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特開2024-114643電子デバイス用の透明太陽電池および同太陽電池の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114643
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】電子デバイス用の透明太陽電池および同太陽電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0445 20140101AFI20240816BHJP
   H01L 31/0224 20060101ALI20240816BHJP
   H01L 31/0236 20060101ALI20240816BHJP
   G04B 19/06 20060101ALI20240816BHJP
   G04G 19/00 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
H01L31/04 530
H01L31/04 266
H01L31/04 282
G04B19/06 C
G04G19/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024016134
(22)【出願日】2024-02-06
(31)【優先権主張番号】23156363.6
(32)【優先日】2023-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】599040492
【氏名又は名称】ニヴァロックス-ファー ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン・ベラ
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエル・クリストマン
(72)【発明者】
【氏名】ディディエ・ドミーヌ
【テーマコード(参考)】
2F002
5F251
【Fターム(参考)】
2F002AA06
2F002AB06
2F002AC00
2F002AE00
5F251BA04
5F251BA16
5F251CB21
5F251FA03
5F251FA04
5F251FA13
5F251FA19
5F251GA03
5F251HA03
5F251HA04
5F251HA07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高効率をもたらしながら、高レベルの透明性を有する太陽電池を提供する。
【解決手段】基板(100)の一面上に形成された、基板(100)に向かって配向された外面(112)の反対側の内面(111)を含む、透明な導電性材料からなる第1の電極(110)であって、内面(111)は、第2の部分の粗さよりも大きい粗さを有する第1の部分を含む、第1の電極(110)と、第1の電極(110)の内面(111)の第1の部分の上を外面(131)が延びる、吸収層(130)と、導電性材料からなり、吸収層(130)の外面(131)の反対側の吸収層(130)の内面の上に延びる、第2の電極(120)とを備え、吸収層(130)及び第2の電極(120)は複数のブラインド・キャビティ(140)を画定するように穿孔されており、ブラインド・キャビティの各々の底部は第1の電極(110)の内面(111)の第2の部分によって形成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光に晒すことが意図された透明な材料からなる基板(100)と、
透明な導電性材料からなり、前記基板(100)の一面上に形成された、前記基板(100)に向かって配向された外面(112)の反対側の内面(111)を含む、第1の電極(110)であって、前記内面(111)は、第2の部分の粗さよりも大きい粗さを有する第1の部分を含む、前記第1の電極(110)と、
前記第1の電極(110)の前記内面(111)の前記第1の部分の上を外面(131)が延びる、吸収層(130)と、
導電性材料からなり、前記吸収層(130)の前記外面(131)の反対側の前記吸収層(130)の内面(111)の上に延びる、第2の電極(120)と
を備え、前記吸収層(130)および前記第2の電極(120)は、複数のブラインド・キャビティ(140)を画定するように穿孔されており、前記ブラインド・キャビティの各々の底部は、前記第1の電極(110)の前記内面(111)の前記第2の部分によって形成されている
ことを特徴とする、電子デバイス用の太陽電池(10)。
【請求項2】
前記第1の電極(110)は、0.5から5μmの間、または1から2μmの間の厚さを有する、請求項1に記載の太陽電池(10)。
【請求項3】
