、特に言及されない限りにおいて「A以上B以下」を意味するとともに、「Aを上回り、かつ、Bを下回る」の意味をも包含する。
【0013】
本明細書において、「蓄電デバイス」とは、電解質を介して一対の電極(正極および負極)の間で電荷担体が移動することによって充放電反応が生じるデバイスをいう。かかる蓄電デバイスは、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等の二次電池;リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ;を包含する。以下では、上述した蓄電デバイスとしてリチウムイオン二次電池を備える蓄電モジュールを対象とした場合の実施形態について説明する。
【0014】
図1は、蓄電デバイス1の斜視図である。
図2は、
図1のII-II断面図である。
図2には、ケース10の第1面12aに沿う断面図が示されている。
図3は、
図1のIII-III断面図である。
図3には、ケース10の第2面12b,12cに沿う断面図が示されている。
図4は、ケース10の分解斜視図である。
図4には、ケース本体12と、ケース本体12の開口12hから外された状態の封口板14とが個々に示されている。
【0015】
<蓄電デバイス1>
ここで開示される技術によると、蓄電デバイス1が提供される。蓄電デバイス1は、
図1および
図2に示されているように、ケース10と、電極体20と、正極端子30と、負極端子40と、正極集電部材50と、負極集電部材60と、電解液(図示なし)と、種々の絶縁部材と、を備えている。
【0016】
-ケース10-
ケース10は、例えば、電極体20を収容する六面体形状の部材である。
図1~
図4に示されているように、ケース10は、ケース本体12と、封口板14とを備えている。ケース本体12は、例えば、電極体20を内部に収容する、ケース10の本体である。ケース本体12は、
図1~
図4に示されているように、開口12hと、第1面12aと、一対の対向する第2面12b,12cと、一対の対向する第3面12d,12eを有している。この実施形態では、第1面12aは、幅広な矩形状であり、ケース10の六面のうちの最も幅広な面である。また、第1面12aは、開口12hに対向している。一対の第2面12b,12cは、第1面12aの一対の対向する長辺から延びている。
図1~
図3に示されているように、下側の第2面12cは、蓄電デバイス1の底面を構成する。また、上側の第2面12bは、この底面に対向する上面であり、電極端子の取付面である。また、一対の第3面12d,12eは、第1面12aの一対の対向する短辺から延びている。なお、本明細書において、「矩形状」とは、直線状の長辺と短辺とが曲線を介して互いに接合している形状、長辺および短辺の少なくとも一方が直線状ではなく、湾曲したり、凹凸になっていたり、屈曲して複数の直線あるいは曲線から構成されている形状、等を包含する。
【0017】
開口12hは、例えば、封口板14が装着される部位である。ここでは、開口12hは、一対の第2面12b,12cの上縁と、一対の第3面12d,12eの上縁とで囲まれることによって形成されており、幅広な矩形状である。
図3および
図4に示されているように、開口12hには、内縁に沿って凹んだ段差121が設けられている。ここでは、段差121に、封口板14が嵌め込まれている。また、段差121に封口板14が接合(例えば、溶接)されることによって、ケース本体12と封口板14とが一体化され、ケース10が気密に封止される。
【0018】
図3および
図4に示された形態では、第1面12aは、凹凸、貫通孔等がない、平坦面である。第1面12aを平坦面とすることによって、電極体20の矩形面20a全体に拘束圧を付与することができる。
【0019】
図1~
図4に示されているように、第2面12bには、排出弁123と、第1取付部124と、第2取付部125と、が設けられている。排出弁123は、例えば、薄肉部である。ここでは、排出弁123は、ケース10の内圧が第1閾値P1に達したときに開裂して、ケース10内のガスを外部に排出するように構成されている。このため、排出弁123の厚みは、例えば、ケース本体12の他の部分の厚みよりも小さい。また、排出弁123には、必要時に開裂しやすいように、局所的に厚みがより小さい溝、窪み等の凹部を設けられている。第1取付部124は、例えば、正極端子30が取り付けられる部位である。
図2および
