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特開2024-114586コーティング用組成物、皮膜、積層体及びリサイクル基材の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114586
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】コーティング用組成物、皮膜、積層体及びリサイクル基材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 133/26 20060101AFI20240816BHJP
   C09D 5/20 20060101ALI20240816BHJP
   C09D 133/14 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
C09D133/26
C09D5/20
C09D133/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023168883
(22)【出願日】2023-09-28
(31)【優先権主張番号】P 2023019610
(32)【優先日】2023-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000168414
【氏名又は名称】荒川化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山平 康裕
(72)【発明者】
【氏名】三宅 一紀
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038CG141
4J038CG171
4J038CH141
4J038CH191
4J038CH261
4J038KA06
4J038MA08
4J038MA10
4J038MA13
4J038MA15
4J038NA04
4J038NA10
4J038NA27
4J038PB02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本開示で解決しようとする課題は、水へ溶解することが可能な皮膜を形成するコーティング用組成物、及び皮膜を有する積層体を提供することである。
【解決手段】本開示で提供する解決手段は、(メタ)アクリルアミド及び/又はN-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド(a1)、並びに環状構造及びヘテロ原子を有するエチレン性不飽和単量体(a2)を含有する反応成分の重合体(A)を含有するコーティング用組成物、皮膜及び積層体である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリルアミド及び/又はN-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド(a1)、並びに環状構造及びヘテロ原子を有するエチレン性不飽和単量体(a2)を含有する反応成分の重合体(A)を含有するコーティング用組成物。
【請求項2】
(a2)成分が複素環を有するエチレン性不飽和単量体である請求項1に記載のコーティング用組成物。
【請求項3】
(A)成分の反応成分として、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が2℃以下であるスルホ基を有さないエチレン性不飽和単量体(a3)及び/又はスルホ基を有するエチレン性不飽和単量体(a4)を含有する請求項1又は2に記載のコーティング用組成物。
【請求項4】
(a3)成分が下記一般式(1)で表される単量体である請求項3に記載のコーティング用組成物。
一般式(1):
【化1】
(式中、Rはメチル基、エチル基、フェニル基又は水素原子であり、Rはメチル基、又は水素原子であり、nは1以上20以下の整数である。)
【請求項5】
(A)成分の理論ガラス転移温度(Tg)が130℃以下である、請求項1又は2に記載のコーティング用組成物。
【請求項6】
固形分濃度20%における(A)成分の粘度(25℃)が1mPa・s以上2,000mPa・s以下である、請求項1又は2に記載のコーティング用組成物。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のコーティング用組成物の皮膜。
【請求項8】
基材及び請求項7に記載の皮膜を含む、積層体。
【請求項9】
請求項8に記載の積層体を水に接触させることで請求項7に記載の皮膜を除去する工程を含むリサイクル基材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コーティング用組成物、皮膜、積層体及びリサイクル基材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックごみは集積所から自然の影響(雨、風等)により又はポイ捨てにより河川へ到達し、海へと流れつく場合がある。海へと流れついたプラスチックごみは波や砂から物理的な影響を受け、強い紫外線にさらされることで細かく分解され、マイクロプラスチックとなる。マイクロプラスチックは海洋生物に取り込まれることで、海洋生物の消化器官をふさいだり、傷つけることが知られており、生態系への影響が懸念されている。このような問題を改善するためにプラスチックを減らす様々な取り組みが始まっている。
【0003】
その取り組みの一つがプラスチックのリサイクルである。ペットボトルのようにプラスチックのみで構成されているものはそのままリサイクルの工程を進めることが可能である。一方で、従来プラスチックが別の何かと接着しているような場合、プラスチックを単離することが難しく、単離するために接着している層を熱で溶かす方法(特許文献1)等が検討されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-170933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
環境への影響を考慮し、加熱等の処理をしなくてもよい方法でプラスチックを単離する方法が求められている。
【0006】
本開示の課題は、水へ溶解することが可能な皮膜を形成するコーティング用組成物、及び皮膜を有する積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は鋭意検討の結果、所定のコーティング用組成物、皮膜、及び積層体によって、上記課題が解決されることを見出した。なお、本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0008】
本開示により以下の項目が提供される。
(項目1)
(メタ)アクリルアミド及び/又はN-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド(a1)並びに環状構造及びヘテロ原子を有するエチレン性不飽和単量体(a2)を含有する反応成分の重合体(A)を含有するコーティング用組成物。
(項目2)
(a2)成分が複素環を有するエチレン性不飽和単量体である項目1に記載のコーティング用組成物。
(項目3)
(A)成分の反応成分として、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が2℃以下であるエチレン性不飽和単量体(a3)及び/又はスルホ基を有するエチレン性不飽和単量体(a4)を含有する項目1又は2に記載のコーティング用組成物。
(項目4)
(a3)成分が下記一般式(1)で表される単量体である項目3に記載のコーティング用組成物。
一般式(1):
【化1】
(式中、Rはメチル基、エチル基、フェニル基又は水素原子であり、Rはメチル基、又は水素原子であり、nは1以上20以下の整数である。)
(項目5)
(A)成分の理論ガラス転移温度(Tg)が130℃以下である、項目1又は2に記載のコーティング用組成物。
(項目6)
固形分濃度20%における(A)成分の粘度(25℃)が1mPa・s以上2,000mPa・s以下である、項目1又は2に記載のコーティング用組成物。
(項目7)
項目1又は2に記載のコーティング用組成物の皮膜。
(項目8)
基材及び項目7に記載の皮膜を含む、積層体。
(項目9)
