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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114702
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】無機薄膜層形成用の積層フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20240816BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20240816BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
B32B27/32 C
B32B27/40
B65D65/40 D
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024087144
(22)【出願日】2024-05-29
(62)【分割の表示】P 2021117277の分割
【原出願日】2021-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】柏 充裕
(72)【発明者】
【氏名】山崎 敦史
(72)【発明者】
【氏名】中野 麻洋
(57)【要約】
【課題】 ポリプロピレンフィルムを主体とした環境負荷が少ないほぼ単一の樹脂種から構成されたラミネート構成を形成することができるフィルムであるとともに、無機薄膜層を積層した際に、包装材料に求められるガスバリア性を有する積層フィルムを提供すること。
【解決手段】 ポリプロピレン系樹脂を主成分とする基材層の少なくとも一方の面に、被覆層が積層された積層フィルムであって、前記積層フィルムが以下の(I)~(III)の要件を満たすことを特徴とする、無機薄膜層形成用の積層フィルム。
(I)前記積層フィルムの130℃における加熱伸び率がMD方向、TD方向のいずれも10%以下である。
(II)走査型プローブ顕微鏡により被覆層側表面を測定した最大山高さ(Rp)と最大谷深さ(Rv)の合計が30.0nm以下である。
(III)被覆層の付着量が0.10g/m以上、0.50g/m以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メルトフローレート(230℃、2.16kgf)が6.0g/10分以上20g/10分以下でコモノマー含有量が0.5モル%以下のポリプロピレン樹脂を各層に含有する、単層又は積層である二軸延伸ポリプロピレンからなる基材層の少なくとも一方の面に、ウレタン樹脂を含む被覆層が積層された積層フィルムであって、前記積層フィルムが以下の(I)~(IV)の要件を満たすことを特徴とする、無機薄膜層形成用の積層フィルム。
(I)前記積層フィルムの130℃における加熱伸び率がMD方向、TD方向のいずれも10%以下である
(II)走査型プローブ顕微鏡により被覆層側表面を測定した最大山高さ(Rp)と最大谷深さ(Rv)の合計が30.0nm以下である
(III)被覆層の付着量が0.10g/m以上、0.50g/m以下である
(IV)前記積層フィルムの被覆層側から測定した全反射赤外吸収スペクトルにおいて、1720±10cm-1の領域に吸収極大を持つピーク強度(P1)と1070±10cm-1の領域に吸収極大を持つピーク強度(P2)の比(P2/P1)が0.1以上30.0以下の範囲内である
【請求項2】
前記積層フィルムの100℃の加熱伸び率がMD方向、TD方向のいずれも3%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の無機薄膜層形成用の積層フィルム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の積層フィルムの被覆層の上に無機薄膜層が積層されていることを特徴とする、積層フィルム。
【請求項4】
請求項3に記載の積層フィルムであって、前記無機薄膜層が、Alおよび/またはSiを含有することを特徴とする、積層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、医薬品、工業製品等の包装分野に用いられる積層フィルムに関する。詳しくは、リサイクルが容易な材料を用いて、無機薄膜層を備えたガスバリア性積層フィルムとした際に、優れたガスバリア性能を発現させ得る積層フィルムに関する。
【0002】
近年、欧州はじめ世界各国において、使い捨てプラスチック使用削減に向けた規制が強化されている。その背景には、資源循環への国際的な意識の高まりや新興国におけるごみ問題の深刻化がある。そのため、食品、医薬品等に求められるプラスチック製包装材料についても、3R(recycle, reuse, reduce)の観点から環境対応型の製品が求められている。
【0003】
前述の環境に優しい包装材料に求められる性能として、(1)リサイクルしやすい材料から成ること、(2)各種ガスを遮断し賞味期限を延長できるガスバリア性能を有すること、(3)環境負荷が少ないラミネート構成にすること(例えば、材料の使用量自体が少ないこと、モノマテリアル化によるリサイクルが可能であること)等が挙げられる。
【0004】
近年、前記(1)、(3)を可能とするために、ポリプロピレンフィルムの使用に注目が集まっている。ポリプロピレンフィルムは、食品や様々な商品の包装用、電気絶縁用、表面保護用フィルムなど広範囲な用途で汎用的に用いられる。ポリプロピレンフィルムはその分子構造から高い水蒸気バリア性を発現することが可能である。さらに、表基材フィルムと貼り合わせるシーラントとしては、ポリプロピレン系やポリエチレン系のヒートシール樹脂が一般的であることから、例えば表基材にポリプロピレンフィルム、シーラントに未延伸ポリプロピレンシートを用いることで、ガスバリア性を有しつつ包材全体としてのモノマテリアル化が達成でき、リサイクルしやすい等、環境にやさしい包材設計が可能となる。
【0005】
しかしながら、前記(2)のガスバリア性に関し、ポリプロピレンフィルムは水蒸気バリア性を有するものの、例えば一般的に水蒸気バリア性が優れるとされる透明無機蒸着ポリエステルフィルムに比べると十分な値ではなく、また酸素バリア性に関しては非常に悪いという問題点があった。
【0006】
これに対して、ポリエステルフィルム等のプラスチック基材フィルムの表面に、アルミニウム等からなる金属薄膜、酸化ケイ素や酸化アルミニウム等の無機酸化物からなる無機薄膜を形成したガスバリア性積層体が一般的に用いられている。中でも、酸化ケイ素や酸化アルミニウム、これらの混合物等の無機酸化物の薄膜を形成したものは、アルミ箔を用いる必要がないこと、透明であり内容物の確認が可能であること、さらには形成膜も非常に薄くリサイクル性を阻害しないことから、広く使用されている。
【0007】
ポリプロピレンフィルムにおいても、無機薄膜を積層してガスバリア性を付与できる方法が開示されている(例えば特許文献1)。しかしながら、ポリプロピレンフィルムの表面はその分子構造から凹凸が大きく、無機薄膜層にクラックが多く存在し、十分なガスバリア性を発現できない問題があった。
【0008】
これらの問題に対し、ポリプロピレンフィルムと無機薄膜層との間に、ポリビニルアルコールの高分子樹脂組成物を用いて、無機薄膜層の形成表面を平滑にすることでガスバリア性を付与できる方法が開示されている(例えば特許文献2)。しかしながら、ポリビニルアルコールの高分子樹脂組成物を用いると、湿度依存性が大きいため、高湿下において酸素バリア性が低下し、水蒸気バリア性も十分とはいえなかった。また、十分なガスバリア性能を発現させるため、少なくとも0.5g/m以上の質量を積層する必要があった。付着量を多くすると、リサイクルする際の不純物の要因になるおそれがあり、リサイクル自体が困難になる可能性があった。また単一素材によるモノマテリアル化の観点からもふさわしくなかった。さらに、付着量を多くすることで、製造コストも高くなる問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2017/221781号
【特許文献2】特開2021-20392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1では、ガスバリア性能が不十分であった。特許文献2では高湿下でのガスバリア性能が不十分であり、かつ効果を発現するために膜厚を厚くする必要があり、被覆層の薄膜化による加工性改善や環境・製造コストへの配慮はなされていなかった。つまり、前記の環境に優しい包装材料に求められる性能としての(1)リサイクルできる材料を構成材料として含むこと、(2)各種ガスを遮断し賞味期限を延長できるガスバリア性能を有すること、(3)リサイクルしやすく環境負荷が少ないラミネート構成にすること(モノマテリアル化)の3点をいずれも満足する材料は、従来はなかった。
