(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114608
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】送風機
(51)【国際特許分類】
F04D 29/056 20060101AFI20240816BHJP
F16C 25/08 20060101ALI20240816BHJP
F16C 19/16 20060101ALI20240816BHJP
F04D 29/051 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
F04D29/056 B
F04D29/056 A
F16C25/08 Z
F16C19/16
F04D29/051
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023212865
(22)【出願日】2023-12-18
(31)【優先権主張番号】P 2023019097
(32)【優先日】2023-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】池田 仁子
【テーマコード(参考)】
3H130
3J012
3J701
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB13
3H130AB26
3H130AB52
3H130AC30
3H130BA24E
3H130BA63E
3H130DA02X
3H130DB01X
3H130DB08X
3H130DB15X
3H130DD02Z
3H130DJ01X
3H130EA01E
3H130EA06Z
3J012AB02
3J012BB03
3J012CB03
3J012FB10
3J012HB02
3J701AA03
3J701AA42
3J701AA54
3J701AA62
3J701FA60
3J701GA29
(57)【要約】
【課題】インペラの回転数を上げることを可能にし得る送風機を提供する。
【解決手段】送風機1は、シャフト10と、スリーブ81と、シャフト10の軸方向における一方側に回転可能に支持され、回転することによって軸方向における一方側から他方側に向かう空気流を生成するインペラ56と、シャフト10におけるインペラ56に近い部分に支持される内輪21とスリーブ81の内周面81iに固定される外輪22とを含む第1玉軸受20と、シャフト10における内輪21よりもインペラ56から遠い部分に内輪31が支持される第2玉軸受30と、シャフト10における内輪21と内輪31との間の部分に支持され、シャフト10から径方向の外側に張り出す第1フランジ部28と、第1フランジ部28と内輪31との間に配置される第1バネ40と、を備えている。第1フランジ部28は、インペラ56が回転した際に、内輪21を他方側から一方側に向かって押す。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトと、
前記シャフトの一部を内部に収容するスリーブと、
前記シャフトの軸方向における一方側に回転可能に支持され、回転することによって前記軸方向における一方側から前記軸方向における他方側に向かう空気流を生成するインペラと、
前記シャフトにおける前記インペラに近い部分に支持される内輪と、前記スリーブの内周面に固定される外輪とを含む第1玉軸受と、
前記シャフトにおける前記第1玉軸受の内輪よりも前記インペラから遠い部分に内輪が支持される第2玉軸受と、
前記シャフトにおける前記第1玉軸受の内輪と前記第2玉軸受の内輪との間の部分に支持され、前記シャフトから前記軸方向に垂直な径方向の外側に張り出す第1フランジ部と、
前記第1フランジ部と前記第2玉軸受の内輪との間に配置される第1バネと、
を備え、
前記第1フランジ部は、前記インペラが回転した際に、前記第1玉軸受の内輪を前記他方側から前記一方側に向かって押す、送風機。
【請求項2】
シャフトと、
前記シャフトの一部を内部に収容するスリーブと、
前記シャフトの軸方向における一方側に回転可能に支持され、回転することによって前記軸方向における一方側から前記軸方向における他方側に向かう空気流を生成するインペラと、
前記シャフトにおける前記インペラに近い部分に支持される内輪と、前記スリーブの内周に配置される外輪とを含む第1玉軸受と、
前記シャフトにおける前記第1玉軸受の内輪よりも前記インペラから遠い部分に内輪が支持される第2玉軸受と、
前記シャフトにおける前記第1玉軸受の内輪と前記第2玉軸受の内輪との間の部分に支持され、前記シャフトから前記軸方向に垂直な径方向の外側に張り出す第1フランジ部と、
前記第1フランジ部と前記第2玉軸受の内輪との間に配置される第1バネと、
を備え、
前記スリーブの内周には、前記径方向の内側へ突出する張出部が設けられ、
前記張出部には、前記第1玉軸受の前記一方側の端部が当接し、
前記第1フランジ部は、前記インペラが回転した際に、前記第1玉軸受の内輪を前記他方側から前記一方側に向かって押す、送風機。
【請求項3】
前記インペラは、前記シャフトの回転に伴い前記スリーブに対して回転するロータの一部をなしており、
前記第1バネによる荷重の最大値が前記ロータによる荷重よりも小さい、請求項1又は2に記載の送風機。
【請求項4】
前記第2玉軸受の外輪は、前記軸方向における移動を規制されている、請求項1又は2に記載の送風機。
【請求項5】
前記スリーブの内周面に固定されて前記径方向の内側に張り出す固定部をさらに備え、
前記スリーブは、前記固定部よりも前記一方側の部分において前記径方向の内側に突出する段部を含み、
前記第2玉軸受の外輪は、前記段部と前記固定部に挟み込まれて前記軸方向における移動を規制されている、請求項4に記載の送風機。
【請求項6】
前記シャフトにおける前記第2玉軸受の内輪よりも前記他方側の部分に支持され、前記シャフトから前記径方向の外側に張り出す第2フランジ部と、
前記第2フランジ部と前記第2玉軸受の内輪との間に配置される第2バネと、
をさらに備える、請求項5に記載の送風機。
【請求項7】
前記インペラは、前記シャフトの回転に伴い前記スリーブに対して回転するロータの一部をなしており、
前記第1バネおよび前記第2バネのたわみ量が前記第1玉軸受および/または前記第2玉軸受のアキシャルすきま分だけ変化した場合の、前記第1バネおよび前記第2バネによる荷重の変化量は、前記第2玉軸受の内輪の重量よりも大きい、請求項6に記載の送風機。
【請求項8】
前記シャフトにおける前記第2玉軸受の内輪よりも前記他方側の部分に支持され、前記シャフトから前記径方向の外側に張り出す第2フランジ部をさらに備え、
前記スリーブは、前記軸方向における前記第1玉軸受の外輪と前記第2玉軸受の外輪との間の部分において前記径方向の内側に突出する段部を含み、
前記軸方向における前記段部と前記第2玉軸受の外輪との間には、前記段部と前記第2玉軸受の外輪との間に第3バネが配置されており、
前記第2フランジ部は、前記インペラが回転した際に、前記第2玉軸受の内輪を前記他方側から前記一方側に向かって押す、請求項1又は2に記載の送風機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送風機に関する。
【背景技術】
【0002】
2つの玉軸受により回転可能に支持された回転軸と、回転軸に取り付けられて回転軸とともに回転するインペラとを備える装置が知られている(例えば、下記特許文献1参照)。特許文献1に記載された装置では、インペラが回転することによって、軸方向において、インペラ側からインペラの反対側に向かって空気流が生成される。そして、これに抗して、回転軸等に対して、インペラの反対側からインペラ側に向かうスラスト力(推力)が発生する。
【0003】
特許文献1に記載された装置では、インペラに近い側の玉軸受よりもインペラに近い側に予圧ばねが配置されている。特許文献1に記載された装置において、インペラに近い側の玉軸受は、インペラの回転時、この予圧ばねによって、スラスト力の作用方向とは反対の方向(インペラ側からインペラの反対側に向かう方向)に付勢力を受け、予圧を付与されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
