(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114530
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】複合材料、ヒートスプレッダ、および半導体パッケージ
(51)【国際特許分類】
H01L 23/36 20060101AFI20240816BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
H01L23/36 D
H05K7/20 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020349
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116366
【弁理士】
【氏名又は名称】二島 英明
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 啓太
(72)【発明者】
【氏名】前田 徹
(72)【発明者】
【氏名】近藤 大介
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322FA04
5E322FA09
5F136BC03
5F136BC07
5F136DA11
5F136FA03
5F136FA05
5F136FA71
5F136FA82
5F136FA83
(57)【要約】
【課題】低い線膨張係数と高い熱伝導率とを両立できる複合材料を提供する。
【解決手段】第1表面および第1表面の反対面である第2表面を有する板状の複合材料であって、複合材料は、複数の第1層と、少なくとも1つの第2層とを備え、第1表面および第2表面は、複合材料の厚さに沿った方向に交差する面をなしており、第1層および第2層は、第1層が第1表面および第2表面に位置するように厚さに沿った方向に交互に積層されており、第1層は、モリブデン板と、銅フィラーとを有し、記第2層は、銅を主成分とする金属材料の層であり、モリブデン板には、厚さに沿った方向にモリブデン板を貫通している複数の開口部が形成されており、銅フィラーは、開口部の内部に配置されている、複合材料。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1表面および前記第1表面の反対面である第2表面を有する板状の複合材料であって、
前記複合材料は、複数の第1層と、少なくとも1つの第2層とを備え、
前記第1層および前記第2層は、前記第1層が前記第1表面および前記第2表面に位置するように前記複合材料の厚さに沿った方向に交互に積層されており、
前記第1層は、モリブデン板と、銅フィラーとを有し、
前記第2層は、銅を主成分とする金属材料の層であり、
前記モリブデン板には、前記厚さに沿った方向に前記モリブデン板を貫通している複数の開口部が形成されており、
前記銅フィラーは、前記開口部の内部に配置されている、
複合材料。
【請求項2】
前記複合材料中におけるモリブデンの体積比率は、15%以上45%以下である、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記第1層の厚さは、0.05mm以上かつ前記複合材料の厚さの35%以下であり、
前記第2層の厚さは、0.025mm以上かつ前記複合材料の厚さの30%以下である、請求項1または請求項2に記載の複合材料。
【請求項4】
前記開口部の平均円相当径を前記第1層の厚さで除した値は、0.3以上5.0以下である、請求項3に記載の複合材料。
【請求項5】
前記開口部の平均円相当径を前記第1層の厚さで除した値は、1.6以上5.0未満である、請求項4に記載の複合材料。
【請求項6】
前記厚さに沿った方向に直交する前記第2層の断面における1mm2あたりの前記開口部の数は、3個未満である、請求項5に記載の複合材料。
【請求項7】
前記厚さに沿った方向に直交する前記第2層の断面における1mm2あたりの前記開口部の数は、2個未満である、請求項6に記載の複合材料。
【請求項8】
前記厚さに沿った方向に直交する前記第2層の断面における前記モリブデン板の開口率が20%以上である、請求項7に記載の複合材料。
【請求項9】
前記開口部の最小開口面積の平均値は、前記開口部の最大開口面積の平均値の40%以上100%以下である、請求項8に記載の複合材料。
【請求項10】
請求項1または請求項2に記載の複合材料を備え、
前記第1表面は、発熱源との接触面をなしている、
ヒートスプレッダ。
【請求項11】
請求項1または請求項2に記載の複合材料と、
半導体素子と、を備え、
前記半導体素子は、前記第1表面上に配置されている、
半導体パッケージ。
【請求項12】
セラミックス材料製のケース部材をさらに備え、
前記ケース部材は、前記半導体素子を取り囲むように前記第1表面上に配置されている、請求項11に記載の半導体パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複合材料、ヒートスプレッダ、および半導体パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、半導体パッケージのヒートスプレッダを構成する複合材料が開示されている。複合材料は板状である。複合材料は、第1表面と第1表面の反対面である第2表面とを有している。複合材料は、複数の第1層と、複数の第2層とを備えている。第1層および第2層は、複合材料の厚さに沿った方向に交互に積層されている。第1表面および第2表面を構成する層は第1層である。第1層は、銅を主成分とする金属材料で形成されている。第2層は、モリブデン板と、銅フィラーとを有している。モリブデン板は、モリブデン板を厚さに沿った方向に貫通している複数の開口部を有している。銅フィラーは、開口部の内部を満たすように配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の複合材料は、低い線膨張係数と高い熱伝導率とを両立している。特許文献1の複合材料のように低い線膨張係数を有しつつ、さらに高い熱伝導率を有する複合材料の開発が望まれている。
【0005】
本開示は、低い線膨張係数と高い熱伝導率とを両立できる複合材料を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の複合材料は、
第1表面および前記第1表面の反対面である第2表面を有する板状の複合材料であって、
前記複合材料は、複数の第1層と、少なくとも1つの第2層とを備え、
前記第1層および前記第2層は、前記第1層が前記第1表面および前記第2表面に位置するように前記複合材料の厚さに沿った方向に交互に積層されており、
前記第1層は、モリブデン板と、銅フィラーとを有し、
前記第2層は、銅を主成分とする金属材料の層であり、
前記モリブデン板には、前記厚さに沿った方向に前記モリブデン板を貫通している複数の開口部が形成されており、