前記第1の電極(110)の前記内面(111)の前記第2の部分は、光放射を散乱させることなく透過させるように、研磨された表面仕上げを有する、請求項1に記載の太陽電池(10)。
【請求項4】
前記吸収層(130)は、100nmから1μmの間、または300から500nmの間の厚さを有する、請求項1に記載の太陽電池(10)。
【請求項5】
前記第1および第2の電極(110、120)は、透明な導電性酸化物からなる、請求項1に記載の太陽電池(10)。
【請求項6】
前記第1および第2の電極(110、120)は、酸化亜鉛、酸化スズまたは酸化インジウム・スズからなる、請求項5に記載の太陽電池(10)。
【請求項7】
前記第2の電極(120)を覆い、各キャビティ(140)を充填する透明な保護層(150)を含む、請求項1に記載の太陽電池(10)。
【請求項8】
前記保護層(150)の材料は、屈折率が1から2の間、または1.3から1.7の間となるように選択される、請求項7に記載の太陽電池(10)。
【請求項9】
前記保護層(150)は、パリレン、ポリイミド、シロキサン、窒化物または酸化物からなる、請求項7または8に記載の太陽電池(10)。
【請求項10】
前記基板(100)は、支持層および中間層を含む層の積重ねによって形成され、前記中間層は、前記支持層と前記第1の電極(110)との間に介在するとともに、1.6から1.9の間の屈折率を有するように構成されている、請求項1に記載の太陽電池(10)。
【請求項11】
時計ムーブメントが収納される内部体積を規定する、中央部、ガラス、および背面を備えるケースを含む、計時器において、前記時計ムーブメントに電気エネルギーを供給するように配置された、請求項1に記載の太陽電池(10)をさらに含むことを特徴とする、計時器。
【請求項12】
前記太陽電池(10)は、前記第2の電極(120)が前記ケースの内部体積に面する状態で、前記基板(100)が前記ガラスに当接するように配置されるように、前記ガラスに固定されている、請求項11に記載の計時器。
【請求項13】
前記ガラスは、前記基板(100)によって形成され、前記太陽電池(10)は、前記第2の電極(120)が前記内部体積に対面するように、配置されている、請求項11に記載の計時器。
【請求項14】
前記基板(100)は、文字盤を形成するか、または前記文字盤に対して、または時計ムーブメントの構造に対して固定され、その結果、前記第2の電極(120)が前記ガラスと対面する、請求項11に記載の計時器。
【請求項15】
透明の基板(100)上に、入射光放射を散乱させることのできるように粗さを有する内面が設けられた導電性透明層の形態で、第1の電極(110)を形成するステップと、
前記第1の電極(110)の前記内面(111)上に、入射光放射を吸収して、それから電流を生成するように適合された吸収層(130)を形成するステップと、
前記吸収層(130)上に、導電性層の形態で、第2の電極(120)を形成するステップと、
前記第1の電極(110)の前記内面(111)まで延びる複数のブラインド・キャビティ(140)を形成するように、前記第2の電極(120)と前記吸収層(130)を構造化するステップであって、その粗さを低減するために、前記キャビティ(140)がその上に開口する、前記第1の電極(110)の前記内面(111)の部分の表面仕上げを修正するように実施される、前記構造化するステップと
を含むことを特徴とする、太陽電池(10)の製造方法。
【請求項16】
前記構造化するステップ中に、前記第2の電極(120)および前記吸収層(130)は、第1および第2の連続エッチング処理を実施することによって、連続的に穿孔され、前記第2のエッチング処理は、キャビティ(140)の各々がその上に開口する、前記第1の電極(110)の前記内面(111)の部分の表面仕上げを修正することによって完成される、請求項15に記載の太陽電池(10)の製造方法。
【請求項17】
前記第2の電極(120)は、前記第2の構造化処理中にエッチング・マスクを形成する、請求項15に記載の太陽電池(10)の製造方法。
【請求項18】
前記第1の電極(110)の結晶は、その内面(111)の所定の表面仕上げを規定するように、成膜される、請求項15に記載の太陽電池(10)の製造方法。
【請求項19】
前記構造化するステップに続いて、前記第2の電極(120)を覆い、各キャビティ(140)を充填するように、透明の保護層(150)を成膜するステップをさらに含む、請求項15に記載の太陽電池(10)の製造方法。
【請求項20】
予備ステップにおいて、支持層と前記第1の電極(110)との間に介在させることが意図された中間層がその上に成膜されている、前記支持層を含む層の積重ねによって、前記基板(100)が形成される、請求項15に記載の太陽電池(10)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子デバイスに電気エネルギーを供給するための透明太陽電池の分野におけるものである。
【0002】
