(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114679
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】表面処理剤
(51)【国際特許分類】
C07F 7/18 20060101AFI20240816BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240816BHJP
G02B 1/18 20150101ALN20240816BHJP
【FI】
C07F7/18 W CSP
C07B61/00 300
G02B1/18
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024019168
(22)【出願日】2024-02-13
(31)【優先権主張番号】P 2023020363
(32)【優先日】2023-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】久保田 大貴
(72)【発明者】
【氏名】高野 真也
(72)【発明者】
【氏名】原 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】野村 孝史
【テーマコード(参考)】
2K009
4H039
4H049
【Fターム(参考)】
2K009CC26
2K009CC42
2K009DD02
2K009DD03
2K009EE05
4H039CA92
4H039CF10
4H049VN01
4H049VP02
4H049VQ11
4H049VQ37
4H049VR21
4H049VR43
4H049VS21
4H049VT17
4H049VU21
4H049VW32
(57)【要約】
【課題】新規含フッ素シラン化合物の提供。
【解決手段】下記式(1)[式中:Rfは、フッ素原子、又は含フッ素置換基により置換されている芳香族基であり、X
Aは、単結合、または2~10価の基であり、R
Siは、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子を含む1価の基であり、α1は、1~9の整数であり、β1は、1~9の整数である。]で表される含フッ素シラン化合物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
【化1】
[式中:
Rfは、フッ素原子、又は含フッ素置換基により置換されている芳香族基であり、
X
Aは、単結合、または2~10価の基であり、
R
Siは、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子を含む1価の基であり、
α1は、1~9の整数であり、
β1は、1~9の整数である。]
で表される含フッ素シラン化合物。
【請求項2】
Rfは、フッ素原子、フルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基、RNHN-、又はRN
2N-(式中、RNは、フルオロアルキルである)により置換されている芳香族基である、請求項1に記載の含フッ素シラン化合物。
【請求項3】
Rfは、フッ素原子により置換されている芳香族基である、請求項1又は2に記載の含フッ素シラン化合物。
【請求項4】
Rfは、C1-6フルオロアルキル基、又はC1-6フルオロアルコキシ基、RNHN-、又はRN
2N-(式中、RNは、フルオロアルキル基である)により置換されている芳香族基である、請求項1~3のいずれか1項に記載の含フッ素シラン化合物。
【請求項5】
Rfにおける芳香族基は、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環、ベンゾピレン環、クリセン環、ピレン環、トリフェニレン環、コランニュレン環、オバレン環、インドール環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ビフェニル環、テルフェニル環、トリフェニルメタン環、又はベンゾフェノン環を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の含フッ素シラン化合物。
【請求項6】
Rfは、フッ素原子、C1-6フルオロアルキル基、又はC1-6フルオロアルコキシ基、RNHN-、又はRN
2N-(式中、RNは、フルオロアルキル基である)により置換されているフェニル基である、請求項1~5のいずれか1項に記載の含フッ素シラン化合物。
【請求項7】
XAは、下記式:
-XB-XC-XD-XE-XF-
[式中:
XBは、単結合、C1-30アルキレン基、又はC2-30アルケニレン基であり、
XCは、単結合、又は2価の基であり、
XDは、2価のシロキサン含有基、又は下記式:
-(CFH)a-(CH2)b-(O)c-
[式中:
aは、0~200の整数であり、
bは、0~200の整数であり、
cは、0~200の整数であり、
a、b、及びcを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は任意である。]
で表される基であり、
XEは、単結合、又は2価の基であり、
XFは、単結合、C1-30アルキレン基、又はC2-30アルケニレン基である。]
で表される基である、請求項1~6のいずれか1項に記載の含フッ素シラン化合物。
【請求項8】
XCは、単結合、酸素原子、硫黄原子、o-、m-もしくはp-フェニレン基、-CO-、-C(O)O-、-OC(O)-、-CONR54-、-NR54CO-、-O-CONR54-、-NR54CO-O-、-NR54CONR54-、-NR54-、又は-(CH2)n5-であり、
R54は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は1価の有機基であり、
n5は、各出現においてそれぞれ独立して、1~30の整数である、
請求項7に記載の含フッ素シラン化合物。
【請求項9】
XEは、単結合、酸素原子、硫黄原子、o-、m-もしくはp-フェニレン基、-CO-、-C(O)O-、-OC(O)-、-CONR54-、-NR54CO-、-O-CONR54-、-NR54CO-O-、-NR54CONR54-、-NR54-、又は-(CH2)n5-であり、
R54は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は1価の有機基であり、
n5は、各出現においてそれぞれ独立して、1~30の整数である、
請求項7又は8に記載の含フッ素シラン化合物。
【請求項10】
X
Dは、下記式:
【化2】
[式中:
R
3は、それぞれ独立して、C
1-12アルキレン基、-R
6-O-R
6-、-R
8-R
7-R
8-、-R
8-R
7-R
9-R
7-R
8-、-R
8-R
7-R
9-R
6-R
9-R
7-R
8-、又は-R
9-R
6-R
9-R
7-R
9-R
6-R
9-であり、
R
4は、それぞれ独立して、C
1-12アルキレン基、-R
6-O-R
6-、-R
8-R
7-R
8-、-R
8-R
7-R
9-R
7-R
8-、-R
8-R
7-R
9-R
6-R
9-R
7-R
8-、又は-R
9-R
6-R
9-R
7-R
9-R
6-R
9-であり、
R
6は、それぞれ独立して、C
1-6アルキレン基であり、
R
7は、それぞれ独立して、置換されていてもよい、フェニレン基、又はナフチレン基であり、
R
8は、それぞれ独立して、単結合、又はC
1-6アルキレン基であり、
R
9は、それぞれ独立して、単結合、又は酸素原子であり、
R
5は、それぞれ独立して、炭化水素基であり、
xは、0~200の整数であり、
yは、0~200の整数であり、
zは、0~200の整数であり、
x+y+zは、1以上であり、
x、y、又はzを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
で表される基である、請求項7~9のいずれか1項に記載の含フッ素シラン化合物。
【請求項11】
XDは、式:
-(CFH)x-(CH2)y-(O)z-
[式中:
xは、0~200の整数であり、
yは、0~200の整数であり、
zは、0~200の整数であり、
x、y、及びzを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は任意である。]
で表される基である、請求項7~9のいずれか1項に記載の含フッ素シラン化合物。
【請求項12】
XDは、C1-36アルキレン基である、請求項7~9のいずれか1項に記載の含フッ素シラン化合物。
【請求項13】
XDは、式:
-(OR61)f-
[式中、
R61は、C1-6アルキレン基であり、
fは、2~30の整数である。]
で表される基である、請求項7~9のいずれか1項に記載の含フッ素シラン化合物。
【請求項14】
X
Aは、それぞれ独立して、下記:
【化3】
[式中、X
aは、単結合、又は2価の有機基である。]
で表される基である、請求項1~6のいずれか1項に記載の含フッ素シラン化合物。
【請求項15】
R
Siは、下記式(S1)、(S2)、(S3)、(S4)、又は(S5):
【化4】
[式中:
R
11は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり、
R
12は、それぞれ独立して、1価の有機基であり、
n1は、(SiR
11
n1R
12
3-n1)単位毎にそれぞれ独立して、0~3の整数であり、
X
11は、それぞれ独立して、単結合又は2価の有機基であり、
R
13は、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基であり、
tは、それぞれ独立して、2以上の整数であり、
R
14は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又は-X
11-SiR
11
n1R
12
3-n1であり、
R
15は、それぞれ独立して、単結合、酸素原子、炭素数1~6のアルキレン基又は炭素数1~6のアルキレンオキシ基であり、
R
a1は、それぞれ独立して、-Z
1-SiR
21
p1R
22
q1R
23
r1であり;
Z
1は、それぞれ独立して、2価の有機基であり、
R
21は、それぞれ独立して、-Z
1’-SiR
21’
p1’R
22’
q1’R
23’
r1’であり;
R
22は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり、
R
23は、それぞれ独立して、1価の有機基であり、
p1は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
q1は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
r1は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
Z
1’は、それぞれ独立して、2価の有機基であり、
R
21’は、それぞれ独立して、-Z
1”-SiR
22”
q1”R
23”
r1”であり;
R
22’は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり、
R
23’は、それぞれ独立して、1価の有機基であり、
p1’は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
q1’は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
r1’は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
Z
1”は、それぞれ独立して、2価の有機基であり、
R
22”は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり、
R
23”は、それぞれ独立して、1価の有機基であり、
q1”は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
r1”は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
R
b1は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり、
R
c1は、それぞれ独立して、1価の有機基であり、
k1は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
l1は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
m1は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
ただし、式(S3)中、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子が少なくとも2つ存在し、
R
d1は、それぞれ独立して、-Z
2-CR
31
p2R
32
q2R
33
r2であり、
Z
2は、それぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基であり、
R
31は、それぞれ独立して、-Z
2’-CR
32’
q2’R
33’
r2’であり、
R
32は、それぞれ独立して、-Z
3-SiR
34
n2R
35
3-n2であり、
R
33は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基であり、
p2は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
q2は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
r2は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
Z
2’は、それぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基であり、
R
32’は、それぞれ独立して、-Z
3-SiR
34
n2R
35
3-n2であり、
R
33’は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基であり、
q2’は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
r2’は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
Z
3は、それぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基であり;
R
34は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり、
R
35は、それぞれ独立して、1価の有機基であり、
n2は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
R
e1は、それぞれ独立して、-Z
3-SiR
34
n2R
35
3-n2であり、
R
f1は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基であり、
k2は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
l2は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
m2は、それぞれ独立して、0~3の整数である。
ただし、式(S4)中、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子が少なくとも2つ存在し、
R
g1及びR
h1は、それぞれ独立して、-Z
4-SiR
11
n1R
12
3-n1、-Z
4-SiR
a1
k1R
b1
l1R
c1
m1、又は-Z
4-CR
d1
k2R
e1
l2R
f1
m2であり、
Z
4は、それぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基であり、
ただし、式(S5)中、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子が少なくとも2つ存在する。]
で表される基である、請求項1~14のいずれか1項に記載の含フッ素シラン化合物。
【請求項16】
Rfは、C
6F
5-であり、
X
Aは、C
11-30アルキレン基、又は下記式:
-X
C-X
D-X
E-
[式中:
X
Cは、-CONH-であり、
X
Dは、C
8-30アルキレン基であり、
X
Eは、-CO-である。]
で表される基であり、
R
Siは、下記式(S2)又は(S5):
【化5】
[式中:
R
11は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり、
R
12は、それぞれ独立して、1価の有機基であり、
n1は、1~3の整数であり、
R
g1及びR
h1は、それぞれ独立して、-Z
4-SiR
11
n1R
12
3-n1であり、
Z
4は、C
1-30アルキレン基である。]
で表される基であり、
α1は、1であり、
β1は、1である、
請求項1に記載の含フッ素シラン化合物。
【請求項17】
C6F5(CH2)18Si(OCH3)3、又は
C6F5CONH(CH2)11CON(CH2CH2CH2Si(OCH3)3)2
である、請求項1に記載の含フッ素シラン化合物。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか1項に記載の含フッ素シラン化合物を含む、表面処理剤。
【請求項19】
さらに、請求項1~17のいずれか1項に記載のフッ素原子含有シラン含フッ素シラン化合物の縮合体を含む、請求項18に記載の表面処理剤。
【請求項20】
真空蒸着用である、請求項18又は19に記載の表面処理剤。
【請求項21】
湿潤被覆用である、請求項18又は19に記載の表面処理剤。
【請求項22】
請求項18~21のいずれか1項に記載の表面処理剤を含有するペレット。
【請求項23】
基材と、該基材上に請求項1~17のいずれか1項に記載の含フッ素シラン化合物から形成された層とを含む物品。
【請求項24】
前記基材と前記層との間に、酸化ケイ素を含む中間層を含む、請求項23に記載の物品。
【請求項25】
前記中間層は、アルカリ金属原子を含む、請求項24に記載の物品。
【請求項26】
前記アルカリ金属原子の少なくとも一部がナトリウムである、請求項25に記載の物品。
【請求項27】
光学部材である、請求項25又は26に記載の物品。
【請求項28】
ディスプレイである、請求項27に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表面処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ある種のシラン化合物は、基材の表面処理に用いると、優れた撥水撥油性を提供し得ることが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、新規シラン化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、下記の態様を含む。
[1] 下記式(1):
【化1】
[式中:
Rfは、フッ素原子、又は含フッ素置換基により置換されている芳香族基であり、
X
Aは、単結合、または2~10価の基であり、
R
Siは、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子を含む1価の基であり、
α1は、1~9の整数であり、
β1は、1~9の整数である。]
で表される含フッ素シラン化合物。
[2] Rfは、フッ素原子、フルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基、R
NHN-、又はR
N
2N-(式中、R
Nは、フルオロアルキルである)により置換されている芳香族基である、上記[1]に記載の含フッ素シラン化合物。
[3] Rfは、フッ素原子により置換されている芳香族基である、上記[1]又は[2]に記載の含フッ素シラン化合物。
[4] Rfは、C
1-6フルオロアルキル基、又はC
1-6フルオロアルコキシ基、R
NHN-、又はR
N
2N-(式中、R
Nは、フルオロアルキル基である)により置換されている芳香族基である、上記[1]~[3]のいずれか1項に記載の含フッ素シラン化合物。
[5] Rfにおける芳香族基は、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環、ベンゾピレン環、クリセン環、ピレン環、トリフェニレン環、コランニュレン環、オバレン環、インドール環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ビフェニル環、テルフェニル環、トリフェニルメタン環、又はベンゾフェノン環を有する、上記[1]~[4]のいずれか1項に記載の含フッ素シラン化合物。
[6] Rfは、フッ素原子、C
1-6フルオロアルキル基、又はC
1-6フルオロアルコキシ基、R
NHN-、又はR
N
2N-(式中、R
Nは、フルオロアルキル基である)により置換されているフェニル基である、上記[1]~[5]のいずれか1項に記載の含フッ素シラン化合物。
[7] X
Aは、下記式:
-X
B-X
C-X
D-X
E-X
F-
[式中:
X
Bは、単結合、C
1-30アルキレン基、又はC
2-30アルケニレン基であり、
X
Cは、単結合、又は2価の基であり、
X
Dは、2価のシロキサン含有基、又は下記式:
-(CFH)
a-(CH
2)
b-(O)
c-
[式中:
aは、0~200の整数であり、
bは、0~200の整数であり、
cは、0~200の整数であり、
a、b、及びcを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は任意である。]
で表される基であり、
X
Eは、単結合、又は2価の基であり、
X
Fは、単結合、C
1-30アルキレン基、又はC
2-30アルケニレン基である。]
で表される基である、上記[1]~[6]のいずれか1項に記載の含フッ素シラン化合物。
[8] X
Cは、単結合、酸素原子、硫黄原子、o-、m-もしくはp-フェニレン基、-CO-、-C(O)O-、-OC(O)-、-CONR
54-、-NR
54CO-、-O-CONR
54-、-NR
54CO-O-、-NR
54CONR
54-、-NR
54-、又は-(CH
2)
n5-であり、
R
54は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は1価の有機基であり、
n5は、各出現においてそれぞれ独立して、1~30の整数である、
上記[7]に記載の含フッ素シラン化合物。
[9] X
Eは、単結合、酸素原子、硫黄原子、o-、m-もしくはp-フェニレン基、-CO-、-C(O)O-、-OC(O)-、-CONR
54-、-NR
54CO-、-O-CONR
54-、-NR
54CO-O-、-NR
54CONR
54-、-NR
54-、又は-(CH
2)
n5-であり、
R
54は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は1価の有機基であり、
n5は、各出現においてそれぞれ独立して、1~30の整数である、
上記[7]又は[8]に記載の含フッ素シラン化合物。
[10] X
Dは、下記式:
【化2】
[式中:
R
3は、それぞれ独立して、C
1-12アルキレン基、-R
6-O-R
6-、-R
8-R
7-R
8-、-R
8-R
7-R
9-R
7-R
8-、-R
8-R
7-R
9-R
6-R
9-R
7-R
8-、又は-R
9-R
6-R
9-R
7-R
9-R
6-R
9-であり、
R
4は、それぞれ独立して、C
1-12アルキレン基、-R
6-O-R
6-、-R
8-R
7-R
8-、-R
8-R
7-R
9-R
7-R
8-、-R
8-R
7-R
9-R
6-R
9-R
7-R
8-、又は-R
9-R
6-R
9-R
7-R
9-R
6-R
9-であり、
R
6は、それぞれ独立して、C
1-6アルキレン基であり、
R
7は、それぞれ独立して、置換されていてもよい、フェニレン基、又はナフチレン基であり、
R
8は、それぞれ独立して、単結合、又はC
1-6アルキレン基であり、
R
9は、それぞれ独立して、単結合、又は酸素原子であり、
R
5は、それぞれ独立して、炭化水素基であり、
xは、0~200の整数であり、
yは、0~200の整数であり、
zは、0~200の整数であり、
x+y+zは、1以上であり、
x、y、又はzを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
で表される基である、上記[7]~[9]のいずれか1項に記載の含フッ素シラン化合物。
[11] X
Dは、式:
-(CFH)
x-(CH
2)
y-(O)
z-
[式中:
xは、0~200の整数であり、
yは、0~200の整数であり、
zは、0~200の整数であり、
x、y、及びzを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は任意である。]
で表される基である、上記[7]~[9]のいずれか1項に記載の含フッ素シラン化合物。
[12] X
Dは、C
1-36アルキレン基である、上記[7]~[9]のいずれか1項に記載の含フッ素シラン化合物。
[13] X
Dは、式:
-(OR
61)
f-
[式中、
R
61は、C
1-6アルキレン基であり、
fは、2~30の整数である。]
で表される基である、上記[7]~[9]のいずれか1項に記載の含フッ素シラン化合物。
[14] X
Aは、それぞれ独立して、下記:
【化3】
[式中、X
aは、単結合、又は2価の有機基である。]
で表される基である、上記[1]~[6]のいずれか1項に記載の含フッ素シラン化合物。
[15] R
Siは、下記式(S1)、(S2)、(S3)、(S4)、又は(S5):
【化4】
[式中:
R
11は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり、
R
12は、それぞれ独立して、1価の有機基であり、
n1は、(SiR
11
n1R
12
3-n1)単位毎にそれぞれ独立して、0~3の整数であり、
X
11は、それぞれ独立して、単結合又は2価の有機基であり、
R
13は、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基であり、
tは、それぞれ独立して、2以上の整数であり、
R
