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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114682
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】運搬手段騒音の評価
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/28 20200101AFI20240816BHJP
   G06F 30/10 20200101ALI20240816BHJP
   B64C 29/00 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
G06F30/28
G06F30/10 200
B64C29/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024019608
(22)【出願日】2024-02-13
(31)【優先権主張番号】18/167,956
(32)【優先日】2023-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514180812
【氏名又は名称】ダッソー システムズ アメリカス コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダミアーノ カサリーノ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァウター ヴァン デア ヴェルデン
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146AA05
5B146CA01
5B146DJ01
5B146DJ03
5B146DJ07
5B146DJ11
5B146DL08
5B146EA01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】運転条件で、運搬手段騒音(例えば、eVTOL)よって生成される騒音を評価する方法、システム及びプログラムを提供する。
【解決手段】方法は、運搬手段のコンピュータベースのモデルを定義し、該モデルに基づいて、運搬手段の空気力学的性能および推進性能を自動的に決定し、それらを使用して、運搬手段の飛行力学シミュレーションを行い、飛行状況データを生成し、飛行状況データを自動的にダウンサンプリングして、低減されたデータセット生成し、低減されたデータセットを使用して運搬手段の高忠実度のフローシミュレーションを実施し、高忠実度のフローシミュレーションを実施することで、運搬手段の飛行中の空気力学的および航空音響学的な性能を決定し、決定した飛行中の空気力学的および航空音響学的な性能に基づいて、運搬手段の騒音の物理的特性を決定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運搬手段の騒音の物理的特性を決定するためのコンピュータ実装方法であって、前記方法が、
運搬手段のコンピュータベースのモデルを定義することと、
前記定義されたコンピュータベースのモデルに基づいて、前記運搬手段の空気力学的性能および推進性能を自動的に決定することと、
前記決定された空気力学的性能および推進性能を使用して、前記運搬手段の飛行力学シミュレーションを応答的に実施することであって、前記飛行力学シミュレーションを実施することが、飛行状況データを生成する、実施することと、
前記飛行状況データを自動的にダウンサンプリングして、低減されたデータセットを生成することと、
前記低減されたデータセットを使用して、前記運搬手段の高忠実度のフローシミュレーションを実施し、前記運搬手段の飛行中の空気力学的および航空音響学的な性能を決定する前記高忠実度のフローシミュレーションを実施することと、
前記決定された飛行中の空気力学的および航空音響学的な性能に基づいて、前記運搬手段の騒音の物理的特性を決定し、前記決定された騒音の物理的特性の表示をコンピュータメモリに格納することと、を含み、前記高忠実度のフローシミュレーションを実施することおよび騒音の物理的特性を決定することが、一つ以上のデジタルプロセッサによって自動的に実施される、方法。
【請求項2】
前記運搬手段の前記コンピュータベースのモデルを定義することが、
前記運搬手段の幾何学的形状のデジタル化された表現を含むファイルをインポートすること、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記定義されたコンピュータベースのモデルに基づいて、前記運搬手段の空気力学的性能および推進性能を決定することが、
前記運搬手段の一つ以上のローターを前記定義されたコンピュータベースのモデルから分離することと、
前記分離された一つ以上のローターからローターパラメータを決定することと、
前記ローターパラメータに基づいて推進ルックアップテーブルを計算して、前記推進性能を決定することと、
前記運搬手段のエアフレームを前記定義されたコンピュータベースのモデルから分離することと、
前記分離されたエアフレームから空気力学的パラメータを決定することと、
前記空気力学的パラメータに基づいて空気力学的ルックアップテーブルを計算して、前記空気力学的性能を決定することと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記推進ルックアップテーブルおよび前記空気力学的ルックアップテーブルのうちの少なくとも一つを生成し、コンピュータメモリに保存することを、さらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記運搬手段の前記飛行力学シミュレーションを実施することが、
移動経路を画定することと、
前記決定された推進性能および空気力学的性能を使用して、前記移動経路に沿った前記運搬手段の動作をシミュレートすることであって、前記動作をシミュレートすることが、複数の時間ステップの各々で飛行状況データを生成する、シミュレートすることと、
前記複数の時間ステップの各々における前記飛行状況データを、前記飛行状況データとして格納することと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記決定された推進性能および空気力学的性能を使用して、前記移動経路に沿った前記運搬手段の動作をシミュレートすることが、
所与の時間ステップについての飛行状況データをオートパイロットコントローラに提供することと、
前記オートパイロットコントローラから前記運搬手段についての制御入力を応答的に受信することと、
前記シミュレートすることにおける前記受信した制御入力を使用して、前記所与の時間ステップの後に続く時間ステップについての飛行状況データを生成することと、を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記飛行状況データが、経時的な複数の飛行パラメータの各々についての値を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記飛行状況データをダウンサンプリングして、前記低減されたデータセットを生成することが、
経時的な前記複数の飛行パラメータの各々についての前記値を使用して、多次元ヒストグラムを計算することであって、前記多次元ヒストグラムが、飛行中の条件の確率を示す、計算することと、
各非ゼロ確率条件について、前記複数の飛行パラメータの各々について下限値および上限値を決定することと、
前記複数の飛行パラメータの各々について、各非ゼロ確率条件について前記決定された下限値および決定された上限値に基づいて、平均下限値および平均上限値を計算することと、
計算された平均下限値および平均上限値のサブセットを、前記低減されたデータセットとして格納することと、を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ヒストグラムが示す条件の確率に基づいて、前記計算された平均下限値および平均上限値の前記サブセットを決定することを、さらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ヒストグラムに基づいて、前記飛行中の事象を識別することと、
前記識別された事象に基づいて、前記計算された平均下限値および平均上限値の前記サブセットを決定することと、をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記高忠実度のフローシミュレーションが、数値流体力学(CFD)シミュレーションである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記運搬手段の前記高忠実度のフローシミュレーションを実施することが、
複数の高忠実度のフローシミュレーションを実施することを含み、各高忠実度のフローシミュレーションが、前記低減されたデータセットからのそれぞれの飛行条件を使用して実施されて、前記それぞれの飛行条件の各々に対する前記運搬手段の飛行中の空気力学的および航空音響学的な性能を決定する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記それぞれの飛行条件の各々について、前記運搬手段の騒音の物理的特性を決定することと、
前記それぞれの飛行条件の各々について前記運搬手段の前記決定された騒音の物理的特性に基づいて、前記それぞれの飛行条件の中から所与の飛行条件を選択することと、をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
一つ以上のセンサーから、現実世界の環境データを収集することと、
複数の高忠実度のフローシミュレーションを実施することであって、各高忠実度のフローシミュレーションが、それぞれの飛行条件、前記低減されたデータセット、および収集された前記現実世界の環境データを使用して実施されて、前記それぞれの飛行条件および前記現実世界の環境データの支配下にある前記運搬手段の飛行中の空気力学的および航空音響学的な性能を決定する、実施することと、
前記それぞれの飛行条件のそれぞれについて、前記運搬手段の騒音の物理的特性を決定することと、
前記それぞれの飛行条件の各々について前記運搬手段の前記決定された騒音の物理的特性に基づいて、前記それぞれの飛行条件の中から所与の飛行条件を選択することと、
前記選択された所与の飛行条件に従って前記運搬手段を制御することと、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記運搬手段の騒音の物理的特性を決定することが、
飛行中の複数の地上位置での前記運搬手段の騒音の物理的特性を決定することであって、前記複数の地上位置での前記騒音の物理的特性が、(i)各地上位置での地面トポグラフィー、(ii)各地上位置に対応する前記飛行のウェイポイントでの前記運搬手段の空気力学的性能、および(iii)各地上位置に対応する前記飛行の前記ウェイポイントでの前記運搬手段の航空音響学的な性能、に基づいて決定される、決定すること、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
運搬手段の騒音の物理的特性を決定するためのコンピュータシステムであって、前記システムが、
プロセッサと、
コンピュータコード命令が格納されたメモリと、を備え、前記プロセッサおよび前記メモリが、前記コンピュータコード命令を用いて、前記システムに、
運搬手段のコンピュータベースのモデルを定義することと、
前記定義されたコンピュータベースのモデルに基づいて、前記運搬手段の空気力学的性能および推進性能を自動的に決定することと、
前記決定された空気力学的性能および推進性能を使用して、前記運搬手段の飛行力学シミュレーションを応答的に実施することであって、前記飛行力学シミュレーションを実施することが、飛行状況データを生成する、実施することと、
前記飛行状況データを自動的にダウンサンプリングして、低減されたデータセットを生成することと、
前記低減されたデータセットを使用して、前記運搬手段の高忠実度のフローシミュレーションを実施し、前記運搬手段の飛行中の空気力学的および航空音響学的な性能を決定する前記高忠実度のフローシミュレーションを実施することと、
前記決定された飛行中の空気力学的および航空音響学的な性能に基づいて、前記運搬手段の騒音の物理的特性を決定すること、および前記決定された騒音の物理的特性の表示をコンピュータメモリに保存することと、をさせるように構成された、システム。
【請求項17】
前記運搬手段の前記飛行力学シミュレーションを実施することにおいて、前記プロセッサおよび前記メモリが、前記コンピュータコード命令を用いて、前記システムに、
移動経路を画定することと、
前記決定された推進性能および空気力学的性能を使用して、前記移動経路に沿った前記運搬手段の動作をシミュレートすることであって、前記動作をシミュレートすることが、複数の時間ステップの各々で飛行状況データを生成する、シミュレートすることと、
前記複数の時間ステップの各々における前記飛行状況データを、前記飛行状況データとして格納することと、をさせるように構成された、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記飛行状況データが、経時的な複数の飛行パラメータの各々についての値を含み、前記飛行状況データをダウンサンプリングして前記低減されたデータセットを生成することにおいて、前記プロセッサおよび前記メモリが、前記コンピュータコード命令を用いて、前記システムに、
経時的な前記複数の飛行パラメータの各々についての前記値を使用して、多次元ヒストグラムを計算することであって、前記多次元ヒストグラムが、飛行中の条件の確率を示す、計算することと、