より具体的には、本発明は、特に、好ましい応用において、時計製作の分野を意図する、つまり計時器(timepiece)の表示手段を制御できる時計ムーブメントのモータ手段に電気エネルギーを供給することを意図する、太陽電池に関する。
【0003】
より一般的には、本発明による太陽電池は、窓、ポートホール(porthole)、または風防ガラス(windscreen)などの様々な透明物体に、あるいは電子タブレット、モバイルフォン、および電子時計などの携帯用電子デバイスのスクリーンに一体化するように適合されている。
【背景技術】
【0004】
特定の分野、特に建設、携帯用電子デバイスおよび時計製作デバイス分野において、ユーザがそれを通して観察することを可能にしながら、電気エネルギー源を提供するために、ユーザの視界から隠すことのできる、太陽電池に対するニーズが発生した。
【0005】
このタイプの太陽電池は、FR2681189に記載されているように、光を吸収してそれを電気エネルギーに変換するように適合され、一般的にシリコンなどの半導体材料で製作される、透明材料からなる第1の電極と、不透明金属材料からなる第2の電極との間に配置される、吸収層からなる。第1の電極は、太陽電池のための支持を形成する透明基板の上に延びる。
【0006】
透明層および第2の電極は、太陽電池の透明性を生成するのに必要な光透過を得るために、透明基板まで穿孔されている。
【0007】
特に、太陽電池における穿孔は、裸眼でそれを見つめるユーザのために、太陽電池における透明性を生成させるために、入射光の一部が、第2の電極によって吸収されることなく、吸収層と第2の電極とを通過することを可能にするように、寸法決めされて分布されている。
【0008】
当然ながら、穿孔によって覆われている太陽電池の表面が大きいほど、太陽電池の透明性は大きくなり、その電気効率は低くなり、逆に、表面が小さくなるほど、太陽電池の透明性は低くなり、その電気効率は高くなる。実際に、半透明太陽電池は、光の一部分を通過させて、同時にその他の部分を、光起電力効果を用いて電気に変換することを可能にする。
【0009】
太陽電池の美観、特にその透明性に対する要求はその電気効率に不利益であり、したがって、太陽電池の透明性のレベルとその電気的性能の間の妥協を尊重する必要がある。
【0010】
太陽電池の電気効率を増大させるために、第1の電極は、表面の1つに粗さを与えて、それが光を散乱させて、入射光放射をトラッピングすることによって吸収層によるその吸収を最適化することができる。そのような解決策が、文献WO2011/083282に記載されている。
【0011】
しかしながら、第1の電極の粗さは、「ヘイズ・ファクタ(haze factor)」としても知られる、太陽電池におけるある散乱係数を発生させる。この散乱係数は、散乱光の強度と、全透過光の強度の比率である。太陽電池の電気効率を最適化させるために、少なくとも10%の散乱係数が、通常、望まれる。
【0012】
この解決策は、透明な太陽電池には適合されていない。実際に、そのような散乱係数は、この散乱係数が太陽電池のぼやけ(blurring)を発生させて、時間を読み取り、文字盤の詳細を知覚するのを困難にする限り、透明太陽電池、特に、時計製作用途に特有の応用に対して許容されない。
【0013】
したがって、透明性を損ねることなく、太陽電池の電気効率を増大させる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】FR2681189
【特許文献2】WO2011/083282
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、高い電気的性能、すなわち高効率をもたらしながら、高レベルの透明性を有するように設計された太陽電池を提供することにより、前述の欠点を克服するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的で、本発明は、
入射光に晒すことが意図された透明な材料からなる基板と、
透明な導電性材料からなり、基板の一面上に形成された、基板に向かって配向された外面と反対側の内面を含む、第1の電極であって、前述の内面は、第2の部分の粗さよりも大きい粗さを有する第1の部分を含む、第1の電極と、
第1の電極の内面の第1の部分の上を外面が延びる、吸収層と、
導電性材料からなり、吸収層の外面と反対側の吸収層の内面の上に延びる、第2の電極と、
を備える、電子デバイス用の太陽電池に関する。
【0017】
吸収層および第2の電極は、複数のブラインド・キャビティを画定するように穿孔されており、ブラインド・キャビティの各々の底部は第1の電極の内面の第2の部分によって形成されている。
【0018】
これらの特徴により、太陽電池の透明性と電気的性能の両方が最大化される。
【0019】
