(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114626
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】プライミングデバイス、プライミング方法及びプライミングステーション
(51)【国際特許分類】
G01N 35/10 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
G01N35/10 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024008603
(22)【出願日】2024-01-24
(31)【優先権主張番号】18/168,122
(32)【優先日】2023-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】723005698
【氏名又は名称】船井電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148460
【弁理士】
【氏名又は名称】小俣 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100168125
【弁理士】
【氏名又は名称】三藤 誠司
(72)【発明者】
【氏名】キャリザーズ・アダム ディー.
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058ED17
2G058ED21
2G058FB06
2G058FB12
2G058FB14
(57)【要約】
【課題】流体噴射ヘッドのためのプライミングデバイス、流体噴射ヘッドをプライミングするための方法およびプライミングステーションを提供する。
【解決手段】プライミングデバイスは、動力流体入口、吸引入口と流体出口を有するベンチュリ管と、ベンチュリ管の流体入口に加圧流体を提供し、ベンチュリ管の吸引入口で減圧を提供するように構成された動力流体源と、流体カートリッジの噴射ヘッドおよびベンチュリ管の吸引入口と流体流通した噴射ヘッドシーリングデバイスと、を含む。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体噴射ヘッドのためのプライミングデバイスであって、
動力流体入口、吸引入口と流体出口を有するベンチュリ管と、
前記ベンチュリ管の前記動力流体入口に加圧流体を提供し、前記ベンチュリ管の前記吸引入口で減圧を提供するように構成された動力流体源と、
流体カートリッジの噴射ヘッドおよび前記ベンチュリ管の前記吸引入口と流体流通した噴射ヘッドシーリングデバイスと、
を含むプライミングデバイス。
【請求項2】
前記動力流体源が、圧縮空気源を含む請求項1に記載のプライミングデバイス。
【請求項3】
前記ベンチュリ管の前記動力流体入口と流体流通した圧力調整器をさらに含む請求項1に記載のプライミングデバイス。
【請求項4】
前記噴射ヘッド上のノズルのアレイ内の1つまたはそれ以上のノズルに関連した流体センサをさらに含み、
前記1つまたはそれ以上のノズルの各ノズルが、それぞれの流体チャンバーおよびそれぞれの流体チャネルを有し、
前記流体センサが、前記噴射ヘッド上の流体供給ビアから前記流体チャネルを通過し、前記1つまたはそれ以上のノズルの前記流体チャンバーに流れる液体流を感知し、それにより、前記噴射ヘッドのプライミングを表示するように構成された請求項3に記載のプライミングデバイス。
【請求項5】
前記流体センサおよび前記圧力調整器と電気的に通信するコントローラをさらに含み、
前記コントローラが、前記圧力調整器を調整して、前記動力流体源からの前記加圧流体を調節するように構成された請求項4に記載のプライミングデバイス。
【請求項6】
前記ベンチュリ管の出口と流体流通した液体収集タンクをさらに含む請求項1に記載のプライミングデバイス。
【請求項7】
前記ベンチュリ管の前記吸引入口が、前記流体カートリッジの前記噴射ヘッドのための個別のキャッピングデバイスと流体流通している請求項1に記載のプライミングデバイス。
【請求項8】
前記ベンチュリ管の前記吸引入口と前記噴射ヘッドの間に配置され、前記噴射ヘッド上の複数のノズルアレイのプライミングを制御するように構成されたマルチポートソレノイドバルブをさらに含む請求項1に記載のプライミングデバイス。
【請求項9】
流体カートリッジのプライミング方法であって、
動力流体入口、吸引入口と流体出口を有するベンチュリ管と、
