(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011475
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】パイロット式電磁弁
(51)【国際特許分類】
F16K 31/06 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
F16K31/06 305L
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113455
(22)【出願日】2022-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市川 卓
(72)【発明者】
【氏名】宗像 恭輔
(72)【発明者】
【氏名】藤田 尚敬
(72)【発明者】
【氏名】後藤 聡志
(72)【発明者】
【氏名】津久井 良輔
【テーマコード(参考)】
3H106
【Fターム(参考)】
3H106DA07
3H106DA13
3H106DA23
3H106DA35
3H106DB02
3H106DB12
3H106DB23
3H106DB32
3H106DC04
3H106DC06
3H106DC17
3H106DD03
3H106EE34
3H106EE40
3H106GB09
3H106GC02
3H106JJ03
3H106JJ08
(57)【要約】
【課題】全長を抑えつつも閉弁時のシール性を確保できるパイロット式電磁弁を提供する。
【解決手段】パイロット式電磁弁は、入口開口と出口開口とに連通する弁室、及び前記弁室につながる挿入開口を備えた弁本体と、前記弁本体に対して相対移動可能なパイロット弁体と、前記弁室内の弁座に対し着座または離間するように移動可能な主弁体と、前記挿入開口に挿入されたスリーブと、を有し、前記主弁体は、前記スリーブの内周面に沿って摺動する。このため、全長を抑えつつも閉弁時のシール性を確保できるパイロット式電磁弁を提供することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口開口と出口開口とに連通する弁室、及び前記弁室につながる挿入開口を備えた弁本体と、
前記弁本体に対して相対移動可能なパイロット弁体と、
前記弁室内の弁座に対し着座または離間するように移動可能な主弁体と、
前記挿入開口に挿入されたスリーブと、を有し、
前記主弁体は、前記スリーブの内周面に沿って摺動する、
ことを特徴とするパイロット式電磁弁。
【請求項2】
前記入口開口の軸線方向から見て、前記スリーブの下端側は、前記入口開口と重なる位置に配置され、
前記スリーブの前記入口開口に対向する部分が切欠かれていることを特徴とする請求項1に記載のパイロット式電磁弁。
【請求項3】
前記パイロット弁体を保持するプランジャが、前記スリーブの内周面に沿って摺動する、
ことを特徴とする請求項1に記載のパイロット式電磁弁。
【請求項4】
前記スリーブの一部をカシメることにより、前記スリーブの内周に、前記主弁体が当接するストッパが取り付けられている、
ことを特徴とする請求項3に記載のパイロット式電磁弁。
【請求項5】
前記パイロット弁体を保持するプランジャが摺動するガイドパイプが、前記スリーブを兼ねる、
ことを特徴とする請求項1に記載のパイロット式電磁弁。
【請求項6】
前記前記パイロット弁体を保持するプランジャが摺動するガイドパイプと、前記スリーブとの間に、前記主弁体が当接するストッパが挟持されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のパイロット式電磁弁。
【請求項7】
前記主弁体が摺動する前記スリーブの内周面と、前記弁本体にロウ付けされる前記スリーブの外周面とが、前記主弁体の軸線直交方向に重なっている、
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のパイロット式電磁弁。
【請求項8】
