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特開2024-114631細胞外小胞/エクソソーム保存溶液及びその混合溶液
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  • 特開-細胞外小胞/エクソソーム保存溶液及びその混合溶液 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114631
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】細胞外小胞/エクソソーム保存溶液及びその混合溶液
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/07 20100101AFI20240816BHJP
【FI】
C12N5/07
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024011383
(22)【出願日】2024-01-29
(31)【優先権主張番号】63/484,232
(32)【優先日】2023-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】509248615
【氏名又は名称】中国▲医▼薬大学
【氏名又は名称原語表記】CHINA MEDICAL UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100185694
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 隆志
(72)【発明者】
【氏名】陳怡文
(72)【発明者】
【氏名】謝明佑
(72)【発明者】
【氏名】陳曄
(72)【発明者】
【氏名】周▲徳▼陽
(72)【発明者】
【氏名】邱紹智
(72)【発明者】
【氏名】林▲彦▼宏
(72)【発明者】
【氏名】甘▲カイ▼▲ウェン▼
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AC20
4B065BA30
4B065BD12
4B065BD33
4B065BD36
4B065BD50
4B065CA44
(57)【要約】
【課題】細胞外小胞/エクソソームは、精製後に保存が容易ではなく且つ分解し易い問題を克服する細胞外小胞/エクソソーム保存溶液及びその混合溶液を提供する。
【解決手段】
細胞外小胞/エクソソームの保存溶液は、ポリソルベート80、スクロース(Sucrose)及びポリエチレングリコール3350/4000(Polyethylene Glycol 3350/4000,PEG-3350/4000)からなる群から選択されるキャリア溶剤と、塩類、アミノ酸及びアミノ酸塩類からなる群から選択される安定化剤と、を含み、前記保存混合溶液のpH値が5~7.4である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリソルベート80(Polysorbate 80, Tween 80)、スクロース(Sucrose)及びポリエチレングリコール3350/4000(Polyethylene Glycol 3350/4000,PEG-3350/4000)からなる群から選択されるキャリア溶剤と、
塩類、アミノ酸及びアミノ酸塩類からなる群から選択される安定化剤と、
を含み、
pH値が5~7.4である、細胞外小胞/エクソソームを保存するための保存溶液。
【請求項2】
前記塩類は、酢酸ナトリウム(Sodium acetate)または塩化ナトリウム(Sodium chloride)である請求項1に記載の保存溶液。
【請求項3】
前記アミノ酸は、ヒスチジン(Histidine)、アルギニン(Arginine)及びグリシン(Glycine)からなる群より選択され、前記アミノ酸の重量パーセント濃度は、前記保存溶液の総体積の0.5~3である請求項1に記載の保存溶液。
【請求項4】