概して、スラスト力は、インペラの回転数に応じて大きくなる。上記特許文献1に記載された装置では、予圧ばねによって、インペラに近い側の玉軸受に対して、スラスト力が作用する方向とは反対の方向に付勢力を付与する。このため、上記特許文献1に記載された装置では、インペラの回転時においてこの玉軸受に対して常に予圧を付与するためには、インペラの回転数を上げる程、予圧ばねの付勢力を大きくする必要がある。しかし、一般的に、玉軸受に印加する面圧には最大値(規定値)が定められている。すなわち、玉軸受に付与し得る予圧には上限がある。したがって、従来、玉軸受のこのような制約によって、インペラの回転数を上げることが難しかった。
【0006】
そこで、本発明は、インペラの回転数を上げることを可能にし得る送風機を提供することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の送風機は、シャフトと、前記シャフトの一部を内部に収容するスリーブと、前記シャフトの軸方向における一方側に回転可能に支持され、回転することによって前記軸方向における一方側から前記軸方向における他方側に向かう空気流を生成するインペラと、前記シャフトにおける前記インペラに近い部分に支持される内輪と前記スリーブの内周面に固定される外輪とを含む第1玉軸受と、前記シャフトにおける前記第1玉軸受の内輪よりも前記インペラから遠い部分に内輪が支持される第2玉軸受と、前記シャフトにおける前記第1玉軸受の内輪と前記第2玉軸受の内輪との間の部分に支持され、前記シャフトから前記軸方向に垂直な径方向の外側に張り出す第1フランジ部と、前記第1フランジ部と前記第2玉軸受の内輪との間に配置される第1バネと、を備えている。この送風機において、前記第1フランジ部は、前記インペラが回転した際に、前記第1玉軸受の内輪を前記他方側から前記一方側に向かって押す。
【0008】
本発明の別の送風機は、シャフトと、前記シャフトの一部を内部に収容するスリーブと、前記シャフトの軸方向における一方側に回転可能に支持され、回転することによって前記軸方向における一方側から前記軸方向における他方側に向かう空気流を生成するインペラと、前記シャフトにおける前記インペラに近い部分に支持される内輪と、前記スリーブの内周に配置される外輪とを含む第1玉軸受と、前記シャフトにおける前記第1玉軸受の内輪よりも前記インペラから遠い部分に内輪が支持される第2玉軸受と、前記シャフトにおける前記第1玉軸受の内輪と前記第2玉軸受の内輪との間の部分に支持され、前記シャフトから前記軸方向に垂直な径方向の外側に張り出す第1フランジ部と、前記第1フランジ部と前記第2玉軸受の内輪との間に配置される第1バネと、を備え、前記スリーブの内周には、前記径方向の内側へ突出する張出部が設けられ、前記張出部には、前記第1玉軸受の前記一方側の端部が当接し、前記第1フランジ部は、前記インペラが回転した際に、前記第1玉軸受の内輪を前記他方側から前記一方側に向かって押す。
【0009】
これらの送風機において、以下の構成の少なくとも1つをさらに備えてもよい。
【0010】
前記インペラは、前記シャフトの回転に伴い前記スリーブに対して回転するロータの一部をなしており、前記第1バネによる荷重の最大値が前記ロータによる荷重よりも小さくてもよい。
【0011】
前記第2玉軸受の外輪は、前記軸方向における移動を規制されていてもよい。
【0012】
上記送風機は、前記スリーブの内周面に固定されて前記径方向の内側に張り出す固定部をさらに備え、前記スリーブは、前記固定部よりも前記一方側の部分において前記径方向の内側に突出する段部を含み、前記第2玉軸受の外輪は、前記段部と前記固定部に挟み込まれて前記軸方向における移動を規制されていてもよい。
【0013】
上記送風機は、前記シャフトにおける前記第2玉軸受の内輪よりも前記他方側の部分に支持され、前記シャフトから前記径方向の外側に張り出す第2フランジ部と、前記第2フランジ部と前記第2玉軸受の内輪との間に配置される第2バネと、をさらに備えてもよい。この場合において、前記インペラは、前記シャフトの回転に伴い前記スリーブに対して回転するロータの一部をなしており、第1バネおよび第2バネのたわみ量が第1玉軸受および第2玉軸受のアキシャルすきま分だけ変化した場合の、第1バネおよび第2バネによる荷重(付勢力)の変化量は、第2玉軸受の内輪の重量よりも大きくてもよい。
【0014】
上記送風機は、前記シャフトにおける前記第2玉軸受の内輪よりも前記他方側の部分に支持され、前記シャフトから前記径方向の外側に張り出す第2フランジ部をさらに備え、前記スリーブの内周面は、前記軸方向における前記第1玉軸受の外輪と前記第2玉軸受の外輪との間の部分において前記径方向の内側に突出する段部を含み、前記軸方向における前記段部と前記第2玉軸受の外輪との間には、第3バネが配置されており、前記第2フランジ部は、前記インペラが回転した際に、前記第2玉軸受の内輪を前記他方側から前記一方側に向かって押してもよい。この場合において、前記インペラは、前記シャフトの回転に伴い前記スリーブに対して回転するロータの一部をなしており、前記第1バネによる荷重の最大値及び前記第3バネによる荷重の最大値のそれぞれが、前記ロータによる荷重よりも小さくてもよい。
【0015】
また、上記送風機において、前記インペラにおける前記他方側の面には、ワッシャが支持されており、前記シャフトは前記ワッシャを貫通していてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、インペラの回転数を上げることを可能にし得る送風機が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態における送風機を示す軸方向における断面図である。
【
図2】インペラが静止している際の
図1に示す軸受装置の様子を拡大して概略的に示す断面図である。
【
図3】インペラが回転している際の
図1に示す軸受装置の様子を拡大して概略的に示す断面図である。
【
図4】本発明の第2実施形態における送風機を示す軸方向における断面図である。
【
図5】インペラが静止している際の
図4に示す軸受装置の様子を拡大して概略的に示す断面図である。
【
図6】インペラが回転している際の
図4に示す軸受装置の様子を拡大して概略的に示す断面図である。
【
図7】本発明の第3実施形態における送風機を示す軸方向における断面図である。
【
図8】インペラが静止している際の
図7に示す軸受装置の様子を拡大して概略的に示す断面図である。
【
図9】インペラが回転している際の
図7に示す軸受装置の様子を拡大して概略的に示す断面図である。
【
図10】本発明の第4実施形態における送風機を示す軸方向における断面図である。
【
図11】インペラが静止している際の
図10に示す軸受装置の様子を拡大して概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る送風機を実施するための形態が添付図面とともに例示される。以下に例示する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、以下の実施形態から変更、改良することができる。また、上記添付図面では、理解を容易にするために各部材の寸法が誇張又は縮小して示されていたり、ハッチングが省略されて示されていたりする場合がある。
【0019】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態における送風機を示す軸方向における断面図である。
図1に示すように、送風機1は、ケーシング11と、軸受装置80と、ステータ70と、ロータ50とを主な構成として備える。
【0020】
軸受装置80は、筒状(本実施形態では、円筒状)のスリーブ81と、シャフト10と、第1玉軸受20と、第2玉軸受30と、ワッシャ29と、第1フランジ部28と、第1バネ40と、固定部60とを含んでいる。
【0021】
スリーブ81は、例えば金属からなり、その内部に、第1玉軸受20、第2玉軸受30、第1フランジ部28、第1バネ40、固定部60、及びシャフト10の一部等を収容している。
【0022】
シャフト10は、径方向において、スリーブ81の中心を通っている。シャフト10の一部は、スリーブ81の内部から外側に突出する突出部10aとなっている。本実施形態において、送風機1は、シャフト10が径方向の中心に位置するように同心円状に構成されている。ただし、送風機1におけるシャフト10等の位置関係は同心円状に限定されるものではない。シャフト10の長手方向は、送風機1の軸方向であり、当該軸方向は、上記径方向に垂直である。なお、以下、軸方向において、突出部10a側に向かう側を「上」、「上方」、「上側」、あるいは「一方側」と呼称する場合があり、突出部10a側とは反対側に向かう側を「下」、「下方」、「下側」、あるいは「他方側」と呼称する場合がある。また、径方向において、シャフト10に近い側を「内」あるいは「内側」と呼称する場合があり、シャフト10から遠い側を「外」あるいは「外側」と呼称する場合がある。