各非ゼロ確率条件について、前記複数の飛行パラメータの各々について下限値および上限値を決定することと、
前記複数の飛行パラメータの各々について、各非ゼロ確率条件について前記決定された下限値および決定された上限値に基づいて、平均下限値および平均上限値を計算することと、
計算された平均下限値および平均上限値のサブセットを、前記低減されたデータセットとして格納することと、をさせるように構成された、請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
前記運搬手段の騒音の物理的特性の決定において、前記プロセッサと前記メモリとが、前記コンピュータコード命令により、前記システムに、
飛行中の複数の地上位置での前記運搬手段の騒音の物理的特性を決定することであって、前記複数の地上位置での前記騒音の物理的特性が、(i)各地上位置での地面トポグラフィー、(ii)各地上位置に対応する前記飛行のウェイポイントでの前記運搬手段の空気力学的性能、および(iii)各地上位置に対応する前記飛行の前記ウェイポイントでの前記運搬手段の航空音響学的な性能、に基づいて決定される、決定すること、をさせるように構成された、請求項16に記載のシステム。
【請求項20】
運搬手段の騒音の物理的特性を決定するためのコンピュータプログラム製品であって、前記コンピュータプログラム製品が、
一つ以上の非一時的コンピュータ可読ストレージ装置、および前記一つ以上のストレージ装置のうちの少なくとも一つに格納されたプログラム命令を備え、前記プログラム命令が、プロセッサによって読み込まれて実行されるとき、前記プロセッサに関連付けられた装置に、
運搬手段のコンピュータベースのモデルを定義することと、
前記定義されたコンピュータベースのモデルに基づいて、前記運搬手段の空気力学的性能および推進性能を自動的に決定することと、
前記決定された空気力学的性能および推進性能を使用して、前記運搬手段の飛行力学シミュレーションを応答的に実施することであって、前記飛行力学シミュレーションを実施することが、飛行状況データを生成する、実施することと、
前記飛行状況データを自動的にダウンサンプリングして、低減されたデータセットを生成することと、
前記低減されたデータセットを使用して、前記運搬手段の高忠実度のフローシミュレーションを実施し、前記運搬手段の飛行中の空気力学的および航空音響学的な性能を決定する前記高忠実度のフローシミュレーションを実施することと、
前記決定された飛行中の空気力学的および航空音響学的な性能に基づいて、前記運搬手段の騒音の物理的特性を決定すること、および前記決定された騒音の物理的特性の表示をコンピュータメモリに保存することと、をさせる、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
多数の既存の製品およびシミュレーションシステムが、オブジェクト(例えば、運搬手段)の設計およびシミュレーション用に市場で提供されている。このようなシステムは通常、コンピュータ支援設計(CAD)およびコンピュータ支援エンジニアリング(CAE)プログラムを用いる。これらのシステムは、ユーザーが、オブジェクトまたはオブジェクトのアセンブリの複雑な三次元モデルを構築、操作、およびシミュレートすることを可能にする。これらのCADおよびCAEシステムは、特定の場合には面を含む、縁または線を使用したオブジェクト(例えば、現実世界のオブジェクト)のモデル表現を提供する。線、縁、面、または多角形は、様々な方法、例えば、非一様有理Bスプライン(NURBS)で表現され得る。
【背景技術】
【0002】
こうしたシステムは、モデル化されたオブジェクトの部品または部品のアセンブリを管理し、それらは、主に幾何学的形状の仕様である。特に、CADファイルは仕様を含み、そこから幾何学的形状が生成される。幾何学的形状から、三次元CADモデルまたはモデル表現が生成される。仕様、幾何学的形状、およびCADモデル/表現は、単一のCADファイル、または複数のCADファイルに格納され得る。CADまたは他のこうしたCAEシステムは、設計者に三次元空間で表現されたモデル化されたオジェクトを視覚的に表現するためのグラフィックツールを含み、これらのツールは、複雑な現実世界のオブジェクトの表示専用である。例えば、アセンブリは数千個の部品を含み得る。
【0003】
CADおよびCAEシステムの出現は、CADモデルなどの、オブジェクトの幅広い表現の可能性を可能にする。コンピュータベースのモデルは、モデルが基礎となる現実世界のオブジェクトまたはモデルが表現するオブジェクトの特性(例えば、物理的、材料の、または他の物理学ベースの)を有するような方法でプログラムされてもよい。例示的な特性には、中でも、剛性(変位に対する力の比率)、可塑性(不可逆性歪み)、および粘性(隣接する層上の一つの層の流れに対する抵抗)が含まれる。CAD、または当技術分野で既知の他のこうしたコンピュータベースのモデルが、こうした方法でプログラムされている場合、それは、モデルが表現するオブジェクトのシミュレーションを行うために使用され得る。例えば、メッシュベースのモデルは、運搬手段の内部空洞、構造体を囲む音響流体、またはあらゆる数の現実世界のオブジェクトを表現するために使用され得る。さらに、CADおよびCAEシステムは、コンピュータベースのモデルと共に、現実世界の物理的システム(他の例の中でも、例えば、自動車、飛行機、建物、および橋)などのエンジニアリングシステムをシミュレートするために利用できる。さらに、CAEシステムを用いて、騒音や振動などのこれらの物理学ベースのシステムの任意の様々な挙動およびこれらの物理学ベースのシステムの挙動の組み合わせをシミュレートすることができる。
【発明の概要】
【0004】
輸送および通勤は、人口の継続的な増加に伴い、関心のある急成長の分野である。輸送を近代化し、混雑を軽減するための解決策は、飛行運搬手段、例えば、電動垂直離着陸(eVTOL)運搬手段の使用である。eVTOLは現代の輸送問題に対する有望な解決策を提供するが、このような運搬手段の運転についてはほとんど知られていない。実施形態は、この問題に対する解決策を提供する。特に、実施形態は、運転条件で、運搬手段(例えば、eVTOL)によって生成される騒音を評価する。
【0005】
こうした一実施形態は、最適な飛行経路などの運搬手段の騒音の物理的特性を決定するためのコンピュータ実装方法を対象とする。一実施形態によれば、方法は、運搬手段のコンピュータベースのモデルを定義し、定義されたコンピュータベースのモデルに基づいて、運搬手段の空気力学的性能および推進性能を自動的に決定することによって開始する。応答的に、運搬手段の飛行力学シミュレーションは、決定された空気力学的性能および推進性能を使用して実施される。一実施形態によれば、飛行力学シミュレーションを解決することで、各時間ステップで動的平衡状態を追跡することを可能にする。飛行力学シミュレーションを実行すると、飛行状況データ、例えば、飛行軌道データを生成する。一実施形態によれば、飛行力学シミュレーションの間、「飛行状況」を決定する、例えば、運搬手段速度、迎え角、ローターRPMなどの飛行条件のセットは、例えば、0.05秒の物理飛行時間ごとに、所与の時間レートでコンピュータディスクメモリに保存される。飛行ミッションが完了すると、飛行状況全体は「飛行エンベロープ」とみなされる。続いて、本方法は、革新的な方法で飛行状況データ、すなわち、「飛行エンベロープ」を自動的にダウンサンプリングして、例えば、飛行条件の低減されたデータセットを生成する。次いで、運搬手段の高忠実度のフローシミュレーション(数値流体力学(CFD)シミュレーションであってもよい)が、低減されたデータセットを使用して実施される。さらに、実施形態は、複数のこのような高忠実度のシミュレーションを実行してもよいことが注目される。高忠実度のフローシミュレーションを実施することで、運搬手段の飛行中の空気力学的および航空音響学的な性能が決定される。したがって、運搬手段の空気力学的および航空音響学的な性能は、代表的な飛行条件の低減されたセットに対して決定される。続いて、運搬手段の騒音の物理的特性は、決定された飛行中の空気力学的および航空音響学的な性能に基づいて決定され、決定された騒音の物理的特性の表示はコンピュータメモリに格納される。一実施形態によれば、高忠実度のフローシミュレーションを実施することおよび騒音の物理的特性を決定することは、一つ以上のデジタルプロセッサによって自動的に実装される。実施形態では、運搬手段のコンピュータベースのモデルは、ユーザー対話式に定義されてもよい。さらに、方法の実施形態のすべてのステップは、一つ以上のプロセッサによって実装される自動ワークフローで自動的に実施されてもよい。
【0006】
別の実施形態は、推進ルックアップテーブルおよび空気力学的ルックアップテーブルのうちの少なくとも一つを生成する。一実施形態によれば、ロータースラスト係数およびトルク係数のルックアップテーブルは、ローターRPMおよび前進率Jの異なる値に対して作成され、これは運搬手段の幾何学的形状から決定されてもよい。これらの二つの表であるロータースラスト係数およびトルク係数は、推進性能ルックアップテーブルを形成し、飛行力学モデルによって使用される低忠実度ローター性能入力を構成する。別の実施形態では、運搬手段の空気力学的性能は、空気力学的操縦面を含む、定義されたコンピュータベースのモデルから運搬手段のエアフレームを分離し、分離されたエアフレームおよび操縦面から空気力学的性能パラメータを決定することによって、定義されたコンピュータベースのモデルに基づいて決定される。次に、空気力学的力係数のルックアップテーブルが、様々な操縦面についての異なる流れ角の値および異なる偏角の値に対して作成される。これらの空気力学的力係数ルックアップテーブルは、空気力学的ルックアップテーブルを形成し、飛行力学モデルによって使用される低忠実度空気力学的性能入力を構成する。
【0007】
一実施形態は、運搬手段の幾何学的形状のデジタル化された表現を含むファイルをインポートすることによって、運搬手段のコンピュータベースのモデルを定義する。別の実施形態は、まず運搬手段の一つ以上のローターを定義されたコンピュータベースのモデルから分離し、次に、分離された一つ以上のローターからローターパラメータを決定することによって、定義されたコンピュータベースのモデルに基づいて運搬手段の推進性能を決定する。次に、推進ルックアップテーブルが、ローターパラメータに基づいて検索されて、推進性能を決定する。同様に、一実施形態は、(1)運搬手段のエアフレームを定義されたコンピュータベースのモデルから分離すること、(2)分離されたエアフレームから空気力学的パラメータを決定すること、および(3)空気力学的パラメータに基づいて空気力学的ルックアップテーブルを検索して空気力学的性能を決定することによって、定義されたコンピュータベースのモデルに基づいて運搬手段の空気力学的性能を決定する。
【0008】
一実施形態によれば、運搬手段の飛行力学シミュレーションを実施することは、移動経路を画定することを含む。こうした実施形態は、例えば、力の平衡を確保するために、決定された推進性能および空気力学的性能を使用して、移動経路に沿った運搬手段の動作をシミュレートする。例えば、運搬手段の飛行などの、動作をシミュレートすると、複数の時間ステップの各々で飛行状況データが生成され、こうしたデータは、飛行状況データ、すなわち、飛行エンベロープとしてコンピュータメモリに保存される。一実施形態は、オートパイロットコントローラへ、所与の時間ステップに対して、飛行状況データ(空気力学的力を含んでもよい)を提供することによって、決定された推進性能および空気力学的性能を使用して、移動経路に沿った運搬手段の動作をシミュレートする。これに応答して、運搬手段についての制御入力は、オートパイロットコントローラから受信され、この受信された制御入力は、シミュレーションで使用されて、所与の時間ステップに続く時間ステップに対する飛行状況データを生成する。
【0009】
一実施形態では、飛行状況データは、経時的な複数の飛行パラメータの各々についての値を含む。実施形態は、経時的な複数の飛行パラメータの各々についての値を使用して、多次元ヒストグラムを計算することによって、飛行状況データをダウンサンプリングして、低減されたデータセットを生成し、多次元ヒストグラムは、飛行中の条件の確率を示す。こうした実施形態は、各非ゼロ確率条件に対して、複数の飛行パラメータの各々に対する下限値および上限値を決定する。複数の飛行パラメータの各々について、平均下限値および平均上限値は、各非ゼロ確率条件について決定された下限値および決定された上限値に基づいて計算される。計算された平均下限値および平均上限値のサブセットが、低減されたデータセットとして保存される。別の実施形態は、ヒストグラムで示される条件の確率に基づいて、計算された平均下限値および平均上限値のサブセットを決定する。さらに別の実施形態は、ヒストグラムに基づいて、飛行中の事象を識別し、識別された事象に基づいて、計算された平均下限値および平均上限値のサブセットを決定する。
【0010】
一実施形態によれば、高忠実度のフローシミュレーションは、数値流体力学(CFD)シミュレーション、または当業者に既知の他のこうした流体シミュレーションである。さらに、別の実施形態では、ダウンサンプリングされたデータセットに属するすべての飛行/運転条件について、高忠実度のCFDシミュレーションが実施される。さらに、一実施形態では、運搬手段の高忠実度のフローシミュレーションを実施することは、複数の高忠実度のフローシミュレーションを実施することを含む。一実施形態では、各高忠実度のフローシミュレーションは、低減されたデータセットからのそれぞれの飛行条件を使用して実施されて、それぞれの飛行条件の各々に対する運搬手段の飛行中の空気力学的および航空音響学的な性能を決定する。一実施形態は、それぞれの飛行条件の各々について運搬手段の騒音の物理的特性(例えば、遠視野での)を決定し、それぞれの飛行条件の各々について決定された運搬手段の騒音の物理的特性に基づいて、それぞれの飛行条件の中から所与の飛行条件を選択する。別の実施形態は、利用可能な飛行条件のセットから選択される、地面距離、大気条件、および飛行状況の関数として、例えば、遠視野における音響スペクトルおよび統合騒音レベルなどの騒音の物理的特性を決定する。
