(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114651
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】組成物、食品の品質改良剤、加工食品、及び加工食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 5/00 20160101AFI20240816BHJP
A01J 25/00 20060101ALI20240816BHJP
A23L 13/00 20160101ALI20240816BHJP
A23L 17/00 20160101ALI20240816BHJP
A23L 13/40 20230101ALI20240816BHJP
A23L 29/00 20160101ALI20240816BHJP
【FI】
A23L5/00 K
A01J25/00
A23L13/00 A
A23L17/00 A
A23L17/00 Z
A23L13/40
A23L29/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024017790
(22)【出願日】2024-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2023019333
(32)【優先日】2023-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】522450831
【氏名又は名称】築野グループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 千恵子
(72)【発明者】
【氏名】阪部 博明
(72)【発明者】
【氏名】木村 好伸
(72)【発明者】
【氏名】山中 未季
(72)【発明者】
【氏名】埴岡 英一郎
【テーマコード(参考)】
4B035
4B042
【Fターム(参考)】
4B035LC01
4B035LC03
4B035LG01
4B035LG02
4B035LG04
4B035LG36
4B035LP22
4B042AC03
4B042AC05
4B042AG03
4B042AG72
4B042AH01
4B042AK02
4B042AK12
4B042AP03
4B042AP07
4B042AP14
4B042AP18
4B042AP21
4B042AP25
(57)【要約】 (修正有)
【課題】食品の品質改良性に優れた組成物を提供する。
【解決手段】下記一般式(1):
(式中、複数のR
1は、独立に、-O-PO(OX)
2又は-OHであり、前記Xは、水素原子、アルカリ金属原子、又はアルカリ土類金属原子である。但し、複数のR
1のうち少なくとも1つは、-O-PO(OX)
2である。)で表わされる化合物、及びフィチン酸からなる群から選択される2種以上の化合物を含有する組成物であって、前記2種以上の化合物に由来するリン原子と、前記アルカリ金属原子及び/又はアルカリ土類金属原子とのモル比が、0.5以上0.95以下であることを特徴とする組成物である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
【化1】
(式中、複数のR
1は、独立に、-O-PO(OX)
2又は-OHであり、前記Xは、水素原子、アルカリ金属原子、又はアルカリ土類金属原子である。但し、複数のR
1のうち少なくとも1つは、-O-PO(OX)
2であり、かつ、複数のXのうち少なくとも1つは、アルカリ金属原子又はアルカリ土類金属原子である。)
で表わされる化合物、及びフィチン酸からなる群から選択される2種以上の化合物を含有する組成物であって、
前記2種以上の化合物に由来するリン原子と、前記アルカリ金属原子及び/又はアルカリ土類金属原子とのモル比(リン原子/(アルカリ金属原子及び/又はアルカリ土類金属原子))が、0.5以上0.95以下であることを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記一般式(1)で表される化合物を2種以上含有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記一般式(1)で表わされる化合物、及びフィチン酸からなる群から選択される2種以上の化合物が、組成物中に95質量%以上であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記アルカリ金属原子及び/又はアルカリ土類金属原子が、ナトリウム、マグネシウム及びカリウムからなる群から選択される少なくとも一つであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
米の脱脂糠から抽出した水溶性成分であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記一般式(1)で表される化合物、及びフィチン酸からなる群から選択される2種以上の化合物が1質量%となる水溶液のpHが4.2以上11以下であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物を含むことを特徴とする食品の品質改良剤。
【請求項8】
食品材料と請求項7に記載の食品の品質改良剤を混合してなることを特徴とする加工食品。
【請求項9】
前記食品材料が食肉であることを特徴とする請求項8に記載の加工食品。
【請求項10】
前記食品材料が魚介類であることを特徴とする請求項8に記載の加工食品。
【請求項11】
前記食品材料がチーズ様食品であることを特徴とする請求項8に記載の加工食品。
【請求項12】
食品材料と請求項7に記載の食品の品質改良剤を含有することを特徴とする加工食品。
【請求項13】
食品材料に、請求項7に記載の食品の品質改良剤を混合する工程を含むことを特徴とする、加工食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物、食品の品質改良剤、加工食品、及び加工食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フィチン酸(ミオイノシトールのヘキサリン酸)は、ナッツ類、穀類、豆類、油脂原料用種子等に多く含まれる植物成分であり、抗酸化剤やpH調整剤、酸味調整剤として用いられている。また、フィチン酸ナトリウム等のフィチン酸塩も広く知られている。
【0003】
フィチン酸やフィチン酸塩を使用したものとして、例えば、フィチン酸を添加した乳製品(例えば、特許文献1)、フィチン酸塩を含む歯磨組成物(例えば、特許文献2)、フィチン酸塩を含む現像液(例えば、特許文献3)、乳及び/又は乳製品と、フィチン酸塩を含む乳性組成物(例えば、特許文献4)等が知られており、フィチン酸やフィチン酸塩は幅広い分野で使用されている。
【0004】
また、粉末状大豆たん白中に、有機酸塩としてフィチン酸ナトリウムを含有する畜肉加工品用添加材(例えば、特許文献5)、大豆蛋白加水分解物とフィチン酸ナトリウムとの混合物を加熱してなる蛋白組成物(例えば、特許文献6)、タンパク質あるいはタンパク質含有素材の加水分解物とフィチン酸塩を含む畜肉加工用ピックル液(例えば、特許文献7)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63-291533号公報
【特許文献2】特開2003-335646号公報
【特許文献3】特開昭48-35005号公報
【特許文献4】特開2022-34446号公報
【特許文献5】特開2003-154号公報
