(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114743
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】医薬品用の容器のためのクロージャおよびこのクロージャを備えた容器
(51)【国際特許分類】
A61M 5/31 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
A61M5/31 502
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024098602
(22)【出願日】2024-06-19
(62)【分割の表示】P 2019090692の分割
【原出願日】2019-05-13
(31)【優先権主張番号】10 2018 111 449.4
(32)【優先日】2018-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】20 2018 102 680.1
(32)【優先日】2018-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】323001797
【氏名又は名称】ショット ファーマ シュヴァイツ アー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT Pharma Schweiz AG
【住所又は居所原語表記】St. Josefen-Strasse 20, 9000 St. Gallen, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ムスタファ キュチュク
(57)【要約】
【課題】本発明は、全般的に、医薬品用の容器のためのクロージャおよびこのようなクロージャを備えた、医薬品用の容器、特に注射器に関する。
【解決手段】クロージャは、医薬品用の円筒形の容器、特に注射器の遠位端部における開口を、好ましくはルアーロック固定装置を用いて、解離可能に閉鎖するようになっている。そのためにクロージャは、シールエレメントを収容しかつ保持するための円筒形の中空室を備えた円筒形の閉鎖キャップと、シールエレメントと、を含んでおり、このときシールエレメントは、閉鎖キャップの外縁に対して後退している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬品用の円筒形の容器、特に注射器の遠位端部における開口を、好ましくはルアーロック固定装置を用いて、解離可能に閉鎖するためのクロージャであって、前記クロージャは、
シールエレメントを収容しかつ保持するための円筒形の中空室を備えた円筒形の閉鎖キャップであって、取り付けられた位置において前記容器に向く取り付け部分を含んでいる閉鎖キャップと、
少なくとも部分的に前記取り付け部分の内部に配置されているシール部分を備えたシールエレメントと、
を含んでおり、
前記シールエレメントの外縁は、前記取り付け部分の外縁に対して後退している、
クロージャ。
【請求項2】
前記取り付け部分の前記外縁に対する前記シールエレメントの前記外縁の後退の値は、少なくとも0.5mm、好ましくは少なくとも1mm、特に好ましくは少なくとも1.5mmである、
請求項1記載のクロージャ。
【請求項3】
前記閉鎖キャップは、前記取り付け部分とは反対の側に配置された操作部分をさらに含んでおり、前記シールエレメントは、少なくとも部分的に前記操作部分の内部に配置されており、前記シールエレメントの前記外縁は、前記操作部分の外縁に対して後退していて、前記後退の値は、好ましくは少なくとも0.5mm、好ましくは少なくとも1mm、特に好ましくは少なくとも1.5mmである、
請求項1または2記載のクロージャ。
【請求項4】
前記閉鎖キャップの長さに対する前記シールエレメントの長さの比は、最高で95%、好ましくは最高で90%、特に好ましくは最高で85%である、
請求項1から3までのいずれか1項記載のクロージャ。
【請求項5】
前記シールエレメントは、エラストマー材料を含んでいる、
請求項1から4までのいずれか1項記載のクロージャ。
【請求項6】
特に請求項1から5までのいずれか1項記載の、医薬品用の円筒形の容器、特に注射器の遠位端部における開口を、好ましくはルアーロック固定装置を用いて、解離可能に閉鎖するためのクロージャであって、
前記クロージャは、前記容器のルアーロック固定装置との結合のための雄ねじ山を備えた円筒形の閉鎖キャップを含んでおり、前記雄ねじ山は、規格ISO594-2にしたがって形成されている、
クロージャ。
【請求項7】
前記雄ねじ山は、台形ねじとして形成されており、好ましくはねじ山側面の他の形状、好ましくは0.6mmの外幅もしくはねじ山幅と1.2mmのコア幅とを備えている、
請求項1から6までのいずれか1項記載のクロージャ。
【請求項8】
前記ねじ山の側面に、少なくとも1つの、好ましくは点形状の隆起部が設けられており、好ましくは、互いに向かい合って配置された2つの隆起部を含む少なくとも1つの隆起部対が、好ましくは2つの隆起部対が、特に好ましくは4つの隆起部対が設けられている、
請求項1から7までのいずれか1項記載のクロージャ。
【請求項9】
前記ねじ山の、ねじ山入口のそばに位置している部分の、軸方向の反りが設けられている、
請求項1から8までのいずれか1項記載のクロージャ。
【請求項10】
前記ねじ山は、斜面を含んでいる、
請求項1から9までのいずれか1項記載のクロージャ。
【請求項11】
特に請求項1から10までのいずれか1項記載の、医薬品用の円筒形の容器、特に注射器の遠位端部における開口を、好ましくはルアーロック固定装置を用いて、解離可能に閉鎖するためのクロージャであって、
前記クロージャは、連続する開口を備えた円筒形の閉鎖キャップを含んでおり、前記閉鎖キャップの壁厚は、最も厚い箇所において最高で1.5mmであり、かつ/または、前記壁厚は、前記閉鎖キャップの長さで見て、0.5mm以下、好ましくは0.3mm以下しか変化しない、
クロージャ。
【請求項12】
射出点が、前記閉鎖キャップの操作部分の周面における1つの位置に、外側リブから軸方向間隔をおいて配置されている、
請求項1から11までのいずれか1項記載のクロージャ。
【請求項13】
前記閉鎖キャップの外側のストッパと内側のストッパとの間における軸方向間隔は、2.85mmであり、+/-0.2mm、好ましくは+/-0.1mm、特に好ましくは+/-0.05mmの許容誤差を有している、
請求項1から12までのいずれか1項記載のクロージャ。
【請求項14】
前記閉鎖キャップの連続する開口は、その主たる方向付けにおいて軸方向に配置されていて半径方向内側に向かって突出している少なくとも2つの縦長の内側リブを、内壁に、好ましくは前記操作部分の領域において有しており、前記内側リブは、1mm未満、好ましくは0.9mm未満、特に好ましくは0.8mm未満の幅を有している、
請求項1から13までのいずれか1項記載のクロージャ。
【請求項15】
前記内側リブの前記幅または横断面は、前記内側リブの長さの大部分にわたって一定であり、特に前記内側リブの長さの少なくとも50%にわたって、好ましくは少なくとも60%の長さにわたって、特に好ましくは少なくとも65%の長さにわたって一定である、
請求項14記載のクロージャ。
【請求項16】
前記操作部分は、その主たる方向付けにおいて軸方向に配置されていてかつ前記周面から半径方向外側に向かって突出している少なくとも2つの縦長の外側リブを含んでおり、前記外側リブは、好ましくは少なくとも4.5mm、好ましくは少なくとも5.0mm、特に好ましくは5.3mmの長さを有している、
請求項1から15までのいずれか1項記載のクロージャ。
【請求項17】
特に請求項1から16までのいずれか1項記載の、医薬品用の円筒形の容器、特に注射器の遠位端部における開口を、好ましくはルアーロック固定装置を用いて、解離可能に閉鎖するためのクロージャであって、
前記クロージャは、色安定的なプラスチックを含んでいる、
ことを特徴とするクロージャ。
【請求項18】
クロージャ色は、灰緑色であり、RALの色見本によれば、カラートーンRAL7009に相当しており、前記クロージャは、好ましくは、下記の滅菌方法:すなわち10分間で134℃に至るまでの高温空気、高温蒸気、25~40kGyの範囲におけるエネルギ線量を有するガンマ線またはX線、またはこれらの方法の組合せといった滅菌方法のうちの1つの滅菌方法を用いた処理に基づく作用に対して、色安定的である、
請求項17記載のクロージャ。
【請求項19】
前記クロージャ用の材料は、以下に記載の顔料:すなわち、
-二酸化チタン Kronos(登録商標) 2233
-煤 PRINTEX(登録商標) F 85
-6975 チタンオレンジ
-VYNAMON(登録商標) Green 600734
を着色エレメントとして含んでいる、
請求項17または18記載のクロージャ。
【請求項20】
