IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ テルモ株式会社の特許一覧

特開2024-114470輸液ポンプ及び輸液ポンプの制御方法
<>
  • 特開-輸液ポンプ及び輸液ポンプの制御方法 図1
  • 特開-輸液ポンプ及び輸液ポンプの制御方法 図2
  • 特開-輸液ポンプ及び輸液ポンプの制御方法 図3
  • 特開-輸液ポンプ及び輸液ポンプの制御方法 図4
  • 特開-輸液ポンプ及び輸液ポンプの制御方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114470
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】輸液ポンプ及び輸液ポンプの制御方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/142 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
A61M5/142 502
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020262
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100211395
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 慶大
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD16
4C066EE10
4C066QQ77
4C066QQ82
4C066QQ85
4C066QQ92
(57)【要約】
【課題】稼働中の騒音を低減可能な輸液ポンプ及び輸液ポンプの制御方法を提供する。
【解決手段】本開示に係る輸液ポンプは、複数のフィンガにより輸液チューブを押圧して前記輸液チューブ内の液体を送液する蠕動型の輸液ポンプであって、前記複数のフィンガと、前記複数のフィンガを駆動可能なモータと、制御部と、を備え、前記制御部は、通常駆動時において、第1出力値を初期出力値として前記モータを駆動させ、静音駆動時において、前記第1出力値よりも低い第2出力値を前記初期出力値として前記モータを駆動させるように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のフィンガにより輸液チューブを押圧して前記輸液チューブ内の液体を送液する蠕動型の輸液ポンプであって、
前記複数のフィンガと、前記複数のフィンガを駆動可能なモータと、制御部と、を備え、
前記制御部は、通常駆動時において、第1出力値を初期出力値として前記モータを駆動させ、静音駆動時において、前記第1出力値よりも低い第2出力値を前記初期出力値として前記モータを駆動させるように構成されている、輸液ポンプ。
【請求項2】
前記制御部は、間欠駆動により所定のタイミングにて繰り返し前記モータを駆動させるように構成されている、請求項1に記載の輸液ポンプ。
【請求項3】
前記複数のフィンガの位置を検出するセンサを備え、
前記制御部は、前記複数のフィンガの前記位置に応じて前記第2出力値を変更するように構成されている、請求項1又は2に記載の輸液ポンプ。
【請求項4】
前記複数のフィンガの位置を検出するセンサを備え、
前記制御部は、前記静音駆動時において、前記複数のフィンガの前記位置が所定の条件を満たす場合に、前記第2出力値を前記初期出力値として前記モータを駆動させるように構成されている、請求項1又は2に記載の輸液ポンプ。
【請求項5】
前記モータに電力を供給するバッテリを備え、
前記制御部は、前記バッテリの残量に基づいて、前記静音駆動が可能か否かを判定するように構成されている、請求項1又は2に記載の輸液ポンプ。
【請求項6】
前記制御部は、前記モータを前記初期出力値にて駆動させたのち、フィードバック制御により、前記モータの出力が目標出力値となるように前記モータを制御するように構成されている、請求項1又は2に記載の輸液ポンプ。
【請求項7】
前記第1出力値及び前記第2出力値は、それぞれ前記モータに入力されるPWM信号のデューティ比と対応付けられており、
前記第1出力値に対応付けられた前記デューティ比は、38%から60%までの範囲内であり、
前記第2出力値に対応付けられた前記デューティ比は、25%から35%までの範囲内である、請求項1又は2に記載の輸液ポンプ。
