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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114465
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 5/02 20060101AFI20240816BHJP
   H03H 9/17 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
G01N5/02 A
H03H9/17 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020256
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】坂下 武
【テーマコード(参考)】
5J108
【Fターム(参考)】
5J108AA03
5J108AA09
5J108BB07
5J108BB08
5J108EE03
5J108HH05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】共振領域間の距離を短くすることが可能な検出装置を提供する。
【解決手段】検出装置は、基板10上に設けられた第1下部電極12aと、第1下部電極上に設けられた第1圧電層14aと、第1圧電層上に設けられた第1上部電極16aと、第1圧電層を挟み第1下部電極と第1上部電極とが対向する第1共振領域50aと、第1上部電極上に設けられた感応膜と、を備える第1共振器11aと、基板上に設けられ第1下部電極と隣接する第2下部電極12bと、第2下部電極上に設けられた第2圧電層14bと、第2圧電層上に設けられ第1上部電極と分離した第2上部電極16bと、第2共振領域50bと、を備える第2共振器11bと、第1パッド25aと、第2パッド25bと、第3パッド25cと、第4パッド25dと、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面において第1方向に延伸する辺を有する基板と、
前記基板上に設けられた第1下部電極と、前記第1下部電極上に設けられた第1圧電層と、前記第1圧電層上に設けられた第1上部電極と、前記第1圧電層を挟み前記第1下部電極と前記第1上部電極とが対向する第1共振領域と、前記第1上部電極上に設けられた感応膜と、を備える第1共振器と、
前記基板上に設けられ前記第1下部電極と隣接する第2下部電極と、前記第2下部電極上に設けられた第2圧電層と、前記第2圧電層上に設けられ前記第1上部電極と分離した第2上部電極と、前記第1圧電層を挟み前記第1下部電極と前記第1上部電極とが対向し前記第1共振領域の前記第1方向側に設けられた第2共振領域と、を備える第2共振器と、
前記第1下部電極に電気的に接続され、前記第1方向に直交する第2方向から見て、前記第1共振領域と前記第2共振領域との間における前記第1下部電極と前記第2下部電極とが最も近い隣接領域において前記第2共振領域に最も近い第1箇所を含み前記第1箇所より前記第1共振領域側の第1領域のみに設けられた第1パッドと、
前記第1上部電極に電気的に接続され、前記第1領域のみに設けられた第2パッドと、
前記第2下部電極に電気的に接続され、前記第2方向から見て、前記隣接領域における前記第1共振領域に最も近い第2箇所を含み前記第2箇所より前記第2共振領域側の第2領域のみに設けられた第3パッドと、
前記第2上部電極に電気的に接続し、前記第2領域のみに設けられた第4パッドと、
を備える検出装置。
【請求項2】
前記第1パッドと前記第2パッドとは、前記第2方向において前記第1共振領域を挟み、
前記第3パッドと前記第4パッドとは、前記第2方向において前記第2共振領域を挟む請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記第1方向における前記第1パッドの最大幅、および前記第1方向における前記第2パッドの最大幅は、前記第1方向における前記第1共振領域の最大幅より大きく、
前記第1方向における前記第3パッドの最大幅、および前記第1方向における前記第4パッドの最大幅は、前記第1方向における前記第2共振領域の最大幅より大きい請求項2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記第2方向から見て、前記第1パッドおよび前記第2パッドは、前記第2箇所を含み前記第2箇所より前記第2共振領域側の領域には設けられておらず、
前記第2方向から見て、前記第3パッドおよび前記第4パッドは、前記第1箇所を含み前記第1箇所より前記第1共振領域側の領域には設けられていない請求項3に記載の検出装置。
【請求項5】
前記第1下部電極と前記第1パッドとを電気的に接続し、前記第1領域にのみ設けられた第1配線と、
前記第1上部電極と前記第2パッドとを電気的に接続し、前記第1領域のみに設けられた第2配線と、
前記第2下部電極と前記第3パッドとを電気的に接続し、前記第2領域のみに設けられた第3配線と、
前記第2上部電極と前記第4パッドとを電気的に接続し、前記第2領域のみに設けられた第4配線と、
を備える請求項4に記載の検出装置。
【請求項6】
前記隣接領域における前記第1下部電極と前記第2下部電極との最短距離は、前記基板の厚さより小さい請求項1から5のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項7】
基板と、
前記基板上に設けられた第1下部電極と、前記第1下部電極上に設けられた第1圧電層と、前記第1圧電層上に設けられた第1上部電極と、前記第1圧電層を挟み前記第1下部電極と前記第1上部電極とが対向する第1共振領域と、前記第1上部電極上に設けられた感応膜と、を備える第1共振器と、
前記基板上に設けられ前記第1下部電極と隣接する第2下部電極と、前記第2下部電極上に設けられた第2圧電層と、前記第2圧電層上に設けられ前記第1上部電極と分離した第2上部電極と、前記第2圧電層を挟み前記第2下部電極と前記第2上部電極とが対向する第2共振領域と、を備える第2共振器と、
前記基板上に設けられ前記第1下部電極および前記第2下部電極と隣接する第3下部電極と、前記第3下部電極上に設けられた第3圧電層と、前記第3圧電層上に設けられ前記第1上部電極および前記第2上部電極と分離した第3上部電極と、前記第3圧電層を挟み前記第3下部電極と前記第3上部電極とが対向する第3共振領域と、を備える第3共振器と、
前記第1下部電極と接続され、前記第1共振領域の第1中心と前記第2共振領域の第2中心と前記第3共振領域の第3中心とを頂点とする三角形の外側の第1領域にのみ設けられ、前記第1下部電極と電気的に接続された第1パッドと、
前記第1領域にのみ設けられ、前記第1上部電極と電気的に接続された第2パッドと、
前記第1領域にのみ設けられ、前記第2下部電極と電気的に接続された第3パッドと、
前記第1領域にのみ設けられ、前記第2上部電極と電気的に接続された第4パッドと、
前記第1領域にのみ設けられ、前記第3下部電極と電気的に接続された第5パッドと、
前記第1領域にのみ設けられ、前記第3上部電極と電気的に接続された第6パッドと、を備える検出装置。
【請求項8】
前記第1領域のみに設けられ、前記第1下部電極と前記第1パッドとを電気的に接続する第1配線と、
前記第1領域のみに設けられ、前記第1上部電極と前記第2パッドとを電気的に接続する第2配線と、
前記第1領域のみに設けられ、前記第2下部電極と前記第3パッドとを電気的に接続する第3配線と、
前記第1領域のみに設けられ、前記第2上部電極と前記第4パッドとを電気的に接続する第4配線と、
前記第1領域のみに設けられ、前記第3下部電極と前記第5パッドとを電気的に接続する第5配線と、
前記第1領域のみに設けられ、前記第3上部電極と前記第6パッドとを電気的に接続する第6配線と、
を備える請求項7に記載の検出装置。
【請求項9】
前記第1中心を通り、前記第2中心と前記第3中心とを通る第1直線に平行な第2直線と、
前記第2中心を通り、前記第3中心と前記第1中心とを通る第3直線に平行な第4直線と、
前記第3中心を通り、前記第1中心と前記第2中心とを通る第5直線に平行な第6直線と、
を3辺とする三角形の外側を第2領域としたとき、前記第1パッド、前記第2パッド、前記第3パッド、前記第4パッド、前記第5パッドおよび前記第6パッドは前記第2領域のみに設けられている請求項7に記載の検出装置。
【請求項10】
前記第1下部電極と前記第2下部電極との最短距離は、前記基板の厚さより小さく、
前記第2下部電極と前記第3下部電極との最短距離は、前記基板の厚さより小さく、
前記第3下部電極と前記第1下部電極との最短距離は、前記基板の厚さより小さい請求項7から9のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項11】
前記第1共振領域と前記第2共振領域との間において、前記第1圧電層と前記第2圧電層と一体として設けられた第3圧電層を備える請求項1から5および7から9のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項12】
基板と、
前記基板上に設けられた第1下部電極と、前記第1下部電極上に設けられた第1圧電層と、前記第1圧電層上に設けられた第1上部電極と、前記第1圧電層を挟み前記第1下部電極と前記第1上部電極とが対向する第1共振領域と、前記第1上部電極上に設けられた感応膜と、を備える第1共振器と、
前記基板上に設けられ前記第1下部電極と隣接する第2下部電極と、前記第2下部電極上に設けられた第2圧電層と、前記第2圧電層上に設けられ前記第1上部電極と分離した第2上部電極と、前記第2圧電層を挟み前記第2下部電極と前記第2上部電極とが対向する第2共振領域と、を備える第2共振器と、
前記第1共振領域と前記第2共振領域との間において、前記第1圧電層と前記第2圧電層と一体として設けられた第3圧電層と、
を備える検出装置。
【請求項13】
前記第1上部電極に電気的に接続された第1パッドと、
前記第2上部電極に電気的に接続された第2パッドと、
を備え、
前記第3圧電層は、前記第1パッドと前記第2パッドとの間において、少なくとも一部が一体として設けられている請求項12に記載の検出装置。
【請求項14】
前記第1下部電極に電気的に接続された第3パッドと、
前記第2下部電極に電気的に接続された第4パッドと、
を備え、
前記第3圧電層は、前記第1共振領域、前記第2共振領域、前記第1パッド、前記第2パッド、前記第3パッドおよび前記第4パッドを囲むように、一体として設けられ、前記第3パッドおよび前記第4パッドを露出する開口を有する請求項13に記載の検出装置。
【請求項15】
前記第3圧電層の熱伝導率は、前記基板の熱伝導率より大きい請求項12から14のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項16】
下部電極と上部電極で圧電層を挟んだ圧電素子が矩形の基板に2つ並んで設けられ、
一方の圧電素子の前記上部電極の上には、感応膜が設けられ、
前記下部電極、前記圧電層および前記上部電極の重畳した領域が共振領域となり、前記共振領域の周囲は、前記下部電極のパッドおよび前記上部電極のパッドにつながる配線との境界である延出部と前記配線につながらない非延出部とを有し、
前記2つの共振領域は、前記非延出部の部分でお互い近接して配置される検出装置。
【請求項17】
前記共振領域の平面形状はほぼ楕円形状であり、前記楕円形状の長軸が、前記基板の矩形の一辺と平行に直線状に並ぶように設けられ、
前記一方の圧電素子のパッドは、前記共振領域の中心を通過し前記長軸と直交する中心線に対し、他方の圧電素子側は短く、前記他方の圧電素子の反対側には長く設けられた非対称の形状を有する請求項16に記載の検出装置。
【請求項18】
前記2つの圧電素子の圧電層は、一体として設けられている請求項17に記載の検出装置。
【請求項19】