前記アミノ酸塩類は、ヒスチジン塩酸塩(Histidine Hydrochloride)、アルギニン塩酸塩(Arginine Hydrochloride)及びグリシン塩酸塩(Glycine hydrochloride)からなる群より選択され、前記アミノ酸塩類の重量パーセント濃度は、前記保存溶液の総体積の0.05~0.25である請求項1に記載の保存溶液。
【請求項5】
前記ポリソルベート80(Polysorbate 80, Tween 80)の重量パーセント濃度は、前記保存溶液の総体積の0.01~0.03であり、前記スクロース(Sucrose)の重量パーセント濃度は、前記保存溶液の総体積の5~10である請求項1~4に記載の保存溶液。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の保存溶液を含み、
細胞外小胞/エクソソームを保存溶液に添加して保存混合溶液を形成するステップと、
前記保存混合溶液を徐々に降温させ、冷凍保存環境に置いて保存するステップと、
を含む、細胞外小胞/エクソソームを保存するための保存方法。
【請求項7】
前記冷凍保存環境の温度は、-20℃または-80℃である請求項6に記載の保存方法。
【請求項8】
前記保存混合溶液を形成した後に先に水切り乾燥して水切り乾燥保存サンプルを形成し、前記水切り乾燥保存サンプルを前記冷凍保存環境下に置いて保存する請求項6又は7に記載の保存方法。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか一項に記載の保存溶液と、細胞外小胞/エクソソームとを含む、混合溶液。
【請求項10】
前記細胞外小胞/エクソソームは、前記保存混合溶液において、1ミリリットル当たり1011~1013個の細胞数である請求項9に記載の混合溶液。
【請求項11】
前記細胞外小胞/エクソソームは、特異性を有するタンパク質によって改質された改質細胞外小胞である請求項9に記載の混合溶液。
【請求項12】
前記細胞外小胞/エクソソームは、薬物が搭載されている請求項9~11のいずれか1項に記載の混合溶液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保存溶液、特に冷凍環境下で細胞外小胞/エクソソームを長期間保存可能な保存液の配合及びその保存方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞外小胞/エクソソームは、精製後に保存が容易ではなく且つ分解し易いため、前記細胞外小胞/前記エクソソームは往々にして毎回の使用の必要量に応じて精製を行うことしかできなくなっており、更に改質又は薬剤の結合の応用に合わせる場合、全体の時間が長くなり、産業化に向けた発展が困難になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
細胞外小胞/エクソソームは、精製後に保存が容易ではなく且つ分解し易い問題を克服する細胞外小胞/エクソソーム保存溶液及びその混合溶液を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
細胞外小胞/エクソソームは、精製後に保存が容易ではなく且つ分解し易い問題を克服するため、本発明が提供する細胞外小胞/エクソソームの保存溶液は、ポリソルベート80(Polysorbate 80, Tween 80)、スクロース(Sucrose)及びポリエチレングリコール3350/4000(Polyethylene Glycol 3350/4000,PEG-3350/4000)からなる群から選択されるキャリア溶剤と、塩類、アミノ酸及びアミノ酸塩類からなる群から選択される安定化剤と、を含み、前記保存混合溶液のpH値が5~7.4である。
【0005】
前記保存溶液において、前記塩類は、酢酸ナトリウム(Sodium acetate)または塩化ナトリウム(Sodium chloride)であり、前記塩類の重量パーセント濃度は、前記保存溶液の総体積の0.1~2である。
【0006】
前記保存溶液において、前記アミノ酸は、ヒスチジン(Histidine)、アルギニン(Arginine)及びグリシン(Glycine)からなる群より選択され、前記アミノ酸の重量パーセント濃度は、前記保存溶液の総体積の0.5~3である。
【0007】