【0011】
本発明は、かかる従来技術の問題点を背景になされたものである。
すなわち、本発明の課題はポリプロピレンフィルムを主体とした環境負荷が少ないほぼ単一の樹脂種から構成されたラミネート構成を形成することができるフィルムであるとともに、無機薄膜層を積層した際に、包装材料に求められるガスバリア性を有する積層フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、要求される性能に合わせた所定の積層フィルムを設計することで、無機薄膜層を積層した際に、良好なガスバリア性を発現するフィルムを提供できることを見出して本発明を完成させるに至った。
【0013】
すなわち本発明は、以下の構成からなる。
1.ポリプロピレン系樹脂を主成分とする基材層の少なくとも一方の面に、被覆層が積層された積層フィルムであって、前記積層フィルムが以下の(I)~(III)の要件を満たすことを特徴とする、無機薄膜層形成用の積層フィルム。
(I)前記積層フィルムの130℃における加熱伸び率がMD方向、TD方向のいずれも10%以下である。
(II)走査型プローブ顕微鏡により被覆層側表面を測定した最大山高さ(Rp)と最大谷深さ(Rv)の合計が30.0nm以下である。
(III)被覆層の付着量が0.10g/m以上、0.50g/m以下である。
2.前記積層フィルムの100℃の加熱伸び率がMD方向、TD方向のいずれも3%以下であることを特徴とする、1.に記載の無機薄膜層形成用の積層フィルム。
3.前記積層フィルムの被覆層側から測定した全反射赤外吸収スペクトルにおいて、1720±10cm-1の領域に吸収極大を持つピーク強度(P1)と1070±10cm-1の領域に吸収極大を持つピーク強度(P2)の比(P2/P1)が0.1以上30.0以下の範囲内であることを特徴とする、1.または2.に記載の無機薄膜層形成用の積層フィルム。
4.前記1.~3.のいずれかに記載の積層フィルムの被覆層の上に無機薄膜層が積層されていることを特徴とする、積層フィルム。
5.前記4.に記載の積層フィルムであって、前記無機薄膜層が、Alおよび/またはSiを含有することを特徴とする、積層フィルム。
【発明の効果】
【0014】
本発明者らは、かかる技術によって、環境に配慮しつつ、無機薄膜層を積層した際に、包装材料に求められるガスバリア性を有するための、積層フィルムを提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
ポリプロピレン系樹脂を主成分とする基材層の少なくとも一方の面に、被覆層が積層された積層フィルムであって、前記積層フィルムが以下の(I)~(III)の要件を満たすことを特徴とする、無機薄膜層形成用の積層フィルム。
(I)前記積層フィルムの130℃における加熱伸び率がMD方向、TD方向のいずれも10%以下である。
(II)走査型プローブ顕微鏡により被覆層側表面を測定した最大山高さ(Rp)と最大谷深さ(Rv)の合計が30.0nm以下である。
(III)被覆層の付着量が0.10g/m以上、0.50g/m以下である。
以下、積層フィルムの各層に関して説明する。
【0016】
[基材フィルム層]
本発明で基材フィルムとして用いるプロピレン系樹脂延伸フィルムは、二軸延伸フィルムであることが好ましい。二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムは、公知の二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムを使用することが可能であり、その原料、混合比率などは特に限定されない。例えばポリプロピレンホモポリマー(プロピレン単独重合体)であるほか、プロピレンを主成分としてエチレン、ブテン、ペンテン、ヘキセンなどのα-オレフィンから選ばれる1種又は2種以上とのランダム共童合体やブロック共重合体など、あるいはこれらの重合体を2種以上混合した混合体によるものであってもよい。また物性改質を目的として酸化防止剤、帯電防止剤、可塑剤など、公知の添加剤が添加されていてもよく、例えば石油樹脂やテルペン樹脂などが添加されていてもよい。
【0017】
また、本発明で用いる二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムは、単層フィルムであってもよく、あるいは二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムを含む複数の樹脂フィルムが積層された積層型フィルムであってもよい。積層型フィルムとする場合の積層体の種類、積層数、積層方法などは特に限定されず、目的に応じて公知の方法から任意に選択することができる。
【0018】
本発明において、基材フィルムを構成するポリプロピレン樹脂としては、実質的にコモノマーを含まないプロピレン単独重合体が好ましく、コモノマーを含む場合であっても、コモノマー量は0.5モル%以下であることが好ましい。コモノマー量の上限は、より好ましくは0.3モル%であり、さらに好ましくは0.1モル%である。上記範囲であると結晶性が向上し、高温での寸法変化が小さくなり、すなわちある温度に加熱したときの伸び率(以下、加熱伸び率)が小さくなり、耐熱性が向上する。なお、結晶性を著しく低下させない範囲内において、微量であればコモノマーが含まれていてもよい。
【0019】
基材フィルムを構成するポリプロピレン樹脂は、プロピレンモノマーのみから得られるプロピレン単独重合体を含むことが好ましく、プロピレン単独重合体であっても、頭-頭結合のような異種結合を含まないことが最も好ましい。
【0020】
基材フィルムを構成するポリプロピレン樹脂のキシレン可溶分の下限は、現実的な面から、好ましくは0.1質量%である。キシレン可溶分の上限は好ましくは7質量%であり、より好ましくは6質量%であり、さらに好ましくは5質量%である。上記範囲であると結晶性が向上し、加熱伸び率がより小さくなり、耐熱性が向上する。
【0021】
本発明において、ポリプロピレン樹脂のメルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kgf)の下限は0.5g/10分であることが好ましい。MFRの下限は、より好ましくは1.0g/10分であり、さらに好ましくは2.0g/10分であり、特に好ましくは4.0g/10分であり、最も好ましくは6.0g/10分である。上記範囲であると機械的負荷が小さく、押出や延伸が容易となる。MFRの上限は20g/10分であることが好ましい。MFRの上限は、より好ましくは17g/10分であり、さらに好ましくは16g/10分であり、特に好ましくは15g/10分である。上記範囲であると延伸が容易となったり、厚み斑が小さくなったり、延伸温度や熱固定温度が上げられやすく加熱伸び率がより小さくなり、耐熱性が向上する。
【0022】
前記基材フィルムは耐熱性の点から、長手方向(MD方向)もしくは横方向(TD方向)の一軸延伸フィルムでも良いが、二軸延伸フィルムであることが好ましい。本発明では、少なくとも一軸に延伸することで、従来のポリプロピレンフィルムでは予想できなかった高温での熱収縮率が低い、高度な耐熱性を具備したフィルムを得ることができる。延伸方法としては、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法等が挙げられるが、平面性、寸法安定性、厚みムラ等を良好とする点から逐次二軸延伸法が好ましい。
【0023】
逐次二軸延伸法としては、ポリプロピレン樹脂を単軸または二軸の押出機で樹脂温度が200℃以上280℃以下となるようにして加熱溶融させ、Tダイよりシート状にし、10℃以上100℃以下の温度のチルロール上に押出して未延伸シートを得る。ついで、長手方向(MD方向)に120℃以上165℃以下で、3.0倍以上8.0倍にロール延伸し、引き続き、テンターで予熱後、横方向(TD方向)に155℃以上175℃以下温度で4.0倍以上20.0倍以下に延伸することができる。さらに、二軸延伸後に165℃以上175℃以下の温度で1%以上15%以下のリラックスを許しながら、熱固定処理を行うことができる。
【0024】