対向する第1辺および第2辺と対向する第3辺および第4辺とを有する矩形の上面を有する基板と、
下部電極と上部電極で圧電層を挟み、前記基板の第1辺と平行に2つ並び、間に電気的分離される距離で離間された隣接領域が設けられ、前記第3辺側の第1共振領域および前記第4辺側の第2共振領域と、
前記第1共振領域の下部電極と接続し、前記第1辺に沿って延在され、前記第3辺の延伸方向から見て前記隣接領域に対応する前記第1辺の第1部分または前記第1部分より前記第3辺側に前記第4辺側の端が位置する第1パッドと、
前記第1共振領域の上部電極と接続し、前記第2辺に沿って延在され、前記第3辺の延伸方向から見て前記隣接領域に対応する前記第2辺の第2部分または前記第2部分より前記第3辺側に前記第4辺側の端が位置する第2パッドと、
前記第2共振領域の下部電極と接続し、前記第1辺に沿って延在され、前記第1部分または前記第1部分より前記第4辺側に前記第3辺側の端が位置する第3パッドと、
前記第2共振領域の上部電極と接続し、前記第2辺に沿って延在され、前記第2部分または前記第2部分より前記第4辺側に前記第3辺側の端が位置する第4パッドと、
を備える検出装置。
【請求項20】
前記第1パッドは、前記延伸方向から見て前記第1共振領域より前記第3辺側に延出し、
前記第2パッドは、前記延伸方向から見て前記第1共振領域より前記第3辺側に延出し、
前記第3パッドは、前記延伸方向から見て前記第2共振領域より前記第4辺側に延出し、
前記第4パッドは、前記延伸方向から見て前記第2共振領域より前記第4辺側に延出する請求項19に記載の検出装置。
【請求項21】
前記圧電層は、前記第1共振領域、前記第2共振領域および前記第1共振領域と前記第2共振領域の間の領域を一体で設けられている請求項19または20に記載の検出装置。
【請求項22】
前記圧電層は、下部圧電層と、前記下部圧電層に積層された上部圧電層の2層からなり、
前記下部圧電層と前記上部圧電層の間には、前記第1共振領域と前記第2共振領域の間の領域も含めて一体として設けられた挿入膜が設けられる請求項21に記載の検出装置。
【請求項23】
前記第1パッド、前記第2パッド、前記第3パッドおよび前記第4パッドは、前記第1共振領域、前記第2共振領域および前記隣接領域の近傍から前記第1辺、前記第2辺、前記第3辺および前記第4辺の近傍まで拡張されている請求項22に記載の検出装置。
【請求項24】
対向する第1辺および第2辺と対向する第3辺および第4辺とを有する矩形の上面を有する基板と、
下部電極と上部電極で圧電層を挟んでなる共振領域を有し、少なくとも3つの共振領域の互いの間に電気的分離される距離で離間された隣接領域が設けられ、前記少なくとも3つの共振領域のすべてがまとまって前記基板の中央に設けられた集合共振領域と、
前記集合共振領域から放射状に配置され、前記第1辺、第2辺、第3辺および第4辺のいずれかの辺に沿って設けられ、それぞれが前記少なくとも3つの共振領域の下部電極または上部電極に接続された複数のパッドと、
を備える検出装置。
【請求項25】
前記圧電層は、前記少なくとも3つの共振領域および前記少なくとも3つの共振領域の間の領域に一体として設けられている請求項24記載の検出装置。
【請求項26】
前記圧電層は、下部圧電層と、前記下部圧電層に積層された上部圧電層の2層からなり、前記下部圧電層と前記上部圧電層との間に、前記少なくとも3つの共振領域および前記少なくとも3つの共振領域の間の領域に一体として設けられた挿入膜が設けられている請求項25に記載の検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出装置に関し、例えば共振器を有する検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
共振器の上部電極上に感応膜を設け、感応膜の質量変化による共振周波数の変化に基づき流体中の特定の物質を検出する検出装置が知られている。例えば基準となる共振器と特定の物質を検出する共振器とを一つの基板上に設けることが知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-115927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基準となる共振器を用いて温度による影響を抑制するためには、基準となる共振器と特定の物質を検出する共振器との共振領域の温度差を小さくすることが好ましい。このように、複数の共振器の共振領域の温度を近づけるためには、複数の共振器を同一の基板上に設け、複数の共振器の共振領域を隣接して設けることが好ましい。しかし、共振領域の下部電極および上部電極を外部と接続するためのパッドと共振領域との配置によっては、複数の共振器の共振領域の間の距離が長くなってしまう。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、共振領域間の距離を短くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上面において第1方向に延伸する辺を有する基板と、前記基板上に設けられた第1下部電極と、前記第1下部電極上に設けられた第1圧電層と、前記第1圧電層上に設けられた第1上部電極と、前記第1圧電層を挟み前記第1下部電極と前記第1上部電極とが対向する第1共振領域と、前記第1上部電極上に設けられた感応膜と、を備える第1共振器と、前記基板上に設けられ前記第1下部電極と隣接する第2下部電極と、前記第2下部電極上に設けられた第2圧電層と、前記第2圧電層上に設けられ前記第1上部電極と分離した第2上部電極と、前記第1圧電層を挟み前記第1下部電極と前記第1上部電極とが対向し前記第1共振領域の前記第1方向側に設けられた第2共振領域と、を備える第2共振器と、前記第1下部電極に電気的に接続され、前記第1方向に直交する第2方向から見て、前記第1共振領域と前記第2共振領域との間における前記第1下部電極と前記第2下部電極とが最も近い隣接領域において前記第2共振領域に最も近い第1箇所を含み前記第1箇所より前記第1共振領域側の第1領域のみに設けられた第1パッドと、前記第1上部電極に電気的に接続され、前記第1領域のみに設けられた第2パッドと、前記第2下部電極に電気的に接続され、前記第2方向から見て、前記隣接領域における前記第1共振領域に最も近い第2箇所を含み前記第2箇所より前記第2共振領域側の第2領域のみに設けられた第3パッドと、前記第2上部電極に電気的に接続し、前記第2領域のみに設けられた第4パッドと、を備える検出装置である。
【0007】
上記構成において、前記第1パッドと前記第2パッドとは、前記第2方向において前記第1共振領域を挟み、前記第3パッドと前記第4パッドとは、前記第2方向において前記第2共振領域を挟む構成とすることができる。
【0008】
上記構成において、前記第1方向における前記第1パッドの最大幅、および前記第1方向における前記第2パッドの最大幅は、前記第1方向における前記第1共振領域の最大幅より大きく、前記第1方向における前記第3パッドの最大幅、および前記第1方向における前記第4パッドの最大幅は、前記第1方向における前記第2共振領域の最大幅より大きい構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記第2方向から見て、前記第1パッドおよび前記第2パッドは、前記第2箇所を含み前記第2箇所より前記第2共振領域側の領域には設けられておらず、前記第2方向から見て、前記第3パッドおよび前記第4パッドは、前記第1箇所を含み前記第1箇所より前記第1共振領域側の領域には設けられていない構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記第1下部電極と前記第1パッドとを電気的に接続し、前記第1領域にのみ設けられた第1配線と、前記第1上部電極と前記第2パッドとを電気的に接続し、前記第1領域のみに設けられた第2配線と、前記第2下部電極と前記第3パッドとを電気的に接続し、前記第2領域のみに設けられた第3配線と、前記第2上部電極と前記第4パッドとを電気的に接続し、前記第2領域のみに設けられた第4配線と、を備える構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記隣接領域における前記第1下部電極と前記第2下部電極との最短距離は、前記基板の厚さより小さい構成とすることができる。
【0012】
本発明は、基板と、前記基板上に設けられた第1下部電極と、前記第1下部電極上に設けられた第1圧電層と、前記第1圧電層上に設けられた第1上部電極と、前記第1圧電層を挟み前記第1下部電極と前記第1上部電極とが対向する第1共振領域と、前記第1上部電極上に設けられた感応膜と、を備える第1共振器と、前記基板上に設けられ前記第1下部電極と隣接する第2下部電極と、前記第2下部電極上に設けられた第2圧電層と、前記第2圧電層上に設けられ前記第1上部電極と分離した第2上部電極と、前記第2圧電層を挟み前記第2下部電極と前記第2上部電極とが対向する第2共振領域と、を備える第2共振器と、前記基板上に設けられ前記第1下部電極および前記第2下部電極と隣接する第3下部電極と、前記第3下部電極上に設けられた第3圧電層と、前記第3圧電層上に設けられ前記第1上部電極および前記第2上部電極と分離した第3上部電極と、前記第3圧電層を挟み前記第3下部電極と前記第3上部電極とが対向する第3共振領域と、を備える第3共振器と、前記第1下部電極と接続され、前記第1共振領域の第1中心と前記第2共振領域の第2中心と前記第3共振領域の第3中心とを頂点とする三角形の外側の第1領域にのみ設けられ、前記第1下部電極と電気的に接続された第1パッドと、前記第1領域にのみ設けられ、前記第1上部電極と電気的に接続された第2パッドと、前記第1領域にのみ設けられ、前記第2下部電極と電気的に接続された第3パッドと、前記第1領域にのみ設けられ、前記第2上部電極と電気的に接続された第4パッドと、前記第1領域にのみ設けられ、前記第3下部電極と電気的に接続された第5パッドと、前記第1領域にのみ設けられ、前記第3上部電極と電気的に接続された第6パッドと、を備える検出装置である。
【0013】
上記構成において、前記第1領域のみに設けられ、前記第1下部電極と前記第1パッドとを電気的に接続する第1配線と、前記第1領域のみに設けられ、前記第1上部電極と前記第2パッドとを電気的に接続する第2配線と、前記第1領域のみに設けられ、前記第2下部電極と前記第3パッドとを電気的に接続する第3配線と、前記第1領域のみに設けられ、前記第2上部電極と前記第4パッドとを電気的に接続する第4配線と、前記第1領域のみに設けられ、前記第3下部電極と前記第5パッドとを電気的に接続する第5配線と、前記第1領域のみに設けられ、前記第3上部電極と前記第6パッドとを電気的に接続する第6配線と、を備える構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記第1中心を通り、前記第2中心と前記第3中心とを通る第1直線に平行な第2直線と、前記第2中心を通り、前記第3中心と前記第1中心とを通る第3直線に平行な第4直線と、前記第3中心を通り、前記第1中心と前記第2中心とを通る第5直線に平行な第6直線と、を3辺とする三角形の外側を第2領域としたとき、前記第1パッド、前記第2パッド、前記第3パッド、前記第4パッド、前記第5パッドおよび前記第6パッドは前記第2領域のみに設けられている構成とすることができる。
【0015】
上記構成において、前記第1下部電極と前記第2下部電極との最短距離は、前記基板の厚さより小さく、前記第2下部電極と前記第3下部電極との最短距離は、前記基板の厚さより小さく、前記第3下部電極と前記第1下部電極との最短距離は、前記基板の厚さより小さい構成とすることができる。
【0016】
上記構成において、前記第1共振領域と前記第2共振領域との間において、前記第1圧電層と前記第2圧電層と一体として設けられた第3圧電層を備える構成とすることができる。
【0017】
