(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114562
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】板状屋根材
(51)【国際特許分類】
E04D 3/04 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
E04D3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072808
(22)【出願日】2023-04-26
(31)【優先権主張番号】P 2023020387
(32)【優先日】2023-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】512251253
【氏名又は名称】甍エンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小栗 和彦
【テーマコード(参考)】
2E108
【Fターム(参考)】
2E108AZ01
2E108BB01
2E108BN01
2E108CC00
2E108DD05
2E108DD14
2E108EE01
2E108ER07
2E108FF01
2E108GG00
(57)【要約】
【課題】板状屋根材の素材をタイルなどのセラミックス素材を用いて、かつ釉薬で表面を彩色した構成にて製品化をするには、製品上面以外にも頭見つけ面に釉薬を施す必要があり、さらに、釉薬を施すセラミックス屋根材においては、生産上の制約で製品下面には釉薬を施してはいけないという課題があった。
【解決手段】勾配を有する建物の屋根の屋根下地に直接敷設し、緊結部材で前記屋根下地に固定するセラミックス素材の板状屋根材において、上面と頭見つけ面には釉薬を施し、前記頭見つけ面と下面との間に前記下面より上方に位置する頭側外周段差面を設け、前記下面には釉薬を施さないことを特徴とする板状屋根材を提供することで、施釉工程又は焼成工程において頭見つけ面に施す釉薬が製品下面側に回り込むのを防ぎ、製品下面側に回り込んだ釉薬が焼成工程の際に焼成治具のサヤやローラーハースキルンのローラーに付着することを防ぐ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
勾配を有する建物の屋根の屋根下地に直接敷設し、
緊結部材で前記屋根下地に固定する板状屋根材において、
前記板状屋根材の基材は、高温の焼成炉で焼成するセラミックス素材であり、
前記板状屋根材は、上面、下面、頭見つけ面、尻側面、左側面、右側面を有した矩形の板状形状とし、
前記板状屋根材を前記屋根に敷設する際には、桁方向では前記板状屋根材の前記左側面と前記右側面を当接するように配置し、
流れ方向では下段の前記板状屋根材の尻側の前記上面に上段の前記板状屋根材の頭側の前記下面を配置し、
前記上面と前記頭見つけ面には釉薬を施し、
前記頭見つけ面と前記下面との間に前記下面より上方に位置する頭側外周段差面を設け、前記下面には釉薬を施さないことを特徴とする板状屋根材。
【請求項2】
前記頭見つけ面と前記頭側外周段差面の間に面取り部を設けることを特徴とする請求項1記載の板状屋根材
【請求項3】
前記頭見つけ面、前記尻側面、前記左側面、前記右側面で構成する外周面と前記下面との間に前記下面より上方に位置する外周段差面を設けることを特徴とする請求項1記載の板状屋根材
【請求項4】
前記外周面と前記外周段差面の間に前記面取り部を設けることを特徴とする請求項3記載の板状屋根材
【請求項5】
前記頭外周段差面の高さを0.5mmから2mmの範囲とし、前記頭外周段差面の奥行幅寸法を前記頭外周段差面の高さの2倍以上とすることを特徴とする請求項1記載の板状屋根材
【請求項6】
前記板状屋根材の前記尻側には複数の緊結穴を設け、前記緊結穴から釘又はビスなどの前記緊結部材で前記板状屋根材を前記屋根下地に固定することを特徴とする請求項1記載の板状屋根材
【請求項7】
前記緊結部材には、前記屋根下地と接する下地接地部を設け、前記下地接地部には前記緊結穴を設け、前記下地接地部の一方の端部から前記板状屋根材の厚さ分を垂直方向に立ち上げた尻側当接面を設け、前記尻側当接面の上方端部から前記下地接地部と反対側の水平方向に前記板状屋根材の流れ方向の重なり寸法分を延出した尻側固定面を設け、前記尻側固定面の他方の端部から前記板状屋根材の厚さに所定の隙間寸法を足した寸法分を垂直方向に立ち上げた頭見つけ当接面を設け、前記頭見つけ当接面の上方端部から前記尻側固定面側に延出した頭側固定面を設け、前記板状屋根材の前記尻側面に前記尻側当接面に当接させた位置に前記緊結部材の前記緊結穴から前記屋根下地に釘又はビスで固定することで、前記板状屋根材を敷設の際に前記緊結部材にて下段の前記板状屋根材の前記尻側の前記上面と前記尻側面と上段の前記板状屋根材の前記頭見つけ面を同時に固定することを特徴とする請求項1記載の板状屋根材
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、勾配を有する建物の屋根の屋根下地に直接敷設し、緊結部材で前記屋根下地に固定する板状屋根材において、前記板状屋根材の基材は、高温の焼成炉で焼成するセラミックス素材であり、前記板状屋根材は、上面、下面、頭見つけ面、尻側面、左側面、右側面を有した矩形の板状形状とし、前記板状屋根材を前記屋根に敷設する際には、桁方向では前記板状屋根材の前記左側面と前記右側面を当接するように配置し、流れ方向では下段の前記板状屋根材の尻側の前記上面に上段の前記板状屋根材の頭側の前記下面を配置し、前記上面と前記頭見つけ面には釉薬を施し、前記頭見つけ面と前記下面との間に前記下面より上方に位置する頭側外周段差面を設け、前記下面には釉薬を施さないことを特徴としたものである。
【背景技術】
【0002】
従来技術の特許文献1には、特開2022-159979号の板状屋根材における屋根構造がある。
この特許文献は、勾配を有する建物の屋根に複数段設置する板状屋根材の屋根構造に関するものである。