項目8に記載の積層体を水に接触させることで項目7に記載の皮膜を除去する工程を含むリサイクル基材の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本開示で提供するコーティング用組成物、皮膜、及び積層体を用いることで、その皮膜が水へ良好に溶解することができる。また、コーティング用組成物は塗工性に優れ、さらに、コーティング用組成物の皮膜は、密着性、延伸性及び耐溶剤性にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の全体にわたり、各物性値、含有量等の数値の範囲は、適宜(例えば下記の各項目に記載の上限及び下限の値から選択して)設定され得る。具体的には、数値αについて、数値αの下限としてA1、A2、A3等が挙げられ、数値αの上限としてB1、B2、B3等が挙げられる場合、数値αの範囲として、A1以上、A2以上、A3以上、B1以下、B2以下、B3以下、A1~B1、A1~B2、A1~B3、A2~B1、A2~B2、A2~B3、A3~B1、A3~B2、A3~B3等が挙げられる。なお、本開示において「~」とは、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。以下では、本開示の構成要素や製造方法等について詳細に説明する。なお、「(メタ)アクリル」とはメタクリル又はアクリルを、「(メタ)アクリレート」とはメタクリレート又はアクリレートを指す。
【0011】
<(A)成分>
(A)成分は、(メタ)アクリルアミド及び/又はN-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド(a1)(以下、(a1)成分という。)、並びに環状構造及びヘテロ原子を有するエチレン性不飽和単量体(a2)(以下、(a2)成分という。)を含有する反応成分の重合体である。
【0012】
<(a1)成分>
(a1)成分は、メタクリルアミド、アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)メタクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミドである。
(a1)成分を含むことで、コーティング用組成物の皮膜の水除去性、耐溶剤性が良好になりやすい。一方、(a1)成分の代替成分として、ジメチルアクリルアミドやジエチルアクリルアミド等のジアルキル(メタ)アクリルアミドを使用した場合、コーティング用組成物の皮膜の耐溶剤性が悪化しやすく、また、N-メチロールアクリルアミドを使用した場合は、コーティング用組成物の皮膜の水除去性が悪化しやすいため、それぞれ好ましくない。本開示において「水除去性」とは、水により本開示のコーティング用組成物の皮膜が除去される性質を指す。
【0013】
本開示の(A)成分を構成する単量体100モル%に占める(a1)成分の含有量(固形分換算)の上限としては、例えば、99、97、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、3モル%等が挙げられ、下限としては、例えば、97、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、3、1モル%等が挙げられる。
1つの実施形態において、本開示の(A)成分を構成する単量体100モル%に占める(a1)成分の含有量(固形分換算)は、コーティング用組成物の皮膜の耐溶剤性及び水除去性が優れやすい点から、1~99モル%が好ましく、10~90モル%がより好ましく、15~80モル%がさらにより好ましく、20~60モル%が特に好ましい。
【0014】
(a1)成分は、コーティング用組成物の皮膜が延伸性に優れやすい点から、アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミドが好ましく、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミドがより好ましい。本開示において「延伸性」とは、(A)成分の皮膜に物理的な力が加わり、伸びる程度や性質のことを指す。
【0015】
<(a2)成分>
(a2)成分は、環状構造及びヘテロ原子を有するエチレン性不飽和単量体である。(a2)成分を含むことで、コーティング用組成物を基材へ塗工しやすくなる。また、当該組成物の皮膜は基材に対して良好な密着性も示しやすくなる。
【0016】
本開示において「環状構造及びヘテロ原子を有するエチレン性不飽和単量体」とは、エチレン性不飽和基(本開示において、「エチレン性不飽和基」とは、「炭素-炭素二重結合、三重結合を有する基(例えば、「ビニル基」や「(メタ)アクリロイル基」)」等を指す。)の他に環状構造及びヘテロ原子を有する単量体のことを指す。環状構造は、脂環及び芳香環から選択される1種以上等が挙げられる。ヘテロ原子とは、分子構造中に含まれる炭素原子と水素原子以外の原子のことであり、具体例として、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子から選択される1種以上等が挙げられる。環状構造及びヘテロ原子を有する構造のその他の例として、複素環等が挙げられる。
酸素原子を有する構造としては、例えば、エーテル結合、ケトン基、エステル結合、ヒドロキシ基等が挙げられる。
窒素原子を有する構造としては、例えば、アミノ基等が挙げられる。アミノ基は-NH(第一級アミノ基)、-NHR(第二級アミノ基)、及び-NRR‘(第三級アミノ基)から選択される1種以上である。なお、上記アミノ基の-、R及びR’はH原子以外の原子への結合(C原子への結合等)を表す。
硫黄原子を有する構造としては、例えば、チオエーテル基(スルフィド基)等が挙げられる。
【0017】
(a2)成分としては、親水性基を持っていても持っていなくても良いが、コーティング用組成物の皮膜の水除去性が良好になりやすい点から親水性基を有する方が好ましい。
親水性基としては、例えば、アミド基、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基等)、水酸基、及びカルボキシル基から選択される1種以上等が挙げられる。
アミド基としては、例えば、1級アミド基(R-C(=O)-NH)、2級アミド基(R-C(=O)-NHR)、3級アミド基(R-C(=O)-NR)等が挙げられる。
【0018】
(a2)成分としては、例えば、脂環及びヘテロ原子を有するエチレン性不飽和単量体、芳香環及びヘテロ原子を有するエチレン性不飽和単量体、並びに複素環を有するエチレン性不飽和単量体から選択される1種以上等が挙げられる。
【0019】
脂環及びヘテロ原子を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0020】
芳香環及びヘテロ原子を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2-(o-フェニルフェノキシ)エチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、及び2-フェノキシエチル(メタ)アクリレートから選択される1種以上等が挙げられる。
【0021】
複素環を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、N-スクシンイミジル(メタ)アクリレート、α-メチレン-γ-ブチロラクトン、(5-エチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルフォリン、α-メチレン-γ-バレロラクトン、及びN-ビニル-2-ピロリドンから選択される1種以上等が挙げられる。
【0022】
(a2)成分は、コーティング用組成物の皮膜が基材に対する密着性に優れやすく、かつ水除去性にも優れやすい点から、好ましくは複素環を有するエチレン性不飽和単量体であり、さらにより好ましくはアクリロイルモルフォリン、N-ビニル-2-ピロリドンであり、特に好ましくは、コーティング用組成物の皮膜が耐溶剤性にも優れやすい点から、アクリロイルモルフォリンである。
【0023】
(a2)成分の分子量の上限としては、例えば、1,000、950、900、850、800、750、700、650、600、550、500、450、400、350、300、250、200、150、100、50等が挙げられ、下限としては、例えば、950、900、850、800、750、700、650、600、550、500、450、400、350、300、250、200、150、100、50、25等が挙げられる。
1つの実施形態として、(a2)成分の分子量は、25~1,000が好ましい。本開示において単に「分子量」と記載した場合、原子量基準で計算した値を指す。
【0024】
(a1)成分と(a2)成分のモル比[(a1)成分/(a2)成分]の上限としては、例えば、99/1、97/3、95/5、90/10、85/15、80/20、75/25、70/30、65/35、60/40、55/45、50/50、45/55、40/60、35/65、30/70、25/75、20/80、15/85、10/90、5/95等が挙げられ、下限としては、例えば、95/5、90/10、85/15、80/20、75/25、70/30、65/35、60/40、55/45、50/50、45/55、40/60、35/65、30/70、25/75、20/80、15/85、10/90、5/95、3/97、1/99等が挙げられる。
1つの実施形態において、(a1)成分と(a2)成分のモル比[(a1)成分/(a2)成分]は、1/99~99/1が好ましく、10/90~97/3がより好ましく、20/80~95/5がさらにより好ましく、30/70~90/10が特に好ましい。
【0025】