図4に示された形態では、第1取付部124は、第2面12bから凹んだ段差である。第1取付部124の底には、正極端子30が挿通される貫通孔18が設けられている。第2取付部125は、例えば、負極端子40が取り付けられる部位である。
図4に示された形態では、第2取付部125は、第2面12bから凹んだ段差である。第2取付部125の底には、負極端子40が挿通される貫通孔19が設けられている。
【0020】
ところで、上述のような構成の排出弁123を有することで、ケース10内でガスが発生してケース10の内圧が上昇した際に、排出弁123が開裂してガスをケース10の外に排出することによって、内圧を低下させることができる。一方で、昨今の蓄電デバイスの普及にともなって、蓄電デバイスの安全性を高める要求がますます高まっている。そこで、本発明者は、蓄電デバイスに異常が発生してケース内圧が上昇した場合に、例えば、排出弁123が開裂する前に、このケース内圧を小さくすることができれば、蓄電デバイスの安全性を高めることにつながると考え、ケース10の構成を検討した。
【0021】
封口板14は、例えば、開口12hを封口する平板状の部材である。このため、封口板14の形状は、開口12hの形状に応じた形状であるとよい。この実施形態では、封口板14は、幅広な矩形状である。ここでは、封口板14が開口12hに取り付けられると、封口板14は、第1面12aに対向する。
図4に示されているように、封口板14は、一対の対向する長辺部14a,14bと、一対の対向する短辺部14c,14dとを有している。ここでは、長辺部14aは、第2面12b側の段差121の底に戴置される。また、長辺部14bは、第2面12c側の段差121の底に戴置される。また、短辺部14cは、第3面12d側の段差121の底に戴置される。また、短辺部14dは、第3面12e側の段差121の底に戴置される。
【0022】
図1、
図3および
図4に示されているように、封口板14は、平坦部141と、張り出し部142とを有している。平坦部141は、例えば、凹凸、貫通孔等がない、平坦な部位である。平坦部141は、ここでは、張り出し部142を除いた部位である。張り出し部142は、例えば、電極体20の矩形面20aに向かって張り出した部位である。この実施形態では、張り出し部142は、ケース10の内圧が排出弁123の第1閾値P1よりも小さい第2閾値P2に達したときに反転し、ケース10の外側に向かって張り出すように構成されている。張り出し部142は、基端142Bから矩形面20aに向かって張り出しているが、必要時には、基端142Bを軸にして反転し、ケース10の外側に向かって張り出す。基端142Bは、例えば、平坦部141における封口板14の中心側の縁(ここでは、平坦部141と張り出し部142との境界)にある。
【0023】
図1~
図3に示されているように、張り出し部142は、反転をしていないときには、対向する矩形面20aに向かってドーム状に張り出している。張り出し部142がドーム状に構成されることによって、ケース10の内圧が第2閾値P2に到達した際に、より容易に反転することができる。このため、蓄電デバイスの安全性を高める効果を向上させることができる。この実施形態では、張り出し部142は、平面視において楕円状であるが、これに限定されない。他の実施形態において、平面視における張り出し部142の形状は、真円状、長穴状、略矩形状等であってもよい。
【0024】
図1~3に示された形態では、蓄電デバイス1では、封口板14にのみ、張り出し部142が設けられている。封口板14にのみ張り出し部142を設けることによって、第1面12aを平坦面とすることができる。これによって、一対の矩形面20aのうちの第1面12a(平坦面)と対向する矩形面20aの全体に、ある程度の拘束圧を常に付与することができる。
【0025】
図3に示されているように、張り出し部142は、反転をしていないときには、対向する矩形面20aに接している。これによって、矩形面20aに拘束圧を付与することができる。このため、電極体20の膨張を抑制することができる。また、張り出し部142によって、電極体20がケース10内で固定される。このため、蓄電デバイス1に振動、衝撃等が加わった際に、電極体20がケース10内で移動することを抑制することができ、延いては、電極タブの千切れ等を抑制することができる。
【0026】
張り出し部142は、例えば、電極体20の矩形面20aの中央領域20CRに対して、端部領域20PRよりも相対的に大きな押圧力を付与する(