実際、第1の電極の内面の第2の部分の表面仕上げは、散乱係数を低減することを可能にするとともに、第1の電極に貫通開口が形成されないという事実は、最適な電気的性能を維持すること、特に直列抵抗損失を最小化することによって集電を容易にすることを可能にする。また、散乱能(scattering power)は、太陽電池にとって有用な場所、つまり吸収層の反対側において保持される。
【0020】
一般的に言って、本発明は、建築物や輸送機用の窓ガラスの分野、またはテレビ、電子タブレット、携帯電話などの電子デバイスの分野など、太陽電池を通しての観察が重要な基準となるすべての分野において有利な用途を有する。
【0021】
特定の実施形態においては、本発明は、単独で、または任意の技術的に可能な組合せで採択された、1つまたは複数の以下の特徴をさらに含んでもよい。
【0022】
特定の実施形態において、第1の電極は0.5から5μmの間、好ましくは1から2μmの間の厚さを有する。
【0023】
特定の実施形態では、第1の電極の内面の第2の部分は、光放射を散乱させることなく透過させるように、研磨された表面仕上げを有する。
【0024】
特定の実施形態において、吸収層は100nmから1μmの間、好ましくは300から500nmの間の厚さを有する。
【0025】
特定の実施形態において、第1および第2の電極は、透明な導電性酸化物からなる。
【0026】
特定の実施形態において、第1および第2の電極は、酸化亜鉛、酸化スズまたは酸化インジウム・スズからなる。
【0027】
特定の実施形態では、太陽電池は、第2の電極を覆い、各キャビティを充填する透明な保護層を含む。
【0028】
特定の実施形態において、保護層の材料は、1から2の間、好ましくは1.3から1.7の間の屈折率を有するように選択される。
【0029】
特定の実施形態において、保護層は、パリレン、ポリイミド、シロキサン、窒化物または酸化物からなる。
【0030】
特定の実施形態では、基板は、支持層および中間層を含む層の積重ねによって形成され、中間層は、支持層と第1の電極との間に介在するとともに、1.6から1.9の間の屈折率を有するように構成される。
【0031】
別の目的によれば、本発明は、時計のムーブメントが収納される内部体積を規定する中央部、ガラス、および背面を備えるケースを含む、計時器に関する。この計時器は、時計のムーブメントに電気エネルギーを供給するように配置された、上述したような太陽電池をさらに含む。
【0032】
特定の実施形態では、太陽電池は、第2の電極がケースの内部体積に対面する状態で、基板がガラスに当接して配置されるように、ガラスに固定されている。
【0033】
特定の実施形態では、ガラスは基板によって形成され、太陽電池は、第2の電極が内部体積に対面するように、配置されている。
【0034】
特定の実施形態では、基板は文字盤を形成するか、または文字盤に対して、または時計ムーブメントの構造に対して固定され、その結果、第2の電極がガラスと対面している。
【0035】
別の目的によれば、本発明は、
透明基板上に、入射光放射を散乱させることのできるように粗さを有する内面が設けられた導電性透明層の形態で、第1の電極を形成するステップと、
第1の電極の内面上に、入射光放射を吸収して、それから電流を生成するように適合された吸収層を形成するステップと、
吸収層上に、導電性層の形態で第2の電極を形成するステップと、
第1の電極の内面へと延びる複数のブラインド・キャビティを形成するように第2の電極と吸収層とを構造化するステップであって、その粗さを低減するために、キャビティの各々がその上に開口する第1の電極の内面の部分の表面仕上げを修正するように実行される、前記構造化ステップと、
を含む、太陽電池の製造方法に関する。
【0036】
特定の実現例では、構造化ステップ中に、第2の電極および吸収層は、第1および第2の連続エッチング処理を実施することによって、連続的に穿孔され、第2のエッチング処理は、キャビティの各々がその上に開口する第1の電極の内面の部分の表面仕上げを修正することによって完成される。
【0037】
特定の実現例では、第2の電極は、第2の構造化処理中にエッチング・マスクを形成する。
【0038】
特定の実現例では、第1の電極は、その結晶がその内面の所定の表面仕上げを規定するように、成膜される。
【0039】
特定の実現例では、方法は、第2の電極を覆い、各キャビティを充填するように、構造化ステップに続いて、透明の保護層を成膜するステップを含む。
【0040】
特定の実現例では、予備ステップにおいて、前記支持層と第1の電極に間に介在させることを意図した中間層がその上に成膜される、支持層を含む層の積重ねによって、基板が形成される。
【0041】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照して、非限定的な例として与えられる、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1図1は、本発明による太陽電池の模式的な断面図である。