前記ベンチュリ管の前記動力流体入口に加圧流体を提供し、前記ベンチュリ管の前記吸引入口で減圧を提供するように構成された動力流体源と、
前記流体カートリッジの噴射ヘッドおよび前記ベンチュリ管の前記吸引入口と流体流通した噴射ヘッドシーリングデバイスと、
を含む流体噴射ヘッドのためのプライミングデバイスを提供することと、
前記流体カートリッジの前記噴射ヘッドに前記噴射ヘッドシーリングデバイスを取り付けることと、
前記ベンチュリ管の前記吸引入口で減圧を提供するのに十分な圧力および量で、前記ベンチュリ管を介して前記ベンチュリ管の前記動力流体入口から前記流体出口に前記加圧流体を流し、それにより、前記噴射ヘッドをプライミングすることと、
を含む方法。
【請求項10】
前記加圧流体が、約0.1MPa~約0.6MPaの範囲の流体入口圧力を有する請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記加圧流体が、約3L/分~約10L/分の範囲の前記ベンチュリ管を通る流量を有する請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記ベンチュリ管の前記吸引入口における前記減圧が、約-18kPa~約-88kPaの範囲である請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記ベンチュリ管の前記流体出口と流体流通した収集タンク内で、前記噴射ヘッドから吸引された流体を収集することをさらに含む請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記流体カートリッジが、ピペット充填可能カートリッジを含み、
前記流体カートリッジの前記噴射ヘッドに前記噴射ヘッドシーリングデバイスを取り付ける前に、前記ピペット充填可能カートリッジ内に流体を挿入することをさらに含む請求項9に記載の方法。
【請求項15】
流体カートリッジのためのプライミングステーションであって、
前記流体カートリッジの噴射ヘッドの周囲の周りを密封するように構成されたシールを備えた流体出口を有する流体カートリッジホルダーと、
前記流体カートリッジホルダーと流体流通したベンチュリ管と、
を含み、
前記ベンチュリ管が、
前記流体カートリッジホルダーの前記流体出口と流体流通した吸引入口と、
前記ベンチュリ管を介して動力流体を提供し、前記ベンチュリ管の前記吸引入口で減圧を生じさせるように構成された前記ベンチュリ管の動力流体入口と、
前記流体カートリッジホルダーから前記ベンチュリ管に流体を流すように構成されたベンチュリ管出口と、
を含むプライミングステーション。
【請求項16】
前記ベンチュリ管の前記動力流体入口と流体流通した圧力調整器をさらに含む請求項15に記載のプライミングステーション。
【請求項17】
前記流体カートリッジホルダーの前記流体出口に隣接する流体センサをさらに含み、
前記流体センサが、前記流体カートリッジホルダーの前記流体出口を通過して前記噴射ヘッドから流れる液体流を感知するように構成された請求項16に記載のプライミングステーション。
【請求項18】
前記流体センサおよび前記圧力調整器と電気的に通信するコントローラーをさらに含み、
前記コントローラーが、前記圧力調整器を調整して、前記ベンチュリ管の前記動力流体入口に印加された前記動力流体の圧力を調節するように構成された請求項17に記載のプライミングステーション。
【請求項19】
前記ベンチュリ管出口と流体流通した液体収集タンクをさらに含む請求項15に記載のプライミングステーション。
【請求項20】
前記ベンチュリ管の前記吸引入口と前記流体カートリッジホルダーの前記流体出口の間に配置されたマルチポートソレノイドバルブをさらに含み、
前記マルチポートソレノイドバルブが、前記噴射ヘッド上の複数のノズルアレイのプライミングを制御するように構成された請求項15に記載のプライミングステーション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体噴射デバイスに関するものであり、特に、ピペット充填可能な流体カートリッジのための噴射ヘッド上で噴射ノズルアレイをプライミングする方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特に、医療分野では、自動化されたサンプル作製および分析を必要とする。分析は、色素測定分析であってもよく、顕微鏡下でサンプルをよりよく観察するためにサンプルの染色を必要とする場合もある。このような分析は、薬物サンプルの分析、血液サンプルの分析などを含むことができる。例えば、血液のアッセイ分析は、個人の健康を判断するために使用される多くの異なる要素を提供する。多数の患者が血液サンプルの分析を必要とするとき、その手続きに長い時間がかかることがある。薬物スクリーニングなどのアッセイ分析では、サンプルに対する影響および性能を評価するために、微量のターゲット試薬を基板に沈着させることが望ましい。従来は、ピペット(手動または電気機械的に作動させる)を使用して、これらのアッセイサンプルに微量の物質を沈着させた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