【0023】
第1玉軸受20は、シャフト10における突出部10aの近傍(すなわち、シャフト10の一方側)に取り付けられている。軸方向において、第1玉軸受20よりも上側には突出部10aがある。第2玉軸受30は、シャフト10の下側の端部近傍(すなわち、シャフト10の他方側)に取り付けられている。第2玉軸受30は、第1玉軸受20よりも下側にある。第1玉軸受20及び第2玉軸受30は、シャフト10を回転可能に支持している。
【0024】
ワッシャ29は、第1玉軸受20よりも上側にあり、シャフト10は、このワッシャ29の径方向における中央に形成された孔を貫通している。第1フランジ部28は、第1玉軸受20よりも下側にあり、シャフト10に支持されている。第1バネ40は、軸方向において、第1フランジ部28と第2玉軸受30との間に配置されている。固定部60は、第2玉軸受30よりも下側に配置されている。
【0025】
なお、軸受装置80については、後にさらに詳細に説明する。
【0026】
ケーシング11は、筒形状を有しており、例えば、軸方向から見た場合に略正方形、略矩形、または円形等であってもよい。ケーシング11の内部空間は、上側から下側に向かって軸方向に沿って空気流が流れる風洞となっている。すなわち、ケーシング11の上側の端部11uには、ケーシング11の内部空間に空気を吸入するための吸気口11iが形成されており、ケーシング11の下側の端部11dには、空気を流出させるための排気口11oが形成されている。ケーシング11の内部空間には、軸受装置80、ステータ70、及びロータ50等が収容されている。ケーシング11は、側壁12と、ベース部13と、固定翼14とを含んでいる。
【0027】
側壁12は、ロータ50よりも径方向の外側にあり、ロータ50の周囲を囲っている。側壁12は、ケーシング11の上側の端部11uに接続している。側壁12は、シャフト10を中心とする筒形状を有しており、ロータ50との間に隙間を空けて配置されている。側壁12は、内部に配置されたロータ50や軸受装置80等を保護する機能も有する。
【0028】
固定翼14は、複数の静翼からなる。この固定翼14によって、側壁12とベース部13とが径方向において繋がれている。
【0029】
ベース部13は、軸方向に垂直な円盤状の底部13aと、底部13aの外側の端部から軸方向に沿って上側へ所定の長さだけ延在する円筒形状の外周壁13bと、底部13aの内側の端部から軸方向に沿って上側に所定の長さだけ突出する円筒形状のボス部13cと、を含んでいる。外周壁13b及びボス部13cは、シャフト10に対して同心をなしている。
【0030】
外周壁13bの外周面には、固定翼14が一体に形成されている。すなわち、外周壁13bは、固定翼14を介して側壁12によって支持されている。ボス部13cの内周面には、軸受装置80のスリーブ81が例えば圧入によって取り付けられている。
【0031】
ケーシング11の側壁12、ベース部13、及び固定翼14とは、合成樹脂(例えば、ポリブチレンテレフタレート樹脂)の射出成形により一体に形成されてもよい。また、側壁12とベース部13とを繋ぐ固定翼14に代えて、棒状部分からなる複数のスポークが用いられるようにしてもよい。
【0032】
次に、ステータ70について説明する。
【0033】
ステータ70は、ステータコア71と、インシュレータ72と、複数のコイル73とを主な構成として備える。
【0034】
ステータコア71は、本実施形態では、軟磁性材からなる電磁鋼板のコアを複数枚積層された積層体によって形成されている。ステータコア71は、軸受装置80のスリーブ81に対して外側に位置している。本実施形態では、ステータコア71の内周面に円形状の開口部71hが形成されている。このステータコア71の開口部71hをスリーブ81が軸方向に貫通している。スリーブ81は、ステータコア71の開口部71hに例えば圧入されることにより、ステータコア71に取り付けられている。なお、接着剤を併用して、ステータコア71がスリーブ81に固着されるようにしてもよい。
【0035】
インシュレータ72は、絶縁材料からなり、ステータコア71に装着されてステータコア71の一部を覆っている。ステータコア71の外周面71oは、インシュレータ72から露出している。複数のコイル73のそれぞれは、ステータコア71の周方向において所定の間隔を空けてインシュレータ72を介してステータコア71に巻回されている。このため、ステータコア71と複数のコイル73とはインシュレータ72を介して絶縁されている。
【0036】
次に、ロータ50について説明する。
【0037】
ロータ50は、インペラ56と、ロータヨーク52と、マグネット51と、ブッシュ53とを主な構成として備える。
【0038】
インペラ56は、ハブ54と、ハブ54の外周面に周方向に沿って設けられた複数の羽根55とを備えている。ハブ54および複数の羽根55は、例えば、合成樹脂(例えば、ガラス繊維を含むポリブチレンテレフタレート樹脂)を射出成形することによって一体的に形成されてもよい。
【0039】
ハブ54は、有底断面略逆U字状のカップ状の形状を有しており、軸方向に垂直な板状のベース54aと、ベース54aの外側の端部から概ね軸方向に沿って延在する筒状(円筒状)の側壁54bとを含んでいる。ハブ54は、ベース54aを上側に向けて配置されている。ハブ54は、ロータヨーク52、マグネット51、ブッシュ53、ステータ70、及び軸受装置80等を上側から覆っている。こうして、ハブ54は、ハブ54よりも内側に異物が進入することを抑制している。
【0040】
複数の羽根55は、概ね同じ形状を有しており、ハブ54の側壁54bから外側に延在している。複数の羽根55は、ハブ54の側壁54bの周方向において概ね当間隔に配置されている。複数の羽根55のそれぞれは、インペラ56が回転した際に、ケーシング11の内部空間を上側から下側に向かって軸方向に沿って流れる空気流を生成するように形成されている。
【0041】
ブッシュ53は、例えば軟磁性材からなる。ブッシュ53の径方向における中央には、ブッシュ53を軸方向に貫通する貫通孔53hが形成されている。この貫通孔53hにシャフト10の突出部10aが例えば圧入されることにより、シャフト10がブッシュ53に取り付けられている。また、ブッシュ53の上側の部分には、内側に凹む凹部53cが形成されている。
【0042】
ロータヨーク52は、有底断面略逆U字状のカップ状の形状を有しており、例えば軟磁性材からなる。ロータヨーク52は、軸方向に垂直な板状のベース52aと、ベース52aの外側の端部から概ね軸方向に沿って延在する筒状(円筒状)の側壁52bとを含んでいる。ロータヨーク52は、ベース52aを上側に向けて配置されている。ロータヨーク52は、マグネット51、ステータ70、及び軸受装置80等を上側から覆っている。こうして、ロータヨーク52は、ロータヨーク52よりも内側に異物が進入することを抑制している。
【0043】
ロータヨーク52のベース52aの径方向における中央には、軸方向から見た場合に円形の孔が形成されている。この孔は、ベース52aの内周面52aiによって画定されている。ベース52aのうち内周面52aiとその近傍は、ブッシュ53の上側の部分に加締められて固定されている。その結果、ブッシュ53の上側の部分に前述の凹部53cが形成されている。また、ロータヨーク52の側壁52bの外周面のうち上側の部分は、インペラ56のハブ54の側壁54bの内周面に、例えば接着剤を用いて固定されている。このように、ロータヨーク52は、インペラ56の内周面に固定されている。
【0044】
マグネット51は、軸方向から見て環状に形成されており、本実施形態では円筒状に形成されている。マグネット51の外周面は、ロータヨーク52の側壁52bの内周面に、例えば接着剤を介して固定されている。マグネット51は、周方向において交互にN極及びS極に着磁されている。径方向において、マグネット51の内周面51iは、ステータ70よりも外側にあり、ステータコア71の外周面71oとエアギャップを介して対向している。
【0045】
送風機1において、複数のコイル73に電流が供給されると、ステータコア71の外周面71oとマグネット51の内周面51iとの間で磁気的相互作用が生じて、送風機1内に磁気回路が形成される。この磁気回路によりシャフト10が回転し、このシャフト10の回転に伴い、インペラ56を含むロータ50がシャフト10を中心として回転する。すなわち、インペラ56を含むロータ50は、ステータ70及びスリーブ81を含む軸受装置80に対して相対的に回転する。このように、送風機1は、アウターロータ型に構成されている。そして、インペラ56が回転することにより、ケーシング11の内部空間を上側(一方側)から下側(他方側)に向かって軸方向に沿って流れる空気流が生成される。
