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  • 特開-太陽電池モジュール 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114496
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/048 20140101AFI20240816BHJP
【FI】
H01L31/04 560
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020299
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】寺下 徹
(72)【発明者】
【氏名】小島 広平
(72)【発明者】
【氏名】中村 淳一
【テーマコード(参考)】
5F151
5F251
【Fターム(参考)】
5F151AA02
5F151AA03
5F151BA18
5F151DA10
5F151EA05
5F151EA19
5F151FA06
5F151FA10
5F151FA15
5F151JA02
5F151JA04
5F251AA02
5F251AA03
5F251BA18
5F251DA10
5F251EA05
5F251EA19
5F251FA06
5F251FA10
5F251FA15
5F251JA02
5F251JA04
(57)【要約】
【課題】耐久性に優れる太陽電池モジュールを提供すること。
【解決手段】本発明に係る太陽電池モジュール1は、端部を重ねて配置される複数の裏面電極型の太陽電池セル10と、表側の前記太陽電池セル10の裏面の端部に裏側の前記太陽電池セル10の表面に当接するよう配設される帯状の密着担保部材20と、前記太陽電池セル10の周囲を封止する封止材60と、を備え、前記密着担保部材20は、裏側の前記太陽電池セル10との間に前記封止材60および他の材料が介在しない非接着領域を形成する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部を重ねて配置される複数の裏面電極型の太陽電池セルと、
表側の前記太陽電池セルの裏面の端部に裏側の前記太陽電池セルの表面に当接するよう配設される帯状の密着担保部材と、
前記太陽電池セルの周囲を封止する封止材と、
を備え、
前記密着担保部材は、裏側の前記太陽電池セルとの間に前記封止材および他の材料が介在しない非接着領域を形成する、太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記密着担保部材の幅は、2.0mm以上である、請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
前記非接着領域の幅は、1.0mm以上である、請求項1または2に記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】
裏側の前記太陽電池セルは、表側の前記太陽電池セルと重なる位置に平面視で角が落とされた面取り部を有する、請求項1または2に記載の太陽電池モジュール。
【請求項5】
前記密着担保部材は、裏側の前記太陽電池セルに当接する樹脂基材層と、表側の前記太陽電池セルに接着される粘着剤層と、を有する、請求項1または2に記載の太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池セルの中には、裏面側にのみ電極を有するバックコンタクト型のものがある。バックコンタクト型の太陽電池セルでは、表面側に光を遮光する電極が配設されないので、略全面が光電変換に寄与し得る。また、複数の太陽電池セルをモジュール化する態様として、例えば特許文献1に記載されるように、複数の太陽電池セルを互いの端部を順番に重ねるように並べて接続するシングリング構造が知られている。太陽電池セルの端部を重ねることで、モジュール全体の面積に対する実際に光電変換に寄与する有効領域の面積の割合を大きくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO2022/030471号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