【特許文献6】特開2002-291417号公報
【特許文献7】特開昭57-125648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のフィチン酸を添加した乳製品は、加熱により生じる黄変や褐変を防止するためにフィチン酸を添加されているが、フィチン酸塩を用いるものではない。また、特許文献2~4は、フィチン酸塩を使用するものであるが、リン原子とアルカリ金属原子及び/又はアルカリ土類金属原子のモル比を特定の範囲にすることについては何ら検討がなされていないものであった。さらに、これらの文献で使用されるフィチン酸ナトリウムについては、フィチン酸8ナトリウム、フィチン酸5ナトリウム、イノシトール六燐酸9Na塩、イノシトール六燐酸11Na塩等の具体的な名称が記載され単一の化合物を使用しており、フィチン酸ナトリウムがどのような組成かについて何ら言及がなされていない。
【0007】
また、特許文献5~7には、食肉用添加剤としてフィチン酸塩を含む添加剤が開示されているが、いずれも大豆蛋白等を必須成分とするものであり、かつ、リン原子とアルカリ金属原子及び/又はアルカリ土類金属原子のモル比を特定の範囲することについては何ら検討がなされていないものであった。さらに、これらの文献で使用されるフィチン酸ナトリウムがどのような組成かについて何ら言及がなされていない。
【0008】
前述の通り、フィチン酸塩を添加することで効果を奏することが記載されている文献は多数存在するが、本発明者らは、一般式(1)で表される化合物、及びフィチン酸からなる群から選択される2種以上の化合物を含有する組成物中のリン原子とアルカリ金属原子及び/又はアルカリ土類金属原子とのモル比に着目し、当該モル比が特定の範囲外になると、前記組成物の添加効果が得られなかったり、食品に添加することが好ましくない態様になったり、といった種々の課題が発生することを今回新たに見出したものである。
【0009】
従って、本発明においては、一般式(1)で表される化合物、及びフィチン酸からなる群から選択される2種以上の化合物を含有する組成物であって、前記2種以上の化合物に由来するリン原子と、前記アルカリ金属原子及び/又はアルカリ土類金属原子とのモル比を特定の範囲にすることで、食品の品質改良性に優れた組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、一般式(1)で表される化合物、及びフィチン酸からなる群から選択される2種以上の化合物を含有する組成物であって、前記2種以上の化合物に由来するリン原子と、前記アルカリ金属原子及び/又はアルカリ土類金属原子とのモル比を特定の範囲にすることで、食品の品質改良性に優れた組成物を提供できることを新たに見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、下記一般式(1):
【化1】
(式中、複数のR
1は、独立に、-O-PO(OX)
2又は-OHであり、前記Xは、水素原子、アルカリ金属原子、又はアルカリ土類金属原子である。但し、複数のR
1のうち少なくとも1つは、-O-PO(OX)
2であり、かつ、複数のXのうち少なくとも1つは、アルカリ金属原子又はアルカリ土類金属原子である。)
で表わされる化合物、及びフィチン酸からなる群から選択される2種以上の化合物を含有する組成物であって、
前記2種以上の化合物に由来するリン原子と、前記アルカリ金属原子及び/又はアルカリ土類金属原子とのモル比(リン原子/(アルカリ金属原子及び/又はアルカリ土類金属原子))が、0.5以上0.95以下であることを特徴とする組成物に関する。
【0012】
前記一般式(1)で表される化合物を2種以上含有することが好ましい。
【0013】
前記一般式(1)で表わされる化合物、及びフィチン酸からなる群から選択される2種以上の化合物が、前記組成物中に95質量%以上であることが好ましい。
【0014】
前記アルカリ金属原子及び/又はアルカリ土類金属原子が、ナトリウム、マグネシウム及びカリウムからなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
【0015】
本発明の組成物が、米の脱脂糠から抽出した水溶性成分であることが好ましい。
【0016】
前記一般式(1)で表される化合物、及びフィチン酸からなる群から選択される2種以上の化合物が1質量%となる水溶液のpHが4.2以上11以下であることが好ましい。
【0017】
また、本発明は、前記組成物を含むことを特徴とする食品の品質改良剤、及び、食品材料と前記食品の品質改良剤を混合してなることを特徴とする加工食品に関する。
【0018】
前記食品材料が、食肉、魚介類、又はチーズ様食品であることが好ましい。
【0019】
また、本発明は、食品材料と前記食品の品質改良剤を含有することを特徴とする加工食品に関する。
【0020】
さらに、本発明は、食品材料に、前記食品の品質改良剤を混合する工程を含むことを特徴とする、加工食品の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の組成物は、下記一般式(1):
【化2】
で表わされる化合物、及びフィチン酸からなる群から選択される2種以上の化合物を含有する組成物であって、前記2種以上の化合物に由来するリン原子と、前記アルカリ金属原子及び/又はアルカリ土類金属原子とのモル比を特定の範囲にすることで、優れた食品の品質改質性を有する。従って、このような本発明の組成物を食品の品質改良剤として使用し、処理前の食品材料(食肉や魚介類)に混合することで、加熱や冷凍等の処理後もパサつきがなくしっとり感が高く、適度な弾力性を有する加工食品(加熱(又は冷凍)食肉や加熱(又は冷凍)魚介類)を製造することができる。また、本発明の食品の品質改良剤とナチュラルチーズやプロセスチーズ又はチーズ様食品を混合してなる加工チーズ様食品は、味覚、溶融性、オイルオフ性に優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施例で製造したチーズについて、溶融性を評価した結果を示す図である。
【
図2】実施例で製造したチーズについて、オイルオフ性を評価した結果を示す図である。
【
図3】実施例で製造したボイルエビの外観を示す図である。
【
図4】実施例で製造した加熱食肉の外観を示す図である。
【
図5】実施例で製造した加熱食肉の断面を示す図である。
【
図6】実施例で製造したチーズについて、チーズの硬さの評価をした結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
1.組成物
本発明の組成物は、下記一般式(1):
【化3】
(式中、複数のR
1は、独立に、-O-PO(OX)
2又は-OHであり、前記Xは、水素原子、アルカリ金属原子、又はアルカリ土類金属原子である。但し、複数のR
1のうち少なくとも1つは、-O-PO(OX)
2であり、かつ、複数のXのうち少なくとも1つは、アルカリ金属原子又はアルカリ土類金属原子である。)
で表わされる化合物、及びフィチン酸からなる群から選択される2種以上の化合物を含有する組成物であって、
前記2種以上の化合物に由来するリン原子と、前記アルカリ金属原子及び/又はアルカリ土類金属原子とのモル比(リン原子/(アルカリ金属原子及び/又はアルカリ土類金属原子))が、0.5以上0.95以下であることを特徴とする。
【0024】
