(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114453
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】磁気メモリ装置、磁気メモリ素子の制御方法、および制御プログラム
(51)【国際特許分類】
H10B 61/00 20230101AFI20240816BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20240816BHJP
H01L 29/82 20060101ALI20240816BHJP
H10N 50/10 20230101ALI20240816BHJP
H10N 52/00 20230101ALI20240816BHJP
G11C 11/16 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
H10B61/00
H01L29/06 601N
H01L29/82 Z
H10N50/10
H10N52/00 Z
H10N50/10 Z
G11C11/16 100C
G11C11/16 230
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020242
(22)【出願日】2023-02-13
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業(CREST)「3次元磁気メモリの開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】本多 周太
(72)【発明者】
【氏名】加藤 剛志
(72)【発明者】
【氏名】大島 大輝
(72)【発明者】
【氏名】園部 義明
【テーマコード(参考)】
4M119
5F092
【Fターム(参考)】
4M119AA20
4M119BB01
4M119CC05
4M119CC10
4M119DD09
4M119DD17
4M119DD24
4M119DD25
4M119DD33
4M119DD52
4M119EE03
5F092AA20
5F092AB07
5F092AC12
5F092AC26
5F092AD23
5F092AD25
5F092AD26
5F092BB16
5F092BB18
5F092BB22
5F092BB23
5F092BB25
5F092BB34
5F092BB35
5F092BB36
5F092BB42
5F092BB43
5F092BB45
5F092BC03
(57)【要約】
【課題】磁気メモリ素子の磁性細線から順次読み出されたデータが消滅することを防止する。
【解決手段】コントローラ(12)は、ビット列に対応する複数の磁化の向きをそれぞれ有する複数の磁区を磁性細線(22)に書き込み、磁性細線(22)の他端部(28)の磁区が有する磁化の向きに対応するビットの値を読み出す。コントローラ(12a)が磁気メモリ素子(11a)から読み出したビットの値に対応する磁化の向きを有する磁区を、コントローラ(12b)は他の磁気メモリ素子(11b)に記録する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの磁気メモリ素子と、コントローラとを備える磁気メモリ装置であって、
前記2つの磁気メモリ素子のそれぞれは、
第1電流によるトルクが発生するトルク発生源と、
前記トルクに応じた磁化の向きを有する磁区が一端部に形成され、第2電流が流れることにより前記磁区が他端部の側へ移動する磁性細線と、
所定の磁化方向を維持する固定層と、
前記磁性細線の他端部および前記固定層の間に設けられた中間層と、を備え、
前記コントローラは、
前記2つの磁気メモリ素子のそれぞれに関して、書き込み時は、前記第1電流および前記第2電流を制御することにより、ビット列に対応する複数の磁化の向きをそれぞれ有する複数の磁区を前記磁性細線に書き込み、読み出し時は、前記中間層に第3電流を流すように制御することにより、前記磁性細線の他端部の磁区が有する磁化の向きに対応するビットの値を読み出すことを可能とし、
前記読み出し時において、前記2つの磁気メモリ素子の一方から読み出した前記ビットの値に対応する磁化の向きを有する磁区を前記2つの磁気メモリ素子の他方に記録する、磁気メモリ装置。
【請求項2】
前記コントローラは、前記読み出し時において、
前記2つの磁気メモリ素子の一方の前記中間層に前記第3電流を流すことにより、前記ビットの値を読み出し、
前記2つの磁気メモリ素子の他方に、前記第1電流および前記第2電流を流すことにより、読み出した前記ビットの値に対応する磁化の向きを有する磁区を記録する、請求項1に記載の磁気メモリ装置。
【請求項3】
前記2つの磁気メモリ素子の組を複数備える、請求項1に記載の磁気メモリ装置。
【請求項4】
前記読み出し時において、前記2つの磁気メモリ素子の一方として機能する読み出し側の磁気メモリ素子の数は、前記2つの磁気メモリ素子の他方として機能する記録側の磁気メモリ素子の数より多い、請求項1に記載の磁気メモリ装置。
【請求項5】
前記コントローラは、前記読み出し時において、前記2つの磁気メモリ素子の一方として機能する読出し側の磁気メモリ素子と、前記2つの磁気メモリ素子の他方として機能する記録側の磁気メモリ素子と、を識別する識別ビットに対応する磁化の向きを有する磁区が、前記2つの磁気メモリ素子における前記磁性細線の他端部に形成されるように制御する、請求項1に記載の磁気メモリ装置。
【請求項6】
前記コントローラは、前記読み出し時において、前記2つの磁気メモリ素子の一方から読み出した前記ビットの値に対応する磁化の向きを有する磁区を前記2つの磁気メモリ素子の他方に記録し、これを順次行うように制御した後、前記2つの磁気メモリ素子の他方に記録したビットの値に対応する磁化の向きを有する磁区を前記2つの磁気メモリ素子の一方に記録し、これを順次行うように制御する、請求項1に記載の磁気メモリ装置。
【請求項7】
前記コントローラは、前記読み出し時において、前記磁性細線の他端部の磁区が有する磁化の向きに対応する前記ビットの値を読み出すと共に、前記磁性細線の一端部に、所定の磁化の向きを有する磁区を形成するように制御する、請求項1に記載の磁気メモリ装置。
【請求項8】
前記第3電流は、前記第2電流と同じ値である、請求項1に記載の磁気メモリ装置。
【請求項9】
第1電流によるトルクが発生するトルク発生源と、前記トルクに応じた磁化の向きを有する磁区が一端部に形成され、第2電流が流れることにより前記磁区が他端部の側へ移動する磁性細線と、所定の磁化方向を維持する固定層と、前記磁性細線の他端部および前記固定層の間に設けられた中間層と、を備える2つの磁気メモリ素子を制御する制御方法であって、
前記2つの磁気メモリ素子のそれぞれに関して、
書き込み時に、前記第1電流および前記第2電流を制御することにより、ビット列に対応する複数の磁化の向きをそれぞれ有する複数の磁区を前記磁性細線に書き込み、
読み出し時に、前記中間層に第3電流を流すように制御することにより、前記磁性細線の他端部の磁区が有する磁化の向きに対応するビットの値を読み出し、
前記読み出し時において、前記2つの磁気メモリ素子の一方から読み出した前記ビットの値に対応する磁化の向きを有する磁区を前記2つの磁気メモリ素子の他方に記録する、磁気メモリ素子の制御方法。
【請求項10】
請求項1に記載の磁気メモリ装置の前記コントローラとしてコンピュータを機能させるための制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノスケールの磁気構造体を含む磁気メモリ素子を備える磁気メモリ装置、磁気メモリ素子の制御方法、および制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、消費電力を低減させる観点から、記憶したデータを保持するための電力を必要としない不揮発性メモリの開発が進められている。磁気を利用した不揮発性メモリとしては、磁気抵抗メモリ(Magnetoresistive Random Access Memory、MRAM)、レーストラックメモリ(Racetrack Memory)などが挙げられる。
【0003】
MRAMは、磁気抵抗効果(Magnetic Resistance effect、MR)素子を備える。MR素子は、磁化方向が可変な自由層と、所定の磁化方向を維持する固定層(ピン層)と、上記自由層および上記固定層の間に中間層とを備える。上記自由層と上記固定層と上記中間層とで、磁気トンネル接合(Magnetic Tunnel Junction、MTJ)を形成する。MRAMは、上記自由層の磁化の向きに応じて上記MR素子の電気抵抗が変化する性質を利用して、データの読み書きを行う。
【0004】