特に請求項1から19までのいずれか1項記載のクロージャによって、医薬品用の円筒形の容器、特に注射器の遠位端部を、好ましくはルアーロック固定装置を用いて、汚染なしに解離可能に閉鎖するための方法。
【請求項21】
締付けトルクおよび/または開放トルクは、それぞれに要求されるトルクに対して、+/-1.0N・cm、好ましくは+/-0.5N・cmの小さなばらつきしか有していない、
請求項20記載の、容器を閉鎖するための方法。
【請求項22】
クロージャ、特に請求項1から19までのいずれか1項記載のクロージャを製造する方法であって、
前記クロージャは、少なくとも2つの外側リブを備えた操作エレメントを含んでいて、射出成形法を用いて製造され、操作部分の領域における射出点であって、好ましくは操作部分の外側の周面において外側リブから軸方向間隔をおいて位置している射出点が選択される
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的に、医薬品用の容器のためのクロージャおよびこのクロージャを備えた、医薬品用の容器、特に注射器に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品用の容器、特に注射器は、医薬品もしくは薬剤の投与の枠内において大きな役割を担う。一般的に円筒形に成形されたこれらの容器は、薬品を収容するための室を含んでおり、この室は両側において、近位端部と遠位端部とによって画定される。ピストンを、近位端部に挿入することができ、これによって滑動において薬品を遠位方向に、かつ注射器の遠位端部における開口を通して押圧すること、または逆向きの近位方向における運動において薬品をこの開口を通して注射器内に引き込むことが可能である。このとき遠位端部における開口は、しばしば円錐形の先端によって形成される。
【0003】
容器の遠位における開口を閉鎖するために、クロージャまたは閉鎖システムが以前から公知である。例えば印刷物である米国特許第5624402号明細書(US 5624402)または米国特許第6196998号明細書(US 6196998 B1)にも、注射器の遠位における開口を閉鎖するためのこのようなクロージャが記載されている。別の閉鎖システムは、例えば印刷物である欧州特許第1600190号明細書(EP 1600190 B1)に記載されている。
【0004】
これらの公知のクロージャもしくは閉鎖システムは、複数の欠点を有している。
【0005】
例えば公知のクロージャは、しばしば複数部分から形成されていて、かつシールのためのフレキシブルな材料から成る内側エレメントと、容器との結合部を形成する外側エレメントと、を有している。このためにしばしばねじ結合部が設けられている。複数部分から成るこれらのクロージャの螺合は、従来技術に基づいて公知のように、内側エレメントが接合中に最初に容器に接触する場合に、困難を生ぜしめる。このとき接合プロセスの開始時に極めて容易に傾斜または傾倒が発生することがあり、このことは、クロージャの取り付けのために要求される短いプロセスタイムを阻止する。
【0006】
さらに内側エレメントは、しばしばエラストマー材料から製造されており、このエラストマー材料は、例えばシリコーンオイルによって製造条件下で汚染されることがある。クロージャは、一般的にばら荷としてストックされ、かつ搬送される。内側エレメントの、この部分的に汚染されたエラストマー材料が、いまや、他のクロージャまたは容器の雄ねじ山に接触すると、この部材が汚染されることがあり、このことは、クロージャの取り付けのため、および後の開放のためにも、臨界的である可能性がある。それというのは、設定された力およびモーメントが、場合によってはもはや確実に維持され得ないからであり、これによって結合の確実性、ひいては製品全体の確実性をもはや得ることができなくなる。
【0007】
したがって、短いプロセスタイムで汚染なしに確実な取り付けを可能にする、クロージャおよびこのクロージャを容器に取り付けるための方法が望まれている。
【0008】
別の欠点は、容器におけるクロージャの取り付けのためもしくは解離のための、締付けトルクおよび/または開放トルクの精度および特性にある。クロージャの公知の広幅のねじ山は、特に解離時、つまり容器の開放時に、使用者が克服しなくてはならない一定に高い開放トルクを生ぜしめることがある。
【0009】
したがって、クロージャの開放のための設定された閾値を正確に提供することが可能であり、しかも同時に次いで行われる解離を簡単にする、開放トルクを有するクロージャを提供することが望まれている。
【0010】
別の問題は、取り付けられた位置においてシールのために必要なコンポーネント相互の必要な間隔の高い精度にある。このとき容器の閉鎖すべき開口に対する、シールのために設けられたエレメントの軸方向間隔が、大きな意味を有している。与えられた形状許容誤差および位置許容誤差によって、シールのために要求される最低圧を維持することができなくなることがあり、これによって製品の信頼性に疑問が生じることがある。
【0011】
したがって、容器の開口をシールするために要求される最低圧を確実に保証することができる、クロージャを提供することが望まれている。
【0012】
別の欠点は、しばしばプラスチックを含むクロージャの材料の色安定性にある。この色安定性は、クロージャおよび/またはクロージャを備えた容器に、滅菌のための処理を施すことができる場合において意味があり、このような処理は、関与するプラスチックの色変化またはその他の特性変化を惹起することがある。
【0013】
したがって、クロージャの視認できる色変化またはその他の変化を生ぜしめることなしに、滅菌のための通常の方法を使用することができる、クロージャを提供することが望まれている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
この課題を発明者は心に留め、かつ医薬品用の円筒形の容器、特に注射器のためのクロージャおよびこのクロージャを備えた、医薬品用の容器、特に注射器を、独立請求項の1つに基づいて提供している。
【0015】
本発明に係るクロージャは、上に述べた欠点を排除し、かつ公知のクロージャまたは閉鎖システムとの比較において複数の構造上の改良を有している。本発明の好適な実施形態および発展形態は、それぞれの従属請求項に記載されている。
【0016】
医薬品用の円筒形の容器は、通常、長く延びており、かつ中央の室と、室の一方の側に接続していて例えばピストンを挿入することができる近位端部と、反対側に配置されていて円錐形に先細りになる先端を含むことができる遠位端部と、を有している。容器の中心軸線は、以下において記載する配置形態の長手方向軸線である。
【0017】
遠位端部は、一般的に、長く延びていて遠位端部に向かって円錐形に先細りになる形状によって形成されており、かつ狭い貫通孔として形成された開口を有しており、この開口を通して、相応のピストン運動が行われた場合に、例えば液状の医薬品を室から進出させることができる。逆に、ピストンが逆向きの方向に、つまり近位端部の方向に移動させられると、液状の医薬品を引き込むことが可能である。薬学分野において、この円筒形状の容器は、注射器またはカニューレとして公知であり、ガラスまたはプラスチックから製造することができる。本発明に係るクロージャは、基本的に、ガラス製の容器にもプラスチック製の容器にも適している。医薬品は、液体、気体、固体、またはこれらから成る混合物を含むことができる。
【0018】
容器の遠位端部に例えばニードルカニューレを固定するために、医学分野では、ルアーロックと呼ばれる装置が開発されている。プラスチック製の容器では、このルアーロック固定装置は、容器と一体に、例えばスリーブまたはカラーとして形成されていてよく、かつ容器の先端を少なくとも部分的に取り囲んでいることができる。このルアーロック固定装置は、容器の遠位端部に雌ねじ山を備えたスリーブを含むことができる。
【0019】
容器の遠位端部における開口をシールするため、または先端の貫通部を閉鎖するために、クロージャが必要であり、これによって、例えば充填された薬品の汚染を回避すること、または薬品の意図しない損失を阻止することができる。「シール」または「閉鎖」という概念は、以下において、容器の遠位端部の開口を圧密にかつ/または流体密に閉鎖することを意味している。
【0020】
したがって本発明の対象は、医薬品用の円筒形の容器、特に注射器の遠位端部における開口を、好ましくはルアーロック固定装置を用いて、解離可能に閉鎖するためのクロージャである。
【0021】
本発明に係るクロージャは、容器の、先端として形成された遠位端部の開口を閉鎖するために特に良好に適している。容器は、好ましくはプラスチックから製造されていて、かつ雌ねじ山を備えたルアーロック固定装置を備えたスリーブを含んでいる。
【0022】
提案されたクロージャは、
シールエレメントを収容しかつ保持するための円筒形の中空室を備えた円筒形の閉鎖キャップであって、取り付けられた位置において容器に向く取り付け部分を含んでいる閉鎖キャップと、
