(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114490
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】蓄熱システム
(51)【国際特許分類】
F28F 9/22 20060101AFI20240816BHJP
F28D 20/00 20060101ALI20240816BHJP
F28F 23/00 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
F28F9/22
F28D20/00 A
F28F23/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020292
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(72)【発明者】
【氏名】後藤 功一
【テーマコード(参考)】
3L065
【Fターム(参考)】
3L065DA20
(57)【要約】
【課題】放熱運転可能時間がより多い蓄熱システムを提供する。
【解決手段】一つの実施形態によれば、蓄熱システムは、蓄熱物質を含み、水平方向に流体を流通させ、蓄熱及び放熱を行う第1蓄熱槽を備える。さらに前記蓄熱システムは、前記第1蓄熱槽と直列に接続され、蓄熱物質を含み、鉛直方向に前記流体を流通させ、蓄熱及び放熱を行う第2蓄熱槽とを備える。さらに前記蓄熱システムは、蓄熱運転時には、前記第1蓄熱槽から流出した前記流体が前記第2蓄熱槽に流入し、前記第2蓄熱槽は、前記鉛直方向の上側から下側に前記流体を流通させる。さらに前記蓄熱システムは、放熱運転時には、前記第2蓄熱槽から流出した前記流体が前記第1蓄熱槽に流入し、前記第2蓄熱槽は、前記鉛直方向の下側から上側に前記流体を流通させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄熱物質を含み、水平方向に流体を流通させ、蓄熱及び放熱を行う第1蓄熱槽と、
前記第1蓄熱槽と直列に接続され、蓄熱物質を含み、鉛直方向に前記流体を流通させ、蓄熱及び放熱を行う第2蓄熱槽とを備え、
蓄熱運転時には、前記第1蓄熱槽から流出した前記流体が前記第2蓄熱槽に流入し、前記第2蓄熱槽は、前記鉛直方向の上側から下側に前記流体を流通させ、
放熱運転時には、前記第2蓄熱槽から流出した前記流体が前記第1蓄熱槽に流入し、前記第2蓄熱槽は、前記鉛直方向の下側から上側に前記流体を流通させる、
蓄熱システム。
【請求項2】
前記蓄熱システムは、前記第1及び第2蓄熱槽を含む複数の蓄熱槽を備え、
前記第2蓄熱槽は、前記複数の蓄熱槽のうち、蓄熱運転時における最下流の蓄熱槽である、請求項1に記載の蓄熱システム。
【請求項3】
前記複数の蓄熱槽は、前記第1及び第2蓄熱槽とは異なる第N蓄熱槽(Nは3以上の整数)を含み、
前記第N蓄熱槽は、前記第1及び第2蓄熱槽と直列に接続され、蓄熱物質を含み、水平方向に前記流体を流通させ、蓄熱及び放熱を行う、
請求項2に記載の蓄熱システム。
【請求項4】
前記第2蓄熱槽内に含まれる蓄熱物質の容量は、前記第1蓄熱槽内に含まれる蓄熱物質の容量よりも小さい、請求項1に記載の蓄熱システム。
【請求項5】
前記第2蓄熱槽は、下部の側面に、前記流体を流通させる配管を備える、請求項1に記載の蓄熱システム。
【請求項6】
前記第2蓄熱槽は、内部に、蓄熱物質に含まれる岩石の落下を防止する岩石受け部品を備える、請求項5に記載の蓄熱システム。
【請求項7】
前記配管は、前記岩石受け部品が設けられる位置よりも下部に設けられる、請求項6に記載の蓄熱システム。
【請求項8】
前記第1蓄熱槽及び前記第2蓄熱槽の出入り口には、開閉によって前記流体の流通を制御する弁が設けられる、請求項1に記載の蓄熱システム。
【請求項9】
前記蓄熱システムは、前記弁の開閉を制御する制御部を備える、請求項8に記載の蓄熱システム。
【請求項10】
蓄熱物質を含み、水平方向に流体を流通させ、蓄熱及び放熱を行う複数の第1蓄熱槽であって、前記複数の第1蓄熱槽の各々は、互いに並列に接続された第1から第K群(Kは2以上の整数)のいずれかに含まれる、複数の第1蓄熱槽と、
蓄熱物質を含み、鉛直方向に前記流体を流通させ、蓄熱及び放熱を行う複数の第2蓄熱槽であって、前記複数の第2蓄熱槽の各々は、前記第1から第K群のいずれかに含まれ、同じ群の第1蓄熱槽と直列に接続されている、複数の第2蓄熱槽とを備え、
蓄熱運転時には、各群内で前記第1蓄熱槽から流出した前記流体が前記第2蓄熱槽に流入し、前記第2蓄熱槽は、前記鉛直方向の上側から下側に前記流体を流通させ、
放熱運転時には、各群内で前記第2蓄熱槽から流出した前記流体が前記第1蓄熱槽に流入し、前記第2蓄熱槽は、前記鉛直方向の下側から上側に前記流体を流通させる、
蓄熱システム。
【請求項11】
前記第1から第K群の各々は、前記第1及び第2蓄熱槽を含む複数の蓄熱槽を備え、
各群内の前記第2蓄熱槽は、各群内の前記複数の蓄熱槽のうち、蓄熱運転時における最下流の蓄熱槽である、請求項10に記載の蓄熱システム。
【請求項12】
各群内の前記複数の蓄熱槽は、前記第1及び第2蓄熱槽とは異なる第N蓄熱槽(Nは3以上の整数)を含み、
各群内の前記第N蓄熱槽は、同じ群内の前記第1及び第2蓄熱槽と直列に接続され、蓄熱物質を含み、水平方向に前記流体を流通させ、蓄熱及び放熱を行う、
請求項11に記載の蓄熱システム。
【請求項13】
互いに並列に接続され、蓄熱物質を含み、水平方向に流体を流通させ、蓄熱及び放熱を行う複数の第1蓄熱槽と、
