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特開2024-114591中性子測定システムおよび中性子測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114591
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】中性子測定システムおよび中性子測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01T 3/00 20060101AFI20240816BHJP
   G01T 1/115 20060101ALI20240816BHJP
   G01T 1/20 20060101ALI20240816BHJP
   G01T 3/06 20060101ALI20240816BHJP
   G01T 1/36 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
G01T3/00 G
G01T1/115 F
G01T1/20 A
G01T3/06
G01T1/36 D
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023193283
(22)【出願日】2023-11-13
(31)【優先権主張番号】112104741
(32)【優先日】2023-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
2.MAC OS
(71)【出願人】
【識別番号】518296517
【氏名又は名称】禾榮科技股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】HERON NEUTRON MEDICAL CORP.
【住所又は居所原語表記】No.66-2, Shengyi 5th Rd., Zhubei City, Hsinchu County, Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】100206335
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 和宏
(72)【発明者】
【氏名】蔡 文旗
(72)【発明者】
【氏名】林 宗逸
【テーマコード(参考)】
2G188
【Fターム(参考)】
2G188AA01
2G188BB04
2G188BB09
2G188BB15
2G188BB19
2G188CC21
2G188CC22
2G188EE25
2G188FF18
(57)【要約】      (修正有)
【課題】中性子の強度を低コストかつ高効率に測定できる中性子測定システムおよび中性子測定方法を提供する。
【解決手段】活性化された金属体より放出された電離放射線を吸収して蓄積し、前記蓄積された電離放射線を熱ルミネッセンスの形で放出する熱ルミネッセンス結晶を含む熱ルミネッセンス線量計、前記熱ルミネッセンスの強度を測定するための光検出器、および前記光検出器に接続され、前記光検出器から前記熱ルミネッセンスの強度を受け取り、前記熱ルミネッセンスの強度および熱ルミネッセンス線量校正係数に基づいて、前記熱ルミネッセンス結晶により吸収および蓄積された電離放射線の熱ルミネッセンス線量を計算し、第1の変換式を用いて、前記熱ルミネッセンス線量および第1の変換係数に基づいて前記金属体の活性を計算し、第2の変換式を用いて、前記計算された前記金属体の活性に基づいて前記金属体が位置する中性子強度を計算する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中性子測定システムであって、
活性化された金属体より放出された電離放射線を吸収して蓄積し、加熱されたとき、前記蓄積された電離放射線を熱ルミネッセンスの形で放出する熱ルミネッセンス結晶を含む熱ルミネッセンス線量計、
前記熱ルミネッセンスの強度を測定するための光検出器、および
前記光検出器に接続され、
前記光検出器から前記熱ルミネッセンスの強度を受け取り、
前記熱ルミネッセンスの強度および熱ルミネッセンス線量校正係数に基づいて、前記熱ルミネッセンス結晶により吸収および蓄積された電離放射線の熱ルミネッセンス線量を計算し、
第1の変換式を用いて、前記熱ルミネッセンス線量および第1の変換係数に基づいて前記金属体の活性を計算し、