本開示の(A)成分を構成する単量体100モル%に占める(a2)成分の含有量(固形分換算)の上限としては、例えば、99、97、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、3モル%等が挙げられ、下限としては、例えば、97、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、3、1モル%等が挙げられる。
1つの実施形態において、本開示の(A)成分を構成する単量体100モル%に占める(a2)成分の含有量(固形分換算)は、1~99モル%が好ましく、5~85モル%がより好ましく、10~70モル%がさらにより好ましく、20~60モル%が特に好ましい。(a2)成分の含有量を上記の範囲とすることにより、基材にコーティング用組成物を塗工しやすくなる。さらに、コーティング用組成物の皮膜の基材に対する密着性に優れやすいことから好ましい。
【0026】
<(a3)成分>
(A)成分をなす反応成分には、更にホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が2℃以下であるスルホ基を有さないエチレン性不飽和単量体(a3)(以下、(a3)成分という。)を含んでも良い。(a3)成分を含むことでコーティング用組成物の皮膜が延伸性に優れやすい。以下、「ホモポリマーのガラス転移温度」のことを単に「Tg」と記載する場合もある。また、「ホモポリマーのガラス転移温度」とは、Wiley-Interscienceの「ポリマーハンドブック(Polymer Handbook)」に記載の値のことである。Wiley-Interscienceの「ポリマーハンドブック(Polymer Handbook)」に記載がない場合、示差走査熱分析(DSC)等を用いて、「ホモポリマーのガラス転移温度」を測定した値を用いることができる。
【0027】
なお、本開示において、(a3)成分に属して(a2)成分の構造を有するものは、(a3)成分に分類されるものとする。
【0028】
(a3)成分としては、親水性基を有し、かつホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が2℃以下であるエチレン性不飽和単量体、親水性基を有さず、かつホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が2℃以下であるエチレン性不飽和単量体等が挙げられる。
【0029】
親水性基を有し、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が2℃以下であるエチレン性不飽和単量体としては、例えば、エチルカルビトールアクリレート(Tg:-67℃)、メトキシトリエチレングリコールアクリレート(Tg:-50℃)、メトキシエチルアクリレート(Tg:-50℃)、2-アクリロイロキシエチルコハク酸(Tg:-40℃)、4-ヒドロキシブチルアクリレート(Tg:-32℃)、2-エトキシエチルメタクリレート(Tg:-31℃)、2-ヒドロキシエチルアクリレート(Tg:-15℃)、テトラヒドロフルフリルアクリレート(Tg:-12℃)、2-ヒドロキシプロピルアクリレート(Tg:-7℃)、2-メトキシエチルメタクリレート(Tg:-2℃)等が挙げられる。
【0030】
親水性基を有さず、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が2℃以下であるエチレン性不飽和単量体としては、例えば、テトラデシルメタクリレート(Tg:-72℃)、2-エチルヘキシルアクリレート(Tg:-70℃)、イソオクチルアクリレート(Tg:-70℃)、オクチルアクリレート(Tg:-65℃)、ラウリルメタクリレート(Tg:-65℃)、イソノニルアクリレート(Tg:-58℃)、n-ブチルアクリレート(Tg:-56℃)、イソアミルアクリレート(Tg:-45℃)、イソデシルメタクリレート(Tg:-41℃)、ノニルアクリレート(Tg:-37℃)、イソブチルアクリレート(Tg:-26℃)、n-ラウリルアクリレート(Tg:-23℃)、フェノキシエチルアクリレート(Tg:-22℃)、イソステアリルアクリレート(Tg:-18℃)、2-エチルへキシルメタクリレート(Tg:-10℃)、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレート(Tg:-7℃)、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチルメタクリレート(Tg:2℃)等が挙げられる。
【0031】
(a3)成分としては、コーティング用組成物の皮膜が延伸性に優れやすいことから、一般式(1)の構造を有するエチレン性不飽和単量体が好ましく、また基材にコーティング用組成物を塗工しやすくする点から、一般式(1)の構造(n=3以下)を有するエチレン性不飽和単量体がより好ましく、エチルカルビトールアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、及びメトキシエチルアクリレートから選択される1種以上が更に好ましく、メトキシエチルアクリレートが特に好ましい。
【0032】
一般式(1):
【化1】
(式中、Rはメチル基、エチル基、フェニル基又は水素原子であり、Rはメチル基、又は水素原子であり、nは1以上20以下の整数である。)
【0033】
一般式(1)のnの上限としては、例えば、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2等が挙げられ、下限としては、例えば、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1等が挙げられる。
1つの実施形態として、一般式(1)のnは1~20が好ましく、基材にコーティング用組成物を塗工しやすくする点からnは1~12がより好ましく、nは1~3がさらにより好ましく、nは1が特に好ましい。
【0034】
(a3)成分のホモポリマーのガラス転移温度の上限としては、例えば、2、0、-5、-10、-15、-20、-25、-30、-35、-40、-45、-50、-55、-60、-65、-70、-75℃等が挙げられ、下限としては、例えば、0、-5、-10、-15、-20、-25、-30、-35、-40、-45、-50、-55、-60、-65、-70、-75、-80℃等が挙げられる。
1つの実施形態として、(a3)成分のホモポリマーのガラス転移温度は2℃以下が好ましく、-80~2℃がより好ましい。
【0035】
(a3)成分の分子量の上限としては、例えば、1,000、950、900、850、800、750、700、650、600、550、500、450、400、350、300、250、200、150、100、50等が挙げられ、下限としては、例えば、950、900、850、800、750、700、650、600、550、500、450、400、350、300、250、200、150、100、50、25等が挙げられる。
1つの実施形態として、(a3)成分の分子量は、25~1,000が好ましい。
【0036】
(a1)成分と(a3)成分のモル比[(a1)成分/(a3)成分]の上限としては、例えば、100/0、99/1、95/5、90/10、85/15、80/20、75/25、70/30、65/35、60/40、55/45、50/50、45/55、40/60、35/65、30/70、25/75、20/80、15/85、10/90、5/95等が挙げられ、下限としては、例えば、99/1、95/5、90/10、85/15、80/20、75/25、70/30、65/35、60/40、55/45、50/50、45/55、40/60、35/65、30/70、25/75、20/80、15/85、10/90、5/95、1/99等が挙げられる。
1つの実施形態において、(a1)成分と(a3)成分のモル比[(a1)成分/(a3)成分]は、1/99~100/0が好ましく、5/95~99/1がより好ましく、10/90~95/5がさらにより好ましく、20/80~90/10が特に好ましい。
【0037】
(a2)成分と(a3)成分のモル比[(a2)成分/(a3)成分]の上限としては、例えば、100/0、99/1、95/5、90/10、85/15、80/20、75/25、70/30、65/35、60/40、55/45、50/50、45/55、40/60、35/65、30/70、25/75、20/80、15/85、10/90、5/95等が挙げられ、下限としては、例えば、99/1、95/5、90/10、85/15、80/20、75/25、70/30、65/35、60/40、55/45、50/50、45/55、40/60、35/65、30/70、25/75、20/80、15/85、10/90、5/95、1/99等が挙げられる。1つの実施形態において、(a2)成分と(a3)成分のモル比[(a2)成分/(a3)成分]は、1/99~100/0が好ましく、5/95~99/1がより好ましく、10/90~95/5がさらにより好ましく、20/80~90/10が特に好ましい。