本発明で用いる基材フィルムは、ハンドリング性(例えば、積層後の巻取り性)を付与するために、フィルムに粒子を含有させてフィルム表面に突起を形成させることが好ましい。フィルムに含有させる粒子としては、シリカ、カオリナイト、タルク、炭酸カルシウム、ゼオライト、アルミナ、等の無機粒子、アクリル、PMMA、ナイロン、ポリスチレン、ポリエステル、ベンゾグアナミン・ホルマリン縮合物、等の耐熱性高分子粒子が挙げられる。透明性の点から、フィルム中の粒子の含有量は少ないことが好ましく、例えば1ppm以上1000ppm以下であることが好ましい。また、粒子の好ましい平均粒子径は1.0~3.0μmであり、より好ましくは1.0~2.7μmである。ここでいう平均粒径の測定法は、走査電子顕微鏡で写真撮影し、イメージアナライザー装置を用いて水平方向のフェレ径を測定し、その平均値で表示したものである。さらに、透明性の点から使用する樹脂と屈折率の近い粒子を選択することが好ましい。また、フィルムには必要に応じて各種機能を付与するために、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、色素、滑剤、造核剤、粘着剤、防曇剤、難燃剤、アンチブロッキング剤、無機または有機の充填剤などを含有させてもよい。
【0025】
本発明で用いられるポリプロピレン樹脂以外でも、基材フィルムの機械特性、及び、前記ガスバリア性コート層上に積層されるインキ層や接着層との接着性向上などを目的に本発明の目的を損なわない範囲において、フィルムに含有させても良い。例えば、前記と異なるポリプロピレン樹脂、プロピレンとエチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィンとの共重合体であるランダムコポリマーや、各種エラストマー等が挙げられる。
【0026】
本発明において、基材フィルムの厚みは各用途に合わせて任意に設定されるが、下限は2μm以上が好ましく、より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは4μm以上である。一方、厚みの上限は300μm以下が好ましく、より好ましくは250μm以下、さらに好ましくは200μm以下、特に好ましくは100μm以下である。厚みが薄い場合には、ハンドリング性が不良になりやすい。一方、厚みが厚い場合にはコスト面で問題があるだけでなく、ロール状に巻き取って保存した場合に巻き癖による平面性不良が発生しやすくなる。
【0027】
本発明の基材として用いるポリプロピレンフィルムのヘイズは内容物の視認性の観点より、透明性があることが好ましく、具体的には6%以下が好ましく、より好ましくは5%以下であり、さらに好ましくは4%以下である。ヘイズは、例えば延伸温度、熱固定温度が高すぎる場合、冷却ロール(CR)温度が高く延伸原反シートの冷却速度が遅い場合、低分子量が多すぎる場合に悪くなる傾向があるので、これらを調節することにより、前記範囲内に制御することができる。
【0028】
また本発明における基材フィルム層には、本発明の目的を損なわない限りにおいて、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、表面粗面化処理が施されてもよく、また、公知のアンカーコート処理、印刷、装飾などが施されてもよい。
【0029】
[被覆層]
本発明においては、無機薄膜層を積層した際に、充分なガスバリア性を発現させるために被覆層を有する。被覆層を有することにより、ポリプロピレン樹脂からのオリゴマーやアンチブロッキング材の表出を抑制することができる。さらに、被覆層の上に他の層を積層する際に、層間の密着力を高めることもできる。特に、無機薄膜層の形成においては密着力だけでなく、表面凹凸による突起部分で薄膜形成が出来ず、ガスバリア性などが不良となる問題もある。加えて、被覆層そのものにもガスバリア性を持つ材料を使用することで、積層フィルムのガスバリア性能も大きく向上させることができる。さらに、被覆層は基材への熱水の侵入を防ぐため、結果としてボイルやレトルト後のフィルム白化も軽減することができる。
【0030】
本発明においては、被覆層の付着量を0.10~0.50g/mとすることが好ましい。これにより、塗工において被覆層を均一に制御することができるため、結果としてコートムラや欠陥の少ない膜となる。さらに、被覆層がオリゴマー表出抑制に寄与し、レトルト後のヘイズが安定化する。被覆層の付着量は、好ましくは0.15g/m以上、より好ましくは0.20g/m以上、さらに好ましくは0.35g/m以上であり、好ましくは0.50g/m以下、より好ましくは0.50g/m未満、さらに好ましくは0.45g/m以下である。被覆層の付着量が0.50g/mを超えると、ガスバリア性は向上するが、被覆層内部の凝集力が不充分となり、被覆層の均一性も低下するため、コート外観にムラや欠陥が生じる。また、加工性という点では膜厚が厚いことでブロッキングが発生したり、製造コストがかかるおそれもある。さらには、フィルムのリサイクル性に悪影響を及ぼす懸念がある。一方、保護層の膜厚が0.10g/m未満であると、充分なガスバリア性および層間密着性が得られないおそれがある。
【0031】
本発明の被覆層に用いる樹脂組成物としては、ウレタン系、ポリエステル系、アクリル系、チタン系、イソシアネート系、イミン系、ポリブタジエン系等の樹脂に、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系等の硬化剤を添加したものが挙げられる。さらにケイ素系架橋剤、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物等の架橋剤を含むことができる。
特にウレタン樹脂の含有は、ウレタン結合自体の高い凝集性によるバリア性能に加え、極性基が無機薄膜層と相互作用するとともに、非晶部分の存在により柔軟性をも有するため、屈曲負荷がかかった際にもダメージを抑えることができるため好ましい。また、ポリエステル樹脂も同様の効果が期待できるため、好適である。本発明においては、ポリエステル+イソシアネートを構成成分としたポリウレタンを含有するのが好ましく、さらに、接着性を向上させることができるという観点から、ケイ素系架橋剤を添加するとより好ましい。
【0032】
(1)ウレタン樹脂
本発明で用いるウレタン樹脂は、ガスバリア性向上の面から、芳香族または芳香脂肪族ジイソシアネート成分を主な構成成分として含有するウレタン樹脂を用いることがより好ましい。その中でも、メタキシリレンジイソシアネート成分を含有することが特に好ましい。上記樹脂を用いることで、芳香環同士のスタッキング効果によりウレタン結合の凝集力を一層高めることができ、結果として良好なガスバリア性が得られる。
【0033】
本発明においては、ウレタン樹脂中の芳香族または芳香脂肪族ジイソシアネートの割合を、ポリイソシアネート成分100モル%中、50モル%以上(50~100モル%)の範囲とすることが好ましい。芳香族または芳香脂肪族ジイソシアネートの合計量の割合は、60~100モル%が好ましく、より好ましくは70~100モル%、さらに好ましくは80~100モル%である。芳香族または芳香脂肪族ジイソシアネートの合計量の割合が50モル%未満であると、良好なガスバリア性が得られない可能性がある。
【0034】
(2)架橋剤
本発明で用いるウレタン樹脂には、膜の凝集力向上および耐湿熱接着性を向上させる目的で、ガスバリア性を損なわない範囲で、各種の架橋剤を配合してもよい。架橋剤としては、例えば、ケイ素系架橋剤、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物等が例示できる。その中でも、ケイ素系架橋剤を配合することにより、特に無機薄膜層との耐水接着性を向上させることができるという観点から、ケイ素系架橋剤が特に好ましい。その他に架橋剤として、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物等を併用してもよい。
【0035】