フィチン酸とは、ミオイノシトールのヘキサリン酸エステルであり(前記一般式(1)の全てのR1が-O-PO(OH)2)、本発明の組成物に含まれる一般式(1)で表される化合物は、複数のR1は、独立に、-O-PO(OX)2又は-OHであり、前記Xは、水素原子、アルカリ金属原子、又はアルカリ土類金属原子であり、複数のR1のうち少なくとも1つは、-O-PO(OX)2であり、かつ、複数のXのうち少なくとも1つは、アルカリ金属原子又はアルカリ土類金属原子である。本発明の組成物においては、一般式(1)で表される化合物、及びフィチン酸からなる群から選択される2種以上を含有するものであって、単一化合物であるフィチン酸Xナトリウム(X:1~12)とは大きく異なるものである。
【0025】
本発明の組成物は、リン原子とアルカリ金属原子及び/又はアルカリ土類金属原子とのモル比(リン原子/(アルカリ金属原子及び/又はアルカリ土類金属原子))が0.5以上0.95以下の範囲にあることで、食品の品質改良性が優れた組成物となる。前記モル比は、0.60以上が好ましく、0.65以上がより好ましく、0.90以下が好ましく、0.85以下がより好ましい。ここで、前記リン原子は、前記2種以上の化合物(一般式(1)で表される化合物やフィチン酸)に由来するリン原子の合計量である。前記一般式(1)で表される化合物やフィチン酸に由来するリン原子とは、一般式(1)で表される化合物中のリン原子、即ち、R1としての-O-PO(OX)2中のリン原子、フィチン酸骨格中のリン原子である。また、本発明の組成物には、一般式(1)で表される化合物やフィチン酸の一部が加水分解したことに伴って発生するリン酸(H3PO4)やその塩を含有する場合があるが、その含有量は非常に少なく(一般式(1)で表される化合物、及びフィチン酸からなる群から選択される2種以上の化合物の合計量中、約3質量%以下程度)、前記モル比の計算には影響を及ぼさないものである。また、上記Xがアルカリ土類金属原子の場合、アルカリ土類金属の価数が2価であるため、上記モル比の計算におけるアルカリ土類金属原子のモル数は、実際のモル数に2を乗じた値(アルカリ土類金属のモル数×2)を使用する。
【0026】
また、アルカリ金属原子及び/又はアルカリ土類金属原子は、一般式(1)で表される化合物中のアルカリ金属原子及び/又はアルカリ土類金属原子の合計量を表す。
【0027】
本発明の組成物には、一般式(1)中の全てのR1が-O-PO(OX)2であるヘキサリン酸骨格を有する化合物、5つのR1が-O-PO(OX)2であり、1つのR1が-OHであるペンタリン酸骨格を有する化合物を含み得る。前記ヘキサリン酸骨格を有する化合物及びフィチン酸の含有量については、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の相対面積により測定することができる。具体的には、HPLC分析での全面積(一般式
(1)で表される化合物、及びフィチン酸からなる群から選択される2種以上の化合物の合計量に相当)に対して、ヘキサリン酸骨格を有する化合物及びフィチン酸に相当する面積が、70相対面積%以上であることが好ましく、75相対面積%以上であることがより好ましく、100相対面積%未満であることが好ましく、95相対面積%以下であることがより好ましい。また、HPLC分析での全面積に対して、前記ペンタリン酸骨格を有する化合物に相当する面積が、0相対面積%超であることが好ましく、5相対面積%以上であることがより好ましく、30相対面積質量%以下であることが好ましく、25相対面積%以下であることがより好ましい。
【0028】
前記アルカリ金属原子及び/又はアルカリ土類金属原子としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等が挙げられ、これらを1種単独で、又は2種以上を混合していてもよい。これらの中でも、汎用性があり、安価であり、溶解性の観点から、ナトリウム、カリウム及びマグネシウムからなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましく、ナトリウム及びカリウムからなる群から選択される少なくとも一つであることがより好ましく、ナトリウムがさらに好ましい。
【0029】
また、本発明の組成物に含まれるアルカリ金属原子及び/又はアルカリ土類金属原子の含有量は、一般式(1)で表される化合物、及びフィチン酸からなる群から選択される2種以上の化合物の合計量中、例えば、Xがナトリウムの場合、16質量%以上であることが好ましく、17質量%以上であることがより好ましく、25質量%以下であることが好ましく、23質量%以下であることがより好ましい。Xがカリウムの場合、20質量%以上であることが好ましく、22質量%以上であることがより好ましく、40質量%以下であることが好ましく、35質量%以下であることがより好ましい。Xがマグネシウムの場合、7質量%以上であることが好ましく、8質量%以上であることがより好ましく、13質量%以下であることが好ましく、12質量%以下であることがより好ましい。アルカリ金属原子及び/又はアルカリ土類金属原子の含有量が前記範囲に対応した範囲であることで、より高い食品の品質改良性が得られるため好ましい。
【0030】
また、本発明の組成物に含まれるリン原子の含有量は、一般式(1)で表される化合物、及びフィチン酸からなる群から選択される2種以上の化合物の合計量中、例えば、Xがナトリウムの場合、17質量%以上であることが好ましく、17.5質量%以上であることがより好ましく、20.4質量%未満であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。Xがカリウムの場合、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましく、20質量%未満であることが好ましく、18質量%以下であることがより好ましい。Xがマグネシウムの場合、18質量%以上であることが好ましく、19質量%以上であることがより好ましく、21質量%未満であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。リン原子の含有量が前記範囲であることで、より高い食品の品質改良性が得られるため好ましい。
【0031】
本発明の組成物は、天然素材(米糠、米胚芽、とうもろこし、豆類等)から抽出されるものであることが好ましく、米の脱脂糠から抽出した水溶性成分であることがより好ましい。米の脱脂糠から抽出する方法としては、米の脱脂糠を原料として酸で抽出することができる。前記抽出物を必要に応じて、各種の精製方法(例えば、吸着法(活性炭やイオン交換樹脂等による)、沈殿法(貧溶媒の添加、pH調整法等による)、蒸留法、又はこれら精製法の組み合わせ)により精製してもよい。その後、水酸化ナトリウム等のアルカリによりpHを調整しながら添加し、必要に応じて、溶媒を完全に又は一部除去して本発明の組成物を得ることができる。
【0032】
前記リン原子と、アルカリ金属原子及び/又はアルカリ土類金属原子とのモル比を特定の範囲に調整する方法としては、例えば、米糠から抽出した一般式(1)で表される化合物(Xが水素原子)、及びフィチン酸を含有する組成物液のリン含有量を測定し、リン含有量に応じてアルカリ液を添加することで任意のモル比に調整することができる。また、米糠から抽出した一般式(1)で表される化合物(Xが水素原子)、及びフィチン酸を含有する組成物液のpHを測定し、測定したpHに応じてアルカリ液を添加することでも任意のモル比に調整することができる。また、本発明の組成物は、一般式(1)で表される化合物(Xが水素原子)、及びフィチン酸とフィチン酸12アルカリ金属塩(例えば、Na塩)を混合して、前記モル比を調整することもできる。
【0033】
本発明の組成物は、水分除去して固体として取得してもよいし、水溶液としても使用できる。
【0034】
