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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114457
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】糸巻取システム
(51)【国際特許分類】
   B65H 67/06 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
B65H67/06 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020248
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】春日 照之
(72)【発明者】
【氏名】霜 宗叙
(72)【発明者】
【氏名】福澤 恵伸
【テーマコード(参考)】
3F112
【Fターム(参考)】
3F112AA06
3F112CA03
3F112EB05
3F112HA04
3F112RC03
(57)【要約】
【課題】準備処理の速度が所望の速度となるように、準備処理の条件を容易に調整可能とする。
【解決手段】自動ワインダに給糸ボビンを供給するボビン処理装置と、表示装置と、を備える。ボビン処理装置は、自動ワインダの巻取ユニットでの糸の巻き取りのために給糸ボビンに対して準備処理を施す準備処理部を有しており、準備処理部で準備処理を施した給糸ボビンを自動ワインダに順次供給する。表示装置は、準備処理に関する条件を入力するための入力領域71と、入力領域71に入力された条件に基づいて導出される準備処理の速度である導出処理速度を表示する表示領域75と、を有する設定画面70を表示する。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボビン管に糸が巻き付けられた給糸ボビンから糸を解舒し、解舒した糸を巻取ボビンに巻き取ってパッケージを形成する複数の巻取ユニットを有する自動ワインダに前記給糸ボビンを供給するボビン処理装置と、
表示装置と、を備えた糸巻取システムであって、
前記ボビン処理装置は、前記巻取ユニットでの糸の巻き取りのために前記給糸ボビンに対して準備処理を施す準備処理部を有しており、前記準備処理部で前記準備処理を施した前記給糸ボビンを前記自動ワインダに順次供給し、
前記表示装置は、前記準備処理に関する条件を入力するための入力領域と、前記入力領域に入力された前記条件に基づいて導出される前記準備処理の速度である導出処理速度を表示する表示領域と、を有する設定画面を表示することを特徴とする糸巻取システム。
【請求項2】
前記準備処理は、複数の工程を含んでおり、
前記準備処理部は、前記複数の工程のうち互いに異なる工程が行われる複数のステーションを有しており、
前記表示装置は、前記複数のステーションの各々で行われる工程の前記導出処理速度を前記表示領域に表示することを特徴とする請求項1に記載の糸巻取システム。
【請求項3】
前記表示装置は、前記設定画面に前記複数の工程に関する条件を入力するための複数の入力領域を表示し、且つ、前記設定画面に表示される前記各入力領域と、前記表示領域に表示される前記各導出処理速度とを、前記複数の工程のうち何れの工程に関するものかに基づいて紐づけて表示することを特徴とする請求項2に記載の糸巻取システム。
【請求項4】
前記自動ワインダへの必要な前記給糸ボビンの供給速度である必要供給速度を取得する供給速度取得部をさらに備えており、
前記表示装置は、前記供給速度取得部で取得された前記必要供給速度を前記表示領域にさらに表示することを特徴とする請求項2に記載の糸巻取システム。
【請求項5】
作業者への報知を行う報知部をさらに備えており、
前記報知部は、前記表示領域に表示される複数の前記導出処理速度の中に、前記必要供給速度を下回っているものがある場合に、その旨を報知することを特徴とする請求項4に記載の糸巻取システム。
【請求項6】
前記報知部は、前記表示装置であり、
前記表示装置は、前記表示領域に表示される複数の前記導出処理速度の中で前記必要供給速度を下回っているものと、前記必要供給速度を下回っていないものと、で異なる態様で表示することを特徴とする請求項5に記載の糸巻取システム。
【請求項7】
前記複数のステーションの各々で行われる工程の速度の実測値である実処理速度を取得する実処理速度取得部をさらに備えており、
前記表示装置は、前記複数のステーションの各々で行われる工程についての前記実処理速度及び前記導出処理速度と前記実処理速度との差分の少なくとも一方を前記表示領域に表示することを特徴とする請求項2に記載の巻取システム。
【請求項8】
作業者への報知を行う報知部をさらに備えており、
前記報知部は、前記表示領域に表示される複数の前記導出処理速度の中に、対応する前記実処理速度との差分が所定値以上であるものがある場合に、その旨を報知することを特徴とする請求項7に記載の糸巻取システム。
【請求項9】
前記報知部は、前記表示装置であり、
前記表示装置は、前記表示領域に表示される複数の前記導出処理速度の中で対応する前記実処理速度との差分が所定値以上であるものと、対応する前記実処理速度との差分が所定値未満であるものと、で異なる態様で表示することを特徴とする請求項8に記載の糸巻取システム。
【請求項10】
前記表示装置は、前記設定画面に前記準備処理に関する複数の条件のうちの一部の条件を入力するための一又は複数の入力領域を表示可能であり、且つ、前記設定画面に表示されている前記一又は複数の入力領域のうちの少なくとも1つの入力領域を、前記一部の条件とは別の条件を入力するための入力領域に切り替え可能に表示し、前記表示領域に情報が表示される表示項目は前記設定画面に固定的に表示することを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の糸巻取システム。
【請求項11】
前記表示装置は、前記設定画面における前記入力領域が表示される部分の背景色を、前記表示領域が表示される部分の背景色とは異なる色とすることを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の糸巻取システム。
【請求項12】
前記準備処理部は、
前記給糸ボビンの外周に巻き付けられたバックワインド糸を切断して糸端を形成する糸端形成工程が行われる第1ステーションと、
前記糸端形成工程で形成された糸端を吸引し、前記ボビン管の内側に挿入する口出し工程が行われる第2ステーションと、を有していることを特徴とする請求項2~9のいずれか1項に記載の糸巻取システム。
【請求項13】
前記準備処理部は、前記第1ステーションにおいて前記糸端形成工程を行う前に行う予備工程が行われる予備工程ステーションをさらに備えており、
前記予備工程ステーションでは、前記給糸ボビンに形成されたボトムバンチを除去するバンチ除去工程、及び、前記給糸ボビンの糸層表面から糸を引き出す糸引出工程の少なくとも一方が行われることを特徴とする請求項12に記載の糸巻取システム。
【請求項14】
前記第1ステーションは、
前記給糸ボビンの前記バックワインド糸を捕捉するための糸捕捉部と、
前記糸捕捉部を前記給糸ボビンの軸方向に沿って移動させるためのステッピングモータと、を備えており、
前記表示装置は、前記準備処理に関する条件として、前記糸捕捉部の前記軸方向に関する移動長さ及び移動速度の少なくとも一方を入力する前記入力領域を有する前記設定画面を表示することを特徴とする請求項12に記載の糸巻取システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸巻取システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の巻取ユニットを有する自動ワインダと、給糸ボビンに適切な処理を施し、自動ワインダに給糸ボビンを順次供給するボビン処理装置と、を備えた自動ワインダシステム(糸巻取システム)が開示されている。給糸ボビンは、ボビン管に糸が巻き付けられたものである。自動ワインダは、各巻取ユニットにおいて給糸ボビンから糸を解舒し、解舒した糸を巻取ボビンに巻き取ってパッケージを形成する。かかる自動ワインダシステムにおいては、ボビン処理装置において給糸ボビンの糸端をボビン管の内部に挿入する口出し処理(準備処理)を行い、口出し処理が施された状態の給糸ボビンを自動ワインダに供給する。口出し処理を施すことで、巻取ユニットにおいて給糸ボビンの糸端を容易に捕捉でき、巻取ユニットにおける糸の巻き取りをスムーズに開始することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-6671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような糸巻取システムにおいては、準備処理に関する条件の設定を行う必要がある。準備処理の条件を変更することで、準備処理の速度が変わる。すなわち、準備処理の条件を変更することで、単位時間当たりの給糸ボビンの自動ワインダへの供給本数が変わる。しかしながら、準備処理の条件と準備処理の速度との関係には、様々な条件が影響するので、この関係を事前に把握することは困難である。したがって、準備処理の速度が所望の速度となるように、準備処理の条件を事前に設定することは困難である。
【0005】
本発明の目的は、準備処理の速度が所望の速度となるように、準備処理の条件を容易に調整可能な糸巻取システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明にかかる糸巻取システムは、ボビン管に糸が巻き付けられた給糸ボビンから糸を解舒し、解舒した糸を巻取ボビンに巻き取ってパッケージを形成する複数の巻取ユニットを有する自動ワインダに前記給糸ボビンを供給するボビン処理装置と、表示装置と、を備えた糸巻取システムであって、前記ボビン処理装置は、前記巻取ユニットでの糸の巻き取りのために前記給糸ボビンに対して準備処理を施す準備処理部を有しており、前記準備処理部で前記準備処理を施した前記給糸ボビンを前記自動ワインダに順次供給し、前記表示装置は、前記準備処理に関する条件を入力するための入力領域と、前記入力領域に入力された前記条件に基づいて導出される前記準備処理の速度である導出処理速度を表示する表示領域と、を有する設定画面を表示する。