【0046】
次に、軸受装置80についてより詳細に説明する。
【0047】
図1に示すように、軸受装置80において、第1玉軸受20は、シャフト10の突出部10aの近傍に配置されている。
図1に示すように、突出部10aの上側には、ハブ54のベース54aがある。したがって、第1玉軸受20は、第2玉軸受30よりも、ハブ54のベース54aに近い側にある。すなわち、第1玉軸受20は、第2玉軸受30よりもインペラ56に近い側にある。
【0048】
図2は、インペラ56が静止している際の軸受装置80の様子を拡大して概略的に示す断面図である。さらに言えば、
図2は、シャフト10の突出部10aが鉛直方向における上側を向くように送風機1を配置した場合における、インペラ56の静止時の軸受装置80の様子を示している。
【0049】
図2に示すように、第1玉軸受20は、内輪21と、外輪22と、複数の転動体(玉)23とを有している。内輪21の内周面によって画定される貫通孔には、シャフト10が挿通されている。内輪21は、内輪21の貫通孔を貫通するシャフト10によって支持されている。内輪21は、シャフト10におけるインペラ56に近い部分に支持されている。内輪21の外周面21oのうち軸方向における中央には、径方向から見て内側に向かって円弧状に窪む凹部21cが形成されている。外輪22の外周面は、スリーブ81の内周面81iに例えば接着剤を用いて固定されている。外輪22の内周面22iのうち軸方向における中央には、径方向から見て外側に窪む円弧状の凹部22cが形成されている。複数の転動体23は、内輪21の凹部21cと外輪22の凹部22cとによって挟み込まれて支持されている。このように複数の転動体23が内輪21と外輪22との間に介在することにより、スリーブ81に固定された外輪22に対して内輪21がシャフト10とともに回転する。
【0050】
第2玉軸受30は、第1玉軸受20と同様の構成を有する。第2玉軸受30の内輪31の内周面によって画定される貫通孔には、シャフト10が挿通されている。内輪31は、内輪31の貫通孔を貫通するシャフト10によって支持されている。内輪31は、シャフト10における内輪21よりもインペラ56から遠い部分に支持されている。外輪32の外周面は、スリーブ81の内周面81iに概ね面接触している。複数の転動体33は、内輪31の凹部31cと外輪32の凹部32cとによって挟み込まれて支持されている。このように複数の転動体33が内輪31と外輪32との間に介在することにより、外輪32に対して内輪31がシャフト10とともに回転する。
【0051】
なお、本実施形態では、第1玉軸受20の外輪22はスリーブ81に接着により固定されているが、第1玉軸受20の内輪21と、第2玉軸受30の内輪31及び外輪32とはそれぞれすきまばめである。具体的には、第1玉軸受20の内輪21及び第2玉軸受30の内輪31のそれぞれはシャフト10にすきまばめされており、第2玉軸受30の外輪32はスリーブ81にすきまばめされている。
【0052】
スリーブ81は、径方向の内側に突出する段部81Pを含んでいる。段部81Pは、軸方向において第1玉軸受20の外輪22と第2玉軸受30の外輪32との間にある。また、径方向において、段部81Pの端面81Peは、第1玉軸受20の外輪22の内周面22iと同じ位置か内周面22iよりも外側にあり、第2玉軸受30の外輪32の内周面32iと同じ位置か内周面32iよりも外側にある。段部81Pの上面81Puは、第1玉軸受20の外輪22の下面22dに接触している。段部81Pの下面81Pdは、第2玉軸受30の外輪32の上面32uに接触している。なお、本実施形態では、段部81Pはスリーブ81と一体となっているが、スリーブ81の内周面81iに接着等の方法で固定された略円筒状の別部材で構成されていてもよい。
【0053】
固定部60は、段部81Pよりも下側(他方側)にある。換言すると、段部81Pは、固定部60よりも上側(一方側)にある。固定部60は、スリーブ81の内周面81iに固定されて内側に張り出している。本実施形態において、固定部60は、スリーブ81の内周面81iに固定されて内側に張り出すワッシャ62と、ワッシャ62の上面に配置されるスペーサ61とを含んでいる。スペーサ61の上面には、第2玉軸受30の外輪32の下面32dが接触している。スペーサ61及びワッシャ62は、それぞれリング状であり、スペーサ61の内周面の内側及びワッシャ62の内周面の内側にシャフト10が挿通されている。なお、固定部60は、これに限られず、例えば、ワッシャ62のみで構成されてもよく、内周面81iに固定されたスペーサ61のみから構成されてもよい。
【0054】
本実施形態において、第2玉軸受30の外輪32は、段部81Pと固定部60とによって挟み込まれて軸方向における移動を規制されている。なお、第2玉軸受30の外輪32を接着剤などによってスリーブ81の内周面81iに接着することによって、外輪32の軸方向における移動を規制してもよい。
【0055】
第1フランジ部28は、シャフト10における第1玉軸受20の内輪21と第2玉軸受30の内輪31との間の部分に固定され、シャフト10から径方向の外側に張り出している。本実施形態において、第1フランジ部28はワッシャであり、シャフト10の外周面10oに形成された溝に嵌め込まれており、これにより、シャフト10に支持されている。なお、第1フランジ部28の構成はこれに限らず、例えば、シャフト10とフランジ状に一体成型された部分であってもよい。本実施形態において、第1フランジ部28は、第1玉軸受20の内輪21の直下にあり、インペラ56の静止時において、第1玉軸受20の内輪21の下面21dに接触しているが、接触していなくても構わない。
【0056】
第1バネ40は、第1フランジ部28の下面と第2玉軸受30の内輪31の上面31uとの間に配置されている。第1バネ40の内側をシャフト10が貫通している。すなわち、第1バネ40は、シャフト10の外周面10oの一部を囲っている。
【0057】
本実施形態において、ワッシャ29は、シャフト10に支持されている。例えば、ワッシャ29は、シャフト10の外周面10oに形成された溝に嵌め込まれることによってシャフト10に支持されている。シャフト10は、ブッシュ53の貫通孔53hに挿通されている。
【0058】
シャフト10の突出部10aが鉛直方向における上側を向くように送風機1を配置した場合、インペラ56の静止時には、
図2において矢印で示すように、ロータ50による荷重F1が上側から下側に向かってシャフト10に作用する。そして、これにより、シャフト10及びシャフト10に支持された第1玉軸受20の内輪21が下側に移動する。前述のように、第1玉軸受20の外輪22はスリーブ81に固定されている。そのため、第1玉軸受20の内輪21は、外輪22に対して相対的に下側に位置する。よって、インペラ56の静止時において、第1玉軸受20の転動体23は、内輪21の凹部21cの上側の領域と外輪22の凹部22cの下側の領域とに接触する。すなわち、インペラ56の静止時において、第1玉軸受20には、
図2において一点鎖線で示すように、内輪21および外輪22と転動体23との接触点を結んだ直線が、下に行くに従って径方向の外側に向かうように径方向に対して傾斜した状態で予圧が作用する。
【0059】
第2玉軸受30の内輪31の上面31uには第1バネ40が配置されているため、シャフト10に支持された内輪31も、ロータ50による荷重F1を受けてシャフト10が下側に移動するのに伴って、下側に移動しようとする。前述のように、第2玉軸受30の外輪32は、軸方向における移動を規制されている。そのため、第2玉軸受30の内輪31は、外輪32に対して相対的に下側に位置する。よって、インペラ56の静止時において、第2玉軸受30の転動体33は、内輪31の凹部31cの上側の領域と外輪32の凹部32cの下側の領域とに接触する。すなわち、インペラ56の静止時において、第2玉軸受30には、
図2において一点鎖線で示すように、内輪31および外輪32と転動体33との接触点を結んだ直線が、下に行くに従って径方向の外側に向かうように径方向に対して傾斜した状態で予圧が作用する。
【0060】
このように、軸受装置80では、インペラ56の静止時において、第1玉軸受20と第2玉軸受30とにかかる予圧は、それぞれの内輪および外輪と転動体との接触点を結んだ直線が、下に行くに従って径方向の外側に向かうように径方向に対して傾斜した状態で予圧が作用する並列組み合わせになっている。