分析の速度を上げ、より多くのサンプルを処理するために、自動化された流体分注システムが開発されている。自動化システムでは、しばしば噴射ヘッドを用いて複数の流体を少量ずつ分注する必要がある。したがって、大量の分析対象サンプルを迅速に処理することのできる流体分注システムは、非常に複雑で、高価である。
【0004】
流体分注システムのコストを削減する試みとして、従来のインクジェットプリンタデバイスの構成を使用してガラススライド上またはマイクロウェルプレートのウェル内でサンプルを処理することのできる流体噴射デバイスが開発された。高度に個別化された分析に対し、開口部(または、ヒンジ付きカバー)を有するピペット充填可能な流体カートリッジ10(
図1)を使用することによって、使用者は、1つまたはそれ以上の分析流体を充填することができる。ピペット充填可能な流体カートリッジ10は、2つまたはそれ以上の異なる流体用に分離壁16によって互いに分離された2つまたはそれ以上の流体貯蔵室14aおよび14bを含むことのできるカートリッジ本体12を含む。各流体貯蔵室14aおよび14bには、それぞれ噴射ヘッド20に流体を流すための流体供給スロット18aおよび18bが設けられる。噴射ヘッド20は、流体を噴射するために、対応する数のノズルアレイ22aおよび22bを含む。噴射ヘッドは、電気的なインパルスを提供するフレキシブル回路24に取り付けられ、噴射ヘッド20からの流体噴射を作動させる。
【0005】
図3において、2つのノズルのアレイを有する噴射ヘッド20の一部の断面図が示されている。噴射ヘッド20は、流体カートリッジ10の流体供給スロット18a、18bから、流体供給ビア28a、28bおよび流体チャネル30a~30dを通過して、流体噴射室32a~32dに流れる流体流のためにエッチングされた流体供給ビア28(28aおよび28b)を含む半導体基板26によって提供される。1つまたはそれ以上の流体噴射器34a~34dが作動すると、流体は、ノズル孔36a~36dを介して噴射ヘッド20から放出される。
【0006】
従来の予め充填された流体カートリッジは、しばしばバルブや吸収材(例えば、泡またはフェルト)のようなバックプレッシャーデバイスを含むため、カートリッジに取り付けられた噴射ヘッドから流体が滴下または滴落することなく、大量の流体をカートリッジ内に貯蔵することができる。バックプレッシャーデバイスの性質により、ノズル孔内の流体は、噴射ヘッドの外部表面に対して凹面メニスカス(concave meniscus)を保持する。したがって、負圧を使用して流体中の気泡を取り除き、流体供給ビア、流体チャネルを通過して、噴射ヘッド内の流体チャンバーに流体を流すことによって、噴射ヘッドをプライミングする方法が一般的である。
【0007】
上述したピペット充填可能な流体カートリッジ10は、少量の様々な危険または高価な分析試薬を末端使用者によって充填することができる。分析目的で使用される噴射ヘッド20は、従来の予め充填された流体カートリッジでは使用されない多種多様な流体を収容する必要がある。また、そのような分析目的で使用される流体の非常に精密な投与量または液滴を分注するためには、噴射ヘッド20を確実にプライミングする必要もある。しかしながら、噴射ヘッド20を通過する流体の流れは、粘度や表面張力などの特定の流体パラメータに大きく依存する。予め充填されたカートリッジを製造するときに真空で噴射ヘッドをプライミングすることは些細なことであるが、生化学および分析の用途では、末端使用者がカートリッジ10にカスタム流体を充填することが望ましい。圧縮空気は、ほとんどすべての研究室で手に入れることができるが、真空源は、常に利用できるわけではないことが認識されているため、一部の噴射流体に対しては、噴射ヘッド20をプライミングすることが特に困難となる。したがって、そのような分析目的で使用されるピペット充填可能な流体カートリッジ10に対し、信頼性のあるプライミングメカニズムが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上を考慮に入れて、本発明の実施形態は、流体噴射ヘッドのためのプライミングデバイス(priming device)を提供する。このプライミングデバイスは、動力流体入口(motive fluid inlet)、吸引入口と流体出口を有するベンチュリ管(Venturi tube)と、ベンチュリ管の動力流体入口に加圧流体を提供し、ベンチュリ管の吸引入口で減圧を提供するように構成された動力流体源と、流体カートリッジの噴射ヘッドおよびベンチュリ管の吸引入口と流体連通した噴射ヘッドシーリングデバイスと、を有する。