【請求項8】
前記第1出力値に対する前記第2出力値の比は、0.40から0.92までの範囲内である、請求項1又は2に記載の輸液ポンプ。
【請求項9】
複数のフィンガと、前記複数のフィンガを駆動可能なモータと、制御部と、を備え、前記複数のフィンガにより輸液チューブを押圧して前記輸液チューブ内の液体を送液する蠕動型の輸液ポンプの制御方法であって、
前記制御部により、通常駆動時において、第1出力値を初期出力値として前記モータを駆動させることと、
前記制御部により、静音駆動時において、前記第1出力値よりも低い第2出力値を前記初期出力値として前記モータを駆動させることと、
を含む、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、輸液ポンプ及び輸液ポンプの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、押圧位置を順次移動させるように複数のフィンガで輸液チューブを押圧して、輸液チューブ内を通る薬液等の液体を送液する蠕動型の輸液ポンプが知られている。そして、このような蠕動型の輸液ポンプの稼働中の騒音を低減させる技術が提案されている。例えば、特許文献1には、蠕動型の輸液ポンプを駆動させるモータの駆動音を低減させる制御を行う、輸液ポンプの駆動制御方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3378054号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、蠕動型の輸液ポンプの稼働中の騒音を低減させる技術には更なる改善の余地があった。とりわけ、輸液ポンプの駆動開始時における騒音を低減させることが求められている。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本開示の目的は、稼働中の騒音を低減可能な輸液ポンプ及び輸液ポンプの制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔1〕本開示の一実施形態に係る輸液ポンプは、複数のフィンガにより輸液チューブを押圧して前記輸液チューブ内の液体を送液する蠕動型の輸液ポンプであって、前記複数のフィンガと、前記複数のフィンガを駆動可能なモータと、制御部と、を備え、前記制御部は、通常駆動時において、第1出力値を初期出力値として前記モータを駆動させ、静音駆動時において、前記第1出力値よりも低い第2出力値を前記初期出力値として前記モータを駆動させるように構成されている。
【0007】
〔2〕本開示の一実施形態に係る輸液ポンプは、上記〔1〕に記載の輸液ポンプであって、前記制御部は、間欠駆動により所定のタイミングにて繰り返し前記モータを駆動させるように構成されていることが好ましい。
【0008】
〔3〕本開示の一実施形態に係る輸液ポンプは、上記〔1〕又は〔2〕に記載の輸液ポンプであって、前記複数のフィンガの位置を検出するセンサを備え、前記制御部は、前記複数のフィンガの前記位置に応じて前記第2出力値を変更するように構成されていることが好ましい。
【0009】
〔4〕本開示の一実施形態に係る輸液ポンプは、上記〔1〕又は〔2〕に記載の輸液ポンプであって、前記複数のフィンガの位置を検出するセンサを備え、前記制御部は、前記静音駆動時において、前記複数のフィンガの前記位置が所定の条件を満たす場合に、前記第2出力値を前記初期出力値として前記モータを駆動させるように構成されていることが好ましい。
【0010】
〔5〕本開示の一実施形態に係る輸液ポンプは、上記〔1〕から〔4〕のいずれか一項に記載の輸液ポンプであって、前記モータに電力を供給するバッテリを備え、前記制御部は、前記バッテリの残量に基づいて、前記静音駆動が可能か否かを判定するように構成されていることが好ましい。
【0011】
〔6〕本開示の一実施形態に係る輸液ポンプは、上記〔1〕から〔5〕のいずれか一項に記載の輸液ポンプであって、前記制御部は、前記モータを前記初期出力値にて駆動させたのち、フィードバック制御により、前記モータの出力が目標出力値となるように前記モータを制御するように構成されていることが好ましい。
【0012】