【0061】
ところで、第1バネ40はシャフト10に支持された第1フランジ部28に接触しており、第1玉軸受20には接触していない。このため、第1バネ40の付勢力が第1玉軸受20に伝わることが、シャフト10に支持された第1フランジ部28によって阻止されている。すなわち、インペラ56の静止時、第1玉軸受20には、実質的に、ロータ50による荷重F1に起因する予圧しかかからない。
【0062】
次に、インペラ56が回転している場合における軸受装置80について説明する。
【0063】
図3は、インペラ56が回転している際の軸受装置80の様子を拡大して概略的に示す断面図である。さらに言えば、
図3は、シャフト10の突出部10aが鉛直方向における上側を向くように送風機1を配置した場合における、インペラ56の回転時の軸受装置80の様子を示している。
【0064】
図3において矢印で示すように、シャフト10の突出部10aが鉛直方向における上側を向くように送風機1を配置した場合にインペラ56が回転すると、シャフト10には、上側から下側に向かうロータ50による荷重F1に加えて、スラスト力F2が作用する。このスラスト力F2は、インペラ56が回転して生成された上側から下側に向かう空気流に起因して、下側(他方側)から上側(一方側)に向かって作用する。
【0065】
具体的には、インペラ56の回転数が大きくなると(インペラ56が高速回転すると)、スラスト力F2がロータ50による荷重F1よりも大きくなり、その結果、このスラスト力F2によって、シャフト10及びシャフト10に支持された第1フランジ部28が上側に移動する。そして、第1フランジ部28が上側に移動する結果、第1玉軸受20の内輪21は、内輪21の下面21dに接触した第1フランジ部28によって下側(他方側)から上側(一方側)に向かって押されて、上側に移動する。第1玉軸受20の外輪22はスリーブ81に固定されている。そのため、内輪21は、外輪22に対して相対的に上側に位置する。よって、インペラ56の高速回転時において、第1玉軸受20の転動体23は、内輪21の凹部21cの下側の領域と外輪22の凹部22cの上側の領域とに接触する。すなわち、インペラ56の高速回転時において、第1玉軸受20には、
図3において一点鎖線で示すように、内輪21および外輪22と転動体23との接触点を結んだ直線が、上に行くに従って径方向の外側に向かうように径方向に対して傾斜した状態で予圧が作用する。
【0066】
なお、上記のインペラ56の高速回転の回転数は、特に限定されるものではないが、例えば、8000rpm以上でもよく、10000rpm以上でもよく、15000rpm以上、あるいは30000rpm以上でもよい。
【0067】
インペラ56の高速回転時、シャフト10に支持された第2玉軸受30の内輪31は、スラスト力F2によって、シャフト10とともに上側に移動しようとする。しかし、それに伴い内輪31が第1バネ40を押す力も大きくなるため、第1バネ40が反発して内輪31を下側に押す。その結果、内輪31が下側の位置に保持される。第2玉軸受30の外輪32は軸方向における移動を規制されているため、内輪31は、外輪32に対して相対的に下側に位置する。よって、インペラ56の高速回転時において、第2玉軸受30の転動体33は、内輪31の凹部31cの上側の領域と外輪32の凹部32cの下側の領域とに接触する。すなわち、インペラ56の高速回転時において、第2玉軸受30には、
図3において一点鎖線で示すように、内輪31および外輪32と転動体33との接触点を結んだ直線が、上に行くに従って径方向の外側に向かうように径方向に対して傾斜した状態で予圧が作用する。
【0068】
このように、軸受装置80では、インペラ56の高速回転時において、第1玉軸受20と第2玉軸受30とにかかる予圧は、いわゆる正面組み合わせになっている。
【0069】
なお、特に限定されるものではないが、本実施形態における軸受装置80では、第1バネ40による荷重(付勢力)の最大値が、シャフト10の突出部10aが鉛直方向における上側を向くように送風機1を配置した際のロータ50による荷重F1よりも小さい。ここで、前述のように、インペラ56の高速回転時におけるスラスト力F2は、ロータ50による荷重F1よりも大きい。すなわち、本実施形態において、第1バネ40による荷重は、高速回転時のスラスト力F2よりも小さい。そのため、軸受装置80では、特に高速回転時において、第1バネ40による付勢力がスラスト力F2に抗するように作用することが抑制されている。
【0070】
以上説明したように、本実施形態の送風機1は、シャフト10と、シャフト10の一部(概ね突出部10aを除く部分)を内部に収容するスリーブ81と、シャフト10の軸方向における一方側に回転可能に支持され、回転することによって軸方向における一方側から軸方向における他方側に向かう空気流を生成するインペラ56と、シャフト10におけるインペラ56に近い部分に支持される内輪21と、スリーブ81の内周面81iに固定される外輪22とを含む第1玉軸受20と、シャフト10における第1玉軸受20の内輪21よりもインペラ56から遠い部分に内輪31が支持される第2玉軸受30と、シャフト10における第1玉軸受20の内輪21と第2玉軸受30の内輪31との間の部分に支持され、シャフト10から径方向の外側に張り出す第1フランジ部28と、第1フランジ部28と第2玉軸受30の内輪31との間に配置される第1バネ40と、を備えている。そして、送風機1において、第1フランジ部28は、インペラ56が回転した際に、第1玉軸受20の内輪21を他方側から一方側に向かって押す。
【0071】
第1玉軸受20は、インペラ56に近い位置にあり、かつ、軸受装置80を支持するケーシング11のベース部13から遠い位置にあるため、特にインペラ56の高速回転時には、第1玉軸受20に対して、インペラ56の回転に起因する大きなモーメントが作用する。しかし、このような送風機1によれば、前述のように、インペラ56の回転時において、下側から上側に向かうスラスト力のみによって第1玉軸受20に予圧を付与することができる。すなわち、送風機1においては、インペラ56を高速回転させた場合でも、スラスト力に抗するようにバネの付勢力をかける必要がないため、第1玉軸受20に対して規定値を越えるような過度な面圧がかかることが抑制される。したがって、送風機1によれば、インペラ56の高速回転により第1玉軸受20に対して比較的大きなモーメントが作用している場合でも、第1玉軸受20に過度な負荷がかかることを抑制しつつ、第1玉軸受20に対して予圧を付与することができる。
【0072】
一方、シャフト10の突出部10aが鉛直方向における上側を向くように送風機1を配置した際に下側に位置する第2玉軸受30は、インペラ56から遠い位置にあり、かつ、軸受装置80を支持するケーシング11のベース部13に近い位置にある。このため、インペラ56の高速回転時においても、第2玉軸受30に対しては比較的小さなモーメントが作用する。そのため、インペラ56の高速回転時において第1バネ40の付勢力によって第2玉軸受30に予圧を付与した場合でも、第2玉軸受30に対する負荷は比較的小さい。
【0073】
このように、送風機1によれば、インペラ56の高速回転時においても、第1玉軸受20及び第2玉軸受30の双方に対して、過度な負荷をかけることなく予圧を付与することができるため、インペラ56の回転数を上げることが可能となる。
【0074】
また、送風機1においては、前述のように、インペラ56の静止時において、第1玉軸受20にはロータ50による荷重F1のみが作用するため(すなわち、第1玉軸受20にはバネによる付勢力が作用しないため)、第1玉軸受20に付与される予圧が低減されている。このように、送風機1においては、静止しているインペラ56が回転しようする際の抵抗が低減されているため、インペラ56をよりスムーズに回転させ始めることができる。
【0075】
また、送風機1においては、前述のように、第1玉軸受20の内輪21の上面21uがワッシャ29に接触している。そのため、内輪21の上面21uとブッシュ53の下面53dとが直接接触した状態で相対的に移動(例えば回転)することがなく、雑音が生じたり、内輪21が摩耗したりすることが抑制される。
【0076】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る送風機について説明する。
図4は、本実施形態に係る送風機2を示す軸方向における断面図である。