本発明は、勾配を有する建物の屋根に複数段設置する板状屋根材の屋根構造に関するものであり、前記板状屋根材は板状本体とジョイント板からなり、前記板状屋根材は桁方向では前記板状本体の側端部を当接するように配置し、流れ方向では下段の前記板状本体の尻側に上段の前記板状本体の頭側を重ねて配置し、前記ジョイント板は前記板状本体の前記側端部の当接部の下方に設け、前記ジョイント板には頭側にジョイント固定部を有し、前記ジョイント板には上面側に突出した働き長さ位置決め突部を有し、前記板状本体には尻側に本体固定部を有し、前記板状本体には本体働き長さ位置決め基準部を有し、前記ジョイント固定部を前記本体固定部の上に位置を合わせて前記ジョイント固定部と前記本体固定部を固定緊結材で同時に屋根下地へ緊結することにより前記板状屋根材として一体化し、前記建物の設計単位寸法と前記板状本体の働き幅寸法又は働き長さの水平投影寸法が整数比の関係であり、かつ、前記働き幅寸法と前記働き長さの水平投影寸法が整数比の関係とし、前記板状本体の働き長さ寸法が前記勾配ごとの設定寸法となるよう、前記ジョイント板に前記ジョイント固定部を前記勾配ごとの位置に設け、前記働き長さ寸法の前記勾配ごとの前記設定寸法は、前記働き長さの水平投影寸法に前記勾配の勾配伸び率を掛けた寸法であり、段葺きの際に、下段の前記板状本体に固定した前記ジョイント板の前記働き長さ位置決め突部に上段の前記板状本体の前記本体働き長さ位置決め基準部を当て止めすることで前記勾配ごとの規定の働き長さを決定し、陸棟部、隅棟部、ケラバ部、三又部、谷部、棟違い部などの全ての屋根端部に規格化形状屋根材を配置する板状屋根材における屋根構造を提供するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、勾配を有する建物の屋根に複数段設置する板状屋根材の屋根構造に関するものを提供する。
勾配を有する建物の屋根に複数段設置する板状屋根材の屋根構造に関するものであり、前記板状屋根材は板状本体とジョイント板からなり、前記板状屋根材は桁方向では前記板状本体の側端部を当接するように配置し、流れ方向では下段の前記板状本体の尻側に上段の前記板状本体の頭側を重ねて配置し、前記ジョイント板は前記板状本体の前記側端部の当接部の下方に設け、前記ジョイント板には頭側にジョイント固定部を有し、前記ジョイント板には上面側に突出した働き長さ位置決め突部を有し、前記板状本体には尻側に本体固定部を有し、前記板状本体には本体働き長さ位置決め基準部を有し、前記ジョイント固定部を前記本体固定部の上に位置を合わせて前記ジョイント固定部と前記本体固定部を固定緊結材で同時に屋根下地へ緊結することにより前記板状屋根材として一体化し、前記建物の設計単位寸法と前記板状本体の働き幅寸法又は働き長さの水平投影寸法が整数比の関係であり、かつ、前記働き幅寸法と前記働き長さの水平投影寸法が整数比の関係とし、前記板状本体の働き長さ寸法が前記勾配ごとの設定寸法となるよう、前記ジョイント板に前記ジョイント固定部を前記勾配ごとの位置に設け、前記働き長さ寸法の前記勾配ごとの前記設定寸法は、前記働き長さの水平投影寸法に前記勾配の勾配伸び率を掛けた寸法であり、段葺きの際に、下段の前記板状本体に固定した前記ジョイント板の前記働き長さ位置決め突部に上段の前記板状本体の前記本体働き長さ位置決め基準部を当て止めすることで前記勾配ごとの規定の働き長さを決定し、陸棟部、隅棟部、ケラバ部、三又部、谷部、棟違い部などの全ての屋根端部に規格化形状屋根材を配置する板状屋根材における屋根構造を提供するものである。
この構成にすることにより、本発明の板状屋根材は、段葺きの際に、下段の前記板状本体に固定した前記ジョイント板の前記働き長さ位置決め突部に上段の前記板状本体の前記本体働き長さ位置決め基準部を当て止めすることで、屋根上で働き長さ寸法を測定することなく、簡易でかつ正確に規定の働き長さ寸法で施工することが出来る。
【0005】
特許文献1の板状屋根材における屋根構造に使用する屋根材は、板状屋根材は桁方向では板状本体の側端部を当接するように配置し、流れ方向では下段の板状本体の尻側に上段の板状本体の頭側を重ねて配置し、板状屋根材とジョイント板を緊結材で同時に屋根下地に緊結する構成の屋根材である。
しかし、特許文献1記載の屋根材では屋根材の素材について限定しておらず、板状屋根材の素材をタイルなどのセラミックス素材を用いて、かつ釉薬で表面を彩色した構成にて製品化をするには、製品上面以外にも頭見つけ面に釉薬を施す必要があった。
さらに、釉薬を施すセラミックス屋根材においては、生産上の制約で製品下面には釉薬を施さない構成にする必要があった。
前記製品構成を生産効率よく自動化して生産するには、特許文献1記載の板状屋根材の形状では、施釉工程又は焼成工程において頭見つけ面に施す釉薬が製品下面側に回り込んでしまい、製品下面側に回り込んだ釉薬が焼成工程の際に焼成治具のサヤやローラーハースキルンのローラーに付着することで生産上に支障をきたしてしまうという課題があった。
【0006】
本発明は、勾配を有する建物の屋根の屋根下地に直接敷設し、緊結部材で前記屋根下地に固定する板状屋根材において、前記板状屋根材の基材は、高温の焼成炉で焼成するセラミックス素材であり、前記板状屋根材は、上面、下面、頭見つけ面、尻側面、左側面、右側面を有した矩形の板状形状とし、前記板状屋根材を前記屋根に敷設する際には、桁方向では前記板状屋根材の前記左側面と前記右側面を当接するように配置し、流れ方向では下段の前記板状屋根材の尻側の前記上面に上段の前記板状屋根材の頭側の前記下面を配置し、前記上面と前記頭見つけ面には釉薬を施し、前記頭見つけ面と前記下面との間に前記下面より上方に位置する頭側外周段差面を設け、前記下面には釉薬を施さないことを特徴とする板状屋根材を提供することで、施釉工程又は焼成工程において頭見つけ面に施す釉薬が製品下面側に回り込むのを防ぎ、釉薬が焼成工程の際に焼成治具のサヤやローラーハースキルンのローラーに付着することを防ぐことにより、生産効率よく自動化して生産することが出来る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の本発明の板状屋根材は、勾配を有する建物の屋根の屋根下地に直接敷設し、緊結部材で前記屋根下地に固定する板状屋根材において、前記板状屋根材の基材は、高温の焼成炉で焼成するセラミックス素材であり、前記板状屋根材は、上面、下面、頭見つけ面、尻側面、左側面、右側面を有した矩形の板状形状とし、前記板状屋根材を前記屋根に敷設する際には、桁方向では前記板状屋根材の前記左側面と前記右側面を当接するように配置し、流れ方向では下段の前記板状屋根材の尻側の前記上面に上段の前記板状屋根材の頭側の前記下面を配置し、前記上面と前記頭見つけ面には釉薬を施し、前記頭見つけ面と前記下面との間に前記下面より上方に位置する頭側外周段差面を設け、前記下面には釉薬を施さないことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の板状屋根材において、前記頭見つけ面と前記頭側外周段差面の間に面取り部を設けることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の本発明は、請求項1記載の板状屋根材において、前記頭見つけ面、前記尻側面、前記左側面、前記右側面で構成する外周面と前記下面との間に前記下面より上方に位置する外周段差面を設けることを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の本発明は、請求項3記載の板状屋根材において、前記外周面と前記外周段差面の間に面取り部を設けることを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の本発明は、請求項1記載の板状屋根材において、前記頭外周段差面の高さを0.5mmから2mmの範囲とし、前記頭外周段差面の奥行幅寸法を前記頭外周段差面の高さの2倍以上とすることを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の本発明は、請求項1記載の板状屋根材において、前記板状屋根材の前記尻側には複数の緊結穴を設け、前記緊結穴から釘又はビスなどの前記緊結部材で前記板状屋根材を前記屋根下地に固定することを特徴とする。
