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特開2024-11453電子債権取引システム及びそれを用いたクレジットサービス提供システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011453
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】電子債権取引システム及びそれを用いたクレジットサービス提供システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 40/04 20120101AFI20240118BHJP
【FI】
G06Q40/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113424
(22)【出願日】2022-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】313004816
【氏名又は名称】西本 一也
(71)【出願人】
【識別番号】519249262
【氏名又は名称】株式会社デジタルアセットマーケッツ
(74)【代理人】
【識別番号】110001405
【氏名又は名称】弁理士法人篠原国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100065824
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100104983
【弁理士】
【氏名又は名称】藤中 雅之
(74)【代理人】
【識別番号】100166394
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 和弘
(72)【発明者】
【氏名】西本 一也
【テーマコード(参考)】
5L055
【Fターム(参考)】
5L055BB52
(57)【要約】      (修正有)
【課題】簡易に電子債権として利用可能で、早期に資金化でき、電子債権の発行コストを低減し、STO化を容易にし、STOの小口販売化による採算性を向上させ、立替分の清算リスクに備える手数料を低減可能な電子債権取引システム等を提供する。
【解決手段】ブロックチェーンとスマートコントラクトを用いた電子債権取引システムであって、NFT生成用、電子債権承認用、電子債権取引用、NFT償還用及びSTO化用の各スマートコントラクトを有する。NFT償還用スマートコントラクトは、償還日が到来したとき、保険料から、債務不履行の補填に費やした分を差し引いた金額の一部を当該電子債権(として承認されたNFT)の債務者に戻す。電子債権取引用スマートコントラクトは、所定のファクター(格付け、金利、タイプ、償還日など)の特性を有する電子債権の群を一つの銘柄として、同一銘柄の電子債権の群に対するクロッシング処理を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トークン類(ブロックチェーン等の分散技術においてデジタルで定義される価値などの総称)、デジタル通貨、トークン類とデジタル通貨、もしくはトークン類同士、デジタル通貨同士など、あらゆる形態のデジタル資産間による取引を管理するための、少なくとも1種類のブロックチェーン等の分散技術における分散型台帳と、該分散型台帳に管理されるデジタル資産を用いた所定の処理を行うためのスマートコントラクトを備えて構築される、電子債権取引システムであって、
(NFT発行体において、)ブロックチェーンを用いたデジタル契約として、契約に基づく支払金額(支払い対象となる資産の種類、元金及び債務不履行のリスクに対する保険料としての金利)、契約に基づく支払金額の支払先のスマートコントラクトのアドレスが指定されたNFTを生成する機能を有するNFT生成用スマートコントラクトと、
契約に基づく支払金額の支払先アドレスを有し、債務者からの契約に基づく支払金額の送付を受け付ける機能を有する支払金額受付用スマートコントラクトと、
前記NFT生成用スマートコントラクトにより生成されたNFTについての電子債権(電子記録債権を含むトークン化した債権の総称として定義する。仕組み金融(ストラクチャード方式)に該当する広域な特性を有する債権も対象とする。以下、同じ。)としての承認申請を行う機能を有する電子債権承認申請用スマートコントラクトと、
電子債権承認機関において、前記NFT生成用スマートコントラクトにより生成されたNFTにおけるデジタル契約の内容を審査し、有効性が確認されたNFT内に、電子債権承認機関の番号と、管理番号、銘柄コードを記録して、電子債権として承認する機能を有する電子債権承認用スマートコントラクトと、
前記支払金額受付用スマートコントラクトのアドレスに送付された支払金額を、電子債権(として承認されたNFT)の所有者のアドレスへ送付する機能を有する支払金額送付用スマートコントラクトと、
電子債権(として承認されたNFT)の売り注文を指値(契約に基づく支払金額として、支払い対象となる資産の種類、元金及び債務不履行のリスクに対する保険料としての金利を指定したもの)で発注する機能を有する電子債権売注文発注用スマートコントラクトと、
電子債権(として承認されたNFT)の注文について、所定のファクター(格付け、金利、タイプ、償還日など)の特性を有する電子債権(として承認されたNFT)の群を一つの銘柄として、同一銘柄の電子債権(として承認されたNFT)の群に対するクロッシング処理を行う機能を有する電子債権取引用スマートコントラクトと、
証券会社等において、前記電子債権取引用スマートコントラクトによるクロッシング処理を介して購入された、銘柄単位の電子債権(として承認されたNFT)の群を有して構成されるSTO(電子記録移転権利の概念だけではなくデジタル証券の概念を含むものとして定義する。以下同じ。)を生成する機能を有する電子債権STO化用スマートコントラクトと、
償還日が到来したとき、電子債権(として承認されたNFT)を償還する機能を有するNFT償還用スマートコントラクトと、
を有し、
前記NFT生成用スマートコントラクトは、NFTの生成に際し、契約に基づく支払金額として、元金と、債務不履行のリスクに対する保険料としての金利の設定を受け付ける機能を有し、
前記電子債権承認申請用スマートコントラクトは、(NFT発行体からの)前記NFT生成用スマートコントラクトにより生成されたNFTについての電子債権としての承認申請指示を受け付ける機能と、当該NFTについての電子債権承認申請を電子債権承認機関に通知する機能と、を有し、
前記NFT償還用スマートコントラクトは、電子債権(として承認されたNFT)の償還日が到来したとき、当該電子債権(として承認されたNFT)を失効させるとともに、前記支払金額受付用スマートコントラクトのアドレスに送付された、当該電子債権(として承認されたNFT)における償還時の支払金額を、前記支払金額送付用スマートコントラクトに、当該電子債権(として承認されたNFT)の所有者のアドレスへ送付させる機能と、電子債権(として承認されたNFT)の償還日が到来したとき、全ての債務不履行となった電子債権(として承認されたNFT)における当該債務者の支払うべき支払金額を、全ての電子債権(として承認されたNFT)における保険料を用いて補填し、債務不履行となっていない当該電子債権(として承認されたNFT)における保険料から、債務不履行の補填に費やした分を差し引いた金額の一部を当該電子債権(として承認されたNFT)の債務者に戻す機能を有し、
前記電子債権取引用スマートコントラクトは、前記電子債権売注文発注用スマートコントラクトにより発注された、電子債権(として承認されたNFT)の指値での売り注文に対し、買い方に対当する注文がある場合に約定させ、買い方の購入金額と電子債権(として承認されたNFT)との清算・決済を自動的に行う機能を有することを特徴とする電子債権取引システム。
【請求項2】
前記電子債権取引用スマートコントラクトによる電子債権(として承認されたNFT)の注文についてのクロッシング処理に際し、電子債権(として承認されたNFT)の買い方側の注文条件として、格付け、債務不履行のリスクに対する保険料としての金利、タイプ、償還日などのファクターについて、類似する所定範囲の特性を有する電子債権(として承認されたNFT)の群としての銘柄に対する金利や量(金額に相当)の指定を受け付ける機能を有する電子債権買注文条件指定受付用スマートコントラクトをさらに有することを特徴とする請求項1に記載の電子債権取引システム。
【請求項3】
前記電子債権取引用スマートコントラクトは、前記電子債権売注文発注用スマートコントラクトにより発注された、格付け、債務不履行のリスクに対する保険料としての金利、タイプ、償還日などのファクターについて、類似する所定範囲の特性を有する電子債権(として承認されたNFT)の群としての銘柄に属する電子債権(として承認されたNFT)の指値での売り注文が、買い方側の当該注文条件に該当した場合に約定させ、当該銘柄に属する電子債権(として承認されたNFT)を割り振って買い方側の買い注文と対当させる機能と、
売り注文の当該銘柄に属する電子債権(として承認されたNFT)それぞれ固有の(格付け、債務不履行のリスクに対する保険料としての金利、タイプ、償還日などの)特性の差異に基づく、変換比率(取引対象である標準物と実際の受渡しに用いられる受渡適格銘柄との交換比率)の売り方側からの設定を受け付ける機能と、
設定を受け付けた変換比率に基づき、金利による割引率の調整などを行う機能と、
を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の電子債権取引システム。
【請求項4】
前記電子債権取引用スマートコントラクトによるクロッシング処理で扱う銘柄として、格付け、債務不履行のリスクに対する保険料としての金利、タイプ、償還日などのファクターについて、類似する所定範囲の特性を有する電子債権(として承認されたNFT)の群を一つの銘柄コードを有する銘柄として、電子債権承認機関において登録する機能を有する電子債権銘柄登録用スマートコントラクトをさらに有することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の電子債権取引システム。
【請求項5】
前記電子債権銘柄登録用スマートコントラクトは、格付け、債務不履行のリスクに対する保険料としての金利、タイプ、償還日などの各要因を、所定要因対応値変換テーブルを用いて1桁の値に変換し、複数桁からなる銘柄コードを生成する機能を有することを特徴とする請求項4に記載の電子債権取引システム。
【請求項6】
前記電子債権銘柄登録用スマートコントラクトにより電子債権承認機関において登録された電子債権の契約内容を開示する電子債権公開手段をさらに有することを特徴とする請求項4又は5に記載の電子債権取引システム。
【請求項7】
前記電子債権取引用スマートコントラクトは、銘柄ごとに時間をずらしてクロッシング処理を行う機能をさらに有することを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の電子債権取引システム。
【請求項8】
前記電子債権取引用スマートコントラクトは、各銘柄を同時にクロッシング処理し、銘柄間でクロッシング条件(金利指値)が合致しない場合、各銘柄の売りの状況を監視しながら、売りの銘柄間で玉の調整が可能であると判断できる場合に、流動性調整者による流動性調整のための銘柄の生成を待って約定に誘導する機能をさらに有することを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の電子債権取引システム。
【請求項9】
前記銘柄コードを構成する複数桁のうちの所定桁は、クロッシング処理の作動を制御するクロッシング作動条件桁として機能し、
前記電子債権取引用スマートコントラクトは、買い注文の銘柄の銘柄コードにおける前記クロッシング作動条件桁に“クロッシング処理の作動条件無指定”に相当する所定値以外の値が設定されている場合、当該銘柄コードを条件付き銘柄コードとして認識し、買い注文の銘柄に対応する売り注文の銘柄の当該銘柄コードの前記クロッシング作動条件桁に設定された値が合致しないときには、クロッシング処理を行わないように制御する機能をさらに有することを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の電子債権取引システム。
【請求項10】
前記電子債権取引用スマートコントラクトは、売り方側から前記変換比率の設定を受け付けた場合、前記変換比率を用いて変換した売り方側の売り注文の銘柄の前記銘柄コードにおける前記クロッシング作動条件桁を、“クロッシング処理の作動条件無指定”に相当する所定値にして、クロッシング処理を行う機能をさらに有することを特徴とする請求項9に記載の電子債権取引システム。
【請求項11】
STOを管理する機能を有するSTO管理用スマートコントラクトをさらに有し、
前記STO管理用スマートコントラクトは、
発行済STOの金額と同額の電子債権が設定(担保的に確保)されていることを確認し、発行済STOを構成する一部の電子債権が償還されたとき、当該電子債権の償還に伴う新たな電子債権の補充を自動的に行う機能を有することを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載の電子債権取引システム。
【請求項12】
前記STO管理用スマートコントラクトは、発行済STOを構成する一部の電子債権が償還された場合において、電子債権の償還に伴う新たな電子債権の補充が行われない場合に、所定の警報をトークン発行体等に通知する機能をさらに有することを特徴とする請求項11に記載の電子債権取引システム。
【請求項13】
請求項1~12のいずれかの電子債権取引システムを用いたクレジットサービス提供システムであって、
前記NFT生成用スマートコントラクトは、クレジット会社などの金融機関による、クレジットカード利用者の販売者(販売店、販売会社)へ支払うべき代金を立て替えた、立替分の債権に基づいて、ブロックチェーンを用いたデジタル契約として、契約に基づく支払金額(支払い対象となる資産の種類、元金及び債務不履行のリスクに対する保険料としての金利)、契約に基づく支払金額の納付先の前記支払金額受付用スマートコントラクトのアドレスが指定されたNFTを生成することを特徴とする電子債権取引システムを用いたクレジットサービス提供システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロックチェーン等の分散技術やスマートコントラクトを用いて構成される
電子債権取引システム及びそれを用いたクレジットサービス提供システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、電子債権としては、電子記録債権がある(非特許文献1、非特許文献2)。
電子記録債権は、従来の商流における契約書・請求書など紙媒体であった債権に代わり、電子債権記録機関として指定された企業が、債権者と債務者双方からの窓口金融機関を経由した請求により、電子債権として記録原簿に記録することで発生し、資金調達業者などが扱う金銭債権である。
銀行が融資できない(高金利・短期)債権や、銀行からの融資を受けて購入することを所望しないリース物の(低金利・長期)債権などが電子記録債権として流通し、償還期間が1か月程度のものから2年など長期にわたるものがある。
電子記録債権は、まとめてファンド(投資・運用する商品)化され、個人などへの分割や、転売が行われる。
電子記録債権は、権利内容が電子的に記録されるため、書面の作成・交付・保管に要するコストや盗難・紛失のリスクや、二重譲渡のリスクを低減できるなどの利点がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】金融庁、「電子記録債権」、[online]、https://www.fsa.go.jp/ordinary/densi02.pdf
【非特許文献2】株式会社全銀電子債権ネットワーク、「電子記録債権とは」、[online]、https://www.densai.net/about/academy/origin/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、電子記録債権を利用するためには、事前の申し込みが必要であることや、手数料がかかること、債権者と債務者双方が電子債権記録機関に「発生記録」の請求をしないと電子記録債権が発生しないこと、会計処理が煩雑化すること、事業主でない個人は利用できないこと、小規模事業者にはコスト削減についての利点は得られないことなどの問題がある。
【0005】
そこで、本件発明者は、このような問題を解決する方策について考察、検討し、現在の電子記録債権とは別に、ブロックチェーンを用いて電子債権の取引を行う新規性の高い代替システムを導出した。また、その考察、検討の過程において、本件発明者が導出したシステムを用いることでクレジットサービスに内在する問題を併せて解決できることが判明した。
【0006】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、債務者、債権者の一方のみや事業主でない個人であっても、簡易に電子債権として利用可能で、債権者が債権を早期に資金化でき、電子債権の発行コストを低減するとともに、STO化を容易にし、STOの小口販売化による採算性を向上させ、STO購入者は金利を得ることができ、24時間取引、電子債権化における手数料の大幅削減により、電子債権の利用対象可能となる企業を、既存の電子記録債権を利用することについて利点の得られなかった小規模事業者にまで拡張でき、電子債権の活用範囲を大幅に広げることができ、さらには、クレジット会社などの金融機関の立替の清算リスクを抑え、かつ、立替分の清算リスクに備える手数料を低減することの可能な電子債権取引システム及びそれを用いたクレジットサービス提供システムを提供することを目的としている。