【0038】
本開示の(A)成分を構成する単量体100モル%に占める(a3)成分の含有量(固形分換算)の上限としては、例えば、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、3、1モル%等が挙げられ、下限としては、例えば、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、3、1、0モル%等が挙げられる。
1つの実施形態において、本開示の(A)成分を構成する単量体100モル%に占める(a3)成分の含有量(固形分換算)は、0~90モル%が好ましく、3~70モル%がより好ましく、5~60モル%がさらにより好ましく、10~55モル%が特に好ましい。
【0039】
<(a4)成分>
(A)成分をなす反応成分には、更にスルホ基を有するエチレン性不飽和単量体(a4)(以下、(a4)成分という。)を含んでも良い。(a4)成分を含むことで、コーティング用組成物の皮膜の耐溶剤性及び水除去性が良好になりやすい。
【0040】
なお、本開示において、(a4)成分に属して(a2)成分の構造を有するものは、(a4)成分に分類されるものとする。
【0041】
(a4)成分としては、例えば、ビニルスルホン酸、メタリルスルホン酸、p-スチレンスルホン酸、アクリルアミド-t-ブチルスルホン酸等が挙げられる。なお、これらの(a4)成分は、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩やアンモニウム塩等の塩で使用しても良い。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。中でも、製造時における反応液の増粘を制御でき、さらに得られた重合体(A)をコーティング用組成物として使用した際に、基材に塗工しやすくする点から、メタリルスルホン酸及び/又はその塩が好ましい。
【0042】
(a1)成分と(a4)成分のモル比[(a1)成分/(a4)成分]の上限としては、例えば、100/0、99.5/0.5、99/1、98/2、97/3、96/4、95/5、94/6、93/7、92/8、91/9、90/10、88/12、86/14、85/15、80/20、75/25、70/30、65/35、60/40、55/45、50/50、45/55、40/60、35/65、30/70、25/75、20/80、15/85、10/90、5/95等が挙げられ、下限としては、例えば、99.5/0.5、99/1、98/2、97/3、96/4、95/5、94/6、93/7、92/8、99/1、90/10、88/12、86/14、85/15、80/20、75/25、70/30、65/35、60/40、55/45、50/50、45/55、40/60、35/65、30/70、25/75、20/80、15/85、10/90、5/95、1/99等が挙げられる。
1つの実施形態において、(a1)成分と(a4)成分のモル比[(a1)成分/(a4)成分]は、1/99~100/0程度が好ましく、5/95~99/1がより好ましく、10/90~98/2がさらにより好ましく、20/80~96/4が特に好ましい。
【0043】
(a2)成分と(a4)成分のモル比[(a2)成分/(a4)成分]の上限としては、例えば、100/0、99.5/0.5、99/1、98/2、97/3、96/4、95/5、94/6、93/7、92/8、99/1、90/10、88/12、86/14、85/15、80/20、75/25、70/30、65/35、60/40、55/45、50/50、45/55、40/60、35/65、30/70、25/75、20/80、15/85、10/90、5/95等が挙げられ、下限としては、例えば、99.5/0.5、99/1、98/2、97/3、96/4、95/5、94/6、93/7、92/8、99/1、90/10、88/12、86/14、85/15、80/20、75/25、70/30、65/35、60/40、55/45、50/50、45/55、40/60、35/65、30/70、25/75、20/80、15/85、10/90、5/95、1/99等が挙げられる。1つの実施形態において、(a2)成分と(a4)成分のモル比[(a2)成分/(a4)成分]は、1/99~100/0が好ましく、5/95~99/1がより好ましく、10/90~98/2がさらにより好ましく、20/80~96/4が特に好ましい。
【0044】
本開示の(A)成分を構成する単量体100モル%に占める(a4)成分の含有量(固形分換算)の上限としては、例えば、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.5モル%等が挙げられ、下限としては、例えば、97、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.5、0モル%等が挙げられる。
1つの実施形態において、本開示の(A)成分を構成する単量体100モル%に占める(a4)成分の含有量(固形分換算)は、0~90モル%が好ましく、1~50モル%がより好ましく、2~30モル%がさらにより好ましく、3~20モル%が特に好ましい。
【0045】
<(A)成分の製造>
(A)成分の重合方法として、(a1)成分、(a2)成分、並びに必要に応じて、(a3)成分、(a4)成分、及び添加剤を含有させ、溶媒中で重合させる方法等が挙げられる。
【0046】
重合方法としては、例えば、滴下重合法のみを用いた方法、同時重合法(モノマー混合液を一括して仕込む)と滴下重合法を組み合わせた方法等が挙げられる。
【0047】
滴下重合法は、溶媒を含む反応系にモノマー混合液を滴下する方法である。滴下重合法のみを用いた方法としては、例えば、
(1)全てのモノマー成分を混合したモノマー混合液を、反応系に滴下する方法
(2)複数のモノマー混合液を別々に調製した後に、同時に反応系に滴下する方法
(3)複数のモノマー混合液を別々に調製した後に、順番に反応系に滴下する方法
等が挙げられる。
なお、滴下は連続的に滴下しても、滴下途中で止めて一定時間重合させた後に滴下を再開してもよい。
【0048】
同時重合法と滴下重合法を組み合わせた方法としては、例えば、
(4)各モノマー混合液を別々に同時重合した後、各重合体を混合する方法
(5)1種類以上のモノマー混合液を同時重合し終えてから、残りのモノマー混合液を滴下する方法
(6)1種類以上のモノマー混合液を同時重合している途中から、残りのモノマー混合液を滴下して重合する方法
(7)1種類以上のモノマー混合液を滴下重合して、残りのモノマー混合液を一括で加えた後、同時重合する方法
等が挙げられる。
【0049】
複数のモノマー混合液を調製する際は、一部の混合液中の(a2)成分、(a3)成分や(a4)成分の量を多くして、これらの混合液を順次反応させたり、(a2)成分、(a3)成分や(a4)成分を重合反応中のある時点で追加する等、いずれかのモノマー混合液中において、反応に関与する(a2)成分、(a3)成分や(a4)成分の濃度が高くなるような操作を行っても良い。
【0050】
(A)成分の製造における溶媒は、水、親水性有機溶媒等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
水としては、例えば、超純水、純水、水道水、イオン交換水、工業用水、硬水、軟水等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
親水性有機溶媒としては、例えば、アルコール(メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、t-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n-ヘキシルアルコール、n-オクチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジアセトンアルコール等)、エーテル(エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等)等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。中でも前記溶媒としては、各成分を溶解させる点から、水であることが好ましい。
【0051】