第2の変換式を用いて、前記計算された前記金属体の活性に基づいて前記金属体が位置する中性子強度を計算するように構成されたコンピューティングデバイスを含む中性子測定システム。
【請求項2】
前記金属体は、照射装置により放出された中性子線を前記金属体に照射することで活性化される請求項1に記載の中性子測定システム。
【請求項3】
前記熱ルミネッセンス線量計は前記金属体に隣接している請求項1に記載の中性子測定システム。
【請求項4】
前記熱ルミネッセンス線量計は、前記金属体をさらに含む請求項1に記載の中性子測定システム。
【請求項5】
前記第1の変換式は以下の通りであり、
【数1】
Aは前記金属体の活性を表しており、DTLは前記熱ルミネッセンス線量を表しており、
【数2】
は、前記第1の変換係数であり、λは前記金属体の減衰定数を表しており、Eは単位線量を表しており、Tは減衰線量測定時間を表している請求項1に記載の中性子測定システム。
【請求項6】
熱ルミネッセンス結晶を含み、前記熱ルミネッセンス結晶は、活性化された金属体より放出された電離放射線を吸収して蓄積し、加熱されたとき、前記熱ルミネッセンス結晶は、前記蓄積された電離放射線を熱ルミネッセンスの形で放出する熱ルミネッセンス線量計を加熱するステップ、
光検出器を用いて前記熱ルミネッセンスの強度を測定するステップ、
前記熱ルミネッセンスの強度および熱ルミネッセンス線量校正係数に基づいて、前記熱ルミネッセンス結晶により吸収および蓄積された電離放射線の熱ルミネッセンス線量を計算するステップ、
第1の変換式を用いて、前記熱ルミネッセンス線量および第1の変換係数に基づいて前記金属体の活性を計算するステップ、および
第2の変換式を用いて、前記計算された前記金属体の活性に基づいて前記金属体が位置する中性子強度を計算するステップを含む中性子測定方法。
【請求項7】
照射装置より放出された中性子線を前記金属体に照射することで前記金属体を活性化するステップをさらに含む請求項6に記載の中性子測定方法。
【請求項8】
前記熱ルミネッセンス線量計に隣接して前記金属体を配置するステップをさらに含む請求項6に記載の中性子測定方法。
【請求項9】
前記活性化された金属体は前記熱ルミネッセンス線量計に含まれる請求項6に記載の中性子測定方法。
【請求項10】
前記第1の変換式は以下の通りであり、
【数3】
Aは前記金属体の活性を表しており、DTLは前記熱ルミネッセンス線量を表しており、
【数4】
は、前記第1の変換係数であり、λは前記金属体の減衰定数を表しており、Eは単位線量を表しており、Tは減衰線量測定時間を表している請求項6に記載の中性子測定方法。
【請求項11】
熱ルミネッセンス結晶を含み、前記熱ルミネッセンス結晶は、活性化された金属体より放出された電離放射線をシンチレーション光に変換する熱ルミネッセンス線量計と、
前記シンチレーション光の強度を測定するための光検出器と、
前記光検出器に接続され、
前記光検出器から前記シンチレーション光の強度の受け取り、
前記シンチレーション光の強度および第2の変換係数に基づいて前記金属体の活性の計算、
第2の変換式を用いて、前記計算された前記金属体の活性に基づいて前記金属体が位置する中性子強度の計算を行うように構成されるコンピューティングデバイスとを含む中性子測定システム。
【請求項12】
前記金属体は、照射装置より放出された中性子線を前記金属体に照射することにより活性化される請求項11に記載の中性子測定システム。
【請求項13】
前記熱ルミネッセンス線量計は、前記金属体に隣接する請求項11に記載の中性子測定システム。
【請求項14】
前記熱ルミネッセンス線量計は、前記金属体を含む請求項11に記載の中性子測定システム。
【請求項15】
前記第2の変換係数は、ガンマ線分光分析装置を用いてサンプルにガンマ線分光分析を行うことにより計算される請求項11に記載の中性子測定システム。
【請求項16】
熱ルミネッセンス線量計内の熱ルミネッセンス結晶を用いて、活性化された金属体により放出された電離放射線をシンチレーション光に変換するステップ、
光検出器を用いて前記シンチレーション光の強度を測定するステップ、
前記シンチレーション光の強度および第2の変換係数に基づいて前記金属体の活性を計算するステップ、および
第2の変換式を用いて、前記計算された前記金属体の活性に基づいて前記金属体の位置における中性子強度を計算するステップを含む中性子測定方法。
【請求項17】
照射装置より放出された中性子線を前記金属体に照射することで前記金属体を活性化するステップをさらに含む請求項16に記載の中性子測定方法。
【請求項18】
前記熱ルミネッセンス線量計に隣接して前記金属体を配置するステップをさらに含む請求項16に記載の中性子測定方法。