本発明は、基板と、前記基板上に設けられた第1下部電極と、前記第1下部電極上に設けられた第1圧電層と、前記第1圧電層上に設けられた第1上部電極と、前記第1圧電層を挟み前記第1下部電極と前記第1上部電極とが対向する第1共振領域と、前記第1上部電極上に設けられた感応膜と、を備える第1共振器と、前記基板上に設けられ前記第1下部電極と隣接する第2下部電極と、前記第2下部電極上に設けられた第2圧電層と、前記第2圧電層上に設けられ前記第1上部電極と分離した第2上部電極と、前記第2圧電層を挟み前記第2下部電極と前記第2上部電極とが対向する第2共振領域と、を備える第2共振器と、前記第1共振領域と前記第2共振領域との間において、前記第1圧電層と前記第2圧電層と一体として設けられた第3圧電層と、を備える検出装置である。
【0018】
上記構成において、前記第1上部電極に電気的に接続された第1パッドと、前記第2上部電極に電気的に接続された第2パッドと、を備え、前記第3圧電層は、前記第1パッドと前記第2パッドとの間において、少なくとも一部が一体として設けられている構成とすることができる。
【0019】
上記構成において、前記第1下部電極に電気的に接続された第3パッドと、前記第2下部電極に電気的に接続された第4パッドと、を備え、前記第3圧電層は、前記第1共振領域、前記第2共振領域、前記第1パッド、前記第2パッド、前記第3パッドおよび前記第4パッドを囲むように、一体として設けられ、前記第3パッドおよび前記第4パッドを露出する開口を有する構成とすることができる。
【0020】
上記構成において、前記第3圧電層の熱伝導率は、前記基板の熱伝導率より大きい構成とすることができる。
【0021】
本発明は、下部電極と上部電極で圧電層を挟んだ圧電素子が矩形の基板に2つ並んで設けられ、一方の圧電素子の前記上部電極の上には、感応膜が設けられ、前記下部電極、前記圧電層および前記上部電極の重畳した領域が共振領域となり、前記共振領域の周囲は、前記下部電極のパッドおよび前記上部電極のパッドにつながる配線との境界である延出部と前記配線につながらない非延出部とを有し、前記2つの共振領域は、前記非延出部の部分でお互い近接して配置される検出装置である。
【0022】
上記構成において、前記共振領域の平面形状はほぼ楕円形状であり、前記楕円形状の長軸が、前記基板の矩形の一辺と平行に直線状に並ぶように設けられ、前記一方の圧電素子のパッドは、前記共振領域の中心を通過し前記長軸と直交する中心線に対し、他方の圧電素子側は短く、前記他方の圧電素子の反対側には長く設けられた非対称の形状を有する構成とすることができる。
【0023】
上記構成において、前記2つの圧電素子の圧電層は、一体として設けられている構成とすることができる。
【0024】
本発明は、対向する第1辺および第2辺と対向する第3辺および第4辺とを有する矩形の上面を有する基板と、下部電極と上部電極で圧電層を挟み、前記基板の第1辺と平行に2つ並び、間に電気的分離される距離で離間された隣接領域が設けられ、前記第3辺側の第1共振領域および前記第4辺側の第2共振領域と、前記第1共振領域の下部電極と接続し、前記第1辺に沿って延在され、前記第3辺の延伸方向から見て前記隣接領域に対応する前記第1辺の第1部分または前記第1部分より前記第3辺側に前記第4辺側の端が位置する第1パッドと、前記第1共振領域の上部電極と接続し、前記第2辺に沿って延在され、前記第3辺の延伸方向から見て前記隣接領域に対応する前記第2辺の第2部分または前記第2部分より前記第3辺側に前記第4辺側の端が位置する第2パッドと、前記第2共振領域の下部電極と接続し、前記第1辺に沿って延在され、前記第1部分または前記第1部分より前記第4辺側に前記第3辺側の端が位置する第3パッドと、前記第2共振領域の上部電極と接続し、前記第2辺に沿って延在され、前記第2部分または前記第2部分より前記第4辺側に前記第3辺側の端が位置する第4パッドと、を備える検出装置である。
【0025】
上記構成において、前記第1パッドは、前記延伸方向から見て前記第1共振領域より前記第3辺側に延出し、前記第2パッドは、前記延伸方向から見て前記第1共振領域より前記第3辺側に延出し、前記第3パッドは、前記延伸方向から見て前記第2共振領域より前記第4辺側に延出し、前記第4パッドは、前記延伸方向から見て前記第2共振領域より前記第4辺側に延出する構成とすることができる。
【0026】
上記構成において、前記圧電層は、前記第1共振領域、前記第2共振領域および前記第1共振領域と前記第2共振領域の間の領域を一体で設けられている構成とすることができる。
【0027】
上記構成において、前記圧電層は、下部圧電層と、前記下部圧電層に積層された上部圧電層の2層からなり、前記下部圧電層と前記上部圧電層の間には、前記第1共振領域と前記第2共振領域の間の領域も含めて一体として設けられた挿入膜が設けられる構成とすることができる。
【0028】
上記構成において、前記第1パッド、前記第2パッド、前記第3パッドおよび前記第4パッドは、前記第1共振領域、前記第2共振領域および前記隣接領域の近傍から前記第1辺、前記第2辺、前記第3辺および前記第4辺の近傍まで拡張されている構成とすることができる。
【0029】
本発明は、対向する第1辺および第2辺と対向する第3辺および第4辺とを有する矩形の上面を有する基板と、下部電極と上部電極で圧電層を挟んでなる共振領域を有し、少なくとも3つの共振領域の互いの間に電気的分離される距離で離間された隣接領域が設けられ、前記少なくとも3つの共振領域のすべてがまとまって前記基板の中央に設けられた集合共振領域と、前記集合共振領域から放射状に配置され、前記第1辺、第2辺、第3辺および第4辺のいずれかの辺に沿って設けられ、それぞれが前記少なくとも3つの共振領域の下部電極または上部電極に接続された複数のパッドと、を備える検出装置である。
【0030】
上記構成において、前記圧電層は、前記少なくとも3つの共振領域および前記少なくとも3つの共振領域の間の領域に一体として設けられている構成とすることができる。
【0031】
上記構成において、前記圧電層は、下部圧電層と、前記下部圧電層に積層された上部圧電層の2層からなり、前記下部圧電層と前記上部圧電層との間に、前記少なくとも3つの共振領域および前記少なくとも3つの共振領域の間の領域に一体として設けられた挿入膜が設けられている構成とすることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、共振領域間の距離を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、実施例1に係る検出装置のブロック図である。
図2図2(a)および図2(b)は、それぞれ比較例1および実施例1のセンサの平面図である。
図3図3は、実施例1に係るセンサの平面図である。
図4図4は、図3のA-A断面図である。
図5図5は、図3のB-B断面図である。
図6図6(a)から図6(c)は、実施例1におけるセンサの製造方法を示す断面図である。
図7図7(a)および図7(c)は、実施例1におけるセンサの製造方法を示す断面図である。
図8図8(a)および図8(b)は、実施例1におけるセンサの製造方法を示す断面図である。
図9図9は、実験1におけるサンプルAの平面図である。
図10図10は、実験1におけるサンプルBの平面図である。
図11図11は、恒温槽内の温度プロファイルを示す図である。
図12図12は、各期間T1~T4における共振周波数の差Δfrを示す図である。
図13図13は、実施例1の変形例1におけるセンサの平面図である。
図14図14は、実施例1の変形例2におけるセンサの平面図である。
図15図15は、実施例1の変形例3におけるセンサの平面図である。
図16図16は、実施例1の変形例4におけるセンサの平面図である。
図17図17は、実施例2におけるセンサの平面図である。
図18図18は、実施例2の変形例1におけるセンサの平面図である。
図19図19は、実施例3におけるセンサの平面図である。
図20図20は、図19のA-A断面図である。
図21図21は、実施例3の変形例1におけるセンサの断面図である。
図22図22は、実施例3の変形例2におけるセンサの平面図である。
図23図23は、図22のA-A断面図である。
図24図24(a)および図24(b)は、それぞれ実施例4およびその変形例1におけるセンサの断面図である。
図25図25は、実施例4の変形例2におけるセンサの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
まず、実施形態の概要について触れる。図1図25で示す符号11aおよび11bは、圧電薄膜共振器(以下共振器と呼ぶ)であり、下部電極12aおよび12bと上部電極16aおよび16bの2つの電極で、圧電層14aおよび14bを厚み方向で挟持し、この下部電極12aおよび12b側を基板10に実装したものである。この2つの電極に交流電圧を印加することで圧電層14aおよび14bが共振し、共振器として移動通信の端末などのフィルタとして採用されている。圧電薄膜共振器として、例えば、FBAR(Film Bulk Acoustic Resonator)がある。
【0035】
一方、この共振器は、センサとして活用される。電極に「におい」センシング用の感応膜を被覆すると、空気中のにおい成分が吸着し、共振周波数が変化する性質を利用している。また感応膜として、感湿膜を付けると、水蒸気の吸着により、周波数が変化する。この周波数の変化を利用することで、においの成分の判定、相対湿度などを判定することが可能となる。
【0036】
しかしながら、共振器は、温度特性を有し、温度によって共振周波数が変化する。このため、図1図3に示すように、感応膜を設けない温度補償用の共振器11b(以下、基準共振器と呼ぶ)と一緒に、センシング用の感応膜18が設けられた共振器11aを配置している。
【0037】
しかし、2つの共振器11aと11bは、位置的に離間しており、位置によって温度差があったり検出する気体の濃度の分布が有ったりする。
【0038】
これらの点を考慮し、両者をできる限り同じ環境(例えば検出する気体の濃度、温度または湿度)にするには、2つの共振器11aおよび11bをできる限り近接した方がよい。特に、共振器のうち、共振周波数の変化に大きく寄与するのは、上部電極と、圧電膜と、下部電極とが重なる領域である共振領域50aおよび50bである。つまり、2つの共振領域50aおよび50bは、できる限り近接した方がよい。
【0039】
本実施例では、この近接の概念に着目し、導電パターンの配置、さらには共振器構造を工夫して、2つの共振器11aおよび11bの近接配置を実現したものである。共振器としては、例として2つのFBARを用いて説明する。
【0040】
図2(b)の実施例1のように、基板10の上面は、略矩形であり、辺61~64を有している。下部電極12aと上部電極16aとで圧電層14aを挟んだ共振器11aと、下部電極12bと上部電極16bとで圧電層14bを挟んだ共振器11bと、が辺61および62の延伸方向に基板10に並んで設けられている。そして辺63側の共振器11aの上部電極16aの上には、感応膜18が設けられている。この共振器11aがセンシング用の共振器であり、辺64側の共振器11bが基準共振器である。
【0041】
図2(a)の比較例1を見ると、例えば辺63側のパッド25bの辺64側の短辺が辺64側に出っ張り、辺64側のパッド25dの辺63側の短辺が辺63側に出っ張っているので、2つの共振領域50aおよび50bを、近接配置しようとすると、この出っ張りが邪魔をする。
【0042】
また、フォトリソグラフィにおける位置合わせマージン、および熱伝導を考慮し、共振器の構造を以下に検討する。これら複数の対策は、少なくとも一つ施せば効果があるものである。
【0043】
ここで、共振領域50aおよび50bの近接配置を説明するため、近接配置の部分の定義をしたい。
【0044】
図1に示すように、2つの共振領域50aおよび50bの周囲には、下部電極12aおよび12bをパッド25aおよび25cへそれぞれ接続する配線26aおよび26cと、上部電極16aおよび16bをパッド25bおよび25dにそれぞれ接続する配線26bおよび26dと、が設けられている。
