(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114662
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】耕作作業刃
(51)【国際特許分類】
A01B 13/10 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
A01B13/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024018635
(22)【出願日】2024-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2023019199
(32)【優先日】2023-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】593203619
【氏名又は名称】セイカン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138519
【弁理士】
【氏名又は名称】奥谷 雅子
(72)【発明者】
【氏名】菅野 鋭三
【テーマコード(参考)】
2B032
【Fターム(参考)】
2B032AA07
2B032DA01
2B032DB04
2B032DB06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】耕作作業用爪の部分における各構成要素及び走行車にかかる掘削抵抗を効果的に軽減しつつ、耕作作業用爪の各構成要素の耐久性を改善し、各構成要素、特に耕作刃の各構成要素の修理・交換等のメンテナンスコストを削減する。
【解決手段】掘削方向側の端部に配置されたチゼルと、前記チゼルを耕作機本体に設置されているアームに取り付けるためのブラケットからなり、前記チゼルにおいて、その幅方向の中央部に突出部分を設けてなる、耕作刃。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削方向側の端部に配置されたチゼルと、
前記チゼルを耕作機本体に設置されているアームに取り付けるためのブラケットからなり、
前記チゼルにおいて、その幅方向の中央部に突出部分を設けてなる、耕作刃。
【請求項2】
前記チゼルの突出部分の先端が掘削方向に傾斜を有し、かつ前記チゼルの本体の先端部も掘削方向に傾斜を有する、請求項1に記載の耕作刃。
【請求項3】
前記チゼルの突出部分の先端における傾斜が、前記チゼルの本体の傾斜よりも鈍角である、請求項2に記載の耕作刃。
【請求項4】
前記チゼルの左右端が、前記チゼル本体より垂直上に延伸する側面を有する、
請求項1に記載の耕作刃。
【請求項5】
前記ブラケットが、前記アームの幅方向に勘合する切りかけ部分と、勘合したアームとを結合する結合固定機構と、前記チゼルを掘削方向に結合するための結合固定機構を備える、
請求項1に記載の耕作刃。
【請求項6】
前記チゼルの裏面と前記ブラケット表面とが勘合する機構をさらに備える、請求項4に記載の耕作刃。
【請求項7】
前記アームに掘削板を設けてなる、請求項1に記載の耕作刃。
【請求項8】
前記掘削板が、前記ブラケットの左右に個別に設置されている、請求項7に記載の耕作刃。
【請求項9】
請求項1に記載の耕作刃を備える、耕作機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耕作地等を耕起するとともに、作土や心土を破砕して耕作地の通気性や透排水性を改善する耕起作業装置に用いられる耕作刃に関する。
【背景技術】
【0002】
耕起作業装置に用いられる耕作作業用の刃は、土中に挿し込んだ状態でトラクタ等の走行車で耕起作業装置を牽引し、圃場を耕起するとともに、作土や心土(不透水層)を破砕して、この圃場の通気性や透排水性を改善するようになっている。
【0003】
