(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114559
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】信号処理システム
(51)【国際特許分類】
H04R 3/00 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
H04R3/00 330
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040084
(22)【出願日】2023-03-14
(31)【優先権主張番号】P 2023019056
(32)【優先日】2023-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】523048594
【氏名又は名称】OPTYWORKS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100154748
【弁理士】
【氏名又は名称】菅沼 和弘
(72)【発明者】
【氏名】島崎 理一
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩之
(72)【発明者】
【氏名】武藤 佳恭
(72)【発明者】
【氏名】岩永 聡
【テーマコード(参考)】
5D019
【Fターム(参考)】
5D019AA06
5D019FF01
(57)【要約】
【課題】録音妨害をしていることを人に知られることなく録音機器による人の音声の録音を妨害すること。
【解決手段】信号処理システムの録音妨害装置2は、コントローラ41、超音波信号発生回路42、アンプ43及びスピーカ44等の放出部を備える。超音波信号発生回路42は、非可聴域の超音波信号を発生する。放出部は、エンベロープ生成部52により生成された超音波信号をこの装置外部の空間に放出する。コントローラ41は、超音波信号の発生を制御する。コントローラ41は、乱数発生部51と、エンベロープ生成部52とを備える。乱数発生部51は、所定時間(例えば1乃至1000の変数)毎に疑似乱数を発生する。エンベロープ生成部52は、発生された疑似乱数に応じた長さを有する、超音波信号のバースト波のエンベロープを生成する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非可聴域の超音波信号を発生する超音波信号発生回路と、
前記超音波信号を放出する放出部と、
前記超音波信号の発生を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
所定時間毎に疑似乱数を発生する乱数発生手段と、
発生された前記疑似乱数に応じた長さを有する、前記超音波信号のバースト波のエンベロープを生成するエンベロープ生成手段と、
を有する信号処理システム。
【請求項2】
前記超音波信号発生回路、前記放出部、及び前記制御装置を組として、1以上の組を含む構造物、
をさらに備える請求項1に記載の信号処理システム。
【請求項3】
前記構造物の前記1以上の組に対して動作のための電力を供給する電力供給機器と、
前記構造物とは離間して配置される情報処理端末であって、前記電力供給機器の起動及び停止を制御する電源管理機能を有する情報処理端末と、
をさらに備える請求項2に記載の信号処理システム。
【請求項4】
前記構造物は、サービス提供者からユーザに貸与されるものであり、
前記サービス提供者から前記電源管理機能の発揮が許可された前記ユーザの端末が、前記情報処理端末として機能する、
請求項3に記載の信号処理システム。
【請求項5】
非可聴域の超音波信号を発生する超音波信号発生回路と、
前記超音波信号を放出する放出部と、
前記超音波信号の発生を制御する制御装置と、
を備える信号処理システムが実行する信号処理方法であって、
所定時間毎に疑似乱数を発生する乱数発生ステップと、
発生された前記疑似乱数に応じた長さを有する、前記超音波信号のエンベロープを生成するエンベロープ生成ステップと、
を有する信号処理方法。
【請求項6】
非可聴域の超音波信号を発生する超音波信号発生回路と、
前記超音波信号を放出する放出部と、
前記超音波信号の発生を制御する制御装置と、
を備える信号処理システムにおける、
前記制御装置として機能するコンピュータに、
所定時間毎に疑似乱数を発生する乱数発生ステップと、
発生された前記疑似乱数に応じた長さを有する、前記超音波信号のエンベロープを生成するエンベロープ生成ステップと、