14は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又は-X
11-SiR
11
n1R
12
3-n1であり、
R
15は、それぞれ独立して、単結合、酸素原子、炭素数1~6のアルキレン基又は炭素数1~6のアルキレンオキシ基であり、
R
a1は、それぞれ独立して、-Z
1-SiR
21
p1R
22
q1R
23
r1であり;
Z
1は、それぞれ独立して、2価の有機基であり、
R
21は、それぞれ独立して、-Z
1’-SiR
21’
p1’R
22’
q1’R
23’
r1’であり;
R
22は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり、
R
23は、それぞれ独立して、1価の有機基であり、
p1は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
q1は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
r1は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
Z
1’は、それぞれ独立して、2価の有機基であり、
R
21’は、それぞれ独立して、-Z
1”-SiR
22”
q1”R
23”
r1”であり;
R
22’は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり、
R
23’は、それぞれ独立して、1価の有機基であり、
p1’は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
q1’は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
r1’は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
Z
1”は、それぞれ独立して、2価の有機基であり、
R
22”は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり、
R
23”は、それぞれ独立して、1価の有機基であり、
q1”は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
r1”は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
R
b1は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり、
R
c1は、それぞれ独立して、1価の有機基であり、
k1は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
l1は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
m1は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
ただし、式(S3)中、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子が少なくとも2つ存在し、
R
d1は、それぞれ独立して、-Z
2-CR
31
p2R
32
q2R
33
r2であり、
Z
2は、それぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基であり、
R
31は、それぞれ独立して、-Z
2’-CR
32’
q2’R
33’
r2’であり、
R
32は、それぞれ独立して、-Z
3-SiR
34
n2R
35
3-n2であり、
R
33は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基であり、
p2は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
q2は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
r2は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
Z
2’は、それぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基であり、
R
32’は、それぞれ独立して、-Z
3-SiR
34
n2R
35
3-n2であり、
R
33’は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基であり、
q2’は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
r2’は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
Z
3は、それぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基であり;
R
34は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり、
R
35は、それぞれ独立して、1価の有機基であり、
n2は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
R
e1は、それぞれ独立して、-Z
3-SiR
34
n2R
35
3-n2であり、
R
f1は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基であり、
k2は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
l2は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
m2は、それぞれ独立して、0~3の整数である。
ただし、式(S4)中、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子が少なくとも2つ存在し、
R
g1及びR
h1は、それぞれ独立して、-Z
4-SiR
11
n1R
12
3-n1、-Z
4-SiR
a1
k1R
b1
l1R
c1
m1、又は-Z
4-CR
d1
k2R
e1
l2R
f1
m2であり、
Z
4は、それぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基であり、
ただし、式(S5)中、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子が少なくとも2つ存在する。]
で表される基である、上記[1]~[14]のいずれか1項に記載の含フッ素シラン化合物。
[16] Rfは、C
6F
5-であり、
X
Aは、C
11-30アルキレン基、又は下記式:
-X
C-X
D-X
E-
[式中:
X
Cは、-CONH-であり、
X
Dは、C
8-30アルキレン基であり、
X
Eは、-CO-である。]
で表される基であり、
R
Siは、下記式(S2)又は(S5):
【化5】
[式中:
R
11は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり、
R
12は、それぞれ独立して、1価の有機基であり、
n1は、1~3の整数であり、
R
g1及びR
h1は、それぞれ独立して、-Z
4-SiR
11
n1R
12
3-n1であり、
Z
4は、C
1-30アルキレン基である。]
で表される基であり、
α1は、1であり、
β1は、1である、
上記[1]に記載の含フッ素シラン化合物。
[17] C
6F
5(CH
2)
18Si(OCH
3)
3、又は
C
6F
5CONH(CH
2)
11CON(CH
2CH
2CH
2Si(OCH
3)
3)
2
である、上記[1]に記載の含フッ素シラン化合物。
[18] 上記[1]~[17]のいずれか1項に記載の含フッ素シラン化合物を含む、表面処理剤。
[19] さらに、上記[1]~[17]のいずれか1項に記載のフッ素原子含有シラン含フッ素シラン化合物の縮合体を含む、上記[18」に記載の表面処理剤。
[20] 真空蒸着用である、上記[18」又は[19]に記載の表面処理剤。
[21] 湿潤被覆用である、上記[18」又は[19]に記載の表面処理剤。
[22] 上記[18]~[21]のいずれか1項に記載の表面処理剤を含有するペレット。
[23] 基材と、該基材上に上記[1]~[17]のいずれか1項に記載の含フッ素シラン化合物から形成された層とを含む物品。
[24] 前記基材と前記層との間に、酸化ケイ素を含む中間層を含む、上記[23」に記載の物品。
[25] 前記中間層は、アルカリ金属原子を含む、上記[24」に記載の物品。
[26] 前記アルカリ金属原子の少なくとも一部がナトリウムである、上記[25」に記載の物品。
[27] 光学部材である、上記[25]又は[26]に記載の物品。
[28] ディスプレイである、上記[27」に記載の物品。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、新たな含フッ素シラン化合物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書において用いられる場合、「1価の有機基」とは、炭素を含有する1価の基を意味する。1価の有機基としては、特に限定されないが、炭化水素基又はその誘導体であり得る。炭化水素基の誘導体とは、炭化水素基の末端又は分子鎖中に、1つ又はそれ以上のN、O、S、Si、アミド、スルホニル、シロキサン、カルボニル、カルボニルオキシ等を有している基を意味する。尚、単に「有機基」と示す場合、1価の有機基を意味する。また、「2価の有機基」とは、炭素を含有する2価の基を意味する。かかる2価の有機基としては、例えば、有機基からさらに1個の水素原子を脱離させた2価の基が挙げられる。3価以上の有機基も同様に、有機基から所定の数の水素原子を脱離させた基を意味する。
【0008】
本明細書において用いられる場合、「炭化水素基」とは、炭素及び水素を含む基であって、炭化水素から水素原子を脱離させた基を意味する。かかる炭化水素基としては、特に限定されるものではないが、C1-20炭化水素基、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。上記「脂肪族炭化水素基」は、直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれであってもよく、飽和又は不飽和のいずれであってもよい。また、炭化水素基は、1つ又はそれ以上の環構造を含んでいてもよい。炭化水素基は、1つ又はそれ以上の置換基により置換されていてもよい。
【0009】
本明細書において用いられる場合、「炭化水素基」の置換基としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子、1個又はそれ以上のハロゲン原子により置換されていてもよい、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、C3-10不飽和シクロアルキル基、5~10員環のヘテロシクリル基、5~10員環の不飽和ヘテロシクリル基、C6-10アリール基及び5~10員環のヘテロアリール基から選択される1個又はそれ以上の基が挙げられる。
【0010】
本明細書において用いられる場合、「加水分解性基」とは、加水分解反応を受け得る基を意味し、すなわち、加水分解反応により、化合物の主骨格から脱離し得る基を意味する。加水分解性基の例としては、-ORh、-OCORh、-O-N=CRh
2、-NRh
2、-NHRh、-NCO、ハロゲン(これら式中、Rhは、置換または非置換の炭素数1~4のアルキル基を示す)などが挙げられ、好ましくは-ORh(即ち、アルコキシ基)である。Rhの例には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が含まれる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましい。
【0011】
本開示は、下記式(1):
【化6】
[式中:
Rfは、フッ素原子、又は含フッ素置換基により置換されている1価の芳香族基であり、
X
Aは、単結合、または2~10価の基であり、
R
Siは、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子を含む1価の基であり、
α1は、1~9の整数であり、
β1は、1~9の整数である。]
で表される含フッ素シラン化合物を提供する。
【0012】
Rfは、フッ素原子、又は含フッ素置換基により置換されている芳香族基である。
【0013】
上記含フッ素置換基は、フッ素原子を有する置換基であれば特に限定されず、例えば含フッ素炭化水素基、又は含フッ素炭化水素基を有する基であり得る。
【0014】
上記含フッ素置換基は、好ましくはフルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基、RNHN-、又はRN
2N-(式中、RNは、フルオロアルキル基である)であり得る。
【0015】
Rfは、好ましくは、フッ素原子、フルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基、RNHN-、又はRN
2N-(式中、RNは、フルオロアルキル基である)により置換されている芳香族基である。
【0016】
一の態様において、Rfは、フッ素原子により置換されている芳香族基である。
【0017】
別の態様において、Rfは、C1-6フルオロアルキル基、C1-6フルオロアルコキシ基、RNHN-、又はRN
2N-(式中、RNは、C1-6フルオロアルキル基である)により置換されている芳香族基である。
【0018】
上記フルオロアルキル基は、好ましくはC1-6フルオロアルキル基、より好ましくはC1-3フルオロアルキル基、さらに好ましくはフルオロメチル基である。上記フルオロアルキル基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。上記フルオロアルキル基は、一部がフッ素化されていても、完全にフッ素化されていてもよい。上記フルオロアルキル基は、好ましくは末端にCF3又はCHF2を有するアルキル基、より好ましくはCF3-C0-5アルキレン基またはCHF2-C0-5アルキレン基、さらに好ましくはCF3-C0-2アルキレン基またはCHF2-C0-2アルキレン基、さらにより好ましくはトリフルオロメチル基またはジフルオロメチル基である。上記フルオロアルキル基は、パーフルオロアルキル基であってもよい。
【0019】
上記フルオロアルコキシ基は、好ましくはC1-6フルオロアルコキシ基、より好ましくはC1-3フルオロアルコキシ基、さらに好ましくはフルオロメチル基である。上記フルオロアルコキシ基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。上記フルオロアルコキシ基は、一部がフッ素化されていても、完全にフッ素化されていてもよい。上記フルオロアルコキシ基は、好ましくは末端にCF3又はCHF2を有するアルコキシ基、より好ましくはCF3-C0-5アルコキシ基、又はCHF2-C0-5アルコキシ基、さらに好ましくはCF3-C0-2アルコキシ基、又はCHF2-C0-2アルコキシ基、さらにより好ましくはトリフルオロメトキシ基、又はジフルオロメトキシ基である。上記フルオロアルキル基は、パーフルオロアルコキシ基であってもよい。
【0020】
上記RNHN-及びRN
2N-におけるRNは、フルオロアルキル基である。かかるフルオロアルキル基は、好ましくはC1-6フルオロアルキル基、より好ましくはC1-3フルオロアルキル基、さらに好ましくはフルオロメチル基である。上記フルオロアルキル基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。上記フルオロアルキル基は、一部がフッ素化されていても、完全にフッ素化されていてもよい。上記フルオロアルキル基は、好ましくは末端にCF3又はCHF2を有するアルキル基、より好ましくはCF3-C0-5アルキレン基またはCHF2-C0-5アルキレン基、さらに好ましくはCF3-C0-2アルキレン基またはCHF2-C0-2アルキレン基、さらにより好ましくはCF3、CF3CH2、CHF2、CHF2CH2であり、特に好ましくはCF3、又はCHF2ある。上記フルオロアルキル基は、パーフルオロアルキル基であってもよい。
【0021】
好ましい態様において、Rfは、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、トリフルオロメチルアミン基、又はビス(トリフルオロメチル)アミン基により置換されている芳香族基である。
【0022】
上記芳香族基は、環原子として炭素のみを含む芳香環(いわゆるアリール)に加え、さらに窒素、酸素又は硫黄を含む芳香環(いわゆるヘテロアリール)、及び複数の芳香環を有する基も包含する。
【0023】
Rfにおける芳香族基は、好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環、ベンゾピレン環、クリセン環、ピレン環、トリフェニレン環、コランニュレン環、オバレン環、インドール環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ビフェニル環、テルフェニル環、トリフェニルメタン環、又はベンゾフェノン環を有する。
【0024】
一の態様において、Rfにおける芳香族基は、好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環、ベンゾピレン環、クリセン環、ピレン環、トリフェニレン環、コランニュレン環、又はオバレン環、より好ましくはベンゼン環、又はナフタレン環、さらに好ましくはベンゼン環を有する。
【0025】
一の態様において、Rfにおける芳香族基は、好ましくはインドール環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、又はピラジン環、さらに好ましくはインドール環を有する。
【0026】
一の態様において、Rfにおける芳香族基は、好ましくはビフェニル環、テルフェニル環、トリフェニルメタン環、又はベンゾフェノン環を有する。
【0027】
好ましい態様において、Rfは、フッ素原子、C1-6フルオロアルキル基、C1-6フルオロアルコキシ基、RNHN-、又はRN
2N-(式中、RNは、フルオロアルキル基である)により置換されているフェニル基であり得る。
【0028】
上記Rfにおける芳香族基の置換基の数は、特に限定されないが、例えば1~10個、1~5個、1~3個、1個、2個、又は3個であり得る。一の態様において、Rfにおける芳香族基の置換基の数は、1個である。別の態様において、Rfにおける芳香族基の置換基の数は、2個以上である。別の態様において、Rfにおける芳香族基は、全置換されている。
【0029】
XAは、単結合、または2~10価の基である。
【0030】
XAにおける2~10価の有機基は、好ましくは2~8価の有機基である。一の態様において、かかる2~10価の有機基は、好ましくは2~4価の有機基であり、より好ましくは2価の有機基である。別の態様において、かかる2~10価の有機基は、好ましくは3~8価の有機基、より好ましくは3~6価の有機基である。
【0031】
一の態様において、XAは、単結合又は2価の有機基であり、α1、及びβ1は1である。
【0032】
一の態様において、XAは3~6価の有機基であり、α1は1であり、β1は2~5である。
【0033】
一の態様において、XAは、3価の有機基であり、α1は1であり、β1は2である。
【0034】
X
Aが、単結合又は2価の有機基である場合、式(1)は、下記式(1’)で表される。
【化7】
【0035】
一の態様において、XAとしては、例えば、単結合、又は下記式:
-(R51)p5-(X51)q5-
[式中:
R51は、単結合、-(CH2)s5-又はo-、m-もしくはp-フェニレン基であり、好ましくは-(CH2)s5-であり、
s5は、1~30の整数、好ましくは1~15の整数、より好ましくは1~10の整数、さらにより好ましくは1~6の整数、例えば1~3の整数であり、あるいは、1~20の整数、好ましくは4~15の整数、より好ましくは7~13の整数であり、例えば1~30の整数、11~30の整数、11~22の整数であり得る。
X51は、-(X52)l5-であり、
X52は、それぞれ独立して、-O-、-S-、o-、m-もしくはp-フェニレン基、-CO-、-C(O)O-、-CONR54-、-O-CONR54-、-NR54-、-(CH2)n5-、-Si(R59)2-、及び-SiO(R59)2-からなる群から選択される基であり、
R54は、それぞれ独立して、水素原子、又は1価の有機基であり、好ましくは水素原子、フェニル基、C1-6アルキル基(好ましくはメチル基)又は炭素数1~10のオキシアルキレン含有基であり、
R59は、アルキル基(好ましくは炭素数1~10のアルキル基)、またはフェニル基であり、
n5は、それぞれ独立して、1~20の整数、好ましくは1~15の整数、より好ましくは1~10の整数、さらにより好ましくは1~6の整数、例えば1~3の整数であり、
l5は、1~10の整数、好ましくは1~5の整数、より好ましくは1~3の整数であり、
p5は、0又は1であり、
q5は、0又は1であり、
ここに、p5及びq5の少なくとも一方は1であり、p5又はq5を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は任意である]
で表される2価の有機基が挙げられる。ここに、XA(典型的にはXAの水素原子)は、フッ素原子、C1-3アルキル基及びC1-3フルオロアルキル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよい。好ましい態様において、XAは、これらの基により置換されていない。
【0036】
上記炭素数1~10のオキシアルキレン含有基は、-O-C1-10アルキレン-を含む基であり、例えば、-R55-(-O-C1-10アルキレン)n-R56(式中、R55は、単結合又は2価の有機基、好ましくはC1-6アルキレン基であり、nは任意の整数、好ましくは2~10の整数であり、R56は、水素原子又は1価の有機基、好ましくはC1-6アルキル基である。)である。上記アルキレン基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。
【0037】
一の態様において、XAは、下記式:
-XB-XC-XD-XE-XF-
[式中:
XBは、単結合、C1-6アルキレン基、又はC2-6アルケニレン基であり、
XCは、単結合、2価の基であり、
XDは、2価のシロキサン含有基、又は下記式:
-(CFH)a-(CH2)b-(O)c-
[式中:
aは、0~200の整数であり、
bは、0~200の整数であり、
cは、0~200の整数であり、
a、b、及びcを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は任意である。]
で表される基であり、
XEは、単結合、2価の基であり、
XFは、単結合、C1-6アルキレン基、又はC2-6アルケニレン基である。]
で表される基であり得る。
【0038】
XBは、単結合、C1-6アルキレン基、又はC2-6アルケニレン基である。
【0039】
一の態様において、XBは、単結合である。
【0040】
一の態様において、XBは、C1-6アルキレン基である。
【0041】
上記C1-6アルキレン基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよく、好ましくは直鎖である。C1-6アルキレン基は、好ましくはC1-3アルキレン基、例えばメチル基であり得る。
【0042】
一の態様において、XBは、C2-6アルケニレン基である。
【0043】
上記C2-6アルケニレン基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよく、好ましくは直鎖である。C2-6アルケニレン基は、好ましくはC2-3アルキレン基であり得る。
【0044】
XCは、単結合、又は2価の基である。
【0045】
XCは、好ましくは、単結合、酸素原子、硫黄原子、o-、m-もしくはp-フェニレン基、-CO-、-C(O)O-、-OC(O)-、-CONR54-、-NR54CO-、-O-CONR54-、-NR54CO-O-、-NR54CONR54-、-NR54-、又は-(CH2)n5-、より好ましくは単結合、酸素原子、-C(O)O-、-OC(O)-、-CONR54-、又は-NR54CO-であり得る。
【0046】
R54は、それぞれ独立して、水素原子、又は1価の有機基であり、好ましくは水素原子、フェニル基、C1-6アルキル基(好ましくはメチル基)又は炭素数1~10のオキシアルキレン含有基である。
【0047】
n5は、それぞれ独立して、1~200の整数である。n5は、例えば、1~30の整数、具体的には1~20の整数、さらに具体的には1~15の整数、1~10の整数、1~6の整数、例えば1~3の整数である。一の態様において、n5は10~200の整数であり、例えば、10~30の整数である。一の態様において、n5は1~9の整数である。
【0048】
上記炭素数1~10のオキシアルキレン含有基は、-O-C1-10アルキレン-を含む基であり、例えば、-R55-(-O-C1-10アルキレン)n-R56(式中、R55は、単結合又は2価の有機基、好ましくはC1-6アルキレン基であり、nは任意の整数、好ましくは2~10の整数であり、R56は、水素原子又は1価の有機基、好ましくはC1-6アルキル基である。)である。上記アルキレン基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。
【0049】
XDは、2価のシロキサン含有基、又は下記式:
-(CFH)a-(CH2)b-(O)c-
[式中:
aは、0~200の整数であり、
bは、0~200の整数であり、
cは、0~200の整数であり、
a、b、及びcを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は任意である。]
で表される基である。
【0050】
一の態様において、XDは、2価のシロキサン含有基である。
【0051】
上記2価のシロキサン含有基は、好ましくは下記式:
【化8】
[式中:
R
3は、それぞれ独立して、C
1-12アルキレン基、-R
6-O-R
6-、-R
8-R
7-R
8-、-R
8-R
7-R
9-R
7-R
8-、-R
8-R
7-R
9-R
6-R
9-R
7-R
8-、又は-R