重合開始剤としては、例えば、過硫酸塩(過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等)、アゾ系化合物(2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)塩酸塩、2,2’-アゾビス[2(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]塩酸塩等)等が挙げられる。重合開始剤は、溶液重合を充分に進行させる点から、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、及び2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)塩酸塩から選択される1種以上が好ましい。重合開始剤の添加方法として、一括添加、分割添加、連続滴下等が挙げられる。(A)成分の全構成モノマー100質量%(固形分換算)に対する重合開始剤の含有量(固形分換算)の上限としては、例えば、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.05、0.01、0.005質量%等が挙げられ、下限としては、例えば、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.05、0.01、0.005、0.001質量%等が挙げられる。
1つの実施形態において、(A)成分の全構成モノマー100質量%(固形分換算)に対する重合開始剤の含有量(固形分換算)は、0.001~10質量%が好ましい。
【0052】
重合条件としては、例えば、温度が50~100℃であり、時間が0.5~8時間である。
【0053】
<(A)成分の製造時に用いるその他の成分>
(A)成分の製造時には上記以外のその他の成分を含んでも良い。その他の成分としては、例えば、各種添加剤(有機酸(クエン酸、コハク酸、シュウ酸等)、無機酸(塩酸、硫酸、リン酸等)、無機塩基(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等)、水溶性アルミニウム化合物、ボウ硝、尿素、多糖類(澱粉等)、消泡剤、酸化防止剤、重合禁止剤、防腐剤等)が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
前記添加剤を使用する場合、添加剤の含有量の上限としては、例えば、(A)成分の全構成モノマー100質量%(固形分換算)に対して、20、10、5、4、3、2、1、0.5質量%(固形分換算)等が挙げられ、下限としては、例えば、10、5、4、3、2、1、0.5、0.1質量%(固形分換算)等が挙げられる。
【0054】
(A)成分の重量平均分子量の上限としては、例えば、5,000,000、4,000,000、3,000,000、2,000,000、1,000,000、900,000、800,000、700,000、600,000、500,000、400,000、300,000、200,000、100,000、90,000、80,000、70,000、60,000、50,000、40,000、30,000、20,000、10,000、8,000、5,000、4,000、3,000、2,000、1,000等が挙げられ、下限としては、例えば、4,000,000、3,000,000、2,000,000、1,000,000、900,000、800,000、700,000、600,000、500,000、400,000、300,000、200,000、100,000、90,000、80,000、70,000、60,000、50,000、40,000、30,000、20,000、10,000、8,000、5,000、4,000、3,000、2,000、1,000、500等が挙げられる。
1つの実施形態において、(A)成分の重量平均分子量は、コーティング用組成物の皮膜が水除去性に優れやすい点から、500以上5,000,000以下が好ましく、500以上1,000,000以下がより好ましく、500以上500,000以下がさらにより好ましく、500以上200,000以下が特に好ましい。本開示において重量平均分子量は、ゲルパーメーションクロマトグラフィー法によるポリスチレン換算値である。
【0055】
(A)成分の理論ガラス転移温度の上限としては、例えば、165、160、155、150、145、140、135、130、125、120、115、110、105、100、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、5℃等が挙げられ、下限としては、例えば、160、155、150、145、140、135、130、125、120、115、110、105、100、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、0℃等が挙げられる。
1つの実施形態において、(A)成分の理論ガラス転移温度は、コーティング用組成物の皮膜が延伸性に優れやすい点から、165℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましく、140℃以下がさらにより好ましく、130℃以下が特に好ましい。本開示において理論ガラス転移温度とは、構成モノマー成分のホモポリマーのガラス転移温度Tgiと、各モノマー成分の重量分率Wiから、下記のFoxの式により算出される。なお、(a4)成分はホモポリマーを形成しにくいため、下記の式には含めずに計算される。
1/Tg=Σ(Wi/Tgi)
Tg:(A)成分の理論ガラス転移温度(単位:K)、
Wi:(A)成分を構成するモノマー成分iの質量基準の共重合割合、Tgiはモノマー成分iのホモポリマーのガラス転移温度(単位:K)である。
【0056】
本開示の固形分濃度20質量%における(A)成分の粘度(25℃)の上限としては、例えば、2,000、1,500、1,000、900、800、700、600、500、400、300、200、100、90、80、70、60、50、40、30、25、20、15、12、10、9、8、7、6、5、4、3、2mPa・s等が挙げられ、下限としては、例えば、1,500、1,000、900、800、700、600、500、400、300、200、100、90、80、70、60、50、40、30、25、20、15、12、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1mPa・s等が挙げられる。1つの実施形態において、本開示の固形分濃度20質量%における(A)成分の粘度(25℃)は、コーティング用組成物の皮膜が水によって短時間で除去しやすくなる点から、1mPa・s以上2,000mPa・s以下が好ましく、1mPa・s以上500mPa・s以下がより好ましく、1mPa・s以上50mPa・s以下がさらに好ましく、1mPa・s以上25mPa・s以下が特に好ましい。当該粘度は、水で希釈する等して固形分濃度20質量%とした場合の値である。粘度の測定方法としては、JIS K 7117-1:1999に記載されている粘度計を使用した方法等が挙げられる。
【0057】
本開示のコーティング用組成物100質量%に占める(A)成分の含有量(固形分換算)の上限としては、例えば、100、99、97、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、3質量%等が挙げられ、下限としては、例えば、99、97、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、3、1質量%等が挙げられる。
1つの実施形態において、本開示のコーティング用組成物100質量%に占める(A)成分の含有量(固形分換算)は、1~100質量%が好ましく、20~100質量%がより好ましく、30~100質量%がさらにより好ましく、40~100質量%が特に好ましい。
【0058】
<その他配合可能な剤>
本開示のコーティング用組成物には、さらに、必要に応じて上記例示した成分以外の架橋剤、抗菌剤、界面活性剤、防腐剤、防錆剤、粘度調整剤、pH調整剤、顔料、染料、滑剤、レベリング剤、触媒、消泡剤、光増感剤(アミン類、キノン類等)、有機粒子等の各種添加剤を配合することもできる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0059】
本開示のコーティング用組成物には必要に応じて、溶媒を配合し、コーティング用組成物の粘度を調整しても良い。溶媒としては、例えば、水、有機溶媒等が挙げられる。有機溶媒は、各種公知のものであってもよい。有機溶媒として、ケトン溶媒、芳香族溶媒、アルコール溶媒、グリコール溶媒、グリコールエーテル溶媒、エステル溶媒、石油系溶媒、ハロアルカン溶媒、アミド溶媒等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0060】
ケトン溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
【0061】
芳香族溶媒として、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0062】
アルコール溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等が挙げられる。
【0063】
グリコール溶媒としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0064】
グリコールエーテル溶媒としては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル等が挙げられる。
【0065】