【0011】
別の実施形態は、一つ以上のセンサーから現実世界の環境データを収集する。こうした実施形態は、それぞれの飛行条件、低減されたデータセット、および収集された現実世界の環境データを使用して、複数の高忠実度のフローシミュレーションを実施し得る。シミュレーションを実施することは、それぞれの飛行条件および現実世界の環境データの支配下にある運搬手段の飛行中の空気力学的および航空音響学的な性能を決定する。次いで、例えば、現実世界の環境上の、それぞれの飛行条件の各々についての運搬手段の騒音の物理的特性が決定される。次に、それぞれの飛行条件の各々について決定された運搬手段の騒音の物理的特性に基づいて、所与の飛行条件がそれぞれの飛行条件の中から選択される。さらに、選択は、騒音、または一人以上のユーザーによって選択される他の所望の性能指標に基づき得る。次いで、運搬手段は、選択された所与の飛行条件に従って制御される。
【0012】
一実施形態は、飛行中の複数の地上位置での運搬手段の騒音の物理的特性を決定する。こうした実施形態は、(i)各地上位置での地面(すなわち地形)のトポグラフィー、(ii)各地上位置に対応する飛行のウェイポイントでの運搬手段の空気力学的性能、および(iii)各地上位置に対応する飛行のウェイポイントでの運搬手段の航空音響的性能、に基づいて、複数の地上位置での騒音の物理的特性を決定する。
【0013】
一実施形態では、運搬手段の一つ以上の高忠実度のフローシミュレーションは、低減されたデータセットを使用して実施される。次に、物理的騒音指標は、一つ以上の高忠実度のシミュレーションから決定された各飛行条件について、コンピュータメモリに格納される。保存された物理的騒音指標を使用して、飛行経路に沿った一つ以上の地上位置での騒音が計算される。こうした実施形態はまた、地表騒音または他の性能指標に基づいて、最適な飛行ミッションプロファイルを識別することができる。
【0014】
別の実施形態は、プロセッサと、コンピュータコード命令が格納されたメモリと、を含むシステムを対象とする。こうした実施形態では、プロセッサおよびメモリは、コンピュータコード命令により、システムに、本明細書に記載される任意の実施形態または実施形態の組み合わせを実施させるように構成される。
【0015】
別の実施形態では、コンピュータプログラム製品は、コンピュータ可読プログラム命令が格納された非一時的コンピュータ可読媒体を含む。命令は、プロセッサによって実行されるとき、プロセッサに、本明細書に記載される任意の実施形態または実施形態の組み合わせを実施させる。
【0016】
さらに別の実施形態は、最初に、三次元運搬手段形状のデジタル化された表現を含むファイルをインポートすることによって、運搬手段の飛行シミュレーションおよびコミュニティ騒音評価を実施する。こうした実施形態は、ローター(すなわちプロペラ)を幾何学的形状全体から分離し、低忠実度の方法を使用して推進性能を計算する。こうした実施形態はまた、エアフレームを幾何学的形状全体から分離し、自動化された粗メッシュのCFDシミュレーションを使用して空気力学的性能を計算する。幾何学的形状および質量モデルは、所定の経路に沿って運搬手段の飛行力学状態を計算するために使用される飛行力学モデルをセットアップするために使用される。こうした実施形態は、飛行中の飛行状況をサンプリングし、次いで、ヒストグラムに基づいて飛行エンベロープをダウンサンプリングして、高忠実度の空気力学的および航空音響学的なCFD計算のための代表的な飛行条件を定義する。続いて、該高忠実度のフル運搬手段CFDシミュレーションを実施して、空気力学的および推進性能、ならびに運搬手段周囲のマイクロフォンの半球上の騒音を計算する。こうした実施形態は、以前のまたは改善された空気力学的係数および推進係数を用いた飛行シミュレーションを繰り返し、以前に計算された騒音半球スペクトルの遠視野外挿によって地表騒音を計算することができる。
【0017】
一実施形態では、ファイルをインポートすることは、CADソフトウェアを使用して運搬手段部品の質量および慣性モーメントを計算すること、ならびに光造形法(STL)ファイルまたは類似のそのようなフォーマットの形態でローターのデジタル表現をインポートすることによって、ロータースラストおよびトルクルックアップテーブルを計算することを含む。ロータースラストおよびトルクルックアップテーブルはまた、ローターのCATIA(登録商標)パラメトリックモデルを介してエクスポートされたローターの建設的パラメータから計算することができる。実施形態では、ファイルをインポートすることはまた、STLファイルまたは類似のそのようなファイルの形態で運搬手段のデジタル表現をインポートすることによって、エアフレーム上の空気力学的力を計算することを含んでもよい。
【0018】
一実施形態は、グラフィカルコンポーネントベースのソフトウェア環境でいくつかのモデリカモジュールを接続することによって、飛行力学モデルをセットアップする。こうした一実施形態では、コンポーネントベースのソフトウェア環境は、他の実施例の中でも特に、世界モデル、大気モデル、地形モデル、バーティポートモデル、従来の航空機飛行力学モデル、およびマルチコプターローターダイナミクスモデルのうちの少なくとも一つを含む、様々な特徴を提供する。
【0019】
一実施形態は、Dymola(登録商標)動的挙動モデリング(DBM)飛行力学モデルを、飛行コントローラ(例えば、オートパイロット)および地上管制ステーション(GCS)に接続して、所与の飛行軌道を追跡および視覚化することによって、飛行力学モデルをセットアップする。別の実施形態では、飛行力学モデルをセットアップすることは、評価される運搬手段の特定のエアフレームおよび推進ユニットについて力係数のルックアップテーブルを検索することを含む。
【0020】
別の態様では、実施形態は、より大きな時間窓、例えば、0.5秒にわたって0.05秒ごとにサンプリングされた飛行パラメータの高速信号を平均化し、すべての飛行パラメータのヒストグラムを計算し、それに応じて条件をランク付けすることによって、飛行エンベロープをダウンサンプリングする。実施形態はまた、飛行エンベロープの「コーナー」事象を識別してもよい。さらに、実施形態は、高忠実度のシミュレーションのための最も代表的な飛行条件を定義することができる。
【0021】
別の態様では、高忠実度のフル運搬手段CFDシミュレーションを実施することは、異なる飛行条件および操縦面の異なる設定(フラップ、昇降舵、エルロンなど)、ならびにチルトローター角度の値に対して、セットアップバリアントを自動的に生成することを含む。こうした実施形態は、ブレード上にパーティションを作成し、ローターの周りに適切なメッシュ分解能領域をセットアップするために必要な、ローター形状から建設的パラメータを抽出する。実施形態はまた、高性能コンピューティング(HPC)システム上で複数のシミュレーションをスケジュールおよび管理し、各飛行条件に対してデータをラベル付けおよび保存する。
【0022】
実施形態はまた、統合面を横断する後流に対処するオンザフライ周波数領域Ffowcs-Williams & Hawkings(FW-H)公式化を使用して、半球(NHD)上の騒音を計算してもよい。さらに、実施形態は、空気力学的係数および推進係数を使用して、機械学習技術およびヒューリスティックアプローチを通して低忠実度の方法を訓練および改善することができる。
【0023】
一実施形態は、完全な飛行軌道および対応する飛行条件のシーケンスをインポートすることによって、オフラインで地表騒音計算を実施する。別の実施形態は、軌道の最後のウェイポイントおよび対応する飛行パラメータを使用することによって、オンザフライ(またリアルタイム)で騒音計算を実施する。実施形態はまた、瞬間的な飛行パラメータに基づいて、騒音半球を予め計算されたNNDから補間することができる。さらに他の実施形態は、ドップラー効果補正を適用し、地表上の一つ以上のマイクロフォン位置で、遠視野騒音計算に、地面反射/吸収および大気吸収を適用する。実施形態はまた、ウェイポイント緯度/経度座標に基づいて、地球トポグラフィーのデジタル表現から地上マイクロフォン座標を決定し、座標を、その飛行中に運搬手段の地上投影に従う、ユーザー定義の寸法のマイクロフォンのカーペットとして表す。
【0024】
飛行ミッション分析の実施の一部として、一実施形態は、現実的なレンダリングされたシナリオで運搬手段および騒音を視覚化する。別の実施形態は、飛行ミッション分析フレームワークを、3DEXPERIENCE(登録商標)要件、機能的、論理的および物理的(RFLP)能力を通してeVTOLライフサイクル管理に拡張する。これは、運搬手段設計、製造、およびメンテナンスのいくつかの分野および側面を考慮することによって、システムのライフサイクル全体を管理することができる、一般的なモデルベースのシステムエンジニアリングフレームワークである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
前述のものは、添付の図面に図示の通り、例示の実施形態の以下のより具体的な記述から明らかであり、ここで同様の参照記号は、異なる図面全体を通して同じ部分を指す。図面は必ずしも原寸に比例していなく、その代わりに実施形態を例証することに重点が置かれている。
【0026】
図1図1は、実施形態を使用して評価することができるeVTOL運搬手段のCADモデルを示す。
図2図2は、一実施形態による運搬手段の騒音を評価するための方法のフローチャートである。
図3図3は、一実施形態での低忠実度の空気力学的シミュレーションを実施するためのワークフローを示す図である。
図4図4は、一実施形態での飛行力学モデリングのワークフローを示す。
図5図5は、一実施形態による、ループ内でオートパイロットを使用した飛行力学モデリングのワークフローを示す流れ図である。
図6図6は、実施形態で採用され得る例示的なユーザインターフェースを図示する。
図7図7は、実施形態で実施され得る飛行エンベロープダウンサンプリング方法を図示する。
図8図8は、高忠実度の空気力学的および航空音響学的なシミュレーションを実施するためのワークフローを示す。
図9図9は、実施形態で実施され得る騒音フットプリント計算を図示する。
図10図10は、一実施形態による運搬手段の騒音を評価するための方法を示す流れ図である。
図11図11は、運搬手段の騒音を決定するためのコンピュータシステム実施形態の簡略化されたブロック図である。
図12図12は、本発明の実施形態が実装され得るコンピュータネットワーク環境の簡略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
例示の実施形態の記述を以下に示す。
【0028】
実施形態は、動作シナリオにおいて、運搬手段、例えば、電動垂直離着陸(eVTOL)運搬手段によって生成される騒音を評価する。実施形態はeVTOLに関連して本明細書に記述されているが、実施形態は、eVTOLの騒音の評価に限定されず、任意の運搬手段飛行の騒音を評価するために使用され得ることが注記される。
【0029】
都市の人口が増加し続けるにつれて、交通はますます問題となっている。世界中の道路で何百万時間もの時間が無駄になり、その結果、個人的損失やビジネス関連の損失につながっている。エアタクシー運搬手段(ATV)、個人用航空機(PAV)、および小型パッケージ用の配達用ドローンの組み合わせの使用は、通勤の可動性を根本的に改善し、社会、生活の質、および環境にプラスの影響を与える可能性がある。したがって、運搬手段設計から交通管理まで、アーバン・エア・モビリティ(UAM)の概念の開発は、とりわけ、航空機および自動車製造、規制当局および機関、研究機関および学術機関を含む、いくつものステークホルダーの関心を引き付けている。産業投資、研究開発の取り組み、およびメディア報道の観点から、このトピックの急速な成長は、典型的に、第三の航空宇宙革命と呼ばれる。
【0030】
しかしながら、このような技術を広く採用する前に、(i)運搬手段(例えば、電池の耐久性と推進効率、騒音と安全性)、(ii)製造(例えば、航空宇宙品質標準を有する複合構造の連続生産)、(iii)動作(例えば、有人/無人および誘導/自律運搬手段の両方を管理することができる特定の航空交通管理(ATM)システム)、(iv)規制(例えば、認定、操作、安全性に関連して)、(v)ライフサイクル管理およびメンテナンス、ならびに(vi)リサイクル、という分野で課題を克服する必要がある。
【0031】
例えば、eVTOLなどの安全かつ静かな飛行システムの設計に関与する異なる分野間相互の相互作用を考慮すると、概念的から詳細な全モデル設計まで、すべてのレベルで新しい設計パラダイムが必要であると主張することができる。固定翼航空機よりもヘリコプターに近く、異なるシステムの設計は、運搬手段の航空力学的挙動と厳密に連結されている。より具体的には、操縦と地表で知覚される騒音との間、および設置された電力と軌道との間の強力な関連性のために、運搬手段のダイナミックトリムは、任意の設計および最適化プロセスの重要な要素である。実施形態は、運搬手段によって生成される騒音に対する軌道および操縦の影響を予測する。実施形態は、飛行ミッションプラットフォームの一部として実装されることができ、eVTOLまたはそのような飛行運搬手段の現実世界の運転を制御し、それに影響を及ぼすように、リアルタイムで操作されることができる。