図2図2は、本発明による製造方法の異なるステップにおける、図1の太陽電池の模式的な断面図である。
図3図3は、本発明による製造方法の異なるステップにおける、図1の太陽電池の模式的な断面図である。
図4図4は、本発明による製造方法の異なるステップにおける、図1の太陽電池の模式的な断面図である。
図5図5は、本発明による製造方法の異なるステップにおける、図1の太陽電池の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
なお、図は分かりやすくするために、必ずしも縮尺どおりに描かれていないことに注意されたい。
【0044】
本発明の説明は、計時器、例えば腕時計によって形成される電子デバイスへの本発明の応用の文脈においてなされる。しかしながら、いうまでもなく、本発明はこの応用に限定されることなく、任意その他の応用において有利に使用することができる。
【0045】
この文章において用語「透明」は、光放射の全部、または一部、特に肉眼に見える光を通過させる、材料の能力を指すことにも注意すべきである。
【0046】
本発明は、例えば、計時器の表示手段を制御するために、電源回路を介して、ケースに収納された時計ムーブメントのモータ手段に電力を供給するために、光放射を電流に変換するように適合された、太陽電池(10)に関する。なお、計時器の電源回路、モータ手段および表示手段は、当業者には周知であり、それ自体は本発明に関係しないので、以下では詳細に説明せず、図には示さない。
【0047】
図1に示すように、太陽電池10は、外面101によって光放射に晒されることを意図された透明材料からなる、基板100を含む。基板100は、本発明の実施の特定の例において以下でより詳細に説明するように、層または層の積重ねによって形成される。非限定の例として、基板100は、0.1から2mmの間、好ましくは0.1から0.5mmの間の厚さを有する。
【0048】
一実施形態では、光放射は、入射放射線または透過放射線である。図1では、入射放射線または透過放射線は太い矢印で記号化されている。
【0049】
一例として、基板100は、例えば、接着剤接合によって、またはイオン接合またはパルス電流接合などの機械的または物理的な固定手段によって、その外面101が時計ガラスにその周囲に当接して配置されるように、固定することができる。基板100の外面101が受ける光放射は、次いで、ガラスを透過した放射線である。
【0050】
代替的に、基板100は、計時器のガラスを構成してもよい。そして、前述の基板100の外面101が受ける光放射は、次いで入射放射線となる。特にこの場合、基板100は、前述の基板100を通して受けられる光放射の量を最大化するために、その外面101に反射防止処理を含めることが考えられる。
【0051】
本発明の別の応用では、基板100は、例えば、接着または機械的固定手段によって、その外面101が文字盤に当接して、または時計の時計ムーブメントの構造の、その周囲に当接して配置されるように、固定することができる。
【0052】
代替的に、基板100は文字盤を形成することができる。
【0053】
この基板100は、例えば、頭字語「PEN」でも知られているポリエチレンナフタレート、または頭字語「PET」でも知られているポリエチレンテレフタレートなどのガラス、サファイアまたはポリマーからなっている。ポリカーボネート(PC)やアクリル・ポリメチル・メタクリレート(PMMA)などの他のポリマーも可能である。
【0054】
また、太陽電池10は、外面101と反対側の基板100の内面102の表面の全部または一部に形成された、第1の電極110も含む。この第1の電極110は、基板100を通過する放射線から、前述の基板100を透過する光放射に直接晒される。非限定的な例として、第1の電極110は、0.5から5μmの間、好ましくは1から2μmの間の厚さを有する。
【0055】
第1の電極110は、透明な導電性材料、例えば、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)または酸化インジウム・スズ(ITO)などの頭字語「TCO」でも知られている金属酸化物からなり、基板100に向かって配向された外面112と反対側の内面111を備える。内面111は、粗さの異なる表面を有する第1および第2の部分を含む。特に、内面111の第1の部分は、図1に示すように、第2の部分の粗さよりも粗さが大きい。有利には、第1の部分の粗さに起因して、第1の電極110は、入射光放射を散乱させる。
【0056】
より正確には、内面111の第1の部分の粗さは、第1の電極110の材料の結晶の配置に優先的に起因するものであり、第1の電極110の成膜方法およびそのパラメータは、前述の配置を制御するように選択される。言い換えると、第1の電極110は、その結晶がその内面111の所定の表面仕上げを規定するように成膜される。
【0057】