エステル溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0066】
石油系溶媒としては、例えば、ソルベッソ#100(エクソン社製)、ソルベッソ#150(エクソン社製)等が挙げられる。
【0067】
ハロアルカン溶媒としては、例えば、クロロホルム等が挙げられる。
【0068】
アミド溶媒としては、例えば、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
【0069】
本開示のコーティング用組成物を構成する成分の固形分換算100質量%に対する溶媒の含有量の上限としては、例えば、100,000、50,000、25,000、20,000、15,000、10,000、9,000、8,000、7,000、6,000、5,000、4,000、3,000、2,000、1,900、1,800、1,700、1,600、1,500、1,400、1,300、1,200、1,100、1,000、500、100、50、25質量%等が挙げられ、下限としては、例えば、50,000、25,000、20,000、15,000、10,000、9,000、8,000、7,000、6,000、5,000、4,000、3,000、2,000、1,900、1,800、1,700、1,600、1,500、1,400、1,300、1,200、1,100、1,000、500、100、50、25、10質量%等が挙げられる。
1つの実施形態において、本開示のコーティング用組成物を構成する成分の固形分換算100質量%に対する溶媒の含有量は、10~100,000質量%が好ましく、500~20,000質量%がより好ましい。
【0070】
本開示のコーティング用組成物の固形分濃度(質量%)の上限としては、例えば、50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、1、0.5等が挙げられ、下限としては、例えば、45、40、35、30、25、20、15、10、5、1、0.5、0.1等が挙げられる。
1つの実施形態において、本開示のコーティング用組成物の固形分濃度は、0.1~50質量%が好ましい。
【0071】
<積層体>
本開示では、コーティング用組成物の皮膜を提供する。また、本開示では、基材の少なくとも片面にコーティング用組成物の皮膜を有する積層体を提供する。また、本開示において、コーティング用組成物を基材表面に塗布する工程を含む、コーティング用組成物の皮膜の形成方法も提供する。
【0072】
本開示のコーティング用組成物を塗工する基材としては、例えば、ガラス基材、金属基材、プラスチック基材等が挙げられる。
金属基材としては、例えば、金、銀、銅、錫、ニッケル、アルミニウム、チタン、モリブデン、亜鉛、コバルト、ニッケル、クロム鉄-ニッケル-コバルト合金、タングステン、銅-タングステン、インバー、ガルバリウム鋼板(登録商標)、ZAM鋼板等が挙げられる。
プラスチック基材としては、例えば、熱可塑性プラスチック基材、熱硬化性プラスチック基材等が挙げられる。
熱可塑性プラスチック基材としては、例えば、汎用プラスチック基材、エンジニアリングプラスチック基材等が挙げられる。
汎用プラスチック基材としては、例えば、オレフィン系、ポリエステル系、アクリル系、ビニル系、ポリスチレン系等が挙げられる。
オレフィン系としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン等が挙げられる。
ポリエステル系としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等が挙げられる。
アクリル系としては、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等が挙げられる。
ビニル系としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
ポリスチレン系としては、例えば、ポリスチレン(PS)樹脂、スチレン・アクリロニトリル(AS)樹脂、スチレン・ブタジエン・アクリロニトリル(ABS)樹脂等が挙げられる。
エンジニアリングプラスチック基材としては、例えば、汎用エンプラ、スーパーエンプラ等が挙げられる。
汎用エンプラとしては、例えば、ポリカーボネート、ポリアミド(ナイロン)等が挙げられる。
スーパーエンプラとしては、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等が挙げられる。
熱硬化性プラスチック基材としては、例えば、ポリイミド、エポキシ樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。
その他のプラスチック基材としては、例えば、トリアセチルセルロース樹脂等が挙げられる。
また基材は、表面処理(コロナ放電、金属蒸着、めっき処理等)、防錆化処理、化成処理等がなされていても良い。
防錆化処理としては、例えば、鏡面化処理が挙げられる。
表面処理としては、例えば、Ni,Zn,Sn等を含むメッキ液を用いたメッキ処理、リン酸ジルコニウムによる処理、クロメート処理等が挙げられる。
クロメート処理としては、例えば、リン酸クロメート、クロム酸クロメートを用いる方法等が挙げられる。
基材の片面あるいは両面に設けられた本開示のコーティング用組成物が形成する皮膜との間にその他の層(例えば易接着層、アンカー層等)が設けられたものであっても良い。
基材は、好ましくはプラスチック基材であり、より好ましくは熱可塑性プラスチック基材であり、さらにより好ましくは汎用プラスチック基材であり、特に好ましくはポリエステル系基材である。本開示のコーティング用組成物は好ましくはポリエステル系基材に塗布する用途として使用される。なお、基材の厚みは、1μm~2mmが挙げられる。
【0073】
本開示のコーティング用組成物を基材上に塗布する方法としては、例えば、ロールコーター塗工、リバースロールコーター塗工、バーコーター塗工、メイヤーバー塗工、エアナイフ塗工、グラビア塗工、リバースグラビア塗工、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷等が挙げられる。なお、塗布量は通常、乾燥後の質量が0.01~10.0g/mになる範囲であり、好ましくは0.01~5.0g/mであり、より好ましくは0.01~2.0g/m、さらにより好ましくは0.01~1.0g/mである。また、本開示のコーティング用組成物の皮膜の膜厚は0.01~10μm程度である。
【0074】
本開示のコーティング用組成物を基材表面に塗布した後、加熱工程の処理を行っても良い。本開示の加熱工程は、基材に塗布されたコーティング用組成物に熱を与えることができればよい。本開示の加熱工程として、60~350℃で、10秒~60分加熱させることが挙げられる。本開示の加熱工程として好ましくは60~250℃で、より好ましくは60~200℃で、10秒~5分加熱させることが挙げられる。
【0075】
本開示のコーティング用組成物の皮膜は、各種層への密着性に優れることから、接着剤、粘着剤、アンカーコート剤として使用できる。また、本開示のコーティング用組成物の皮膜は、延伸性に優れることから、基材を延伸する工程を含む積層体向けに使用できる。さらに、本開示のコーティング用組成物は、その皮膜が水可溶性(水へ溶解できる性質)であることから、水可溶性皮膜形成用コーティング用組成物として使用できる。
【0076】
その他、本開示のコーティング用組成物が奏する効果を発揮できるような各種の用途に用いることも考えられる。
【0077】
<リサイクル基材の製造方法>
本開示のコーティング用組成物の皮膜は水への溶解性に優れる。このため当該皮膜が基材やその他の層と積層体(基材-当該皮膜-その他の層)を形成している場合、当該皮膜を水と接触させることで皮膜を溶解させ、基材を単離することが可能である。そのようにして得られた基材をリサイクルできる。リサイクルの方法としては、例えば、単離された基材をそのまま再度使用する方法、単離された基材に化学的ないし物理的な処理を加え、基材を再製造し、使用する方法等が挙げられる。
すなわち、積層体が本開示のコーティング用組成物の皮膜と基材を含む場合、基材をリサイクルする方法(リサイクル基材の製造方法)は、
(1)本開示の積層体を水に接触させることで本開示の皮膜を除去する工程、
(2)基材を単離する工程、
(3)単離した基材から基材の原料を再生産する工程、
(4)基材の原料から基材を製造する工程、
を含む。
換言すれば、本開示の積層体を水に接触させ、本開示の皮膜を除去することによって得られた基材から原料を再生産して、基材を再製造する工程ともいえる。
なお、本開示において「リサイクル基材」とは、積層体から皮膜が水によって溶解して除去された後の基材を指す。
【実施例0078】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら各例に限定されるものではない。なお、各例中、部及び%は特記しない限り全て質量基準である。
【0079】
<合成例1:(A-1)成分の合成>
