(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114671
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】圃場管理システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/02 20240101AFI20240816BHJP
【FI】
G06Q50/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024018862
(22)【出願日】2024-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2023019615
(32)【優先日】2023-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】505142964
【氏名又は名称】株式会社クボタケミックス
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】井内 友昭
(72)【発明者】
【氏名】四元 友治
(72)【発明者】
【氏名】西沢 博貴
(72)【発明者】
【氏名】伊庭 弘貴
(57)【要約】
【課題】圃場の水位に関する情報を容易に把握することが可能な圃場管理システムを提供する。
【解決手段】圃場Hに設けられて当該圃場Hの水位を調節する水位調節手段に関する水位調節手段情報を取得する情報取得部、又は、圃場Hを含む領域を撮影した画像を取得する画像取得部の少なくとも一方を有する取得部16aと、取得部16aの取得結果に基づいて、圃場Hの水位に関する判定処理を行う判定部16eと、を具備し、取得部16aは、水位調節手段情報取得部及び画像取得部の双方を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場に設けられて当該圃場の水位を調節する水位調節手段に関する水位調節手段情報を取得する情報取得部、又は、前記圃場を含む領域を撮影した画像を取得する画像取得部の少なくとも一方を有する取得部と、
前記取得部の取得結果に基づいて、前記圃場の水位に関する判定処理を行う判定部と、を具備する、圃場管理システム。
【請求項2】
前記取得部は、
前記情報取得部及び前記画像取得部の双方を有する、請求項1に記載の圃場管理システム。
【請求項3】
前記水位調節手段は、
前記圃場に給水する給水栓、前記圃場に給水する給水ポンプ、前記圃場への給水を調節する給水堰、前記圃場から排水する排水栓、前記圃場から排水する排水ポンプ、又は、前記圃場からの排水を調節する排水堰の少なくとも1つを含み、
前記水位調節手段情報は、
前記給水栓の開度に関する情報、前記給水ポンプの動作状態に関する情報、前記給水堰の状態に関する情報、前記排水栓の開度に関する情報、前記排水ポンプの動作状態に関する情報、前記排水堰の状態に関する情報、又は、前記圃場の水位に関する情報の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の圃場管理システム。
【請求項4】
前記画像は、
前記圃場を含む領域を上空から撮影した上空画像を含み、
前記判定部は、
前記判定処理として、前記水位調節手段情報及び前記上空画像の取得結果に基づいて、前記圃場の表面に水があるか否かを判定する第1判定処理を行う、請求項1に記載の圃場管理システム。
【請求項5】
前記画像取得部は、
撮影日時の異なる複数の前記画像を取得する、請求項1に記載の圃場管理システム。
【請求項6】
前記画像は、
衛星によって撮影される衛星写真である、請求項1に記載の圃場管理システム。
【請求項7】
前記画像は、
前記圃場の上空を飛行する飛行体によって撮影される航空写真である、請求項1に記載の圃場管理システム。
【請求項8】
前記水位調節手段情報は、
前記給水位調節手段が設けられる圃場固有の情報を含む、請求項1に記載の圃場管理システム。
【請求項9】
圃場の区画情報に基づいて、前記画像に写った前記圃場を区画する区画部をさらに具備する、請求項1に記載の圃場管理システム。
【請求項10】
前記判定部の判定結果に基づいてAWD栽培の状態又は中干状態の少なくとも一方を推定する推定部をさらに具備する、請求項1に記載の圃場管理システム。
【請求項11】
前記判定部の判定結果に基づいて、前記圃場からのメタン排出量、又は、所定の基準値に対する前記圃場でのメタン減少量の少なくとも一方を算出する算出部をさらに具備する、請求項1に記載の圃場管理システム。
【請求項12】
前記算出部は、
前記メタン排出量又は前記メタン減少量の少なくとも一方の算出結果を、二酸化炭素の量に換算する、請求項11に記載の圃場管理システム。
【請求項13】
前記算出部の算出結果に関する報告書を作成する作成部をさらに具備する、請求項11に記載の圃場管理システム。
【請求項14】
前記圃場を撮影した画像データと、当該圃場を識別する識別情報とを互いに関連付けて記憶する第1情報処理装置をさらに具備する、請求項1に記載の圃場管理システム。
【請求項15】
前記画像は、
作業者が所有する作業者端末によって撮影される端末画像を含み、
前記判定部は、
前記判定処理として、前記端末画像から取得された前記圃場の水位を示す情報と、予め規定される水位との大小関係を判定する第2判定処理を行う、請求項1に記載の圃場管理システム。
【請求項16】
前記水位調節手段を撮影した画像から、位置情報又は前記水位調節手段ごとに与えられた識別情報を取得し、前記水位調節手段の位置情報として記憶する第2情報処理装置をさらに具備する、請求項1から請求項15のいずれか一項に記載の圃場管理システム。
【請求項17】
前記水位調節手段は、
前記圃場に給水する給水栓、前記圃場に給水する給水ポンプ、前記圃場への給水を調節する給水堰、前記圃場から排水する排水栓、前記圃場から排水する排水ポンプ、又は、前記圃場からの排水を調節する排水堰の少なくとも1つを含み、
前記水位調節手段情報は、
前記給水栓の開度に関する情報、前記給水ポンプの動作状態に関する情報、前記給水堰の状態に関する情報、前記排水栓の開度に関する情報、前記排水ポンプの動作状態に関する情報、又は、前記排水堰の状態に関する情報の少なくとも1つを含み、
前記圃場管理システムは、
前記水位調節手段を撮影した画像から、画像認識により前記水位調節手段情報に含まれる情報を取得して記憶する第3情報処理装置をさらに具備する、請求項1から請求項15のいずれか一項に記載の圃場管理システム。
【請求項18】
前記圃場を撮影した画像から、前記圃場の位置情報又は前記圃場ごとに付与された識別情報を取得し、前記圃場の位置情報又は識別情報として記憶する第4情報処理装置をさらに具備する、請求項1から請求項15のいずれか一項に記載の圃場管理システム。
【請求項19】
前記圃場を撮影した画像から、画像認識により前記圃場の水位を示す情報を取得して記憶する第5情報処理装置をさらに具備する、請求項1から請求項15のいずれか一項に記載の圃場管理システム。
【請求項20】
前記作業者端末は、
衛星測位システムを備えた機器である、請求項1から請求項15のいずれか一項に記載の圃場管理システム。
【請求項21】
圃場に設けられて当該圃場の水位を調節する水位調節手段に関する水位調節手段情報を取得する情報取得部、又は、前記圃場を含む領域を撮影した画像を取得する画像取得部の少なくとも一方を有する取得部と、
前記取得部の取得結果に基づいて、前記圃場の水位に関する判定処理を行う判定部と、
情報を記憶可能な情報処理装置と、
を具備し、
前記水位調節手段は、
前記圃場に給水する給水栓、前記圃場に給水する給水ポンプ、前記圃場への給水を調節する給水堰、前記圃場から排水する排水栓、前記圃場から排水する排水ポンプ、又は、前記圃場からの排水を調節する排水堰の少なくとも1つを含み、
前記水位調節手段情報は、
前記給水栓の開度に関する情報、前記給水ポンプの動作状態に関する情報、前記給水堰の状態に関する情報、前記排水栓の開度に関する情報、前記排水ポンプの動作状態に関する情報、又は、前記排水堰の状態に関する情報の少なくとも1つを含み、
前記情報処理装置は、
前記水位調節手段を撮影した画像から、画像認識により、前記水位調節手段情報に含まれる情報を取得して記憶すると共に、前記圃場を撮影した画像から、前記圃場の位置情報又は前記圃場ごとに付与された識別情報を取得し、前記圃場の位置情報又は識別情報として記憶する、圃場管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場の水を管理するための圃場管理システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場の水を管理するための圃場管理システムの技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1に記載の用水管理システムは、ファームポンドに貯留された水を圃場へ供給するためのものである。前記用水管理システムは、ファームポンドの水を汲み上げて圃場へ向けて送るポンプ、及びポンプからの水を各圃場へ流入させる経路を開閉する給水栓等を具備する。このような用水管理システムを用いることで、圃場の水位を適宜管理することができる。
【0004】
ここで、一般的に圃場の中干しは水稲の適切な生育のために行われるものであるが、近年、圃場の中干し等を行うことにより、圃場のメタン生成菌により生成されるメタンを抑制する効果も期待されている。そこで、中干し等の期間を管理して水稲の生育やメタンの抑制に活用するために、中干状態等を容易に把握できる技術が求められている。例えば、圃場の水位がゼロになると中干しの効果が得られると考えられるため、圃場の表面に水があるか否か等の、圃場の水位に関する情報を容易に把握できる技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の一態様は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、圃場の水位に関する情報を容易に把握することが可能な圃場管理システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
本開示の一態様においては、圃場に設けられて当該圃場の水位を調節する水位調節手段に関する水位調節手段情報を取得する水位調節手段情報取得部、又は、前記圃場を含む領域を撮影した画像を取得する画像取得部の少なくとも一方を有する取得部と、前記取得部の取得結果に基づいて、前記圃場の水位に関する判定処理を行う判定部と、を具備するものである。
本開示の一態様によれば、圃場の水位に関する情報を容易に把握することができる。
【0009】
本開示の一態様においては、前記取得部は、前記情報取得部及び前記画像取得部の双方を有するものである。
本開示の一態様によれば、水位調節手段情報及び画像に基づいて、圃場の水位に関する情報を把握することができる。
【0010】
本開示の一態様においては、前記水位調節手段は、前記圃場に給水する給水栓、前記圃場に給水する給水ポンプ、前記圃場への給水を調節する給水堰、前記圃場から排水する排水栓、前記圃場から排水する排水ポンプ、又は、前記圃場からの排水を調節する排水堰の少なくとも1つを含み、前記水位調節手段情報は、前記給水栓の開度に関する情報、前記給水ポンプの動作状態に関する情報、前記給水堰の状態に関する情報、前記排水栓の開度に関する情報、前記排水ポンプの動作状態に関する情報、前記排水堰の状態に関する情報、又は、前記圃場の水位に関する情報の少なくとも1つを含むものである。
本開示の一態様によれば、給水栓の開度等に基づいて、圃場の水位に関する情報を把握することができる。
【0011】
本開示の一態様においては、前記画像は、前記圃場を含む領域を上空から撮影した上空画像を含み、前記判定部は、前記判定処理として、前記水位調節手段情報及び前記上空画像の取得結果に基づいて、前記圃場の表面に水があるか否かを判定する第1判定処理を行うものである。
本開示の一態様によれば、圃場の表面に水があるか否かを容易に把握することができる。
【0012】
本開示の一態様においては、前記画像取得部は、撮影日時の異なる複数の前記画像を取得するものである。
本開示の一態様によれば、複数の画像に基づいて、圃場の水位に関する判定処理を精度よく行うことができる。
【0013】
本開示の一態様においては、前記画像は、衛星によって撮影される衛星写真である。
本開示の一態様によれば、画像を容易に取得することができる。
【0014】
本開示の一態様においては、前記画像は、前記圃場の上空を飛行する飛行体によって撮影される航空写真である。
本開示の一態様によれば、画像を任意のタイミングで取得することができる。
【0015】
本開示の一態様においては、前記水位調節手段情報は、前記給水位調節手段が設けられる圃場固有の情報を含むものである。
本開示の一態様によれば、圃場固有の情報に基づいて、水位に関する判定処理を精度よく行うことができる。
【0016】
本開示の一態様においては、圃場の区画情報に基づいて、前記画像に写った前記圃場を区画する区画部をさらに具備するものである。
本開示の一態様によれば、画像で圃場の領域が明確となる。
【0017】
本開示の一態様においては、前記判定部の判定結果に基づいてAWD栽培の状態又は中干状態の少なくとも一方を推定する推定部をさらに具備する。
本開示の一態様によれば、AWD栽培の状態又は中干状態であるか否かを把握することができる。
【0018】