9-R
6-R
9-R
7-R
9-R
6-R
9-であり、
R
4は、それぞれ独立して、C
1-12アルキレン基、-R
6-O-R
6-、-R
8-R
7-R
8-、-R
8-R
7-R
9-R
7-R
8-、-R
8-R
7-R
9-R
6-R
9-R
7-R
8-、又は-R
9-R
6-R
9-R
7-R
9-R
6-R
9-であり、
R
6は、それぞれ独立して、C
1-6アルキレン基であり、
R
7は、それぞれ独立して、置換されていてもよい、フェニレン基、又はナフチレン基であり、
R
8は、それぞれ独立して、単結合、又はC
1-6アルキレン基であり、
R
9は、それぞれ独立して、単結合、又は酸素原子であり、
R
5は、それぞれ独立して、炭化水素基であり、
xは、0~200の整数であり、
yは、0~200の整数であり、
zは、0~200の整数であり、
x+y+zは、1以上であり、
x、y、又はzを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
で表される基であり得る。
【0052】
R3は、それぞれ独立して、C1-12アルキレン基、-R6-O-R6-、-R8-R7-R8-、-R8-R7-R9-R7-R8-、-R8-R7-R9-R6-R9-R7-R8-、又は-R9-R6-R9-R7-R9-R6-R9-であり、好ましくは、C1-12アルキレン基、又は-R6-O-R6-である。
【0053】
R4は、それぞれ独立して、C1-12アルキレン基、-R6-O-R6-、-R8-R7-R8-、-R8-R7-R9-R7-R8-、-R8-R7-R9-R6-R9-R7-R8-、又は-R9-R6-R9-R7-R9-R6-R9-である。
【0054】
一の態様において、R4は、それぞれ独立して、C1-12アルキレン基、又は-R6-O-R6-である。
【0055】
別の態様において、R4は、それぞれ独立して、-R8-R7-R8-、-R8-R7-R9-R7-R8-、-R8-R7-R9-R6-R9-R7-R8-、又は-R9-R6-R9-R7-R9-R6-R9-である。
【0056】
一の態様において、R3は、それぞれ独立して、C1-12アルキレン基、又は-R6-O-R6-であり、R4は、それぞれ独立して、C1-12アルキレン基、又は-R6-O-R6-である。
【0057】
別の態様において、R3は、それぞれ独立して、C1-12アルキレン基、又は-R6-O-R6-であり、R4は、それぞれ独立して、-R8-R7-R8-、-R8-R7-R9-R7-R8-、-R8-R7-R9-R6-R9-R7-R8-、又は-R9-R6-R9-R7-R9-R6-R9-である。
【0058】
上記C1-12アルキレン基は、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。C1-12アルキレン基は、好ましくは、直鎖である。
【0059】
上記C1-12アルキレン基は、好ましくはC2-8アルキレン基、より好ましくはC2-6アルキレン基である。
【0060】
R6は、それぞれ独立して、C1-6アルキレン基である。上記C1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。C1-6アルキレン基は、好ましくは、直鎖である。
【0061】
上記C1-6アルキレン基は、好ましくはC2-4アルキレン基、より好ましくはC2-3アルキレン基である。
【0062】
好ましい態様において、複数のR6を含む基において、すべてのR6は、同じ基である。
【0063】
R7は、それぞれ独立して、置換されていてもよいアリーレン基である。
【0064】
一の態様において、R
7は、それぞれ独立して、
【化9】
である。
【0065】
一の態様において、R7は、フェニレン基である。
【0066】
別の態様において、R7は、ナフチレン基である。
【0067】
上記アリーレン基は、置換基を有していてもよい。置換基の数は、特に限定されず、例えば1~4個、好ましくは1又は2個である。
【0068】
一の態様において、上記フェニレン基及びナフチレン基は、置換基を有していてもよい。置換基の数は、特に限定されず、例えば1~4個、好ましくは1又は2個である。置換されているフェニレン基としては、2,5-置換フェニレンが好ましい。
【0069】
上記アリーレン基に関する置換基は、それぞれ独立して、-R41-R42である。
【0070】
R41は、単結合、酸素原子、又は硫黄原子であり、好ましくは単結合又は酸素原子であり、より好ましくは酸素原子である。
【0071】
R42は、ハロゲンにより置換されていてもよいC1-12アルキル基、-(O-R43)p、-R44-R45、-R44-OR46である。
【0072】
上記ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素であり、好ましくはフッ素である。
【0073】
R42におけるC1-12アルキル基は、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。
【0074】
R43は、C1-6アルキレン基、好ましくはC2-4アルキレン基である。かかるアルキレン基は、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。
【0075】
R44は、C1-12アルキレン基、好ましくはC1-6アルキレン基である。かかるアルキレン基は、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。
【0076】
R45は、-CH=CH2、又は-OCOCH=CH2である。
【0077】
R46は、水素原子、又はC1-6アルキル基である。かかるアルキル基は、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。C1-6アルキル基は、好ましくはC1-3アルキル基、より好ましくはC1-2アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0078】
R8は、それぞれ独立して、単結合、又はC1-6アルキレン基である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい
【0079】
一の態様において、R8は、単結合である。
【0080】
別の態様において、R8は、C1-6アルキレン基である。
【0081】
R9は、それぞれ独立して、単結合、又は酸素原子である。
【0082】
一の態様において、R9は、単結合である。
【0083】
別の態様において、R9は、酸素原子である。
【0084】
R5は、それぞれ独立して、炭化水素基である。かかる炭化水素基は、置換されていてもよい。
【0085】
R5は、それぞれ独立して、好ましくは非置換炭化水素基、又はハロゲン原子により置換されている炭化水素基である。かかるハロゲン原子は、好ましくはフッ素原子である。
【0086】
R5は、それぞれ独立して、好ましくはハロゲン原子により置換されていてもよいC1-18アルキル基又はアリール基、より好ましくはC1-18アルキル基又はアリール基である。
【0087】
上記C1-18アルキル基は、直鎖であっても、分岐鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。C1-18アルキル基は、好ましくはC1-10アルキル基、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはC1-4アルキル基、さらにより好ましくはメチル基である。
【0088】
上記アリール基は、好ましくはフェニル基である。
【0089】
一の態様において、R5は、それぞれ独立して、C1-6アルキル基、好ましくはC1-4アルキル基、より好ましくはメチル基である。
【0090】
別の態様において、R5は、フェニル基である。
【0091】
別の態様において、R5は、それぞれ独立して、メチル基又はフェニル基、好ましくはメチル基である。
【0092】
xは、0~200の整数、好ましくは0~100の整数、より好ましくは1~100の整数、さらに好ましくは5~50の整数、さらにより好ましくは10~30の整数である。
【0093】
一の態様において、xは0である。
【0094】
一の態様において、xは1~200、好ましくは1~100の整数、より好ましくは5~50の整数、さらに好ましくは10~30の整数である。
【0095】
yは、0~200の整数、好ましくは0~100の整数、より好ましくは1~100の整数、さらに好ましくは5~50の整数、さらにより好ましくは10~30の整数である。
【0096】
一の態様において、yは0である。
【0097】
一の態様において、yは1~200、好ましくは1~100の整数、より好ましくは5~50の整数、さらに好ましくは10~30の整数である。
【0098】
zは、0~200の整数、好ましくは0~100の整数、より好ましくは1~100の整数、さらに好ましくは5~50の整数、さらにより好ましくは10~30の整数である。
【0099】
一の態様において、zは0である。
【0100】
一の態様において、zは1~200、好ましくは1~100の整数、より好ましくは5~50の整数、さらに好ましくは10~30の整数である。
【0101】
一の態様において、yは0であり、zは0である。
【0102】
上記2価のシロキサン含有基は、ランダムポリマーであっても、ブロックポリマーであってもよい。
【0103】
一の態様において、XDは、式:
-(CFH)x-(CH2)y-(O)z-
[式中:
xは、0~200の整数であり、
yは、0~200の整数であり、
zは、0~200の整数であり、
x、y、及びzを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は任意である。]
で表される基であり得る。
【0104】
一の態様において、XDは、-(CH2)y-であり得る。yは、好ましくは1以上、より好ましくは3以上、例えば8以上、11以上、16以上、又は20以上であり得る。yは、好ましくは100以下、より好ましくは50以下、さらに好ましくは36以下、さらにより好ましくは30以下であり、例えば22以下、16以下、10以下、又は6以下であり得る。一の態様において、XDは、好ましくはC1-36アルキル基、好ましくはC1-30アルキル基、さらに好ましくはC3-22アルキル基、さらにより好ましくはC8-16アルキル基、例えばC11-30アルキル基、又はC11-22アルキル基であり得る。
【0105】
一の態様において、XDは、-(CFH)x-(CH2)y-であり得る。xは、好ましくは1以上、より好ましくは3以上、例えば8以上、11以上、16以上、又は20以上であり得る。yは、好ましくは100以下、より好ましくは50以下、さらに好ましくは36以下であり、例えば22以下、16以下、10以下、又は6以下であり得る。yは、好ましくは1以上、より好ましくは3以上、例えば8以上、11以上、16以上、又は20以上であり得る。yは、好ましくは100以下、より好ましくは50以下、さらに好ましくは36以下であり、例えば22以下、16以下、10以下、又は6以下であり得る。
【0106】
一の態様において、XDは、-(CH2)y-(O)z-であり得る。yは、好ましくは1以上、より好ましくは3以上、例えば8以上、11以上、16以上、又は20以上であり得る。yは、好ましくは100以下、より好ましくは50以下、さらに好ましくは36以下であり、例えば22以下、16以下、10以下、又は6以下であり得る。zは、好ましくは1以上、より好ましくは3以上、例えば8以上、11以上、16以上、又は20以上であり得る。yは、好ましくは50以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは16以下であり、例えば12以下、10以下、8以下、又は6以下であり得る。
【0107】
一の態様において、XDは、式:
-(OR61)f-
[式中、
R61は、C1-6アルキレン基であり、
fは、2~30の整数である。]
で表される基であり得る。
【0108】
R61におけるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。一の態様において、C1-6アルキレン基は、直鎖である。別の態様において、C1-6アルキレン基は、分岐鎖である。
【0109】
上記C1-6アルキレン基は、好ましくはC1-3アルキレン基、より好ましくはC2-3アルキレン基である。
【0110】
fは、2~30の整数、好ましくは6~30の整数、例えば6~20、10~30、又は10~20の整数であり得る。
【0111】
XEは、単結合、2価の基である。
【0112】
XEは、好ましくは、単結合、酸素原子、硫黄原子、o-、m-もしくはp-フェニレン基、-CO-、-C(O)O-、-OC(O)-、-CONR54-、-NR54CO-、-O-CONR54-、-NR54CO-O-、-NR54CONR54-、-NR54-、又は-(CH2)n5-、より好ましくは単結合、酸素原子、-C(O)O-、-OC(O)-、-CONR54-、又は-NR54CO-であり得る。
【0113】
R54は、それぞれ独立して、水素原子、又は1価の有機基であり、好ましくは水素原子、フェニル基、C1-6アルキル基(好ましくはメチル基)又は炭素数1~10のオキシアルキレン含有基である。
【0114】
n5は、それぞれ独立して、1~200の整数である。n5は、例えば、1~30の整数、具体的には1~20の整数、さらに具体的には1~15の整数、1~10の整数、1~6の整数、例えば1~3の整数である。一の態様において、n5は10~200の整数であり、例えば、10~30の整数である。一の態様において、n5は1~9の整数である。
【0115】
上記炭素数1~10のオキシアルキレン含有基は、-O-C1-10アルキレン-を含む基であり、例えば、-R55-(-O-C1-10アルキレン)n-R56(式中、R55は、単結合又は2価の有機基、好ましくはC1-6アルキレン基であり、nは任意の整数、好ましくは2~10の整数であり、R56は、水素原子又は1価の有機基、好ましくはC1-6アルキル基である。)である。上記アルキレン基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。
【0116】
XFは、単結合、C1-6アルキレン基、又はC2-6アルケニレン基である。
【0117】
一の態様において、XFは、単結合である。
【0118】
一の態様において、XFは、C1-6アルキレン基である。
【0119】
上記C1-6アルキレン基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよく、好ましくは直鎖である。C1-6アルキレン基は、好ましくはC1-3アルキレン基、例えばメチル基であり得る。
【0120】
一の態様において、XFは、C2-6アルケニレン基である。
【0121】
上記C2-6アルケニレン基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよく、好ましくは直鎖である。C2-6アルケニレン基は、好ましくはC2-3アルキレン基であり得る。
【0122】
一の態様において、XAは、C11-30アルキレン基、又は下記式:
-XC-XD-XE-
[式中:
XCは、-CONH-であり、
XDは、C8-30アルキレン基であり、
XEは、-CO-である。]
で表される基である。
【0123】
尚、上記XAは、各式の左側がRfに結合し、右側がRSiに結合する。
【0124】
一の好ましい態様において、XAは3価の有機基である。XAが3価の有機基である場合、α1は2であり、β1は1であるか、α1は1であり、β1は2である。
【0125】
一の態様において、X
Aは、それぞれ独立して、下記:
【化10】
[式中、X
aは、単結合、又は2価の有機基である。]
で表される基であり得る。
【0126】
上記3価の有機基は、好ましくは、下記:
【化11】
[式中、X
aは、単結合または2価の有機基である。]
で表される基が挙げられる
【0127】
Xaは、イソシアヌル環に直接結合する単結合または二価の連結基である。Xaとしては、単結合、アルキレン基、または、エーテル結合、エステル結合、アミド結合及びスルフィド結合からなる群より選択される少なくとも1種の結合を含む二価の基が好ましく、単結合、炭素数1~10のアルキレン基、または、エーテル結合、エステル結合、アミド結合及びスルフィド結合からなる群より選択される少なくとも1種の結合を含む炭素数1~10の二価の炭化水素基がより好ましい。
【0128】
Xaとしては、下記式:
-(CX121X122)x1-(Xa1)y1-(CX123X124)z1-
(式中、X121~X124は、それぞれ独立して、H、F、OH、または、-OSi(OR121)3(式中、3つのR121は、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルキル基である。)であり、
上記Xa1は、-C(=O)NH-、-NHC(=O)-、-O-、-C(=O)O-、-OC(=O)-、-OC(=O)O-、または、-NHC(=O)NH-であり(各結合の左側がCX121X122に結合する。)、
x1は0~10の整数であり、y1は0または1であり、z1は1~10の整数である。)
で表される基が更に好ましい。
【0129】
上記Xa1としては、-O-または-C(=O)O-が好ましい。
【0130】
上記Xaとしては、下記式:
-(CH2)m12-O-(CH2)m13-
(式中、m12は1~3の整数であり、m13は1~3の整数である。)
で表される基、
-(CH2)m15-O-CH2CH(OH)-(CH2)m16-
(式中、m15は1~3の整数であり、m16は1~3の整数である。)
で表される基、
-(CH2)m18-
(式中、m18は1~3の整数である。)
で表される基、
-(CH2)m20-O-CH2CH(OSi(OCH3)3)-(CH2)m21-
(式中、m20は1~3の整数であり、m21は1~3の整数である。)
で表される基が特に好ましい。
【0131】
上記Xaとして、特に限定されないが、具体的には、
-CH2-、-C2H4-、-C3H6-、-C4H8-、-C4H8-O-CH2-、-CO-O-CH2-CH(OH)-CH2-、-S-、-NR121-、-(CH2)m22-C(=O)-O-(CH2)m23-、-(CH2)m22-O-C(=O)-(CH2)m23-、-(CH2)m22-C(=O)-NR121-(CH2)m23-、-(CH2)m22-NR121-C(=O)-(CH2)m23-CH2OCH2CH(OSi(OCH3)3)CH2-
(式中R121は、C1-6炭化水素鎖であり、m22は1~10の整数であり、m23は1~10の整数である。)
等が挙げられる。
【0132】
RSiは、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子を含む1価の基である。
【0133】
好ましい態様において、R
Siは、下記式(S1)、(S2)、(S3)、(S4)又は(S5):
【化12】
[式中:
R
11は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり、
R
12は、それぞれ独立して、1価の有機基であり、
n1は、(SiR
11
n1R
12
3-n1)単位毎にそれぞれ独立して、0~3の整数であり、
X
11は、それぞれ独立して、単結合又は2価の有機基であり、
R
13は、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基であり、
tは、それぞれ独立して、2以上の整数であり、
R
14は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又は-X
11-SiR
11
n1R
12
3-n1であり、
R
15は、それぞれ独立して、単結合、酸素原子、炭素数1~6のアルキレン基又は炭素数1~6のアルキレンオキシ基であり、
R
a1は、それぞれ独立して、-Z
1-SiR
21
p1R
22
q1R
23
r1であり;
Z
1は、それぞれ独立して、2価の有機基であり、
R
21は、それぞれ独立して、-Z
1’-SiR
21’
p1’R
22’
q1’R
23’
r1’であり;
R
22は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり、
R
23は、それぞれ独立して、1価の有機基であり、
p1は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
q1は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
r1は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
Z
1’は、それぞれ独立して、2価の有機基であり、
R
21’は、それぞれ独立して、-Z
1”-SiR
22”
q1”R
23”
r1”であり;
R
22’は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり、
R
23’は、それぞれ独立して、1価の有機基であり、
p1’は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
q1’は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
r1’は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
Z
1”は、それぞれ独立して、2価の有機基であり、
R
22”は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり、
R
23”は、それぞれ独立して、1価の有機基であり、
q1”は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
r1”は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
R
b1は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり、
R
c1は、それぞれ独立して、1価の有機基であり、
k1は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
l1は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
m1は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
ただし、式(S3)中、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子が少なくとも2つ存在し、
R
d1は、それぞれ独立して、-Z
2-CR
31
p2R
32
q2R
33
r2であり、
Z
2は、それぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基であり、
R
31は、それぞれ独立して、-Z
2’-CR
32’
q2’R
33’
r2’であり、
R
32は、それぞれ独立して、-Z
3-SiR
34
n2R
35
3-n2であり、
R
33は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基であり、
p2は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
q2は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
r2は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
Z
2’は、それぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基であり、
R
32’は、それぞれ独立して、-Z
3-SiR
34
n2R
35
3-n2であり、
R
33’は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基であり、
q2’は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
r2’は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
Z
3は、それぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基であり;
R
34は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり、
R
35は、それぞれ独立して、1価の有機基であり、
n2は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
R
e1は、それぞれ独立して、-Z
3-SiR
34
n2R
35
3-n2であり、
R
f1は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基であり、
k2は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
l2は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
m2は、それぞれ独立して、0~3の整数である。
ただし、式(S4)中、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子が少なくとも2つ存在し、
R
g1及びR
h1は、それぞれ独立して、-Z
4-SiR
11
n1R
12
3-n1、-Z
4-SiR
a1
k1R
b1
l1R
c1
m1、又は-Z
4-CR
d1
k2R
e1
l2R
f1
m2であり、
Z
4は、それぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基であり、
ただし、式(S5)中、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子が少なくとも2つ存在する。]
で表される基である。
【0134】
上記式中、R11は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基である。
【0135】
R11は、好ましくは、それぞれ独立して、加水分解性基である。
【0136】
R11は、好ましくは、それぞれ独立して、-ORh、-OCORh、-O-N=CRh
2、-NRh