【0013】
請求項7記載の本発明は、請求項1記載の板状屋根材において、前記緊結部材には、前記屋根下地と接する下地接地部を設け、前記下地接地部には前記緊結穴を設け、前記下地接地部の一方の端部から前記板状屋根材の厚さ分を垂直方向に立ち上げた尻側当接面を設け、前記尻側当接面の上方端部から前記下地接地部と反対側の水平方向に前記板状屋根材の流れ方向の重なり寸法分を延出した尻側固定面を設け、前記尻側固定面の他方の端部から前記板状屋根材の厚さに所定の隙間寸法を足した寸法分を垂直方向に立ち上げた頭見つけ当接面を設け、前記頭見つけ当接面の上方端部から前記尻側固定面側に延出した頭側固定面を設け、前記板状屋根材の前記尻側面に前記尻側当接面に当接させた位置に前記緊結部材の前記緊結穴から前記屋根下地に釘又はビスで固定することで、前記板状屋根材を敷設の際に前記緊結部材にて下段の前記板状屋根材の前記尻側の前記上面と前記尻側面と上段の前記板状屋根材の前記頭見つけ面を同時に固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、勾配を有する建物の屋根の屋根下地に直接敷設し、緊結部材で前記屋根下地に固定する板状屋根材において、前記板状屋根材の基材は、高温の焼成炉で焼成するセラミックス素材であり、前記板状屋根材は、上面、下面、頭見つけ面、尻側面、左側面、右側面を有した矩形の板状形状とし、前記板状屋根材を前記屋根に敷設する際には、桁方向では前記板状屋根材の前記左側面と前記右側面を当接するように配置し、流れ方向では下段の前記板状屋根材の尻側の前記上面に上段の前記板状屋根材の頭側の前記下面を配置し、前記上面と前記頭見つけ面には釉薬を施し、前記頭見つけ面と前記下面との間に前記下面より上方に位置する頭側外周段差面を設け、前記下面には釉薬を施さないことにより、施釉工程又は焼成工程において頭見つけ面に施す釉薬が製品下面側に回り込むことを防ぎ、焼成工程の際に製品下面側と接する焼成治具のサヤやローラーハースキルンのローラーには釉薬が付着することなく、生産効率よく自動化して生産することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】本発明の実施例による板状屋根材の製品断面図
【
図3】本発明の実施例による板状屋根材の屋根伏せ図
【
図4】本発明の実施例による板状屋根材の施工断面図
【
図5】本発明の実施例による板状屋根材の施釉工程における模式図
【
図6】本発明の実施例による板状屋根材の焼成工程における模式図
【
図7】本発明の他の実施例による板状屋根材の製品図面
【
図8】本発明の他の実施例による板状屋根材の製品断面図面
【
図9】本発明の他の実施例による緊結部材の製品図面
【
図10】本発明の他の実施例による板状屋根材の屋根伏せ図
【
図11】本発明の他の実施例による板状屋根材の施工断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の第1の実施の形態における板状屋根材は、勾配を有する建物の屋根の屋根下地に直接敷設し、緊結部材で前記屋根下地に固定する板状屋根材において、前記板状屋根材の基材は、高温の焼成炉で焼成するセラミックス素材であり、前記板状屋根材は、上面、下面、頭見つけ面、尻側面、左側面、右側面を有した矩形の板状形状とし、前記板状屋根材を前記屋根に敷設する際には、桁方向では前記板状屋根材の前記左側面と前記右側面を当接するように配置し、流れ方向では下段の前記板状屋根材の尻側の前記上面に上段の前記板状屋根材の頭側の前記下面を配置し、前記上面と前記頭見つけ面には釉薬を施し、前記頭見つけ面と前記下面との間に前記下面より上方に位置する頭側外周段差面を設け、前記下面には釉薬を施さないことを特徴としたものである。
本発明の板状屋根材を耐久性が高いセラミックス素材を用いて、かつ表面に露出する上面と頭見つけ面に釉薬を施し、釉薬により彩色する製品構成とする場合、生産上の制約として製品の下面には釉薬を施さない構成にする必要がある。
本実施の形態によれば、生産工程の内、施釉工程又は焼成工程において、頭見つけ面に施す釉薬が製品の下面に回り込むことを防ぎ、焼成工程の際に製品下面側と接する焼成治具のサヤ、又はローラーハースキルンのローラーには釉薬が付着することなく、生産効率よく自動化して生産することが出来る。
【0017】
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による板状屋根材において、前記頭見つけ面と前記頭側外周段差面の間に面取り部を設けるというものである。
本実施の形態によれば、頭見つけ面と頭側外周段差面の間に面取り部を設けることで端部へ局所的に釉薬が溜まることを防ぎ、面取り部に付着した釉薬は焼成工程の際に軟化して液体状になっても釉薬の落下を防ぐことが出来る。
その結果、焼成治具のサヤ、又はローラーハースキルンのローラーには釉薬が付着することを防ぐ。
【0018】
本発明の第3の実施の形態は、第1の実施の形態による板状屋根材において、前記頭見つけ面、前記尻側面、前記左側面、前記右側面で構成する外周面と前記下面との間に前記下面より上方に位置する外周段差面を設けるというものである。
本実施の形態によれば、頭見つけ面、尻側面、左側面、右側面で構成する外周面から釉薬が製品の下面に回り込むことを防ぎ、焼成工程の際に製品下面側と接する焼成治具のサヤ、又はローラーハースキルンのローラーには釉薬が付着することなく、生産効率よく自動化して生産することが出来る。
【0019】
本発明の第4の実施の形態は、第3の実施の形態による板状屋根材において、前記外周面と前記外周段差面の間に面取り部を設けるものである。
本実施の形態によれば、外周面と外周段差面の間に面取り部を設けることで端部へ局所的に釉薬が溜まることを防ぎ、面取り部に付着した釉薬は焼成工程の際に軟化して液体状になっても釉薬の落下を防ぐことが出来る。