〔7〕本開示の一実施形態に係る輸液ポンプは、上記〔1〕から〔6〕のいずれか一項に記載の輸液ポンプであって、前記第1出力値及び前記第2出力値は、それぞれ前記モータに入力されるPWM信号のデューティ比と対応付けられており、前記第1出力値に対応付けられた前記デューティ比は、38%から60%までの範囲内であり、前記第2出力値に対応付けられた前記デューティ比は、25%から35%までの範囲内であることが好ましい。
【0013】
〔8〕本開示の一実施形態に係る輸液ポンプは、上記〔1〕から〔7〕のいずれか一項に記載の輸液ポンプであって、前記第1出力値に対する前記第2出力値の比は、0.40から0.92までの範囲内であることが好ましい。
【0014】
〔9〕本開示の一実施形態に係る制御方法は、複数のフィンガと、前記複数のフィンガを駆動可能なモータと、制御部と、を備え、前記複数のフィンガにより輸液チューブを押圧して前記輸液チューブ内の液体を送液する蠕動型の輸液ポンプの制御方法であって、前記制御部により、通常駆動時において、第1出力値を初期出力値として前記モータを駆動させることと、前記制御部により、静音駆動時において、前記第1出力値よりも低い第2出力値を前記初期出力値として前記モータを駆動させることと、を含む。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、稼働中の騒音を低減可能な輸液ポンプ及び輸液ポンプの制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本開示の一実施形態に係る輸液ポンプの正面図である。
図2図1に示される輸液カートリッジの斜視図である。
図3図1に示される送液部の概略図である。
図4図1に示される輸液ポンプの通常駆動時と静音駆動時との音圧を比較するグラフである。
図5図1に示される輸液ポンプの動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の一実施形態に係る輸液ポンプについて、図面を参照して説明する。各図中、同一又は相当する部分には、同一符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なる場合があることに留意されたい。
【0018】
はじめに、図1及び図2を参照して、本開示の一実施形態に係る輸液ポンプ1の概要について説明する。図1は、本開示の一実施形態に係る輸液ポンプ1の正面図である。図2は、輸液ポンプ1の輸液カートリッジ20の斜視図である。
【0019】
図1に示されるように、輸液ポンプ1は、ポンプ本体10と、ポンプ本体10に着脱可能な輸液カートリッジ20と、を備えている。これにより、輸液ポンプ1では、例えば、利用者により携帯可能であると共に、使い捨ての輸液カートリッジ20を取り替えることで、ポンプ本体10を再利用することができる。輸液ポンプ1は、例えば、利用者自らで投与調整可能なPCA(Patient Controlled Analgesia)ポンプとして使用することができるが、使用用途については特に限定されない。
【0020】
図2を参照すると、輸液カートリッジ20は、薬液等の液体が充填された輸液バッグを内部に収容するケース21を備えている。そして、ケース21は、ポンプ本体10に装着された際にポンプ本体10と対向する側面に、輸液チューブ30が装着されるチューブ装着部22と、ケース21の内部に収容された輸液バッグと接続される充填口23と、を備えている。充填口23には、ケース21の内側から輸液バッグが接続され、ケース21の外側から輸液チューブ30が接続される。これにより、ケース21に収容された輸液バッグ内の液体が輸液チューブ30を介して外部に送液可能になる。図2に示されるように、チューブ装着部22には、輸液チューブ30を嵌め込むための複数の突起24が形成されていてもよい。そして、チューブ装着部22は、複数の突起24に加えて/代えて、輸液チューブ30が装着される位置に少なくとも部分的にガイド溝25を備えていてもよい。これにより、チューブ装着部22に装着された輸液チューブ30が位置ずれを起こしにくくなる。
【0021】