【0007】
本発明では、作業者が、設定画面の入力領域に準備処理に関する条件を入力すると、入力された条件での導出処理速度が設定画面の表示領域に表示される。したがって、作業者は、設定画面の表示領域に表示される導出処理速度を確認することで、準備処理の速度が所望の速度となるように、準備処理に関する条件を容易に調整可能である。
【0008】
第2の発明にかかる糸巻取システムでは、第1の発明において、前記準備処理は、複数の工程を含んでおり、前記準備処理部は、前記複数の工程のうち互いに異なる工程が行われる複数のステーションを有しており、前記表示装置は、前記複数のステーションの各々で行われる工程の前記導出処理速度を前記表示領域に表示する。
【0009】
本発明では、設定画面の表示領域に表示された各ステーションでの導出処理速度を確認することで、複数のステーションでそれぞれ行われる工程の中でボトルネックとなっている工程がないかを確認することができる。
【0010】
第3の発明にかかる糸巻取システムでは、第2の発明において、前記表示装置は、前記設定画面に前記複数の工程に関する条件を入力するための複数の入力領域を表示し、且つ、前記設定画面に表示される前記各入力領域と、前記表示領域に表示される前記各導出処理速度とを、前記複数の工程のうち何れの工程に関するものかに基づいて紐づけて表示する。
【0011】
本発明では、設定画面に表示される複数の入力領域のうち、どの入力領域に入力する条件を変更すれば、どの工程の導出処理速度が変わるかを容易に把握することができる。
【0012】
第4の発明にかかる糸巻取システムは、第2の発明において、前記自動ワインダへの必要な前記給糸ボビンの供給速度である必要供給速度を取得する供給速度取得部をさらに備えており、前記表示装置は、前記供給速度取得部で取得された前記必要供給速度を前記表示領域にさらに表示する。
【0013】
本発明では、作業者は、表示領域に表示される必要供給速度を確認することで、準備処理の速度をどの程度にすればいいかを把握することができる。したがって、準備処理の速度が適切な大きさとなるように、準備処理に関する条件を調整可能である。
【0014】
第5の発明にかかる糸巻取システムは、第4の発明において、作業者への報知を行う報知部をさらに備えており、前記報知部は、前記表示領域に表示される複数の前記導出処理速度の中に、前記必要供給速度を下回っているものがある場合に、その旨を報知する。
【0015】
導出処理速度が必要供給速度を下回ると、自動ワインダへの給糸ボビンの供給が滞ってしまう。本発明では、導出処理速度が必要供給速度を下回っている旨を作業者に報知し、準備処理の条件設定を見直すように促すことができる。
【0016】
第6の発明にかかる糸巻取システムでは、第5の発明において、前記報知部は、前記表示装置であり、前記表示装置は、前記表示領域に表示される複数の前記導出処理速度の中で前記必要供給速度を下回っているものと、前記必要供給速度を下回っていないものと、で異なる態様で表示する。
【0017】
本発明では、作業者は、どの工程の条件設定を見直せばいいかを容易に把握することができる。
【0018】
第7の発明にかかる糸巻取システムは、第2の発明において、前記複数のステーションの各々で行われる工程の速度の実測値である実処理速度を取得する実処理速度取得部をさらに備えており、前記表示装置は、前記複数のステーションの各々で行われる工程についての前記実処理速度及び前記導出処理速度と前記実処理速度との差分の少なくとも一方を前記表示領域に表示する。
【0019】
本発明では、作業者は、表示領域の表示内容を確認することで、導出処理速度と実処理速度との差分を把握することができる。そして、導出処理速度と実処理速度との差分の大きさにより、工程のメンテナンスの必要性や準備処理の条件設定の見直しの必要性を把握できる。
【0020】
第8の発明にかかる糸巻取システムは、第7の発明において、作業者への報知を行う報知部をさらに備えており、前記報知部は、前記表示領域に表示される複数の前記導出処理速度の中に、対応する前記実処理速度との差分が所定値以上であるものがある場合に、その旨を報知する。
【0021】
本発明では、導出処理速度と実処理速度との差分が所定値以上である旨を作業者に報知し、工程のメンテナンスや準備処理の条件設定の見直しを促すことができる。
【0022】
第9の発明にかかる糸巻取システムでは、第8の発明において、前記報知部は、前記表示装置であり、前記表示装置は、前記表示領域に表示される複数の前記導出処理速度の中で対応する前記実処理速度との差分が所定値以上であるものと、対応する前記実処理速度との差分が所定値未満であるものと、で異なる態様で表示する。
【0023】
本発明では、作業者は、どの工程についてメンテナンスや条件設定の見直しを行えばいいかを容易に把握することができる。
【0024】
第10の発明にかかる糸巻取システムでは、第1~第9のいずれかの発明において、前記表示装置は、前記設定画面に前記準備処理に関する複数の条件のうちの一部の条件を入力するための一又は複数の入力領域を表示可能であり、且つ、前記設定画面に表示されている前記一又は複数の入力領域のうちの少なくとも1つの入力領域を、前記一部の条件とは別の条件を入力するための入力領域に切り替え可能に表示し、前記表示領域に情報が表示される表示項目は前記設定画面に固定的に表示する。
【0025】
本発明では、設定画面に表示する入力領域を切り替えて準備処理に関する複数の条件の調整を行う場合であっても、表示領域に情報が表示される設定項目は固定的に設定画面に表示される。したがって、作業者は、設定画面の表示領域に表示される表示内容を確認しつつ、準備処理に関する複数の条件を容易に調整可能である。
【0026】
第11の発明にかかる糸巻取システムでは、第1~第9のいずれかの発明において、前記表示装置は、前記設定画面における前記入力領域が表示される部分の背景色を、前記表示領域が表示される部分の背景色とは異なる色とする。
【0027】
本発明では、設定画面におけるどの部分に設定すべき条件を入力すればいいのかが分かりやすい。
【0028】
第12の発明にかかる糸巻取システムでは、第2~第9のいずれかの発明において、前記準備処理部は、前記給糸ボビンの外周に巻き付けられたバックワインド糸を切断して糸端を形成する糸端形成工程が行われる第1ステーションと、前記糸端形成工程で形成された糸端を吸引し、前記ボビン管の内側に挿入する口出し工程が行われる第2ステーションと、を有している。
【0029】
本発明では、糸端形成工程及び口出し工程での条件を容易に調整可能である。
【0030】
第13の発明にかかる糸巻取システムでは、第12の発明において、前記準備処理部は、前記第1ステーションにおいて前記糸端形成工程を行う前に行う予備工程が行われる予備工程ステーションをさらに備えており、前記予備工程ステーションでは、前記給糸ボビンに形成されたボトムバンチを除去するバンチ除去工程、及び、前記給糸ボビンの糸層表面から糸を引き出す糸引出工程の少なくとも一方が行われる。
【0031】
本発明では、予備工程での条件を容易に調整可能である。
【0032】
第14の発明にかかる糸巻取システムでは、第12の発明において、前記第1ステーションは、前記給糸ボビンの前記バックワインド糸を捕捉するための糸捕捉部と、前記糸捕捉部を前記給糸ボビンの軸方向に沿って移動させるためのステッピングモータと、を備えており、前記表示装置は、前記準備処理に関する条件として、前記糸捕捉部の前記軸方向に関する移動長さ及び移動速度の少なくとも一方を入力する前記入力領域を有する前記設定画面を表示する。
【0033】
本発明では、糸捕捉部を移動させるための駆動源としてステッピングモータを採用しているので、糸捕捉部の移動長さや移動速度を容易に制御可能である。したがって、糸捕捉部の移動長さや移動速度を作業者により調整可能な条件とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の一実施形態にかかる糸巻取システムの概略構成図である。
図2】糸巻取システムで取り扱われる給糸ボビンを示す図であり、(a)は準備処理が施される前の状態、(b)は予備工程が施された後の状態、(c)は糸端形成工程が施された後の状態、(d)は口出し工程が施された後の状態を示す。
図3】糸巻取システムの電気的構成を示すブロック図である。
図4】トレイ回転装置の構成を示す図であり、(a)はトレイ回転装置で搬送トレイを把持していない状態、(b)はトレイ回転装置で搬送トレイを把持している状態を示す。
図5】バンチ除去装置の構成を示す図である。
図6】ビーター装置の構成を示す図である。
図7】第1ステーションが有するサーチャー装置、押さえ装置及び吹付ノズルを示す図である。
図8】糸端形成工程を説明する図であり、(a)は押さえ部材により給糸ボビンを押さえた状態、(b)はサーチャーを給糸ボビンに近接させた状態、(c)は吹付ノズルにより糸を吹き上げた状態を示す。
図9】第2ステーションが有する 上方吸引装置及び下方吸引装置を示す図である。
図10】口出し工程を説明する図であり、(a)は上方吸引装置によって糸を吸引した状態、(b)は吸引した糸を切断した状態、(b)は切断した糸を下方吸引装置によって吸引した状態を示す。
図11】表示装置に表示される設定画面を示す。
図12】(a)は回収ラインが搬送トレイで満杯である状態を示し、(b)は回収ラインが満杯でない状態を示す。
図13】機台制御装置で行われる制御手順の一例を示すフローチャートである。
図14】第1変形例にかかる設定画面を示す。
図15】第2変形例にかかる設定画面を示す。