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素ガス導入管および2つの滴下ロートを備えた反応装置に、イオン交換水231.5部を入れ、窒素ガスを通じて反応系内の酸素を除去した後、90℃まで加熱した。一方の滴下ロートに50%アクリルアミド水溶液89.05部、アクリロイルモルフォリン51.18部、メトキシエチルアクリレート14.29部、およびイオン交換水65.48部を入れた。また、他方の滴下ロートに2,2‘-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(製品名:「NC-32P」、日宝化学(株)製)0.33部とイオン交換水90.0部を入れた。次に、両方の滴下ロートより系内にモノマーおよび触媒を約3時間かけて滴下した。滴下終了後、2,2‘-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩0.055部をイオン交換水10.0部に溶解させ、投入した。2時間保温後、固形分濃度20質量%、粘度(25℃)が950mPa・sの(A-1)成分を得た。モノマー組成と得られた(A-1)成分の物性を表1に示す。なお、粘度はローターを、No.2ローター、回転数を30rpmの条件で測定した。
【0080】
<比較合成例4:(AC-4)成分の合成>
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素ガス導入管および2つの滴下ロートを備えた反応装置に、イオン交換水232.8部を入れ、窒素ガスを通じて反応系内の酸素を除去した後、90℃まで加熱した。一方の滴下ロートに50%アクリルアミド水溶液220.00部を入れた。また、他方の滴下ロートに2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ニ塩酸塩0.66部とイオン交換水90.0部を入れた。次に、両方の滴下ロートより系内にモノマーおよび触媒を約3時間かけて滴下した。滴下終了後、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩0.055部をイオン交換水10.0部に溶解させ、投入した。2時間保温後、固形分濃度20質量%、粘度(25℃)が38,000mPa・sの(AC-4)成分を得た。モノマー組成および得られた(AC-4)成分の物性を表3に示す。なお、粘度はローターを、No.4ローター、回転数を12rpmの条件で測定した。
【0081】
<比較合成例5:(AC-5)成分の合成>
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素ガス導入管および2つの滴下ロートを備えた反応装置に、イオン交換水204.10部とイソプロピルアルコール(製品名:「トクソーIPA 工業用」、トクヤマ(株)製)1.71部を入れ、窒素ガスを通じて反応系内の酸素を除去した後、80℃まで加熱した。一方の滴下ロートに50%アクリルアミド水溶液198.89部を入れた。また、他方の滴下ロートに過硫酸アンモニウム(製品名:「過硫酸アンモニウム」、三菱ガス化学(株)製)1.69部とイオン交換水90.0部を入れた。次に、両方の滴下ロートより系内にモノマーおよび触媒を約3時間かけて滴下した。滴下終了後、過硫酸アンモニウム0.1874部をイオン交換水10.0部に溶解させ、投入した。2時間保温後、固形分濃度20質量%、粘度(25℃)が340mPa・sの(AC-5)成分を得た。モノマー組成および得られた(AC-5)成分の物性を表3に示す。なお、粘度はローターを、No.2ローター、回転数を60rpmの条件で測定した。
【0082】
<合成例2~32、比較合成例1、2、5~8:(A-2)成分~(A-32)成分及び(AC-1)成分~(AC-3)成分、(AC-6)成分~(AC-9)成分の合成>
表1~3の組成に変更した以外は合成例1と同様の方法で各(A)成分を合成した。なお、(A-3)成分、(A-4)成分、(A-7)成分、(A-13)成分、(A-18)成分、(A-19)成分、(A-24)成分、(AC-2)成分、(AC-6)成分は合成例1と同様の測定条件で、
(A-5)成分、(A-6)成分、(A-9)成分~(A-12)成分、(A-14)成分~(A-17)成分、(A-20)成分、(A-23)成分、(A-25)成分~(A-28)成分、(AC-1)成分、(AC-9)成分の粘度は比較合成例4と同様の測定条件で、
(A-2)成分、(A-8)成分、(AC-3)成分、(AC-7)成分、(AC-8)成分の粘度はローターを、No.3ローター、回転数を12rpmに変更して、
(A-21)成分、(A-22)成分、(A-29)成分~(A-32)成分の粘度はローターを、No.1ローター、回転数を60rpmに変更して、粘度をそれぞれ測定した。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
【表3】
【0086】
表1~3中の用語の意味は下記のとおりである。
AM:アクリルアミド(製品名:「アクリルアマイド(50%水溶液)」、三菱ケミカル(株)製)
HEAA:ヒドロキシエチルアクリルアミド(製品名:「HEAA」、KJケミカルズ(株)製)
ACMO:アクリロイルモルフォリン(製品名:「ACMO」、KJケミカルズ(株)製)
2-MTA:メトキシエチルアクリレート(製品名:「2-MTA」、大阪有機化学工業(株)製)
CBA:エチルカルビトールアクリレート(エトキシエトキシエチルアクリレート)(製品名:「ビスコート#190」、大阪有機化学工業(株)製)
MTG-A:メトキシトリエチレングルコールアクリレート(製品名:「ライトアクリレートMTG-A」、共栄社化学(株)製)
AME-400:メトキシポリエチレングリコールアクリレート(製品名:「AME-400」、日油(株)製)
MPE550A:メトキシポリエチレングリコールアクリレート(製品名:「MPE550A」、大阪有機化学工業(株)製)
SMAS:メタリルスルホン酸ナトリウム(製品名:「メタリルスルホン酸ソーダ」、丸善油化商事(株)製)
DMAA:ジメチルアクリルアミド(製品名:「DMAA」、KJケミカルズ(株)製)
DEAA:ジエチルアクリルアミド(製品名:「DEAA」、KJケミカルズ(株)製)
【0087】
<実施例1~32、比較例1~9:コーティング用組成物の調製>
合成例1で得られた(A-1)成分をコーティング用組成物(1)として使用した。同様に合成例2~32及び比較合成例1~8で得られた(A-2)~(A-32)成分及び(AC-1)~(AC-8)成分をコーティング用組成物(2)~(32)及び(C1)~(C8)として使用した。
【0088】
<積層体の作製>
コーティング用組成物(1)を固形分濃度が2.2%となるよう、イオン交換水で希釈し、ポリエステル基材(厚さ50μm)(製品名「ルミラー50T60」、東レ(株)製)にバーコーターNo.2で塗布し(乾燥後の膜厚:0.1μm)、200℃で1分間乾燥し、積層体(1)を得た。また、コーティング用組成物(1)をそれぞれコーティング用組成物(2)~(32)又は(C1)~(C9)に変更して、実施例1と同様の手法により行い、積層体(2)~(32)及び(C1)~(C9)をそれぞれ得た。
【0089】
<性能評価(1):塗工性>
各コーティング用組成物を固形分濃度が2.2%となるよう、イオン交換水で希釈し、ポリエステル基材(厚さ50μm)(製品名:「ルミラー50T60」、東レ(株)製)にバーコーターNo.2で塗布した後の状態を目視で観察し、その状態について下記基準で評価した。結果を表4に示す。
AA:ムラもハジキもなし
A:ハジキにより、端部から塗工面積が縮小するが、皮膜を形成できる
B:ハジキがあり、皮膜を形成できない
【0090】
<性能評価(2):密着性>
各積層体を温度23℃、湿度50%下で1時間静置した。その後、各積層体に対し、スーパーカッターガイド(製品名:「スーパーカッターガイド」、太佑機材(株)製)とスーパーカッターガイド付属のカッターナイフを用いて、格子パターンで基材表面まで切り込みを入れた(1つあたりの格子の大きさ:縦1mm、横1mm)。格子の数は100個であった。その後、セロテープ(登録商標)(製品名:「セロテープNo.405(産業用)24mm×35m」、ニチバン(株)製)を用いて、格子パターンで切り込みをいれた皮膜表面にテープを貼り付け後、皮膜表面からテープを剥がし、剥離した格子の数を測定した。セロテープで剥離した格子が61個以上だった積層体については、マスキングテープ(製品名:「マスキングテープ建築内装・養生用 24mm×50m ピンク」、テサテープ(株)製)を用いて、同様の評価を実施した。測定した結果について下記基準で評価した。結果を表4に示す。
AAA:セロテープで剥離なし
AA:セロテープで剥離した格子の数が60個以下
A:マスキングテープで剥離した格子の数が60個以下
B:マスキングテープで剥離した格子の数が61個以上
【0091】
<性能評価(3):延伸性>