【0045】
共振領域50aおよび50bの周囲は、パッド25a~25dにつながる配線26a~26dとの境界である延出部と配線26a~26dにつながらない非延出部とを有している。共振領域50aおよび50bは、非延出部の部分でお互い隣接して配置される。
【0046】
共振領域50aおよび50bとの間の領域において、上部電極16aおよび16bより下部電極12aおよび12bの幅が広い。このため、共振器11aの共振器11b側の端は下部電極12aとなり、共振器11bの共振器11a側の端は下部電極12bとなる。共振器11aと11bとの間において、下部電極12aと12bとの間の領域を隣接領域とする。
【0047】
この定義を採用して以下に説明していく。
共振器11aの辺64側にはパッド25aおよび25bは延出せず、共振器11bの辺63側にはパッド25cおよび25dは延出しないように、パッド25a~25dを配置することが重要である。そして、隣接領域30の幅は、下部電極12aと12bとの耐電圧、上部電極16aと16bとの耐電圧を考慮して決定される。下部電極12aと12bとができるだけ近接すればよいのだが、距離L0は、共振器11aと11bとの相互干渉および耐電圧特性が考慮された距離となる。
【0048】
さらに、パッド25aおよび25bの辺64側への延出およびパッド25cおよび25dの辺63側への延出が隣接領域30における共振器11aと11bとの近接配置を困難にするため、以下の対策も行われる。
【0049】
左側の共振器11aのパッド25aおよび25bは、直線31aに対して非対称である。パッド25aおよび25bの辺64側の辺は、共振器11bの辺63側の端部(下部電極12bのうち最も辺63側の端部)または隣接領域30よりも辺63側において終端している。すなわち、パッド25aおよび25bの辺64側の端は、隣接領域30または隣接領域30より辺63側に位置する。
【0050】
右側の共振器11bも同様であり、パッド25cおよび25dの辺63側の辺は、共振器11aの辺64側の端部(下部電極12aのうち最も辺64側の端部)または隣接領域30よりも辺64側において終端している。すなわち、パッド25cおよび25dの辺63側の端は、隣接領域30または隣接領域30より辺64側に位置する。
【0051】
言い換えれば、パッド25aは、共振領域50aの下部電極12aに接続され、第1辺61に沿って延在されている。パッド25aの辺64側の端は、Y方向(辺63の延伸方向)から見て隣接領域30に対応する第1辺61の第1部分または第1部分より第3辺63側に位置する。パッド25bは、共振領域50aの上部電極16aと接続され、第2辺62に沿って延在されている。パッド25bの第4辺64側の端は、Y方向から見て隣接領域30に対応する第2辺62の第2部分または第2部分より第3辺63側に位置する。パッド25cは、共振領域50bの下部電極12bと接続され、第1辺61に沿って延在されている。パッド25cの第3辺63側の端は、第1部分または第1部分より第4辺64側に位置する。パッド25dは、共振領域50bの上部電極16bと接続し、第2辺62に沿って延在されている。パッド25dの第3辺63側の端は、第2部分または第2部分より第4辺64側に位置する。
【0052】
さらに、パッド25aおよび25bは、Y方向から見て共振領域50aより第3辺63側に延出し、パッド25cおよび25dは、Y方向から見て共振領域50bより第4辺64側に延出する。
【0053】
すなわち、共振領域50aおよび50bの平面形状はほぼ楕円形状であり、楕円形状の長軸が、基板10の矩形の一辺61と平行に直線状に並ぶように設けられている。一方の共振器11a(圧電素子)のパッド25aおよび25bは、共振領域50aの中心を通過し長軸と直交する直線31aに対し、他方の共振器11b(圧電素子)側は短く、共振器11bの反対側には長く設けられた非対称の形状を有する。
【0054】
以上により、共振領域50aと50bとを近づけても、パッド25aおよび25bと25cおよび25dとが邪魔をしないため、共振領域50aと50bとの近接配置が可能となる。
【0055】
図2(a)は、比較例1の構造であり、4つのパッド25a~25dが直線31aおよび31bに対し対称であり、パッド25a~25dの端部が、共振領域50aと50bとの間に領域に大きく飛び出している。これにより、共振領域50aと50bとの近接配置が難しいことがわかる。
【0056】
さらに、後述する図20を使って近接配置、良好な熱伝導構造について触れる。
第1に、基板10を共通にすることである。1つの基板10であることは、2つの共振器11aおよび11bの熱が、基板10を通じて伝わりやすくなるため、熱の移動を促進できる。(以下、基板共通とよぶ)
第2に、2つの共振器11aおよび11bの圧電層15を一体とすることである(以下、圧電層共通と呼ぶ)。
第3に、挿入膜20を採用する場合は、その挿入膜20も一体とすることである。(以下、挿入膜共通と呼ぶ)
【0057】
図4では、圧電層14aおよび14bが、2つの共振領域50aと50bの間でエッチングされて分離されている。さらに、挿入膜20aおよび20bも分離されている。このように、圧電層14aと14bおよび挿入膜20aと20bとが分離されていると、共振領域50aと50bとが熱的に分離されてしまう。さらには、フォトリソグラフィ工程においてフォトレジストのパターン形成を行うこととなる。このフォトリソグラフィ工程は、位置合わせマージンが設けられる。また、エッチング精度に起因するマージンが設けられる。よって、圧電層14aと14bの離間距離を大きくしてしまう。
【0058】
よって、2つの共振領域50aと50bの間において、圧電層14aおよび14bが一体であり、挿入膜20aおよび20bは一体であることは、近接配置を可能とする構造の1つである。圧電層14aと14bを一体化することと、挿入膜20aと20bを一体化することのそれぞれによって、圧電層14cまたは挿入膜が、伝熱の経路となる。このため、2つの共振領域50aおよび50bの温度を均一化するために、好ましい構造であることがわかる。
【0059】
さらに、第1~第3の対策は、少なくとも一つ取り入れればその効果は発生する。以下、これらの技術思想をベースに色々な構造について説明していく。
【実施例0060】
図1は、実施例1に係る検出装置のブロック図である。
図1に示すように、検出装置100では、回路基板48上にセンサ40の基板10が搭載されている。このセンサ基板である基板10には共振器11a、11b、パッド25a~25dおよび配線26a~26dが設けられている。共振器11a(第1共振器)は、感応膜18を有し、例えば気体中の特定の物質を検出する共振器である。
【0061】
また、回路基板48には、パッド66a~66dが基板10上のパッド25a~25dに対応して設けられ、ボンディングワイヤ68a~68d(金属細線)により接続され、符号42で示す検出器を構成している。
【0062】
共振器11b(第2共振器)は、感応膜18を有さず、環境の温度の変化を検出する基準共振器である。共振器11aの共振領域50aの下部電極12aおよび上部電極16a(図3参照)は、それぞれ配線26a(第1配線)および26b(第2配線)を介しパッド25a(第1パッド)および25b(第2パッド)に電気的に接続されている。共振器11bの共振領域50bの下部電極12bおよび上部電極16b(図3参照)は、それぞれ配線26c(第3配線)および26d(第4配線)を介しパッド25c(第3パッド)および25d(第4パッド)に電気的に接続されている。下部電極12a、12bは、それぞれ共振領域50a、50bより大きく設けられている。センサ40の詳細については、後述する。
【0063】
回路基板48上には、パッド66a~66dが設けられている。基板10のパッド25aとこのパッド66aとは、複数本のボンディングワイヤ68aにより電気的に接続されている。同様に、基板10のパッド25b~25dと、それぞれに対応するパッド66b~66dとは、対応するボンディングワイヤ68b~68dにより電気的に接続されている。複数のボンディングワイヤ68aを設けることで、パッド25aとパッド66aとの接触抵抗、インピーダンスおよびインダクタンス成分を低減させることができる。これにより、共振器11aの共振特性を改善させることができる。同様に、パッド25b~25dと、対応するパッド66b~66dとは、ボンディングワイヤ68b~68dがそれぞれ複数本設けられている。
【0064】
さらに、複数のボンディングワイヤは、ボンディングツールを用いパッド25a~25dに接合される。パッド25a~25dの長辺の幅は、このツールのヘッドの大きさ、ボンディングワイヤがパッドに接合されたときの接合部のボールサイズまたはスチィッチサイズが考慮され決定される。このため、一般に、パッド25a~25dの長辺の幅は、長辺方向の共振領域50aおよび50bの幅より大きくなる。
【0065】
検出装置100は、検出回路が設けられた検出器42を備える。検出器42は、発振回路44a、44b、測定器45a、45bおよび処理部46を備えている。発振回路44aおよび44bは、それぞれ共振器11aおよび11bの共振周波数に対応する発振周波数を有する発振信号を出力する。なお、発振回路44aおよび44bは、共振器11aおよび11bをそれぞれ含み、発振回路を構成しているということもできる。発振周波数は共振周波数と同じでなくともよく、共振周波数の変化に基づき発振周波数が変化すればよい。測定器45aおよび45bは、それぞれ発振回路44aおよび44bが出力する発振信号の周波数を測定する。処理部46は、測定器45aおよび45bが測定した発振信号の周波数に基づき、気体中の特定の物質の濃度またはにおいの指標などの気体に関する情報を算出または判定する。例えば、処理部46は、発振回路44aと44bの発振周波数の差に基づき、気体に関する情報を算出または判定する。
【0066】
共振器11aおよび11bの共振周波数は、共振器11aおよび11bが設けられた環境の温度(例えば気体の温度)の変化により変化する。このため、共振器11aだけで、特定の物質を検出したとき、温度変化がノイズとなり、気体内に含まれる特定の物質の濃度を正確に反映できない。その結果、測定精度が低下する。一方、共振器11bは、感応膜18を有さない基準共振器である。このため、基準共振器11bの共振周波数の変化は、温度の変化に起因するものである。処理部46は、発振回路44aの発振周波数と発振回路44bの発振周波数の差を用いて、温度の変化分を補正した上で、気体に関する情報を判定している。これにより、温度変化に起因する測定精度の低下を抑制できる。
【0067】
しかし、2つの共振器11aおよび11bは別々に設けられて離間しているので、温度が変化したときに、共振領域50aと50bの温度とに差が生じてしまう。
そこで、本実施形態では、以下の対策を施している。
1つ目は、基板共通の対策である。共振器11aと11bを同じ基板10(例えばシリコン基板)上に設けることで、両方の共振領域50aおよび50bは、基板10を介して熱が伝導し、温度差が小さくなる。さらに、共振領域50aと50bとをできる限り近接させることにより、共振領域50aと50bとの熱伝導路の距離を短くでき、温度差を小さくできる。
なお、隣接とは、2つの共振器11aおよび11bのそれぞれの下部電極12aおよび12bが離間し隣り合うことを意味し、下部電極12aと12bとが隣り合っているとき、挟まれる領域に、他の素子、パッド25a~25dおよび配線26a~26dが設けられていないことである。
【0068】