【請求項19】
前記活性化された金属体は前記熱ルミネッセンス線量計に含まれる請求項16に記載の中性子測定方法。
【請求項20】
ガンマ線分光分析装置を用いて、サンプルにガンマ線分光分析を行うことにより第2の変換係数を計算するステップをさらに含む請求項16に記載の中性子測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2023年2月10日に出願された台湾特許出願番号第112104741号についての優先権を主張するものであり、これらの全ては引用によって本願に援用される。
【0002】
本発明は、中性子測定技術に関するものであり、特に、中性子測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
中性子の強度の測定は、放射線場内の金属体が不安定な放射性同位体に活性化されるという原理を用いているため、高純度ゲルマニウム(HPGe)検出器を用いて、このような不安定な放射性同位体の崩壊過程で放出された電離放射線を測定し、ガンマ線分光分析を行っている。しかしながら、HPGe装置は高価であり、HPGe検出器を常時、低温状態に維持するために用いられる液体窒素が必要であり、誤差を低減するために長時間(約30分)の信号収集を要する。
【0004】
上述の問題に鑑み、中性子の強度を低コストかつ高効率に測定できる中性子測定システムおよび中性子測定方法が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
中性子の強度を低コストかつ高効率に測定できる中性子測定システムおよび中性子測定方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の実施形態は、中性子測定システムを提供する。中性子測定システムは、熱ルミネッセンス線量計(TLD)、光検出器、およびコンピューティングデバイスを含む。熱ルミネッセンス線量計は、活性化された金属体より放出された電離放射線を吸収して蓄積し、加熱されたとき、熱ルミネッセンス結晶は、蓄積された電離放射線を熱ルミネッセンスの形で放出する。光検出器は、熱ルミネッセンスの強度を測定するためのものである。コンピューティングデバイスは、光検出器に接続され、光検出器から熱ルミネッセンスの強度を受け取るように構成されている。コンピューティングデバイスは、熱ルミネッセンスの強度および熱ルミネッセンス線量校正係数に基づいて、熱ルミネッセンス結晶により吸収および蓄積された電離放射線の熱ルミネッセンス線量を計算するようにさらに構成されている。コンピューティングデバイスは、第1の変換式を用いて、熱ルミネッセンス線量および第1の変換係数に基づいて金属体の活性を計算するようにさらに構成されている。コンピューティングデバイスは、第2の変換式を用いて、計算された金属体の活性に基づいて金属体が位置する中性子強度を計算するようにさらに構成されている。
【0007】
一実施形態では、金属体は、照射装置により放出された中性子線を金属体に照射することで活性化される。
【0008】
一実施形態では、熱ルミネッセンス線量計は金属体に隣接している。別の実施形態では、熱ルミネッセンス線量計は、金属体をさらに含む。
【0009】
一実施形態では、第1の変換式は、
【数1】
であり、Aは金属体の活性を表しており、DTLは熱ルミネッセンス線量を表しており、
【数2】
は、第1の変換係数であり、λは金属体の減衰定数を表しており、Eは単位線量を表しており、Tは減衰線量測定時間を表している。
【0010】
本開示の実施形態は、中性子測定方法をさらに提供する。この方法は、熱ルミネッセンス線量計を加熱するステップを含む。熱ルミネッセンス線量計は、熱ルミネッセンス結晶を含む。熱ルミネッセンス結晶は、活性化された金属体より放出された電離放射線を吸収して蓄積する。加熱されたとき、熱ルミネッセンス結晶は、蓄積された電離放射線を熱ルミネッセンスの形で放出する。この方法は、光検出器を用いて熱ルミネッセンスの強度を測定するステップをさらに含む。この方法は、熱ルミネッセンスの強度および熱ルミネッセンス線量校正係数に基づいて、熱ルミネッセンス結晶により吸収および蓄積された電離放射線の熱ルミネッセンス線量を計算するステップをさらに含む。この方法は、第1の変換式を用いて、熱ルミネッセンス線量および第1の変換係数に基づいて金属体の活性を計算するステップをさらに含む。この方法は、第2の変換式を用いて、計算された金属体の活性に基づいて金属体が位置する中性子強度を計算するステップをさらに含む。