本発明の組成物は、一般式(1)で表される化合物、及びフィチン酸からなる群から選択される2種以上の化合物を含有すればよく、1種以上の一般式(1)で表される化合物とフィチン酸の混合物、2種以上の一般式(1)で表される化合物を含み、フィチン酸を含まない混合物とすることができるが、本発明においては、一般式(1)で表される化合物を2種以上含むものが好ましい。
【0035】
本発明において、一般式(1)で表される化合物(及びフィチン酸)が、組成物中80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがより好ましい。本発明の組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、一般式(1)で表される化合物、フィチン酸以外に、前記一般式(1)で表される化合物やフィチン酸に由来する(加水分解により生成する)リン酸やリン酸塩を含んでいてもよく、さらに、タンパク質やペプチド、糖等の不純物を含んでいてもよい。前記一般式(1)で表される化合物及びフィチン酸以外の成分の含有量は、組成物中20質量%以下程度であることが好ましく、10質量%以下程度であることが好ましく、5質量%以下程度であることがより好ましい。
【0036】
一般式(1)で表される化合物、及びフィチン酸からなる群から選択される2種以上の化合物が1質量%となる水溶液のpHは、4.2以上11以下であることが、食品の品質改良に関し機能設計する時、他の添加物等との調合を容易にする、食品の全体のpHを制御しやすく味や食感などに影響しにくい等の観点から好ましい。pHは、5.0以上であることがより好ましく、5.5以上であることがさらに好ましく、10以下であることがより好ましく、9以下であることがさらに好ましい。
【0037】
2.食品の品質改良剤
本発明の食品の品質改良剤(以下、単に「品質改良剤」ということもある)は、本発明の前記組成物を含むものであり、非常に高い食品の品質改良性を有する。
【0038】
本発明の食品の品質改良剤は、前記組成物を含むものであればよく、例えば、前記組成物を食品材料または食品原料に直接添加してもよいし、調味料などに溶解して添加、使用することができる。組成物の水溶液や調味料溶液とする場合、その濃度は特に限定されるものではなく、所望の効果を発現できる濃度であればよいが、例えば、一般式(1)で表される化合物(及びフィチン酸)が0.5質量%以上となる濃度であることが好ましく、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、70質量%以下がさらに好ましい。また、本発明の食品の品質改良剤には、蛋白、蛋白加水分解物等を必要とするものではなく、含まないことが好ましい。
【0039】
本発明の食品の品質改良剤は、前記組成物を含むものであり、本発明の効果を損なわない範囲でその他の添加剤を含むことができる。当該添加剤としては、例えば、リン酸塩(ポリリン酸、ポリリン酸塩等)、クエン酸塩、pH調整剤、糖類、安定剤、フレーバー、着色料、保存料等を挙げることができる。また、さらに、添加剤として、食塩、醤油、味噌等の調味料を用いることもできる。
【0040】
3.加工食品
本発明の加工食品は、食品材料に前記食品の品質改良剤を混合してなるか、又は、食品材料と前記食品の品質改良剤を含有するものである。
【0041】
前記食品材料としては、食肉、魚介類、チーズ様食品を挙げることができる。
【0042】
前記食肉としては、食用の肉であれば特に限定されず、動物の肉や鳥類の肉が挙げられる。動物としては、牛、豚、馬、羊、山羊、兎等の家畜;猪、鹿、熊等の野生動物が挙げられる。また、鳥類としては、鶏、七面鳥、カモ、ガチョウ、ホロホロ鳥、ウズラ、ダチョウ等が挙げられる。また、前記魚介類としては、アジ、サケ、タラ、フグ、キス、アナゴ等の魚、エビやカニ等の甲殻類、ホタテやカキ等の貝類、イカやタコ等の他の水産物が挙げられる。
【0043】
本発明の品質改良剤を食肉や魚介類等の食品材料に混合した後、加熱処理や冷凍した後に調理等の処理を行っても、パサつきがなくしっとり感が高いものとなり(保水性)、さらに、適度な弾力性が付与されている加工食品(加熱(又は冷凍)食肉や加熱(又は冷凍)魚介類)を提供することができるものである。これは、本発明の食品の品質改良剤に含まれる組成物が、食肉等の食品材料に結合しているCa等の2価のカチオンを除去することにより、食品の保水性が高くなると考えられる。当該処理を行った食肉は、ウインナー、ハム、ソーセージ、ハンバーグ、ミートローフ、ベーコン、焼き鳥、つくね、唐揚げ等の食肉加工品と前記食肉加工品の冷凍食品とすることができる。当該処理を行った魚介は、魚肉ソーセージ、かまぼこ、冷凍エビフライ、魚介類の冷凍フライ、貝類等の缶詰等の魚介加工品とすることができる。
【0044】
前記チーズ様食品としては、チーズの風味及び物性を兼ね備えたものであり、チーズを含む食品であれば特に限定されない。具体的には、プロセスチーズ、チーズフード、乳又は乳製品を主要原料とする食品やそれらを原料とした食品等が挙げられる。プロセスチーズは、ナチュラルチーズ(チェダーチーズ、ゴーダチーズ等)を1種類または数種類混ぜて加熱し、加工したものである。また、チーズ様食品と前記食品の品質改良剤を混合してなる加工チーズ様食品は、溶融性に優れているため、とろけるチーズとすることが適している。また、チーズ様食品は、加熱することにより、水分と脂肪分が分離する現象(オイルオフ)が生じるが、本発明の組成物を含む加工チーズ様食品は、オイルオフ性に優れている(即ち、オイルオフ量が少ない)。また、前記加工チーズ様食品は、味覚にも優れている。
【0045】
前記加工チーズ様食品に含まれる一般式(1)で表される化合物(及びフィチン酸)の含有量は、特に限定されず、所望特性が得られる量で含有することができるが、例えば、チーズ様食品の全質量に対して、1質量%以上であることが好ましく、1.5質量%以上であることがより好ましく、また、5質量%以下であることが好ましく、4質量%以下であることがより好ましい。
【0046】
前記加工チーズ様食品には、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲において、例えば、乳製品、カゼインナトリウム、レシチン、リン酸塩、クエン酸塩、pH調整剤、糖類、安定剤、フレーバー、着色料、保存料等を添加することができる。
【0047】
前記加工チーズ様食品は、本発明の食品の品質改良剤を含むことで、味覚に優れ、加熱により滑らかに溶融することができ、オイルオフ性にも優れるものであり、乳化安定性や耐熱安定性が高いことが認められたことから、例えば、ナチュラルチーズを加熱して製造するプロセスチーズの製造を容易にする効果を有しており、プロセスチーズとしての安定性も優れ、用途も広がる。
【0048】
また、前記混合方法としては、後述の加工食品の製造方法において挙げられる混合方法を好適に採用することができる。
【0049】
4.加工食品の製造方法
本発明の加工食品の製造方法は、食品材料に前記品質改良剤を混合する工程を含むことを特徴とする。
【0050】
前記食品材料、品質改良剤の添加量は、前記のものを採用することができる。
【0051】
前記食品材料に、本発明の食品の品質改良剤を混合する工程の後、加熱や冷凍等の処理をする工程を含んでいてもよい。
【0052】
食品材料に前記品質改良剤を混合する方法としては、特に限定されず、例えば、前記品質改良剤を食品材料に塗布してもよく、食品材料を前記品質改良剤に浸漬してもよく、食品材料に前記品質改良剤を練り込んでもよい。これらの方法は、食品材料の形状にあわせて適宜選択できるが、これらの中でも、保水性効果の観点から、食品材料に前記品質改良剤に浸漬する方法や、食品材料に前記品質改良剤を練り込む方法が好ましい。前記練り込む方法には、注射器等で前記品質改良剤を注入するインジェクション法も含まれる。