前記保存溶液において、前記アミノ酸塩類は、ヒスチジン塩酸塩(Histidine Hydrochloride)、アルギニン塩酸塩(Arginine Hydrochloride)及びグリシン塩酸塩(Glycine hydrochloride)からなる群より選択され、前記アミノ酸塩類の重量パーセント濃度は、前記保存溶液の総体積の0.05~0.25である。
【0008】
前記保存溶液において、前記ポリソルベート80(Polysorbate 80, Tween 80)の重量パーセント濃度は、前記保存溶液の総体積の0.01~0.03であり、前記スクロース(Sucrose)の重量パーセント濃度は、前記保存溶液の総体積の5~10であり、前記ポリエチレングリコール3350/4000(Polyethylene Glycol 3350/4000,PEG-3350/4000)の重量パーセント濃度は、前記保存溶液の総体積の1~5である。
【0009】
本発明は、更に、
細胞外小胞/エクソソームを保存溶液に添加して保存混合溶液を形成するステップと、
前記保存混合溶液を徐々に降温させ、冷凍保存環境に置いて保存するステップと、
を含む、細胞外小胞/エクソソームを保存するための保存方法を提供する。
【0010】
前記保存方法において、前記冷凍保存環境の温度は、-20℃または-80℃である。
【0011】
前記保存方法において、前記保存混合溶液を形成した後に先に水切り乾燥して水切り乾燥保存サンプルを形成し、前記水切り乾燥保存サンプルを前記冷凍保存環境下に置いて保存する。
【0012】
本発明は、更に、保存溶液と、細胞外小胞/エクソソームとを含む、混合溶液を提供する。
【0013】
前記混合溶液において、前記細胞外小胞/エクソソームは、前記保存混合溶液において、1ミリリットル当たり1011~1013個の細胞数である。
【0014】
前記混合溶液において、前記細胞外小胞/エクソソームは、特異性を有するタンパク質によって改質された改質細胞外小胞である。
【0015】
前記混合溶液において、前記細胞外小胞/エクソソームは、薬物が搭載されている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によって提供される保存溶液は、前記キャリア溶剤及び安定化剤の選択によって、異なるタイプの前記細胞外小胞/エクソソームに応じて適合する保存条件及びpHを設定し、前記冷凍環境条件下で長時間保存することができる。
【0017】
また、前記保存溶液は、異なる保存環境において、前記細胞外小胞/エクソソームを保存することができ、製品の商業化の発展を補助することができる。
【0018】
本発明は、保存溶液の構成により、必要に応じて特定の液体保存または乾燥保存の形態で冷凍保存することができ、細胞外小胞/エクソソームに長時間の保存を達成させることができ、解凍して再利用する時、一定の反応効果を維持し、医療産業の研究開発及び応用を補助し、時間コストと商業価値を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明が提供する調製方法の第1好適実施例のステップのブロック図である。
図2】本発明が提供する第1好適実施例の細胞外小胞の濃度試験図である。
図3】本発明が提供する第1好適実施例の細胞外小胞のマーカータンパク質の発現図である。
図4】本発明が提供する調製方法の第2好適実施例のステップのブロック図である。
図5】本発明が提供する第2好適実施例の細胞外小胞の濃度試験図である。
図6】本発明が提供する第2好適実施例の細胞外小胞のマーカータンパク質の発現図である。
図7】本発明が提供する第2好適実施例の細胞外小胞のサイズ分析図である。
図8】本発明が提供する好適実施例の細胞外小胞の薬物搭載分析図である。
図9】本発明が提供する好適実施例の細胞外小胞の細胞毒性効果の第1試験図である。
図10】本発明が提供する好適実施例の細胞外小胞の細胞毒性効果の第2試験図である。
図11】本発明が提供する好適実施例の細胞外小胞の長期冷凍保存の濃度試験図である。
図12】本発明が提供する好適実施例の細胞外小胞の長期冷凍保存の細胞毒性効果の第1試験図である。