【0011】
一実施形態では、この方法は、熱ルミネッセンス線量計に隣接して金属体を配置するステップをさらに含む。別の実施形態では、活性化された金属体は熱ルミネッセンス線量計に含まれている。
【0012】
一実施形態では、この方法は、照射装置より放出された中性子線を金属体に照射することで金属体を活性化するステップをさらに含む。
【0013】
本開示の実施形態は、別の中性子測定システムを提供する。中性子測定システムは、熱ルミネッセンス線量計、光検出器、およびコンピューティングデバイスを含む。熱ルミネッセンス線量計は、熱ルミネッセンス結晶を含む。熱ルミネッセンス結晶は、活性化された金属体より放出された電離放射線をシンチレーション光に変換する。光検出器はシンチレーション光の強度を測定するためのものである。コンピューティングデバイスは、光検出器に接続され、光検出器からシンチレーション光の強度を受け取るように構成されている。コンピューティングデバイスは、シンチレーション光の強度および第2の変換係数に基づいて金属体の活性を計算するようにさらに構成されている。コンピューティングデバイスは、第2の変換式を用いて、計算された金属体の活性に基づいて金属体が位置する中性子強度を計算するようにさらに構成されている。
【0014】
一実施形態では、第2の変換係数は、ガンマ線分光分析装置を用いてサンプルにガンマ線分光分析を行うことにより計算される。さらなる実施形態では、ガンマ線分光分析装置は高純度ゲルマニウム(HPGe)検出器である。
【0015】
本開示の実施形態は、別の中性子測定方法を提供する。この方法は、熱ルミネッセンス線量計内の熱ルミネッセンス結晶を用いて、活性化された金属体により放出された電離放射線をシンチレーション光に変換するステップを含む。この方法は、光検出器を用いてシンチレーション光の強度を測定するステップをさらに含む。この方法は、シンチレーション光の強度および第2の変換係数に基づいて金属体の活性を計算するステップをさらに含む。この方法は、第2の変換式を用いて、計算された金属体の活性に基づいて金属体の位置における中性子強度を計算するステップをさらに含む。
【0016】
一実施形態では、この方法は、ガンマ線分光分析装置を用いて、サンプルにガンマ線分光分析を行うことにより第2の変換係数を計算するステップをさらに含む。
【0017】
本開示で提供される中性子測定システムおよび中性子測定方法は、迅速(約5分)かつ容易に信頼性の高い金属体活性の測定結果を得ることができる。ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)の状況では、複数の熱ルミネッセンス線量計を同時に測定ファントム(人体に代わる物体)に設置することで、中性子線の特性解析、品質保証、品質管理を迅速に完了することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明は、添付の図面を参照しながら以下の詳細な説明から、より完全に理解することができる。さらに、本開示のフロー図では、各ブロックの実行順序を変更することができ、および/またはブロックの一部を変更、削除、または組み合わせることができることを理解されたい。
図1A図1Aは、本開示の一実施形態による中性子測定システムを示すシステムアーキテクチャ図である。
図1B図1Bは、本開示の別の実施形態による中性子測定システムを示すシステムアーキテクチャ図である。
図2図2は、本開示の一実施形態による中性子測定方法を示すフロー図である。
図3図3は、本開示の別の実施形態による中性子測定方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の説明は、本発明の一般的な原理を説明するためのものであり、限定的な意味で解釈されるべきではない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲を参考にして決定される。
【0020】
以下の各実施形態では、同じ参照番号は、同一または類似の要素または構成要素を表している。
【0021】
特許請求の範囲で用いられる「第一」、「第二」、「第三」などの序数用語は説明の便宜のためのみに用いられるものであり、相互間の優先関係を意味するものではない。
【0022】
本開示では、方法の実施形態の説明は、デバイスまたはシステムの実施形態にも適用可能であり、またその逆も同様である。
【0023】