再び図1を参照すると、輸液チューブ30を挟み込むように、輸液カートリッジ20がポンプ本体10に装着されている。ポンプ本体10は、輸液カートリッジ20が装着された状態で輸液カートリッジ20と対向する側面に、輸液チューブ30を押圧するための複数のフィンガ111を備えている。複数のフィンガ111は、チューブ装着部22に装着された輸液チューブ30の延在方向(X方向)に沿って配列されている。各フィンガ111は、チューブ装着部22との対向方向(Z方向)において前後するように駆動される。各フィンガ111が輸液カートリッジ20に近接するように移動することで、輸液チューブ30は、各フィンガ111とチューブ装着部22との間に挟み込まれる。これにより、輸液チューブ30は圧閉される。複数のフィンガ111は、輸液チューブ30の延在方向で、輸液チューブ30の上流側から下流側に向かって順次駆動される。これにより、複数のフィンガ111は、輸液チューブ30の上流側から下流側に向かって順次圧閉し、輸液チューブ30に蠕動運動させる。そのため、輸液ポンプ1は、輸液ポンプ1に装着された輸液チューブ30内の液体を輸液チューブ30の上流側から下流側に向かって(X方向上側に向かって)送液することができる。本実施形態では、輸液チューブ30の上流側は、輸液バッグと接続されている側であり、輸液チューブ30の下流側は、上流側と反対側である。
【0022】
このように、本開示の一実施形態に係る輸液ポンプ1は、複数のフィンガ111により輸液チューブ30を押圧して輸液チューブ30内の液体を送液する蠕動型の輸液ポンプ1である。そして、詳細は後述するが、輸液ポンプ1は、複数のフィンガ111と、複数のフィンガ111を駆動可能なモータ112と、制御部17と、を備えている。制御部17は、通常駆動時において、第1出力値を初期出力値としてモータ112を駆動させ、静音駆動時において、第1出力値よりも低い第2出力値を初期出力値としてモータ112を駆動させる。
【0023】
これにより、夜間又は利用者の安静時などに、静音駆動に切り替えられることで、輸液ポンプ1の駆動開始時における騒音を低減させることができる。その結果、輸液ポンプ1の利用者に不快感が生じにくくなる。
【0024】
ただし、輸液ポンプ1は、輸液カートリッジ20を備えていない構成とされてもよい。かかる場合、輸液チューブ30が装着されるチューブ装着部22が、ポンプ本体10に開閉可能に取り付けられたカバーに設けられていてもよい。これにより、輸液ポンプ1は、ポンプ本体10とカバーとで輸液チューブ30を挟み込むことで、輸液チューブ30を装着可能に構成されていてもよい。
【0025】
次に、図1及び図3を参照して、輸液ポンプ1のポンプ本体10の構成について、詳細に説明する。図1に示されるように、ポンプ本体10は、送液部11と、検出部12と、出力部13と、入力部14と、電源部15と、記憶部16と、制御部17と、を備えている。図3は、輸液ポンプ1の送液部11の概略図である。ポンプ本体10において、送液部11、検出部12、出力部13、入力部14、電源部15、記憶部16、及び制御部17は、有線又は無線により、互いに通信可能に接続されている。
【0026】
図3に示されるように、送液部11は、輸液チューブ30を押圧するための複数のフィンガ111(図示例では6個のフィンガ111a~111f)と、複数のフィンガ111を駆動可能なモータ112とを備える。本実施形態では、複数のフィンガ111とモータ112とは、カム構造体113を介して駆動可能に接続されている。具体的には、カム構造体113は、モータ112の出力軸に連結されるカムシャフト114と、カムシャフト114の軸方向に並べて取り付けられた複数のカム(偏向カム)115(図示例では6個のカム115a~115f)とで構成されている。複数のカム115は、カムシャフト114の回転方向において互いに位相差を付けて配置されている。カム115a~115fは、それぞれフィンガ111a~111fをチューブ装着部22との対向方向(Z方向)において前後させるように配置されている。これにより、モータ112が駆動すると、モータ112の回転力がカムシャフト114に伝達される。そして、輸液チューブ30の延在方向(X方向)において上流側から下流側に向かって、カムシャフト114に取り付けられた各カム115により各フィンガ111が順次、輸液チューブ30に対して前後させられることで、複数のフィンガ111が蠕動運動する。そのため、送液部11は、輸液チューブ30内の輸液を上流側から下流側に向かって送液することができる。図示例では、送液部11は、それぞれ6個のフィンガ111a~111fと、6個のカム115a~115fとを備えているが、この限りではない。送液部11は、任意の数のフィンガ111及びカム115を備えていてもよい。
【0027】