2、-NHRh、-NCO、又はハロゲン(これら式中、Rhは、置換又は非置換のC1-4アルキル基を示す)であり、より好ましくは-ORh(即ち、アルコキシ基)である。Rhとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が挙げられる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。一の態様において、Rhは、メチル基であり、別の態様において、Rhは、エチル基である。
【0137】
上記式中、R12は、それぞれ独立して、1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0138】
R12において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0139】
上記式中、n1は、(SiR11
n1R12
3-n1)単位毎にそれぞれ独立して、0~3の整数である。ただし、式(S1)において、n1が1~3である(SiR11
n1R12
3-n1)単位が少なくとも2つ存在する。換言すれば、式(S1)において、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子が少なくとも2つ存在する。
【0140】
n1は、(SiR11
n1R12
3-n1)単位毎にそれぞれ独立して、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは2~3、さらに好ましくは3である。
【0141】
上記式中、X11は、それぞれ独立して、単結合又は2価の有機基である。かかる2価の有機基は、好ましくは-R28-Ox-R29-(式中、R28及びR29は、それぞれ独立して、単結合又はC1-30アルキレン基であり、xは0又は1である。)である。かかるC1-30アルキレン基は、直鎖であっても、分岐鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。かかるC1-30アルキレン基は、好ましくはC1-10アルキレン基、より好ましくはC1-6アルキレン基、さらに好ましくはC1-3アルキレン基である。
【0142】
一の態様において、X11は、それぞれ独立して、-C1-6アルキレン-O-C1-6アルキレン-又は-O-C1-6アルキレン-である。
【0143】
好ましい態様において、X11は、それぞれ独立して、単結合又は直鎖のC1-6アルキレン基であり、好ましくは単結合又は直鎖のC1-3アルキレン基、より好ましくは単結合又は直鎖のC1-2アルキレン基であり、さらに好ましくは直鎖のC1-2アルキレン基である。
【0144】
上記式中、R13は、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基である。
【0145】
好ましい態様において、R13は、それぞれ独立して、水素原子又は直鎖のC1-6アルキル基であり、好ましくは水素原子又は直鎖のC1-3アルキル基、好ましくは水素原子又はメチル基である。
【0146】
上記式中、R15は、それぞれ独立して、単結合、酸素原子、炭素数1~6のアルキレン基又は炭素数1~6のアルキレンオキシ基である。
【0147】
一の態様において、R15は、それぞれ独立して、酸素原子、炭素数1~6のアルキレン基又は炭素数1~6のアルキレンオキシ基である。
【0148】
好ましい態様において、R15は、単結合である。
【0149】
上記式中、tは、それぞれ独立して、2以上の整数である。
【0150】
好ましい態様において、tは、それぞれ独立して、2~10の整数、好ましくは2~6の整数である。
【0151】
上記式中、R14は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又は-X11-SiR11
n1R12
3-n1である。かかるハロゲン原子は、好ましくはヨウ素原子、塩素原子又はフッ素原子であり、より好ましくはフッ素原子である。好ましい態様において、R14は、水素原子である。
【0152】
一の態様において、式(S1)は、下記式(S1-a)である。
【化13】
[式中、
R
11、R
12、R
13、X
11、及びn1は、上記式(S1)の記載と同意義であり、
t1及びt2は、それぞれ独立して、1以上の整数、好ましくは1~10の整数、より好ましくは2~10の整数、例えば1~5の整数又は2~5の整数であり、
t1及びt2を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
【0153】
好ましい態様において、式(S1)は、下記式(S1-b)である。
【化14】
[式中、R
11、R
12、R
13、X
11、n1及びtは、上記式(S1)の記載と同意義である]
【0154】
Ra1は、それぞれ独立して、-Z1-SiR21
p1R22
q1R23
r1である。
【0155】
Z1は、それぞれ独立して、酸素原子又は2価の有機基である。尚、以下Z1として記載する構造は、右側が(SiR21
p1R22
q1R23
r1)に結合する。
【0156】
好ましい態様において、Z1は、2価の有機基である。
【0157】
好ましい態様において、Z1は、Z1が結合しているSi原子とシロキサン結合を形成するものを含まない。好ましくは、式(S3)において、(Si-Z1-Si)は、シロキサン結合を含まない。
【0158】
Z1は、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CH2)z1-O-(CH2)z2-(式中、z1は、0~30の整数、例えば1~30の整数、0~6の整数、又は1~6の整数であり、z2は、0~30の整数、例えば1~30の整数、0~6の整数、又は1~6の整数である)又は、-(CH2)z3-フェニレン-(CH2)z4-(式中、z3は、0~30の整数、例えば1~30の整数、0~6の整数、又は1~6の整数であり、z4は、0~30の整数、例えば1~30の整数、0~6の整数、又は1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分岐鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0159】
好ましい態様において、Z1は、C1-6アルキレン基又は-(CH2)z3-フェニレン-(CH2)z4-、好ましくは-フェニレン-(CH2)z4-である。
【0160】
別の好ましい態様において、Z1は、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Z1は、-CH2CH2CH2-であり得る。別の態様において、Z1は、-CH2CH2-であり得る。別の態様において、Z1は、-CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2-であり得る。
【0161】
R21は、それぞれ独立して、-Z1’-SiR21’
p1’R22’
q1’R23’
r1’である。
【0162】
Z1’は、それぞれ独立して、酸素原子又は2価の有機基である。尚、以下Z1’として記載する構造は、右側が(SiR21’
p1’R22’
q1’R23’
r1’)に結合する。
【0163】
好ましい態様において、Z1’は、2価の有機基である。
【0164】
好ましい態様において、Z1’は、Z1’が結合しているSi原子とシロキサン結合を形成するものを含まない。好ましくは、式(S3)において、(Si-Z1’-Si)は、シロキサン結合を含まない。
【0165】
Z1’は、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CH2)z1’-O-(CH2)z2’-(式中、z1’は、0~30の整数、例えば1~30の整数、0~6の整数、又は1~6の整数であり、z2’は、0~30の整数、例えば1~30の整数、0~6の整数、又は1~6の整数である)又は、-(CH2)z3’-フェニレン-(CH2)z4’-(式中、z3’は、0~30の整数、例えば1~30の整数、0~6の整数、又は1~6の整数であり、z4’は、0~30の整数、例えば1~30の整数、0~6の整数、又は1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分岐鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0166】
好ましい態様において、Z1’は、C1-6アルキレン基又は-(CH2)z3’-フェニレン-(CH2)z4’-、好ましくは-フェニレン-(CH2)z4’-である。
【0167】
別の好ましい態様において、Z1’は、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Z1’は、-CH2CH2CH2-であり得る。別の態様において、Z1’は、-CH2CH2-であり得る。別の態様において、Z1’は、-CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2-であり得る。
【0168】
上記R21’は、それぞれ独立して、-Z1”-SiR22”
q1”R23”
r1”である。
【0169】
上記Z1”は、それぞれ独立して、酸素原子又は2価の有機基である。尚、以下Z1”として記載する構造は、右側が(SiR22”
q1”R23”
r1”)に結合する。
【0170】
好ましい態様において、Z1”は、2価の有機基である。
【0171】
好ましい態様において、Z1”は、Z1”が結合しているSi原子とシロキサン結合を形成するものを含まない。好ましくは、式(S3)において、(Si-Z1”-Si)は、シロキサン結合を含まない。
【0172】
Z1”は、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CH2)z1”-O-(CH2)z2”-(式中、z1”は、0~30の整数、例えば1~30の整数、0~6の整数、又は1~6の整数であり、z2”は、0~30の整数、例えば1~30の整数、0~6の整数、又は1~6の整数である)又は、-(CH2)z3”-フェニレン-(CH2)z4”-(式中、z3”は、0~30の整数、例えば1~30の整数、0~6の整数、又は1~6の整数であり、z4”は、0~30の整数、例えば1~30の整数、0~6の整数、又は1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分岐鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0173】
好ましい態様において、Z1”は、C1-6アルキレン基又は-(CH2)z3”-フェニレン-(CH2)z4”-、好ましくは-フェニレン-(CH2)z4”-である。Z1”がかかる基である場合、光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0174】
別の好ましい態様において、Z1”は、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Z1”は、-CH2CH2CH2-であり得る。別の態様において、Z1”は、-CH2CH2-であり得る。別の態様において、Z1”は、-CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2-であり得る。
【0175】
上記R22”は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基である。
【0176】
上記R22”は、好ましくは、それぞれ独立して、加水分解性基である。
【0177】
上記R22”は、好ましくは、それぞれ独立して、-ORh、-OCORh、-O-N=CRh
2、-NRh
2、-NHRh、又は-NCO(これら式中、Rhは、置換又は非置換のC1-4アルキル基を示す)であり、より好ましくは-ORh(即ち、アルコキシ基)である。Rhとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が挙げられる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。一の態様において、Rhは、メチル基であり、別の態様において、Rhは、エチル基である。
【0178】
R23”は、それぞれ独立して、1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0179】
R23”において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0180】
q1”は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、上記r1”は、それぞれ独立して、0~3の整数である。尚、q1”とr1”の合計は、(SiR22”
q1”R23”
r1”)単位において、3である。
【0181】
q1”は、(SiR22”
q1”R23”
r1”)単位毎にそれぞれ独立して、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは2~3、さらに好ましくは3である。
【0182】
R22’は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基である。
【0183】
R22’は、好ましくは、それぞれ独立して、加水分解性基である。
【0184】
R22’は、好ましくは、それぞれ独立して、-ORh、-OCORh、-O-N=CRh
2、-NRh
2、-NHRh、又は-NCO(これら式中、Rhは、置換又は非置換のC1-4アルキル基を示す)であり、より好ましくは-ORh(即ち、アルコキシ基)である。Rhとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が挙げられる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。一の態様において、Rhは、メチル基であり、別の態様において、Rhは、エチル基である。
【0185】
R23’は、それぞれ独立して、1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0186】
R23’において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0187】
p1’は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、q1’は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、r1’は、それぞれ独立して、0~3の整数である。尚、p’、q1’及びr1’の合計は、(SiR21’
p1’R22’
q1’R23’
r1’)単位において、3である。
【0188】
一の態様において、p1’は、0である。
【0189】
一の態様において、p1’は、(SiR21’
p1’R22’
q1’R23’
r1’)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数、2~3の整数、又は3であってもよい。好ましい態様において、p1’は、3である。
【0190】
一の態様において、q1’は、(SiR21’
p1’R22’
q1’R23’
r1’)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2~3の整数、より好ましくは3である。
【0191】
一の態様において、p1’は0であり、q1’は、(SiR21’
p1’R22’
q1’R23’
r1’)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2~3の整数、さらに好ましくは3である。
【0192】
R22は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基である。
【0193】
R22は、好ましくは、それぞれ独立して、加水分解性基である。
【0194】
R22は、好ましくは、それぞれ独立して、-ORh、-OCORh、-O-N=CRh
2、-NRh
2、-NHRh、又は-NCO(これら式中、Rhは、置換又は非置換のC1-4アルキル基を示す)であり、より好ましくは-ORh(即ち、アルコキシ基)である。Rhとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が挙げられる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。一の態様において、Rhは、メチル基であり、別の態様において、Rhは、エチル基である。
【0195】
上記R23は、それぞれ独立して、1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0196】
R23において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0197】
上記p1は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、q1は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、r1は、それぞれ独立して、0~3の整数である。尚、p1、q1とr1の合計は、(SiR21
p1R22
q1R23
r1)単位において、3である。
【0198】
一の態様において、p1は、0である。
【0199】
一の態様において、p1は、(SiR21
p1R22
q1R23
r1)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数、2~3の整数、又は3であってもよい。好ましい態様において、p1は、3である。
【0200】
一の態様において、q1は、(SiR21
p1R22
q1R23
r1)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2~3の整数、より好ましくは3である。
【0201】
一の態様において、p1は0であり、q1は、(SiR21
p1R22
q1R23
r1)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2~3の整数、さらに好ましくは3である。
【0202】
式中、Rb1は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基である。
【0203】
Rb1は、好ましくは、それぞれ独立して、加水分解性基である。
【0204】
Rb1は、好ましくは、それぞれ独立して、-ORh、-OCORh、-O-N=CRh
2、-NRh
2、-NHRh、又は-NCO(これら式中、Rhは、置換又は非置換のC1-4アルキル基を示す)であり、より好ましくは-ORh(即ち、アルコキシ基)である。Rhとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が挙げられる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。一の態様において、Rhは、メチル基であり、別の態様において、Rhは、エチル基である。
【0205】
式中、Rc1は、それぞれ独立して、1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0206】
Rc1において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0207】
k1は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、l1は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、m1は、それぞれ独立して、0~3の整数である。尚、k1、l1とm1の合計は、(SiRa1
k1Rb1
l1Rc1
m1)単位において、3である。
【0208】
一の態様において、k1は、(SiRa1
k1Rb1
l1Rc1
m1)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。好ましい態様において、k1は、3である。
【0209】
式(S3)において、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子が少なくとも2つ存在する。
【0210】
好ましい態様において、式(S3)の末端部分において、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子が少なくとも2つ存在する。
【0211】
好ましい態様において、式(S3)で表される基は、-Z1-SiR22
q1R23
r1(式中、q1は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3であり、r1は、0~2の整数である。)、-Z1’-SiR22’
q1’R23’
r1’(式中、q1’は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3であり、r1’は、0~2の整数である。)、又は-Z1”-SiR22”
q1”R23”
r1”(式中、q1”は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3であり、r1”は、0~2の整数である。)のいずれか1つを有する。Z1、Z1’、Z1”、R22、R23、R22’、R23’、R22”、及びR23”は、上記と同意義である。
【0212】
好ましい態様において、式(S3)において、R21’が存在する場合、少なくとも1つの、好ましくは全てのR21’において、q1”は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。
【0213】
好ましい態様において、式(S3)において、R21が存在する場合、少なくとも1つの、好ましくは全てのR21において、p1’は、0であり、q1’は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。
【0214】
好ましい態様において、式(S3)において、Ra1が存在する場合、少なくとも1つの、好ましくは全てのRa1において、p1は、0であり、q1は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。
【0215】
好ましい態様において、式(S3)において、k1は2又は3、好ましくは3であり、p1は0であり、q1は2又は3、好ましくは3である。
【0216】
Rd1は、それぞれ独立して、-Z2-CR31
p2R32
q2R33
r2である。
【0217】
Z2は、それぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基である。尚、以下Z2として記載する構造は、右側が(CR31
p2R32
q2R33
r2)に結合する。
【0218】
好ましい態様において、Z2は、2価の有機基である。
【0219】
好ましい態様において、Z2は、シロキサン結合を含まない。
【0220】
Z2は、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CH2)z5-O-(CH2)z6-(式中、z5は、0~30の整数、例えば1~30の整数、0~6の整数、又は1~6の整数であり、z6は、0~30の整数、例えば1~30の整数、0~6の整数、又は1~6の整数である)又は、-(CH2)z7-フェニレン-(CH2)z8-(式中、z7は、0~30の整数、例えば1~30の整数、0~6の整数、又は1~6の整数であり、z8は、0~30の整数、例えば1~30の整数、0~6の整数、又は1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分岐鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0221】
好ましい態様において、Z2は、C1-6アルキレン基又は-(CH2)z7-フェニレン-(CH2)z8-、好ましくは-フェニレン-(CH2)z8-である。Z2がかかる基である場合、光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0222】
別の好ましい態様において、上記Z2は、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Z2は、-CH2CH2CH2-であり得る。別の態様において、Z2は、-CH2CH2-であり得る。別の態様において、Z2は、-CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2-であり得る。
【0223】
R31は、それぞれ独立して、-Z2’-CR32’
q2’R33’
r2’である。
【0224】
Z2’は、それぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基である。尚、以下Z2’として記載する構造は、右側が(CR32’
q2’R33’
r2’)に結合する。
【0225】
好ましい態様において、Z2’は、シロキサン結合を含まない。
【0226】
Z2’は、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CH2)z5’-O-(CH2)z6’-(式中、z5’は、0~30の整数、例えば1~30の整数、0~6の整数、又は1~6の整数であり、z6’は、0~30の整数、例えば1~30の整数、0~6の整数、又は1~6の整数である)又は、-(CH2)z7’-フェニレン-(CH2)z8’-(式中、z7’は、0~30の整数、例えば1~30の整数、0~6の整数、又は1~6の整数であり、z8’は、0~30の整数、例えば1~30の整数、0~6の整数、又は1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分岐鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0227】
好ましい態様において、Z2’は、C1-6アルキレン基又は-(CH2)z7’-フェニレン-(CH2)z8’-、好ましくは-フェニレン-(CH2)z8’-である。Z2’がかかる基である場合、光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0228】