なお、本願では、STOを電子記録移転権利の概念だけではなくデジタル証券の概念を含むものとして定義する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明による電子債権取引システムは、トークン類(ブロックチェーン等の分散技術においてデジタルで定義される価値などの総称)、デジタル通貨、トークン類とデジタル通貨、もしくはトークン類同士、デジタル通貨同士など、あらゆる形態のデジタル資産間による取引を管理するための、少なくとも1種類のブロックチェーン等の分散技術における分散型台帳と、該分散型台帳に管理されるデジタル資産を用いた所定の処理を行うためのスマートコントラクトを備えて構築される、電子債権取引システムであって、(NFT発行体において、)ブロックチェーンを用いたデジタル契約として、契約に基づく支払金額(支払い対象となる資産の種類、元金及び債務不履行のリスクに対する保険料としての金利)、契約に基づく支払金額の支払先のスマートコントラクトのアドレスが指定されたNFTを生成する機能を有するNFT生成用スマートコントラクトと、契約に基づく支払金額の支払先アドレスを有し、債務者からの契約に基づく支払金額の送付を受け付ける機能を有する支払金額受付用スマートコントラクトと、前記NFT生成用スマートコントラクトにより生成されたNFTについての電子債権としての承認申請を行う機能を有する電子債権承認申請用スマートコントラクトと、電子債権承認機関において、前記NFT生成用スマートコントラクトにより生成されたNFTにおけるデジタル契約の内容を審査し、有効性が確認されたNFT内に、電子債権承認機関の番号と、管理番号、銘柄コードを記録して、電子債権として承認する機能を有する電子債権承認用スマートコントラクトと、前記支払金額受付用スマートコントラクトのアドレスに送付された支払金額を、電子債権(として承認されたNFT)の所有者のアドレスへ送付する機能を有する支払金額送付用スマートコントラクトと、電子債権(として承認されたNFT)の売り注文を指値(契約に基づく支払金額として、支払い対象となる資産の種類、元金及び債務不履行のリスクに対する保険料としての金利を指定したもの)で発注する機能を有する電子債権売注文発注用スマートコントラクトと、電子債権(として承認されたNFT)の注文について、所定のファクター(格付け、金利、タイプ、償還日など)の特性を有する電子債権(として承認されたNFT)の群を一つの銘柄として、同一銘柄の電子債権(として承認されたNFT)の群に対するクロッシング処理を行う機能を有する電子債権取引用スマートコントラクトと、証券会社等において、前記電子債権取引用スマートコントラクトによるクロッシング処理を介して購入された、銘柄単位の電子債権(として承認されたNFT)の群を有して構成されるSTOを生成する機能を有する電子債権STO化用スマートコントラクトと、償還日が到来したとき、電子債権(として承認されたNFT)を償還する機能を有するNFT償還用スマートコントラクトと、を有し、前記NFT生成用スマートコントラクトは、NFTの生成に際し、契約に基づく支払金額として、元金と、債務不履行のリスクに対する保険料としての金利の設定を受け付ける機能を有し、前記電子債権承認申請用スマートコントラクトは、(NFT発行体からの)前記NFT生成用スマートコントラクトにより生成されたNFTについての電子債権としての承認申請指示を受け付ける機能と、当該NFTについての電子債権承認申請を電子債権承認機関に通知する機能と、を有し、前記NFT償還用スマートコントラクトは、電子債権(として承認されたNFT)の償還日が到来したとき、当該電子債権(として承認されたNFT)を失効させるとともに、前記支払金額受付用スマートコントラクトのアドレスに送付された、当該電子債権(として承認されたNFT)における償還時の支払金額を、前記支払金額送付用スマートコントラクトに、当該電子債権(として承認されたNFT)の所有者のアドレスへ送付させる機能と、電子債権(として承認されたNFT)の償還日が到来したとき、全ての債務不履行となった電子債権(として承認されたNFT)における当該債務者の支払うべき支払金額を、全ての電子債権(として承認されたNFT)における保険料を用いて補填し、債務不履行となっていない当該電子債権(として承認されたNFT)における保険料から、債務不履行の補填に費やした分を差し引いた金額の一部を当該電子債権(として承認されたNFT)の債務者に戻す機能を有し、前記電子債権取引用スマートコントラクトは、前記電子債権売注文発注用スマートコントラクトにより発注された、電子債権(として承認されたNFT)の指値での売り注文に対し、買い方に対当する注文がある場合に約定させ、買い方の購入金額と電子債権(として承認されたNFT)との清算・決済を自動的に行う機能を有することを特徴としている。
なお、本願明細書における「スマートコントラクト」とは、ブロックチェーン等の分散技術上で稼働する、処理を自動化するプログラムである。
また、本願では「電子債権」を、電子記録債権を含むトークン化した債権の総称として定義し、仕組み金融(ストラクチャード方式)に該当する広域な特性を有する債権も対象とするものとする。
【0008】
また、本発明の電子債権取引システムにおいては、前記電子債権取引用スマートコントラクトによる電子債権(として承認されたNFT)の注文についてのクロッシング処理に際し、電子債権(として承認されたNFT)の買い方側の注文条件として、格付け、債務不履行のリスクに対する保険料としての金利、タイプ、償還日などのファクターについて、類似する所定範囲の特性を有する電子債権(として承認されたNFT)の群としての銘柄に対する金利や量(金額に相当)の指定を受け付ける機能を有する電子債権買注文条件指定受付用スマートコントラクトをさらに有するのが好ましい。
【0009】
また、本発明の電子債権取引システムにおいては、前記電子債権取引用スマートコントラクトは、前記電子債権売注文発注用スマートコントラクトにより発注された、格付け、債務不履行のリスクに対する保険料としての金利、タイプ、償還日などのファクターについて、類似する所定範囲の特性を有する電子債権(として承認されたNFT)の群としての銘柄に属する電子債権(として承認されたNFT)の指値での売り注文が、買い方側の当該注文条件に該当した場合に約定させ、当該銘柄に属する電子債権(として承認されたNFT)を割り振って買い方側の買い注文と対当させる機能と、売り注文の当該銘柄に属する電子債権(として承認されたNFT)それぞれ固有の(格付け、債務不履行のリスクに対する保険料としての金利、タイプ、償還日などの)特性の差異に基づく、変換比率(取引対象である標準物と実際の受渡しに用いられる受渡適格銘柄との交換比率)の売り方側からの設定を受け付ける機能と、設定を受け付けた変換比率に基づき、金利による割引率の調整などを行う機能と、を有するのが好ましい。
【0010】
また、本発明の電子債権取引システムにおいては、前記電子債権取引用スマートコントラクトによるクロッシング処理で扱う銘柄として、格付け、債務不履行のリスクに対する保険料としての金利、タイプ、償還日などのファクターについて、類似する所定範囲の特性を有する電子債権(として承認されたNFT)の群を一つの銘柄コードを有する銘柄として、電子債権承認機関において登録する機能を有する電子債権銘柄登録用スマートコントラクトをさらに有するのが好ましい。
【0011】
また、本発明の電子債権取引システムにおいては、前記電子債権銘柄登録用スマートコントラクトは、格付け、債務不履行のリスクに対する保険料としての金利、タイプ、償還日などの各要因を、所定要因対応値変換テーブルを用いて1桁の値に変換し、複数桁からなる銘柄コードを生成する機能を有するのが好ましい。
【0012】
また、本発明の電子債権取引システムにおいては、前記電子債権銘柄登録用スマートコントラクトにより電子債権承認機関において登録された電子債権の契約内容を開示する電子債権公開手段をさらに有するのが好ましい。
【0013】
また、本発明の電子債権取引システムにおいては、前記電子債権取引用スマートコントラクトは、銘柄ごとに時間をずらしてクロッシング処理を行う機能をさらに有するのが好ましい。
【0014】
また、本発明の電子債権取引システムにおいては、前記電子債権取引用スマートコントラクトは、各銘柄を同時にクロッシング処理し、銘柄間でクロッシング条件(金利指値)が合致しない場合、各銘柄の売りの状況を監視しながら、売りの銘柄間で玉の調整が可能であると判断できる場合に、流動性調整者による流動性調整のための銘柄の生成を待って約定に誘導する機能をさらに有するのが好ましい。
【0015】
また、本発明の電子債権取引システムにおいては、前記銘柄コードを構成する複数桁のうちの所定桁は、クロッシング処理の作動を制御するクロッシング作動条件桁として機能し、前記電子債権取引用スマートコントラクトは、買い注文の銘柄の銘柄コードにおける前記クロッシング作動条件桁に“クロッシング処理の作動条件無指定”に相当する所定値以外の値が設定されている場合、当該銘柄コードを条件付き銘柄コードとして認識し、買い注文の銘柄に対応する売り注文の銘柄の当該銘柄コードの前記クロッシング作動条件桁に設定された値が合致しないときには、クロッシング処理を行わないように制御する機能をさらに有するのが好ましい。
【0016】
また、本発明の電子債権取引システムにおいては、前記電子債権取引用スマートコントラクトは、売り方側から前記変換比率の設定を受け付けた場合、前記変換比率を用いて変換した売り方側の売り注文の銘柄の前記銘柄コードにおける前記クロッシング作動条件桁を、“クロッシング処理の作動条件無指定”に相当する所定値にして、クロッシング処理を行う機能をさらに有するのが好ましい。
【0017】
また、本発明の電子債権取引システムにおいては、STOを管理する機能を有するSTO管理用スマートコントラクトをさらに有し、前記STO管理用スマートコントラクトは、発行済STOの金額と同額の電子債権が設定(担保的に確保)されていることを確認し、発行済STOを構成する一部の電子債権が償還されたとき、当該電子債権の償還に伴う新たな電子債権の補充を自動的に行う機能を有するのが好ましい。
【0018】
また、本発明の電子債権取引システムにおいては、前記STO管理用スマートコントラクトは、発行済STOを構成する一部の電子債権が償還された場合において、電子債権の償還に伴う新たな電子債権の補充が行われない場合に、所定の警報をトークン発行体等に通知する機能をさらに有するのが好ましい。
【0019】
また、本発明によるクレジットサービス提供システムは、上記本発明のいずれかの電子債権取引システムを用いたクレジットサービス提供システムであって、前記NFT生成用スマートコントラクトは、クレジット会社などの金融機関による、クレジットカード利用者の販売者(販売店、販売会社)へ支払うべき代金を立て替えた、立替分の債権に基づいて、ブロックチェーンを用いたデジタル契約として、契約に基づく支払金額(支払い対象となる資産の種類、元金及び債務不履行のリスクに対する保険料としての金利)、契約に基づく支払金額の納付先の前記支払金額受付用スマートコントラクトのアドレスが指定されたNFTを生成することを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、債務者、債権者の一方のみや事業主でない個人であっても、簡易に電子債権として利用可能で、債権者が債権を早期に資金化でき、電子債権の発行コストを低減するとともに、STO化を容易にし、STOの小口販売化による採算性を向上させ、STO購入者は金利を得ることができ、さらには、クレジット会社などの金融機関の立替の清算リスクを抑え、かつ、立替分の清算リスクに備える手数料を低減することの可能な電子債権取引システム及びそれを用いたクレジットサービス提供システムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態にかかる電子債権取引システムの構成を概念的に示すブロック図である。
図2図1の電子債権取引システムにおけるNFT生成用スマートコントラクトの構成及び機能を示す説明図である。
図3図1の電子債権取引システムにおける支払金額受付用スマートコントラクトの構成及び機能を示す説明図である。
図4図1の電子債権取引システムにおける電子債権承認用スマートコントラクトの構成及び機能を示す説明図である。
図5図1の電子債権取引システムにおける支払金額送付用スマートコントラクトの構成及び機能を示す説明図である。
図6図1の電子債権取引システムにおける電子債権売注文発注用スマートコントラクトの構成及び機能を示す説明図である。
図7図1の電子債権取引システムにおける電子債権取引用スマートコントラクトの構成及び機能の一部を示す説明図である。
図8図1の電子債権取引システムにおける電子債権取引用スマートコントラクトの構成及び機能の続きを示す説明図である。
図9図1の電子債権取引システムにおける電子債権STO化用スマートコントラクトの構成及び機能を示す説明図である。
図10図1の電子債権取引システムにおけるNFT償還用スマートコントラクトの構成及び機能を示す説明図である。
図11図1の電子債権取引システムにおける電子債権買注文条件指定受付用スマートコントラクトの構成及び機能を示す説明図である。
図12図1の電子債権取引システムにおける電子債権銘柄登録用スマートコントラクトの構成及び機能を示す説明図である。
図13図1の電子債権取引システムにおける電子債権承認申請用スマートコントラクトの構成及び機能を示す説明図である。
図14図1の電子債権取引システムにおける電子債権公開手段の構成及び機能を示す説明図である。
図15図1の電子債権取引システムにおけるSTO管理用スマートコントラクトの構成及び機能を示す説明図である。
図16図1の電子債権取引システムを用いた処理の流れの一部を示す説明図である。
図17図1の電子債権取引システムを用いた処理の流れの他部を示す説明図である。
図18図1の電子債権取引システムを用いた処理の流れのさらに他部を示す説明図である。
図19図1の電子債権取引システムを用いた処理の流れのさらに他部を示す説明図である。
図20図1の電子債権取引システムを用いた処理の流れのさらに他部を示す説明図である。
図21図1の電子債権取引システムを用いた売掛債権を譲渡し、資金化する処理の流れの一例を概念的に示す説明図である。
図22図1の電子債権取引システムを用いた売掛債権の電子債権化及び電子債権のSTO化を含む全体の処理の一例を概念的に示す説明図である。
図23】現在の電子記録債権を用いた売掛債権を譲渡し、資金化する処理の流れの一例を概念的に示す説明図である。
図24】ファクタリングによる売掛債権を譲渡し、資金化する処理の流れの一例を概念的に示す説明図である。
図25】電債型ファクタリングによる売掛債権を譲渡し、資金化する処理の流れの一例を概念的に示す説明図である。
図26図1の電子債権取引システムを用いたクレジットサービス提供システムの構成を概念的に示すブロック図である。
図27図26のクレジットサービス提供システムに特有のNFT生成用スマートコントラクトの構成及び機能を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
実施形態の説明に先立ち、本発明を導出するに至った経緯及び本発明の作用効果について説明する。
【0023】
(1)電子債権
現在、電子債権として、電子記録債権がある。
(1-1)電子記録債権
電子記録債権は、従来の商流における契約書・請求書など紙媒体であった債権に代わり、電子債権記録機関として指定された企業が、債権者と債務者双方からの窓口金融機関を経由した請求により、電子債権として記録原簿に記録することで発生し、資金調達業者などが扱う金銭債権である。
銀行が融資できない(高金利・短期)債権や、銀行からの融資を受けて購入することを所望しないリース物の(低金利・長期)債権などが電子記録債権として流通し、償還期間が1か月程度のものから2年など長期にわたるものがある。
電子記録債権は、まとめてファンド(投資・運用する商品)化され、個人などへの分割や、転売が行われる。
電子記録債権は、権利内容が電子的に記録されるため、書面の作成・交付・保管に要するコストや盗難・紛失のリスクや、二重譲渡のリスクを低減できるなどの利点がある。
【0024】
(1-2)電子記録債権とファクタリングの相違点
現在の電子債権(電子記録債権)と、ファクタリング(売掛債権の買い取り)は、いずれもシステム上で売掛債権を譲渡し、早期資金化するために用いられる点では共通するが、次の点で相違する。
【0025】
(1-2-1)電子記録債権を用いた売掛債権の資金化
例えば、図23に示すように、孫請の納入企業が売掛先である子請の支払企業に商品を納入し、子請の支払企業に対し売掛債権を有し、子請の支払企業は売掛先である支払企業に商品を納入し、売掛先である支払企業に対し売掛債権を有している。売掛先である支払企業、子請の支払企業は支払債務を有しているものとする。
電子記録債権を用いた売掛債権の資金化においては、まず、売掛先の支払企業と子請の支払企業が窓口銀行を経由して電子債権記録機関に売掛債権の記録を請求することで、電気債権記録機関が記録原簿に売掛債権を記録し、電子記録債権が生成される。また、子請の支払企業と孫請の納入企業が窓口銀行を経由して孫請の納入企業への電子記録債権の譲渡を請求すると、電気債権記録機関が記録原簿に売掛債権の譲渡を記録し、電子記録債権が孫請の納入企業に譲渡される。電子記録債権の期日が到来したときに、孫請の納入企業に対し窓口銀行を経由して金額が支払われる。
電子記録債権(債権のデジタル化による移動概念)は、契約締結が簡単であるものの、会計処理がわかり難く、貸し倒れによる支払いリスクがある。銀行は低リスク物を扱うことが多く、高リスク物については電子記録債権の保有者がリスクを負う。
【0026】
(1-2-2)ファクタリングによる売掛債権の資金化
例えば、図24に示すように、納入企業が売掛先の支払企業に商品を納入し、売掛債権を有しているものとする。
ファクタリングによる売掛債権の資金化においては、ファクタリング会社が納入企業の売掛債権を債権金額より割引いた額で買い取る。納入企業は割引かれた額の現金を得る。債権の期日が到来したとき、支払企業が納入企業に対し債務金額を支払う。納入企業が支払企業から支払われた金額をファクタリング会社に対し支払う。但し、債権期日が到来しても支払企業がデフォルトして債務金額を支払わなかった場合、納入企業がファクタリング会社に対する金額の支払義務は生じず、ファクタリング会社がリスクを負う。
ファクタリングは、契約締結に手間(時間)がかかるが、審査が緩く、また貸し倒れによる支払いリスクがない。銀行が扱えないような高リスク物が多く、ファクタリング会社(銀行の子会社である場合がある)がリスクを負う。
なお、ファクタリング会社が銀行の子会社である場合、売掛債権の買い取りに伴う融資は親会社の銀行が行う。
【0027】
(1-2-3)電債型ファクタリングによる売掛債権の資金化
また、銀行が電子記録債権を買取り、前払い融資を行う電債型ファクタリングがある。
電債型ファクタリングは、電子記録債権での資金調達の審査レベルが高く資金調達が不安定である点に関し、ファクタリングの資金調達における審査が緩い点を活用した、売掛債権の資金化方法である。
電債型ファクタリングでは、例えば、図25に示すように、通常処理の間に、決済系のサービス企業(A)を介入させる。
決済系のサービス企業(A)は、支払企業から(買掛)債務のデータを受け取り、電子債権記録機関(B)に対して、電子記録債権の発生情報を提供し、同電子記録の請求を行うと同時に納入企業への当該電子記録債権について、同明細を通知する。
また、決済系のサービス企業(A)は上記の記録請求に従い発生した電子記録債権を納入企業に代理して受け取り、ファクタリング会社に譲渡すると同時に、当該電子記録債権をファクタリング会社へ譲渡する情報を電子債権記録機関(B)に対して提供し、同電子記録の請求を行う。
納入企業は、次のa.、b.のいずれかを選択する。
a.期日前の資金化(割引)を希望する場合は、ファクタリング会社から割引代金を受け取る。
b.割引による資金を受け取る必要がない場合は、支払企業による電子記録債権の決済資金を原資としてファクタリング会社から期日に代金を受領する。