ケイ素系架橋剤としては、無機物と有機物との架橋という観点から、シランカップリング剤が好ましい。シランカップリング剤としては、加水分解性アルコキシシラン化合物、例えば、ハロゲン含有アルコキシシラン(2-クロロエチルトリメトキシシラン、2-クロロエチルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン等のクロロC2‐4アルキルトリC1‐4アルコキシシランなど)、エポキシ基を有するアルコキシシラン[2-グリシジルオキシエチルトリメトキシシラン、2-グリシジルオキシエチルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン等のグリシジルオキシC2-4アルキルトリC1‐4アルコキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン等のグリシジルオキシジC2‐4アルキルジC1‐4アルコキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン等の(エポキシシクロアルキル)C2‐4アルキルトリC1‐4アルコキシシラン等]、アミノ基を有するアルコキシシラン[2-アミノエチルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノC2‐4アルキルトリC1‐4アルコキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン等のアミノジC2‐4アルキルジC1‐4アルコシシラン、2-[N-(2-アミノエチル)アミノ]エチルトリメトキシシラン、3-[N-(2-アミノエチル)アミノ]プロピルトリメトキシシラン、3-[N-(2-アミノエチル)アミノ]プロピルトリエトキシシラン等の(2-アミノC2‐4アルキル)アミノC2‐4アルキルトリC1‐4アルコキシシラン、3-[N-(2-アミノエチル)アミノ]プロピルメチルジメトキシシラン、3-[N-(2-アミノエチル)アミノ]プロピルメチルジエトキシシラン等の(アミノC2‐4アルキル)アミノジC2‐4アルキルジC1‐4アルコキシシラン等]、メルカプト基を有するアルコキシシラン(2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトC2‐4アルキルトリC1-4アルコキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等のメルカプトジC2‐4アルキルジC1‐4アルコキシシラン等)、ビニル基を有するアルコキシシラン(ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニルトリC1‐4アルコキシシラン等)、エチレン性不飽和結合基を有するアルコキシシラン[2-(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、2-(メタ)アクリロキシエチルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の(メタ)アクリロキシC2‐4アルキルトリC1-4アルコキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等の(メタ)アクリロキシジC2‐4アルキルジC1‐4アルコキシシラン等)等が例示できる。これらのシランカップリング剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのシランカップリング剤のうち、アミノ基を有するシランカップリング剤が好ましい。
【0036】
ケイ素系架橋剤は被覆層中に、0.05~4.00質量%添加することが好ましく、より好ましくは0.10~3.50質量%、さらに好ましくは0.15~3.00質量%である。シランカップリング剤の添加により、膜の硬化が進み凝集力が向上、結果として耐水接着性に優れた膜になり、さらにオリゴマーの表出を防ぐ効果も期待できる。添加量が3.00質量%を超えると、膜の硬化が進み凝集力が向上するが、一部未反応部分も生じ、層間の接着性は低下するおそれがある。一方、添加量が0.05質量%未満であると、十分な凝集力が得られないおそれがある。
【0037】
(3)ポリエステル樹脂
本発明で用いるポリエステル樹脂は、多価カルボン酸成分と、多価アルコール成分を重縮合することにより製造される。ポリエステルの分子量としては、コーティング材として十分な膜の靭性や塗工適性、溶媒溶解性が付与できるのであれば特に制限はないが数平均分子量で1000~50000、さらに好ましくは、1500~30000である。ポリエステル末端の官能基としても特に制限はなく、アルコール末端でも、カルボン酸末端でも、これらの両方を持っていても良い。但し、イソシアネート系硬化剤を併用する場合には、アルコール末端が主体であるポリエステルポリオールとする必要がある。
【0038】
本発明で用いるポリエステルのTgは10℃以上であることが好ましい。これ以上温度が低いと、樹脂がコーティング操作後に粘着性を持ち、ブロッキングを生じやすくなり、コーティング後の巻き取り操作がしにくくなるためである。Tgが10℃以下になるとブロッキング防止材の添加によっても巻き芯付近の圧力が高い状況下でもブロッキング防止対応が困難になるためである。Tgのより好ましい温度は15℃以上、さらに好ましくは20℃以上である。
【0039】
本発明で用いるポリエステルは、多価カルボン酸成分と、多価アルコール成分とを重縮合して用いる。
[多価カルボン酸成分]
本発明で用いるポリエステルの多価カルボン酸成分は、オルト配向芳香族ジカルボン酸又はその無水物の少なくとも1種を含むことに特徴を有する。オルト配向にすることで溶剤への溶解性が向上し、基材に対して均一にコーティングをすることが可能となる。均一にコートされた被覆層はバリア性能のばらつきが小さくなり、結果的にオリゴ白化抑制に寄与する。また、オルト配向にすることで柔軟性に優れた膜となり界面接着力が向上するため、湿熱処理による基材へのダメージを軽減でき、オリゴマーの抑制につながる。
カルボン酸がオルト位に置換された芳香族多価カルボン酸又はその無水物としては、オルトフタル酸又はその無水物、ナフタレン2,3-ジカルボン酸又はその無水物、ナフタレン1,2-ジカルボン酸又はその無水物、アントラキノン2,3-ジカルボン酸又はその無水物、及び2,3-アントラセンカルボン酸又はその無水物等が挙げられる。これらの化合物は、芳香環の任意の炭素原子に置換基を有していてもよい。該置換基としては、クロロ基、ブロモ基、メチル基、エチル基、i-プロピル基、ヒドロキシル基、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、メチルチオ基、フェニルチオ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、フタルイミド基、カルボキシル基、カルバモイル基、N-エチルカルバモイル基、フェニル基又はナフチル基等が挙げられる。また、これらのポリカルボン酸全成分100モル%に対する含有率が70~100モル%であるポリエステルポリオールであると、バリア性の向上効果が高い上に、コーティング材として必須の溶媒溶解性に優れることから特に好ましい。
【0040】
本発明では発明の効果を損なわない範囲において、他の多価カルボン酸成分を共重合させてもよい。具体的には、脂肪族多価カルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等を、不飽和結合含有多価カルボン酸としては、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸等を、脂環族多価カルボン酸としては1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等を、芳香族多価カルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、ジフェン酸及びその無水物、1,2-ビス(フェノキシ)エタン-p,p’-ジカルボン酸及びこれらジカルボン酸の無水物或いはエステル形成性誘導体;p-ヒドロキシ安息香酸、p-(2-ヒドロキシエトキシ)安息香酸及びこれらのジヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体等の多塩基酸を単独で或いは二種以上の混合物で使用することができる。中でも、有機溶剤溶解性とガスバリア性の観点からコハク酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタル酸、ジフェン酸が好ましい。
【0041】
[多価アルコール成分]
本発明で用いるポリエステルの多価アルコール成分はガスバリア補填の性能を示すポリエステルを合成することができれば特に限定されないが、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、及び1,3-ビスヒドロキシエチルベンゼンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む多価アルコール成分を含有することが好ましい。中でも、酸素原子間の炭素原子数が少ないほど、分子鎖が過剰に柔軟にならずに、酸素透過しにくいと推定されることから、エチレングリコールを主成分として使用することが最も好ましい。