蓄熱物質を含み、鉛直方向に前記流体を流通させ、蓄熱及び放熱を行う1または複数の第2蓄熱槽であって、前記1または複数の第2蓄熱槽の数は、前記複数の第1蓄熱槽の数よりも少なく、前記1または複数の第2蓄熱槽の各々は、互いに並列に接続された、前記複数の第1蓄熱槽と直列に接続されている、1または複数の第2蓄熱槽とを備え、
蓄熱運転時には、前記複数の第1蓄熱槽から流出した前記流体が前記1または複数の第2蓄熱槽に流入し、前記1または複数の第2蓄熱槽は、前記鉛直方向の上側から下側に前記流体を流通させ、
放熱運転時には、前記1または複数の第2蓄熱槽から流出した前記流体が前記複数の第1蓄熱槽に流入し、前記1または複数の第2蓄熱槽は、前記鉛直方向の下側から上側に前記流体を流通させる、
蓄熱システム。
【請求項14】
前記蓄熱システムは、前記複数の第1蓄熱槽及び前記1または複数の第2蓄熱槽を含む複数の蓄熱槽を備え、
前記1または複数の第2蓄熱槽は、前記複数の蓄熱槽のうち、蓄熱運転時における最下流の蓄熱槽である、請求項13に記載の蓄熱システム。
【請求項15】
前記複数の蓄熱槽は、前記第1及び第2蓄熱槽とは異なる複数の第N蓄熱槽(Nは3以上の整数)を含み、
前記複数の第N蓄熱槽は、前記複数の第1蓄熱槽とそれぞれ直列に接続され、かつ前記1または複数の第2蓄熱槽と直列に接続され、蓄熱物質を含み、水平方向に前記流体を流通させ、蓄熱及び放熱を行う、
請求項14に記載の蓄熱システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、蓄熱システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光発電や風力発電といった自然エネルギによる発電が増加しており、季節や時間帯によっては、発電量が電力需要より大きくなる地域が発生している。また、季節や時間帯によっては電力需要が大きくなり、発電量が電力需要を満たさず、電力不足となる場合もある。
【0003】
蓄熱システムは、余剰電力を用いて蓄熱槽内の蓄熱物質に蓄熱する。また、蓄熱システムを用いた発電システムとして、電力不足時に、蓄熱された熱を用いて蒸気を発生し、蒸気タービンを回転させ発電機により発電を行うものがある。
【0004】
図5は、第1従来技術の蓄熱システムにおける全体構成図である。
【0005】
第1従来技術における蓄熱システム100は、蓄熱槽1、電気ヒータ2、第1送風機3、第2送風機4、復水ポンプ8、ボイラ9、蒸気タービン10、復水器11及び複数の弁12~15を備える。
図5はさらに、蓄熱システム100内を循環する空気5、水6及び蒸気7を示す。
図5に示す蓄熱槽1は、その長手方向が水平方向に平行となり、その短手方向が鉛直方向に平行となるように配置されている。
【0006】
電力が余剰である場合、蓄熱システム100は、復水ポンプ8、蒸気タービン10及び第2送風機4を停止し、弁12及び13を開き、弁14及び15を閉じて、余剰電力を用いて電気ヒータ2と第1送風機3とを稼働させる。蓄熱システム100は、第1送風機3により、空気5を電気ヒータ2と蓄熱槽1の間を循環させる。空気5は、電気ヒータ2が発生した熱により加熱され、その熱を蓄熱槽1まで輸送し、蓄熱槽1内の蓄熱物質を加熱する。蓄熱システム100では、このように蓄熱運転が実施される。
【0007】
電力が余剰でない場合、蓄熱システム100は、電気ヒータ2と第1送風機3を停止し、弁12及び13を閉じ、弁14及び15を開いて、復水ポンプ8と第2送風機4を稼働させる。蓄熱システム100は、第2送風機4により空気5を蓄熱槽1とボイラ9との間で循環させる。空気5は、蓄熱槽1の蓄熱物質によって加熱され、その熱をボイラ9まで輸送する。ボイラ9は、復水ポンプ8によって搬入された水6を、空気5からの熱により加熱し、蒸気7を製造し、空気5は温度低下して流出する。蓄熱システム100では、このように放熱運転が実施される。
【0008】
放熱運転では、蓄熱システム100によって製造された蒸気7は、蒸気タービン10内を低温低圧になりながら流通する事で、羽根車である蒸気タービン10を回転駆動させる。蒸気タービン10に機械的に接続された発電機(不図示)を発電する。蒸気タービン10から排出された蒸気7は、復水器11によって海水などの冷却水により冷却され、水に変化する。これにより、蓄熱システム100は、蓄熱槽1内の蓄熱物質に蓄熱されていた熱により、蒸気7を発生し発電する。
【0009】
上述の通り、蓄熱システム100は、電力が余剰となっている時は、電力を使って蓄熱運転を行い、電力が不足している時は、放熱運転によって発電する事で電力調整を行っている。
【0010】
図6は、第1従来技術の蓄熱システムにおける蓄熱槽の模式図である。
【0011】
図6は、蓄熱槽1の詳細を表している。第1従来技術の蓄熱システム100は、1つの蓄熱槽1を備える。蓄熱槽1内には、蓄熱物質が備えられる。蓄熱物質は、例えば、固体顕熱蓄熱材23であり、ここでは岩石である。蓄熱槽1は、蓄熱運転時及び放熱運転時に、弁16及び17を開いて水平方向に空気5を流通させる。
図6における実線矢印は、蓄熱運転時の空気流れ方向32を表しており、破線矢印は、放熱運転時の空気流れ方向33を表している。
【0012】
図7は、第1従来技術の蓄熱運転終了後における蓄熱槽の温度分布である。
【0013】
図7Aは、第1従来技術の蓄熱運転終了直後における蓄熱槽の温度分布を表している。
【0014】