第2の部分は、光放射を散乱させることなく透過させるように、また太陽電池10の散乱係数を低減するように、研磨された表面を有するのが有利である。この特徴は、有利には、太陽電池10の透明性を高めるのに役立ち、したがって、ユーザが太陽電池10を通してはっきりと見ることを可能にする。
【0058】
太陽電池10は、第1の電極110と第2の電極120との間に配置された吸収層130を含む。図1に見られるように、吸収層130は、外面131が第1の電極110の内面111の第1の部分だけを越えて延びており、例えば、100nmから1μmの間、好ましくは300から500nmの間の厚さを有する。
【0059】
吸収層130は、シリコン、例えばアモルファス・シリコンなどの半導体材料からなる。吸収層130は、光放射を吸収し、そこから第1および第2の電極110および120に接続された端子に電流を発生させるように適合されている。
【0060】
有利には、図1に示されるように、吸収層130は、第1の電極110の内面111の第1の部分の表面上の任意の点と合致し、その結果、吸収層130の外面131は、前述の第1の部分の形状と相補的な形状を有し、したがって、同一の粗さも有する。
【0061】
第2の電極120は、導電性材料からなり、吸収層130の外面131と反対側の吸収層130の内面132の上に延びている。
【0062】
有利には、第2の電極120はTCOで製作することができ、これにより、吸収層130は、基板100を透過した放射線の一部、および、前述の基板100の反対側、すなわち第2の電極120の側の太陽電池10の近傍に配置された任意の素子によって反射された放射線の一部を吸収することができる。したがって、この特徴は、吸収層130によって吸収される放射線の量を最大化し、したがって、その電気的性能を増大させる。
【0063】
本発明の別の変形実施形態では、第2の電極120は、銀またはアルミニウムなどの金属材料からなる。
【0064】
図1および図5に見られるように、吸収層130および第2の電極120は、複数のブラインド・キャビティ140を画定するように穿孔されており、各々の底部は、第1の電極110の内面111の第2の部分によって形成されている。言い換えると、太陽電池10は、第2の電極120および吸収層130を通過し、第1の電極110の内面111まで延びるキャビティ140を含む。
【0065】
これらの特徴に起因して、透過光放射は、太陽電池10を通過することができるとともに、太陽電池10は、第1の電極110の内面111の第2の部分の表面仕上げ、ならびにキャビティ140の分布パターンおよびそれらの寸法に応じて、非常に良好なレベルの透明性を有することができる。
【0066】
有利には、キャビティ140は、円形または六角形の断面を有することができる。後者の形状は、電気損失が最小限に抑えられるという利点がある。
【0067】
キャビティ140の断面は、代替的には、第1の電極110の内面111に舗装開口(paving opening)をもたらす、あらゆる種類の規則的または不規則的な、幾何学的に単純な、または複数の形状を有し得る。例として、キャビティ140は、溝などの糸状(filiform)、または三角形、正方形などの多角形、文字、ロゴなどの形状とすることができる。
【0068】
図1に示されるように、有利には、太陽電池10には、第1および第2の電極110および120に加えて、吸収層130をカプセル封入する、すなわち、各キャビティ140を充填する、透明材料からなる保護層150を含めることができる。したがって、この保護層150は、基板100と反対側の太陽電池10の側に成膜され、太陽電池10を外部からの攻撃または汚染から保護する。
【0069】
このような保護層150は、パリレン、ポリイミド、シロキサン、窒化物、例えば窒化ケイ素、または酸化物、例えば酸化ケイ素で製作することができる。
【0070】
この層は、有利な光学的機能をもたらすような厚さを有してもよい。特に、保護層150の材料は、光反射を最小限に抑えるとともに、キャビティ140における太陽電池10の透明性をさらに高めるように、ほぼ1に等しい周囲空気の屈折率と、ほぼ2に等しい第1の電極110の屈折率との間の屈折率を有するように選択されてもよい。特に、保護層150は、その屈折率が1.3から1.7の間となるように構成される。
【0071】
図に示されていない本発明の実現例では、基板100は、支持層および中間層を含む層の積重ねによって形成され、中間層は、支持層と第1の電極110との間に介在し、光学反射を最小限に抑え、したがって太陽電池10の透明性を促進するような屈折率を有するように構成される。特に、中間層は、例えば、60から100nmの間の厚さの上に延びて、1.6から1.9の間の屈折率を有する。この中間層は、好適な透明材料で製作することができる。
【0072】
支持層は、任意の透明材料、例えば基板100について上述したような材料で製作することができる。
【0073】
また、本発明は、太陽電池10、好ましくは上述した太陽電池10の製造方法に関する。