【0042】
本発明では前述の多価アルコール成分を用いることが好ましいが、このほか、本発明の効果を損なわない範囲において、他の多価アルコール成分を共重合させてもよい。具体的には、ジオールとしては1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、メチルペンタンジオール、ジメチルブタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールが、三価以上のアルコールとしては、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,2,4-ブタントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスルトール等があげられる。特に、三価のアルコールの内、グリセロール及び、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートを併用したポリエステルは、分岐構造に由来して架橋密度も適度に高いことにより有機溶媒溶解性が良好な上、バリア機能も優れており、特に好ましく用いられる。
【0043】
本発明のポリエステルを得る反応に用いられる触媒としては、モノブチル酸化錫、ジブチル酸化錫等錫系触媒、テトラ-イソプロピル-チタネート、テトラ-ブチル-チタネート等のチタン系触媒、テトラ-ブチル-ジルコネート等のジルコニア系触媒等の酸触媒が挙げられる。エステル反応に対する活性が高い、テトラ-イソプロピル-チタネート、テトラ-ブチル-チタネート等の上記チタン系触媒と上記ジルコニア触媒を組み合わせて用いることが好ましい。前記触媒量は、使用する反応原料全質量に対して1~1000ppm用いられ、より好ましくは10~100ppmである。1ppmを下回ると触媒としての効果が得られにくく、1000ppmを上回るとイソシアネート硬化剤を用いる場合にウレタン化反応を阻害する問題が生じる場合がある。
【0044】
(4)イソシアネート系硬化剤
本発明では、被覆層を構成するコーティング剤の主剤としてポリエステル樹脂を用いる場合、硬化剤としてはイソシアネート系のものを用いて、ウレタン樹脂とする必要がある。この場合、コーティング層が架橋系になるため耐熱性や、耐摩耗性、剛性が向上する利点がある。従って、ボイルやレトルト包装にも使用しやすい。その一方で硬化剤を混合した後では液を再利用できない、塗工後に硬化(エージング)工程が必須になる問題点もある。利点として単純なオーバーコートワニスとして例えば、塗工液の増粘の恐れがなく塗工製造の管理が容易、コーティング液を希釈再利用可能であり、加えて硬化工程(いわゆるエージング工程)が不要である点が例示できる。このとき、使用するポリエステルの末端は、ポリオールでもポリカルボン酸でも、この両者の混合物であっても問題なく用いることができる。その一方で、コーティング層の樹脂が直鎖であるため耐熱性や、耐摩耗性が十分ではない場合や、ボイルやレトルト包装に使用しにくい問題が生じる場合がある。
【0045】
コーティング層に硬化剤を用いる場合にはフィルムへのコーティングであるためフィルムの耐熱性の観点からイソシアネート硬化系が好ましく、この場合にはコーティング材の樹脂成分がポリエステルポリオールである必要がある。一方、エポキシ系化合物を硬化剤として用いる場合にはポリエステルポリカルボン酸である必要がある。これらの場合ではコーティング層が架橋系になるため耐熱性や、耐摩耗性、剛性が向上する利点がある。従って、ボイルやレトルト包装にも使用しやすい。その一方で硬化剤を混合した後では液を再利用できない、塗工後に硬化(エージング)工程が必須になる問題点もある。
【0046】
本発明で用いられるポリイソシアネート化合物は、ポリエステルが水酸基を有する場合、少なくとも一部が反応し、ウレタン構造を作ることで樹脂成分として高極性化し、ポリマー鎖間を凝集させることでガスバリア機能を更に強化できる。また、コーティング材の樹脂が直鎖型の樹脂である場合に、3価以上のポリイソシアネートで架橋することで、耐熱性や、耐摩耗性を付与することができる。本発明で用いられるポリイソシアネート化合物としてはジイソシアネート、3価以上のポリイソシアネート、低分子化合物、高分子化合物のいずれでもよいが、骨格の一部に芳香族環、または脂肪族環を含有するとガスバリア向上機能の観点から好ましい。たとえば、芳香族環を持つイソシアネートとしては、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、脂肪族環を持つイソシアネートとしては、水素化キシリレンジイソシアネート、水素化トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルンジイソシアネート、あるいはこれらのイソシアネート化合物の3量体、およびこれらのイソシアネート化合物の過剰量と、たとえばエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ソルビトール、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの低分子活性水素化合物または各種ポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリアミド類の高分子活性水素化合物などと反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物が挙げられる。
【0047】
被覆層用樹脂組成物の塗工方式は、フィルム表面に塗工して層を形成させる方法であれば特に限定されるものではない。例えば、グラビアコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、ダイコーティング等の通常のコーティング方法を採用することができる。
【0048】
被覆層を形成する際には、被覆層用樹脂組成物を塗布した後、加熱乾燥することが好ましく、その際の乾燥温度は100~145℃が好ましく、より好ましくは110~140℃、さらに好ましくは110~130℃である。乾燥温度が100℃未満であると、被覆層に乾燥不足が生じるおそれがある。一方、乾燥温度が145℃を超えると、フィルムに熱がかかりすぎてしまいフィルムが脆くなったり、収縮して加工性が悪くなったりする虞がある。特に、塗布直後に80℃~110℃の比較的低温条件でまず溶媒を揮発させ、その後120℃以上で乾燥させると、均一な膜が得られるため、特に好ましい。また、乾燥とは別に、できるだけ低温領域で追加の熱処理を加えることも、被覆層の造膜を進行させるうえで、さらに効果的である。
【0049】
[無機薄膜層]
本発明の積層フィルムは、前記被覆層の表面に無機薄膜層を有することができる。無機薄膜層は金属または無機酸化物からなる薄膜である。無機薄膜層を形成する材料は、薄膜にできるものなら特に制限はないが、ガスバリア性の観点から、アルミニウム、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ケイ素と酸化アルミニウムとの混合物等の無機酸化物が好ましく挙げられる。この複合酸化物において、酸化ケイ素と酸化アルミニウムとの混合比は、金属分の質量比でAlが20~70質量%の範囲であることが好ましい。Al濃度が20質量%未満であると、水蒸気バリア性が低くなる場合がある。一方、70質量%を超えると、無機薄膜層が硬くなる傾向があり、印刷やラミネートといった二次加工の際に膜が破壊されてガスバリア性が低下する虞がある。また、Al濃度が100質量%の場合、水蒸気バリア性能は良好となるが、単一材料であることから表面が平滑な傾向があり、滑り性が悪く加工上の不具合(シワ・ニキビ等)が生じやすくなる。なお、ここでいう酸化ケイ素とはSiOやSiO等の各種珪素酸化物又はそれらの混合物であり、酸化アルミニウムとは、AlOやAl等の各種アルミニウム酸化物又はそれらの混合物である。
【0050】
無機薄膜層の膜厚は、通常1~100nm、好ましくは5~50nmである。無機薄膜層の膜厚が1nm未満であると、満足のいくガスバリア性が得られ難くなる場合があり、一方、100nmを超えて過度に厚くしても、それに相当するガスバリア性の向上効果は得られず、耐屈曲性や製造コストの点でかえって不利となる。
【0051】