少なくとも部分的に取り付け部分の内部に配置されているシール部分を備えたシールエレメントと、を含んでおり、かつこのとき
シールエレメントの外縁が、取り付け部分の外縁に対して後退している。
【0023】
ここでシールエレメントの外縁というのは、取り付けられた位置においてシールエレメントの、容器に向く外側の縁部を意味しており、つまり取り付け部分の外縁は、同様に取り付けられた位置においてクロージャの、容器に向く外側の縁部を意味している。
【0024】
閉鎖キャップは、1つまたは複数の部分から形成されていてよく、好適な実施形態では、容器との結合のために設計されていてかつこれによって取り付けられた位置において容器に向く取り付け部分と、反対側に配置されていて使用者にクロージャへの係合を可能にする操作部分と、を含んでいる。
【0025】
容器が、雌ねじ山を備えたルアーロック固定装置を有している場合には、取り付け部分は、好ましくは雄ねじ山を含むことができ、この雄ねじ山は、取り付けられた位置において容器のルアーロック固定装置に係合し、かつこのようにして解離可能な結合部を形成することができる。取り付けられた位置において閉鎖キャップおよび容器は、長手方向軸線に対して同軸に配置されている。閉鎖キャップに挿入されたシールエレメントを備えた本発明に係るクロージャは、特に、ルアーロック固定装置を備えた容器における取り付けのために適しており、ルアーロック固定装置は、嵌合正確に真逆の雄ねじ山を収容するための雌ねじ山を含んでいる。
【0026】
操作部分は、好ましくは、使用者によるより良好な取扱いのための外側リブを備えていてよい。閉鎖キャップの円筒形の中空室は、好ましくは連続して形成されていてよく、これによって好ましくは一体のシールエレメントを簡単に設置しかつ保持することができ、シールエレメントは、同様に円筒形に形成されていてよく、かつ閉鎖キャップの円筒形の中空室の内側幾何学形状とは嵌合正確に真逆である外側幾何学形状を有することができる。シールエレメントは、好ましくはエラストマー材料から製造されている。
【0027】
本発明に係る後退は、驚くほど簡単に、取り付けプロセスを大幅に改善することができ、かつプロセス確実性を高めることができる。それというのは、容器へのクロージャの装着中における傾斜および傾倒を、効果的に阻止することができるからである。このことは、接合中に最初に取り付け部分を介してクロージャのセンタリングが行われ、その後でシールエレメントが容器、特に容器の先端に接触するという事情に起因している。まさに、全自動化された取り付けプロセス、および要求される多くの個品数の場合には、取り付け確実性を高めることが、製造効率のために大きな意味を有する。
【0028】
すなわちシールエレメントが閉鎖キャップの取り付け部分の外縁に対して後退していること、つまり言い換えればクロージャの取り付け側においてシールエレメントが外縁に対して深い位置にあることによって、プロセス確実性が高められる。それというのは、ねじ込み動作時におけるクロージャのセンタリングが、既に容器とのシールエレメントの接触前に行われるからである。これに対して市場に存在しているクロージャは、閉鎖キャップから取り付け方向に突出しているシールエレメントを有している。このような場合には取り付け時に、シールエレメントと容器との間において最初の接触が行われ、このことは、プロセス技術的に望まれているセンタリングを困難に、もしくはそれどころか不可能にする。
【0029】
本発明では、容器の先端とのシールエレメントの取り付けのための最初の接触が、クロージャと容器とのセンタリングの後で初めて行われるので、シールエレメントの純然たる軸方向の押込みが可能であり、これによってエラーの発生が僅かになる。
【0030】
同時に、シールエレメントが後退していることによって、例えばシールエレメントの表面に堆積していることがある製造残留物による、他のクロージャまたは容器の汚染が低減する。このような製造残留物は、例えばシールエレメントの製造時に使用される液体、例えばシールエレメントの外側に集まっていることがあるシリコーンオイルである。まさに、エラストマー材料から製造されているシールエレメントでは、このようなことはしばしば発生する。
【0031】
シールエレメントを備えたクロージャは、しばしば、ばら荷として数千の個品が1つの包装内において、例えば1つの袋内において、ストックされ、搬送され、かつ供給される。このときシールエレメントがクロージャから突出していると、シールエレメントは、それが汚染されている場合には、接触によってばら荷における他のクロージャをも汚染することがある。例えば包装内においてシリコーン処理された、つまりシリコーンオイルによって汚染されたシールエレメントは、シリコーン処理されていない他のクロージャに接触することがある。この接触によってシリコーン処理されていないクロージャが、シリコーンオイルによって汚染されることがある。
【0032】
このとき例えば他の閉鎖キャップの雄ねじ山がシリコーンオイルによって汚染されると、この汚染は、搬送時、または後続プロセス時にも、例えば個別化時、グリップ時、または相応の機械における容器への取り付けのためのクロージャの設置時に、不都合である。シールエレメントが後退していることによって、この不所望の汚染を阻止することができる。
【0033】
製品側においても、閉鎖キャップの雄ねじ山の汚染は、例えば取り付けのために要求される締付けトルク、および後の解離のために必要な解離トルクまたは開放トルクに関して欠点をもたらす。例えば汚染されたシールエレメントが雄ねじ山に接触すると、締付けトルクが明らかに低下すること、または強い変動にさらされることがある。
【0034】
容器に関して言えば、例えば製造プロセスおよび/または取り付けプロセス中にねじ山におけるシールエレメントの製造残留物が堆積するおそれを確実に排除することができると、汚染のおそれが低減することによって、クロージャによって閉鎖される容器の確実性を高めることができる。
【0035】
例えば実験において、締付けトルクおよび開放トルクは雄ねじ山の汚染によって強くばらつき始めるということを証明することができた。すなわち、設定されたモーメントをもはや維持することができない。汚染されたクロージャにおける締付けトルクの測定されたばらつきは、0.5N・cmを上回る値、1.0N・cmを上回る値、またはそれどころか1.5N・cmを上回る値になることがある。汚染されたクロージャにおける開放トルクのばらつきは、2~16N・cm、2~18N・cm、またはそれどころか2~20N・cmの値になることがある。このような強いばらつきは、使用者にとって不都合である。
【0036】
したがってまた閉鎖キャップの反対に位置する側においても、操作部分の外縁に対してシールエレメントがこのように後退していることが好適であり、このように構成されていると、汚染のおそれを減じることができる。
【0037】
したがって本発明は、プロセス確実性を高めるためのみならず、医薬品用の容器の製造確実性のためにも寄与する。締付けトルクおよび/または開放トルクが、要求されるまたは望まれるトルクに対して、+/-1.0N・cm、好ましくは+/-0.5N・cmの小さなばらつきしか有していないクロージャを、提供することができる。
【0038】
このことは、シールエレメントの長さを、場合によっては汚染されているシールエレメントが他の閉鎖キャップに接触し得ないように設計することによって達成される。したがって長手方向軸線に沿ったシールエレメントの長さが、閉鎖キャップの長さよりも短いと好適である。閉鎖キャップの長さに対するシールエレメントの長さの比は、好適な実施形態では、最高で95%、好ましくは最高で90%、特に好ましくは最高で85%である。
【0039】
閉鎖キャップの取り付け・取り外し特性は、大部分が閉鎖キャップの雄ねじ山の構成によって決定される。容器がルアーロック固定装置を有している場合には、閉鎖キャップの雄ねじ山の特別な構成によって、同様にプロセス確実性および製造確実性をも高めることができる、比較的簡単でかつ比較的正確な取り付けを可能にすることができる。
【0040】
そのために閉鎖キャップの雄ねじ山は、通常規格ISO594-2にしたがって形成されていることができ、このとき本発明によればしかしながら、ねじ山の特別な構成が、好ましくはねじ山側面の他の形状が設けられており、これによって、ルアーロック接続装置の雌ねじ山への雄ねじ山の他の係合が生ぜしめられる。本発明は、好適な実施形態において、ねじ山側面を比較的細く形成すること、および/または比較的急勾配の側面で形成することを提案している。これによってピッチが同じ場合に、ねじ山側面相互の間隔が大きくなり、ひいてはルアーロック接続装置内に最初に部分的にねじ込まれる閉鎖キャップの軸方向遊びが小さくなる。
【0041】
このとき雄ねじ山は、好ましくは台形ねじとして形成されており、好ましくは約0.6mmの外幅もしくはねじ山幅(「ねじ頂部幅(thread crest width)」)と約1.2mmのコア幅(「底面の最大幅(maximum width of base)」)とを備えている。これによってまず、作用する摩擦力が比較的小さいことに基づいて、容器へのクロージャの比較的簡単な螺合が得られる。このときねじ山の他の構造上の特性値、例えばねじ山ピッチは、好ましくは等しいままである。