図16】第3変形例にかかる設定画面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の好適な一実施形態について説明する。図1に示すように、本実施の形態にかかる糸巻取システム1は、自動ワインダ2と、ボビン供給装置3と、ボビン処理装置4と、機台制御装置5と、を備えている。
【0036】
(自動ワインダ2)
自動ワインダ2は、1列に配列された複数の巻取ユニット11を備えている。巻取ユニット11は、給糸ボビン10から糸を解舒し、解舒した糸を巻取ボビン(不図示)に巻き取ることによってパッケージを形成するためのものである。巻取ユニット11の構成は、公知のものであるため、ここでは、これ以上の詳細な説明は省略する。
【0037】
また、自動ワインダ2は、供給ライン12a及び回収ライン12bを含む搬送路12を備えている。供給ライン12aは、ボビン処理装置4から各巻取ユニット11に給糸ボビン10を搬送するためのものである。回収ライン12bは、各巻取ユニット11から排出された給糸ボビン10をボビン処理装置4まで搬送するためのものである。搬送路12は、ベルトコンベア等によって構成され、搬送トレイ9を搬送できるように構成されている。搬送トレイ9は、給糸ボビン10を、軸方向が鉛直方向と平行となる直立状態で載置することができるように構成されている(図2参照)。
【0038】
(ボビン供給装置3)
ボビン供給装置3は、ボビン処理装置4に対して給糸ボビン10を供給する。ボビン供給装置3は、給糸ボビン10を搬送トレイ9上に一本ずつ直立状態で載置していくように構成されている。ボビン供給装置3は、搬送トレイ9の上に給糸ボビン10を載置するためのボビンシュート15を備えている。
【0039】
ここで、図2を参照しつつ、給糸ボビン10について説明する。給糸ボビン10は、ボビン管10aの周囲に紡績糸を巻き付けたものである。給糸ボビン10は、前工程の精紡機(不図示)で生成される。精紡機で生成された給糸ボビン10は、オペレータによりボビン供給装置3まで運搬され、ボビン供給装置3に投入される。精紡機では、給糸ボビン10の生成時に、図2(a)に示すように、給糸ボビン10の糸端をらせん状に巻き付けて、バックワインド糸10bを形成する。さらに、糸端をボビン管10aの下端部に巻き付けてボトムバンチ10cを形成する。これにより、ボビン供給装置3まで給糸ボビン10を運搬する際に、異なる給糸ボビン10間で糸端同士が絡まってしまうこと等を防止できる。
【0040】
なお、糸巻取システム1に精紡機が併設されている場合は、搬送トレイ9上に給糸ボビン10が載置された状態で精紡機からボビン処理装置4に直接給糸ボビン10が供給される。このようにリンク接続された糸巻取システム1と精紡機との場合には、図2(b)に示すように、給糸ボビン10にボトムバンチ10cが形成されないこともある。
【0041】
(ボビン処理装置4)
ボビン処理装置4は、自動ワインダ2とボビン供給装置3との間に配置されている。ボビン処理装置4は、搬送トレイ9を搬送するための搬送路17を備えている。搬送路17は、ベルトコンベア等によって構成されている。搬送路17は、供給ライン17a、回収ライン17b及び返還ライン17cを含んでいる。供給ライン17aは、自動ワインダ2の供給ライン12aと接続されている。回収ライン17bは、自動ワインダ2の回収ライン12bと接続されている。
【0042】
搬送路17は、ボビン供給装置3側の端部が、ボビンシュート15の下方に位置している。ボビン供給装置3は、給糸ボビン10が載置されていない搬送トレイ9が、搬送路17のこの部分に位置しているときに、ボビンシュート15から給糸ボビン10を排出する。これにより、給糸ボビン10が搬送トレイ9に載置される。そして、給糸ボビン10が載置された搬送トレイ9は、供給ライン17aを介して自動ワインダ2に向けて搬送される。
【0043】
また、ボビン処理装置4は、搬送路17におけるボビンシュート15から給糸ボビン10が排出される位置のすぐ上流側の位置に、ボビンプロー16が設けられている。ボビンプロー16は、自動ワインダ2から戻され回収ライン17bを介して回収された搬送トレイ9から自動ワインダ2で処理された後の給糸ボビン10を抜き取る。自動ワインダ2で処理された後の給糸ボビン10としては、例えば糸が巻かれていない空の給糸ボビン10や、ボビン処理装置4で処理のできない極少の残糸付き給糸ボビン10などが該当する。
【0044】
また、ボビン処理装置4は、搬送路17における供給ライン17aに臨んで配置された、準備処理部6を備えている。準備処理部6は、自動ワインダ2の巻取ユニット11での糸の巻き取りにために給糸ボビン10に対して準備処理を施す。準備処理部6は、予備工程ステーション22、第1ステーション23及び第2ステーション24を有している。予備工程ステーション22、第1ステーション23及び第2ステーション24は、供給ライン17aにおける搬送トレイ9の搬送方向の上流側から下流側に向かってこの順で並んでいる。
【0045】
ここで、準備処理部6で行われる準備処理について説明する。準備処理は、大きく分けて、予備工程、糸端形成工程及び口出し工程の3つの工程からなる。予備工程は、バンチ除去工程及び糸引出工程を含んでいる。
【0046】
予備工程は、予備工程ステーション22で行われる。予備工程におけるバンチ除去工程では、給糸ボビン10に形成されたボトムバンチ10cを除去する。すなわち、バンチ除去工程が施された給糸ボビン10は、図2(b)に示すような状態となる。予備工程における糸引出工程では、給糸ボビン10の糸層表面から糸を引き出す。上述のように、給糸ボビン10にボトムバンチ10cが形成されていない場合には、バンチ除去工程は不要である。また、糸引出工程は、給糸ボビン10に巻き付けられている糸の種類によって必要となる場合と、不要である場合とがある。すなわち、給糸ボビン10に巻き付けられている糸が、糸同士が絡まりやすい糸である場合には、糸引出工程が必要となる。
【0047】
糸端形成工程は、第1ステーション23で行われる。糸端形成工程では、給糸ボビン10の外周に巻き付けられたバックワインド糸10bを切断して糸端を形成し、ボビン管10aの先端部に糸を巻き付けて先端側巻付部10dを形成する。すなわち、糸端形成工程が施された給糸ボビン10は、図2(c)に示すような状態となる。
【0048】
口出し工程は、第2ステーション24で行われる。口出し工程では、糸端形成工程で形成された糸端(より具体的には、先端側巻付部10d)を吸引し、ボビン管10aの内側に挿入する。すなわち、口出し工程が施された給糸ボビン10は、図2(d)に示すような状態となる。
【0049】
また、ボビン処理装置4には、搬送路17を搬送される搬送トレイ9(及び給糸ボビン10)を検知可能な複数のセンサ(不図示)が設けられている。これらのセンサは、例えば発光部と受光部とを有する光学センサである。これらセンサの検知信号から、搬送路17の供給ライン17aを搬送される搬送トレイ9(及び給糸ボビン10)が、各ステーション22、23、24における給糸ボビン10に対して処理が行われる処理位置に到達したことを把握することができる。
【0050】
上述のセンサの1つとして、搬送路17の回収ライン17bにおける搬送トレイ9の搬送方向の上流側端部に配置されたセンサ28がある。センサ28の検知信号により、回収ライン17bが滞留する搬送トレイ9で満杯であるか否かを判断することができる。すなわち、センサ28によって所定時間以上連続して搬送トレイ9が検知された場合は、回収ライン17bが満杯であると判断できる。
【0051】
(機台制御装置5)
機台制御装置5は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等によって構成されている。機台制御装置5は、図3に示すように、自動ワインダ2の各巻取ユニット11、ボビン供給装置3及びボビン処理装置4が電気的に接続されており、これらの動作を制御する。より詳細には、機台制御装置5は、ボビン処理装置4の後述するトレイ回転モータ61、ビーター搖動機構62、トレイ回転モータ63、サーチャー移動機構64、押さえ部材移動機構65、ノズル駆動部66、カッター移動機構67及びシャッター移動機構68の動作を制御する。
【0052】
また、機台制御装置5には、表示装置7及び入力装置8が電気的に接続されている。表示装置7は、例えばディスプレイである。入力装置8は、例えばキーボードやマウスである。また、タッチパネル式のディスプレイが、表示装置7及び入力装置8を兼ねていてもよい。
【0053】
(予備工程ステーション22)
次に、図4~6を参照しつつ、予備工程ステーション22の構成について説明する。予備工程ステーション22は、トレイ回転装置31a(図4参照)と、バンチ除去装置34(図5参照)と、ビーター装置41(図6参照)と、を有している。
【0054】
図4(a)、(b)に示すように、トレイ回転装置31aは、1つの駆動ローラ32と、2つの従動ローラ33とを備えている。1つの駆動ローラ32と、2つの従動ローラ33とは、搬送路17を挟むように配置されている。駆動ローラ32は、トレイ回転モータ61(図3参照)の駆動により回転する。
【0055】
2つの従動ローラ33は、駆動機構(不図示)によって、図4(a)に示すように、搬送されてきた搬送トレイ9から離れた位置と、図4(b)に示すように、搬送されてきた搬送トレイ9と接触して、駆動ローラ32に向けて押し付ける位置との間で移動させることができるように構成されている。
【0056】
トレイ回転装置31aでは、待機状態で図4(a)の状態となっており、搬送トレイ9が搬送されてきたときに、図4(b)の状態に切り換わり、駆動ローラ32と従動ローラ33とによって搬送トレイ9を把持する。また、駆動ローラ32と従動ローラ33とによって搬送トレイ9を把持した状態で、駆動ローラ32を回転駆動すると、搬送トレイ9及びその上に載置された給糸ボビン10が回転する。
【0057】
なお、本実施の形態では、トレイ回転装置31aと、後述のトレイ回転装置31bとは同様の構成を有するものであるため、トレイ回転装置31a、32bを、共通の図4(a)、(b)で示している。
【0058】