前記銅フィラーは、前記開口部の内部に配置されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示の複合材料は、低い線膨張係数と高い熱伝導率とを両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態および試料No.1の複合材料の概略斜視図である。
【
図5】
図5は、実施形態の半導体パッケージの分解斜視図である。
【
図6】
図6は、変形例および試料No.2の複合材料の概略断面図である。
【
図7】
図7は、試料No.101の複合材料の概略断面図である。
【
図8】
図8は、試料No.102の複合材料の概略断面図である。
【
図9】
図9は、試料No.103の複合材料の概略断面図である。
【
図10】
図10は、試料No.201の複合材料の概略断面図である。
【
図11】
図11は、試料No.202の複合材料の概略断面図である。
【
図12】
図12は、試料No.203の複合材料の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
《本開示の実施形態の説明》
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
(1)本開示の一態様の複合材料は、
第1表面および前記第1表面の反対面である第2表面を有する板状の複合材料であって、
前記複合材料は、複数の第1層と、少なくとも1つの第2層とを備え、
前記第1層および前記第2層は、前記第1層が前記第1表面および前記第2表面に位置するように前記複合材料の厚さに沿った方向に交互に積層されており、
前記第1層は、モリブデン板と、銅フィラーとを有し、
前記第2層は、銅を主成分とする金属材料の層であり、
前記モリブデン板には、前記厚さに沿った方向に前記モリブデン板を貫通している複数の開口部が形成されており、
前記銅フィラーは、前記開口部の内部に配置されている。
【0011】
上記複合材料は、低い線膨張係数と高い熱伝導率とを両立できる。複合材料の線膨張係数とは、室温から800℃まで温度が変化した際の複合材料の厚さに沿った方向に直交している方向の線膨張係数である。複合材料の熱伝導率とは、室温において複合材料の厚さに沿った方向の熱伝導率である。上記複合材料は、銅フィラーを有する第1層が第1表面および第2表面に位置するため、はんだとの濡れ性がよい。そのため、上記複合材料は半導体素子などにはんだ付けし易い。よって、はんだ付けするために上記複合材料に別途めっきを設けなくてもよい。
【0012】
(2)上記(1)の複合材料において、
前記複合材料中におけるモリブデンの体積比率は、15%以上45%以下であってもよい。
【0013】
モリブデンの体積比率が15%以上である複合材料は、線膨張係数を小さくし易い。モリブデンの体積比率が45%以下である複合材料は、複合材料の厚さに沿った方向における熱伝導率を高め易い。
【0014】
(3)上記(1)または上記(2)の複合材料において、
前記第1層の厚さは、0.05mm以上かつ前記複合材料の厚さの35%以下であり、
前記第2層の厚さは、0.025mm以上かつ前記複合材料の厚さの30%以下であってもよい。
【0015】
第1層の厚さが0.05mm以上であることで、線膨張係数が相対的に低い第1層が厚い。第2層の厚さが複合材料の厚さの30%以下であることで、線膨張係数が相対的に高い第2層が過度に厚くならない。よって、上記(3)の複合材料は、線膨張係数が小さくなり易い。
【0016】
第1層の厚さが複合材料の厚さの35%以下であることで、熱伝導率が相対的に低い第1層が過度に厚くならない。第2層の厚さが0.025mm以上であることで、熱伝導率が相対的に高い第2層が厚い。よって、上記(3)の複合材料は、熱伝導率が高くなり易い。
【0017】
(4)上記(1)から上記(3)のいずれかの複合材料において、
前記開口部の平均円相当径を前記第1層の厚さで除した値は、0.3以上5.0以下であってもよい。
【0018】
上記値が0.3以上である複合材料は、熱伝導率が高くなり易い。上記値が5.0以下である複合材料は、線膨張係数が小さくなり易い。
【0019】
(5)上記(1)から上記(4)のいずれかの複合材料において、
前記開口部の平均円相当径を前記第1層の厚さで除した値は、1.6以上5.0未満であってもよい。
【0020】
上記値が1.6以上である複合材料は、熱伝導率がより高くなり易い。上記値が5.0未満である複合材料は、線膨張係数がより小さくなり易い。
【0021】
(6)上記(1)から上記(5)のいずれかの複合材料において、
前記厚さに沿った方向に直交する前記第2層の断面における1mm2あたりの前記開口部の数は、3個未満であってもよい。
【0022】
上記数が3個未満である複合材料は、線膨張係数が小さくなり易い。
【0023】
(7)上記(1)から上記(6)のいずれかの複合材料において、
前記厚さに沿った方向に直交する前記第2層の断面における1mm2あたりの前記開口部の数は、2個未満であってもよい。
【0024】
上記数が2個未満である複合材料は、線膨張係数がより小さくなり易い。
【0025】
(8)上記(1)から上記(7)のいずれかの複合材料において、
前記厚さに沿った方向に直交する前記第2層の断面における前記モリブデン板の開口率が20%以上であってもよい。
【0026】
上記開口率が20%以上である複合材料は、熱伝導率が高くなり易い。
【0027】
(9)上記(1)から上記(8)のいずれかの複合材料において、
前記開口部の最小開口面積の平均値は、前記開口部の最大開口面積の平均値の40%以上100%以下であってもよい。
【0028】
上記最大開口面積の平均値に対する上記最小開口面積の平均値が40%以上である複合材料は、熱伝導率が高くなり易い。上記最大開口面積の平均値に対する上記最小開口面積の平均値が100%以下である複合材料は、線膨張係数が小さくなり易い。
【0029】
(10)本開示の一態様のヒートスプレッダは、
上記(1)から上記(9)のいずれかの複合材料を備え、
前記第1表面は、発熱源との接触面をなしている。
【0030】
上記(10)のヒートスプレッダは、低い線膨張係数と高い熱伝導率とを両立できる複合材料を備えるため、半導体素子の放熱に好適である。
【0031】
(11)本開示の一態様の半導体パッケージは、
上記(1)から上記(9)のいずれかの複合材料と、
半導体素子と、を備え、
前記半導体素子は、前記第1表面上に配置されている。
【0032】
上記(11)の半導体パッケージは、半導体素子と複合材料との界面に発生する熱応力が小さくなり易いため、半導体素子を損傷させ難い上に放熱させ易い。
【0033】
(12)上記(11)の半導体パッケージにおいて、
セラミックス材料製のケース部材をさらに備え、
前記ケース部材は、前記半導体素子を取り囲むように前記第1表面上に配置されていてもよい。
【0034】