無機薄膜層を形成する方法としては、特に制限はなく、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法(PVD法)、あるいは化学蒸着法(CVD法)等、公知の蒸着法を適宜採用すればよい。以下、無機薄膜層を形成する典型的な方法を、酸化ケイ素・酸化アルミニウム系薄膜を例に説明する。例えば、真空蒸着法を採用する場合は、蒸着原料としてSiOとAlの混合物、あるいはSiOとAlの混合物等が好ましく用いられる。これら蒸着原料としては通常粒子が用いられるが、その際、各粒子の大きさは蒸着時の圧力が変化しない程度の大きさであることが望ましく、好ましい粒子径は1mm~5mmである。加熱には、抵抗加熱、高周波誘導加熱、電子ビーム加熱、レーザー加熱などの方式を採用することができる。また、反応ガスとして酸素、窒素、水素、アルゴン、炭酸ガス、水蒸気等を導入したり、オゾン添加、イオンアシスト等の手段を用いた反応性蒸着を採用することも可能である。さらに、被蒸着体(蒸着に供する積層フィルム)にバイアスを印加したり、被蒸着体を加熱もしくは冷却するなど、成膜条件も任意に変更することができる。このような蒸着材料、反応ガス、被蒸着体のバイアス、加熱・冷却等は、スパッタリング法やCVD法を採用する場合にも同様に変更可能である。
【0052】
[保護層]
本発明においては、さらにガスバリア性能が必要な場合や印刷等の加工が必要な場合において、前記無機薄膜層の上に保護層を有することもできる。無機薄膜層は完全に密な膜ではなく、微小な欠損部分が点在している。無機薄膜層上に後述する特定の保護層用樹脂組成物を塗工して保護層を形成することにより、無機薄膜層の欠損部分に保護層用樹脂組成物中の樹脂が浸透し、結果としてガスバリア性が安定するという効果が得られる。加えて、保護層そのものにもガスバリア性を持つ材料を使用することで、積層フィルムのガスバリア性能も大きく向上することになる。ただし、保護層を設けることで工程が増えることによるコストアップや使用材料によっては環境への負荷が生じることに留意する必要がある。また、保護層により表面粗さ等の物性値が変化することにも留意する必要がある。
【0053】
保護層の付着量は0.10~0.50g/mとすることが好ましい。これにより、塗工において保護層を均一に制御することができるため、結果としてコートムラや欠陥の少ない膜となる。また保護層自体の凝集力が向上し、無機薄膜層-保護層間の密着性も強固になる。保護層の付着量が0.50g/mを超えると、ガスバリア性は向上するが、保護層内部の凝集力が不充分となり、また保護層の均一性も低下するため、コート外観にムラや欠陥が生じたり、ガスバリア性・接着性を充分に発現できない場合がある。一方、保護層の膜厚が0.10g/m未満であると、充分なガスバリア性および層間密着性が得られないおそれがある。
【0054】
本発明の積層フィルムの無機薄膜層の表面に形成する保護層に用いる樹脂組成物としては、ビニルアルコール系、ウレタン系、ポリエステル系、アクリル系、チタン系、イソシアネート系、イミン系、ポリブタジエン系等の樹脂に、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系等の硬化剤を添加したものが挙げられる。
【0055】
保護層用樹脂組成物の塗工方式は、フィルム表面に塗工して層を形成させる方法であれば特に限定されるものではない。例えば、グラビアコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、ダイコーティング等の通常のコーティング方法を採用することができる。
【0056】
[積層フィルム]
本発明の積層フィルムは、以下のようなフィルム物性を示す。なお、以下の各物性は、実施例で後述する方法で測定、評価する。
【0057】
本発明の積層フィルム全体の厚みは9μm以上、200m以下が好ましく、10μm以上、150μm以下がより好ましく、12μm以上、100μm以下がさらに好ましく、15μm以上、80μm以下が特に好ましい。
【0058】
また、フィルム全体の厚みに対する全基材層の厚みは50%以上、99%以下であることが好ましく、さらに好ましくは60以上、97%以下、特に好ましくは70%以上、95%以下、最も好ましくは80%以上、92%以下である。
【0059】
本発明の積層フィルムでは、被覆層の全反射赤外吸収スペクトルにおける1720±10cm-1の領域に吸収極大を持つピーク強度(P1)と1070±10cm-1の領域に吸収極大を持つピーク強度(P2)の比(P2/P1)が0.1以上30.0以下の範囲内であることが好ましい。好ましくは0.1~20.0の範囲であり、より好ましくは0.2~10.0の範囲である。1720±10cm-1のピークは、芳香族や芳香脂肪族エステル骨格に由来するC=O構造由来のピークであり、ポリエステル骨格の量を示す指標となる。また、1070±10cm-1のピークはC-OH由来のピークであり、被覆層中のポリエステル由来の水酸基量を示す指標となる。(P2/P1)はポリエステル骨格における水酸基の比率を表しており、本比率が上記範囲にあることで、膜の靭性を損なうことなく膜が高極性化し、無機薄膜層を積層した際に、被覆層と無機薄膜層の密着力が高まり、結果としてガスバリア性能が最大限発揮される。(P2/P1)が0.1未満であると、被覆層中の水酸基量が少なく、無機薄膜層の膜形成が疎になり、ガスバリア性が得られ難くなる場合がある。一方、(P2/P1)が30.0を超えると、無機薄膜層との結合力は強まるが被覆層中の架橋が進まずに造膜性が低下して脆くなるおそれがある。被覆層の(P2/P1)の値を前記の所定の数値範囲とするには、前述の材料を使用して前述の所定の付着量とし、さらには材料の配合比を前述の適性範囲とし、後述の乾燥・熱処理条件と組み合わせることが必要である。
【0060】
本発明の積層フィルムでは、100℃での加熱伸び率が、MD方向、TD方向のいずれも3%以下であることが好ましい。これにより、無機薄膜層の積層時に蒸発源や蒸着粒子から受ける熱によって、基材が伸びにくく、ガスバリア性能や品位をより向上することができる。100℃でのMD方向、及びTD方向の加熱伸び率は、好ましくは2.8%以下、より好ましくは2.5%以下、下限は0%が好ましい。100℃でのMD方向の加熱伸び率が3%を超えると、無機薄膜層の積層時に蒸発源や蒸着粒子から受ける熱によって、積層フィルムが変形してガスバリア性を低下させたり、品位が低下する場合がある。
また、130℃での加熱伸び率が、MD方向、TD方向のいずれも10%以下であることが好ましい。130℃でのMD方向、及びTD方向の加熱伸び率は、好ましくは8%以下、より好ましくは7%以下、さらに好ましくは6.5%以下であり、下限は0%が好ましい。
本発明において、加熱伸び率はTMA法で測定される値であり、より詳細には実施例に記載の方法による。
【0061】
本発明の積層フィルムの被覆層側の表面の走査型プローブ顕微鏡(AFM)による最大山高さ(Rp)と最大谷深さ(Rv)との合計は、0.1nm以上、30.0nm以下であることが好適である。最大山高さ(Rp)および最大谷深さ(Rv)とは、走査型プローブ顕微鏡(AFM)を使用し、ダイナミックモードにてX、Y方向の測定長さが共に2μmの範囲で測定し、得られた画像を補正(傾き、ラインフィット、ノイズライン除去)後、JIS-B0601(1994)に記載の定義に準じて求めたものである。
【0062】
AFMによる2μm角範囲の最大山高さ(Rp)および最大谷深さ(Rv)は、アンチブロッキング剤や滑剤により形成された比較的大きな山や谷以外の樹脂自体の凹凸を表す指標であり、被覆層の表面に無機薄膜層を積層する際に、凹凸による無機薄膜層の形成不良や、割れを誘発する可能性がある。最大山高さ(Rp)と最大谷深さ(Rv)との合計が30.0nmを超える場合、表面凹凸が大きく、無機薄膜形成時に抜けが発生し、バリア性などが不良となる。被覆層側表面の最大山高さ(Rp)と最大谷深さ(Rv)との合計は20.0nm以下がより好ましく、10.0nm以下がさらに好ましく、7.0nm以下が最も好ましい。
【0063】
本発明の積層フィルムに無機薄膜層を積層した場合の、23℃×65%RH条件下における酸素透過度が15cc/m/d/atm以下となることが好ましい。より好ましくは10cc/m/d/atm以下、さらに好ましくは8cc/m/d/atm以下である。酸素透過度の好ましい下限は、0.1cc/m/d/atm以上である。また、40℃×90%RH条件下における水蒸気透過度が3.0g/m/d以下であることが好ましい。さらに好ましくは2.5g/m/d以下、より好ましくは2.0g/m/d以下である。水蒸気透過度の好ましい下限は、0.1g/m/d以上である。