【0053】
食品材料を前記品質改良剤に浸漬する方法においては、浸漬時間は特に限定されないが、保水性効果の観点から、1時間以上であることが好ましく、3時間以上であることがより好ましく、5時間以上であることがより好ましく、36時間以下であることが好ましく、24時間以下であることがより好ましく、12時間以下であることがより好ましい。また、浸漬時の前記品質改良剤の温度は特に限定されるものではなく、常温、又は、常温以下(冷蔵下)であってもよい。
【0054】
食品材料に前記品質改良剤を練り込む方法においては、前記品質改良剤の添加量は特に限定されないが、保水性の観点から、食品材料の全質量に対して前記品質改良剤に含まれる一般式(1)で表される化合物(及びフィチン酸)の質量が、0.1質量%以上となることが好ましく、10質量%以下となることが好ましく、5質量%以下となることがより好ましく、3質量%以下となることがより好ましく、1質量%以下となることがさらに好ましい。
【0055】
本発明の品質改良剤を食肉や魚介類等の食品材料に添加し、その後加熱や冷凍する際の加熱方法や冷凍方法は特に限定されるものではなく、食品材料の種類や加工方法に応じて、適宜決めることができる。加熱方法としては、例えば、焼く、煮る、蒸す、炒める、揚げる、茹でる又はそれらの組合せを挙げることができる。また、加熱後に、適宜冷却を行うことができる。また、前記冷凍方法は特に限定されるものではなく、急速冷凍等、通常の方法を採用することができる。
【0056】
本発明の加工チーズ様食品の製造方法は、本発明の食品の品質改良剤を混合する工程を含む以外は、通常のチーズ様食品の製造方法と同様の製造方法を採用することができるが、例えば、ナチュラルチーズ(食品材料)に、本発明の食品の品質改良剤を混合し、加温、攪拌して溶融させ、冷却して製造することができる。
【実施例0057】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
【0058】
また、実施例、比較例で得られた組成物中のリン、ナトリウムの含有量は、以下の測定方法により測定した。
【0059】
<ナトリウム含有量の測定方法>
実施例、比較例で得られたそれぞれの組成物1gを1質量/体積(w/V)%塩酸500mLに溶解し、この液を更に1質量/体積(w/塩酸V)%で500~1000倍希釈した液を原子吸光分光光度計((株)島津製作所製 AA-7000・ナトリウム用ランプ使用))で分析した。別に市販のナトリウム標準溶液(原子吸光用標準液)を1質量/体積(w/V)%塩酸で希釈し、ナトリウム濃度が0、0.1、0.5、1ppmの標準溶液を調製し、上記の組成物同様に原子吸光分光光度計で分析し、検量線を作成した。この検量線を用いて、それぞれの組成物のナトリウム含有量を算出した。
【0060】
<リン含有量の測定方法>
ケルダールフラスコに、実施例、比較例で得られたそれぞれの組成物1gと硫酸20mL、分解促進剤(KJELTABS-C:4.5gK2SO4+0.5gCuSO4・5H2O)を加え、加熱分解した。冷却後、メスフラスコへ全量を移し、水で200mL定容とする。この液0.5mLを50mLメスフラスコにとり、バナジン酸・モリブデン酸試液10mLを加えた後、水を加えて50mL定容とした。波長420nmにおける検液の吸光度を測定した。
別に、リン酸一カリウム標準液10mL(本液1mLは、リン(P)1mgを含む)を100mLメスフラスコにとり水で100mL定容とした。この液0mL、2.5mL、5mL、10mLをそれぞれ50mLメスフラスコにとり、バナジン酸・モリブデン酸試液10mLを加えた後、水を加えて50mL定容とした。波長420nmにおける検液の吸光度を測定し、検量線を作成した。
この検量線を用い、実施例、比較例で得られたそれぞれの組成物のリン量を算出した。
【0061】
<無機リン含有量の測定方法>
実施例、比較例で得られたそれぞれの組成物0.5gをメスフラスコに入れ、水で50mL定容とした。この液2mLを50mLメスフラスコにとり、アスコルビン酸溶液とモリブデン酸アンモニウム試液をそれぞれ5mLずつ加えたあと、酢酸緩衝液で50mL定容とした。波長750nmにおける検液の吸光度を測定した。
別にリン酸一カリウム標準液1mL(本液1mLは、リン(P)1mgを含む)を100mLメスフラスコに量り、水で100mL定容とした。この液0mL、2.5mL、5mL、10mL、20mLをそれぞれ50mLメスフラスコにとり、1質量/体積(w/V)%アスコルビン酸水溶液とモリブデン酸アンモニウム試液をそれぞれ5mLずつ加えたあと、酢酸緩衝液で50mL定容とした。波長750nmにおける検液の吸光度を測定し、検量線を作成した。この検量線を用い、実施例、比較例で得られたそれぞれの組成物のリン量を算出した。
【0062】
<pH測定方法>
JIS Z 8802の手法に従って測定した。
【0063】
<組成物中のヘキサリン酸骨格を有する化合物、ペンタリン酸骨格を有する化合物の組成比(相対面積)の測定方法>
実施例、比較例で得られたそれぞれの組成物0.25gを精密に量り、超純水を加えて正確に25mL水溶液とする。前記水溶液を0.45μmフィルターでろ過し、検液とする。以下の条件のHPLC分析にて測定した。
・移動相 0.05Mギ酸:メタノール=49:51(体積比)100mLに水酸化テトラブチルアンモニウム40%水溶液を1.5mL添加し、9M硫酸の添加によりpH4.3に調整した液
・カラム SHISEIDO CAPCELL PAK C18 SG120S5/4.6mmI.D.×250mm
・カラム温度 40℃
・流速 1.6mL/min
・注入量 10μL
・測定時間 20分(ヘキサリン酸骨格を有する化合物の保持時間6.8分、ペンタリン酸骨格を有する化合物の保持時間5.6分)
・検出器 示差屈折率検出器
【0064】
実施例1(組成物1の製造)
脱脂米糠100gに0.5質量/体積(w/V)%硫酸を1000g加え、常温で1時間撹拌後、水溶性成分を抽出した。その水溶性成分に、50質量/体積(w/V)%水酸化ナトリウムを7g加えろ過後、固体成分に5質量/体積(w/V)%硫酸を5g加え再溶解させた。イオン交換樹脂に通液後、得られた水溶液を濃縮した水溶液(リン含量14.6質量%(内、無機リン量0.28質量%))1Lに50質量%水酸化ナトリウム水溶液350mLを加え、水分を除去することで、ナトリウムが18.21質量%であり、リンが19.6質量%であり、リン/ナトリウムのモル比が0.80である組成物1を得た。前記リン及びナトリウムの含有量は、前記一般式(1)で表される化合物、及びフィチン酸からなる群から選択される2種以上の化合物の合計量に対する量である。前記一般式(1)で表される化合物、及びフィチン酸からなる群から選択される2種以上の化合物が1質量%となる水溶液のpHは、6.5であった。
また、得られた組成物における、ヘキサリン酸骨格を有する化合物及びフィチン酸の含有量は、HPLC分析での全面積に対し80相対面積%であり、ペンタリン酸骨格を有する化合物は、HPLC分析での全面積に対し17相対面積%であった。また、無機リンの量は、一般式(1)で表される化合物、及びフィチン酸からなる群から選択される2種以上の化合物の合計量中、0.40質量%であった。
【0065】
実施例2(組成物2の製造)