別の好ましい態様において、上記Z2’は、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Z2’は、-CH2CH2CH2-であり得る。別の態様において、Z2’は、-CH2CH2-であり得る。別の態様において、Z2’は、-CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2-であり得る。
【0229】
R32’は、それぞれ独立して、-Z3-SiR34
n2R35
3-n2である。
【0230】
Z3は、それぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基である。尚、以下Z3として記載する構造は、右側が(SiR34
n2R35
3-n2)に結合する。
【0231】
一の態様において、Z3は酸素原子である。
【0232】
一の態様において、Z3は2価の有機基である。
【0233】
好ましい態様において、Z3は、シロキサン結合を含まない。
【0234】
Z3は、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CH2)z5”-O-(CH2)z6”-(式中、z5”は、0~30の整数、例えば1~30の整数、0~6の整数、又は1~6の整数であり、z6”は、0~30の整数、例えば1~30の整数、0~6の整数、又は1~6の整数である)又は、-(CH2)z7”-フェニレン-(CH2)z8”-(式中、z7”は、0~30の整数、例えば1~30の整数、0~6の整数、又は1~6の整数であり、z8”は、0~30の整数、例えば1~30の整数、0~6の整数、又は1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分岐鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0235】
好ましい態様において、Z3は、C1-6アルキレン基又は-(CH2)z7”-フェニレン-(CH2)z8”-、好ましくは-フェニレン-(CH2)z8”-である。Z3がかかる基である場合、光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0236】
別の好ましい態様において、上記Z3は、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Z3は、-CH2CH2CH2-であり得る。別の態様において、Z3は、-CH2CH2-であり得る。別の態様において、Z3は、-CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2-であり得る。
【0237】
R34は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基である。
【0238】
R34は、好ましくは、それぞれ独立して、加水分解性基である。
【0239】
R34は、好ましくは、それぞれ独立して、-ORh、-OCORh、-O-N=CRh
2、-NRh
2、-NHRh、-NCO、又はハロゲン(これら式中、Rhは、置換又は非置換のC1-4アルキル基を示す)であり、より好ましくは-ORh(即ち、アルコキシ基)である。Rhとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が挙げられる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。一の態様において、Rhは、メチル基であり、別の態様において、Rhは、エチル基である。
【0240】
R35は、それぞれ独立して、1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0241】
R35において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0242】
n2は、(SiR34
n2R35
3-n2)単位毎にそれぞれ独立して、0~3の整数である。ただし、式(S4)の末端部分においては、n2が1~3である(SiR34
n2R35
3-n2)単位が少なくとも2つ存在する。換言すれば、式(S4)の末端部分において、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子が少なくとも2つ存在する。
【0243】
n2は、(SiR34
n2R35
3-n2)単位毎にそれぞれ独立して、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは2~3、さらに好ましくは3である。
【0244】
R33’は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0245】
R33’において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基又は-(CsH2s)t1-(O-CsH2s)t2(式中、sは、1~6の整数、好ましくは2~4の整数であり、t1は1又は0、好ましくは0であり、t2は、1~20の整数、好ましくは2~10の整数、より好ましくは2~6の整数である。)であり、より好ましくはC1-20アルキル基、さらに好ましくはC1-6アルキル基、特に好ましくはメチル基である。
【0246】
一の態様において、R33’は、水酸基である。
【0247】
別の態様において、R33’は、1価の有機基、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基である。
【0248】
上記q2’は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、上記r2’は、それぞれ独立して、0~3の整数である。尚、q2’とr2’の合計は、(CR32’
q2’R33’
r2’)単位において、3である。
【0249】
q2’は、(CR32’
q2’R33’
r2’)単位毎にそれぞれ独立して、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは2~3、さらに好ましくは3である。
【0250】
R32は、それぞれ独立して、-Z3-SiR34
n2R35
3-n2である。かかる-Z3-SiR34
n2R35
3-n2は、上記R32’における記載と同意義である。
【0251】
R33は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0252】
R33において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基又は-(CsH2s)t1-(O-CsH2s)t2(式中、sは、1~6の整数、好ましくは2~4の整数であり、t1は1又は0、好ましくは0であり、t2は、1~20の整数、好ましくは2~10の整数、より好ましくは2~6の整数である。)であり、より好ましくはC1-20アルキル基、さらに好ましくはC1-6アルキル基、特に好ましくはメチル基である。
【0253】
一の態様において、R33は、水酸基である。
【0254】
別の態様において、R33は、1価の有機基、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基である。
【0255】
p2は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、q2は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、r2は、それぞれ独立して、0~3の整数である。尚、p2、q2及びr2の合計は、(CR31
p2R32
q2R33
r2)単位において、3である。
【0256】
一の態様において、p2は、0である。
【0257】
一の態様において、p2は、(CR31
p2R32
q2R33
r2)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数、2~3の整数、又は3であってもよい。好ましい態様において、p2は、3である。
【0258】
一の態様において、q2は、(CR31
p2R32
q2R33
r2)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2~3の整数、より好ましくは3である。
【0259】
一の態様において、p2は0であり、q2は、(CR31
p2R32
q2R33
r2)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2~3の整数、さらに好ましくは3である。
【0260】
Re1は、それぞれ独立して、-Z3-SiR34
n2R35
3-n2である。かかる-Z3-SiR34
n2R35
3-n2は、上記R32’における記載と同意義である。
【0261】
Rf1は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0262】
Rf1において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基又は-(CsH2s)t1-(O-CsH2s)t2(式中、sは、1~6の整数、好ましくは2~4の整数であり、t1は1又は0、好ましくは0であり、t2は、1~20の整数、好ましくは2~10の整数、より好ましくは2~6の整数である。)であり、より好ましくはC1-20アルキル基、さらに好ましくはC1-6アルキル基、特に好ましくはメチル基である。
【0263】
一の態様において、Rf1は、水酸基である。
【0264】
別の態様において、Rf1は、1価の有機基、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基である。
【0265】
k2は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、l2は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、m2は、それぞれ独立して、0~3の整数である。尚、k2、l2及びm2の合計は、(CRd1
k2Re1
l2Rf1
m2)単位において、3である。
【0266】
一の態様において、n2が1~3、好ましくは2又は3、より好ましくは3である(SiR34
n2R35
3-n2)単位は、式(S4)の各末端部分において、2個以上、例えば2~27個、好ましくは2~9個、より好ましくは2~6個、さらに好ましくは2~3個、特に好ましくは3個存在する。
【0267】
好ましい態様において、式(S4)において、R32’が存在する場合、少なくとも1つの、好ましくは全てのR32’において、n2は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。
【0268】
好ましい態様において、式(S4)において、R32が存在する場合、少なくとも1つの、好ましくは全てのR32において、n2は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。
【0269】
好ましい態様において、式(S4)において、Re1が存在する場合、少なくとも1つの、好ましくは全てのRa1において、n2は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。
【0270】
好ましい態様において、式(S4)において、k2は0であり、l2は2又は3、好ましくは3であり、n2は、2又は3、好ましくは3である。
【0271】
Rg1及びRh1は、それぞれ独立して、-Z4-SiR11
n1R12
3-n1、-Z4-SiRa1
k1Rb1
l1Rc1
m1、-Z4-CRd1
k2Re1
l2Rf1
m2である。ここに、R11、R12、Ra1、Rb2、Rc1、Rd1、Re1、Rf1、n1、k1、l1、m1、k2、l2、及びm2は、上記と同意義である。
【0272】
好ましい態様において、Rg1及びRh1は、それぞれ独立して、-Z4-SiR11
n1R12
3-n1である。
【0273】
上記Z4は、それぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基である。尚、以下Z4として記載する構造は、右側が(SiR11
n1R12
3-n1)に結合する。
【0274】
一の態様において、Z4は酸素原子である。
【0275】
一の態様において、Z4は2価の有機基である。
【0276】
好ましい態様において、Z4は、シロキサン結合を含まない。
【0277】
Z4は、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CH2)z5”-O-(CH2)z6”-(式中、z5”は、0~30の整数、例えば1~30の整数、0~6の整数、又は1~6の整数であり、z6”は、0~30の整数、例えば1~30の整数、0~6の整数、又は1~6の整数である)又は、-(CH2)z7”-フェニレン-(CH2)z8”-(式中、z7”は、0~30の整数、例えば1~30の整数、0~6の整数、又は1~6の整数であり、z8”は、0~30の整数、例えば1~30の整数、0~6の整数、又は1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分岐鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0278】
好ましい態様において、Z4は、C1-6アルキレン基又は-(CH2)z7”-フェニレン-(CH2)z8”-、好ましくは-フェニレン-(CH2)z8”-である。Z3がかかる基である場合、光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0279】
別の好ましい態様において、上記Z4は、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Z4は、-CH2CH2CH2-であり得る。別の態様において、Z4は、-CH2CH2-であり得る。別の態様において、Z4は、-CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2-であり得る。
【0280】
一の態様において、式(S1)、(S2)、(S3)、及び(S4)は、シロキサン結合を含まない。
【0281】
一の態様において、RSiは、式(S2)、(S3)、又は(S4)で表される基である。
【0282】
一の態様において、RSiは、式(S3)、(S4)又は(S5)で表される基である。
【0283】
一の態様において、RSiは、式(S1)で表される基である。好ましい態様において、n1は1~3、好ましくは2~3、さらに好ましくは3である。
【0284】
一の態様において、RSiは、式(S2)で表される基である。好ましい態様において、n1は1~3、好ましくは2~3、さらに好ましくは3である。
【0285】
一の態様において、RSiは、式(S3)で表される基である。好ましい態様において、式(S3)は、-SiRa1
2Rc1、又は-SiRa1
3であり、Ra1は、-Z1-SiR22
q1R23
r1であり、Z1は、C1-6アルキレン基、-(CH2)z1-O-(CH2)z2-(式中、z1は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z2は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)、又は、-(CH2)z3-フェニレン-(CH2)z4-(式中、z3は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z4は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)、好ましくはC1-6アルキレン基であり、q1は1~3、好ましくは2~3、さらに好ましくは3である。
【0286】
一の態様において、RSiは、式(S4)で表される基である。好ましい態様において、式(S4)は、-CRe1
2Rf1、又は-CRe1
3であり、Re1は、-Z3-SiR34
n2R35
3-n2であり、Z3は、C1-6アルキレン基、-(CH2)z5”-O-(CH2)z6”-(式中、z5”は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z6”は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)又は、-(CH2)z7”-フェニレン-(CH2)z8”-(式中、z7”は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z8”は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)、好ましくはC1-6アルキレン基であり、n2は1~3、好ましくは2~3、さらに好ましくは3である。
【0287】
一の態様において、RSiは、式(S5)で表される基である。好ましい態様において、Rg1及びRh1は、-Z4-SiR11
n1R12
3-n1であり、Z4は、C1-6アルキレン基、-(CH2)z5”-O-(CH2)z6”-(式中、z5”は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z6”は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)又は、-(CH2)z7”-フェニレン-(CH2)z8”-(式中、z7”は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z8”は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)、好ましくはC1-6アルキレン基であり、n1は1~3、好ましくは2~3、さらに好ましくは3である。
【0288】
好ましい態様において、本開示の化合物において、
Rfは、C
6F
5-であり、
X
Aは、C
11-30アルキレン基、又は下記式:
-X
C-X
D-X
E-
[式中:
X
Cは、-CONH-であり、
X
Dは、C
8-30アルキレン基であり、
X
Eは、-CO-である。]
で表される基であり、
R
Siは、下記式(S2)又は(S5):
【化15】
[式中:
R
11は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり、
R
12は、それぞれ独立して、1価の有機基であり、
n1は、1~3の整数であり、
R
g1及びR
h1は、それぞれ独立して、-Z
4-SiR
11
n1R
12
3-n1であり、
Z
4は、C
1-30アルキレン基である。]
で表される基であり、
α1は、1であり、
β1は、1である。
【0289】
本開示の具体的な化合物としては、例えば以下の化合物が挙げられる。
C
6F
5(CH
2)
18Si(OCH
3)
3、
C
6F
5CONH(CH
2)
11CON(CH
2CH
2CH
2Si(OCH
3)
3)
2
【0290】
以下、本開示の含フッ素シラン化合物の製造方法を説明する。なお、本開示の含フッ素シラン化合物の製造方法は、以下の方法に限定されない。
【0291】
Rfα1-を含む基、即ち、フッ素原子又は含フッ素置換基を有する芳香族基を含む基の製造方法としては、フッ素原子又は含フッ素置換基を有する芳香族基を有する化合物から誘導する方法と、官能基をフッ素化して導入する方法とがある。
【0292】
(製造方法1)
本製造方法は、以下の工程を含む。
工程(I):化合物(11):Rf
α1-X
B-X
c-R
j111-NH
2を原料として用い、イソシアネート化合物(12):O=C=N-R
j112-R
Siと混合し、フッ素原子含有シラン化合物(13)を製造する。
【化16】
【0293】
Rj111は、単結合又はアルキレン基であり、例えば、C1-30アルキレン基、具体的にはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基、ノナデシレン基、エイコサデシレン基である。
化合物(11)としては、具体的にはペンタフルオロアニリン、2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゼンメタンアミン、2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゼンエタンアミン、2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゼンプロパンアミン、2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゼンブタンアミン、2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゼンペンタンアミン、2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゼンヘキサンアミン、2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゼンヘプタンアミン、2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゼンオクタンアミン、2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゼンノナンアミン、2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゼンデカンアミン、2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゼンウンデカンアミン、2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゼンドデカンアミン、2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゼントリデカンアミン、2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゼンテトラデカンアミン、2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゼンペンタデカンアミン、2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゼンヘキサデカンアミン、2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゼンヘプタデカンアミン、2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゼンオクタデカンアミン、2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゼンノナデカンアミン、2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゼンイコサンアミン、2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゼンヘンイコサンアミン、2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゼンテトラコサンアミン、2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゼンヘントリアコンタンアミン、4-トリフルオロメチルアニリン、4-トリフルオロメトキシアニリン、4-ジフルオロメチルアニリン、4-ジフルオロメトキシアニリン、2,3,5,6-テトラフルオロ-4-トリフルオロメチルアニリン、2,3,5,6-テトラフルオロ-4-トリフルオロメトキシアニリン、2,3,5,6-テトラフルオロ-4-ジフルオロメチルアニリン、2,3,5,6-テトラフルオロ-4-ジフルオロメトキシアニリン、などを挙げることができる。
Rj112は、単結合又はアルキレン基であり、例えば、アルキレン基、具体的にはC1-30アルキレン基である。
イソシアネート化合物(12)としては、具体的にはイソシアン酸3-(トリメトキシシリル)プロピルなどを挙げることができる。
Rf、XB、Xc、RSi及びα1は、上記と同意義である。
【0294】
上記反応は、溶媒中で行い得る。上記溶媒は、化合物(11)~化合物(13)を溶解できるものであることが好ましい。上記溶媒は、1種のみで用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0295】
上記溶媒は、例えば、非フッ素系溶媒、又は、フッ素系溶媒である。
【0296】
非フッ素系溶媒としては、例えば、S原子含有溶媒、アミド系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、含ハロゲン系溶媒、炭化水素系溶媒を挙げることができる。
【0297】
S原子含有溶媒としては、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジメチルスルフィド、二硫化炭素等を挙げることができる。
アミド系溶媒としては、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド等を挙げることができる。
エステル系溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸セロソルブ、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、酢酸カルビトール、ジエチルオキサレート、ピルビン酸エチル、エチル-2-ヒドロキシブチレート、エチルアセトアセテート、酢酸アミル、乳酸メチル、乳酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、2-ヒドロキシイソ酪酸エチル等を挙げることができる。
ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2-ヘキサノン、シクロヘキサノン、メチルアミノケトン、2-ヘプタノン等を挙げることができる。
エーテル系溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、エチレングリコール、モノグリム、ジグライム等を挙げることができる。
含ハロゲン系溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム等を挙げることができる。
炭化水素系溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン等を挙げることができる。
【0298】