なお、上記b.(期日に代金を受領)を選択した場合であっても、途中でa.(期日前に割引代金を受領)に切り替えることは可能である。
【0028】
(1-3)電子記録債権の課題
電子記録債権を利用するためには、事前の申し込みが必要であることや、手数料がかかること、債権者と債務者双方が電子債権記録機関に「発生記録」の請求をしないと電子記録債権が発生しないこと、会計処理が煩雑化すること、事業主でない個人は利用できないこと、小規模事業者にはコスト削減についての利点は得られないことなどの問題がある。
現在の電子記録債権においては、期日等に銀行間の登録口座で支払い処理が行われるが、支払い処理では基本的に取引に伴う資金決済を行うための銀行間ネットワークシステムを使うことになる。このため、現在の電子記録債権を後述のようにSTO化したとして、現金化するに際し、銀行口座からの引き出しを想定すると、相応の手数料が必要となる。
銀行間ネットワークシステムの利用コストは、少額扱いの手数料については、半額近くに引き下げられてはいるものの、小口サービス化をするための大きなネックとなると考えられる。
仮に、投資行動をSTOで行ったとしても、現金処理コストを限りなくゼロにしなければ、STOの小口取引での採算があわないと考えられる。
【0029】
(2)電子債権の課題の改善策について
そこで、本件発明者は、この問題点を解決する方策について、次のように、考察、検討した。
【0030】
(2-1)NFTの生成及び電子債権としての承認、電子債権のSTO化
そして、本件発明者は、銀行を窓口金融機関として経由し、電子債権記録機関に記録することで発生する現在の電子債権類の取引に代えて、従来の紙契約等の債権に代わるものとしてブロックチェーンを用いたデジタル契約(NFT型)を生成し、生成したNFTを電子債権として承認し、ブロックチェーンを用いたNFT型契約をベースとして承認した電子債権を、所定のファクターの特性を有する電子債権の群を一つの銘柄として扱い、同一銘柄の電子債権の群に対するクロッシング処理を施し、購入した電子債権に基づきSTOを発行できるようにすることで、電子債権をSTO化し、STO化した電子債権を、証券会社・銀行を介して、小口化し、個人投資家などに販売・取引を行うことができるようにすることを考えた。
そのために、本件発明者は、まず、当該NFTがデジタル契約として有効であることを保証する所定の電子債権承認機関が、ブロックチェーン内に記録された契約内容などを確認し、電子債権として承認する手続を行うようにすることを考えた。
【0031】
ブロックチェーンを用いたNFT型契約であれば、2社間の鍵承認により、2社が承認した本物契約であることを証明できる。
また、ブロックチェーンを用いたNFT型契約であれば、電子債権についての担保設定の有無などは、ブロックチェーン内の担保管理により確認が容易となる。担保の設定がない場合は、保有者の電子債権を移転できる。
なお、電子債権の移転(転売)においては、ステーブルコインやデジタル通貨での支払いとし、その他、銀行の口座によるAPI処理でも対処できるようにすることを考えた。
また、当該NFTでは、債務者が契約に基づく支払金額(元金及び債務不履行のリスクに対する保険料としての金利であって、デジタル通貨など指定されたもの)を所定スマートコントラクトのアドレスに対して送付することを考えた。
また、当該NFTの電子債権としての承認に際しては、NFT内に電子債権承認機関の番号と、管理番号(連番)を記録するとともに、電子債権として承認した場合に、債務者から所定スマートコントラクトのアドレスに送付された金額は、電子債権として承認されたNFTの所有者が受け取れるようにすることを考えた。
なお、債務者が債務不履行となる場合のリスクを鑑み、電子債権として承認するNFTには、債務者の契約に基づく支払金額として、元金の他に、債務不履行のリスクに対する保険料としての金額(金利)を組み込むようにすることを考えた。
【0032】
(2-2)電子債権として承認するNFTの金利低減方策
次に、本件発明者は、電子債権として承認するNFTの金利を低減する方策を考えた。
電子債権(として承認するNFT)は、本来はファクタリングでのデフォルト(債務不履行)リスクの高い商品であるため、高金利の前払い保険料がコストとして設定される。
しかるに、本件発明者は、後払い保険の概念を適用し、電子債権(として承認するNFT)に支払金額として、元金の他に前払い保険料相当を金利として設定するとともに、償還時に全ての債務不履行となった電子債権(として承認されたNFT)における当該債務者の支払うべき支払金額を全ての電子債権(として承認されたNFT)における保険料を用いて補填し、全ての電子債権(として承認されたNFT)における保険料の合計額と、償還時に全ての債務不履行となった電子債権(として承認されたNFT)に費やした金額(保険コスト)との差額(債務不履行分の補填に用いなかった保険料)の一部を債務不履行となっていないそれぞれの電子債権(として承認されたNFT)の債務者に戻すことで金利を低減することを考えた。
なお、債務不履行分の補填に用いなかった保険料の他部は、保険料の積立などに用いるようにすることを考えた。
【0033】
(2-3)電子債権(として承認されたNFT)をSTO化するための取引処理(クロッシング処理)
また、本件発明者は、電子債権承認機関によって電子債権として承認されたNFTを、取引機能(注文としてのクロッシング処理)に指値売り(契約に基づく支払金額と、債務不履行のリスクに対する保険料としての金利を指定したもの)として引き渡し、買い方があれば約定させ、購入金額と電子債権(として承認されたNFT)との決済・清算を自動的に行うようにすることを考えた。
【0034】
(2-3-1)電子債権取引におけるクロッシング処理における電子債権のファクターの分解及び分解したファクターに基づく電子債権のグループ化による銘柄の設定、分類、買い方側の注文条件の実装
また、本件発明者は、電子債権(として承認されたNFT)をSTO化するために、電子債権取引のクロッシング処理において、電子債権のファクターの分解及び分解したファクターに基づく電子債権のグループ化による銘柄の設定、分類を考えた。
より詳しくは、電子債権の売り手側においては、電子債権のファクターである格付け、金利、タイプ、償還日などを分解し、分解したそれぞれのファクターについて類似する所定範囲の特性を有する電子債権ごとにグループ化し、グループ化した電子債権の群を一つの銘柄として設定し、分類する。また、電子債権の買い手側となる、STO発行側においても、購入した電子債権に基づきSTOを発行できるように、銘柄単位でSTOを生成するようにし、銘柄単位に、各々の電子債権を組み込むようにする。
また、本件発明者は、電子債権の買い方側の注文条件を実装することを考えた。
例えば、格付けの範囲、債務不履行のリスクに対する保険料としての金利、タイプ、償還日などのファクターについて、類似する所定範囲の特性を有する電子債権の群を一つの銘柄として扱い、同一銘柄に対して、買い方側の注文条件として金利や量(金額に相当)を指定できるようにする。
【0035】
(2-3-2)注文条件に該当した場合
銘柄が、買い方側の当該注文条件に該当した場合に約定させ、当該銘柄に属する電子債権を割り振る。その場合に売り方側の注文において、当該銘柄に属する電子債権間で若干の調整額(当該銘柄に属する電子債権それぞれ固有の特性(基本的には格付け)の差異に基づく、変換比率(取引対象である標準物と実際の受渡しに用いられる受渡適格銘柄との交換比率))などを設定でき、金利による割引率の調整などを行うことができるようにする。
なお、銘柄を構成する電子債権の群の間で流動性が不足する場合等には、取引機能を有する自己が間に入り、注文調整を行うようにする。
【0036】
(2-3-3)定期的に償還される電子債権の随時調達
これら電子債権取引における取引者は、特に買い方側はSTOを扱うファンド(投資・運用商品を扱う業者、集団)などであり、ファンド(投資・運用商品)をなすSTOでは、構成する電子債権が定期的に償還される。このため、償還された電子債権を補う目的で、ファクターについて同様の特性を有する電子債権をクロッシングより随時調達できるようにする必要がある。
また、クロッシングで扱う銘柄は、金融機関ネットワークで簡単に登録できるものとし、電子債権を銘柄に登録する場合は、電子債権の妥当性などの審査を行うようにする。
【0037】
そして、本件発明者は、上述の電子債権取引について、ブロックチェーンと、取引機能、清算機能、決済機能を実装したスマートコントラクトにて自動処理を行うようにすることを考えた。
【0038】
(3)本件発明者が考察、検討する電子債権のクレジットサービスへの活用
(3-1)クレジット会社などの金融機関の決済系サービスへの電子債権の活用についての考察、検討
クレジット会社の立替払い契約も電子債権にすることは可能と考えられる。
本件発明者は、電子債権をクレジット会社などの金融機関の決済系サービスへ活用することについて考察、検討した。
【0039】
(3-1-1)クレジット会社などの金融機関の決済系サービスの種類
クレジット会社などの金融機関の決済系サービスとしては、クレジットカード、クレジットカードにデビットの機能が付加されたクレジットデビット(VISAデビット、JCBデビット)がある。
クレジットデビットで決済した場合は、クレジットカードに付加されたデビット機能により、銀行等の金融機関側のデビットカード利用者(消費者)口座の引き落としが決済の都度即時に行なわれる。これに対し、クレジットカードで決済した場合は、銀行引き落としが定期的であり、所定期間(例えば、1か月以上)が経過するまで、販売者(販売店、販売会社)への購入代金をクレジット会社などの金融機関が立て替える。
そして、クレジット会社などの金融機関には、クレジットカード利用者(消費者)の購入代金の立替分についての、クレジットカード利用者(消費者)が支払い不能となって清算できなくなるという、清算リスクが内在する。
このため、クレジットでの決済の場合、立替分の清算リスクに備えて手数料が高く設定される。
【0040】
(3-1-2)電子債権をクレジット会社などの金融機関のクレジットサービスへ活用するための方策
しかるに、本件発明者は、クレジット会社などの金融機関のクレジットサービスに関し、決済後、クレジット会社などの金融機関の立替分をできる限り短期に清算できるようにするとともに、立替に伴う手数料を低減する方策について考察、検討した。
そして、本件発明者は、クレジット会社などの金融機関がクレジットカード利用者(消費者)に支払いを求めることのできる、購入代金の立替分の債権を有している場合、その立替分の債権を電子化した電子債権として処理(立替分の債権に基づきNFTを生成し、生成したNFTを電子債権として承認)し、電子債権取引システムに電子債権として承認されたNFTを引き渡して、上述した電子債権取引のクロッシング処理を経て、STOとして証券会社側で小口化されて、個人などの投資家に販売されるようにすることを考えた。クレジットの立替分を電子債権として扱えば、クレジットカード発行体であるクレジット会社などの金融機関の立替分の清算リスクを抑え、かつ、立替分の清算リスクに備える手数料を低減することが可能となる、と考えられる。
【0041】
(3-1-3)クレジット会社などの金融機関のクレジットサービスへの電子債権を活用するための具体的な処理手順
本件発明者が考察、検討したクレジット会社などの金融機関のクレジットサービスへの電子債権を活用するための具体的な処理手順は、次の通りである。
【0042】
(3-1-3-1)購入代金立替分の債権についての、NFTの作成、電子債権としての承認、電子債権として承認されたNFTの販売
本件発明者は、まず、クレジット会社などの金融機関による、クレジットカード利用者の販売者(販売店、販売会社)へ支払うべき代金を立て替えた、立替分の債権に基づいて、ブロックチェーンを用いたデジタル契約として、契約に基づく支払金額(元金及び債務不履行のリスクに対する保険料としての金利)、契約に基づく支払金額の納付先のアドレスが指定されたNFTを生成する。
そして、NFTを電子債権として承認されるようにし、電子債権として承認されたNFTを、STOとして証券会社などを介して投資家等に販売し、販売額が、デジタル通貨などを用いて、クレジット会社などの金融機関(の指定アドレスや口座などに)に支払われるようにする。
【0043】
(3-1-3-2)期日到来による電子債権として承認されたNFTの償還
そして、本件発明者は、電子債権として承認されたNFTの期日(清算日)が到来したときには、
・NFT発行体(クレジット会社などの金融機関など)が、電子債権として承認されたNFTを投資家から回収し、クレジットカード利用者の銀行口座から引き落とされる支払金額に相当する分をデジタル通貨などで準備し、NFTを管理しているスマ-トコントラクトに当該デジタル通貨を移動し、償還(該当NFTを失効させ、デジタル通貨に変換)することを考えた。
・投資家には、NFTへの投資分を、自動的に清算用のデジタル通貨(実際には通貨ステーブル類)へと変換することを考えた。これにより、NFT発行体(クレジット会社などの金融機関など)へ投資した投資家の資金は回収されることになる。
なお、STO等を投資家もしくは代理業者のアドレスに保管している場合は、ブロックチェーンが直接スマ-トコントラクトと処理できる特性であればスマ-トコントラクト、もしくはスマ-トコントラクトと同等の機能を有する処理手段により、そのアドレスにおいてSTO等の属性が消えるとともに、該当のデジタル通貨が記録されるようにすることを考えた。
つまり、販売者(販売店、販売会社)がクレジットカード利用者(消費者)に支払いを求めることのできる債権を有している場合、その債権に基づいてクレジット会社などの金融機関が生成体としてNFTを生成し、生成したNFTを電子債権として承認されるようにし、電子債権として承認されたNFTを、上述した電子債権取引のクロッシング処理を経て、STOとして、証券会社などを介して一般に販売し、電子債権として承認されたNFTの販売金額(金利分を差し引いたもの)をクレジット会社などの金融機関が取得するようにすることを考えた。
そして、電子債権として承認されたNFTの期日が到来したときには、クレジット会社などの金融機関が電子債権として承認されたNFTを回収し、電子債権として承認されたNFTの額に相当する分のデジタル通貨がNFT購入者に支払われるようにし、NFTは金利のみ処理されて償還(販売者(販売店、販売会社)に支払い金が渡されるのでなく、NFT購入者に金利が加算されてデジタル通貨に変換)されるようにすることを考えた。
【0044】
このように、本件発明者は、ブロックチェーン等の分散技術やスマートコントラクトを用いて、債務者、債権者の一方のみや事業主でない個人であっても、簡易に電子債権として利用可能で、債権者が債権を早期に資金化でき、電子債権の発行コストを低減するとともに、STO化を容易にし、STOの小口販売化による採算性を向上させ、STO購入者は金利を得ることができ、24時間取引、電子債権化における手数料の大幅削減により、電子債権の利用対象可能となる企業を、既存の電子記録債権を利用することについて利点の得られなかった小規模事業者にまで拡張でき、電子債権の活用範囲を大幅に広げることができ、さらには、クレジット会社などの金融機関の立替の清算リスクを抑え、かつ、立替分の清算リスクに備える手数料を低減することの可能なシステムを構築すべく考察・検討を重ねた末、本発明の電子債権取引システム及びそれを用いたクレジットサービス提供システムを導出するに至った。
【0045】
本発明の電子債権取引システムは、トークン類(ブロックチェーン等の分散技術においてデジタルで定義される価値などの総称)、デジタル通貨、トークン類とデジタル通貨、もしくはトークン類同士、デジタル通貨同士など、あらゆる形態のデジタル資産間による取引を管理するための、少なくとも1種類のブロックチェーン等の分散技術における分散型台帳と、該分散型台帳に管理されるデジタル資産を用いた所定の処理を行うためのスマートコントラクトを備えて構築される、電子債権取引システムであって、(NFT発行体において、)ブロックチェーンを用いたデジタル契約として、契約に基づく支払金額(支払い対象となる資産の種類、元金及び債務不履行のリスクに対する保険料としての金利)、契約に基づく支払金額の支払先のスマートコントラクトのアドレスが指定されたNFTを生成する機能を有するNFT生成用スマートコントラクトと、契約に基づく支払金額の支払先アドレスを有し、債務者からの契約に基づく支払金額の送付を受け付ける機能を有する支払金額受付用スマートコントラクトと、前記NFT生成用スマートコントラクトにより生成されたNFTについての電子債権としての承認申請を行う機能を有する電子債権承認申請用スマートコントラクトと、電子債権承認機関において、前記NFT生成用スマートコントラクトにより生成されたNFTにおけるデジタル契約の内容を審査し、有効性が確認されたNFT内に、電子債権承認機関の番号と、管理番号、銘柄コードを記録して、電子債権として承認する機能を有する電子債権承認用スマートコントラクトと、前記支払金額受付用スマートコントラクトのアドレスに送付された支払金額を、電子債権(として承認されたNFT)の所有者のアドレスへ送付する機能を有する支払金額送付用スマートコントラクトと、電子債権(として承認されたNFT)の売り注文を指値(契約に基づく支払金額として、支払い対象となる資産の種類、元金及び債務不履行のリスクに対する保険料としての金利を指定したもの)で発注する機能を有する電子債権売注文発注用スマートコントラクトと、電子債権(として承認されたNFT)の注文について、所定のファクター(格付け、金利、タイプ、償還日など)の特性を有する電子債権(として承認されたNFT)の群を一つの銘柄として、同一銘柄の電子債権(として承認されたNFT)の群に対するクロッシング処理を行う機能を有する電子債権取引用スマートコントラクトと、証券会社等において、前記電子債権取引用スマートコントラクトによるクロッシング処理を介して購入された、銘柄単位の電子債権(として承認されたNFT)の群を有して構成されるSTOを生成する機能を有する電子債権STO化用スマートコントラクトと、償還日が到来したとき、電子債権(として承認されたNFT)を償還する機能を有するNFT償還用スマートコントラクトと、を有し、前記NFT生成用スマートコントラクトは、NFTの生成に際し、契約に基づく支払金額として、支払い対象となる資産の種類、元金及び債務不履行のリスクに対する保険料としての金利の設定を受け付ける機能を有し、前記電子債権承認申請用スマートコントラクトは、(NFT発行体からの)前記NFT生成用スマートコントラクトにより生成されたNFTについての電子債権としての承認申請指示を受け付ける機能と、当該NFTについての電子債権承認申請を電子債権承認機関に通知する機能と、を有し、前記NFT償還用スマートコントラクトは、電子債権(として承認されたNFT)の償還日が到来したとき、当該電子債権(として承認されたNFT)を失効させるとともに、前記支払金額受付用スマートコントラクトのアドレスに送付された、当該電子債権(として承認されたNFT)における償還時の支払金額を、前記支払金額送付用スマートコントラクトに、当該電子債権(として承認されたNFT)の所有者のアドレスへ送付させる機能と、電子債権(として承認されたNFT)の償還日が到来したとき、全ての債務不履行となった電子債権(として承認されたNFT)における当該債務者の支払うべき支払金額を、全ての電子債権(として承認されたNFT)における保険料を用いて補填し、債務不履行となっていない当該電子債権(として承認されたNFT)における保険料から、債務不履行の補填に費やした分を差し引いた金額の一部を当該電子債権(として承認されたNFT)の債務者に戻す機能を有し、前記電子債権取引用スマートコントラクトは、前記電子債権売注文発注用スマートコントラクトにより発注された、電子債権(として承認されたNFT)の指値での売り注文に対し、買い方に対当する注文がある場合に約定させ、買い方の購入金額と電子債権(として承認されたNFT)との清算・決済を自動的に行う機能を有して構成されている。
