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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114729
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】画像読取装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/00 20060101AFI20240816BHJP
   B65H 5/06 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
H04N1/00 567Q
B65H5/06 J
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024096709
(22)【出願日】2024-06-14
(62)【分割の表示】P 2023093428の分割
【原出願日】2017-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095452
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 博樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130535
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 明
(74)【代理人】
【識別番号】100183025
【弁理士】
【氏名又は名称】大角 孝一
(72)【発明者】
【氏名】手塚 誠二
(72)【発明者】
【氏名】小柳 紀幸
(72)【発明者】
【氏名】坂元 直樹
(57)【要約】
【課題】冊子体の読み取りを容易且つ適切に実行できる画像読取装置を提供する。
【解決手段】スキャナー1は、用紙Pの画像を読み取る読取部20と、媒体載置部11に載置される用紙Pを読取部20に向けて給送する場合に、複数枚の用紙が重ねられた用紙束を分離して給送する分離給送を行う第1給送モードと、前記用紙束を分離せずに纏めて給送する非分離給送を行う第2給送モードと、を選択可能な媒体給送部10と、媒体給送部10によって給送された用紙を搬送する第1搬送ローラー対16及び第2搬送ローラー対17と、を備え、媒体給送部10が、前記第2給送モードで給送を行う場合には、第1搬送ローラー対16及び第2搬送ローラー対17を構成する第1従動ローラー16b及び第2従動ローラー17bが、用紙Pを搬送する回転方向に駆動する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を載置する載置部と、
前記載置部から前記媒体を給送する給送ローラーと、
前記給送ローラーとの間で前記媒体をニップして前記媒体の分離を行う分離ローラーと、
前記分離ローラーによって分離された前記媒体の画像を読み取る読取部と、
前記読取部から媒体排出口に向かう方向を第1方向、前記第1方向とは反対の方向を第2方向として、前記読取部に対し前記第2方向に位置するローラー対であって、前記媒体及び複数枚の前記媒体が重ねられた媒体束を搬送する第1搬送ローラー対と、
前記読取部に対し前記第1方向に位置し、前記媒体及び前記媒体束を搬送する第2搬送ローラー対と、
前記給送ローラーを駆動する第1駆動源と、
前記分離ローラー並びに前記第1搬送ローラー対及び前記第2搬送ローラー対を駆動する第2駆動源と、
歯合する複数の歯車によって構成される輪列を有し、前記分離ローラーに前記第2駆動源からの動力を伝達する状態と前記分離ローラーに前記第2駆動源からの動力を伝達しない状態とに切り換え可能な動力伝達機構と、
前記媒体と前記媒体束の給送及び搬送を制御する制御部と、を備え、
前記第1搬送ローラー対を構成する二つのローラーの双方が駆動可能であり、
前記第2搬送ローラー対を構成する二つのローラーの双方が駆動可能であり、
前記制御部は、前記媒体束を搬送する際、前記第1搬送ローラー対を構成する二つのローラーの双方と、前記第2搬送ローラー対を構成する二つのローラーの双方とを、前記媒体を前記第1方向に搬送する第1回転方向に回転駆動し、
更に前記制御部は、
前記載置部に載置される前記媒体を前記読取部に向けて給送する場合に、前記媒体束を分離して給送する分離給送を行う第1給送モードと、前記媒体束を分離せずに纏めて給送する非分離給送を行う第2給送モードと、を選択可能であり、
前記第1給送モードと前記第2給送モードにおいて、前記媒体を前記第1方向に搬送する前記第1回転方向に前記給送ローラーを駆動し、
前記第1給送モードにおいて、前記動力伝達機構が前記第2駆動源の動力を前記分離ローラーに伝達する状態で、前記媒体を前記第2方向に搬送する第2回転方向に前記分離ローラーを駆動し、
前記動力伝達機構は、前記第2給送モードにおいて、前記第2駆動源の動力を前記分離ローラーに伝達しない、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像読取装置において、
前記分離ローラーを保持するホルダーと、
前記ホルダーを押圧する押圧部材と、を備え、
前記ホルダーが前記押圧部材によって押圧されることにより、前記分離ローラーが前記給送ローラーに向けて押圧され、
前記分離ローラーは前記ホルダーごと前記給送ローラーに対して進退する方向に変位可能に構成される、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像読取装置において、
前記分離ローラーにはトルクリミッタが設けられており、
前記第1給送モードにおいて、前記分離ローラーと前記給送ローラーとの間に前記媒体が存在しない場合、或いは1枚のみ存在する場合には、前記トルクリミッタで滑りが生じ、前記分離ローラーが従動回転し、
前記第2給送モードにおいて、前記分離ローラーは自由回転する、
ことを特徴とする画像読取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿を読み取る画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像読取装置の一例であるスキャナーには、媒体としての原稿を自動で送る自動給送装置(ADF(Auto Document Feeder)とも呼ばれる)が設けられ、複数枚の原稿の自動送りと読み込みとを行える様に構成される場合がある。
このような構成の画像読取装置において、例えばパスポートや通帳のような冊子体を読み取りたいといったユーザーのニーズがある。
【0003】
複数枚の原稿を自動で送る自動給送装置によって、前記冊子体の開いたページを読み取らせる場合、前記自動給送装置が重なったページを分離して一枚ずつ送ろうとしてしまい、開いた前記冊子体が送れない状態となり、更には、ジャム(詰まり)が生じて前記冊子体のページを傷めてしまう虞がある。
また、開いた前記冊子体は厚みがあり、媒体を搬送する搬送ローラー対の2つのローラー間に前記冊子体が入っていかず、ノンフィード状態になる場合がある。