上記(12)の半導体パッケージは、ケース部材と複合材料との界面に発生する熱応力を小さくし易いため、半導体素子などの破損が生じ難い。
【0035】
《本開示の実施形態の詳細》
本開示の複合材料、ヒートスプレッダ、および半導体パッケージの詳細を、以下に説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。各図面が示す部材の大きさなどは、説明を明確にする目的で表現されており、必ずしも実際の寸法関係などを表すものではない。
【0036】
《実施形態》
〔複合材料〕
図1から
図3を参照して、実施形態の複合材料10を説明する。
図1に示されるように、複合材料10は板状である。複合材料10の厚さに沿った方向を、単に「厚さに沿った方向」とする。複合材料10は、第1表面10aと、第2表面10bとを有している。第1表面10aおよび第2表面10bは、厚さに沿った方向に交差する複合材料10の面をなしている。第2表面10bは、第1表面10aの反対面である。
図2に示されるように、複合材料10は、複数の第1層11と、少なくとも1つの第2層12とを有している。第1層11は、モリブデン板13と、銅フィラー14とを有している。
図2および
図3に示されるように、モリブデン板13には、複数の開口部13cが形成されている。各開口部13cは、モリブデン板13を厚さに沿った方向に貫通している。銅フィラー14は、開口部13cの内部に配置されている。第2層12は、銅を主成分とする金属材料の層である。複合材料10の特徴の一つは、
図2に示されるように、第1層11が第1表面10aおよび第2表面10bに位置するように、第1層11および第2層12が厚さに沿った方向に交互に積層されている点にある。
【0037】
[層数]
複合材料10における第1層11の数、第2層12の数、および第1層11の数と第2層12の数の合計数は、特に限定されず適宜選択できる。
図2に示される例では、第1層11の数は3であり、第2層12の数は2であり、上記合計数は5である。
【0038】
[体積比率]
複合材料10中におけるモリブデンの体積比率は、例えば、15%以上45%以下である。上記体積比率とは、複合材料10の体積を100%とする場合に対するモリブデンの割合である。上記体積比率が15%以上である複合材料10は、後述する線膨張係数を小さくし易い。上記体積比率が45%以下である複合材料10は、後述する複合材料10の熱伝導率を高め易い。上記体積比率は、15%超40%以下、17%以上35%以下であってもよい。
【0039】
上記体積比率は、次のようにして求められる。銅とモリブデンの重量比率は、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-OES)によって求められる。得られた重量比率と各物質の密度とから体積比率が算出される。算出に用いる銅の密度は8.96g/cm3、モリブデンの密度は10.2g/cm3とする。
【0040】
[第1層]
各第1層11は、上述したように、モリブデン板13と、銅フィラー14とを有している。各第1層11とは、後述する各モリブデン板13の第1面13aと第2面13bとの間の領域をいう。モリブデン板13は、モリブデンを主成分とする金属材料の板である。「モリブデンを主成分とする金属材料」とは、モリブデン板13全体の質量を100%としたとき、モリブデンの含有割合が50質量%以上の金属材料をいう。モリブデンを主成分とする金属材料は、70質量%以上のモリブデンを含有していてもよい。モリブデン板13は、例えば、純モリブデンの板である。純モリブデンは、モリブデンと残部を構成している不可避不純物とからなる金属材料である。純モリブデンは、純度が99.95%以上である。銅フィラー14は、銅を主成分とする金属材料で形成されている。「銅を主成分とする金属材料」とは、銅フィラー14全体の質量を100%としたとき、銅の含有割合が50質量%以上の金属材料をいう。銅を主成分とする金属材料は、70質量%以上の銅を含有していてもよい。銅フィラー14は、例えば、純銅で形成されている。純銅とは、銅と残部を構成している不可避不純物とからなる金属材料である。純銅は、純度が99.9%以上である。銅フィラー14は、例えば、後述する第2層12と同一の材料からなる。
【0041】
複合材料10の厚さを厚さT1とする。各第1層11の厚さを厚さT2とする。厚さT2は、例えば、0.05mm以上かつ厚さT1の35%以下である。厚さT2が厚さT1の35%以下であることで、熱伝導率が相対的に低い第1層11が過度に厚くならない。よって、複合材料10は、熱伝導率が高くなり易い。厚さT2が0.05mm以上であることで、線膨張係数が相対的に低い各第1層11が厚い。よって、複合材料10は、線膨張係数が小さくなり易い。厚さT2は、0.10mm以上かつ厚さT1の35%以下、0.15mm以上かつ厚さT1の30%以下であってもよい。
【0042】
厚さT1は、次のようにして求められる。第1表面10aと第2表面10bとの間の厚さに沿った方向の長さが測定される。測定数は3箇所以上である。測定された全ての長さの平均値が厚さT1である。厚さT2は、次のようにして求められる。切断機によって複合材料10が厚さに沿った方向に切断されることで厚さに沿った断面がとられる。上記断面において、各第1層11の厚さに沿った方向の長さが測定される。各第1層11の厚さに沿った方向の長さは、モリブデン板13の厚さ、即ち、後述するモリブデン板13の第1面13aと第2面13bとの間の厚さに沿った方向の長さである。測定数は3箇所以上である。測定された全ての長さの平均値が厚さT2である。
【0043】
各モリブデン板13は、第1面13aと、第2面13bとを有している。第1面13aおよび第2面13bは、厚さに沿った方向に交差する面である。第2面13bは、複合材料10の厚さに沿った方向における第1面13aの反対面である。第1表面10aに位置するモリブデン板13の第1面13aが第1表面10aの一部である。第2表面10bに位置するモリブデン板13の第2面13bが第2表面10bの一部である。
【0044】
各モリブデン板13に形成された複数の開口部13cは、第1面13aから第2面13bに向かう方向に沿って各モリブデン板13を貫通している。各開口部13cの中心は、各モリブデン板13の厚さに沿った方向に直線上に位置する。各モリブデン板13における複数の開口部13cは、互いに独立している。即ち、各モリブデン板13における隣り合う開口部13c同士は連通していない。各モリブデン板13における複数の開口部13cは、三次元網目状に構成されておらず、規則的に構成されている。各モリブデン板13における複数の開口部13cの形状は互いに同一であり、サイズは互いに一様である。
【0045】
図3に示されるように、厚さに沿った方向に直交する断面視において、各開口部13cは、円形形状を有している。上記断面視において、各開口部13cの形状は、円形形状に限られない。上記断面視において、各開口部13cの形状は、楕円形状、多角形形状、またはその他の形状のいずれであってもよい。