その結果、焼成治具のサヤ、又はローラーハースキルンのローラーには釉薬が付着することを防ぐ。
【0020】
本発明の第5の実施の形態は、第1の実施の形態による板状屋根材において、前記頭外周段差面の高さを0.5mmから2mmの範囲とし、前記頭外周段差面の奥行幅寸法を前記頭外周段差面の高さの2倍以上とするものである。
本実施の形態によれば、施釉工程にある施釉装置から噴霧施釉する際に、外周段差面の奥行幅寸法を前記頭外周面の高さの2倍以上とすることで斜め方向から噴霧される釉薬においても製品の下面に釉薬を付着させずに頭見つけ面を施釉することが出来る。
また、頭外周段差面の高さを0.5mmから2mmの範囲とすることで、屋根に敷設した際に頭外周段差面を目立たせることなく施工することができる。
【0021】
本発明の第6の実施の形態は、第1の実施の形態による板状屋根材において、前記板状屋根材の前記尻側には複数の緊結穴を設け、前記緊結穴から釘又はビスなどの前記緊結部材で前記板状屋根材を前記屋根下地に固定するものである。
本実施の形態によれば、板状屋根材の尻側に設けた緊結穴から屋根下地に直接釘やビスなどの緊結部材で固定することが出来るので施工性が良い。
また、複数の緊結穴が有るので板状屋根材1枚当たりの緊結部材の固定数量を変えることが出来、必要な固定強度に応じて最適な緊結部材の使用数量を選択することが出来る。
【0022】
本発明の第7の実施の形態は、第1の実施の形態による板状屋根材において、前記緊結部材には、前記屋根下地と接する下地接地部を設け、前記下地接地部には前記緊結穴を設け、前記下地接地部の一方の端部から前記板状屋根材の厚さ分を垂直方向に立ち上げた尻側当接面を設け、前記尻側当接面の上方端部から前記下地接地部と反対側の水平方向に前記板状屋根材の流れ方向の重なり寸法分を延出した尻側固定面を設け、前記尻側固定面の他方の端部から前記板状屋根材の厚さに所定の隙間寸法を足した寸法分を垂直方向に立ち上げた頭見つけ当接面を設け、前記頭見つけ当接面の上方端部から前記尻側固定面側に延出した頭側固定面を設け、前記板状屋根材の前記尻側面に前記尻側当接面に当接させた位置に前記緊結部材の前記緊結穴から前記屋根下地に釘又はビスで固定することで、前記板状屋根材を敷設の際に前記緊結部材にて下段の前記板状屋根材の前記尻側の前記上面と前記尻側面と上段の前記板状屋根材の前記頭見つけ面を同時に固定するものである。
本実施の形態によれば、板状屋根材に緊結穴を設けなくても良いため、板状屋根材表面に浸入した雨水が釘穴を伝って板状屋根材の裏面側に回り込むことが無く、防水性能が高い。
また、1個の緊結部材で下段の板状屋根材の尻側上面と尻側面と上段の板状屋根材の頭見つけ面を同時に固定するため、固定強度が高い。
さらに敷設時には上段の板状屋根材の頭見つけ面を緊結部材の頭見つけ当接面で当て止めするため、板状屋根材の流れ方向での位置決めが容易であり施工性が良い。
【実施例0023】
以下本発明の実施例による板状屋根材1について説明する。
図1は実施例による板状屋根材1の製品図面である。
図1は板状屋根材1の製品図面で投影法による6面図である。
図1の平面図では製品の上面7をあらわしており、板状屋根材1を屋根2に敷設する際の伏せ図で用いる図である。
桁方向3は図面位置での左右方向、流れ方向4は図面位置での上下方向となり、図面位置の下側が板状屋根材1の頭側6、上側が尻側5となる。
実施例の板状屋根材1では、全幅Wは455mmである。
実施例の板状屋根材1は、耐久性の高い陶磁器素材であり、高温の焼成炉で焼成するセラミックス素材である。
全長さLについては300mmであり全幅Wとの寸法比は、全長さL:全幅Wの寸法比が1:約1.5と横長になる。
板状屋根材1は、上面7、下面8、頭見つけ面9、尻側面10、左側面11、右側面12を有した矩形の板状形状である。
緊結穴15は4個であり左右対称に設けている。
製品断面図の断面位置としてA-A断面図とB-B断面図を指示している。
右側面図では、右側面12、上面7、下面8を表している。
頭側6には、頭見つけ面9、頭側外周段差面17a、面取り部18、外周段差面の高さH、製品の厚さT、外周段差面の奥行幅寸法Dを表している。
尻側5には、尻側面10、外周段差面17、面取り部18を表している。
上面7と頭見つけ面9には釉薬16を施しているが、
図1では図示を省略している。
頭見つけ面9と下面8との間に下面8より上方に位置する頭側外周段差面17aを設ける。
尻側面10と下面8との間に下面8より上方に位置する外周段差面17を設ける。
本実施例では、頭見つけ面9の高さが7.5mm、頭側外周面17aの高さとして外周段差面高さHが1mm、製品の厚さTが8.5mmとなっている。
下面8から上方に1mmの位置に頭側外周段差面17aを設けることになる。
頭外周段差面17aの高さは、0.5mmから1.5mmの範囲が望ましく、頭外周段差面17aの奥行幅寸法Dは頭外周段差面17aの高さを表す外周段差面の高さHの2倍以上とする。
本実施例では、頭外周段差面17aの高さである外周段差面高さHを1mm、奥行幅寸法Dを6.2mmとしているので、奥行幅寸法Dは外周段差面の高さHの6.2倍となる。
この奥行幅寸法Dと外周段差面の高さHの比が大きくなるほど、施釉工程にて斜め方向から噴霧される釉薬16が製品の下面8に付着することなく頭見つけ面9を施釉することが出来るので、下面8に釉薬16が掛かるリスクが減少する。
また、外周段差面の高さHを1mmとしていることで、屋根2に敷設した際に頭外周段差面17aを目立たせることなく施工することができる。
頭見つけ面9と頭側外周段差面17aの間及び尻側面10と外周段差面17の間には、面取り部18を設ける。
図1に記載の本実施例では、頭見つけ面9を含む外周面13と頭側外周段差面17aを含む外周段差面17の間には同一のR形状の面取り部18を設けている。
左側面図は右側面図と左右対称形状の為、左側面11以外は右側面図と同様な表記となっている。
正面図及び背面図は、頭見つけ面9、上面7、下面8、右側面12、左側面11、外周段差面17、面取り部18を表している。
外周段差面の高さH、製品の厚さT、外周段差面の奥行幅寸法Dは右側面で図示した寸法と同様であり、右側面12及び左側面11と外周段差面17の間に設ける面取り部18の形状も同様である。
本実施例では、これらの端部形状においては、外周面13の4面全てにおいて同様の形状、寸法としている。
底面図は、製品の下面8をあらわしている図である。
下面8の外周に外周段差部17を設けている。
本実施例では、矩形状の凹部19と外周段差部17は同一の高さとしている。
また、外周段差面の奥行幅寸法Dも4面全ての外周面で同一の幅としている。