を含む制御処理を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば18kHzから19kHzの周波数の人に聞こえ難い音波を発信して録音機器による音声の録音を妨害する録音妨害に関する技術が存在する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、映画館や秘匿性の高い会議等では入場者や会議参加者に知られることなくその場の音声の無断録音を防止することが要求されている。
しかしながら、上述した18kHzから19kHz程度の高周波数の音波を使う従来の録音妨害技術の場合、録音妨害のための高い周波数の音波が特定の人、例えば10代の人や音に敏感な人等に不快な音として聞こえてしまうため、録音妨害行為をしていることが知られることがあり、上記のような要求に十分にこたえられていない状況であった。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、録音妨害をしていることを人に知られることなく録音機器による音声の録音を妨害することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様の信号処理装置は、
非可聴域の超音波信号を発生する超音波信号発生回路と、
前記超音波信号を放出する放出部と、
前記超音波信号の発生又は放出を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
所定時間毎に疑似乱数を発生する乱数発生手段と、
発生された前記疑似乱数に応じた長さを有する、前記超音波信号のバースト波のエンベロープを生成するエンベロープ生成手段と、
を有する。
本発明の一態様の上記信号処理装置に対応する信号処理方法及びプログラムも、本発明の一態様の信号処理方法及びプログラムとして提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、録音妨害をしていることを人に知られることなく録音機器による音声の録音を妨害することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の信号処理システムが適用される録音妨害サービス(以下「本サービス」と呼ぶ)の一実施形態を示す図である。
【
図2】
図1の本サービスに適用する信号処理システムの一実施形態の構成例を示すブロック図である。
【
図3】
図2に示す信号処理システムのうち録音妨害装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】
図2の信号処理システムに含まれるサーバのハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図5】
図2の信号処理システムに含まれるサーバと録音妨害装置の機能的構成一例を示す機能ブロック図である。
【
図6】
図2の信号処理システムにおける録音妨害効果を示す波形図を示す図である。
【
図7】
図1の本サービスの他の例としてのライセンス型のサービスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態の信号処理装置について、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の情報処理システムが適用される位置検出サービス(以下「本サービス」と呼ぶ)の一実施形態を示す図である。
【0010】
本サービスは、
図1に示すように、例えば会議室等の閉空間内に配置される、例えばテーブル1等の構造物の周辺において、1以上の話者、例えばユーザUと訪問者K等が商談等の会話をする際に、当該ユーザUが話した声を、訪問者Kが隠し持ったボイスレコーダ5等の録音機器により無断で録音する際に、訪問者Kに気づかれずにボイスレコーダ5による録音を妨害する録音妨害サービスを提供する。
【0011】
具体的に説明すると、本サービスは、リース・レンタル型とライセンス型のサービスがあり、ここでは、まずリース・レンタル型のサービスについて説明する。
リース・レンタル型のサービスでは、サービス提供者とユーザUとのレンタル契約の中で、サービス提供者は、ユーザUに対して、録音妨害装置2又は録音妨害装置2を含む構造物(テーブル1等)を貸し出す。なお、録音妨害装置2単独ではなく、録音妨害装置2を含む構造物を貸し出す場合もある。貸出対象の構造物としては、上記テーブル1以外に、椅子、花びん、絵画等のように、会議室に通常配備されているものであってもよい。
構造物は、サービス提供者からユーザUに貸与されるものであり、サービス提供者から電源管理機能の発揮が許可されたユーザUの端末が、情報処理端末として機能し、録音妨害装置2の電源管理を実行する。