フッ素系溶媒は、1以上のフッ素原子を含む溶媒である。フッ素系溶媒としては、例えば、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン等の、炭化水素の水素原子の少なくとも1つがフッ素原子により置換された化合物;ハイドロフルオロエーテル等を挙げることができる。ここで、炭化水素とは、炭素原子と水素原子のみを含む化合物を示す。
【0299】
ハイドロフルオロカーボンとしては、例えば、ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、具体的には1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(m-XHF)、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロオクタン、C6F13CH2CH3(例えば、旭硝子株式会社製のアサヒクリン(登録商標)AC-6000)、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン(例えば、日本ゼオン株式会社製のゼオローラ(登録商標)H)等を挙げることができる。
【0300】
ハイドロクロロフルオロカーボンとしては、例えば、HCFC-225(例えば、AGC株式会社製のアサヒクリンAK-225)、HFO-1233zd(Z)(例えば、セントラル硝子株式会社製のセレフィン1233Z)等を挙げることができる。
【0301】
パーフルオロカーボンとしては、例えば、パーフルオロヘキサン、パーフルオロメチルシクロヘキサン、パーフルオロ-1,3-ジメチルシクロヘキサン、パーフルオロベンゼン等を挙げることができる。
【0302】
ハイドロフルオロエーテルとしては、例えば、パーフルオロプロピルメチルエーテル(C3F7OCH3)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標)7000)、パーフルオロブチルメチルエーテル(C4F9OCH3)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標)7100)、パーフルオロブチルエチルエーテル(C4F9OC2H5)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標)7200)、パーフルオロヘキシルメチルエーテル(C2F5CF(OCH3)C3F7)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標)7300)等のアルキルパーフルオロアルキルエーテル(パーフルオロアルキル基及びアルキル基は、直鎖、又は、分枝状であってよい);CF3CH2OCF2CHF2(例えば、旭硝子株式会社製のアサヒクリン(登録商標)AE-3000)等を挙げることができる。
【0303】
フッ素系溶媒は、上記列挙のなかではm-XHF、HFE7100、HFE7200、HFE7300、AC-6000、パーフルオロヘキサン、及び、パーフロベンゼンが好ましい。
【0304】
溶媒は、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、エチレングリコール、ジクロロメタン、クロロホルム、ベンゼン、トルエン、及び1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、及び1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
【0305】
上記反応温度は、特に限定されない。例えば、反応温度は、0~100℃、0~50℃、0~30℃であってもよい。
【0306】
(製造方法2)
本製造方法では、Rfとカルボニル基(-C(=O)-)含有化合物に、オレフィン(-CH=CH2)含有アミン化合物を反応させることにより、オレフィン含有アミド化合物を製造し、このオレフィン含有アミド化合物から、本開示のフッ素原子含有シラン化合物を合成できる。例えば、末端にオレフィンを含有するアミド化合物に下記式:
HSiRj27
m3Rj28
3-m3
[式中、
Rj27は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり、
Rj28は、それぞれ独立して、1価の有機基であり、
m3は、1~3である。]
で表される化合物と反応させることにより、フッ素原子含有シラン化合物を得ることができる。上記1価の有機基は、加水分解性基を含まない。
【0307】
オレフィン含有アミン化合物は、H2N-と-CH=CH2とを有する化合物であり、例えば、H2N(CH2)x31Q((CH2)x32CH=CH2)x33Rx3
x34(式中:x31及びx32は、それぞれ、0~6の整数、x33は1以上の整数、x34は0以上の整数、x33及びx34の合計はQの価数-1、Qは、N、Si又はC、Rx3は水素原子、水酸基、又は1価の有機基)である。
オレフィン含有アミン化合物としては、例えば、アリルアミン、ジアリルアミン、2-アリルペント-4-エン-1-アミン(H2NCH2CH(CH2CH=CH2)2)、2,2-ジアリルペント-4-エン-1-アミン(H2N-CH2C(CH2CH=CH2)3)などが挙げられる。
【0308】
カルボニル基含有化合物は、Rf
α1-X
B-X
c-と、C(=O)基とを含む化合物である。カルボニル基含有化合物としては、後述する合成方法に記載の化合物、又は、式(21):
【化17】
で表される化合物を挙げることができる。
【0309】
式(21)において、Rj13は、単結合又はアルキレン基であり、例えば単結合であり;Rj14は、水酸基、フッ素原子、塩素原子、又は-O-低級アルキル基(即ち、アルコキシド基)であり、例えば、水素原子、メトキシド基、エトキシド基、具体的には水素原子又はメトキシド基である。
式(21)の化合物としては、具体的にはペンタフルオロ安息香酸、ペンタフルオロフェニル酢酸、ペンタフルオロフェニルプロピオン酸、ペンタフルオロフェニル酪酸、ペンタフルオロフェニル吉草酸、ペンタフルオロフェニルカプロン酸、4-トリフルオロメチル安息香酸、4-トリフルオロメトキシ安息香酸、4-ジフルオロメチル安息香酸、4-ジフルオロメトキシ安息香酸、2,3,5,6-テトラフルオロ-4-トリフルオロメチル安息香酸、2,3,5,6-テトラフルオロ-4-トリフルオロメトキシ安息香酸、2,3,5,6-テトラフルオロ-4-ジフルオロメチル安息香酸、2,3,5,6-テトラフルオロ-4-ジフルオロメトキシ安息香酸などのカルボキシル基を末端に有する化合物、及びそのメチルエステル、酸クロライドなどを挙げることができる。
【0310】
カルボニル基含有化合物が酸クロライド(C(=O)Cl)を有する場合には、トリアルキルアミンと反応させることにより、オレフィン含有アミド化合物を得ることができる。トリアルキルアミンとしては、例えばトリエチルアミンなどを挙げることができる。
【0311】
カルボニル基含有化合物がカルボン酸を有する場合には、縮合剤と反応させることにより、オレフィン含有アミド化合物を得ることができる。
縮合剤としては、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド(EDC)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC・HCl)、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスファート(HATU)、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-ベンゾトリアゾリウム3-オキシドヘキサフルオロホスファート(HBTU)、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドテトラフルオロボラート(TATU)、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-ベンゾトリアゾリウム3-オキシドテトラフルオロボラート(TBTU)、(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノモルホリノカルベニウムヘキサフルオロホスファート(COMU)、O-[(エトキシカルボニル)シアノメチレンアミノ]-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(HOTU)、1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスファート(PyBOP)、1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスファート(BOP)、ブロモトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスファート(PyBroP)、ジフェニルホスホリルアジド(DPPA)、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(DMT-MM)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt)を用いることが好ましく、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド、1-ヒドロキシベンゾトリアゾールを用いることが好ましい。更に、触媒として4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)などを添加してもよい。
【0312】
カルボニル基含有化合物がエステルを有する場合には、塩基存在下で反応させることにより、オレフィン含有アミド化合物を得ることができる。
塩基としては、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(TBD)、1,2,4-トリアゾール,1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)、ナトリウムメトキシド、ナトリウムtert-ブトキシドを用いることが好ましく、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンを用いることがより好ましい。
【0313】
上記反応温度は、特に限定されない。例えば、反応温度は、0~150℃、0~100℃、0~50℃であってもよい。
溶媒は、製造方法1と同様のものを用いることができる。好ましくは、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランである。また、反応は無溶媒で実施してもよい。
【0314】
(製造方法3)
本製造方法では、オレフィン基含有化合物を原料として用い、フッ素原子含有シラン化合物を製造する。
オレフィン基含有化合物は、Rfα1-XB-Xc-とオレフィン基(-CH=CH2)とを有する化合物である。オレフィン基含有化合物としては、2,3,4,5,6-ペンタフルオロスチレン、1,2,3,4,5-ペンタフルオロ-6-(2-プロペン-1-イル)ベンゼン、1-(3-ブテン-1-イル)-2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゼン、1-エテニル-4-(トリフルオロメチル)ベンゼン、1-エテニル-4-(トリフルオロメトキシ)ベンゼン、1-エテニル-4-(ジフルオロメチル)ベンゼン、1-エテニル-4-(ジフルオロメトキシ)ベンゼン、2,3,5,6-テトラフルオロ-1-エテニル-4-(トリフルオロメチル)ベンゼン、2,3,5,6-テトラフルオロ-1-エテニル-4-(トリフルオロメトキシ)ベンゼン、2,3,5,6-テトラフルオロ-1-エテニル-4-(ジフルオロメチル)ベンゼン、2,3,5,6-テトラフルオロ-1-エテニル-4-(ジフルオロメトキシ)ベンゼン後述する合成方法で得られる化合物を挙げることができる。
【0315】
例えば、オレフィン基に、HSiM
3(Mは、それぞれ独立して、ハロゲン原子又はC
1-6アルコキシ基)を反応させ、更に得られた化合物に、
式:Hal-J-CH=CH
2(式中、Jは、Mg、Cu、Pd又はZnを表し、Halはハロゲン原子を表す。)
で表される化合物、及び、所望により
式:R
c
h’L(式中、R
cは上記と同意義であり、Lは、R
cと結合可能な基を表し、h’は1~3の整数である。)
で表される化合物と反応させて、以下の化合物:
【化18】
(-R
j21-CH
2CH
2-は、X
D-X
E-X
Fに該当する。例えば、-R
j21-CH
2CH
2-は、アルキレン基、例えば、C
1-30アルキレン基、具体的にはC
10-25アルキレン基である)を得ること;及び
上記化合物を、HSiM
3(式中、Mは、それぞれ独立して、ハロゲン原子又はC
1-6アルコキシ基である)、及び、所望により
式:R
23
i’L’(式中、R
23は上記と同意義であり、L’は、R
23と結合可能な基を表し、i’は1~3の整数である。)
で表される化合物、及び、所望により
式:R
24
j’L”(式中、R
24は上記と同意義であり、L”は、R
24と結合可能な基を表し、j’は1~3の整数である。)
で表される化合物と反応させること、
を含む方法により、式:
Rf
α1-X
B-X
c-R
j22-R
Si
(R
j22は、2価の有機基であり、-R
j21-CH
2CH
2-に該当する。R
Siは上記と同意義であり、例えば、R
Siは式(S3)で表される。)
を製造することができる。なお、上記記載は他のオレフィン基含有化合物にも適用できる。
【0316】
(製造方法4)
本製造方法では、カルボニル基含有化合物にアミン含有シラン化合物を反応させることにより、フッ素原子含有シラン化合物を製造する。
【0317】
カルボニル基含有化合物は、Rf
α1-X
B-X
c-とC(=O)とを含む化合物である。カルボニル基含有化合物としては、後述する合成方法で得られた化合物、又は、式(21):
【化19】
で表される化合物を挙げることができる。R
j13及びR
j14は上記と同意義である。
【0318】
アミン含有シラン化合物は、H2N-基とRSi基とを有する化合物である。アミン含有シラン化合物としては、例えば、H2N-Rj23-RSiを挙げることができ、具体的にはアミノプロピルトリメトキシシランを挙げることができる。上記Rj23は、アルキレン基、例えば、C1-4アルキレン基、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基であり;上記RSiは、上記と同意義であり、例えば、RSiは式(S2)で表される。
【0319】
フッ素原子含有シラン化合物は、例えば、Rf-Rj24-C(=O)NHRj23-RSiである。Rj24は、アルキレン基、例えば、C1-4アルキレン基、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基である。
【0320】
反応温度は0℃~150℃が好ましく、20℃~100℃がより好ましい。
溶媒は、製造方法1と同様のものを用いることができ、好ましくはトルエン、ジクロロメタン、クロロホルム、メタノール、エタノールを用いることができる。
【0321】
(製造方法5)
本製造方法では、オレフィン基含有化合物を反応させることにより、フッ素原子含有シラン化合物を製造する。
具体的には、オレフィン基含有化合物に下記式:
HSiRj25
m3Rj26
3-m3
[式中、
Rj25は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり、
Rj26は、それぞれ独立して、1価の有機基であり、
m3は、1~3である。]
で表される化合物を反応させることにより、フッ素原子含有シラン化合物を得ることができる。なお、上記記載は他のオレフィン基含有化合物にも適用できる。
【0322】
オレフィン基含有化合物は、Rfとオレフィン基とを有する化合物である。オレフィン基含有化合物としては、後述する合成方法で得られた化合物を挙げることができる。
【0323】
反応温度は-20℃~150℃が好ましく、0℃~100℃がより好ましい。
溶媒は、製造方法1と同様のものを用いることができ、好ましくはトルエン、ジクロロメタン、クロロホルム、メタノール、エタノール、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテルを用いることができる。
【0324】
(合成方法1)
本方法では、Rfを含む基と水酸基とを有する化合物(31):Rf-Rj33-OHを原料として用い、カルボニル基含有化合物を合成する。
Rj33は、アルキレン基、例えば、C1-30アルキレン基である。
化合物(31)としては、具体的には、ペンタフルオロフェノール、ペンタフルオロベンジルアルコール、2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゼンプロパノール、2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゼンブタノール、4-(トリフルオロメチル)フェノール、4-(トリフルオロメチル)ベンゼンメタノール、2-(4-トリフルオロメチルフェニル)エタノール、4-(トリフルオロメチル)ベンゼンプロパノール、4-(トリフルオロメチル)ベンゼンブタノール、4-(トリフルオロメトキシ)フェノール、4-(トリフルオロメトキシ)ベンゼンメタノール、2-(4-トリフルオロメトキシフェニル)エタノール、4-(トリフルオロメトキシ)ベンゼンプロパノール、4-(トリフルオロメトキシ)ベンゼンブタノール、2,3,5,6-テトラフルオロ-4-(トリフルオロメチル)ベンゼンメタノール、2-(2,3,5,6-テトラフルオロ-4-トリフルオロメチルフェニル)エタノール、2,3,5,6-テトラフルオロ-4-(トリフルオロメチル)ベンゼンプロパノール、2,3,5,6-テトラフルオロ-4-(トリフルオロメチル)ベンゼンブタノール、2,3,5,6-テトラフルオロ-4-(トリフルオロメトキシ)フェノール、2,3,5,6-テトラフルオロ-4-(トリフルオロメトキシ)ベンゼンメタノール、2-(2,3,5,6-テトラフルオロ-4-トリフルオロメトキシフェニル)エタノール、2,3,5,6-テトラフルオロ-4-(トリフルオロメトキシ)ベンゼンプロパノール、2,3,5,6-テトラフルオロ-4-(トリフルオロメトキシ)ベンゼンブタノール、などを挙げることができる。
【0325】
化合物(31)の水酸基を、常法により-OTf(Tfはトリフルオロメチルスルホニル基)へと変換することで、化合物(32):Rf-Rj33-OTfが得られる。
【0326】
本方法は、以下の工程(I’)を含む。
(I’):上記化合物(32)と反応基を有する化合物(33)とを混合し、カルボニル基含有化合物(34)を得る。
【化20】
【0327】
ここで、反応基としては、水酸基、カルボキシル基、Cl、F、カルボキシル基をエステル化したエステル基を挙げることができる。
反応基を有する化合物(33)としては、具体的には、9-ヒドロキシ-4,7-ジオキサノナン酸tert-ブチル、12-ヒドロキシ-4,7,10-トリオキサドデカン酸 tert-ブチル、1-ヒドロキシ-3,6,9,12-テトラオキサペンタデカン-15-酸 tert-ブチル等の水酸基を末端に有する化合物;10-ヒドロキシデカン酸、11-ヒドロキシウンデカン酸、12-ヒドロキシドデカン酸、13-ヒドロキシトリデカン酸、14-ヒドロキシテトラデカン酸、15-ヒドロキシペンタデカン酸、16-ヒドロキシヘキサデカン酸、17-ヒドロキシヘプタデカン酸、18-ヒドロキシオクタデカン酸、19-ヒドロキシノナデカン酸、20-ヒドロキシエイコサン酸、21-ヒドロキシヘンエイコサン酸、22-ヒドロキシドコサン酸、23-ヒドロキシトリコサン酸、24-ヒドロキシテトラコサン酸、25-ヒドロキシペンタコサン酸、30-ヒドロキシトリアコンタン酸等のカルボキシル基を末端に有する化合物、及びそのメチルエステル、酸クロライドなどを挙げることができる。
【0328】
Rj31は、2価の有機基であり、例えば、ポリエーテル基を有する基又はアルキレン基、具体的には、-(Rj35O)n-Rj36-基又はC1-30アルキレン基である。
上記Rj35はC1-3アルキレン基、例えばエチレン基、上記Rj36はC1-3アルキレン基、例えばエチレン基である。
上記nは、2~150の整数、例えば、2~50の整数である。
Rj32は、低級アルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、tert-ブチル基であり、具体的にはメチル基、tert-ブチル基である。
【0329】
上記反応温度は、特に限定されない。例えば、反応温度は、-80~200℃、例えば-50~100℃、具体的には-20~50℃で行い得る。
溶媒は、製造方法1と同様のものを用いることができる。
【0330】
(合成方法2)
本方法では、Rfを含む基と水酸基とを有する化合物(31):Rf-Rj33-OHを原料として用い、オレフィン含有化合物を合成する。各符号は上記と同意義である。
【0331】
化合物(31)の水酸基を、常法により-OTf(Tfはトリフルオロメチルスルホニル基)へと変換し、化合物(32):Rf-Rj33-OTfを製造する。
【0332】
本方法は、以下の工程(I’)を含む。
(I’):上記化合物(32)と反応基を有する化合物(35):HO-R
j31-CH=CH
2とを混合し、オレフィン含有化合物(36)を得る。
【化21】
【0333】
Rj33及びRj31は上記と同意義である。
反応温度、及び溶媒は、製造方法2と同意義である。
【0334】
(合成方法3)
本方法では、ヘキサフルオロベンゼンとハロゲン原子を有するオレフィン化合物(00):X-Rj33-OH(式中、Xは、ハロゲン原子、好ましくは塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子である。)を原料として用い、オレフィン含有化合物を合成する。各符号は上記と同意義である。
【0335】
本方法は、以下の工程(I’)を含む。
ヘキサフルオロベンゼンとハロゲン原子を有するオレフィン化合物をMg存在下で反応させることで、オレフィン含有化合物(36)を得る。
【化22】
【0336】
Rj33及びRj31は上記と同意義である。
反応温度、及び溶媒は、製造方法2と同意義である。
【0337】
(合成方法4)
本方法では、Rf-を含む基とカルボニル基とを有する化合物(31):Rf-Rj33-COOHを原料として用い、カルボニル基含有化合物を合成する。
【0338】
本方法は、以下の工程(I’)を含む。
(31)とアミノ基を有するカルボニル基含有化合物(001)を反応させることで、カルボニル基含有化合物(36)を得る。
カルボニル基含有化合物(001)としてはグリシン、β-アラニン、γ-アミノ酪酸、5-アミノ吉草酸、6-アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、8-アミノオクタン酸、9-アミノノナン酸、10-アミノデカン酸、12-アミノラウリン酸、14-アミノミリスチン酸、16-アミノ-パルミチン酸、17-アミノ-マルガリン酸、18-アミノステアリン酸などのカルボキシル基を末端に有する化合物、及びそのメチルエステル、酸クロライドなどを挙げることができる。
【0339】
本方法は、1,1,1-トリフルオロ-N,N-ビス(トリフルオロメチル)メタンスルホンアミドに対し、フッ化ルビジウムの存在下、4-ブロモベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボラートを作用させることで、Br-Ph-N(CF3)2を合成する。
【0340】
次に、本発明の表面処理剤について説明する。
【0341】
本開示の表面処理剤は、式(1)で表される少なくとも1種の含フッ素シラン化合物を含有する。
【0342】
一の態様において、本開示の表面処理剤は、式(1)で表される少なくとも1種の化合物それ自体である。
【0343】
一の態様において、上記の式(1)で表される化合物の含有量は、表面処理剤全体に対して、好ましくは0.1~50.0質量%、より好ましくは1.0~30.0質量%、さらに好ましくは5.0~25.0質量%、特に好ましくは10.0~20.0質量%であり得る。
【0344】
別の態様において、上記の式(1)で表される化合物の含有量は、表面処理剤全体に対して、好ましくは0.001~30質量%、より好ましくは0.01~10質量%、さらに好ましくは0.05~5質量%、特に好ましくは0.05~2質量%であり得る。
【0345】
一の態様において、本開示の表面処理剤は、式(1)で表される化合物、及び式(1)で表される化合物の少なくとも一部が縮合した縮合体を含有し得る。
【0346】
上記の態様において、上記縮合体の含有量は、式(1)で表される化合物と上記縮合体の合計に対して、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下であり得る。ここで、上記縮合体の含有量は、例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)におけるピーク位置と面積の存在比から求めることができる。
【0347】
本開示の組成物は、溶媒、シリコーンオイルとして理解され得る(非反応性の)シリコーン化合物(以下、「シリコーンオイル」と言う)、アミン化合物、アルコール類、触媒、界面活性剤、重合禁止剤、増感剤等を含み得る。
【0348】
一の態様において、本開示の表面処理剤は、R90-OHで表される化合物を含む。
R90は1価の有機基であり、好ましくはC1-20アルキル基又はC3-20アルキレン基であり、これらの基は1以上の置換基により置換されていてもよい。置換基としては、例えば、水酸基、-OR91(ここで、R91はC1-10アルキル基、好ましくはC1-3アルキル基、例えばメチル基)を挙げることができる。
【0349】
一の態様において、本開示の表面処理剤は、R81OR82、R83
n8C6H6-n8、R84R85R86Si-(O-SiR87R88)m8-R89、及び(OSiR87R88)m9
[式中
R81~R89は、それぞれ独立して、炭素数1~10個の一価の有機基であり、
m8は、1~6の整数であり、
m9は、3~8の整数であり、
n8は、0~6の整数である。]
で表される化合物から選択される溶媒を含み得る。
【0350】
上記炭素数1~10個の一価の有機基は、直鎖であっても、分岐鎖であってもよく、さらに環状構造を含んでいてもよい。
【0351】
一の態様において、上記炭素数1~10個の一価の有機基は、酸素原子、窒素原子、又はハロゲン原子を含んでいてもよい。
【0352】
別の態様において、上記炭素数1~10個の一価の有機基は、ハロゲン原子を含まない。