【0046】
厚さに沿った方向に直交する断面視において、複数の開口部13cは、格子配列をなすように並んでいる。より具体的には、上記断面視において、複数の開口部13cは、正方格子状に並んでいる。上記断面視において、複数の開口部13cは、長方格子状に並んでいてもよい。
【0047】
1mm2あたりの開口部13cの数は、例えば、3個未満である。上記数が3個未満である複合材料10は、線膨張係数が小さくなり易い。1mm2あたりの開口部13cの数は、モリブデン板13の厚さに沿った方向における中央を通り、かつ厚さに沿った方向に直交する断面にある開口部13cの数を上記断面の面積で除することにより得られる。1mm2あたりの開口部13cの数は、2個未満であってもよい。上記数が2個未満である複合材料10は、線膨張係数がより小さくなり易い。
【0048】
モリブデン板13の厚さに沿った方向における中央を通り、かつ厚さに沿った方向に直交する断面は、次のようにして露出される。複合材料10を側面からデジタルマイクロスコープを用いて観察することにより、第1表面10aとモリブデン板13の厚さに沿った方向における中央との間の距離が測定される。平面研磨機または自動回転研磨機を用いて第1表面10aの研磨が行われる。この際の研磨量は、上記のようにして測定された第1表面10aとモリブデン板13の厚さに沿った方向における中央との間の距離と等しくなるように設定される。
【0049】
各モリブデン板13の開口率は、例えば、20%以上である。上記開口率は次のようにして得られる。モリブデン板13の厚さに沿った方向における中央を通り、かつ厚さに沿った方向に直交する断面において開口部13cの開口面積の合計が測定される。測定された合計値を上記断面の面積で除する。上記開口面積は、デジタルマイクロスコープを用いて測定される。上記開口率が20%以上である複合材料10は、熱伝導率が高くなり易い。上記開口率は、30%以上または35%以上であってもよい。上記開口率は、例えば、70%以下である。上記開口率は60%以下であってもよい。
【0050】
厚さに沿った方向の任意の位置における開口部13cの円相当径を、開口径Dとする。開口径Dは、厚さに沿った方向の任意の位置における開口部13cの面積をπ/4で除した値の平方根を計算することにより得られる。開口径Dは、第1面13aに平行な面で測定される。
【0051】
本例の開口径Dは、第1面13aと第2面13bとの間において変化している。即ち、本例の開口径Dは、第1面13aと第2面13bとの間にわたって一定ではない。本例の開口径Dは、第1面13aおよび第2面13bの各々から第1面13aと第2面13bとの中間に向かうにしたがって小さくなっている。即ち、本例の開口径Dは、第1面13aから第1面13aと第2面13bとの中間に向かうにしたがって小さくなっており、第1面13aと第2面13bとの中間から第2面13bに向かうにしたがって大きくなっている。本例とは異なり、開口径Dは、第1面13aから第2面13bまたは第2面13bから第1面13aに向かうにしたがって減少していてもよい。本例とは異なり、開口径Dは、第1面13aと第2面13bとの間にわたって一定であってもよい。
【0052】
各モリブデン板13の第1面13aと第2面13bとの間におけるの各開口径Dの最大値が開口径Dmaxである。開口径Dmaxは次のようにして求める。第1表面10aに沿った各開口部13cの形状は厚さに沿った方向に相似形であるとみなす。第1表面10aにおける各開口部13cの形状が真円形状である場合、各開口径Dmaxは、各開口部13cの直径の最大値である。各開口部13cの直径の最大値は、第1表面10aにおける各開口部13cの直径を通って厚さに沿った方向に切断した断面において、各開口部13cの厚さに沿った方向における第1表面10aに平行な最大幅である。第1表面10aにおける各開口部13cの形状が楕円形状である場合、各開口径Dmaxは、各開口部13cの等面積円相当径の最大値である。各開口部13cの等面積円相当径の最大値は、各開口部13cの厚さに沿った方向における第1表面10aに平行な長軸の最大長さと短軸の最大長さとから求められた楕円形状の最大面積と同じ面積を有する真円の直径である。上記長軸の最大長さは、第1表面10aにおける各開口部13cの長軸を通って厚さに沿った方向に切断した断面において、各開口部13cの厚さに沿った方向における第1表面10aに平行な最大幅である。上記短軸の最大長さは、第1表面10aにおける各開口部13cの長軸と短軸の比と、上記長軸の最大長さと、から算出される。開口径Dmaxの平均値が平均円相当径と定義される。開口径Dmaxの平均値は、全ての開口部13cの開口径Dmaxを合計した値を開口部13cの総数で除した値である。
【0053】
第1層11における上記平均円相当径を厚さT2で除した値は、例えば、0.3以上5.0以下である。上記値が0.3以上である複合材料10は、熱伝導率が高くなり易い。上記値が5.0以下である複合材料10は、線膨張係数が小さくなり易い。第1層11における上記平均円相当径を厚さT2で除した値は、1.6以上5.0未満であってもよい。上記値が1.6以上である複合材料10は、熱伝導率がより高くなり易い。上記値が5.0未満である複合材料10は、線膨張係数がより小さくなり易い。
【0054】
各モリブデン板13の第1面13aと第2面13bとの間における各開口部13cの開口面積の最小値が各開口部13cの最小開口面積である。各モリブデン板13の第1面13aと第2面13bとの間における各開口部13cの開口面積の最大値が各開口部13cの最大開口面積である。各開口部13cの開口面積は、第1面13aに平行な面で測定される。各最小開口面積と各最大開口面積は次のようにして求める。第1表面10aに沿った開口部13cの形状は厚さに沿った方向に相似形であるとみなす。第1表面10aにおける各開口部13cの形状が真円形状である場合、各最小開口面積は各開口部13cの直径の最小値から求められ、各最大開口面積は各開口部13cの直径の最大値から求められる。各開口部13cの直径の最小値と最大値とは、第1表面10aにおける各開口部13cの直径を通って厚さに沿った方向に切断した断面において、各開口部13cの厚さに沿った方向における第1表面10aに平行な最小幅と最大幅である。第1表面10aにおける各開口部13cの形状が楕円形状である場合、各最小開口面積は各開口部13cの長軸および短軸の最小長さから求められ、各最大開口面積は各開口部13cの長軸および短軸の最大長さから求められる。上記長軸の最小長さは、第1表面10aにおける各開口部13cの長軸を通って厚さに沿った方向に切断した断面において、各開口部13cの厚さに沿った方向における第1表面10aに平行な最小幅である。上記短軸の最小長さは、第1表面10aにおける各開口部13cの長軸と短軸の比と、上記長軸の最小長さと、から算出される。各開口部13cの長軸および短軸の最大長さは、上述した通りである。