一方、レーストラックメモリは、磁性材料を数百ナノメートルから数百マイクロメートルの直線状に加工した磁気ナノワイヤを備える。データの書込み時には、書込みヘッドにより磁気ナノワイヤ中に磁区が生成され、磁気ナノワイヤにパルス電流を流すことにより上記磁区が移動し、これを繰り返す。一方、データの読出し時には、読出しヘッドにより上記磁区の磁化方向が検出され、磁気ナノワイヤにパルス電流を流すことにより磁区が移動し、これを繰り返す。上記読出しヘッドには、上記MR素子が利用される。ここで、上記磁気ナノワイヤの一端が上記MR素子の上記自由層としての役割を担う。
【0005】
また、特許文献1に記載の磁気メモリ素子は、スピン軌道トルクを生成するSOT(Spin-Orbit Torque)発生源と、磁性細線(磁気ナノワイヤ)と、上記中間層および上記固定層と、を備える。上記磁性細線は、一端が上記SOT発生源の主面に接続され、他端が上記中間層に接続されている。上記中間層の他端部と上記中間層と上記固定層とで、上記磁気トンネル接合を形成し、上記MR素子を構成する。
【0006】
データの書込み時には、SOT発生源が生成したスピン軌道トルクにより、上記磁性細線の一端部に磁区が生成され、上記磁性細線に電流を流すことにより上記磁区が他端方向に移動し、これを繰り返す。一方、上記磁性細線の他端部と上記中間層および上記固定層とは、データ読出し用のMR素子として機能する。従って、データの読出し時には、上記MR素子により上記磁性細線の他端部における磁区の磁化方向が検出され、上記磁性細線に電流を流すことにより、一端方向に隣接する磁区が上記他端部に移動し、これを繰り返す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のような磁気メモリ素子においては、磁性細線の他端部の磁区は、読み出し時に磁性細線に電流を流すことにより消失する。このような読出し方法は、「破壊読出し」と呼ばれる。従って、特許文献1に記載の磁気メモリ素子では、磁性細線からデータを順次読み出す場合、読み出したデータが順次消滅することになる。
【0009】
本発明の一態様は、磁気メモリ素子の磁性細線から順次読み出されたデータが消滅することを防止できる磁気メモリ装置等を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る磁気メモリ装置は、2つの磁気メモリ素子と、コントローラとを備える磁気メモリ装置であって、前記2つの磁気メモリ素子のそれぞれは、第1電流によるトルクが発生するトルク発生源と、前記トルクに応じた磁化の向きを有する磁区が一端部に形成され、第2電流が流れることにより前記磁区が他端部の側へ移動する磁性細線と、所定の磁化方向を維持する固定層と、前記磁性細線の他端部および前記固定層の間に設けられた中間層と、を備え、前記コントローラは、前記2つの磁気メモリ素子のそれぞれに関して、書き込み時は、前記第1電流および前記第2電流を制御することにより、ビット列に対応する複数の磁化の向きをそれぞれ有する複数の磁区を前記磁性細線に書き込み、読み出し時は、前記中間層に第3電流を流すように制御することにより、前記磁性細線の他端部の磁区が有する磁化の向きに対応するビットの値を読み出すことを可能とし、前記読み出し時において、前記2つの磁気メモリ素子の一方から読み出した前記ビットの値に対応する磁化の向きを有する磁区を前記2つの磁気メモリ素子の他方に記録する。
【0011】
また、本発明の別の態様に係る制御方法は、第1電流によるトルクが発生するトルク発生源と、前記トルクに応じた磁化の向きを有する磁区が一端部に形成され、第2電流が流れることにより前記磁区が他端部の側へ移動する磁性細線と、所定の磁化方向を維持する固定層と、前記磁性細線の他端部および前記固定層の間に設けられた中間層と、を備える2つの磁気メモリ素子を制御する制御方法であって、前記2つの磁気メモリ素子のそれぞれに関して、書き込み時に、前記第1電流および前記第2電流を制御することにより、ビット列に対応する複数の磁化の向きをそれぞれ有する複数の磁区を前記磁性細線に書き込み、読み出し時に、前記中間層に第3電流を流すように制御することにより、前記磁性細線の他端部の磁区が有する磁化の向きに対応するビットの値を読み出し、前記読み出し時において、前記2つの磁気メモリ素子の一方から読み出した前記ビットの値に対応する磁化の向きを有する磁区を前記2つの磁気メモリ素子の他方に記録する。
【0012】
上記の構成および方法によると、前記2つの磁気メモリ素子の一方から読み出したビットの値に対応する磁化の向きを有する磁区を前記2つの磁気メモリ素子の他方に記録する。これにより、前記2つの磁気メモリ素子の一方から順次読み出されたデータは、前記2つの磁気メモリ素子の他方に記録されるので、消滅することを防止できる。なお、第1電流と第2電流とは同じ電流であってもよいし、異なる電流であってもよい。
【0013】
本態様に係る磁気メモリ装置では、前記コントローラは、前記読み出し時において、前記2つの磁気メモリ素子の一方の前記中間層に前記第3電流を流すことにより、前記ビットの値を読み出し、前記2つの磁気メモリ素子の他方に、前記第1電流および前記第2電流を流すことにより、読み出した前記ビットの値に対応する磁化の向きを有する磁区を記録する構成であってもよい。
【0014】
本態様に係る磁気メモリ装置は、前記2つの磁気メモリ素子の組を複数備えてもよい。この場合、記憶容量を増大させることができる。また、読出し側の磁気メモリ素子から読み出したデータを書き込む記録側の磁気メモリ素子が予め決まっているので、前記記録側の磁気メモリ素子を探す手間を省くことができる。その結果、上記データを迅速に書き込むことができる。
【0015】
本態様に係る磁気メモリ装置では、前記読み出し時において、前記2つの磁気メモリ素子の一方として機能する読み出し側の磁気メモリ素子の数は、前記2つの磁気メモリ素子の他方として機能する記録側の磁気メモリ素子の数より多い構成であってもよい。
【0016】
本態様に係る磁気メモリ装置では、前記コントローラは、前記読み出し時において、前記2つの磁気メモリ素子の一方として機能する読出し側の磁気メモリ素子と、前記2つの磁気メモリ素子の他方として機能する記録側の磁気メモリ素子と、を識別する識別ビットに対応する磁化の向きを有する磁区が、前記2つの磁気メモリ素子における前記磁性細線の他端部に形成されるように制御してもよい。この場合、前記コントローラが、前記磁性細線の他端部の磁区が有する磁化の向きに対応するビットの値を読み出すことにより、前記2つの磁気メモリ素子の何れが前記読出し側の磁気メモリ素子であり、何れが前記記録側の磁気メモリ素子であるかを容易に識別することができる。
【0017】
本態様に係る磁気メモリ装置では、前記コントローラは、前記読み出し時において、前記2つの磁気メモリ素子の一方から読み出した前記ビットの値に対応する磁化の向きを有する磁区を前記2つの磁気メモリ素子の他方に記録し、これを順次行うように制御した後、前記2つの磁気メモリ素子の他方に記録したビットの値に対応する磁化の向きを有する磁区を前記2つの磁気メモリ素子の一方に記録し、これを順次行うように制御してもよい。
【0018】
この場合、前記2つの磁気メモリ素子の一方に形成されていた1または複数の磁区が元に戻ることになる。従って、前記2つの磁気メモリ素子の一方は、ビット列が実際に記憶される実記憶用素子として機能し、前記2つの磁気メモリ素子の他方は、ビット列が一時的に記憶される一時記憶用素子として機能することになる。
【0019】
本態様に係る磁気メモリ装置では、前記コントローラは、前記読み出し時において、前記磁性細線の他端部の磁区が有する磁化の向きに対応する前記ビットの値を読み出すと共に、前記磁性細線の一端部に、所定の磁化の向きを有する磁区を形成するように制御してもよい。
【0020】
この場合、前記2つの磁気メモリ素子の一方における磁性細線に形成された磁区を前記2つの磁気メモリ素子の他方の磁性細線に移動させた場合、前記2つの磁気メモリ素子の一方における磁性細線は、磁化の向きが揃うことになる。これにより、前記磁化の向きが不揃いであることによる磁性細線の一端部に磁区を形成することに及ぼす影響を減らすことができる。
【0021】
本態様に係る磁気メモリ装置では、前記第3電流は、前記第2電流と同じ値であってもよい。この場合、読み出し時の電流と書き込み時の電流とを同じにできる。そのため、電流制御が容易になる。
【0022】
本発明の各態様に係る磁気メモリ装置のコントローラは、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記コントローラが備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記コントローラをコンピュータにて実現させるコントローラの制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一態様によれば、磁気メモリ素子の磁性細線から順次読み出されたデータが消滅することを防止できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態に係る磁気メモリ装置の概要と、動作の一例を示す斜視図である。
【
図2】上記磁気メモリ装置におけるコントローラの概略構成を示すブロック図である。