50質量%水酸化ナトリウム水溶液の添加量を、350mLから400mLに変更した以外は、実施例1と同様の方法により、ナトリウムが20.24質量%であり、リンが18.4質量%であり、リン/ナトリウムのモル比が0.67である組成物2を得た。前記リン及びナトリウムの含有量は、前記一般式(1)で表される化合物、及びフィチン酸からなる群から選択される2種以上の化合物の合計量に対する量である。前記一般式(1)で表される化合物、及びフィチン酸からなる群から選択される2種以上の化合物が1質量%となる水溶液のpHは、8.0であった。
また、得られた組成物における、ヘキサリン酸骨格を有する化合物及びフィチン酸の含有量は、HPLC分析での全面積に対し81相対面積%であり、ペンタリン酸骨格を有する化合物は、HPLC分析での全面積に対し15相対面積%であった。また、無機リンの量は、一般式(1)で表される化合物、及びフィチン酸からなる群から選択される2種以上の化合物の合計量中、0.31質量%であった。
【0066】
比較例1(組成物3の製造)
50質量%水酸化ナトリウム水溶液の添加量を、350mLから340mLに変更した以外は、実施例1と同様の方法により、ナトリウムが15.62質量%であり、リンが20.4質量%であり、リン/ナトリウムのモル比が0.97である組成物3を得た。前記リン及びナトリウムの含有量は、前記一般式(1)で表される化合物、及びフィチン酸からなる群から選択される2種以上の化合物の合計量に対する量である。前記一般式(1)で表される化合物、及びフィチン酸からなる群から選択される2種以上の化合物が1質量%となる水溶液のpHは、4.0であった。
また、得られた組成物における、ヘキサリン酸骨格を有する化合物及びフィチン酸の含有量は、HPLC分析での全面積に対し75相対面積%であり、ペンタリン酸骨格を有する化合物は、HPLC分析での全面積に対し21相対面積%であった。また、無機リンの量は、一般式(1)で表される化合物、及びフィチン酸からなる群から選択される2種以上の化合物の合計量中、0.83質量%であった。
【0067】
比較例2(組成物4の製造)
50質量%水酸化ナトリウム水溶液の添加量を、350mLから650mLに変更した以外は、実施例1と同様の方法により、ナトリウムが26.39質量%であり、リンが16.8質量%であり、リン/ナトリウムのモル比が0.47である組成物4を得た。前記リン及びナトリウムの含有量は、前記一般式(1)で表される化合物、及びフィチン酸からなる群から選択される2種以上の化合物の合計量に対する量である。前記一般式(1)で表される化合物、及びフィチン酸からなる群から選択される2種以上の化合物が1質量%となる水溶液のpHは、11.3であり、食品への添加には不向きであることが分かった。
また、得られた組成物における、ヘキサリン酸骨格を有する化合物及びフィチン酸の含有量は、HPLC分析での全面積に対し82相対面積%であり、ペンタリン酸骨格を有する化合物は、HPLC分析での全面積に対し15相対面積%であった。また、無機リンの量は、一般式(1)で表される化合物、及びフィチン酸からなる群から選択される2種以上の化合物の合計量中、0.47質量%であった。
【0068】
実施例3(組成物5の製造)
50質量%水酸化ナトリウム水溶液の添加量を、350mLから345mLに変更した以外は、実施例1と同様の方法により、ナトリウムが17.54質量%であり、リンが20.54質量%であり、リン/ナトリウムのモル比が0.87である組成物5を得た。前記リン及びナトリウムの含有量は、前記一般式(1)で表される化合物、及びフィチン酸からなる群から選択される2種以上の化合物の合計量に対する量である。前記一般式(1)で表される化合物、及びフィチン酸からなる群から選択される2種以上の化合物が1質量%となる水溶液のpHは、6.3であった。
また、得られた組成物における、ヘキサリン酸骨格を有する化合物及びフィチン酸の含有量は、HPLC分析での全面積に対し87相対面積%であり、ペンタリン酸骨格を有する化合物は、HPLC分析での全面積に対し12相対面積%であった。また、無機リンの量は、一般式(1)で表される化合物、及びフィチン酸からなる群から選択される2種以上の化合物の合計量中、0.32質量%であった。
【0069】
実施例4(組成物6の製造)
50質量%水酸化ナトリウム水溶液の添加量を、350mLから480mLに変更した以外は、実施例1と同様の方法により、ナトリウムが22.51質量%であり、リンが18.46質量%であり、リン/ナトリウムのモル比が0.61である組成物6を得た。前記リン及びナトリウムの含有量は、前記一般式(1)で表される化合物、及びフィチン酸からなる群から選択される2種以上の化合物の合計量に対する量である。前記一般式(1)で表される化合物、及びフィチン酸からなる群から選択される2種以上の化合物が1質量%となる水溶液のpHは、9.9であった。
また、得られた組成物における、ヘキサリン酸骨格を有する化合物及びフィチン酸の含有量は、HPLC分析での全面積に対し85相対面積%であり、ペンタリン酸骨格を有する化合物は、HPLC分析での全面積に対し13相対面積%であった。また、無機リンの量は、一般式(1)で表される化合物、及びフィチン酸からなる群から選択される2種以上の化合物の合計量中、0.29質量%であった。
【0070】
実施例5(組成物7の製造)
50質量%水酸化ナトリウム水溶液の添加量を、350mLから550mLに変更した以外は、実施例1と同様の方法により、ナトリウムが23.91質量%であり、リンが17.82質量%であり、リン/ナトリウムのモル比が0.55である組成物7を得た。前記リン及びナトリウムの含有量は、前記一般式(1)で表される化合物、及びフィチン酸からなる群から選択される2種以上の化合物の合計量に対する量である。前記一般式(1)で表される化合物、及びフィチン酸からなる群から選択される2種以上の化合物が1質量%となる水溶液のpHは、10.3であった。
また、得られた組成物における、ヘキサリン酸骨格を有する化合物及びフィチン酸の含有量は、HPLC分析での全面積に対し85相対面積%であり、ペンタリン酸骨格を有する化合物は、HPLC分析での全面積に対し13相対面積%であった。また、無機リンの量は、一般式(1)で表される化合物、及びフィチン酸からなる群から選択される2種以上の化合物の合計量中、0.27質量%であった。
【0071】
前記得られた実施例1~5の組成物1、2、5~7、及び比較例1、2の組成物3、4は、一般式(1)で表される化合物を2種以上含むものであった。
【0072】
<チーズの製造1>
製造した組成物1~4を3.0g計量し、それぞれイオン交換水15gを加えて溶解させて、組成物水溶液(1-1)~(1-4)を製造した。別に、300mLビーカーを4個準備し、それぞれに、ナチュラルチーズ(デイリープロダクツソリューションズ(株)・とろけるナチュラルチーズ)を150g量り取り、チーズを約100℃の温浴で加熱攪拌(アンカー型)しながら溶融させ、品温が70℃に到達後、予め製造した組成物水溶液(1-1)~(1-4)をそれぞれ18g加え、混ざるまで撹拌した。チーズと水分が充分に混ざり合ったらセルクル型に流し、冷蔵庫で冷やし固めて、チーズ(1-1)~(1-4)を製造した。製造したチーズ(1-1)~(1-4)に対して、以下の評価を行った。
【0073】
(味覚評価1)
得られたチーズ(1-1)~(1-4)を、被験者18人(20~70代の男女13人)が食し、コク、塩味、苦味、柔らかさを考慮し、最も好ましいチーズを4点、次に好ましいチーズを3点、その次に好ましいチーズを2点、最も好ましくないチーズ1点と評価し、順位付けした。その合計点を表1に示す。
【0074】
【0075】