本開示の一態様においては、前記判定部の判定結果に基づいて、前記圃場からのメタン排出量、又は、所定の基準値に対する前記圃場でのメタン減少量の少なくとも一方を算出する算出部をさらに具備するものである。
本開示の一態様によれば、算出部の処理によってメタン排出量又はメタン減少量の少なくとも一方を取得することができるため、利便性を向上することができる。
【0019】
本開示の一態様においては、前記算出部は、前記メタン排出量又は前記メタン減少量の少なくとも一方の算出結果を、二酸化炭素の量に換算するものである。
本開示の一態様によれば、算出部の処理によって二酸化炭素の量を取得することができるため、利便性を向上することができる。
【0020】
本開示の一態様においては、前記算出部の算出結果に関する報告書を作成する作成部をさらに具備するものである。
本開示の一態様によれば、利便性を向上することができる。例えば、作成部によってメタンの減少量を所轄機関等に報告するレポートを作成できるため、利便性を向上することができる。
【0021】
本開示の一態様においては、前記圃場を撮影した画像データと、当該圃場を識別する識別情報とを互いに関連付けて記憶する第1情報処理装置をさらに具備するものである。
本開示の一態様によれば、画像データと識別情報とを関連付けることによって、画像データを圃場ごとに管理することができる。
【0022】
本開示の一態様においては、前記画像は、作業者が所有する作業者端末によって撮影される端末画像を含み、前記判定部は、前記判定処理として、前記端末画像から取得された前記圃場の水位を示す情報と、予め規定される水位との大小関係を判定する第2判定処理を行うものである。
本開示の一態様によれば、圃場の水位と予め規定される水位との大小関係を容易に把握することができる。
【0023】
本開示の一態様においては、前記水位調節手段を撮影した画像から、位置情報又は前記水位調節手段ごとに与えられた識別情報を取得し、前記水位調節手段の位置情報として記憶する第2情報処理装置をさらに具備するものである。
本開示の一態様によれば、利便性を向上させることができる。
【0024】
本開示の一態様においては、前記水位調節手段は、前記圃場に給水する給水栓、前記圃場に給水する給水ポンプ、前記圃場への給水を調節する給水堰、前記圃場から排水する排水栓、前記圃場から排水する排水ポンプ、又は、前記圃場からの排水を調節する排水堰の少なくとも1つを含み、前記水位調節手段情報は、前記給水栓の開度に関する情報、前記給水ポンプの動作状態に関する情報、前記給水堰の状態に関する情報、前記排水栓の開度に関する情報、前記排水ポンプの動作状態に関する情報、又は、前記排水堰の状態に関する情報の少なくとも1つを含み、前記圃場管理システムは、前記水位調節手段を撮影した画像から、画像認識により前記水位調節手段情報に含まれる情報を取得して記憶する第3情報処理装置をさらに具備するものである。
本開示の一態様によれば、利便性を向上させることができる。
【0025】
本開示の一態様においては、前記圃場を撮影した画像から、前記圃場の位置情報又は前記圃場ごとに付与された識別情報を取得し、前記圃場の位置情報又は識別情報として記憶する第4情報処理装置をさらに具備するものである。
本開示の一態様によれば、利便性を向上させることができる。
【0026】
本開示の一態様においては、前記圃場を撮影した画像から、画像認識により前記圃場の水位を示す情報を取得して記憶する第5情報処理装置をさらに具備するものである。
本開示の一態様によれば、利便性を向上させることができる。
【0027】
本開示の一態様においては、前記作業者端末は、衛星測位システムを備えた機器である。
本開示の一態様によれば、位置情報を精度よく取得することができる。
【0028】
本開示の一態様においては、圃場に設けられて当該圃場の水位を調節する水位調節手段に関する水位調節手段情報を取得する情報取得部、又は、前記圃場を含む領域を撮影した画像を取得する画像取得部の少なくとも一方を有する取得部と、前記取得部の取得結果に基づいて、前記圃場の水位に関する判定処理を行う判定部と、情報を記憶可能な情報処理装置と、を具備し、前記水位調節手段は、前記圃場に給水する給水栓、前記圃場に給水する給水ポンプ、前記圃場への給水を調節する給水堰、前記圃場から排水する排水栓、前記圃場から排水する排水ポンプ、又は、前記圃場からの排水を調節する排水堰の少なくとも1つを含み、前記水位調節手段情報は、前記給水栓の開度に関する情報、前記給水ポンプの動作状態に関する情報、前記給水堰の状態に関する情報、前記排水栓の開度に関する情報、前記排水ポンプの動作状態に関する情報、又は、前記排水堰の状態に関する情報の少なくとも1つを含み、前記情報処理装置は、前記水位調節手段を撮影した画像から、画像認識により、前記水位調節手段情報に含まれる情報を取得して記憶すると共に、前記圃場を撮影した画像から、前記圃場の位置情報又は前記圃場ごとに付与された識別情報を取得し、前記圃場の位置情報又は識別情報として記憶するものである。
本開示の一態様によれば、水位に関する情報を容易に把握することができる。
【発明の効果】
【0029】
本開示の一態様によれば水位に関する情報を容易に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図3】中干状態を推定する中干状態推定処理を示すフローチャート。
【
図6】中干状態に関するレポートを作成するレポート作成処理を示すフローチャート。
【
図7】レポート作成処理で作成されるレポートの一例を示す図。
【
図8】画像データを記憶するデータ記憶処理を示すフローチャート。
【
図9】(a)圃場に設置される水位推定部材の一例を示す断面図。(b)水位推定部材の筒状部を示す斜視図。
【
図10】(a)AWD栽培における給水時の圃場の水位を示す図。(b)AWD栽培における排水時の圃場の水位を示す図。
【
図11】AWD栽培の状態を推定するAWD栽培状態推定処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下では、本発明の一実施形態に係る圃場管理システム10について説明する。
【0032】
図1に示す圃場管理システム10は、圃場H(本実施形態では複数の圃場H)の水を管理するためのものである。圃場管理システム10は、給水装置11、水位水温センサ12、排水装置13、通信中継機14、作業者端末15、圃場管理サーバ16、画像管理サーバ17及びデータセンター18を具備する。
【0033】
給水装置11は、圃場Hへの給水を管理するためのものである。給水装置11は、各圃場Hに設けられる。給水装置11は、後述する通信中継機14または圃場管理サーバ16と通信するための通信機器と、給水管Kと圃場Hとを接続する水路に設けられた給水栓と、を具備する(不図示)。なお
図1に示す給水装置11の給水栓は、パイプラインに設けられた給水バルブであるものとしているが、給水栓はこれに限定されるものではなく、例えば開水路に設けられた給水ゲート等であってもよい。給水装置11は、前記給水栓を開閉することで、圃場Hへ給水可能な状態と給水不能な状態とを切り替えることができる。また給水装置11は、給水栓の開度に応じて圃場Hへの給水量を調整することができる。また給水量の調整により、給水装置11(給水栓)は、圃場Hの水位を調節することができる。加えて、給水装置11はカメラ等の撮像装置を有していてもよい。給水装置11は、撮像装置で撮影された画像データを、給水装置11を識別する情報と関連付けて記憶することができる。
【0034】
水位水温センサ12は、圃場Hの表面H1における水位(以下、「表面水位」と称する)及び水温を計測するためのものである。水位水温センサ12は、各圃場Hに設けられる。水位水温センサ12は、給水装置11と接続され、表面水位及び水温の計測結果を給水装置11へ送信することができる。また水位水温センサ12は、一部が圃場Hの地下に配置され、圃場Hの表面H1よりも低い水位(以下、「地下水位」と称する)も計測可能である。
【0035】
なお圃場Hには、水位を計測可能なセンサが設置されていればよい。例えば圃場Hには、水位水温センサ12にかえて、水位のみを計測するセンサが設置されてもよい。
【0036】
排水装置13は、圃場Hの排水を管理するためのものである。排水装置13は、各圃場Hに設けられる。排水装置13は、通信中継機14または圃場管理サーバ16と通信するための通信機器と、圃場Hの排水口に設けられた排水栓と、を具備する(不図示)。排水装置13は、通信機器を介して受信した信号に応じて、排水栓の仕切り体の高さを調整可能に構成される。例えば排水装置13は、表面水位よりも低い位置まで仕切り体を下げることで、圃場Hの水を排水路Cへ排出することができる。また排水装置13は、表面水位以上の高さまで仕切り体を上げることで、圃場Hからの排水を停止することができる。このようにして、圃場Hでは、仕切り体の高さ位置(上面の高さ位置)と略同じ高さの水位まで、水を貯留することができる。また排水装置13は仕切り体の高さの調整により、圃場Hの排水(排水栓の開閉や排水量)を制御することができる。また排水の制御により、排水装置13(排水栓)は、圃場Hの水位を調節することができる。以下では、仕切り体の高さ位置(圃場Hに貯留可能な水位)を、「排水ゲート高さ」と称する。
【0037】
なお圃場管理システム10は、必ずしも遠隔操作可能な排水装置13を具備する必要はない。例えば圃場管理システム10は、排水装置13にかえて、遠隔操作不能な排水装置を具備してもよい。当該排水装置は、例えば操作具を操作することによって(手動で)排水ゲート高さを調整することができる。
【0038】
通信中継機14は、無線通信可能な機器である。通信中継機14は、無線通信により、給水装置11、排水装置13及び後述する圃場管理サーバ16との間で情報をやり取りすることができる。
【0039】
作業者端末15は、作業者が所有する端末である。作業者端末15は、演算処理を実行可能な演算装置、プログラム等が記憶された記憶装置、情報を入力可能な入力装置及び演算処理の結果等を表示可能な出力装置等を具備する。作業者端末15は、作業者が携帯可能な機器、例えばスマートフォンやタブレット端末等によって構成される。
【0040】
作業者端末15は、GPS衛星や携帯電話基地局からの信号を受信することによって、自身の位置情報(緯度及び経度)を検出することができる。また作業者端末15には、カメラが内蔵される。作業者端末15は、カメラで撮影された画像データに、自身の位置情報を関連付けて記憶することができる。これによって、画像データがどこで撮影されたのかを把握することができる。なお作業者端末15は、GPS衛星等の測位衛星と携帯電話基地局とのうち、測位衛星からの信号を受信することが望ましい。これにより画像データに関連付けられる位置情報(撮影の位置情報)の精度を向上させることができる。このように、作業者端末15は、測位衛星からの信号を受信することで、自身の位置情報を検出可能な衛星測位システムを備えた機器であることが望ましい。
【0041】
また作業者端末15には、時計が内蔵される。作業者端末15は、カメラで撮影された画像データに、当該時計の日時を撮影日時として関連付けて記憶することができる。なお撮影日時は、作業者端末15の時計から提供された日時だけではなく、作業者端末15の外部から提供された日時であってよい。例えば撮影日時は、GNSS(Global Navigation Satellite System)から提供された日時であってよい。こうして作業者端末15の外部から提供された情報を撮影日時とすることで、より正確な撮影日時を記憶することができる。このため撮影日時は、作業者端末15の外部から提供された情報であることが好ましい。
【0042】
また作物を撮影する定点カメラが圃場Hに設置される場合、作業者端末15は、インターネット回線等を介して当該定点カメラと通信することで、定点カメラで撮影された画像、撮影日時等を取得することができる。
【0043】
圃場管理サーバ16は、圃場Hの給排水に関する処理を行うためのものである。圃場管理サーバ16は、クラウドサーバ(厳密にはクラウドサーバ内に仮想的に構築されたサーバ)により構成される。圃場管理サーバ16は、通信中継機14を介してまたは直接通信にて、給水装置11もしくは排水装置13との間で情報をやり取りすることができる。圃場管理サーバ16は、給水装置11または排水装置13から信号を受信することで、種々の情報を取得することができる。例えば圃場管理サーバ16は、給水装置11からの信号に基づいて、給水栓の開度や水位水温センサ12の計測結果等を取得することができる。また圃場管理サーバ16は、排水装置13からの信号に基づいて現在の排水ゲート高さ等を取得することができる。
【0044】
また圃場管理サーバ16は、給水装置11または排水装置13へ信号を送信することで、圃場Hの給排水を制御することができる。例えば圃場管理サーバ16は、給水装置11へ信号を送信することで給水栓を開閉し、圃場Hへ給水可能な状態と給水不能な状態との切り替えや給水栓の開度を調整することができる。また圃場管理サーバ16は、排水装置13へ信号を送信することで、排水ゲート高さを調整することができる。なお圃場管理サーバ16は、給水装置11または排水装置13の少なくとも一方と信号を送受信するものであればよく、例えば給水装置11及び排水装置13の双方と信号を送受信することも可能である。圃場管理サーバ16は、このような給排水の制御によって、作物の生育ステージに応じた水位(設定水位)となるように、表面水位を調整することができる。以下、表面水位を調整する処理の一例について説明する。
【0045】