【0042】
好適なねじ山ピッチの値は、本発明では、3~5.5mm、好ましくは3.5~5.25mm、特に好ましくは4~5mmである。
【0043】
このことはさらに、ねじ山側面において少なくとも1つの確定された位置に、好ましくは点形状の隆起部を設けることを可能にし、この隆起部は、側面に対して例えば0.5~1.5mm突出している。好ましくは、ねじ山側面の互いに反対側の位置に配置された少なくとも2つの隆起部が設けられている。互いに反対側に配置された2つの隆起部は、これによっていわゆる隆起部点を形成することができる。このような隆起部対は、好ましくは、取り付けられた位置において隆起部対がルアーロック固定装置のねじ山側面に接触し、かつ好ましくはこのとき幾分圧縮される、もしくは変形されるように配置されている。このように構成されていると、追加的な力成分が、クロージャと容器との結合部に加えられる。ただ1つの隆起部に対して、隆起部対には、このような追加的な力成分が一方の側において作用するのではないという利点がある。
【0044】
この力成分は、クロージャの開放時においても同様に作用し、これによってクロージャの開放のための設定された閾値を正確に提供することを可能にする。このようにして、容器からクロージャを解離するための開放トルクのための、使用者にとって比較的容易なより良好な特性を提供することができる。
【0045】
均一な力投入のためには、1つよりも多くの隆起部対、好ましくは2つ、特に好ましくは4つの隆起部対を設けることが好ましい。このことは、容器におけるクロージャの均一でかつしっかりとした座着を得るために寄与する。このようにして、取り付けおよび/または解離のために必要なトルクを正確に調節すること、ならびに回転運動中に予め確定された力変化を保証することも、さらに促進される。
【0046】
一般的に、医薬品のために使用される容器へのクロージャの取り付け時には、指示された力を正確に維持することに注意しなくてはならない。それというのは、上回ることまたは下回ることは、製造確実性に対して直ぐに不都合な影響を及ぼすことがあるからである。
【0047】
閉鎖キャップの、本発明のように形成された雄ねじ山を用いて、許容誤差が+/-1.0N・cm、好ましくは+/-0.5N・cmである、例えば18.0N・cmの極めて狭い取り付けトルクを維持することが可能である。このことは、約20N・cmよりも大きな締付けモーメントは、特にプラスチック製のルアーロック固定装置では、マイクロ亀裂形成を生ぜしめることがあるので、重要である。マイクロ亀裂形成は、容器および/またはクロージャの機能不全を惹起することがあり、これによって製造確実性がもはや得られなくなる。締付けトルクが16N・cmよりも小さい場合には、小さなルアーロック突出部を備えた先端におけるシール性を、かろうじて保証することができる。
【0048】
ねじ山の特別な構成は、さらに、解離のためのクロージャの開放時に、最初に比較的高い力成分を加える必要があり、その後でこの力成分は一定に低減するという態様を生ぜしめる。このことは、容器の開放およびクロージャの解離を使用者に対して容易にする。したがって使用者によって加えられねばならないトルクは、開放角によって、つまり容器に対するクロージャの方向付けによって決定される。隆起部点の圧縮に起因して追加的に作用する力成分に基づいて生じる、解離の開始時における開始抵抗を克服した後で、作用する力成分は、解離後に隆起部点により大きな自由空間を提供する細いねじ山に基づいて低下し、これによって隆起部は僅かしか、または好ましくはもはやまったく圧縮されない。このようにして、さらなる解離のために加えられねばならないトルクは低減する。これによって、例えば+/-0.5N・cmの精度を有する16N・cmの、開放のための正確なトルクを生ぜしめることができる。
【0049】
これによって本発明に係るクロージャの解離特性もまた、解離の開始時に加えられねばならない力成分がクロージャの解離中にほとんど低減しない公知のクロージャと異なっている。このことは、公知のクロージャがしばしば追加的な力成分のためにねじ山の反りを備えていて、この反りが比較的広幅のねじ山に基づいて全解離動作中に作用するという事情に起因している。使用者にとっては、解離のために加えられねばならないトルクのこのような特性は、むしろ不都合である。それというのは、ほぼ全開放動作に対して、比較的高いモーメントを加える必要があるからである。
【0050】
本発明によれば、クロージャの取り付けは、さらに、ねじ山が一方では上に記載したように比較的細いことによって簡単になり、このような構成は、可能な角度方向付け、つまり取り付けの開始時におけるクロージャと容器との相互の角度適正な方向付けを、拡大させ、ひいては容易にする。
【0051】
要求される角度方向付けのこの許容誤差範囲をさらに強く拡大するために、好適な実施形態では、ねじ山の、ねじ山入口のそばに位置している部分の反りは、外縁から第1のねじ山に至るまでの自由空間を拡大するように設けられており、これによって角度方向付けの許容誤差範囲をさらに拡大することができる。これによりこの反りは、上に述べた部分におけるねじ山の軽い軸方向ずれである。したがって比較的細いねじ山に基づいてこの反りを、好ましくは、追加的な力成分が結合部に作用しないようにも構成することができる。
【0052】
これによって、容器へのクロージャの角度適正な差込みおよびねじ込みに対する狭い許容誤差範囲は、不要になる。むしろ、その中で取り付けを行うことができる、比較的大きな角度範囲が与えられている。公知のクロージャではこの許容誤差範囲が、角度適正な取り付けに関して、つまり+/-3°未満の、接合時における理想の方向付けの偏差が与えられているのに対して、ねじ山入口の本発明に係る構成は、この角度許容誤差を、+/-10°またはそれ以上の角度に拡大することができる。具体的な構成に応じて、この本発明に係る角度許容誤差は、+/-5°~+/-15°の範囲、好ましくは+/-8°~+/-12°の範囲にあることができる。これによって明らかに好適な取り付け特性が得られる。それというのは、容器に対するクロージャの正確な方向付けにかかる手間を減じることができるからである。
【0053】
同様に好適な実施形態では、ねじ山は追加的に斜面を含んでいてよく、もしくはねじ山導入部は、斜面として形成されていてよい。公知のクロージャが鈍角のねじ山導入部を備えた雄ねじ山を有していて、このねじ山導入部が取り付けの開始中に極めて早く傾倒を生ぜしめ得るのに対して、この導入傾斜部、もしくはねじ山導入部における斜面は、取り付けを著しく容易にする。
【0054】
本発明に係るクロージャを備えた、医薬品用の容器の確実性は、さらに容器の開口のシール性を生ぜしめるコンポーネントの嵌合精度によって影響を受ける。ここでは閉鎖キャップの、半径方向外側に向かって突出していて取り付けられた位置において容器に、特にルアーロック固定装置のカラーに接触しているストッパと、シールエレメントの、先端の開口をシールするシール部分の内縁と、の間における軸方向間隔が、決定的な意味を有している。このときシールエレメントのシール部分は、取り付けられた位置において、特に先端における開口に、密に接触しており、かつ/または開口を取り囲んでおり、このとき関与するコンポーネントの形状許容誤差および位置許容誤差に関して調節することができる最低圧に注意を払わなくてはならない。
【0055】
閉鎖キャップの開口におけるシールエレメントの軸方向における位置決めのために、閉鎖キャップは、好ましくは、半径方向内側に向かって突出している環状の肩を備えて形成されている。シールエレメントは、好ましくは、その周面に、同様に環状の切欠きを有しており、この切欠きは、好ましくは、取り付けられた位置において閉鎖キャップの肩がシールエレメントの切欠き内に係合し、かつこの軸方向におけるストッパによって係止部を生ぜしめることができるように位置決めされている。このように構成されていると、容器に関した、シールエレメントの正確な位置決め、ひいてはシールエレメントの、容器の開口をシールする内縁の正確な位置決めを、取り付けられた位置において得ることができる。
【0056】
通常の容器のため、特に通常の注射器のためには、閉鎖キャップの、外側に向かって突出しているストッパ(外側のストッパとも呼ぶ)と、肩によって確定された、閉鎖キャップの開口の内部におけるストッパ(内側のストッパとも呼ぶ)と、の間における軸方向間隔に対して、極めて小さな許容誤差を有する2.85mmの取り付け寸法が要求される。このとき内側のストッパは、シールエレメントの、シールのために加えられねばならない最低圧に関して、逆方向に作用し、これによって先端の開口に作用するシール力を確定する。
【0057】
したがってつまりクロージャの構成のためには、この内側および外側のストッパに対して極めて小さな許容誤差を維持することが、大きな意味を有する。本発明によれば、このような許容誤差の維持は、種々様々な構造上の処置によって解決される。