一方で、前述したように、ボンディングツールのヘッド大きさまたはインピーダンス特性の問題で、1つのパッドにボンディングワイヤを多数本ボンディングすることになる。このため、外部接続のためのパッド25a~25dは、そのサイズが大きくなってしまう。例えば、図1のように、パッド25aに、3本のボンディングワイヤ68aを接続する場合、ボンディングワイヤ68aがパッド25aに接合される位置は、基板10の長辺61の延伸方向に配列する。さらに、ボンボンディングワイヤ68aがパッド25aに接合された接合部のサイズなどを考慮して、ボンディングワイヤを等間隔にパッド25aに接合させると、パッド25aの長辺61の延伸方向の幅が長くなる。パッド25b~25dにおいても同様である。このパッド形状の問題点を解決するのが、パッド25a~25dの出っ張り防止の対策である。
【0069】
図2(a)および図2(b)は、それぞれ比較例1および実施例1のセンサ40の平面図である。共振領域50aおよび50b、共振領域50aおよび50bの周りの下部電極12aおよび12b、並びにパッド25a~25dを図示している。一方、配線26a~26dを省略している。また、基板10の上面の法線方向をZ方向、基板10の上面の辺の延伸方向をX方向およびY方向とする。
【0070】
比較例1および実施例1ともに、基板10の平面形状は略長方形であり、基板10の上面の長辺は辺61および62であり、短辺は辺63および64である。辺61および62は、左右方向(X方向:第1方向)に延伸し、辺63および64は、上下方向(Y方向:第2方向)に延伸する。基準共振器11bの共振領域50bは、共振器11aの共振領域50aと隣り合い、右側(X方向)、つまり長辺方向に設けられている。なお、基板10の平面形状は、少なくとも1つの辺61を有すれば、矩形でなくてもよい。
【0071】
(比較例1の課題)
図2(a)の比較例1では、パッド25aおよび25bは、共振領域50aの中心35aを通り、短辺63の延伸方向に延伸する直線31aに対し線対称である。パッド25cおよび25dは、共振領域50bの中心35bを通り、短辺63の延伸方向に延伸する直線31bに対し線対称である。この場合、短絡を考慮して、パッド25aと25c、パッド25bと25dとを接触させないように配置すると、下部電極12aと12bとの距離L0が長くなってしまう。距離L0が長くなれば、共振領域50aと50bとの温度差は大きくなり、温度を基因とした測定精度が悪化してしまう。
【0072】
(実施例1の対策案)
まず第1に、図4に示すように、2つの共振器11aおよび11bは、1つの基板10に搭載することが好ましい。これは、「基板共通」の効果を狙うもので、基板10を介して、お互いに熱的に結合され、お互いの温度差の発生を抑止するメリットがある。
第2は、パッドのパターン形状で、「パッドの出っ張り抑止」の対策である。
【0073】
図2(b)のように、実施例1では、パッド25aおよび25bは、直線31aに対し非対称であり、パッド25cおよび25dは、直線31bに対し非対称である。理解しやすいように、第1共振領域50aと第2共振領域50bとの間において、第1下部電極12aと第2下部電極12bとが最も近い領域を隣接領域30と呼ぶことにする。上下方向(Y方向)から見て、隣接領域30における右側の共振領域50bに最も近い箇所32a(第1箇所)より共振領域50a側の領域を領域52a(第1領域)とする。また、上下方向(Y方向)から見て、隣接領域30における共振領域50aに最も近い箇所32b(第2箇所)より共振領域50b側の領域を領域52b(第2領域)とする。このとき、パッド25aおよび25bは、領域52aのみに設けられ、領域52a以外には設けられていない。パッド25cおよび25dは、領域52bのみに設けられ、領域52b以外には設けられていない。
【0074】
左右のパッド25aと25cとの間、パッド25bと25dとの間、のショートが発生するほどパッドが近接しないように、2つの左右のパッド25aと25c、およびパッド25bと25dは、耐電圧を考慮した間隔が保持される。仮に、パッド25aが領域52aの右端まで伸びた場合、パッド25cは、領域52bの左端まで行くと衝突するため、領域52aの手前で止める。よって、「パッド出っ張り抑止」の対策で共振領域50aと50bを近接配置でき、温度差を小さくでき、気体に関する情報の測定精度を向上できる。
【0075】
別の見方で説明をする。
右の共振器11bのパッド25cおよび25dは、直線31bに対して非対称で、パッド25cおよび25dの左側の短辺は、隣接領域30よりも左側に手前である。このため、パッド25cおよび25dの右側の短辺は、比較例1よりも右側へ延在している。同様に、左の共振器11aのパッド25aおよび25bは、直線31aに対して非対称で、パッド25aおよび25bの右側の短辺は、隣接領域30よりも右側に手前である。このため、パッド25aおよび25bの左側の短辺は、比較例1よりもより左へ延在している。よって、2つの共振領域50aと50bとを近接させても、パッド25aと25c、およびパッド25bと25d、はショートしない。つまりパッド25a~25dのパターン配置(パッドの出っ張り防止)によって、共振領域50aと50bを近接配置できる。隣接領域30における距離L0は、2つの共振器11aおよび11bの下部電極12aおよび12bがお互いに干渉しない範囲、または短絡放電しない範囲である。
【0076】
(センサ40の説明)
次に、実施例1のセンサ40(共振器)について説明する。図3は、実施例1に係るセンサ40の平面図である。図4は、図3のA-A断面図である。図5は、図3のB-B断面図である。図3では、共振領域50aおよび50bをクロスハッチングで示している。図3では、孔23aおよび23bの図示を省略している。基板10の上面の法線方向をZ方向、基板10の上面の辺の延伸方向をX方向およびY方向とする。
【0077】
図3から図5のように、一つの基板10上に、共振器11aおよび11bが設けられている(基板共通)。共振器11aでは、基板10上に下部電極12a(第1下部電極)が設けられ、下部電極12a上に圧電層14a(第1圧電層)が設けられ、圧電層14a上に上部電極16a(第1上部電極)が設けられている。また、基板10の上面と下部電極12aとの間に、ドーム状の膨らみを有する空隙22a(第1空隙)が形成されている。共振領域50a(第1共振領域)は圧電層14aの少なくとも一部を挟み、下部電極12aと上部電極16aとが対向(または重畳)する領域により画定される。
【0078】
実施例1のセンサ40では、共振領域50aは、楕円形状を有する。共振領域50aの平面形状は、楕円形状以外でもよく、例えば四角形状または五角形状等の多角形状でもよい。共振領域50aの周囲に位置する下部電極12aは、共振領域50aより大きい。これは、上部電極16aの位置合わせずれが生じても共振領域50aの面積が変わらないようにするためである。
【0079】
平面視において、空隙22aは共振領域50aと同じ大きさまたは共振領域50aよりも大きく設けられている。これにより、弾性波は空隙22aにより反射される。下部電極12aは空隙22aより大きく設けられ、下部電極12aの周縁部は空隙22aの外側の基板10上に設けられている。X方向における共振領域50aの両側に位置する下部電極12aに孔23aが設けられている。孔23aは空隙22aにつながっている。後述するように、孔23aは空隙22aを形成するときに、犠牲層をエッチングするエッチング液が通る孔である。
【0080】
上部電極16aが設けられた領域以外の圧電層14aは除去されている。これにより、弾性波が共振領域50aから外側に漏洩することを抑制できる。上部電極16a上に感応膜18が設けられている。上部電極16aの上面には、挿入膜20aの凹部に対応して凹部19が設けられており、感応膜18はこの凹部19内に設けられている。この凹部19は、お皿のごとき容器となり、感応膜18を一定にすることができる。
【0081】
例えば、気体または液体中の特定の原子または分子等の物質が感応膜18に吸着すると感応膜18の質量が増加する。感応膜18の質量が変化すると、共振器11aの共振周波数が変化する。このように、共振器11aを検出素子として用いることができる。
【0082】
圧電層14aおよび14bは、2つの圧電層が積層され、基板10上に設けられた下部圧電層15aと、下部圧電層15a上に設けられた上部圧電層15bと、を備える。共振領域50aの全面に渡り、下部圧電層15aと上部圧電層15bとの間に挿入膜20aが設けられている。共振領域50aの周縁部の挿入膜20aは中央部の挿入膜20aより厚い。共振領域50aの中央部の挿入膜20aは温度係数を小さくする温度補償膜として機能し、周縁部の挿入膜20aはQ値を向上させるための膜として機能する。Q値を向上させない場合、周縁部の挿入膜20aの厚さは、中央部の挿入膜20aの厚さと同じでもよい。共振器11aでは、温度補償膜として機能する挿入膜20aを設けることで、共振周波数の温度係数が小さくなる。なお、挿入膜20aは、下部電極12aと上部電極16aとの間に設けられていればよい。
【0083】
図3のように、下部電極12aは、共振領域50aから下の辺61の方に(-Y方向)に配線26aを介して引き出され、その後辺61に沿って左方向(-X方向)にパッド25aとして延伸している。上部電極16aは、共振領域50aから上の辺62の方に(+Y方向)に配線26bを介して引き出され、その後辺62に沿って左方向(-X方向)にパッド25bとして延伸している(パッドの飛び出し防止)。さらに、パッド25aおよび25bに相当する部分にはボンディング性を考慮して金などの金属層24が設けられている。
【0084】
図3および図4のように、共振器11bは、感応膜18が設けられておらず、基準共振器として動作するため、センサ用の共振器11aと同一形状である。共振器11bでは、下部電極12b(第2下部電極)、圧電層14b(第2圧電層)および上部電極16b(第2上部電極)が設けられている。基板10と下部電極12bとの間に空隙22b(第2空隙)が設けられている。下部電極12bは下部電極12aから分離されており、上部電極16bは上部電極16aから分離されている。共振領域50b(第2共振領域)は、圧電層14bの少なくとも一部を挟み下部電極12bと上部電極16bとが対向する領域により画定される。
【0085】
図3のように、センサ用の共振器11aと基準共振器11bは、左右対称に形成されている。下部電極12bは、共振領域50bから配線26cを介して下の辺61に向かって(-Y方向)に引き出され、その後下の辺61に沿って、パッド25cとして右方向(+X方向)に延伸している。上部電極16bは、共振領域50bから配線26dを介して上の辺62の方に(+Y方向)に引き出され、その後上の辺62に沿ってパッド25dとして右方向(+X方向)に延伸している(パッドの飛び出し防止)。またパッド25cおよび25dには金層等の金属層24が設けられている。
【0086】
基板10は、例えばシリコン基板、サファイア基板、石英基板、ガラス基板、セラミック基板またはGaAs基板である。下部電極12a、12b、上部電極16aおよび16bは、例えばルテニウム(Ru)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)またはイリジウム(Ir)等の単層膜またはこれらの膜から複数を選択した積層膜である。
【0087】
圧電層14aおよび14bは、例えば窒化アルミニウム(AlN)膜、酸化亜鉛(ZnO)膜、窒化ガリウム(GaN)膜、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)膜、チタン酸鉛(PbTiO3)膜、タンタル酸リチウム(LiTaO)膜またはニオブ酸リチウム(LiNbO)膜である。
【0088】
挿入膜20aの共振領域50aにおける中央部は、圧電層14aおよび14bの弾性定数の温度係数とは逆符号の弾性定数の温度係数を有する。これにより、共振周波数等の温度係数を0に近づけることができる。挿入膜20aおよび20bの共振領域50aおよび50bの周縁部は、圧電層14aおよび14bよりヤング率の小さい材料の膜であり、ここでは、例えば酸化シリコン膜である。
【0089】
金属層24は、ボンディングワイヤのボンディング性が考慮されて、例えば金膜、銅膜またはアルミニウム膜であり、金属層24の下層には、チタン膜等の密着膜を有してもよい。