凹部19と外周段差部17を全て同一高さとすることや外周段差面の奥行幅寸法Dも4面全ての外周面で同一の幅とすることは、成形工程において製品の上面7と下面8で均一に圧力が掛かり、成形素地の密度も均一となるため、乾燥工程や焼成工程での収縮時に亀裂の発生や変形を防止することが出来る。
底面図には製品断面図の箇所としてC-C断面図を指示している。
【0024】
図2は実施例による板状屋根材1の製品図面の断面図である。
図2(a)は、
図1の平面図に図示されたA-A断面箇所における断面図である。
図2(a)は、頭側6の頭見つけ面9、頭側外周段差面17a、面取り部18、外周段差面の高さH、製品の厚さT、外周段差面の奥行幅寸法Dの形状及び寸法は
図1の右側面図と同様である。
また、尻側5の尻側面10、外周段差面17、面取り部18の形状及び寸法についても
図1の右側面図と同様である。
逆に
図1の右側面図と異なる点は、下面8に複数設けられている凹部19と緊結穴15が図示されている。
本実施例では全ての凹部19は、外周段差面17と同じレベルとなっている。
図2(b)は、
図1の平面図に図示されたB-B断面箇所における断面図である。
図2(a)の断面形状と基本的に同じだが、頭側6と尻側5で凹部19と外周段差面17の形状が若干異なっている。
図2(c)は、
図1の底面図に図示されたC-C断面箇所における断面図である。
図2(c)は、左側面11、右側面12、上面7、下面8、外周段差面17、面取り部18、外周段差面の高さH、製品の厚さT、外周段差面の奥行幅寸法Dの形状及び寸法は
図1の正面図と同様である。
図1の正面図と異なる点は、下面8に複数設けられている凹部19が図示されている点である。
複数設けられている凹部19と外周段差面は全て同じレベルである。
【0025】
図3は実施例による板状屋根材1の屋根伏せ図である。
本実施例の伏せ図は切妻屋根もしくは片流れ屋根形状での伏せ図となる。
図の下側が軒先側22であり上下方向が流れ方向4、図の左右が桁方向3となる。
桁方向3で一段毎に板状屋根材1を半分ずらして敷設する千鳥葺きである。
板状屋根材1を屋根2に敷設する際には、桁方向3では板状屋根材1の左側面11と右側面12を当接するように配置し、流れ方向4では下段の板状屋根材1の尻側5の上面7に上段の板状屋根材1の頭側6の下面8を配置する。
実施例の屋根2は、日本の建築で多く使われている尺モジュールであり、設計単位寸法は3尺が1Pとなる。
板状屋根材1は、全幅Wが前記1Pの1/2の寸法であり、全幅W=455mmである。
つまり、尺モジュールの1Pは2枚の全幅Wの寸法、910mmと同一となる。
板状屋根材1は、耐久性の高いセラミックス素材であり、上面7に施す釉薬16を焼成することで様々な色調とすることが出来る。
釉薬16が施されたセラミックス素材の板状屋根材1は、紫外線劣化もなく、屋根材自体の耐久性は200年、300年と長く使える素材である。
実施例の働き長さは、254.4mmであり、屋根の勾配が5寸勾配の時に水平投影での働き長さ寸法が尺モジュールにおける3尺の1/4の長さ227.5mmになる。
製品の全長さLは300mmとする。
上面7の尻側5の屋根材重なり部に設けている4つの緊結穴15の内、内側の2つの緊結穴15を用いてジョイント板20と板状屋根材1を緊結部材14で屋根下地21に共打ちで固定する。
ジョイント板20の中央ラインと板状屋根材1の左側面11又は右側面12を合わせることで容易に千鳥葺きを行うことが出来る。
なお本図面では、緊結部材14は屋根下地21への固定保持力が高いビスを用いている。
留め付けの手順としては、先ず、板状屋根材1の4つの緊結穴15の内、外側の2つの緊結穴15を用いて、板状屋根材1と屋根下地21を固定する。
その後、内側の2つの緊結穴15を用いてジョイント板20と板状屋根材1を緊結部材14で屋根下地21に共打ちで固定する。
このように、ビスを用いて屋根下地25に固定する構成としているので損傷なく板状屋根材1を取り外すことが出来、再利用することで製品を廃棄することなく繰り返し使用することが出来る。
屋根伏せ図には流れ方向4の断面図の箇所としてD-D断面図を指示している。
【0026】
図4は実施例による板状屋根材1の施工断面図である。
図4(a)は、
図3の屋根伏せ図に図示されたD-D断面箇所における断面図であり、流れ方向4での断面図である。
流れ方向4での水下側を軒先側22とし、板状屋根材1の頭側6を軒先側22、尻側5を水上側に配置する。
流れ方向4で下段の前記板状屋根材1の尻側5に上段の板状屋根材1の頭側6を重ねて配置する。
屋根下地21の上にルーフィングを施工し、そのルーフィング上に板状屋根材1を直接敷設し、緊結部材14にて屋根下地21に固定する構造である。
実施例では、緊結部材14を固定力が高いビスとしている。
緊結部材14をビスにすることで屋根下地21への固定強度が増すことで、大型台風などの強風においても飛散することなく板状屋根材1を固定することが出来る。
屋根2の勾配23は5寸勾配で、勾配伸び率は1.118となる。
働き長さの水平投影寸法は1Pの1/4の227.5mmであり、働き長さは、働き長さの水平投影寸法の227.5mmに勾配伸び率の1.118を掛けて254.4mmとなる。
屋根2に敷設した際、表面に露出するのは上面7と頭見つけ面9となるので、上面7と頭見つけ面9には釉薬16を施す必要がある。
図4(b)は、
図4(a)の板状屋根材1が流れ方向4で上下に重なっている箇所の拡大図である。
上面7、頭見つけ面9、面取り部18には釉薬16が施され、頭側外周段差面17a、外周段差面17、下面8、凹部19には釉薬16を施さない構成とする。
実施例では、尻側面10にも釉薬16が施されているが、表面に露出することは無いため施釉する必要は無い。ただし、生産上の都合から施釉工程の際に釉薬16を噴霧状で施釉するので、尻側面10と尻側5の面取り部18にも釉薬16が掛かって製品化された状況を表している。
【0027】
図5は実施例による板状屋根材1の施釉工程における模式図である。
図5(a)は施釉工程において噴霧装置24で釉薬16を噴霧状に射出し、板状屋根材1に施釉している施釉状況を表した図である。
板状屋根材1の生産工程は成形工程、乾燥工程、施釉工程、焼成工程の4工程で生産される。
施釉工程では、釉薬16を噴霧状に射出させた噴霧装置内へ乾燥工程後の仕掛品の板状屋根材1をコンベアーで搬送させることで釉薬16の塗布を行う。
搬送コンベアー上の板状屋根材1の向きは頭見つけ面9を進行方向とし上面7を噴霧装置24に対峙する向きとする。
頭見つけ面9を搬送コンベアーの進行方向に向けることで、噴霧状に射出されている釉薬16が頭見つけ面9に確実に塗布される。
実施例では、スプレーノズル方式の噴霧装置24を製品の上方に設置し、釉薬16を施す。
図5(b)は頭見つけ面9が噴霧状の釉薬16内に入る施釉状況での拡大図である。
釉薬16は上面7と頭見つけ面9には施したいが、下面8には釉薬16を施したくない。