【0012】
ユーザUは、サービス提供者から提供される録音妨害装置2を会議室のテーブル1の裏面に配置する等して、訪問者Kに所在が分からないように配置する。そして、秘匿性の高い会議を行う際は、録音妨害装置2が設置されている会議室で会議を行う。
【0013】
この会議室での会議の際、録音妨害装置2において、疑似乱数を発生し、発生した疑似乱数に応じた長さを有する非可聴域(例えば23kHz以上、28kHz未満等)の超音波信号のバースト波のエンベロープの信号を生成し、当該エンベロープの信号を増幅して内蔵するスピーカより会議室内に放出する。
【0014】
本サービスの場合、会議室内でユーザUと訪問者Kが会話した音声が、例えば訪問者K等が携帯するボイスレコーダ5等により無断で録音された場合、会議中の音声と録音妨害装置2から発生されたエンベロープがボイスレコーダ5により収音されるものの、エンベロープがホワイトノイズとして作用し人の音声の周波数帯域を含むすべての帯域を打ち消すため、ボイスレコーダ5に録音された音声データでは、人の声の識別が不可能にされる。
また、当該エンベロープの信号は、非可聴域の信号のため、人には認識されない。つまり訪問者Kは、自身の録音行為が妨害されていることを気付かない。
【0015】
以上まとめると、本サービスによれば、会議室等の閉空間において、録音妨害をしていることを人に知られることなく、会議室内でのボイスレコーダ5による人の音声の録音を妨害することができる。
【0016】
続いて、
図2を参照して、上記
図1の本サービスに適用する情報処理システムについて説明する。
図2は、上記
図1の本サービスに適用する情報処理システムの一実施形態の構成例を示すブロック図である。
本サービスに適用する情報処理システムは、例えば、
図2に示すように、録音妨害装置2、サーバ3及びユーザ端末4が、インターネット等のネットワークNWに夫々接続されることで構成される。
【0017】
録音妨害装置2は、例えば会議室等の閉空間に配置されるものであり、起動することで、非可聴域の特殊な超音波を放送(放出)し、会議室内において許可を得ず不正に行われるボイスレコーダ5による人の音声の録音(盗音行為等)を妨害する。
【0018】
サーバ3は、本サービスのサービス提供者により管理される信号処理装置であり、ユーザ端末4からの要求に応じて、録音妨害装置2の動作(例えば電源をON/OFF、又は超音波の発振又は発振停止等)を制御する。
【0019】
ユーザ端末4は、例えばパーソナルコンピュータやタブレット、スマートフォン等の情報処理装置である。
【0020】
つまり、ユーザ端末4は、サーバ3と協働しながら録音妨害装置2の動作を制御する。
ここで、「協働」の手法は、特に限定されない。例えばユーザ端末4は、サーバ3と適宜通信をしながら主要な処理(録音妨害装置2の動作制御、又は電源制御等)をサーバ3に実行してもらう第1手法を、「協働」の手法として採用することができる。
また例えば、ユーザ端末4は、サーバ3又はその管理下の図示せぬ装置から専用のアプリケーションプログラム(以下、単に「アプリ」と呼ぶ)を予めダウンロード及びインストールして、アプリで実行する第2手法を、「協働」の手法として採用することができる。或いはまた第1手法と第2手法とを適宜組み合わせた手法を、「協働」の手法として採用することもできる。
但し、以下の例では、説明の便宜上、第1手法が「協働」の手法として採用されているものとして説明する。即ち、以下の例で、処理の動作主体が「ユーザ端末4」となっている個所は例示に過ぎず、実装時には適宜「サーバ3」としてよいことは言うまでもない。
【0021】
図3は、
図2に示す情報処理システムのうち録音妨害装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図3に示すように、録音妨害装置2は、超音波を発生する超音波発生回路42と、発生された超音波の発振を制御するソフトウェアを組み込んだコントローラ41と、アンプ43と、超音波発振器としてのスピーカ44と、この装置の各部へ電力を供給する電源部45と、サーバ3及びユーザ端末4と通信する通信部46とを備える。
【0022】
超音波発生回路42は、超音波の発振子や、発振子に超音波を発振させる発振回路等を含む。
アンプ43は、コントローラ41から出力される超音波のエンベロープ信号を増幅する。スピーカ44は、アンプ43により増幅された超音波のエンベロープ信号を装置外部へ放出する。
【0023】
