(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011463
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】水中油型乳化化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/34 20060101AFI20240118BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20240118BHJP
A61K 8/46 20060101ALI20240118BHJP
A61K 8/27 20060101ALI20240118BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20240118BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
A61K8/34
A61K8/06
A61K8/46
A61K8/27
A61K8/19
A61Q1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113439
(22)【出願日】2022-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】海老原 哲男
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB032
4C083AB211
4C083AB212
4C083AB241
4C083AB242
4C083AB432
4C083AC012
4C083AC071
4C083AC102
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC272
4C083AC302
4C083AC542
4C083AC791
4C083AC792
4C083AD022
4C083AD041
4C083AD042
4C083AD092
4C083AD152
4C083BB05
4C083CC11
4C083DD33
4C083EE01
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】使用時における多くの特性に同時に優れ、かつ、安定性に優れた水中油型乳化化粧料の提供。
【解決手段】(A)スルホン酸基を分子内に有するアニオン性界面活性剤、(B)高級アルコール、および(C)光沢剤を含む、水中油型乳化化粧料であって、
前記(A)成分が、下記式(I):
R1CO-X-(CH2)nSO3M1 (I)
で表されるアニオン性界面活性剤であり、
前記(B)成分が、炭素数20以上の高級アルコールと、炭素数18以下の高級アルコールとを含み、
前記(C)成分が、比重4.5以上の金属化合物粒子であり、
前記(C)成分の含有量が、前記水中油型乳化化粧料の全量に対して、0.01質量%以上である、
水中油型乳化化粧料を用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)スルホン酸基を分子内に有するアニオン性界面活性剤、
(B)高級アルコール、および
(C)光沢剤
を含む、水中油型乳化化粧料であって、
前記(A)成分が、下記式(I):
R1CO-X-(CH2)nSO3M1 (I)
(上記式(I)中、R1COは平均炭素原子10~22の飽和または不飽和の脂肪酸残基(アシル基)を示し、
-X-は-O-または-NR2-(ただし、R2は水素原子、または炭素数1~3のアルキル基を示す)を示し、
M1は水素原子、アルカリ金属類、アルカリ土塁金属類、アンモニウムまたは有機アミン類を示し、
nは1~3の整数を示す。)
で表されるアニオン性界面活性剤であり、
前記(B)成分が、炭素数20以上の高級アルコールと、炭素数18以下の高級アルコールとを含み、
前記(C)成分が、比重4.5以上の金属化合物粒子であり、
前記(C)成分の含有量が、前記水中油型乳化化粧料の全量に対して、0.01質量%以上である、
水中油型乳化化粧料。
【請求項2】
前記(C)成分の金属化合物粒子が、酸化亜鉛蛍光体、チタン酸マグネシウム蛍光体、リン酸カルシウムセリウム蛍光体、およびオキシ塩化ビスマスからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項3】
前記(C)成分の含有量が、前記水中油型乳化化粧料の全量に対して、0.05質量%以上10質量%以下である、請求項1に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項4】