圃場管理サーバ16は、給水栓を開いて圃場Hの表面水位を設定水位まで上昇させる。その後圃場管理サーバ16は、給水栓を閉じて圃場Hへの給水を停止する。圃場Hの水は土に浸透したり乾燥したりするので、給水の停止によって圃場Hの表面水位は徐々に下がる。圃場管理サーバ16は、設定水位から所定の閾値以上表面水位が下がった場合に、圃場Hへの給水を再開して圃場Hの水位を設定水位に戻す。圃場管理サーバ16は、こうした給水及び給水停止を繰り返すことで、作物の生育ステージに適した水位となるように表面水位を調整する。なお、上述した表面水位の調整方法(制御方法)は一例であり、種々のパラメータに従って任意の方法で表面水位を調整することが可能である。また圃場Hに遠隔で操作可能な排水栓がない場合は、固定の排水ゲート高さを基準とし、排水栓がある場合は、調整した排水ゲート高さを基準として、前述する水位の調整を行うことが可能である。
【0046】
圃場管理サーバ16は、インターネット回線等を介して作業者端末15との間で相互に情報をやり取りすることができる。例えば、圃場管理サーバ16は、作業者端末15からの要求に応じて作業者端末15に信号を送信することで、所定の情報(表面水位等)を作業者端末15に通知することができる。また例えば圃場管理サーバ16は、作業者端末15からの要求に応じて給水装置11に信号を送信することで、作業者端末15の操作に応じて給水栓を開閉することができる。
【0047】
また圃場管理サーバ16は、インターネット回線等を介して、圃場管理システム10の外部のサーバとの間で相互に情報をやり取りすることができる。
【0048】
画像管理サーバ17は、作業者端末15で撮影された画像データに関する処理を行うためのものである。なお、圃場Hに定点カメラが設置される場合、当該定点カメラで撮影された画像データ(作業者端末15が定点カメラから取得した画像データ)を、作業者端末15で撮影された画像データとして使用してもよい。また作業者端末15には、LiDAR(light detection and ranging)等により、撮影対象までの距離を点群データとして取得可能な機器もある。本実施形態では、当該点群データを、作業者端末15で撮影された画像データとして使用してもよい。画像管理サーバ17は、例えば、クラウドサーバにより構成される。画像管理サーバ17は、インターネット回線等を介して作業者端末15及びデータセンター18の間で相互に情報をやり取りすることができる。また画像管理サーバ17は、インターネット回線等を介して、圃場管理システム10の外部のサーバとの間で相互に情報をやり取りすることもできる。
【0049】
データセンター18は、圃場Hや圃場管理システム10に関する種々の情報を記憶するための施設である。データセンター18には、情報を記憶するための記憶装置(例えば、大容量ストレージ)及び当該記憶装置を制御するサーバ等が設けられ、当該記憶装置に水位水温センサ12の計測結果や排水ゲート高さを変更した履歴等が記憶される。また前記記憶装置には、作業者端末15で撮影された画像データに関する情報、例えば、撮影日時、撮影の位置情報、撮影端末情報(例えば作業者端末15の機種の情報)等も記憶される。データセンター18では、圃場管理サーバ16及び画像管理サーバ17から送信された情報を前記記憶装置に記憶させることができる。またデータセンター18では、圃場管理サーバ16及び画像管理サーバ17から要求があった場合に、前記記憶装置に記憶された情報を圃場管理サーバ16及び画像管理サーバ17へ送信することができる。
【0050】
ここで、圃場Hで水稲を生育する場合、水稲の過剰な生育を抑制する等の目的で中干しが行われる。圃場管理システム10で中干しを行う場合、給水装置11による圃場Hへの給水が停止され、圃場Hが乾かされる。
【0051】
本実施形態では、中干しのために給水を停止する期間を、作業者端末15の操作に応じて設定可能に構成される。以下では、この期間を「設定期間」と称する。作業者は、例えば、給水を停止する日時と、給水を再開する日時とを作業者端末15に入力することで、設定期間を設定することができる。
【0052】
設定期間中は圃場Hへの給水が停止されるため、時間の経過に伴って圃場Hの表面水位が低下する。表面水位の低下によって圃場Hが乾かされる(中干しされた状態になる)と、水稲の分げつ等を抑制し、当該水稲の過剰な生育を抑制することができる。また、中干状態になると嫌気性細菌であるメタン生成菌の活動が抑制され、圃場Hから排出されるメタンの量を減らすことができる。
【0053】
水稲の生育のために推奨される中干しの期間は、地域や品種等に応じて予め設定されている。例えば「8日程度」など、圃場Hごとに適切と思われる中干しの期間が設定されている。ここで、メタンは温室効果ガスであるため、中干しを通常(上記推奨期間(8日程度))よりも延長することで、温室効果ガスの排出を抑制することができる。また作業者は、温室効果ガスの排出抑制についてのプロジェクト(例えば、Jクレジット)に参加して中干しを延長したことを証明することで、当該プロジェクトの規定に応じた報酬を受け取ることができる。中干しの延長を証明するためには、通常よりも長期間にわたって中干しされたことを示す証拠が必要となる。
【0054】
本実施形態の圃場管理システム10は、圃場Hの表面H1に水があるか否かを判定した結果に基づいて、圃場Hの中干状態を推定可能に構成される。作業者は、当該中干状態の推定結果を証拠として用いることで、中干しの延長を証明することができる。以下では
図2を参照し、圃場管理システム10で中干状態を推定するための構成について説明する。
【0055】
圃場管理サーバ16は、取得部16a、推定部16b、位置算出部16c、区画部16d及び判定部16eを具備する。取得部16aは、中干状態の推定に必要な各種情報(後述する給水栓開度情報18a等)をデータセンター18等から取得するためのものである。推定部16bは、中干状態を推定する計算処理を行うためのものである。
【0056】
位置算出部16cは、給水栓の位置情報(地図座標)を算出するためのものである。区画部16dは、後述する上空画像に写った圃場Hを区画するためのものである。判定部16eは、圃場Hの表面H1に水があるか否かを判定するためのものである。
【0057】
画像管理サーバ17は、取得部17a、算出部17b及び作成部17cを具備する。取得部17aは、算出部17b及び作成部17cの処理に必要な各種情報(後述する圃場情報18d等)を作業者端末15またはデータセンター18から取得するためのものである。算出部17bは、中干しの延長によって抑制されたメタンの減少量を算出するためのものである。作成部17cは、中干状態に関するレポートR(
図7参照)を作成するためのものである。なお取得部17aは、作業者端末15またはデータセンター18の少なくとも一方から情報を取得するものであればよく、例えば作業者端末15及びデータセンター18の双方から情報を取得することも可能である。また、画像管理サーバ17は圃場管理サーバ16と一体のサーバであってもよいし、別々のサーバで構成されてもよい。
【0058】
データセンター18には、給水栓開度情報18a、排水栓開度情報18b、水位情報18c、圃場情報18d、画像情報18e、推定結果情報18f及び判定結果情報18gが記憶される。
【0059】
給水栓開度情報18aは、給水栓の開度の履歴である。給水栓の開度は、例えば、給水栓を閉じた状態を0%、完全に開いた状態を100%としたパーセンテージで示される。給水栓開度情報18aは、各圃場Hに設けられた給水栓ごとに管理される。給水栓開度情報18aは、例えば、圃場Hを識別する(圃場Hごとに付与された)圃場識別情報、給水栓を識別する給水栓識別情報、給水栓の開度、給水栓の開度が変更された日時等が互いに関連付けられた情報となっている。給水栓開度情報18aは、給水栓の開度が変更されるたびに作成され、データセンター18に記憶される。例えば、給水栓の開度が変更された際に、給水装置11から圃場管理サーバ16を介してデータセンター18に変更後の開度等が送信されることにより、給水栓開度情報18aがデータセンター18に記憶される。
【0060】
なお、給水栓開度情報18aは、後述する画像情報18eより得られた情報でもよい。後述するように、画像情報18eには、作業者端末15で撮影された画像データ、撮影日時、撮影端末情報だけでなく、給水栓の開度を示す情報(開度情報)が含まれる場合がある。このため当該開度情報や撮影日時を、給水栓開度情報18aとして用いることができる。
【0061】
また、給水装置11から得られた給水栓の開度情報、及び、画像情報18eより得られた給水栓の開度情報の双方を、給水栓開度情報18aとして用いることもできる。こうして給水装置11と画像とを組み合わせて給水栓の開度を管理する場合、共通の時間帯において、給水装置11からの開度情報と、画像情報18eからの給水栓の開度情報とが互いに異なることも想定される。この場合、データセンター18は、開度情報の異常を作業者等に報知することも可能である。またデータセンター18は、異常の報知に加えて、正しい開度情報を作業者等に確認することも可能である。
【0062】
また給水装置11と画像とを組み合わせて給水栓の開度を管理する場合、給水栓開度情報18aには、圃場識別情報及び給水栓の開度等に、開度の情報源に関する情報が関連付けて記憶されてよい。なお、開度の情報源に関する情報は、開度の情報源(給水装置11又は画像)を識別可能な情報である。こうして開度の情報源が記憶されることで、給水栓開度情報18aに記憶される開度情報が、給水装置11由来のものであるか、画像由来のものであるかを管理することができる。また共通の時間帯において、給水装置11からの開度情報と、画像情報18eからの給水栓の開度情報とが互いに異なる場合に、給水装置11からの開度情報と、画像情報18eからの開度情報とのどちらが正しいのかを、作業者に選択させることも可能となる。
【0063】
またデータセンター18のサーバは、作業者端末15等からの要求に応じて、給水栓開度情報18aを作業者端末15等の画面に表示させてもよい。例えばデータセンター18のサーバは、GIS(geographic information system)等により、圃場Hを含む地図情報と、当該圃場Hの給水栓の開度情報(例えば最新の開度情報)とを作業者端末15等の画面に表示させてもよい。またデータセンター18のサーバは、給水栓の開度情報の一覧(例えば時系列に沿った開度情報の履歴のリスト等)を、作業者端末15等の画面に表示させてもよい。またデータセンター18のサーバは、開度情報を画面に表示させる際に、上述した開度の情報源を、開度情報と関連付けて表示させてもよい。これによって、給水栓の開度情報だけではなく、その情報源を作業者が把握することができ、利便性を向上させることができる。
【0064】
排水栓開度情報18bは、排水栓の開度の履歴である。本実施形態では、排水栓の開度は、排水ゲート高さで示される。排水開度情報は、各圃場Hに設けられた排水栓ごとに管理される。排水栓開度情報18bは、例えば、圃場識別情報、排水栓を識別する排水栓識別情報、排水栓の開度、排水栓の開度が変更された日時等が互いに関連付けられた情報となっている。排水栓開度情報18bは、排水ゲート高さが変更されるたびに作成され、データセンター18に記憶される。例えば、排水栓の開度が変更された際に、排水装置13から圃場管理サーバ16を介してデータセンター18に変更後の開度等が送信されることにより、排水栓開度情報18bがデータセンター18に記憶される。なお、遠隔操作可能な排水装置13にかえて、手動で排水ゲート高さを調整する排水装置が圃場Hに設けられる場合には、手動で調整された排水ゲート高さを作業者端末15等より入力することでデータセンター18の排水栓開度情報18bに排水栓の開度を記憶することが可能である。
【0065】
なお、排水栓開度情報18bは、画像情報18eより得られた情報でもよい。後述するように、画像情報18eには、作業者端末15で撮影された画像データ、撮影日時、撮影端末情報だけでなく、排水栓の開度を示す情報(開度情報)が含まれる場合がある。このため当該開度情報や撮影日時を、排水栓開度情報18bとして用いることができる。
【0066】
また、排水装置13から得られた排水栓の開度情報、及び、画像情報18eより得られた排水栓の開度情報の双方を、排水栓開度情報18bとして用いることもできる。こうして排水装置13と画像とを組み合わせて排水栓の開度を管理する場合、共通の時間帯において、排水装置13からの開度情報と、画像情報18eからの開度情報とが互いに異なることも想定される。この場合、データセンター18は、給水栓開度情報18aの場合と同様に、開度情報の異常を作業者等に報知したり、正しい開度情報を作業者等に確認したりすることができる。
【0067】
また排水装置13と画像とを組み合わせて排水栓の開度を管理する場合、排水栓開度情報18bには、給水栓開度情報18aと同様に、開度の情報源に関する情報が記憶されてもよい。またデータセンター18のサーバは、給水栓開度情報18aと同様に、作業者端末15等からの要求に応じて、排水栓開度情報18bを作業者端末15等の画面に表示させてもよい。
【0068】
水位情報18cは、圃場Hの水位(表面水位及び地下水位)の履歴である。水位情報18cは、圃場Hごとに管理される。本実施形態の水位情報18cは、例えば、圃場識別情報、水位水温センサ12を識別するセンサ識別情報、水位水温センサ12による表面水位の計測結果、表面水位を計測した日時等が互いに関連付けられた情報となっている。水位情報18cは、水位水温センサ12が表面水位を計測するたびに作成され、データセンター18に記憶される。例えば、表面水位が計測された際に、水位水温センサ12から圃場管理サーバ16を介してデータセンター18に表面水位の計測結果等が送信されることにより、水位情報18cがデータセンター18に記憶される。また圃場Hの水位が表面H1よりも低い場合、水位水温センサ12によって地下水位が計測され、表面水位の場合と同様に、データセンター18に記憶される。