図5に示すように、バンチ除去装置34は、サクションケース35と、ダクト36と、ロータリーカッター37と、カッター38と、を有している。サクションケース35の内部は、ダクト36に接続される吸引源(不図示)の駆動により、負圧とされている。サクションケース35には、吸引口35aが形成されている。吸引口35aは、搬送路17を搬送される給糸ボビン10におけるボビン管10aの下端部と対向する位置に形成されている。吸引口35aの正面が、予備工程ステーション22での処理位置である。
【0059】
ロータリーカッター37は、ドラム状であり、その周面に吸引口35aと対峙可能な複数の糸吸引孔37aが形成されている。ロータリーカッター37の上部には、中空のコネクタ36aを介してダクト36が接続されている。ロータリーカッター37は、駆動機構(不図示)により回転される。カッター38は、ロータリーカッター37の外周に当接されている。
【0060】
ここで、予備工程ステーション22で行われるバンチ除去工程について説明する。まず、センサ(不図示)により、吸引口35aの正面(予備工程ステーション22の処理位置)に給糸ボビン10が載置された搬送トレイ9が到達したことが検知されると、トレイ回転装置31aにより該搬送トレイ9を把持する。さらに、トレイ回転装置31aにより、搬送トレイ9及び給糸ボビン10を糸の巻き付け方向とは反対の解舒方向に回転する。すなわち、搬送トレイ9及び給糸ボビン10が、吸引口35aの正面で停止し、解舒方向に回転する。これにより、搬送トレイ9に載置された給糸ボビン10のボトムバンチ10cを構成する糸が、サクションケース35の吸引口35a及びロータリーカッター37の糸吸引孔37a内に吸引される。この状態でロータリーカッター37は回転しているため、給糸ボビン10からサクションケース35内に吸引された糸がカッター38により切断される。
【0061】
図6に示すように、ビーター装置41は、ベース部材42aに対して鉛直方向に並んだ複数のブラシ42bが設けられたビーター42を有している。ビーター42は、ビーター搖動機構62(図3参照)により、鉛直方向に沿う搖動軸42cを中心に搖動可能である。ビーター42は、予備工程ステーション22の処理位置で停止した搬送トレイ9に載置された給糸ボビン10の外周面にブラシ42bが接触する位置と、給糸ボビン10の外周面からブラシ42bが離間する位置との間で搖動可能である。
【0062】
ここで、予備工程ステーション22で行われる糸引出工程について説明する。センサ(不図示)により、予備工程ステーション22の処理位置に給糸ボビン10が載置された搬送トレイ9が到達したことが検知されると、トレイ回転装置31aにより該搬送トレイ9を把持する。さらに、トレイ回転装置31aにより、搬送トレイ9及び給糸ボビン10を糸の巻き付け方向とは反対の解舒方向に回転する。そして、ビーター42のブラシ42bを給糸ボビン10の外周面に接触させることで糸層表面に刺激を与え、糸層表面から糸を引き出す。ここで、ブラシ42bを給糸ボビン10の外周面に接触させる際のビーター42の動作モードとしては2パターンがある。まず1つ目の動作モードは、ブラシ42bにより給糸ボビン10の外周面を連打する「間欠モード」である。2つ目の動作モードは、ブラシ42bを給糸ボビン10の外周面に所定時間当て続ける「連続モード」である。
【0063】
上述のバンチ除去工程及び糸引出工程が終了すると、トレイ回転装置31aの従動ローラ33を搬送トレイ9から離間させる。これにより、搬送トレイ9の搬送が再開され、当該搬送トレイ9及び搬送トレイ9に載置された給糸ボビン10が第1ステーション23に向けて搬送される。このときの給糸ボビン10は、図2(b)に示す状態である。
【0064】
(第1ステーション23)
次に、図7及び図8を参照しつつ、第1ステーション23の構成について説明する。第1ステーション23は、トレイ回転装置31b(図4参照)と、サーチャー装置43と、押さえ装置45と、吹付ノズル47a、47bと、を有している。トレイ回転装置31bの構成は、上述のトレイ回転装置31aの構成と同様である。トレイ回転装置31bの駆動ローラ32は、トレイ回転モータ63(図3参照)の駆動により回転する。
【0065】
サーチャー装置43は、給糸ボビン10の糸に係合する(糸を引っ掛ける)ことができるように構成されたヘラ状の係合部44aが形成されたサーチャー44を有している。また、係合部44aの近傍には、糸を切断するためのカッター(不図示)が配置されている。サーチャー44は、サーチャー移動機構64(図3参照)により給糸ボビン10の外周面(糸層表面)に対して接触又は離間する方向に移動可能である。また、サーチャー44は、サーチャー移動機構64により給糸ボビン10の軸方向(鉛直方向)に移動可能である。本実施形態においては、サーチャー移動機構64は、駆動源としてステッピングモータ64a(図3参照)を有している。したがって、サーチャー移動機構64によるサーチャー44の移動長さや移動速度を容易に制御できる。
【0066】
押さえ装置45は、トレイ回転装置31bによって回転される給糸ボビン10を上方から押さえるための押さえ部材46を有している。押さえ部材46は、第1ステーション23の処理位置の上方に配置されている。押さえ部材46は、押さえ部材移動機構65(図3参照)により鉛直方向に沿って移動可能に構成される。また、押さえ部材46、ベアリング(不図示)によって回転自在に支持されている。押さえ部材46の下面によってボビン管10aの上端面を押さえることにより、給糸ボビン10の回転中に軸ブレが発生することを防止する。
【0067】
吹付ノズル47a、47bは、いずれも圧縮空気を噴出することが可能に構成されている。吹付ノズル47aは、その噴出口を給糸ボビン10の外周における下端部に接近させて固定的に配置されている。吹付ノズル47aは、ボビン管10aの先端部に向けて空気を吹き上げるように配置されている。吹付ノズル47bは、サーチャー移動機構64によりサーチャー44と共に給糸ボビン10の軸方向(鉛直方向)に移動可能に構成されている。吹付ノズル47a、47bにおける圧縮空気の吹き出しの有無は、ノズル駆動部66(図3参照)により切り替えられる。
【0068】
ここで、第1ステーション23で行われる糸端形成工程について説明する。まず、センサ(不図示)により、押さえ部材46の下方(第1ステーション23の処理位置)に給糸ボビン10が載置された搬送トレイ9が到達したことが検知されると、トレイ回転装置31bにより該搬送トレイ9を把持する。これにより、搬送トレイ9及び給糸ボビン10が第1ステーション23の処理位置で停止する。次に、図8(a)に示すように、押さえ部材46によって給糸ボビン10におけるボビン管10aの上端面を押さえる。その後、トレイ回転装置31bにより、搬送トレイ9及び給糸ボビン10を糸の巻き付け方向に回転する。
【0069】
続いて、給糸ボビン10の外周面(糸層表面)における上端部にサーチャー44を接近させる。図8(b)に示すように、回転する給糸ボビン10の糸層表面にサーチャー44が接近又は接触することにより、当該糸層表面に螺旋状に巻き付いているバックワインド糸10bが、サーチャー44の係合部44aに係合する。すなわち、バックワインド糸10bを係合部44aに引っ掛けて捕捉することができる。この状態で、サーチャー44を下方に向けて移動させ、サーチャー44が有するカッター(不図示)によってバックワインド糸10bを切断し、糸端が形成される。その後、給糸ボビン10の下端部まで降下したサーチャー44を、給糸ボビン10の外周面から離れる方向に移動させる。
【0070】
また、サーチャー44によるバックワインド糸10bの捕捉及び切断の開始と前後して、上下2箇所に設けられた吹付ノズル47a、47bからの圧縮空気の噴出を開始する。これにより、図8(c)に示すように、サーチャー44によって切断されたバックワインド糸10bが給糸ボビン10の先端部に向けて吹き上げられる。このとき、給糸ボビン10におけるボビン管10aの上端面は押さえ部材46によって押さえられているので、吹き上げられた糸は、ボビン管10aの上端面よりも上方に移動することができない。結果として、吹付ノズル47a、47bによって吹き上げられた糸は、給糸ボビン10の回転によってボビン管10aの先端部の外周に巻き付けられ、先端側巻付部10dが形成される。尚、本実施形態では吹付ノズル47a、47bは上下2箇所に設けられているが、吹付ノズルの配置はこれには限定されない。吹付ノズルは、給糸ボビン10の中間領域から下部領域に圧縮空気を噴出することができる1箇所のみに設けても良い。
【0071】
先端側巻付部10dが形成されると、サーチャー44及び押さえ部材46を上昇させると共に、トレイ回転装置31bの従動ローラ33を搬送トレイ9から離間させる。これにより、搬送トレイ9の搬送が再開され、当該搬送トレイ9及び搬送トレイ9に載置された給糸ボビン10が第2ステーション24に向けて搬送される。このときの給糸ボビン10は、図2(c)に示す状態である。
【0072】
(第2ステーション24)
次に、図9及び図10を参照しつつ、第2ステーション24の構成について説明する。第2ステーション24は、上方吸引装置48と、下方吸引装置55と、吹付ノズル59a、59bと、ボビン上部押さえレバー60と、を有している。
【0073】
上方吸引装置48は、サクション筒49と、カッター装置50と、を有している。サクション筒49は、第2ステーション24における処理位置の上方において、鉛直方向に沿って延びている。また、サクション筒49は、鉛直方向の中央部に、伸縮部49aが設けられている。伸縮部49aは、蛇腹状に形成され、鉛直方向に伸縮可能となっている。また、サクション筒49の下端部は、昇降装置(不図示)により昇降可能に構成されている。サクション筒49の下端部が降下するときには、伸縮部49aが鉛直方向に伸長し、サクション筒49の下端部が上昇するときには、伸縮部49aが鉛直方向に収縮する。尚、伸縮部49aの代わりに複数の筒部材が重なり合ったスライド機構を採用することも可能である。
【0074】