前記(A)成分の含有量が、前記水中油型乳化化粧料の全量に対して、0.1質量%以上5.0質量%以下である、請求項1に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項5】
前記(A)成分が、ステアロイルメチルタウリン塩、ココイルメチルタウリン塩、およびラウロイルメチルタウリン塩からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項6】
前記炭素数20以上の高級アルコールの含有量が、前記水中油型乳化化粧料の全量に対して、0.1質量%以上10.0質量%以下であり、
前記炭素数18以下の高級アルコールの含有量が、前記水中油型乳化化粧料の全量に対して、0.1質量%以上5.0質量%以下である、請求項1に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項7】
(D)保湿剤をさらに含む、請求項1に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項8】
水分含有量が40質量%以上90質量%以下である、請求項1に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項9】
30℃における粘度が、2000mPa・s以上70000mPa・s以下である、請求項1~8のいずれか一項に記載の水中油型乳化化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型乳化化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、肌に塗布して肌の質感を高めるための各種水中油型乳化化粧料が検討されている。このような水中油型乳化化粧料には、使用時における様々な特性が求められている。また、水中油型乳化化粧料には、温度変化に対する安定性も求められている。
【0003】
例えば、特許文献1では、高温から低温まで幅広い温度域において安定性が良好で、べたつきがなく、肌上でのびを改善するために、(a)成分:平均アルキル鎖長18以上の高級アルコール、(b)成分:特定の一般式で表される長鎖アシルスルホン酸塩型陰イオン性界面活性剤、(c)成分:分子量400以下の極性油分、(d)成分:水を含むクリーム組成物が提案されている。これまでに、各種特性を満たすために種々の成分を配合することが検討されてきたが、さらなる特性の向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、水中油型乳化化粧料には目的に応じて、目的とする特性を改善すると、その他の特性とのバランスが取りにくくなり、すべての特性を同時に満足することが難しい。そのため、依然として、そのようなバランスをとりながら、多くの特性を同時に改善した水中油型乳化化粧料が望まれていた。
【0006】
本発明者らは、水中油型乳化化粧料に光沢剤として比重の重い粉末を配合した際に、粉末の沈降化を抑制する必要があった。粉末の沈降化を抑制するためには、高分子の増粘剤や高級アルコールの増量等で水中油型乳化化粧料の増粘させる手法が挙げられるが、使用時の多くの特性を同時に改善することは困難であるという課題を知見した。
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、特定の(A)スルホン酸基を分子内に有するアニオン性界面活性剤、特定の(B)高級アルコール、および特定の(C)光沢剤を同時に配合することで、上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1] (A)スルホン酸基を分子内に有するアニオン性界面活性剤、
(B)高級アルコール、および
(C)光沢剤
を含む、水中油型乳化化粧料であって、
前記(A)成分が、下記式(I):
R1CO-X-(CH2)nSO3M1 (I)
(上記式(I)中、R1COは平均炭素原子10~22の飽和または不飽和の脂肪酸残基(アシル基)を示し、
-X-は-O-または-NR2-(ただし、R2は水素原子、または炭素数1~3のアルキル基を示す)を示し、
M1は水素原子、アルカリ金属類、アルカリ土塁金属類、アンモニウムまたは有機アミン類を示し、
nは1~3の整数を示す。)
で表されるアニオン性界面活性剤であり、
前記(B)成分が、炭素数20以上の高級アルコールと、炭素数18以下の高級アルコールとを含み、
前記(C)成分が、比重4.5以上の金属化合物粒子であり、
前記(C)成分の含有量が、前記水中油型乳化化粧料の全量に対して、0.01質量%以上である、