前記パイロット弁体を保持するプランジャ、前記プランジャを磁気吸引する吸引子、及び前記吸引子を励磁させるコイルを有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のパイロット式電磁弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイロット式電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電磁式アクチュエータによりパイロット弁体を開閉駆動し、このパイロット弁体に応動して主弁体を開閉することによって、流体の流路の開閉を行うパイロット式電磁弁が知られている。
【0003】
特許文献1には、コイルへの通電により、吸引子にプランジャが引き寄せられて吸着し、これに伴いパイロット弁体が開弁方向に移動して、背圧室の流体が漏洩通路を通じて排出されることにより背圧室が減圧され、主弁体が弁バネの付勢力によりリフトせしめられ開弁するパイロット式電磁弁が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の電磁弁においては、弁本体に円孔を機械加工することにより、主弁体が摺動する摺動面が弁室に接続して形成される。一方、弁本体には、摺動面の軸線に交差するようにして、弁室に対して流体の流出入を可能とする配管がロウ付けされる。このため、弁本体には配管挿入用の加工孔が弁室に連通して形成されるが、相互の干渉を抑制するために、摺動面は配管挿入用の加工孔から一定距離、離間して形成される。
【0006】
この従来技術のように、主弁体の摺動面が配管挿入用の加工孔から離間することで、主弁体が着座する弁座から摺動面までの距離が長くなると、力のバランスから主弁体がガタつきやすくなり、それにより弁本体が傾くおそれがある。弁本体が大きく傾くと、主弁体と弁座とのシール性が悪化し、流体漏れを招来する。
【0007】
また、主弁体の摺動面が配管挿入用の加工孔から離間することで、弁本体及びパイロット式電磁弁の全長が長くなるという課題もある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、全長を抑えつつも閉弁時のシール性を確保できるパイロット式電磁弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかるパイロット式電磁弁は、
入口開口と出口開口とに連通する弁室、及び前記弁室につながる挿入開口を備えた弁本体と、
前記弁本体に対して相対移動可能なパイロット弁体と、
前記弁室内の弁座に対し着座または離間するように移動可能な主弁体と、
前記挿入開口に挿入されたスリーブと、を有し、
前記主弁体は、前記スリーブの内周面に沿って摺動する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、全長を抑えつつも閉弁時のシール性を確保できるパイロット式電磁弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、第1実施形態のパイロット式電磁弁を示す縦断面図である。
【
図2】
図2は、第2実施形態のパイロット式電磁弁を示す縦断面図である。
【
図3】
図3は、第3実施形態のパイロット式電磁弁を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るパイロット式電磁弁の実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書では、上方とは、吸引子側をいい、下方とは、吸引子に対する主弁体側をいう。
【0013】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態のパイロット式電磁弁1を示す縦断面図であり、閉弁時の状態で示している。
図示例のパイロット式電磁弁1は、例えば冷却機等の冷凍サイクルに使用されるものであり、電磁式アクチュエータ20と組み合わされて使用される。
【0014】
パイロット式電磁弁1は、金属製(例えば真鍮製)の弁本体10と、弁本体10に摺動自在に嵌挿された主弁体15とを備える。パイロット式電磁弁1の軸線をLとする。