【0069】
なお、水位情報18cは、後述する画像情報18eより得られた情報でもよい。後述するように、画像情報18eには、作業者端末15で撮影された画像データ、撮影日時、撮影端末情報だけでなく、圃場Hの水位を示す情報(水位情報)が含まれる場合がある。このため当該水位情報や撮影日時を、水位情報18cとして用いることができる。
【0070】
また、水位水温センサ12から得られた水位情報、及び、画像情報18eより得られた水位情報の双方を、水位情報18cとして用いることもできる。こうして水位水温センサ12と画像とを組み合わせて圃場Hの水位を管理する場合、共通の時間帯において、水位水温センサ12からの水位情報と、画像情報18eからの水位情報とが互いに異なることも想定される。この場合、データセンター18は、給水栓開度情報18aの場合と同様に、水位情報の異常を作業者等に報知したり、正しい水位情報を作業者等に確認したりすることができる。
【0071】
また水位水温センサ12と画像とを組み合わせて圃場Hの水位を管理する場合、水位情報18cには、給水栓開度情報18aの場合と同様に、水位の情報源に関する情報が記憶されてよい。なお、水位の情報源に関する情報は、水位の情報源(水位水温センサ12又は画像)を識別可能な情報である。こうして水位の情報源が記憶されることで、水位情報18cに記憶される水位が、水位水温センサ12由来のものであるか、画像由来のものであるかを管理することができる。またデータセンター18のサーバは、給水栓開度情報18aと同様に、作業者端末15等からの要求に応じて、水位情報18cを作業者端末15等の画面に表示させてもよい。
【0072】
圃場情報18dは、圃場固有の情報である。圃場情報18dは、例えば、圃場識別情報、圃場Hの減水深、圃場Hで生育される作物、圃場Hの位置情報、圃場Hの面積、還元基準メタン発生量、酸化基準メタン発生量等が互いに関連付けられた情報となっている。
【0073】
減水深は、単位時間当たりにどの程度水位が減少するかを示す指標である。圃場Hの位置情報は、圃場Hがある場所を特定可能な情報である。圃場Hの位置情報は、例えば圃場Hの住所、緯度及び経度等である。データセンター18のサーバは、圃場Hの位置情報を適宜取得可能である。例えばサーバは、作業者端末15等を介して入力された位置情報を、圃場Hの位置情報として記憶(取得)可能である。また例えばサーバは、作業者端末15で圃場Hを撮影した画像に付与される撮影の位置情報を、圃場Hの位置情報として取得可能である。またサーバは、画像に写った圃場Hから、当該圃場Hの位置情報を取得することも可能である。
【0074】
例えば圃場Hには、その位置情報及び圃場識別情報を特定可能な物品(例えば、圃場Hの名称や住所等、又は、圃場Hの名称や住所等を判別可能な記号やコード等が印字された物)が設置される場合がある。そこで、サーバは、当該物品が撮影された画像データを解析して圃場Hの位置情報等を検出することで、画像に写った圃場Hから位置情報及び圃場識別情報を取得し、これらを互いに関連付けて記憶することができる。またサーバは、画像データに写った景色を人工知能が画像認識すること等によって、圃場Hを撮影した画像から圃場Hの位置情報及び圃場識別情報を取得して記憶することも可能である。このように、圃場Hを撮影した画像から、当該圃場Hの位置情報及び圃場識別情報を取得する方法は特に限定されるものではなく、サーバの構成等に応じて適宜変更可能である。
【0075】
還元基準メタン発生量は、圃場Hに水が張られて酸素が少ない還元状態における、圃場Hでの単位面積及び単位時間当たりのメタン発生量である。酸化基準メタン発生量は、圃場Hが乾燥して酸素が多い酸化状態における、圃場Hでの単位面積及び単位時間当たりのメタン発生量である。減水深、還元基準メタン発生量及び酸化基準メタン発生量は、例えば、圃場Hに関する情報(土壌の性質や状態、地域等)や実験等に基づいて設定することができる。圃場情報18dは、予めデータセンター18に記憶される。
【0076】
画像情報18eは、作業者端末15のカメラで圃場Hを撮影した画像データに関する情報である。なお、圃場Hに定点カメラが設置される場合、画像情報18eには、当該定点カメラで撮影された画像データが含まれてよい。また作業者端末15が撮影対象までの距離を点群データとして取得可能である場合、画像情報18eには、当該点群データが含まれてよい。画像情報18eは、圃場Hごとに管理される。画像情報18eは、例えば、圃場識別情報、圃場Hの位置情報、画像データ、画像データの撮影日時等が互いに関連付けられた情報となっている。画像情報18eは、画像管理サーバ17の処理によってデータセンター18に記憶される。
【0077】
なお画像情報18eは、圃場Hを撮影した画像データに関する情報であれば、特に限定されない。例えば、画像情報18eには、画像データを撮影した作業者端末15に関する情報、例えば、撮影時の作業者端末15の位置情報や作業者端末15の機種(撮影端末情報)が含まれてよい。また画像情報18eには、画像データに写った圃場Hの情報が含まれてもよい。例えば画像情報18eには、給水栓の開度情報、排水栓の開度情報及び圃場Hの水位情報等が含まれてよい。
【0078】
なお給水栓の開度情報等は、画像データに基づいて取得(推定)されてよい。より詳細には、給水栓の開度情報は、給水栓が写った画像データから取得されてよい。例えばデータセンター18に設置されるサーバは、画像データを解析(画像認識)し、画像データに写った給水栓の状態を検出することで、給水栓の開度情報を取得してよい。また排水栓の開度情報は、給水栓の開度情報と同様に、排水栓が写った画像データから取得されてよい。
【0079】
また圃場Hの水位情報は、圃場Hを撮影した画像から取得されてよい。例えば圃場Hには、当該圃場Hの水位を目視で推定するための水位推定部材20が設けられる場合がある。そこで圃場Hの水位情報は、当該水位推定部材20を撮影した画像から取得されてよい。以下では
図9を参照し、水位推定部材20を利用した水位の取得方法の一例を説明する。
【0080】
水位推定部材20は、筒状部21及び表示部22を具備する。筒状部21は、圃場Hの表面H1よりも低い位置において、圃場Hの水が内側に流入可能な中空状の部材である。筒状部21は、例えば円筒状に形成される。筒状部21には、上下方向及び円周方向に沿って複数の貫通孔21aが形成される。筒状部21は、上部が突出するように、圃場Hに設けられた竪穴H2に挿入される。表示部22は、筒状部21内に配置され、圃場Hの水位を表示するものである。表示部22は、上下に延びる長手状に形成される。表示部22の表面には、水位を示す情報(目盛り22a等)が印刷される。
【0081】
図9(a)に示すように、筒状部21には、貫通孔21aを介して、圃場Hの水位と同じ高さまで圃場Hの水が流入する。そこでデータセンター18のサーバは、水位推定部材20(竪穴H2)及び水面が写った画像データを画像認識し、水面が表示部22(目盛り22a)のどの位置にあるのかを検出することで、当該検出結果を圃場Hの水位情報として取得することができる。
【0082】
なお、
図9では表示部22が設けられた水位推定部材20を例示しているが、表示部22は常時設ける必要はない。例えば水位推定部材20を撮影する場合にのみ、作業者が表示部22を設置することも可能である。また、撮影する際に必ずしも表示部22を設ける必要はなく、その他の基準や情報処理等を用いて水位を検出する構成とすることも可能である。
【0083】
また上述の如く作業者端末15には、LiDAR等により、撮影対象までの距離を点群データとして取得可能な機器もある。そこで作業者端末15で圃場Hの水面、表面H1及び竪穴H2を撮影して点群データ(水面等までの距離)を取得することで、当該点群データに基づいて圃場Hの水位情報を取得することもできる。このように、作業者端末15の仕様によっては、画像データとして、撮影対象までの距離に関する点群データを用いて、圃場Hの水位情報を取得することも可能である。
【0084】
なお上述した給水栓の開度情報や水位情報等を取得する方法は一例であり、給水栓の開度情報等は、適宜取得可能である。例えば、給水栓の開度情報等は、当該開度情報等を画像データから認識可能な学習モデル(人工知能)を用いて取得されてもよい。また給水栓の開度情報等は、画像データ以外の情報に基づいて、取得されてもよい。例えば、給水栓の開度情報等は、圃場Hの撮影時に作業者により入力されてもよい。
【0085】
なお、作業者端末15及び前記定点カメラで撮影された画像データには、圃場Hの一部の作物が写されるため、画像データに写った作物から、当該作物の草丈、葉や茎の色、穂や実の成長状況等の情報を得ることができる。こうして得た情報は、圃場Hの水管理や、水管理を設定するスケジュールの作成に利用できる。また定点カメラ等で得られた圃場Hの一部の作物の画像データと、後述する上空画像で得られた圃場H全体の作物の画像データ(例えば、人工衛星からの画像における圃場H全体の色の分布状況)と、を比較することで、圃場Hの平均的な成長状況を把握することもできる。
【0086】
推定結果情報18fは、中干状態の推定結果を示す情報である。推定結果情報18fは、圃場Hごとに管理される。推定結果情報18fは、例えば、圃場識別情報、中干状態の推定結果等が互いに関連付けられた情報となっている。
【0087】
判定結果情報18gは、圃場Hの表面H1に水があるか否かを判定した結果(判定部16eの判定結果)を示す情報である。判定結果情報18gは、圃場Hごとに管理される。判定結果情報18gは、例えば、圃場識別情報、給水栓の開度、判定結果等が互いに関連付けられた情報となっている。
【0088】
圃場管理サーバ16は、データセンター18に記憶される情報に基づいて、異常を報知可能に構成される。具体的には圃場管理サーバ16は、給水装置11の開度情報18a及び排水装置13の開度情報18bに基づいて圃場Hの表面水位を推定する。圃場管理サーバ16は、当該推定結果が、水位水温センサ12の計測結果(計測された表面水位)と所定の閾値以上異なる場合に、表面水位についての異常を検知して作業者端末15等に通知する。これによって、圃場管理システム10の異常(例えば水位水温センサ12の位置ずれ、故障等)に速やかに対応することができる。
【0089】
以下では
図3及び
図4を参照し、圃場Hの中干状態を推定するための中干状態推定処理について説明する。中干状態推定処理は、例えば設定期間(給水が停止される期間)中に、圃場管理サーバ16によって実行される。
図3に示すように、圃場管理サーバ16は、中干状態推定処理が実行されると、ステップS10へ移行する。
【0090】
ステップS10において、圃場管理サーバ16の位置算出部16cは、給水栓の位置情報(地図座標)を算出する。例えば位置算出部16cは、給水栓に取り付けられた衛星測位モジュールからの測位データに基づいて各圃場Hの給水栓の位置情報を算出する。位置算出部16cは、当該算出結果を、給水栓識別情報と関連付けて記憶する。これによって各給水栓が地図上のどこにあるのかを把握することができる。
【0091】
なおステップS10で給水栓の位置情報を算出(決定)する方法は、特に限定されない。例えば、給水栓の設置者によって圃場管理サーバ16に入力された給水栓の位置情報を適宜取得することで、給水栓の位置情報を決定することも可能である。また、給水栓の画像情報18eより得られた位置情報(給水栓が写った画像データを撮影した際の作業者端末15の位置情報)より決定してもよい。ステップS10の処理が終了すると、圃場管理サーバ16は、ステップS20へ移行する。
【0092】
ステップS20において、圃場管理サーバ16の取得部16aは、上空画像を外部のサーバから取得する。なお上空画像は、圃場Hを含む領域を上空から撮影した画像である。本実施形態では、取得部16aは設定期間中に衛星S(
図1参照)によって撮影された圃場Hを含む衛星写真Pを、上空画像として取得する。例えば取得部16aは、所定の機関からインターネット回線等を介して衛星写真Pを取得する。これによって上空画像を容易に取得することができる。
【0093】
なお、衛星写真Pとしては、物体を識別する光学画像や、地上からの反射波を利用して画像化するSAR画像を利用可能である。また、圃場管理サーバ16は、光学画像及びSAR画像のうち、優先的に用いる画像を判断する画像判断部を有していてもよい。なお画像判断部による判断方法は、特に限定されない。例えば、光学画像は、雲により圃場Hの一部が欠損する可能性がある。これに対しSAR画像は、雲の有無に関わらず地表面が撮影される。そこで画像判断部は、撮影日時の天気(光学画像及びSAR画像の特性)に応じて優先的に用いる画像を判断してよい。例えば、画像判断部は、撮影日時における天気が曇りや雨の場合にSAR画像を優先的に用い、晴れの場合に光学画像を優先的に用いると判断してよい。ステップS20の処理が終了すると、圃場管理サーバ16は、ステップS30へ移行する。
【0094】
ステップS30において、圃場管理サーバ16の取得部16aは、給水栓に関する給水栓情報を取得する。給水栓情報は、給水栓による圃場Hへの給水の状況を判断可能な情報である。給水栓情報には、給水栓の開度に関する情報(給水栓開度情報18a)、又は圃場Hの水位に関する情報(水位情報18c)の少なくとも一方が含まれる。なお本実施形態では、給水栓情報が給水栓の開度に関する情報であるものとして、ステップS30以降の処理を説明する。