各コーティング用組成物を固形分濃度が4.4%となるよう、イオン交換水で希釈し、ポリエステル基材(厚さ:200μm)(製品名:「ミネロンA-PET0.2」、ミネロン化成工業(株)製)にバーコーターNo.4で塗布して(乾燥後の厚さ:0.4μm)、100℃で5分間乾燥した。次いで、塗工したポリエステル基材を垂直方向に吊るし、120℃で1分間乾燥後、加温したまま、垂直方向に引っ張って4倍延伸し、延伸性評価用積層体を得た(延伸後の厚さ:0.1μm)。
当該積層体を温度23℃、湿度50%下で1時間静置した後、ヘーズメーター(製品名:「ヘーズメーター HZ-V3」、スガ試験機(株)製)を用いて、ヘイズ(%)を測定した。
測定した結果について下記基準で評価した。結果を表4に示す。
AAA:ヘイズが1.00%以下
AA:ヘイズが1.00%超2.00%以下
A:ヘイズが2.00%超4.00%以下
B:ヘイズが4.00%超、もしくは延伸時にひび割れがあり
【0092】
<性能評価(4):耐溶剤性>
各積層体を、温度23℃、湿度50%下で1時間静置した。その後、トルエン(製品名:「トルエン 和光一級」、富士フイルム和光純薬(株)製)、エチルメチルケトン(製品名:「2-ブタノン 和光一級」、富士フイルム和光純薬(株)製)、酢酸エチル(製品名:「酢酸エチル 和光一級」、富士フイルム和光純薬(株)製)、イソプロピルアルコール(製品名:「トクソーIPA 工業用」、トクヤマ(株)製)の4種類の溶剤をそれぞれ浸み込ませた綿棒(製品名:「VC20 抗菌紙軸めんぼう」、(株)山洋製)で積層体の皮膜表面を均等な力で3往復擦った。その後の皮膜の状態を目視で確認し、その結果について下記基準で評価した。結果を表4に示す。
AAA:全ての溶剤(4種類)で皮膜の剥がれなし
AA:2種類または3種類の溶剤で皮膜の剥がれなし
A:1種類の溶剤で皮膜の剥がれなし
B:全ての溶剤(4種類)で皮膜の剥がれあり
【0093】
<性能評価(5):水除去性>
各コーティング用組成物を、ポリエステル基材(厚み:50μm)(製品名:「ルミラー50T60」、東レ(株)製)にバーコーターNo.4で塗布し(乾燥後の膜厚:2μm)、200℃で1分間乾燥し、水除去性評価用積層体をそれぞれ得た。
当該積層体を温度23℃、湿度50%下で1時間静置した後、温度25℃のイオン交換水に4時間漬けて、常温下で12時間風乾し、さらに温度23℃、湿度50%下で1時間静置した。
皮膜の水による除去性について、積層体の重量変化から、下記の計算式にて、皮膜の残膜率を算出した。測定した結果について下記基準で評価した。結果を表4に示す。
残膜率(%)=[{25℃のイオン交換水に4時間漬けた後の水除去性評価用積層体の重量(g)}-{塗布前のポリエステル基材の重量(g)}]÷[{25℃のイオン交換水に漬ける前の水除去性評価用積層体の重量(g)}-{塗布前のポリエステル基材の重量(g)}]×100
AAA:1%未満
AA:1%以上10%未満
A:10%以上30%未満
B:30%以上
【0094】
【表4】
【手続補正書】
【提出日】2024-01-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本開示により以下の項目が提供される。
(項目1)
(メタ)アクリルアミド及び/又はN-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド(a1)並びに環状構造及びヘテロ原子を有するエチレン性不飽和単量体(a2)を含有する反応成分の重合体(A)を含有するコーティング用組成物。
(項目2)
(a2)成分が複素環を有するエチレン性不飽和単量体である項目1に記載のコーティング用組成物。
(項目3)
(A)成分の反応成分として、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が2℃以下であるスルホ基を有さないエチレン性不飽和単量体(a3)及び/又はスルホ基を有するエチレン性不飽和単量体(a4)を含有する項目1又は2に記載のコーティング用組成物。
(項目4)
(a3)成分が下記一般式(1)で表される単量体である項目3に記載のコーティング用組成物。
一般式(1):
【化1】
(式中、Rはメチル基、エチル基、フェニル基又は水素原子であり、Rはメチル基、又は水素原子であり、nは1以上20以下の整数である。)
(項目5)
(A)成分の理論ガラス転移温度(Tg)が130℃以下である、項目1又は2に記載のコーティング用組成物。
(項目6)
固形分濃度20%における(A)成分の粘度(25℃)が1mPa・s以上2,000mPa・s以下である、項目1又は2に記載のコーティング用組成物。
(項目7)
項目1又は2に記載のコーティング用組成物の皮膜。
(項目8)
基材及び項目7に記載の皮膜を含む、積層体。
(項目9)
項目8に記載の積層体を水に接触させることで項目7に記載の皮膜を除去する工程を含むリサイクル基材の製造方法。

【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0070
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0070】
本開示のコーティング用組成物の固形分濃度の上限としては、例えば、50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、1、0.5質量%等が挙げられ、下限としては、例えば、45、40、35、30、25、20、15、10、5、1、0.5、0.1質量%等が挙げられる。
1つの実施形態において、本開示のコーティング用組成物の固形分濃度は、0.1~50質量%が好ましい。

【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0072
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0072】
本開示のコーティング用組成物を塗工する基材としては、例えば、ガラス基材、金属基材、プラスチック基材等が挙げられる。
金属基材としては、例えば、金、銀、銅、錫、ニッケル、アルミニウム、チタン、モリブデン、亜鉛、コバルト、ロム鉄-ニッケル-コバルト合金、タングステン、銅-タングステン、インバー、ガルバリウム鋼板(登録商標)、ZAM鋼板等が挙げられる。
プラスチック基材としては、例えば、熱可塑性プラスチック基材、熱硬化性プラスチック基材等が挙げられる。
熱可塑性プラスチック基材としては、例えば、汎用プラスチック基材、エンジニアリングプラスチック基材等が挙げられる。
汎用プラスチック基材としては、例えば、オレフィン系、ポリエステル系、アクリル系、ビニル系、ポリスチレン系等が挙げられる。
オレフィン系としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン等が挙げられる。
ポリエステル系としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等が挙げられる。
アクリル系としては、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等が挙げられる。
ビニル系としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
ポリスチレン系としては、例えば、ポリスチレン(PS)樹脂、スチレン・アクリロニトリル(AS)樹脂、スチレン・ブタジエン・アクリロニトリル(ABS)樹脂等が挙げられる。
エンジニアリングプラスチック基材としては、例えば、汎用エンプラ、スーパーエンプラ等が挙げられる。
汎用エンプラとしては、例えば、ポリカーボネート、ポリアミド(ナイロン)等が挙げられる。
スーパーエンプラとしては、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等が挙げられる。
熱硬化性プラスチック基材としては、例えば、ポリイミド、エポキシ樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。
その他のプラスチック基材としては、例えば、トリアセチルセルロース樹脂等が挙げられる。
また基材は、表面処理(コロナ放電、金属蒸着、めっき処理等)、防錆化処理、化成処理等がなされていても良い。
防錆化処理としては、例えば、鏡面化処理が挙げられる。
表面処理としては、例えば、Ni,Zn,Sn等を含むメッキ液を用いたメッキ処理、リン酸ジルコニウムによる処理、クロメート処理等が挙げられる。
クロメート処理としては、例えば、リン酸クロメート、クロム酸クロメートを用いる方法等が挙げられる。
基材の片面あるいは両面に設けられた本開示のコーティング用組成物が形成する皮膜との間にその他の層(例えば易接着層、アンカー層等)が設けられたものであっても良い。
基材は、好ましくはプラスチック基材であり、より好ましくは熱可塑性プラスチック基材であり、さらにより好ましくは汎用プラスチック基材であり、特に好ましくはポリエステル系基材である。本開示のコーティング用組成物は好ましくはポリエステル系基材に塗布する用途として使用される。なお、基材の厚みは、1μm~2mm等が挙げられる。