【0058】
一方において、好適な実施形態では、閉鎖キャップは、側壁の、薄くてかつ特に均一な材料厚さが、閉鎖キャップの長さにわたって与えられているように設計されている。好ましくは、閉鎖キャップの壁厚、つまり壁の厚さは、最も厚い箇所において、最高で2.5mm、好ましくは最高で2.0mmである。このとき壁の厚さは、閉鎖キャップの全長で見て、0.5mm以内、好ましくは0.3mm以内でしか変化しない。
【0059】
このような寸法の維持は、些細なことではない。閉鎖キャップは、一般的に熱可塑性プラスチックから射出成形法において製造される。これは、原成形において比較的高い温度を生ぜしめ、これによって、冷却後に閉鎖キャップの寸法偏差を生ぜしめることがある。一定の壁厚は、均一な冷却を生ぜしめ、かつこれによって、生じる得る歪みを低減する。
【0060】
さらに本発明によれば、射出成形法は、操作部分の領域に位置している射出点が選択されるように最適化される。特に好ましくは、射出点は、操作部分の周面の外側における位置において、外側リブから軸方向間隔をおいて位置している。これによってさらに、使用者にとって場合によっては生じる怪我のおそれを防止することができる。それというのは、スプルーによって鋭い縁部が発生し得るからである。これに対して、外側リブのうちの1つの外側リブにおける射出点は、好ましくない。それというのは、これによって薄壁の閉鎖キャップの歪みを惹起し得るからである。
【0061】
本発明に係る方法は、閉鎖キャップを射出成形法において、極めて多くの個品数で極めて小さな寸法誤差をもって製造することが可能である。このことは、一部には、薄くかつ均一な壁厚と、射出点の最適化された位置と、によるものである。
【0062】
上に述べた狭い許容誤差をさらに維持することができるようにするために、シールエレメントを閉鎖キャップ内に正確に保持することが、さらに役に立つ。特に、閉鎖キャップに対して相対的に軸方向において生じ得る、シールエレメントの不本意な設置ずれを、可能な限り排除することが必要である。このような不本意な設置ずれは、例えば設置および/または取り付けに基づいて発生することがある。
【0063】
閉鎖キャップの連続する開口内におけるシールエレメントの回動不能な保持は、開口の内壁に、好ましくは操作部分の領域における、その主たる方向付けにおいて軸方向に配置されていて半径方向内側に向かって突出している少なくとも2つの縦長の内側リブを介して、行うことができる。典型的には約6~10のこのような内側リブが、しばしば8つの規則的に配置された内側リブが設けられている。これらの内側リブは、均一な嵌合のために好ましくは、内周部にわたって均一な間隔をおいて分配配置されていることができる。つまりこれらの内側リブは、取り付け時または開放時に、閉鎖キャップ内におけるシールエレメントの回動を防止するために役立ち、かつこれによって回動防止体である。
【0064】
射出成形法において閉鎖キャップを製造することに基づいて、これらの内側リブは、離型斜面を長手方向に、つまり軸方向に有することができる。しかしながら内側リブの傾斜によって、軸方向においてシールエレメントに作用する力成分であって、設定された位置からのシールエレメントの軸方向運動を生ぜしめ得る力成分が発生することがある。内側のストッパにもかかわらず、この運動は、予め確定された設置高さに対して0.3mmまたはそれ以上の、シールエレメントの不所望の軸方向ずれを生ぜしめることがある。
【0065】
これによってこのずれは、閉鎖キャップのストッパとシールエレメントのシール部分の内縁との間における、上に記載された軸方向間隔に影響を及ぼし、これによって設定された寸法を、もはや確実に維持することができなくなる。これによってまた、シールエレメントと容器の先端との間における最低圧が得られなくなることがあり、その結果要求されたシール性を場合によっては維持することができなくなり、ひいては容器の要求される確実性を与えることができなくなる。医薬品の包装のためにねじ結合を使用する場合には、例えば最低要求が求められているが、この最低要求によれば、少なくとも3バールの圧力に30秒の間抵抗できなくてはならない。
【0066】
他方において場合によっては、要求される間隔および最低圧が維持されない場合には、例えば医薬分野におけるねじ閉鎖装置のためには少なくとも2N・cmである、要求される開放トルクを、維持することができない。
【0067】
公知のクロージャではしばしば広幅でかつむしろフラットな内側リブが使用されるのに対して、本発明によれば、内側リブは比較的狭幅の他の構成を有しており、このような構成は、特に内側リブのその他の数が等しい場合には、シールエレメントにおいて明らかに小さな押退け容積しか生ぜしめない。これによって、閉鎖キャップ内に取り付けられたシールエレメントが軸方向においてずれる傾向を、強く低減することができ、これによって要求される間隔寸法を、シールエレメントの設置後に比較的正確に維持することができる。これに対して大きな押退け容積は、シールエレメントの強い圧縮を生ぜしめ、ひいては不所望の軸方向ずれを促進する。
【0068】
閉鎖キャップの開口内におけるシールエレメントの軸方向ずれは、本発明のように構成された内側リブによって、0.3mm未満に、好ましくは0.2mm未満に、特に好ましくは0.15mm未満に制限することができる。
【0069】
内側リブはそのために、1mm未満、好ましくは0.9mm未満、特に好ましくは0.8mm未満の幅を有している。特に好ましくは、さらに内側リブの幅または横断面は、内側リブの長さの大部分にわたって一定であり、特に内側リブの長さの少なくとも50%の長さにわたって、好ましくは少なくとも60%の長さにわたって、特に好ましくは少なくとも65%の長さにわたって一定である。このような構成によっても、閉鎖キャップ内におけるシールエレメントの軸方向ずれの傾向は、明らかに低減される。
【0070】
このようにして、開口を閉鎖するために必要な最低圧を維持することができる。これによって、閉鎖キャップの外側のストッパと内側のストッパとの間における軸方向間隔が2.85mmであって、+/-0.2mm、好ましくは+/-0.1mm、特に好ましくは+/-0.05mmの許容誤差を有する値の閉鎖キャップを得ることができる。このようにして、開口をシールするために要求される最低圧を確実に維持することができる。
【0071】
操作部分は、さらに特に好適には、その主たる方向付けにおいて軸方向に配置されていて半径方向外側に向かって周面から突出している少なくとも2つの縦長の外側リブを含むことができ、これらの外側リブは、使用者に対して比較的良好なグリップ可能性を提供し、かつこれによりねじりによる開閉を容易にする。ここでは好ましくは、操作部分のほぼ全長にわたって延びている細い外側リブが設けられている。好適な実施形態では、これらの外側リブは、少なくとも4.5mm、好ましくは少なくとも5.0mmの長さ、つまり軸方向における延在長さを有している。これらの外側リブの高さ、つまり周面に対する半径方向の突出は、好ましくは少なくとも0.3mmであり、これによって使用者は、安定したグリップ面を見つけ、ひいてはクロージャを比較的良好にかつ比較的容易に開放することができる。
【0072】
本発明に係るクロージャを備えた、医薬品用の容器の確実性および使用可能性は、さらに、容器の色安定性、特に本発明に係るクロージャを備えた容器の色安定性によって確定される。クロージャは、典型的には多くの個品数で射出成形法を用いて製造されるので、そのための材料としては、実質的に適宜な熱可塑性プラスチックが使用される。
【0073】
色安定性は、クロージャおよび/またはクロージャを備えた容器に、関与するプラスチックの色変化またはその他の材料変化を生ぜしめるおそれがある、滅菌のための処理を施すことがある場合において大きな意味がある。滅菌は、医薬品の包装、つまり例えば医薬品を備えた容器から、可能な限りすべての含有されるまたは付着する微生物を除去するために役立つ。
【0074】
例えば高温空気下における滅菌のような、種々様々な滅菌のための処理方法が使用される。このような処理方法は、熱安定性の医薬製品を乾燥した熱にさらす物理的な滅菌方法である。バクテリア、菌類、ウイルス、または胞子のような細菌を製品から除去するために、少なくとも30分の時間にわたって少なくとも180℃の温度が必要である。
【0075】
さらに、オートクレーブが最も頻繁に使用される滅菌方法として公知である。このとき例えば0.5バールで120℃の温度を有する水蒸気が使用される。これによって敏感な製品は、高温空気滅菌におけるよりも長く、オートクレーブ内に滞在することができる。
【0076】
追加的に水蒸気は、製品表面において比較的良好に分布し、これによって、製品全体にわたって必要な滅菌温度を比較的良好に得ることができる。
【0077】