【0095】
ステップS30に移行すると、まず取得部16aは、ステップS10で算出された給水栓の位置情報、ステップS20で取得された衛星写真Pの位置情報に基づいて、衛星写真P内や衛星写真P周辺に位置する給水栓を特定する。なお衛星写真Pの位置情報は、衛星写真Pに写る場所が地図上のどの場所であるのかを示す情報であり、衛星写真Pの撮影場所に応じて予め付与されている。取得部16aは、特定した給水栓についての給水栓開度情報18aを、データセンター18から取得する。なお取得部16aは、必ずしもデータセンター18から給水栓情報を取得する必要はなく、例えば給水装置11から直接給水栓情報を取得することも可能である。ステップS30の処理が終了すると、圃場管理サーバ16は、ステップS40へ移行する。
【0096】
ステップS40において、圃場管理サーバ16の区画部16dは、ステップS20で取得された衛星写真Pに写った圃場Hを区画する。以下、ステップS40の処理の一例を説明する。
【0097】
ステップS40に移行すると、取得部16aは、圃場Hの区画情報を外部のサーバから取得する。なお圃場Hの区画情報は、地図情報上で圃場Hの領域を示す情報である。圃場Hの区画情報には、地図情報上での圃場Hの位置(例えば緯度、経度といった地理座標)、当該圃場Hの形状を示す情報等が含まれる。本実施形態では、取得部16aは、所定の機関で公開される区画情報(例えば筆ポリゴン)を、インターネット回線等を介して取得する。
【0098】
ステップS40において、区画部16dは、衛星写真Pの位置情報及び縮尺に合うように、取得部16aが取得した区画情報(圃場Hの形状)を重ね合わせる。これによって区画部16dは、衛星写真Pに写った圃場Hを区画することができる。また区画部16dは、データセンター18に記憶される圃場情報18dの圃場Hの位置情報に基づいて、区画された圃場Hが、圃場管理システム10で管理される各圃場Hのうち、どの圃場Hに該当するのか(圃場識別情報)を特定する。また区画部16dは、圃場Hの特定結果に基づいて、当該圃場Hに給水可能な給水栓(給水栓識別情報)も特定する。ステップS40の処理が終了すると、圃場管理サーバ16は、ステップS50へ移行する。
【0099】
ステップS50において、圃場管理サーバ16の判定部16eは、ステップS20で取得された衛星写真Pを解析することで、ステップS40で区画された圃場Hの表面H1に水が写っているか否かを判定する。以下では、判定の一例について説明する。
【0100】
まず判定部16eは、ステップS20で取得された衛星写真Pを加工して、当該衛星写真Pに写った水を強調して表示させる。例えば判定部16eは、NDWI(正規化水指標)、MNDWI(修正正規化水指標)等を用いて水を強調表示させる。なお
図4には、水が強調表示された衛星写真Pの一例が示されている。当該
図4では、ハッチングで示す領域が、水が写った部分として強調して示されている。
【0101】
判定部16eは、水を強調表示させた後で、ステップS40で区画された圃場H(圃場Hの領域)内に水が写っているか否かを判定する。例えば判定部16eは、圃場Hの領域の中に水を示す画素が所定以上含まれていない場合に、圃場Hに水が写っていないと判定する。一方判定部16eは、前記画素が所定以上含まれる場合に、圃場Hに水が写っていると判定する。判定部16eは、当該判定結果を、圃場識別情報、給水栓の開度情報等と関連付けて記憶する。
図3に示すように、ステップS50の処理が終了すると、圃場管理サーバ16は、ステップS60へ移行する。
【0102】
ここで、ステップS50では水が写った部分を強調表示するものの、衛星写真Pだけでは、解像度等の影響で、圃場Hの表面H1に水があるか否かを判定することが困難なことも想定される。そこで判定部16eはステップS60で、ステップS50の判定結果に加えて給水栓情報(給水栓の開度の履歴等)を考慮して、圃場Hの表面H1に水があるか否かを判定する。これによって、圃場Hの表面H1に水があるか否かを精度よく判定することができる。以下、ステップS60の処理の一例を説明する。
【0103】
まず判定部16eは、ステップS30で取得された給水栓の開度情報に基づいて、ステップS20で取得された衛星写真Pの撮影日時に、当該衛星写真Pに写った圃場Hに給水されていたか否かを判断する。そして判定部16eは、ステップS50の判定結果と、衛星写真Pの撮影日時における給水の有無と、の組み合わせに応じて、圃場Hの表面H1における水の有無を判定する。例えば判定部16eは、ステップS50で圃場Hの表面H1に水が写っていないと判定され、かつ、前記撮影日時に給水されていないと判断された圃場Hについて、圃場Hの表面H1に水がないと判定する。一方判定部16eは、それ以外の圃場Hについて、圃場Hの表面H1に水があると判定する。
【0104】
また判定部16eはステップS60において、当該判定結果を、圃場識別情報、給水栓の開度情報等と関連付けてデータセンター18に送信する。これによってデータセンター18の判定結果情報18gにステップS60の判定結果が記憶される。ステップS60の処理が終了すると、圃場管理サーバ16は、ステップS70へ移行する。
【0105】
なお、上述したステップS60で例示した水の有無の判断基準(ステップS50の判定結果と、衛星写真Pの撮影日時における給水の有無と、の組み合わせ)は一例であり、組み合わせに応じた判定結果(水の有無)は任意に設定することが可能である。例えば判定部16eは、衛星写真Pでは圃場Hの表面H1に水が写っていたとしても、給水栓の開度情報から圃場Hの表面H1に水がないと考えられる場合、衛星写真Pの写り具合に関わらず、圃場Hの表面H1に水がないと判定することも可能である。
【0106】
また、上述したステップS60の判定処理の内容は一例であり、判定部16eは、衛星写真P及び給水栓の開度(給水栓情報)を用いたその他の処理により、圃場Hの表面H1に水があるか否かを判定可能である。例えば判定部16eは、衛星写真Pの撮影日時だけではなく、当該撮影日時に比較的近い時期(例えば、撮影日時の数時間前から、撮影日時までの間)に圃場Hに給水されているかも考慮して、圃場Hの表面H1に水があるか否かを判定することも可能である。
【0107】
ステップS70において、圃場管理サーバ16の推定部16bは、圃場Hの中干状態を推定する。ここで、圃場Hの表面水位がゼロになると中干しの効果が得られると考えられるため、本実施形態の推定部16bは、ステップS60で圃場Hの表面H1に水がないと判定された圃場Hについて、ステップS20で取得された衛星写真Pの撮影日時に中干状態であったと推定する。一方推定部16bは、ステップS60で圃場Hの表面H1に水があると判定された圃場Hについて、前記撮影日時に中干状態でなかったと推定する。推定部16bは、当該推定結果を、圃場識別情報と関連付けてデータセンター18に送信する。これによってデータセンター18の推定結果情報18fにステップS70の推定結果が記憶される。
【0108】
また推定部16bはステップS70において、推定結果情報18fに記憶される情報に基づいて、設定期間中に中干状態となった期間(中干期間)を算出する。以下、
図5を用いて中干期間の算出の処理の一例を説明する。
【0109】
上述の如く、設定期間中は圃場Hへの給水が停止されるため、時間の経過に伴って圃場Hの表面水位が下がり、中干状態へと移行する。そこで推定部16bは、推定結果情報18fの中から、設定期間の中で最初に中干状態であったと判定された日時を抽出し、その日時を、中干状態へ移行した日時(以下、「中干開始時期」と称する)とする。
【0110】
なお、設定期間が終了するまでは、圃場管理サーバ16により自動的に圃場Hへの給水が停止されるため、推定部16bは、中干開始時期から給水が再開されるまでの期間を中干期間であると推定する。ここで、給水栓は作業者端末15の操作に応じて開閉可能であることから、設定期間の途中で作業者端末15の操作(手動)によって圃場Hへの給水が再開される可能性もある。この場合、
図3のステップS60・S70において、給水栓の開度に基づいて中干状態ではないと判定されるため、推定部16bは、中干開始時期から、手動で給水が再開された日時までを中干期間とする。ステップS70の処理が終了すると、圃場管理サーバ16は、ステップS80へ移行する。
【0111】
ステップS80において、推定部16bは、ステップS70での中干状態(中干期間)の推定結果を作業者端末15に送信する。これにより、作業者端末15に中干状態の推定結果が通知される。ステップS80の処理が終了すると、圃場管理サーバ16は、中干状態推定処理を終了する。
【0112】
なおステップS80において、推定部16bは、ステップS70における判定結果を、圃場Hで生育される作物の情報と関連付けて送信することも可能である。これによって、生育中の作物と圃場Hの水の状態との関係を作業者が容易に把握することができるため、利便性を向上させることができる。
【0113】
上述のステップS10からステップS80までの処理は、設定期間においてリアルタイムに実行することができる。例えば上述の処理を所定の時間間隔(衛星写真Pが撮影される時間間隔等)で実行することができる。これによって、例えば作業者は所望のタイミングで現在の圃場Hの状態を、作業者端末15を用いて確認することができる。また、上記ステップS10からステップS80までの処理を一括して行うこともできる。例えば設定期間が終了した後に、各種情報(給水栓の開度等)の履歴を用いて、終了した設定期間の中で圃場Hが中干状態であった期間(中干期間)を推定することができる。なお中干期間の推定結果は、適宜のタイミング、例えばステップS80の際等に、圃場Hの識別情報と関連付けられてデータセンター18の推定結果情報18fに記憶される。
【0114】
本実施形態では、中干状態推定処理を行うことで、作業者が設定期間中に圃場Hに何度も足を運ぶことなく、圃場Hに水があるか否かを容易に把握することができる。これによって、作業者の負担を低減することができる。
【0115】
また、中干しを延長すると中干期間の推定結果が通常(8日程度)の中干期間よりも長くなる。この延長された中干期間は、中干期間の推定結果にも反映されるため、推定結果を用いて中干しの延長を証明することができる。
【0116】
なお、中干状態推定処理で用いられる上空画像は、圃場Hを含む領域を上空から撮影したものであればよい。例えば上空画像は、衛星Sとは異なる飛行体(例えばドローン)によって撮影される航空写真等であってよい。例えばドローンを用いて航空写真を撮影することで、任意のタイミングで圃場Hに水があるか否かを判定することができ、利便性を向上させることができる。
【0117】
また判定部16eは、給水栓情報及び上空写真を用いて圃場Hに水があるか否かを判定するものであればよく、上述した中干状態推定処理の処理内容を適宜変更することも可能である。
【0118】
例えば判定部16eは、ステップS60において給水栓の開度を用いて圃場Hの表面H1に水があるか否かを判定するものとしたが、開度以外の給水栓情報を用いて、判定処理を行うことも可能である。例えば判定部16eは、圃場Hの表面水位(データセンター18に記憶される水位情報18c)を用いて、圃場Hの表面H1に水があるか否かを判定することも可能である。以下、表面水位を用いた判定処理の一例を説明する。
【0119】
判定部16eは、ステップS50で圃場Hに水が写っていないと判定された圃場Hについて、水位情報18cに基づいて衛星写真Pの撮影日時に表面水位が所定の閾値以下であるか否かを判定する。判定部16eは、表面水位(水位水温センサ12の計測結果)が前記閾値未満である場合に、圃場Hの表面H1に水がないと判定する。一方判定部16eは、表面水位が前記閾値以上である場合に、圃場Hの表面H1に水があると判定する。これによって判定部16eは、表面水位を用いて圃場Hの表面H1に水があるか否かを判定することができる。このように、ステップS50の判定結果と、圃場Hの表面水位(データセンター18に記憶される水位情報18c)と、の組み合わせに応じて、圃場Hの表面H1における水の有無を判定することも可能である。
【0120】
また、上記実施例では、給水栓情報として、給水栓の開度に関する情報(給水栓開度情報18a)、及び圃場Hの水位に関する情報(水位情報18c)を例示したが、本発明はこれに限るものではなく、給水栓情報として圃場固有の情報(例えば、圃場Hで生育される作物、面積、減水深等)を用いることも可能である。例えば減水深を用いる場合、ステップS50の判定結果と、圃場Hの減水深と、の組み合わせに応じて、圃場Hの表面H1における水の有無を判定することも可能である。例えば判定部16eは、ステップS50で水が写っていないと判定された圃場Hについて、減水深に応じて設定される設定時間が経過するまでは、圃場Hの表面H1に水があると判定することができる。なお減水深が小さいほど圃場Hの水位が下がり難いため、前記設定時間は、減水深が小さいほど長い時間にすることが望ましい。
【0121】
また判定部16eは、前記判定結果と、複数の給水栓情報(給水栓の開度、表面水位、減水深等)との組み合わせに応じて、圃場Hの表面H1における水の有無を判定することも可能である。例えば判定部16eは、ステップS50で圃場Hに水が写っていないと判定された圃場Hについて、給水栓が閉じた状態であり、かつ、表面水位の計測結果が所定の閾値未満である場合に、圃場Hの表面H1に水がないと判定することも可能である。また判定部16eは、圃場Hに水が写っていないと判定された圃場Hについて、給水栓が閉じてから、減水深に応じて設定される設定時間が経過するまでは、圃場Hの表面H1に水があると判定することも可能である。