【0064】
[積層体]
本発明の積層フィルムを包装材料として用いる場合には、シーラントと呼ばれるヒートシール性樹脂層を形成した積層体とすることが好ましい。ヒートシール性樹脂層は通常、被覆層または無機薄膜層側に設けられるが、基材フィルム層の外側(無機薄膜形成面の反対側の面)に設けることもある。ヒートシール性樹脂層の形成は、通常押出しラミネート法あるいはドライラミネート法によりなされる。ヒートシール性樹脂層を形成する熱可塑性重合体としては、シーラント接着性が充分に発現できるものであればよいが、オレフィン系のHDPE、LDPE、LLDPEなどのポリエチレン樹脂類、ポリプロピレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-α-オレフィンランダム共重合体、アイオノマー樹脂等を使用できる。この中でも耐久性、シール強度、価格、モノマテリアル化の観点から汎用性が高いLLDPEまたはポリプロピレン樹脂が特に好ましい。シーラント層の厚みは20~100μmが好ましく、さらに好ましくは30~90μm、より好ましくは40~80μmである。厚みが20μmより薄いと十分なシール強度が得られないことや、腰感がなく取り扱いづらい可能性がある。一方、厚みが100μmを超えると腰感が強く袋としての取り扱い性が低下する他、価格も高額になる恐れがある。
【0065】
[接着剤層]
本発明で用いられる接着剤層は、汎用的なラミネート用接着剤が使用できる。たとえば、ポリ(エステル)ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、エポキシ系、ポリ(メタ)アクリル系、ポリエチレンイミン系、エチレン-(メタ)アクリル酸系、ポリ酢酸ビニル系、(変性)ポリオレフィン系、ポリブタジェン系、ワックス系、カゼイン系等を主成分とする(無)溶剤型、水性型、熱溶融型の接着剤を使用することができる。この中でも、耐熱性と、各基材の加熱伸びに追随できる柔軟性を考慮すると、ウレタン系またはポリエステル系が好ましい。上記接着剤層の積層方法としては、たとえば、ダイレクトグラビアコート法、リバースグラビアコート法、キスコート法、ダイコート法、ロールコート法、ディップコート法、ナイフコート法、スプレーコート法、フォンテンコート法、その他の方法で塗布することができ、十分な接着性を発現するため、乾燥後の塗工量は1~8g/mが好ましい。より好ましくは2~7g/m、さらに好ましくは3~6g/mである。塗工量が1g/m未満であると、全面で貼り合せることが困難になり、接着力が低下する。また、8g/m以上を超えると、膜の完全な硬化に時間がかかり、未反応物が残りやすく、接着力が低下する。
【0066】
[印刷層]
さらに、本発明の積層フィルムには、基材フィルム層とヒートシール性樹脂層との間またはその外側に、印刷層や他のプラスチック基材および/または紙基材を少なくとも1層以上積層してもよい。
【0067】
印刷層を形成する印刷インクとしては、水性および溶媒系の樹脂含有印刷インクが好ましく使用できる。ここで印刷インクに使用される樹脂としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル共重合樹脂およびこれらの混合物が例示される。印刷インクには、帯電防止剤、光線遮断剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、フィラー、着色剤、安定剤、潤滑剤、消泡剤、架橋剤、耐ブロッキング剤、酸化防止剤等の公知の添加剤を含有させてもよい。印刷層を設けるための印刷方法としては、特に限定されず、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法等の公知の印刷方法が使用できる。印刷後の溶媒の乾燥には、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線乾燥等公知の乾燥方法が使用できる。
【実施例0068】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。なお、フィルムの評価は次の測定法によって行った。
【0069】
[測定方法]
【0070】
(1) 積層フィルムの全反射赤外吸収スペクトルの測定方法
各実施例および比較例において、基材フィルム上に被覆層を積層した段階で得られた各積層フィルム単体の被覆層の面について、全反射吸収赤外分光法で全反射赤外吸収スペクトルを測定し、1720±10cm-1の領域に吸収極大を持つピーク強度(P1)および1070±10cm-1の領域に吸収極大を持つピーク強度(P2)を求め、その強度比(P2/P1)を算出した。各ピーク強度の算出は、吸光度ゼロのベースラインと、各ピークトップを、垂直に結んだピーク高さから行った。
【0071】
(2) 最大山高さ(Rp)および最大谷深さ(Rv)(nm)
各実施例および比較例において、得られた積層フィルムの被覆層側面の最大山高さ(Rp)および最大谷深さ(Rv)は、走査型プローブ顕微鏡(島津製作所製「SPM-9700」)を用いて測定した。位相モードにてX、Y方向の測定長さが共に2μmの範囲で測定し、得られた画像を補正(傾き、ラインフィット、ノイズライン除去)後、JIS-B0601(1994)に記載の定義に準じて求めた。
【0072】
(3)被覆層の付着量
各実施例および比較例において、基材フィルム上に被覆層を積層した段階で得られた各積層フィルムを試料とし、この試料から100mm×100mmの試験片を切り出し、アセトンによる被覆層の拭き取りを行い、拭き取り前後のフィルムの質量変化から付着量を算出した。
【0073】
(4)加熱伸び率(%)
各実施例および比較例において、加熱伸び率は、熱機械分析装置(島津製作所製「TMA-60」)を用いて、温度変調TMA測定により求めた。
MD方向の加熱伸び率は、実施例、比較例の積層フィルムからMD方向に幅30mm、TD方向に幅4mmとなるように短冊を切り出してサンプルを作製した。測定条件は、チャック間距離を10mm、測定温度範囲を30℃から150℃、昇温速度を20℃/分、サンプル片にかける引張荷重を0.39Nとした。炉内温度が100℃に到達したときのチャック間距離(mm)と130℃に到達したときのチャック間距離(mm)から、加熱伸び率を求めた。
TD方向の加熱伸び率は、実施例、比較例の積層フィルムからTD方向に幅30mm、MD方向に幅4mmとなるように短冊を切り出してサンプルを作製した。測定条件は、チャック間距離を10mm、測定温度範囲を30℃から150℃、昇温速度を20℃/分、サンプル片にかける引張荷重を0.39Nとした。炉内温度が100℃に到達したときのチャック間距離(mm)と130℃に到達したときのチャック間距離(mm)から、加熱伸び率を求めた。
100℃に到達したときの加熱伸び率(S100)および130℃に到達したときの加熱伸び率(S130)はそれぞれ以下の式により求めた。

(S100)=(100℃に加熱した時のチャック間距離-昇温前のチャック間距離)/昇温前のチャック間距離×100

(S130)=(130℃に加熱した時のチャック間距離-昇温前のチャック間距離)/昇温前のチャック間距離×100
【0074】
(5)無機薄膜層の組成・膜厚
実施例、比較例で得られた積層フィルム(薄膜積層後)について、蛍光X線分析装置((株)リガク製「ZSX100e」)を用いて、予め作成した検量線により膜厚組成を測定した。なお、励起X線管の条件として50kV、70mAとした。
【0075】
(6)酸素透過度の評価方法
各実施例および比較例で得られた積層フィルム(薄膜積層後)において、JIS-K7126 B法に準じて、酸素透過度測定装置(MOCON社製「OX-TRAN(登録商標)1/50」)を用い、温度23℃、湿度65%RHの雰囲気下で酸素透過度を測定した。なお、酸素透過度の測定は、基材層側から酸素が透過する方向で行った。
【0076】
(7)水蒸気透過度の評価方法
各実施例および比較例で得られた積層フィルム(薄膜積層後)において、JIS-K7129 B法に準じて、水蒸気透過度測定装置(MOCON社製「PERMATRAN-W 3/33MG」)を用い、温度40℃、湿度90%RHの雰囲気下で水蒸気透過度を測定した。なお、水蒸気透過度の測定は、基材層側から水蒸気が透過する方向で行った。
【0077】
(8)外観評価方法
各実施例および比較例において、被覆層を積層後に被覆層側表面の外観を目視で評価した。
○:欠点の発生がなく良好
×:シワ、塗工ムラ、ハジキのいずれかの欠点が発生