また、サクション筒49の上端部は、ダクト51を介して吸引源58に接続されている。カッター装置50は、サクション筒49とダクト51との接続部分に設けられている。カッター装置50は、カッター移動機構67(図3参照)により、サクション筒49とダクト51とを連通させる連通位置と、サクション筒49とダクト51との連通を遮断する遮断位置と、の間で移動可能に構成されたカッター刃50aを有する。カッター装置50では、カッター刃50aを連通位置から遮断位置に移動させることによって、ダクト51まで吸引された糸を切断することができるように構成されている。また、ダクト51のカッター装置50近傍の部分には、糸を検出するためのセンサ52が設けられている。
【0075】
下方吸引装置55は、第2ステーション24における処理位置の下方に配置されている。下方吸引装置55は、ダクト56と、吸引シャッター57と、を有している。ダクト56は、吸引源58に接続されている。なお、ダクト56が接続される吸引源58は、ダクト51が接続される吸引源58と別であってもよい。第2ステーション24における処理位置に給糸ボビン10が載置された搬送トレイ9が停止したとき、ダクト56の上端の開口部が、該搬送トレイ9の下面に接続されるようになっている。吸引シャッター57は、シャッター移動機構68(図3参照)により、ダクト56の上端の開口部を開放する開放位置と、ダクト56の上端の開口部を封鎖する封鎖位置と、の間で移動可能に構成されている。下方吸引装置55は、吸引シャッター57が開放位置にあるとき、第2ステーション24の処理位置に停止した給糸ボビン10におけるボビン管10aの下側から糸を吸引する。
【0076】
吹付ノズル59a、59bは、いずれも圧縮空気を噴出することが可能に構成されている。吹付ノズル59a、59bは、いずれも第2ステーション24の下部において給糸ボビン10の下端部に近接する位置に配置されている。吹付ノズル59a、59bは、給糸ボビン10を挟む両側位置に配置されている。吹付ノズル59a、59bは、いずれもボビン管10aの下端部から先端部に向けて空気を吹き上げるように配置されている。
【0077】
ボビン上部押さえレバー60は、移動機構(不図示)により給糸ボビン10の上端部における外周面に接触する位置と、給糸ボビン10の外周面から離隔する位置と、の間で移動可能に構成されている。
【0078】
ここで、第2ステーション24で行われる口出し工程について説明する。第2ステーション24には、上流の第1ステーション23でボビン管10aの先端部に先端側巻付部10dが形成された状態の給糸ボビン10が搬送される。まず、センサ(不図示)により、第2ステーション24の処理位置に給糸ボビン10が載置された搬送トレイ9が到達したことが検知されると、ストッパー(不図示)により該搬送トレイ9の搬送が処理位置で停止される。
【0079】
次に、図10(a)に示すように、カッター刃50aを遮断位置から連通位置に移動させる。このとき、サクション筒49とダクト51とが連通し、給糸ボビン10の外周面にサクション気流が作用する。同時に、第2ステーション24の下部に設けられた吹付ノズル59a、59bから圧縮空気を噴出する。これにより、給糸ボビン10に形成された先端側巻付部10dを構成する糸がダクト51に向かって吸引される。
【0080】
カッター刃50aを遮断位置から連通位置に移動させた後、所定時間経過後に、センサ52によって糸が検知されたか否かを判断する。センサ52によって糸が検知された場合には、図10(b)に示すように、カッター刃50aを連通位置から遮断位置に移動させて、ダクト51まで吸引された糸を切断する。このとき、ボビン上部押さえレバー60を給糸ボビン10の上端部における外周面に接触させ、給糸ボビン10の外周面とボビン上部押さえレバー60とで糸端を挟み込む。また、同時に下方吸引装置55の吸引シャッター57を封鎖位置から開放位置に移動させる。すると、図9(c)に示すように、切断された糸の糸端が、下方吸引装置55に吸引されることで、給糸ボビン10のボビン管10aの内側に挿入される。その後、下方吸引装置55の吸引シャッター57開放位置から封鎖位置に戻す。そして、図2(d)に示す状態となった給糸ボビン10が、自動ワインダ2に供給される。
【0081】
なお、センサ52によって糸が検知されなかった場合には、糸吸引の成功率を高めるために、昇降装置(不図示)によりサクション筒49の下端部を降下させる。このような操作を行ってもセンサ52によって糸が検知されなかった場合には、該給糸ボビン10は、返還ライン17cを介して回収ライン17bに送られ、再度供給ライン17aに戻される。
【0082】
(機台制御装置5による表示処理)
上述のように、機台制御装置5には、表示装置7が接続されている(図3参照)。機台制御装置5は、表示装置7を制御する。表示装置7には、機台制御装置5の制御により、図11に示すような設定画面70が表示される。設定画面70は、入力領域71及び表示領域75を有している。設定画面70における入力領域71が表示される部分の背景色は、表示領域75が表示される部分の背景色と異なっている。本実施形態では、入力領域71が表示される部分の背景色は白であり、表示領域75が表示される部分の背景色はグレーである。入力領域71及び表示領域75に背景色の組み合わせは、これに限定されるものではない。
【0083】
入力領域71は、準備処理部6で行われる準備処理に関する条件を入力するための領域である。上述のように、準備処理には、予備工程、糸端形成工程及び口出し工程の3つの工程がある。したがって、入力領域71には、これら3つの工程に関する条件を入力するための複数の入力領域71が表示される。複数の入力領域71は、上下に並んでいる。各入力領域71は、該入力領域71に対応する条件項目が表示される項目欄71aと、条件を入力する入力欄71bと、を有している。作業者は、入力装置8により入力領域71の入力欄71bに条件を入力できる。
【0084】
ここで、予備工程に関する条件について説明する。予備工程がバンチ除去工程を含んでいる場合、予備工程に関する代表的な条件は、「予備工程トレイ回転量」及び「予備工程トレイ回転速度」である。「予備工程トレイ回転量」は、トレイ回転装置31aによる搬送トレイ9の回転量である。「予備工程トレイ回転速度」は、トレイ回転装置31aによる搬送トレイ9の回転速度である。「予備工程トレイ回転速度」では、「STD(標準)」及び「LOW(低速)」の何れかを選択する。
【0085】
また、予備工程が糸引出工程のみである(バンチ除去工程を含んでいない)場合、予備工程に関する代表的な条件は、「ビーター動作設定」及び「ビーター動作時間」である。「ビーター動作設定」は、ビーター42の動作モードである。「ビーター動作設定」では、「間欠モード」及び「連続モード」の何れかを選択する。「ビーター動作時間」は、動作モードが「間欠モード」である場合は、ブラシ42bによる給糸ボビン10の外周面の連打動作を行う時間の長さである。動作モードが「連続モード」である場合は、ブラシ42bを給糸ボビン10の外周面に当て続ける時間の長さである。すなわち、「ビーター動作時間」は、ビーター42により給糸ボビン10の糸層表面に刺激を与える時間の長さである。
【0086】
次に、糸端形成工程に関する条件について説明する。糸端形成工程に関する代表的な条件は、「サーチャー接触長さ」、「サーチャー降下速度」、「サーチャー下端待機時間」、「サーチャー前進量」及び「サーチャー前進速度」である。
【0087】
図8(b)に示すように、サーチャー44を給糸ボビン10の外周面(糸層表面)に近接させた状態でサーチャー44を降下させる際における移動長さが「サーチャー接触長さ」であり、移動速度が「サーチャー降下速度」である。「サーチャー降下速度」では、「STD(標準)」及び「LOW(低速)」の何れかを選択する。また、「サーチャー降下速度」の選択肢はこの実施形態のみには限られず、3段階以上の選択肢を設けても良い。例えば、「HIGH」、「STD」、「LOW」の3段階としても良いし、「+5」、「+4」、「+3」、「+2」、「+1」、「STD」、「-1」、「-2」、「-3」、「-4」、「-5」のように11段階としても良い。
【0088】
「サーチャー下端待機時間」は、図8(c)に示すように、サーチャー44が給糸ボビン10の下端部まで降下した後に、給糸ボビン10の外周面から離れる方向に移動した状態で待機する時間の長さである。「サーチャー下端待機時間」は、給糸ボビン10に先端側巻付部10dが形成される時間の長さに関係する。
【0089】
図8(a)に示すように、サーチャー44を給糸ボビン10の外周面(糸層表面)に近接させる際におけるサーチャー44の移動長さが「サーチャー前進量」であり、サーチャー44の移動速度が「サーチャー前進速度」である。「サーチャー前進速度」では、「STD(標準)」及び「LOW(低速)」の何れかを選択する。また、「サーチャー前進速度」の選択肢はこの実施形態のみには限られず、3段階以上の選択肢を設けても良い。例えば、「HIGH」、「STD」、「LOW」の3段階としても良いし、「+2」、「+1」、「STD」、「-1」、「-2」、「-3」、「-4」、「-5」のように8段階としても良い。
【0090】
続いて、口出し工程に関する条件について説明する。口出し工程に関する代表的な条件は、「シャッター動作時間」及び「カッター動作時間」である。「シャッター動作時間」は、下方吸引装置55の吸引シャッター57を封鎖位置から開放位置に移動させた後、開放位置から封鎖位置に戻すまでの時間である。「カッター動作時間」は、上方吸引装置48のカッター刃50aを遮断位置から連通位置に移動させた後、連通位置から遮断位置に戻すまでの時間である。
【0091】
なお、設定画面70に一度に表示される入力領域71は、準備処理に関する複数の条件のうちの一部の条件に関するものである。設定画面70に表示されていない入力領域71は、設定画面70における複数の入力領域71の右側に表示されたスクロールバー79を上下に操作することで表示可能である。すなわち、スクロールバー79を操作することで、設定画面70に表示されている入力領域71を、別の条件を入力するための入力領域71に切り替えることができる。