【0122】
ここで、中干しのための設定期間に入った直後は、圃場Hへの給水が停止されているものの、表面水位が下がり切らずに圃場Hの表面H1に水が残っている。これに対し、設定期間になってある程度時間が経過すると、圃場Hの表面H1から水がなくなって中干状態へと移行する。判定部16eは、複数の衛星写真Pから、こうした圃場Hの時系列の変化を検知することで、圃場Hに水が写っているか否かを判定することも可能である。
【0123】
具体的には、まず取得部16aはステップS20において、複数の衛星写真Pを取得する。この際取得部16aは、設定期間に入った時点(又は、設定期間に入った直後)に撮影された衛星写真P(過去の衛星写真P)と、最新の衛星写真Pとを取得する。
【0124】
判定部16eは、ステップS50において過去の衛星写真Pを解析することで、圃場Hの写り具合(例えば色情報、輝度等)を判断する。判定部16eは、最新の衛星写真Pが過去の衛星写真Pの写り具合と大差がない場合に、設定期間に入った時点から圃場Hの状態が変化していない、すなわち、圃場Hの表面H1に水が写っていると判定する。一方判定部16eは、最新の衛星写真Pが過去の衛星写真Pの写り具合と異なっている場合に、設定期間に入った時点から圃場Hの状態が変化した、すなわち、圃場Hの表面H1に水が写っていないと判定する。これによって判定部16eは、複数の衛星写真Pに基づいて、圃場Hの表面H1に水があるか否かを精度よく判定することができる。
【0125】
なお上述した一例では、過去の衛星写真Pとして設定期間に入った時点の衛星写真Pを用いるものとしたが、判定部16eは、その他の期間に撮影された衛星写真Pと、最新の衛星写真Pとを比較することでも、圃場Hに水が写っているか否かを判定可能である。例えば判定部16eは、中干状態であると確認された時期に撮影された衛星写真Pと、最新の衛星写真Pとを比較して、その写り具合が大差ない場合に圃場Hに水が写っていないと判定することも可能である。このように、判定部16eは、圃場Hに水があるか否かがわかっている過去の衛星写真Pを利用して、圃場Hに水が写っているか否かを判定することができる。
【0126】
また判定部16eは、学習済みの学習モデルを用いて、圃場Hの表面H1に水があるか否かを判定することも可能である。
【0127】
例えば、圃場Hの表面H1に水がある場合の衛星写真Pと、水がない場合の衛星写真Pとを準備し、これら写真の写り具合(色情報、輝度等)の特徴と水の有無との関係を予め教師あり学習により圃場管理サーバ16に学習させる。これによって圃場管理サーバ16は、圃場Hの表面H1に水がある場合の特徴と、水がない場合の特徴とを学習する。圃場管理サーバ16は、こうして学習した特徴を利用することで、圃場Hの表面H1に水が写っているか否かを精度よく判定することができる。
【0128】
また判定部16eは、ステップS50の判定結果と、給水栓の開度に応じた給水の有無との間に差異があるか否かを考慮して、中干状態に関する処理を行うことも可能である。なお、ステップS50の判定結果と給水の有無との間に差異がある状態とは、前記判定結果及び給水の有無の一方が圃場Hの表面H1に水があることを示しているのに対して、前記判定結果及び給水の有無の他方が圃場Hの表面H1に水がないことを示している状態を指す。
【0129】
判定部16eは、例えば、前記判定結果と給水の有無との間に差異に応じて、中干状態を推定するための各種情報の吸い上げ頻度を変更することも可能である。例えば判定部16eは、前記判定結果と給水の有無との間に差異がある場合、各種情報の吸い上げ頻度を通常(差異がない場合)よりも高くしてもよい。具体的には、判定部16eは、給水栓の開度を取得する周期、水位水温センサ12の計測周期等を短くする。これによって圃場Hを注意深く監視することができる。
【0130】
また判定部16eは、前記判定結果と給水の有無との間に差異に基づいて、圃場Hの状態を推定することも可能である。例えば判定部16eは、前記差異がなくなった時点を起点として、圃場Hの状態が変化したと推定することも可能である。具体的には、前記差異がある状態から、前記判定結果及び給水の有無の双方が圃場Hの表面H1に水がないことを示すものとなった(差異がなくなった)場合に、その時点を起点として中干状態になったと推定し、中干期間を算出することも可能である。また、前記差異がある状態から、前記判定結果及び給水の有無の双方が圃場Hの表面H1に水があることを示すものとなった(差異がなくなった)場合に、その時点を起点として中干状態でなくなったと推定し、中干期間を算出することも可能である。
【0131】
以下では
図6及び
図7を参照し、中干状態に関するレポートRを作成するレポート作成処理について説明する。本実施形態のレポートRは、例えば中干しを延長したことを証明する用途に用いられる。
【0132】
レポート作成処理は、中干状態推定処理が終了した後で画像管理サーバ17によって適宜実行される。例えば、作業者端末15から画像管理サーバ17に対してレポート作成処理の実行が要求された場合に実行される。
図6に示すように、画像管理サーバ17は、レポート作成処理が実行されると、ステップS110へ移行する。
【0133】
ステップS110において、画像管理サーバ17の取得部17aは、中干状態推定処理で求められた中干状態の推定結果をデータセンター18の推定結果情報18fから取得する。ステップS110の処理が終了すると、画像管理サーバ17は、ステップS120へ移行する。
【0134】
ステップS120において、画像管理サーバ17の取得部17aは、レポートRの作成に必要な圃場固有の情報を、データセンター18の圃場情報18dから取得する。本実施形態では、圃場Hの面積、還元基準メタン発生量及び酸化基準メタン発生量を取得する。ステップS120の処理が終了すると、画像管理サーバ17は、ステップS130へ移行する。
【0135】
ステップS130において、画像管理サーバ17の算出部17bは、ステップS110・S120の取得結果に基づいて、設定期間における圃場Hでのメタン減少量を算出する。上述の如く、中干しを通常(8日程度)よりも延長することで、メタンの排出を抑制することができる。ステップS130で算出されるメタン減少量は、中干しを通常よりも延長することで、通常よりもどの程度メタンの排出を抑制できたのかを示す値である。以下、メタン減少量を算出するステップS130の処理の一例を説明する。
【0136】
まず算出部17bは、通常の中干しで想定される中干状態の期間を取得する。この通常の中干期間は、例えば、前述のように、圃場Hごとに設定された適切な中干しの期間(8日程度など)を用いることができる。算出部17bは、当該通常の中干期間と、ステップS110で取得された中干期間との差、すなわち中干しの延長によって中干状態が延びた期間(延長期間)を算出する。
【0137】
そして算出部17bは、延長期間、ステップS120で取得された還元メタン発生量、圃場Hの面積を乗算することで、中干しを延長した場合の延長期間におけるメタン発生量を算出する。また算出部17bは、ステップS120で取得された酸化メタン発生量を用いて、通常の中干しを行う場合における延長期間のメタン発生量を算出する。算出部17bは、これらメタン発生量の差を算出することで、設定期間の延長によるメタン減少量を算出する。
【0138】
ここで、メタン発生量は圃場Hの気象状況、例えば気温、日射量、湿度により変化することもある。そのため、算出部17bは、気象データセンタから取得した気象状況に応じてメタン発生量を推定してもよい。なお気象データセンタとは、例えば民間気象会社により運営される気象情報提供サーバ等をいい、気象庁等の情報に基づいて地域ごとに詳細な気温、日射量、湿度等が提供される。
【0139】
また算出部17bは、学習済みの学習モデルを用いて、メタン発生量を算出してもよい。当該学習済みモデルとしては、例えば、ステップS110で取得された中干期間と同時期の過去の圃場Hの湛水状況及び気象状況より記録(算出)されたメタン発生量を機械学習させたものを用いることができる。ステップS130の処理が終了すると、画像管理サーバ17は、ステップS140へ移行する。
【0140】
ステップS140において、画像管理サーバ17の算出部17bは、ステップS130で算出したメタン減少量を、二酸化炭素の減少量に換算する。本実施形態では、算出部17bは、地球温暖化係数に基づいてメタン減少量を二酸化炭素の減少量に換算する。
【0141】
地球温暖化係数とは、二酸化炭素の発生による温室効果の強さを基準として、他の温室効果ガスの温室効果の強さがどの程度のものであるかを示すものである。メタンの地球温暖化係数は、25とされている。算出部17bは、ステップS130で算出したメタン減少量とメタンの地球温暖化係数(25)とを乗算することで、メタン減少量を二酸化炭素の減少量に換算する。ステップS140の処理が終了すると、画像管理サーバ17は、ステップS150へ移行する。
【0142】
ステップS150において、画像管理サーバ17の作成部17cは、中干状態に関するレポートRを作成する。この際作成部17cは、例えば、所定の機関に提出する書類の様式に合うようなレポートRを作成する。例えば、メタン減少量に応じた報酬を受け取るために、温室効果ガスの排出抑制についてのプロジェクト(例えば、Jクレジット)で用意された書類のテンプレートの空欄に各種情報を自動入力することで、レポートRを作成する。
【0143】
図7に一例で示すように、作成部17cは、圃場Hの名称や、ステップS130で算出されたメタンの減少量や、ステップS140で算出された二酸化炭素の減少量や、中干状態推定処理で推定された中干期間等を含むレポートRを作成する。作成部17cは、作成されたレポートRを作業者端末15に送信する。ステップS150の処理が終了すると、画像管理サーバ17は、レポート作成処理を終了する。
【0144】
レポート作成処理によって、作業者がレポートRを作成する手間を省くことができるため、利便性を向上することができる。なお、画像管理サーバ17は、レポート作成処理で作成されたレポートRのデータを、所定の機関に送信することも可能である。これにより、作業者がレポートRを提出する手間を省くことができるため、利便性をさらに向上することができる。
【0145】
ここで、所定の機関に提出するためのレポートRには、設定期間を延長したことを証明するために、圃場Hの表面H1や給水栓を撮影した画像データが貼り付けられることも想定される。しかしながらスマートフォンやタブレット端末のカメラで撮影が行われると、一般的に画像データは、1つのフォルダに格納されることから、複数の圃場Hを1つの作業者端末15のカメラで撮影すると、画像データの管理が煩雑になってしまう。
【0146】
そこで本実施形態では、画像管理サーバ17のデータ記憶処理により、データセンター18で圃場Hごとに画像データを管理可能に構成されている。
【0147】
以下では
図2及び
図8を参照し、データ記憶処理について説明する。データ記憶処理は、データセンター18の記憶装置に画像データを記憶させるための処理である。データ記憶処理は、例えば、作業者端末15のカメラによって圃場Hが撮影された後で、画像管理サーバ17によって適宜実行される。例えば、作業者端末15から画像管理サーバ17に対してデータ記憶処理の実行が要求された場合に実行される。
図8に示すように、画像管理サーバ17は、データ記憶処理が実行されると、ステップS210へ移行する。
【0148】
ステップS210において、画像管理サーバ17の取得部17aは、作業者端末15から画像データを取得する。当該画像データには、撮影日時及び撮影場所の情報(撮影時の作業者端末15の位置情報)が関連付けられている。ステップS210の処理が終了すると、画像管理サーバ17は、ステップS220へ移行する。
【0149】
ステップS220において、画像管理サーバ17の取得部17aは、ステップS210で取得した画像データと、圃場識別情報とを関連付けた情報をデータセンター18に送信する。以下、ステップS220の処理の一例を説明する。
【0150】
まず取得部17aは、各圃場Hの位置情報及び圃場識別情報を、データセンター18の圃場情報18dから取得する。そして取得部17aは、ステップS210で取得した画像データに関連付けられた撮影場所の情報、及び各圃場Hの位置情報の取得結果に基づいて、画像データがどの圃場Hを撮影したものであるかを特定する。その後取得部17aは、特定した圃場Hの識別情報を、ステップS210で取得した画像データ、撮影時間等に関連付けた情報をデータセンター18に送信する。ステップS220の処理が終了すると、画像管理サーバ17は、データ記憶処理を終了する。
【0151】
データ記憶処理によって、画像管理サーバ17から送信された情報が
図2に示すデータセンター18の画像情報18eとして記憶され、データセンター18で圃場Hごとに画像データを管理することができる。
【0152】
こうして画像データが圃場Hごとに管理されることにより、利便性を向上させることができる。例えば、各圃場Hのうち、作業者が選択した一部の圃場Hを撮影した画像データのみを作業者端末15に表示させることができる。また、撮影日時の順に画像データを並べることもできる。また作業者端末15の操作に応じて、並べられた画像データをレポートRに貼り付けることもできる。これによって、画像データを用いたレポートRの作成を容易に行うことができ、利便性を向上させることができる。