太陽電池セルを重ね合わせた状態で封止材で封止して太陽電池モジュールを形成すると、太陽電池セル同士の僅かな傾斜に起因して、太陽電池セル間に封止材が浸入し、太陽電池セル同士が接着される。このような太陽電池モジュールが温度変化に晒されると、温度変化により生じる応力が特定の太陽電池セルに集中し、劣化を促進してしまう場合がある。そこで、本発明は、耐久性に優れる太陽電池モジュールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る太陽電池モジュールは、端部を重ねて配置される複数の裏面電極型の太陽電池セルと、表側の前記太陽電池セルの裏面の端部に裏側の前記太陽電池セルの表面に当接するよう配設される帯状の密着担保部材と、前記太陽電池セルの周囲を封止する封止材と、を備え、前記密着担保部材は、裏側の前記太陽電池セルとの間に前記封止材および他の材料が介在しない非接着領域を形成する。
【0006】
上述の太陽電池モジュールにおいて、前記密着担保部材の幅は、2.0mm以上であってもよい。
【0007】
上述の太陽電池モジュールにおいて、前記非接着領域の幅は、1.0mm以上であってもよい。
【0008】
上述の太陽電池モジュールにおいて、裏側の前記太陽電池セルは、表側の前記太陽電池セルと重なる位置に平面視で角が落とされた面取り部を有してもよい。
【0009】
上述の太陽電池モジュールにおいて、前記密着担保部材は、裏側の前記太陽電池セルに当接する樹脂基材層と、表側の前記太陽電池セルに接着される粘着剤層と、を有してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、耐久性に優れる太陽電池モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の太陽電池モジュールの模式裏面図である。
図2図1の太陽電池モジュールのX-X線断面図である。
図3】太陽電池モジュールの実施例における非接着領域の幅と温度サイクル試験結果との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、便宜上、見やすいように調整されている。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る太陽電池モジュール1の模式裏面図である。図2は太陽電池モジュール1の断面図である。
【0014】
太陽電池モジュール1は、端部を重ねて配置される複数の裏面電極型の太陽電池セル10と、太陽電池セル10の間に介設される帯状の密着担保部材20と、隣接する太陽電池セル10の間を接続する接続部材30と、複数の太陽電池セル10の表面(受光面)側を覆う表側保護部材40と、複数の太陽電池セル10の裏面側を覆う裏側保護部材50と、表側保護部材40と裏側保護部材50の間に充填され、太陽電池セル10の周囲を封止する封止材60と、を備える。
【0015】
太陽電池セル10は、一列に並んで端部を一定の方向に重ねた状態で接続部材30によって直列に接続されてなる複数の太陽電池ストリングを形成する。太陽電池セル10は、半導体基板11と、半導体基板11の裏面側に積層され、互いに異なる導電型を有する第1半導体層12および第2半導体層13と、第1半導体層12の裏面側に積層される第1電極14および第2半導体層13の裏面側に積層される第2電極15と、を備える構成とされ得る。太陽電池セル10は、これらの構成以外に、例えば反射防止層、パッシベーション層等の各種の構成要素を有してもよい。
【0016】
半導体基板11は、単結晶シリコンまたは多結晶シリコン等の結晶シリコンから形成することができる。半導体基板11は、例えば結晶シリコン材料にp型ドーパントがドープされたp型の半導体基板である。p型ドーパントとしては、例えばホウ素(B)が挙げられる。このような半導体基板11は、表面からの入射光を吸収して光キャリア(電子および正孔)を生成する光電変換基板として機能する。
【0017】
半導体基板11は、平面視において、長方形の一方の長辺の両端の角が落とされた面取り部を有する異形六角形状に形成され得る。このような形状は、正方形の4つの角を面取りしてなる八角形状の半導体基板を半分に切断することで得られ、オリエンテーションフラット部を有する半導体基板を用いる場合に採用されることが多い。このような異形六角形状の半導体基板11を用いる場合、太陽電池セル10は、表側の太陽電池セル10と重なる位置に面取り部を有するよう配向されることが好ましい。
【0018】
第1半導体層12および第2半導体層13は、所望の導電型を付与するドーパントをドープしたアモルファスシリコンによって形成することができる。p型のドーパントとしては、例えばホウ素(B)が挙げられ、n型ドーパントとしては、例えばリン(P)が挙げられる。
【0019】