【0090】
感応膜18は、例えば有機高分子膜、有機低分子膜、または無機膜である。有機高分子材料としては、例えばポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、6-ナイロン、セルロースアセテート、ポリ-9,9-ジオクチレフルオレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルカルバゾール、ポリエチレンオキシド、ポリ塩化ビニル、ポリ-p-フェニレンエーテルスルホン、ポリ-1-ブテン、ポリブタジエン、ポリフェニルメチルシラン、ポリカプロラクトン、ポリビスフェノキシホスファゼン、ポリプロピレンなどの単一構造からなるホモポリマー、ホモポリマー2種以上の共重合体であるコポリマー、これらを混合したブレンドポリマーなどを用いることができる。
【0091】
例えば、有機低分子材料としては、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(Alq3)、ナフチルジアミン(α-NPD)、BCP(2,9 - dimethyl - 4,7 - diphenyl - 1,10 - phenanthroline)、CBP(4,4' - N,N' - dicarbazole - biphenyl)、銅フタロシアニン、フラーレン、ペンタセン、アントラセン、チオフェン、Ir(ppy(2 - phenylpyridinato))、トリアジンチオール誘導体、ジオクチルフルオレン誘導体、テトラテトラコンタン、パリレンなどを用いることができる。
【0092】
例えば、無機材料としては、アルミナ、チタニア、五酸化バナジウム、酸化タングステン、フッ化リチウム、フッ化マグネシウム、アルミニウム、金、銀、スズ、インジウム・ティン・オキサイド(ITO)、カーボンナノチューブ、塩化ナトリウム、塩化マグネシウムなどを用いることができる。
【0093】
感応膜18は、有機配位子と金属イオンが結合した金属有機構造体であり、細孔を有する多孔質体でもよい。感応膜18は、銅フタロシアニン(CuPc)等の金属フタロシアニンでもよく、抗原が結合する抗体を含んでもよい。感応膜18の厚さは例えば500nm以下であり、一例として100nmである。
【0094】
(センサの製造方法)
図6(a)から図8(b)は、実施例1におけるセンサ40の製造方法を示す断面図である。
【0095】
まず基板10となるウエハが用意される。最終的には、ウエハは、完成された共振器が1ユニットとして縦横に並べられ、製品としてダイシングされる。ここでは、図4のように、2つの共振器11aおよび11bが左右に並んだチップを採用して説明していく。
【0096】
続いて、基板10上に空隙を形成するための犠牲層29aおよび29bの材料を全面に形成する。犠牲層は、例えば酸化マグネシウム(MgO)膜、酸化亜鉛(ZnO)膜、ゲルマニウム(Ge)膜、酸化シリコン(SiO)膜またはリンケイ酸ガラス(PSG:phosphosilicate glass)膜である。厚さは、例えば10~100nmである。その後、犠牲層を、フォトリソグラフィ法およびエッチング法を用い、所望の形状にパターニングする。結果、図6(a)のように、2つの犠牲層29aおよび29bが形成され、その形状は、図3の空隙22a、22bの平面形状は例えば楕円形状である。
【0097】
続いて、図6(b)に示すように、犠牲層29a、29bおよび基板10上に下部電極12aおよび12bの材料を被覆する。この成膜の後に、フォトリソグラフィ法およびエッチング法を用い所望の形状の下部電極12aおよび12bにパターニングする。下部電極12aおよび12bは、リフトオフ法により形成してもよい。なお、符号30は、図3に示す隣接領域である。
【0098】
図6(c)に示すように、下部電極12a、12bおよび基板10上に下部圧電層15aを成膜する。
【0099】
続いて、図7(a)に示すように、下部圧電層15a上に挿入膜20aおよび20bの材料を全面に形成し、フォトリソグラフィ法およびエッチング法を用いて、2つに分離した形状にパターニングする。挿入膜の周囲を厚膜部とし、その内側を薄膜部とすると、まず全域を厚膜の状態で2つにパターニングし、その後薄膜部をエッチングにより形成する。よって挿入膜20aには凹部19aが形成される。挿入膜20bも一緒に形成される。挿入膜20aと20bとは同じ形状である。
【0100】
図7(b)に示すように、下部圧電層15a、挿入膜20aおよび20b上に上部圧電層15bの材料を成膜する。なお、上部圧電層15bの上面には、挿入膜20aおよび20bの凹部19aに対応する凹部19bが形成される。
【0101】
続いて、図7(c)に示すように、上部圧電層15b上に、上部電極16aおよび16bの電極材を形成し、例えばフォトリソグラフィ技術およびリフトオフ法を用い所望の形状にパターニングする。上部電極16aおよび16bの上面には、挿入膜20aおよび20bの凹部19aに対応し、凹部19が形成される。
【0102】
続いて、図8(a)に示すように、上部電極16aおよび16bをフォトレジストで保護しながら、圧電層14aおよび14bを例えばフォトリソグラフィ法およびエッチング法を用い所望の形状にパターニングする。これにより、下部電極12aと上部電極16aとに挟まれた圧電層14aおよび14bが形成される。ここでは、共振器11aと11bとは、基板10のみ共通で、下部電極、圧電層、挿入膜および上部電極は左右に分離されている。
【0103】
図8(b)に示すように、孔23aおよび23bを介し、エッチング液を下部電極12aおよび12bの下の犠牲層29aおよび29bに導入して、犠牲層29aおよび29bを取り除く。その結果、ドーム状の膨らみを有する空隙22aおよび22bが形成される。
【0104】
続いて、図4に示すように、上部電極16aの上面の凹部19内に感応膜18を形成する。感応膜18は、例えば感応膜18の材料が溶解された溶剤を塗布し、その後溶剤を乾燥させることにより形成する。
【0105】
その後、ウエハは、センサ用の共振器と隣の基準共振器がペアになるよう1チップとしてダイシングする。以上により、実施例1におけるセンサ40が製造される。
【0106】
(実験1)
2つの共振器11aおよび11bを異なる基板10aおよび10bにそれぞれ設けたサンプルAと、2つの共振器11aおよび11bを同一基板10に設けたサンプルBと、を作製した。
【0107】
サンプルAは比較例2に相当し、サンプルBは実施例1に相当する。サンプルAおよびBともに、共振器11aに感応膜18を設けていない。共振器11aと11bとの構造は同じであり、共振周波数はほぼ同じである。サンプルAおよびBにおいて、気体の温度を変え、2つの共振器11aおよび11bとの共振周波数の差を測定した。
【0108】
共振器11aおよび11bの共振周波数は、約1.7GHzである。基板10は、厚さが210μmのシリコン基板である。下部電極12aおよび12bは、基板10側から厚さが70nmのクロム膜および厚さが213nmのルテニウム膜である。下部圧電層15aは厚さが568nmの窒化アルミニウム膜であり、上部圧電層15bは厚さが568nmの窒化アルミニウム膜である。挿入膜20aは、共振領域50aの中央部での厚さが98nmであり端部の厚さが145nmの酸化シリコン膜である。上部電極16aおよび16bは、圧電層14aおよび14b側から厚さが213nmのルテニウム膜および厚さが70nmのクロム膜である。共振領域50aおよび50bは、長軸が 250μm、短軸が200μの楕円形状である。下部電極12aと12bとの距離は200μmである。
【0109】
図9は、2つの基板10aおよび10bに分離されたサンプルAの平面図である。この比較例2では、基板10aおよび10bを回路基板48のダイパッド65上に実装した。またパッド25a~25dとパッド66a~66dとをボンディングワイヤ68a~68dで接続している。
【0110】
図10は、実験1におけるサンプルBの平面図である。この実施例1では、共振器11aおよび11bを一つの基板10に形成した。サンプルBでは、共振器11aと11bとで基板10が共通である。この基板10を回路基板48のダイパッド65上に実装し、パッド25a~25dとパッド66a~66dとをボンディングワイヤ68a~68dを用い電気的に接続した。
【0111】
サンプルAおよびBを恒温槽内に配置した。図11は、恒温槽内の温度プロファイルを示す図であり、時間に対する恒温槽内の温度を示している。各期間T0~T4、各期間T0~T4の間の各期間T5~T8を、それぞれ1時間とした。期間T0~T4の間の恒温槽内の温度は30℃、40℃、50℃、60℃および30℃である。各期間T0~T4の間の各期間T5~T8において、恒温槽内の温度を上昇または下降させている。
【0112】
期間T1~T4において、共振器11aおよび11bの共振周波数を、ネットワークアナライザを用いて測定し、共振器11aおよび11bとの共振周波数の差Δfrを算出した。Δfrは1秒ごとに測定し、各期間T1~T4は、平均値を各期間のΔfrとした。
【0113】
図12は、各期間T1~T4における共振周波数の差Δfrを示す図である。なお、縦軸のΔfrが大きいことは、共振器11aと11bの温度差が大きいことを示している。
【0114】
いずれの期間T1~T4においても、1つの基板10からなるサンプルBのΔfrは、2つの基板10aおよび10bのサンプルAのΔfrより小さい。このように、基板10を共通にすることは、温度差を小さくする効果があることが実験からもわかる。サンプルAのように、共振器11aおよび11bを別々の基板10aおよび10bに分離して設けた場合、周りの気体の温度が変化すると共振領域50aと50bの温度差が大きくなることが理解できる。これは、2枚の基板10aおよび10bでは、2つの基板10aと10bとの間の分離エリアで熱伝導が遮断されるが、一枚の基板10では、基板10を介し共振領域50aと50bの間を熱が伝導するためと考えられる。
【0115】
また、両者とも、図9図10に示すようにダイパッド65が一枚の金属層からなることも意味がある。例えば回路基板48は、セラミック基板またはプリント基板であり、金属よりも熱抵抗が大きい。基板10、10aおよび10bは、金属からなるダイパッド65に、ハンダまたは導電ペーストで固着され、しかも1枚のダイパッド65で2つの共振器11aおよび11bを固着している。このため、低熱抵抗なダイパッド65により、共振器11aと11bとの温度差を小さくしていると考えられる。後述するが、図20に示すように、挿入膜20aおよび20bが2つの共振器11aおよび11bに、一体かつ連続して被覆されている構造(挿入膜共通)、上部圧電層15b、下部圧電層15aが2つの共振器11aおよび11bに、一体かつ連続して被覆されている構造(圧電層共通)、を用いても、共振器11aと11bとの間の熱抵抗を小さくすることに寄与する。これにより、2つの共振器の温度差を小さすることができる。
【0116】
(実施例1の変形例1)
図13は、実施例1の変形例1におけるセンサの平面図である。パッド25aは、基板10の下辺61側および左辺63側に拡張され、角部が基板10の左下角部に近接して設けてパターニングされている。パッド25bは、上辺62側および左辺63側に拡張されて角部が基板10の左上角部に近接してパターニングされて設けられている。よってパッド25aおよび25bは、共振領域50aを除いて、ほぼ同じ面積で2分されている。パッド25cおよび25dも同様である。
【0117】
またパッド25a、25bの右辺は、領域52bの辺63側に位置し、辺62の延伸方向に延伸している。この構造は、図1の電極パターンと技術思想は同じであるが、パッド25a~25dの非配置領域をできる限り小さくしている。すなわち、パッド25a~25dおよび配線26a~26dは、共振領域50a、50bおよび隣接領域30の近傍から辺61~64の近傍まで拡張されている。このように、熱伝導率が基板10より高いパッド25a~25dが、共振領域50aおよび50bを囲み、しかも基板10の上面のほとんどの領域を被覆することで、共振領域50aと50bとの温度差をより小さくできる。この効果を生む構造を「メタル拡張化」と呼ぶ。