【0092】
表示領域75は、入力領域71に入力された条件に基づいて導出される準備処理の速度である「処理速度」を表示する領域である。本実施形態においては、「処理速度」として、1分間に処理される給糸ボビン10の本数(以降、単に「処理本数」と称する)を表示する。上述のように、準備処理には、予備工程、糸端形成工程及び口出し工程の3つの工程がある。したがって、表示領域75には、「予備工程の処理本数」、「糸端形成工程の処理本数」及び「口出し工程の処理本数」がそれぞれ表示される。
【0093】
機台制御装置5は、入力領域71に入力された条件に基づいて、各工程の処理本数を導出し、表示領域75に表示する。具体的には、まず、各工程において1本の給糸ボビン10を処理する時間(1サイクルの時間)を算出する。そして、1サイクルの時間から、1分間に処理される給糸ボビン10の本数を、算出する。
【0094】
例えば、バンチ除去工程を含む場合の予備工程の処理本数の算出について説明する。予備工程の1サイクルの時間は、直前に予備工程が施される給糸ボビン10への処理が完了してから、次に予備工程が施される給糸ボビン10が予備工程ステーション22まで搬送される時間と、給糸ボビン10が予備工程ステーション22に到達した後、該給糸ボビン10に対して予備工程が施される時間と、の合計で算出される。給糸ボビン10に対して予備工程が施される時間は、入力領域71において予備工程に関する条件として入力された「予備工程トレイ回転量」及び「予備工程トレイ回転速度」から算出される。そして、1サイクルの時間から、1分間に予備工程が施される給糸ボビン10の本数を、算出する。
【0095】
すなわち、作業者により入力領域71の入力欄71bが操作され、予備工程に関する条件である「予備工程トレイ回転量」が変更された場合には、機台制御装置5は、変更された条件の下で予備工程の処理本数を導出する。そして、機台制御装置5は、表示領域75に表示されている「予備工程の処理本数」の処理本数を、導出した処理本数に切り換える。
【0096】
表示領域75は、準備処理の「処理速度(処理本数)」に加えて、自動ワインダ2への必要な給糸ボビン10の供給速度に関する「必要供給本数」を表示する。「必要供給本数」は、単位時間(1分間)に自動ワインダ2に供給する必要がある給糸ボビン10の本数である。「必要供給本数」は、機台制御装置5により算出される。すなわち、機台制御装置5は、本発明の「供給速度取得部」として機能する。「必要供給本数」は、自動ワインダ2で巻き取り処理が行われた累積時間を時間T(分)とし、時間Tの間に自動ワインダ2で処理された給糸ボビン10の本数をNとしたとき、N/Tで算出される。表示領域75に「必要供給本数」として表示される速度は、定期的に更新される。
【0097】
表示領域75は、項目欄75a及び表示欄75bを有している。項目欄75aには、「必要供給本数」、「予備工程の処理本数」、「糸端形成工程の処理本数」及び「口出し工程の処理本数」の各表示項目が表示される。表示欄75bには、項目欄75aに表示された各表示項目に対応する情報(必要供給本数又は処理本数の数値)が表示される。
【0098】
なお、表示領域75に情報が表示される表示項目は、設定画面70に固定的に表示される。すなわち、スクロールバー79が操作された場合であっても、表示領域75の項目欄75aに表示された表示項目が切り替わることはない。ただし、表示欄75bに表示された各項目に対応する情報(すなわち、必要供給本数又は処理本数の数値)は適宜切り替わる。
【0099】
(機台制御装置5による速度制御処理)
機台制御装置5は、準備処理部6で行われる準備処理の処理速度を制御する。機台制御装置5は、自動ワインダ2への給糸ボビン10の供給が不足している場合は、上述のように表示装置7に表示される設定画面70で作業者が設定した条件(以降、「基準条件」と称する)で準備処理が行われるように準備処理部6を制御する。すなわち、このときは、基準条件での速度で準備処理が行われる。そして、機台制御装置5は、自動ワインダ2への給糸ボビン10の供給が余剰である場合は、準備処理の速度が、基準条件での速度よりも遅くなるように準備処理部6を制御する減速処理を実行する。機台制御装置5は、減速処理において、基準条件を別の条件に変更する。
【0100】
ここで、自動ワインダ2への給糸ボビン10の供給の過不足の判断手法について説明する。自動ワインダ2への給糸ボビン10の供給の過不足は、単位時間内において、自動ワインダ2に供給される給糸ボビン10の本数(すなわち、準備処理部6での処理速度)と、自動ワインダ2から戻ってくる給糸ボビン10の本数と、のバランスで判断することができる。
【0101】
図12(a)、(b)に示すように、自動ワインダ2から戻された給糸ボビン10が載置された搬送トレイ9は、ボビン処理装置4の回収ライン17bに送られる。自動ワインダ2への給糸ボビン10の供給が不足している場合には、図12(a)に示すように、回収ライン17bには、センサ28による検知位置よりも上流側(図中左側)まで搬送トレイ9が滞留している。すなわち、機台制御装置5は、センサ28からの検知信号によって、回収ライン17bが滞留する搬送トレイ9で満杯であると判断できる。
【0102】
自動ワインダ2への給糸ボビン10の供給が余剰である場合には、図12(b)に示すように、供給が不足している場合に比べて、回収ライン17bに滞留する搬送トレイ9の数は少なくなる。図12(b)に示すように、搬送トレイ9がセンサ28の検知位置まで滞留しなくなった場合、機台制御装置5は、センサ28からの検知信号によって、回収ライン17bが満杯ではないと判断できる。すなわち、機台制御装置5は、回収ライン17bが空の給糸ボビン10が載置された搬送トレイ9で満杯ではないと判断した場合に、自動ワインダ2への給糸ボビン10の供給が余剰であると判断する。
【0103】
以下、機台制御装置5で行われる準備処理の処理速度を制御について、具体的に説明する。機台制御装置5は、自動ワインダ2への給糸ボビン10の供給が余剰であると判断した場合に、口出し工程の条件である「シャッター動作時間」及び「カッター動作時間」を基準条件(作業者が設定した条件)から変更する。
【0104】
ここで、機台制御装置5には、条件を変更する場合に、推奨される条件があらかじめ記憶されている。例えば、「シャッター動作時間」の推奨条件は、0.35秒である。「カッター動作時間」の推奨条件は、0.32秒である。基準条件の値が推奨条件以上である場合は、基準条件からの変更は行わない。基準条件の値が推奨条件未満である場合は、基準条件から推奨条件に変更する。
【0105】
口出し工程の条件を基準条件から推奨条件に変更した場合、機台制御装置5は、推奨条件の下で口出し工程の処理速度を導出する。以下の説明において、口出し工程における単位時間(本実施形態では、1分間)当たりの給糸ボビン10の処理本数をp1とする。口出し工程の条件を推奨条件に変更した場合は、p1は、推奨条件での口出し工程における給糸ボビン10の処理本数である。口出し工程の条件を推奨条件に変更していない場合には、p1は、基準条件での口出し工程における給糸ボビン10の処理本数である。
【0106】
また、機台制御装置5は、自動ワインダ2への給糸ボビン10の供給が余剰であると判断した場合に、糸端形成工程の条件を調整する。具体的には、機台制御装置5は、糸端形成工程における単位時間(1分間)当たりの給糸ボビン10の処理本数p2が、p1以上、且つ、p1+1以下となるように、糸端形成工程の条件を調整する。本実施形態においては、糸端形成工程の複数の条件のうち、「サーチャー接触長さ」を調整する。なお、機台制御装置5には、「サーチャー接触長さ」の調整可能な範囲(例えば、20mm~100mm)があらかじめ記憶されている。
【0107】
具体的には、機台制御装置5は、まず、基準条件(作業者が設定した条件)での糸端形成工程における処理本数p20が、p1未満であるか否かを判断する。p20がp1未満である場合には、糸端形成工程の処理速度を速めるように基準条件を調整可能な範囲内で変更する。例えば、「サーチャー接触長さ」の基準条件が30mmである場合には、「サーチャー接触長さ」を1mmずつ短くし、糸端形成工程における単位時間当たりの処理本数p2が、p1以上、且つ、p1+1以下となるようにする。
【0108】
また、機台制御装置5は、基準条件(作業者が設定した条件)での糸端形成工程における処理本数p20が、p1+1を超えているか否かを判断する。p20が、p1+1を超えている場合は、糸端形成工程の処理速度を遅くするように基準条件を調整可能な範囲内で変更する。例えば、「サーチャー接触長さ」の基準条件が30mmである場合には、「サーチャー接触長さ」を1mmずつ長くし、糸端形成工程における単位時間当たりの処理本数p2が、p1以上、且つ、p1+1以下となるようにする。
【0109】
さらに、機台制御装置5は、自動ワインダ2への給糸ボビン10の供給が余剰であると判断した場合に、予備工程の条件を調整する。具体的には、機台制御装置5は、予備工程における単位時間(1分間)当たりの給糸ボビン10の処理本数p3が、p1以上、且つ、p1+1以下となるように、予備工程の条件を調整する。本実施形態においては、予備工程がバンチ除去工程を含んでいる場合、予備工程の複数の条件のうち、「予備工程トレイ回転量」を調整する。予備工程が糸引出工程のみである(バンチ除去工程を含んでいない)場合、「ビーター動作時間」を調整する。なお、機台制御装置5には、「予備工程トレイ回転量」及び「ビーター動作時間」の調整可能な範囲があらかじめ記憶されている。例えば、「予備工程トレイ回転量」の調整可能な範囲は、1回転~20回転である。「ビーター動作時間」の調整可能な範囲は、0.5秒~5.0秒である。
【0110】