【0032】
eVTOL運搬手段の離陸および着陸手順の最適化は、ヘリコプターと比較して飛行および運転制御パラメータの数が多いため、困難で興味深い作業である。複数のステークホルダーが検討している目標ミッションプロファイルは、空港とビジネス中心街の間での60マイルのエアシャトルである。電池容量の分析により、離陸および着陸中に電動揚力の発生を制限し、目標範囲をカバーするために、揚力面が必要であることが明らかになった。したがって、最も実行可能なeVTOLの概念は、傾斜ローターおよび/または傾斜揚力面のおかげで垂直軸から水平軸に変換するローターによって持ち上げられる運搬手段である。
【0033】
図1は、本明細書に記載の実施形態を使用して騒音を評価することができるeVTOLコンセプト運搬手段100の例を示す。例示的な運搬手段100は、二つの前方逆回転開放ローター101a~bおよび101c~dと、二つの後方シュラウド付き逆回転傾斜ローター102a~bとを備える。ローターおよび翼の部品を傾ける能力は、操縦の航空力学的および航空音響学的最適化におけるさらなる自由度を構成し、シミュレーションおよび騒音評価の目的で作業するには困難な幾何学的形状にしている。
【0034】
マルチローター構成では、ブレード・渦干渉(BVI)現象は、一つのローターからの後流が別のローターによって取り込まれるとき、ある特定の飛行条件で発生し得る。このように、この種のアーキテクチャ(運搬手段100)については、低騒音手順は、BVI条件の発生が最小化される手順である。
【0035】
電気モーターは、可変速度ローターの使用を可能にする。これにより、必要な揚力およびスラストを供給するように、ローターの回転速度を異なる飛行条件に適合させることができ、一方で最適な前進率、すなわち、先端速度と自由流れ流体速度との間の比に近接して動作する。ヘリコプター回転翼の集合的角度の制御と比較して、回転速度制御は、変換段階の間、すなわち、ホバリングから巡行条件まで、翼とローターとの間で揚力をより良好に分配するために使用することができる。
【0036】
これらの前述の要因に基づいて、地点Aから地点BへのeVTOL飛行は、軌道および動作パラメータの一部が他よりも騒音を出す、多くの異なる方法で達成され得る。実施形態の目標は、航空力学的効果および空気力学的効果の両方を考慮することによって、その飛行中のeVTOLの地表騒音フットプリントを評価することである。
【0037】
図2は、運搬手段の騒音を評価するための一つのこうした実施形態のための例示的な方法220のフローチャートである。方法220は、221で、運搬手段のコンピュータベースのモデルを定義することによって開始し、222で、定義されたコンピュータベースのモデルに基づいて運搬手段の空気力学的性能および推進性能を自動的に決定する。応答的に、運搬手段の飛行力学シミュレーションは、ステップ222で決定された、決定された空気力学的性能および推進性能を使用して、ステップ223で実施される。飛行力学シミュレーション223を実施することで、飛行状況データを生成する。この飛行状況データは、飛行エンベロープ、すなわち、所与の軌道または飛行に沿った平衡状態を構成してもよい。
【0038】
この飛行状況データは、ステップ224で自動的にダウンサンプリングされて、低減されたデータセットを生成する。次いで、運搬手段の高忠実度のフローシミュレーションは、低減されたデータセット、すなわち、ステップ224から出力された低減されたデータセットに示される飛行条件を使用して、ステップ225で実施される。高忠実度のフローシミュレーション225を実施することで、運搬手段の飛行中の空気力学的および航空音響学的な性能を決定する。一実施形態では、ステップ225で、低減されたデータセット内の飛行条件のすべてのセットに対する運搬手段の飛行中の空気力学的および航空音響学的な性能が決定されるように、複数の高忠実度のシミュレーションが実施される。
【0039】
続いて、決定された飛行中の空気力学的および航空音響学的な性能に基づいて、運搬手段の騒音の物理的特性が決定され、決定された騒音の物理的特性の表示がステップ226でコンピュータメモリに格納される。一実施形態では、所与の飛行について、ステップ226で地表騒音が計算される。
【0040】
述べたように、方法220は、コンピュータ実装され、そのため、機能および効果的な動作、例えば、ステップ221~226は、一つ以上のデジタルプロセッサによって自動的に実装され得る。さらに、方法220は、当技術分野で既知の任意のコンピュータデバイスまたはコンピューティングデバイスの組み合わせを使用して実施することができる。他の例がある中でも特に、方法220は、図11に関連して本明細書で後述されるコンピュータシステム1100、および図12に関連して本明細書で後述されるコンピュータネットワーク環境1200を使用して実施することができる。
【0041】
方法220の一実施形態は、運搬手段の幾何学的形状のデジタル化された表現を含むファイルをインポートすることによって、ステップ221で運搬手段のコンピュータベースのモデルを定義する。このデジタル化された表現は、CADモデルまたはモザイク式の幾何学的形状(stl)などの離散表面の形態であってもよい。さらに、方法220のステップ221は、図10に関連して本明細書で後述されるステップ1の機能性を実装してもよい。
【0042】
方法220の実施形態は、推進ルックアップテーブルおよび空気力学的ルックアップテーブルのうちの少なくとも一つを生成してもよい。こうした一実施形態は、ステップ221で定義されたコンピュータベースのモデルによって示される運搬手段の幾何学的形状から決定され得る、ローターRPMおよび前進率Jの異なる値についてロータースラストおよびトルク係数のルックアップテーブルを作成する。これら二つの表、ロータースラストおよびトルク係数は、推進ルックアップテーブルを形成し、飛行力学モデルによって使用される低忠実度ローター性能入力を構成する。別の実施形態では、運搬手段の空気力学的性能は、空気力学的操縦面を含む、定義されたコンピュータベースのモデルから運搬手段のエアフレームを分離し、分離されたエアフレームおよび操縦面から空気力学的パラメータを決定することによって、定義された221コンピュータベースのモデルに基づいて決定される。次に、空気力学的力係数のルックアップテーブルが、様々な操縦面の異なる流れ角の値および異なる偏角の値に対して作成される。これらの空気力学的力係数ルックアップテーブルは、空気力学的ルックアップテーブルを形成し、飛行力学モデルによって使用される低忠実度空気力学的性能入力を構成する。
【0043】
方法220の実施形態によれば、定義されたコンピュータベースのモデルに基づいて運搬手段(222)の推進性能を決定することは、まず、運搬手段の一つ以上のローターを定義されたコンピュータベースのモデルから分離すること(すなわち、識別すること、取り出すことなど)を含む。第二に、ローターパラメータは、例えば、セグメント化プロセスおよび分析によって、分離された一つ以上のローターから決定され、その後、空気力学的パネル方法が適用される。次いで、ステップ222で、推進ルックアップテーブルが、ローターパラメータに基づいて検索されて、推進性能を決定する。同様に、実施形態は、ステップ221で定義されたコンピュータベースのモデルから運搬手段のエアフレームを分離することによって、ステップ222で運搬手段の空気力学的性能を決定することができる。こうした実施形態は、分離されたエアフレームから空気力学的パラメータを決定し、空気力学的パラメータに基づいて空気力学的ルックアップテーブルを検索して、ステップ222で空気力学的性能を決定する。
【0044】
さらに、実施形態は、ステップ222で、図3に関連して本明細書で後述されるワークフロー330、またはその一部を実装して、運搬手段の空気力学的および推進性能を決定してもよい。さらに、方法220のステップ222は、図10に関連して本明細書で後述されるステップ2および3の機能を実装して、運搬手段の空気力学的性能および推進性能を決定してもよい。
【0045】
方法220の一実施形態は、ステップ223で、まず、例えば、AからBまでの理論上の線などの移動経路を画定することによって、運搬手段の飛行力学シミュレーションを実施する。このような実施形態は、平衡を確保するためにステップ222で決定された推進性能および空気力学的性能を使用して、移動経路に沿った運搬手段の動作を、例えば、一つ以上の運動方程式を解くことによって、シミュレーションする。このシミュレーション223は、複数の時間ステップの各々における運搬手段の飛行状況データを生成する。複数の時間ステップの各々における飛行状況データは、飛行状況データ、すなわち、特定の運搬手段の飛行エンベロープとして格納される。
【0046】
方法220の一実施形態は、ステップ223で、オートパイロットコントローラに所与の時間ステップに対する飛行状況データを提供することによって、決定された推進性能および空気力学的性能を使用して、移動経路に沿った運搬手段の動作をシミュレートする。これに応答して、運搬手段に対する制御入力は、オートパイロットコントローラから受信される。受信した制御入力は、シミュレーションで使用されて、所与の時間ステップに続く時間ステップに対する飛行状況データを生成する。例証するために、ステップ223でシミュレーションが一度に一つの時間ステップずつ実施される例を考慮する。こうした実施形態では、所与の時間ステップ、例えば、1~1.5秒で、運搬手段は、運搬手段が運転している環境と同じ特定の特性のセットを有する。これらの特性、すなわち、飛行状況データは、データおよび所望の飛行経路または他のそのような仕様に基づいて、特性、例えば、ローター速度を修正する必要があると決定する、オートパイロットコントローラに提供される。この修正は、シミュレーション(223)を実装するソフトウェアに対してオートパイロットコントローラによって提供され、次の時間ステップ、1.5~2秒の運搬手段の特性は、それに応じて更新され、すなわち、ローター速度が増加する。
【0047】
方法220の実施形態は、ステップ223で、それぞれ図3、4、および5に関連して本明細書で後述されるワークフロー330、440、および550(またはその一部)を実装して、飛行状況データを生成する飛行力学シミュレーションを実施してもよい。さらに、ステップ223で、実施形態は、図10に関連して本明細書で後述されるワークフロー1000のステップ4の機能を実装して、飛行力学シミュレーションを実施してもよい。
【0048】
一実施形態では、シミュレーション223によって生成される飛行状況データは、経時的な複数の飛行パラメータ、すなわち、離散化された飛行経路の各々についての値を含む。方法220の一実施形態は、ステップ224で飛行状況データをダウンサンプリングして、複数の飛行パラメータの各々の値を使用して多次元ヒストグラムを経時的に計算することによって、低減されたデータセットを生成する。こうした実施形態では、多次元ヒストグラムは、飛行中の条件の確率を示す。一実施形態は、各非ゼロ確率条件に対して、複数の飛行パラメータの各々に対する下限値および上限値を決定する。複数の飛行パラメータの各々について、平均下限値および平均上限値は、各非ゼロ確率条件について決定された下限値および決定された上限値に基づいて計算される。計算された平均下限値および平均上限値のサブセットが、低減されたデータセットとして保存される。一実施形態によれば、出力データセット、すなわち、低減されたデータセットは、典型的には、入力データセット、すなわち、飛行状況データセットよりも小さいいくつかの要因である。
【0049】
例示するために、パラメータが、ローター速度、ローター傾斜角、飛行マッハ数、および飛行迎え角である、簡略化された四つのパラメータ非限定的な例を考慮する。飛行開始時、ローター速度(RPM)は、おそらく、離陸揚力を生成する最大値にあり、傾斜角は90度(垂直軸)であり、マッハ数はゼロであり、飛行迎え角は-90度(上から流れる)である。運搬手段は、垂直上昇全体の間、この状態に留まり、これは、これが、さらなる騒音計算のために考慮される状態であり、さらなる高忠実度の流れ(例えば、CFD)シミュレーションのために選択範囲を狭められるべきであることを意味する。所与の高度に達すると、運搬手段は水平飛行への変換を開始する。この段階の間、マッハ数は徐々に増加し、おそらくはローター速度は徐々に減少する。水平飛行への変換中の、これらの過渡的な飛行条件は、エンジンナセルが垂直設定から水平設定まで漸進的に傾斜し、迎え角が-90度から公称の巡行値に近い値まで変化することになるため、多数のパラメータの組み合わせを生成することができる。所与の数の飛行条件、例えば、これらのパラメータの組み合わせは、さらなる高忠実度のCFDシミュレーションのために選択範囲が狭められる。巡行条件では、公称設定値は、コントローラによって維持され、これらの公称設定値は、さらなる高忠実度のCFDシミュレーションについて考慮されることになる一つ(または少数)の条件に対応する。回転中、操縦面偏向などの他のパラメータが関与するが、概念は依然として類似している。最後に、水平飛行から垂直飛行への変換を伴う進入段階の間、上記の詳細な上昇段階と同様の状況が発生する。
【0050】