頭側外周段差面17aは、噴霧状に射出されている釉薬16が下面8に掛からないようにするために設けられる。
頭外周段差面の奥行幅寸法Dを頭外周段差面17aの高さの2倍以上とするのは、噴霧状の釉薬16が下面8まで到達しない為に望ましい寸法関係であり、頭外周段差面の奥行幅寸法Dを頭外周段差面17aの高さの2倍以上とすることで噴霧状の釉薬16の入射角が26度以上では下面8まで釉薬16が到達しない構成となる。
実施例では、頭外周段差面の奥行幅寸法Dが6.2mm、頭外周段差面17aの高さが1mmなので、頭外周段差面の奥行幅寸法Dは頭外周段差面17aの高さの6.2倍となり、噴霧状の釉薬16の入射角が9度以上では下面8まで釉薬16が到達しない構成となる。
【0028】
図6は実施例による板状屋根材1の焼成工程における模式図である。
図6(a)は焼成炉であるローラーハースキルン26内のローラー27上に板状屋根材1の施釉品を直接載せて焼成する焼成方式での模式図である。
焼成炉であるローラーハースキルン26は焼成炉内に多数のローラー27を有し、ローラー27が進行方向に回転することで焼成物を移動させ、炉内へ焼成物を供給するのと同時に焼成後の製品を炉内から出すことで連続的に焼成することが出来る。
板状屋根材1を焼成する場合、頭見つけ面9に塗布した釉薬16が炉内の温度で溶融し、軟化した釉薬16が重力で下方向に移動する。
その際に外周面13と外周段差面17の間に面取り部18を設けることで、頭見つけ面9の下端に局所的に釉薬16が溜まることを防ぎ、かつ面取り部18に表面張力で付着するので釉薬16は軟化して液体状になっても釉薬の落下を防ぐことが出来、ローラー27に釉薬16が付着することを防ぐことが出来る。
図6(b)は焼成炉でサヤ25を使って板状屋根材1を焼成する焼成方式の模式図である。
実施例では
図6(a)と同様にローラーハースキルン26としているが、サヤ25を使う場合は焼成台車を用いたトンネルキルンやバッチ方式のシャトルキルンでも同様である。
サヤ25は耐火物で出来ており、サヤ25の上に板状屋根材1の下面8を下にして積載する。
板状屋根材1を焼成する場合、頭見つけ面9に塗布した釉薬16が炉内の温度で溶融し、軟化した釉薬16が重力で下方向に移動する。
その際に外周面13と外周段差面17の間に面取り部18を設けることで、頭見つけ面9の下端に局所的に釉薬16が溜まることを防ぎ、かつ面取り部18に表面張力で付着するので釉薬16は軟化して液体状になっても釉薬の落下を防ぐことが出来、サヤ25に釉薬16が付着することを防ぐことが出来る。
【0029】
図7は他の実施例による板状屋根材1の製品図面である。
図7は板状屋根材1の製品図面で投影法による6面図である。
図1の平面図では製品の上面7をあらわしており、板状屋根材1を屋根2に敷設する際の伏せ図で用いる図である。
桁方向3は図面位置での左右方向、流れ方向4は図面位置での上下方向となり、図面位置の下側が板状屋根材1の頭側6、上側が尻側5となる。
実施例の板状屋根材1では、全幅Wは455mmである。
実施例の板状屋根材1は、耐久性の高い陶磁器素材であり、高温の焼成炉で焼成するセラミックス素材である。
全長さLについては300mmであり全幅Wとの寸法比は、全長さL:全幅Wの寸法比が1:約1.5と横長になる。
板状屋根材1は、上面7、下面8、頭見つけ面9、尻側面10、左側面11、右側面12を有した矩形の板状形状である。
本実施例では板状屋根材1には緊結穴15は無く、緊結部材14で屋根下地21に固定するが、この緊結部材14を規定の位置に固定するため、板状屋根材1の尻側5の上面7には緊結部材位置決め目印30を設け緊結部材14を正確な位置に設けることが出来るようになっている。
本実施例での緊結部材位置決め目印30は、緊結部材14の幅よりやや広い凹面を尻側5の上面7に設けている。
緊結部材位置決め目印30は、全幅Wの1/4の位置に2箇所設けている。
また、ジョイント板20についても敷設時にジョイント板20を正しい位置に設けるため板状屋根材1の尻側5の上面7にはジョイント板位置決め目印29を設けジョイント板20を正確な位置に配置することが出来るようになっている。
製品断面図の断面位置としてA-A断面図、B-B断面図、C-C断面、D-D断面図を指示している。
右側面図では、右側面12、上面7、下面8を表している。
頭側6には、頭見つけ面9、頭側外周段差面17a、面取り部18、外周段差面の高さH、製品の厚さT、外周段差面の奥行幅寸法Dを表している。
尻側5には、尻側面10、外周段差面17、面取り部18を表している。
上面7と頭見つけ面9には釉薬16を施しているが、
図7では図示を省略している。
頭見つけ面9と下面8との間に下面8より上方に位置する頭側外周段差面17aを設ける。
尻側面10と下面8との間に下面8より上方に位置する外周段差面17を設ける。
本実施例では、頭見つけ面9は上面7側から下面8側に向けて斜めに7°傾斜している。
頭見つけ面9と上面7が直角ではなく97°に傾斜することで施釉工程での頭見つけ面9への施釉がより容易に行える。
また、本実施例では、頭見つけ面9の高さが8.0mm、頭側外周面17aの高さとして外周段差面高さHが1.4mm、製品の厚さTが9.4mmとなっている。
下面8から上方に1.4mmの位置に頭側外周段差面17aを設けている。
頭外周段差面17aの高さは、0.5mmから2.0mmの範囲が望ましく、頭外周段差面17aの奥行幅寸法Dは頭外周段差面17aの高さを表す外周段差面の高さHの2倍以上とする。
本実施例では、頭外周段差面17aの高さである外周段差面高さHを1.4mm、奥行幅寸法Dを6.9mmとしているので、奥行幅寸法Dは外周段差面の高さHの4.9倍となる。
この奥行幅寸法Dと外周段差面の高さHの比が大きくなるほど、施釉工程にて斜め方向から噴霧される釉薬16が製品の下面8に付着することなく頭見つけ面9を施釉することが出来るので、下面8に釉薬16が掛かるリスクが減少する。
また、外周段差面の高さHを1.4mmとしていることで、屋根2に敷設した際に頭外周段差面17aを目立たせることなく施工することができる。
頭見つけ面9と頭側外周段差面17aの間及び尻側面10と外周段差面17の間には、面取り部18を設ける。
図7に記載の本実施例では、頭見つけ面9を含む外周面13と頭側外周段差面17aを含む外周段差面17の間には同一のR形状の面取り部18を設けている。
頭外周段差面17a以外の外周段差面17は、尻側面10が頭外周段差面17aと同様の形状と寸法になっている。
他の外周段差面17の左側面11、右側面12では、外周段差面の奥行幅寸法Dが6.4mmとなっている。
左側面図は右側面図と左右対称形状の為、左側面11以外は右側面図と同様な表記となっている。