電源部45は、コントローラ41により制御されて、録音妨害装置2内の各部へ電源を供給する。具体的には、電源部45は、コントローラ41からの起動/停止制御により超音波発生回路42へ電力を供給又は停止する。これにより、ユーザ端末4からの遠隔操作により録音妨害装置2に超音波を発生させること、または停止させることができる。
【0024】
スピーカ44は、ケース40の四隅の夫々に、音の出る方向をケース40の外側に向けて1つずつ、合計4つ配置されており、閉空間が例えば数人程度の会議に利用される会議室であれば、会議室の範囲をカバーできる。なお、ここで例示した会議室の例やスピーカの配置例は一例にすぎず、閉空間の広さに応じてスピーカの数やアンプの出力等を可変すればよい。
【0025】
図4は、
図2に示す情報処理システムに含まれるサーバのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0026】
図4に示すように、サーバ3は、CPU(Central Processing Unit)11と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、バス14と、入出力インターフェース15と、出力部16と、入力部17と、記憶部18と、通信部19と、ドライブ20と、を備えている。
【0027】
CPU11は、ROM12に記録されているプログラム、又は、記憶部18からRAM13にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。
RAM13には、CPU11が各種の処理を実行する上において必要なデータ等も適宜記憶される。
【0028】
CPU11、ROM12及びRAM13は、バス14を介して相互に接続されている。このバス14にはまた、入出力インターフェース15も接続されている。入出力インターフェース15には、出力部16、入力部17、記憶部18、通信部19及びドライブ20が接続されている。
【0029】
出力部16は、液晶等のディスプレイやスピーカ等により構成され、各種情報を画像や音声として出力する。
入力部17は、例えばキーボード等により構成され、各種情報を出力する。
記憶部18は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等で構成され、各種データを記憶する。
通信部19は、インターネットを含むネットワークNWを介して他の装置(例えば
図2のユーザ端末4及び録音妨害装置2等)との間で通信を行う。
【0030】
ドライブ20には、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリ等よりなる、リムーバブルメディア30が適宜装着される。ドライブ20によってリムーバブルメディア30から読み出されたプログラムは、必要に応じて記憶部18にインストールされる。
また、リムーバブルメディア30は、記憶部18に記憶されている各種データも、記憶部18と同様に記憶することができる。
【0031】
なお、図示はしないが、ユーザ端末4についても、
図4に示したサーバ3のハードウェア構成と基本的に同様の構成を有する。従って、ユーザ端末4のハードウェア構成の説明については省略する。
【0032】
このような
図4のサーバ1と
図3の録音妨害装置2との各種ハードウェアと各種ソフトウェアとの協働により、音声録音妨害のための一連の処理の実行が可能になる。
【0033】
以下、このような処理を実行するための
図2の信号処理システム(主にサーバと録音妨害装置)の機能的構成の一例について説明する。
図5は、
図2の信号処理システムに含まれるサーバと録音妨害装置の機能的構成の一例を示す機能ブロック図である。
図5に示すように、サーバ3の記憶部68には、データベース81(以下「DB81」と呼ぶ)が記憶されている。
DB81には、ユーザに関する情報としての顧客情報(ユーザID、会社名や所在地、連絡先等)と、盗聴妨害サービスに関する情報としてサービス情報(レンタル契約の条件や貸出機器の情報、貸出機器とユーザとの対応情報等)と、レンタル対象の盗聴妨害装置2とそれを含む構造物(例えばテーブル1等)に関する情報としての装置情報(装置ID、製品番号や機能、組み合わせ可能な機器の情報等)が記憶されている。
【0034】
また、
図5に示すように、信号処理システムにおいて、盗聴妨害に関する処理が実行される際に、サーバ3のCPU11においては、顧客管理部71と、サービス管理部72と、電源管理部73とが機能し、録音妨害装置2のコントローラ41においては、乱数発生部51と、エンベロープ生成部52とが機能する。
【0035】