蓄熱槽1内に描かれている横線の実線は、固体顕熱蓄熱材温度24を示しており、横線が上側にあるほど、その蓄熱槽1内部の温度が高い事を表している。各図中の破線は、放熱運転で利用される熱の利用下限温度を指し、放熱運転必要温度25と呼ぶ事にする。つまり、高温となる領域をより多く有し、放熱運転必要温度25以下となる領域の減少を抑える事で、蓄熱システム100は、放熱運転可能時間が増加する。
【0015】
蓄熱運転時、蓄熱槽1内では空気5の流れ方向に、急な温度傾斜を示す温度躍層26が形成される。蓄熱槽1内の上流側では、蓄熱物質が熱されて高温の部分が生じる。一方、下流側では、温度躍層26を境として、低温の部分が生じる。この、高温で一定となる領域を高温一定の領域(高温領域)と呼ぶ事にする。蓄熱運転は、蓄熱槽1から流出する空気5の温度が第2送風機4の耐熱温度まで上昇する時まで継続する。
【0016】
図7Bは、第1従来技術の長期間放置後における蓄熱槽の温度分布である。
【0017】
蓄熱運転終了後、蓄熱槽1は、放熱運転開始まで、長時間放置される。蓄熱槽1は、時間の経過に伴い、温度分布が変化し、
図7Bのようになる。蓄熱槽1内の熱は、温度を平均化しようとし、温度が高い方から低い方へ移動する。これにより、蓄熱槽1は、高温一定の領域が減少する。放熱運転は、ボイラ9などの機器によって利用される熱が利用下限温度まで低下した時までしかできないため、高温一定となる領域が減少すると、放熱運転可能時間が減少してしまう。
【0018】
図8は、第2従来技術の蓄熱システムにおける全体構成図である。
【0019】
第2従来技術の蓄熱システム100では、蓄熱槽1は3つに分割されており、分割されたそれぞれの蓄熱槽を蓄熱槽29、30及び31とする。また、蓄熱システム100は、蓄熱運転時及び放熱運転時に空気5の流れを制御する弁12、14、19、20及び21が備えられている。
【0020】
蓄熱運転時及び放熱運転時、蓄熱システム100は、各弁12、14、19、20及び21の開閉に基づいて、この3つに分割された蓄熱槽29、30及び31に対して、空気5を水平方向に流通させる。
【0021】
例えば、蓄熱システム100は、蓄熱運転の際、弁12、19、20及び21を開き、第1送風機3によって、電気ヒータ2と各蓄熱槽29、30及び31の間で空気5を循環させ、各蓄熱槽29、30及び31に蓄熱を行う。
図8では、各蓄熱槽29、30及び31内の蓄熱物質は、この順番で加熱される。
【0022】
蓄熱槽29、30及び31内に描かれている横線は、蓄熱運転中における各蓄熱槽29、30及び31内の温度を表しており、例えば、蓄熱槽31内に描かれている横線は、空気5の上流下流方向に関して、比較的低い温度で一定となっている事を表している。この図では、蓄熱槽30内に温度躍層26が形成されている。
【0023】
蓄熱運転中、蓄熱槽29、30及び31は、固体顕熱蓄熱材23が熱される事により、温度躍層26が形成され、空気5の流れ方向に各蓄熱槽29、30及び31の上流側から下流側へ移動する。蓄熱運転は、蓄熱槽31から流出する空気5の温度が、第2送風機4の耐熱温度まで上昇する時に終了する。蓄熱運転終了直後は、下流側である蓄熱槽31に温度躍層26が形成される。
【0024】
蓄熱運転終了後、蓄熱システム100では、放熱運転開始まで、弁12、14、19、20及び21を閉じて、蓄熱槽29~31を長時間放置する。蓄熱システム100は、時間の経過に伴い、蓄熱槽31内の温度分布が変化する。蓄熱槽31内では、温度は平均化しようとし、高温一定となる領域が減少する。
【0025】
図9は、第2従来技術の蓄熱システムにおける蓄熱運転終了後の蓄熱槽内の温度分布を示す図である。
【0026】
図9Aは、第2従来技術の蓄熱システムにおける蓄熱運転終了直後の蓄熱槽内の温度分布を示す図である。
【0027】
図9Aでは、後述する第1実施形態の構成との比較を説明するため、蓄熱槽29、30を合わせて「第1蓄熱槽27」として表し、蓄熱槽31を「第2蓄熱槽28」として表す。また、構成の比較の容易化のため、弁12、20及び21を「弁16、18及び17」として符号を振り直して説明する。また、第1蓄熱槽27と、第2蓄熱槽28とを接続する配管を配管22とする。
【0028】
図9Aに示す通り、蓄熱システム100の蓄熱運転終了直後は、第1蓄熱槽27と、第2蓄熱槽28の一部とに高温一定の領域が形成されている。
【0029】
図9Bは、第1蓄熱槽及び第2蓄熱槽を長時間放置後の温度分布を表す図である。
【0030】
図9Aの状態から、各16~18を閉として、第1蓄熱槽27及び第2蓄熱槽28を長時間放置した場合、最下流の蓄熱槽である第2蓄熱槽28内の熱は、温度を平均化しようとし、温度が高い方から低い方へ移動する。これにより、
図9Bに示す温度分布のように、第1蓄熱槽27の高温一定の領域は減少しないが、第2蓄熱槽28は、高温一定の領域が減少する。
【0031】
図9Bに示す通り、第2従来技術では、第1蓄熱槽27は、高温一定の領域が保持されているため、第1従来技術と比較して、放熱運転必要温度25以上に保たれる放熱時間がより長くなる。これにより、第2従来技術は、放熱運転可能時間の減少は少なくなっている。
【0032】
しかし、第2蓄熱槽28では、温度の平均化のため、高温一定となる領域が減少してしまっている。この高温一定の領域が減少する事により、蓄熱システム100は、放熱運転可能時間が減少してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0033】