【0353】
好ましい態様において、上記炭素数1~10個の一価の有機基は、ハロゲンにより置換されていてもよい炭化水素基、好ましくはハロゲンにより置換されていない炭化水素基である。
【0354】
一の態様において、上記炭化水素基は、直鎖である。
【0355】
別の態様において、上記炭化水素基は、分岐鎖である。
【0356】
別の態様において、上記炭化水素基は、環状構造を含む。
【0357】
一の態様において、上記溶媒は、R81OR82である。
【0358】
R81及びR82は、それぞれ独立して、好ましくは炭素数1~8の炭化水素基、より好ましくはC1-6のアルキル基、又はC5-8のシクロアルキル基であり得る。
【0359】
一の態様において、上記溶媒は、R83
n8C6H6-n8である。
【0360】
C6H6-n8は、n8価のベンゼン環である。即ち、R83
n8C6H6-n8は、n8個のR83により置換されたベンゼンである。
【0361】
R83は、それぞれ独立して、ハロゲン、又はハロゲンにより置換されていてもよいC1-6のアルキル基であり得る。
【0362】
n8は、好ましくは1~3の整数である。
【0363】
一の態様において、上記溶媒は、R84R85R86Si-(O-SiR87R88)m8-R89である。
【0364】
一の態様において、上記溶媒は、(OSiR87R88)m9である。(OSiR87R88)m9は、複数のOSiR87R88単位が環状に結合することにより形成される環状シロキサンである。
【0365】
R84~R89は、それぞれ独立して、水素原子、又はC1-6のアルキル基、好ましくはC1-6のアルキル基、より好ましくはC1-3のアルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0366】
m8は、好ましくは1~6の整数、より好ましくは1~5の整数であり、さらに好ましくは1~2であ。
【0367】
m9は、好ましくは3~6の整数、より好ましくは3~5の整数である。
【0368】
一の態様において、上記溶媒としては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、ミネラルスピリット等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、ソルベントナフサ等の芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸セロソルブ、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、酢酸カルビトール、ジエチルオキサレート、ピルビン酸エチル、エチル-2-ヒドロキシブチレート、エチルアセトアセテート、酢酸アミル、乳酸メチル、乳酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、2-ヒドロキシイソ酪酸エチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2-ヘキサノン、シクロヘキサノン、メチルアミノケトン、2-ヘプタノン等のケトン類;エチルセルソルブ、メチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノアルキルエーテル等のグリコールエーテル類;メタノール、エタノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、sec-ブタノール、3-ペンタノール、オクチルアルコール、3-メチル-3-メトキシブタノール、tert-アミルアルコール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン等の環状エーテル類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類;メチルセロソルブ、セロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテルアルコール類;ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート;ポリフルオロ芳香族炭化水素(例えば、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン);ポリフルオロ脂肪族炭化水素(例えば、C6F13CH2CH3(例えば、旭硝子株式会社製のアサヒクリン(登録商標)AC-6000)、C6F13H(例えば、旭硝子株式会社製のアサヒクリン(登録商標)AC-2000)、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン(例えば、日本ゼオン株式会社製のゼオローラ(登録商標)H);1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタン、1,2-ジクロロ-1,1,2,2-テトラフルオロエタン、1,1-ジクロロ-1,2,2,3,3-ペンタフルオロプロパン(HCFC225)、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン等の含フッ素炭化水素類;CF3CH2OH、CF3CF2CH2OH、(CF3)2CHOH等の含フッ素アルコール類;ヒドロフルオロエーテル(HFE)(例えば、パーフルオロプロピルメチルエーテル(C3F7OCH3)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標)7000)、パーフルオロブチルメチルエーテル(C4F9OCH3)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標)7100)、パーフルオロブチルエチルエーテル(C4F9OC2H5)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標)7200)、パーフルオロヘキシルメチルエーテル(C2F5CF(OCH3)C3F7)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標)7300)などのアルキルパーフルオロアルキルエーテル(パーフルオロアルキル基及びアルキル基は直鎖又は分岐状であってよい)、あるいはCF3CH2OCF2CHF2(例えば、旭硝子株式会社製のアサヒクリン(登録商標)AE-3000))、ハイドロフルオロオレフィン類;CF3CH=CHCl(例えば、セントラル硝子株式会社製のCELEFIN(登録商標)1233Z)、CHF2CF=CHCl(例えば、旭硝子株式会社製のAMOLEA(登録商標)AS-300)、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル類;ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサエチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、オクタメチルシクロペンタシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン、テトラデカメチルヘキサシロキサン等のシロキサン類;ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。あるいはこれらの2種以上の混合溶媒等が挙げられる。なかでも、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、エステル類、グリコールエーテル類、アルコール類、エーテルアルコール類、シロキサン類が好ましい。例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、ミネラルスピリット、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸セロソルブ、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、酢酸カルビトール、ジエチルオキサレート、ピルビン酸エチル、エチル-2-ヒドロキシブチレート、エチルアセトアセテート、酢酸アミル、乳酸メチル、乳酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、2-ヒドロキシイソ酪酸エチルプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、メタノール、エタノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、sec-ブタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサエチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン、テトラデカメチルヘキサシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、オクタメチルシクロペンタシロキサンが好ましい。
【0369】
シリコーンオイルとしては、特に限定されるものではないが、例えば、以下の一般式(3a):
R1a-(SiR3a
2-O)a1-SiR3a
2-R1a ・・・(3a)
[式中:
R1aは、それぞれ独立して、水素原子又は炭化水素基であり、
R3aは、それぞれ独立して、水素原子又は炭化水素基であり、
a1は、2~3000である。]
で表される化合物が挙げられる。
【0370】
上記R3aは、それぞれ独立して、水素原子又は炭化水素基である。かかる炭化水素基は、置換されていてもよい。
【0371】
R3aは、それぞれ独立して、好ましくは非置換炭化水素基、又はハロゲン原子により置換されている炭化水素基である。かかるハロゲン原子は、好ましくはフッ素原子である。
【0372】
R3aは、それぞれ独立して、好ましくはハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキル基又はアリール基、より好ましくはC1-6アルキル基又はアリール基である。
【0373】
上記C1-6アルキル基は、直鎖であっても、分岐鎖であってもよいが、好ましくは直鎖
である。C1-6アルキル基は、好ましくはC1-3アルキル基、より好ましくはメチル基である。
【0374】
上記アリール基は、好ましくはフェニル基である。
【0375】
一の態様において、R3aは、それぞれ独立して、C1-6アルキル基、好ましくはC1-3アルキル基、より好ましくはメチル基である。
【0376】
別の態様において、R3aは、フェニル基である。
【0377】
別の態様において、R3aは、メチル基又はフェニル基、好ましくはメチル基である。
【0378】
上記R1aは、それぞれ独立して、水素原子又は炭化水素基であり、上記R3aと同意義である。
【0379】
R1aは、それぞれ独立して、好ましくはハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキル基又はアリール基、より好ましくはC1-6アルキル基又はアリール基である。
【0380】
一の態様において、R1aは、それぞれ独立して、C1-6アルキル基、好ましくはC1-3アルキル基、より好ましくはメチル基である。
【0381】
別の態様において、R1aは、フェニル基である。
【0382】
別の態様において、R1aは、メチル基又はフェニル基、好ましくはメチル基である。
【0383】
上記a1は、2~1500である。a1は、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは15以上、例えば30以上、又は50以上であり得る。a1は、好ましくは1000以下、より好ましくは500以下、さらに好ましくは200以下、さらにより好ましくは150以下、例えば100以下、又は80以下であり得る。
【0384】
a1は、好ましくは5~1000、より好ましくは10~500、さらに好ましくは15~200、さらにより好ましくは15~150であり得る。
【0385】
別のシリコーンオイルとしては、下記(3b):
R1a-RSO2-R3a ・・・(3b)
[式中:
R1aは、それぞれ独立して、炭化水素基であり、
R3aは、それぞれ独立して、炭化水素基であり、
RSO2は、2価のシロキサン含有基であり、式(1)のXDにおける2価のシロキサン含有基と同意義である。]
で表される化合物が挙げられる。
【0386】
上記シリコーンオイルは、500~1000000、好ましくは1000~100000の平均分子量を有していてよい。シリコーンオイルの分子量は、GPCを用いて測定し得る。
【0387】
上記シリコーンオイルとしては、例えば-(SiR3a
2-O)a1―のa1が30以下の直鎖状又は環状のシリコーンオイルを用い得ることができる。直鎖状のシリコーンオイルは、いわゆるストレートシリコーンオイル及び変性シリコーンオイルであってよい。ストレートシリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルが挙げられる。変性シリコーンオイルとしては、ストレートシリコーンオイルを、アルキル、アラルキル、ポリエーテル、高級脂肪酸エステル、フルオロアルキル、アミノ、エポキシ、カルボキシル、アルコールなどにより変性したものが挙げられる。環状のシリコーンオイルは、例えば環状ジメチルシロキサンオイルなどが挙げられる。
【0388】
上記シリコーンオイルは、本開示の組成物に対して、例えば0~50質量%、好ましくは0.001~30質量%、より好ましくは0.1~5質量%含まれ得る。
【0389】
本開示の組成物中、かかるシリコーンオイルは、上記本開示の化合物の合計100質量部(2種以上の場合にはこれらの合計、以下も同様)に対して、例えば0~300質量部、好ましくは0~100質量部、より好ましくは0~50質量部、更に好ましくは0~10質量部で含まれ得る。
【0390】
シリコーンオイルは、表面処理層の表面滑り性を向上させるのに寄与する。
【0391】
上記アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、sec-ブタノール、3-ペンタノール、オクチルアルコール、3-メチル-3-メトキシブタノール、tert-アミルアルコールが挙げられる。これらのアルコール類を組成物に添加することにより、組成物の安定性を向上させる。
【0392】
上記触媒としては、酸(例えば酢酸、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、スルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸等)、塩基(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、トリエチルアミン、ジエチルアミン等)、遷移金属(例えばTi、Ni、Sn、Zr、Al、B、Si、Ta、Nb、Mo、W、Cr、Hf、V等)、分子構造内に非共有電子対を有する含硫黄化合物、または含窒素化合物(例えばスルホキシド化合物、脂肪族アミン化合物、芳香族アミン化合物、リン酸アミド化合物、アミド化合物、尿素化合物)等が挙げられる。
【0393】
上記脂肪族アミン化合物としては、例えば、ジエチルアミン、トリエチルアミン等を挙げることができる。上記芳香族アミン化合物としては、例えば、アニリン、ピリジン等を挙げることができる。
【0394】
好ましい態様において、上記遷移金属は、M-R(式中、Mは、遷移金属原子であり、Rは加水分解性基である。)で表される遷移金属化合物として含まれる。遷移金属化合物を、遷移金属と加水分解性基とが結合した化合物とすることにより、より効率的に遷移金属原子を表面処理層に含ませることができ、表面処理層の摩擦耐久性および耐薬品性をさらに向上させることができる。
【0395】
上記加水分解性基とは、上記化合物に関する加水分解性基と同様に、加水分解反応を受け得る基を意味し、すなわち、加水分解反応により、遷移金属原子から脱離し得る基を意味する。加水分解性基の例としては、-ORm、-OCORm、-O-N=CRm
2、-NRm
2、-NHRm、-NCO、ハロゲン(これら式中、Rmは、置換または非置換のC1-4アルキル基を示す)などが挙げられる。
【0396】
好ましい態様において、上記加水分解性基とは、-ORmであり、好ましくはメトキシまたはエトキシである。加水分解性基としてアルコキシ基を用いることにより、より効率的に遷移金属原子を表面処理層に含ませることができ、表面処理層の摩擦耐久性および耐薬品性をさらに向上させることができる。
【0397】
一の態様において、上記加水分解性基は、上記した化合物に含まれる加水分解性基と同じであってもよい。化合物と遷移金属化合物における加水分解性基を同じ基とすることにより、かかる加水分解性基が相互に交換された場合であっても、その影響を小さくすることができる。
【0398】
別の態様において、上記加水分解性基は、上記した化合物に含まれる加水分解性基と異なっていてもよい。化合物と遷移金属化合物における加水分解性基を異なるものとすることにより、加水分解の反応性を制御することができる。
【0399】
一の態様において、上記加水分解性基と、上記化合物に含まれる加水分解性基は、組成物中において、相互に入れ替わっていてもよい。
【0400】
好ましい態様において、上記遷移金属化合物は、Ta(ORm)5(式中、Rmは置換または非置換のC1-4アルキル基である。)であり、好ましくはTa(OCH2CH3)5、又はSi(ORm)1-m1Rm’
m1(式中、Rmは置換または非置換のC1-4アルキル基であり、Rm’は、C1-4アルキル基であり、m1は、0又は1である。)、好ましくはテトラエトキシシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、又はジメチルジメトキシシランであり得る。
【0401】
上記触媒は、組成物全体に対して、例えば、0.0002質量%以上含まれ得る。上記触媒は、組成物全体に対して、0.02質量%以上含まれることが好ましく、0.04質量%以上含まれることがより好ましい。上記触媒は、組成物全体に対して、例えば、10質量%以下含まれてもよく、特に1質量%以下含まれる。本開示の組成物は、上記触媒が、上記のような濃度含むことによって、より耐久性の良好な表面処理層の形成に寄与し得る。
【0402】
上記触媒の含有量は、本開示の化合物に対して0~10質量%が好ましく、0~5質量%がより好ましく、0~1質量%が特に好ましい。
【0403】
触媒は、本開示の化合物の加水分解及び脱水縮合を促進し、本開示の組成物により形成される層の形成を促進する。
【0404】
他の成分としては、上記以外に、例えば、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン等も挙げられる。
【0405】
本開示の組成物は、上記した成分に加え、不純物として、例えばPt、Rh、Ru、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン、トリフェニルホスフィン、NaCl、KCl、シランの縮合物などを微量含み得る。
【0406】
一の態様において、本開示の組成物は、乾燥被覆法、好ましくは真空蒸着用である。
【0407】
一の態様において、本開示の組成物は、湿潤被覆法、好ましくは浸漬コーティング用である。
【0408】
本開示の組成物は、多孔質物質、例えば多孔質のセラミック材料、金属繊維、例えばスチールウールを綿状に固めたものに含浸させて、ペレットとすることができる。当該ペレットは、例えば、真空蒸着に用いることができる。
【0409】
本開示の組成物は、好ましくは表面処理剤として、又は表面処理剤の成分として用いられる。
【0410】
以下、本開示の物品について説明する。
【0411】
本開示の物品は、基材と、該基材表面に本開示の表面処理剤より形成された層(表面処理層)とを含む。
【0412】
本開示において使用可能な基材は、例えば、ガラス、樹脂(天然又は合成樹脂、例えば一般的なプラスチック材料であってよい)、金属、セラミックス、半導体(シリコン、ゲルマニウム等)、繊維(織物、不織布等)、毛皮、皮革、木材、陶磁器、石材等、建築部材等、衛生用品、任意の適切な材料で構成され得る。
【0413】
例えば、製造すべき物品が光学部材である場合、基材の表面を構成する材料は、光学部材用材料、例えばガラス又は透明プラスチックなどであってよい。また、製造すべき物品が光学部材である場合、基材の表面(最外層)に何らかの層(又は膜)、例えばハードコート層や反射防止層などが形成されていてもよい。反射防止層には、単層反射防止層及び多層反射防止層のいずれを使用してもよい。反射防止層に使用可能な無機物の例としては、SiO2、SiO、ZrO2、TiO2、TiO、Ti2O3、Ti2O5、Al2O3、Ta2O5、Ta3O5,Nb2O5、HfO2、Si3N4、CeO2、MgO、Y2O3、SnO2、MgF2、WO3などが挙げられる。これらの無機物は、単独で、又はこれらの2種以上を組み合わせて(例えば混合物として)使用してもよい。多層反射防止層とする場合、その最外層にはSiO2及び/又はSiOを用いることが好ましい。製造すべき物品が、タッチパネル用の光学ガラス部品である場合、透明電極、例えば酸化インジウムスズ(ITO)や酸化インジウム亜鉛などを用いた薄膜を、基材(ガラス)の表面の一部に有していてもよい。また、基材は、その具体的仕様等に応じて、絶縁層、粘着層、保護層、装飾枠層(I-CON)、霧化膜層、ハードコーティング膜層、偏光フィルム、相位差フィルム、及び液晶表示モジュールなどを有していてもよい。
【0414】
上記基材の形状は、特に限定されず、例えば、板状、フィルム、その他の形態であってよい。また、表面処理層を形成すべき基材の表面領域は、基材表面の少なくとも一部であればよく、製造すべき物品の用途及び具体的仕様等に応じて適宜決定され得る。
【0415】
一の態様において、かかる基材としては、少なくともその表面部分が、水酸基を元々有する材料から成るものであってよい。かかる材料としては、ガラスが挙げられ、また、表面に自然酸化膜又は熱酸化膜が形成される金属(特に卑金属)、セラミックス、半導体等が挙げられる。あるいは、樹脂等のように、水酸基を有していても十分でない場合や、水酸基を元々有していない場合には、基材に何らかの前処理を施すことにより、基材の表面に水酸基を導入したり、増加させたりすることができる。かかる前処理の例としては、プラズマ処理(例えばコロナ放電)や、イオンビーム照射が挙げられる。プラズマ処理は、基材表面に水酸基を導入又は増加させ得ると共に、基材表面を清浄化する(異物等を除去する)ためにも好適に利用され得る。また、かかる前処理の別の例としては、炭素-炭素不飽和結合基を有する界面吸着剤をLB法(ラングミュア-ブロジェット法)や化学吸着法等によって、基材表面に予め単分子膜の形態で形成し、その後、酸素や窒素等を含む雰囲気下にて不飽和結合を開裂する方法が挙げられる。
【0416】
別の態様において、かかる基材としては、少なくともその表面部分が、別の反応性基、例えばSi-H基を1つ以上有するシリコーン化合物や、アルコキシシランを含む材料から成るものであってもよい。
【0417】
好ましい態様において、上記基材はガラスである。かかるガラスとしては、サファイアガラス、ソーダライムガラス、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス、クリスタルガラス、石英ガラス、結晶化ガラスが好ましく、化学強化したソーダライムガラス、化学強化したアルカリアルミノケイ酸塩ガラス、及び化学結合したホウ珪酸ガラスが特に好ましい。
【0418】
一の態様において、本開示の物品は、ガラスと表面処理層との間に、酸化ケイ素を含む中間層を含んでいてもよい。かかる中間層を設けることにより、ガラスと表面処理層との密着性が向上し、耐久性が向上する。
【0419】
好ましい態様において、上記中間層は、酸化ケイ素に加え、アルカリ金属を含んでいてもよい。
【0420】
上記アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。上記アルカリ金属は、好ましくはナトリウムである。
【0421】
中間層の厚さは、特に限定されないが、1~200nmが好ましく、1~20nmが特に好ましい。中間層の厚さを上記範囲の下限値以上とすることにより、中間層による接着性の向上効果がより大きくなる。
【0422】
中間層におけるアルカリ金属原子濃度は各種表面分析装置、たとえばTOF-SIMS、XPS、XRFなどで測定できる。
【0423】
中間層全体の全原子に占めるアルカリ金属原子の割合は、イオンスパッタリングによるXPS深さ方向分析で得ることができ、XPSによる測定とXPS装置に内蔵されたイオン銃を用いたイオンスパッタリングによる表面のエッチングとを交互に繰り返すことによって行われる。
【0424】
中間層において、表面処理層と接する面からの深さが1nm以下の領域におけるアルカリ金属の濃度の平均値は、イオンスパッタリングによるTOF-SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析法)深さ方向分析により、アルカリ金属原子の濃度の深さ方向プロファイルを得た後、該プロファイルにおけるアルカリ金属原子濃度の平均値を算出することによって求められる。イオンスパッタリングによるTOF-SIMS深さ方向分析は、TOF-SIMSによる測定とTOF-SIMS装置に内蔵されたイオン銃を用いたイオンスパッタリングによる表面のエッチングとを交互に繰り返すことによって行われる。
【0425】
本開示の物品は、上記基材の表面に、上記の本開示の表面処理剤の層を形成し、この層を必要に応じて後処理し、これにより、本開示の表面処理剤から層を形成することにより製造することができる。
【0426】
本開示の表面処理剤の層形成は、上記表面処理剤を基材の表面に対して、該表面を被覆するように適用することによって実施できる。被覆方法は、特に限定されない。例えば、湿潤被覆法及び乾燥被覆法を使用できる。
【0427】
湿潤被覆法の例としては、浸漬コーティング、スピンコーティング、フローコーティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、ワイプコーティング、スキージーコート法、ダイコート、インクジェット、キャスト法、ラングミュア・ブロジェット法及び類似の方法が挙げられる。
【0428】
乾燥被覆法の例としては、蒸着(通常、真空蒸着)、スパッタリング、CVD及び類似の方法が挙げられる。蒸着法(通常、真空蒸着法)の具体例としては、抵抗加熱、電子ビーム、マイクロ波等を用いた高周波加熱、イオンビーム及び類似の方法が挙げられる。CVD方法の具体例としては、プラズマ-CVD、光学CVD、熱CVD及び類似の方法が挙げられる。