水中油型乳化化粧料。
[2] 前記(C)成分の金属化合物粒子が、酸化亜鉛蛍光体、チタン酸マグネシウム蛍光体、リン酸カルシウムセリウム蛍光体、およびオキシ塩化ビスマスからなる群から選択される少なくとも1種である、[1]に記載の水中油型乳化化粧料。
[3] 前記(C)成分の含有量が、前記水中油型乳化化粧料の全量に対して、0.05質量%以上10質量%以下である、[1]または[2]に記載の水中油型乳化化粧料。
[4] 前記(A)成分の含有量が、前記水中油型乳化化粧料の全量に対して、0.1質量%以上5.0質量%以下である、[1]~[3]のいずれか一項に記載の水中油型乳化化粧料。
[5] 前記(A)成分が、ステアロイルメチルタウリン塩、ココイルメチルタウリン塩、およびラウロイルメチルタウリン塩からなる群より選択される少なくとも1種である、[1]~[4]のいずれかに記載の水中油型乳化化粧料。
[6] 前記炭素数20以上の高級アルコールの含有量が、前記水中油型乳化化粧料の全量に対して、0.1質量%以上10.0質量%以下であり、
前記炭素数18以下の高級アルコールの含有量が、前記水中油型乳化化粧料の全量に対して、0.1質量%以上5.0質量%以下である、[1]~[5]のいずれかに記載の水中油型乳化化粧料。
[7] (D)保湿剤をさらに含む、[1]~[6]のいずれかに記載の水中油型乳化化粧料。
[8] 水分含有量が40質量%以上90質量%以下である、[1]~[7]のいずれかに記載の水中油型乳化化粧料。
[9] 30℃における粘度が、2000mPa・s以上70000mPa・s以下である、[1]~[8]のいずれかに記載の水中油型乳化化粧料。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、使用時における多くの特性、具体的には、なめらかさ、しっとりさ、みずみずしさ、およびべたつきにくさに同時に優れ、かつ、経時安定性および高温安定性に優れた水中油型乳化化粧料が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[水中油型乳化化粧料]
本発明による水中油型乳化化粧料は、(A)スルホン酸基を分子内に有するアニオン性界面活性剤、(B)高級アルコール、および(C)光沢剤を必須成分として含むものである。本発明による水中油型乳化化粧料は、目的に応じて、(D)保湿剤、油性成分、水性溶媒、および他の成分をさらに含んでもよい。
【0011】
本発明による水中油型乳化化粧料においては、下記の特定の(A)スルホン酸基を分子内に有するアニオン性界面活性剤と、下記の特定の(B)高級アルコールとが水中で会合体を形成し、αゲル構造を維持することができる。このようなαゲル構造は、乳化安定性に優れ、肌への塗布後であっても乳化状態を維持し易い。そのため、使用中のなめらかさ、しっとりさ、みずみずしさ、およびべたつきにくさに同時に優れる。さらに、このようなαゲル構造は、下記の比較的重い(C)光沢剤の粉末の沈降を抑制でき、経時安定性および高温安定性に優れるものである。
【0012】
以下、本発明による水中油型乳化化粧料に含まれる各成分について詳細に説明する。
【0013】
((A)スルホン酸基を分子内に有するアニオン性界面活性剤)
(A)スルホン酸基を分子内に有するアニオン性界面活性剤とは、は、疎水性部分と親水性部分とを有する界面活性剤であって、その親水性部分にスルホン酸基を有するアニオン性界面活性剤である。スルホン酸基を分子内に有するアニオン性界面活性剤としては、下記式(I):
R1CO-X-(CH2)nSO3M1 (I)
(上記式(I)中、R1COは平均炭素原子10~22の飽和または不飽和の脂肪酸残基(アシル基)を示し、
-X-は-O-または-NR2-(ただし、R2は水素原子、または炭素数1~3のアルキル基を示す)を示し、
M1は水素原子、アルカリ金属類、アルカリ土塁金属類、アンモニウムまたは有機アミン類を示し、
nは1~3の整数を示す。)
で表されるアニオン性界面活性剤を用いる。スルホン酸基を分子内に有するアニオン性界面活性剤は、1種単独で用いてもよいし、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
上記式(I)中、R1COの平均炭素数は、好ましくは12~22であり、より好ましくは14~20である。
上記式(I)中、-X-は、好ましくは-NR2-であり、R2は好ましくは炭素数1~3のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。
上記式(I)中、M1は、好ましくはアルカリ金属類であり、より好ましくはナトリウムである。