【0055】
開口部13cの最小開口面積の平均値S1は、例えば、開口部13cの最大開口面積の平均値S2の40%以上100%以下である。平均値S1は、全ての開口部13cの最小開口面積を合計した値を開口部13cの総数で除した値である。平均値S2は、全ての開口部13cの最大開口面積を合計した値を開口部13cの総数で除した値である。上記最大開口面積の平均値に対する上記最小開口面積の平均値が40%以上である複合材料10は、熱伝導率が高くなり易い。上記最大開口面積の平均値に対する上記最小開口面積の平均値が100%以下である複合材料10は、線膨張係数が小さくなり易い。平均値S1は、平均値S2の40%超100%以下、平均値S2の45%以上100%以下であってもよい。
【0056】
[第2層]
第2層12とは、厚さに沿った方向に隣り合うモリブデン板13の間の領域をいう。例えば、第1のモリブデン板13と第2のモリブデン板13とが厚さに沿った方向に隣り合っている場合、第2層12とは、第1のモリブデン板13の第1面13aと第2のモリブデン板13の第2面13bとの間の領域をいう。各第2層12は、上述したように、銅を主成分とする金属材料で形成されている。「銅を主成分とする金属材料」とは、第2層12全体の質量を100%としたとき、銅の含有割合が50質量%以上の金属材料をいう。銅を主成分とする金属材料は、70質量%以上の銅を含有していてもよい。各第2層12は、例えば、純銅で形成されている。
【0057】
各第2層12の厚さを厚さT3とする。厚さT3は、例えば、0.025mm以上かつ厚さT1の30%以下である。第2層12の厚さが0.025mm以上であることで、熱伝導率が相対的に高い第2層12が厚い。よって、複合材料10は、熱伝導率が高くなり易い。第2層12の厚さが複合材料10の厚さの30%以下であることで、線膨張係数が相対的に高い第2層12が過度に厚くならない。よって、複合材料10は、線膨張係数が小さくなり易い。厚さT3は、0.035mm以上かつ厚さT1の30%未満、0.045mm以上かつ厚さT1の30%未満であってもよい。厚さT3は、厚さT2と同様の求め方で求められる。厚さT3は、複合材料10の厚さに沿った断面において、各第2層12の厚さに沿った長さが測定される。各第2層12の厚さに沿った長さは、隣り合うモリブデン板13同士の間の厚さに沿った方向の長さである。測定数は3箇所以上である。測定された全ての長さの平均値が厚さT3である。
【0058】
[線膨張係数]
複合材料10の線膨張係数は、例えば、9.0ppm/K以下である。複合材料10の線膨張係数とは、室温から800℃まで温度が変化した際の複合材料10の厚さに沿った方向に直交している方向の線膨張係数である。複合材料10の線膨張係数は、8.8ppm/K以下、8.6ppm/K以下であってもよい。
【0059】
複合材料10の線膨張係数は、ブルカーAXS社製TD5000SAを用いて室温から800℃までの温度範囲における複合材料10の厚さに沿った方向に直交している方向の膨張変位を測定することにより算出される。複合材料10の線膨張係数の測定に用いられる試料は、複合材料10から切り出される。上記試料の平面形状は、矩形形状とされる。上記試料の平面形状のサイズは、5mm×15mmとされる。複合材料10の線膨張係数は、3つの上記試料の線膨張係数の平均値とされる。
【0060】
[熱伝導率]
複合材料10の熱伝導率は、例えば、270W/m・K以上である。複合材料10の熱伝導率とは、室温において複合材料10の厚さに沿った方向の熱伝導率である。「室温」とは、27℃をいう。複合材料10の熱伝導率は、300W/m・K以上、320W/m・K以上、350W/m・K以上であってもよい。
【0061】
複合材料10の熱伝導率は、複合材料10の熱拡散係数と、複合材料10の各構成材料の体積比および比熱とに基づいて算出される。複合材料10の熱拡散係数は、レーザフラッシュ法を用いて測定される。複合材料10の熱拡散係数の測定装置には、NETZSCH社製LFA457MicroFlashが用いられる。複合材料10の熱拡散係数の測定に用いられる試料は、複合材料10から切り出される。上記試料の平面形状は円形形状とされる。上記試料の平面形状の直径は10mmとされる。複合材料10の各構成材料の比熱は、日本金属学会編「金属データブック第4版」(2004年、丸善出版)に基づいて決定される。複合材料10の熱伝導率の測定に先立って、同一形状の純銅試料の熱伝導率を同一条件下で測定し、その結果をリファレンスとして用いて測定結果の補正を行う。複合材料10の熱伝導率は、3つの上記試料の熱伝導率の平均値とされる。算出に用いる銅の比熱は386J/(kg・K)、モリブデンの比熱は251J/(kg・K)とする。
【0062】
〔複合材料の製造方法〕
複合材料10は、
図4に示される準備工程S1と、穴あけ工程S2と、接合工程S3とを備える複合材料の製造方法によって製造できる。
【0063】
準備工程S1では、複数の第1板材と、少なくとも1枚の第2板材とが準備される。各第1板材は、モリブデンを主成分とする金属材料からなる板材である。第2板材は、銅を主成分とする金属材料からなる板材である。用意する第1板材および第2板材の厚さは、作製される複合材料10の厚さ、複合材料10中におけるモリブデンの体積比率、および第1層11と第2層12の数、をどの程度にするかに応じて適宜選択される。
【0064】
穴あけ工程S2では、第1板材に穴あけ加工して、第1板材の厚さに沿った方向に貫通する複数の開口部13cが形成された第1加工板材が作製される。接合工程S3を経ると、第1加工板材はモリブデン板13となる。穴あけ加工は、例えば、エッチングまたはレーザ照射により行われる。穴あけ加工は、第1板材の第1面および第2面の両方から行ってもよいし、第1面または第2面のみから行ってもよい。第1板材の第1面および第2面の両方から穴あけ加工されることで、
図2に示すような開口部13cが形成される。即ち、開口径Dが第1面13aおよび第2面13bの各々から第1面13aと第2面13bとの中間に向かうにしたがって小さくなっている開口部13cが形成された第1加工板材が作製される。第1板材の第1面または第2面のみから穴あけ加工されることで、図示は省略しているものの、開口径Dが第1面13aから第2面13bまたは第2面13bから第1面13aに向かうにしたがって減少している開口部13cが形成された第1加工板材が作製される。
【0065】