さらに、例えばガンマ線またはX線である電磁線による照射も公知である。いわゆるガンマ滅菌では、医薬品は、例えば確定されたエネルギ線量のガンマ線を用いて照射される。ガンマ線またはX線の使用時には、照射は一般的に、25~40kGyの範囲におけるエネルギ線量で行われる。
【0078】
滅菌のための多くの公知の方法は、例えばクロージャ用の材料のような材料の選択を、例えば材料の色または粘稠度に対する確定された影響が最小になるように制限する。言い換えれば、クロージャへの照射は、例えば使用されるプラスチックのポリマ構造を変化させることがあり、これにより結果として色変化を生ぜしめることがある。または特定の敏感な熱可塑性プラスチックは、部分的に要求される高温下で損傷することがあり、例えば破損すること、または同様に色を変化させることがある。
【0079】
特定の使用分野に対しては、滅菌に基づく色変化が望まれていることがあるのに対して、本発明の枠内においては、クロージャの色変化は不所望であるということから出発している。滅菌の種類とは無関係に、すなわち上に述べた滅菌方法のうちの少なくとも1つの使用時に、可能な限りクロージャの「カラーシフト」、つまり色変化が発生しないことが望まれている。本発明においては、色変化は、滅菌後における材料の着色箇所が滅菌前における材料の着色箇所から値ΔEだけ、CIE1931システムにおける着色箇所変化として確定されて、ΔE=0.05よりも大きな値だけ異なった場合に、不所望と言われる。このとき着色箇所変化ΔEは、下記の式によって与えられている:すなわち、
ΔE=√(x2+y2)
したがって本発明によれば、クロージャのための好適な実施形態では、滅菌の結果ほとんどまたは好ましくはまったく色が変化しない材料が選択される。
【0080】
このことは、極めて驚いたことに、クロージャを製造するための材料用に特定の着色顔料および酸化防止剤を選択することによって行われる。発明者は、クロージャの灰緑色のカラーグレイスを生ぜしめる特定の選択された顔料を含む、完全に特定の材料組成が、上に述べた滅菌方法のうちの少なくとも1つの使用時に色を変化させる傾向が、まったくまたは少なくともほとんどないということを発見した。その代わり本来の色は、少なくともほぼ維持され、かつ好ましくはカラーシフトを生ぜしめない。この色は、RALの色見本による色RAL7009に相当する。
【0081】
この驚くほどの色安定作用は、高められた温度時においても上に記載したような電磁線の照射時にも安定的である、プラスチックのポリマ構造を生ぜしめる、着色顔料から成る組成を見出すことができたことによって達成される。クロージャを製造するための材料は、以下に記載の顔料:すなわち、
-二酸化チタン Kronos(登録商標) 2233
-煤 PRINTEX(登録商標) F 85
-6975 チタンオレンジ
-VYNAMON(登録商標) Green 600734
を着色エレメントとして含んでいる、
したがって着色のためにこれらの顔料を含む材料から成るクロージャは、ガンマ線またはX線によって作業が行われる滅菌のための方法のためにも適している。このようなクロージャは、25~40kGyの範囲におけるエネルギ線量による照射時にもまったくまたはほとんど、肉眼によって認識できない色変化しか生ぜしめず、ひいては色安定的と見なすことができることが判明している。
【0082】
特に好ましくは、このような材料組成は、例えば10分間の134℃に至るまでの高温蒸気滅菌のような他の滅菌方法の場合でも、まったくまたはほとんど、肉眼によって認識できない色変化しか生ぜしめない。
【0083】
このことは、特に好適である。それというのは、これによって使用することができる滅菌方法の選択を、クロージャの材料とは大幅に無関係に選択することができるからである。また上に述べた滅菌方法の組合せによって、シール性が低下することはない。特に、クロージャは滅菌後に30秒間において4バールまでのシール性を有しており、かつ15N・cm未満の開放トルクを有している。
【0084】
本発明の対象は、最後に別の観点において、特に上に記載したクロージャによって、医薬品用の円筒形の容器、好ましくは注射器の遠位端部を、汚染なしに解離可能に閉鎖するための方法である。
【0085】
次に本発明を、添付の図面を参照しながら、以下の好適な実施形態について詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【
図1】従来技術によるクロージャを示す縦断面図である。
【
図2】本発明に係るクロージャを示す縦断面図である。
【
図3】ルアーロック固定装置を有する医薬品用の容器を、部分的に取り付けられたクロージャと共に示す縦断面図である。
【
図4】容器から解離するための、本発明に係るクロージャの開放時におけるトルクの変化を示す線図である。
【
図5】容器から解離するための、従来技術に基づいて公知のクロージャの開放時におけるトルクの変化を示す線図である。
【
図6】反りを有する本発明に係るクロージャの一部を示す平面図である。
【
図7】シールエレメントを備えた本発明に係るクロージャを示す縦断面図である。
【
図8】シールエレメントなしで本発明に係るクロージャを示す縦断面図である。
【
図9】本発明に係るクロージャを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0087】
好適な実施形態の以下に述べる詳細な説明では、明瞭にするために、等しい符号は、実施形態においてほぼ等しい部分を示している。しかしながら本発明をより明確にするために、図面に示された好適な実施形態は、常に寸法中実に示されているわけではない。
【0088】
図1には、従来技術のクロージャ100が縦断面図で示されている。このクロージャ100は、円筒形の閉鎖キャップ110を含んでいて、この閉鎖キャップ110は、シールエレメント120を収容するための円筒形の中空室を備えており、このとき閉鎖キャップ110は、取り付けられた位置において容器に向く取り付け部分140と、操作部分150と、を含んでいる。
【0089】
閉鎖キャップ110の円筒形の中空室内には、シール部分121を有するシールエレメント120が挿入されている。明瞭に認識できるように、シール部分の外縁122は、閉鎖キャップ110の外縁112を越えて突出している。このことは、自動化された取り付けのために不都合である。それというのは、シールエレメントが最初に容器、特に容器の先端に接触する場合に、取り付けの最初における装着中に傾斜および傾倒が生じ得るからである。これによってねじ込み動作時におけるクロージャのセンタリングもほとんど不可能になる。それというのは、シールエレメント120は、可撓性のエラストマー材料から製造されているからである。まさに全自動化された取り付けプロセスおよび要求される多くの個品数において、取り付けがこのような背景に基づいて特にゆっくりと行われねばならないか、または例えば傾倒後に、繰り返されねばならない場合、大事な時間を失うことがある。
【0090】
図2には、医薬品用、特に注射器用の円筒形の容器(図示せず)の遠位端部における開口を解離可能に、好ましくはルアーロック固定装置を用いて閉鎖するための、本発明に係るクロージャ1が、縦断面図で示されている。本発明に係るクロージャ1は、シールエレメント20を収容するための連続する円筒形の中空室14を備えた円筒形の閉鎖キャップ10を含んでおり、このとき閉鎖キャップ10は、取り付けられた位置において容器に向く取り付け部分40と、操作部分50と、を含んでいる。
【0091】
取り付け部分40は、雄ねじ山41を含んでおり、この雄ねじ山41は、取り付けられた位置において容器のルアーロック固定装置の雌ねじ山に係合し、かつ容器との解離可能な結合部を形成する。操作部分50は、使用者による取扱いのための外側リブを備えている。閉鎖キャップ10の円筒形の中空室14は、例えば一体のシールエレメント20を収容するために連続して形成されている。
【0092】
図面から良好に認識できるように、シールエレメント20の外縁22は、閉鎖キャップ10の取り付け部分40の外縁12に対して明らかに後退している。
【0093】
本発明に係る後退は、驚くほど簡単に、取り付けプロセスを大幅に改善すること、およびプロセス確実性を高めることを可能にする。それというのは、容器へのクロージャ1の装着中または取り付けプロセスの開始時における傾斜および傾倒を、効果的に阻止することができるからである。このことは、シールエレメント20が容器、特に容器の先端に接触する前に、接合中に最初に取り付け部分40を介してクロージャ1のセンタリングが行われるという事情に起因している。まさに全自動化された取り付けプロセスおよび要求される多くの個品数では、取り付け確実性を高めることが、製造の効率に対して大きな意味を有しており、かつ取り付けにおける貴重な時間の節約を促進することができる。
【0094】
つまり閉鎖キャップ10の取り付け部分40の外縁12に対してシールエレメント20が後退していることによって、プロセス確実性が高まる。それというのは、ねじ込み動作時におけるクロージャ1のセンタリングが、既に容器とのシールエレメント20の接触前に行われるからである。つまり本実施形態では、容器の先端とのシールエレメント20の最初の接触は、クロージャ1と容器とのセンタリング後に初めて行われるので、純粋に軸方向の押込みが可能であり、これによってエラーの発生がほとんどなくなる。