図2参照)。中央領域20CRは、ここでは、矩形面20aの一対の対向する長辺の中点Aを通る第1中央線CL1と、矩形面20aの一対の対向する短辺の中点Bを通る第2中央線CL2との交点CPを中心点とする領域である。矩形面20aの面積を1としたときに、中央領域20CRの面積は、概ね1/8~1/2(例えば、1/6~1/3)であるとよい。端部領域20PRは、ここでは、矩形面20aにおける中央領域20CRを除いた領域である。なお、
図2に示された形態では、中央領域20CRは、矩形面20aにおいて点線で囲われた領域である。また、端部領域20PRは、矩形面20aにおける点線よりも外側の領域である。
【0027】
ケース10の内圧が第2閾値P2に達したときに、張り出し部142のみが反転することを考慮すると、張り出し部142の厚みは、例えば、平坦部141の厚みとケース本体12の厚みとよりも小さいとよい。また、張り出し部142の第2閾値P2(反転圧)が排出弁123の第1閾値P1(開裂圧)よりも小さいことを考慮すると、張り出し部142の厚みは、排出弁123の厚みよりも小さいとよい。
【0028】
蓄電デバイス1の安全性を高める効果を適切に実現する観点から、第1閾値P1と第2閾値P2との比(P2/P1)は、概ね0.2~0.9に設定されうる。比(P2/P1)は、0.5~0.8であることが好ましい。これによって、蓄電デバイス1の安全性を高める効果をより好ましく実現することができる。
【0029】
図5は、蓄電デバイス1の断面図である。
図5には、張り出し部142が外側に向かって張り出した状態が示されている。この実施形態では、蓄電デバイス1には、ケース10の内圧が上昇した際に作動する部位として、排出弁123と張り出し部142とがある。ケース10の内圧が排出弁123の閾値と張り出し部142の閾値とのいずれにも達していないときは、排出弁123は開裂せず、張り出し部142は反転しない(
図3参照)。ケース10の内圧が上昇して第2閾値P2に達すると、張り出し部142は、基端142Bを軸にしてケース10の外側に向かって張り出す(
図5参照)。ここで、上述のとおり、第2閾値P2は、排出弁の開裂圧である第1閾値P1よりも小さいため、ケース10の内圧が上昇して第1閾値P1に達するまでは、ケース10の外側に向かって膨張し続ける。そして、ケース10の内圧が第1閾値P1に達すると、排出弁123が開裂する。
【0030】
-電極体20-
電極体20は、例えば、正極と負極とを有する、蓄電デバイス1の発電要素である。
図6は、電極体20の模式図である。
図6に示されているように、電極体20は、長尺なシート状の正極22と長尺なシート状の負極24とがセパレータ23を介在させつつ、シート長手方向LDに捲回された、捲回電極体である。電極体20は、例えば、正極22と負極24とセパレータ23とを捲回して筒状体とし、かかる筒状体をプレス成形することによって作製されうる。このため、電極体20は、扁平形状であり、一対の矩形面20aを有する(
図2および
図3参照)。
【0031】
図2および
図6に示されているように、電極体20は、捲回軸方向WDと蓄電デバイス1の上下方向とが略平行になるように、ケース本体12に収容されている。この実施形態では、電極体20の捲回軸WLは、第1面12aと第3面12d,12eと封口板14と略平行になり、かつ、第2面12b,12cと略垂直である。また、ケース10内では、第1面12aと一対の矩形面20aのうちの一方とが対向し、封口板14と一対の矩形面20aのうちの他方とが対向するように、電極体20は、第1面12aと封口板14との間に挟み込まれる。また、電極体20の捲回軸方向WDにおける一方の端面は第2面12bと対向しており、他方の端面は第2面12cと対向している。電極体20の端面は、ここでは、正極22と負極24とセパレータ23との積層面であり、開放面である。
【0032】
図6に示されているように、正極22は、長尺な帯状の正極集電箔22c(例えばアルミニウム箔)と、正極集電箔22cの少なくとも一方の表面上に固着された正極活物質層22aとを有する。特に限定するものではないが、正極22の捲回軸方向WDにおける一方の側縁部には、必要に応じて、保護層22pが設けられていてもよい。なお、正極活物質層22aの構成材料と保護層22pの構成材料としては、この種の蓄電デバイス(この実施形態では、リチウムイオン二次電池)において用いられるものが特に制限なく用いられてよい。
【0033】
正極集電箔22cの捲回軸方向WDの一方の端部(
図6の上端部)には、複数の正極タブ22tが設けられている。複数の正極タブ22tは、捲回軸方向WDの一方の端部(