【0004】
ここで、前記自動給送装置で前記冊子体を給送可能なスキャナーとして、読み取るページを開いた状態の前記冊子体を透明なホルダーに入れて、前記自動給送装置によって送るように構成されるものがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-174247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ホルダーに入れた冊子体を搬送して読み取らせる特許文献1に記載のスキャナーでは、前記冊子体を前記ホルダーに入れる手間がかかる。
また、前記ホルダーに入れた前記冊子体は、前記冊子体単体よりも厚みが増すため、前記搬送ローラー対においてノンフィードが発生する問題は解決されない。
【0007】
本発明はこの様な状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、冊子体の読み取りを容易且つ適切に実行できる画像読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する為の、本発明の第1の態様に係る画像読取装置は、媒体の画像を読み取る読取部と、媒体載置部に載置される前記媒体を前記読取部に向けて給送する場合に、複数枚の媒体が重ねられた媒体束を分離して給送する分離給送を行う第1給送モードと、前記媒体束を分離せずに纏めて給送する非分離給送を行う第2給送モードと、を選択可能な媒体給送部と、前記媒体給送部の媒体給送方向下流側に設けられる駆動ローラーと、前記駆動ローラーの回転に従動回転する従動ローラーと、を備え、前記媒体給送部が、前記第2給送モードで給送を行う場合には、前記従動ローラーが、前記媒体を搬送する回転方向に駆動することを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、前記媒体給送部が、前記第2給送モードで給送を行う場合には、前記従動ローラーを、前記媒体を搬送する回転方向に駆動するので、前記第2給送モードを実行して、一枚ずつ分離しながら給送すると給送不良やジャムを生じる虞がある媒体束(例えば、パスポートや通帳のような冊子体や書類束など)を簡単にセットして給送することができることに加え、一枚の媒体よりも厚い前記媒体束が、駆動ローラーと従動ローラーとの間に進入しない、所謂、ノンフィードの状態になる虞を低減し、前記媒体束の適切な搬送を実現できる。
【0010】
本発明の第2の態様は、媒体の画像を読み取る読取部と、媒体載置部に載置される前記媒体を前記読取部に向けて給送する場合に、複数枚の媒体が重ねられた媒体束を分離して給送する分離給送を行う第1給送モードと、前記媒体束を分離せずに纏めて給送する非分離給送を行う第2給送モードと、を選択可能な媒体給送部と、前記媒体給送部の媒体給送方向下流側に設けられる駆動ローラーと、前記駆動ローラーの回転に従動回転する従動ローラーと、を備え、前記媒体給送部が、前記第2給送モードで給送を行う場合には、前記従動ローラーが前記駆動ローラーに対して与える接触荷重を、前記第1給送モードを実行する場合における前記接触荷重よりも小さくする、ことを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、前記媒体給送部が、前記第2給送モードで給送を行う場合には、前記従動ローラーが前記駆動ローラーに対して与える接触荷重を、前記第1給送モードを実行する場合における前記接触荷重よりも小さくするので、前記第2給送モードを実行して、一枚ずつ分離をしながら給送すると給送不良やジャムを生じる虞がある媒体束を簡単にセットして給送することができることに加え、一枚ずつ搬送される媒体よりも厚い前記媒体束が、駆動ローラーと従動ローラーとの間に進入しない、所謂、ノンフィードの状態になる虞を低減し、前記媒体束の適切な搬送を実現できる。
尚、前記第2給送モードを実行する場合における前記接触荷重は、前記第1給送モードを実行する場合における前記接触荷重よりも小さければ良く、前記接触荷重がゼロである場合も含むものとする。
【0012】
本発明の第3の態様は、第2の態様において、前記従動ローラーが前記駆動ローラーに対して前記接触荷重を与える方向に沿って変位可能なバネ支持部と、前記バネ支持部と前記従動ローラーとの間に設けられ、前記従動ローラーを押圧する押圧バネと、を備える荷重付与手段を備え、前記ばね支持部を変位させることにより、前記接触荷重を調整する、ことを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、前記従動ローラーが前記駆動ローラーに対して与える前記接触荷重を、容易に調整する構成とすることができる。
【0014】
本発明の第4の態様は、第2の態様において、前記従動ローラーは、前記駆動ローラーから離間可能に構成され、前記媒体給送部が、前記第2給送モードで給送を行う場合に、前記従動ローラーが前記駆動ローラーから離間する、ことを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、前記媒体給送部が、前記第2給送モードで給送を行う場合に、前記従動ローラーが前記駆動ローラーから離間するので、前記第2給送モードにおける前記接触荷重をゼロにして、前記ノンフィードの発生の虞を一層低減することができる。
【0016】
本発明の第5の態様は、第1の態様から第4の態様のいずれか一つにおいて、前記媒体給送部は、前記媒体を給送する給送ローラーと、前記給送ローラーに接触する接触状態と、前記給送ローラーから離間する離間状態と、の間で変位可能に構成される分離ローラーと、を備え、前記媒体給送部が、前記第1給送モードで給送を行う場合に、前記分離ローラーを前記接触状態にして、前記媒体を前記読取部による読み取り方向に送る場合の回転方向である正回転方向とは逆の逆回転方向に回転駆動させ、前記媒体給送部が、前記第2給送モードで給送を行う場合に、前記分離ローラーを前記離間状態にする、ことを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、前記媒体給送部において、前記第1給送モードと、前記第2給送モードと、の切り替えを容易に実現できる。
【0018】
本発明の第6の態様は、第5の態様において、前記媒体給送部と、前記媒体給送部に最も近い位置にある前記駆動ローラーと、の間に設けられて、前記媒体を検出する媒体検出部を備え、前記媒体検出部が、前記媒体給送部が前記第2給送モードで給送する媒体の先端の通過を検出した場合に、前記分離ローラーを前記接触状態にして、前記正回転方向に回転駆動する、ことを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、前記給送ローラーによって給送される前記媒体束がある程度送られた場合に、前記分離ローラーを前記接触状態にして、前記正回転方向に回転駆動する構成とすることができる。以って、前記正回転方向に回転駆動する前記分離ローラーと、前記給送ローラーによる搬送力を前記媒体束に付与することができる。
【0020】