再び図1を参照して、検出部12は、1つ以上のセンサを含む。検出部12に含まれるセンサは、例えば、角速度センサ、磁気センサ、又はフォトセンサ等である。検出部12は、送液部11の制御に用いられる、カムシャフト114の回転位置及び回転数、並びに複数のフィンガ111の位置等の情報を検出する。図1では、検出部12は、カム構造体113の延在方向に配置されているが、この限りではない。
【0028】
出力部13は、1つ以上の出力装置を含む。出力部13に含まれる出力装置は、例えばディスプレイ、スピーカ又はランプ等である。出力部13は、画像、音又は光等を出力する。本実施形態では、出力部13は、例えば、送液速度、積算送液量、輸液ポンプ1の駆動モードなどの情報を出力する。
【0029】
入力部14は、1つ以上の入力装置を含む。入力部14に含まれる入力装置は、例えば操作スイッチ、ボタン、又はタッチパネル等である。入力部14は、利用者からの入力操作を受け付ける。本実施形態では、入力部14は、例えば、送液を開始する操作、送液を停止する操作、送液速度(mL/h)を設定する操作、輸液ポンプ1の駆動モードを指定する操作、或いは輸液ポンプ1の電源のON/OFFを切り替える操作などの入力操作を受け付ける。なお、出力部13と入力部14とは、例えば、タッチパネル付きの液晶ディスプレイなど、一体として形成されていてもよい。
【0030】
電源部15は、輸液ポンプ1の動作に用いられる電力を供給する。電源部15は、例えば、蓄電池又は乾電池等のバッテリを含む。ただし、電源部15は、バッテリに加えて/代えて、外部電源より電力供給を受けるためのアダプタ等を備え、外部電源から電力供給を受け付ける構成であってもよい。
【0031】
記憶部16は、例えば半導体メモリ、磁気メモリ、又は光メモリ等である。記憶部16は、例えば主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能してもよい。記憶部16は、輸液ポンプ1の動作に用いられる任意の情報を記憶する。例えば、記憶部16は、システムプログラム、アプリケーションプログラム、又は組み込みソフトウェア等を記憶する。
【0032】
制御部17は、1つ以上のプロセッサを含む。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の汎用のプロセッサ、又は特定の処理に特化した専用のプロセッサ等であってもよい。制御部17は、プロセッサに限られず、1つ以上の専用回路を含んでもよい。専用回路は、例えば、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)であってもよい。制御部17は、輸液ポンプ1の各機能を実現させるために、送液部11、検出部12、出力部13、入力部14、電源部15、及び記憶部16等を制御する。
【0033】
例えば、制御部17は、モータ112を制御して、送液部11を複数の駆動モードで駆動させる。本実施形態では、制御部17は、制御信号としてPWM(Pulse Width Modulation)信号をモータ112に送信することで、モータ112を制御することができる。具体的には、制御部17は、PWM信号のデューティ比を変更することにより、モータ112の出力(回転数)を変更させ、モータ112(送液部11)を複数の駆動モードで駆動させることができる。制御部17は、モータ112を制御する機能を有することから、MCU(Motor Control Unit)とも称される。
【0034】
複数の駆動モードは、例えば、モータ112を連続的に駆動させる連続駆動モード、モータ112を間欠的に駆動させる間欠駆動モード、又はその両方を含んでいてもよい。すなわち、制御部17は、連続駆動により連続的にモータ112を駆動させてもよい。制御部17は、間欠駆動により所定のタイミングで繰り返しモータ112を駆動させてもよい。例えば、制御部17は、間欠駆動時に、第1時間にわたってモータ112を駆動させたのち、第2時間にわたってモータ112を停止させることを繰り返してもよい。間欠駆動時には、輸液ポンプ1は、連続駆動時に比べて、輸液チューブ30内の液体の流量を減らす代わりに、低消費電力及び長時間稼働を実現することができる。
【0035】
連続駆動及び間欠駆動のいずれの駆動モードにおいても、制御部17は、モータ112を初期出力値にて駆動させたのち、フィードバック制御により、モータ112の出力が目標出力値となるようにモータ112を制御してもよい。具体的には、制御部17は、検出部12により取得されたカムシャフト114の回転数等の情報に基づいて、フィードバック制御を行い、制御信号で送信するデューティ比を調整してもよい。これにより、制御部17は、精度よくモータ112の出力を所望の出力に維持することができる。なお、目標出力値は、例えば、送液速度に応じて定められるが、この限りではない。