【0074】
製造方法は、それぞれ図2乃至図5および図1に時系列に示す、以下の連続したステップを含む。
【0075】
有利には、この方法は、基板100上に第1の電極110を形成するステップを含み、その結果、前述の第1の電極110は、その内面111全体にわたって、入射光放射を散乱することができるような粗さを有する。
【0076】
このステップに続いて、第1の電極110の内面111に吸収層130を形成するステップと、次いで、吸収層130上に第2の電極120を形成するステップが続く。
【0077】
次に、第2の電極120および吸収層130を介して、第1の電極110の内面111、特に前記内面111の第2の部分に複数のブラインド・キャビティ140を形成するために、構造化ステップが実施される。構造化ステップは、第1の電極110の内面111の第2の部分の表面仕上げを、その粗さを低減するために、修正するように実施される。
【0078】
構造化ステップ中に穿孔される領域は、例えばフォトリソグラフィー法によって、保存すべき第2の電極120および吸収層130の領域をマスキングすることによって決定される。
【0079】
構造化ステップの間、第2の電極120および吸収層130は、連続的なエッチング処理を実施することにより、連続的に穿孔されてもよい。特に、第1のエッチング処理は、第2の電極120を貫通して複数のキャビティ140を形成し、吸収層130まで延ばすことからなり、第2のエッチング処理は、吸収層130を貫通して第1の電極110までキャビティ140を延ばすように実施されてもよい。この第2のエッチング処理は、第1の電極110の内面111の第2の部分の表面仕上げを修正することによって完了するのが有利である。
【0080】
第2の電極120および吸収層130をそれぞれ構成する材料が与えられれば、第1のエッチング処理は、ウェット化学エッチング法を用いて実施することができ、第2のエッチング処理は、プラズマ化学エッチング法やイオン・エッチング法などのドライ・エッチング法を用いて実施することができる。
【0081】
有利には、第2の電極120は、第2の構造化処理中にエッチング・マスクとして使用可能であり、したがって、その上に成膜される、第1の電極110の内面111の第1の部分を保護することができる。
【0082】
第1の電極110の内面111の第2の部分の表面仕上げの修正が第2のエッチング処理中に行われるので、太陽電池10のコストと製造時間が大幅に削減される。
【0083】
また、第1の電極110が穿孔されていないということは、その電気抵抗の上昇がなく、すなわち、太陽電池10の電気的性能が保たれることを意味する。
【0084】
透明保護層150を成膜させる任意選択のステップは、第2の電極120を覆うとともに、各キャビティ140を充填するように、構造化ステップに続いて実施することができる。
【0085】
特に、このステップは、例えば保護層150の材料がポリイミドである場合に、スピン・コーティングによって実施することができる。このステップは、代替的に、保護層150の材料がパリレンである場合には化学蒸着法によって、あるいは保護層150を形成するために選択される材料が酸化物または窒化物である場合には、プラズマ増強化学蒸着法によって実施されてもよい。また、保護層150が窒化物からなる場合には、物理的蒸着法、蒸着法、またはスパッタリングにより保護層150を成膜することも可能である。
【0086】
基板100は、予備ステップにおいて、中間層がその上に成膜される、支持層を含む層の積重ねによって形成することが可能であり、第1の電極110が後者の上に成膜される。有利には、中間層は、入射光放射の反射を低減するために、1.6から1.9の間の屈折率を有する。
【0087】
第1の電極110の形成は、化学蒸着法の実施によって達成することができ、吸収層130の形成は、プラズマ支援化学蒸着法の実施によって達成することができ、第2の電極120の形成は、物理的蒸着法の実施によって達成することができる。
【0088】
勿論、これらの成膜方法は、第1および第2の電極110および120ならびに吸収層130が、それぞれの材料に応じて任意の適切な成膜方法によって成膜することができるので、目安として与えられる。
【0089】
より一般的には、上記で検討された実施方法および製造方法は、非限定的な例として説明されており、したがって、他の変形例が考えられることに留意されたい。
【0090】
特に、第1および第2の電極110および120、ならびに吸収層130および保護層150は、単層または層の積重ねによって形成することができる。
【符号の説明】
【0091】
10 太陽電池
100 基板
101 外面
102 内面
110 第1の電極
111 内面
112 外面
120 第2の電極
130 吸収層
131 外面
132 内面
140 ブラインド・キャビティ
150 保護層
図1
図2
図3
図4
図5
【外国語明細書】