【0095】
同時に、後退によって、シールエレメント20上にまたはシールエレメント20に接して存在する可能性がある製造残留物による、他のクロージャまたは容器の汚染も低減する。このような製造残留物としては、例えばシールエレメントの製造時に使用される液体、例えばシリコーンオイルを挙げることができる。まさに、本実施形態におけるようにエラストマー材料から製造されているシールエレメントでは、このようなことはしばしば生じることである。
【0096】
後退は、実施形態では約2.5mmの値を有している。汚染のおそれは、後退が少なくとも0.5mm、好ましくは少なくとも1.0mm、特に好ましくは少なくとも1.5mmである場合に、既に低減することができる。与えられた許容誤差との関連において、好適な後退は、さらに1.5~2.0mm、2.0~2.5mm、または2.5~3.0mmの範囲である。
【0097】
図2においてさらに分かるように、シールエレメント20の外縁23も閉鎖キャップ10の外縁13に対して後退している。この後退は、好ましくは同様に少なくとも0.5mm、好ましくは少なくとも1.0mm、特に好ましくは少なくとも1.5mmである。実施形態では後退の値は、約2.5mmであり、これによって反対側における後退とほぼ同じ大きさである。
【0098】
したがって閉鎖キャップ10の外縁12,13に対するシールエレメント20の外縁22,23の両側における後退は、例えば搬送包装内において互いに並んで位置しているクロージャの相互の汚染を確実に阻止する。このことは、閉鎖キャップ10の長さに対するシールエレメント20の減じられた長さによって、構造的に解決される。実施形態では、閉鎖キャップの長さに対するシールエレメントの長さの比は、約70%である。閉鎖キャップ10の長さに対するシールエレメント20の長さの比が、最高で95%、好ましくは最高で90%、特に好ましくは最高で85%であることが好適であると判明している。
【0099】
容器におけるクロージャ1の取り付け・取り外し特性は、大部分が、閉鎖キャップ10の雄ねじ山の形成によって確定される。
【0100】
図3には、ルアーロック固定装置を有する医薬品用の容器30が、部分的に取り付けられたクロージャ1と共に縦断面図で示されている。容器30は、その遠位端部にスリーブ31を含んでおり、このスリーブ31は雌ねじ山32を備えて形成されていて、かつルアーロック固定装置である。スリーブ31は、容器の遠位端部に、円錐形に先細りになる先端33を取り囲んでおり、この先端33は、例えば室35から医薬品を流出させるために、開口34を有している。
【0101】
取り付け部分40の雄ねじ山41は、雌ねじ山32に対して嵌合正確に真逆に形成されている。雄ねじ山41は、通常規格ISO594-2にしたがって形成されており、このとき本発明によれば、他の形状のリブ42が設けられている。本発明に係るリブ42は、比較的細く、かつ/または比較的急勾配の側面を備えて形成されており、これによって比較的細いねじ山が、ひいては隣接したねじ山側面の間における比較的大きな間隔が生ぜしめられる。このことは、第一に、容器30へのクロージャ1の比較的簡単な螺合を生ぜしめる。それというのは、作用する摩擦力が比較的小さいからである。
【0102】
このことはさらに、ねじ山側面において確定された位置に、好ましくは点形状の隆起部(図示せず)を設けることを、好ましくは、このような隆起部を、ねじ山側面の互いに向かい合っている2つの位置にそれぞれ配置することを可能にする。互いに向かい合うように配置された2つの隆起部は、これによって1つの隆起部対を形成することができる。このときこのような隆起部対は、取り付けられた位置において隆起部点がルアーロック固定装置のねじ山側面に接触して、幾分圧縮される、もしくは変形されるように形成されている。これによって追加的な力成分が結合部に作用する。
【0103】
この力成分は、同様にクロージャの開放時にも作用し、これによってクロージャの開放のための設定された閾値を正確に提供することができる。このようにして、開放トルクのための、使用者にとって比較的容易なより良好な特性を提供することができる。雄ねじ山41は、実施形態では、全部で4つの隆起部対(図示せず)を含んでいる。
【0104】
このようにしてさらに、取り付けおよび/または解離のために必要なトルクを正確に調節できること、ならびに回転運動中における予め確定された力変化をも保証することが促進される。
【0105】
図4および
図5には、実施形態を用いて、容器30から解離するための、クロージャ1の開放時におけるトルクの変化が示されている。
図5には、従来技術によるクロージャ100の開放トルクに対する特性が示されており、
図4には、本発明に係るクロージャ1の開放トルクに対する特性が示されている。
【0106】
明瞭に認識できるように、解離を実施するために、本発明に係るクロージャ1の開放時には開始時に比較的高い力成分が加えられねばならない。閾値が超過されると、加えられねばならない力成分は連続的に低下する。このことは、容器30の開放およびクロージャ1の解離を使用者にとって容易にする。したがって加えられるべきトルクは、開放角に従っている。隆起部によって生じる、解離時における開始抵抗の克服後に、作用する力成分は、比較的大きな自由空間を提供する比較的細いねじ山に基づいて低下し、これによって隆起部は比較的僅かしか圧縮しない。このようにしてまた、例えば+/-0.5N・cmの精度を有する16N・cmの、開放のための正確なトルクを調節することも可能である。
【0107】
したがって、本発明に係るクロージャ1の解離特性は、従来技術に基づいて公知のクロージャ100とは異なっており、公知のクロージャ100では、解離の開始時に加えられねばならない力成分は、クロージャの解離中、ほとんど低下せず、かつ終了に至るまで高いレベルに留まっている。このことは、
図5における力変化から良好に認識することができる。このことは、クロージャ100は、追加的な力成分のためにねじ山の反りを備えていて、この反りが全解離中に作用するという事情に起因している。使用者にとっては、解離のために加えられねばならないトルクのこのような特性は、むしろ不都合である。それというのは、ほぼ開放全体に対して、比較的高いモーメントを加える必要があるからである。
【0108】
本発明によれば、クロージャの取り付けはさらに次のことによって、すなわち、ねじ山41が一方では比較的細く形成されており、このことが、可能な角度方向付け、つまり取り付けの開始時におけるクロージャと容器との相互の角度適正な方向付けを拡大し、ひいては容易にすることによって、簡単化される。要求される角度方向付けのこの許容誤差範囲をさらに強く拡大するために、好適な実施形態ではねじ山の、ねじ山入口のそばに位置している部分の反りが、外縁から第1のねじ山に至るまでの自由空間を増大させるように設けられており、これによって角度方向付けの許容誤差範囲を、さらに拡大させることができる。
【0109】
図6には、反り44を備えたクロージャ1の一部が平面図で示されている。反り44を形成する、ねじ山の、この軽い軸方向におけるずれは、ねじ山入口に隣接して配置された部分における追加的な自由空間45を形成している。これによって角度方向付けの許容誤差範囲が拡大される。言い換えれば、接合前におけるクロージャ1と容器30との相互における必要な方向付けを決定する範囲が拡大される。図示された実施形態におけるねじ山入口の本発明に係る構成は、この角度許容誤差を+/-10°の範囲に拡大することを可能にする。本発明によれば、角度許容誤差を+/-5°~+/-15°の範囲、好ましくは+/-8°~+/-12°の範囲において決定することが可能である。これによって大幅に好適な取り付け特性が得られる。
【0110】
同様に好適な実施形態では、ねじ山入口46は、接合をさらに容易にするために、追加的に斜面47を備えて形成されている。
【0111】
本発明に係るクロージャ1を備えた容器30の確実性には、さらに、容器30の開口34のシール性を生ぜしめるコンポーネントの嵌合精度によって影響が及ぼされる。ここで、
図3から分かるように、閉鎖キャップ10の、半径方向外側に突出しているストッパ11であって、取り付けられた位置において容器30に、特にルアーロック固定装置32のカラー36に接触しているストッパ11と、シールエレメント20の、先端33の開口34をシールするシール部分21の内縁24と、の間における軸方向間隔が、決定的な意味を有している。シール部分21は、取り付けられた位置において先端33に密に接触していて、かつ開口34を取り囲んでおり、このとき内縁24は、設定された最低圧で開口34に接触している。
【0112】