図4に示すように、送風機2は、軸受装置280の構成の一部が送風機1の軸受装置80の構成と異なる点を除いて、送風機1と同様の構成を有する。したがって、以下、送風機2については、送風機1と異なる点のみを説明し、その他の構成については第1実施形態と同様の符号を付して説明を省略する。
【0077】
図5は、インペラ56が静止している際の軸受装置280の様子を拡大して概略的に示す断面図である。さらに言えば、
図5は、シャフト10の突出部10aが鉛直方向における上側を向くように送風機2を配置した場合における、インペラ56の静止時の軸受装置80の様子を示している。
図5に示すように、軸受装置280は、第2フランジ部228と、第2バネ240とを含んでいる。
【0078】
第2フランジ部228は、シャフト10における第2玉軸受30の内輪31よりも下側(他方側)の部分に支持され、シャフト10から径方向の外側に張り出している。本実施形態において、第2フランジ部228はワッシャであり、シャフト10の外周面10oに形成された溝に嵌め込まれている。なお、第2フランジ部228の構成はこれに限らず、例えば、シャフト10とフランジ状に一体成型された部分であってもよい。
【0079】
第2バネ240は、第2玉軸受30の内輪31の直下にあり、第2フランジ部228の上面と第2玉軸受30の内輪31の下面31dとの間に配置されている。第2バネ240の内側をシャフト10が貫通している。すなわち、第2バネ240は、シャフト10の外周面10oの一部を囲っている。
【0080】
シャフト10の突出部10aが鉛直方向における上側を向くように送風機2を配置した場合におけるインペラ56の静止時、第1玉軸受20には、
図5において一点鎖線で示すように、軸受装置80と同様に、ロータ50による荷重F1によって、内輪21および外輪22と転動体23との接触点を結んだ直線が、上に行くに従って径方向の内側に向かうように径方向に対して傾斜した状態で予圧が作用する。また、インペラ56の静止時、第1玉軸受20には、軸受装置80と同様にロータ50による荷重F1のみが作用する。
【0081】
第2玉軸受30の内輪31は、インペラ56の静止時、ロータ50による荷重F1によってシャフト10とともに下側に移動する。しかし、内輪31が下に移動したある時点において、第1バネ40による内輪31に対する付勢力と、内輪31と第2フランジ部228との間に配置された第2バネ240による内輪31に対する付勢力とが釣り合い、内輪31がこの時点における位置に保持される。第2玉軸受30の外輪32は、軸受装置80の場合と同様に、軸方向における移動を規制されている。そのため、第2玉軸受30の内輪31は、外輪32に対して相対的に下側に位置する。よって、インペラ56の静止時において、第2玉軸受30の転動体33は、内輪31の凹部31cの上側の領域と外輪32の凹部32cの下側の領域とに接触する。すなわち、インペラ56の静止時において、第2玉軸受30には、
図5において一点鎖線で示すように、内輪31および外輪32と転動体33との接触点を結んだ直線が、下に行くに従って径方向の外側に向かうように径方向に対して傾斜した状態で予圧が作用する。
【0082】
このように、軸受装置280では、インペラ56の静止時において、第1玉軸受20と第2玉軸受30とにかかる予圧は、それぞれの内輪および外輪と転動体との接触点を結んだ直線が、下に行くに従って径方向の外側に向かうように径方向に対して傾斜した状態で予圧が作用する並列組み合わせになっている。
【0083】
次に、インペラ56が回転している場合における軸受装置280について説明する。
【0084】
図6は、インペラが回転している際の軸受装置280の様子を拡大して概略的に示す断面図である。さらに言えば、
図6は、シャフト10の突出部10aが鉛直方向における上側を向くように送風機1を配置した場合における、インペラ56の回転時の軸受装置280の様子を示している。
【0085】
図6において矢印で示すように、インペラ56が高速回転すると、スラスト力F2がロータ50による荷重F1よりも大きくなり、その結果、このスラスト力F2によって、シャフト10及びシャフト10に支持された第1フランジ部28が上側に移動する。そして、第1フランジ部28が上側に移動する結果、第1玉軸受20の内輪21は、内輪21の下面21dに接触した第1フランジ部28によって下側(他方側)から上側(一方側)に向かって押されて、上側に移動する。第1実施形態と同様に、第1玉軸受20の外輪22はスリーブ81に固定(接着剤により接着)されている。そのため、内輪21は、外輪22に対して相対的に上側に位置する。よって、インペラ56の高速回転時において、第1玉軸受20の転動体23は、内輪21の凹部21cの下側の領域と外輪22の凹部22cの上側の領域とに接触する。すなわち、インペラ56の高速回転時において、第1玉軸受20には、
図6において一点鎖線で示すように、内輪21および外輪22と転動体23との接触点を結んだ直線が、上に行くに従って径方向の外側に向かうように径方向に対して傾斜した状態で予圧が作用する。
【0086】
インペラ56の高速回転時、シャフト10に支持された第2玉軸受30の内輪31は、スラスト力F2によって、シャフト10とともに上側に移動する。インペラ56の回転数が大きくなってスラスト力F2が大きくなると、内輪31はより上側に移動する。そして、内輪31がある程度上側に移動した時点において、第1バネ40による内輪31に対する付勢力と、第2フランジ部228と内輪31とに取り付けられた第2バネ240による内輪31に対する付勢力とが釣り合い、内輪31がこの時点における位置に保持される。第2玉軸受30の外輪32は、軸方向における移動を規制されている。そのため、第2玉軸受30の内輪31は、外輪32に対して相対的に上側に位置する。よって、インペラ56の高速回転時において、第2玉軸受30の転動体33は、内輪31の凹部31cの下側の領域と外輪32の凹部32cの上側の領域とに接触する。すなわち、インペラ56の高速回転時において、第2玉軸受30には、
図6において一点鎖線で示すように、内輪31および外輪32と転動体33との接触点を結んだ直線が、上に行くに従って径方向の外側に向かうように径方向に対して傾斜した状態で予圧が作用する。
【0087】
このように、軸受装置280では、インペラ56の高速回転時において、第1玉軸受20と第2玉軸受30とにかかる予圧が、それぞれの内輪および外輪と転動体との接触点を結んだ直線が、上に行くに従って径方向の外側に向かうように径方向に対して傾斜した状態で予圧が作用する並列組み合わせ(すなわち、静止時とは反対向きの並列組み合わせ)になっている。
【0088】
なお、特に限定されるものではないが、本実施形態において、第1バネ40および第2バネ240のたわみ量が第1玉軸受20および/または第2玉軸受30のアキシャルすきま分だけ変化した場合の、第1バネ40および第2バネ240による荷重(付勢力)の変化量は、第2玉軸受30の内輪31の重量よりも大きいことが好ましい。
【0089】
以上説明したように、本実施形態の送風機2は、シャフト10と、シャフト10の一部(概ね突出部10aを除く部分)を内部に収容するスリーブ81と、シャフト10の軸方向における一方側に回転可能に支持され、回転することによって軸方向における一方側から軸方向における他方側に向かう空気流を生成するインペラ56と、シャフト10におけるインペラ56に近い部分に支持される内輪21と、スリーブ81の内周面81iに固定される外輪22とを含む第1玉軸受20と、シャフト10における第1玉軸受20の内輪21よりもインペラ56から遠い部分に内輪31が支持される第2玉軸受30と、シャフト10における第1玉軸受20の内輪21と第2玉軸受30の内輪31との間の部分に支持され、シャフト10から径方向の外側に張り出す第1フランジ部28と、第1フランジ部28と第2玉軸受30の内輪31との間に配置される第1バネ40と、を備えている。そして、送風機2において、第1フランジ部28は、インペラ56が回転した際に、第1玉軸受20の内輪21を他方側から一方側に向かって押す。
【0090】
したがって、送風機2によれば、送風機1と同様の理由により、インペラ56の回転数を上げることが可能であり、また、インペラ56をスムーズに回転させ始めることが可能である。さらに、送風機2は第1実施形態と同様にワッシャ29を含むため、インペラ56の回転時に雑音が生じたり、内輪21が摩耗したりすることが抑制される。
【0091】
また、送風機2では、第2玉軸受30の内輪31が、第1バネ40と第2バネ240とによって上下から挟み込まれた状態で支持されているため、特に第2玉軸受30の内輪31に対する衝撃吸収性に優れている。