方法220の別の実施形態は、ヒストグラムで示される条件の確率に基づいて、計算された平均下限値および平均上限値のサブセットを決定する。例えば、こうした実施形態は、ある特定の確率の閾値を超える条件のみを考慮してもよい。さらに別の実施形態は、ヒストグラムに基づいて、および運搬手段タイプに基づく演繹的リスト作成例外によって、飛行中の事象を識別し、識別された事象に基づいて、計算された平均下限値および平均上限値のサブセットを決定する。例えば、こうした実施形態は、運搬手段タイプに応じて、それらを演繹的にリストすることによって、こうした識別された事象についてのデータがサブセットに含まれることを確実にし得る。さらに、方法220の実施形態は、ステップ224で、図7に関連して本明細書で後述されるワークフロー770の機能を実装して、データをダウンサンプリングし、低減されたデータセットを作成する。別の実施形態では、図10に関連して本明細書で後述されるワークフロー1000のステップ5の機能は、ステップ224で実装されて、飛行状況データをダウンサンプリングする。
【0051】
方法220の一態様によれば、ステップ225で実施される高忠実度のフローシミュレーションは、数値流体力学シミュレーションである。こうした実施形態では、数値流体力学シミュレーションは、低減されたデータセットを使用して、当業者に知られている原理に従って、ステップ225で実施される。方法220の一実施形態は、ステップ225で、図8に関連して本明細書で後述されるワークフロー880の機能を実装して、高忠実度のフローシミュレーションを実施する。別の実施形態では、図10に関連して本明細書で後述されるワークフロー1000のステップ6の機能は、ステップ225で実装されて、高忠実度のフローシミュレーションを実施する。
【0052】
別の実施形態は、ステップ225で試験を実施して、最適化された飛行制御パラメータおよび/または条件を決定する。こうした実施形態は、ステップ225で複数の高忠実度のフローシミュレーションを実施し、各高忠実度のフローシミュレーションは、低減されたデータセットからのそれぞれの飛行条件を使用して実施される。これらのそれぞれの飛行条件は、試験される異なるパラメータである。複数の高忠実度のフローシミュレーションを実施することで、それぞれの飛行条件の各々に対する運搬手段の飛行中の空気力学的および航空音響学的な性能を決定する。こうした実施形態は、その後、現実世界の運搬手段を運転するための、最適化されたそれぞれの飛行条件のセットを識別することができる。例えば、方法220の一実施形態は、それぞれの飛行条件の各々に対する運搬手段の騒音の物理的特性を決定し、それぞれの飛行条件の各々に対する運搬手段の決定された騒音の物理的特性に基づいて、それぞれの飛行条件の中から所与の飛行条件を選択する。例えば、騒音を最小化する飛行条件が選択されてもよい。
【0053】
方法220の別の実施形態は、一つ以上のセンサーから現実世界の環境データを収集する。こうした実施形態は、それぞれの飛行条件、低減されたデータセット、および収集された現実世界の環境データを使用して、複数の高忠実度のフローシミュレーションを実施して、それぞれの飛行条件および現実世界の環境データの支配下にある運搬手段の飛行中の空気力学的および航空音響学的な性能を決定する。次に、それぞれの飛行条件のそれぞれに対する運搬手段の騒音の物理的特性が決定される。次に、それぞれの飛行条件のそれぞれについて決定された運搬手段の騒音の物理的特性に基づいて、所与の飛行条件がそれぞれの飛行条件の中から選択される。次に、一実施形態は、選択された所与の飛行条件に従って、現実世界の運搬手段を制御する。
【0054】
方法220のさらに別の実施形態は、一つ以上のセンサーから現実世界の環境データを収集し、ステップ226でこのデータを使用して、新しい飛行シミュレーションを実施する。飛行経路に沿った飛行条件は、ステップ225で計算され、コンピュータメモリに格納される、対応する騒音特性を識別および抽出するために使用される。抽出された物理的騒音指標から、地面上の一つ以上の位置で放射される騒音は、ステップ226で計算される。異なる飛行経路またはそれらの部品(特定の操縦)を考慮することによって、騒音または他の性能指標に基づいて最適な動作を識別することが可能である。
【0055】
方法220の一実施形態では、ステップ226で運搬手段の騒音の物理的特性を決定することは、飛行中の複数の地上位置での運搬手段の騒音の物理的特性を決定することを含む。こうした実施形態は、(i)各地点での地面トポグラフィー、(ii)各地上位置に対応する飛行のウェイポイントでの運搬手段の空気力学的性能(すなわち、実質的に地上の地点の真上にある空中位置にある時の、運搬手段の空気力学的性能)、および(iii)各地上位置に対応する飛行のウェイポイントでの運搬手段の空気音響的性能(すなわち、地上の地点の上にある空中位置にある時の、運搬手段の空気音響的性能)、に基づいて、複数の地上位置での騒音の物理的特性を決定する。
【0056】
さらに、ステップ226で、方法220の実施形態は、図9に関連して本明細書で後述されるワークフロー990の機能を実装して、騒音の物理的特性を決定する。一実施形態によれば、騒音は、半球アプローチを使用した騒音フットプリント計算を利用することによって、決定された飛行中の空気力学的および航空音響学的な性能に基づいて決定される。ステップ226で騒音の物理的特性を決定することは、地面上の一つ以上の地点で放射される騒音を決定することを含んでもよい。一実施形態によれば、地面上の一つ以上の地点で放射される騒音を決定するプロセスは、運搬手段の瞬間位置、半球の中心、および地面上の地点を接続する光線を追跡することと、光線と半球との間の交点でNHDからの騒音を補間することと、を含む。地面反射が適用される場合、二次光線を考慮することができる。次に、距離拡大補正、ドップラー補正、大気吸収、および地面反射を適用することによって、NHDから補間された騒音のレベルが補正される。別の実施形態では、図10に関連して本明細書で後述されるワークフロー1000のステップ7の機能は、ステップ226で実装されて、騒音特性を決定する。一実施形態によれば、騒音の物理的特性は、運搬手段の周りの半球上のいくつかの点における個別の狭い周波数帯における騒音パワースペクトル密度レベル(単位:dB/Hz)を含む。一実施形態では、すべての飛行条件、すなわち、飛行パラメータの組み合わせについて、半球は、コンピュータメモリに格納され、特定の条件でタグ付けされる。
【0057】
低忠実度空気力学
【0058】
実施形態は、図3に図示したように、低忠実度空気力学的シミュレーションワークフロー330を採用できる。簡略化のために、図3は、面内力および迎え角のみを示すことが注記される。一実施形態では、低忠実度シミュレーション330は、ローター性能を計算するために、情報に基づくブレード要素運動量理論(BEMT)モデルを使用してシミュレーションを実施する。一実施形態では、ワークフロー330で使用されるBEMTモデルは、本明細書で後述される高忠実度数値流体力学(CFD)計算に基づいて調整されたいくつかのパラメータを有する標準理論に基づく。これらのシミュレーションは、ロータールックアップテーブル335に追加するために使用される。低忠実度シミュレーションワークフロー330の別の実施形態は、マルチコプター空気力学および空気音響シミュレーション(MAAS)自動プロセスを使用して、出願人-譲受人であるDassault Systemes Simulia Corporationによる高忠実度CFDシミュレーションソフトウェアPowerFLOW(登録商標)のシミュレーションセットアップを生成する。自動化は、最適な範囲で計算メッシュの分解能を自動的に制御して、合理的な計算ターンアラウンド時間で十分に正確な予測を生成する。ワークフロー330の低忠実度の属性は、物理モデルまたは幾何学的形状に対する単純化を指さず、より粗いメッシュ分解能を使用することを指す。これらのシミュレーションの結果は、ルックアップテーブル338に追加するために使用され得る。このようにして、実施形態は、シミュレーションを実施し、飛行力学シミュレーションに使用される結果を保存する。この保存は、将来の実装中の処理時間を短縮する。
【0059】
動作中、低忠実度の空気力学的シミュレーション330は、推進システム幾何学的形状339a、エアフレーム幾何学的形状339b、およびローターRPM339c、ローター前進率J339d、飛行マッハ数M339e、および流れ入射角(迎え角)α339fに対する飛行/動作パラメータ範囲を含む入力データ339で始まる。次に、幾何学的形状情報339a~bおよび前述のパラメータ339c~fの範囲が、上述のシミュレーションソフトウェア、またはそのような他のシミュレーションソフトウェアに提供されて、出力340を決定する。一実施形態では、ソフトウェアを使用するシミュレーションが以前に実施されている場合、追加のシミュレーションは、出力340を決定するために実施されず、代わりに、ルックアップテーブル335および338が、入力データ339を考慮して、出力340を決定するために検索される。一実施形態では、出力340は、スラスト係数C340a、トルク係数C340b、揚力係数C340c、抗力係数C340d、およびモーメント係数C340eを含む。
【0060】
この低忠実度シミュレーション330は、主な運搬手段構成要素の幾何学的形状、すなわち、ローター/プロペラ幾何学的形状331およびエアフレーム幾何学的形状332を使用して、例えば、上述の粗メッシュシミュレーションを使用して、広範囲の運転条件にわたって性能係数を計算する。一実施形態は、ローター331の推進パラメータをルックアップテーブル335に格納し、それぞれ、スラスト係数C340aおよびトルク係数C340bを含み、これは、毎分回転数(RPM)、および、軸方向流速(飛行速度)と毎秒の根数n掛けるローター直径Dとの間の前進率J(J=V/n/D)に依存する。ルックアップテーブル335は、異なるRPMおよびJの値を考慮して、結果として生じるスラスト係数340aおよびトルク係数340bをそれぞれ示す。一実施形態では、これらの値は、後続の使用のために、ルックアップテーブル、例えば、図示されたロータールックアップテーブル335に格納される。
【0061】
エアフレーム332の空気力学的パラメータは、飛行マッハ数M、迎え角a、および横風角βに依存する、三つの主軸(図示せず)に沿った揚力係数C340cおよび抗力係数C340d、横力係数(図示せず)、およびモーメント係数である。簡略化のために、図3は、迎え角の関数である、揚力340c、抗力340d、およびピッチ340eモーメント係数のみを示す。一実施形態では、ルックアップテーブル338は、飛行マッハ数M、迎え角a、および横風角βの異なる値に対する、揚力係数340c、抗力係数340d、横力係数(図示せず)、およびモーメント係数340eの値を保存する。
【0062】
このように、ワークフロー330は、入力データ339によって示される特性を有する粗メッシュを使用して、シミュレーション、例えば、CFDシミュレーションを実施する。結果として得られる出力データ340は、ルックアップテーブル335および338に格納される。一実施形態では、適切なデータが存在するか、または例えば、補間を通して決定され得る場合、シミュレーションは実施されず、代わりに、ルックアップテーブル335および338が、入力データ339に基づいて検索されて、結果として生じる出力340を決定する。
【0063】
飛行力学モデリング
【0064】
図4は、一実施形態による飛行力学モデリングワークフロー440を示す。ワークフロー440は、Dassault Systemes Dymola(登録商標)挙動モデリング(DBM)プロセスを使用して、飛行力学方程式を解いて、出発点、例えば、バーティポート(地点A)を標的目的地(地点B)に接続する軌道のすべての地点について非慣性平衡を決定する。Dymola(登録商標)は、モデリカ飛行力学およびローター性能モデルを、動作シナリオを説明する他のモデリカモデル(世界、大気、地形、バーティポート)と統合する能力を有する。
【0065】
ワークフロー440では、インターフェース441は、飛行力学平衡方程式を解くことによって、シミュレートされる飛行に関する入力データを提供するために使用される。この入力データ442は、運搬手段部品重量442a、標的軌道442b、世界モデル442c、大気モデル442d、地形モデル442e、バーティポートモデル442f、飛行力学モデル442g、マルチコプターローターダイナミクスモデル442h、ロータースラストおよびトルクテーブル442i、ならびにエアフレーム揚力および抗力テーブル442jを含む。この入力データ442は、Dymola(登録商標)プラットフォームによって使用されて、軌道443に沿った飛行状況を決定する。
【0066】
ワークフロー440の別の実施形態では、飛行力学方程式を解くために必要な運搬手段部品の重量および慣性モーメントは、動的挙動モデリング(DBM)ライブラリに直接リンクされた元の運搬手段モデルに基づいて、Dassault Systemes CATIA(登録商標)コンピュータ支援設計コンポーネントから直接受信される。
【0067】
図5は、一実施形態による飛行力学モデリングに使用され得る別のワークフロー550を図示する。ワークフロー550は、ワークフロー440モデル(442b)を、制御パラメータ(例えば、運搬手段操縦面およびローターRPM)に作用することによって標的軌道を追跡し、従来のソフトウェアインザループ(SIL)プロセスに従って閉ループプロセスでDBMモデルから飛行状況を受信する、オートパイロット計算機、例えば、サードパーティーのオートパイロット計算機と接続する。
【0068】
ワークフロー550の例示的な実装では、551で、運動パラメータ、例えば、ワークフロー440を使用して決定される出力443が、オートパイロット計算機に提供され、これは552でパラメータを読み取る。ステップ553で、オートパイロット計算機は、運動パラメータを所望の運動学と比較して、新しいアクチュエータ位置(例えば、運搬手段に対する修正)を決定し、これが(554で)、運搬手段の特性(例えば、入力データ440)を555での新しいアクチュエータ位置に従って更新するDymola(登録商標)プラットフォームに送信され、更新されたデータを使用して運動パラメータを決定し、ステップ551に戻る。このようにして、仮想モデルのアビオニクスは、運搬手段の飛行力学をモデル化するために、DBMモデルを有するフィードバックループで使用される。