図6の上端部)に向かって突出している。複数の正極タブ22tは、正極22の長手方向LDに沿って間隔を置いて(間欠的に)設けられている。正極タブ22tは、正極集電箔22cの一部であり、正極集電箔22cの正極活物質層22aが形成されていない部分(活物質層未形成部)である。
図6に示された実施形態では、正極タブ22tの基端側には、保護層22pが設けられている。この実施形態では、複数の正極タブ22tは、セパレータ23よりも捲回軸方向WDに突出している。複数の正極タブ22tは捲回軸方向WDの一方の端部(
図6の上端部)で積層され、正極タブ群を構成する。このため、各々の正極タブ22tの高さ(捲回軸方向WDにおける長さ)と、各々の正極タブ22tの幅(長手方向LDにおける長さ)とは、同じでなくてもよい。
図2に示されているように、積層された正極タブ22t(正極タブ群)には、正極集電部材50が接合される。
【0034】
図6に示されているように、負極24は、長尺な帯状の負極集電箔24c(例えば銅箔)と、負極集電箔24cの少なくとも一方の表面上に固着された負極活物質層24aとを有する。なお、負極活物質層24aの構成材料としては、この種の蓄電デバイス(この実施形態では、リチウムイオン二次電池)において用いられるものが特に制限なく用いられてよい。
【0035】
負極集電箔24cの捲回軸方向WDの一方の端部(
図6の上端部)には、複数の負極タブ24tが設けられている。複数の負極タブ24tは、捲回軸方向WDの一方の端部(
図6の上端部)に向かって突出している。複数の負極タブ24tは、負極24の長手方向LDに沿って間隔を置いて(間欠的に)設けられている。負極タブ24tは、負極集電箔24cの一部であり、負極集電箔24cの負極活物質層24aが形成されていない部分(活物質層未形成部)である。この実施形態では、複数の負極タブ24tは、セパレータ23よりも捲回軸方向WDに突出している。例えば、複数の負極タブ24tは捲回軸方向WDの一方の端部(
図6の上端部)で積層され、負極タブ群を構成する。このため、各々の負極タブ24tの高さ(捲回軸方向WDにおける長さ)と、各々の負極タブ24tの幅(長手方向LDにおける長さ)とは、同じでなくてもよい。
図2に示されているように、積層された負極タブ24t(負極タブ群)には、負極集電部材60が接合される。
【0036】
セパレータ23は、正極22の正極活物質層22aと、負極24の負極活物質層24aと、を絶縁する部材である。セパレータ23は、この実施形態では、電極体20の外表面を構成している。セパレータ23としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂からなる樹脂製の多孔性シートが用いられる。
【0037】
図6に示されているように、電極体20では、セパレータ23の下端P3が最も下側であり、次いで負極24の下端P2があり、正極22の下端P1が最も上側にある。各シートの幅(
図6では、捲回方向WDにおける長さ。ただし、正極タブ22tおよび負極タブ24tを除く。)は、セパレータ23、負極24、正極22の順に大きい。
【0038】
-正極端子30-
正極端子30は、例えば、電極体20の正極22と電気的に接続される部材である。
図2に示されているように、正極端子30は、貫通孔18に挿通され、ケース本体12の外側に露出している。ここでは、正極端子30は、第1導電部材31と、第2導電部材32とを有している。この実施形態では、第1導電部材31は、軸部31aとベース部31bとを有している。軸部31aは、例えば、円筒状であり、貫通孔18と第2導電部材32の貫通孔に挿通される部位である。ベース部31bは、例えば、平板状であり、ケース本体12の外側表面(ここでは、第2面12b)に沿って配置される部位である。第2導電部材32は、例えば、平板状であり、蓄電モジュールを構築する際に、バスバーと接続される部位である。この実施形態では、第2導電部材32は、矩形状である。第1導電部材31と第2導電部材32とは、ケース10の外側において相互に接続されている。第1導電部材31は、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金で構成される。第2導電部材32は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金等で構成される。
【0039】
-負極端子40-
負極端子40は、例えば、電極体20の負極24と電気的に接続される部材である。