下記特許文献1に記載のものは、掘削された心土部分の掘削土を持ち上げて作業進行方向側方に土を掘り起こしたときの掘削抵抗に関していえば、チゼルや掘削板に作用する掘削抵抗の改善を鑑みて、各構成要素及び走行車にかかる掘削抵抗を効果的に軽減できること、これによって、耕起作業爪における各構成要素の耐久性の向上ができること、出力の低い走行車を使用できること、更に、耕起作業爪の各構成要素の耐久性が向上することで、この耕起作業爪の各構成要素の修理・交換等のメンテナンスコストを削減できること、出力の低い走行車を使用することで、燃料費を削減できること、出力の低い走行車を使用しても効率的な掘削作業ができること等を目的として、耕作作業用爪の各構成を分割できるとともに、チゼルの幅方向に切りかけ部分を設けてなる耕作作業用爪が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この耕作作業用爪並びに従来の耕作用爪は、土への掘削力を担保するために、その先端を掘削方向に傾斜をつけて所謂刃状にしているものが多い。このような形状は、土に食い込む力が一定程度担保できるものであっても、当然にその先端が鋭くなくなっていき、土に刺さらなくなっていく。そのため、先端部の摩耗量(使用により減っていくこと)に関しては、いまだ改善の余地があるものであった。
【0006】
大規模農業においては当然に耕作機も大型になり、耕作機や耕作作業用の爪も大型になり、当然にチゼル部分にもより大きな負担がかかるものとなっている。耕作機の大型化は当然に耕作作業用爪の各部品も大型になり、長く使用できるチゼルに対しての需要がある。
【0007】
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、耕作作業用爪の部分における各構成要素及び走行車にかかる掘削抵抗を効果的に軽減しつつ、耕作作業用爪の各構成要素の耐久性を改善し、各構成要素とくに、耕作刃のコストを削減でき、効率的な耕作ができること、等が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、本発明による耕作刃は、以下の構成を少なくとも具備するものである。
【0009】
掘削方向側の端部に配置されたチゼルと、
前記チゼルを耕作機本体に設置されているアームに取り付けるためのブラケットからなり、
前記チゼルにおいて、その幅方向の中央部に突出部分を設けてなる、耕作刃。
【0010】
前記チゼルの突出部分の先端が掘削方向に傾斜を有し、かつ前記チゼルの本体の先端部も掘削方向に傾斜を有する、上記記載の耕作刃。
【0011】
前記チゼルの突出部分の先端における傾斜が、前記チゼルの本体の傾斜よりも鈍角である、上記いずれかに記載の耕作刃。
【0012】
前記チゼルの左右端が、前記チゼル本体より垂直上に延伸する側面を有する、
上記いずれかに記載の耕作刃。
【0013】
前記ブラケットが、前記アームの幅方向に勘合する切りかけ部分と、勘合したアームとを結合する結合固定機構と、前記チゼルを掘削方向に結合するための結合固定機構を備える、
上記いずれかに記載の耕作刃。
【0014】
前記チゼルの裏面と前記ブラケット表面とが勘合する機構をさらに備える、上記いずれかに記載の耕作刃。
【0015】
前記アームに掘削板を設けてなる、上記いずれかに記載の耕作刃。
【0016】
前記掘削板が、前記ブラケットの左右に個別に設置されている、上記いずれかに記載の耕作刃。
【0017】
上記いずれかに記載の耕作刃を備える、耕作機。
【発明の効果】
【0018】
このような特徴を有することで本発明は、チゼルにおいて、その幅方向の中央部に突出部分を設けてなることにより、耕起能力を向上するだけでなく、チゼル自体の耐摩耗性を向上することができ、耕作刃をより長期間使用することができる。
【0019】
また、本発明は、チゼルの突出部分の先端が掘削方向に傾斜を有し、かつ前記チゼルの先端において中央部分が左右よりも厚みを有することにより、上記の効果に加え耕起力を向上しつつ、各種規模の耕作機にも耐えうる耕作刃を実現する。
【0020】
また、本発明は、チゼルの左右端が、前記チゼル本体より上に延伸する側面を有することにより、耕起時に土の流れを整えるとともに、チゼルの左右端の鋭角性を保ち耕起能力を長く維持することができる。また、チゼル本体より上に延伸する側面が左右平行に構成されていることにより、耕作機の進行方向に沿って耕起することができる。
【0021】
また、本発明は、前記ブラケットが、前記アームの幅方向に勘合する切りかけ部分と、勘合したアームとを結合する結合固定機構と、前記チゼルを掘削方向に結合するための結合固定機構を備えることにより、この切りかけ部分および結合固定機構を調整することにより、形状の異なるアームに取り付けることが可能となる
【0022】
また、本発明は、前記アームに掘削板を設けることにより突出部分を備えるチゼルの耕作力をより補強することができる。
【0023】