【特許文献1】国際公開WO2016/150461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
第1従来技術では、蓄熱槽1を長期間放置すると、放熱運転可能時間が減ってしまっていた。また、第2従来技術では、蓄熱槽1全体における放熱運転可能時間の減少は少なくなっているが、蓄熱運転における最下流である第2蓄熱槽28は、長期間放置の際に、温度の平均化により高温一定の領域が減少している。
【0035】
そこで、本発明の実施形態は、高温一定の領域の減少を小さくする事で、放熱運転可能時間がより多い蓄熱システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0036】
一つの実施形態によれば、蓄熱システムは、蓄熱物質を含み、水平方向に流体を流通させ、蓄熱及び放熱を行う第1蓄熱槽を備える。さらに前記蓄熱システムは、前記第1蓄熱槽と直列に接続され、蓄熱物質を含み、鉛直方向に前記流体を流通させ、蓄熱及び放熱を行う第2蓄熱槽とを備える。さらに前記蓄熱システムは、蓄熱運転時には、前記第1蓄熱槽から流出した前記流体が前記第2蓄熱槽に流入し、前記第2蓄熱槽は、前記鉛直方向の上側から下側に前記流体を流通させる。さらに前記蓄熱システムは、放熱運転時には、前記第2蓄熱槽から流出した前記流体が前記第1蓄熱槽に流入し、前記第2蓄熱槽は、前記鉛直方向の下側から上側に前記流体を流通させる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】第1実施形態の蓄熱システムにおける蓄熱槽の模式図である。
【
図2】第1実施形態の蓄熱システムにおける蓄熱運転終了後の蓄熱槽内の温度分布を示す図である。
【
図3】第2実施形態における蓄熱システムの蓄熱槽部分の構成図である。
【
図4】第3実施形態における蓄熱システムの蓄熱槽部分の構成図である。
【
図5】第1従来技術の蓄熱システムにおける全体構成図である。
【
図6】第1従来技術の蓄熱システムにおける蓄熱槽の模式図である。
【
図7】第1従来技術の蓄熱運転終了後における蓄熱槽の温度分布である。
【
図8】第2従来技術の蓄熱システムにおける全体構成図である。
【
図9】第2従来技術の蓄熱システムにおける蓄熱運転終了後の蓄熱槽内の温度分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本開示の実施形態を、図面を参照して説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。図面は模式的または概念的なものであり、各部分の比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。明細書と図面において、既出の図面に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0039】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の蓄熱システムにおける蓄熱槽の模式図である。
【0040】
蓄熱システム100の全体構成図は、
図5と同様であるため説明を省略する。
【0041】
図1は、互いに垂直なX軸、Y軸、及びZ軸を示している。X方向及びY方向は、重力方向に垂直な横方向(水平方向)に相当し、Z方向は、重力方向に平行な縦方向(鉛直方向)に相当している。また、+Z方向は上方向に相当し、-Z方向は下方向に相当している。
【0042】
図6の蓄熱槽1と比較して、本実施形態における蓄熱槽1は、空気5の流れ方向に対して、直列に分割している。以下の各実施形態では、説明のため、所定の分割数で分割した例を取り上げて説明を行っているが、分割数はこれに限定されない。蓄熱システム100は、蓄熱槽1について、空気5の流れ方向に対して、任意の数で直列に分割してもよい。
【0043】
本実施形態では、蓄熱槽1を第1蓄熱槽27及び第2蓄熱槽28の2分割した例を示している。また、本実施形態では、第1蓄熱槽27は、空気5が第1蓄熱槽27内を水平方向に流れるように配置する。また、第2蓄熱槽28は、空気5が第2蓄熱槽28内を鉛直方向に流れるように配置する。また、第1蓄熱槽27と、第2蓄熱槽28とは直列に接続される。空気5は、流体の例である。
【0044】
蓄熱運転時には、蓄熱運転時の空気流れ方向32に示すように、第1蓄熱槽27は、水平方向の第1側から第2側(この図では、X方向の負側から正側)に空気5を流通させる。第1蓄熱槽27から流出した空気5は、第2蓄熱槽28に流入する。第2蓄熱槽28は、鉛直方向の上側から下側(この図では、Z方向の正側から負側)に空気5を流通させる。
【0045】
放熱運転時には、放熱運転時の空気流れ方向33に示すように、第2蓄熱槽28は、鉛直方向の下側から上側(この図では、X方向の正側から負側)に空気5を流通させる。第2蓄熱槽28から流出した空気5は、第1蓄熱槽27に流入する。第1蓄熱槽27は、水平方向の第2側から第1側(この図では、X方向の正側から負側)に空気5を流通させる。
【0046】
第2蓄熱槽28は、蓄熱運転終了後、上側が高温で下側が低温の状態になる。それにより、固体顕熱蓄熱材23の間に存在する空気5は、自然対流が少ない。これにより、第2蓄熱槽28を長時間放置しても、高温の空気5はそのまま上側に滞留し、低温である空気5は、下側に滞留する。第2蓄熱槽28内の固体顕熱蓄熱材23の温度は、
図9Bのように平均化せず、温度躍層26が変化しないか、または温度躍層26の高温の部分と低温の部分の温度勾配が強くなる。