【0069】
ワークフロー550の一実施形態では、オートパイロット計算機は、仮想の地上管制ステーション(GCS)だけでなく、仮想グラフィックコックピットモデルとも相互作用し、これらのグラフィカルコンポーネントは、図6に図示するように、3DEXPERIENCE(登録商標)飛行ミッションシミュレータ内のDBMおよびDassault Systemes 3Dシナリオ視覚化ツール(例えば、Creative Experienceアプリケーション)と連結される。図6は、出力視覚化として作用し、例えば、それぞれ、ローター速度、ローター傾斜角、姿勢角、および対気速度のための仮想コックピットプロット661a~d、GCS視覚化662、ならびに飛行シミュレータ描写663を含む、結果として生じるインターフェース660を示す。
【0070】
飛行エンベロープのダウンサンプリング
【0071】
図7は、データをダウンサンプリングするためのワークフロー770を示す。ワークフロー770は、飛行ミッションのための飛行状況データ(入力771)の受信から始まる。一実施例では、入力データ771は、0.05秒ごとにサンプリングされた、マッハ数771a、迎え角771b、横風角771c、ローターRPM771d、ローター傾斜角771e、および操縦面角771fの値を含む。この入力データ771は、飛行エンベロープを表し、ワークフロー770は、飛行エンベロープデータ771をダウンサンプリングして、入力データ771の低減された数の組み合わせ772を生成する。ダウンサンプリング770の後、運搬手段の空気力学的挙動の高忠実度のシミュレーションが実施される、低減された数の条件772が識別される。一実施形態では、ダウンサンプリング770は、未加工データの初期フィルタリングおよび平均化、続いて、運搬手段タイプおよび事前知識に基づく、最も可能性の高い飛行条件および「コーナー」事象の特定、ならびに最終的に、元の飛行エンベロープカバーのグラフィックチェックを含む。プロット773および774は、フィルタリングを示し、ここでプロット773および774において、元の飛行状況データは点で示され、ダウンサンプリングされた飛行状況データはバツ印で示されている。
【0072】
高忠実度の空気力学および航空音響学
【0073】
図8は、運搬手段884の高忠実度の空気力学的および航空音響学的なシミュレーションを実施するためのワークフロー880を示す。ワークフロー880は、入力データ881で始まり、これは一実施形態によると、推進システム幾何学的形状881a、エアフレーム幾何学的形状881b、およびダウンサンプリングされた飛行条件881cを含む。入力データ881a~cは、ダウンサンプリングされたデータ881cからすべての飛行条件に対して出力データ882を生成する高忠実度のシミュレーションを実施するために使用される。例示的な出力データ882は、ロータースラストおよびトルク係数882a、エアフレーム空気力学的係数882b、騒音半球データ882cを含む。
【0074】
一実施形態では、ワークフロー880は、高性能コンピューティング(HPC)クラウドシステム上で、PowerFLOW(登録商標)(格子ボルツマン法に基づく過渡CFD流れ計算)およびOptydB_FOOTPRINT(出願人-譲受人であるDassault Systemes Simulia Corporationによる遠視野騒音計算)を使用して、複数の高忠実度の空気力学的および航空音響学的な計算をスケジューリングおよび実行することを含む。この実施形態では、スケジューラは、実施形態を実装するMAASワークフローの一部であり、スケジューラは、データラベル付けおよび格納を管理および実行する。こうした実施形態では、(ダウンサンプリングされたデータ881cからの)すべての飛行条件について、MAASは、PowerFLOW(登録商標)シミュレーションセットアップを自動的に作成し、HPCシステム上でジョブを提出し、データ分析を実施する。空気力学的計算の主な出力は、時間平均化され、本明細書に記載の低忠実度のシミュレーションの一部として使用される低忠実度モデルを訓練するために使用される、運搬手段の部分に作用する力である。他の出力には、流れ圧力および密度、ならびに運搬手段全体の周りの複数の表面にわたる速度の変動が含まれる。例示的な実施形態では、このデータは、出願人-譲受人であるDassault Systemes Simulia Corporationによるツール「optydb_FWHFREQ」によって使用されて、運搬手段の周りに分布され、運搬手段基準システムに固定されたマイクロフォンの半球上の騒音を計算する。ツールoptydb_FWHFREQは、多数のマイクロフォン(1000個程度)を管理し、統合流体面を横断する運搬手段の後流の偽効果を除去することができる。optydb_FWHFREQツールは、周波数領域における四極騒音補正を含む特定のFfowcs-Williams & Hawkings(FW-H)公式化を採用することによって、こうした特徴を提供することができる。この特徴は、統合面の異なる層(典型的には、運搬手段シミュレーションセットアップを囲む円筒883によって図8に示すような三つの層)から計算された騒音スペクトルの平均と共に、ワークフロー880が半球上の非常に正確な騒音スペクトルを決定することを可能にする。一実施形態では、すべての飛行条件について、半球上のすべてのマイクロフォンのスペクトルが、ファイルにエクスポートされ、すべてまとめて、地面の騒音を外挿し得る騒音半球データベースを構成する。
【0075】
騒音フットプリントの計算
【0076】
図9は、一実施形態による騒音フットプリント計算ワークフロー990を示す。ワークフロー990は、入力データ991から始まり、これは図4に関連して本明細書で上述した飛行力学ワークフロー440からの入力データ442/991a、および騒音半球データベース991b、例えば、ワークフロー880からの出力データ882cを含む。この入力データ991は、出力騒音フットプリントデータ992を生成するために使用される。出力は、ユーザー指定の周波数範囲にわたって統合される全音域音圧レベル(単位:dB)を示す視覚化993a~dを含んでもよい。一実施形態によれば、視覚化993a~dは、騒音半球データベース技術994を使用して作成される。一実施形態では、出力992は、飛行中のウェイポイントについての地面上の瞬間騒音レベル992a、累積騒音測定基準992b、およびオーディオファイル992cを含む。
【0077】
一実施形態によれば、ワークフロー990は、図4に関連して本明細書で上述した飛行ミッションシミュレーション440を実施し、その間、0.5秒ごとに(または何らかの他の所望の周波数で)、飛行状況をツールoptydb_FOOTPRINTに送信する。こうした実装では、ツールoptydb_FOOTPRINTは、NHD991bに含まれる三つの最も近い飛行条件をもとに対応する騒音半球スペクトルを補間する。補間された騒音半球スペクトルは、次に、ドップラー補正、大気吸収、および地面反射/吸収を適用することによって、地表上で外挿されて、図9で視覚化993a~bに示される地表騒音レベルを得る。実施形態では、騒音計算は、飛行が完了すると飛行軌道をインポートすることによってオフラインで実施することができ、または騒音計算は、最後に更新された運搬手段位置を使用することによってリアルタイム/オンザフライで実施することができる。オンザフライ騒音計算のレートは、必要に応じてリアルタイムステッピングに一致するように増加させることができる。
【0078】
一実施形態では、ワークフロー990は、例えば、運搬手段着陸などの短期事象飛行について、計算の開始時に、または現在の運搬手段位置を考慮することによってオンザフライで、地上の地点を有利に抽出する。一実施形態では、地面の地点は、入力として騒音カーペットが中心となる運搬手段の座標、ならびにカーペットのX寸法およびY寸法をとる、専有のDassault Systemesツールを使用して、シャトルレーダートポグラフィーミッション(SRTM)地球トポグラフィーデータベースから抽出される。オンザフライ騒音計算を実行すると、カーペットは運搬手段の後に続き、騒音レベルは3DEXPERIENCE(登録商標)プラットフォーム上で視覚化できる。
【0079】
図3~9に関連して本明細書で上述した機能性は、運搬手段の騒音を評価するために、実施形態(例えば、方法220)で採用され得る要素である。図10は、図3~9に関連して本明細書で上述した機能性を組み合わせて、eVTOL飛行ミッション分析およびコミュニティ騒音予測を提供するワークフロー1000を示す。ワークフロー1000は、以下のステップを含む。
ステップ1. 運搬手段形状を作成し、Dymola(登録商標)空気力学モデル(形状、重量、慣性モーメントなど)をセットアップする。
ステップ2. 低忠実度optydb_BEMTアプローチを使用して、ロータースラストおよびトルク係数を計算して、CおよびCのルックアップテーブルを取得する。
ステップ3. MAASによって自動化される粗いPowerFLOW(登録商標)セットアップを使用して、エアフレーム空気力学的係数を計算し、計算された係数をC、C、Cなど、ルックアップテーブルに格納する。
ステップ4. Dymola(登録商標)ベースの飛行シミュレーションを実施し、全ミッションに沿って飛行エンベロープを集める。
ステップ5. 低減された飛行エンベロープを得るために統計的なアプローチを使用して、飛行エンベロープをダウンサンプリングする。
ステップ6. PowerFLOW(登録商標)シミュレーションを、低減された飛行エンベロープの飛行条件に対して実行し、optydb_FWHFREQを使用して運搬手段周囲の騒音スペクトルを計算する。全体的な騒音半球データベース(NHD)に保存される。
ステップ7. 同じ軌道または類似の軌道で飛行ミッションシミュレーションを繰り返し、optydb_FOOTPRINTを使用して、オンザフライで地面の騒音を計算する。
ステップ8. 機械学習アプローチにより、高忠実度の結果を使用して、低忠実度の結果を訓練および改善する。
【0080】
図10を参照しながら、以下に、一実施形態による、飛行ミッション分析およびコミュニティ騒音予測ワークフロー1000の異なる段階の説明をする。
【0081】
ワークフロー1000 - ステップ1
【0082】
ワークフロー1000は、ステップ1で、Dassault Systemesのコンピュータ支援三次元対話型アプリケーションCATIA(登録商標)スイートを使用して、運搬手段1001のeVTOL形状の準備から始まる。一実施形態は、CATIA(登録商標)の特定のモジュールを使用して、飛行に沿った飛行力学方程式を解くためにCATIA(登録商標)DBMモデルによって必要とされる、運搬手段1001の部品の慣性質量モーメントを評価する。例示的な実装では、CATIA(登録商標)およびDymola(登録商標)は、Dassault Systemesによる3DEXPERIENCE(登録商標)/CATIA(登録商標)/Functional & Logical Designアプリケーションによって接続される。特定のソフトウェアアプリケーションおよびプラットフォームが実施形態によって採用されるものとして本明細書に記述されているが、実施形態は、該アプリケーションおよびプラットフォームに限定されず、実施形態は、任意の様々な既知のソフトウェアアプリケーションおよびプラットフォームを使用して実装されてもよいことが注記される。
【0083】
一実施形態では、Dymola(登録商標)DBMモジュールは、飛行力学微分代数方程式(DAE)系を解く。より具体的には、Dymola(登録商標)は、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)によってサポートされる「コンポーネントベースのモデリング」に依存し、ここでシステムは、ブロックおよびコンポーネント間の「非因果的」依存性を表す接続線によって説明される。このアプローチは、エンジニアが実際のシステムを構築する方法と同様に、コンポーネントおよびサブシステムの容易な構築を可能にする。コンポーネントベースのモデリング言語により、複数の領域にわたって物理システムをモデリングおよび統合することができる。オブジェクト指向パラダイムは、Dymola(登録商標)によって用いられて、コンポーネント間で非因果的な接続を作り出し、それによってあらゆる方向への情報の流れを可能にする。Dymola(登録商標)によって採用されるオブジェクト指向言語は、方程式ベースのモデリング言語であるモデリカであり、これにより、第一原理からの方程式を通してモデルに宣言が与えられ、それらを計算する方法を指定する必要がない。モデリカはまた、非専有の言語であり、様々な分野にわたるオープンソースライブラリの大きなリポジトリを有する。同じ理由から、市販および無償の両方で利用可能な多数のモデリカシミュレーション環境がある。ワークフロー1000の実施形態で採用された主なモデリカモジュールの一つは、ドイツ航空宇宙センター(DLR)によって開発されたFlightDynamicsライブラリである。このライブラリは、様々なタイプの航空機モデルを構築するための基本的なコンポーネント、ならびに運転条件下で航空機をシミュレートするための環境モデルを含む。MultiBodyライブラリを含むModelica Standard Libraryは、eVTOL動的挙動をモデル化するために、FlightDynamicsライブラリと共に使用される。