接合工程S3では、積層体を加熱および加圧する。積層体は、型の内部に第1加工板材と第2板材とを順に交互に積層されることで作製される。第1加工板材と第2板材の積層は、積層体の最下層と最上層に第1加工板材が配置されるように行われる。型は、例えば、グラファイトで形成されている。加熱温度は、第2板材の融点未満かつ第2板材が十分に軟化する温度である。加熱温度は、例えば、1000℃である。加圧は、積層体の厚さに沿った方向に行われる。加圧は、加熱により軟化した第2板材を流動させるために必要な圧力で行われる。圧力は、例えば、50MPaである。上記の加熱及び加圧により、第1加工板材および第2板材が相互に接合される。上記の加熱及び加圧により、第2板材が流動することで、第2板材の一部が第1加工板材の開口部13cに充填されて銅フィラー14となる。開口部13cに充填された銅フィラー14と第1加工板材とは第1層11となる。開口部13cに充填されなかった第2板材の残部は第2層12となる。よって、
図2に示される構造の複合材料10が製造される。
【0066】
〔半導体パッケージの構成〕
図5を参照して実施形態の半導体パッケージを説明する。半導体パッケージ100は、複合材料10と、半導体素子30と、ケース部材40と、蓋41と、端子50aおよび端子50bとを備えている。
【0067】
複合材料10は、半導体パッケージ100のヒートスプレッダを構成している。半導体素子30は、動作時に発熱源となる。半導体素子30は、第1表面10a上に配置されている。半導体素子30と第1表面10aとの間には、伝熱部材が介在されていてもよい。
【0068】
ケース部材40は、例えば、セラミックス材料で構成されている。セラミックス材料は、例えば、アルミナ(Al2O3)である。ケース部材40の形状は、矩形の枠状である。ケース部材40は、半導体素子30を取り囲むように第1表面10a上に配置されている。ケース部材40と第1表面10aとの間は、例えば、ろう付けにより接合されている。ケース部材40と複合材料10とがろう付けされる際、複合材料10は高温にさらされる。高温とは、例えば、例えば800℃程度である。複合材料10自体の線膨張係数とケース部材40を構成するアルミナの線膨張係数との差は小さい。そのため、複合材料10とケース部材40との界面に発生する熱応力が小さく、半導体素子30などの破損が生じ難い。蓋41は、例えば、セラミックス材料または金属材料で構成されている。蓋41は、ケース部材40の開口を閉塞している。
【0069】
端子50aおよび端子50bは、ケース部材40に挿入されている。端子50aおよび端子50bの第1端部は、第1表面10aとケース部材40と蓋41により画される空間内に位置している。端子50aおよび端子50bの第2端部は、上記空間の外部に位置している。端子50aおよび端子50aは、例えば、金属材料で構成されている。金属材料は、例えば、コバールである。
【0070】
図示されていないものの、端子50aおよび端子50bの第1端部は、半導体素子30に電気的に接続されている。半導体パッケージ100は、端子50aおよび端子50bの第2端部によって半導体パッケージ100とは別の装置または回路と電気的に接続される。
【0071】
第2表面10bには、放熱部材60が取り付けられる。放熱部材60は、例えば、内部に冷媒が流れる流路が形成されている金属板である。放熱部材60は、これに限られるものではない。放熱部材60は、例えば、冷却フィンであってもよい。放熱部材60と第2表面10bとの間には、図示しない伝熱部材が介在されていてもよい。
【0072】
《変形例》
図6を参照して、変形例に係る複合材料10を説明する。
図6は、
図2に示される断面図と同様の位置で複合材料10を切断した断面図である。
図6に示される例のように、第1層11の数は2であり、第2層12の数は1であり、上記合計数は3であってもよい。
【0073】
《試験例1》
試験例1では、モリブデン板の開口部の有無と、モリブデン板の位置の違いとが、複合材料の線膨張係数および熱伝導率に及ぼす影響を調べた。
【0074】
〔試料No.1〕
試料No.1には、
図1から
図3を参照して説明した実施形態の複合材料10を準備した。試料No.1の複合材料10は、次のようにして作製された。純モリブデンからなる第1板材を3枚用意し、純銅からなる第2板材を2枚用意した。各第1板材および各第2板材を直径29mmの円板状に加工した。
【0075】
円板状の各第1板材を穴あけ加工した。穴あけ加工によって、各第1板材の厚さに沿った方向に貫通する複数の開口部13cが形成された第1加工板材を作製した。穴あけ加工は、各第1板材の第1面と第2面の両方からレーザ照射によって行った。直径が30mmのグラファイト製の型の内部に第1加工板材と第2板材とを順に交互に配置した。この配置によって、最下層から最上層に向かって順に第1加工板材、第2板材、第1加工板材、第2板材、および第1加工板材が並んだ積層体が作製された。表1に各板材の厚さが示されている。表1の積層順の欄は、各板材が積層された順番に対応している。下段から上段に順に記載された「第1加工板材」、「第2板材」、「第1加工板材」、「第2板材」、および「第1加工板材」は、積層体の最下層から最上層の順に並んだ「第1加工板材」、「第2板材」、「第1加工板材」、「第2板材」、および「第1加工板材」を示している。この点は、他の試料でも同じである。表1の意義は、後述する表4および表7でも同じである。積層体を、温度1000℃、時間60分、圧力50MPaの条件でホットプレスによって接合した。ホットプレス後の厚さが大体2mmとなるようにした。
【0076】
作製された試料No.1の複合材料10は、
図2に示されるように、第1層11が第1表面10aおよび第2表面10bに位置するように、第1層11および第2層12が厚さに沿った方向に交互に積層されていた。第1層11の数は3であり、第2層12の数は2であり、第1層11の数と第2層12の数の合計数は5であった。第1層11は、複数の開口部13cが形成されたモリブデン板13と各開口部13cの内部に配置された銅フィラー14とで構成されていた。モリブデン板13は、純モリブデンの板であった。銅フィラー14は、純銅で形成されていた。第2層12は、純銅で形成されていた。試料No.1の複合材料10の平面形状は円形形状であった。平面形状の直径は29mmであった。
【0077】
〔試料No.101〕
図7に試料No.101の複合材料10の断面が示されている。
図7の断面は、
図2に示す断面と同様の位置で複合材料10が切断された状態を示す。この点は後述する
図8,
図9でも同様である。試料No.101の複合材料10は、主に以下の点を除き、試料No.1と同様にして作製された。
(A)第2板材は4枚用意した。
(B)用意した第2板材の厚さを異ならせた。
(C)第1板材は穴あけ加工されなかった。
(D)第1板材と第2板材の積層した順番を逆にした。
【0078】
作製された試料No.101の複合材料10は、主に以下の点が試料No.1の複合材料10と異なっていた。
(A)第1層11の数は4であり、第2層12の数は3であり、第1層11の数と第2層12の数の合計数は7であった。
(B)第1層11は、純銅で形成されていた。第2層12は、純モリブデンで形成されていた。
(C)第1層11および第2層12のいずれにも開口部が形成されていなかった。
【0079】
〔試料No.102〕