【0047】
直列に接続される蓄熱槽の数は、2つに限定されない。蓄熱システム100は、複数の蓄熱槽を備え、水平方向に空気5を流通させる第1蓄熱槽27と、鉛直方向に空気5を流通させる第2蓄熱槽28とを含み、第2蓄熱槽28は、複数の蓄熱槽のうち、蓄熱運転時における最下流の蓄熱槽であればよい。
【0048】
また、複数の蓄熱槽は、第1蓄熱槽27及び第2蓄熱槽28とは異なる第N蓄熱槽(Nは3以上の整数)を含んでもよい。第N蓄熱槽は、水平方向に空気5を流通させるように構成される。また、第N蓄熱槽は、第1蓄熱槽27及び第2蓄熱槽28と互いに直列に接続される。また、第2蓄熱槽28は、複数の蓄熱槽のうち、蓄熱運転時における最下流の蓄熱槽として接続される。また、各蓄熱槽の出入り口には、弁が接続される。
【0049】
例えば、N=3とした場合、蓄熱システム100に含まれる複数の蓄熱槽は、水平方向に空気5を流通させる第3蓄熱槽(不図示)を含み、第3蓄熱槽は、第1蓄熱槽27及び第2蓄熱槽28と直列に接続される。また、第2蓄熱槽28は、複数の蓄熱槽のうち、蓄熱運転時における最下流の蓄熱槽として接続される。
【0050】
また、本実施形態における第1蓄熱槽27と、第2蓄熱槽28とは、配管22によって接続され、また、蓄熱または放熱運転時の空気5の出入り口には、弁16、17及び18が備えられる。
【0051】
これら弁16~18は、例えば、PLC(Programmable Logic Controller)といった制御部37によって開閉が制御される。制御部37から出力された制御信号は、アクチュエータ(不図示)に伝達され、バルブの開閉が行われる。また、弁16~18は、人力で開閉が行われてもよい。
【0052】
また、第2蓄熱槽28の下部の側面には、配管34が接続される。固体顕熱蓄熱材23は、例えば岩石である。配管34を第2蓄熱槽28の底面に設けると、岩石の粒子が大きい場合には、配管34の出入り口を岩石が塞いでしまい、岩石の粒子が小さい場合は、配管34内で詰まってしまう。そのため、第2蓄熱槽28内には、配管の位置よりも上に、網状の岩石受け部品35を設ける。岩石受け部品35は、岩石がすり抜けて落ちない程度で、かつ、蓄熱運転や放熱運転の際に、空気5が抜けていく程度の格子の大きさが望ましい。
【0053】
蓄熱運転時には、第2蓄熱槽28は、配管34から空気5を流出させ、放熱運転時には、第2蓄熱槽28は、配管34から空気5を流入させる。
【0054】
運用では、第2蓄熱槽28は、蓄熱システム100の運転に伴う振動や空気流通によって、岩石から細かい石片が剥がれ落ちる。また、石片や剥がれた石片の粉末は、重力で岩石受け部品35よりも下に落下し、第2蓄熱槽28の内部に少しずつ堆積する。各配管や第1または第2送風機3、4の異常を防止するため、第2蓄熱槽28の定期的なメンテナンスが必要になる。メンテナンスは、岩石を全て除去して行う必要がある。また、第2蓄熱槽28は、総重量の大きい岩石を網状の岩石受け部品35によって支えるのは強度上困難である。そのため、本実施形態では、蓄熱槽の全てを鉛直方向に配置するのではなく、第2蓄熱槽28だけを鉛直方向に配置している。
【0055】
また、配管34は、空気5の流入または流出に支障がないように、第2蓄熱槽28内に備えられる岩石受け部品35の位置よりも下部に設けられる。これにより、岩石受け部品35から石片や粉末が落下してきた場合でも、ただちに配管34が塞がれる事がないため、蓄熱システム100は、運転を継続する事ができる。
【0056】
また、本実施形態における蓄熱システム100は、メンテナンス時における岩石の除去の容易性や岩石受け部品35の強度の観点から、第2蓄熱槽28の方が、第1蓄熱槽27よりも固体顕熱蓄熱材23の容量が小さい。
【0057】
また、蓄熱システム100は、蓄熱運転終了後、第1蓄熱槽27及び第2蓄熱槽28の空気5の出入り口にある弁16、17及び18を閉とする。これにより、第1及び第2蓄熱槽27、28を長時間放置しても、熱が移動しにくく、高温状態が保持される。
【0058】
なお、本実施形態の第1蓄熱槽27及び第N蓄熱槽では、蓄熱運転時及び放熱運転時において空気5が±X方向のみに流通しているが、第1蓄熱槽27及び第N蓄熱槽内の空気5は、主に±X方向に流通すれば、±X方向だけでなく、±Y方向や±Z方向にも流通してもよい。例えば、空気5は、第1蓄熱槽27及び第N蓄熱槽内の固体顕熱蓄熱材23内で、Y方向の速度成分やZ方向の速度成分よりも大きいX方向の速度成分を有していればよい。このような態様での空気5の流通も、水平方向への空気5の流通に含まれる。これは、後述する第2及び第3実施形態でも同様である。
【0059】
また、本実施形態の第2蓄熱槽28では、蓄熱運転時及び放熱運転時において空気5が±Z方向のみに流通しているが、第2蓄熱槽28内の空気5は、主に±Z方向に流通すれば、±Z方向だけでなく、±X方向や±Y方向にも流通してもよい。例えば、空気5は、第2蓄熱槽28内の固体顕熱蓄熱材23内で、X方向の速度成分やY方向の速度成分よりも大きいZ方向の速度成分を有していればよい。このような態様での空気5の流通も、鉛直方向への空気5の流通に含まれる。これは、後述する第2及び第3実施形態でも同様である。
【0060】
図2は、第1実施形態の蓄熱システムにおける蓄熱運転終了後の蓄熱槽内の温度分布を示す図である。
【0061】
図2は、第1及び第2蓄熱槽27、28を長時間放置した際の温度分布である。