【0009】
別の実施形態において、流体カートリッジのプライミング方法を提供する。この方法は、流体噴射ヘッドのためのプライミングデバイスを提供することを含む。プライミングデバイスは、動力流体入口、吸引入口と流体出口を有するベンチュリ管と、ベンチュリ管の動力流体入口に加圧流体を提供し、ベンチュリ管の吸引入口で減圧を提供するように構成された動力流体源と、流体カートリッジの噴射ヘッドおよびベンチュリ管の吸引入口と流体連通した噴射ヘッドシーリングデバイスを有する。流体カートリッジの噴射ヘッドに隣接して噴射ヘッドシーリングデバイスを取り付ける。ベンチュリ管の吸引入口で減圧を提供するのに十分な圧力および量で、ベンチュリ管を介して動力流体入口から流体出口に加圧流体を流し、それにより、噴射ヘッドをプライミングする。
【0010】
別の実施形態において、流体カートリッジのためのプライミングステーションを提供する。このプライミングステーションは、流体カートリッジの噴射ヘッドの周囲の周りを密封するように構成されたシールを備えた流体出口を有する流体カートリッジホルダーを含む。ベンチュリ管は、流体カートリッジホルダーと流体連通して提供される。ベンチュリ管は、流体カートリッジホルダーの流体出口と流体連通した吸引入口、ベンチュリ管を介して動力流体を提供し、ベンチュリ管の吸引入口で減圧を生じさせるように構成されたベンチュリ管への動力流体入口、および流体カートリッジホルダーからベンチュリ管に流体を流すように構成されたベンチュリ管出口を有する。
【0011】
いくつかの実施形態において、動力流体源は、圧縮空気源である。
【0012】
いくつかの実施形態において、デバイスは、ベンチュリ管の動力流体入口と流体連通した圧力調整器を含む。
【0013】
いくつかの実施形態において、流体センサは、噴射ヘッド上のノズルのアレイ内の1つまたはそれ以上のノズルに関連し、前記1つまたはそれ以上のノズルの各ノズルは、それぞれの流体チャンバーおよびそれぞれの流体チャネルを有する。流体センサが、噴射ヘッド上の流体供給ビアから流体チャネルを通過し、1つまたはそれ以上のノズルの流体チャンバーに流れる液体流を感知し、それにより、噴射ヘッドのプライミングを表示するように構成される。
【0014】
別の実施形態において、流体センサは、ベンチュリ管の吸引入口に隣接して配置され、流体センサは、噴射ヘッドからベンチュリ管に流れる液体流を感知するように構成される。
【0015】
いくつかの実施形態において、コントローラーは、流体センサおよび圧力調整器と電気的に通信して提供され、コントローラーは、圧力調整器を調整して、動力流体源からの加圧流体を調節するように構成される。
【0016】
いくつかの実施形態において、液体収集タンクは、ベンチュリ管の出口と流体連通して提供される。
【0017】
いくつかの実施形態において、ベンチュリ管の吸引入口は、流体カートリッジの噴射ヘッドに用いる個別のキャッピングデバイスと流体連通している。
【0018】
いくつかの実施形態において、マルチポートソレノイドバルブ(multi-port solenoid valve)は、ベンチュリ管の吸引入口と噴射ヘッドの間に配置され、噴射ヘッド上の複数のノズルアレイのプライミングを制御するように構成される。
【0019】
いくつかの実施形態において、加圧流体は、約0.1MPa~約0.6MPaの範囲の流体入口圧力を有する。
【0020】
いくつかの実施形態において、加圧流体は、ベンチュリ管を通る流量が約310L/分~約10L/分の範囲である。
【0021】
いくつかの実施形態において、ベンチュリ管の吸引入口における減圧は、約-18kPa~約-88kPaの範囲である。
【0022】