【0036】
本実施形態では、複数の駆動モードは、更に、通常駆動モードと静音駆動モードとを含む。制御部17は、PWM信号のデューティ比を変更することにより、通常駆動時と静音駆動時とで、モータ112の駆動開始時の出力を変更する。図4は、輸液ポンプ1の通常駆動時と静音駆動時との音圧を比較するグラフである。図4に示されるように、制御部17は、通常駆動時において、第1出力値Aを初期出力値としてモータ112を駆動させ、静音駆動時において、第1出力値Aよりも低い第2出力値Bを初期出力値としてモータ112を駆動させる。これにより、モータ112の静止状態から駆動開始する際に、スパイク状に上昇する騒音の音圧のピーク(最大音圧)を下げ、稼働中の音圧の均一化を図ることができる。これにより、輸液ポンプ1の稼働中の騒音を低減することができ、その結果、輸液ポンプ1の利用者に不快感が生じにくくなる。
【0037】
上述した第1出力値A及び第2出力値Bは、任意の方法で定められていてもよい。本実施形態では、第1出力値A及び第2出力値Bは、それぞれモータ112に入力されるPWM信号のデューティ比と対応付けられる。
【0038】
第1出力値Aは、輸液ポンプ1の構成、送液速度、連続駆動可能時間、バッテリの容量等を考慮して定められてもよい。例えば、第1出力値Aは、複数のフィンガ111に含まれる各フィンガ111a~111fを駆動開始させるために必要なモータ112の出力の平均値又は最大値、或いはそれらの近傍とされてもよい。具体的には、第1出力値Aに対応付けられたデューティ比は、38%から60%までの範囲内であってもよく、好ましくは、第1出力値Aに対応付けられたデューティ比は、40%から50%までの範囲であってもよい。これにより、モータ112の初期出力によりある程度の出力を確保できるため、フィンガ111の駆動を維持するために、後続の処理でモータ112に出力を繰り返させなくてもよく、電力消費量に対して、モータ112の駆動の無駄がなくなる。また、第1出直値Aは、電源部15が外部電源からの電力供給を受けているか否か、或いは、電源部15に含まれるバッテリの残量等に応じて異なっていてもよい。
【0039】
これに対して、第2出力値Bは、輸液ポンプ1の稼働中の騒音の音圧(最大音圧)等を考慮して定められてもよい。例えば、第2出力値Bは、複数のフィンガ111に含まれる各フィンガ111a~111fを駆動開始させるために必要なモータ112の出力の最小値又はその近傍とされてもよい。具体的には、第2出力値Bに対応付けられたデューティ比は、25%から35%までの範囲内であってもよく、好ましくは、第2出力値Bに対応付けられたデューティ比は、30%であってもよい。これにより、モータ112の初期出力を抑えられることで、騒音の低減を実現することができる。さらに、第2出力値Bを前述した値とすることで、モータ112の初期出力を必要以上に抑えることなく、初期出力値を下げたことに伴う、後続処理でのモータ112の出力の繰り返しを抑えることで、電力消費量の増加を抑制することができる。
【0040】
なお、第2出力値Bは、第1出力値Aと相対的に定められてもよい。例えば、第1出力値Aに対する第2出力値Bの比は、0.40から0.92までの範囲内であってもよい。このような範囲とすることで、静音駆動時において、通常駆動時に比べて騒音を低減することと、電力消費量の増加を抑制することとの両立を図ることができる。
【0041】
上述した、静音駆動は、モータ112の起動と停止とが繰り返される間欠駆動モードにおいて、特に有効である。ただし、連続駆動モードにおいても、輸液ポンプ1の駆動開始時の最大音圧を下げられることから、静音駆動は有効である。
【0042】
以下において、図5を参照して、輸液ポンプ1の動作について説明する。図5は、輸液ポンプ1の動作例を示すフローチャートである。本動作の説明は、輸液ポンプ1の制御方法に相当する。
【0043】
本動作例では、輸液ポンプ1の制御部17は、通常駆動時のモータ112の初期出力値としての第1出力値Aと、静音駆動時のモータ112の初期出力値としての第2出力値Bとを記憶部16に予め記憶しているものとする。なお、詳細は後述するが、第2出力値Bは、1つの値を含んでいてもよく、複数のフィンガ111の位置に応じて異なる複数の値を含んでいてもよい。