【0015】
弁本体10は、その内部に弁室VCを備え、側壁12と底壁13とを連設した有底円筒形状を有する。底壁13の中央には薄肉円筒部13aが上方に突出して形成され、薄肉円筒部13aの内側は、軸線Lに沿って底壁13を貫通する出口開口13bとなる。出口開口13bの上端に弁座14が形成される。出口開口13bに連通するようにして、流出管OTが底壁13にロウ付けなどにより接続固定されている。
【0016】
側壁12の径方向内側が、弁室VCにつながる挿入開口12pとなる。挿入開口12pは円筒状であると好ましい。弁本体10の側壁12には、入口開口12aが形成されており、入口開口12aに連通するようにして、流入管ITがロウ付けなどにより接続固定されている。流入管ITの軸線をOとする。
【0017】
側壁12は、入口開口12aと弁室VCとの間に、流入管ITが突き当てられる段部12bを有し、段部12bに形成された円形開口12cを介して、入口開口12aと弁室VCとが連通している。
【0018】
有底円筒状の主弁体15は、筒部15aと、筒部15aの下端に接続された底部15bとを連設してなる。筒部15aの外周面が同一径の摺動面15cを形成し、底部15bの下端外周が、下方に向かって縮径するテーパ面15dを形成している。
図1の閉弁状態では、主弁体15のテーパ面15dが弁座14に着座して、出口開口13bを閉じている。
【0019】
底部15bは、軸線Lに沿って貫通するパイロット弁口15eを有する。パイロット弁口15eは、下部が拡径した段付き孔であってよく、その上端がパイロット弁座15fを形成する。
【0020】
弁本体10の側壁12の内周(挿入開口12p)に、金属製の(例えばSUS:ステンレス製)のガイドパイプ32が挿入されている。ガイドパイプ32は挿入開口12pに嵌合していると好ましい。ガイドパイプ32の下端もしくはガイドパイプ32の下端側の一部は、円形開口12cの上端より下方の位置(すなわち入口開口12aの軸線O方向に見て、入口開口12aと重なる位置)まで挿入されている。ガイドパイプ32の内周面と側壁12の内周面との間をロウ付けすることによって、ガイドパイプ32は弁本体10に固定される。本実施形態では、ガイドパイプ32がスリーブを兼ねる。
【0021】
ガイドパイプ32の内周には、下端から所定の距離だけ離間した位置に、環状のストッパ33が取り付けられている。ストッパ33は、外周に周溝33aを有している。周溝33aに対応してガイドパイプ32を外周からカシメることで塑性変形させ、それによりストッパ33をガイドパイプ32に取り付けることができる。
【0022】
弁室VC内において、コイルばねからなる開弁ばね18が、主弁体15の底部15bと弁本体10の底壁13との間に配置され、弁本体10に対して主弁体15を上方に付勢している。
【0023】
図1において、電磁式アクチュエータ20は、通電励磁用のコイルユニット(コイルともいう)22、このコイルユニット22の外周を覆うように配在されたハウジング21、コイルユニット22の上部内周側に配在されてボルト28によりハウジング21に固定された有底円筒状ないし円柱状の吸引子25、この吸引子25に対し軸線Lに沿って対向配置されたプランジャ30を備えている。ハウジング21内において、コイルユニット22の周囲は、樹脂モールドにより被覆されている。
【0024】
プランジャ30は、ガイドパイプ32の内周に摺動自在に嵌合した大径部34と、小径部35とを連設してなる。小径部35は、ストッパ33を貫通し、その下端が主弁体15の筒部15aに挿入される。
【0025】
小径部35の下端には、保持穴35aが設けられている。この保持穴35aにボールからなるパイロット弁体31が収容されている。パイロット弁体31は、その下面の一部を露出させた状態で、プランジャ30下端から筒状に突出したカシメ部35bを径方向内側にカシメることで固定されている。
【0026】
プランジャ30が下方に移動したとき、パイロット弁体31を閉弁方向に移動させ、プランジャ30が上方に移動したとき、パイロット弁体31を開弁方向に移動させる。プランジャ30の小径部35と、主弁体15との間に、背圧室BCが形成される。