【0153】
本実施形態では、上述したような画像データを管理するサーバ(画像管理サーバ17)を、圃場Hの給排水を管理するサーバ(圃場管理サーバ16)とは別に構築している。こうしてサーバを分けることにより、一方のサーバに障害が発生した場合でも、他方のサーバは継続して稼働するため、障害に対するリスクを分散することができる。
【0154】
なお、給水装置11は、配水池に貯留される水をそのまま圃場Hに供給するのではなく、水に空気を含ませて圃場Hに供給することも可能である。例えば、給水装置11の近傍に泡発生装置を設置して、直径が1μm以上かつ100μm未満の泡(マイクロバブル)、直径が1μm未満の泡(ウルトラファインバブル)等を含む水を圃場Hに供給することも可能である。これによって、圃場Hに水を張る場合に、圃場Hの水に多くの空気を含ませることができる。上述の如く、メタン生成菌は嫌気性細菌であるため、圃場Hの水に多くの空気を含ませることで、中干しとは異なる時期においてもメタン生成菌の活動を抑制し、圃場Hからのメタンの排出量を減少させることができる。
【0155】
以上の如く、本実施形態に係る圃場管理システム10は、圃場Hに設けられて当該圃場の水位を調節する水位調節手段(給水栓及び排水栓)に関する水位調節手段情報(給水栓開度情報18a及び排水栓開度情報18b)を取得する情報取得部、又は、前記圃場Hを含む領域を撮影した画像(上空画像(衛星写真P))を取得する画像取得部の少なくとも一方を有する取得部16aと、前記取得部16aの取得結果に基づいて、前記圃場Hの水位に関する判定処理(ステップS50・S60)を行う判定部16eと、を具備するものである。
【0156】
このように構成することにより、作業者が圃場Hに足を運ぶことなく、圃場Hの水位に関する情報を容易に把握することができる。例えば、圃場Hの表面H1に水があるか否かを容易に把握することができる。
【0157】
また、前記取得部16aは、前記水位調節手段情報取得部及び前記画像取得部の双方を有するものである(
図3に示すステップS20・S30参照)。
【0158】
このように構成することにより、水位調節手段情報及び画像に基づいて、圃場Hの水位に関する情報を把握することができる。
【0159】
また、前記水位調節手段は、前記圃場Hに給水する給水栓、前記圃場に給水する給水ポンプ、前記圃場Hへの給水を調節する給水堰、前記圃場Hから排水する排水栓、前記圃場Hから排水する排水ポンプ、又は、前記圃場Hからの排水を調節する排水堰の少なくとも1つを含み、前記給水栓情報は、前記給水栓の開度に関する情報(給水栓開度情報18a)、前記給水ポンプの動作状態に関する情報、前記給水堰の状態に関する情報、前記排水栓の開度に関する情報(排水栓開度情報18b)、前記排水ポンプの動作状態に関する情報、前記排水堰の状態に関する情報、又は、前記圃場Hの水位(水位情報18c)に関する情報の少なくとも1つを含むものである。
【0160】
このように構成することにより、給水栓の開度、圃場Hの水位等に基づいて、圃場Hの水位に関する情報を把握することができる。
【0161】
また、前記画像は、前記圃場Hを含む領域を上空から撮影した上空画像(衛星写真P)を含み、前記判定部16eは、前記判定処理として、前記水位調節手段情報及び前記上空画像の取得結果に基づいて、前記圃場Hの表面H1に水があるか否かを判定する第1判定処理(ステップS50・S60)を行うものである。
【0162】
このように構成することにより、圃場Hの表面H1に水があるか否かを容易に把握することができる。
【0163】
また、前記画像取得部(取得部16a)は、撮影日時の異なる複数の前記画像(上空画像)を取得するものである。
【0164】
このように構成することにより、複数の画像に基づいて、圃場Hの水位に関する判定処理を精度よく行うことができる。
【0165】
また、前記画像(上空画像)は、衛星Sによって撮影される衛星写真Pである。
【0166】
このように構成することにより、インターネット回線等を介して、画像を容易に取得することができる。
【0167】
また、前記画像は、前記圃場Hの上空を飛行する飛行体によって撮影される航空写真である。
【0168】
このように構成することにより、飛行体(例えばドローン)を用いて、画像を任意のタイミングで取得することができる。
【0169】
また、前記水位調節手段は、前記水位調節手段が設けられる圃場H固有の情報(圃場情報18d)を含むものである。
【0170】
このように構成することにより、圃場H固有の情報(例えば減水深)に基づいて、圃場Hの水位に関する判定処理を精度よく行うことができる。
【0171】
また、前記圃場管理システム10は、圃場Hの区画情報に基づいて、前記画像(上空画像)に写った前記圃場Hを区画する区画部16dをさらに具備するものである。
【0172】
このように構成することにより、画像で圃場Hの領域が明確となるため、圃場Hの水位に関する判定処理を精度よく行うことができる。
【0173】
また、前記圃場管理システム10は、前記判定部16eの判定結果に基づいてAWD栽培の状態又は中干状態の少なくとも一方(本実施形態では中干状態)を推定する推定部16bをさらに具備するものである。
【0174】
このように構成することにより、AWD栽培の状態又は中干状態の推定結果に基づいて、AWD栽培の状態又は中干状態となった期間を把握することができる。
【0175】
また、前記圃場管理システム10は、前記判定部16eの判定結果に基づいて、前記圃場Hからのメタン排出量、又は、所定の基準値に対する前記圃場Hでのメタン減少量の少なくとも一方を算出する算出部17bをさらに具備するものである。
【0176】
このように構成することにより、算出部17bの処理によってメタン排出量又はメタン減少量の少なくとも一方を取得することができるため、利便性を向上することができる。
【0177】
また、前記算出部17bは、前記メタン排出量又は前記メタン減少量の少なくとも一方の算出結果を、二酸化炭素の量に換算するものである(ステップS140)。
【0178】
このように構成することにより、算出部17bの処理によって二酸化炭素の量を取得することができるため、利便性を向上することができる。
【0179】
また、前記圃場管理システム10は、前記算出部17bの算出結果に関するレポートR(報告書)を作成する作成部17cをさらに具備するものである。
【0180】
このように構成することにより、利便性を向上することができる。例えば、作成部17cによってメタンの減少量を所轄機関等に報告するレポートRを作成できるため、利便性を向上することができる。
【0181】
また、前記圃場管理システム10は、前記圃場Hを撮影した画像データと、当該圃場Hを識別する識別情報とを互いに関連付けて記憶する画像管理サーバ17(情報処理装置)をさらに具備するものである。
【0182】
このように構成することにより、画像データを圃場Hごとに管理することができる。
【0183】
また、前記水位調節手段は、前記圃場Hに給水する給水栓、前記圃場Hに給水する給水ポンプ、前記圃場Hへの給水を調節する給水堰、前記圃場Hから排水する排水栓、前記圃場Hから排水する排水ポンプ、又は、前記圃場Hからの排水を調節する排水堰の少なくとも1つを含み、前記水位調節手段情報は、前記給水栓の開度に関する情報、前記給水ポンプの動作状態に関する情報、前記給水堰の状態に関する情報、前記排水栓の開度に関する情報、前記排水ポンプの動作状態に関する情報、又は、前記排水堰の状態に関する情報の少なくとも1つを含み、前記圃場管理システム10は、前記水位調節手段を撮影した画像から、画像認識により前記水位調節手段情報に含まれる情報を取得して記憶する第3情報処理装置(データセンター18のサーバ)をさらに具備するものである。
【0184】
このように構成することにより、通信不能な給水栓等からも、画像に基づいて開度等の情報を得ることができるため、利便性を向上させることができる。
【0185】
また、前記圃場管理システム10は、前記圃場Hを撮影した画像から、前記圃場Hの位置情報又は前記圃場Hごとに付与された識別情報(圃場識別情報)を取得し、前記圃場Hの位置情報又は識別情報として記憶する第4情報処理装置(データセンター18のサーバ)をさらに具備するものである。
【0186】
このように構成することにより、作業者端末15の入力部(タッチパネル等)で位置情報を入力しなくて済むため、利便性を向上させることができる。
【0187】
また、前記圃場管理システム10は、前記圃場Hを撮影した画像(例えば
図9(a)に示す水位推定部材20等を含む画像)から、画像認識により前記圃場Hの水位を示す情報を取得して記憶する第5情報処理装置(データセンター18のサーバ)をさらに具備するものである。
【0188】
このように構成することにより、圃場Hの水位を遠隔で監視する手段(水位水温センサ12)又は電源がないところでも、圃場Hの水位を示す情報を取得することができるため、利便性を向上させることができる。また当該情報を用いて推定部16bでステップS70の処理を行うことで、電源等がない圃場Hであっても、中干しを延長したこと(又はAWD栽培を行ったこと)を証明することができる。
なお本実施形態では水位水温センサ12が圃場Hに設置されているため、水位水温センサ12の計測結果を取得することで、作業者が圃場Hに足を運んで圃場Hを撮影することなく、圃場Hの水位を把握することができる。
また画像認識で取得された水位と、水位水温センサ12の計測結果とを組み合わせることで、圃場Hの水位を細かく管理することができる。
【0189】
また、前記作業者端末15は、衛星測位システムを備えた機器である。例えば作業者端末15は、GPS衛星からの信号を受信することによって、自身の位置情報を検出可能な機器である。
【0190】
このように構成することにより、位置情報を精度よく取得することができる。また作業者端末15で撮影された画像に衛星測位システムで得られた位置情報を付与することで、撮影の位置情報の精度を向上させることができる。
【0191】
また、以上の如く、本実施形態に係る圃場管理システム10は、圃場Hに設けられて当該圃場Hの水位を調節する水位調節手段(給水栓及び排水栓)に関する水位調節手段情報(給水栓開度情報18a及び排水栓開度情報18b)を取得する情報取得部、又は、前記圃場Hを含む領域を撮影した画像(上空画像(衛星写真P))を取得する画像取得部の少なくとも一方を有する取得部16aと、前記取得部16aの取得結果に基づいて、前記圃場Hの水位に関する判定処理(ステップS50・S60)を行う判定部16eと、情報を記憶可能な情報処理装置(データセンター18のサーバ)と、を具備し、前記水位調節手段は、前記圃場Hに給水する給水栓、前記圃場Hに給水する給水ポンプ、前記圃場Hへの給水を調節する給水堰、前記圃場Hから排水する排水栓、前記圃場Hから排水する排水ポンプ、又は、前記圃場Hからの排水を調節する排水堰の少なくとも1つを含み、前記水位調節手段情報は、前記給水栓の開度に関する情報、前記給水ポンプの動作状態に関する情報、前記給水堰の状態に関する情報、前記排水栓の開度に関する情報、前記排水ポンプの動作状態に関する情報、又は、前記排水堰の状態に関する情報の少なくとも1つを含み、前記情報処理装置は、前記水位調節手段を撮影した画像(作業者端末15で撮影した画像)から、画像認識により、前記水位調節手段情報に含まれる情報を取得して記憶すると共に、前記圃場Hを撮影した画像(作業者端末15で撮影した画像)から、前記圃場Hの位置情報又は前記圃場Hごとに付与された識別情報(圃場識別情報)を取得し、前記圃場Hの位置情報又は識別情報として記憶するものである。
【0192】
このように構成することにより、水位に関する情報を容易に把握することができる。また画像から水位に関する情報を取得することで、水位水温センサ12等がないところでも、圃場Hの水位を取得することができる。また、作業者端末15の入力部(タッチパネル等)で位置情報を入力しなくて済むため、利便性を向上させることができる。
【0193】
なお、本実施形態に係る取得部16aは、本発明に係る給水栓情報取得部及び画像取得部の実施の一形態である。
また、画像管理サーバ17は、本発明に係る第1情報処理装置の実施の一形態である。
また、データセンター18のサーバは、本発明に係る第3情報処理装置から第5情報処理装置の実施の一形態である。
【0194】
なお、第3情報処理装置(データセンター18のサーバ)は、前記画像認識を人工知能によって行うものであってよい。
【0195】
このように構成することにより、人工知能を利用して前記水位調節手段情報(給水栓の開度等)を取得することができる。
【0196】
また、第5情報処理装置(データセンター18のサーバ)は、前記画像認識を人工知能によって行うものであってよい。
【0197】
このように構成することにより、人工知能を利用して圃場Hの水位を示す情報を取得することができる。
【0198】
また、前記第5情報処理装置(データセンター18のサーバ)は、前記圃場Hに設けられた竪穴H2(
図9(a)参照)を撮影した画像から、前記画像認識により前記圃場Hの水位を示す情報を取得するものであってよい。
【0199】
このように構成することにより、竪穴H2を利用して圃場Hの水位を示す情報を取得することができる。また、圃場Hの地下水位も取得することができる。
【0200】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0201】
例えば、本実施形態では、中干状態の推定対象となる時期が中干しのための設定期間であるものとしたが、設定期間に限らず任意の時期において、中干状態を推定可能である。