正面図及び背面図は、頭見つけ面9、上面7、下面8、右側面12、左側面11、外周段差面17、面取り部18を表している。
外周段差面の高さH、製品の厚さT、外周段差面の奥行幅寸法Dは右側面で図示した寸法と同様であり、右側面12及び左側面11と外周段差面17の間に設ける面取り部18の形状も同様である。
底面図は、製品の下面8をあらわしている図である。
下面8の外周に外周段差部17を設けている。
本実施例では、矩形状の凹部19と外周段差部17は同一の高さとしている。
矩形状の凹部19内には0.2mmの高さの薄リブ37があり、プレス成形時の離型性向上、成形後の強度向上に寄与している。
外周段差面の奥行幅寸法Dも4面全ての外周面で同一の幅としている。
但し、緊結部材収納空間36のある個所だけは、外周段差面の奥行幅寸法Dが変わる。
凹部19と外周段差部17を全て同一高さとすることや外周段差面の奥行幅寸法Dも4面全ての外周面で同一の幅とすることは、成形工程において製品の上面7と下面8で均一に圧力が掛かり、成形素地の密度も均一となるため、乾燥工程や焼成工程での収縮時に亀裂の発生や変形を防止することが出来る。
板状屋根材1の頭側6の下面8には、緊結部材収納空間36を設けている。
本実施例では緊結部材収納空間36は、中央部に1箇所と全幅Wの1/4の位置に2箇所の計3箇所を設けており、板状屋根材1を千鳥葺きで敷設した際に下段の緊結部材14が上段の緊結部材収納空間36に収納される。
底面図には製品断面図の箇所としてD-D断面図を指示している。
【0030】
図8は他の実施例による板状屋根材1の製品図面の断面図である。
図8(a)は、
図7の平面図に図示されたA-A断面箇所における断面図である。
図8(b)は、
図7の平面図に図示されたB-B断面箇所における断面図である。
尻側5の上面7にジョイント板位置決め目印29が設けられている位置の断面図であり、下面8の頭側6には緊結部材収納空間36が設けられている。
図8(c)は、
図7の平面図に図示されたC-C断面箇所における断面図である。
尻側5の上面7に緊結部材位置決め目印30が設けられている位置の断面図であり、下面8の頭側6には緊結部材収納空間36が設けられている。
図8(a)と
図8(b)と
図8(c)は、頭側6の頭見つけ面9、尻側面10、面取り部18、外周段差面17、外周段差面の高さH、製品の厚さ、それぞれの形状及び寸法は同様であり、外周段差面の高さHは1.4mm、製品の厚さTは9.4mm、尻側5の外周段差面の奥行幅寸法Dは6.9mmである。
本実施例では、頭見つけ面9は上面7側から下面8側に向けて斜めに7°傾斜している。
頭見つけ面9と上面7が直角ではなく97°に傾斜することで施釉工程での頭見つけ面9への施釉がより容易に行える。
また、本実施例では全ての凹部19は、外周段差面17と同じレベルとなっている。
図8(a)と
図8(b)及び
図8(c)では、頭側外周段差面17aの形状及び外周段差面の奥行幅寸法Dが異なる。
図8(a)の頭側外周段差面17aの外周段差面の奥行幅寸法Dが6.9mmに対して、
図8(b)及び
図8(c)の頭側外周段差面17aの外周段差面の奥行幅寸法Dは78.4mmと異なる。
図8(d)は、
図7の底面図に図示されたD-D断面箇所における断面図である。
図8(d)は、左側面11、右側面12、上面7、下面8、外周段差面17、面取り部18、外周段差面の高さH、製品の厚さT、外周段差面の奥行幅寸法Dの形状及び寸法は
図7の正面図と同様である。
図7の正面図と異なる点は、下面8に複数設けられている凹部19が図示されている点である。
複数設けられている凹部19と外周段差面は全て同じレベルである。
凹部19内には0.2mmの高さの薄リブ37があり、プレス成形時の離型性向上、成形後の強度向上に寄与している。
【0031】
図9は他の実施例による緊結部材14の製品図面であり、投影法による投影図に断面図を追加した図面である。
側面図は左右で同形状なので右側面図だけに省略しているので5面図になっている。
平面図には断面指示線としてA-A断面図の指示を入れている。
本実施例の緊結部材14は板状の素材を曲げ加工により成形している。
材質は耐久性と強度が必要とされるので、ステンレス材が望ましい。
緊結部材14は、屋根下地21上に設置する下地接地部31を設け、下地接地部31には緊結穴15を設けている。
さらに緊結部材14は、下地接地部31の一方の端部から垂直方向に立ち上げた尻側当接面32を設け、立ち上げた尻側当接面32の上方端部から下地接地部31と反対側の水平方向に延出した尻側固定面33を設け、尻側固定面33の他方の端部から垂直方向に立ち上げた頭見つけ当接面34を設け、頭見つけ当接面34の上方端部から尻側固定面33側に延出した頭側固定面35を設けた形状とする。
下地接地部31から垂直方向に立ち上げた尻側当接面32の立上角度は、板状屋根材1を敷設した際の戻り勾配分を考慮して決定する。
戻り勾配は、屋根材の厚さと働き長さによって算出することが出来る。
戻り勾配=arcsin(厚さT÷働き長さ)
本実施例の戻り勾配は、板状屋根材1の厚さTが9.4mm、働き長さが254.4mmなので、戻り勾配は2.1°となる。
その結果、尻側当接面32の立上角度は90°から戻り勾配分の2.1°を引いて87.9°となる。
また、板状屋根材1の上面7から頭見つけ面9に向けての角度が97°であることから、板状屋根材1の下面8から頭見つけ面9に向けての角度は83°となる。
その結果、頭見つけ当接面34の立上角度は、板状屋根材1の頭見つけ面の角度に合わせた83°となる。
また、本実施例では緊結部材14の下地接地部31と尻側当接面32に絞り加工により上面側に張り出したリブ形状部を設け、このリブ形状部に緊結穴15を設けている。
緊結部材14で板状屋根材1を屋根下地21に固定するが、このリブ形状部を設けることで緊結部材14の強度を上げることで板状屋根材1の屋根下地21への固定強度を上げることが出来る。
【0032】
図10は他の実施例による板状屋根材の屋根伏せ図である。
本実施例の伏せ図は切妻屋根もしくは片流れ屋根形状での伏せ図となる。
図の下側が軒先側22であり上下方向が流れ方向4、図の左右が桁方向3となる。
桁方向3で一段毎に板状屋根材1を半分ずらして敷設する千鳥葺きである。
板状屋根材1を屋根2に敷設する際には、桁方向3では板状屋根材1の左側面11と右側面12を当接するように配置し、流れ方向4では下段の板状屋根材1の尻側5の上面7に上段の板状屋根材1の頭側6の下面8を配置する。
実施例の屋根2は、日本の建築で多く使われている尺モジュールであり、設計単位寸法は3尺が1Pとなる。
板状屋根材1は、全幅Wが前記1Pの1/2の寸法であり、全幅W=455mmである。
つまり、尺モジュールの1Pは2枚の全幅Wの寸法、910mmと同一となる。