図13】本発明が提供する好適実施例の細胞外小胞の長期冷凍保存の細胞毒性効果の第2試験図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、水、キャリア溶剤及び安定化剤を含む細胞外小胞/エクソソームを保存するための保存溶液を提供し、前記保存溶液のpH値は、5~7.4である。前記キャリア溶剤は、ポリソルベート80(Polysorbate 80, Tween 80)、スクロース(Sucrose)及びポリエチレングリコール3350/4000(Polyethylene Glycol 3350/4000,PEG-3350/4000)からなる群から選択される。前記安定化剤は、前記細胞外小胞/エクソソームが前記保存溶液に混合される時の生物活性を安定させ、異なる保存環境に適応させる。
【0021】
好ましくは、前記安定化剤は、アミノ酸又はアミノ酸類からなる塩類を含む。更に好ましくは、前記安定化剤は、ヒスチジン(Histidine)、アルギニン(Arginine)、グリシン(Glycine)、ヒスチジン塩酸塩(Histidine Hydrochloride)、アルギニン塩酸塩(Arginine Hydrochloride)及びグリシン塩酸塩(Glycine hydrochloride)からなる群から選択される。
【0022】
好ましくは、前記安定化剤は、前記保存溶液のpH値環境を安定させるための塩類を含む。好ましくは、前記塩類は、酢酸ナトリウム(Sodium acetate)または塩化ナトリウム(Sodium chloride)である。
【0023】
ここで、前記ポリソルベート80(Polysorbate 80, Tween 80)の重量パーセント濃度は、前記保存溶液の総体積の0.01~0.03である。前記スクロース(Sucrose)の重量パーセント濃度は、前記保存溶液の総体積の5~10である。
【0024】
前記アミノ酸の重量パーセント濃度は、前記保存溶液の総体積の0.5~3である。前記アミノ酸塩類の重量パーセント濃度は、前記保存溶液の総体積の0.05~0.25である。
【0025】
前記塩類は、前記保存溶液の前記pH値の要求に応じて前記保存溶液に添加する量を調整する。
【0026】
更に、本発明は、冷凍保存をそれぞれ行って前記細胞外小胞/エクソソームを保存する実施例1、実施例2及び実施例3をそれぞれ提供する。前記冷凍保存は、液体保存又は乾燥保存であってよい。ここで、現在一般的に使用されている緩衝溶液であるリン酸塩緩衝生理食塩水(Phosphate buffered saline, PBS)と現在一般的に使用されている前記細胞外小胞・エクソソームを保存するためのジメチルスルホキシド(Dimethyl sulfoxide,DMSO)溶液をそれぞれ比較例1及び比較例2とする。
【0027】
各比較例及び各実施例に添加した細胞外小胞の濃度に基づいて、各比較例及び各実施例における前記細胞外小胞の数をナノ粒子追跡分析装置(Nanoparticle Tracking Analysis)により比較し、各比較例及び各実施例における前記細胞外小胞の残存濃度パーセントとして算出した。更に、前記冷凍保存後の各比較例及び各実施例における前記細胞外小胞の残存濃度パーセントを比較して、各比較例及び各実施例における前記細胞外小胞の分解速度を評価し、前記冷凍保存における前記保存溶液の保存効果を検証した。
【0028】
実施例1、実施例2及び実施例3は、それぞれ、前記キャリア溶剤及び前記安定化剤を添加し、pH値が適切な範囲にあることを確認した後、前記保存溶液の最終必要体積まで補水した。実施例1、実施例2及び実施例3の配合は、それぞれ表1~表3に示すとおりである。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
【表3】
【0032】
実験1は、図1図3を参照し、前記保存溶液を用いて細胞外小胞/エクソソームに対して液体保存によって前記冷凍保存方法を行っており、そのステップは、以下を含む。
【0033】
S1、前記保存溶液を調製する。本発明は、上記の表1~表3を以降の実施例とし、表1~表3の成分を混合してそれぞれ実施例1、実施例2及び実施例3を形成する。
【0034】
S2、保存混合溶液を形成する。前記細胞外小胞/エクソソームを前記保存溶液に加えて保存混合溶液を形成する。
【0035】