【0078】
[基材フィルム層の作製]
下記ポリオレフィン基材フィルム作製で使用したポリプロピレン系樹脂原料の詳細、フィルム製膜条件、原料配合比率を表1~4に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
【表3】
【0082】
【表4】
【0083】
(OPP-1)
基材層(A)には、表1に示すポリプロピレン単独重合体PP-1を用いた。
また、表面層(B)には、表1に示すポリプロピレン単独重合体PP-1を96.4重量%、表2に示すマスターバッチAを3.6重量%の割合で配合したものを使用した。
表面層(C)には、表1に示すポリプロピレン単独重合体PP-1を94.0重量%、表2に示すマスターバッチAを6.0重量%の割合で配合したものを使用した。
基材層(A)は45mm押出機、表面層(B)は25mm押出機、表面層(C)は20mm押出機を用いて、それぞれ原料樹脂を250℃で溶融し、Tダイからシート状に共押し出しし、30℃の冷却ロールに表面層(B)が接触するよう冷却固化した後、135℃で縦方向(MD)に4.5倍に延伸した。次いでテンター内で、フィルム幅方向(TD)両端をクリップで挟み、173℃で予熱後、164℃で幅方向(TD)に8.2倍に延伸し、幅方向(TD)に6.7%緩和させながら、171℃で熱固定した。このときの製膜条件を製膜条件aとした。
こうして、表面層(B)/基材層(A)/表面層(C)の構成の二軸配向ポリプロピレン系フィルムを得た。
二軸配向ポリプロピレン系フィルムの表面層(B)の表面を、ソフタル・コロナ・アンド・プラズマGmbH社製のコロナ処理機を用いて、印加電流値:0.75Aの条件で、コロナ処理を施した後、ワインダーで巻き取った。得られたフィルムの厚みは20μm(表面層(B)/基材層(A)/表面層(C)の厚みが1.0μm/18.0μm/1.0μm)であった。
【0084】
(OPP-2)
基材層(A)には、表1に示すポリプロピレン単独重合体PP-2を40.0重量%、表1に示すポリプロピレン単独重合体PP-3を60.0重量%用いた。
また、表面層(B)には、表1に示すポリプロピレン単独重合体PP-3を96.4重量%、表2に示すマスターバッチAを3.6重量%の割合で配合したものを使用した。
表面層(C)には、表1に示すポリプロピレン単独重合体PP-3を94.0重量%、表2に示すマスターバッチAを6.0重量%の割合で配合したものを使用した。
基材層(A)は45mm押出機、表面層(B)は25mm押出機、表面層(C)は20mm押出機を用いて、それぞれ原料樹脂を250℃で溶融し、Tダイからシート状に共押し出しし、30℃の冷却ロールに表面層(B)が接触するよう冷却固化した後、125℃で縦方向(MD)に4.5倍に延伸した。次いでテンター内で、フィルム幅方向(TD)両端をクリップで挟み、168℃で予熱後、155℃で幅方向(TD)に8.2倍に延伸し、幅方向(TD)に6.7%緩和させながら、165℃で熱固定した。このときの製膜条件を製膜条件bとした。
こうして、表面層(B)/基材層(A)/表面層(C)の構成の二軸配向ポリプロピレン系フィルムを得た。
二軸配向ポリプロピレン系フィルムの表面層(B)の表面を、ソフタル・コロナ・アンド・プラズマGmbH社製のコロナ処理機を用いて、印加電流値:0.75Aの条件で、コロナ処理を施した後、ワインダーで巻き取った。得られたフィルムの厚みは20μm(表面層(B)/基材層(A)/表面層(C)の厚みが1.0μm/18.0μm/1.0μm)であった。
【0085】
[被覆層の作製]
以下に各実施例及び比較例で使用した被覆層の作製方法を記す。
[ポリエステル樹脂(A)]
ポリエステル成分として、ポリエステルポリオール(DIC社製「DF-COAT GEC-004C」:固形分30%)を用いた。
【0086】
[ポリイソシアネート架橋剤(B)]
ポリイソシアネート成分として、メタキシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体(三井化学社製「タケネートD-110N」:固形分75%)を用いた。
【0087】
[シランカップリング剤(C)]
シランカップリング剤として、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製「KBM-603」)を用いた。
【0088】
[ウレタン樹脂(D)]
ウレタン樹脂として、ポリエステルウレタン樹脂のディスパージョン(DIC社製「ハイドラン(登録商標)AP-201」;固形分23%)を用いた。
【0089】
[ウレタン樹脂(E)]
ウレタン樹脂として、ポリエステルウレタン樹脂のディスパージョン(三井化学社製「タケラック(登録商標)WPB531」;固形分30%)を用いた。
【0090】
[塗工液1]
シランカップリング剤(C)をアセトンに溶解した溶液(15質量%)およびイソシアネート(B)を下記比率で混合させ、10分間マグネチックスターラ―を用いて撹拌した。得られた調合液をメチルエチルケトンおよび1-メトキシ-2-プロパノール(以下PGM)で希釈し、さらにポリエステル樹脂(A)を添加し、目的の塗工液1を得た。混合比を以下に示す。
ポリエステル樹脂(A) 10.62質量%
イソシアネート(B) 4.07質量%
シランカップリング剤(C)※アセトン希釈液 1.73質量%
メチルエチルケトン 69.55質量%
PGM 14.03質量%
【0091】
[塗工液2]
下記の塗剤を混合し、塗工液2を作成した。
水 43.91質量%
イソプロパノール 30.00質量%
ウレタン樹脂(D) 26.09質量%
【0092】
[塗工液3]
下記の塗剤を混合し、塗工液3を作成した。
水 46.00質量%
イソプロパノール 30.00質量%
ウレタン樹脂(E) 24.00質量%
【0093】
[積層フィルムの作製]
(実施例1および2)
基材フィルムにOPP-1を用い、被覆層に塗工液1を用いて、グラビアロールコート法によって、基材フィルムのコロナ処理面上に塗布し、130℃のドライオーブンで10秒間乾燥させた。この時の被覆層の付着量は0.40g/mであった。その後、40℃2日間の後加熱処理を施して、目的の積層フィルムを得た。
(実施例3)
被覆層として、塗工液2を用いた以外は、実施例1と同じ条件で目的の積層フィルムを得た。
(実施例4)
被覆層の付着量を0.25g/mに変更した以外は、実施例1と同じ条件で目的の積層フィルムを得た。
(実施例5)
乾燥温度を110℃に変更する以外は、実施例1と同じ条件で目的の積層フィルムを得た。
(実施例6)
乾燥温度を150℃に変更する以外は、実施例1と同じ条件で目的の積層フィルムを得た。
(比較例1)
実施例1と同じ基材フィルムを用いて、被覆層を積層しなかった。
(比較例2)
被覆層として、塗工液3を用いた以外は、実施例1と同じ条件で目的の積層フィルムを得た。
(比較例3)
基材フィルムとして、OPP-2を用いたこと以外は、実施例1と同じ条件で目的の積層フィルムを得た。
【0094】
[無機薄膜層の形成]
以下に各実施例及び比較例で使用した無機薄膜層の作製方法を記す。
(M-1;実施例1、比較例1)
無機薄膜層M-1として、被覆層上に、二酸化ケイ素と酸化アルミニウムの複合酸化物層を電子ビーム蒸着法で形成した。蒸着源としては、3mm~5mm程度の粒子状SiO(純度99.9%)とA1(純度99.9%)とを用いた。このようにして得られたフィルム(無機薄膜層/被覆層含有フィルム)における無機薄膜層(SiO/A1複合酸化物層)の膜厚は13nmであった。またこの複合酸化物層の組成は、SiO/A1(質量比)=60/40であった。
【0095】
(M-2;実施例2~6、比較例2~3)
無機薄膜層M-2として、被覆層上に金属アルミニウムの蒸着を行った。小型真空蒸着装置(アルバック機工株式会社製、VWR-400/ERH)を使用して、10-3Pa以下に減圧した後、該基板の下部よりニラコ製蒸着源CF-305Wに純度99.9%のアルミホイルをセットし、金属アルミニウムを加熱蒸発させ、フィルム上に厚さ40nmの金属アルミニウム膜を形成した。
【0096】
以上のようにして得られた積層フィルムについて、各種評価を実施した結果を表5に示す。
【0097】
【表5A】
【0098】
【表5B】
【産業上の利用可能性】
【0099】
本願発明によれば、ポリプロピレンフィルムを主体とした環境負荷が少ないほぼ単一の樹脂種から構成されたラミネート構成を形成することができるフィルムであるとともに、無機薄膜層を積層した際に、包装材料に求められるガスバリア性を有する積層フィルムを提供することが可能となった。