第1電極14および第2電極15は、導電性を有する材料から形成され、例えば銀ペースト等の導電性ペーストの印刷および焼成、金属のメッキ等の方法により形成され得る。太陽電池セル10に接続部材30を接続するために、第1電極14は第1電極パッド141を、第2電極15は第2電極パッド151を、それぞれ有し得る。第1電極パッド141および第2電極パッド151は、第1電極14および第2電極15の幅が大きい部分として形成されてもよく、図示するように、第1電極パッド141および第2電極パッド151を嵩上げした部分として形成されてもよい。
【0020】
密着担保部材20は、表側の太陽電池セル10の裏面の端部に、端縁に沿って配設され、裏側の太陽電池セル10の表面に当接する。密着担保部材20は、平面視で表側の太陽電池セル10からははみ出さないよう配設されるが、表側の太陽電池セル10の裏側において裏側の太陽電池セル10からははみ出してもよい。図示する例において、密着担保部材20は、裏側の太陽電池セル10の面取り部からはみ出している。
【0021】
密着担保部材20は、太陽電池セル10、特に半導体基板11よりも変形しやすい、例えば樹脂等の材料から形成される。これにより、表側の太陽電池セル10が裏側の太陽電池セル10に対して僅かに傾斜していたとしても、密着担保部材20は、変形して裏側の太陽電池セル10との間に隙間を形成しない。これにより、密着担保部材20と裏側の太陽電池セル10との間への封止材60の浸入を抑制し、封止材60および他の材料が介在しない非接着領域を形成する。
【0022】
具体的には、密着担保部材20は、裏側の太陽電池セル10の表面に当接する平滑面を提供する樹脂基材層21と、樹脂基材層の表面側に積層され、表側の太陽電池セル10に接着され、比較的容易に変形する粘着剤層22と、を有する構成とされ得る。
【0023】
密着担保部材20と裏側の太陽電池セル10との非接着領域の幅の下限としては、1.0mmが好ましく、2.0mmがより好ましい。一方、非接着領域の幅の上限としては、15mmが好ましく、10mmがより好ましい。非接着領域の幅を前記下限以上とすることによって、表裏の太陽電池セル10間の微小な相対移動、特に傾斜が容易となるので、熱応力が一部の太陽電池セル10に集中することを防止して、太陽電池セル10の破損や太陽電池セル10からの接続部材30の剥離を抑制できる。また、非接着領域の幅を前記上限以下とすることによって、太陽電池セル10の重複面積を小さくして製造コストを抑制すると共に、表側の太陽電池セル10の第1半導体層12、第2半導体層13、第1電極14および第2電極15の平面パターンを集電効率の高い形状として光電変換効率を向上できる。
【0024】
太陽電池モジュール1の製造時、つまり封止材60による太陽電池セル10の封止時の条件によって、密着担保部材20と裏側の太陽電池セル10との間への封止材60の浸入量は異なるが、一般的な条件において上述のような非接着領域の幅を確保するために、密着担保部材20の幅の下限としては、2.0mmが好ましく、3.0mmがより好ましい。一方、密着担保部材20の幅の上限としては、20mmが好ましく、15mmがより好ましい。
【0025】
密着担保部材20は、複数に分割して配設されてもよい。太陽電池セル10の幅(重ねられる端縁の長さ)に対する密着担保部材20の長さの比率の下限としては、50%が好ましく、70%がより好ましい。密着担保部材20の長さの比率を前記下限以上とすることによって、一部の太陽電池セル10への応力集中を効果的に抑制できる。一方、太陽電池セル10の幅に対する密着担保部材20の長さの比率の上限としては、特に限定されず、100%とすることができる。
【0026】
樹脂基材層21は、例えば塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド等から形成され得る。また、粘着剤層22は、例えばアクリル系粘着剤、シリコーン粘着剤、ウレタン粘着剤、ゴム系粘着剤等によって形成され得る。密着担保部材20の厚みの下限としては、30μmが好ましく、50μmがより好ましい。一方、密着担保部材20の厚みの上限としては、500μmが好ましく、300μmがより好ましい。密着担保部材20の厚みを前記下限以上とすることによって、太陽電池セル10の相対的な傾斜を吸収して十分な非接着領域を形成できる。また、密着担保部材20の厚みを前記上限以下とすることによって、太陽電池モジュール1が不必要に厚くなることを防止できる。
【0027】
接続部材30は、隣接する太陽電池セル10の一方の第1電極14(第1電極パッド141)と他方の第2電極15(第2電極パッド151)とを電気的に接続する。接続部材30としては、例えば金属単線、金属編組線、金属箔、金属板等を用いることができる。接続部材30は、第1電極14および第2電極15に対して、例えば半田、導電性接着剤等によって接合され得る。