また、本発明は、前記掘削板が、前記ブラケットの左右に個別に設置されていることにより、掘削幅を改善することができ、いずれかを交換することもできるため、メンテナンスや維持費用を軽減できる。
【0024】
また、本発明は、上記いずれかに記載の耕作刃を備える、耕作機であることにより、前記チゼルによる有効な耕作力を備えつつ、長期にわたる維持費用を軽減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明に係る耕作作業用爪の概要を示す図である。
【
図2】本発明の他の態様に係る耕作作業用爪の概要を示す図である。
【
図3】
図2における耕作作業用爪のブラケット5表面の詳細を示す図である。
【
図4】
図2におけるチゼル4の背面を示す図である。
【
図5】
図2におけるブラケット5とチゼル4の勘合形態を説明する図である。
【
図6】
図1におけるウイング3の形態を従来のウイング3’と比較する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の耕作刃の実施形態を図面に基づいて説明する。以下で例示する耕作刃の構成は、本発明を限定するものではない。また、以下では、掘削方向を前方、反掘削方向を後方、掘削方向と交差する方向を幅方向として説明する。
【0027】
図1は、本実施形態を耕起作業装置Aとして説明する。この耕起作業装置Aは、フレームAと、走行車(図示せず)に連結する連結部(図示せず)と、チゼル1を支持したブラケット2と、ブラケット2の後方に配置され、アームAに取り付けられるウイング3を備える。
【0028】
チゼル1は、略長方形上にその幅方向の中央付近に突出部11を備える。突出部11はチゼル1本体の先端部よりも肉厚に構成されており、前方に傾斜が設けられている。この傾斜は、所謂刃のように先端を鋭く構成することもできるし、本実施態様にように少しの厚みを残していてもよい。このように構成することで、着地の瞬間にこの突出部分が土に先に侵入して耕作することにより、突出部分の後方左右に位置するチゼル本体の先端が、着地の瞬間の衝撃から一定程度守られるため、チゼルの先端を保護することができる。また、この突出部分はチゼルの先端部分よりも厚みがあり、長さがあるため圃場作土へのアプローチにも有利である。また、チゼル1のような構成をとることにより、土中の石や埋没物への衝突においてもチゼル全体を保護する役割がある。
【0029】
チゼル1の左右部分は、チゼル本体よりも上部に突出した側面12を有する。この側面があることにより、チゼル本体が耕起方向から受ける力によりチゼル本体の端部の鋭角性を維持することができ、ゆえに耕起力を長く維持することができる。また、側面12は平行に構成されていることにより、耕起時の方向に土のながれを整える作用がある。耕起力を向上させるためには、チゼルを肉厚にし、剛性のすぐれた素材で製造する方法を取ることもできるが、本発明のチゼルはそのようなチゼルよりも軽量で優れた耕起力と耐摩耗性を備える。
【0030】
チゼル1には、後述するブラケット2に取り付けるための結合固定機構を備える。この結合固定機構13は、本実施態様においては、ナットとボルトでブラケット2に結合可能な穴となっているが、他の手段も本発明に含まれる。
【0031】
次に、チゼル1は結合固定機構13によりブラケット2を介して、アームAに取り付けられる。ブラケット2には、アームAが勘合する切りかけ部21を備える。この切りかけ分を適宜変更することにより、本発明のチゼルはブラケットを介して各種アームに結合することができる。
【0032】
また、ブラケット2はチゼル1と結合する結合固定機構22と、アームAと結合するための結合固定機構23を備える。本実施態様においては、ナットとボルトでチゼル1およびアームAに結合可能となっているが、他の結合手段も本発明に含まれる。
【0033】
次に、本実施態様において、チゼル1の後方でアームAに結合される掘削板(ウイング3)を備える。 ウイング3は、結合機構32によりアームAに結合することができる。本実施態様では、ウイング3は上部から下部にかけて略台形に形成され、幅方向に略3分割し、左右両側が前方向にせり出している面31を備える。前記左右両側の形状は
図1に示す通り、上から下にかけて幅を広く構成してもよい。このように構成することにより、摩耗が激しい左右両側の下端の体積を維持することができ、このことがウイングの耕起力を維持することになる。
【0034】
次に、