【0084】
モデリカのeVTOLなどの動的システムをモデリングするのに有用な特徴は、非線形直接モデルを自動的に非線形逆モデルに変換する能力である。eVTOLシステムの逆モデルは、ウィングのような可撓性本体でさえも、トリム計算および制御法の自動生成に使用される。飛行シミュレーションのトリミング段階は、シミュレーションがコマンドの状態、例えば、作動面またはローターRPMの角度偏向を決定することを可能にし、これは、飛行中の動的平衡の満足を保証する。
【0085】
一実施形態では、他のモデリカモジュールは、eVTOL飛行ミッション分析フレームワークに統合されて、動作シナリオ(世界、大気、地形、バーティポート)を説明し、モジュールは、共シミュレーションの標準である、いわゆる機能的モックアップインターフェース(FMI)を使用して通信する。モジュールはまた、運搬手段の実際の位置と標的基準軌道との間の差に基づいて、操縦面および他の制御パラメータに適用されるコマンドを生成する、二つの外部(サードパーティー)コンポーネントであるオートパイロットにリンクされる。コマンドは、DBMによって使用されて、離散的で小さな時間間隔(例えば、0.05秒)後の運搬手段の新しい動的状態(力およびモーメント)および新しい位置を決定する。別のサードパーティーコンポーネントは、軌道を定義し、そのミッションに沿って運搬手段の状態および位置を視覚化することを容易にする、地上管制ステーション(GCS)である。
【0086】
本明細書に記載のフレームワークによる複数のツールをシームレスに利用するために、これらのツールが利用可能である共通のプラットフォームが有利である。ワークフロー1000の例示的な実施では、3DEXPERIENCE(登録商標)プラットフォームはこの目的を果たす。一実施形態では、ツールは、アプリケーションからなるロールの形態でプラットフォームによって提供される。これらの各アプリケーションは、プロジェクトの異なる部分向けの特定の機能性を有し、ある一定の相乗効果を共有するアプリケーションの一部は、共同で使用することができる。ワークフロー1000の例示的な実装では、三つのそのようなアプリケーションが、(1)DBMアプリケーション、(2)DBMモデルと、飛行コントローラ、GCS、および3D視覚化ソフトウェアとのインターフェースをとるために使用されるFunctional & Logical designアプリケーション、ならびに(3)シミュレーションのリアルタイム3D視覚化に使用される、Creative Experienceアプリケーション、というプロセスを実施するために使用される。
【0087】
機能的および論理的応用は、Vサイクル設計プロセスに基づく3DEXPERIENCE(登録商標)要件、機能的、論理的および物理的(RFLP)フレームワークの一部である。したがって、提案されたフレームワークは、(i)要件:運搬手段設計の検証、妥当性確認、および適格性評価の基準を確立する、(ii)機能的:要件を満たすために運搬手段が提供するサービスまたは技術的機能を定義する、(iii)論理的:構成要素、構成要素間の関係、および挙動を使用して、eVTOLの論理的アーキテクチャを定義する、(iv)物理的:eVTOLの仮想ソリューションを表す、という側面を考慮して、システムエンジニアリングレベルに拡張され得る。
【0088】
提案されたフレームワークでは、論理ノードは、異なる構成要素のインターフェースをとる目的のために使用される。しかしながら、functional and logical designアプリケーションの使用は、提案されたフレームワークが拡大され、eVTOLの完全な製品開発サイクルを網羅することを可能にする。
【0089】
DBMアプリケーションは、典型的なSILアプローチ(ワークフロー550に示すように)のように、運搬手段の現在の運動学的状態(速度、流れ角)、および飛行コントローラによって提供されるコマンドの値に基づいて、運搬手段の位置を更新することができる。コマンドは、部品に作用する力、例えば、所与のRPMおよび所与の前進率でローターによって生成されるスラストの、変動を決定するために使用される。ワークフロー1000では、エアフレームに作用し、ローターによって生成される空気力学的力は、事前計算されたルックアップテーブルを介してDBMに供給される。これらのルックアップテーブルは、飛行中の運搬手段の様々な可能な運転条件をカバーするため、これらのテーブルは、第一の事例では、低忠実度の方法によって作成される。
【0090】
ワークフロー1000 - ステップ2
【0091】
ロータースラストおよびトルクについては、ステップ2でDassault Systemesツールoptydb_BEMTが使用される。ツールoptydb_BEMTは、組み込まれた専有モジュールを使用して計算されたブレード断面の揚力係数および抗力係数を有する検証されたブレード要素運動量理論に基づく。このツールoptydb_BEMTは、ローター前進率JおよびRPMの関数であるC(J,RMP)1003およびC(J,RPM)1002の表をエクスポートする能力を有する。例示的な実施形態は、例えば、三角形光造形法ファイル(STL)などのローターのデジタル表現、またはブレードのパラメトリックCATIA(登録商標)モデルによってエクスポートされた建設的パラメータのいずれかを使用する。
【0092】
さらに、ワークフロー1000の実施形態では、必要なデータが表1002および1003で利用可能である場合、または必要なデータが表1002および1003から導出され得る場合、ステップ2でシミュレーションを実施する必要はないことが注目される。
【0093】
ワークフロー1000 - ステップ3
【0094】
エアフレームに作用する空気力学的力については、低忠実度モデルは、高忠実度CFDソフトウェアSIMULIA/PowerFLOW(登録商標)を介して完全なeVTOLシステムのシミュレーションを自動的にセットアップするために使用されるDassault Systemesによるマルチコプター空気力学および空気音響シミュレーション(MAAS)ワークフローによって供給される。低忠実度の属性は、全飛行エンベロープをカバーするシミュレーションコストが手ごろであるように、分解能の値を有する計算メッシュを自動的に生成するための、PowerFLOW(登録商標)の能力に関連する。このアプローチにより、部品の代用モデルではなく、効果的な運搬手段形状を利用することが可能になる。さらに、セットアップ作成のパラメータ化のおかげで、MAAS入力ファイル内の番号を変更することによって、異なる条件をシミュレートすることが可能である。これらの異なる条件は、ステップ3で使用して、空気力学的力ルックアップテーブル1004、1005、1006、および1007を生成することができる。さらに、ワークフロー1000の実施形態では、必要なデータが表1004~1007で利用可能であるか、または必要なデータが表1004~1007から導出され得る場合、ステップ3でシミュレーションを実施する必要はないことが注目される。
【0095】
ワークフロー1000 - ステップ4
【0096】
空気力学的力ルックアップテーブル1002~1007が利用可能になり、DBMモデルが利用可能になり、飛行コントローラおよびGCSにリンクされると、軌道を処方し、飛行をシミュレートすることが可能である。コントローラは制約を統合できるが、この段階では、主な関心は、飛行して、その飛行に沿って運搬手段の状態を収集することである。このデータは、制御パラメータ(例えば、ローターRPM、チルトローター角度、作動面角度など)、および0.05秒ごと(または何らかの他の所望の周波数で)に飛行条件(例えば、マッハ数、迎え角、サイドウィング角度など)をサンプリングおよび記録することによって収集されて、データセットを作成する。このデータセットは、サンプル数10,000個程度に大きく、飛行経路の持続時間および複雑さに大きく依存する。このデータセットは、所与の飛行ミッションに対する飛行エンベロープのサブセットを構成し、垂直離陸、垂直飛行から水平飛行への変換、緯度の変化および数回の方向転換を伴う主要飛行、水平飛行から垂直飛行への変換、ならびに垂直着陸を含む、異なる段階のデータを含み得る。視覚化1010および1011は、ステップ4の視覚的出力を示す。
【0097】
ワークフロー1000 - ステップ5
【0098】
多種多様な条件のため、ステップ4で収集されたデータセットはかなり大きい。ワークフロー1000は、ステップ5で視覚的に示されるように、飛行エンベロープデータセットをダウンサンプリングし、サンプル条件を定義することによって、ステップ5でデータセットのサイズ(例えば、飛行経路のデータ、すなわち、運搬手段の地点1025を有する軌道1024、例えば、騒音が計算される地点)に対処する。実施形態は、様々な異なる考慮事項に基づいて、ダウンサンプリングを実施することができる。例えば、実施形態は、発生率(ヒストグラム)または負荷に基づく条件特異性に基づいてサンプル条件、およびそれ故に騒音条件(コーナー事象)を識別することができる。
【0099】
これらの二つの基準、発生率、および条件特異性により、高忠実度の空気力学的および航空音響学的なシミュレーションに使用される所定の数の飛行条件を定義することが可能である。ヒストグラムを構築する前に、一実施形態は、マッハ数がある特定の閾値を下回るたびに、迎え角の値を強制的にゼロ値にして、0.5秒の大きな時間窓にわたって高周波サンプルを平均化する。これにより、平均的な動的挙動を表していない特異な事象をフィルタリングすることが可能になり、ダウンサンプリングプロセスの堅牢性が改善される。このフィルタリングは、プロット1021および1022に図示されており、プロット1021は元のデータを示し、プロット1022はフィルタリングされたデータを示す。
【0100】
一実施形態によれば、ワークフロー1000のステップ5でダウンサンプリングするためのヒストグラムベースのプロセスは、(i)ユーザーによって与えられたステップ値に基づいて、各パラメータの値範囲を分割する、(ii)多次元ヒストグラム、およびすべての間隔の組み合わせの確率を計算する、(iii)非ゼロ確率条件を検索し、それらのインデックスを保存する、(iv)非ゼロ確率条件をループし、これらの条件の下限パラメータ値および上限パラメータ値を収集する、(v)それらの下限および上限の平均値を計算し、それらを出力ファイルに保存する、というステップを含む。実施形態はまた、飛行エンベロープの境界をより良好に定義するために、それらの確率に関係なく、飛行のコーナー事象を考慮することができる。
【0101】
ワークフロー1000 - ステップ6
【0102】
ステップ6では、ステップ5で生成されたダウンサンプリングされたデータセットを使用して、高忠実度のシミュレーションを実施する。利用可能な計算リソースに応じて、ランク付けされたサブセット(ダウンサンプリングされたデータセット)から取られた所与の数の飛行条件(パラメータの組み合わせ)が考慮される。考慮される飛行条件は、MAASを使用して高忠実度PowerFLOW(登録商標)シミュレーションを自動的にセットアップするために使用され、これは、特定のRPM値で動作する運搬手段1020のエアフレームおよびローターの両方を含む。ステップ6での高忠実度のシミュレーションは、HPCシステム内の複数のジョブをスケジュールし、クラウドベースのGUIを使用してジョブの状態を監視し、シミュレーション結果をラベル付けおよび格納することによって実施される。一実施形態では、MAASの高レベルの自動化は、出願人-譲受人であるDassault Systemes Simulia Corporationによる optydb_PFROTORツールの使用によって達成され、これは、ローターの周りに適切な計算メッシュを生成するために必要なローター形状から建設的パラメータを抽出することを容易にする。
【0103】
PowerFLOW(登録商標)過渡流れ計算は、運搬手段の異なる部分に不安定な空気力学的力、ならびに運搬手段の周りの多層サンプリング表面上に流れ変数(圧力、密度、および速度成分)を提供する。1回の実行当たり数百ギガバイトの大きなファイルが1個生成され、これにはすべての時間ステップが含まれる。各シミュレーションでカバーされる物理的時間は、典型的には、10~20ローター回転である。サンプリングレートは、1000BPF/B程度であり、ここで、BPFは翼通過周波数であり、例えば、回転周波数にローターブレード数Bを掛けたものである。運搬手段によって生成される騒音は、周波数領域FW-Hツールoptydb_FWHFREQを使用して、オンザフライで計算される(典型的に行われるような後処理では計算されない)。
【0104】
このアプローチを使用することによって、実施形態は、時間領域アプローチを使用するよりもはるかに効率的な方法で、運搬手段の周りの半球上の1000個程度のマイクロフォンで騒音スペクトルを計算することができる。ストレージのスペースを節約するために、ユーザーは、シミュレーションの終了時にFW-Hフロー入力ファイルを自動的に削除するオプションを有効化することを決定できる。オンザフライ能力に加えて、FW-Hモデルはまた、統合面を横断する渦の後流の偽の影響を低減することができる。これは、二つの同時技術を使用して達成される。第一の技術は、複数の隣接する統合面(典型的には三つ)を使用し、複雑な音響スペクトルを平均化する。第二の技術は、失われる体積の積分に近似する追加の表面積分によって、そうでなければ失われる体積源の寄与を考慮に入れた公式を使用する。
【0105】
半球上の各マイクロフォンMの騒音スペクトルは、狭帯域パワースペクトル密度値PSD(f,M)として保存される。ダウンサンプル飛行エンベロープデータに対するすべてのファイル全体が、ワークフローのステップ7で騒音フットプリント計算に使用される騒音半球データベース(NHD)を構成する。