図1Aは、本開示の一実施形態による中性子測定システム100Aのシステムアーキテクチャ図である。図1Aに示されるように、中性子測定システム100Aは、熱ルミネッセンス線量計(TLD)101、光検出器103、およびコンピューティングデバイス104を含むことができる。熱ルミネッセンス線量計101は熱ルミネッセンス結晶102を含む。図1Aでは、熱ルミネッセンス結晶102が熱ルミネッセンス線量計101の中央に長方形として描かれているが、熱ルミネッセンス結晶102の形状または位置は本開示によって限定されない。この実施形態では、金属体110は、熱ルミネッセンス線量計101に隣接して配置され、これにより、熱ルミネッセンス線量計101が、活性化された金属体110より放出された電離放射線をよりよく吸収することができるようになる。
【0024】
熱ルミネッセンス線量計101は、熱ルミネッセンス結晶102と微量金属とを有する放射線線量計である。微量金属(例えば、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、ジスプロシウム(Dy)...および他の金属元素)が放射線に曝露された(例えば、放射線照射野に置かれた、または照射装置によって照射された)とき、熱ルミネッセンス結晶102は電離放射線エネルギーを吸収し、電離放射線エネルギーを結晶格子内に蓄積する。加熱されると、熱ルミネッセンス結晶102は、蓄積されたエネルギーを熱ルミネッセンスの形で放出する。熱ルミネッセンスの強度は、熱ルミネッセンス結晶102が曝露される電離放射線の強度とともに増加する。本開示は、熱ルミネッセンスの強度を検出することにより電離放射線の強度、即ち熱ルミネッセンス線量を推定する。次いで、熱ルミネッセンス線量を介して、中性子の強度がさらに推定されることができる。
【0025】
熱ルミネッセンス線量計101は、例えば、Thermo Fisher Scientific社(Thermo Fisher Scientific Inc.,)製の熱ルミネッセンス線量計製品とすることができるが、本開示はこれに限定されない。熱ルミネッセンス線量計101の熱ルミネッセンス結晶102の材料は、例えば、フッ化リチウム(LiF)、フッ化カルシウム(CaF2)、または四ホウ酸リチウム(Li2B4O7)などであることができるが、本開示はこれらに限定されない。さらに、熱ルミネッセンス線量計101の熱ルミネッセンス結晶102の具体的な形状、分布または位置は、本開示によって限定されない。
【0026】
一実施形態では、熱ルミネッセンス結晶102自体がシンチレータであるという特性を用いて、電離放射線を吸収した熱ルミネッセンス結晶102によって瞬間的に放出されるシンチレーション光の強度を測定する。シンチレーション光の強度が、ある範囲において金属の活性にほぼ線性であるという特性を用いて、金属の活性がシンチレーション光の強度から推定されることができ、次いで、中性子の強度が金属の活性から推定されることができる。上述のプロセスの間、熱ルミネッセンス結晶102を加熱する必要はない。
【0027】
一実施形態では、熱ルミネッセンス線量計101自体に含まれる金属が中性子測定の要件を満たさない可能性があることを考慮して、中性子測定システム100Aで用いられる金属体110は、熱ルミネッセンス線量計の外部の金属体であってもよい。金属体110は、例えば、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、ジスプロシウム(Dy)などの金属元素を含む金属箔であることができ、これは放射線場で不安定な放射性同位体に活性化され、その崩壊過程で電離放射線IRを放出する。電離放射線IRは、ガンマ線およびベータ線が含まれるが、これらに限定されない。
【0028】
熱ルミネッセンス結晶102によって放射される熱ルミネッセンス光またはシンチレーション光は、図では光子120で表されている。光検出器103は、熱ルミネッセンスまたはシンチレーション光の強度を測定するために、光子信号を電子信号に変換することができる。光検出器103は、例えば、光電子増倍管、フォトレジスタ、またはフォトダイオードであることができるが、本発明はこれらに限定されない。一実施形態では、光検出器103は光電子増倍管であり、光電陰極、複数のダイノード、およびアノード(図示せず)を含むことができる。熱ルミネッセンス結晶102より放出された光子120が光電陰極に当たったとき、光電効果が発生して電子が生成され、生成された電子がダイノードに集束されて複数の二次電子を生成する。従って、電子の数は一連のダイノードを介して増倍され、電子は最終的にアノードに到達して、熱ルミネッセンスまたはシンチレーション光の強度を表すことができる電子信号を生成する。光検出器103は、通信インターフェース(図には示されていないが)をさらに含んで、熱ルミネッセンスまたはシンチレーション光の強度を表す電子信号をコンピューティングデバイス104に送信することができる。通信インターフェースは、例えば、RS-232、USB、またはデジタルI/Oインターフェースカードであることができるが、本開示はそれらに限定されない。