【
図3】上記コントローラにおける書込処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】上記コントローラにおける読出処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】上記磁気メモリ装置の変形例を示す斜視図である。
【
図6】本発明の別の実施形態係る磁気メモリ装置の概要を示す斜視図である。
【
図7】本発明のさらに別の実施形態に係る磁気メモリ装置の概要と、動作の一例を示す斜視図である。
【
図8】本発明のさらに別の実施形態に係る磁気メモリ装置の概要と、動作の一例を示す斜視図である。
【
図9】本発明のさらに別の実施形態係る磁気メモリ装置の概要を示す斜視図である。
【
図10】磁気メモリ素子およびコントローラの変形例を示す斜視図である。
【
図11】上記コントローラの概略構成を示すブロック図である。
【
図12】本発明のさらに別の実施形態に係る磁気メモリ装置の概要と、動作の一例を示す斜視図である。
【
図13】本発明のさらに別の実施形態に係る磁気メモリ装置の概要と、動作の一例を示す斜視図である。
【
図14】本発明のさらに別の実施形態に係る磁気メモリ装置の概要と、動作の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、説明の便宜上、各実施形態に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付記し、適宜その説明を省略する。また、図面に記載のx、y、およびzを用いて方向を特定する。
【0026】
〔実施形態1〕
本発明の一実施形態について、
図1~
図4を参照して説明する。
【0027】
図1は、本実施形態に係る磁気メモリ装置の概要と、動作の一例を示す斜視図である。
図1に示すように、本実施形態の磁気メモリ装置1は、2つの磁気メモリ素子11(11aと11b)と、2つのコントローラ12(12aと12b)とを含む。
【0028】
(磁気メモリの概要)
各磁気メモリ素子11では、SOT発生源21(スピン軌道トルク発生源)、磁性細線22、中間層23、および固定層24が順に設けられている。
【0029】
SOT発生源21は、スピン軌道トルクを生成する板状部材である。SOT発生源21には、表面から略垂直な方向に磁性細線22が接続されている。SOT発生源21は、両端部25・26の一方から他方に電流(第1電流I1)を流すことにより、電流の方向(x方向)と垂直な方向(y方向)にスピン軌道トルクが生成される。このとき、磁性細線22の下端部27(一端部)における磁化の方向が、電流の方向およびスピン軌道トルクの方向と垂直な方向、すなわち、磁性細線22が延伸する方向(z方向)となる。そして、磁性細線22に電流(第2電流I2または第3電流I3)を流すことにより、上記磁化の方向を有する磁区が形成される。この磁区における磁化の向きが、記憶する情報となる。なお、
図1において、磁性細線22の下端部27が磁性細線22と異なる径で記載されているが、同じ径であってもよい。
【0030】
SOT発生源21は、通常、非磁性金属の部材であるが、トポロジカル絶縁体、または反強磁性体を含んでもよい。トポロジカル絶縁体とは、物質の内部は絶縁体でありながら、表面は電気を通すという物質である。トポロジカル絶縁体の例としては、半金属ビスマスおよびビスマス化合物が挙げられる。特に、BiTeSbまたはBiSbがトポロジカル絶縁体として好適である。また、トポロジカル絶縁体は、組成を変化させることにより内部が導電性を有するようにしてもよい。また、反強磁性体としては、RuO2などが挙げられる。また、SOT発生源21は、Rh、Pt、W、およびTaの少なくとも1種の金属を含むようにしてもよい。さらに、SOT発生源21は、強磁性体NiFeやCoFeBなどの磁性材料とTiの組み合わせ、またはCuなどの金属とその酸化物の積層構造でも構成可能である。
【0031】
SOT発生源21の両端部25・26は、コントローラ12と電気的に接続されている。コントローラ12によって、SOT発生源21を流れる電流およびその向きが制御される。
【0032】
磁性細線22は、磁気異方性を有する磁性体である。磁性細線22は、下端部27にてSOT発生源21に接続し、上端部28(他端部)にて中間層23に接続する。
図1では、磁性細線22はZ軸方向に延伸する細線である。
【0033】
また、磁性細線22は、柱状部材であることが望ましい。また、磁性細線22は、強磁性金属の部材であることが望ましい。磁性細線22は、細長い形状の磁性体として形成されている。そして、磁性細線22内を電流が流れ、磁壁(一定の磁化方向を向いた区間の境界)が移動する磁壁移動型メモリとして機能する。具体的には、電流(第2電流I2)を磁性細線22内に流して、スピントランスファートルク(STT)を発生させる。また、磁性細線22の下端部27の下に配置されたSOT発生源21に電流(第1電流I1)を流して、SOTを磁性細線22の下端部27に発生させる。このSTTとSOTの併用により磁性細線22内に磁壁や磁区を書き込む。磁性細線22を長くすると記憶容量が大きくなる。磁性細線22の幅が略一定であれば(磁性細線22が柱状であれば)、磁区の移動が安定する。なお、柱状の磁性細線22の幅は、連続的に緩やかに変化してもよい(両端で太さが異なってもよい)。
【0034】
例えば、磁性細線22は、Co/Ni多層膜、CoNi系合金、Co/Pd多層膜、CoPd合金、Co/Pt多層膜、CoPt合金、Fe/Pt多層膜、Fe/Pd多層膜、FePt合金、FePd合金、Tb/FeCo多層膜、TbFeCo合金、CoFe合金、CoFeB合金、Fe/Ni多層膜、FeNi合金、MnGa合金、MnAl合金、MnBi合金、MnGe合金、CrPt3合金、MnCr/AlGe多層膜等で構成されることが好適である。また、磁性細線22は、これらの合金および多層膜のうちの2種類以上によって構成されてもよい。さらに、磁性細線22は、上記合金および上記多層膜のうちの2種類以上を規則的に積層することによって構成されてもよい。この場合、磁壁の位置の制御が容易になる。
【0035】
磁性細線22は、多種多様な形状をとり得る。
図1に示す磁性細線22は、細長い形状の磁性体として形成された磁性細線であり、一直線(ここでは、Z軸)上に延びる。磁性細線22の断面は、円形、楕円形、多角形など、多種多様な断面形状を採りうる。また、磁性細線22の太さ(断面の幅)が同一細線内で変わっても良い。ただし、磁性細線22は、円型など角が少ない断面形状で、幅が一様、かつ、延伸方向に長い、ことが望ましい。
【0036】
中間層23は、一端で磁性細線22と構造的に接続する。また、中間層23は、他端で固定層24と構造的に接続する。中間層23は、非磁性絶縁体である。例えば、中間層23は、絶縁物質を主成分とする層である。中間層23は、MgO等の絶縁膜から構成されている。なお、中間層23を構成する材料としては、NaCl構造を有する酸化物が好ましく、前述したMgOの他、Al2O3、CaO、SrO、TiO、VO、NbO等が挙げられるが、中間層23としての機能に支障をきたさない限り、特に限定されるものではない。当該材料として、例えば、スピネル型MgAl2O4なども用いてもよい。本実施形態では、磁性細線22、中間層23、および固定層24によってMR素子を構成しているが、これに限定されるものではない。例えば、中間層23にCuなどの金属の導体層を設けてGMR(巨大磁気抵抗効果)素子を構成してよい。この場合、金属としては非磁性金属が望ましい。
【0037】
固定層24は、垂直磁気異方性を有する強磁性体である。すなわち、固定層24は、磁性細線22の延伸方向と平行な磁気異方性を有する層である。また、固定層24は、一端で中間層23と構造的に接続する。また、固定層24は、他端でコントローラ12と電気的に接続する。固定層24は、磁化の向きが固定(維持)された強磁性金属層である。たとえば、固定層24は、CoFeB、CoFe、FePt合金などのFe系材料、CoPt合金、Co/Pt多層膜、TbFeCo合金、Cr2O3、もしくはそれらを複合させたもので構成されてもよい。また、これら強磁性金属と反強磁性層とを積層した構成でもよい。磁性細線22、中間層23、および固定層24はTMR(トンネル磁気抵抗効果)素子を構成する。
【0038】
(コントローラの概要)
コントローラ12は、磁気メモリ素子11への情報の書込および読出を行う。また、コントローラ12は、磁性細線22中の情報の移動を行う。これらの動作は、コントローラ12がSOT発生源21に流す第1電流I1と、磁性細線22、中間層23、および固定層24に流す、磁区移動用の第2電流I2および読出し用の第3電流I3と、を制御することにより実現される。なお、第2電流I2は第3電流I3以上である(または第3電流I3よりも大きい)。
【0039】