【0046】
本発明の電子債権取引システムのように、(NFT発行体において、)ブロックチェーンを用いたデジタル契約として、契約に基づく支払金額(支払い対象となる資産の種類、元金及び債務不履行のリスクに対する保険料としての金利)、契約に基づく支払金額の支払先のスマートコントラクトのアドレスが指定されたNFTを生成する機能を有するNFT生成用スマートコントラクトと、NFT生成用スマートコントラクトにより生成されたNFTについての電子債権としての承認申請を行う機能を有する電子債権承認申請用スマートコントラクトと、電子債権承認機関において、前記NFT生成用スマートコントラクトにより生成されたNFTにおけるデジタル契約の内容を審査し、有効性が確認されたNFT内に、電子債権承認機関の番号と、管理番号、銘柄コードを記録して、電子債権として承認する機能を有する電子債権承認用スマートコントラクトと、を有して構成すれば、ブロックチェーンを用いたNFT型契約であれば、2社間の鍵承認により、2社が承認した本物契約であることを証明できることから電子債権の承認のための審査を簡易化でき、現在の電子債権記録機関で行う手続とは異なり、債権者と債務者の双方への確認が不要となる。また、電子債権として承認されたNFTは、電子記録債権とは異なり、債権者と債務者のうちの一方が利用申し込みの登録をすることなく利用することが可能となる。また、ブロックチェーンを用いたNFT型契約であれば、電子債権についての担保設定の有無などは、ブロックチェーン内の担保管理により確認が容易となる。担保の設定がない場合は、保有者の電子債権を移転できる。また、既存の紙ベースの債権では、二重担保問題など第三者対抗要件の面で管理(即ち、債権として信頼性を担保する確認など)が面倒であるが、ブロックチェーンデータ(NFTなど)はデータソースが一つであり、改竄ができないことにより、その技術を活用することで二重担保の危険性が無くなる。このため、債権をSTO化したとき、債権自体のリスクをSTOが請け負うことになるが、当該債権自体のリスク(無)がブロックチェーンデータにより明確になっていることで、STOのリスクを低減することが可能となる。また、スマートコントラクトを用いたブロックチェーンによるデータ記録方式がシステムの中核となることで、24時間の取引が可能となるとともに、処理が効率化され、それに伴いコスト面の優位性が上がり、既存の電子記録債権とは異なり、電子債権化における高手数料を大幅に削減可能となり、大型案件の債権のみならず、小型案件の債権であってもコストを吸収して、電子債権化することが可能となる。さらに、一連の作業がシステム化されるため、電子債権化するまでの時間を短縮することが可能となる。
【0047】
また、本発明の電子債権取引システムのように、NFT償還用スマートコントラクトが、電子債権(として承認されたNFT)の償還日が到来したとき、全ての電子債権(として承認されたNFT)における保険料の合計額と、償還時に全ての債務不履行となった電子債権(として承認されたNFT)に費やした金額(保険コスト)との差額(債務不履行分の補填に用いなかった保険料)の一部を債務不履行となっていないそれぞれの電子債権(として承認されたNFT)の債務者に戻す機能を有した構成とすれば、債権発行体による電子債権として承認されるNFTの金利を低減することが可能となる。
【0048】
また、本発明の電子債権取引システムのように、電子債権(として承認されたNFT)の売り注文を指値(契約に基づく支払金額として、支払い対象となる資産の種類、元金及び債務不履行のリスクに対する保険料としての金利を指定したもの)で発注する機能を有する電子債権売注文発注用スマートコントラクトと、電子債権(として承認されたNFT)の注文について、所定のファクター(格付け、金利、タイプ、償還日など)の特性を有する電子債権(として承認されたNFT)の群を一つの銘柄として、同一銘柄の電子債権(として承認されたNFT)の群に対するクロッシング処理を行う機能を有する電子債権取引用スマートコントラクトと、を有し、電子債権取引用スマートコントラクトは、前記電子債権売注文発注用スマートコントラクトにより発注された、電子債権(として承認されたNFT)の指値での売り注文に対し、買い方に対当する注文がある場合に約定させ、買い方の購入金額と電子債権(として承認されたNFT)との清算・決済を自動的に行う機能を有するように構成すれば、電子債権をSTO化し易くすることが可能となる。また、電子債権(として承認されたNFT)の売り方は、クロッシング処理を介して電子債権を即時に換金することが可能となる。
また、本発明の電子債権取引システムのように、電子債権取引について、ブロックチェーンと、取引機能、清算機能、決済機能を実装したスマートコントラクトにて自動処理を行うようにすると、現在の電子記録債権のような銀行窓口を経由した手続が不要となる。
そして、本発明の電子債権取引システムのように、証券会社等において、前記電子債権取引用スマートコントラクトによるクロッシング処理を介して購入された、銘柄単位の電子債権(として承認されたNFT)の群を有して構成されるSTOを生成する機能を有する電子債権STO化用スマートコントラクトを有して構成したことにより、電子債権がSTO化される。このとき、電子債権として承認されるNFT金利が低減されることから、STOの小口販売化による採算性を向上させることができる。また、STO購入者は金利を得ることが可能となる。
また、STOの元となる電子債権の情報がブロックチェーンに記録されていることで、STOを構成する債権の内容を個別企業の契約時に遡って確認することが可能となるため、STOの生成における資産構成の透明性が向上する。
【0049】
また、本発明の電子債権取引システムは、好ましくは、前記電子債権取引用スマートコントラクトによる電子債権(として承認されたNFT)の注文についてのクロッシング処理に際し、電子債権(として承認されたNFT)の買い方側の注文条件として、格付け、債務不履行のリスクに対する保険料としての金利、タイプ、償還日などのファクターについて、類似する所定範囲の特性を有する電子債権(として承認されたNFT)の群としての銘柄に対する金利や量(金額に相当)の指定を受け付ける機能を有する電子債権買注文条件指定受付用スマートコントラクトをさらに有して構成されている。
このようにすれば、クロッシング処理をより具現化することが可能となる。
【0050】
また、本発明の電子債権取引システムは、好ましくは、前記電子債権取引用スマートコントラクトは、前記電子債権売注文発注用スマートコントラクトにより発注された、格付け、債務不履行のリスクに対する保険料としての金利、タイプ、償還日などのファクターについて、類似する所定範囲の特性を有する電子債権(として承認されたNFT)の群としての銘柄に属する電子債権(として承認されたNFT)の指値での売り注文が、買い方側の当該注文条件に該当した場合に約定させ、当該銘柄に属する(として承認されたNFT)を割り振って買い方側の買い注文と対当させる機能と、売り注文の当該銘柄に属する電子債権(として承認されたNFT)それぞれ固有の(格付け、債務不履行のリスクに対する保険料としての金利、タイプ、償還日などの)特性の差異に基づく、変換比率(取引対象である標準物と実際の受渡しに用いられる受渡適格銘柄との交換比率)の売り方側からの設定を受け付ける機能と、設定を受け付けた変換比率に基づき、金利による割引率の調整などを行う機能と、を有して構成されている。
このようにすれば、クロッシング処理をより具現化することが可能となる。そして、ファクターの特性が相違しても、電子債権として承認されるNFTをクロッシングにより約定、清算させ易くすることが可能となる。
【0051】
また、本発明の電子債権取引システムは、好ましくは、前記電子債権取引用スマートコントラクトによるクロッシング処理で扱う銘柄として、格付け、債務不履行のリスクに対する保険料としての金利、タイプ、償還日などのファクターについて、類似する所定範囲の特性を有する電子債権(として承認されたNFT)の群を一つの銘柄コードを有する銘柄として、電子債権承認機関において登録する機能を有する電子債権銘柄登録用スマートコントラクトをさらに有して構成されている。
このようにすれば、クロッシング処理における銘柄を定めることが可能となる。
【0052】
また、本発明の電子債権取引システムは、好ましくは、前記電子債権銘柄登録用スマートコントラクトは、格付け、債務不履行のリスクに対する保険料としての金利、タイプ、償還日などの各要因を、所定要因対応値変換テーブルを用いて1桁の値に変換し、複数桁からなる銘柄コードを生成する機能を有する。
このようにすれば、ファクターについて類似する特性を有する電子債権(として承認されたNFT)ごとにグループ化し、グループ化した電子債権(として承認されたNFT)の群を一つの銘柄とするための処理を効率良く行うことが可能となる。
【0053】
また、本発明の電子債権取引システムは、好ましくは、前記電子債権銘柄登録用スマートコントラクトにより電子債権承認機関において登録された電子債権の契約内容を開示する電子債権公開手段をさらに有する。
このようにすれば、STOを構成するための電子債権(として承認されたNFT)の購入を所望する買い手(STO生成体(証券会社))に、取引に先立ち有用な情報を提供することが可能となる。
【0054】
また、本発明の電子債権取引システムは、好ましくは、前記電子債権取引用スマートコントラクトは、銘柄ごとに時間をずらしてクロッシング処理を行う機能をさらに有する。
このようにすれば、注文板をつくるに際し、約定を最大化するように、電子債権として承認されたNFT発行体側の売り注文がSTO生成体(証券会社)側の買い注文に対して不足する銘柄における第三者の自己による流動性調整のための処理時間を確保し易くなり、クロッシング処理を効率的に行うことが可能となる。
【0055】
また、本発明の電子債権取引システムは、好ましくは、前記電子債権取引用スマートコントラクトは、各銘柄を同時にクロッシング処理し、銘柄間でクロッシング条件(金利指値)が合致しない場合、各銘柄の売りの状況を監視しながら、売りの銘柄間で玉の調整が可能であると判断できる場合に、流動性調整者による流動性調整のための銘柄の生成を待って約定に誘導する機能をさらに有する。
このようにすれば、電子債権として承認されたNFT発行体側の売り注文がSTO生成体(証券会社)側の買い注文に対して不足する場合における第三者の自己による流動性調整の必要のない銘柄についてクロッシング処理を迅速に行うことができ、全体のクロッシング処理をより効率的に行うことが可能となる。
【0056】
また、本発明の電子債権取引システムは、好ましくは、前記銘柄コードを構成する複数桁のうちの所定桁は、クロッシング処理の作動を制御するクロッシング作動条件桁として機能し、前記電子債権取引用スマートコントラクトは、買い注文の銘柄の銘柄コードにおける前記クロッシング作動条件桁に“クロッシング処理の作動条件無指定”に相当する所定値以外の値が設定されている場合、当該銘柄コードを条件付き銘柄コードとして認識し、買い注文の銘柄に対応する売り注文の銘柄の当該銘柄コードの前記クロッシング作動条件桁に設定された値が合致しないときには、クロッシング処理を行わないように制御する機能をさらに有する。
このようにすれば、電子債権の取引において、銘柄に備わる所定要因に応じて、クロッシング処理作動の制御を行うことが可能となる。
【0057】
また、本発明の電子債権取引システムは、好ましくは、前記電子債権取引用スマートコントラクトは、売り方側から前記変換比率の設定を受け付けた場合、前記変換比率を用いて変換した売り方側の売り注文の銘柄の前記銘柄コードにおける前記クロッシング作動条件桁を、“クロッシング処理の作動条件無指定”に相当する所定値にして、クロッシング処理を行う機能をさらに有する。
このようにすれば、電子債権として承認されたNFT発行体側の売り注文の銘柄が、クロッシング処理作動について条件付きの特性に該当しても、STO生成体(証券会社)側の買い注文の銘柄のクロッシング処理作動についての条件付きの特性の有無の如何にかかわらず、変換比率の設定による流動性の調整を円滑に行うことが可能となる。
【0058】
また、本発明の電子債権取引システムは、好ましくは、STOを管理する機能を有するSTO管理用スマートコントラクトをさらに有し、前記STO管理用スマートコントラクトは、発行済STOの金額と同額の電子債権が設定(担保的に確保)されていることを確認し、発行済STOを構成する一部の電子債権が償還されたとき、当該電子債権の償還に伴う新たな電子債権の補充を自動的に行う機能を有する。
このようにすれば、STOを維持するためのSTO生成体(証券会社)の作業負担を軽減することが可能となる。
【0059】
また、本発明の電子債権取引システムは、好ましくは、前記STO管理用スマートコントラクトは、発行済STOを構成する一部の電子債権が償還された場合において、電子債権の償還に伴う新たな電子債権の補充が行われない場合に、所定の警報をトークン発行体等に通知する機能をさらに有する。
このようにすれば、STOを構成する一部の電子債権が償還され、償還された電子債権分の自動補充が何らかの原因でできない場合であっても、STO生成体(証券会社)はSTOを維持するための措置(電子債権の補充)を取ることができ、STOを構成する電子債権が不足する等の問題を未然に回避することが可能となる。
【0060】
また、本発明のクレジットサービス提供システムは、上記本発明のいずれかの電子債権取引システムを用いたクレジットサービス提供システムであって、前記NFT生成用スマートコントラクトは、クレジット会社などの金融機関による、クレジットカード利用者の販売者(販売店、販売会社)へ支払うべき代金を立て替えた、立替分の債権に基づいて、ブロックチェーンを用いたデジタル契約として、契約に基づく支払金額(支払い対象となる資産の種類、元金及び債務不履行のリスクに対する保険料としての金利)、契約に基づく支払金額の納付先の前記支払金額受付用スマートコントラクトのアドレスが指定されたNFTを生成するように構成されている。
このようにすれば、クレジット会社などの金融機関の立替の清算リスクを抑え、かつ、立替分の清算リスクに備える手数料を低減することが可能となる。
【0061】
従って、本発明によれば、債務者、債権者の一方のみや事業主でない個人であっても、簡易に電子債権として利用可能で、債権者が債権を早期に資金化でき、電子債権の発行コストを低減するとともに、STO化を容易にし、STOの小口販売化による採算性を向上させ、STO購入者は金利を得ることができ、24時間取引、電子債権化における手数料の大幅削減により、電子債権の利用対象可能となる企業を、既存の電子記録債権の利用では利点の得られなかった小規模事業者にまで拡張でき、電子債権の活用範囲を大幅に広げることができ、さらには、クレジット会社などの金融機関の立替の清算リスクを抑え、かつ、立替分の清算リスクに備える手数料を低減することの可能な電子債権取引システム及びそれを用いたクレジットサービス提供システムが得られる。
【0062】
以下、本発明の実施形態について、適宜、図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施形態にかかる電子債権取引システムの構成を概念的に示すブロック図である。
本実施形態の電子債権取引システム1は、トークン類(ブロックチェーン等の分散技術においてデジタルで定義される価値などの総称)、デジタル通貨、トークン類とデジタル通貨、もしくはトークン類同士、デジタル通貨同士など、あらゆる形態のデジタル資産間による取引を管理するための、少なくとも1種類のブロックチェーン等の分散技術における分散型台帳と、該分散型台帳に管理されるデジタル資産を用いた所定の処理を行うためのスマートコントラクトを備えて構築されるシステムであって、例えば、図1に示すように、NFT生成用スマートコントラクト11と、支払金額受付用スマートコントラクト12と、電子債権承認用スマートコントラクト13と、支払金額送付用スマートコントラクト14と、電子債権売注文発注用スマートコントラクト15と、電子債権取引用スマートコントラクト16と、NFT償還用スマートコントラクト17と、電子債権買注文条件指定受付用スマートコントラクト18と、電子債権銘柄登録用スマートコントラクト19と、電子債権STO化用スマートコントラクト20と、電子債権承認申請用スマートコントラクト21と、電子債権公開手段22と、STO管理用スマートコントラクト23と、を有して構成されている。
また、本実施形態の電子債権取引システム1においては、コンピュータの端末や、携帯情報端末等の他の電子機器の画面表示部と入力部を有する図示しない入力手段を介して、入力されたIDについて、個人はマイナンバー、法人は法人番号を用いた本人確認処理を自動で行い、上記各スマートコントラクトは、承認されたIDに対して処理を行う。
また、本実施形態の電子債権取引システム1は、証券会社90等のシステムと、銀行等の金融機関70のシステムと、に接続している。
【0063】
NFT生成用スマートコントラクト11
NFT生成用スマートコントラクト11は、例えば、図2に示すように、次の機能を有して構成されている。
(11-1)(NFT発行体30において、)ブロックチェーンを用いたデジタル契約として、契約に基づく支払金額(支払い対象となる資産の種類、元金及び債務不履行のリスクに対する保険料としての金利)、契約に基づく支払金額の支払先のスマートコントラクトのアドレスが指定されたNFTを生成する機能。
(11-2)NFTの生成に際し、契約に基づく支払金額として、支払い対象となる資産の種類、元金及び債務不履行のリスクに対する保険料としての金利の設定を受け付ける機能。
【0064】
支払金額受付用スマートコントラクト12
支払金額受付用スマートコントラクト12は、例えば、図3に示すように、次の機能を有して構成されている。
(12-1)契約に基づく支払金額の支払先アドレスを有し、債務者50からの契約に基づく支払金額の送付を受け付ける機能。
【0065】
電子債権承認申請用スマートコントラクト21
電子債権承認申請用スマートコントラクト21は、例えば、図13に示すように、次の機能を有して構成されている。