ここで、前記保存混合溶液、PBS及びDMSOにおける前記細胞外小胞/エクソソームの濃度は、1ミリリットル当たり1011~1013個の細胞数であることが好ましい。
【0036】
本実施形態では、前記細胞外小胞は、一般的な抽出技術によって得られる。ここで、前記細胞外小胞/エクソソームは、従来の細胞工程により作製される特異性を有するタンパク質によって改質された改質細胞外小胞であってよい。前記細胞外小胞/エクソソームまたは前記改質細胞外小胞は、従来の細胞工程を経た後に薬物をコーティング/搭載したものであってもよい。
【0037】
S3、段階的に降温する。段階的降温の技術で前記保存混合溶液を徐々に降温し、前記保存混合溶液を冷凍保存環境に置いて保存する。ここで、前記段階的降温の降温速度は、毎分0.5~2℃である。
【0038】
ここで、前記冷凍保存環境の温度は、-20℃又は-80℃であってよい。
【0039】
ここで、前記冷凍保管環境の温度は、-80℃を例とし、前記段階降温は、室温で前記保存混合溶液を完成させた後、順にそれぞれ-4℃及び-20℃に静置し、最後に-80℃の前記保存環境に保存した。
【0040】
次に、図2を参照し、前記細胞外小胞がそれぞれ前記比較例1、比較例2、実施例1、実施例2及び実施例3と混合した後、前記冷凍保存環境に置く前(D0)、及び前記冷凍保存環境で1週間(W1)、2週間(W2)、3週間(W3)、4週間(W4)保存した後に前記細胞外小胞の濃度試験を実施し、前記細胞外小胞の前記冷凍環境下における各比較例及び各実施例の残存濃度を対比し、各前記実施例の前記冷凍環境における細胞外小胞の保存の効果を評価した。
【0041】
図2から、前記細胞外小胞が前記比較例1及び前記比較例2で前記冷凍保存前にすでに多量の分解現象を発生しているが、実施例1、実施例2及び実施例3はいずれも、前記細胞外小胞の優れた冷凍保存効果を示していることが分かる。特に、4週間後(W4)、実施例1の前記細胞外小胞の濃度は、依然として元の濃度の85%以上を維持できており、実施例2及び3の前記細胞外小胞の濃度は80~85%に維持できている。
【0042】
次に、図3を参照し、さらに、それぞれ前記細胞外小胞の従来のマーカータンパク質CD9及びCD81に目立つマークが結び付けられ、比較例2及び各実施例の冷凍保存4週間を経た後に生存する前記細胞外小胞が生物活性を有するかを検査し、実施例1、実施例2及び実施例3の冷凍保存後の前記細胞外小胞の適用可能性を検証した。ここで、実施例1、実施例2及び実施例3における前記マーカータンパク質CD9の検出結果から明らかであるように、実施例1、実施例2及び実施例3の前記細胞外小胞の冷凍保存後に前記細胞外小胞の生物活性に影響を及ぼさず、後続の使用に有利であることが実証されている。
【0043】
実験2は、図4図6を参照し、前記保存溶液を用いて細胞外小胞/エクソソームを乾燥保存して前記冷凍保存方法を行い、前述の実験1との違いは、前記保存混合溶液を形成し、且つ段階的降温を行った後にステップS4を行い、水切り乾燥並びに冷凍保存した点である。前記保存混合溶液を水切り乾燥して水切り乾燥保存サンプルを形成し、前記水切り乾燥保存サンプルを-80℃の環境に置いて保存した。
【0044】
次に、図5を参照し、本発明は、比較例2と各実施例の前記保存混合溶液及び前記水切り乾燥保存サンプルをそれぞれ-80℃の前記冷凍環境に保存して前記冷凍保存を4週間行って、前記細胞外小胞の残存濃度を比較し、各実施例における液体保存及び乾燥保存時の前記冷凍保存方法の前記細胞外小胞の保存に対する影響を比較した。
【0045】
比較例2では、DMSOを介して前記乾燥保存を行った後の前記細胞外小胞が前記液体保存に比較して明らかに多量の分解を生じるが、実施例1~3で提供される保存溶液を用いて冷凍保存を行った場合、前記細胞外小胞が何れも優れた保存効果を得られることが分かる。なお、前記液体保存方法又は前記乾燥方法によって前記細胞外小胞の保存効果には顕著な差異がなかった。
【0046】