具体的には、機台制御装置5は、まず、基準条件(作業者が設定した条件)での予備工程における処理本数p30が、p1以上、且つ、p1+1以下の範囲内であるか否かを判断する。p30が、p1以上、且つ、p1+1以下の範囲内でないと判断した場合には、予備工程の基準条件を調整可能な範囲内で変更し、予備工程における単位時間当たりの処理本数p3が、p1以上、且つ、p1+1以下となるようにする。例えば、「予備工程トレイ回転量」を調整する場合には、0.1回転刻みで変更する。また、「ビーター動作時間」を調整する場合には、0,1秒刻みで変更する。
【0111】
続いて、図13に示すフローチャートを参照しつつ、機台制御装置5で行われる準備処理の処理速度の制御手順の一例について説明する。図13に示す処理は、糸巻取システム1の稼働中、繰り返し実行される。
【0112】
まず、機台制御装置5は、自動ワインダ2への給糸ボビン10の供給が余剰であるか否かを判断する(S11)。そして、供給余剰であると判断した場合は(S11:YES)、機台制御装置5は、口出し工程の基準条件が推奨条件未満であるか否かを判断する(S12)。推奨条件未満ではないと判断した場合には(S12:NO)、後述するS15に進む。一方、推奨条件未満であると判断した場合には(S12:YES)、機台制御装置5は、口出し工程の条件を基準条件から推奨条件に変更する(S13)。さらに、機台制御装置5は、口出し工程の条件の変更フラグをオンとする(S14)。
【0113】
次に、機台制御装置5は、口出し工程における処理本数をp1としたとき、基準条件での糸端形成工程における処理本数p20が、p1以上、且つ、p1+1以下であるか否かを判断する(S15)。p20が、p1以上、且つ、p1+1以下であると判断した場合には(S15:YES)、後述するS16、S17を省略してS18に進む。一方、p20が、p1以上、且つ、p1+1以下でないと判断した場合には(S15:NO)、機台制御装置5は、糸端形成工程における処理本数p2がp1以上、且つ、p1+1以下となるように、糸端形成工程の条件を調整する(S16)。さらに、機台制御装置5は、糸端形成工程の条件の変更フラグをオンとする(S17)。
【0114】
続いて、機台制御装置5は、基準条件での予備工程における処理本数p30が、p1以上、且つ、p1+1以下であるか否かを判断する(S18)。p30が、p1以上、且つ、p1+1以下であると判断した場合には(S18:YES)、後述するS19、S20を省略して、処理を終了する。一方、p30が、p1以上、且つ、p1+1以下でないと判断した場合には(S18:NO)、機台制御装置5は、予備工程における処理本数p3がp1以上、且つ、p1+1以下となるように、予備工程の条件を調整する(S19)。さらに、機台制御装置5は、予備工程の条件の変更フラグをオンとする(S20)。
【0115】
また、S11において、供給余剰でないと判断した場合は(S11:NO)、機台制御装置5は、口出し工程の条件の変更フラグがオンであるか否かを判断する(S21)。口出し工程の条件の変更フラグがオンでない場合には(S21:NO)、後述するS22~S29を省略して、処理を終了する。一方、口出し工程の条件の変更フラグがオンである場合には(S21:YES)、機台制御装置5は、口出し工程の条件を基準条件に戻す(S22)。その後、機台制御装置5は、口出し工程の条件の変更フラグをオフとする(S23)。
【0116】
さらに、機台制御装置5は、糸端形成工程の条件の変更フラグがオンであるか否かを判断する(S24)。糸端形成工程の条件の変更フラグがオンでない場合には(S24:NO)、後述するS25、S26を省略してS27に進む。一方、糸端形成工程の条件の変更フラグがオンである場合には(S24:YES)、機台制御装置5は、糸端形成工程の条件を基準条件に戻す(S25)。その後、機台制御装置5は、糸端形成工程の条件の変更フラグをオフとする(S26)。
【0117】
加えて、機台制御装置5は、予備工程の条件の変更フラグがオンであるか否かを判断する(S27)。予備工程の条件の変更フラグがオンでない場合には(S27:NO)、後述するS28、S29を省略して処理を終了する。一方、予備工程の条件の変更フラグがオンである場合には(S27:YES)、機台制御装置5は、予備工程の条件を基準条件に戻す(S28)。その後、機台制御装置5は、予備工程の条件の変更フラグをオフとする(S29)。
【0118】
(実施形態の特徴)
以上のように、本実施形態の糸巻取システム1は、自動ワインダ2に給糸ボビン10を供給するボビン処理装置4と、表示装置7と、を備えている。ボビン処理装置4は、自動ワインダ2の巻取ユニット11での糸の巻き取りのために給糸ボビン10に対して準備処理を施す準備処理部6を有しており、準備処理部6で準備処理を施した給糸ボビン10を自動ワインダ2に順次供給する。表示装置7は、準備処理に関する条件を入力するための入力領域71と、入力領域71に入力された条件に基づいて導出される準備処理の速度である処理速度を表示する表示領域75と、を有する設定画面70を表示する。
【0119】
上述の構成により、作業者が、設定画面70の入力領域71に準備処理に関する条件を入力すると、入力された条件での処理速度が設定画面70の表示領域75に表示される。したがって、作業者は、設定画面70の表示領域75に表示される処理速度を確認することで、準備処理の速度が所望の速度となるように、準備処理に関する条件を容易に調整可能である。
【0120】
また、上述の実施形態の糸巻取システム1では、準備処理は、複数の工程を含んでおり、準備処理部6は、複数の工程のうち互いに異なる工程が行われる複数のステーション22、23、24を有しており、表示装置7は、複数のステーション22、23、24の各々で行われる工程の処理速度を表示領域75に表示する。したがって、設定画面70の表示領域75に表示された各ステーション22、23、24での処理速度を確認することで、複数のステーション22、23、24でそれぞれ行われる工程の中でボトルネックとなっている工程がないかを確認することができる。
【0121】
さらに、上述の実施形態の糸巻取システム1では、機台制御装置5により、単位時間に自動ワインダ2に供給する必要がある給糸ボビン10の本数である「必要供給本数」が算出される。そして、表示装置7は、表示領域75に「必要供給本数」をさらに表示する。したがって、作業者は、表示領域75に表示される「必要供給本数」を確認することで、準備処理の速度をどの程度にすればいいかを把握することができる。したがって、準備処理の速度が適切な大きさとなるように、準備処理に関する条件を調整可能である。なお、ボビン処理装置4においてトラブル等が生じて一時的に自動ワインダ2への給糸ボビン10の供給が停止した場合であっても、自動ワインダ2において給糸ボビン10が不足しないようにするために、準備処理の速度(処理本数)は、必要供給本数よりもやや多めに設定することが好ましい。
【0122】
加えて、上述の実施形態の糸巻取システム1では、表示装置7は、設定画面70に準備処理に関する複数の条件のうちの一部の条件を入力するための入力領域71を表示可能である。そして、スクロールバー79を操作することで、設定画面70に表示されている入力領域71を、一部の条件とは別の条件を入力するための入力領域71に切り替え可能である。一方、表示装置7は、表示領域75に情報が表示される表示項目は、設定画面70に固定的に表示する。したがって、設定画面70に表示する入力領域71を切り替えて準備処理に関する複数の条件の調整を行う場合であっても、表示領域75に情報が表示される設定項目は固定的に設定画面70に表示される。よって、作業者は、設定画面70の表示領域75に表示される表示内容を確認しつつ、準備処理に関する複数の条件を容易に調整可能である。
【0123】
また、上述の実施形態の糸巻取システム1では、表示装置7は、設定画面70における入力領域71が表示される部分の背景色を、表示領域75が表示される部分の背景色とは異なる色とする。したがって、設定画面70におけるどの部分に設定すべき条件を入力すればいいのかが分かりやすい。
【0124】
さらに、上述の実施形態の糸巻取システム1では、準備処理部6は、給糸ボビン10の外周に巻き付けられたバックワインド糸10bを切断して糸端を形成する糸端形成工程が行われる第1ステーション23と、糸端形成工程で形成された糸端を吸引し、ボビン管10aの内側に挿入する口出し工程が行われる第2ステーション24と、を有している。すなわち、糸端形成工程及び口出し工程での条件を容易に調整可能である。
【0125】
また、上述の実施形態の糸巻取システム1では、準備処理部6は、第1ステーション23において糸端形成工程を行う前に行う予備工程が行われる予備工程ステーション22をさらに備えている。予備工程ステーション22では、給糸ボビン10に形成されたボトムバンチ10cを除去するバンチ除去工程、及び、給糸ボビン10の糸層表面から糸を引き出す糸引出工程の少なくとも一方が行われる。すなわち、予備工程での条件を容易に調整可能である。
【0126】
加えて、上述の実施形態の糸巻取システム1では、第1ステーション23は、給糸ボビン10のバックワインド糸10bを捕捉するためのサーチャー44と、サーチャー44を給糸ボビン10の軸方向に沿って移動させるためのステッピングモータ64aと、を備えている。そして、表示装置7は、準備処理に関する条件として、サーチャー44を軸方向に沿って降下させる際における移動長さである「サーチャー接触長さ」及び移動速度である「サーチャー降下速度」を入力する入力領域71を有する設定画面70を表示する。本実施形態では、サーチャー44を移動させる機構の駆動源としてステッピングモータ64aを採用しているので、サーチャー44の移動長さや移動速度を容易に制御可能である。したがって、「サーチャー接触長さ」や「サーチャー降下速度」を調整可能な条件とすることができる。
【0127】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0128】
表示装置7は、設定画面70に表示される各入力領域71と、表示領域75に表示される各処理速度(処理本数)とを、複数の工程のうち何れの工程に関するものかに基づいて紐づけて表示してもよい。
【0129】