本発明の第7の態様は、第1の態様から第4の態様のいずれか一つにおいて、前記媒体給送部は、前記媒体を給送する給送ローラーと、少なくとも前記媒体を前記読取部による読み取り方向に送る場合の回転方向である正回転方向とは逆の逆回転方向に回転駆動される分離ローラーと、歯合する複数の歯車によって構成される輪列を有し、前記分離ローラーに駆動源からの動力を伝達する動力伝達機構と、を備え、前記媒体給送部が、前記第2給送モードで給送を行う場合に、前記輪列を構成する複数の歯車の一部の歯合が解除される、ことを特徴とする。
【0021】
本態様によれば、前記媒体給送部において、前記第1給送モードと、前記第2給送モードと、の切り替えを容易に実現できる。
【0022】
本発明の第8の態様は、第1の態様から第7の態様のいずれか一つにおいて、前記読取部は、前記媒体給送部が送る前記媒体の第1面を読み取る第1読取部と、前記第1面の反対面である第2面を読み取る第2読取部と、を備え、前記第1読取部と前記第2読取部との間隔を変更可能に構成され、前記媒体給送部が、前記第2給送モードを実行する場合の前記間隔を、前記第1給送モードを実行する場合の前記間隔よりも広くする、ことを特徴とする。
【0023】
本態様によれば、前記第1読取部と前記第2読取部との間隔を変更可能に構成され、前記媒体給送部が、前記第2給送モードを実行する場合の前記間隔を、前記第1給送モードを実行する場合の前記間隔よりも広くするので、一枚ずつ搬送される媒体よりも厚い前記媒体束が、前記第1読取部と前記第2読取部との間に引っかかってジャムが発生する虞を低減できる。
【0024】
本発明の第9の態様は、第1の態様から第8の態様のいずれか一つにおいて、ページめくり機構を有する前記従動ローラーを備える、ことを特徴とする。
本態様によれば、複数枚の媒体束が冊子体である場合に、自動でページをめくりつつ読み取りを行うことができる。
【0025】
本発明の第10の態様は、第9の態様において、前記搬送ローラー対は、前記ページめくり機構は、前記媒体を前記読取部による読み取り方向とは逆方向に搬送する逆回転方向に回転駆動される前記従動ローラーによって、前記媒体束の最上位の媒体をめくる構成である、ことを特徴とする。
本態様によれば、前記ページめくり機構を構成簡単に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】第1実施形態に係るスキャナーを示す外観斜視図。
図2】第1実施形態に係るスキャナーにおける用紙搬送経路を示す側断面図。
図3】第1実施形態に係るスキャナーの概略側断面図。
図4】第2実施形態に係るスキャナーの概略側断面図。
図5】ページめくり機構によるページをめくり動作について説明する図。
図6】ページめくり機構によるページをめくり動作について説明する図。
図7】媒体給送部の「第1給送モード」と「第2給送モード」との切り替えを操作する操作部が設けられたスキャナーを示す外観斜視図。
図8】媒体給送部の「第1給送モード」における動力伝達機構の状態を示す斜視図。
図9】媒体給送部の「第2給送モード」における動力伝達機構の状態を示す斜視図。
図10】動力伝達機構の要部拡大図であり、媒体給送部の「第1給送モード」と「第2給送モード」とを切り替えた場合の歯車の変位について説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[第1実施形態]
まず、本発明の一実施形態に係る画像読取装置の概略について説明する。
本実施形態では画像読取装置の一例として、「媒体」としての用紙の表面及び裏面の少なくとも一面を読み取り可能なドキュメントスキャナー(以下、単にスキャナー1と称する)を例に挙げる。
【0028】
図1は、第1実施形態に係るスキャナーを示す外観斜視図である。図2は、第1実施形態に係るスキャナーにおける用紙搬送経路を示す側断面図である。図3は、第1実施形態に係るスキャナーの概略側断面図である。
【0029】
各図において示すX-Y-Z座標系はX方向が装置幅方向であり用紙幅方向、Y方向が用紙搬送方向である。Z方向はY方向と交差する方向であって、概ね搬送される用紙の面と直交する方向を示している。また、+Y方向側を装置前面側とし、-Y方向側を装置背面側とする。また、装置前面側から見て左側を+X方向、右側を-X方向とする。また、+Z方向を装置上方(上部、上面等を含む)とし、-Z方向側を装置下方(下部、下面等を含む)とする。また、用紙Pが給送されていく方向(+Y方向側)を「下流」といい、これと反対の方向(-Y方向側)を「上流」という。
【0030】
■■■スキャナーの概要■■■
以下、主として図1及び図2を参照して、本発明に係るスキャナー1について説明する。
図1に示すスキャナー1は、用紙P(媒体)の画像を読み取る読取部20(図2)を内部に備える装置本体2を備えている。
装置本体2は、下部ユニット3及び上部ユニット4を備えて構成されている。上部ユニット4は下部ユニット3に対して用紙搬送方向下流側を回動支点として開閉可能に取り付けられており、上部ユニット4を装置前面側に回動して開き、用紙Pの用紙搬送経路を露呈させて用紙Pの紙詰まりの処理を容易に行うことができる様に構成されている。
【0031】
装置本体2の装置背面側(-Y軸方向側)には、用紙Pを載置する媒体載置部11が設けられている。媒体載置部11には複数枚の用紙Pを重ねた用紙束を載置することができる他、複数枚の用紙が冊子状になった冊子体G(図3)を原稿として載置することができる。図3において、見開かれた冊子体Gは、綴じられた背の部分を幅方向(X軸方向)に沿うように向けてセットされている。
尚、媒体載置部11は、装置本体2に対して着脱可能に設けられている。符号11aは、用紙Pの載置面11aである。
【0032】
また、媒体載置部11には、用紙Pの給送方向(Y軸方向)と交差する幅方向(X軸方向)の側縁をガイドするガイド面13を備える左右一対のエッジガイド12、12が設けられている。
エッジガイド12、12は、用紙Pのサイズに応じてX軸方向にスライド移動可能に設けられている。本実施形態において、エッジガイド12、12は、公知のラックピニオン機構により一方のエッジガイド12(例えば+X側)のX移動に追従して、他方のエッジガイド12(-X側)が相対する方向に移動するように構成されている。
すなわち、媒体載置部11において、用紙Pは幅方向の中央に揃えられ、後述する給送ローラー14は前記幅方向の中央領域に設けられ、所謂、センター給紙方式で給紙されるように構成されている。
【0033】
媒体載置部11は、第1補助ペーパーサポート8及び第2補助ペーパーサポート9を備えている。第1補助ペーパーサポート8及び第2補助ペーパーサポート9は、図2に示す様に媒体載置部11の内部に収納可能であり、且つ、図1に示す様に媒体載置部11から引き出し可能に構成され、載置面11aの長さを調整可能になっている。
【0034】
図1に示すように、上部ユニット4の装置前面側には、各種読み取り設定や読み取り実行の操作や、読み取り設定内容等を表示する操作パネル7が設けられている。