閉鎖キャップ10の開口14におけるシールエレメント20の軸方向における位置決めのために、閉鎖キャップ10は、半径方向内側に向かって突出している環状の肩15を備えて形成されている。シールエレメント20は、その周面に、同様に環状の切欠き25を有しており、この切欠き25は、取り付けられた位置において肩15が切欠き25内に係合しかつ軸方向におけるストッパを形成するように位置決めされている。このようにしてシールエレメント20の正確な位置決めを、ひいては容器30の開口34(図示せず)をシールする内縁24の正確な位置決めを、達成することができる。
【0113】
図7には、この関係が、シールエレメント20を備えた本発明に係るクロージャ1の縦断面図によって示されている。図面において「S」は、いわゆる設置寸法を、つまりクロージャの取り付けられた位置において、シールエレメント20の内縁24と容器30との間において生じる間隔を示している。この間隔は、開口をシールするために必要な最低圧を得るために重要である。
【0114】
図8には、この関係が、再度、この図面ではシールエレメント20を有していない本発明に係るクロージャ1の縦断面図によって明らかになっている。この設置寸法を維持するためには、閉鎖キャップ10の、外側に向かって突出しているストッパ11の、容器に向いた外縁であって、つまり取り付けられた位置において容器のカラーに接触している外縁と、閉鎖キャップ10の開口14の内部における、肩15によって確定されたストッパ16と、の間における、確定された間隔「A」が必要である。実施形態においてここでは、極めて小さな許容誤差を有する、A=2.85mmの取り付け寸法が、要求されている。このとき内側のストッパ16は、シールのために加えられねばならない、開口に対するシールエレメント20の最低圧を生ぜしめる。
【0115】
閉鎖キャップ10は、高い寸法精度を得るために、可能な限り閉鎖キャップの全長にわたって、側壁の、薄い材料厚さ、特に均一な材料厚さが与えられているように設計されている。したがって閉鎖キャップ10の壁厚、つまり壁の厚さは、最も厚い箇所において最高で2.0mmである。このとき壁の厚さは、閉鎖キャップの全長で見て、0.5mm以下、好ましくは0.3mm以下しか変化しない。
【0116】
さらに本発明によれば射出成形法は、操作部分50の領域に位置している射出点が選択されるように最適化される。
図9には、本発明に係るクロージャ1が斜視図で示されており、このとき射出成形法のための射出点は、図示の実施形態では文字「E」で示されている。これによって射出点は、操作部分50の周面の外側において、外側リブ53から軸方向間隔をおいて位置している。これによってさらに、使用者にとって場合によっては生じる怪我のおそれを防止することができる。それというのは、スプルーによって、アクセス時に突出する鋭い縁部が発生し得るからである。本実施形態では、このような発生し得るスプルー縁は、グリップ領域の外に位置している。
【0117】
閉鎖キャップの連続する開口14におけるシールエレメント20の回動不能な保持は、その主たる方向付けにおいて軸方向に配置されていてかつ半径方向内側に向かって突出している縦長の内側リブ51であって、操作部分50の開口14の内壁における内側リブ51を介して達成される。これらの内側リブ51は、均一な嵌合のために、内周にわたって均一な間隔をおいて分配配置されている。図示の実施形態では、全部で8つのこのような内側リブ51が設けられている。
【0118】
本発明によれば、内側リブ51の細い構成が設けられており、このような構成によって、挿入されたシールエレメント20においては明らかに小さな押退け容積が生じる。これによって、閉鎖キャップ10内に取り付けられたシールエレメント20が軸方向においてずれる傾向は、強く減じられ、その結果シールエレメントの設置後における要求される間隔寸法、つまり最低圧を維持するための設置寸法を、正確に維持することができる。閉鎖キャップの開口内におけるシールエレメントの軸方向におけるずれは、本発明のように構成された内側リブによって、0.3mm未満に、好ましくは0.2mm未満に、特に好ましくは0.15mm未満に制限される。
【0119】
したがって図示の実施形態において、内側リブ51は、約0.9mmの幅を有している。実施形態に対する制限なしに、1mm未満、好ましくは0.9mm未満、特に好ましくは0.8mm未満の内側リブ51の幅が好適である。安定的な設置のためにさらに、内側リブ51の幅および横断面形状は、例えば
図8から良好に認識できるように、内側リブ51の長さの大部分にわたって一定である。言い換えれば、シールエレメントを設置するための小さな導入傾斜部52を除いて、リブの横断面は長さにわたって一定である。有利であることが判明している実施形態では、内側リブ51の横断面形状は、内側リブ51の全長の少なくとも50%の長さにわたって、好ましくは少なくとも60%の長さにわたって、特に好ましくは少なくとも65%の長さにわたって等しい。このように構成されていると、シールエレメント20が後で軸方向においてずれる傾向が、明らかに減じられる。
【0120】
このようにして、開口34を閉鎖するために必要な最低圧を維持することが可能である。これによって、閉鎖キャップの外側のストッパ11と内側のストッパとの間における軸方向間隔が2.85mmであって、+/-0.2mm、好ましくは+/-0.1mm、特に好ましくは+/-0.05mmの許容誤差を有する値の閉鎖キャップ10が得られる。このようにして、開口34をシールするために要求される最低圧が確実に維持される。
【0121】
操作部分50は、さらに特に好適には、その主たる方向付けにおいて軸方向に配置されていて半径方向外側に向かって周面から突出している縦長の外側リブ53を含んでおり、この外側リブ53は、使用者に対して比較的良好なグリップ可能性を提供し、かつこれによりねじりによる開閉を容易にする。実施形態では、操作部分50は8つのこのような外側リブ53を含んでいる。これらの外側リブ53は、操作部分50のほぼ全長にわたって延びている。好適な実施形態では、これらの外側リブは、少なくとも4.5mm、好ましくは少なくとも5.0mmの長さ、つまり軸方向における延在長さを有している。実施形態では、この長さは約5.3mmであり、これによって既に十分なグリップ面が得られる。
【0122】
これらの外側リブ53の高さ、つまり周面に対する半径方向の突出は、少なくとも0.3mmであり、これによって使用者は、安定したグリップ面を見つけ、ひいてはクロージャを比較的良好にかつ比較的容易に開放することができる。
【0123】
クロージャ1は、色安定的なプラスチックから製造されている。プラスチックを着色するためには、以下に記載の顔料が着色エレメントとして使用される:
-二酸化チタン Kronos(登録商標) 2233
-煤 PRINTEX(登録商標) F 85
-6975 チタンオレンジ
-VYNAMON(登録商標) Green 600734
したがってこのような材料から成るクロージャ1は、ガンマ線またはX線を用いて作業が行われる滅菌の方法のためにも適している。このようなクロージャは、25~40kGyの範囲におけるエネルギ線量による照射において、肉眼ではまったくまたはほとんど認識できない色変化しか生ぜしめず、ひいては色安定的と見なすことができる。
【0124】
このような材料組成は、例えば10分間にわたる134℃までの高温蒸気滅菌のような、他の滅菌方法にも適しており、このような滅菌方法は、肉眼ではまったくまたはほとんど認識できない色変化しか生ぜしめない。
【符号の説明】
【0125】
1 クロージャ
10 閉鎖キャップ
11 ストッパ
12 閉鎖キャップの外縁
13 閉鎖キャップの外縁
14 中空室
15 肩
16 ストッパ
20 シールエレメント
21 シール部分
22 シール部分の外縁
23 シール部分の外縁
24 内縁
25 切欠き
30 容器
31 スリーブ
33 先端
34 開口
35 室
36 カラー
40 取り付け部分
41 雄ねじ山
42 リブ
44 反り
45 自由空間
46 ねじ山入口
47 斜面
50 操作部分
51 内側リブ
52 導入傾斜部
53 外側リブ
100 クロージャ
110 閉鎖キャップ
112 閉鎖キャップの外縁
120 シールエレメント
121 シール部分
122 シール部分の外縁
140 取り付け部分
150 操作部分
S 設置寸法
A 間隔
E 射出点
【手続補正書】
【提出日】2024-07-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬品用の円筒形の容器、特に注射器の遠位端部における開口を、好ましくはルアーロック固定装置を用いて、解離可能に閉鎖するためのクロージャであって、前記クロージャは、
シールエレメントを収容しかつ保持するための円筒形の中空室を備えた円筒形の閉鎖キャップであって、取り付けられた位置において前記容器に向く取り付け部分を含んでいる閉鎖キャップと、
少なくとも部分的に前記取り付け部分の内部に配置されているシール部分を備えたシールエレメントと、
を含んでおり、
前記シールエレメントの外縁は、前記取り付け部分の外縁に対して後退している、
クロージャ。
【外国語明細書】