【0027】
プランジャ30の上部には、コイルばねからなる閉弁ばね26が挿入係止される縦穴(ばね室)30aと横穴(均圧穴)30bが形成されている。閉弁ばね26は、吸引子25に対してプランジャ30を離間する方向に付勢している。
【0028】
コイルユニット22と吸引子25との間の環状隙間に、ガイドパイプ32の上端近傍が配置され、その内周に対してプランジャ30が摺動可能となっている。ガイドパイプ32の上端32aは、吸引子25の外周段差部にTIG溶接などによって固定されている。
【0029】
(パイロット式電磁弁の動作)
パイロット式電磁弁1の動作について説明する。
閉弁状態において、閉弁ばね26により付勢されてプランジャ30が下降しており、パイロット弁体31はパイロット弁座15fに着座して、パイロット弁口15eを遮蔽しており、また主弁体15のテーパ面15dは弁座14に着座している。
【0030】
閉弁状態では、流入管ITから入口開口12aを介して弁室VCに導入された高圧の流体は、主弁体15の外周面とガイドパイプ32の内周面との間(摺動面間)を通過して、背圧室BCに導入される。ただし、主弁体15に連通孔を設けて、弁室VCと背圧室BCとが連通するようにしてもよい。
【0031】
また、背圧室BCに導入された流体は、
図1を参照して、プランジャ30の外周面とガイドパイプ32の内周面との間(摺動面間)及び横穴30b、縦穴30aを通って、吸引子25の下端面とプランジャ30との間に形成される間隙空間CSにも導かれる。
【0032】
閉弁状態のパイロット式電磁弁1において、不図示の電源からコイルユニット22に給電が行われると、吸引子25が励磁してプランジャ30が磁気吸引され、これによりパイロット弁体31が開弁方向に上昇する。背圧室BCと間隙空間CSの内圧は等しいため、プランジャ30の動作を妨げることがない。
【0033】
パイロット弁体31の上昇によって、パイロット弁口15eが開放されると、背圧室BC内の流体がパイロット弁口15eを介して低圧側の出口開口13bへと流出する。これにより、背圧室BC内の圧力が低下するため、弁室VCと背圧室BCの差圧および開弁ばね18の付勢力によって、摺動面15cがガイドパイプ32の内周面に対して摺動しつつ主弁体15が上昇する。
【0034】
主弁体15が上昇すると、テーパ面15dが弁座14から離間するため、流入管ITから弁室VCに流入した流体は、弁座14及び出口開口13bを介して流出管OTへと流出する。主弁体15は、その上端がガイドパイプ32のストッパ33の下面に当接することで、開弁位置に係止される。
【0035】
これに対し、開弁状態から不図示の電源からコイルユニット22への給電が停止されると、吸引子25の励磁が中断されるため、閉弁ばね26の付勢力によりプランジャ30が下降し、パイロット弁体31がパイロット弁座15fに着座してパイロット弁口15eを塞ぐと、背圧室BCおよび間隙空間CSの圧力が上昇し、パイロット弁体31の下降とともに、摺動面15cがガイドパイプ32の内周面に対して摺動しつつ主弁体15が下降し、テーパ面15dが弁座14に着座して、閉弁状態へと復帰する。
【0036】
(本実施形態の効果)
仮に弁本体10の側壁12に対して主弁体15を直接摺動させた場合、以下に述べる課題がある。弁本体10の側壁12は、機械加工によって精度よく形成できるが、弁本体10は真鍮製である場合、入口開口12aに流入管ITがロウ付けされたとき、熱変形が生じて真円度が低下するおそれがあり、それにより弁本体10を主弁体15が摺動する際に渋り(引っ掛かり)が生じるおそれがある。そのため、ロウ付け処理後に側壁12の内周を切削加工して滑らかな摺動面を形成する必要がある。
【0037】
なお、側壁12の内周を切削加工しない場合は、熱変形の影響を避けるため、弁本体10及びパイロット式電磁弁1の全長が長くすることで、弁本体10の側壁12の摺動面を、入口開口12aから極力離間させることもできる。ただし、主弁体15が摺動する弁本体10の内周面は、弁座14から離間した位置となるため、主弁体15が傾きやすく、閉弁時に流体漏れが生じるおそれがある。