上部ユニット4の上部には装置本体2内部に連なる給送口6が設けられており、媒体載置部11に載置される用紙Pは、給送口6から装置本体2内部に設けられる読取部20(図2)に向けて送られる。
また、下部ユニット3の装置前面側には、後述する排紙トレイ5が設けられている。
【0035】
■■■スキャナーにおける用紙搬送経路について■■■
次に、図2及び図3を参照して、スキャナー1における用紙搬送経路について説明する。尚、図2における点線は用紙搬送経路を示している。
図2に示すスキャナー1において、原稿としての用紙Pは、媒体載置部11から媒体給送部10によって読取部20に向けて送られる。
【0036】
本実施形態において、媒体給送部10は、用紙Pを給送する給送ローラー14と、給送ローラー14との間で用紙Pをニップするとともに、用紙Pの送り方向とは反対方向(図3を平面視して反時計回り)に回転して用紙Pを分離する分離ローラー15を備えている。媒体給送部10はセンター給紙方式で給紙する構成であり、給送ローラー14及び分離ローラー15は、媒体搬送方向(+Y方向)と交差する媒体幅方向(X軸方向)において中央領域に設けられている。
【0037】
媒体給送部10は、媒体載置部11に載置される用紙Pを読取部20に向けて給送する場合に、複数枚の用紙Pが重ねられた用紙束を分離して給送する分離給送を行う「第1給送モード」と、前記用紙束を分離せずに纏めて給送する非分離給送を行う「第2給送モード」と、を選択可能に構成されている。
【0038】
このことにより、スキャナー1は、1枚ずつ分離して給送(分離給送)される用紙を読み取る場合の他、一枚ずつ分離しながら給送すると給送不良やジャムを生じる虞がある前記用紙束、例えば、パスポートや通帳のような冊子体G(図3)や書類束などを、シートホルダーやケースに入れることなく、そのまま媒体載置部11にセットして給送し、読取部20によって読み取ることができる。
尚、媒体給送部10の動作は、装置本体2内部に設けられる制御部19によって制御される。媒体給送部10が「第1給送モード」或いは「第2給送モード」の給送を行う場合の、媒体給送部10の具体的な動作については、後で詳述する。
【0039】
また、給送ローラー14の下流側には、給送ローラー14(媒体給送部10)によって給送された用紙Pを搬送する第1搬送ローラー対16と、第2搬送ローラー対17と、が設けられている。
第1搬送ローラー対16と第2搬送ローラー対17との間に、読取部20が設けられている。
【0040】
図2において、媒体載置部11に載置された用紙Pは、下部ユニット3に対して回転可能に設けられた給送ローラー14によりピックアップされて下流側(+Y方向側)に給送される。具体的には、用紙Pの媒体載置部11に対向する面に、給送ローラー14が接触しつつ回転することにより、用紙Pを下流側に向けて給送する。したがって、スキャナー1において複数枚の用紙Pを媒体載置部11にセットした場合には、載置面11a側の用紙Pから順に下流側に向けて給送される。
【0041】
第1搬送ローラー対16は、読取部20の上流側に設けられ、給送ローラー14によって給送された用紙Pを読取部20に向けて搬送する。第1搬送ローラー対16は、第1駆動ローラー16a(駆動ローラー)と、第1従動ローラー16b(従動ローラー)と、を備えて構成されている。
第1搬送ローラー対16も、給送ローラー14と同様に、前記媒体幅方向において中央領域に設けられている。
【0042】
読取部20は、上部ユニット4側に設けられた第1読取部20aと、下部ユニット3側に設けられた第2読取部20bとを備えている。本実施形態において、第1読取部20a及び第2読取部20bは一例として密着型イメージセンサーモジュール(CISM)として構成されている。
第1読取部20aは、用紙Pの「第1面」としてのおもて面(上側を向く面)を読み取り、第2読取部20bは、前記「第1面」の反対面である「第2面」としての裏面(下側を向く面)を読み取る。
【0043】
用紙Pは、読取部20において用紙Pのおもて面及び裏面の少なくとも一方の面の画像を読み取られた後、読取部20の下流側に位置する第2搬送ローラー対17にニップされて、下部ユニット3の装置前面側に設けられた排出口18から排出される。第2搬送ローラー対17は、第2駆動ローラー17a(駆動ローラー)と、第2駆動ローラー17aの回転に従動回転する第2従動ローラー17b(従動ローラー)と、を備えて構成されている。
【0044】
尚、本実施形態において給送ローラー14は、図3に示すように、下部ユニット3内に設けられる第1駆動源26によって回転駆動される。また、分離ローラー15、第1駆動ローラー16a、及び第2駆動ローラー17aは、同じく図3に示す第2駆動源27によって回転駆動される。
第1駆動源26及び第2駆動源27は制御部19により制御され、以って、給送ローラー14、分離ローラー15、第1駆動ローラー16a、及び第2駆動ローラー17aの駆動が制御されている。すなわち、制御部19は用紙Pの送り動作を制御する。
【0045】
また、下部ユニット3には、排出口18から装置前面側に向けて引き出し可能に構成された排紙トレイ5が設けられている。排紙トレイ5は、下部ユニット3の底部に収納された状態(図1)と、図示を省略する装置前面側に引き出した状態とを取り得る。排紙トレイ5を引き出した状態において、排出口18から排出された用紙Pを排紙トレイ5上に積載することができる。
【0046】
尚、図2に示すように、媒体給送方向において媒体移動検出部21の下流側、且つ、給送ローラー14の上流側であって媒体載置部11による用紙の載置領域内には、媒体載置部11に載置される用紙Pの有無を検出する第1検出部22が設けられている。また、給送ローラー14の下流側と、第1搬送ローラー対16の下流側と、第2搬送ローラー対17の下流側には、順に、第2検出部23、第3検出部24、及び第4検出部25が設けられている。第2検出部23と第3検出部24によって、媒体給送方向における用紙Pの位置を検出することができる。
第1検出部22、第2検出部23、第3検出部24、及び第4検出部25は、前記幅方向の中央領域に設けられている。
【0047】
第1検出部22、第2検出部23、第3検出部24、及び第4検出部25としては、光を発する発光部(図示省略)と、前記発光部から発せられた光の反射光を受光する受光部(図示省略)を備える光センサーを用いることができる。また、前記光センサーの他、超音波を発する発信部と、搬送される用紙を挟んで前記発信部と対向して設けられる受信部とを備える超音波式センサーを用いることも可能である。また、搬送される用紙の接触によって動かされる機械式レバーの変位を、光学式或いは電気接触式で検出するレバー式センサーを用いることもできる。
【0048】
■■■第1給送モードと第2給送モードとを切り替える構成について■■■
以下、媒体給送部10が、複数枚の用紙Pが重ねられた用紙束を分離して給送する分離給送を行う「第1給送モード」と、前記用紙束を分離せずに纏めて給送する非分離給送を行う「第2給送モード」との切り替えについて説明する。
【0049】
本実施形態に係る媒体給送部10において、分離ローラー15は、給送ローラー14に接触する接触状態と、給送ローラー14から離間する離間状態と、の間で変位可能に構成されている。