(21-1)NFT生成用スマートコントラクト11により生成されたNFTについての電子債権としての承認申請を行う機能。
より詳しくは、次の機能を有して構成されている。
(21-1-1)(NFT発行体30からの)NFT生成用スマートコントラクト11により生成されたNFTについての電子債権としての承認申請指示を受け付ける機能。
(21-1-2)当該NFTについての電子債権承認申請を電子債権承認機関40に通知する機能。
【0066】
電子債権承認用スマートコントラクト13
電子債権承認用スマートコントラクト13は、例えば、図4に示すように、次の機能を有して構成されている。
(13-1)電子債権承認機関40において、NFT生成用スマートコントラクト11により生成されたNFTにおけるデジタル契約の内容を審査し、有効性が確認されたNFT内に、電子債権承認機関40の番号と、管理番号、銘柄コードを記録して、電子債権として承認する機能。
【0067】
支払金額送付用スマートコントラクト14
支払金額送付用スマートコントラクト14は、例えば、図5に示すように、次の機能を有して構成されている。
(14-1)支払金額受付用スマートコントラクト12のアドレスに送付された支払金額を、電子債権(として承認されたNFT)の所有者のアドレスへ送付する機能。
【0068】
電子債権売注文発注用スマートコントラクト15
電子債権売注文発注用スマートコントラクト15は、例えば、図6に示すように、次の機能を有して構成されている。
(15-1)電子債権(として承認されたNFT)の売り注文を指値(契約に基づく支払金額として、支払い対象となる資産の種類、元金及び債務不履行のリスクに対する保険料としての金利を指定したもの)で発注する機能。
【0069】
電子債権取引用スマートコントラクト16
電子債権取引用スマートコントラクト16は、例えば、図7図8に示すように、次の機能を有して構成されている。
(16-1)電子債権(として承認されたNFT)の注文について、所定のファクター(格付け、金利、タイプ、償還日など)の特性を有する電子債権(として承認されたNFT)の群を一つの銘柄として、同一銘柄の電子債権(として承認されたNFT)の群に対するクロッシング処理を行う機能。
より詳しくは、次の機能を有して構成されている。
(16-1-1)電子債権売注文発注用スマートコントラクト15により発注された、電子債権(として承認されたNFT)の指値での売り注文に対し、買い方に対当する注文がある場合に約定させ、買い方の購入金額と電子債権(として承認されたNFT)との清算・決済を自動的に行う機能。
(16-1-2)電子債権売注文発注用スマートコントラクト15により発注された、格付け、債務不履行のリスクに対する保険料としての金利、タイプ、償還日などのファクターについて、類似する所定範囲の特性を有する電子債権(として承認されたNFT)の群としての銘柄に属する電子債権(として承認されたNFT)の指値での売り注文が、買い方側の当該注文条件に該当した場合に約定させ、当該銘柄に属する電子債権(として承認されたNFT)を割り振って買い方側の買い注文と対当させる機能。
(16-1-3)売り注文の当該銘柄に属する電子債権(として承認されたNFT)それぞれ固有の(格付け、債務不履行のリスクに対する保険料としての金利、タイプ、償還日などの)特性の差異に基づく、変換比率(取引対象である標準物と実際の受渡しに用いられる受渡適格銘柄との交換比率)の売り方側からの設定を受け付ける機能。
(16-1-4)設定を受け付けた変換比率に基づき、金利による割引率の調整などを行う機能。
(16-2)銘柄ごとに時間をずらしてクロッシング処理を行う機能。
(16-3)各銘柄を同時にクロッシング処理し、銘柄間でクロッシング条件(金利指値)が合致しない場合、各銘柄の売りの状況を監視しながら、売りの銘柄間で玉の調整が可能であると判断できる場合に、流動性調整者による流動性調整のための銘柄の生成を待って約定に誘導する機能。
(16-4)買い注文の銘柄の銘柄コードにおけるクロッシング作動条件桁に“クロッシング処理の作動条件無指定”に相当する所定値以外の値が設定されている場合、当該銘柄コードを条件付き銘柄コードとして認識し、買い注文の銘柄に対応する売り注文の銘柄の当該銘柄コードの前記クロッシング作動条件桁に設定された値が合致しないときには、クロッシング処理を行わないように制御する機能。
(16-5)売り方側から変換比率の設定を受け付けた場合、変換比率を用いて変換した売り方側の売り注文の銘柄の銘柄コードにおける前記クロッシング作動条件桁を、“クロッシング処理の作動条件無指定”に相当する所定値にして、クロッシング処理を行う機能。
なお、電子債権(として承認されたNFT)の属する銘柄(及び銘柄コード)は、電子債権銘柄登録用スマートコントラクト19を介して、電子債権承認機関40において登録される。
変換比率、銘柄コード、クロッシング作動条件桁については、後述する。
【0070】
電子債権STO化用スマートコントラクト20
電子債権STO化用スマートコントラクト20は、例えば、図9に示すように、次の機能を有して構成されている。
(20-1)証券会社90等において、電子債権取引用スマートコントラクト16によるクロッシング処理を介して購入された、銘柄単位の電子債権(として承認されたNFT)の群を有して構成されるSTOを生成する機能。
【0071】
NFT償還用スマートコントラクト17
NFT償還用スマートコントラクト17は、例えば、図10に示すように、次の機能を有して構成されている。
(17-1)償還日が到来したとき、電子債権(として承認されたNFT)を償還する機能。
より詳しくは、次の機能を有して構成されている。
(17-1-1)電子債権(として承認されたNFT)の償還日が到来したとき、当該電子債権(として承認されたNFT)を失効させるとともに、支払金額受付用スマートコントラクト12のアドレスに送付された、当該電子債権(として承認されたNFT)における償還時の支払金額を、支払金額送付用スマートコントラクト14に、当該電子債権(として承認されたNFT)の所有者のアドレスへ送付させる機能。
(17-1-2)電子債権(として承認されたNFT)の償還日が到来したとき、全ての債務不履行となった電子債権(として承認されたNFT)における当該債務者50の支払うべき支払金額を、全ての電子債権(として承認されたNFT)における保険料を用いて補填し、債務不履行となっていない当該電子債権(として承認されたNFT)における保険料から、債務不履行の補填に費やした分を差し引いた金額の一部を当該電子債権(として承認されたNFT)の債務者50に戻す機能。
【0072】
電子債権買注文条件指定受付用スマートコントラクト18
電子債権買注文条件指定受付用スマートコントラクト18は、例えば、図11に示すように、次の機能を有して構成されている。
(18-1)電子債権取引用スマートコントラクト16による電子債権(として承認されたNFT)の注文についてのクロッシング処理に際し、電子債権(として承認されたNFT)の買い方側の注文条件として、格付け、債務不履行のリスクに対する保険料としての金利、タイプ、償還日などのファクターについて、類似する所定範囲の特性を有する電子債権(として承認されたNFT)の群としての銘柄に対する金利や量(金額に相当)の指定を受け付ける機能。
【0073】
電子債権銘柄登録用スマートコントラクト19
電子債権銘柄登録用スマートコントラクト19は、例えば、図12に示すように、次の機能を有して構成されている。
(19-1)格付け、債務不履行のリスクに対する保険料としての金利、タイプ、償還日などのファクターについて、類似する所定範囲の特性を有する電子債権(として承認されたNFT)の群を一つの銘柄コードを有する銘柄として、電子債権承認機関40において登録する機能。
【0074】
電子債権公開手段22
電子債権公開手段22は、例えば、図14に示すように、次の機能を有して構成されている。
(22-1)電子債権銘柄登録用スマートコントラクト19により電子債権承認機関40において登録された電子債権の契約内容を開示する機能。
【0075】
STO管理用スマートコントラクト23
STO管理用スマートコントラクト23は、例えば、図15に示すように、次の機能を有して構成されている。
(23-1)STOを管理する機能。
より詳しくは、次の機能を有して構成されている。
(23-1-1)発行済STOの金額と同額の電子債権が設定(担保的に確保)されていることを確認し、発行済STOを構成する一部の電子債権が償還されたとき、当該電子債権の償還に伴う新たな電子債権の補充を自動的に行う機能。
(23-1-2)発行済STOを構成する一部の電子債権が償還された場合において、電子債権の償還に伴う新たな電子債権の補充が行われない場合に、所定の警報をトークン発行体等に通知する機能。
【0076】
このように構成された本実施形態の電子債権取引システム1を用いた処理を説明する。
なお、債権者30は債務者50との契約に基づき、債権を有しているものとする。
【0077】
(S1)NFTの生成(図16
まず、NFT生成用スマートコントラクト11は、ブロックロックチェーンを用いたデジタル契約として、契約に基づく支払金額(支払い対象となる資産の種類、元金及び債務不履行のリスクに対する保険料としての金利)、契約に基づく支払金額の支払先のスマートコントラクトのアドレスが指定されたNFTを生成する。
その際、NFT生成用スマートコントラクト11は、債権者30による、契約に基づく支払金額として、支払い対象となる資産の種類、元金及び債務不履行のリスクに対する保険料としての金利の設定を受け付ける。
【0078】
(S2)NFTの電子債権としての承認申請(図16
次に、電子債権承認申請用スマートコントラクト21は、(NFT発行体30からの)NFT生成用スマートコントラクト11により生成されたNFTについての電子債権としての承認申請指示を受け付け、当該NFTについての電子債権承認申請を電子債権承認機関40に通知する。
【0079】
(S3)NFTの電子債権化(電子債権としての承認)(図16
次に、電子債権承認用スマートコントラクト13は、電子債権承認機関40において、NFT生成用スマートコントラクト11により生成されたNFTにおけるデジタル契約の内容を審査し、有効性が確認されたNFT内に、電子債権承認機関40の番号と、管理番号、銘柄コードを記録して、電子債権として承認する。
【0080】
(S4)電子債権(として承認されたNFT)の売り注文の発注(図17
次に、電子債権売注文発注用スマートコントラクト15は、電子債権(として承認されたNFT)の売り注文を指値(契約に基づく支払金額として、支払い対象となる資産の種類、元金及び債務不履行のリスクに対する保険料としての金利を指定したもの)で発注する。
【0081】
(S5)買い方側の注文条件の指定の受付(図17
電子債権買注文条件指定受付用スマートコントラクト18は、電子債権取引用スマートコントラクト16による電子債権(として承認されたNFT)の注文についてのクロッシング処理に際し、電子債権(として承認されたNFT)の買い方側の注文条件として、格付け、債務不履行のリスクに対する保険料としての金利、タイプ、償還日などのファクターについて、類似する所定範囲の特性を有する電子債権(として承認されたNFT)の群としての銘柄に対する金利や量(金額に相当)の指定を受け付ける。
【0082】
(S6)電子債権(として承認されたNFT)のクロッシング(図18
電子債権取引用スマートコントラクト16は、電子債権(として承認されたNFT)の注文について、所定のファクター(格付け、金利、タイプ、償還日など)の特性を有する電子債権(として承認されたNFT)の群を一つの銘柄として、同一銘柄の電子債権(として承認されたNFT)の群に対するクロッシング処理を行う。
より詳しくは、電子債権取引用スマートコントラクト16は、電子債権売注文発注用スマートコントラクト15により発注された、電子債権(として承認されたNFT)の指値での売り注文に対し、買い方に対当する注文がある場合に約定させ、買い方の購入金額と電子債権(として承認されたNFT)との清算・決済を自動的に行う。
そして、電子債権取引用スマートコントラクト16は、電子債権売注文発注用スマートコントラクト15により発注された、格付け、債務不履行のリスクに対する保険料としての金利、タイプ、償還日などのファクターについて、類似する所定範囲の特性を有する電子債権(として承認されたNFT)の群としての銘柄に属する電子債権(として承認されたNFT)の指値での売り注文が、買い方側の当該注文条件に該当した場合に約定させ、当該銘柄に属する電子債権(として承認されたNFT)を割り振って買い方側の買い注文と対当させる。
また、電子債権取引用スマートコントラクト16は、売り注文の当該銘柄に属する電子債権(として承認されたNFT)それぞれ固有の(格付け、債務不履行のリスクに対する保険料としての金利、タイプ、償還日などの)特性の差異に基づく、変換比率(取引対象である標準物と実際の受渡しに用いられる受渡適格銘柄との交換比率)の売り方側からの設定を受け付ける。
そして、電子債権取引用スマートコントラクト16は、設定を受け付けた変換比率に基づき、金利による割引率の調整などを行う。
【0083】
(S7)電子債権(として承認されたNFT)のSTO化(図19
電子債権STO化用スマートコントラクト20は、証券会社90等において、電子債権取引用スマートコントラクト16によるクロッシング処理を介して購入された、銘柄単位の電子債権(として承認されたNFT)の群を有して構成されるSTOを生成する。
生成されたSTOは、ブロックチェーンを用いた証券市場での取引システム(不図示)を介して、小口化され、個人投資家などを対象として販売・取引される。
なお、STOを構成する個々の電子債権は、期日到来により償還される。そこで、証券会社90等は、償還された電子債権に相当する電子債権の買い注文を電子債権買注文条件指定受付用スマートコントラクト18を介して行い、電子債権取引用スマートコントラクト16によるクロッシング処理を介して購入し、当該STOを構成する電子債権として補充し、当該STOを維持する。なお、STOの維持については後述する。
【0084】
(S8)電子債権(として承認されたNFT)の償還(図20
NFT償還用スマートコントラクト17は、償還日が到来したとき、電子債権(として承認されたNFT)を償還する。
より詳しくは、NFT償還用スマートコントラクト17は、電子債権(として承認されたNFT)の償還日が到来したとき、当該電子債権(として承認されたNFT)を失効させるとともに、支払金額受付用スマートコントラクト12のアドレスに送付された、当該電子債権(として承認されたNFT)における償還時の支払金額を、支払金額送付用スマートコントラクト14に、当該電子債権(として承認されたNFT)の所有者のアドレスへ送付させる。
また、NFT償還用スマートコントラクト17は、電子債権(として承認されたNFT)の償還日が到来したとき、全ての債務不履行となった電子債権(として承認されたNFT)における当該債務者50の支払うべき支払金額を、全ての電子債権(として承認されたNFT)における保険料を用いて補填し、債務不履行となっていない当該電子債権(として承認されたNFT)における保険料から、債務不履行の補填に費やした分を差し引いた金額の一部を当該電子債権(として承認されたNFT)の債務者50に戻す。
なお、NFT償還用スマートコントラクト17は、電子債権を償還したときにおける、STO購入者側に対して支払う支払金額のうちの金利相当分の金額を、デジタル資産(デジタル通貨、通貨ステーブルコイン、商品ステーブルコインなど)の他に、クーポンや配当の形態や、無償増資的に保有量の修正を行うなど、多様な形態で支払うことができるように構成してもよい。
【0085】
(S9)銘柄の登録
なお、電子債権銘柄登録用スマートコントラクト19は、格付け、債務不履行のリスクに対する保険料としての金利、タイプ、償還日などのファクターについて、類似する所定範囲の特性を有する電子債権(として承認されたNFT)の群を一つの銘柄コードを有する銘柄として、電子債権承認機関40において登録する。
【0086】
さらに、本実施形態の電子債権取引システム1を用いた個々の処理について、具体例等を用いてより詳細に説明する。
(E1)NFTを電子債権として承認するための審査の具体的な方法
電子債権としての承認対象となる債権は、ブロックチェーンでの契約がベースとなり、一つしか存在しない特性を有することから、NFTの形態をなす。
なお、電子債権としての承認においては、契約当事者(債権者30、債務者50)である例えば2社が、アドレスと公開鍵を開示しており、その鍵に対して秘密鍵で互いにNFTを承認していることを前提とする。
NFT契約では、契約内容(2社と、納品/納品日・支払い状況/支払日、条件)、担保設定の有無(担保設定しているアドレスが記録される)が項目として存在する。
NFT契約において担保設定がある場合は、電子債権として不適格であり、電子債権承認用スマートコントラクト13は、電子債権として承認しない。
NFT契約が電子債権として承認されるためには、その他に、納品済の状態になっていることが前提となる。
契約当事者(債権者30、債務者50)である企業、もしくは契約当事者を仲介する銀行などの金融機関70が、電子債権承認申請を行う機能を有する電子債権承認申請用スマートコントラクト21(もしくは同様の機能を有する電子債権承認手段(符号省略))を介して電子債権承認申請(秘密鍵承認)を行うことで、電子債権承認機関40において、NFTを電子債権として承認するための審査が行われる。
例えば、契約当事者を仲介する銀行等の金融機関70(アドレスと公開鍵を開示)が電子債権承認申請用スマートコントラクト21を介して電子債権承認申請を行い、NFT上の電子債権承認申請枠に秘密鍵で承認する。
電子債権承認申請段階では、銀行等の金融機関70は、1回目の電子債権としての妥当性などの確認と、格付け設定など銘柄コード生成のための基本設定を、電子債権銘柄登録用スマートコントラクト19を介して行う。
電子債権承認申請がなされると、電子債権承認申請用スマートコントラクト21から電子債権承認機関40に通知が入る。電子債権承認機関40は、2回目の電子債権としての妥当性や銘柄コードの属性確認を独自に行い、問題がないと認められる場合、電子債権銘柄登録用スマートコントラクト19を介して、正規の銘柄コードを生成し、取引可能フラグを立てて承認(秘密鍵処理)する。このとき、電子債権承認用スマートコントラクト13は、NFT内に、電子債権承認機関40の番号と、管理番号、銘柄コードを記録する。
【0087】
(E2)銘柄として登録するための具体的な処理手順
次に、電子債権銘柄登録用スマートコントラクト19による、銘柄として登録するための具体的な処理手順の一例について説明する。
【0088】
(E2-1)ファクターの種類及び各ファクターを用いた銘柄コードの作成
ファクターとしては、例えば、「格付け」、「金利」、「償還日」、「タイプ」、「業種」、「地域」などが挙げられる。
「格付け」は、基本的には次の要因によって定まる。