【0118】
(実施例1の変形例2)
図14は、実施例1の変形例2におけるセンサの平面図である。共振領域50aおよび50bの平面形状は多角形状である。どちらの共振器11aおよび11bも4つの角部を有し、この4つの角部は、それぞれの角度が異なった四角形である。この2つの共振器11aおよび11bの共振領域50aおよび50bが対向する位置の、隣接領域30をクロスハッチングで図示している。この隣接領域30は、2本の長辺が平行に配置された四辺形で、左斜め下に下がった形状である。
【0119】
この隣接領域30の平行な2つ長辺に沿って左右の共振領域50aおよび50bの対向する辺(上部電極16aおよび16bの辺)が平行に配置されている。さらに、配線26bは、共振領域50aの上(+Y)の辺から辺63と平行に+Y方向に伸び、パッド25bに接続される。パッド25bは、辺62に平行に左(-X)側に向かって延在している。配線26aは、共振領域50aの下(-Y)辺から辺63と平行に-Y方向に伸び、パッド25aに接続される。パッド25aは、辺61に平行に左(-X)側に向かって延在している。パッド25c、25d、配線26aおよび26bも同様である。
【0120】
さらに、左の共振器11aの上部電極16a、配線26bおよびパッド25bを見ると、パッド25bの右(+X)辺が右に出っ張らず逆L字で形成されている。下部電極12a、配線26aおよびパッド25aも同様である。右の共振器11bの上部電極16b、配線26dおよびパッド25dを見ると、パッド25dの左辺が左に出っ張らず逆L字で形成されている。下部電極12b、配線26cおよびパッド25cも同様である。よって「パッドの出っ張り防止」の効果で、2つの共振領域50aおよび50bが近接配置できる構造となる。なお、これまで説明した「基板の共通」、「圧電層の共通」または「挿入膜の共通」を採用することでも近接配置が可能である。
【0121】
(実施例1の変形例3)
図15は、実施例1の変形例3におけるセンサの平面図である。図1では、2つの共振領域50aおよび50bの長軸が、一列に左右に並んでいた。図15では、2つの長軸が上下に並行に並んだような構造である。さらに、隣接領域30に向いた外周が直線で切断された形状である。つまり、隣接領域30において、下部電極12aおよび上部電極16aの右(+X)辺、配線26aおよび26bの右(+X)辺側およびパッド25aおよび25bの右(+X)辺と、が直線状に配列されている。下部電極12bおよび上部電極16bの左(-X)辺、配線26cおよび26dの左(-X)辺およびパッド25cおよび25dの左(-X)辺と、が直線状に配列されている。2つの直線は、略平行である。
【0122】
(実施例1の変形例4)
図16は、実施例1の変形例4におけるセンサの平面図である。共振領域50aおよび50bの平面形状は卵型である。このように、共振領域50aおよび50bの平面形状は、楕円形状以外の外周が曲線の形状でもよい。
【0123】
図3および図13図16では、パッド25aおよび25bは、領域52aのみに設けられ、第1領域52a以外には設けられていない。パッド25cおよび25dは、領域52bのみに設けられ、領域52b以外には設けられていない。これにより、「パッド出っ張り防止」のパターンにより、距離L0を短くすることができる。よって、共振領域50aと50bとの温度差を小さくでき、気体に関する情報の測定精度を向上できる。
【0124】
パッド25aと25bとは、図3の上下方向(Y方向)において共振領域50aを挟み、パッド25cと25dとは、図3の上下方向において共振領域50bを挟む。これにより、共振領域50aと50bとの間にパッド25a~25dが設けられないため、共振領域50aと50bとを近づけることができる。
【0125】
図3において、左右方向(X方向)におけるパッド25aおよび25bのそれぞれの最大幅L2aおよびL2bは、左右方向における共振領域50aの最大幅L1aより大きい。また、左右方向(X方向)におけるパッド25cおよび25dのそれぞれの最大幅L2cおよびL2dは、左右方向における共振領域50bの最大幅L1bより大きい。このような場合、図2(a)のように、パッド25aおよび25bを直線31aに対し対称とし、パッド25cおよび25dを直線31bに対し対称とすると、距離L0が長くなる。よって、パッド25aおよび25bを領域52aのみに設け、パッド25cおよび25dを領域52bに設けることで、距離L0を短くできる。
【0126】
図3図13図15および図16では、上下方向(Y方向)から見て、パッド25aおよび25bは、箇所32b(共振領域50aの頂部近傍に位置する)を含み箇所32bより共振領域50b側には設けられておらず、パッド25cおよび25dは、箇所32a(共振領域50bの頂部近傍に位置する)を含み箇所32aより共振領域50a側には設けられていない。これにより、距離L0を短くできる。
【0127】
配線26a~26dが設けられる場合には、配線26aおよび26bは領域52aのみに設けられ、領域52a以外には設けられていない。配線26cおよび26dは領域52bのみに設けられ、領域52b以外には設けられていない。これにより、距離L0を短くできる。なお、図4の断面図からもわかるように、下部電極が12aおよび12bは共振領域50aおよび50bから隣接領域30側にそれぞれ張り出している。そのため、距離L0は、ショート(耐電圧特性)または相互干渉を考慮した間隔(すなわち電気的分離される距離)の範囲において、できる限り小さいことが好ましい。またパッド25bおよび25dの内側の間隔、パッド25aおよび25cの間隔も同様である。
【0128】
隣接領域30における下部電極12aと12bとの最短距離L0は、基板10の厚さより小さいことが好ましく、基板10の厚さの1/2以下がより好ましく、1/5以下がさらに好ましく、1/10以下がさらに好ましく、1/50以下がさらに好ましい。また、この距離は、共振領域50aおよび50bの中心35aおよび35bをそれぞれ通る最小幅より小さいことが好ましく、最小幅の1/2以下がより好ましく、1/5以下がさらに好ましく、1/10以下がさらに好ましく、1/50以下がさらに好ましい。い。これにより、基板10を介した共振領域50aと50bとの間の熱抵抗が小さくなり、共振領域50aと50bとの温度差を小さくでき、気体の情報の測定精度を向上できる。
【0129】
図6(b)において、下部電極12aおよび12bをエッチングするときに、2つの下部電極12aおよび12bが対向する端部は、テーパ形状となる。距離L0を例えば下部電極12aおよび12bの厚みに程度とすれば、2つの下部電極12aと12bとは、十分な距離が確保され、短絡することがない。一方、実施例においては、距離L0をできるだけ小さくすることが、好ましいことを先に説明した。このため、2つの下部電極12aと12bとが短絡しないための、距離L0の下限を検討した。距離L0は、下部電極12aおよび12b厚みの1/10以上あればよく、例えば、1/5以上とすることができ、1倍以上とすることができ、2倍以上とすることができ、10倍以上とすることができる。
【実施例0130】
実施例2は、3個以上の共振領域を近接させる例である。基板10上に共振器11a~11cが設けられている。共振器11a~11cの積層構造は実施例1と同じである。共振器11c(第3共振器)は、第3下部電極12c、第3上部電極16c、第3圧電層、第3挿入膜および空隙を備える。圧電層を挟み下部電極12cと上部電極16cが対向する領域は第3共振領域50cである。
【0131】
例えば、共振器11aおよび11cは感応膜を有し、共振器11bは、基準となり感応膜を有していない。共振器11aおよび11cの感応膜18は異なる物質を吸着するように、感応膜の材料の種類が異なる。このように、共振器11a~11cが3個以上の場合でも、共振器11a~11cの共振領域50a~50cの温度差が小さいことが求められる。共振領域50a~50bのすべてがまとまって基板10の中央に設けられた集合共振領域があり、パッド25a~25fおよび配線26a~26fは、この集合共振領域から基板10の辺へと延在している。
【0132】
共振器11a~11cのそれぞれ下部電極12a~12cはそれぞれ共振領域50a~50cから引き出され、それぞれパッド25a(第1パッド)、25c(第3パッド)および25e(第5パッド)を形成する。配線26a(第1配線)、26c(第3配線)および26e(第5配線)は、共振領域50a~50cとパッド25a、25cおよび25eとをそれぞれ電気的に接続する。共振器11a~11cのそれぞれ上部電極16a~16cはそれぞれ共振領域50a~50cから引き出され、それぞれパッド25b(第2パッド)、25d(第4パッド)および25f(第6パッド)を形成する。配線26b(第2配線)、26d(第4配線)および26f(第6配線)は、共振領域50a~50cとパッド25b、25dおよび25fとをそれぞれ電気的に接続する。
【0133】
下部電極12aと12bとが最も近い領域は隣接領域30aである。下部電極12bと12cとが最も近い領域は隣接領域30bである。下部電極12cと12aとが最も近い領域は隣接領域30cである。
【0134】
共振領域50a~50cの平面視における中心は、それぞれ中心35a(第1中心)、中心35b(第2中心)および中心35c(第3中心)であり、中心35a~35cを頂点とする三角形は三角形38である。なお、共振領域50a~50cの平面形状の中心は、例えば共振領域50a~50cの平面形状の重心である。
【0135】
パッド25a~25fは、三角形38の外側の第1領域のみに設けられ、三角形38内に設けられていない。これにより、共振領域50a~50cを近接して設けることができる。よって、共振領域50a~50cの温度差を小さくでき、気体の情報の測定精度を向上できる。
【0136】
配線26a~26fは、三角形38の外側の第1領域のみに設けられ、三角形38内に設けられていない。これにより、共振領域50a~50cを近接して設けることができる。
【0137】
直線36aは中心35aと35bとを通る直線であり、直線36bは中心35bと35cとを通る直線であり、直線36cは中心35cと35aとを通る直線である。直線37a(第1直線)は、中心35aを通り直線36b(第2直線)に平行な直線であり、直線37b(第3直線)は、中心35bを通り直線36c(第4直線)に平行な直線であり、直線37c(第5直線)は、中心35cを通り直線36a(第6直線)に平行な直線である。
【0138】
この三角形39の周りを見たとき、パッド25a~25fは、三角形39の外側の第2領域のみに設けられ、三角形39内に設けられていない。また、配線26a~26fも、三角形39の外側の第2領域のみに設けられ、三角形39内に設けられていない。
【0139】
このように、3つの共振領域50a~50cのそれぞれの3つの対向する部分、つまり3つの共振領域50a~50cが近接する位置にある隣接領域30a~30cには、配線26a~26fおよびパッド25a~25fが設けられないので、共振領域50a~50cを近接して設けることができる。
【0140】
また、この3つの共振領域50a~50cの配置領域(集合共振領域)を囲むように配線26a~26f、およびパッド25a~25fが配置されている。上(+Y)側の2つのパッド25d、25cおよびその配線26d、26cは、直線37aより上に配置される。さらに、左(-X)のパッド25dは、基板10の左上(-X+Y)の角部から基板10の辺に沿って、右(+X)方向と下(-Y)方向に延びている。右(+X)のパッド25cは、基板10の右上(+X+Y)の角部から基板10の辺に沿って延在され、左(-X)方向と下(-Y)方向に延びている。
【0141】