コントローラ12は、書き込む情報によりSOT発生源21に流す第1電流I1の向きを変更する。例えば、1ビットの値0を磁気メモリ素子11に書き込む場合、コントローラ12は、SOT発生源21の一端部25から他端部26の方へ第1電流I1を流す。一方、1ビットの値1を磁気メモリ素子11に書き込む場合、コントローラ12は、SOT発生源21の他端部26から一端部25の方へ第1電流I1を流す。なお、2進数の値と第1電流I1の向きとの対応関係は任意に設定できる。
【0040】
また、コントローラ12は、磁性細線22の下端部27と、固定層24との間に第2電流I2を流すことで、磁気メモリ素子11下部に書き込まれた情報を磁性細線22の上端部28側へ移動させる。
【0041】
また、コントローラ12は、磁性細線22の下端部27と、固定層24との間に所定の電圧を印加し、磁性細線22の下端部27と、固定層24との間に流れる第3電流I3の値を測定して、磁性細線22の上端部28における磁化の向きを読み出す。これにより、書き込まれた情報の値を読み出すことができる。なお、コントローラ12は、磁性細線22の下端部27と、固定層24との間に所定の第3電流を流し、磁性細線22の下端部27と、固定層24との間の電圧を測定して、上記磁化の向きを読み出してもよい。
【0042】
(コントローラの詳細)
図2は、2つのコントローラ12(12aと12b)の概略構成を示すブロック図である。
図2に示すように、各コントローラ12は、第1電流制御部31、第2電流制御部32、第3電流制御部33、書込指示部34、および読出指示部35を含む。
【0043】
第1電流制御部31は、第1電流I1をSOT発生源21に流すタイミングおよび向きを制御する。第2電流制御部32は、第2電流I2を磁性細線22、中間層23、および固定層24に流すタイミングを制御する。第3電流制御部33は、第3電流I3を磁性細線22、中間層23、および固定層24に流すタイミングを制御する。また、第3電流制御部33は、第3電流I3の値、または、磁性細線22の上端部28と固定層24との間の電圧の値を測定する。
【0044】
(書き込み処理(記録処理))
書込指示部34は、外部の装置から取得したデータを磁気メモリ素子11に書き込むように、第1電流制御部31および第2電流制御部32に指示する。
【0045】
図3は、書込指示部34における書込処理の流れを示すフローチャートである。
図3に示すように、書込指示部34は、まず、取得したデータをビット列に変換する(S11)。次に、書込指示部34は、ビット列のうちの1つのビットの値に対応する向きに第1電流I1を流すように第1電流制御部31に指示すると共に、第2電流I2を流すように第2電流制御部32に指示する(S12)。これにより、1つのビットの値に対応する磁化の向きを有する磁区が磁性細線22の下端部27に形成される。取得したデータのビット列変換と磁区の書き込みは同時進行でもよい。すなわち、第1電流I1と第2電流I2は同一の電流であってもよい。
【0046】
そして、書込指示部34は、上記ビット列の全てのビットについて実行するまで、ステップS12を繰り返す(S13)。例えば、書込指示部34は、ビット列のうちの次のビットの値に対応する向きに第1電流I1を流すように第1電流制御部31に指示すると共に、第2電流I2を流すように第2電流制御部32に指示する。これにより、最初のビットに対応する磁区が上方へ移動すると共に、次のビットの値に対応する磁化の向きを有する磁区が磁性細線22の下端部27に形成される。最初のビットと次のビットの値が同じ場合には、第1電流I1を流さなくてもよい。
【0047】
これにより、
図1の動作1001における左側の磁気メモリ素子11のように、上記ビット列に対応する複数の磁区が積み上がることになる。すなわち、
図1に示す磁気メモリ素子11は、4ビットのデータ(ビット列)を記憶することができる。その後、上記書込処理を終了する。
【0048】
(読み出し処理)
読出指示部35は、磁気メモリ素子11からデータを読み出すように、第2電流制御部32および第3電流制御部33に指示する。
【0049】
図4は、読出指示部35における読出処理の流れを示すフローチャートである。
図4に示すように、読出指示部35は、まず、第3電流I3を一方の磁気メモリ素子11aに流すように第3電流制御部33に指示して、第3電流I3の値、または、磁性細線22の下端部27と固定層24との間の電圧の値、または、電気抵抗値を第3電流制御部33から取得する(S21)。次に、読出指示部35は、取得した第3電流I3または上記電圧の値または電気抵抗値に基づき、磁性細線22の上端部28における磁区の磁化の向きを特定し、特定した磁化の向きに対応するビットの値を取得する(S22)。
【0050】
次に、読出指示部35は、所望のビット列の値を未だ取得していない場合(S23にてNO)、第2電流I2を磁気メモリ素子11aに流すように第2電流制御部32に指示する(S24)。これにより、磁気メモリ素子11aに形成されている磁区が上方に移動する。なお、磁性細線22の上端部28における磁区は消滅する。その後、ステップS21に戻る。
【0051】
そして、読出指示部35は、所望のビット列の値を取得した場合(S23にてYES)、上記読出処理を終了する。
【0052】
本実施形態では、
図2に示すように、一方のコントローラ12における読出指示部35は、ビットの値を他方のコントローラ12における書込指示部34に送信する。当該書込指示部34は、取得したビットの値に対応する向きに第1電流I1を流すように第1電流制御部31に指示すると共に、第2電流I2を流すように第2電流制御部32に指示する。
【0053】
(読み出し・記録動作)
上記構成の磁気メモリ装置1における読み出し動作を、
図1を参照して説明する。なお、以下では、磁気メモリ素子11およびコントローラ12に関して、読出し側(
図1の左側)を磁気メモリ素子11aおよびコントローラ12aと記載し、記録側(
図1の右側)を磁気メモリ素子11bおよびコントローラ12bと記載する。また、読出し側の磁気メモリ素子11aには、第1磁区から第4磁区が形成されているとする。また、
図1において、磁気メモリ素子11内の矢印は、磁化の向きを示し、矢印内の数字は磁区の番号を示している。従来の磁気メモリ素子は、読み出し用の磁気メモリ素子だけで読み出し動作を行っていたので、読み出し時にデータが消失してしまう。しかしながら、本実施形態では、読み出し側の磁気メモリ素子と記録側の磁気メモリ素子とを有しているために、読出し時のデータの消失を防ぐことができる。すなわち、本実施形態においては、読み出し時にも記録動作(書込み動作)を行う。
【0054】
まず、コントローラ12aの読出指示部35は、
図4のステップS21およびS22を実行して、磁気メモリ素子11aの上端部28における第1磁区の磁化の向き(上向き)に対応するビットの値(1)を取得する(読み出す)。次に、コントローラ12aの読出指示部35は、取得したビットの値をコントローラ12bの書込指示部34に送信する。
【0055】
一方、コントローラ12bの書込指示部34は、
図3のステップS12を実行する。これにより、
図1の動作1001に示すように、上記ビットの値(1)に対応する磁化の向き(上向き)を有する第1磁区が磁気メモリ素子11bの磁性細線22の下端部27に形成される(記録される)。
【0056】
次に、コントローラ12aの読出指示部35は、
図4のステップS24を実行する。これにより、
図1の動作1002に示すように、磁気メモリ素子11aに形成されている磁区が上方に移動し、第1磁区は消滅する。次に、コントローラ12aの読出指示部35は、
図4のステップS21およびS22を実行して、磁気メモリ素子11aの上端部28における第2磁区の磁化の向き(下向き)に対応するビットの値(0)を取得する(読み出す)。次に、コントローラ12aの読出指示部35は、取得したビットの値をコントローラ12bの書込指示部34に送信する。
【0057】
一方、コントローラ12bの書込指示部34は、
図3のステップS12を実行する。これにより、
図1の動作1002に示すように、上記ビットの値(0)に対応する磁化の向き(下向き)を有する第2磁区が磁気メモリ素子11bの磁性細線22の下端部27に形成される(記録される)。
【0058】
次に、コントローラ12aの読出指示部35は、
図4のステップS24を実行する。これにより、
図1の動作1003に示すように、磁気メモリ素子11aに形成されている磁区が上方に移動し、第2磁区は消滅する。次に、コントローラ12aの読出指示部35は、
図4のステップS21およびS22を実行して、磁気メモリ素子11aの上端部28における第3磁区の磁化の向き(下向き)に対応するビットの値(0)を取得する(読み出す)。次に、コントローラ12aの読出指示部35は、取得したビットの値をコントローラ12bの書込指示部34に送信する。
【0059】
一方、コントローラ12bの書込指示部34は、
図3のステップS12を実行する。これにより、
図1の動作1003に示すように、上記ビットの値(0)に対応する磁化の向き(下向き)を有する第3磁区が磁気メモリ素子11bの磁性細線22の下端部27に形成される(記録される)。
【0060】
次に、コントローラ12aの読出指示部35は、