サーバ3における顧客管理部71は、ユーザから取得した情報をDB81に記憶し管理する。
サービス管理部72は、ユーザとサービス提供者との間で交わした契約に関する情報をサービス情報の一部としてDB81に記憶し管理する。
【0036】
電源管理部73は、レンタル契約されたユーザのユーザ端末4のアプリ画面等から、盗聴妨害装置1を起動又は停止するための指示操作が行われることで、盗聴妨害装置1に対して超音波の放出開始(起動)及び超音波の放出停止(停止)を制御する。
具体的には、電源管理部73は、通信部69、46を通じて盗聴妨害装置1のコントローラ41に指示を送り、コントローラ41から電源部45へ電源ON(起動)又は電源OFF(停止)を制御することで超音波を発生させる制御、超音波の発生を停止させる制御等を行う。
また、電源管理部73は、貸し出し対象の機器に対してユーザからの指示で動作制御(起動や停止等)を行った時間等を計数し使用履歴としてDB81に記憶し管理する。使用履歴は、従量制課金契約(録音妨害装置2を使用した時間分だけ課金する契約等)の際に使用される。
【0037】
録音妨害装置2における乱数発生部51は、所定時間(例えば1乃至1000の変数等)毎に疑似乱数を発生する。なお、0乃至999の変数としてもよい。
具体的には、乱数発生部51は、例えば「0」~「10」等の疑似乱数を発生する。
エンベロープ生成部52は、乱数発生部51により発生された疑似乱数に応じた長さを有する、超音波信号のバースト波のエンベロープを生成する。
具体的には例えば本実施形態では、超音波信号はパルス信号で構成されるものとする。この場合、エンベロープ生成部52は、乱数発生部51により疑似乱数が発生する毎に当該疑似乱数に応じてパルス幅(周波数)を変化させることで、疑似乱数に応じた長さ(本例ではパルス幅)を有する超音波信号のバースト波のエンベロープを生成する。
このようにして生成された「疑似乱数に応じた長さを有する超音波信号のバースト波のエンベロープ」は、人の音声と共に録音機器(例えば後述のボイスレコーダ5)に入力されると、ホワイトノイズとして当該録音機器での当該人の音声の録音を妨げることが可能になるのである。
【0038】
ここで、
図6を参照して信号処理システムの録音妨害効果を説明する。
図6は、
図1の信号処理システムの録音妨害効果を示す波形図であり、横軸は時間(秒)、縦軸は音圧(dB)の強弱を示す図である。
図6の符号91は、会議室で人が話している音声をボイスレコーダ5で録音を試みた際の、ボイスレコーダ5内での録音対象の音声データを示しており、録音開始時点(0秒)からは録音妨害をせずに、途中(25秒過ぎ31秒半迄)録音妨害装置2を動作させたときの波形図である。
符号92は、符号91の音声データのスペクトルを示しており、音声の強弱に応じて変化が認められる。音圧が強い部分は白くなり、弱い部分は黒くなっている。
一方、途中から録音妨害をすると、符号92のようにスペクトル全域が白くなり、符号94の録音された人の音声データについてもホワイトノイズで、人の音声が打ち消されていることが分かる。
【0039】
このようにこの実施形態の信号処理システムによれば、録音妨害装置2は、人には聞こえない非可聴域の基調周波数(例えば20kHz~40kHz等のうち特に23kHz以上、28kHz未満)の超音波信号に基づいて、発生した疑似乱数に応じた長さの超音波信号のバースト波のエンベロープを生成して、会議室等の閉空間に放出する。この「疑似乱数に応じた長さの超音波信号のバースト波のエンベロープ」は、人には聞こえない(聞こえると人の脳では認識されない)ものの、人の音声と共にボイスレコーダ5に収音されたときに人の音声の全ての周波数にジャマー(ホワイトノイズ)として作用して、当該人の音声を打ち消すため、録音された音声データからは人の声を識別できなくなる。
この結果、録音妨害をしていることを人に知られることなく録音機器による人の音声の録音を妨害することができる。
【0040】
次に、
図7を参照して、他のサービスについて説明する。
図7は、
図1、
図2の録音妨害装置2を含む信号処理システムを適用したライセンス型のサービスを示す図である。
上記
図1乃至
図6の例では、リース・レンタル型のサービスの例について説明したが、この他、以下のようにライセンス型でサービスを提供してもよい。
ライセンス型のサービスの場合、
図7に示すように、サービス提供者SとユーザUとの間でライセンス契約を締結し、サービス提供者から、ソフトウェアのみ、若しくは、ソフトウェアとハートウェアをセットにしてユーザUにライセンスする。つまりサービス提供者Sは、ユーザUが信号処理システムの少なくとも一部の使用、利用を許諾する。