【0044】
ステップS101において、輸液ポンプ1の制御部17は、入力部14を介して、輸液ポンプ1の駆動モードを指定した送液開始の入力操作を受け付ける。本動作例では、入力操作において、駆動モードとして、通常駆動又は静音駆動の一方を指定できるとともに、連続駆動又は間欠駆動を選択できるものとする。入力操作において、駆動モードに加えて、送液速度及び積算送液量が指定されてもよい。制御部17は、入力操作にて指定された駆動モード、送液速度、及び積算送液量を出力部13としてのディスプレイに表示してもよい。
【0045】
ステップS102において、輸液ポンプ1の制御部17は、入力操作で指定された駆動モードが通常駆動であるか静音駆動であるかを判定する。
【0046】
ステップS102において通常駆動が指定されている場合(ステップS102-「通常駆動」)、ステップS103に進み、輸液ポンプ1の制御部17は、第1出力値Aをモータ112の初期出力値として設定する。
【0047】
その後、ステップS104において、輸液ポンプ1の制御部17は、第1出力値Aを初期出力値としてモータ112を連続駆動又は間欠駆動で駆動させる。制御部17は、モータ112を駆動開始したのち、入力操作にて指定された送液速度となるように、フィードバック制御により、モータ112の出力を制御してもよい。その後、制御部17は、必要に応じてステップS103及びステップS104の処理を繰り返して送液を行い、送液量の合計値が、入力操作にて指定された積算送液量に達した場合に、自動で送液を終了させてもよい。
【0048】
一方で、ステップS102において静音駆動が指定されている場合(ステップS102-「静音駆動」)、ステップS105に進み、輸液ポンプ1の制御部17は、静音駆動が可能か否かを判定する。
【0049】
静音駆動が可能か否かの判定には、任意の手法が採用可能である。例えば、輸液ポンプ1の制御部17は、バッテリの残量に基づいて、静音駆動が可能か否かを判定してもよい。具体的には、制御部17は、電源部15と通信を行い、バッテリの残量を取得し、バッテリの残量が所定量未満である場合には、静音駆動が可能ではないと判定することができる。所定量は、例えば、積算送液量に応じて定められる値であるが、この限りでない。これにより、輸液ポンプ1は、静音駆動を行うことで通常駆動時よりも電力消費量が上がってしまい、積算送液量が達成されないことを未然に防ぐことができる。静音駆動が可能ではないと判定された場合(ステップS105-「NO」)、制御部17は、出力部13を介して、静音駆動が可能ではない旨の警告を行い、ステップS101からの動作を繰り返してもよい。
【0050】
一方で、輸液ポンプ1の制御部17は、バッテリの残量が所定量以上である場合、或いは、電源部15が外部電源からの電力供給を受けている場合、静音駆動が可能であると判定することができる。静音駆動が可能であると判定された場合(ステップS105-「YES」)、制御部17は、ステップS106に進み、第2出力値Bをモータ112の初期出力値として設定する。
【0051】
例えば、ステップS106において、輸液ポンプ1の制御部17は、複数のフィンガ111の位置に応じて第2出力値Bを変更してもよい。図3に示されるように、モータ112と各フィンガ111a~111fとの相対的な位置の違いにより、各フィンガ111a~111fを駆動させるために必要なモータ112の出力は異なる。そのため、制御部17は、検出部12を介して、複数のフィンガ111の位置を取得し、複数のフィンガ111の位置に基づいて、複数のフィンガ111のうち最初に駆動する駆動開始フィンガを判定してもよい。例えば、複数のフィンガ111が図3に示される状態で停止している場合、複数のフィンガ111のうち輸液チューブ30にむけて突出しているフィンガ111fが駆動開始フィンガとなり得る。制御部17は、駆動開始フィンガに応じて第2出力値Bを変更してもよい。これにより、制御部17は、モータ112をより精度よく制御することができ、静音駆動時における、輸液ポンプ1の騒音を低減するとともに、電力消費量の増加を抑制することができる。なお、本動作の効果は、モータ112の起動と停止とが繰り返される間欠駆動時において、特に有効であるが、連続駆動時においても有効である。
【0052】