表1から明らかなように、実施例のチーズ(1-1)、(1-2)が、比較例のチーズ(1-3)、(1-4)よりも、被験者は高得点を与え、チーズとして好ましいことが確認された。
【0076】
(溶融性評価1)
得られたチーズ(1-1)~(1-4)を1cm角にカットしたものそれぞれ3個ずつ準備し、それぞれを別の容器に入れた。各容器を、それぞれ、60℃、80℃、100℃の温度環境下に置き、30分経過後にチーズの様子を観察した。
【0077】
図1に示すように、実施例のチーズ(1-1)、(1-2)は滑らかに溶融した。比較例のチーズ(1-3)、(1-4)は、60℃、80℃では、完全に溶融せず原型を維持しており、100℃で溶融した。これより、実施例のチーズ(1-1)、(1-2)は、加熱により滑らかに溶融するプロセスチーズとして適当であることが分かった。
【0078】
(オイルオフ性評価)
得られたチーズ(1-1)~(1-4)を1.5cm角にカットしたものを準備し、ステンレスシャーレに直径70mmのろ紙(ADVANTEC No.1)を敷いたものを4つ準備し、カットしたチーズ(1-1)~(1-4)をそれぞれろ紙上の中央に置いた。その後、80℃の恒温器に15分間入れ、取り出した後室温で3分間放置し、ろ紙に染み出たオイルの面積を、CADを使用して測定した(
図2)。また、比較例3として、組成物1の代わりに、ポリリン酸ナトリウムを使用した以外は同様の方法で製造した比較チーズについてもオイルオフ性を評価した。
【0079】
【0080】
図2及び表2から、比較例のチーズ(1-3)、(1-4)と比較して、実施例のチーズ(1-1)、(1-2)が、オイルオフ面積が小さく、チーズの水分と脂肪の分離が抑えられていることが確認された。また、チーズ(1-1)、(1-2)は、溶融塩として使用されるポリリン酸ナトリウムを使用して製造した比較チーズと比較してもオイルオフ面積が小さいことが確認された。
【0081】
<チーズの製造2>
製造した組成物1~7を3.0g計量し、それぞれイオン交換水15gを加えて溶解させて、組成物水溶液(2-1)~(2-7)を製造した。別に、300mLビーカーを7個準備し、それぞれに、ナチュラルチーズ((株)シジシージャパン、断然お得とろけるミックスチーズ)を150g量り取り、チーズを約100℃の温浴で加熱攪拌(アンカー型)しながら溶融させ、品温が70℃に到達後、予め製造した組成物水溶液(2-1)~(2-7)をそれぞれ18g加え、混ざるまで撹拌した。チーズと水分が充分に混ざり合ったらセルクル型に流し、冷蔵庫で冷やし固めて、チーズ(2-1)~(2-7)を製造した。製造したチーズ(2-1)~(2-7)に対して、以下の評価を行った。
【0082】
(溶融性評価2)
得られたチーズ(2-1)~(2-7)を15mm角にカットしたものそれぞれ3個ずつ準備し、それぞれを別の容器に入れた。各容器を、それぞれ、80℃の温度環境下に置き、15分加熱し、加熱停止してから3分経過後、チーズの様子をチーズ上部から観察した。加熱後チーズの面積(mm2)を測定し、加熱前のチーズ面積(225mm2)を引いた値をメルト面積とした。その結果を、以下の表3に示す。
【0083】
【0084】
表3から、実施例のチーズ(2-1)、(2-2)、(2-5)~(2-7)は、比較例1のチーズ(2-3)と比較して滑らかに溶融した。比較例1のチーズ(2-3)は、完全に溶融せず原型を維持していた。また、比較例2のチーズ(2-4)、実施例のチーズ(2-1)、(2-2)、(2-5)~(2-7)は、加熱により滑らかに溶融するプロセスチーズとして適当であることが分かった(但し、比較例2のチーズ(2-4)は、溶融性はよいものの、前記記一般式(1)で表される化合物、及びフィチン酸からなる群から選択される2種以上の化合物が1質量%となる水溶液のpHは、11.3であり、食品への添加には不向きである)。
【0085】
(味覚評価2)
得られたチーズ(2-1)~(2-7)を、被験者15人(20~60代の男女15人)が食し、コク、塩味、苦味、柔らかさを考慮し、最も好ましいチーズを選んでもらったところ、過半数以上がチーズ(2-6)を選択した。チーズの味覚として、チーズ(2-6)が最も好まれることが分かった。
【0086】
(チーズの硬さの評価)
得られたチーズ(2-1)~(2-7)を、20mm×20mm×15mmの大きさに切りだし、小型卓上試験機EZ Test(EZ-SX)((株)島津製作所製)にて、球型押し治具(球部7φ)を20mm/秒の速度で13mm降下させた際の最大試験力(N)を測定した。その結果を
図6に示す。
【0087】
<ボイルエビの製造>
製造した組成物1~4の1.5質量%水溶液1~4(食塩2質量%含有)をそれぞれ200mL製造した。予め質量(浸漬前質量)を測定した殻をむいたエビを、前記水溶液1~4のそれぞれに、室温にて21時間浸漬した。水溶液からエビを取り出し、表面の水分をふき取った後、浸漬後質量を測定した。その後、500mLの沸騰水で、エビを2分間茹でた後、流水で1分間冷却し、表面の水分をふき取った後、加熱後質量を測定した。また、コントロール(比較例4)として、本発明の組成物1~4を添加しない水溶液に浸漬した以外は同様の方法によりボイルエビを製造した(
図3)。
【0088】
組成物1~4を使用した実施例1、2、比較例1、2のボイルエビを分析したところ、組成物1~4がボイルエビに含まれていることが分かった。
【0089】
(弾力評価)
得られたボイルエビ1~4及びコントロールのボイルエビを、被験者(20~70代の男女13人)が食し、弾力について、コントロールのボイルエビを基準として評価した。コントロールのボイルエビより弾力が強いものを「5点」、わずかに弾力が強いものを「4点」、コントロールと同程度のものを「3点」、わずかに弾力が弱いものを「2点」、弱いものを「1点」と評価し、順位付けした。その合計点を表4に示す。
【0090】
【0091】
表4、
図3から、コントロールのボイルエビと比較して、実施例1、2、比較例2のエビは加熱後の質量増加が高く、保水性が高いことが分かった。一方、比較例1のボイルエビは保水性が低いものであった。また、被験者による弾性評価については、実施例1、2のボイルエビは、弾力もコントロールと同程度、又はわずかに弾力が高いものであり、ボイルエビとして適度な弾力を有しているとの評価を得た。一方、比較例1のボイルエビは、水分が抜けてパサついて硬いものであり、コントロールと比較して大幅に弾力が高いものであり、比較例2のボイルエビは、肉質が柔らかく水っぽいものであり、弾力も著しく低いものであるとの評価を得た。従って、実施例のボイルエビが、保水性、弾性評価の点から、比較例より優れていることが分かった。
【0092】
<加熱食肉の製造>
水95g、塩4g、得られた組成物1~4をそれぞれ1g添加して、品質改良剤1~4を製造した。また、コントロールとして、水96g、塩4gを添加したコントロール液を製造した。豚ひき肉130gに対して、前記品質改良剤1~4、コントール液を、それぞれ78g(肉質量に対して60%)を加えて馴染ませ、1晩(18時間)冷蔵庫で静置した。その後、フードプロセッサーで1分間攪拌し、チャック袋に入れて加熱前の肉質量を測定した。チャック袋内で円柱型に整形し、75℃の温浴で90分加熱後、流水で常温まで冷却した。完全に冷めたら肉を取り出し、加熱後の肉質量を測定した。
【0093】
(評価)
得られた加熱食肉1~4及びコントロールの加熱食肉を、被験者(20~70代の男女13人)が食し、しっとり感について、コントロールの加熱食肉を基準として評価した。コントロールの加熱食肉よりしっとり感が強いものを「5点」、わずかに強いものを「4点」、コントロールと同程度のものを「3点」、わずかにしっとり感が弱いものを「2点」、しっとり感が弱いものを「1点」と評価し、順位付けした。その合計点を表5に示す。