図8に試料No.102の複合材料10の断面が示されている。試料No.102の複合材料10は、第1板材が穴あけ加工されなかった点を除き、試料No.1と同様にして作製された。
【0080】
作製された試料No.102の複合材料10は、主に以下の点が試料No.1の複合材料10と異なっていた。
(A)第1層11は、純モリブデンで形成されていた。第2層12は、純銅で形成されていた。
(B)第1層11および第2層12のいずれにも開口部が形成されていなかった。
【0081】
〔試料No.103〕
図9に試料No.103の複合材料10の断面が示されている。試料No.103の複合材料10は、主に以下の点を除き、試料No.1と同様にして作製された。
(A)第2板材は4枚用意した。
(B)用意した第2板材の厚さを異ならせた。
(C)第1加工板材と第2板材の積層した順番を逆にした。
【0082】
作製された試料No.103の複合材料10は、主に以下の点が試料No.1の複合材料10と異なっていた。
(A)第1層11の数は4であり、第2層12の数は3であり、第1層11の数と第2層12の数の合計数は7であった。
(B)第1層11は、純銅で形成されていた。第2層12は、複数の開口部13cが形成されたモリブデン板13と各開口部13cの内部に配置された銅フィラー14とで構成されていた。
【0083】
〔厚さ・モリブデンの体積比率〕
各試料の複合材料10の厚さ、各第1層11の厚さ、各第2層12の厚さ、および複合材料10中におけるモリブデンの体積比率が表1に示されている。例えば、表1の試料No.1において、上段から下段に順に記載された「第1層」、「第2層」、「第1層」、「第2層」、および「第1層」とは、複合材料10が最上層から最下層の順に「第1層」、「第2層」、「第1層」、「第2層」、および「第1層」によって構成されていることを示している。この点は、他の試料でも同じである。表1の「モリブデン板、銅フィラー」とは、複数の開口部13cが形成されたモリブデン板13と各開口部13cの内部に配置された銅フィラー14とで構成されていることを示している。「銅」とは、開口部が形成されていない銅板で構成されていることを示している。「モリブデン」は、開口部が形成されていないモリブデン板で構成されていることを示している。表1の意義は、後述する表4、表7、表10、表13でも同じである。
【0084】
〔開口部の諸元〕
試料No.1と試料No.103の複合材料10における開口部13cの諸元が表2に示されている。表2の「-」は、開口部13cが形成されていないことを示す。
「数(個/mm2)」は、1mm2あたりの開口部13cの数である。
「開口率(%)」は、モリブデン板13の開口率である。
「平均円相当径(mm)」は、開口部13cの開口径Dmaxの平均円相当径である。
「平均円相当径/厚さ」は、試料No.1では上記平均円相当径を第1層11の厚さT2で除した値であり、試料No.103では上記平均円相当径を第2層12の厚さで除した値である。
「平均値S1(mm2)」は、開口部13cの最小開口面積の平均値S1である。
「平均値S2(mm2)」は、開口部13cの最大開口面積の平均値S2である。
「S1/S2(%)」は、開口部13cの最大開口面積の平均値S2に対する開口部13cの最小開口面積の平均値S1の比率である。
表2の値は、実施形態で説明した通りに求めた。表2の意義は、後述する表5、表8、表11、表14でも同じである。
【0085】
〔線膨張係数・熱伝導率〕
各試料の複合材料10の線膨張係数(ppm/K)と熱伝導率(W/m・K)とが表3に示されている。表3の値は、実施形態で説明した通りに求めた。
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
表3に示されるように、試料No.1の複合材料10の線膨張係数は、試料No.101と試料No.102の複合材料10の線膨張係数に比較して過度に大きくなかった。試料No.1の複合材料10の熱伝導率は、試料No.101と試料No.102の複合材料10の熱伝導率に比較して十分に大きかった。試料No.1の複合材料10の線膨張係数は、試料No.103の複合材料10の線膨張係数に比較して小さかった。料No.1の複合材料10の熱伝導率は、試料No.103の複合材料10の熱伝導率に比較して大きかった。
【0090】
《試験例2》
試験例2では、試験例1と同様、モリブデン板の開口部の有無と、モリブデン板の位置の違いとが、複合材料の線膨張係数および熱伝導率に及ぼす影響を調べた。
【0091】
〔試料No.2〕
図6に試料No.2の複合材料10の断面が示されている。試料No.2の複合材料10は、主に、第1板材を2枚用意し、第2板材を1枚用意した点と、用意した第2板材の厚さを異ならせた点とを除き、試料No.1の複合材料10と同様にして作製された。作製された試料No.2の複合材料10における第1層11の数は2であり、第2層12の数は1であり、第1層11の数と第2層12の数の合計数は3であった。
【0092】
〔試料No.201〕
図10に試料No.201の複合材料10の断面が示されている。
図10の断面は、
図2に示す断面と同様の位置で複合材料10が切断された状態を示す。この点は、後述する
図11、
図12でも同様である。試料No.201の複合材料10は、主に以下の点を除き、試料No.2と同様にして作製された。
(A)第2板材は3枚用意した。
(B)用意した第2板材の厚さを異ならせた。
(C)第1板材は穴あけ加工されなかった。
(D)第1板材と第2板材の積層した順番を逆にした。
【0093】
作製された試料No.201の複合材料10は、主に以下の点が試料No.2の複合材料10と異なっていた。
(A)第1層11の数は3であり、第2層12の数は2であり、第1層11の数と第2層12の数の合計数は5であった。
(B)第1層11は、純銅で形成されていた。第2層12は、純モリブデンで形成されていた。
(C)第1層11および第2層12のいずれにも開口部が形成されていなかった。
【0094】
〔試料No.202〕
図11に試料No.202の複合材料10の断面が示されている。試料No.202の複合材料10は、第1板材が穴あけ加工されなかった点を除き、試料No.2と同様にして作製された。
【0095】
作製された試料No.202の複合材料10は、主に以下の点が試料No.2の複合材料10と異なっていた。
(A)第1層11は、純モリブデンで形成されていた。第2層12は、純銅で形成されていた。
(B)第1層11および第2層12のいずれにも開口部が形成されていなかった。
【0096】
〔試料No.203〕
図12に試料No.203の複合材料10の断面が示されている。試料No.203の複合材料10は、主に以下の点を除き、試料No.2と同様にして作製された。
(A)第2板材を3枚用意した。
(B)用意した第2板材の厚さを異ならせた。
(C)第1加工板材と第2板材の積層した順番を逆にした。
【0097】
作製された試料No.203の複合材料10は、主に以下の点が試料No.2の複合材料10と異なっていた。