本発明の実施形態の利点は、ここで説明されているプライミングメカニズムが、特に、流体カートリッジを最小量の流体で充填するときに、多種多様な流体用の流体カートリッジの噴射ヘッドをプライミングするための効果的かつ効率的な手段を提供することである。この装置および方法により、オープントップカートリッジおよび/またはバックプレッシャーデバイスのないカートリッジを使用することが可能となるため、それにより、予め充填された流体カートリッジの使用ではなく、使用者によって選択された流体の使用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明のプライミングデバイスのためのピペット充填可能なカートリッジの斜視図である。
【
図2】
図1のピペット充填可能なカートリッジの平面図である。
【
図3】2つのノズルアレイを示す噴射ヘッドの一部の正確な縮尺ではない断面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係るプライミングデバイスの斜視図である。
【
図5】
図4のプライミングデバイスの概略図である。
【
図6】
図4のプライミングデバイスのためのカートリッジ保持構造の部分的斜視図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係る液体収集タンクを含む
図4のプライミングデバイスの斜視図である。
【
図8】本発明の第3実施形態に係るプライミングデバイスの斜視図である。
【
図9】
図8のプライミングデバイスの概略図である。
【
図10】本発明の第4実施形態に係るプライミングデバイスの断面図である。
【
図11】
図10のプライミングデバイスを使用した噴射ヘッド上のノズルのアレイのためのプライミングシーケンスの正確な縮尺ではない平面図である。
【
図12】本発明の第5実施形態に係るプライミング検出センサの概略図である
【
図13】本発明の第5実施形態に係るプライミング検出センサの概略図である。
【
図14】本発明の第6実施形態に係るプライミングデバイスの斜視図である。
【
図15】
図14のプライミングデバイスのためのガスケットの正確な縮尺ではない平面図である。
【
図16】
図14のプライミングデバイスのためのカートリッジ保持構造の平面図である。
【
図18】本発明の第7実施形態に係るプライミングデバイスの概略図である。
【
図19】本発明の第8実施形態に係るプライミングデバイスの斜視図である。
【
図20】本発明の第9実施形態に係るプライミングデバイスの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図4を参照すると、本発明の第1実施形態に係るプライミングデバイス40の斜視図が示されている。
図5には、プライミングデバイス40およびベンチュリ管46のやや概略的な図が示されている。プライミングデバイス40は、ピペット充填可能なカートリッジ10のためのカートリッジ保持構造42を含む。ベンチュリ管46の吸引入口44は、構造体42に取り付けられる。ベンチュリ管46は、また、動力流体入口48および排気流体出口50を含む。圧縮空気または不活性ガスなどの加圧された動力流体は、ベンチュリ管46を介して矢印52および54の方向において入口48から出口50に向かって流れ、矢印56の方向においてベンチュリ管の吸引入口44で減圧を生じさせる。この減圧により、カートリッジ10の噴射ヘッド20からの流体がベンチュリ管を介してその出口50に流れる。いくつかの実施形態において、動力流体は、約0.1MPa~約0.6MPaの範囲の入口圧力を有し、ベンチュリ管を通る流量は、約3L/分~約10L/分の範囲である。したがって、上記の条件下での動力流体は、ベンチュリ管の吸引入口で約-18kPa~約-88kPaの範囲の減圧を提供することができる。
【0025】
いくつかの実施形態において、例えば、
図6に示すように、ベンチュリ管46から噴射ヘッド20への吸引の損失を防ぐために、Oリングまたはガスケットなどのシーリングデバイス58を使用して、構造体42内の噴射ヘッド20の周りを密封する。ガスケット58は、天然または合成ゴムなどの弾性材料で作られ、流体カートリッジ10がカートリッジ保持構造42に取り付けられたときに噴射ヘッド20の周囲を囲むように構成される。適切なシーリングデバイスのより詳しい説明については、
図15を参照しながら後述する。
【0026】
ここに示した様々な実施形態において、
図4および
図6に示すように、フレキシブルチューブ(flexible tubing)60を使用して、ベンチュリ管46の吸引入口44と構造体42の間を接続する。また、入口フレキシブルチューブ62を入口48に接続し、出口フレキシブルチューブ64をベンチュリ管46の出口50に接続してもよい。いくつかの実施形態において、コントローラ(図示せず)によるプライミング手順の間に噴射ヘッド20上で流体噴射器34を作動させるために、ポゴピン(pogo pin)66を介してフレキシブル回路24をプライミングデバイス40に電気接続してもよい。