・NFTの電子債権としての承認を申請する、契約当事者を仲介する銀行などの金融機関70における債権者30の取引情報に基づき、当該銀行などの金融機関70が「格付け」を、例えば「AAA」、「AA」、「A」、「BBB」、「BB」などのように設定する。
・電子債権承認機関40が、過去の当該企業債の取扱い実績に基づき、デフォルトなどのリスク要因が確認される場合は、取扱い不能を示す「格付け」(例えば、「D」)とし、また、取得できる収益情報などに基づき、銀行などの金融機関70の設定した「格付け」の修正を行う。電子債権承認機関40において修正された「格付け」を、正規の電子債権(として承認されたNFT)の「格付け」とする。
このように、「格付け」は、基本的に債権の母体となる企業の「格付け」がベースとなるが、当該企業の決算数値など企業ファクターを構成する電子債権とは別の情報としてブロックチェーン上に記録し、そのデータを分析することなどで対応し、電子債権承認機関40と、電子債権としての承認申請を行う銀行などの金融機関70との間で、金利算出の根拠となる当該「格付け」を合意・調整することによって定まる。
この「格付け」は、全ての銘柄の基本になる「マスターファクター」(クロッシング処理における最重要要因)をなす。
「格付け」は、電子債権銘柄登録用スマートコントラクト19が、例えば、格付け対応値変換テーブル等(図示省略)を用いて、当該電子債権の「格付け」の範囲に相当する所定の値(英数字)を、銘柄の識別子をなす銘柄コードの2桁目に設定する。
【0089】
「金利」は、単純な債権の電子化よりも電子債権の流動化(転売)を想定して、発生させた概念である。電子債権の「金利」には、クーポンとして召喚時までに定期的に支払われるタイプ(クーポン型)と、償還金額に対して割り引かれるタイプ(割引型)とが存在する。そこで、電子債権をクーポン型と割引型とに分け、分けたそれぞれの電子債権について、償還されるまで(基本的には、短期物が殆どであるため、電子債権の償還期日到来時)の金利相当分の利率(年利換算)を計算する。
「金利」は、電子債権取引における電子債権の要因ではあるが、クロッシング処理に際し指値として設定される。このため、当該「金利」の設定は、参考基準として設定するものである。
「金利」は、電子債権銘柄登録用スマートコントラクト19が、例えば、金利対応値変換テーブル等(図示省略)を用いて、当該電子債権の「金利」の範囲に相当する所定の値(英数字)に変換し、銘柄コードの3桁目に設定する。
【0090】
「格付け」と「金利」は、クロッシング処理において重要な要因である。
「格付け」、「債務不履行のリスクに対する保険料としての金利」は、電子債権をSTO化する際における、電子債権の買い側と、電子債権の売り側の流動性を調整するための基本概念であり、電子債権のSTO化に際し、格付け等の違いに応じた数種類のSTOが生成されることを想定したものである。金利の低いもの(=格付けの高いもの)は電子債権のデフォルトリスクが少なく、金利の高いもの(=格付けの低いもの)は電子債権のデフォルト率が高いという特性を有する。
本実施形態の電子債権取引システム1では、「格付け」をベースに「金利」が設定され、設定された「金利」に対して流動性のファクター(買いの流動性)で金利調整(売りの金利指値の変更)が行われるように構成されている。
より詳しくは、複数銘柄間の取引が必ずしも流動性で合致するわけではなく、売り方が買い方の流動性に合わせることを基本としている。このため、流動性の高いSTO生成体(証券会社)90側の買いに対して、流動性の余っている電子債権を第三者(銀行等の金融機関70の自己などの流動性調整者)が購入し、流動性は少ないが買いのニーズがある電子債権として再構成し、売りの流動性を提供することができるようにしている。
その流動性の提供過程で第三者が、金利差を手数料として設定し、格付けの変更を行う。本願では、その「金利差による手数料」に該当する設定を「債務不履行のリスクに対する保険料としての金利」と定義する。なお、本実施形態の電子債権取引システム1では、上記「金利差による手数料」に対するリスク対応として、CDS(クレジットデフォルトスワップ)の基本概念を応用し、後払い的に処理するような保険的なヘッジ要因を組み込むことも可能としている。
【0091】
次に説明する「償還日」、「タイプ」、「業種」、「地域」は、サブファクターであり、STOに対応させる電子債権の特性として、適宜設定する。
「タイプ」は、売掛債権(短期)やリース債権(長期)など、電子債権の用途に応じて設定する。「タイプ」は、サブファクターの中では最も重要な要因である。
「タイプ」は、電子債権銘柄登録用スマートコントラクト19が、例えば、タイプ対応値変換テーブル等(図示省略)を用いて、当該電子債権の「タイプ」の範囲に相当する所定の値(英数字)に変換し、銘柄コードの4桁目(あるいは1桁目)に設定する。「タイプ」は、「格付け」の次に重要な、電子債権の特性を示す要因である。
【0092】
「償還日」は、「タイプ」に連動する要因である。電子債権には、償還日までの期間が短期のものから長期のものまである。「償還日」の設定に際しては、例えば、償還日までの残存日数を用いる。「格付け」や「金利」が重要な要因であり、「償還日」は、あくまでも銘柄の特性を示すための補助情報をなす要因である。
「償還日」は、電子債権銘柄登録用スマートコントラクト19が、例えば、残存日数対応値変換テーブル等(図示省略)を用いて、当該電子債権の「残存日数」の範囲に相当する所定の値(英数字)に変換し、銘柄コードの5桁目に設定する。
【0093】
その他、「タイプ」に類似するサブファクターとして、「業種(製造業など業種区分を活用)」を、電子債権銘柄登録用スマートコントラクト19が、例えば、業種対応値変換テーブル等(図示省略)を用いて、当該電子債権の「業種」の範囲に相当する所定の値(英数字)に変換し、銘柄コードの6桁目に設定し、また、「地域(例えば、中部地区など)」を、電子債権銘柄登録用スマートコントラクト19が、例えば、地域対応値変換テーブル等(図示省略)を用いて、当該銘柄の「地域」の範囲に相当する所定の値(英数字)に変換し、銘柄コードの7桁目に設定する。
さらに、予備として、電子債権銘柄登録用スマートコントラクト19が、例えば、“0”を銘柄コードの8桁目に設定する。
【0094】
(E2-2)ファクターについて類似する特性を有する電子債権ごとにグループ化し、グループ化した電子債権の群を一つの銘柄とする処理手順の具体例
まず、STOの特性を定める。
例えば、四国地方の中リスク(格付けがB~BB格などの範囲)の製造業・販売業などであって、残存日数が20~40日の範囲にあり、金利が2.9~3.2%の範囲の特性を有する電子債権で構成されるSTOの銘柄の銘柄コードを“10000010(STO10000010)”と定義したとする。
電子債権銘柄登録用スマートコントラクト19は、当該STOの特性に合致する電子債権の群を、STOの銘柄に対応する一つの銘柄として、当該電子債権の群で構成される銘柄の銘柄コードを“10000010”と設定する。
【0095】
(E2-3)クロッシングで扱う銘柄の登録方法(登録の主体、登録の基準)、電子債権をクロッシングで扱う銘柄に登録する場合の妥当性の審査方法
銘柄は、電子債権承認機関40が管理する。また、電子債権承認機関40において、電子債権銘柄登録用スマートコントラクト19を介して、銘柄の「個別」コードが生成されるようにする。詳しくは、電子債権銘柄登録用スマートコントラクト19は、銘柄コードの末番に、個別コードを複数桁設定し、個別コードの先頭数桁には、実際に仲介する銀行等の金融機関70のコードを設定する。
個別コードは、上述のクロッシング処理では用いられないが、実際の電子債権の引き渡しの際に用いられる。
銘柄は、電子債権承認機関40が、電子債権銘柄登録用スマートコントラクト19を介して、上述の「タイプ」や「格付け」などの要因に基づいて分類し、各要因において予め定めた所定の基準(要因対応値変換テーブル等)に基づいて変換された1桁の値を、銘柄コードを構成する文字及び数字列の該当桁に設定して登録する。
登録された電子債権の内容の詳細は、電子債権承認機関40が電子債権公開手段22を介して公開する。公開する電子債権の内容としては、例えば、電子債権がどのような契約(契約当事者、仲介する金融機関、上記ファクターの詳細など)であるか、電子債権が現在有効であるかなど、が挙げられる。
電子債権承認機関40では、格付けの設定に際し、各企業の収支情報などを集計したものから、独自に格付けする。基本的には、格付けは、収益性・市場動向と、企業としての反社チェック・AML/CFT(マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策)などの電子債権としての妥当性(適格性・銀行などの金融機関が扱えないような特性の有無、例えばアダルト系の関与など、反社要素の大きさ等)に基づいて行う。
【0096】
(E3)クロッシング処理の具体的な処理手順
電子債権取引のクロッシング処理においては、売り方が電子債権の発行体で、買い方がSTO生成体(証券会社)90となる。
STOが長期のものであるのに対し、電子債権は短期のものが殆どであり、途中で償還される。このため、STO生成体(証券会社)90においては、STOを生成後、STOを構成する電子債権を定期的に補充する必要が生じる。
電子債権取引用スマートコントラクト16によるクロッシング処理の対象は、基本的に債権(債券的)である。このため、取引量の1単位は、金額をベースとしたものになる。
そして、電子債権売注文発注用スマートコントラクト15、電子債権買注文条件指定受付用スマートコントラクト18を介した発注においては、例えば、指定(注文)数量については、10万円以上の1万円単位とし、指定(注文)価格については、金利を設定する。
なお、成行きの設定も可能ではあるが、基本的には、金利を「指値」として設定する。
また、電子債権取引用スマートコントラクト16によるクロッシング処理は、ザラ場によるリアルタイムなSTO生成も可能ではあるが、電子債権の特性を鑑みると、1日数回(9時、15時など)の板寄せや、板合わせで行うのが最良であると考えられる。
【0097】
なお、板合わせが現実的ではあるが、第三者の自己が流動性調整のために参加して、約定させる行為(処理、場合により機械の自動処理)をすることもできるようにする。
そのため、第三者の自己は、買い注文に対して不足する売り注文の数量分の銘柄を生成する必要がある。例えば、他の銘柄から流用する想定で、金利的に鞘を抜くことができ、また、地域要因の異なる銘柄であっても、その銘柄を流用することで、約定できる場合には、異なる銘柄をベースとして、流動性調整者の自己が、該当銘柄に属する電子債権を即座に生成(電子債権承認機関40が電子債権の承認申請に対して即座に承認する)し、約定させる。
このような数量調整が想定されるため、電子債権取引用スマートコントラクト16によるクロッシング処理における実際の板合わせでは、指定時間から開始し、銘柄ごとに、例えば、10分ずつずらしてクロッシング処理を行うようにするのが好ましい。
また、上述の10分ずらした板合わせを改良したものとして、各銘柄を同時にクロッシングし、銘柄間でクロッシング条件(金利指値)が合致しない場合に、各銘柄の売りの状況を監視しながら、売りの銘柄間で玉の調整が可能であると判断できる場合に、流動性調整者(電子債権承認機関40が行う場合もあり得る)が銘柄を再生成して、クロッシング処理を調整し約定に誘くようにするのが好ましい。
そして、電子債権取引用スマートコントラクト16によるクロッシング処理における板合わせは、時間をずらして処理するタイプと、同時処理するタイプの2種類を想定していて、銘柄単位で、特性により使い分けることができるようにするのが好ましい。
【0098】
また、電子債権取引用スマートコントラクト16によるクロッシング処理は、条件付きで作動するようにする。
クロッシング処理は、基本的には、例えば、銘柄コードの2桁目(「格付け」)、4桁目(あるいは1桁目)(「タイプ」)でクロッシング処理の対象となる銘柄を分けて行う。
但し、分けた銘柄における銘柄コードの6桁目(「業種」)、7桁目(「地域」)の各々に、“クロッシング処理の作動条件無”を示す所定値(例えば、“0”)以外の値が設定されている場合、条件付き銘柄コードとして認識する。
そして、STO生成体(証券会社)90側の買い注文の銘柄の銘柄コードが条件付き銘柄コードであるときには、買い注文の銘柄に対応する電子債権発行体側の売り注文の銘柄の銘柄コードの6桁目(「業種」)、7桁目(「地域」)に設定された値が合致しない場合、クロッシング処理を行わないように制御する。
【0099】
(E4)変換比率の設定
変換比率は、債券先物取引(や社債などの現物取引など)において用いられる、取引対象である標準物と「実際の受渡しに用いられる受渡適格銘柄との交換比率」に相当し、受渡適格銘柄のクーポンレートや残存期間の違いを調整するために利用される調整レートである。例えば、コメ取引において、新潟コシヒカリで取引した場合において、受け渡しのコメを新潟以外の産地のコシヒカリとしたときに、購入価格が50%オフになるなどが挙げられる。
本実施形態の電子債権取引システム1において、変換比率は、基本的には格付けの異なる電子債権の間で流動性を調整する場合に用いられる。
受け渡しの基準となるものとは別に、受け渡し可能となるものを定義し、受け渡しの基準となるものに対する受け渡し可能となるものの割引率などを変換比率として設定する。
電子債権発行体とSTO生成体(証券会社)90との取引においても、債権(電子債権)と債券(STO)は似ている部分がある。変換比率の設定は、様々な銘柄における、非常に多様でマイナーな要因である非定形型のファクター(6桁目(「業種」)、7桁目(「地域」))を、メジャーな要因である特定の定形型のファクター(2桁目(「格付け」)、4桁目(あるいは1桁目)(「タイプ」))に整合させる方策である。
ファクターとして重要であるものは、「格付け」(リスク)と「金利」であり、クロッシングにおける最大区分は、基本的にはこの2項目で足りると考えられる。
例えば、STO生成体(証券会社)90側が、STO1を構成する電子債権として、電子債権1(格付けA~AA)を対象として買い注文を出している場合において、電子債権1の売り注文が不足しているとき、流動性調整者Yが、変換比率に従い売り注文の多い電子債権2(格付けBB、金利が高い)をベースに、電子債権2を購入し、電子債権1を発行するという行為に基づいた電子債権2の買い指値を行い、約定したときに電子債権1を再構成し、流動性を調整するために用いられる。
この変換比率(調整比率)は、格付け(と償還期限)をベースとして設定される、電子債権の間の価値を調整するための数値である。
なお、変換比率(調整比率)の基準値(参考値)は電子債権承認機関40が開示するが、流動性調整者は、独自に変換比率(調整比率)を変更・調整設定して流動性調整を行う。
そして、電子債権取引用スマートコントラクト16は、設定を受け付けた変換比率に基づき、電子債権間における金利による割引率を調整する。
なお、電子債権取引用スマートコントラクト16は、電子債権の売り手が指値として提示した割引額を、クロッシング処理を行う際に残存期間に応じて金利へ変換する。
電子債権が約定した場合、買い方に即座に約定情報として、銘柄群に対する銘柄コードと、数量、金利、割引後の現状金額を通知する。
なお、残存日数は、銘柄マスター情報から取得し、約定情報として記録するようにしてもよい。
【0100】
(E5)設定した変換比率に基づく取引の具体例
変換比率を設定し、銘柄コード“10000010”の銘柄の変換比率を“1”としたとき、銘柄コード“10000020”の銘柄の変換比率が“0.998”であるものとする。
この場合において、銘柄コード“10000020”の銘柄に属する、売り注文用の電子債権の数量が不足しているとき、銘柄コード“10000010”の銘柄に属する、売り注文用の電子債権の数量に余剰があれば、銘柄コード“10000010”の銘柄を銘柄コード“10000020”の銘柄として自己が再生成し、流動性の調整として、銘柄コード“10000020”の銘柄の買い注文に対し、自己が再生成した銘柄コード“10000020”の銘柄を供給し約定させる。
ただし、その際、銘柄コード“10000020”の銘柄の売り注文における指定金利が例えば“2.81”%である場合、銘柄コード“10000010”の銘柄の金利指値が“2.79”%を下回る値(例えば、“2.78”%)でないと鞘を抜くことができない(例えば、銘柄コード“10000010”の銘柄の金利指値が“2.79”%であるときには、(1-0.998)-(0.0279-0.0281)は0となり、鞘を抜くことができない)。
このため、金利と変換比率、双方の値に応じて、鞘を抜くことができる場合に、流動性の調整を行う。
しかしながら、この変換比率の設定による流動性の調整においては、内在する問題がある。
例えば、電子債権発行体側の売り注文の銘柄として、銘柄コード“10000130”の銘柄と、銘柄コード“10000240”の銘柄があり、これらの銘柄は地域要因(銘柄コードの7桁目)や業種要因(銘柄コードの6桁目)が違うのみであるが、銘柄コードの6桁目(「業種」)、7桁目(「地域」)の各々に具体的な所定値が設定された、条件付き銘柄コードの銘柄である場合においては、STO生成体(証券会社)90側の買い注文の銘柄の特性が、地域要因や業種要因を条件としていない場合(銘柄コードの6桁目(「業種」)、7桁目(「地域」)の各々に具体的な所定値が設定されていない場合)にのみ、流動性の調整のために用いること(相互調達)が可能となり、地域要因や業種要因を必須の条件としている場合(銘柄コードの6桁目(「業種」)、7桁目(「地域」)の各々に具体的な所定値が設定されている場合)は、電子債権発行体側の売り注文の銘柄コード“10000130”の銘柄と、銘柄コード“10000240”の銘柄を、流動性の調整のために用いることができない、という問題が生じ得る。
このため、電子債権取引用スマートコントラクト16は、売り方である流動性調整者側から変換比率の設定を受け付けた場合のクロッシング処理においては、2桁目(「格付け」)と4桁目(「タイプ」)の部分だけを有効であるものとし、変換比率を用いて変換した電子債権発行体側の売り注文の銘柄の銘柄コードの6桁目(「業種」)と7桁目(「地域」)を、“クロッシング処理の作動条件無指定”に相当する所定値(例えば、“0”指定)にして、クロッシング処理を行うようにする。
なお、特性として、銘柄コードの6桁目(「業種」)と7桁目(「地域」)に具体的な所定値が設定されているSTO生成体(証券会社)90側の買い注文の銘柄に対しては、上述のとおり、電子債権取引用スマートコントラクト16は、条件付きのクロッシング処理を行う。
【0101】
電子債権取引システムを用いた売掛債権を譲渡し、資金化する処理の流れの一例(図21
例えば、図21に示すように、孫請の納入企業が売掛先である子請の支払企業に商品を納入し、子請の支払企業に対し売掛債権を有し、子請の支払企業は売掛先である支払企業に商品を納入し、売掛先である支払企業に対し売掛債権を有している。売掛先である支払企業、子請の支払企業は支払債務を有しているものとする。