これにより、ユーザUは、ライセンス契約の範囲で、録音妨害装置2、サーバ3等を用いた録音妨害サービスを自身はもとより他者に行うことができる。また、録音妨害装置2単体やサーバ3単体の製造や販売を行うことができる。
【0041】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0042】
上述した実施形態では、録音妨害装置2を配置する閉空間として、会議室を例にして説明したが、この他、例えば自動車、鉄道の車両や飛行機等の人を運ぶ移動体の中であってもよく、人が中に入って声を出せる閉空間であれば足りる。この場合の構造物は、カーナビや空気清浄機等の車載機器であればよい。また、録音妨害装置2を映画館やコンサートホールに設置することで、隠し持った録画機器等により盗撮行為等が行われたとしても録画機器での人の音声の再生を不可能にすることができる。
【0043】
また、上述した実施形態では、4つのスピーカを用いた録音妨害装置2(
図3参照)を例示して説明したが、これ以外であってもよく、スピーカを単体で使ってもよく、これに加えて、例えば正三角形の辺の夫々にスピーカを配置して多面体の構造を形成し3つのスピーカから、複数の方向へ超音波を発生させるように構成してもよい。
【0044】
本実施形態では、例えば「0」~「10」等の疑似乱数を発生する例を示したが、これ以外に、例えば「0」乃至「100」等であってもよく、疑似乱数を発生すれば足りる。
【0045】
本実施形態では、ユーザ端末4のアプリ画面からの遠隔操作により、録音妨害装置2の起動根と停止を制御したが、録音妨害装置2専用のリモコンにより遠隔操作してもよく、さらに、サーバ3に設けたUI(ユーザインターフェース)から遠隔操作してもよく、遠隔操作する操作元については限定されない。
【0046】
本実施形態では、構造物の例として、例えばテーブル1等を例示し、そのテーブル1に録音妨害装置2を配置した例を示したが、録音妨害装置2に含まれる超音波信号発生回路42、アンプ43及びスピーカ44等の放出部、及びコントローラ41等の制御装置を組として、1以上の組を含んでいてもよい。
【0047】
本実施形態では、サーバ3の電源管理部73が、録音妨害装置2のコントローラ41を介して電源部45を制御することで、超音波の発生又は放出を制御したが、超音波信号発生回路42を制御して超音波の発生を制御してもよく、サーバ3から録音妨害装置2を制御して、超音波の放出を制御すればよい。
【0048】
また例えば、上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。
換言すると、
図5の機能的構成は例示に過ぎず、特に限定されない。
即ち、上述した一連の処理を全体として実行できる機能が信号処理装置に備えられていれば足り、この機能を実現するためにどのような機能ブロック及びデータベースを用いるのかは特に
図5の例に限定されない。また、機能ブロック及びデータベースの存在場所も、
図5に特に限定されず、任意でよい。例えば、各種処理の実行に必要となるサーバ3の機能ブロック及びデータベースの少なくとも一部を、ユーザ端末4や録音妨害装置2等に移譲させてもよい。逆にユーザ端末4や録音妨害装置2の機能ブロック及びデータベースの少なくとも一部をサーバ3等に移譲させてもよい。
また、1つの機能ブロック及びデータベースは、ハードウェア単体で構成してもよいし、ソフトウェア単体で構成してもよいし、それらの組み合わせで構成してもよい。
【0049】
一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータ等にネットワークや記録媒体からインストールされる。
コンピュータは、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータであってもよい。
また、コンピュータは、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能なコンピュータ、例えばサーバの他汎用のスマートフォンやパーソナルコンピュータであってもよい。
【0050】
このようなプログラムを含む記録媒体は、ユーザ等にプログラムを提供するために装置本体とは別に配布される図示せぬリムーバブルメディアにより構成されるだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザ等に提供される記録媒体等で構成される。
【0051】
なお、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