【0038】
これに対し本実施の形態によれば、真円性が高く熱影響で生じる歪が小さいガイドパイプ32を側壁12の内周に嵌合させて、ガイドパイプ32の内周面に沿って主弁体15を摺動させているため、入口開口12aに流入管ITをロウ付けした際に熱変形が生じても、主弁体15をスムーズに摺動させることができる。また、主弁体15が摺動するガイドパイプ32の内周面は、弁座14に接近した位置となるため、主弁体15が傾きにくく、閉弁時における流体漏れを抑制できる。さらに、ガイドパイプ32の内周面に沿って、プランジャ30と主弁体15がともに摺動するため、ガイドパイプ32を介して、プランジャ30と主弁体15の同心性を確保できる。また、ガイドパイプ32の外周面(少なくとも主弁体15の摺動面に対応する領域全体)がロウ付け代となり、このロウ付け代と、ガイドパイプ32の内周面である主弁体15の摺動面とが軸線Lの直交方向に重なっているため、パイロット式電磁弁1の全長をより短くできる。
【0039】
[第2実施形態]
図2は、第2実施形態のパイロット式電磁弁1Aを示す縦断面図であり、閉弁時の状態で示している。本実施形態のパイロット式電磁弁1Aが、第1の実施形態と異なる点は、ガイドパイプ32Aの構成である。それ以外の構成は、上述した実施形態と同様であるため、同じ符号を付して説明を省略する。なお、本実施形態においてもガイドパイプ32Aがスリーブを兼ねることはもちろんである。
【0040】
ガイドパイプ32Aは、その下端が延長されて、弁本体10の底壁13の上面に当接した状態で、その外周面と側壁12の内周面との間をロウ付けすることにより固定されている。ガイドパイプ32Aは、円形開口12cに対向して切り欠かれた、円形または半円形の切欠32Abを有する。切欠32Abを介して、ガイドパイプ32A内の弁室VCと、入口開口12aとが連通する。
【0041】
本実施の形態によれば、ガイドパイプ32Aの下端を、弁本体10の底壁13の上面に当接させているため、主弁体15が摺動するガイドパイプ32Aの内周面を、さらに弁座14に接近した位置に配置できる。また、底壁13に底付きしたガイドパイプ32Aが骨格となって弁本体10の剛性向上に貢献するため、例えば弁本体10の側壁12の肉厚をより薄くできる。さらに、ガイドパイプ32Aのロウ付け代を、主弁体15の摺動面よりも弁座14側に延長でき、ガイドパイプ32Aと弁本体10とのロウ付け代を長く取れるため、その分だけ側壁12の軸線方向長を短縮でき、それにより弁本体10の全長を抑えることができる。
【0042】
[第3実施形態]
図3は、第3実施形態のパイロット式電磁弁1Bを示す縦断面図であり、閉弁時の状態で示している。本実施形態のパイロット式電磁弁1Bが、第1の実施形態と異なる点は、弁本体10Bと、ガイドパイプ32Bと、ストッパ33Bと、スリーブ36Bの構成である。それ以外の構成は、上述した実施形態と同様であるため、同じ符号を付して説明を省略する。
【0043】
弁本体10Bは、側壁12Bの上端から、円筒状の嵌合壁12Bdを上方に延在させている。嵌合壁12Bdの内径は、側壁12Bの内径より大きく、嵌合壁12Bdの肉厚は、側壁12Bの肉厚より薄い。
【0044】
スリーブ36Bは、例えばSUS(ステンレス製)の薄肉円管状である。スリーブ36Bの外径は、側壁12Bの内径に略等しく、その肉厚は、ガイドパイプ32Bの肉厚より薄い。
【0045】
環状であるストッパ33Bの外径、及びガイドパイプ32Bの外径は、嵌合壁12Bdの内径に略等しい。
【0046】
組付け時には、弁本体10Bの側壁12Bの内周(挿入開口12Bp)に対して、上方からスリーブ36Bを挿入し(ここでは嵌合させ)、スリーブ36Bの上端が、側壁12Bと嵌合壁12Bdの段部と一致する位置まで圧入して押し込む。このとき、スリーブ36Bの上端が嵌合壁12Bdの段部に係止されるようにストッパ33Bを形成するとよい。スリーブ36Bの下端は、側壁12Bの円形開口12Bcの上端より下方に位置すると好ましい。ただし、スリーブ36Bの下端を底壁13Bに当接させてもよく、その場合には、スリーブ36Bの上端のストッパは設けず、また、スリーブ36Bの下端に円形開口12Bcに対応した切欠を設ける。スリーブ36Bの下端を底壁13Bに当接させる場合は、側壁12Bの上下方向の長さを短くできる。