【0015】
上記式(I)で表される(A)スルホン酸基を分子内に有するアニオン性界面活性剤の好ましい具体例としては、ステアロイルメチルタウリン塩、ココイルメチルタウリン塩、およびラウロイルメチルタウリン塩等が挙げられる。これらの中でも、ステアロイルメチルタウリン塩がより好ましく、ステアロイルメチルタウリンナトリウムがさらに好ましい。
【0016】
上記式(I)で表される(A)スルホン酸基を分子内に有するアニオン性界面活性剤として市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、NIKKOL SMT(ステアロイルメチルタウリンナトリウム、日光ケミカルズ株式会社製)、NIKKOL LMT(ラウロイルメチルタウリンナトリウム、日光ケミカルズ株式会社製)、NIKKOL CMT-30(ココイルメチルタウリンナトリウム、日光ケミカルズ株式会社製)等が例示できる。
【0017】
上記式(I)で表される(A)スルホン酸基を分子内に有するアニオン性界面活性剤の含有量は、水中油型乳化化粧料の全量に対して、好ましくは0.1質量%以上5.0質量%以下であり、より好ましくは0.15質量%以上4.0質量%以下であり、さらに好ましくは0.2質量%以上3.0質量%以下である。上記式(I)で表される(A)スルホン酸基を分子内に有するアニオン性界面活性剤の含有量が上記数値範囲内であれば、使用中のなめらかさ、しっとりさ、みずみずしさ、およびべたつきにくさを向上させ易く、かつ、経時安定性および高温安定性を向上させ易い。
【0018】
((B)高級アルコール)
(B)高級アルコールとしては、炭素数20以上の高級アルコールと、炭素数18以下の高級アルコールとを用いる。高級アルコールは直鎖状又は分岐鎖状の、飽和又は不飽和の一価アルコールを含む。炭素数20以上の高級アルコールとしては、好ましくは炭素数20以上34以下の高級アルコールであり、例えば、ベヘニルアルコール、セリルアルコール、セトステアリルアルコール、バチルアルコール、および2-デシルテトラデシノール等が挙げられる。炭素数20以上の高級アルコールは、1種単独で用いてもよいし、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、炭素数18以下の高級アルコールとしては、好ましくは炭素数10以上18以下の高級アルコールであり、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール、およびエライジルアルコール等が挙げられる。炭素数18以下の高級アルコールは、1種単独で用いてもよいし、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、炭素数20以上の高級アルコールとしてベヘニルアルコールと、炭素数18以下の高級アルコールとしてステアリルアルコールとの組み合わせが好ましい。
【0019】
上記炭素数20以上の高級アルコールの含有量は、水中油型乳化化粧料の全量に対して、好ましくは0.1質量%以上10.0質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以上7.0質量%以下であり、さらに好ましくは1.0質量%以上5.0質量%以下である。上記炭素数18以下の高級アルコールの含有量は、水中油型乳化化粧料の全量に対して、好ましくは0.1質量%以上5.0質量%以下であり、より好ましくは0.2質量%以上3.0質量%以下であり、より好ましくは0.3質量%以上2.0質量%以下である。また、上記炭素数20以上の高級アルコールの含有量の上記炭素数18以下の高級アルコールの含有量に対する比は、好ましくは1.5以上5.0以下であり、より好ましくは2.0以上4.5以下であり、さらに好ましくは2.5以上4.0以下である。(B)高級アルコールの含有量が上記数値範囲内であれば、使用中のなめらかさ、しっとりさ、みずみずしさ、およびべたつきにくさを向上させ易く、かつ、経時安定性および高温安定性を向上させ易い。
【0020】
((C)光沢剤)
(C)光沢剤としては、下記の比重を満たす金属化合物粒子を用いる。金属化合物粒子は、1種単独で用いてもよいし、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
金属化合物粒子の比重の下限値は、4.5以上であり、好ましく5.0以上であり、より好ましくは5.3以上であり、さらに好ましくは5.6以上であり、また、比重の上限値は特に限定されないが、好ましくは10以下であり、より好ましくは9.5以下であり、さらに好ましくは9.0以下であり、さらにより好ましくは8.5以下であり、特に好ましくは8.0以下である。