図2の横軸は、第1蓄熱槽27及び第2蓄熱槽28における位置を示しており、縦軸は固体顕熱蓄熱材温度24である。配管22には、蓄熱機能はないため、この図では、対応する配管22内の温度分布図の記載は省略する。
図2に示す通り、放熱運転開始まで第1及び第2蓄熱槽27、28を長時間放置しても、温度躍層26が変化しないか、または温度躍層26の高温の部分と低温の部分の温度勾配が強くなる。つまり、第2蓄熱槽28は、高温一定の領域がより大きくなる。
【0062】
放熱運転時、空気5は第2蓄熱槽28、第1蓄熱槽27の順に流通する。第2蓄熱槽28は、空気5が下側から上側に流通する際に、高温一定となる領域を多く確保する事ができる。これにより、蓄熱システム100は、放熱運転可能時間をより多く確保する事ができる。
【0063】
上記の例では、蓄熱システム100によって放熱した熱を、蒸気タービン10の熱源として使用する構成を取り上げたが、空調などの用途に使用してもよい。
【0064】
本実施形態によれば、蓄熱システム100は、蓄熱槽1を一部分割し、鉛直方向に空気5が流れるように配置する事により、放熱運転可能時間の減少が小さくなる。
【0065】
また、本実施形態によれば、蓄熱システム100は、蓄熱槽1の一部のみを分割し、第2蓄熱槽28として鉛直方向に空気5が流れるように配置する。これにより、蓄熱システム100は、第2蓄熱槽28内に、網状の岩石受け部品35を設けた際に、固体顕熱蓄熱材23を保持する強度を保つ事ができる。また、メンテナンスの際に、第2蓄熱槽28内の固体顕熱蓄熱材23を取り除いて作業する事が可能となり、保守性を担保した構造とする事ができる。
【0066】
また、本実施形態によれば、第1蓄熱槽27及び第2蓄熱槽28には、水平方向に空気5を流通させる第N蓄熱槽が接続されていてもよい。第N蓄熱槽は、第1蓄熱槽27及び第2蓄熱槽28と互いに直列に接続される。これにより、第1蓄熱槽27及び第N蓄熱槽は、蓄熱運転後に高温一定の領域を保つ事ができ、また、第2蓄熱槽28については、放熱運転可能時間の減少を小さくする事ができる。
【0067】
(第2実施形態)
図3は、第2実施形態における蓄熱システムの蓄熱槽部分の構成図である。
【0068】
蓄熱システム100の全体構成図は、
図5と同様であるため説明を省略する。
【0069】
第1実施形態では、蓄熱システム100は、1つの第1蓄熱槽27と、1つの第2蓄熱槽28とが直列に接続されている。一方、本実施形態では、蓄熱システム100は、1つの第1蓄熱槽27と、1つの第2蓄熱槽28とが直列に接続され、1つの群を構成しており、さらにこのような構成を有する複数の群を備える。また、それぞれの蓄熱槽の群は、並列に接続される。
【0070】
第1実施形態と同様に、本実施形態では、第1蓄熱槽27は、空気5が第1蓄熱槽27内を水平方向に流れるように配置する。また、第2蓄熱槽28は、空気5が第2蓄熱槽28内を鉛直方向に流れるように配置する。
【0071】
図3の例では、3つの群の蓄熱槽がそれぞれ並列に接続されている。この例では、3つの群をそれぞれ、第1群40、第2群41及び第3群42と呼ぶ。
【0072】
また、それぞれの群を構成する第1蓄熱槽27及び第2蓄熱槽28は、配管22によって接続され、また、蓄熱または放熱運転時の空気5の出入り口には、弁16、17及び18が備えられる。本実施形態における矢印の向きは、蓄熱運転時の空気流れ方向32を表しており、放熱運転時は、蓄熱運転時とは逆方向に空気5を流通させる。
【0073】
蓄熱運転の際、空気5は配管36側で分岐し、第1群40、第2群41及び第3群42それぞれの蓄熱槽に流通し、その後、配管34側で合流する構成となっている。蓄熱運転の際、蓄熱システム100は、第1群40、第2群41及び第3群42の蓄熱槽における弁16及び17の開閉を行う事によって、空気5を3組全てに流通させたり、3組のうち、どれか1組のみであったり、どれか2組のみに流通させる事ができる。
【0074】
また、上述の各弁16~18は、例えば、制御部37によって開閉が制御される。また、弁16~18は、人力で開閉が行われてもよい。
【0075】
また、放熱運転の際、空気5は配管34側で分岐し、第1群40、第2群41及び第3群42それぞれの蓄熱槽に流通し、その後、配管36側で合流する構成となっている。放熱運転の際、蓄熱システム100は、第1群40、第2群41及び第3群42の蓄熱槽における弁16及び17の開閉を行う事によって、空気5を3組全てに流通させたり、3組のうち、どれか1組のみであったり、どれか2組のみに流通させる事ができる。
【0076】
蓄熱槽が構成する群の数は、3つに限定されない。蓄熱システム100は、水平方向に空気5を流通させる複数の第1蓄熱槽27を備え、それぞれの第1蓄熱槽27は、互いに並列に接続された第1から第K群(Kは2以上の整数)に含まれていればよい。また、蓄熱システム100は、鉛直方向に空気5を流通させる複数の第2蓄熱槽28を備え、それぞれの第2蓄熱槽28は、第1~第K群のいずれかに含まれ、同じ群の第1蓄熱槽27と直列に接続されていればよい。
【0077】
1つの群を構成する蓄熱槽の数は、2つに限定されない。蓄熱システム100における第1から第K群のそれぞれは、第1蓄熱槽27及び第2蓄熱槽28を含む複数の蓄熱槽を備えており、各群における第2蓄熱槽28は、各群における複数の蓄熱槽のうち、蓄熱運転時における最下流の蓄熱槽であればよい。
【0078】