【0027】
ピペット充填可能なカートリッジ10が予め充填されていて、プライミングデバイス40を最終ステップとして使用して噴射ヘッド20をプライミングしてもよく、またはカートリッジ10が空になっていて、プライミングデバイス40が使用中のときに使用者によって充填してもよい。噴射ヘッド20の自発的なプライミングが理想的であるが、分析目的で使用される多くの流体の表面張力は、カートリッジ10の流体貯蔵室14から噴射ヘッドの流れ特性28、30、32を通過する毛細管運動を開始させるには大きすぎる可能性がある。ノズルアレイ22aおよび22bを通過する流体の毛細管作用に影響を及ぼす可能性のある他の流体特性は、粘度、極性、密度などを含むが、本発明はこれに限定されない。したがって、ベンチュリ管46によって提供される吸引は、流体供給ビア28を通過して流体貯蔵室14から流体を引き出し、流体チャネル30を通過して噴射ヘッド20の流体チャンバー32に流体を引き入れるため、それにより、噴射ヘッド20を効果的にプライミングして、流体を分注することができる。流体が流体チャンバー32に入ると、流体噴射器34が作動し、ノズル孔36を介して流体を分注することができる。
【0028】
いくつかの実施形態において、
図7に示すように、ベンチュリ管46の出口50と流体連通した液体収集タンク68を使用して、噴射ヘッド20から誤って引き出される可能性のある過剰な流体を収集することができる。液体収集タンク68は、動力流体を排気するためのベント70を含むことができ、フィルター72、溶媒トラップ、または噴射ヘッド20から引き出された流体が液体収集タンク68から排出されるのを防ぐ他の必要な手段を特徴とすることができる。
【0029】
いくつかの実施形態において、
図8に示すように、プライミングデバイス40は、入口フレキシブルチューブ62上に電子制御ソレノイドバルブなどの圧力調整器74を含んでもよく、それにより、流体カートリッジ10がカートリッジ保持構造42に適切に取り付けられると、動力流体入口48に対して動機空気源を自動的にオンにし、プライミングがプライミングデバイス40によって検出されたときに、動機空気源を自動的にオフにすることができる。
【0030】
別の実施形態によると、
図9~
図10に示すように、プライミング検出センサ76を使用して、コントローラー78でソレノイドバルブ74を制御することができる。センサ76が噴射ヘッド20からの流体を感知したとき、噴射ヘッドへの吸引を停止させるために、コントローラー78内のソフトウェアが作動して、ソレノイドバルブ74を閉じることができる。いくつかの実施形態において、センサ76は、カートリッジ10の下方にあるカートリッジ保持構造87内に拡大レンズ82が取り付けられたカメラ80であるため、噴射ヘッド20は、視覚ポート84を通して見ることができる。
【0031】
噴射ヘッド20は、噴射ヘッド20が視覚ポート84を通して見えるように、下からライト86で照射してもよい。拡大レンズ82は、ノズル36がカメラ80にはっきり見えるようにするのに十分な倍率を有する。コンピュータソフトウェアを使用してノズルの位置を特定し、プライミングしたいノズル36を監視してもよい。ノズル36の適切なプライミングは、顔料または染料を含むどの流体に対しても、ノズル36の色の変化によって表示される。流体は、フィードスロット18を通過して流体カートリッジ10内の貯蔵室14から、ここで説明したプライミングデバイスによって噴射ヘッド20に流れる。その後、流体は、流体供給ビア28を通過して流体チャンネル30に流れる。透明な流体の場合、コンピュータソフトウェアは、
図11に示すように、流体が流体チャンネル30a~30eを通過して流体チャンバー32eに移動するときに、流体のメニスカス(meniscus)88b~88dの先端を追跡して分析する。メニスカスが流体チャンバー32eに入ると、ノズル36eは、コンピュータソフトウェアによってプライミングされたものとしてマークされる。全てのノズル36がプライミングされると、ソフトウェアは、使用者に聴覚的または視覚的な信号を提供して動力流体供給をオフにしてもよく、またはソフトウェアは、上述したソレノイドバルブ74を使用して動力流体の供給を自動的に終了してもよい。
【0032】
図12~