【0022】
上記の比重を満たす金属化合物粒子は、光沢剤として比較的重い成分であるため沈降し易いが、本発明の水中油型乳化化粧料においては、αゲル中に留めることで、経時的な沈降を抑制し、さらには高温下での安定性を向上させることができる。
【0023】
上記の比重を満たす金属化合物粒子としては、酸化亜鉛蛍光体、チタン酸マグネシウム蛍光体、リン酸カルシウムセリウム蛍光体、およびオキシ塩化ビスマス等が挙げられる。これらの中でも、オキシ塩化ビスマスおよび酸化亜鉛蛍光体が好ましい。なお、酸化亜鉛蛍光体は、例えば、特開2019-167330号公報に記載される方法により合成できる。本発明においては、少量でも肌の明るさ(トーンアップ効果)を向上できるため、オキシ塩化ビスマスからなる粉末を用いることが好ましい。
【0024】
上記の比重を満たす金属化合物粒子の平均粒子径は特に限定されないが、以下の値を有するものが好ましい。金属化合物粒子の平均粒子径の下限値は、好ましくは0.1μm以上であり、より好ましくは1.0μm以上であり、さらに好ましくは2.0μm以上であり、さらにより好ましくは3.0μm以上であり、特に好ましくは4.0μm以上であり、最も好ましくは5.0μm以上であり、また、平均粒子径の上限値は特に限定されないが、好ましくは300μm以下であり、より好ましくは200μm以下であり、さらに好ましくは150μm以下であり、さらにより好ましくは100μm以下であり、特に好ましくは50μm以下である。
なお、金属化合物粒子の形状は特に限定されるものではなく、球状、針状、板状などのいずれのものでもよい。
本発明における「平均粒子径」とは、例えば、粒度分布測定装置(マイクロトラック社製のHRA)を用いて測定することができる。
【0025】
(C)光沢剤の含有量は、水中油型乳化化粧料の全量に対して、0.01質量%以上であり、好ましくは0.05質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは0.07質量%以上7.0質量%以下であり、さらに好ましくは0.1質量%以上5.0質量%以下である。(C)光沢剤の含有量が上記数値範囲内であれば、使用中のなめらかさ、しっとりさ、みずみずしさ、およびべたつきにくさを向上させ易く、かつ、経時安定性および高温安定性を向上させ易い。
【0026】
((D)保湿剤)
保湿剤としては、特に限定されず、化粧料用として従来公知の保湿剤を用いることができる。このような保湿剤としては、例えば、多価アルコールやグリコールエーテル、より具体的には、グリセリン、プロパンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、イソプレングリコール、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、ジグリセリン(EO)PO付加物等が挙げられる。これらの保湿剤は、1種単独で用いてもよいし、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
保湿剤の含有量は、水中油型乳化化粧料の全量に対して、好ましくは1質量%以上30質量%以下であり、より好ましくは2質量%以上25質量%以下であり、さらに好ましくは3質量%以上20質量%以下である。
【0028】
(油性成分)
油性成分としては、例えば、合成エステル油、液体油脂、固体油脂、ロウ、炭化水素、高級脂肪酸等を用いることができる。これらの油性成分は、1種単独で用いてもよいし、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
合成エステル油としては、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12-ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、アセトグリセライド、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘ
キシルデシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸2-エチルヘキシル、クエン酸トリエチル等が挙げられる。
【0030】
液体油脂としては、例えば、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン等が挙げられる。
【0031】