また、各群における複数の蓄熱槽は、第1蓄熱槽27及び第2蓄熱槽28とは異なる複数の第N蓄熱槽(Nは3以上の整数)を含んでもよい。複数の第N蓄熱槽のそれぞれは、水平方向に空気5を流通させるように構成される。また、複数の第N蓄熱槽のそれぞれは、第1から第K群のいずれかに含まれ、同じ群の第1蓄熱槽27及び第2蓄熱槽28と直列に接続される。また、各群における第2蓄熱槽28は、各群における複数の蓄熱槽のうち、蓄熱運転時における最下流の蓄熱槽である。また、各蓄熱槽の出入り口には、弁が接続される。
【0079】
例えば、K=3、N=3とした場合、第1から3群のそれぞれの複数の蓄熱槽は、水平方向に空気5を流通させる複数の第3蓄熱槽(不図示)を含み、複数の第3蓄熱槽のそれぞれは第1から第3群に含まれる。また、複数の第3蓄熱槽のそれぞれは、同じ群の第1蓄熱槽27及び第2蓄熱槽28と直列に接続される。各群における第2蓄熱槽28は、各群における複数の蓄熱槽のうち、蓄熱運転時における最下流の蓄熱槽として接続される。
【0080】
本実施形態によれば、蓄熱システム100は、各群を構成する蓄熱槽の一部を鉛直方向に設ける事により、放熱運転可能時間の減少が小さくなる。
【0081】
また、本実施形態によれば、蓄熱システム100は、各群を構成する蓄熱槽の一部のみを分割し、第2蓄熱槽28として鉛直方向に空気5が流れるように配置する。これにより第2蓄熱槽28内に網状の岩石受け部品35を設けた際に、固体顕熱蓄熱材23を保持する強度を保つ事ができる。また、メンテナンスの際に第2蓄熱槽28内の固体顕熱蓄熱材23を取り除いて作業する事が可能となり、保守性を担保した構造とする事ができる。
【0082】
また、本実施形態によれば、それぞれの第1蓄熱槽27及び第2蓄熱槽28には、水平方向に空気5を流通させる第N蓄熱槽が接続されていてもよい。複数の第N蓄熱槽のそれぞれは、各群のいずれかに含まれ、同じ群の第1蓄熱槽27及び第2蓄熱槽28と直列に接続される。これにより、第1蓄熱槽27及び第N蓄熱槽は、蓄熱運転後に高温一定の領域を保つ事ができ、また、第2蓄熱槽28については、放熱運転可能時間の減少を小さくする事ができる。
【0083】
また、本実施形態によれば、蓄熱システム100は、蓄熱槽の各群を並列に接続し、弁16~18の開閉を操作する事で、蓄熱運転または放熱運転を行う蓄熱槽の群を選択する事ができる。これにより、運転の自由度や柔軟性が向上する。
【0084】
(第3実施形態)
図4は、第3実施形態における蓄熱システムの蓄熱槽部分の構成図である。
【0085】
蓄熱システム100の全体構成図は、
図5と同様であるため説明を省略する。
【0086】
第1実施形態では、蓄熱システム100は、1つの第1蓄熱槽27と、1つの第2蓄熱槽28とが直列に接続されている。一方、本実施形態では、蓄熱システム100は、複数の第1蓄熱槽27と、第1蓄熱槽27の数よりも少ない1または複数の第2蓄熱槽28とを備える。また、それぞれの第1蓄熱槽27は、互いに並列に接続され、第2蓄熱槽28は、第1蓄熱槽27と直列に接続される。
【0087】
第1実施形態と同様に、本実施形態では、第1蓄熱槽27は、空気5が第1蓄熱槽27内を水平方向に流れるように配置する。また、第2蓄熱槽28は、空気5が第2蓄熱槽28内を鉛直方向に流れるように配置する。
【0088】
図4の例では、蓄熱システム100は、3つの第1蓄熱槽27と、1つの第2蓄熱槽28とを備える。3つの第1蓄熱槽27は、互いに並列に接続され、第2蓄熱槽28は、互いに並列に接続された3つの第1蓄熱槽27と直列に接続されている。
【0089】
また、3つの第1蓄熱槽27と、1つの第2蓄熱槽28とは、配管22によって接続される。また、3つの第1蓄熱槽27及び1つの第2蓄熱槽28の空気5の出入り口には、弁16、17及び18が備えられる。本実施形態における矢印の向きは、蓄熱運転時の空気流れ方向32を表しており、放熱運転時は、蓄熱運転時とは逆方向に空気5を流通させる。
【0090】
蓄熱運転の際、空気5は配管36側で分岐し、3つの第1蓄熱槽27にそれぞれ流通し、その後、配管22側で合流する構成となっている。また、合流した高温の空気5は、配管22を通じて第2蓄熱槽28に流通する。蓄熱運転の際、蓄熱システム100は、各第1蓄熱槽27における弁16及び18の開閉を行う事によって、高温の空気5を3組全てに流通させたり、3組のうち、どれか1組のみであったり、どれか2組のみに流通させる事ができる。
【0091】
また、放熱運転の際、空気5は配管22側で分岐し、3つの第1蓄熱槽27にそれぞれ流通し、その後、配管36側で合流する構成となっている。放熱運転の際、蓄熱システム100は、各第1蓄熱槽27における弁16及び18の開閉を行う事によって、空気5を3組全てに流通させたり、3組のうち、どれか1組のみであったり、どれか2組のみに流通させる事ができる。
【0092】
並列に接続される第1蓄熱槽27の数は、3つに限定されない。蓄熱システム100は、水平方向に空気5を流通させる複数の第1蓄熱槽27を含む複数の蓄熱槽を備え、第1蓄熱槽27が、互いに並列に接続されていればよい。
【0093】
第1蓄熱槽27と直列に接続される第2蓄熱槽28の数は、1つに限定されない。蓄熱システム100は、複数の第1蓄熱槽27と、鉛直方向に空気5を流通させる1または複数の第2蓄熱槽28とを備え、1または複数の第2蓄熱槽28は、互いに並列に接続された複数の第1蓄熱槽27と直列に接続されていればよい。また、第2蓄熱槽28の数は、第1蓄熱槽27の数よりも少ない個数で構成される。また、1または複数の第2蓄熱槽28は、それぞれ蓄熱運転時における最下流の蓄熱槽である。