図4のステップS24を実行する。これにより、
図1の動作1004に示すように、磁気メモリ素子11aに形成されている磁区が上方に移動し、第3磁区は消滅する。次に、コントローラ12aの読出指示部35は、
図4のステップS21およびS22を実行して、磁気メモリ素子11aの上端部28における第4磁区の磁化の向き(上向き)に対応するビットの値(1)を取得する(読み出す)。次に、コントローラ12aの読出指示部35は、取得したビットの値をコントローラ12bの書込指示部34に送信する。
【0061】
一方、コントローラ12bの書込指示部34は、
図3のステップS12を実行する。これにより、
図1の動作1004に示すように、上記ビットの値(1)に対応する磁化の向き(上向き)を有する第4磁区が磁気メモリ素子11bの磁性細線22の下端部27に形成される(記録される)。
【0062】
以上により、磁気メモリ素子11aに形成されていた第1磁区~第4磁区が、磁気メモリ素子11bに移動することになる。これにより、磁気メモリ素子11aから順次読み出されたビット列(データ)は、磁気メモリ素子11bに書き込まれるので、消滅することを防止できる。なお、この後は、磁気メモリ素子11bが読出し側となり、磁気メモリ素子11aが記録側となる。
【0063】
(付記事項)
なお、第3電流I3は、第2電流I2よりも小さくてもよいし、同じ値であってもよい。すなわち、読み出し時の電流と書き込み時の電流とを同じにしてもよい。この場合、第3電流制御部33は第2電流制御部32に統合できる。すなわち、電流制御が容易になる。
【0064】
また、磁気メモリ素子11aの読出指示部35は、磁気メモリ素子11aの上端部28における磁区の磁化の向きに対応するビットの値を取得すると共に、磁気メモリ素子11aに形成されている磁区を上方に移動させることになる。
【0065】
また、第2電流I2の大きさは、第1電流I1の大きさと異なってもよい。
【0066】
また、本実施形態では、磁気メモリ素子11は4ビットのデータを記憶しているが、これに限定されるものではなく、例えば、64ビット、128ビット、256ビット等のデータを記憶してもよい。すなわち、本実施形態によれば、スピン軌道トルク(SOT)とスピントランスファートルク(STT)を併用し、それらを「組」として複数用いることにより、多値化による大容量化が可能であり、且つ、データの消滅を防ぐことができる。
【0067】
(変形例)
図5は、本実施形態の磁気メモリ装置1の変形例を示す斜視図である。
【0068】
ところで、磁気メモリ素子11に流す第1電流I1は、ビットの値に従って向きを変更する必要がある。一方、磁気メモリ素子11に流す第2電流I2および第3電流I3は、向きおよび大きさを変更する必要はない。そこで、
図5に示すように、本変形例の磁気メモリ装置1aは、
図1~
図4に示す磁気メモリ装置1に比べて、2つの磁気メモリ素子11(11aと11b)に流す第2電流I2および第3電流I3が共通となっている。
【0069】
また、本変形例の磁気メモリ装置1aは、
図1~
図4に示す磁気メモリ装置1に比べて、2つのコントローラ12(12aと12b)が一体となっている。この場合、コントローラ12に含まれるブロック31~35のうち、第1電流制御部31以外のブロック32~35を一体とすることができる。
【0070】
従って、本変形例の磁気メモリ装置1aは、
図1~
図4に示す磁気メモリ装置1に比べて、部品点数を減らすことができ、装置の小型化を図ることができる。
【0071】
〔実施形態2〕
本発明の別の実施形態について、
図6を参照して説明する。
【0072】
図6は、本実施形態係る磁気メモリ装置の概要を示す斜視図である。
図6に示すように、本実施形態の磁気メモリ装置2は、
図1に示す2つの磁気メモリ素子11(11aと11b)の組13を複数含むものである。なお、
図6では、コントローラ12および配線を省略している。
【0073】
これにより、磁気メモリ装置2の記憶容量を増大させることができる。また、読出し側の磁気メモリ素子11aから読み出したデータを書き込む記録側の磁気メモリ素子11bが予め決まっているので、前記記録側の磁気メモリ素子を探す手間を省くことができる。その結果、上記ビット列を迅速に書き込むことができる。また、複数の組13からデータを並列に読み出すことができる。
【0074】
〔実施形態3〕
本発明のさらに別の実施形態について、
図7を参照して説明する。
【0075】
図7は、本実施形態に係る磁気メモリ装置の概要と、動作の一例を示す斜視図である。
図7に示すように、本実施形態の磁気メモリ装置1は、
図1~
図4に示す磁気メモリ装置1に比べて、2つのコントローラ12(12aと12b)は、読出し側の磁気メモリ素子11と記録側の2つの磁気メモリ素子11(11aと11b)とを識別する識別ビットに対応する磁化の向きを有する磁区(第0磁区)が、2つの磁気メモリ素子11(11aと11b)における磁性細線22の上端部28に形成されるように制御する点が異なり、その他は同様である。
【0076】
図7の例では、読出し側の磁気メモリ素子11における第0磁区の磁化の向きは上向きである一方、記録側の磁気メモリ素子11における第0磁区の磁化の向きは下向きである。また、
図1の例に比べて、第4磁区が省略されている。
【0077】
上記の構成によると、2つのコントローラ12(12aと12b)は、2つの磁気メモリ素子11(11aと11b)における磁性細線22の上端部28の第0磁区が有する磁化の向きに対応するビットの値を読み出すことにより、2つの磁気メモリ素子11(11aと11b)の何れが読出し側の磁気メモリ素子であり、何れが記録側の磁気メモリ素子であるかを容易に識別することができる。
【0078】
上記構成の磁気メモリ装置1における動作を、
図7を参照して説明する。まず、2つのコントローラ12(12aと12b)の読出指示部35は、
図4のステップS21およびS22を実行して、2つの磁気メモリ素子11(11aと11b)の上端部28における第0磁区の磁化の向きに対応する識別ビットの値をそれぞれ取得する。次に、2つのコントローラ12(12aと12b)は、それぞれ取得した識別ビットの値に基づき、読出し側の磁気メモリ素子11と記録側の磁気メモリ素子11とを識別する。
図7の動作1011では、コントローラ12aは、磁気メモリ素子11aが読出し側の磁気メモリ素子11であることを認識する一方、コントローラ12bは、磁気メモリ素子11bが記録側の磁気メモリ素子11であることを認識する。
【0079】
次に、コントローラ12aの読出指示部35は、取得したビットの値をコントローラ12bの書込指示部34に送信する。一方、コントローラ12bの書込指示部34は、
図3のステップS12を実行する。これにより、
図7の動作1012に示すように、上記ビットの値(1)に対応する磁化の向き(上向き)を有する第0磁区が磁気メモリ素子11bの磁性細線22の下端部27に形成される。また、磁気メモリ素子11bの磁性細線22の上端部28における第0磁区が消失する。
【0080】
次に、第1磁区~第3磁区に関しては、
図1の動作1001~動作1003と同様に実行する。これにより、磁気メモリ素子11aに形成されていた第0磁区~第3磁区が、磁気メモリ素子11bに形成されることになる。
【0081】
次に、コントローラ12aの書込指示部34は、
図7の動作1013に示すように、記録側の磁気メモリ素子11であることを示す識別ビットの値(0)に対応する磁化の向き(下向き)を有する第0磁区を磁気メモリ素子11aの磁性細線22の下端部27に形成させる。そして、コントローラ12aの書込指示部34は、
図7の動作1014に示すように、第0磁区を磁気メモリ素子11aの磁性細線22の上端部28に移動させる。その後、磁気メモリ装置1における動作を終了する。
【0082】
〔実施形態4〕
本発明のさらに別の実施形態について、
図8を参照して説明する。
【0083】
図8は、本実施形態に係る磁気メモリ装置の概要と、動作の一例を示す斜視図である。
図8に示すように、本実施形態の磁気メモリ装置1は、
図1~
図4に示す磁気メモリ装置1に比べて、磁気メモリ素子11bに形成した第1磁区~第4磁区を磁気メモリ素子11aに戻す動作が追加される点が異なり、その他は同様である。
【0084】
上記構成の磁気メモリ装置1における動作を、
図8を参照して説明する。まず、
図1に示す動作1001~動作1004が行われて、
図8の動作1021に示すように磁気メモリ素子11aに形成された第1磁区~第4磁区が、
図8の動作1022に示すように磁気メモリ素子11bに移動する。
【0085】
次に、磁気メモリ素子11bおよびコントローラ12bが読出し側とし、磁気メモリ素子11aおよびコントローラ12aが記録側として、
図1に示す動作1001~動作1004と同様の動作を行う。これにより、
図8の動作1023に示すように、磁気メモリ素子11bに形成されていた第1磁区~第4磁区が、磁気メモリ素子11aに移動することになる。すなわち、第1磁区~第4磁区は、元の磁気メモリ素子11aに戻ることになる。