また例えば、ステップS106において、輸液ポンプ1の制御部17は、静音駆動時において、複数のフィンガ111の位置が所定の条件を満たす場合に、第2出力値Bを初期出力値としてモータ112を駆動させてもよい。所定の条件は、例えば、複数のフィンガ111のうち所定のフィンガ111が駆動開始フィンガとなることであってもよい。例えば、輸液ポンプ1の構造上、複数のフィンガ111のうち所定のフィンガ111を駆動させる場合に限って、輸液ポンプ1の騒音の音圧が高くなる場合がある。このような場合に、制御部17は、検出部12を介して、複数のフィンガ111の位置を取得し、複数のフィンガ111の位置に基づいて、複数のフィンガ111のうち最初に駆動する駆動開始フィンガを判定してもよい。制御部17は、所定のフィンガ111が駆動開始フィンガである場合に、第2出力値Bを初期出力値としてモータ112を駆動させてもよい。一方で、制御部17は、所定のフィンガ111が駆動開始フィンガでない場合には、通常駆動時と同様に第1出力値Aを初期出力値としてモータ112を駆動させてもよい。これにより、制御部17は、輸液ポンプ1の音圧が大きくなる場合のみモータ112の出力を変更することで、静音駆動時においておける、輸液ポンプ1の騒音を低減するとともに、電力消費量の増加を抑制することができる。なお、本動作の効果は、モータ112の起動と停止とが繰り返される間欠駆動時において、特に有効であるが、連続駆動時においても有効である。
【0053】
再び図5を参照して、ステップS107において、輸液ポンプ1の制御部17は、第2出力値Bを初期出力値としてモータ112を連続駆動又は間欠駆動で駆動させる。制御部17は、モータ112を駆動開始したのち、入力操作にて指定された送液速度となるように、フィードバック制御により、モータ112の出力を制御してもよい。その後、制御部17は、必要に応じてステップS106及びステップS107の処理を繰り返して送液を行い、送液量の合計値が、入力操作にて指定された積算送液量に達した場合に、自動で送液を終了させてもよい。
【0054】
以上述べたように、本実施形態に係る輸液ポンプ1は、複数のフィンガ111により輸液チューブ30を押圧して輸液チューブ30内の液体を送液する蠕動型の輸液ポンプ1である。そして、輸液ポンプ1は、複数のフィンガ111と、複数のフィンガ111を駆動可能なモータ112と、制御部17と、を備えている。制御部17は、通常駆動時において、第1出力値Aを初期出力値としてモータ112を駆動させ、静音駆動時において、第1出力値Aよりも低い第2出力値Bを初期出力値としてモータ112を駆動させる。
【0055】
かかる構成を有する輸液ポンプ1によれば、夜間又は利用者の安静時などに、静音駆動に切り替えられることで、輸液ポンプ1の稼働中の騒音を低減することができる。
【0056】
本開示を諸図面及び実施形態に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形及び修正を行うことが可能であることに注意されたい。したがって、これらの変形及び修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各実施形態に含まれる構成又は機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能である。また、各実施形態に含まれる構成又は機能などは、他の実施形態に組み合わせて用いることができ、複数の構成又は機能などを1つに組み合わせたり、分割したり、或いは一部を省略したりすることが可能である。
【0057】
例えば、上述した実施形態において、モータ112は、カム構造体113を介して複数のフィンガ111を駆動可能に構成されているものとして説明したが、この限りではない。モータ112は任意の方法で複数のフィンガ111を順次駆動可能に構成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本開示は、稼働中の騒音を低減可能な輸液ポンプ及び輸液ポンプの制御方法に関する。
【符号の説明】
【0059】
1 輸液ポンプ
10 ポンプ本体
11 送液部
111(111a~111f) フィンガ
112 モータ
113 カム構造体
114 カムシャフト
115(115a~115f) カム
12 検出部
13 出力部
14 入力部
15 電源部
16 記憶部
17 制御部
20 輸液カートリッジ
21 ケース
22 チューブ装着部
23 充填口
24 突起
25 ガイド溝
30 輸液チューブ
A 第1出力値
B 第2出力値
X、Y、Z 方向
図1
図2
図3
図4
図5