【0050】
より具体的には、図3に示すように、分離ローラー15はホルダー28に保持されており、ホルダー28が押圧部材29によって押圧されることにより、分離ローラー15が給送ローラー14に向けて押圧されている。
分離ローラー15はホルダー28ごと給送ローラー14に対して進退する方向に変位可能に構成されており、制御部19によって制御される不図示の駆動源から動力を受けて回転する第1偏心カム30を回転させることにより、分離ローラー15が給送ローラー14に接触する接触状態(図3において実線で示す)と、分離ローラー15が給送ローラー14から離間する離間状態(図3において点線で示す)と、を切り換え可能になっている。
尚、図3において、離間状態における押圧部材29と第1偏心カム30も点線で示している。
【0051】
そして、媒体給送部10が、用紙の分離給送を行う「第1給送モード」で給送する場合には、分離ローラー15を前記接触状態にして、用紙を読取部20による読み取り方向(+Y方向)に送る場合の回転方向である正回転方向(図3を平面視して時計回り)とは逆の逆回転方向(図3平面視して反時計回り)に回転駆動させる。このことによって、複数枚の用紙のうちの最下位(一番下)の用紙が分離されて給送ローラー14によって給送される。
【0052】
尚、分離ローラー15には不図示のトルクリミッタが設けられており、分離ローラー15と給送ローラー14との間に媒体が存在しない場合、或いは1枚のみ存在する場合には、上記トルクリミッタで滑りが生じ、分離ローラー15が従動回転する(図3の時計回り方向)。2枚目以降の媒体が分離ローラー15と給送ローラー14との間に入り込むと、媒体間でスリップが生じ、分離ローラー15は第2駆動源27から受ける回転トルクによって逆回転する(図3の反時計回り方向)。これにより、媒体の重送が抑制される。
【0053】
一方、媒体給送部10が、用紙の非分離給送を行う「第2給送モード」で給送する場合には、分離ローラー15を前記離間状態にする。分離ローラー15が給送ローラー14から離れることにより、分離ローラー15による用紙の分離能力を低くする、或いは分離能力が無い状態にすることができる。
以って、媒体載置部11に載置された用紙束(図3において冊子体G)を分離しない、つまり、非分離の状態で給送することができる。
尚、前記離間状態の分離ローラー15が、媒体載置部11に載置された用紙束(冊子体G)の一番上の面に接触しない位置まで離間している場合には、分離ローラー15による分離は行われない。前記離間状態の分離ローラー15は、媒体載置部11に載置された用紙束(冊子体G)の一番上の面に接触していても良いが、その場合には、分離ローラー15の回転を停止して自由回転可能にするか、分離ローラー15の回転方向を前記正回転方向(図3を平面視して時計回り)に回転させると良い。
【0054】
以上のように、分離ローラー15の前記接触状態と前記離間状態とを切り替えることにより、媒体給送部10における「第1給送モード」と「第2給送モード」との切り替えを容易に実現することができる。
【0055】
■■■第1及び第2搬送ローラー対について■■■
ここで、発明が解決しようとする課題において説明したように、図3に示す冊子体Gには厚みがあるので、媒体給送部10によって給送された冊子体Gが、下流側の第1搬送ローラー対16や第2搬送ローラー対17のローラー間に進入できず、ノンフィード状態になる場合がある。
【0056】
この、第1搬送ローラー対16或いは第2搬送ローラー対17における冊子体Gのノンフィードを抑制するため、スキャナー1において、媒体給送部10が「第2給送モード」で給送を行う場合に、第1搬送ローラー対16の第1従動ローラー16b及び第2搬送ローラー対17の第2従動ローラー17bを、各搬送ローラー対が用紙を搬送する回転方向に駆動する。
【0057】
すなわち、媒体給送部10が「第2給送モード」で給送を行う場合に、第1従動ローラー16b及び第2従動ローラー17bを、図3を平面視して時計回りに回転する。
本実施形態において、第1従動ローラー16b及び第2従動ローラー17bは、第2駆動源27から動力を受けて、制御部19によって駆動が制御されるように構成されている。勿論、第1駆動源26から動力を受ける構成とすることもできるし、他の駆動源を設けることも可能である。
そして、第1従動ローラー16b及び第2従動ローラー17bに第1駆動源26から動力を伝達する状態と、前記動力の伝達を切る状態とを切り換える不図示の切り換え手段が設けられており、前記切り替え手段を制御部19が制御することにより、第1従動ローラー16b及び第2従動ローラー17bが駆動回転する状態と、第1従動ローラー16b及び第2従動ローラー17bが、第1駆動ローラー16a及び第2駆動ローラー17aの回転に従動回転する状態と、を切り替えることができる。
【0058】
このように、媒体給送部10が「第2給送モード」で給送を行う場合に、第1従動ローラー16b及び第2従動ローラー17bも用紙を搬送する方向に回転駆動されることにより、厚い冊子体Gが、第1搬送ローラー対16及び第2搬送ローラー対17のローラー間に進入し易くなり、以って、第1搬送ローラー対16や第2搬送ローラー対17におけるノンフィードの発生を抑制し、冊子体Gの適切な搬送を実現できる。
【0059】
■■■第2給送モードにおける他の構成について■■■
「第2給送モード」を実行する場合、以下のような構成とすることができる。
すなわち、媒体給送部10と、媒体給送部10に最も近い位置にある「駆動ローラー」である第1駆動ローラー16aとの間において、用紙を検出する「媒体検出部」として設けられる第2検出部23(図2及び図3)が、媒体給送部10が「第2給送モード」で給送する原稿(冊子体G)の先端の通過を検出した場合に、分離ローラー15を前記接触状態(図3において実線で示す分離ローラー15の状態)にして、前記正回転方向(図3において時計回り)に回転駆動する。
【0060】
給送ローラー14によって給送される冊子体Gがある程度送られた後、分離ローラー15を前記接触状態にして、前記正回転方向に回転駆動させることにより、媒体給送部10が冊子体Gに対して搬送力を付与する構成とすることができる。以って、冊子体Gを効率よく搬送することができる。
尚、分離ローラー15を前記接触状態にして前記正回転方向に回転駆動させるタイミングは、第2検出部23が冊子体Gを検出したタイミングに限られない。例えば、第2検出部23が冊子体Gを検出してから所定時間経過後、或いは所定量の搬送後に、分離ローラー15を前記離間状態から前記接触状態に切り替え、前記正回転方向に回転駆動しても良い。
【0061】
■■■読取部について■■■
続いて、読取部20の構成について説明する。
図3に示す読取部20は、用紙搬送経路を挟んで上側に位置する第1読取部20aと、下側に位置する第2読取部20bと、を備えている。つまり、第1読取部20aの読取面と第2読取部20bの読取面の間隔が、用紙搬送経路の経路高さになっている。
【0062】