【0202】
また推定部16bは、中干状態推定処理(ステップS70)で、中干状態の推定に加えて、中干しに関するその他の計算処理を実行することも可能である。例えば推定部16bは、設定期間中の中干状態に応じて、中干しの終了推奨時期を算出することも可能である。
【0203】
具体的には、圃場Hが長期間乾燥すると水稲の根が傷み、収量が減少するおそれがある。一方、圃場Hの乾燥期間が短いと、温室効果ガス(メタン)の排出抑制効果が不十分となるおそれがある。そこで推定部16bは、設定期間の最中に中干開始時期を特定し、当該中干開始時期から所定期間後の時点を、中干しの終了推奨時期として算出する。なお所定期間は、圃場Hに関する情報(土壌の性質や状態、地域等)や当該圃場Hで生育される水稲の種類等に応じて適宜設定される。より詳細には、所定期間は、中干しの延長によるメタンの排出抑制の効果を奏すると共に、収量の減少の影響が小さい期間が設定される。中干しの終了推奨時期の算出結果が作業者端末15に報知されることで、作業者は、設定期間の延長によってメタンの排出を抑制しながらも、収量に与える影響を小さくすることができる中干しの終了時期を把握することができる。
【0204】
また圃場管理サーバ16は、設定期間ではなく、上述した中干しの終了推奨時期の算出結果に基づいて、中干しを自動的に終了してもよい。これによって中干しを適切なタイミングで自動的に終了することができる。
【0205】
また本実施形態では、データセンター18の記憶装置に画像データ等の各種情報が記憶されるものとしたが、各種情報が記憶される機器は、特に限定されない。例えば圃場管理サーバ16、画像管理サーバ17等に各種情報が記憶されてもよい。また各種情報が複数のサーバに分散して記憶されてもよい。
【0206】
また本実施形態では、画像データを管理するサーバ(画像管理サーバ17)を、圃場Hの給排水を管理するサーバ(圃場管理サーバ16)とは別に構築するものとしたが、圃場管理システム10におけるサーバ構成は特に限定されない。例えば、画像データの管理及び圃場Hの給排水の管理を、共通のサーバで行うものとしてもよい。
【0207】
また算出部17bは、ステップS130において設定期間の延長によるメタンの減少量を算出するものとしたが、設定期間の延長によってどの程度メタンの発生が抑制されたのかを判断可能なその他の情報を算出してもよい。例えば算出部17bは、設定期間中の圃場Hからのメタン排出量を算出してもよい。
【0208】
また本実施形態では、圃場管理サーバ16が中干状態推定処理を行うものとしたが、中干状態推定処理を行う機器は特に限定されない。例えば中干状態推定処理を作業者端末15等が行ってもよい。
【0209】
また区画部16dは、中干状態推定処理のステップS40において、区画情報に基づいて圃場Hを区画するものとしたが、圃場Hを区画する方法は特に限定されない。例えば区画部16dは、衛星写真Pを解析することによって、圃場Hを区画することも可能である。
【0210】
また判定部16eは、中干状態推定処理のステップS50・S60において、衛星写真P及び給水栓の開度のうち、衛星写真Pのみを用いて、圃場Hの表面H1に水があるか否かを判定することも可能である。すなわち判定部16eは、衛星写真Pで水が写っていないと判定した圃場Hについて、当該圃場Hの表面H1に水がないと判定可能である。
【0211】
また給水装置11は、給水栓とは異なる構成により、圃場Hに給水することも可能である。例えば給水装置11は、水路の水を汲み上げて圃場Hへ給水する給水ポンプにより、圃場Hに給水することも可能である。また給水装置11は、圃場Hに水を供給する給水路に設置される堰(給水堰)により、圃場Hへの給水を調節することも可能である。また上記給水ポンプ及び給水堰は、遠隔操作可能であるか否かは問わない。
【0212】
また排水装置13は、排水栓とは異なる構成により、圃場Hから排水することも可能である。例えば排水装置13は、圃場Hの水を汲み上げて水路へ排水する排水ポンプにより、圃場Hから排水することも可能である。また排水装置13は、圃場Hの水を排出する排水路C(
図1参照)に設置される堰(排水堰)により、圃場Hからの排水を調節することも可能である。また上記排水ポンプ及び排水堰は、遠隔操作可能であるか否かは問わない。
【0213】
このように、本発明に係る水位調節手段は、圃場Hの水位を調節可能であればよく、本実施形態の給水栓や排水栓に限定されるものではない。
【0214】
またデータセンター18には、水位調節手段の構成に応じた情報(給水や排水の状況が判断可能な情報)が記憶されてよい。例えば、給水ポンプ及び排水ポンプが圃場Hに設置される場合、データセンター18には、給水ポンプ及び排水ポンプの動作状態に関する情報が記憶されてよい。なお動作状態に関する情報は、例えば、給水ポンプ等が動作しているか否かを判断可能な情報である。動作状態に関する情報は、例えば、給水ポンプ等の動作の履歴、給水ポンプの動作により給水されたことを判断可能な給水の履歴(稼働状態の履歴)等である。また例えば、給水堰及び排水堰が圃場Hに設置される場合、データセンター18には、給水堰及び排水堰の状態に関する情報が記憶されてよい。なお給水堰等の状態に関する情報は、給水堰等で給水及び排水が行われたことを判断可能な情報である。給水堰等に状態に関する情報は、例えば、給水堰等の高さの履歴、給水堰を水が通過しているか否かの履歴等である。
【0215】
またデータセンター18のサーバは、水位調節手段を撮影した画像から、画像認識により上述した給水ポンプ等の動作状態等に関する情報を取得可能である。例えばサーバは、給水ポンプが作動していることを示す作動ランプの画像や、給水ポンプから圃場Hに向けて水が放出される画像を認識することで、給水ポンプ等の動作状態(実際に給水していること)等を取得可能である。またサーバは、給水堰で圃場Hの水がせき止められている画像を認識することで、給水堰等の状態(給水が行われていないこと)等を取得可能である。
【0216】
またデータセンター18には、水位調節手段(給水栓等)ごとに与えられた識別情報、給水栓の開度等が記憶されるものとしたが、データセンター18には、本実施形態とは異なる情報(水位調節手段についての情報)が記憶されてもよい。例えば、水位調節手段の位置情報が識別情報(水位調節手段の識別情報)と互いに関連付けて記憶されてもよい。これにより、水位調節手段の情報を細かく管理することができるため、利便性を向上させることができる。
【0217】
また水位調節手段の位置情報及び識別情報は、水位調節手段を撮影した画像から取得されてよい。例えば、水位調節手段の設置場所及び識別情報を示す情報(水位調節手段の住所や名称が記載されたラベル、水位調節手段の住所や名称等を判別可能な記号やコード等)が水位調節手段に貼り付けられている場合、データセンター18のサーバは、作業者端末15から、水位調節手段(前記ラベル等)を撮影した画像を取得する。そしてサーバは、当該画像を解析して前記ラベル等を検出することで、水位調節手段を撮影した画像から位置情報等を取得し、識別情報と関連付けて記憶することができる。
【0218】
以上の如く、前記圃場管理システム10は、前記水位調節手段を撮影した画像から、位置情報又は前記水位調節手段ごとに与えられた識別情報を取得し、前記水位調節手段の位置情報として記憶する第2情報処理装置(データセンター18のサーバ)をさらに具備するものである。
【0219】
このように構成することにより、作業者端末15の入力部(タッチパネル等)で水位調節手段の位置情報等を入力しなくて済むため、利便性を向上させることができる。
【0220】
なお、データセンター18のサーバは、本発明に係る第2情報処理装置の実施の一形態である。
【0221】
また本実施形態では、中干状態推定処理のステップS50・S60(
図3参照)において、衛星写真P及び水位調節手段情報(給水栓の開度)の双方を用いて、圃場Hの表面H1に水があるか否かを判定するものとしたが、判定部16eは、水位調節手段情報のみを用いて、圃場Hの表面H1に水があるか否かを判定することも可能である。例えば判定部16eは、給水栓及び排水栓の開度から、給水栓が閉じられると共に排水栓が開かれる状態が長時間継続していると判断した場合等に、圃場Hの表面H1に水がないと判定可能である。また上述した給水ポンプや排水ポンプが設置される圃場Hでは、判定部16eは、排水ポンプが長時間動作した後の時間帯において、給水ポンプが動作していない場合等に、圃場Hの表面H1に水がないと判定可能である。このように判定部16eは、給水栓や排水栓が設置されていなくても、水位に関する判定処理(ステップS50・S60の処理)を実行可能である。
【0222】
また本実施形態では、中干しの延長を例に挙げて、温室効果ガス(メタン)の排出を抑制するものとしたが、その他の方法により、温室効果ガスの排出を抑制することも可能である。例えば、AWD(Alternate wetting and drying)栽培により、温室効果ガスの排出を抑制することも可能である。なお、AWD栽培とは、圃場Hの表面水位を5cm以上高くする作業(
図10(a)に示す圃場H参照)と、圃場Hの地下水位を15cm以上低くする作業(
図10(b)に示す圃場H参照)とを、所定期間(例えば10日間)に亘って繰り返し行う栽培方法である。AWD栽培では、地下水位を15cm以上低くすることで、圃場Hを酸化状態にしてメタンの発生を抑制することができる。
【0223】
圃場管理システム10は、上記AWD栽培を行う圃場Hを対象に、各種処理を行うことも可能である。例えば推定部16bは、中干状態ではなく、AWD栽培の状態を推定することも可能である。作業者は、当該推定結果を証拠として用いることで、AWD栽培を行ったことを証明し、温室効果ガスの排出抑制についてのプロジェクトの規定に応じた報酬を受け取ることができる。以下、
図11を参照し、AWD栽培の状態を推定するAWD栽培状態推定処理の一例を説明する。
【0224】
まずステップS310において、取得部16aは、データセンター18(水位情報18c)から、圃場Hの水位の履歴、当該圃場Hの圃場識別情報及び水位の計測日時等を取得する。この際取得部16aは、圃場Hの表面水位の履歴及び地下水位の履歴の双方を取得する。ステップS310の処理が終了すると、圃場管理サーバ16は、ステップS320へ移行する。
【0225】
ステップS320において、判定部16eは、ステップS310で取得された水位の履歴と、AWD栽培で規定された水位との大小関係を判定する。具体的には判定部16eは、ステップS310で取得された表面水位が5cm以上であるか否かと、ステップS310で取得された地下水位が-15cm以下であるか(圃場Hの表面H1よりも水面が15cm以上低いか)否かと、を判定する(
図10参照)。判定部16eは、当該判定結果を、圃場識別情報及び水位の計測日時等と関連付けて記憶する。ステップS320の処理が終了すると、圃場管理サーバ16は、ステップS330へ移行する。
【0226】
ステップS330において、推定部16bは、圃場HのAWD栽培の状態を推定する。以下、推定処理の一例を説明する。推定部16bは、ステップS320で記憶された判定結果を時系列に沿って確認し、圃場Hの表面水位が5cm以上である状態と、地下水位が-15cm以上である状態とに繰り返し調整されている期間を特定する。そして推定部16bは、当該期間を、圃場HでAWD栽培が行われた期間とする。推定部16bは、当該推定結果を、圃場識別情報と関連付けてデータセンター18に送信する。これによってデータセンター18の推定結果情報18fにAWD栽培の期間の推定結果が記憶される。ステップS330の処理が終了すると、圃場管理サーバ16は、ステップS340へ移行する。
【0227】
ステップS340において、推定部16bは、本実施形態(
図3)のステップS80と同様に、ステップS330でのAWD栽培の状態(期間)の推定結果を作業者端末15に送信する。ステップS340の処理が終了すると、圃場管理サーバ16は、AWD栽培状態推定処理を終了する。
【0228】
圃場管理サーバ16は、AWD栽培推定処理を行うことで、AWD栽培が行われたことを証明することができる。また圃場管理サーバ16は、作業者端末15からの要求に応じて、
図3に示す中干状態推定処理及び
図11に示すAWD栽培推定処理のいずれかを選択して実行してもよい。これによって中干しの延長及びAWD栽培が行われたことの双方を証明することができるため、汎用性を向上させることができる。
【0229】
以上の如く、前記画像は、作業者が所有する作業者端末15によって撮影される端末画像を含み、前記判定部16eは、前記判定処理として、前記端末画像から取得された前記圃場Hの水位を示す情報と、予め規定される水位との大小関係を判定する第2判定処理(ステップS320)を行うものである。
【0230】
このように構成することにより、圃場Hの水位と予め規定される水位との大小関係を容易に把握することができる。例えば、圃場Hの水位と、AWD栽培で規定される水位(表面水位5cm、地下水位-15cm)との大小関係を把握することができる。
【0231】
また算出部17b及び作成部17cは、AWD栽培推定処理で推定されたAWD栽培の期間に基づいて、メタンの排出量や減少量を算出し、その結果に関する報告書(
図7に示すレポートR参照)を作成してもよい。これにより、AWD栽培を行う場合でも、作業者がレポートRを作成する手間を省くことができる。
【符号の説明】
【0232】
10 圃場管理システム
16a 取得部
16d 判定部
P 衛星写真