【0094】
【0095】
表5から、コントロールの加熱食肉と比較して、実施例1、2の加熱食肉は加熱後の質量減少率が低く、保水性が高いことが分かる。また、
図4、5から、実施例1、2の加熱食肉は断面のパサつきがないことが分かる。また、比較例1の加熱食肉は質量減少率が大きく、保水性が低く、水分が抜けてパサついて硬いものであった。また、比較例2の食肉は加熱後の保水性が高いものの、そもそも比較例2の組成物のpHが高く、食品用途には適さないものであった。
【0096】
実施例6(組成物8の製造)
脱脂米糠100gに0.5質量/体積(w/V)%硫酸を1000g加え、常温で1時間撹拌後、水溶性成分を抽出した。その水溶性成分に、50質量/体積(w/V)%水酸化ナトリウムを7g加えろ過後、固体成分に5質量/体積(w/V)%硫酸を5g加え再溶解させた。イオン交換樹脂に通液後、得られた水溶液を濃縮した水溶液(リン含量14.6質量%(内、無機リン量0.28質量%))1Lに50質量%水酸化カリウム水溶液755mLを加え、水分を除去することで、カリウムが29.25質量%であり、リンが15.74質量%であり、リン/カリウムのモル比が0.68である組成物8を得た。前記リン及びカリウムの含有量は、前記一般式(1)で表される化合物、及びフィチン酸からなる群から選択される2種以上の化合物の合計量に対する量である。
また、得られた組成物における、ヘキサリン酸骨格を有する化合物及びフィチン酸の含有量は、HPLC分析での全面積に対し83相対面積%であり、ペンタリン酸骨格を有する化合物は、HPLC分析での全面積に対し15相対面積%であった。また、無機リンの量は、一般式(1)で表される化合物、及びフィチン酸からなる群から選択される2種以上の化合物の合計量中、0.29質量%であった。
【0097】
比較例6(組成物9の製造)
50質量%水酸化カリウム水溶液の添加量を、755mLから480mLに変更した以外は、実施例6と同様の方法により、カリウムが22.01質量%であり、リンが18.59質量%であり、リン/カリウムのモル比が1.06である組成物9を得た。前記リン及びカリウムの含有量は、前記一般式(1)で表される化合物、及びフィチン酸からなる群から選択される2種以上の化合物の合計量に対する量である。
また、得られた組成物における、ヘキサリン酸骨格を有する化合物及びフィチン酸の含有量は、HPLC分析での全面積に対し84相対面積%であり、ペンタリン酸骨格を有する化合物は、HPLC分析での全面積に対し15相対面積%であった。また、無機リンの量は、一般式(1)で表される化合物、及びフィチン酸からなる群から選択される2種以上の化合物の合計量中、0.35質量%であった。
【0098】
前記得られた実施例6、比較例6の組成物8、9は、一般式(1)で表される化合物を2種以上含むものであった。
【0099】
<チーズの製造3>
製造した組成物8、9を3.0g計量し、それぞれイオン交換水15gを加えて溶解させて、組成物水溶液8、9を製造した。別に、300mLビーカーを2個準備し、それぞれに、ナチュラルチーズ((株)シジシージャパン、断然お得とろけるミックスチーズ)を150g量り取り、チーズを約100℃の温浴で加熱攪拌(アンカー型)しながら溶融させ、品温が70℃に到達後、予め製造した組成物水溶液8、9をそれぞれ18g加え、混ざるまで撹拌した。チーズと水分が充分に混ざり合ったらセルクル型に流し、冷蔵庫で冷やし固めて、チーズ8、9を製造した。製造したチーズ8、9に対して、成形性や上記(溶融性評価2)を行った。その結果、実施例6のチーズ8は、成形性、溶融性のいずれも実施例1~4のフィチン酸ナトリウム塩を使用した場合と同程度の結果を得ることができた。比較例6のチーズ9は、柔らかく、成形時に型から流れ出てしまい、成形性の点で劣るものであった。
【0100】
実施例7(組成物10の製造)
脱脂米糠100gに0.5質量/体積(w/V)%硫酸を1000g加え、常温で1時間撹拌後、水溶性成分を抽出した。その水溶性成分に、50質量/体積(w/V)%水酸化ナトリウムを7g加えろ過後、固体成分に5質量/体積(w/V)%硫酸を5g加え再溶解させた。イオン交換樹脂に通液後、得られた水溶液(リン含量1.4質量%(内、無機リン量0.03質量%))1Lに、酸化マグネシウム12.4gを水30gに懸濁した液を加え、水分を除去することで、マグネシウムが9.7質量%であり、リンが19.8質量%であり、リン/マグネシウムのモル比(リンのモル数/(マグネシウムのモル数×2))が0.80である組成物10を得た。前記リン及びマグネシウムの含有量は、前記一般式(1)で表される化合物、及びフィチン酸からなる群から選択される2種以上の化合物の合計量に対する量である。前記一般式(1)で表される化合物、及びフィチン酸からなる群から選択される2種以上の化合物が1質量%となる水溶液のpHは、5.31であった。
また、得られた組成物における、ヘキサリン酸骨格を有する化合物及びフィチン酸の含有量は、HPLC分析での全面積に対し84相対面積%であり、ペンタリン酸骨格を有する化合物は、HPLC分析での全面積に対し14相対面積%であった。また、無機リンの量は、一般式(1)で表される化合物、及びフィチン酸からなる群から選択される2種以上の化合物の合計量中、0.27質量%であった。
【0101】
実施例8(組成物11の製造)
酸化マグネシウムの添加量を、12.4gから18.1gに変更した以外は、実施例7と同様の方法により、マグネシウムが13.2質量%であり、リンが19.0質量%であり、リン/マグネシウムのモル比(リンのモル数/(マグネシウムのモル数×2))が0.57である組成物11を得た。前記リン及びマグネシウムの含有量は、前記一般式(1)で表される化合物、及びフィチン酸からなる群から選択される2種以上の化合物の合計量に対する量である。前記一般式(1)で表される化合物、及びフィチン酸からなる群から選択される2種以上の化合物が1質量%となる水溶液のpHは、6.53であった。
また、得られた組成物における、ヘキサリン酸骨格を有する化合物及びフィチン酸の含有量は、HPLC分析での全面積に対し84相対面積%であり、ペンタリン酸骨格を有する化合物は、HPLC分析での全面積に対し14相対面積%であった。また、無機リンの量は、一般式(1)で表される化合物、及びフィチン酸からなる群から選択される2種以上の化合物の合計量中、0.23質量%であった。
【0102】
比較例7(組成物12の製造)
酸化マグネシウムの添加量を、12.4gから7.2gに変更した以外は、実施例7と同様の方法により、マグネシウムが6.1質量%であり、リンが20.5質量%であり、リン/マグネシウムのモル比が1.31である組成物12を得た。前記リン及びマグネシウムの含有量は、前記一般式(1)で表される化合物、及びフィチン酸からなる群から選択される2種以上の化合物の合計量に対する量である。前記一般式(1)で表される化合物、及びフィチン酸からなる群から選択される2種以上の化合物が1質量%となる水溶液のpHは、2.32であった。
また、得られた組成物における、ヘキサリン酸骨格を有する化合物及びフィチン酸の含有量は、HPLC分析での全面積に対し86相対面積%であり、ペンタリン酸骨格を有する化合物は、HPLC分析での全面積に対し13相対面積%であった。また、無機リンの量は、一般式(1)で表される化合物、及びフィチン酸からなる群から選択される2種以上の化合物の合計量中、0.29質量%であった。
【0103】
前記得られた実施例7、8、比較例7の組成物10~12は、一般式(1)で表される化合物を2種以上含むものであった。