固体油脂としては、例えば、カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化油、牛脚脂、モクロウ、硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0032】
ロウ類としては、例えば、ミツロウ、キャンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル等が挙げられる。
【0033】
炭化水素油としては、例えば、流動パラフィン、オゾケライト、スクワラン、プリスタン、パラフィン、セレシン、スクワレン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。
【0034】
高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、ウンデシレン酸、トール酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)等が挙げられる。
【0035】
油性成分の含有量は、水中油型乳化化粧料の全量に対して、1質量%以上40質量%以下であり、より好ましくは2質量%以上30質量%以下であり、さらに好ましくは3質量%以上20質量%以下である。油性成分の含有量が上記数値範囲内であれば、水中油型乳化化粧料を使用中のなめらかさ、しっとりさ、みずみずしさ、およびべたつきにくさに同時に優れたものとなる。
【0036】
(水性溶媒)
水性溶媒としては、特に限定されず、従来公知の水性溶媒を用いることができる。水性溶媒としては、例えば、水、アルコール、またはこれらの混合物を挙げることができる。
【0037】
水としては、化粧料に使用される水を用いることができ、例えば、精製水、イオン交換水、水道水等を用いることができる。
【0038】
アルコールとしては、例えば、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、イソブチルアルコール、t-ブチルアルコール等の低級アルコールを用いることができる。
【0039】
水性溶媒の含有量は、特に限定されず、他の成分の含有量に応じて、適宜、調節することができる。例えば、水中油型乳化化粧料中の水分含有量は、好ましくは40質量%以上90質量%以下であり、より好ましくは45質量%以上85質量%以下であり、さらに好ましくは50質量%以上80質量%以下である。
【0040】
(他の成分)
本発明による水中油型乳化化粧料は、本発明の効果を損なわない範囲で、水中油型乳化化粧料に配合可能な他の成分を含むことができる。そのような他の成分としては、中和剤、増粘剤、pH調整剤、キレート剤、防腐剤、分散剤、酸化防止剤、安定化剤、界面活性剤、色剤、香料等が挙げられる。これらの成分は、水中油型乳化化粧料の剤形に応じて適宜配合することができる。
【0041】
本発明による水中油型乳化化粧料は、常法に従って製造することができる。例えば、水性成分に油性成分の少なくとも一部を加えてホモミキサー等で乳化処理を行う。続いて、これに残りの油性成分を添加し、撹拌混合することにより、調製することができる。
【0042】
本発明による水中油型乳化化粧料の30℃における粘度は、特に限定されないが、好ましくは2000mPa・s以上70000mPa・s以下であり、より好ましくは4000mPa・s以上50000mPa・s以下であり、さらに好ましくは7000mPa・s以上30000mPa・s以下である。なお、30℃における粘度は、市販のBH型粘度計を用いて、ローターNo.3を用い、回転数12rpmの条件で測定した値である。
【0043】
(用途)
本発明による水中油型乳化化粧料は、例えば、化粧水、美容液、乳液、およびクリーム等の化粧品として好適に用いることができる。
【実施例0044】
以下の例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。配合量は特記しない限り、質量%で示す。
【0045】
(光沢剤の一覧)
実施例、比較例で用いた光沢剤の一覧を下記に示す。
・(C1)オキシ塩化ビスマス(EMD chemicals Inc.社製、商品名:RonaFlair LF-2000):平均粒子径5~20μm
・(C2)酸化亜鉛蛍光体(堺化学工業株式会社製、商品名Lumate G):平均粒子径1~5μm
・マイカと酸化チタンの混合粉末(BASF社製、商品名:Timica Soft Luster White 6500):平均粒子径2~11μm
なお、一般的な金属の比重の参考値(参考比重)は、酸化亜鉛は5.5~5.8であり、オキシ塩化ビスマスは7.7であり、マイカは、2.7~3.0であり、酸化チタンはルチル型が3.6~4.3であり、アナターゼ型が3.8~4.0である。