図2に示されているように、負極端子40は、貫通孔19に挿通され、ケース本体12の外側に露出している。ここでは、負極端子40は、第1導電部材41と、第2導電部材42とを有している。第1導電部材41は、例えば、銅または銅合金で構成される。負極端子40は、例えば、正極端子30と同様の構成を有してよい。このため、負極端子40の構成についての説明は、ここでは省略する。
【0040】
-正極集電部材50-
正極集電部材50は、例えば、正極タブ22tと正極端子30とを電気的に接続する部材である。正極集電部材50は、例えば、板状の導電部材である。
図2に示されているように、正極集電部材50は、ケース本体12の内側表面(ここでは、第2面12bの内側)に沿って、第2面12bの長辺方向に延びている。正極集電部材50の一方の端部(
図2の右側端部)には、正極タブ22t(ここでは、正極タブ群)が接続されている。また、正極集電部材50の他方の端部(
図2の左側端部)には、正極端子30の軸部31aの下端部が貫通孔50hに挿通されて、かしめられている。正極集電部材50は、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金で構成される。
【0041】
-負極集電部材60-
負極集電部材60は、例えば、負極タブ24tと負極端子40とを電気的に接続する部材である。負極集電部材60は、例えば、板状の導電部材である。
図2に示されているように、負極集電部材60は、ケース本体12の内側表面(ここでは、第2面12bの内側)に沿って、第2面12bの長辺方向に延びている。負極集電部材60の一方の端部(
図2の左側端部)には、負極タブ24t(ここでは、負極タブ群)が接続されている。また、負極集電部材60の他方の端部(
図2の右側端部)には、負極端子40の下端部が貫通孔60hに挿通されて、かしめられている。負極集電部材60は、例えば、銅または銅合金で構成される。
【0042】
-電解液-
電解液は、例えば、電解質塩と、非水溶媒とを含んでいる。電解質塩としては、例えば、LiPF6等が挙げられる。電解液における電解質塩の濃度は、例えば、0.7mol/L~1.3mol/Lである。非水溶媒は、例えば、カーボネート類であるとよい。カーボネート類としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、モノフルオロエチレンカーボネート(MFEC)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)、モノフルオロメチルジフルオロメチルカーボネート(F-DMC)、トリフルオロジメチルカーボネート(TFDMC)等が挙げられる。これらは単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
-絶縁部材-
蓄電デバイス1では、種々の絶縁部材が用いられている。
図2に示された形態では、第1絶縁部材91と第2絶縁部材92とが用いられている。この実施形態では、第1絶縁部材91は、ケース10の外側と貫通孔18または貫通孔19の内壁とにおいて、正極端子30または負極端子40と第2面12bとを絶縁している。また、第2絶縁部材は、ケース10の内側において、正極端子30または負極端子40と第2面12bとを絶縁している。
【0044】
蓄電デバイス1は、種々の用途に用いられるものであるが、なかでも、乗用車、トラック等の車両に搭載されるモータ用の動力源(駆動用電源)として好ましく用いられうる。車両の種類は特に限定されないが、好適例として、例えば、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)、ハイブリッド自動車(HEV)、電気自動車(BEV)等が挙げられる。
【0045】
上述のとおり、蓄電デバイス1は、扁平な電極体20と、電極体20を収容する六面体形状のケース10と、を備えている。電極体20は、対向する一対の矩形面20aを有している。ケース10は、六面のうちの最も幅広な第1面12aおよび第1面12aに対向する開口12hを有するケース本体12と、開口12hを封口する、開口12hの形状に応じた形状を有する封口板14と、を有している。ケース10内では、第1面12aと一対の矩形面20aのうちの一方とが対向し、封口板14と他方の矩形面20aとが対向するように、電極体20が第1面12aと封口板14との間に挟み込まれている。ケース10には、ケース10の内圧が第1閾値P1に達したときに開裂する排出弁123が設けられている。封口板14には、矩形面20aに向かって張り出した張り出し部142が設けられている。張り出し部142は、ケース10の内圧が第1閾値P1よりも小さい第2閾値P2に達したときに反転し、ケース10の外側に向かって張り出すように構成されている。