(A)第1層11の数は3であり、第2層12の数は2であり、第1層11の数と第2層12の数の合計数は5であった。
(B)第1層11は、純銅で形成されていた。第2層12は、複数の開口部13cが形成されたモリブデン板13と各開口部13cの内部に配置された銅フィラー14とで構成されていた。
【0098】
各試料の複合材料10の厚さ、各第1層11の厚さ、各第2層12の厚さ、および複合材料10中におけるモリブデンの体積比率が表4に示されている。試料No.2と試料No.203の複合材料10の開口部13cの諸元が表5に示されている。各試料の複合材料10の線膨張係数(ppm/K)と熱伝導率(W/m・K)とが表6に示されている。
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
表6に示されるように、試料No.2の複合材料10の線膨張係数は、試料No.201から試料No.203の複合材料10の線膨張係数に比較して過度に大きくなかった。試料No.2の複合材料10の熱伝導率は、試料No.201から試料No.203の複合材料10の熱伝導率に比較して大きかった。
【0103】
《試験例3》
試験例3では、モリブデン板の開口部の有無が、複合材料の線膨張係数および熱伝導率に及ぼす影響を調べた。
【0104】
〔試料No.3〕
図示は省略しているものの、試料No.3の複合材料は、主に用意した第1板材の厚さおよび第2板材の厚さを異ならせた点を除き、
図6に示される試料No.2の複合材料10と同様にして作製された。
【0105】
〔試料No.301〕
図示は省略しているものの、試料No.301は、第1板材が穴あけ加工されなかった点を除き、試料No.3と同様にして作製された。即ち、作製された試料No.301の複合材料は、
図11を参照して説明した試料No.202の複合材料10と同様の構成である。作製された試料No.301の複合材料10の第1層および第2層のいずれにも開口部が形成されていなかった点が、試料No.3の複合材料と異なっていた。
【0106】
各試料の複合材料の厚さ、各第1層の厚さ、第2層の厚さ、および複合材料中におけるモリブデンの体積比率が表7に示されている。試料No.3の複合材料の開口部の諸元が表8に示されている。各試料の複合材料の線膨張係数(ppm/K)と熱伝導率(W/m・K)とが表9に示されている。
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
表9に示されるように、試料No.3の複合材料の線膨張係数は、試料No.301の複合材料の線膨張係数と同等であった。試料No.3の複合材料の熱伝導率は、試料No.301の複合材料の熱伝導率に比較して大きかった。
【0111】
《試験例4》
試験例4では、複数の開口部が形成されたモリブデン板の位置の違いが、複合材料の線膨張係数および熱伝導率に及ぼす影響を調べた。
【0112】
〔試料No.4〕
図示は省略しているものの、試料No.4の複合材料は、主に、用意した第2板材の厚さを異ならせて、接合後に所定の厚さとなるように圧延した点を除き、
図6に示される試料No.2の複合材料10と同様にして作製された。
【0113】
〔試料No.401〕
図示は省略しているものの、試料No.401は、主に第1板材を2枚用意し、厚さを大体3分の1とした第2板材の数を3枚用意した点と、第1加工板材と第2板材の積層した順番を逆にした点を除き、試料No.4と同様にして作製された。作製された試料No.401の複合材料は、第1層が純銅で形成され、第2層が複数の開口部が形成されたモリブデン板と各開口部の内部に配置された銅フィラーとで構成されていた点が、試料No.4の複合材料と異なっていた。
【0114】
各試料の複合材料の厚さ、各第1層の厚さ、各第2層の厚さ、および複合材料中におけるモリブデンの体積比率が表10に示されている。各試料の複合材料の開口部の諸元が表11に示されている。各試料の複合材料の線膨張係数(ppm/K)と熱伝導率(W/m・K)とが表12に示されている。
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
表12に示されるように、試料No.4の複合材料の線膨張係数は、試料No.401の複合材料の線膨張係数と同等であった。試料No.4の複合材料の熱伝導率は、試料No.401の複合材料の熱伝導率に比較して大きかった。
【0119】
《試験例5》
試験例5では、試験例4と同様、複数の開口部が形成されたモリブデン板の位置の違いが、複合材料の線膨張係数および熱伝導率に及ぼす影響を調べた。
【0120】
〔試料No.5〕
図示は省略しているものの、試料No.5の複合材料は、試料No.4の複合材料と同様にして作製された。
【0121】
〔試料No.501〕
図示は省略しているものの、試料No.501は、試料No.401と同様にして作製された。作製された試料No.501の複合材料は、第1層が純銅で形成され、第2層が複数の開口部が形成されたモリブデン板と各開口部の内部に配置された銅フィラーとで構成されていた点が、試料No.5の複合材料と異なっていた。
【0122】
各試料の複合材料の厚さ、各第1層の厚さ、各第2層の厚さ、および複合材料中におけるモリブデンの体積比率が表13に示されている。各試料の複合材料の開口部の諸元が表14に示されている。各試料の複合材料の線膨張係数(ppm/K)と熱伝導率(W/m・K)とが表15に示されている。
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
表15に示されるように、試料No.5の複合材料の線膨張係数は、試料No.501の複合材料の線膨張係数と同等であった。試料No.5の複合材料の熱伝導率は、試料No.501の複合材料の熱伝導率に比較して大きかった。
【0127】
試料No.1から試料No.5の複合材料は、複数の開口部13cが形成されたモリブデン板13と各開口部13cの内部に配置された銅フィラー14とで構成された第1層11が第1表面10aおよび第2表面10bに位置するように、第1層11および第2層12が厚さに沿った方向に交互に積層されている。試験例1から試験例5の結果から、複合材料中におけるモリブデンの体積比率が同等であれば、試料No.1から試料No.5のような複合材料は、低い線膨張係数と高い熱伝導率とを両立できることがわかった。
【0128】
本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0129】
10 複合材料
10a 第1表面
10b 第2表面
11 第1層
12 第2層
13 モリブデン板
13a 第1面
13b 第2面
13c 開口部
14 銅フィラー
30 半導体素子
40 ケース部材
41 蓋
50a,50b 端子
60 放熱部材
100 半導体パッケージ
T1、T2、T3 厚さ
S1 準備工程
S2 穴あけ工程
S3 接合工程