左下(-X-Y)のパッド25bは、基板10の左下(-X-Y)の角部から基板10の辺に沿って延在され、右(+X)方向と上(+Y)方向に延びている。右下(+X-Y)のパッド25cは、基板10の右下(+X-Y)の角部から基板10の辺に沿って延在され、左(-X)方向と上(+Y)方向に延びている。
【0142】
さらに、左のパッド25aは、パッド25bと25dの間に配置され、基板10の左(-X)辺に沿って上下(Y)方向に延在されている。右のパッド25fは、パッド25cと25eの間に配置され、基板10の右(+X)辺に沿って上下(X)方向に延在されている。
【0143】
直線37a~37cを3辺とする三角形を三角形39としたとき、パッド25a~25fは、三角形39の外側の第2領域のみに設けられ、三角形39内に設けられていない。また、配線26a~26fは、三角形39の外側の第2領域のみに設けられ、三角形39内に設けられていない。これにより、共振領域50a~50cを近接して設けることができる。
【0144】
隣接領域30aにおける下部電極12aと12bとの最短距離、隣接領域30bにおける下部電極12bと12cとの最短距離、および隣接領域30cにおける下部電極12cと12aとの最短距離は、基板10の厚さより小さいことが好ましく、基板10の厚さの1/2以下がより好ましく、1/5以下がさらに好ましい。また、この距離は、共振領域50a~50cの中心35a~35cを通る最小幅より小さいことが好ましく、最小幅の1/2以下がより好ましく、1/5以下がさらに好ましい。これにより、基板10を介した共振領域50a~50c間の熱抵抗が小さくなり、共振領域50a~50cの温度差を小さくでき、気体の情報の測定精度を向上できる。
【0145】
(実施例2の変形例1)
図18は、実施例2の変形例1におけるセンサの平面図である。一つの基板10上に設けられ、4つの共振器11a~11dの共振領域50a~50dがお互い近接するように設けられている。共振器11a~11dの積層構造は実施例1と同じである。共振器11dは、第4下部電極12c、第4上部電極16c、第4圧電層、第4挿入膜および空隙を備える。圧電層を挟み下部電極12dと上部電極16dが対向する領域は第4共振領域50dである。
【0146】
まず基板10を4つの領域に仮想的に分割する。つまり基板10中点を通過して、左右の辺と上下の辺とで描ける4つの矩形に分割し、それぞれを左下領域、左上領域、右下領域、右上領域と定義する。
【0147】
この定義を利用して説明すると、左下の共振器11aは、左下領域の内側に位置し、2つのパッド25a、25bおよび2本の配線26a、26bは、共振領域50aを除いた左下領域に設けられている。左上の共振器11bは、左上領域の内側に位置し、2つのパッド25c、25dおよび2本の配線26c、26dは、この共振領域50bを除いた左上領域に設けられている。
【0148】
さらに、右下の共振器11cは、左下領域の内側に位置し、2つのパッド25e、25fおよび2本の配線26e、26fは、共振領域50cを除いた右下領域に設けられている。右上の共振器11dは、右上領域の内側に位置し、2つのパッド25g、25hおよび2本の配線26g、26hは、この共振領域50dを除いた右上領域に設けられている。
【0149】
このように、パッド25a~25hは、共振領域50a~50dが集合して集合共振領域から放射状に配置され、基板10の4辺のいずれかの辺に沿って設けられている。
【0150】
図17および図18では、矩形の基板10の中央部に、まとめて共振領域50a~50dが配置されている。そのため,この一つにまとまった配置領域の周囲に、パッド25a~25hと配線26a~26hが設けられる。しかもパッド25a~25hは、基板10の角部から延在する2つの辺に近接しかつ沿って設けられている。ここでは、共振領域50a~50dとパッド25a~25hおよび配線26a~26hとの間に若干の空きスペースがあるが、パッド25a~25hと配線26a~26hで、ひとつに纏まった共振領域50a~50dの周りを被覆している。よって「メタル拡張化」の効果、および「基板共通化」の効果により、共振領域50a~50dの温度の均一化が実現できる。なお、「圧電層共通」または「挿入膜共通」を組み入れてもよい。複数の共振領域50a~50dの近接する領域、すなわち、複数の共振領域50a~50dのそれぞれに対応する、2つの下部電極が隣接する領域には、配線26a~26hおよびパッド25a~25hが設けられないので、複数の共振領域50a~50hを近接して設けることができる。
【実施例0151】
図19は、実施例3におけるセンサの平面図である。図20は、図19のA-A断面図である。図19では、共振領域50a、50b、圧電層14a、14bおよび14cをクロスハッチングで図示している。
【0152】
共振領域50aと50bとの間、パッド25bと25dとの間、および配線26bと26dとの間において、共振器11aの圧電層14aと共振器11bの圧電層14bとが圧電層14cを介し一体に連続的に設けられている。つまり「圧電層共通」の構造を採用し、説明は省略しているが、「挿入膜共通」の構造を採用している。その他の構成は実施例1と同じであり、説明を省略する。
【0153】
共振領域50aと50bとの間の熱は、基板10を介して伝導する。しかも、圧電層14aと圧電層14bとは、共振領域50aと50bとの間にも圧電層が一体として連続して設けられている。同様に、挿入膜も一体として連続して設けられている。これらの対策により、共振領域50aと50bとの間の熱は、基板10に加え圧電層14cを介して伝導する。よって、共振領域50aと50bの温度差を小さくでき、気体の情報の測定精度を向上できる。さらには、圧電層の一体構造により、圧電層14aと14bとの間に、マスク合わせ時のマージンを設けることが不要となり、さらに近接配置が可能となる。
【0154】
シリコンの熱伝導率は162W/(m・K)である。また窒化アルミニウムの熱伝導率は約200W/(m・K)である。このように、圧電層14a~14cの熱伝導率を基板10の熱伝導率より大きいことから、共振領域50aと50bの温度差をより小さくでき、気体の情報の測定精度をより向上できる。
【0155】
また、共振領域50aと50bとの間に加え、パッド25b(第1パッド)と25d(第2パッド)との間、配線26cと26dとの間に圧電層14cを設けることで、共振領域50aと50bとの間の熱抵抗を低くできる。これにより、共振領域50aと50bの温度差をより小さくでき、気体の情報の測定精度をより向上できる。
【0156】
(実施例3の変形例1)
図21は、実施例3の変形例1におけるセンサの断面図である。共振領域50aと50bとの間において、下部圧電層15aは圧電層14aと14bに連続して一体として設けられ、上部圧電層15bは除去されている。その他の構成は実施例3と同じであり説明を省略する。なお、共振領域50aおよび50bの間の下部圧電層15aを除去し、上部圧電層15bを基板全域に被覆してもよい。
【0157】
(実施例3の変形例2)
図22は、実施例3の変形例2におけるセンサの平面図である。図23は、図22のA-A断面図である。図22では、共振領域50a、50b、圧電層14a~14cをクロスハッチングで図示している。
【0158】
図22の断面図からもわかるように、上部圧電層15bおよび下部圧電層15aは、基板10の全域に設けられている。なお、挿入膜20は、2つの共振領域50aおよび50bの間を連続して設けられている。それ以外は、図1と同じ構造である。実施例3の変形例2では、パターンとしては、共振領域50aおよび50bが対向し、パッド25a~25dの出っ張り防止の効果を取り込んでいる。プロセス的には、基板10が共通、圧電層14a~14cは共通でかつ基板10全域に設けられ、さらには、挿入膜共通の概念をとりいれている。
【0159】
圧電層14cは、共振領域50a、50b、パッド25a~25dおよび配線26a~26dを囲むように設けられている。このように、圧電層14cが共振器11aおよび11bを囲むことで、共振領域50aと50bとの温度差をより小さくできる。パッド25a(第3パッド)、25c(第4パッド)、配線26aおよび26bが圧電層14cから露出するように、圧電層14cは開口28aおよび28bを有している。開口28aおよび28bにより、パッド25aおよび25cにボンディングワイヤを接合させることができる。その他の構成は実施例3と同じであり、説明を省略する。
【実施例0160】
実施例4およびその変形例は、空隙の構成を説明するものである。この3つの空隙構造は、今まで説明した実施例1から3およびその変形例の共振器に適用できる。図24(a)は、実施例4におけるセンサの断面図である。共振器11aおよび11bにおいて、下部電極12aおよび12bの下面は平らであり、基板10の上面から下方に空隙22aが設けられている。その他の構成は、実施例1と同じであり説明を省略する。
【0161】
(実施例4の変形例1)
図24(b)は、実施例4の変形例1におけるセンサの断面図である。共振器11a、11bにおいて、下部電極12aの下は、基板10の表面から裏面に渡り貫通する空隙22aが設けられている。その他の構成は、実施例4と同じであり説明を省略する。
【0162】
(実施例4の変形例2)
図25は、実施例4の変形例2におけるセンサの断面図である。共振器11aでは、共振領域50aにおける下部電極12a下に音響反射膜27が形成されている。音響反射膜27は、音響インピーダンスの低い膜27aと音響インピーダンスの高い膜27bとが交互に設けられている。膜27aおよび27bの膜厚は例えばそれぞれほぼλ/4(λは弾性波の波長)である。膜27aと膜27bの積層数は任意に設定できる。図示していないが、共振器11bにおいても、共振領域50bにおける下部電極12b下に音響反射膜27が設けられている。その他の構成は、実施例4と同じであり説明を省略する。
【0163】
実施例1から3およびその変形例、実施例4およびその変形例1のように、センサに用いる共振器は、共振領域50a~50dにおいて空隙が下部電極12a~12d下に形成されているFBAR(Film Bulk Acoustic Resonator)でもよい。また、実施例4の変形例2のように、共振器は、共振領域50a~50dにおいて下部電極12aおよび12b下に圧電層14aおよび14bを伝搬する弾性波を反射する音響反射膜27を備えるSMR(Solidly Mounted Resonator)でもよい。
【0164】
実施例1から4およびその変形例のように、下部電極12a~12dとは実質的に同じ材料からなりかつ実質的に同じ厚さを有し、圧電層14aおよび14bは実質的に同じ材料からなりかつ実質的に同じ厚さを有し、上部電極16a~16dとは実質的に同じ材料からなりかつ同じ厚さを有する。これにより、共振領域50a~50dとの温度がほぼ同じとなり、共振器11bを基準となる共振器として用いることができる。共振領域50aと50bとの平面形状も実質的に同じであることが好ましい。なお、実質的に同じ材料からなるとは材料が製造誤差程度異なることを許容する。厚さが実質的に同じとは、±10%程度の違いを許容する。平面形状が実質的に同じとは、±10%程度の面積の違いを許容する。
【0165】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0166】
10 基板
12a~12d 下部電極
14a、14b 圧電層
15a 下部圧電層
15b 上部圧電層
16a~16d 上部電極
18 感応膜
20a、20b 挿入膜
22a、22b 空隙
25a~25f パッド
26a~26f 配線
27 音響反射膜
30、30a~30d 隣接領域
32a、32b 箇所
35a~35d 中心
36a~36c、37a~37c 直線
38、38a~38c、39 三角形
40 センサ
42 検出器
44a、44b 発振回路
45a、45b 測定器
46 処理部
50a~50d 共振領域
52a、52b 領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25