【0094】
また、それぞれの第1及び第2蓄熱槽27、28の出入り口には弁16、17及び18が含まれていてもよい。
【0095】
蓄熱システム100は、複数の第2蓄熱槽28を備える場合、弁18などの開閉に基づいて、空気5を流通させる第1蓄熱槽27の組み合わせを選択する事ができる。
【0096】
蓄熱システム100が備える蓄熱槽は、複数の第1蓄熱槽27と、1または複数の第2蓄熱槽28とに限定されない。蓄熱システム100は、複数の蓄熱槽を備え、複数の第1蓄熱槽27と、1または複数の第2蓄熱槽28とを含み、1または複数の第2蓄熱槽28は、互いに並列に接続された複数の第1蓄熱槽27と直列に接続されていればよい。また、第2蓄熱槽28の数は、第1蓄熱槽27の数よりも少ない個数で構成される。また、1または複数の第2蓄熱槽28は、それぞれ蓄熱運転時における最下流の蓄熱槽である。
【0097】
また、それぞれの第1蓄熱槽27には、第1蓄熱槽27及び第2蓄熱槽28とは異なる第N蓄熱槽(Nは3以上の整数)が接続されてもよい。第N蓄熱槽それぞれは、水平方向に空気5を流通させるように構成される。また、第N蓄熱槽のそれぞれは、第1蓄熱槽27のそれぞれと直列に接続される。また、1または複数の第2蓄熱槽28のそれぞれは、蓄熱運転時における最下流の蓄熱槽として接続される。また、各蓄熱槽の出入り口には、弁が接続される。
【0098】
例えば、蓄熱システム100は、水平方向に空気5を流通させる第3蓄熱槽(不図示)を含み、第3蓄熱槽のそれぞれは、第1蓄熱槽27のそれぞれと直列に接続される。また、1または複数の第2蓄熱槽28のそれぞれは、蓄熱運転時における最下流の蓄熱槽として接続される。
【0099】
本実施形態によれば、蓄熱システム100は、蓄熱槽の一部分割し、鉛直方向に空気5が流れるように配置する事により、放熱運転可能時間の減少が小さくなる。
【0100】
また、本実施形態によれば、蓄熱システム100は、蓄熱槽の一部のみを第2蓄熱槽28として鉛直方向に空気5が流れるように配置する。これにより、第2蓄熱槽28内に、網状の岩石受け部品35を設けた際に、固体顕熱蓄熱材23を保持する強度を保つ事ができる。また、メンテナンスの際に第2蓄熱槽28内の固体顕熱蓄熱材23を取り除いて作業する事が可能となり、保守性を担保した構造とする事ができる。
【0101】
また、本実施形態によれば、それぞれの第1蓄熱槽27には、水平方向に空気5を流通させる第N蓄熱槽が接続されていてもよい。第N蓄熱槽のそれぞれは、第1蓄熱槽27のそれぞれと直列に接続される。これにより、第1蓄熱槽27及び第N蓄熱槽は、蓄熱運転後に高温一定の領域を保つ事ができ、また、第2蓄熱槽28については、放熱運転可能時間の減少を小さくする事ができる。
【0102】
また、本実施形態によれば、蓄熱システム100は、各第1蓄熱槽27を並列に接続し、弁16及び18の開閉を操作する事で、蓄熱運転または放熱運転を行う蓄熱槽を選択する事ができる。これにより、運転の柔軟性が向上する。
【0103】
また、第2実施形態では、蓄熱運転時に、例えば全ての第2蓄熱槽28に高温の空気5を流通させると、温度躍層26が全ての第2蓄熱槽28に発生する。一方、本実施形態によれば、温度躍層26は、より少ない第2蓄熱槽28にしか発生しない。
図3の例では、3個の第2蓄熱槽28に温度躍層26が発生するが、
図4では、1個の第2蓄熱槽28にしか温度躍層26が発生しない。そのため、蓄熱システム100は、蓄熱運転を行った場合、放熱運転必要温度25以上となる領域の合計は、第2実施形態よりも多くなる。
【0104】
放熱運転必要温度25以上となる領域の合計がより多くなるため、蓄熱システム100は、放熱運転の際に、例えば、蒸気タービン10の熱源や空調などの用途に利用できる熱をより多くする事ができる。
【0105】
なお、第1から第3実施形態の蓄熱システム100は、蓄熱システム100を利用して発電を行う発電システムの一部となっているが、その他のシステムの一部となっていてもよい。例えば、第1から第3実施形態の蓄熱システム100は、蓄熱システム100を利用して空調を行う空調システムの一部となっていてもよい。
【0106】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定する事を意図したものではない。本明細書で説明した新規なシステムは、その他の様々な形態で実施する事ができる。また、本明細書で説明したシステムの形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行う事ができる。添付の特許請求の範囲及びこれに均等な範囲は、発明の範囲や要旨に含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。
【符号の説明】
【0107】
1:蓄熱槽、2:電気ヒータ、3:第1送風機、4:第2送風機、
5:空気、6:水、7:蒸気、8:復水ポンプ、9:ボイラ、
10:蒸気タービン、11:復水器、12:弁、13:弁、
14:弁、15:弁、16:弁、17:弁、18:弁、
19:弁、20:弁、21:弁、22:配管、23:固体顕熱蓄熱材、
24:固体顕熱蓄熱材温度、25:放熱運転必要温度、
26:温度躍層、27:第1蓄熱槽、28:第2蓄熱槽、
29:蓄熱槽、30:蓄熱槽、31:蓄熱槽、
32:蓄熱運転時の空気流れ方向、33:放熱運転時の空気流れ方向、
34:配管、35:岩石受け部品、36:配管、37:制御部、
40:第1群、41:第2群、42:第3群