通常、第1読取部20aの読取面と第2読取部20bの読取面の間隔は、薄い用紙が通る間隔に設定されており、第1読取部20aと第2読取部20bは、互いに近づく方向に押圧されている。このことによって、それぞれの読取部の読取面がしっかりと用紙P(原稿)に接触するようになっている。
尚、図3において、符号31が第1読取部20aを第2読取部20b側に押圧するコイルバネ等の第1押圧部材31であり、符号32が第2読取部20bを第1読取部20a側に押圧するコイルバネ等の第2押圧部材32である。
【0063】
また、第1読取部20a或いは第2読取部20bのいずれか一方は、他方に対して進退する様に変位可能に構成され、第1読取部20aと第2読取部20bとの間隔を変更可能に構成されている。
本実施形態においては、第1読取部20aに変位機構が設けられ、第1読取部20aを、図3において実線で示す進出位置と、同じく図3において点線で示す退避位置と、の間で変位させるように構成されている。前記変位機構としては、不図示の駆動源によって回転する第2偏心カム33が設けられている。前記駆動源は、制御部19によって制御されて、第2偏心カム33の回転も制御され、以って、第1読取部20aと第2読取部20bとの間隔を調整できるようになっている。
【0064】
ここで、制御部19は、媒体給送部10が、「第2給送モード」を実行する場合の第1読取部20aと第2読取部20bとの間隔を、「第1給送モード」を実行する場合の前記間隔よりも広くする制御を実行する。
つまり、「第2給送モード」で冊子束Gを給送する場合に、第1読取部20aと第2読取部20bとの間隔が広げられる。このことによって、一枚ずつ搬送される用紙Pよりも厚い冊子束Gが、第1読取部20aと第2読取部20bとの間に引っかかってジャムが発生する虞を低減できる。
【0065】
[第2実施形態]
本実施形態では、図4を参照して、媒体給送部10が「第2給送モード」によって給送を行う場合における、第1搬送ローラー対16或いは第2搬送ローラー対17における冊子体Gのノンフィードを抑制するための構成の他の例について説明する。
図4は、第2実施形態に係るスキャナーの概略側断面図である。
尚、本実施形態以降の実施形態において、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0066】
第1搬送ローラー対16或いは第2搬送ローラー対17における冊子体Gのノンフィードは、以下の様な構成によっても抑制することができる。
すなわち、第1搬送ローラー対16に対しては、媒体給送部10が、「第2給送モード」で給送を行う場合に、第1従動ローラー16bが第1駆動ローラー16aに対して与える接触荷重を、「第1給送モード」を実行する場合における前記接触荷重よりも小さくする。また、第2搬送ローラー対17に対しては、「第2給送モード」で給送を行う場合に、第2従動ローラー17bが第2駆動ローラー17aに対して与える接触荷重を、「第1給送モード」を実行する場合における前記接触荷重よりも小さくする。
【0067】
より具体的な構成としては、スキャナー1は、第1搬送ローラー対16において第1従動ローラー16bが第1駆動ローラー16aに対して与える接触荷重、及び、第2搬送ローラー対17において第2従動ローラー17bが第2駆動ローラー17aに対して与える接触荷重を変更可能な荷重付与手段40を備えている。
【0068】
荷重付与手段40は、第1従動ローラー16b及び第2従動ローラー17bが、それぞれ対応する駆動ローラー(第1駆動ローラー16a及び第2駆動ローラー17a)に対して前記接触荷重を与える方向(図4に示す矢印A方向)に沿って変位可能なバネ支持部41と、バネ支持部41と第1従動ローラー16b、及びバネ支持部41と第2従動ローラー17bの間に設けられ、第1従動ローラー16b及び第2従動ローラー17bを押圧する押圧バネ42、押圧バネ43と、を備えている。
【0069】
第1従動ローラー16b及び第2従動ローラー17bのそれぞれの前記接触荷重は、バネ支持部41を変位させることにより調整することができる。
バネ支持部41を矢印A方向に変位させる、つまり、バネ支持部41を第1従動ローラー16b及び第2従動ローラー17bに近づけると、前記接触荷重は大きくなり、バネ支持部41を矢印A方向の反対方向に変位させると、つまり、バネ支持部41を第1従動ローラー16b及び第2従動ローラー17bから遠ざけると、前記接触荷重は小さくなる。
【0070】
本実施形態において、バネ支持部41は、不図示の駆動源の動力を受ける第3偏心カム44の回転によって変位するように構成されている。前記駆動源は、制御部19によって制御されて、以って、第3偏心カム44の回転が制御され、前記接触荷重を調整できる。
尚、本実施形態においては、第1従動ローラー16b用の押圧バネ42と、第2従動ローラー17b用の押圧バネ43と、の双方が、共通のバネ支持部41によって支持されているが、第1従動ローラー16b用の押圧バネ42と、第2従動ローラー17b用の押圧バネ43とのそれぞれを、個別のバネ支持部によって支持する構成とすることも可能である。
以上のような構成の荷重付与手段40によって、第1従動ローラー16b及び第2従動ローラー17bが、対応する駆動ローラーである第1駆動ローラー16a及び第2駆動ローラー17aに対して与える接触荷重を容易に調整することができる。
【0071】
そして、媒体給送部10が、「第2給送モード」で給送を行う場合に、第1従動ローラー16b及び第2従動ローラー17bが、それぞれ対応する第1駆動ローラー16a及び第2駆動ローラー17aに対して与える接触荷重を、「第1給送モード」を実行する場合における前記接触荷重よりも小さくするので、第1搬送ローラー対16及び第2搬送ローラー対17のローラー間に冊子体Gが進入し易くなる。以って、第1搬送ローラー対16及び第2搬送ローラー対17における冊子体Gのノンフィードの虞を低減し、冊子体Gの適切な搬送を実現できる。
【0072】
また、本実施形態において、第1従動ローラー16b及び第2従動ローラー17bは、不図示の変位手段により第1駆動ローラー16a及び第2駆動ローラー17aからから離れる方向に移動され、第1駆動ローラー16a及び第2駆動ローラー17aから離間可能に構成されている。そして、媒体給送部10が、「第2給送モード」で給送を行う場合に、第1従動ローラー16b及び第2従動ローラー17bを、第1駆動ローラー16a及び第2駆動ローラー17aから離間させることができる。
つまり、媒体給送部10が「第2給送モード」で給送を行う場合に、前記接触荷重をゼロにする。このことによって、第1搬送ローラー対16及び第2搬送ローラー対17における冊子体Gのノンフィードの発生を一層抑制することができる。
尚、前記変位手段は制御部19によって制御されて、第1従動ローラー16b及び第2従動ローラー17bの、第1駆動ローラー16a及び第2駆動ローラー17aからの離間が制御される。
【0073】
[第3実施形態]
スキャナー1には、読み取られる冊子体Gのページを自動でめくるページめくり機構50を設けることができる。本実施形態では、図5及び図6を参照して、ページめくり機構50について説明する。