同様に、図6では、更に、それぞれ前記細胞外小胞のマーカータンパク質CD9及びCD81に目立つマークが結び付けられ、比較例2及び各実施例が前記乾燥保存を4週間行った後に生存する前記細胞外小胞が生物活性を有するかを検査し、実施例1、実施例2及び実施例3の冷凍保存後の前記細胞外小胞の適用可能性を検証した。ここで、実施例1、実施例2及び実施例3における前記マーカータンパク質CD9の検出結果から明らかであるように、実施例1、実施例2及び実施例3の前記細胞外小胞の冷凍保存後に前記細胞外小胞の生物活性に影響を及ぼさず、前述の実験結果と互いに呼応することが実証されている。
【0047】
更に図7において、前記比較例2及び前記実施例1、実施例2及び実施例3によって乾燥保存した後の各前記細胞外小胞のサイズを比較分析し、前記細胞外小胞の生理的形態が前記保存溶液及び前記冷凍保存の方法の影響を受けないことを確認した。図から分かるように、前記比較例及び各前記実施例の冷凍保存後の各前記細胞外小胞のサイズには差異がないが、前記比較例2では冷凍乾燥保存後の前記細胞外小胞の濃度が大幅に減少していることが分かる。
【0048】
実験3、図8に示されるように、本発明は、前記細胞外小胞を解凍後に薬物搭載プロセスを実行し、薬物試験によって前記細胞外小胞が前記保存溶液を通して前記冷凍保存された後も依然として前記薬物を取り込む機能を備えていることを確認する。
【0049】
本実施形態では、ドキソルビシン(Doxorubicin,DOX)を前記薬物とし、前記薬物の反射波長を検出して前記細胞外小胞に前記薬物を取り込んでいるかを確認し、前記細胞外小胞に前記薬物を搭載する効果が良好であるほど、前記薬物を取り込む割合が多く、前記細胞外小胞の波長400~550の間の反射波長が顕著になり、前記細胞外小胞の前記薬物を運ぶ効果が優れていることを表す。
【0050】
本発明によって提供される前記薬物搭載プロセスは、先ず1011個の細胞数の前記細胞外小胞を2mg/mLの濃度のドキソルビシン(Doxorubicin,DOX)に添加して静置して反応させ、前記細胞外小胞に薬物を取り込ませ、遠心分離した後、コーティングされていないDOXを除去してクリアにし、後続の試験を行うことができる。
【0051】
本実験では、それぞれ前記薬物のみを有する群を対照群1とし、薬物搭載を行っていない前記細胞外小胞の群を対照群2とし、薬物搭載を行った後の前記細胞外小胞の群を対照群3とし、前記薬物搭載を行った後の前記細胞外小胞を乾燥保存形式で冷凍保存し、再溶解した群を実験群1とした。ここで、対照群3は、実施例1で提供される配合を前記細胞外小胞に前記薬物搭載プロセスを行う媒体とした。実験群1は、同様に実施例1で提供される配合を前記保存溶液として前記薬物搭載プロセスを行った後に冷凍保存した。結果から、前記薬物を運ぶ前記細胞外小胞の乾燥保存後、前記薬物の含有量は、比較的低くなっていることが分かる。
【0052】
前記実験群1が前記薬物搭載プロセス及び冷凍保存を経た後に再溶解しても依然として有効性を備えることを証明するため、本発明は、更に前記細胞外小胞が前記保存溶液を介して前記冷凍保存を行って薬物を取り込む治療有効性を検査する。
【0053】
実験4、本実験では、先ず、前記細胞外小胞に前記薬物搭載プロセスを行った後、前記保存溶液で前記冷凍保存に使用する(乾燥保存形式)。前記薬物(ドキソルビシン)を有する前記細胞外小胞を解凍後、ヒト乳がん細胞に対する細胞毒性試験を行い、前記薬物(ドキソルビシン)を有する前記細胞外小胞の細胞毒性効果を確認した。
【0054】
図9を参照し、それぞれ前記薬物を有する前記細胞外小胞(対照群3)及び前記薬物を有する細胞外小胞を冷凍乾燥保存したもの(実験群1)を前記ヒト乳癌の培養液に添加して反応させる。それぞれ12時間、24時間及び48時間で各郡の前記ヒト癌細胞を反応前の細胞生存率(%)と対比し、対照群3及び実験群1の細胞毒性効果を比較した。結果から、前記薬物を有する前記細胞外小胞は、前記冷凍保存後の細胞毒性効果が冷凍保存を経ていない群よりも低いが依然として薬物を取り込む治療有効性を備えていることが分かる。
【0055】
実験5、本実験では、冷凍保存(乾燥保存形態)後に前記細胞外小胞を取り出し、解凍後に前記薬物搭載プロセスを行い、同様に前記ヒト乳癌細胞に対する細胞毒性試験を行い、前記薬物(ドキソルビシン)を運ぶ前記細胞外小胞の細胞毒性効果を確認する。
【0056】