すなわち例えば、図14に、上述の実施形態の第1変形例にかかる設定画面170を示す。設定画面170には、表示領域75に表示される「予備工程の処理本数」、「糸端形成工程の処理本数」及び「口出し工程の処理本数」の3つの表示項目に対応して3つのチェックボックス180が表示されている。設定画面170に表示される各入力領域71のうち、作業者がチェックボックス180にチェックを入れた工程以外の工程の条件を入力する入力領域71は、入力欄71bに入力できない状態となる。図14に示す例では、「糸端形成工程の処理本数」に対応するチェックボックス180にチェックが入っている。そして、糸端形成工程以外の工程の条件を入力する入力領域71は、黒く塗りつぶされており、入力欄71bに入力できない状態である。糸端形成工程の条件を入力する入力領域71のみが、背景色が白色であり、入力欄71bに入力できる状態である。
【0130】
上述の第1変形例では、設定画面170に表示される複数の入力領域71のうち、どの入力領域71に入力する条件を変更すれば、どの工程の処理速度(処理本数)が変わるかを容易に把握することができる。
【0131】
各入力領域71と、表示領域75に表示される各処理速度(処理本数)と、の紐づけ表示の方法は、上述のものに限定されない。例えば、表示領域75に表示される各工程の表示項目の文字色と、各工程に対応する条件を入力するための入力領域71の条件項目の文字色と、を揃えてもよい。
【0132】
また、設定画面70の表示領域75に表示される各工程の処理速度(処理本数)の中に、必要供給速度(必要供給本数)を下回っているものがある場合に、その旨を報知してもよい。
【0133】
すなわち例えば、図15に、上述の実施形態の第2変形例にかかる設定画面270を示す。本変形例においては、機台制御装置5は、作業者により入力領域71に条件が入力されたときに、変更された条件の下で該条件に対応する工程の処理本数を導出する。そして、機台制御装置5は、導出した処理本数が、表示領域75に表示されている必要供給本数を下回っているか否かを判断する。機台制御装置5は、処理本数が必要供給本数を下回っている工程の処理本数と、必要供給本数を下回っていない工程の処理本数と、を異なる態様で表示させる。図15に示す例では、「口出し工程の処理本数」が「必要供給本数」を下回っている。そして、設定画面270の表示領域75においては、「口出し工程の処理本数」は、「予備工程の処理本数」及び「糸端形成工程の処理本数」に比べて、太字で強調して表示されている。なお、例えば、「口出し工程の処理本数」の表示色と、「予備工程の処理本数」及び「糸端形成工程の処理本数」の表示色とを異ならせてもよい。また、「口出し工程の処理本数」を点滅表示してもよい。
【0134】
準備処理での処理速度(処理本数)が必要供給速度(必要供給本数)を下回ると、自動ワインダ2への給糸ボビン10の供給が滞ってしまう。上述の第2変形例では、準備処理の各工程の処理本数が必要供給本数を下回っている旨を作業者に報知し、準備処理の条件設定を見直すように促すことができる。また、設定画面270の表示領域75において、処理本数が必要供給本数を下回っている工程の処理本数が強調して表示される。よって、作業者は、設定画面270を確認して、どの工程の条件設定を見直せばいいかを容易に把握することができる。
【0135】
また例えば、図16に、上述の実施形態の第3変形例にかかる設定画面370を示す。本変形例においては、機台制御装置5は、3つのステーション22~24の各々で行われる工程の速度の実測値である実処理本数(実処理速度)を取得する。具体的には、機台制御装置5は、所定時間(本変形例においては1分間)に各ステーション22~24で実際に処理される給糸ボビン10の本数をカウントする。すなわち、機台制御装置5は、本発明の「実処理速度取得部」として機能する。
【0136】
そして、図16に示すように、設定画面370の表示領域75には、予備工程、糸端形成工程及び口出し工程のそれぞれについて、入力領域71に入力された条件に基づいて導出される速度である導出処理本数(導出処理速度)と、導出処理本数と実処理本数との差分と、が表示される。機台制御装置5は、表示領域75に表示される各工程の導出処理本数について、対応する工程の実処理本数との差分が所定値以上であるか否かを判断する。かかる所定値は、例えば、導出処理本数に対する割合(導出処理本数の20%等)で定められていてもよい。また、所定値は、導出処理本数とは関係しない固定値(4本等)で定められていてもよい。本変形例では、所定値は、導出処理本数の20%とする。
【0137】
機台制御装置5は、導出処理本数と実処理本数との差分が所定値以上となる工程と、導出処理本数と実処理本数との差分が所定値未満となる工程と、で異なる態様で表示する。図16に示す例では、「予備工程」の差分が所定値(導出処理本数の20%)以上となっている。そして、設定画面370の表示領域75においては、「予備工程」の表示情報は、「糸端形成工程」及び「口出し工程」の表示情報に比べて、太字で強調して表示されている。また、例えば、「予備工程」の表示情報の色と、「糸端形成工程」及び「口出し工程」の表示情報の色と、を異ならせてもよい。また、「予備工程」の表示情報を点滅表示してもよい。
【0138】
各ステーション22~24が想定の範囲内で動作している状態では、導出処理本数(導出処理速度)と実処理本数(実処理速度)との差分は小さい値となる。しかしながら、各ステーション22~24の処理になんらかの不具合(例えば装置トラブル)が生じている場合は、この差分が大きな値となる。想定される不具合(装置トラブル)としては、ロータリーカッター37で糸屑が詰まった時の復帰動作に時間がかかっている、サーチャー44のボビン引っ掛かりが発生した時の復帰動作に時間がかかっている、又は、サクション筒49の下端部を降下させる追加操作が実施されているなどが考えられる。このような追加動作は通常動作の延長動作として設定されている。それゆえ、これらの延長動作が実行された場合は、上記の差分が大きくなり、さらには、各ステーション22~24の処理が通常動作のみでは処理できない装置ドラブルや給糸ボビン10の品質不良の発生を推測することができる。
【0139】
上述の第3変形例においては、作業者は、表示領域75の表示内容を確認することで、導出処理本数(導出処理速度)と実処理本数(実処理速度)との差分を把握することができる。そして、導出処理本数と実処理本数との差分の大きさにより、工程のメンテナンスの必要性や準備処理の条件設定の見直しの必要性を把握できる。また、第3変形例においては、導出処理速度と実処理速度との差分が所定値以上である旨を作業者に報知し、工程のメンテナンスや準備処理の条件設定の見直しを促すことができる。さらに、第3変形例においては、設定画面370の表示領域75において、導出処理本数と実処理本数との差分が所定値以上となる工程の表示情報が強調して表示される。よって、作業者は、設定画面370を確認して、どの工程についてメンテナンスや条件設定の見直しを行えばいいかを容易に把握することができる。
【0140】
なお、上述の第3変形例においては、3つの工程のそれぞれについて、導出処理本数(導出処理速度)に加えて、導出処理本数と実処理本数との差分が表示される場合について説明したが、これには限定されない。すなわち例えば、導出処理本数と実処理本数との差分にかえて、実処理本数(実処理速度)が表示されてもよい。また、導出処理本数と実処理本数との差分と、実処理本数と、の両方が表示されてもよい。
【0141】
上述の第2変形例における各工程の処理速度(処理本数)の中に必要供給速度(必要供給本数)を下回っているものがあることを報知する方法、及び、第3変形例における各工程の導出処理速度(導出処理本数)の中に対応する実処理速度(実処理本数)との差分が所定値以上であるものがあることを報知する方法は、上述のものに限定されない。すなわち例えば、スピーカから発生される音声により報知を行ってもよい。
【0142】
上述の実施形態においては、準備処理が複数の工程を含んでいる場合について説明したが、これには限定されない。準備処理は、1つのステーションで行われる1つの工程のみであってもよい。
【0143】
また、上述の実施形態においては、表示装置7は、「必要供給本数」を設定画面70の表示領域75に表示する場合について説明したが、「必要供給本数」は表示しなくてもよい。
【0144】
さらに、上述の実施形態では、スクロールバー79を操作することで、設定画面70に表示されている入力領域71を、別の入力領域71に切り替え可能である一方、表示領域75に情報が表示される表示項目は、設定画面70に固定的に表示する場合について説明したが、これには限定されない。スクロールバー79を操作することで、表示領域75に情報が表示される表示項目も切り替え可能であってもよい。
【0145】
加えて、上述の実施形態では、表示装置7は、設定画面70における入力領域71が表示される部分の背景色を、表示領域75が表示される部分の背景色とは異なる色とする場合について説明したが、これには限定されない。入力領域71が表示される部分の背景色と、表示領域75が表示される部分の背景色と、は同じであってもよい。
【0146】
また、上述の実施形態において機台制御装置5で実行される処理は、機台制御装置5以外の制御装置で実行されてもよい。機台制御装置5以外の制御装置としては、例えばボビン処理装置4に設けられた制御装置である。さらに、複数の制御装置で分担して実行されてもよい。
【符号の説明】
【0147】
1 糸巻取システム
2 自動ワインダ
4 ボビン処理装置
5 機台制御装置(供給速度取得部)
6 準備処理部
7 表示装置(報知部)
10 給糸ボビン
10a ボビン管
10b バックワインド糸
10c ボトムバンチ
11 巻取ユニット
22 予備工程ステーション
23 第1ステーション
24 第2ステーション
44 サーチャー(糸捕捉部)
64a ステッピングモータ
70 設定画面
71 入力領域
75 表示領域



図1
図2
図3
図4
図5
図6
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