図5及び図6は、ページめくり機構によるページをめくり動作について説明する図である。
【0074】
本実施形態において、図5及び図6に示すページめくり機構50は、第1搬送ローラー対16を構成する第1従動ローラー16bに設けられている。言い換えると、スキャナー1は、ページめくり機構50を有する第1従動ローラー16bを備えている。
より具体的には、ページめくり機構50は、保持部51と、保持部51の先端に可動するように取り付けられた先端部52を備え、これらが第1従動ローラー16bに設けられている。
【0075】
第1搬送ローラー対16及び第2搬送ローラー対17は、用紙を読取部20による読み取り方向(+Y方向)に搬送する正回転方向(例えば、図5の一番上の図に矢印で示す回転方向)と、用紙を前記読み取り方向とは逆方向(-Y方向)に搬送する逆回転方向(例えば、図5の上から二番目の図に矢印で示す回転方向)と、の双方に回転可能に構成されている。また、第1搬送ローラー対16の第1従動ローラー16bは、不図示の駆動源から動力を受けて、少なくとも前記逆回転方向に駆動回転可能に構成されている。
そして、ページめくり機構50は、前記逆回転方向に回転駆動される第1従動ローラー16bによって、冊子体Gの最上位の媒体をめくる様に構成されている。
【0076】
以下、図5及び図6を参照して、ページめくり機構50によるページをめくり動作について説明する。
図5の一番上の図は、冊子体Gの見開き1ページ目P1の読み取りが完了した状態を示している。読取部20による読み取り時には、第1搬送ローラー対16及び第2搬送ローラー対17は、前記正回転方向に回転している。
【0077】
見開き1ページ目の読み取りが完了後、図5の上から二番目の図に示すように、第1搬送ローラー対16及び第2搬送ローラー対17を前記逆回転方向に回転させて、冊子体Gの前記読み取り方向における先端を第1搬送ローラー対16によってニップさせる。
【0078】
冊子体Gの前記読み取り方向における先端が第1搬送ローラー対16によってニップされたら、第1駆動ローラー16aは停止し、第1従動ローラー16bのみを前記逆回転方向に回転駆動する。
すると、図5の下から二番目の図に示すように、第1従動ローラー16bが最上位のページをピックアップする。
続けて第1従動ローラー16bを前記逆回転方向に回転駆動すると、図5の一番下の図に示すように、ピックアップされたページの先端が保持部51と先端部52に引っかかって保持される。
【0079】
第1従動ローラー16bを前記逆回転方向に所定量回転駆動したら、第1従動ローラー16bの駆動を停止し、図6の一番上の図に示すように、先端部52を上方に折り曲げるように変位させる。これにより、保持部51及び先端部52に保持されていたページの先端が外れてめくられて、見開き2ページ目P2が開かれる。
尚、先端部52は、不図示の動力源からの動力を受けて動作する。
【0080】
冊子体Gのページがめくられて見開き2ページ目P2が開かれた後、図6の上から二番目の図から同図の下から二番目の図に示すように、第1搬送ローラー対16及び第2搬送ローラー対17を、前記正回転方向に回転させて、見開き2ページ目P2の読み取りを行う。
【0081】
見開き2ページ目P2の読み取りの完了(図6の下から二番目の図)後、更に次のページ(見開き3ページ目)の読み取りを行う場合には、図6の一番下の図に示すように、再度、第1搬送ローラー対16及び第2搬送ローラー対17を前記逆回転方向に回転させて、冊子体Gの前記読み取り方向における先端が第1搬送ローラー対16によってニップされる位置まで送り、先端部52を保持部51に連なる向きに戻し、図5の下から二番目の図以降の動作を繰り返す。
尚、図6の一番上の図において折り曲げられた先端部52を、元の状態に戻すタイミングは、第1従動ローラー16bのみを前記逆回転方向に回転駆動するページめくり動作(図5の下から二番目の図の動作)の開始前であればよく、ページめくり動作の直前に限られない。
【0082】
以上のように、スキャナー1が、ページめくり機構50を有する第1搬送ローラー対16を備えることにより、冊子体Gのページを自動でめくりつつ読み取りを行うことができる。以って、冊子体Gの複数のページを連続して容易に読み取ることができる。
【0083】
[第4実施形態]
本実施形態では、図7図10を参照して、媒体給送部10の「第1給送モード」と「第2給送モード」とを切り替える構成の他の例について説明する。
図7は、媒体給送部の「第1給送モード」と「第2給送モード」との切り替えを操作する操作部が設けられたスキャナーを示す外観斜視図である。図8は、媒体給送部の「第1給送モード」における動力伝達機構の状態を示す斜視図である。図9は、媒体給送部の「第2給送モード」における状態を示す斜視図である。図10は、動力伝達機構の要部拡大図であり、媒体給送部の「第1給送モード」と「第2給送モード」とを切り替えた場合の歯車の変位について説明する図である。
【0084】
本実施形態において、媒体給送部10が用紙を分離給送する「第1給送モード」と、媒体給送部10が用紙を非分離給送する「第2給送モード」との切り替えは、分離ローラー15への動力の伝達を繋いだ接続状態(図8)と、分離ローラー15への動力の伝達が解除された解除状態(図9)と、を切り替えることにより行われる。
言い換えると、分離ローラー15に第2駆動源27からの動力を伝達する動力伝達機構60を備え、動力伝達機構60は、歯合する複数の歯車によって構成される「輪列」としての第2輪列62を有し、媒体給送部10が「第2給送モード」で給送を行う場合に、第2輪列62を構成する複数の歯車の一部の歯合が解除される。
【0085】
以下、図8を参照して、動力伝達機構60について説明する。
動力伝達機構60は、分離ローラー15の不図示の回転軸に歯合する歯車を有する第1輪列61と、装置本体2(図1)内部の-X方向側に設けられる第2輪列62と、第1輪列61と第2輪列62とを繋ぐ軸部63と、を備えている。
【0086】
第2輪列62は、歯車64と、歯車64と歯合する歯車65と、歯車65と歯合する歯車と軸部63に連結される歯車とを含む歯車群66と、を備えて構成されている。
図8において、歯車64は、第1搬送ローラー対16の回転軸(不図示)に連結されており、第1搬送ローラー対16(第2駆動源27の動力で駆動される)を介して、第2駆動源27から動力を受けるように構成されている。第2輪列62の歯車64が受けた動力は、軸部63と第1輪列61を介して分離ローラー15に伝達される。
【0087】
ここで、スキャナー1の上部ユニット4には、図7に示すように、媒体給送部10の「第1給送モード」と「第2給送モード」との切り替えを操作する操作部67が設けられている。符号67aは、操作用のつまみ部67aである。
操作部67は、上部ユニット4に対してX軸方向に往復スライドする様に設けられており、図8及び図9に示すように、連結部68において、分離ローラー15に第2駆動源27からの動力を伝達する動力伝達機構60を構成する第2輪列62の歯車65と連結されている。