電子記録債権を用いた売掛債権の資金化においては、例えば、債務者である売掛先の支払企業において、売掛先の支払企業と子請の支払企業との契約に基づき、NFT生成用スマートコントラクト11が、支払金額、支払先のスマートコントラクトのアドレスが指定されたNFTを生成する。売掛先の支払企業は、NFTの電子債権としての承認を電子債権承認機関40に請求する。
次に、電子債権承認機関40において、電子債権承認用スマートコントラクト13が、NFT生成用スマートコントラクト11により生成されたNFTにおけるデジタル契約の内容を審査し、有効性が確認されたNFT内に電子債権承認機関40の番号と管理番号を記録して、電子債権として承認する。このとき、承認された電子債権の所有者は下請の支払企業である。
また、下請の支払企業が孫請の納入企業への電子記録債権を譲渡すると、ブロックチェーンのアドレスに電子債権の譲渡が記録される。電子記録債権の期日が到来したときに、NFT償還用スマートコントラクト17は、当該電子債権(として承認されたNFT)を失効させるとともに、支払金額受付用スマートコントラクト12のアドレスに送付された、当該電子債権(として承認されたNFT)における償還時の支払金額を、支払金額送付用スマートコントラクト14に、当該電子債権(として承認されたNFT)の所有者のアドレスへ送付させる。当該電子債権(として承認されたNFT)の所有者が孫請の納入企業である場合には、孫請の納入企業に対し金額が支払われる。当該電子債権(として承認されたNFT)の所有者が、当該電子債権を購入した他人である場合には、当該他人に対し金額が支払われる。
また、NFT償還用スマートコントラクト17は、電子債権(として承認されたNFT)の償還日が到来したとき、全ての債務不履行となった電子債権(として承認されたNFT)における当該債務者50(売掛先の支払企業:当該電子債権の発行者)の支払うべき支払金額を、全ての電子債権(として承認されたNFT)における保険料を用いて補填し、債務不履行となっていない当該電子債権(として承認されたNFT)における保険料から、債務不履行の補填に費やした分を差し引いた金額の一部を当該電子債権(として承認されたNFT)の債務者50(売掛先の支払企業:当該電子債権の発行者)に戻す。
なお、電子債権の移転や期日の到来に伴う金額の支払は、ブロックチェーンのアドレスにて管理するデジタル資産(デジタル通貨、通貨ステーブルコイン、商品ステーブルコインなど)で行われる。また、銀行の口座に売掛先の支払企業、下請の支払企業、孫請の納入企業のブロックチェーンのアドレスがリンクされ、API処理を介して行うこともできる。
【0102】
電子債権取引システムを用いた売掛債権の電子債権化及び電子債権のSTO化を含む全体の処理の一例(図22)
例えば、図22に示すように、債務者である売掛先の支払企業において、売掛先の支払企業と子請の支払企業との契約に基づき、NFT生成用スマートコントラクト11が、支払金額、支払先のスマートコントラクトのアドレスが指定されたNFTを生成する。売掛先の支払い企業は、NFTの電子債権としての承認を電子債権承認機関40に請求する。ブロックチェーンを用いたNFT型契約であるので、2社間の鍵承認により、2社が承認した本物契約であることを証明できる。電子債権承認機関40において、電子債権承認用スマートコントラクト13が、NFT生成用スマートコントラクト11により生成されたNFTにおけるデジタル契約の内容を審査し、有効性が確認されたNFT内に電子債権承認機関40の番号と管理番号、銘柄コードを記録して、電子債権として承認する。
電子債権売注文発注用スマートコントラクト15は、電子債権(として承認されたNFT)の売り注文を指値(契約に基づく支払金額として、支払い対象となる資産の種類、元金及び債務不履行のリスクに対する保険料としての金利を指定したもの)で発注する。
電子債権買注文条件指定受付用スマートコントラクト18は、電子債権取引用スマートコントラクト16による電子債権(として承認されたNFT)の注文についてのクロッシング処理に際し、電子債権(として承認されたNFT)の買い方側の注文条件として、格付け、債務不履行のリスクに対する保険料としての金利、タイプ、償還日などのファクターについて、類似する所定範囲の特性を有する電子債権(として承認されたNFT)の群としての銘柄に対する金利や量(金額に相当)の指定を受け付ける。
電子債権取引用スマートコントラクト16は、電子債権(として承認されたNFT)の注文について、所定のファクター(格付け、金利、タイプ、償還日など)の特性を有する電子債権(として承認されたNFT)の群を一つの銘柄として、同一銘柄の電子債権(として承認されたNFT)の群に対するクロッシング処理を行う。
電子債権STO化用スマートコントラクト20は、証券会社90等において、電子債権取引用スマートコントラクト16によるクロッシング処理を介して購入された、銘柄単位の電子債権(として承認されたNFT)の群を有して構成されるSTOを生成する。
生成されたSTOは、ブロックチェーンを用いた証券市場での取引システム(不図示)を介して、小口化され、個人投資家などを対象として販売・取引される。
なお、STOを構成する個々の電子債権は、期日到来により償還される。そこで、証券会社90等は、償還された電子債権に相当する電子債権の買い注文を、電子債権買注文条件指定受付用スマートコントラクト18を介して行い、電子債権取引用スマートコントラクト16によるクロッシング処理を介して購入し、当該STOを構成する電子債権として補充し、当該STOを維持する。
NFT償還用スマートコントラクト17は、償還日が到来したとき、当該電子債権(として承認されたNFT)を失効させるとともに、支払金額受付用スマートコントラクト12のアドレスに送付された、当該電子債権(として承認されたNFT)における償還時の支払金額を、支払金額送付用スマートコントラクト14に、当該電子債権(として承認されたNFT)の所有者のアドレスへ送付させる。このとき、NFT償還用スマートコントラクト17は、後払い保険の概念を適用し、全ての債務不履行となった電子債権(として承認されたNFT)における当該債務者50の支払うべき支払金額を、全ての電子債権(として承認されたNFT)における保険料を用いて補填し、債務不履行となっていない当該電子債権(として承認されたNFT)における保険料から、債務不履行の補填に費やした分を差し引いた金額の一部を当該電子債権(として承認されたNFT)の債務者50に戻す。
【0103】
なお、債権者30は、電子債権(として承認されたNFT)をファクタリング会社に割引前払で譲渡することもできる。その場合は、電子債権取引用スマートコントラクト16は、ファクタリングの売り注文と買い注文とでクロッシング処理を行う、
その他、電子債権取引用スマートコントラクト16は、例えば、劣後債の買い注文と売り注文同士のクロッシング処理も行う。
電子債権STO化用スマートコントラクト20は、電子債権取引用スマートコントラクト16を介して購入された、電子債権の他に、ファクタリング、劣後債等を用いてSTOを生成することもできる。
【0104】
ファクタリング会社や銀行などの金融機関が電子債権を購入後に、再販を行うケースについて
なお、購入した電子債権をそのまま転売する場合がある。その場合における電子債権取引用スマートコントラクト16によるクロッシング処理は、銘柄が変わるわけではないため、購入前の電子債権を販売する場合における電子債権取引用スマートコントラクト16によるクロッシング処理と略同様に行われる。
ただし、電子債権は、購入者がデフォルトなどのリスクを負う特性を有する。このため、ファクタリング会社や銀行などの金融機関70が電子債権を購入後、購入した銘柄の電子債権を別銘柄の電子債権(この別銘柄の電子債権の元となる購入銘柄の債権のデフォルトリスクは、ファクタリング会社や銀行などの金融機関70が負う)として生成する(別銘柄のNFTを作成して、作成した別銘柄のNFTについての電子債権承認申請を行い、電子債権としての承認を得る)ことも可能である。
その場合の別銘柄の電子債権は、元となる購入銘柄の債権のファクタリング会社や銀行などの金融機関70がデフォルトリスクを負うことで、デフォルトリスクが殆どなくなる。そしてファクタリング会社や銀行などの金融機関70で扱う一般の債権の基準に準ずるため、格付けは良くなるが、金利が下がる特性を有したものとなる。
ファクタリング会社や銀行などの金融機関70の発行することになる別銘柄の電子債権についての電子債権取引用スマートコントラクト16によるクロッシング処理は、購入前の電子債権を販売する場合における電子債権取引用スマートコントラクト16によるクロッシング処理と略同様に行われる。
また、通常の(再販ではない)電子債権について、電子債権STO化用スマートコントラクト20によるSTO化の段階で、後払い保険をつけて、保証型STOを生成することができるようにしてもよい。
後払い保険は、格付けの低い電子債権に対して、保証オプションをつける場合に活用する。
【0105】
なお、NFTが電子債権として承認される過程において記録された、電子債権の所有者の記録部は、転売とともに書き換わる。
転売により購入後の電子債権をベースとして、ファクタリング会社や銀行などの金融機関70が自身で別銘柄の電子債権を生成するときには、ファクタリング会社や銀行などの金融機関70は、新しい電子債権のベースとなる金融商品トークンを生成する。
仮に、金融商品トークンの名称が、X0001(Xはファクタリング会社や銀行などの金融機関70の固有の番号)である場合、当該トークンに属している電子債権は、ブロックチェーン内でのトークンを記録する担保欄にX0001が記載(リンクして自動管理)される。
【0106】
同様に、電子債権STO化用スマートコントラクト20がSTO化した際においても、購入した電子債権(として承認されたトークン)の担保欄に、STOの番号が記載される。
また、当該STOが償還される、もしくは担保入れ替えなどの処理を行うまでは、電子債権(として承認されたトークン)の担保欄の記載は抹消されず、電子債権に設定された担保権は残存する。
なお、STOを管理する機能を有するSTO管理用スマートコントラクト23が、発行済STOの金額と同額の電子債権が設定(担保的に確保)されていることを確認し、電子債権の償還に伴う新たな電子債権の補充が行われない場合、所定の警報がトークン発行体(トークン生成会社)や、トークンを管理する協会団体、一般向けの自動情報開示手段などに通知・公開されるようにするのが好ましい。
基本的には、STO管理用スマートコントラクト23が、自動的に、購入済みの新たな電子債権を用いて、償還された電子債権分を補充する。このため、警報が通知・公開されるようなエラーは発生しないが、償還された電子債権分の補充が自動化されない場合の機能として実装するのが好ましい。
【0107】
電子債権取引システムを用いたクレジットサービス提供システム
図26図1の電子債権取引システムを用いたクレジットサービス提供システム1の構成を概念的に示すブロック図である。
図26のクレジットサービス提供システム1は、図1の電子債権取引システム1と実質的な構成は同じであるが、NFT発行体30がクレジット会社などの金融機関、債務者50がクレジットカード利用者に特定されている。
また、NFT生成用スマートコントラクト11は、図27に示すように、図2で示した(11-1)の機能が、クレジット会社などの金融機関30による、クレジットカード利用者50の販売者(販売店、販売会社)60へ支払うべき代金を立て替えた、立替分の債権に基づいて、ブロックチェーンを用いたデジタル契約として、契約に基づく支払金額(支払い対象となる資産の種類、元金及び債務不履行のリスクに対する保険料としての金利)、契約に基づく支払金額の納付先の前記支払金額受付用スマートコントラクト12のアドレスが指定されたNFTを生成する機能に特定されている。
その他の構成及び作用効果は図1図25に示した電子債権取引システム1と略同じである。
【0108】
本実施形態の電子債権取引システム1によれば、(NFT発行体30において、)ブロックチェーンを用いたデジタル契約として、契約に基づく支払金額(支払い対象となる資産の種類、元金及び債務不履行のリスクに対する保険料としての金利)、契約に基づく支払金額の支払先のスマートコントラクトのアドレスが指定されたNFTを生成する機能を有するNFT生成用スマートコントラクト11と、NFT生成用スマートコントラクト11により生成されたNFTについての電子債権としての承認申請を行う機能を有する電子債権承認申請用スマートコントラクト21と、電子債権承認機関40において、NFT生成用スマートコントラクト11により生成されたNFTにおけるデジタル契約の内容を審査し、有効性が確認されたNFT内に、電子債権承認機関40の番号と、管理番号、銘柄コードを記録して、電子債権として承認する機能を有する電子債権承認用スマートコントラクト13と、を有して構成したので、ブロックチェーンを用いたNFT型契約であることで、2社間の鍵承認により、2社が承認した本物契約であることを証明できることから電子債権の承認のための審査を簡易化でき、現在の電子債権記録機関で行う手続とは異なり、債権者30と債務者50の双方への確認が不要となる、また、電子債権として承認されたNFTは、電子記録債権とは異なり、債権者30と債務者50のうちの一方が利用申し込みの登録をすることなく利用することができる。また、ブロックチェーンを用いたNFT型契約であることで、電子債権についての担保設定の有無などは、ブロックチェーン内の担保管理により確認が容易となる。担保の設定がない場合は、保有者の電子債権を移転できる。また、既存の紙ベースの債権では、二重担保問題など第三者対抗要件の面で管理(即ち、債権として信頼性を担保する確認など)が面倒であるが、ブロックチェーンデータ(NFTなど)はデータソースが一つであり、改竄ができないことにより、その技術を活用することで二重担保の危険性が無くなる。このため、債権をSTO化したとき、債権自体のリスクをSTOが請け負うことになるが、当該債権自体のリスク(無)がブロックチェーンデータにより明確になっていることで、STOのリスクを低減することができる。また、スマートコントラクトを用いたブロックチェーンによるデータ記録方式がシステムの中核となることで、24時間の取引が可能となるとともに、処理が効率化され、それに伴いコスト面の優位性が上がり、既存の電子記録債権とは異なり、電子債権化における高手数料を大幅に削減でき、大型案件の債権のみならず、小型案件の債権であってもコストを吸収して、電子債権化できる。さらに、一連の作業がシステム化されるため、電子債権化するまでの時間を短縮することができる。
【0109】
また、本実施形態の電子債権取引システム1によれば、NFT償還用スマートコントラクト17が、電子債権(として承認されたNFT)の償還日が到来したとき、全ての電子債権(として承認されたNFT)における保険料の合計額と、償還時に全ての債務不履行となった電子債権(として承認されたNFT)に費やした金額(保険コスト)との差額(債務不履行分の補填に用いなかった保険料)の一部を債務不履行となっていないそれぞれの電子債権(として承認されたNFT)の債務者に戻す機能を有した構成としたので、債権発行体(NFT発行体)30による電子債権として承認されるNFTの金利を低減することができる。
【0110】
また、本実施形態の電子債権取引システム1によれば、電子債権(として承認されたNFT)の売り注文を指値(契約に基づく支払金額として、支払い対象となる資産の種類、元金及び債務不履行のリスクに対する保険料としての金利を指定したもの)で発注する機能を有する電子債権売注文発注用スマートコントラクト15と、電子債権(として承認されたNFT)の注文について、所定のファクター(格付け、金利、タイプ、償還日など)の特性を有する電子債権(として承認されたNFT)の群を一つの銘柄として、同一銘柄の電子債権(として承認されたNFT)の群に対するクロッシング処理を行う機能を有する電子債権取引用スマートコントラクト16と、を有し、電子債権取引用スマートコントラクト16は、電子債権売注文発注用スマートコントラクト15により発注された、電子債権(として承認されたNFT)の指値での売り注文に対し、買い方に対当する注文がある場合に約定させ、買い方の購入金額と電子債権(として承認されたNFT)との清算・決済を自動的に行う機能を有する構成としてので、電子債権をSTO化し易くすることができる。また、電子債権(として承認されたNFT)の売り方は、クロッシング処理を介して電子債権を即時に換金することができる。
また、本実施形態の電子債権取引システム1によれば、電子債権取引について、ブロックチェーンと、取引機能、清算機能、決済機能を実装したスマートコントラクトにて自動処理を行うようにすると、現在の電子記録債権のような銀行窓口を経由した手続が不要となる。
そして、本実施形態の電子債権取引システム1によれば、証券会社90等において、電子債権取引用スマートコントラクト16によるクロッシング処理を介して購入された、銘柄単位の電子債権(として承認されたNFT)の群を有して構成されるSTOを生成する機能を有する電子債権STO化用スマートコントラクト20を有して構成したことにより、電子債権がSTO化される。このとき、電子債権として承認されるNFT金利が低減されることから、STOの小口販売化による採算性を向上させることができる。また、STO購入者は金利を得ることができる。
また、STOの元となる電子債権の情報がブロックチェーンに記録されていることで、STOを構成する債権の内容を個別企業の契約時に遡って確認することが可能となるため、STOの生成における資産構成の透明性が向上する。
【0111】
また、本実施形態の電子債権取引システム1によれば、電子債権取引用スマートコントラクト16による電子債権(として承認されたNFT)の注文についてのクロッシング処理に際し、電子債権(として承認されたNFT)の買い方側の注文条件として、格付け、債務不履行のリスクに対する保険料としての金利、タイプ、償還日などのファクターについて、類似する所定範囲の特性を有する電子債権(として承認されたNFT)の群としての銘柄に対する金利や量(金額に相当)の指定を受け付ける機能を有する電子債権買注文条件指定受付用スマートコントラクト18をさらに有した構成としたので、クロッシング処理をより具現化することができる。
【0112】
また、本実施形態の電子債権取引システム1によれば、電子債権取引用スマートコントラクト16が、電子債権売注文発注用スマートコントラクト15により発注された、格付け、債務不履行のリスクに対する保険料としての金利、タイプ、償還日などのファクターについて、類似する所定範囲の特性を有する電子債権(として承認されたNFT)の群としての銘柄に属する電子債権(として承認されたNFT)の指値での売り注文が、買い方側の当該注文条件に該当した場合に約定させ、当該銘柄に属する電子債権(として承認されたNFT)を割り振って買い方側の買い注文と対当させる機能を有した構成としたので、クロッシング処理をより具現化することができる。そして、電子債権取引用スマートコントラクト16が、売り注文の当該銘柄に属する電子債権(として承認されたNFT)それぞれ固有の(格付け、債務不履行のリスクに対する保険料としての金利、タイプ、償還日などの)特性の差異に基づく、変換比率(取引対象である標準物と実際の受渡しに用いられる受渡適格銘柄との交換比率)の売り方側からの設定を受け付ける機能と、設定を受け付けた変換比率に基づき、流動性の調整(金利による割引率の調整など)を行う機能と、を有した構成としたので、ファクターの特性が相違しても、電子債権として承認されるNFTをクロッシングにより約定、清算させ易くすることができる。