図13に示した代替の実施形態において、ここで参照により組み込まれた米国特許第9,493,002B2号、米国特許第10,099,477B2号、および米国特許第10,717,279B2号に記載されているように、噴射室32内に配置された第1電極92および流体チャンネル30内またはその上に配置された第2電極94の少なくとも一部によって、ノズルのアレイ内の1つまたはそれ以上のノズル36に対し、プライミング検出センサ90を提供してもよい。本実施形態によれば、第1電極92は、ステップ電圧を受け取るように構成される。感知回路は、第1電極92へのステップ電圧の印加に基づいて出力を生成する第2電極94に電気接続される。連続した
図12~
図13に示すように、流体96が流体チャンネルから流体チャンバー32に上手く流れ込んだとき、流体96の導電性は、第1電極92と第2電極94の間の電気接続を確立し、それにより、流体チャンバー32に関連するノズル36の良好なプライミングが表示される。カートリッジ10は、各流体供給ビアに対して単一のノズル36に関連するプライミング検出センサ90を有してもよく、またはノズルのアレイ22内の複数のノズル36にわたって複数のプライミング検出センサ90を有してもよい。特定のノズルアレイに対してすべてのノズル36のプライミングが検出されると、上述したように、検出センサ90と電気的に通信するロジックボードがコントローラー78に信号を送り、ソレノイドバルブ74を使用して動力流体の供給を自動的に終了させることができる。上述した実施形態の利点は、プライミング検出センサ90を置いて、流体が噴射ヘッド20内に留まっている間にノズル36のプライミングを決定することである。これは、廃棄物や汚染を減らすために、噴射ヘッド20によって分注される高価な、または汚い流体に対して特に有用である。
【0033】
図14~
図17に示した実施形態において、マルチポートソレノイドバルブ(multi-port solenoid valve, MPSV)100を使用して、ノズルアレイ間を密封するために使用されるカートリッジ保持構造104上のガスケット102を使用することにより、噴射ヘッド上の複数のノズルアレイを選択的にプライミングすることができる。ガスケット102(
図15)は、噴射ヘッド20全体を密封するのに十分な周囲部106と、噴射ヘッド上の隣接するノズルアレイ間を密封するセパレータ108aおよび108bとを含む。ガスケット102内の開口部110a、110b、および110cは、噴射ヘッド20からベンチュリ管46への流体の流れを可能にする。本実施形態において、MPSV100は、ベンチュリ管46の吸引入口44に接続された出口側112を有する。MPSV100の反対側は、カートリッジ保持構造104に接続され、複数のノズルアレイをプライミングするための流体経路を提供する複数の吸引入口114、116、および118を有する。各吸引入口114、116、および118は、開口部110a、110b、および110cと流体連通したカートリッジ保持構造104内の関連する通路120、122、および124に対応する。
【0034】
したがって、MPSV100を操作またはプログラムしてガスケット102内の開口部110a、110b、または110cのうちのいずれか1つに吸引を提供してもよく、または開口部110a、110b、または110cのうちの2つまたはそれ以上に吸引を提供してもよい。例えば、噴射ヘッドが単一のノズルアレイを有する場合、MPSV100は、通路122および吸引入口116(
図16)を介してガスケット102の領域110bにのみ吸引を提供することができる。噴射ヘッドが2つのノズルアレイを有する場合、MPSV100を使用して、通路120、124および吸引入口114、118(
図17)を介してガスケットの領域110aおよび110cに吸引を提供することができる。2つのノズルアレイは、任意の順序で、同時に、または順番にプライミングすることができる。同様にして、噴射ヘッドが3つのノズルアレイを有する場合、MPSV100を使用して、ガスケット102の開口部110a、110b、110cおよびカートリッジ保持構造104内の通路120、122、124を使用することにより、ノズルアレイを任意の順序で、2つのノズルアレイの組み合わせで、または3つのノズルアレイをすべて同時に、順番にプライミングすることができる。
【0035】