【0429】
更に、常圧プラズマ法による被覆も可能である。
【0430】
湿潤被覆法を使用する場合、本開示の表面処理剤は、溶媒で希釈されてから基材表面に適用され得る。本開示の組成物の安定性及び溶媒の揮発性の観点から、次の溶媒が好ましく使用される:ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、ミネラルスピリット等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、ソルベントナフサ等の芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸セロソルブ、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、酢酸カルビトール、ジエチルオキサレート、ピルビン酸エチル、エチル-2-ヒドロキシブチレート、エチルアセトアセテート、酢酸アミル、乳酸メチル、乳酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、2-ヒドロキシイソ酪酸エチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2-ヘキサノン、シクロヘキサノン、メチルアミノケトン、2-ヘプタノン等のケトン類;エチルセルソルブ、メチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノアルキルエーテル等のグリコールエーテル類;メタノール、エタノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、sec-ブタノール、3-ペンタノール、オクチルアルコール、3-メチル-3-メトキシブタノール、tert-アミルアルコール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン等の環状エーテル類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類;メチルセロソルブ、セロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテルアルコール類;ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート;ポリフルオロ芳香族炭化水素(例えば、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン);ポリフルオロ脂肪族炭化水素(例えば、C6F13CH2CH3(例えば、旭硝子株式会社製のアサヒクリン(登録商標)AC-6000)、C6F13H(例えば、旭硝子株式会社製のアサヒクリン(登録商標)AC-2000)、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン(例えば、日本ゼオン株式会社製のゼオローラ(登録商標)H);1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタン、1,2-ジクロロ-1,1,2,2-テトラフルオロエタン、1,1-ジクロロ-1,2,2,3,3-ペンタフルオロプロパン(HCFC225)、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン等の含フッ素炭化水素類;CF3CH2OH、CF3CF2CH2OH、(CF3)2CHOH等の含フッ素アルコール類;ヒドロフルオロエーテル(HFE)(例えば、パーフルオロプロピルメチルエーテル(C3F7OCH3)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標)7000)、パーフルオロブチルメチルエーテル(C4F9OCH3)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標)7100)、パーフルオロブチルエチルエーテル(C4F9OC2H5)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標)7200)、パーフルオロヘキシルメチルエーテル(C2F5CF(OCH3)C3F7)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標)7300)などのアルキルパーフルオロアルキルエーテル(パーフルオロアルキル基及びアルキル基は直鎖又は分岐状であってよい)、あるいはCF3CH2OCF2CHF2(例えば、旭硝子株式会社製のアサヒクリン(登録商標)AE-3000))、ハイドロフルオロオレフィン類;CF3CH=CHCl(例えば、セントラル硝子株式会社製のCELEFIN(登録商標)1233Z)、CHF2CF=CHCl(例えば、旭硝子株式会社製のAMOLEA(登録商標)AS-300)、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル類;ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサエチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、オクタメチルシクロペンタシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン、テトラデカメチルヘキサシロキサン等のシロキサン類;ジメチルスルホキシドなど。あるいはこれらの2種以上の混合溶媒等が挙げられる。なかでも、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、エステル類、グリコールエーテル類、アルコール類、エーテルアルコール類、シロキサン類が好ましい。例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、ミネラルスピリット、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸セロソルブ、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、酢酸カルビトール、ジエチルオキサレート、ピルビン酸エチル、エチル-2-ヒドロキシブチレート、エチルアセトアセテート、酢酸アミル、乳酸メチル、乳酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、2-ヒドロキシイソ酪酸エチルプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、メタノール、エタノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、sec-ブタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサエチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン、テトラデカメチルヘキサシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、オクタメチルシクロペンタシロキサンが好ましい。
【0431】
一の態様において、湿潤被覆法を使用する場合の溶媒としては、例えば、R90-OHで表される化合物を用いることができる。R90は1価の有機基であり、好ましくはC1-20アルキル基又はC3-20アルキレン基であり、これらの基は1以上の置換基により置換されていてもよい。置換基としては、例えば、水酸基、-OR91(ここで、R91はC1-10アルキル基、好ましくはC1-3アルキル基、例えばメチル基)を挙げることができる。
【0432】
乾燥被覆法を使用する場合、本開示の表面処理剤は、そのまま乾燥被覆法に付してもよく、又は、上記した溶媒で希釈してから乾燥被覆法に付してもよい。
【0433】
表面処理剤の層形成は、層中で本開示の表面処理剤が、加水分解及び脱水縮合のための触媒と共に存在するように実施することが好ましい。簡便には、湿潤被覆法による場合、本開示の表面処理剤を溶媒で希釈した後、基材表面に適用する直前に、本開示の表面処理剤の希釈液に触媒を添加してよい。乾燥被覆法による場合には、触媒添加した本開示の表面処理剤をそのまま蒸着(通常、真空蒸着)処理するか、あるいは鉄や銅などの金属多孔体に、触媒添加した本開示の表面処理剤を含浸させたペレット状物質を用いて蒸着(通常、真空蒸着)処理をしてもよい。
【0434】
触媒には、任意の適切な酸又は塩基、遷移金属(例えばTi、Ni、Sn、Zr、Al、B等)、分子構造内に非共有電子対を有する含硫黄化合物、または含窒素化合物(例えばスルホキシド化合物、脂肪族アミン化合物、芳香族アミン化合物、リン酸アミド化合物、アミド化合物、尿素化合物)等を使用できる。酸触媒としては、例えば、酢酸、ギ酸、トリフルオロ酢酸、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、スルホン酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸などを使用できる。また、塩基触媒としては、例えばアンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン等の有機アミン類などを使用できる。遷移金属、脂肪族アミン化合物、及び芳香族アミン化合物は、上記と同様のものが挙げられる。
【0435】
本開示の物品に含まれる表面処理層は、高い摩耗耐久性を有し得る。また、上記表面処理層は、高い摩耗耐久性に加えて、使用する表面処理剤の組成にもよるが、撥水性、撥油性、防汚性(例えば指紋等の汚れの付着を防止する)、防水性(電子部品等への水の浸入を防止する)、表面滑り性(又は潤滑性、例えば指紋等の汚れの拭き取り性や、指に対する優れた触感)、耐薬品性などを有し得、機能性薄膜として好適に利用され得る。
【0436】
従って、本開示はさらに、上記表面処理層を最外層に有する光学材料にも関する。
【0437】
光学材料としては、後記に例示するようなディスプレイ等に関する光学材料のほか、多種多様な光学材料が好ましく挙げられる:例えば、陰極線管(CRT;例えば、パソコンモニター)、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機薄膜ELドットマトリクスディスプレイ、背面投写型ディスプレイ、蛍光表示管(VFD)、電界放出ディスプレイ(FED;Field Emission Display)などのディスプレイ又はそれらのディスプレイの保護板、又はそれらの表面に反射防止膜処理を施したもの。
【0438】
本開示の物品は、特に限定されるものではないが、光学部材であり得る。光学部材の例には、次のものが挙げられる:眼鏡などのレンズ;PDP、LCDなどのディスプレイの前面保護板、反射防止板、偏光板、アンチグレア板;携帯電話、携帯情報端末などの機器のタッチパネルシート;ブルーレイ(Blu-ray(登録商標))ディスク、DVDディスク、CD-R、MOなどの光ディスクのディスク面;光ファイバー;時計の表示面など。
【0439】
また、本開示の物品は、医療機器又は医療材料であってもよい。また、本開示によって得られる層を有する物品は、自動車内外装部材であってもよい。外装材の例には、次のものが挙げられる:ウィンドウ、ライトカバー、車外カメラカバー。内装材の例には、次のものが挙げられる:インパネカバー、ナビゲーションシステムタッチパネル、加飾内装材。
【0440】
上記層の厚さは、特に限定されない。光学部材の場合、光学性能、摩耗耐久性及び防汚性の点から、上記層の厚さは、例えば1~50nm、好ましくは1~30nm、より好ましくは1~15nmの範囲であり得る。
【0441】
表面処理層の原子組成および構成原子の比率を測定するためのX線光電子分光分析法を行う装置としては、XPS,アルバック・ファイ社製 PHI5000VersaProbeIIを使用することができる。XPS分析の測定条件としては、X線源に単色化AlKα線を25W、光電子検出面積を1400μm×300μm,光電子検出角を20度~90度の範囲(例えば20度、45度、90度)、パスエネルギーを23.5eVなどとし、スパッタリングにはガスクラスターイオンビーム、Arイオンなどを用いることが可能である。上記装置、測定条件により、C1s、O1s、Si2pのピーク面積を観測し、炭素、酸素、ケイ素の原子比を算出することにより表面処理層および中間層の組成を求めることができる。
【0442】
また、深さ方向の分析を実施することも可能である。XPS分析の測定条件としては、X線源に単色化AlKα線を25Wで用い、光電子検出面積を1400μm×300μm,光電子検出角を、20度~90度の範囲(例えば20度、45度、90度)、パスエネルギーを23.5eVなどとし、スパッタイオンにはArイオン、ガスクラスターイオン、C60イオンなどを用いることができる。スパッタリングによって1~100nmエッチングし、それぞれのエッチング後の深さにおいける塗膜中の組成を得ることもできる。
【0443】
上記のXPS分析の光電子検出角を調整することにより、検出深さを適宜調整することができる。例えば、20度に近い浅い角度とすることにより、検出深さを3nm程度とすることができ、一方、90度に近い深い角度にすることにより、検出深さを10数nm程度とすることができる。
【0444】
上記した酸化ケイ素を含む中間層は、酸化ケイ素前駆体を基材の表面に適用することにより形成することができる。中間層がアルカリ金属を含む場合、上記中間層は、酸化ケイ素前駆体とアルカリ金属源を含む組成物を基材の表面に適用することにより形成することができる。
【0445】
上記酸化ケイ素前駆体としては、ケイ酸、ケイ酸の部分縮合物、アルカリ金属ケイ酸塩、ケイ素原子に結合した加水分解性基を有するシラン化合物、該シラン化合物の部分加水分解縮合物等が挙げられる。ケイ酸やその部分縮合物は脱水縮合させて酸化ケイ素とすることができ、アルカリ金属ケイ酸塩は酸や陽イオン交換樹脂によりケイ酸やその部分縮合物とし、生成したケイ酸やその部分縮合物を脱水縮合させて酸化ケイ素とすることができる。ケイ素原子に結合した加水分解性基を有するシラン化合物における加水分解性基としては、アルコキシ基、塩素原子等が挙げられる。該シラン化合物の加水分解性基を加水分解させて水酸基とし、生成するシラノール化合物を脱水縮合させて酸化ケイ素とすることができる。ケイ素原子に結合した加水分解性基を有するシラン化合物としては、テトラアルコキシシラン、アルキルトリアルコキシシラン等のアルコキシシランやテトラクロロシラン等が挙げられる。
【0446】
上記アルカリ金属源としては、アルカリ金属水酸化物、水溶性アルカリ金属塩等が挙げられる。水溶性アルカリ金属塩としては、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ金属塩酸塩、アルカリ金属硝酸塩等が挙げられる。アルカリ金属源としては、アルカリ金属水酸化物およびアルカリ金属炭酸塩が好ましい。
【0447】
尚、アルカリ金属ケイ酸塩は酸化ケイ素前駆体かつアルカリ金属源として用いることができる。アルカリ金属ケイ酸塩はケイ酸を経て酸化ケイ素とすることができるが、その際に少量のアルカリ金属が生成する酸化ケイ素中に残留し得る。従って、残留するアルカリ金属の量を調整して、所定量のアルカリ金属原子を含む酸化ケイ素を得ることができる。
【0448】
上記中間層の厚さは、特に限定されないが、例えば、1~50nm、好ましくは1~30nm、より好ましくは2~15nm、さらに好ましくは3~10nmの範囲である。
【0449】
以上、本開示の化合物、組成物、及び物品について詳述した。なお、本開示の化合物、組成物、及び物品などは、上記で例示したものに限定されない。
【実施例0450】
以下、本開示について、実施例において説明するが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
【0451】
(合成例1)
マグネシウム(0.448g)、ヨウ素(微少量)、テトラヒドロフラン(15mL)、及び18-ブロモ-1-オクタデセン(5.0g)を、それぞれ加えた後、60℃で2時間攪拌した。別のフラスコ容器にヘキサフルオロベンゼン(5.64g)、及びテトラヒドロフラン(15mL)を加え、60℃で攪拌し、上記で調製した溶液を滴下した。60℃で48時間反応させた後、精製を行うことにより、末端にペンタフルオロフェニル基を有する下記の化合物(1)C6F5(CH2)16CH=CH2(3.27g)を得た。
【0452】
1H NMR(CDCl3,400MHz)δ[ppm]:0.827-0.919(t),1.256-1.406(m),2.013-2.066(q),2.660-2.697(t),4.911-5.020(m),5.765-5.866(m)
【0453】
(合成例2)
合成例1で得られた化合物(1)C6F5(CH2)16CH=CH2(1.5g)、トルエン(15.5g)、ピリジン(0.163g)、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンのPt錯体を2%含むキシレン溶液(0.82mL)を、それぞれ加えた後、トリメトキシシラン(1.4mL)を仕込み、室温で終夜撹拌した。その後、精製を行うことにより、末端にトリメトキシシリル基を有する下記の化合物(2)C6F5(CH2)18Si(OCH3)3(2.29g)を得た。
【0454】
1H NMR(CDCl3,400MHz)δ[ppm]:0.010-0.132(m),0.606-0.657(m),0.852-0.886(m),1.242-1.417(m),3.535-3.613(m)
【0455】
(合成例3)
12-アミノラウリン酸(10.26g)、トルエン(139mL)、メタノール(93mL)を加え、65℃で攪拌しながら、トリメチルシリルジアゾメタン(0.6mol/Lヘキサン溶液,93mL)を滴下した。65℃で1時間攪拌し、濃縮した後、精製を行うことにより下記の化合物(3)H2N(CH2)11COOMe(11.03g)を得た。
【0456】
1H NMR(CDCl3,400MHz)δ[ppm]:1.204-1.263(m),1.379-1.432(m),1.565-1.638(m),1.268-2.306(t),2.629-2.678(t),3.651(s)
【0457】
(合成例4)
合成例3で得られた化合物(3)(10.17g)、ペンタフルオロ安息香酸(12.17g)、ジクロロメタン(218mL)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(12.5g)、及び4-ジメチルアミノピリジン(0.27g)を、それぞれ加えた後、40℃で6時間攪拌させた。その後、精製を行うことにより、下記の化合物(4)C6F5CONH(CH2)11COOCH3(15.52g)を得た。
【0458】
1H NMR(CDCl3,400MHz)δ[ppm]:1.194-1.403(m),1.542-1.595(m),2.254-2.292(t),3.397-3.447(q),3.653(s),6.13(bs)
【0459】
(合成例5)
合成例4で得られた化合物(4)(2.20g)、1,2-ジクロロエタン(28mL)、及び水酸化トリメチルスズ(2.89g)、それぞれ加えた後、80℃で48時間攪拌させた。その後、精製を行うことにより、下記の化合物(5)C6F5CONH(CH2)11COOH(1.858g)を得た。
【0460】
1H NMR(CDCl3,400MHz)δ[ppm]:1.250-1.425(m),1.569-1.664(m),2.325-2.376(t),3.434-3.484(q),5.96(bs)
【0461】
(合成例6)
合成例5で得られた化合物(5)(0.874g)、ジクロロメタン(22mL)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(0.942g)、4-ジメチルアミノピリジン(0.023g)、及びジアリルアミン(0.54mL)、それぞれ加えた後、室温で終夜攪拌させた。その後、精製を行うことにより、下記の化合物(6)C6F5CONH(CH2)11CON(CH2CH=CH2)(20.74g)を得た。
【0462】
1H NMR(CDCl3,400MHz)δ[ppm]:1.177-1.315(m),1.552-1.605(m),2.244-2.282(t),3.400-3.449(q),3.841-3.932(m),5.059-5.203(m),5.656-5.790(m),6.560(bs)
【0463】
(合成例7)
合成例6で得られた化合物(6)(0.874g)、トルエン(8.0mL)、ピリジン(0.0703g)、及び1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンのPt錯体を2%含むキシレン溶液(0.35mL)を、それぞれ加えた後、トリメトキシシラン(0.8mL)を仕込み、室温で終夜撹拌した。その後、精製を行うことにより、末端にトリメトキシシリル基を有する下記の化合物(7)C6F5CONH(CH2)11CON(CH2CH2CH2Si(OCH3)3)2(1.22g)を得た。
【0464】
1H NMR(CDCl3,400MHz)δ[ppm]:0.546-0.585(m),0.964-1.113(m),1.629-2.083(m),2.700-2.767(m),3.946-4.016(m)
【0465】
(比較化合物)
下記化合物(A)を用いた。
・化合物(A):東京化成工業製オクタデシルトリメトキシシラン
【0466】
(実施例1及び2、比較例1)
<Na入り中間層形成材料>
水酸化ナトリウム(富士フィルム和光純薬株式会社製)の2.2gを、蒸留水24gに溶解して、8.4質量%の水酸化ナトリウム水溶液を得た。この8.4質量%の水酸化ナトリウム水溶液の24gとMSゲル(M.S.GEL D-100-60A(AGCエスアイテック社製))の20gとを混合して、水酸化ナトリウム水溶液をMSゲル中に吸収させた。水酸化ナトリウム水溶液を吸収したMSゲルを25℃で8時間乾燥した後、錠剤成形機(4MPaで1分)で成形し、1,000℃で1時間焼成して成形体1(ペレット)を得た。
【0467】
<表面処理層の形成>
下記表1に示すように溶媒と化合物とを組み合わせて、表面処理剤を合成した。化合物濃度は20wt%とした。以下の表において、EtOHはエタノールを示す。
【表1】
【0468】
化学強化ガラス(コーニング社製、ゴリラガラス、厚さ0.7mm)上に、表面処理剤を真空蒸着した。具体的には、真空蒸着装置内のモリブデン製ボートに表面処理剤0.1gを充填し、真空蒸着装置内を圧力3.0×10-3Pa以下に排気した。その後、7nmの厚さの二酸化ケイ素膜を形成し、続いて抵抗加熱方式によりボートを加熱することで表面処理層を形成した。その後、オーブンで150℃、30分の加熱処理を行うことにより、表面処理層を得た。
【0469】
(実施例3及び4、比較例2)
下記表2で示すように溶媒と化合物とを組み合わせて、表面処理剤を合成した。化合物濃度は20wt%とした。
【0470】
【0471】
化学強化ガラス(コーニング社製、ゴリラガラス、厚さ0.7mm)上に、表面処理剤を真空蒸着した。具体的には、真空蒸着装置内のモリブデン製ボートに表面処理剤0.1gを充填し、真空蒸着装置内を圧力3.0×10-3Pa以下に排気した。その後、電子線蒸着方式により蒸着させて、7nmの厚さの層を形成し、続いて抵抗加熱方式によりボートを加熱した。その後、オーブンで150℃、30分の加熱処理を行うことにより、表面処理層を得た。
【0472】
<評価>
[指紋ふき取り性評価]
上記で形成した表面処理層について、下記の手順で指紋ふき取り性を評価した。
指紋ふき取り性の 指標にはヘーズ(%)を用い、ヘーズが低いほど指紋が視認しにくいことを示す。なお、ヘーズ測定には、日本電色工業株式会社製 ヘーズメーター NDH7000SPを使用した。測定領域(Φ20mm)内に、人工指紋スタンプ領域がすべて入るように基材を設置し、3回測定した平均値を用いた。
(初期評価)
表面処理層の形成後、表面上の余剰分をエタノールで拭き上げたのちにヘーズを測定した。これをTiとした。
(拭き取り前の評価)
初期評価後の表面処理層に、人工指紋液をスタンプし、スタンプ部のヘーズを測定した。これをT0とした。
【0473】
なお、人工指紋液の組成、及びスタンプ条件を下記に示す。
(人工指紋液の調製方法)
人工指紋液の調製は、特開2006-120317号公報を参考にし、以下のように行った。
関東ローム(JIS試験用粉体1(11種)日本粉体工業技術協会)1.6gとメトキシプロパノール(東京化成製)32gを混合した。さらにトリオレイン(東京化成製)4gを加え撹拌した。
(人工指紋シートの作成方法)
ガラス板(コーニング社製、ゴリラガラス、厚さ0.7mm)を10分間UV洗浄した。上記で調整した人工指紋液を1.1mLガラス板上にスピンコート(5000rpm 10秒間)した。その後、ガラスを乾燥炉で60℃、3分間加熱した。
(スタンプ条件)
スタンプ:シリコーンゴム(押印面Φ16mm)
スタンプを上記で作成した人工指紋シートに5kgwの荷重で10秒間押し付け、人工指紋を転写させた。ふき取り性を評価するサンプルに人工指紋を転写させたスタンプを5kgwの荷重で10秒間押し付け、人工指紋液を付着させた。
【0474】
(拭き取り後の評価)
形成された表面処理層に対して、ラビングテスター(井元製作所社製)を用いて、下記条件で10回拭き取り操作を行った。
・拭き取り方法:
摩擦子:ベンコット M-3II(製品名、旭化成社製)
移動距離(片道):60mm
移動速度:8,400mm/分
荷重:1000g/3cm2
【0475】
指紋付着性、及び、指紋ふき取り性評価の判断基準は以下のとおりである。
(拭き取り前の評価)
T0-Tiの値が、下記であるもの。
5未満:〇(優良)
5以上10未満:△(良好)
10以上:×(可)
(拭き取り後の評価)
T10-Tiの値が、下記であるもの。
1未満:〇(優良)
1以上2.5未満:△(良好)
2.5以上:×(可)
【0476】
下記表3、及び表4に、指紋拭き取り性評価と耐摩耗性評価の結果を示す。
【0477】
【0478】
Rfにおける芳香族基は、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環、ベンゾピレン環、クリセン環、ピレン環、トリフェニレン環、コランニュレン環、オバレン環、インドール環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ビフェニル環、テルフェニル環、トリフェニルメタン環、又はベンゾフェノン環を有する、請求項1又は2に記載の含フッ素シラン化合物。