【0028】
表側保護部材40は、封止材60を介して、太陽電池ストリングつまり太陽電池セル10の表面を覆うことにより、太陽電池セル10を保護する。表側保護部材40は、板状またはシート状の材料から形成することができ、透光性および対候性に優れることが好ましい。具体的には、表側保護部材40の材質としては、例えばアクリル樹脂若しくはポリカーボネート樹脂等の透明樹脂、ガラスなどを挙げることができる。また、表側保護部材40の表面は、光の反射を抑制するために、凹凸状に加工されたり、反射防止コーティング層で被覆されてもよい。
【0029】
裏側保護部材50は、封止材60を介して、太陽電池ストリングの裏面を覆って、太陽電池セル10を保護する。裏側保護部材50は、表側保護部材40と同様に、板状またはシート状の材料から形成することができ、遮水性に優れることが好ましい。具体的には、裏側保護部材50としては、例えばアクリル樹脂若しくはポリカーボネート樹脂等の透明樹脂、ガラスなどの板材、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、オレフィン系樹脂、含フッ素樹脂、シリコーン樹脂等の樹脂フィルム、またはこれらと、アルミニウム箔等の金属箔との積層体が好適に用いられる。
【0030】
封止材60は、太陽電池ストリング、すなわち太陽電池セル10を封止して保護するもので、太陽電池セル10の受光側の面と表側保護部材40との間、および、太陽電池セル10の裏側の面と裏側保護部材50との間に介在する。
【0031】
封止材60は、太陽電池セル10と表側保護部材40および裏側保護部材50とを接着すると共に、太陽電池セル10の周囲の隙間をなくすことで、太陽電池セル10を保護する。このため、封止材60としては、例えば、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/α-オレフィン共重合体、エチレン/酢酸ビニル/トリアリルイソシアヌレート(EVAT)、ポリビニルブチラート(PVB)、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、または、シリコーン樹脂等の透光性を有する樹脂が好適に用いられる。封止材60は、製造段階では太陽電池セル10の隙間に浸入する熱可塑性を有し、最終製品において熱可塑性を喪失するにより太陽電池モジュール1の温度が上昇しても形状を保持できる材料から形成されることが好ましい。つまり、封止材60は、熱可塑性樹脂を主体とし、この熱可塑性樹脂の軟化点よりも高い温度で活性化し、熱可塑性樹脂を架橋して硬化させる架橋剤を含有する樹脂組成物によって形成されることが好ましい。
【0032】
以上のように、太陽電池モジュール1は、裏側の太陽電池セル10との間に封止材60および他の材料が介在しない非接着領域を形成する密着担保部材20を備えるため、太陽電池セル10の構成要素間の熱膨張率の違い等によって生じ得る応力を隣接する太陽電池セル10に作用させにくい。これにより、太陽電池モジュール1は、一部の太陽電池セル10に応力が集中して破損することを防止でき、耐久性に優れる。
【0033】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更および変形が可能である。
【実施例0034】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。上述の実施形態に準じ、シリコン半導体基板を用いて裏面電極型太陽電池セルを形成し、密着担保部材の幅および封止条件(温度)を調整して、非接着領域が異なる太陽電池モジュールの試作例1~13を試作し、JIS-C8917に規定される温度サイクル試験を実施して、200サイクル後の出力の保持率(出力保持率:試験前の出力に対する比率)を測定した。この結果を、次の表1に示す。また、図3に、非接着領域の幅と出力保持率の関係をグラフにして示す。
【0035】
【表1】
【0036】
以上のように、密着担保部材により一定以上の幅を有する非接着領域を形成することで、出力保持率を向上できること、つまり耐久性に優れる太陽電池モジュールが得られることが確認できた。
【符号の説明】
【0037】
1 太陽電池モジュール
10 太陽電池セル
11 半導体基板
12 第1半導体層
13 第2半導体層
14 第1電極
141 第1電極パッド
15 第2電極
151 第2電極パッド
20 密着担保部材
30 接続部材
40 表側保護部材
50 裏側保護部材
60 封止材
図1
図2
図3