【0086】
従って、磁気メモリ素子11aは、ビット列が実際に記憶される実記憶用素子41として機能し、磁気メモリ素子11bは、ビット列が一時的に記憶される一時記憶用素子42として機能する。
【0087】
(付記事項)
なお、コントローラ12aは、磁気メモリ素子11aの上端部28の磁区が有する磁化の向きに対応するビットの値を読み出すと共に、磁気メモリ素子11aの下端部27に、所定の磁化の向きを有する磁区を形成するように制御してもよい。
【0088】
この場合、磁気メモリ素子11aに形成された磁区を磁気メモリ素子11bに移動させた場合、磁気メモリ素子11aでは磁化の向きが揃うことになる。これにより、磁気メモリ素子11aの下端部27に磁区を形成する場合に、磁化の向きが不揃いであることによる悪影響を減らすことができる。
【0089】
〔実施形態5〕
本発明のさらに別の実施形態について、
図9を参照して説明する。
【0090】
図9は、本実施形態係る磁気メモリ装置の概要を示す斜視図である。
図9に示すように、本実施形態の磁気メモリ装置3は、
図8に示す実記憶用素子41を複数個と、
図8に示す一時記憶用素子42との組43を複数含むものである。なお、
図9では、コントローラ12および配線を省略している。この場合、実記憶用素子41の数が一時記憶用素子42の数よりも多い。
【0091】
これにより、磁気メモリ装置3の記憶容量を増大させることができる。また、上記組43において、実記憶用素子41の割合が大きいので、記憶容量をさらに増大させることができる。また、複数の組43からデータを並列に読み出すことができる。
【0092】
〔変形例〕
以上ではスピン軌道トルク(SOT)とスピントランスファートルク(STT)を併用して磁性細線22内に磁壁や磁区を書き込む構成を示したが、磁区の書き込みと磁区および磁壁の移動との両方が、STTによって行われる構成であってもよい。
【0093】
図10は、磁気メモリ素子11cおよびコントローラ12cの変形例を示す斜視図である。上述した実施形態の磁気メモリ装置は、磁気メモリ素子11およびコントローラ12の代わりに、
図10に示す磁気メモリ素子11cおよびコントローラ12cをそれぞれ備えてもよい。
【0094】
(磁気メモリ素子)
磁気メモリ素子11cは、磁性細線22、中間層23、固定層24、第1固定部51、および第2固定部52を備える。すなわち、
図10に示す磁気メモリ素子11cは、
図1等に示す磁気メモリ素子11に比べて、SOT発生源21の代わりに第1固定部51および第2固定部52を備えている。磁気メモリ素子11cは、複数のビットを記憶可能な磁気メモリ素子である。
【0095】
第1固定部51は、第1方向(上向き、z方向)に磁化方向が固定されている。第1固定部51は、磁性細線22の下端部27に接続されている。第1固定部51は、磁性細線22の下端部27の端面の一部である第1領域に接続されている。第1固定部51は、配線を介してコントローラ12cに接続されている。
【0096】
第2固定部52は、第1方向とは異なる(反対の)第2方向(下向き、-z方向)に磁化方向が固定されている。第2固定部52は、磁性細線22の下端部27に接続されている。第2固定部52は、磁性細線22の下端部27の端面の他の一部である第2領域に接続されている。第2固定部52は、配線を介してコントローラ12cに接続されている。
【0097】
第1固定部51と第2固定部52との間は、絶縁体(図示せず)で分離されていてもよい。平面視において(z方向からみて)、磁性細線22の下端部27の端面に対し、第1固定部51が重なって配置されている。平面視において、磁性細線22の下端部27の端面に対し、第2固定部52が重なって配置されている。平面視において、第1固定部51および第2固定部52は、互いに重ならず、別々に配置されている。
【0098】
第1固定部51および第2固定部52は、垂直磁気異方性を有する強磁性体である。第1固定部51および第2固定部52は、固定層24と同様の材質であり得るが、異なる材質であってもよい。第1固定部51および第2固定部52は、互いに同じ材質であってもよいし、互いに異なる材質であってもよい。
【0099】
(コントローラ)
コントローラ12cは、磁気メモリ素子11cへの情報の書込および読出を行う。また、コントローラ12cは、磁性細線22中の情報(磁区)の移動を行う。コントローラ12cは、書き込み時において、固定層24から(すなわち磁性細線22の上端部28から)第1固定部51または第2固定部52に電流を流すことによって、磁性細線22に磁区を書き込む。
【0100】
図11は、上記コントローラ12cの概略構成を示すブロック図である。コントローラ12cは、第4電流制御部37、第5電流制御部38、書込指示部34、読出指示部35、および測定部36を含む。
【0101】
第4電流制御部37は、第4電流I4の大きさ、向き、および流すタイミングを制御する。第4電流I4は、第1固定部51からコントローラ12cに流れる電流である。
【0102】
第5電流制御部38は、第5電流I5の大きさ、向き、および流すタイミングを制御する。第5電流I5は、第2固定部52からコントローラ12cに流れる電流である。第6電流I6は、固定層24に接続された配線を流れる電流である。第6電流I6=第4電流I4+第5電流I5である。
【0103】
書込指示部34は、外部の装置から取得したデータを磁気メモリ素子11に書き込むように、第4電流制御部37および第5電流制御部38に指示する。
【0104】
読出指示部35は、磁気メモリ素子11からデータを読み出すように、測定部36と、第4電流制御部37および/または第5電流制御部38とに指示する。読出指示部35は、測定部36の測定結果から、磁性細線22の上端部28側に形成されている磁区が有する磁化方向を特定し、特定した磁化方向に対応するビットの値を特定する。また、読出指示部35は、磁気メモリ素子11に所定の第6電流I6を流すことで、磁性細線22に書き込まれている複数の磁区および磁壁を上端部28側(固定層24側)に移動させる。複数の磁区および磁壁が移動することにより上端部28側から1番目に形成されていた磁区はなくなり、2番目に形成されていた磁区が中間層23に隣接することになる。磁区が有する磁化方向の読み取りと、磁区の移動とを繰り返すことにより、読出指示部35は、磁気メモリ素子11に書き込まれている複数のビットを読み出す。
【0105】
測定部36は、読み出し時において、中間層23と磁性細線22の上端部28と、固定層24とで構成する磁気トンネル接合(TMR素子)に第6電流I6を流すことによって磁気トンネル接合の抵抗値を測定する。例えば、測定部36は、一定の第6電流I6が流れているときの、固定層24と第1固定部51または第2固定部52との間に掛かる電圧を測定する。または、測定部36は、固定層24と第1固定部51および第2固定部52との間に一定の電圧が掛かっているときの、第6電流I6を測定する。測定部36は、測定結果を読出指示部35に出力する。
【0106】
(磁区の書き込みと移動)
第4電流制御部37は、第1固定部51を通る第4電流I4を磁性細線22に流す。これにより生じるスピントランスファートルクにより、第1固定部51から磁性細線22の下端部27に、第1方向の磁化方向を有する磁区が書き込まれる。また、磁性細線22に第4電流I4が流れることで、スピントランスファートルクにより、磁性細線22の複数の磁区は、上端部28側に移動する。
【0107】
第5電流制御部38は、第2固定部52を通る第5電流I5を磁性細線22に流す。これにより生じるスピントランスファートルクにより、第2固定部52から磁性細線22の下端部27に、第2方向の磁化方向を有する磁区が書き込まれる。また、磁性細線22に第5電流I5が流れることで、スピントランスファートルクにより、磁性細線22の複数の磁区は、上端部28側に移動する。第1固定部51および第2固定部52は、スピントランスファートルク発生源である。
【0108】
〔実施形態6〕
本発明のさらに別の実施形態について、
図12を参照して説明する。
【0109】
図12は、本実施形態に係る磁気メモリ装置の概要と、動作の一例を示す斜視図である。
図12に示すように、本実施形態の磁気メモリ装置1は、
図1~
図4に示す磁気メモリ装置1に比べて、読出し側の磁気メモリ素子11aおよびコントローラ12aを、
図10に示す磁気メモリ素子11cおよびコントローラ12cに変更している点が異なり、その他は同様である。
【0110】
上記構成の磁気メモリ装置1における読み出し動作および記録動作を、
図12を参照して説明する。まず、コントローラ12cの書込指示部34は、第4電流I4を流すように第4電流制御部37に指示し、或いは、第5電流I5を流すように第5電流制御部38に指示し、これを繰り返す。これにより、
図12の動作1031における左側の磁気メモリ素子11cのように、ビット列に対応する複数の磁区が積み上がる。
【0111】
次に、コントローラ12cの読出指示部35は、