操作部67と連結される歯車65は、操作部67のスライド方向にシフト移動可能に構成されている。このことにより、操作部67をX軸方向にスライドさせて、歯車65と歯車64、及び、歯車65と歯車群66、が歯合した前記接続状態(図8)と、歯車65と歯車64、及び、歯車65と歯車群66の歯合が解除された解除状態(図9)と、を切り替えることができる。
【0088】
本実施形態においては、操作部67のつまみ部67aを+X方向側にスライドさせた場合に、歯車65が、図8及び図10の実線で示す位置に配置され、歯車65と歯車64、及び、歯車65と歯車群66、が歯合する接続状態となる。
前記接続状態では、分離ローラー15に第2駆動源27の動力が伝達され、分離ローラー15による用紙の分離が行われる。すなわち、媒体給送部10を「第1給送モード」とすることができる。
尚、図10においては、操作部67及び連結部68の記載を省略している。
【0089】
また、操作部67を-X方向側にスライドさせた場合には、歯車65が、図9及び図10の二点鎖線で示す位置に配置され、歯車65と歯車64の歯合、及び、歯車65と歯車群66の歯合が解除される解除状態となる。前記解除状態では、歯車64から歯車群66へ動力が伝わらないので分離ローラー15は回転しない。つまり、分離ローラー15による用紙の分離が行われない。したがって、媒体給送部10を「第2給送モード」とすることができる。
【0090】
以上の構成により、媒体給送部10による「第1給送モード」の給送と「第2給送モード」の給送との切り替えを容易に実現できる。
尚、上記で説明したように、操作部67を用い、手動で歯車65をX軸方向に変位させる他、例えば、ソレノイド等のアクチュエーターを用いて歯車65を自動でX軸方向に変位させることも可能である。
【0091】
また、スキャナー1は、媒体給送部10の「第1給送モード」と「第2給送モード」とを切り替える構成として、第1実施形態において説明したような、分離ローラー15を給送ローラー14から離間させる構成と、本実施形態において説明したような、動力伝達機構60の第2輪列62を構成する歯車の歯合を解除する構成と、の双方を備えていても良い。
分離ローラー15を給送ローラー14から離間させた上で、第2輪列62を構成する歯車の歯合を解除して、分離ローラー15の分離方向への回転を停止することができるので、より確実に分離ローラー15による分離が行われない非分離の状態にすることができる。
【0092】
尚、本発明は上記において説明した各実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0093】
1…スキャナー(画像読取装置)、2…装置本体、3…下部ユニット、
4…上部ユニット、5…排紙トレイ、6…給送口、7…操作パネル、
8…第1補助ペーパーサポート、9…第2補助ペーパーサポート、
10…媒体給送部、11…媒体載置部、12…エッジガイド、
13…ガイド面、14…給送ローラー、15…分離ローラー、
16…第1搬送ローラー対、16a…第1駆動ローラー(駆動ローラー)、
16b…第1従動ローラー(従動ローラー)、17…第2搬送ローラー対、
17a…第2駆動ローラー(駆動ローラー)、
17b…第2従動ローラー(従動ローラー)、18…排出口、
19…制御部、20…読取部、20a…第1読取部、20b…第2読取部、
22…第1検出部、23…第2検出部、24…第3検出部、25…第4検出部、
26…第1駆動源、27…第2駆動源、28…ホルダー、29…押圧部材、
30…第1偏心カム、31…第1押圧部材、32…第2押圧部材、
33…第2偏心カム、40…荷重付与手段、41…バネ支持部、
42…押圧バネ、43…押圧バネ、44…第3偏心カム、
50…ページめくり機構、51…保持部、52…先端部、
60…動力伝達機構、61…第1輪列、62…第2輪列、63…軸部、
64…歯車、65…歯車、66…歯車群、67…操作部、68…連結部、
P…用紙(媒体)、G…冊子体(媒体束)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2024-07-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙及び冊子体を載置する載置部と、
前記載置部から前記用紙及び前記冊子体を給送する給送ローラーと、
前記給送ローラーとの間で前記用紙をニップして前記用紙の分離を行う分離ローラーと、
給送された前記用紙及び前記冊子体の画像を読み取る第1読取部と、
前記第1読取部に対向して配置され、給送された前記用紙及び前記冊子体の画像を読み取る第2読取部と、
前記第1読取部及び前記第2読取部から排出口に向かう方向を第1方向、前記第1方向とは反対の方向を第2方向として、前記第1読取部及び前記第2読取部に対し前記第2方向に位置するローラー対であって、前記用紙及び前記冊子体を搬送する第1搬送ローラー対と、
前記第1読取部及び前記第2読取部に対し前記第1方向に位置し、前記用紙及び前記冊子体を搬送する第2搬送ローラー対と、
前記給送ローラーを駆動する第1駆動源と、
前記分離ローラー並びに前記第1搬送ローラー対及び前記第2搬送ローラー対を駆動する第2駆動源と、
歯合する複数の歯車によって構成される輪列を有し、前記分離ローラーに前記第2駆動源からの動力を伝達する状態と前記分離ローラーに前記第2駆動源からの動力を伝達しない状態とに切り換え可能な動力伝達機構と、
御部と、を備え、
前記第1搬送ローラー対を構成する二つのローラーの双方が駆動可能であり、
前記第2搬送ローラー対を構成する二つのローラーの双方が駆動可能であり、
前記制御部は、前記冊子体を搬送する際、前記第1搬送ローラー対を構成する二つのローラーの双方と、前記第2搬送ローラー対を構成する二つのローラーの双方とを、前記冊子体を前記第1方向に搬送するように第1回転方向に回転駆動させ
更に前記制御部は、
前記用紙を分離して給送する分離給送を行う第1給送モードと、前記冊子体を分離せずに給送する非分離給送を行う第2給送モードと、を選択可能であり、
前記第1給送モードと前記第2給送モードにおいて、前記用紙及び前記冊子体を前記第1方向に搬送するように前記第1回転方向に前記給送ローラーを回転駆動させ、
前記第1給送モードにおいて、前記動力伝達機構が前記第2駆動源の動力を前記分離ローラーに伝達する状態で、前記用紙を前記第2方向に搬送するように第2回転方向に前記分離ローラーを回転駆動させ
前記動力伝達機構は、前記第2給送モードにおいて、前記第2駆動源の動力を前記分離ローラーに伝達せず、
前記第1読取部と前記第2読取部との間隔は変更可能であり、前記第2給送モードにおける前記第1読取部と前記第2読取部との間隔は、前記第1給送モードにおける前記間隔よりも広い、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像読取装置において、
前記第2読取部に向けて前記第1読取部を押圧する第1押圧部材を備える、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像読取装置において、
前記第1読取部に向けて前記第2読取部を押圧する第2押圧部材を備える、
ことを特徴とする画像読取装置。