【0106】
一実施形態では、シミュレーションの各実行によってエクスポートされた不安定な空気力学的力信号は、エアフレーム上の定常状態空気力学係数およびスラスト/トルクローター係数を得るために、時間的に平均化される。これらの値を使用して、低忠実度モデルに適用される補正メタモデルを構築する。一実施形態によれば、ローターおよびエアフレームに対して二つの異なるアプローチが追求される。ローターについては、機械学習ベースのアルゴリズムを使用して、BEMTモデル、例えば、トピック補正係数、ならびに断面揚力係数および抗力係数の3D補正係数の調整パラメータを変更する。エアフレーム構成要素については、主な誤差は、低忠実度計算における回転構成要素の不在に関連し、そのため、ローター誘起の流れの効果は、減算論理によって評価され、ヒューリスティック補正モデルを供給するために使用される。補正された低忠実度モデルは、ワークフローのステップ8で使用することができる。
【0107】
ワークフロー1000 - ステップ7
【0108】
ワークフロー1000のステップ7は、ステップ6と同じDBMモデルを使用して飛行ミッションを繰り返すことを含む。しかしながら、空気力学的力について改善されたルックアップテーブルが、ステップ7で使用される。任意選択で、異なる軌道が、以前に計算された類似の飛行エンベロープに対応することを条件として、異なる軌道が、定義され得る。一実施形態では、飛行コントローラは、飛行シミュレーションHuman In the Loop(HIL)モダリティにおいて、人間パイロットによって置き換えられ得る。さらに、ステップ7では、騒音計算のために(i)飛行事象中に固定された、地上の固定領域に焦点をあてる、(ii)地上の移動領域に焦点をあてて、飛行中の運搬手段地面投影に追従する、という二つの異なるシナリオが考慮され得る。
【0109】
両方の場合において、騒音カーペット、すなわち、地上マイクロフォンのグリッドは、緯度/経度座標に基づいて、シャトルレーダートポグラフィーミッション(SRTM)データベースからの地球の離散表現から抽出される。この動作は、騒音フットプリント計算ツールoptydb_FOOTPRINTによって読み取り可能なユニバーサル横メルカトル(UTM)形式で、座標を群の点またはモザイク表面としてエクスポートするツールを介して達成される。第一のケース(地上の固定領域)では、飛行ミッション分析の開始時にカーペット抽出が一回のみ実施され、第二のケース(移動領域に焦点をあてる)では、抽出は離散時間ごとに実施される。これら二つの分析モダリティ間の別の違いは、第一のケースでは、音響暴露レベル(SEL)および実効知覚騒音レベル(EPNL)などの時間累積騒音測定基準が、飛行事象の終了時に計算され得ることである。このアプローチは、例えば、離陸および着陸など、飛行の特定段階を最適化するのに特に有用である。
【0110】
騒音計算は、飛行シミュレーションの後、軌道ウェイポイントおよび運転条件(パラメータの組み合わせ)を使用して、すべてのウェイポイントで、または最後のウェイポイントおよび対応する運転条件を使用して飛行中に実行され得る。利用可能な計算能力、および実際の飛行シミュレーション時間ステップよりもはるかに大きくてもよい、騒音計算に使用される時間ステップに応じて、飛行シミュレーションおよび騒音計算は、SILまたはHILモダリティのいずれかで、リアルタイムで実行され得る。ステップ7はまた、輪郭、すなわち、シェーディングが運搬手段1027の下の異なる地表騒音レベルを示す視覚化1026を作り出すことができる。一実施形態では、視覚化1026は、騒音計算技術1028を使用して生成される。
【0111】
一実施形態では、optydb_FOOTPRINTツールは、地上マイクロフォンでの騒音を計算するために、以下の動作を実施する。第一に、NHDがインポートされ、メモリに保存される。第二に、ウェイポイントに対応する飛行パラメータの各組み合わせについて、NHDに格納された三つの最も近い条件が、好適な多次元距離を介して決定される。第三に、等価騒音半球が、NHDをもとに補間される。第四に、騒音マップ計算が、複数のコア間で分布される。第五に、半球を回転させて、運搬手段の瞬間的なオイラー角が考慮に入れられる。第六に、回転した半球と、運搬手段の遅延位置(放出時間における)と地面上の地点とを接続する光線との間の交点が計算される。第七に、交点上の騒音が、半球マイクロフォンをもとに補間される。第八に、半球から地面への騒音PSDは、距離、周波数、空気湿度、ドップラー振幅および周波数補正(放射方向に沿って投影されるマッハ数に依存する)、ならびに地面吸収および反射(地形の吸音特性に依存する)に応じて、大気吸収を考慮に入れるために補正を適用することによって外挿される。第九に、騒音視覚化メトリックが計算される。例えば、地上のすべてのマイクロフォンにおける全音域音圧レベル(OSPL)が計算される。第十に、地形上に投影され、Creative Experienceアプリケーション内で視覚化され得る騒音マップが構成される。離散時間ごとに地表騒音PSDもファイルに保存され、SELまたはEPNLなどのオフライン騒音メトリック計算に使用することができる。
【0112】
ワークフロー1000 - ステップ8
【0113】
ワークフロー1000のステップ8では、高忠実度の結果を使用して、ステップ2および3で使用される低忠実度モデルを訓練および改善する。一実施形態では、将来、より良好なルックアップテーブルを作成することができるように、機械学習方法を使用して、この訓練を実装する。
【0114】
実施形態は、現実的な運転条件で運搬手段のコミュニティ騒音評価を実施する計算方法およびシステムを提供する。実施形態は、その飛行に沿った運搬手段の空気力学的動的平衡を解決する飛行ミッション分析に基づく。自動コントローラを備えたソフトウェアインザループ戦略を使用して、ユーザー指定の飛行経路を追跡することができる。エアフレーム上の流れによって生成される空気力学的力、およびコントローラによって設定されたRPMの値で各ローターによって生成されるスラスト/トルクは、ルックアップテーブルから空気力学的ソルバーによって評価される。幅広い運転条件をカバーするために、ルックアップテーブルは、低忠実度の方法を使用して計算される。シミュレーション飛行中、飛行パラメータのセット全体が高速(例えば、0.05秒)で記録される。最初の飛行の後、統計的引数に基づく手順を使用して、飛行条件の数を、代表的なユーザー指定の数の条件のセットに減少させる。これらの条件は、シミュレーションの前処理、実行、および後処理のための自動プロセスを使用して、高忠実度の全運搬手段空気力学的および航空音響学的な計算を実施するために使用される。空気力学的シミュレーション中に計算された、運搬手段の周りの半球上の高忠実度の騒音スペクトルは、さらなる地表騒音計算のためにデータベースに保存される。高忠実度の空気力学的結果を使用して、さらなる飛行シミュレーションのために低忠実度のルックアップテーブルを補正する。最後に、最初のものとは異なり得る新しい飛行ミッションをシミュレーションし、瞬間的な飛行状況を使用して、事前に計算された騒音データベースから地表の騒音を計算する。
【0115】
音響計算は、飛行が完了した後、または飛行中(オンザフライ分析)に、後処理において行うことができる。音響計算の速度は、地表騒音がリアルタイムで計算および視覚化され得るように調整され得る。騒音マップは、地球トポグラフィーデータベースから飛行シミュレーションの開始時に抽出された固定地面パッチ上で、またはその飛行に沿って運搬手段に追従する地面パッチ上で計算され、地球トポグラフィーデータベースから騒音計算の時間ステップごとに抽出され得る。
【0116】
コンピュータサポート
【0117】
図11は、本明細書に記載の本発明の任意の様々な実施形態を実装するために使用され得る、コンピュータベースのシステム1100の簡略ブロック図である。システム1100は、バス1103を含む。バス1103は、システム1100の様々な構成要素間の相互接続として機能する。バス1103に接続されているのは、キーボード、マウス、ディスプレイ、スピーカなどの様々な入力および出力デバイスをシステム1100に接続するための入力/出力デバイスインターフェース1106である。中央処理装置(CPU)1102は、バス1103に接続されていて、実施形態を実施するコンピュータ命令の実行を提供する。メモリ1105は、本明細書上記で前述した実施形態など、本明細書に記載される実施形態を実施するコンピュータ命令の実行に使用されるデータのための揮発性ストレージを提供する。ストレージ1104は、オペレーティングシステム(図示せず)および実施形態の構成など、ソフトウェア命令のための不揮発性ストレージを提供する。システム1100はまた、ワイドエリアネットワーク(WAN)およびローカルエリアネットワーク(LAN)を含む、当該技術分野で既知の任意の様々なネットワークに接続するためのネットワークインターフェース1101を備える。
【0118】
本明細書に記載の例示的な実施形態は、多くの異なる方法で実施され得ることが理解されるべきである。一部の場合において、本明細書に記載の様々な方法およびシステムは各々、コンピュータシステム1100など、物理的、仮想的、もしくはハイブリッドな汎用コンピュータ、または図12に関連して本明細書で後述されるコンピュータ環境1200などのコンピュータネットワーク環境によって実装されてもよい。コンピュータシステム1100は、例えば、CPU1102による実行のために、メモリ1105または不揮発性ストレージ1104のいずれかにソフトウェア命令をロードすることによって、本明細書に記載の方法(例えば、220、330、440、550、770、880、990、1000)を実行するシステムに変換されてもよい。当業者は、システム1100およびその様々な構成要素が、本明細書に記載される本発明の任意の実施形態または実施形態の組み合わせを実行するように構成されてもよいことをさらに理解するべきである。さらに、システム1100は、システム1100に動作可能に内部または外部連結されたハードウェア、ソフトウェア、およびファームウェアモジュールの任意の組み合わせを利用して、本明細書に記載の様々な実施形態を実施してもよい。
【0119】
図12は、本発明の一実施形態が実施され得る、コンピュータネットワーク環境1200を図示する。コンピュータネットワーク環境1200において、サーバ1201は、通信ネットワーク1202を介してクライアント1203a~nにリンクされる。環境1200を使用して、クライアント1203a~nが、単独またはサーバ1201と組み合わせて、本明細書に記載される実施形態のいずれかを実行することを可能にし得る。非限定的な例において、コンピュータネットワーク環境1200は、クラウドコンピューティング実施形態、サービスとしてのソフトウェア(SAAS)実施形態などを提供する。
【0120】
実施形態またはその態様は、ハードウェア、ファームウェア、またはソフトウェアの形態で実施され得る。ソフトウェアで実施された場合、ソフトウェアは、プロセッサがソフトウェアまたはその命令のサブセットをロードすることを可能にするように構成されている、任意の非一時的コンピュータ可読媒体上に格納されてもよい。プロセッサは、次いで命令を実行するのであり、本明細書に記載の通りの様態で動作する、または装置を動作させるように構成されている。
【0121】
さらに、ファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、または命令は、データプロセッサの特定の動作および/または機能を実行するものとして、本明細書に記載され得る。しかしながら、当然のことながら、本明細書に含まれるこうした記載は、単に便宜のためであり、かつ実際には、こうした動作は、ファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、命令などを実行するコンピューティングデバイス、プロセッサ、コントローラ、または他のデバイスからもたらされる。
【0122】
流れ図、ブロック図、ネットワーク図は、より多いもしくはより少ない要素を含んでもよく、または異なって配置されてもよく、または異なって表現されてもよいことを理解するべきである。しかし、さらに当然のことながら、特定の実装は、ブロック図およびネットワーク図と、特定の方法で実施される実施形態の実行を図示するブロック図およびネットワーク図の数とを決定付けてもよい。
【0123】
それに応じて、さらなる実施形態はまた、様々なコンピュータアーキテクチャ、物理的、仮想的、クラウドコンピュータ、および/またはそれらの何らかの組み合わせにおいて実施されてもよく、それ故に、本明細書に記載のデータプロセッサは、図示の目的で意図されているにすぎず、実施形態の限定として意図されるものではない。
【0124】
本明細書に引用されるすべての特許、公開された出願、および参考文献の教示は、その全体が参照により援用される。
【0125】
例示的な実施形態を具体的に示し、記述してきたが、当業者であれば、添付の特許請求の範囲に包含される実施形態の範囲から逸脱することなく、形態および詳細の様々な変更が実施形態において行われてもよいことが理解されるであろう。
【0126】
例えば、図中の実施形態の前述の説明および詳細は、例示の目的で、出願人-譲受人(Dassault Systemes Simulia Corporation)およびDassault Systemes、ツールおよびプラットフォームを参照するが、限定するものではない。他の類似のツールおよびプラットフォームが適切である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【外国語明細書】