図12の動作1031に示すように、第6電流I6を流すように第4電流制御部37および第5電流制御部38に指示し、それから、測定部36の測定結果を取得する。これにより、読出指示部35は、磁気メモリ素子11cの上端部28における第1磁区の磁化の向き(上向き)に対応するビットの値(1)を取得する(読み出す)。また、
図12の動作1032に示すように、磁気メモリ素子11cに形成されている磁区が上方に移動し、第1磁区は消滅する。
【0112】
次に、コントローラ12cの読出指示部35は、取得したビットの値をコントローラ12bの書込指示部34に送信する。一方、コントローラ12bの書込指示部34は、
図3のステップS12を実行する。これにより、
図12の動作1031に示すように、上記ビットの値(1)に対応する磁化の向き(上向き)を有する第1磁区が磁気メモリ素子11bの磁性細線22の下端部27に形成される(記録される)。
【0113】
次に、コントローラ12cの読出指示部35は、
図12の動作1032に示すように、第6電流I6を流すように第4電流制御部37および第5電流制御部38に指示し、それから、測定部36の測定結果を取得する。これにより、読出指示部35は、磁気メモリ素子11cの上端部28における第2磁区の磁化の向き(下向き)に対応するビットの値(0)を取得する(読み出す)。また、
図12の動作1033に示すように、磁気メモリ素子11cに形成されている磁区が上方に移動し、第2磁区は消滅する。
【0114】
次に、コントローラ12cの読出指示部35は、取得したビットの値をコントローラ12bの書込指示部34に送信する。一方、コントローラ12bの書込指示部34は、
図3のステップS12を実行する。これにより、
図12の動作1032に示すように、上記ビットの値(0)に対応する磁化の向き(下向き)を有する第2磁区が磁気メモリ素子11bの磁性細線22の下端部27に形成される(記録される)。
【0115】
次に、コントローラ12cの読出指示部35は、
図12の動作1033に示すように、第6電流I6を流すように第4電流制御部37および第5電流制御部38に指示し、それから、測定部36の測定結果を取得する。これにより、読出指示部35は、磁気メモリ素子11cの上端部28における第3磁区の磁化の向き(下向き)に対応するビットの値(0)を取得する(読み出す)。また、
図12の動作1034に示すように、磁気メモリ素子11cに形成されている磁区が上方に移動し、第3磁区は消滅する。
【0116】
次に、コントローラ12cの読出指示部35は、取得したビットの値をコントローラ12bの書込指示部34に送信する。一方、コントローラ12bの書込指示部34は、
図3のステップS12を実行する。これにより、
図12の動作1033に示すように、上記ビットの値(0)に対応する磁化の向き(下向き)を有する第3磁区が磁気メモリ素子11bの磁性細線22の下端部27に形成される(記録される)。
【0117】
次に、コントローラ12cの読出指示部35は、
図12の動作1034に示すように、第6電流I6を流すように第4電流制御部37および第5電流制御部38に指示し、それから、測定部36の測定結果を取得する。これにより、読出指示部35は、磁気メモリ素子11cの上端部28における第4磁区の磁化の向き(上向き)に対応するビットの値(1)を取得する(読み出す)。また、
図12には示していないが、磁気メモリ素子11cに形成されている磁区が上方に移動し、第4磁区は消滅する。
【0118】
次に、コントローラ12cの読出指示部35は、取得したビットの値をコントローラ12bの書込指示部34に送信する。一方、コントローラ12bの書込指示部34は、
図3のステップS12を実行する。これにより、
図12の動作1034に示すように、上記ビットの値(1)に対応する磁化の向き(上向き)を有する第4磁区が磁気メモリ素子11bの磁性細線22の下端部27に形成される(記録される)。
【0119】
以上により、磁気メモリ素子11cに形成されていた第1磁区~第4磁区が、磁気メモリ素子11bに移動することになる。これにより、磁気メモリ素子11cから順次読み出されたビット列(データ)は、磁気メモリ素子11bに書き込まれるので、消滅することを防止できる。なお、この後は、磁気メモリ素子11bが読出し側となり、磁気メモリ素子11cが記録側となる。
【0120】
〔実施形態7〕
本発明のさらに別の実施形態について、
図13を参照して説明する。
【0121】
図13は、本実施形態に係る磁気メモリ装置の概要と、動作の一例を示す斜視図である。
図13に示すように、本実施形態の磁気メモリ装置1は、
図1~
図4に示す磁気メモリ装置1に比べて、記録側の磁気メモリ素子11bおよびコントローラ12bを、
図10に示す磁気メモリ素子11cおよびコントローラ12cに変更している点が異なり、その他は同様である。
【0122】
上記構成の磁気メモリ装置1における読み出し動作および記録動作を、
図13を参照して説明する。まず、コントローラ12aの書込指示部34は、
図3のステップS11~S13を実行する。これにより、
図13の動作1041における左側の磁気メモリ素子11aのように、ビット列に対応する複数の磁区が積み上がる。
【0123】
次に、コントローラ12aの読出指示部35は、
図4のステップS21およびS22を実行して、磁気メモリ素子11aの上端部28における第1磁区の磁化の向き(上向き)に対応するビットの値(1)を取得する(読み出す)。次に、コントローラ12aの読出指示部35は、取得したビットの値をコントローラ12cの書込指示部34に送信する。
【0124】
一方、コントローラ12cの書込指示部34は、上記ビットの値(1)に対応する磁化の向き(上向き)を有する第1固定部51を通る第4電流I4を磁性細線22に流すように第4電流制御部37に指示する。これにより、
図13の動作1041に示すように、上記ビットの値(1)に対応する磁化の向き(上向き)を有する第1磁区が磁気メモリ素子11cの磁性細線22の下端部27に形成される(記録される)。
【0125】
次に、コントローラ12aの読出指示部35は、
図4のステップS24を実行する。これにより、
図13の動作1042に示すように、磁気メモリ素子11aに形成されている磁区が上方に移動し、第1磁区は消滅する。次に、コントローラ12aの読出指示部35は、
図4のステップS21およびS22を実行して、磁気メモリ素子11aの上端部28における第2磁区の磁化の向き(下向き)に対応するビットの値(0)を取得する(読み出す)。次に、コントローラ12aの読出指示部35は、取得したビットの値をコントローラ12cの書込指示部34に送信する。
【0126】
一方、コントローラ12cの書込指示部34は、上記ビットの値(0)に対応する磁化の向き(下向き)を有する第2固定部52を通る第5電流I5を磁性細線22に流すように第5電流制御部38に指示する。これにより、
図13の動作1042に示すように、上記ビットの値(0)に対応する磁化の向き(下向き)を有する第2磁区が磁気メモリ素子11cの磁性細線22の下端部27に形成される(記録される)。
【0127】
次に、コントローラ12aの読出指示部35は、
図4のステップS24を実行する。これにより、
図13の動作1043に示すように、磁気メモリ素子11aに形成されている磁区が上方に移動し、第2磁区は消滅する。次に、コントローラ12aの読出指示部35は、
図4のステップS21およびS22を実行して、磁気メモリ素子11aの上端部28における第3磁区の磁化の向き(下向き)に対応するビットの値(0)を取得する(読み出す)。次に、コントローラ12aの読出指示部35は、取得したビットの値をコントローラ12cの書込指示部34に送信する。
【0128】
一方、コントローラ12cの書込指示部34は、上記ビットの値(0)に対応する磁化の向き(下向き)を有する第2固定部52を通る第5電流I5を磁性細線22に流すように第5電流制御部38に指示する。これにより、
図13の動作1043に示すように、上記ビットの値(0)に対応する磁化の向き(下向き)を有する第3磁区が磁気メモリ素子11cの磁性細線22の下端部27に形成される(記録される)。
【0129】
次に、コントローラ12aの読出指示部35は、
図4のステップS24を実行する。これにより、
図13の動作1044に示すように、磁気メモリ素子11aに形成されている磁区が上方に移動し、第3磁区は消滅する。次に、コントローラ12aの読出指示部35は、
図4のステップS21およびS22を実行して、磁気メモリ素子11aの上端部28における第4磁区の磁化の向き(上向き)に対応するビットの値(1)を取得する(読み出す)。次に、コントローラ12aの読出指示部35は、取得したビットの値をコントローラ12cの書込指示部34に送信する。
【0130】
一方、コントローラ12cの書込指示部34は、上記ビットの値(1)に対応する磁化の向き(上向き)を有する第1固定部51を通る第4電流I4を磁性細線22に流すように第4電流制御部37に指示する。これにより、
図13の動作1044に示すように、上記ビットの値(1)に対応する磁化の向き(上向き)を有する第4磁区が磁気メモリ素子11cの磁性細線22の下端部27に形成される(記録される)。