【0029】
コンピューティングデバイス104は、パーソナルコンピュータ(例えば、デスクトップコンピュータまたはノートブックコンピュータ)またはオペレーティングシステム(例えば、Windows、Mac OS、Linux(登録商標)、UNIX(登録商標)など)を実行するサーバコンピュータなどのコンピュータシステムであることができ、または、スマートフォンおよびタブレット型コンピュータなど、命令および計算を実行する機能を備えたモバイルデバイスであることができる。コンピューティングデバイス104は処理装置を含む。処理装置は、中央処理装置(CPU)、マイクロプロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、またはステートマシンなど、命令を実行するための任意の装置であることができる。コンピューティングデバイス104は、記憶装置をさらに含むことができる。記憶装置は、ハードディスク(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)、または光ディスクなどの不揮発性メモリ(例えば、読み取り専用メモリ、電子消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリ、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM))を含む任意の装置であることができる。記憶装置は、本開示の実施形態が必要とするプログラムまたは命令を記憶し、処理装置にローディングさせて対応する動作を実行させる。本開示の実施形態では、コンピューティングデバイス104は、シンチレーション光の強度および金属体が位置する中性子の強度に基づいて、金属体110の活性を計算するように用いられる。
【0030】
図1Bは、本開示の別の実施形態による、中性子測定システム100Bを示すシステムアーキテクチャ図である。図1Bに示すように、中性子測定システム100Bと中性子測定システム100Aとの相違点は、中性子測定システム100Bの熱ルミネッセンス線量計101が金属体110をさらに含むことである。言い換えれば、中性子測定システム100Bに用いられる金属体110は、熱ルミネッセンス線量計101に含まれる金属である。それ以外は、中性子測定システム100Bの構成要素の機能および動作原理は、中性子測定システム100Aで説明したものと同じであり、ここでは繰り返さない。
【0031】
図2は、本開示の一実施形態による中性子測定方法200を示すフロー図である。図2に示されるように、中性子測定方法200は、ステップ201~205を含むことができる。中性子測定方法200では、ステップ203~205は、コンピューティングデバイス104によって実行されることができる。
【0032】
ステップ201では、熱ルミネッセンス線量計101が加熱される。次いで、中性子測定方法200はステップ202に進む。上述のように、熱ルミネッセンス線量計101の熱ルミネッセンス結晶102は、活性化された金属体110より放出された電離放射線IRを吸収して蓄積する。加熱されたとき、熱ルミネッセンス結晶102は、蓄積された電離放射線IRを熱ルミネッセンスの形で放出する。
【0033】
ステップ202では、光検出器103が用いられて熱ルミネッセンスの強度を測定する。次いで、中性子測定方法200はステップ203に進む。
【0034】
ステップ203では、熱ルミネッセンス結晶102により吸収されて蓄積された電離放射線IRの熱ルミネッセンス線量は、熱ルミネッセンスの強度および熱ルミネッセンス線量校正係数に基づいて計算される。次いで、中性子測定方法200はステップ204に進む。
【0035】
ステップ204では、熱ルミネッセンス線量および第1の変換係数に基づいて、第1の変換式を用いて金属体110の活性を計算する。次いで、中性子測定方法200はステップ205に進む。
【0036】
ステップ205では、第2の変換式は、計算された金属体110の活性に基づいて、金属体110が位置する中性子強度を計算するように用いられる。