【0113】
また、本実施形態の電子債権取引システム1によれば、電子債権取引用スマートコントラクト16によるクロッシング処理で扱う銘柄として、格付け、債務不履行のリスクに対する保険料としての金利、タイプ、償還日などのファクターについて、類似する所定範囲の特性を有する電子債権(として承認されたNFT)の群を一つの銘柄コードを有する銘柄として、電子債権承認機関40において登録する機能を有する電子債権銘柄登録用スマートコントラクト19をさらに有した構成としたので、クロッシング処理における銘柄を定めることができる。
【0114】
また、本実施形態の電子債権取引システム1によれば、電子債権銘柄登録用スマートコントラクト19が、格付け、債務不履行のリスクに対する保険料としての金利、タイプ、償還日などの各要因を、所定要因対応値変換テーブルを用いて1桁の値に変換し、複数桁からなる銘柄コードを生成する機能を有した構成としたので、ファクターについて類似する特性を有する電子債権(として承認されたNFT)ごとにグループ化し、グループ化した電子債権(として承認されたNFT)の群を一つの銘柄とするための処理を効率良く行うことができる。
【0115】
また、本実施形態の電子債権取引システム1によれば、電子債権銘柄登録用スマートコントラクト19により電子債権承認機関40において登録された電子債権の契約内容を開示する電子債権公開手段22をさらに有した構成としたので、STOを構成するための電子債権(として承認されたNFT)の購入を所望する買い手(STO生成体(証券会社)90)へ、取引に先立ち有用な情報を提供することができる。
【0116】
また、本実施形態の電子債権取引システム1によれば、電子債権取引用スマートコントラクト16が、銘柄ごとに時間をずらしてクロッシング処理を行う機能をさらに有した構成としたので、注文板をつくるに際し、約定を最大化するように、電子債権として承認されたNFT発行体30側の売り注文がSTO生成体(証券会社)90側の買い注文に対して不足する銘柄における第三者の自己による流動性調整のための処理時間を確保し易くなり、クロッシング処理を効率的に行うことができる。
【0117】
また、本実施形態の電子債権取引システム1によれば、電子債権取引用スマートコントラクト16が、各銘柄を同時にクロッシング処理し、銘柄間でクロッシング条件(金利指値)が合致しない場合、各銘柄の売りの状況を監視しながら、売りの銘柄間で玉の調整が可能であると判断できる場合に、流動性調整者による流動性調整のための銘柄の生成を待って約定に誘導する機能をさらに有した構成としたので、電子債権として承認されたNFT発行体30側の売り注文がSTO生成体(証券会社)90側の買い注文に対して不足する場合における第三者の自己による流動性調整の必要のない銘柄についてクロッシング処理を迅速に行うことができ、全体のクロッシング処理をより効率的に行うことができる。
【0118】
また、本実施形態の電子債権取引システム1によれば、銘柄コードを構成する複数桁のうちの所定桁が、クロッシング処理の作動を制御するクロッシング作動条件桁として機能し、電子債権取引用スマートコントラクト16が、買い注文の銘柄の銘柄コードにおけるクロッシング作動条件桁に“クロッシング処理の作動条件無指定”に相当する所定値以外の値が設定されている場合、当該銘柄コードを条件付き銘柄コードとして認識し、買い注文の銘柄に対応する売り注文の銘柄の当該銘柄コードのクロッシング作動条件桁に設定された値が合致しないときには、クロッシング処理を行わないように制御する機能をさらに有した構成としたので、電子債権の取引において、銘柄に備わる所定要因に応じて、クロッシング処理作動の制御を行うことができる。
【0119】
また、本実施形態の電子債権取引システム1によれば、電子債権取引用スマートコントラクト16が、売り方側から変換比率の設定を受け付けた場合、変換比率を用いて変換した売り方側の売り注文の銘柄の銘柄コードにおけるクロッシング作動条件桁を、“クロッシング処理の作動条件無指定”に相当する所定値にして、クロッシング処理を行う機能をさらに有した構成としたので、電子債権として承認されたNFT発行体30側の売り注文の銘柄が、クロッシング処理作動について条件付きの特性に該当しても、STO生成体(証券会社)90側の買い注文の銘柄のクロッシング処理作動についての条件付きの特性の有無の如何にかかわらず、変換比率の設定による流動性の調整を円滑に行うことができる。
【0120】
また、本実施形態の電子債権取引システム1によれば、STOを管理する機能を有するSTO管理用スマートコントラクト23をさらに有し、STO管理用スマートコントラクト23が、発行済STOの金額と同額の電子債権が設定(担保的に確保)されていることを確認し、発行済STOを構成する一部の電子債権が償還されたとき、当該電子債権の償還に伴う新たな電子債権の補充を自動的に行う機能を有した構成としたので、STOを維持するためのSTO生成体(証券会社)90の作業負担を軽減することができる。
【0121】
また、本実施形態の電子債権取引システム1によれば、STO管理用スマートコントラクト23が、発行済STOを構成する一部の電子債権が償還された場合において、電子債権の償還に伴う新たな電子債権の補充が行われない場合に、所定の警報をトークン発行体等に通知する機能をさらに有した構成としたので、STOを構成する一部の電子債権が償還され、償還された電子債権分の自動補充が何らかの原因でできない場合であっても、STO生成体(証券会社)90はSTOを維持するための措置(電子債権の補充)を取ることができ、STOを構成する電子債権が不足する等の問題を未然に回避することができる。
【0122】
また、本実施形態の電子債権取引システムを用いたクレジットサービス提供システム1によれば、NFT生成用スマートコントラクト11が、クレジット会社などの金融機関30による、クレジットカード利用者50の販売者(販売店、販売会社)60へ支払うべき代金を立て替えた、立替分の債権に基づいて、ブロックチェーンを用いたデジタル契約として、契約に基づく支払金額(支払い対象となる資産の種類、元金及び債務不履行のリスクに対する保険料としての金利)、契約に基づく支払金額の納付先の支払金額受付用スマートコントラクト12のアドレスが指定されたNFTを生成する構成としたので、クレジット会社などの金融機関30の立替の清算リスクを抑え、かつ、立替分の清算リスクに備える手数料を低減することができる。
【0123】
従って、本実施形態によれば、債務者、債権者の一方のみや事業主でない個人であっても、簡易に電子債権として利用可能で、債権者が債権を早期に資金化でき、電子債権の発行コストを低減するとともに、STO化を容易にし、STOの小口販売化による採算性を向上させ、STO購入者は金利を得ることができ、24時間取引、電子債権化における手数料の大幅削減により、電子債権の利用対象可能となる企業を、既存の電子記録債権を利用することについて利点の得られなかった小規模事業者にまで拡張でき、電子債権の活用範囲を大幅に広げることができ、さらには、クレジット会社などの金融機関の立替の清算リスクを抑え、かつ、立替分の清算リスクに備える手数料を低減することの可能な電子債権取引システム及びそれを用いたクレジットサービス提供システムが得られる。
【0124】
以上、本発明の電子債権取引システム及びそれを用いたクレジットサービス提供システムについて実施形態を用いて説明したが、本発明の電子債権取引システム及びそれを用いたクレジットサービス提供システムは、上記実施形態で説明した構成に限られるものではなく、本発明の請求項の範囲内でどのような形態にも構成可能である。
【0125】
さらに、本発明の電子債権取引システムについて、補足説明する。
本発明の電子債権取引システムは、電子債権をSTO化するためのクロッシング処理を効率化するべく、ブロックチェーンのデータ管理を活用する構成となっている。
なお、本発明の電子債権取引システムでは、ブロックチェーンを用いたNFT形式の契約を承認した電子債権だけではなく、契約締結当初はブロックチェーンを用いない債権を現在の電子債権記録機関で記録されることによって発生する電子債権について、オンライントランザクション処理を介してSTO化できるような構成であってもよい。
但し、本発明の電子債権取引システムでは、電子債権化の処理をより効率化し、エラーを抑えるために、契約締結当初からブロックチェーンを用いた処理を介在させた構成を備えている。
【0126】
例えば、A社とB社が所定の契約を締結する場合、契約締結当初からブロックチェーンを用いた管理を行う。
契約締結に関する一連の処理は、当該契約締結を行うためのスマートコントラクト(NFT生成用スマートコントラクト11)が行う。
契約は一つであり、NFT形式のブロックチェーン契約になる。
NFT形式のブロックチェーン契約は、様々な方法で管理対応することができる。
例えば、一番簡単なものとしては、ベースとなるワードで記載した契約書データに対し、両者が承認を行う方法である。現在、例えば、ドキュサイン(https://www.docusign.jp/)など、登録している会社のメールアドレスを承認軸として電子的に署名するサービスがある。電子的に署名された契約書データはクラウド管理される。
本発明の電子債権取引システムでは、上記と同様の機能を、ブロックチェーンを用いて行い、契約書データに電子署名(両社の秘密鍵で承認)をし、その契約書データをブロックチェーンに記録する。
上記処理を行うのが、スマートコントラクト(NFT生成用スマートコントラクト11)である。
【0127】
スマートコントラクト(NFT生成用スマートコントラクト11)の管理対象は、以下の通りである。
2社の秘密鍵により、契約書データを記録する。契約書データの参照権限は別途設定される。
契約書データにより、納品書データ(一つの場合もあれば、定期的に発行されるものもあり、契約書データの内容如何で定まる)が発行される。納品書データも両社の秘密鍵で承認されてブロックチェーンに記録される。納品書データが記録され、納品処理が終了すると、納品書データと対になる請求書データの発行処理に移行する。
このように、本発明の電子債権取引システムでは、トレーサビリティ(所定タスクの追跡)処理をスマートコントラクト(NFT生成用スマートコントラクト11)が管理(なお、追跡するタスクは契約締結時に設定)する。
請求書データが承認されると、請求書データに対して、電子債権化のための処理(電子債権としての承認申請、電子債権としての承認)が可能になる。
【0128】
また、当該請求書(請求権利)データは、電子債権化しなくても、担保設定を行うことができる構成となっている。電子債権承認申請用スマートコントラクト21を介して電子債権としての承認申請を行った場合において、当該請求書(請求権利)データに担保設定が行われている場合は、電子債権承認用スマートコントラクト13を介して当該請求書(請求権利)データの電子債権としての承認申請が拒否される。
電子債権承認用スマートコントラクト13が電子債権として承認するための審査の際には、締結当初の契約書データの記載内容を精査するなどタスクが発生する。審査は契約書データにおける例外処理などのリスク項目の有無の確認によって行う。契約書データにリスク項目の記載が認められた場合、電子債権としての承認は困難になる。
また、電子債権承認機関40において電子債権として承認された請求書(請求権利)データではなく、電子債権としての承認を拒否された請求権利データを、ファクタリング企業が買い付けることは可能であり、その買い付けた請求権利データをベースにファクタリング会社が電子債権に近似した債権(ファクタリング会社がデフォルトリスクを負うタイプ)を作成することも可能である。
また、電子債権としての承認申請手続にかかわる債権を銀行等の金融機関70が秘密鍵で承認・記録し、次に、電子債権としての承認を電子債権承認機関40が秘密鍵で承認・記録するようにすることも可能である。
なお、銀行等の金融機関70、電子債権承認機関40のいずれもが、電子債権として承認出来ない場合は、拒否理由を記録する。
【0129】
電子債権として承認された場合、電子債権は電子債権承認申請者に所有権がある。承認された電子債権を、スマートコントラクト(電子債権売注文発注用スマートコントラクト15)を介して転売指示を行い、クロッシング処理において買い手がつけば、グロスDVPで現金を受け取ることができる。
この場合に、期日に対する金利想定を考慮した割引価格で取引するか、金利形式で取引するかの2種類を選択指定可能である。
例えば、指値が価格(100円受け渡しに対して、98.75円などの売り注文指示、償還日に100円で支払われる)になるか、金利になるかを選択指定できる。電子債権の売り手側においては、早期資金化を所望する場合には割引価格で提示するのが好適となる。
なお、売り注文の約定が成立しない場合、売り手は指値条件を変更できる。
一方、STO生成体90となる買い手側は、金利を基準とした取引を所望することが想定される。
このため、本発明の電子債権取引システムでは、取引に際し、電子債権の価格の割引を金利に変換して、電子債権とSTOのクロッシング処理では金利を用いることを想定した構成となっている。
【0130】
電子債権が償還されるときには、決済用ステーブルコインなどに代金相当分が変換されて、電子債権の所有者のアドレスに入る。
詳しくは、電子債権の償還を管理するスマートコントラクト(NFT償還用スマートコントラクト17)が、電子債権を償還すると同時に、債権先の銀行口座にリンクした決済用ステーブルコインがスマートコントラクト(支払金額受付用スマートコントラクト12)の管理アドレスへ移動される。その後、スマートコントラクト(支払金額送付用スマートコントラクト14)が、電子債権の所有者のアドレスへ決済用ステーブルコインを送付する。
なお、決済用ステーブルコインの支払いが償還日に処理されない場合は、不渡り扱いになり、システム処理から切り離された法的処理(電子債権の担保になるような権利などが差し押さえられるという意味では、不渡り時の対処ルールなど)が、ブロックチェーンに記載される。
【0131】
その他、電子債権STO化用スマートコントラクト20を介して、電子債権をSTO化するとき、STOを構成する電子債権の銘柄コードと数量がブロックチェーンに記録される。
また、電子債権承認用スマートコントラクト13を介して、NFTを電子債権化するときには、電子債権銘柄登録用スマートコントラクト19を介して、銘柄コードが銘柄マスター情報として、ブロックチェーンに記録され、登録された銘柄情報は参照可能であると同時に、電子債権公開手段22を介して、WEBでも銘柄情報を開示する。
【0132】
さらに、本発明の電子債権取引システムの意義及び効果について補足説明する。
リーマンショック後、国内における銀行などの主要金融機関では、主軸業務が不良債権回収になり、融資などの業務における企業リスクの分析や格付け的な審査を行える人材がリストラされ、同時に新規人材は、融資などの業務のノウハウを得ることなく現在に至っている。その過程において、政府による超低金利政策により、債権回収から融資主導へと政策が変更されたが、銀行などの主要金融機関では、上述の理由より融資を行える人材が不在の状況にあるため、資金供給量が大きくなっても対処できない状況にある。
本発明の電子債権取引システムは、融資などの業務における企業リスクの分析や格付けなどのデータの一元管理(少ない知識で人的に対処可能)と、定形化した格付け分析(分析対象のデータの信頼性まで検査し、修正を行う)などにより、格付け業務を機械化することで、対処することが困難となっていた融資業務を行えるようにするものであり、さらには融資におけるリスクを排除するために、当該融資の資金源をSTOとし、STOでは低金利で運用難になっている投資家に、金利証券を提供できるようにしたものである。
そして、一連の業務フローをシステムで統合化したことで、金利についても有利なものを投資家に提供できる。
なお、本発明の電子債権取引システムにおいては、電子債権化において、本来想定したリスクとは異なる隠されたリスクが発生・確認された場合を想定し、投資家の不利益を生じないようにするために、上述のCDS的な処理をSTO生成体側にも実装することも可能である。また、隠されたリスクが発生した場合は、リスク発生源の格付け修正を自動的に行うことができるようにするのが好ましい。
【0133】
さらに、本発明の電子債権取引システムにおける電子債権の特異性について補足説明する。
本発明の電子債権取引システムにおける電子債権は、銀行等の金融機関が行う「担保・保証」をベースとした「定量的」評価基準だけではなく、将来性を含めた定性的評価を格付け的に行う証券的な要素が関係する。
銀行等の金融機関では当該格付けを評価することが難しい。そこで、本発明の電子債権取引システムでは、格付けの評価の元になる企業の基本情報のデータについて、自社が申請する項目、銀行等の金融機関が評価する定量項目、証券会社の評価する定性項目をブロックチェーンを介して共有するように構成するのが好ましい。これらの共有データをブロックチェーンを介して共有し、定期的に更新することで、データの精度を上げることができる。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明の電子債権取引システム及びそれを用いたクレジットサービス提供システムは、債権を取引することが必要とされる分野に有用である。
【符号の説明】
【0135】
1 電子債権取引システム(及びそれを用いたクレジットサービス提供システム)
11 NFT生成用スマートコントラクト
12 支払金額受付用スマートコントラクト
13 電子債権承認用スマートコントラクト
14 支払金額送付用スマートコントラクト
15 電子債権売注文発注用スマートコントラクト
16 電子債権取引用スマートコントラクト
17 NFT償還用スマートコントラクト
18 電子債権買注文条件指定受付用スマートコントラクト
19 電子債権銘柄登録用スマートコントラクト
20 電子債権STO化用スマートコントラクト
21 電子債権承認申請用スマートコントラクト
22 電子債権公開手段
23 STO管理用スマートコントラクト
30 債権者もしくはNFT発行体(クレジット会社などの金融機関)
40 電子債権承認機関
50 債務者(クレジットカード利用者(消費者))
60 販売者(販売店、販売会社)
70 銀行等の金融機関
90 STO生成体(証券会社)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
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図26
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