また、本明細書において、システムの用語は、複数の装置や複数の手段等より構成される全体的な装置を意味するものとする。
【0052】
以上を換言すると、本発明が適用される信号処理装置は、次のような構成を有していれば足り、各種各様な実施の形態を取ることができる。
即ち、本発明が適用される信号処理システムは、
非可聴域の超音波信号を発生する超音波信号発生回路(例えば
図5の超音波信号発生回路42等)と、
前記超音波信号を放出する放出部(例えば
図5のアンプ43及びスピーカ44等)、
前記超音波信号の発生又は放出を制御する制御装置(例えば
図5のコントローラ41等)と、
を備え、
前記制御装置(例えば
図5のコントローラ41等)は、
所定時間(例えば1乃至1000の変数)毎に疑似乱数を発生する乱数発生手段(例えば
図5の乱数発生部51等)と、
発生された前記疑似乱数に応じた長さを有する、前記超音波信号のバースト波のエンベロープを生成するエンベロープ生成手段(例えば
図5のエンベロープ生成部52等)と、
を有する。
このような構成により、例えば会議室等の閉空間に、人には聞きとれない非可聴域の超音波信号のバースト波のエンベロープを発生させておくことで、閉空間において人が発する音声を録音機器で録音しようとすると、そのエンベロープ(ホワイトノイズ)が、当該音声に重なる形で録音機器に収音され、録音機器には、当該音声が打ち消されてホワイトノイズが録音された状態になる。つまり録音を妨害していることを人に知られることなく録音機器による人の音声の録音を妨害することができる。
【0053】
前記超音波信号発生回路、前記放出部、及び前記制御装置を組として、1以上の組を含む構造物(例えば
図3のケース40やケース40が固定された
図1のテーブル1等)、
をさらに備える。
【0054】
前記構造物(例えば
図3のケース40等)の前記1以上の組に対して動作のための電力を供給する電力供給機器(例えば
図5の電源部45等)と、
前記構造物とは離間して配置される情報処理端末(例えば
図5のユーザ端末4やリモコン等)であって、前記電力供給機器(例えば
図5の電源部45等)の起動及び停止を制御する(例えば電源管理アプリにより無線通信で、電源ON-OFF機能を制御する)電源管理機能を有する情報処理端末(例えばリース先やレンタル先のユーザ端末4やリモコン等)と、
をさらに備える。
【0055】
前記構造物(例えば
図3のケース40又は
図1のテーブル1等)は、サービス提供者からユーザに貸与されるものであり、
前記サービス提供者から前記電源管理機能の発揮が許可された(例えばサービス管理アプリ及び電源管理アプリがインストールされてユーザ登録等を経て使える状態になること、つまり許可されたことを意味する)前記ユーザ端末が、前記情報処理端末として機能する、ことができる。
【0056】
信号処理方法は、
非可聴域の超音波信号を発生する超音波信号発生回路(例えば
図5の超音波信号発生回路42等)と、
前記超音波信号を放出する放出部(例えば
図5のアンプ及びスピーカ等)、
前記超音波信号の発生又は放出を制御する制御装置(例えば
図5のコントローラ41等)と、
を備える信号処理システムが実行する信号処理方法であって、
所定時間毎に疑似乱数を発生する乱数発生ステップと、
発生された前記疑似乱数に応じた長さを有する、前記超音波信号のエンベロープを生成するエンベロープ生成ステップ、
を有する、ことができる。
【0057】
プログラムは、
非可聴域の超音波信号を発生する超音波信号発生回路(例えば
図5の超音波信号発生回路42等)と、
前記超音波信号を放出する放出部(例えば
図5のアンプ及びスピーカ等)、
前記超音波信号の発生又は放出を制御する制御装置(例えば
図5のコントローラ41等)と、
を備える信号処理システムにおける、
前記制御装置として機能するコンピュータに、
所定時間毎に疑似乱数を発生する乱数発生ステップと、
発生された前記疑似乱数に応じた長さを有する、前記超音波信号のエンベロープを生成するエンベロープ生成ステップと、
を含む制御処理を実行させる、ことができる。
【符号の説明】
【0058】
1・・・テーブル、2・・・録音妨害装置、3・・・サーバ、4・・・ユーザ端末、5・・・ボイスレコーダ、11、61・・・CPU、68・・・記憶部、46、69・・・通信部、40・・・ケース、41・・・コントローラ、42・・・超音波信号発生回路、43・・・アンプ、44・・・スピーカ、45・・・電源部、51・・・乱数発生部、52・・・エンベロープ生成部、71・・・顧客管理部、72・・・サービス管理部、73・・・電源管理部、81・・・DB