図2を参照して本発明の他の実施態様を耕起作業装置Bとして説明する。この耕起作業装置Bは、フレームBと、走行車(図示せず)に連結する連結部(図示せず)と、チゼル4を支持したブラケット5と、ブラケット5の左右に配置され、ブラケット5に取り付けられるウイング6Lおよび6Rを備える。
【0035】
チゼル4は、略長方形上にその幅方向の中央付近に突出部41を備える。突出部41はチゼル4本体の先端部よりも肉厚に構成されており、前方に傾斜が設けられている。この傾斜は、所謂刃のように先端を鋭く構成することもできるし、本実施態様にように少しの厚みを残していてもよい。このように構成することで、着地の瞬間にこの突出部分が土に先に侵入して耕作することにより、突出部分の後方左右に位置するチゼル本体の先端が、着地の瞬間の衝撃から一定程度守られるため、チゼルの先端を保護することができる。また、この突出部分はチゼルの先端部分よりも厚みがあり、長さがあるため圃場作土へのアプロ―にも有利である。また、チゼル4のような構成をとることにより、土中の石や埋没物への衝突においてもチゼル全体を保護する役割がある。
【0036】
チゼル4の左右部分は、チゼル本体よりも上部に突出した側面42を有する。この部分にも厚みを持たせることにより、チゼル本体が耕起方向から受ける力によりチゼル本体の端部の鋭角性を維持することができ、ゆえに耕起力を長く維持することができる。また、側面42は平行に構成されていることにより、耕起時の方向に土のながれを整える作用がある。耕起力を向上させるためには、チゼルを肉厚にし、剛性のすぐれた素材で製造する方法を取ることもできるが、本発明のチゼルはそのようなチゼルよりも軽量で優れた耕起力と耐摩耗性を備える。
【0037】
チゼル4には、後述するブラケット5に取り付けるための結合固定機構を備える。この結合固定機構43は、本実施態様においては、ナットとボルトでブラケット5に結合可能な穴となっているが、他の手段も本発明に含まれる。あるいは、ナットボルト止めのほかに、補助的な結合要素を加えてもよい。例えば、チゼル4とブラケット5の接触する面に凹凸を利用した勘合部を構成することもできる。
具体的には、ブラケット表面には凸部511が2つあり、その突起の間にチゼル4の裏面にある切りかけ部411を嵌めて固定することができる(
図3、
図4および
図5)。
【0038】
次に、チゼル4は結合固定機構43によりブラケット5を介して、アームBに取り付けられる。ブラケット5には、アームBが勘合する突出部51を備える。この突出部を適宜変更することにより、本発明のチゼルはブラケットを介して各種アームに結合することができる。
【0039】
また、ブラケット5はチゼル4と結合する結合固定機構52と、アームBと結合固定するための結合固定機構53を備える。本実施態様においては、ナットとボルトでチゼル4およびアームBに結合可能となっているが、他の手段も本発明に含まれる。また、本実施態様において、アームBに固定するための結合固定機構は、ブラケットとチゼルを固定する結合固定機構と同じ機構でもよい。具体的には、下方から順にアームB、ブラケット5、チゼル4を重ねて固定するように、それぞれの構成に共通するボルト・ナット留をできる穴を有していてもよい。
【0040】
次に、本実施態様において、ブラケット5の左右で掘削板(ウイング6Lおよび6R)が結合される。本実施態様は、ウイング6Lおよび6Rは掘削方向に交差する方向にブラケット5に結合固定される。ウイング6Lおよび6Rは前方から後方にかけて直線的な切りかけ部分を有し、この切りかけ部分に傾斜をつけて、刃のような構造としてもよい。結合固定機構は本発明において特に重要ではないが、本実施態様では、ボルト・ナット留め可能な穴を例示している。
【0041】
本実施態様において、ブラケットとアームの間に、耕作土を持ち上げて放り出すための、板(7)を適宜設けることもできる。
【0042】
本発明における耕作刃の各要素は、鉄製の板状のものが好ましいが、構成により素材は適宜選択可能である。また、各構成用途における大きさは、取り付ける耕作機本体の構成や大きさや、用途により適宜選択可能である。さらに、各構成要素に耐構成や耐錆性を備えるための各種コーティングについても、当業者が適宜選択可能なものである。
【0043】
尚、本発明は、例示した実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲の各項に記載された内容から逸脱しない範囲の構成による実施が可能である。
【符号の説明】
【0044】
1、4:チゼル
2、5:ブラケット
3、6:ウイング
A、B:アーム