【0131】
以上により、磁気メモリ素子11aに形成されていた第1磁区~第4磁区が、磁気メモリ素子11cに移動することになる。これにより、磁気メモリ素子11aから順次読み出されたビット列(データ)は、磁気メモリ素子11cに書き込まれるので、消滅することを防止できる。なお、この後は、磁気メモリ素子11cが読出し側となり、磁気メモリ素子11aが記録側となり、
図12に示す動作1031~動作1034が実行される。
【0132】
〔実施形態8〕
本発明のさらに別の実施形態について、
図14を参照して説明する。
【0133】
図14は、本実施形態に係る磁気メモリ装置の概要と、動作の一例を示す斜視図である。
図14に示すように、本実施形態の磁気メモリ装置1は、
図1~
図4に示す磁気メモリ装置1に比べて、読出し側の磁気メモリ素子11aおよびコントローラ12aを、
図10に示す磁気メモリ素子11cおよびコントローラ12cに変更している点と、記録側の磁気メモリ素子11bおよびコントローラ12bを、
図10に示す磁気メモリ素子11cおよびコントローラ12cに変更している点が異なり、その他は同様である。なお、以下では、読出し側の磁気メモリ素子11cおよびコントローラ12cを、それぞれ、磁気メモリ素子11c1およびコントローラ12c1と称し、記録側の磁気メモリ素子11cおよびコントローラ12cを、それぞれ、磁気メモリ素子11c2およびコントローラ12c2と称する。
【0134】
上記構成の磁気メモリ装置1における読み出し動作および記録動作を、
図14を参照して説明する。まず、コントローラ12c1の書込指示部34は、第4電流I4を流すように第4電流制御部37に指示し、或いは、第5電流I5を流すように第5電流制御部38に指示し、これを繰り返す。これにより、
図14の動作1051における左側の磁気メモリ素子11c1のように、ビット列に対応する複数の磁区が積み上がる。
【0135】
次に、コントローラ12c1の読出指示部35は、
図14の動作1031に示すように、第6電流I6を流すように第4電流制御部37および第5電流制御部38に指示し、それから、測定部36の測定結果を取得する。これにより、読出指示部35は、磁気メモリ素子11c1の上端部28における第1磁区の磁化の向き(上向き)に対応するビットの値(1)を取得する(読み出す)。また、
図14の動作1052に示すように、磁気メモリ素子11c1に形成されている磁区が上方に移動し、第1磁区は消滅する。
【0136】
次に、コントローラ12c1の読出指示部35は、取得したビットの値をコントローラ12c2の書込指示部34に送信する。一方、コントローラ12c2の書込指示部34は、上記ビットの値(1)に対応する磁化の向き(上向き)を有する第1固定部51を通る第4電流I4を磁性細線22に流すように第4電流制御部37に指示する。これにより、
図14の動作1051に示すように、上記ビットの値(1)に対応する磁化の向き(上向き)を有する第1磁区が磁気メモリ素子11c2の磁性細線22の下端部27に形成される(記録される)。
【0137】
次に、コントローラ12c1の読出指示部35は、
図14の動作1052に示すように、第6電流I6を流すように第4電流制御部37および第5電流制御部38に指示し、それから、測定部36の測定結果を取得する。これにより、読出指示部35は、磁気メモリ素子11c1の上端部28における第2磁区の磁化の向き(下向き)に対応するビットの値(0)を取得する(読み出す)。また、
図14の動作1053に示すように、磁気メモリ素子11c1に形成されている磁区が上方に移動し、第2磁区は消滅する。
【0138】
次に、コントローラ12c1の読出指示部35は、取得したビットの値をコントローラ12c2の書込指示部34に送信する。一方、コントローラ12c2の書込指示部34は、上記ビットの値(0)に対応する磁化の向き(下向き)を有する第2固定部52を通る第5電流I5を磁性細線22に流すように第5電流制御部38に指示する。これにより、
図14の動作1052に示すように、上記ビットの値(0)に対応する磁化の向き(下向き)を有する第2磁区が磁気メモリ素子11c2磁性細線22の下端部27に形成される(記録される)。
【0139】
次に、コントローラ12c1の読出指示部35は、
図14の動作1053に示すように、第6電流I6を流すように第4電流制御部37および第5電流制御部38に指示し、それから、測定部36の測定結果を取得する。これにより、読出指示部35は、磁気メモリ素子11c1の上端部28における第3磁区の磁化の向き(下向き)に対応するビットの値(0)を取得する(読み出す)。また、
図14の動作1054に示すように、磁気メモリ素子11c1に形成されている磁区が上方に移動し、第3磁区は消滅する。
【0140】
次に、コントローラ12c1の読出指示部35は、取得したビットの値をコントローラ12c2の書込指示部34に送信する。一方、コントローラ12c2の書込指示部34は、上記ビットの値(0)に対応する磁化の向き(下向き)を有する第2固定部52を通る第5電流I5を磁性細線22に流すように第5電流制御部38に指示する。これにより、
図14の動作1053に示すように、上記ビットの値(0)に対応する磁化の向き(下向き)を有する第3磁区が磁気メモリ素子11c2の磁性細線22の下端部27に形成される(記録される)。
【0141】
次に、コントローラ12c1の読出指示部35は、
図14の動作1054に示すように、第6電流I6を流すように第4電流制御部37および第5電流制御部38に指示し、それから、測定部36の測定結果を取得する。これにより、読出指示部35は、磁気メモリ素子11c1の上端部28における第4磁区の磁化の向き(上向き)に対応するビットの値(1)を取得する(読み出す)。また、
図14には示していないが、磁気メモリ素子11c1に形成されている磁区が上方に移動し、第4磁区は消滅する。
【0142】
次に、コントローラ12c1の読出指示部35は、取得したビットの値をコントローラ12c2の書込指示部34に送信する。一方、コントローラ12c2の書込指示部34は、上記ビットの値(1)に対応する磁化の向き(上向き)を有する第1固定部51を通る第4電流I4を磁性細線22に流すように第4電流制御部37に指示する。これにより、
図14の動作1054に示すように、上記ビットの値(1)に対応する磁化の向き(上向き)を有する第4磁区が磁気メモリ素子11c2の磁性細線22の下端部27に形成される(記録される)。
【0143】
以上により、磁気メモリ素子11c1に形成されていた第1磁区~第4磁区が、磁気メモリ素子11c2に移動することになる。これにより、磁気メモリ素子11c1から順次読み出されたビット列(データ)は、磁気メモリ素子11c2に書き込まれるので、消滅することを防止できる。なお、この後は、磁気メモリ素子11c2が読出し側となり、磁気メモリ素子11c1が記録側となる。
【0144】
以上のように、
図1~
図4に示す磁気メモリ装置1に対し、
図10および
図11に示す磁気メモリ素子11cおよびコントローラ12cを適用することができる。同様にすれば、
図5~
図9に示す磁気メモリ装置1・1a・2・3に対し、
図10および
図11に示す磁気メモリ素子11cおよびコントローラ12cを適用できることが理解できる。
【0145】
〔ソフトウェアによる実現例〕
磁気メモリ装置1~3(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特にコントローラ12に含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0146】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0147】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0148】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0149】
また、上記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0150】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0151】
1・2・3 磁気メモリ装置
11・11a・11b・11c 磁気メモリ素子
12・12a・12b・12c コントローラ
21 SOT発生源(スピン軌道トルク発生源)
22 磁性細線
23 中間層
24 固定層
25 一端部
26 他端部
27 下端部(一端部)
28 上端部(他端部)
31 第1電流制御部
32 第2電流制御部
33 第3電流制御部
34 書込指示部
35 読出指示部
36 測定部
37 第4電流制御部
38 第5電流制御部
41 実記憶用素子
42 一時記憶用素子
51 第1固定部(スピントランスファートルク発生源)
52 第2固定部(スピントランスファートルク発生源)