【0046】
蓄電デバイス1では、排出弁123が開裂する第1閾値P1よりも小さい第2閾値P2で張り出し部142が外側に向かって反転する。蓄電デバイス1では、ケース10の内圧が第2閾値P2に達したときに、張り出し部142が反転して外側に張り出すため、ケース10の容積が大きくなる。このため、ケース10の内圧が上昇した際に、排出弁123が開く前に、内圧を小さくすることができる。また、張り出し部142が外側に向かって張り出すことで、電極体20に対して張り出し部142による拘束圧が付与されなくなる。このため、電極体20における極間距離が広がり、抵抗が増大する。これによって、蓄電デバイス1における過剰な反応の進行が抑制される。したがって、上述の構成を有する蓄電デバイス1は、安全性が高められている。
【0047】
上記実施形態において、蓄電デバイス1では、封口板14にのみ、張り出し部142が設けられていた。しかし、これに限定されない。張り出し部142は、第1面12aにのみ設けられてもよい。かかる構成によっても、蓄電デバイス1の安全性を高めることができる。あるいは、張り出し部142は、封口板14と第1面12aとの両方に設けられてもよい。そうすることで、張り出し部142が外側に向かって張り出したとき、ケース10の容積をより大きくすることができるため、効率よくケース10の内圧を低下させることができる。
【0048】
以上のとおり、ここで開示される技術の具体的な態様として、以下の各項に記載のものが挙げられる。
項1:
蓄電デバイスであって、
対向する一対の矩形面を有する、扁平な電極体と、
前記電極体を収容する六面体形状のケースであって、六面のうちの最も幅広な第1面および該第1面に対向する開口を有するケース本体と、該開口を封口する、該開口の形状に応じた形状を有する封口板と、を有するケースと、
を備えており、
前記ケース内では、前記第1面と前記一対の矩形面のうちの一方とが対向し、前記封口板と前記一対の矩形面のうちの他方とが対向するように、前記電極体が前記第1面と前記封口板との間に挟み込まれており、
前記ケースには、前記ケースの内圧が第1閾値P1に達したときに開裂する排出弁が設けられており、
前記第1面と前記封口板とのうちの少なくともいずれか一方には、前記矩形面に向かって張り出した張り出し部が設けられており、
前記張り出し部は、前記ケースの内圧が前記第1閾値P1よりも小さい第2閾値P2に達したときに反転し、前記ケースの外側に向かって張り出すように構成されている、蓄電デバイス。
項2:
前記張り出し部は、前記反転をしていないときには、対向する前記矩形面に向かってドーム状に張り出している、項1に記載の蓄電デバイス。
項3:
前記第1面と前記封口板とのうちのいずれか一方にのみ、前記張り出し部が設けられている、項1または2に記載の蓄電デバイス。
項4:
前記張り出し部は、前記反転をしていないときには、対向する前記矩形面に接している、項1~3のいずれか一つに記載の蓄電デバイス。
項5:
前記第1閾値P1と前記第2閾値P2との比(P2/P1)は、0.5以上0.8以下である、項1~4のいずれか一つに記載の蓄電デバイス。
【0049】
以上、ここで開示される技術の実施形態について説明したが、ここで開示される技術を上記実施形態に限定することを意図したものではない。ここで開示される技術は、他の実施形態においても実施されうる。特許請求の範囲に記載の技術には、上記に例示した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上記した実施形態の一部を他の変形態様に置き換えることも可能であり、上記した実施形態に他の変形態様を追加することも可能である。また、その技術的特徴が必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することも可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 蓄電デバイス
10 ケース
12 ケース本体
123 排出弁
12a 第1面
12h 開口
14 封口板
142 張り出し部
20 電極体
20a 矩形面
22 正極
23 セパレータ
24 負極
30 正極端子
40 負極端子
50 正極集電部材
60 負極集電部材
91 第1絶縁部材
92 第2絶縁部材