図10では、本発明は、前記細胞外小胞を乾燥状態で冷凍させた後、前記薬物(DOX)と混合した群を(実験群4)とし、冷凍保存を行っていない前記薬物を有する前記細胞外小胞群を(対照群4)とし、前記ヒト乳がん細胞の細胞毒性試験を行った。結果から、冷凍保存した前記細胞外小胞を解凍して薬物と結合させた(実験群4)は、ヒト乳がん細胞に対する細胞毒性効果は、対照群4との間に顕著な差異がなく、且つ2つの群は、何れも優れた細胞毒性効果を示していることが分かる。
【0057】
なお、図9の結果と比較し、本発明によって提供される保存溶液を使用して前記細胞外小胞を保存し、前記薬物を搭載するより良い手順を構築することもできる。
【0058】
実験6、図11は、更に本発明によって提供される保存溶液を使用して、異なる前記保存環境において前記細胞外小胞/エクソソームの保存効果を比較し、保存の適時性を検証する。前記細胞外小胞を前記保存溶液に入れ、それぞれ-80℃、-20℃、4℃、室温及び40℃の前記保存環境で保存し、保存前の前記細胞外小胞の濃度を基準として評価し、1週間、2週間、4週間、8週間、16週間、26週間の保存後に各群の前記細胞外小胞の残存濃度%を測定した。
【0059】
結果から、本発明によって提供される保存溶液の条件下では、前記細胞外小胞は、前記冷凍環境(-80℃及び-20℃)において十分優れた保存効果を有し、保存効果は半年(26週間)以上まで延ばすこともでき、前記細胞外被膜の残存濃度%は、80に達することができることが分かる。前記保存環境の温度が高くなるほど、前記細胞外小胞の保存効果は、保存時間の長さに従って下降している。
【0060】
図11及び図12は、更に、前記細胞外小胞が本発明によって提供される保存溶液を介して前記冷凍環境で12週間及び14週間保存された後の前記薬物(ドキソルビシン)搭載プロセスを行い、前記ヒト乳がん細胞に対して細胞毒性試験を行い、長時間保存後の前記細胞外小胞の前記薬物を取り込む効率及び前記細胞外小胞の細胞毒性効果を確認するものである。
【0061】
ここで、前記ヒト乳癌細胞を前記薬物で処理した群を対照群5とし、前記ヒト乳癌細胞を、前記薬物を搭載していない前記細胞外小胞で処理した群を対照群6とし、冷凍保存を行っていない前記薬物を搭載した前記細胞外小胞群を対照群7とした。-20℃で冷凍保存後に薬物を搭載した前記細胞外小胞群を実験群5とし、-80℃で冷凍保存後に前記薬物を搭載した細胞外小胞群を実験群6とした。
【0062】
前記ヒト乳癌細胞を各群と共培養して前記細胞毒性試験を行い、1日目、2日目及び3日目に各群の前記ヒト乳癌細胞数をそれぞれ算出し、前記細胞毒性試験を行っていない前記ヒト乳がん細胞の総数を比較し、前記ヒト乳がん細胞の細胞毒性死滅率(%)を算出する。
【0063】
結果から分かるように、1日目に実験群5及び実験群6は顕著な細胞毒性効果を示している。共培養時間が増加するにつれて、実験群5及び実験群6の前記ヒト乳がん細胞の毒性死滅率(%)も上昇し続け、更に2日目及び3日目において、実験群6の群は対照群7と同様の細胞毒性結果を示すことができている。本発明により提供される保存溶液は、前記冷凍環境において、前記細胞外小胞/エクソソームを長時間保存できるだけでなく、前記細胞外小胞/エクソソームの生物活性も維持できることが証明された。
【0064】
本発明によって提供される保存溶液は、前記キャリア溶剤及び安定化剤の選択によって、異なるタイプの前記細胞外小胞/エクソソームに応じて適合する保存条件及びpHを設定し、前記冷凍環境条件下で長時間保存することができる。
【0065】
また、前記保存溶液は、異なる保存環境において、前記細胞外小胞/エクソソームを保存することができ、製品の商業化の発展を補助することができる。
【0066】
本発明は、保存溶液の構成により、必要に応じて特定の液体保存または乾燥保存の形態で冷凍保存することができ、細胞外小胞/エクソソームに長時間の保存を達成させることができ、解凍して再利用する時、一定の反応効果を維持し、医療産業の研究開発及び応用を補助し、時間コストと商業価値を向上させる。
【符号の説明】
【0067】
S1 ステップ
S2 ステップ
S3 ステップ
S4 ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13