板状屋根材1は、耐久性の高いセラミックス素材であり、上面7に施す釉薬16を焼成することで様々な色調とすることが出来る。
釉薬16が施されたセラミックス素材の板状屋根材1は、紫外線劣化もなく、屋根材自体の耐久性は200年、300年と長く使える素材である。
実施例の働き長さは、254.4mmであり、屋根の勾配が5寸勾配の時に水平投影での働き長さ寸法が尺モジュールにおける3尺の1/4の長さ227.5mmになる。
製品の全長さLは300mmとする。
緊結部材14の尻側当接面32と板状屋根材1の尻側5の尻側面10を当接させ、板状屋根材1の上面7に設けた緊結部材位置決め目印30に緊結部材14を合わせて配置し、屋根下地21に釘又はビス28で緊結部材14を固定する。
緊結部材14を屋根下地21に固定することにより、緊結部材14の尻側当接面32で板状屋根材1の尻側面10を固定し、尻側固定面33で尻側5の上面7を固定し、上段で千鳥葺きにした板状屋根材1の頭見つけ面9を緊結部材14の頭見つけ当接面34で固定する。
頭側固定面35と板状屋根材1の上面7の間には隙間があり、緊結部材14の尻側固定面33と頭側固定面35の間に板状屋根材1の頭側6を挿入出来るようになっている。
緊結部材14の頭側固定面35は、通常の敷設状態では隙間があるため板状屋根材1の頭側6を固定していないが、台風などの強風による負圧で板状屋根材1の頭側6が上方に持ち上がった際に、頭側固定面35で板状屋根材1の頭側6の上面7を押さえ固定することで台風による飛散を防ぎ強固に屋根下地21に固定することが出来る。
ジョイント板20は板状屋根材1の尻側5の桁方向3の中心の上面7に設けたジョイント板位置決め目印29に合わせて配置する。
ジョイント板位置決め目印29は上面7より凹んでジョイント板20よりもやや大きい凹面となっており、ジョイント板20がジョイント板位置決め目印29に嵌まり込むようになっている。
ジョイント板20の固定は桁方向3ではジョイント板位置決め目印29への嵌まり込みで固定され、流れ方向4では板状屋根材1の尻側面10とジョイント板20の両端に下方へ折り曲げたジョイント板位置決め片38を当接させることで固定される。
ジョイント板20の中央ラインと板状屋根材1の左側側面11又は右側面12を合わせることで容易に千鳥葺きを行うことが出来る。
板状屋根材1の屋根下地21への留め付けの手順としては、軒先側22から流れ方向4で上側へ上るように敷設する。
なお本図面では、緊結部材14の屋根下地21への固定については固定保持力が高く、かつ取り外しが容易なビスを用いている。
ビスを用いて屋根下地21に固定する構成とすることで、屋根材を葺き替えする際に損傷なく板状屋根材1を取り外すことが出来、容易に再利用をすることが可能となる。
その結果、製品を廃棄することなく繰り返し使用することが出来、省資源化、廃棄物の減少などにも貢献できる。
屋根伏せ図には流れ方向4の断面図の箇所としてD-D断面図を指示している。
【0033】
図11は実施例による板状屋根材1の施工断面図である。
図11(a)は、
図10の屋根伏せ図に図示されたD-D断面箇所における断面図であり、流れ方向4での断面図である。
流れ方向4での水下側を軒先側22とし、板状屋根材1の頭側6を軒先側22、尻側5を水上側に配置する。
流れ方向4で下段の前記板状屋根材1の尻側5に上段の板状屋根材1の頭側6を重ねて配置する。
屋根下地21の上にルーフィングを施工し、そのルーフィング上に板状屋根材1を直接敷設し、緊結部材14を屋根下地21に釘又はビス28を固定することで板状屋根材1を屋根下地21に固定する構造である。
屋根2の勾配23は5寸勾配で、勾配伸び率は1.118となる。
働き長さの水平投影寸法は1Pの1/4の227.5mmであり、働き長さは、働き長さの水平投影寸法の227.5mmに勾配伸び率の1.118を掛けて254.4mmとなる。
屋根2に敷設した際、表面に露出するのは上面7と頭見つけ面9となるので、上面7と頭見つけ面9には釉薬16を施す必要がある。
図4(b)は、
図4(a)の板状屋根材1が流れ方向4で上下に重なっている箇所の拡大図である。
上面7、頭見つけ面9、面取り部18には釉薬16が施され、頭側外周段差面17a、外周段差面17、下面8、凹部19には釉薬16を施さない構成とする。
実施例では、尻側面10にも釉薬16が施されているが、表面に露出することは無いため施釉する必要は無い。ただし、生産上の都合から施釉工程の際に釉薬16を噴霧状で施釉するので、尻側面10と尻側5の面取り部18にも釉薬16が掛かって製品化された状況を表している。
緊結部材14の尻側当接面32と板状屋根材1の尻側5の尻側面10を当接させ屋根下地21に釘又はビス28で緊結部材14を固定する。
緊結部材14を屋根下地21に固定することにより、緊結部材14の尻側当接面32で板状屋根材1の尻側面10を固定し、尻側固定面33で尻側5の上面7を固定し、上段の板状屋根材1の頭見つけ面9を緊結部材14の頭見つけ当接面34で固定する。
頭側固定面35と板状屋根材1の上面7の間には隙間があり、緊結部材14の尻側固定面33と頭側固定面35の間に板状屋根材1の頭側6を挿入出来るようになっている。
緊結部材14の頭側固定面35は、通常の敷設状態では隙間があるため板状屋根材1の頭側6を固定していないが、台風などの強風による負圧で板状屋根材1の頭側6が上方に持ち上がった際に、頭側固定面35で板状屋根材1の頭側6の上面7を押さえ固定することで台風による飛散を防ぎ強固に屋根下地21に固定することが出来る。
本実施例では、板状屋根材1の頭見つけ面9と緊結部材14の頭見つけ当接面34は板状屋根材1の下面8及び尻側固定面33に対し、それぞれが直角より7°鋭角に立ち上がって当接している。
尻側5では尻側面10と尻側当接面32で固定されているので、頭見つけ面9と頭見つけ当接面34が7°鋭角で当接することで、強風時の負圧による板状屋根材1の頭側6の持ち上りを抑えることが出来る。
本実施例の緊結部材14は板状の部材であり、板厚が1mm程度のステンレス板の成形品である。
板状屋根材1を敷設する際には板状屋根材1の下面8が緊結部材14と干渉しないように板状屋根材1の下面8には緊結部材14が収納できる緊結部材収納空間36を設けている。
なお本図面では、緊結部材14の屋根下地21への固定については固定保持力が高く、かつ取り外しが容易なビスを用いている。
ビスを用いて屋根下地21に固定する構成とすることで、屋根材を葺き替えする際に損傷なく板状屋根材1を取り外すことが出来、容易に再利用をすることが可能となる。
その結果、製品を廃棄することなく繰り返し使用することが出来、省資源化、廃棄物の減少などにも貢献できる。
本発明は、実施例において施釉方式を噴霧装置による施釉方式としたが、噴霧方式での施釉方式に限定されるものではなく、流し掛け施釉方式など、他の施釉方式でも利用できる。