【0037】
一実施形態では、中性子測定方法200は、図1Aの中性子測定システム100Aの構成のように、熱ルミネッセンス線量計101に隣接して金属体110を配置するステップをさらに含むことができる。
【0038】
別の実施形態では、ステップ201で照射された金属体110は、図1Bの中性子測定システム100Bの構成のように、熱ルミネッセンス線量計101に含まれる。
【0039】
一実施形態では、ステップ201の前に、中性子測定方法200は、照射装置より放出された中性子線を照射位置で金属体110を照射して、金属体110を活性化するステップをさらに含むことができる。照射装置は、任意の中性子放射体であることができ、中性子を放出して患者の腫瘍部位を照射するのに用いられることができる。例えば、放出された中性子は、照射された腫瘍部位で薬剤(例えば、ホウ素-10)と反応し、高エネルギー粒子(例えば、リチウム-7粒子またはアルファ粒子など)が生成されてがん細胞を破壊する。
【0040】
一実施形態では、ステップ203で用いられた熱ルミネッセンス線量校正係数は、熱ルミネッセンスの強度と熱ルミネッセンスの線量との間の関係を表している。熱ルミネッセンスの線量は通常、熱ルミネッセンスの強度に比例し、これにより、熱ルミネッセンス線量校正係数は、測定された熱ルミネッセンスの強度を熱ルミネッセンス線量に変換するために乗算する必要がある比率に相当し、その比率が実験結果から導き出すことができる。
【0041】
一実施形態では、ステップ204で用いられる第1の変換係数は、事前に高純度ゲルマニウム(HPGe)などのガンマ線分光分析装置を用いて、サンプルにガンマ線分光分析を行うことにより計算されることができる。例えば、HPGeが事前に用いられて、活性化されたサンプル(金属体110とほぼ同じ組成および活性を有する)より放出されたガンマ線スペクトルを分析し、サンプルの活性を得ることができる。同時に、熱ルミネッセンス結晶は電離放射線を吸収するためにも用いられ、次いで、光検出器が用いられて、熱ルミネッセンス結晶より放出された熱ルミネッセンスの強度を測定し、熱ルミネッセンスの強度は、熱ルミネッセンス線量校正係数に基づいて熱ルミネッセンス線量に変換される。このようにして、対応する金属体活性(即ち、金属体の活性)と熱ルミネッセンス線量のペアが得られることができる。上述の操作を繰り返し実行することで、対応する金属体活性と熱ルミネッセンス線量の複数のペアが得られることができる。次いで、回帰(regression)、内挿(interpolation)、またはその他の同様のアプローチが用いられて、熱ルミネッセンス線量と金属体活性との関係、即ち、第1の変換係数を推定することができる。
【0042】
一実施形態では、ステップ204で用いられた第1の変換式は以下の通りである。
【数3】
第1の換算式では、Aは金属体の活性を表しており、DTLは熱ルミネッセンス線量を表しており、
【数4】
は、第1の変換係数であり、λは金属体の減衰定数を表しており、Eは単位線量を表しており、Tは減衰線量測定時間を表している。
【0043】
一実施形態では、ステップ205で用いられる第2の変換式は以下の通りである:
【数5】
第2の換算式では、Aは金属体の活性を表しており、λは金属体の減衰定数を表しており、tは露光時間を表しており、Nは測定位置での材料の原子密度を表しており、Eは中性子のエネルギーを表しており、φ(E)は、測定位置での中性子のエネルギーがEであるときの中性子束(即ち、中性子の強度)を表しており、σ(E)は中性子のエネルギーがEのときの材料の反応断面積である。
【0044】
図3は、本開示の別の実施形態による中性子測定方法300を示すフロー図である。図3に示されるように、中性子測定方法300はステップ301~304を含むことができる。中性子測定方法では、ステップ303およびステップ304はコンピュータ装置104により実行されることができる。
【0045】
ステップ301では、熱ルミネッセンス線量計101内の熱ルミネッセンス結晶102が用いられて、活性化された金属体110により放出された電離放射線をシンチレーション光に変換する。次いで、中性子測定方法300はステップ302に進む。
【0046】
ステップ302では、光検出器103が用いられてシンチレーション光の強度を測定する。次いで、中性子測定方法300はステップ303に進む。
【0047】
ステップ303では、金属体110の活性がシンチレーション光の強度と第2の換算係数に基づいて計算される。次いで、中性子測定方法300はステップ304に進む。