【0092】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る送風機について説明する。
図7は、本実施形態に係る送風機2を示す軸方向における断面図である。
図7に示すように、送風機3は、軸受装置380の構成の一部が送風機1の軸受装置80の構成と異なる点を除いて、送風機1と同様の構成を有する。したがって、以下、送風機3については、送風機1と異なる点のみを説明し、その他の構成については第1実施形態と同様の符号を付して説明を省略する。
【0093】
図8は、インペラ56が静止している際の軸受装置380の様子を拡大して概略的に示す断面図である。さらに言えば、
図8は、シャフト10の突出部10aが鉛直方向における上側を向くように送風機3を配置した場合における、インペラ56の静止時の軸受装置380の様子を示している。
図8に示すように、軸受装置380は、第2フランジ部328と、第3バネ340とを含んでいる。
【0094】
第2フランジ部328は、シャフト10における第2玉軸受30の内輪31よりも下側(他方側)の部分に支持され、シャフト10から径方向の外側に張り出している。本実施形態において、第2フランジ部328はワッシャであり、シャフト10の外周面10oに形成された溝に嵌め込まれている。本実施形態では、インペラ56の静止時、第2フランジ部328は第2玉軸受30の内輪31の下面31dに接触しているが、接触していなくても構わない。また、第2フランジ部328の構成はこれに限らず、例えば、シャフト10とフランジ状に一体成型された部分であってもよい。
【0095】
第3バネ340は、軸方向において、スリーブ81の段部81Pと第2玉軸受30の外輪32との間に配置されている。すなわち、第3バネ340は、スリーブ81の段部81Pの下面81Pdと第2玉軸受30の外輪32の上面32uとの間に配置されている。本実施形態において、第3バネ340は、1つのバネによって構成されるが、周方向において等間隔に配置された2つ以上のバネ片によって構成されてもよい。
【0096】
なお、軸受装置380は、軸受装置80,280と異なり、固定部60を有していない。
【0097】
シャフト10の突出部10aが鉛直方向における上側を向くように送風機3を配置した場合におけるインペラ56の静止時、第1玉軸受20には、
図8において一点鎖線で示すように、軸受装置80と同様に、ロータ50による荷重F1によって、内輪21および外輪22と転動体23との接触点を結んだ直線が、下に行くに従って径方向の外側に向かうように径方向に対して傾斜した状態で予圧が作用する。また、インペラ56の静止時、第1玉軸受20には、軸受装置80と同様にロータ50による荷重F1のみが作用する。
【0098】
インペラ56の静止時、ロータ50による荷重F1によって、シャフト10に支持された第2玉軸受30の内輪31がシャフト10とともに下側に移動する。一方、第2玉軸受30の外輪32は、第3バネ340の付勢力によって下側に移動する。そのため、第2玉軸受30の内輪31と外輪32とは、軸方向において、ほぼ同じ位置に配置される。よって、インペラ56の静止時において、第2玉軸受30には、実質的に予圧が付与されない。
【0099】
このように、軸受装置380では、インペラ56の静止時において、第1玉軸受20には内輪および外輪と転動体との接触点を結んだ直線が、上に行くに従って径方向の内側に向かうように径方向に対して傾斜した状態で予圧が作用し、第2玉軸受30には予圧が作用しない組み合わせになっている。
【0100】
次に、インペラ56が回転している場合における軸受装置380について説明する。
【0101】
図9は、インペラが回転している際の軸受装置380の様子を拡大して概略的に示す断面図である。さらに言えば、
図9は、シャフト10の突出部10aが鉛直方向における上側を向くように送風機3を配置した場合における、インペラ56の回転時の軸受装置380の様子を示している。
【0102】
図9において矢印で示すように、インペラ56が高速回転すると、スラスト力F2がロータ50による荷重F1よりも大きくなり、その結果、このスラスト力F2によって、シャフト10及びシャフト10に支持された第1フランジ部28が上側に移動する。そして、第1フランジ部28が上側に移動する結果、第1玉軸受20の内輪21は、内輪21の下面21dに接触した第1フランジ部28によって下側(他方側)から上側(一方側)に向かって押されて、上側に移動する。第1実施形態と同様に、第1玉軸受20の外輪22はスリーブ81に固定(接着剤により接着)されている。そのため、内輪21は、外輪22に対して相対的に上側に位置する。よって、インペラ56の高速回転時において、第1玉軸受20の転動体23は、内輪21の凹部21cの下側の領域と外輪22の凹部22cの上側の領域とに接触する。すなわち、インペラ56の高速回転時において、第1玉軸受20には、
図9において一点鎖線で示すように、内輪21および外輪22と転動体23との接触点を結んだ直線が、上に行くに従って径方向の外側に向かうように径方向に対して傾斜した状態で予圧が作用する。
【0103】
インペラ56の高速回転時、第2フランジ部328は、スラスト力F2によって、シャフト10と一体的に上側に移動する。その結果、第2フランジ部328は、第2玉軸受30の内輪31の下面31dに接触し、内輪31を下側(他方側)から上側(一方側)に移動させる(押す)。インペラ56の回転数が大きくなってスラスト力F2が大きくなると、内輪31は、第2フランジ部328によって、より上側に移動させられる。この際、内輪31は、第1バネ40による内輪31に対する付勢力によって、第2フランジ部328に接触した位置に保持される。一方、第2玉軸受30の外輪32は、内輪31が上側に移動することに伴い転動体33を介して上側に押されるが、第3バネ340の付勢力によって上側への移動を規制される。そのため、第2玉軸受30の内輪31は、外輪32に対して相対的に上側に位置する。よって、インペラ56の高速回転時において、第2玉軸受30の転動体33は、内輪31の凹部31cの下側の領域と外輪32の凹部32cの上側の領域とに接触する。すなわち、インペラ56の高速回転時において、第2玉軸受30には、
図9において一点鎖線で示すように、内輪31および外輪32と転動体33との接触点を結んだ直線が、上に行くに従って径方向の外側に向かうように径方向に対して傾斜した状態で予圧が作用する。
【0104】
このように、軸受装置380では、インペラ56の高速回転時において、第1玉軸受20と第2玉軸受30とにかかる予圧が、それぞれの内輪および外輪と転動体との接触点を結んだ直線が、上に行くに従って径方向の外側に向かうように径方向に対して傾斜した状態で予圧が作用する並列組み合わせになっている。
【0105】
なお、特に限定されるものではないが、本実施形態における軸受装置380では、第1バネ40による荷重(付勢力)の最大値及び第3バネ340による荷重(付勢力)の最大値のそれぞれが、シャフト10の突出部10aが鉛直方向における上側を向くように送風機2を配置した際のロータ50による荷重F1よりも小さい。ここで、前述のように、インペラ56の高速回転時におけるスラスト力F2は、ロータ50による荷重F1よりも大きい。すなわち、本実施形態において、第1バネ40による荷重及び第3バネ340による荷重のそれぞれは、高速回転時のスラスト力F2よりも小さい。そのため、軸受装置380では、特に高速回転時において、第1バネ40及び第3バネ340のそれぞれの付勢力がスラスト力F2に抗するように作用することが抑制されている。
【0106】
以上説明したように、本実施形態の送風機3は、シャフト10と、シャフト10の一部(概ね突出部10aを除く部分)を内部に収容するスリーブ81と、シャフト10の軸方向における一方側に回転可能に支持され、回転することによって軸方向における一方側から軸方向における他方側に向かう空気流を生成するインペラ56と、シャフト10におけるインペラ56に近い部分に支持される内輪21と、スリーブ81の内周面81iに固定される外輪22とを含む第1玉軸受20と、シャフト10における第1玉軸受20の内輪21よりもインペラ56から遠い部分に内輪31が支持される第2玉軸受30と、シャフト10における第1玉軸受20の内輪21と第2玉軸受30の内輪31との間の部分に支持され、シャフト10から径方向の外側に張り出す第1フランジ部28と、第1フランジ部28と第2玉軸受30の内輪31との間に配置される第1バネ40と、を備えている。そして、送風機3において、第1フランジ部28は、インペラ56が回転した際に、第1玉軸受20の内輪21を他方側から一方側に向かって押す。