図18に示した別の実施形態において、流体検出センサ125は、安価な流体に使用してもよい。本実施形態において、感知電極を有する流体検出センサ90(上述した)に似た流体検出センサ125をカートリッジ保持構造42または104に追加してもよい。ベンチュリ管46の動作によって噴射ヘッド20から流れる流体は、ガスケット102の1つまたはそれ以上の開口部110a~110cを充填し、感知電極間の回路を完成させることができる。1つまたはそれ以上のノズルアレイがプライミングされているかどうかを判断し、プライミングが検出されたときに動力流体を停止するために、ガスケット102の各開口部110a~110cを一組の電極と関連させることができる。
【0036】
プライミングシーケンスの間に噴射ヘッドから引き出された流体によってMPSVが汚染されるのを防ぐために、
図19に示すように、マルチポートソレノイドバルブ(MPSV)126を使用して、動力流体をベンチュリ管128、130および132に個別に、または組み合わせて提供することができる。本実施形態において、動力流体は、入口チューブ134を介してMPSV126に提供される。上述したように、複数のノズルアレイをプライミングするために、MPSV126をプラグラムしてベンチュリ管128、130、および132の入口136、138、および140に動力流体を提供し、それにより、フレキシブルチューブ142、144および146を介してカートリッジ保持構造104内の通路120、122、および124に吸引を提供することができる。プライミングが検出されると、MPSV126は、ロジックボード98で電子的に制御することができる。ノズルアレイを通過して噴射ヘッドから流れるいかなる流体も、ベンチュリ管128、130、および132にそれぞれ接続されたフレキシブルチューブ150、152、および154を介して液体収集タンク148に移動させることができる。
【0037】
図20に示した別の実施形態において、単一のベンチュリ管46を使用した簡易プライミングデバイス160を使用して、流体カートリッジの噴射ヘッドをプライミングしてもよい。ベンチュリ管46は、吸引入口44を含み、吸引入口44は、流体カートリッジ168の噴射ヘッド166を密封するように構成されたキャッピングデバイス164で終了するフレキシブルチューブ162に接続される。キャッピングデバイス164は、上述したシーリング材(図示せず)を含み、噴射ヘッド166の周囲を密封する成形プラスチックまたは金属構造であってもよい。動力流体は、フレキシブルチューブ170を介してベンチュリ管46の入口48に提供される。動力流体は、噴射ヘッド166から引き出された任意の流体とともにベンチュリ管を通過し、出口50およびフレキシブルチューブ172を介して廃棄エリアに、または上述した収集タンクに流れ出る。
【0038】
上述した実施形態のすべては、真空源が利用できないときに噴射ヘッドをプライミングするための効率的で有用な方法を提供する。これらのデバイスは、特に、予め充填された流体カートリッジを使用することができない様々なアプリケーションに使用されるピペット充填可能なカートリッジなどの使用者充填用カートリッジ上で噴射ヘッドをプライミングするために特に有用である。上述した様々な実施形態では、カートリッジ保持構造の外にベンチュリ管があることを想定しているが、
図4~
図5、
図7~
図8、および
図18に示した実施形態では、ベンチュリ管を少なくともカートリッジ保持構造に組み込んでもよいことが理解されるだろう。
【0039】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、他に示さない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される量、パーセンテージ、または割合、および他の数値を表わす全ての数字は、全ての場合において用語「約(about)」によって修飾されると理解されるべきである。したがって、特にそうではないことが示されない限り、前述の明細書および添付の実施形態の一覧に記載される数値パラメータは、本開示の教示を利用して当業者により得ることが求められる所望の特性に応じて変動し得る。最低限でも、また特許請求される実施形態の範囲への均等物の原則の適用を限定する試行としてではなく、各数値パラメータは少なくとも、報告された有効数字の数を考慮して、および通常の概算方法を適用することによって、解釈されるべきである。
【0040】
特定の実施形態を記述してきたが、現在予期しないか、または予期することができない代替、修飾形、変形、改良物、および実質的な相当物が、本出願者または他の当業者に思い浮かぶ可能性がある。したがって、出願した、および補正を行うことが可能な添付の特許請求の範囲にそのような代替、修飾形、変形、改良物、および実質的な相当物の全部を包含させることを意図する。