【0048】
ステップ304では、第2の換算式が用いられて、計算された金属体110の活性に基づいて、金属体110が位置する中性子強度を計算する。
【0049】
一実施形態では、中性子測定方法300は、図1Aの中性子測定システム100Aの構成のように、熱ルミネッセンス線量計101に隣接して金属体110を配置するステップをさらに含むことができる。
【0050】
別の実施形態では、ステップ301で照射された金属体110は、図1Bの中性子測定システム100Bの構成のように熱ルミネッセンス線量計101内に含まれる。
【0051】
一実施形態では、ステップ301の前に、中性子測定方法300は、照射装置より放出された中性子線を照射位置で金属体に照射して、金属体を活性化するステップをさらに含むことができる。
【0052】
一実施形態では、ステップ303で用いられる第2の変換係数は、シンチレーション光の強度と金属体の活性との間の関係を表している。例えば、第2の変換係数は、測定されたシンチレーション光の強度を金属体の活性に変換するために乗算する必要がある比率に相当することができる。さらなる実施形態では、第2の変換係数は、HPGeなどのガンマ線分光分析装置を用いることで事前に計算され、サンプルにガンマ線分光分析を行うことができる。例えば、HPGeなどのガンマ線分光分析装置が事前に用いられ、活性化されたサンプル(金属体110とほぼ同じ組成および活性を有する)より放出されたガンマ線スペクトルを分析し、サンプルの活性を得ることができる。同時に、熱ルミネッセンス結晶は電離放射線を吸収するためにも用いられ、次いで、光検出器が用いられて、熱ルミネッセンス結晶より放出されたシンチレーション光の強度を測定する。このようにして、対応する金属体活性(即ち、金属体の活性)とシンチレーション光強度(即ち、シンチレーション光の強度)のペアが得られることができる。上述の操作を繰り返し実行することで、対応する金属体活性とシンチレーション光強度の複数のペアが得られることができる。次いで、回帰(regression)、内挿(interpolation)、またはその他の同様のアプローチが用いられて、シンチレーション光強度と金属体活性との関係、即ち、第2の変換係数を推定することができる。
【0053】
一実施形態では、ステップ304で用いられた第2の変換式は、ステップ205で用いられた第2の変換式と同じであり、即ち、
【数6】
第2の換算式では、Aは金属体の活性を表しており、λは金属体の減衰定数を表しており、tは露光時間を表しており、Nは測定位置での材料の原子密度を表しており、Eは中性子のエネルギーを表しており、φ(E)は、測定位置での中性子のエネルギーがEであるときの中性子束(即ち、中性子の強度)を表しており、σ(E)は中性子のエネルギーがEのときの材料の反応断面積である。
【0054】
本開示で提供される中性子測定システムおよび中性子測定方法は、迅速(約5分)かつ容易に信頼性の高い金属体活性の測定結果を得ることができる。ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)の状況では、複数の熱ルミネッセンス線量計を同時に測定ファントム(人体に代わる物体)に設置することで、中性子線の特性解析、品質保証、品質管理を迅速に完了することができる。
【0055】
上記の段落は、複数の側面で説明されている。明らかに、本明細書の教示は様々な方法で実施されることができる。実施例に開示された任意の特定の構造または機能は、単なる代表的な事例にすぎない。本明細書の教示によれば、当業者は、開示された任意の態様が個別に実施されることができること、または2つ以上の態様が組み合わされて実施されることができることに留意されたい。
【0056】
本開示は、実施例の方法を用いて、且つ実施形態の観点から記述されてきたが、本開示は開示された実施形態に限定するものではないということを理解されたい。逆に、(当業者には明らかであるように)種々の変更及び同様の配置を含むように意図される。よって、添付の特許請求の範囲は、全てのそのような変更および類似の配置を包含するように、最も広義な解釈が与えられるべきである。
【符号の説明】
【0057】
100A 中性子測定システム
101 熱ルミネッセンス線量計(TLD)
102 熱ルミネッセンス結晶
103 光検出器
104 コンピューティングデバイス
110 金属体
120 光子
100B 中性子測定システム
200 中性子測定方法
201~205 ステップ
300 中性子測定方法
301~304 ステップ
図1A
図1B
図2
図3