【0047】
その後、ストッパ33Bを嵌合壁12Bd内に挿入し、その下面をスリーブ36Bの上端に当接させる。さらに、ガイドパイプ32Bの下端を嵌合壁12Bdの内周に嵌合させ、その下面をストッパ33Bの上面に当接させる。これにより、ガイドパイプ32Bとスリーブ36Bとの間に、ストッパ33Bが挟持されて同軸に整列する。
【0048】
その後、ロウ付けによって、弁本体10Bに対し、ガイドパイプ32Bと、ストッパ33Bと、スリーブ36Bを固定する。
【0049】
パイロット式電磁弁1Bの動作時に、主弁体15は、スリーブ36Bの内周面を摺動し、ストッパ33Bにより係止される。
【0050】
本実施の形態によれば、真円性が高く熱影響で生じる歪が小さいスリーブ36Bを側壁12Bの内周(挿入開口12Bp)に嵌合させて、スリーブ36Bの内周面に沿って主弁体15を摺動させているため、入口開口12aに流入管ITをロウ付けした際に熱変形が生じても、主弁体15をスムーズに摺動させることができる。また、主弁体15が摺動するスリーブ36Bの内周面は、弁座14に接近した位置となるため、主弁体15が傾きにくく、閉弁時における流体漏れを抑制できる。なお、ガイドパイプ32やスリーブ36Bの熱影響で生じる歪は、少なくとも真鍮を用いた場合よりも小さいものとする。
【0051】
本明細書は、以下の発明の開示を含む。
(発明A)
入口開口と出口開口とに連通する弁室、及び前記弁室につながる挿入開口を備えた弁本体と、
前記弁本体に対して相対移動可能なパイロット弁体と、
前記弁室内の弁座に対し着座または離間するように移動可能な主弁体と、
前記挿入開口に挿入されたスリーブと、を有し、
前記主弁体は、前記スリーブの内周面に沿って摺動する、
ことを特徴とするパイロット式電磁弁。
【0052】
(発明B)
前記入口開口の軸線方向から見て、前記スリーブの下端側は、前記入口開口と重なる位置に配置され、
前記スリーブの前記入口開口に対向する部分が切欠かれていることを特徴とする発明Aのパイロット式電磁弁。
【0053】
(発明C)
前記パイロット弁体を保持するプランジャが、前記スリーブの内周面に沿って摺動する、
ことを特徴とする発明A又はBのパイロット式電磁弁。
【0054】
(発明D)
前記スリーブの一部をカシメることにより、前記スリーブの内周に、前記主弁体が当接するストッパが取り付けられている、
ことを特徴とする発明A~Cのいずれかのパイロット式電磁弁。
【0055】
(発明E)
前記パイロット弁体を保持するプランジャが摺動するガイドパイプが、前記スリーブを兼ねる、
ことを特徴とする発明A~Dのいずれかのパイロット式電磁弁。
【0056】
(発明F)
前記前記パイロット弁体を保持するプランジャが摺動するガイドパイプと、前記スリーブとの間に、前記主弁体が当接するストッパが挟持されている、
ことを特徴とする発明Aのパイロット式電磁弁。
【0057】
(発明G)
前記主弁体が摺動する前記スリーブの内周面と、前記弁本体にロウ付けされる前記スリーブの外周面とが、前記主弁体の軸線直交方向に重なっている、
ことを特徴とする発明A~Fのいずれかのパイロット式電磁弁。
【0058】
前記パイロット弁体を保持するプランジャ、前記プランジャを磁気吸引する吸引子、及び前記吸引子を励磁させるコイルを有する、
ことを特徴とする発明A~Gのいずれか一つに記載のパイロット式電磁弁。
【符号の説明】
【0059】
1、1A、1B パイロット式電磁弁
10、10B 弁本体
12、12B 側壁
12a 入口開口
12p、12Bp 挿入開口
13 底壁
13b 出口開口
14 弁座
15 主弁体
18 開弁ばね
20 電磁式アクチュエータ
22 コイルユニット
25 吸引子
30 プランジャ
31 パイロット弁体
32、32A、32B ガイドパイプ
33、33B ストッパ
36B スリーブ
VC 弁室