また、各金属化合物粒子の平均粒子径は、粒度分布測定装置(マイクロトラック社製のHRA)を用いて、測定した値である。
【0046】
[実施例1~7、比較例1~5]
<水中油型乳化化粧料の調製>
表1に示される配合で、各実施例および比較例の水中油型乳化化粧料を調製した。なお、表1中の各成分の配合率は質量%である。
【0047】
<水中油型乳化化粧料の物性評価>
[粘度]
上記で調製した水中油型乳化化粧料について、製造1時間後に、BH型粘度計Anton Paar社製、型番:ViscoQC 100-Lにより、ローターNo.3を用い、回転数12rpmの条件で、30℃における粘度(mPa・s)を測定した。測定結果を表2に示した。
【0048】
<水中油型乳化化粧料の使用性評価>
[使用性]
上記で調製した水中油型乳化化粧料の使用性について、なめらかさ、しっとりさ、みずみずしさ、およびべたつきにくさの評価を、下記の方法および基準に従って行った。
(評価方法)
30代~40代の女性で官能評価の訓練を受け、一定の基準で評価が可能な専門パネルを3名選定した。3名の専門パネルが、各水中油型乳化化粧料を、それぞれ肌に使用し、使用後のなめらかさ、しっとりさ、みずみずしさ、およびべたつきにくさを、下記の基準で評価した。評価結果を表2に示す。評価結果が、A~C評価であれば、合格であり、D評価が1つ以上あれば、不合格である。
(なめらかさの評価基準)
A:なめらかさを強く感じた。
B:なめらかさを感じた。
C:なめらかさをやや感じた。
D:なめらかさを感じにくかった。
E:なめらかさを全く感じなかった。
(しっとりさの評価基準)
A:しっとりさを強く感じた。
B:しっとりさを感じた。
C:しっとりさをやや感じた。
D:しっとりさを感じにくかった。
E:しっとりさを全く感じなかった。
(みずみずしさの評価基準)
A:みずみずしさを強く感じた。
B:みずみずしさを感じた。
C:みずみずしさをやや感じた。
D:みずみずしさを感じにくかった。
E:みずみずしさを全く感じなかった。
(べたつきにくさの評価基準)
A:べたつきを全く感じなかった。
B:べたつきを感じにくかった。
C:べたつきをやや感じた。
D:べたつきを感じた。
E:べたつきを強く感じた。
【0049】
[肌の明るさ]
30代~40代の女性で官能評価の訓練を受け、一定の基準で評価が可能な専門パネルを3名選定した。3名の専門パネルが、各水中油型乳化化粧料を、それぞれ肌に使用し、使用後の肌の明るさ(トーンアップ効果)を1~5の5段階で評価した。評価結果を表2に示す。数値が大きいほど、トーンアップ効果が高いことを示す。
【0050】
<水中油型乳化化粧料の安定性評価>
上記で調製した水中油型乳化化粧料の安定性の評価を下記の方法および基準に従って行った。
[経時安定性]
(評価方法)
上記で調製した水中油型乳化化粧料80gを、ガラス瓶(マルエム社製:スクリュー管No.8)中に入れ、25℃、暗所の条件で30日間、静置した。その後、水中油型乳化化粧料中の光沢剤(粉末)が沈降しているか否かを目視にて確認し、下記の基準で評価した。評価結果を表2に示す。
(評価基準)
○:粉末が沈降していなかった。
×:粉末が沈降していた。
【0051】
[高温安定性]
(評価方法)
上記で調製した水中油型乳化化粧料80gを、ガラス瓶(マルエム社製:スクリュー管No.8)中に入れ、50℃、暗所の条件で30日間、静置した。その後、水中油型乳化化粧料のαゲルの状態を目視にて確認し、下記の基準で評価した。評価結果を表2に示す。
(評価基準)
○:水中油型乳化化粧料のαゲルの状態が維持されていた。
×:水中油型乳化化粧料のαゲルの状態が維持されていなかった。
【0052】
【0053】
【0054】
上記の結果から、本発明による水中油型乳化化粧料は、いずれも使用時における多くの特性、具体的には、なめらかさ、しっとりさ、みずみずしさ、およびべたつきにくさに同時に優れ、かつ、経時安定性および高温安定性に優れることがわかる。また、本発明による水中油型乳化化粧料は、いずれも製造1時間後の粘度が化粧品として好適な範囲内であった。
【0055】
また、比較例の結果を併せて考えると、本発明による水中油型乳化化粧料においては、特定の(A)スルホン酸基を分子内に有するアニオン性界面活性剤、特定の(B)高級アルコール、および特定の(C)光沢剤を同時に配合することで、上記の使用性および安定性について優れた効果を達成していることがわかる。さらに、本発明による水中油型乳化化粧料は、(C)光沢剤としてオキシ塩化ビスマスを用いることで、肌の明るさ(トーンアップ効果)を向上できることがわかる。