【0107】
したがって、送風機3によれば、送風機1と同様の理由により、インペラ56の回転数を上げることが可能であり、また、インペラ56をスムーズに回転させ始めることが可能である。さらに、送風機2は第1実施形態と同様にワッシャ29を含むため、インペラ56の回転時に雑音が生じたり、内輪21が摩耗したりすることが抑制される。
【0108】
また、送風機3では、第2玉軸受30の外輪32が、第3バネ340を介して支持されているため、特に第2玉軸受30の外輪32に対する衝撃吸収性に優れている。
【0109】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態に係る送風機について説明する。
図10は、本実施形態に係る送風機4を示す軸方向における断面図である。
図11は、インペラが静止している際の
図10に示す軸受装置480の様子を拡大して概略的に示す断面図である。
図10及び
図11に示すように、送風機4は、軸受装置480の構成の一部が送風機1の軸受装置80の構成と異なる点等を除いて、送風機1と同様の構成を有する。したがって、以下、送風機4については、送風機1と異なる点のみを説明し、その他の構成については第1実施形態と同様の符号を付して説明を省略する。
【0110】
図10及び
図11に示すように、送風機4の軸受装置480は、送風機1の軸受装置80と概ね同様の構成を有するが、スリーブ481が張出部482を有する点、及び、軸受装置80のスリーブ81は段部81Pを含むのに対して、軸受装置480においてはスリーブ481が段部81Pのような段部を含まず、スリーブ481とは別体のスペーサ483を含む点において、送風機1の軸受装置80と主に異なっている。以下、これらの相違点について説明する。
【0111】
図10及び
図11に示すように、スリーブ481の内周には、径方向の内側へ突出する張出部482が形成されている。軸方向において、張出部482は、スリーブ481の上端又は上端近傍に形成されており、スリーブ481の他の部分と一体に形成されている。径方向において、張出部482の内周面482iは、スリーブ481の他の部分に対して内側に位置している。径方向において、張出部482の内周面482iは、第1玉軸受20の外輪22の内周面22iと同じ位置にあってもよいし、内周面22iに対して内側の位置又は外側の位置にあってもよい。径方向において、張出部482の内周面482iと内周面482iに対向するブッシュ53の面53iとの間には、間隙が形成されている。張出部482は、環状に(スリーブ481の周方向の全周に亘って)形成されてもよいし、スリーブ481の周方向における一部に形成されてもよい。張出部482の下側の面(下面)には、第1玉軸受20の外輪22の上面22u(第1玉軸受20の軸方向における一方側の端部)が当接している。したがって、張出部482は、第1玉軸受20の外輪22の上側への移動を規制している。
【0112】
本実施形態において、スリーブ481の内周面481iは、張出部482の内周面482iを除いて面一に形成されている。
【0113】
軸受装置480は、スペーサ483を備えている。スペーサ483は、スリーブ481とは別部材である。スペーサ483は、軸方向においてスリーブ481に対して移動しないように支持されている。スペーサ483は、スリーブ481の内周面482iに対して圧入されていてもよいし、内周面482iに接着されてもよい。このようにスペーサ483がスリーブ481とは別部材であることによって、第1玉軸受20をスリーブ481の下側の開口481boからスリーブ481内へと挿入して、第1玉軸受20をスリーブ481の上側の端部に向かって移動させることができ、また、その後に、スペーサ483を開口481boからスリーブ481内へと挿入して、スペーサ483を第1玉軸受20に向かって移動させることができる。軸方向において、スペーサ483は、第1玉軸受20と第2玉軸受30との間にある。
【0114】
軸方向において、第1玉軸受20の外輪22は、張出部482とスペーサ483とによって挟み込まれて保持されており、これにより、第1玉軸受20の外輪22の軸方向における移動が規制されている。本実施形態では、第1玉軸受20の外輪22は、第1実施形態、第2実施形態、及び第3実施形態と異なり、スリーブ481の内周面482iに固定(例えば、接着剤を用いて接着)されておらず、例えば、すきまばめ、中間ばめ、又はしまりばめ等によって保持されて、スリーブ481の内周に配置されている。ただし、第1実施形態、第2実施形態、及び第3実施形態と同様に、第1玉軸受20の外輪22をスリーブ481の内周面482iに固定しても構わない。
【0115】
このように、本実施形態の送風機4では、スリーブ481の内周には、径方向の内側へ突出する張出部482が設けられ、張出部482には、第1玉軸受20の一方側の端部(第1玉軸受20の外輪22の上面22u)が当接しており、第1玉軸受20の外輪22がスリーブ481の内周に配置される。このような構成によれば、第1玉軸受20の外輪22をスリーブ481に固定(例えば接着)しなくても、第1玉軸受20の外輪22の上側への移動を規制することができる。また、本実施形態では、スペーサ483をさらに備えるため、第1玉軸受20の外輪22をスリーブ481に固定(例えば接着)しなくても、第1玉軸受20の外輪22の軸方向の移動を規制することができる。また、これらの点を除いて、送風機4は、第1実施形態の送風機1と同様の構成を有する。このため、インペラ56の高速回転時においても、第1玉軸受20及び第2玉軸受30の双方に対して、過度な負荷をかけることなく予圧を付与することができ、インペラ56の回転数を上げることが可能となる。
【0116】
ところで、このような張出部482及びスペーサ483を第1実施形態、第2実施形態、及び第3実施形態に適用することもできる。かかる場合、第1玉軸受20の外輪22をスリーブに固定することなく、第1玉軸受20の外輪22の軸方向の移動を規制(外輪22の軸方向における位置を保持)することが可能となる。特に、張出部482及びスペーサ483を第1実施形態及び第2実施形態に適用する場合、第1玉軸受20の外輪22及び第2玉軸受30の外輪32を軸方向において張出部482と固定部60とによって挟み込むことができ、これにより、外輪22,32の軸方向の移動を規制することができる。また、張出部482及びスペーサ483を第1実施形態及び第2実施形態に適用する場合、スペーサ483を軸方向においてスリーブ481に対して移動しないように支持(例えば、固定)しなくても構わない。張出部482及びスペーサ483を第1実施形態及び第2実施形態に適用する場合、第1玉軸受20の外輪22、第2玉軸受30の外輪32、及びスペーサ483の3者を張出部482と固定部60との間に挟み込むことができるため、2つの外輪22,32及びスペーサ483の軸方向の移動を規制することができる。このように、第1玉軸受20の内輪21及び第2玉軸受30の内輪31がシャフト10に対して固定されておらず、さらに、第1玉軸受20の外輪22及び第2玉軸受30の外輪32と、スペーサ483とがそれぞれスリーブ481に対して固定されていない場合、接着等の固定工程が省略されることで、送風機4の組み立てがしやすくなる。また、送風機4の分解や修理がより容易になる。
【0117】
以上、本発明について上記実施形態を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0118】
例えば、上記実施形態では、ワッシャ29を備える例を説明したが、ワッシャ29を設けなくても構わない。
【0119】
また、上記実施形態では、スリーブ81に段部81Pを形成した例を説明したが、段部81Pを形成しなくても構わない。この場合、第2玉軸受30の外輪32の外周面をスリーブ81の内周面81iに接着してもよい。
【0120】
その他、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の送風機を適宜改変することができる。かかる改変によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0121】
1,2,3,4…送風機、10…シャフト、20…第1玉軸受、21…内輪、22…外輪、28…第1フランジ部、29…ワッシャ、30…第2玉軸受、31…内輪、32…外輪、40…第1バネ、50…ロータ、56…インペラ、60…固定部、81,481…スリーブ、81P…段部、228,328…第2フランジ部、240…第2バネ、340…第3バネ、482…張出部