(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114754
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】自律走行システム、自律走行方法、及び自律走行プログラム
(51)【国際特許分類】
G05D 1/648 20240101AFI20240816BHJP
A01B 69/00 20060101ALI20240816BHJP
G05D 1/43 20240101ALN20240816BHJP
G05D 1/248 20240101ALN20240816BHJP
【FI】
G05D1/648
A01B69/00 303Q
G05D1/43
G05D1/248
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024099431
(22)【出願日】2024-06-20
(62)【分割の表示】P 2020188654の分割
【原出願日】2020-11-12
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100181869
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 雄一
(72)【発明者】
【氏名】赤嶺 志朗
(57)【要約】
【課題】作業車両が作業を一時的に停止して停車した後に作業を再開する場合において未作業領域の発生を防ぐことが可能な自律走行システム、自律走行方法、及び自律走行プログラムを提供する。
【解決手段】位置取得処理部は、作業車両10の位置情報を取得する。停止取得処理部は、作業車両10による作業の停止指示を取得する。停止処理部は、停止取得処理部が前記停止指示を取得した場合に作業車両10による作業及び走行を停止させる。算出処理部は、前記停止指示を取得した位置を示す停止指示位置Pa1と、作業車両10が停車した位置を示す停車位置Pa2とに基づいて、前記作業を再開させる再開位置Pb1を算出する。再開処理部は、作業車両10を算出処理部により算出される再開位置Pb1に移動させて前記作業を再開させる。
【選択図】
図5C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車両の位置情報を取得する位置取得処理部と、
前記作業車両による作業の停止指示を取得する停止取得処理部と、
前記停止取得処理部が前記停止指示を取得した場合に前記作業車両による作業及び走行を停止させる停止処理部と、
前記停止指示を取得した位置を示す停止指示位置と、前記作業車両が停車した位置を示す停車位置とに基づいて特定される、前記作業車両が前記作業を再開する再開位置に前記作業車両を移動させて前記作業を再開させる再開処理部と、
を備える自律走行システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両を自律走行させる自律走行システム、自律走行方法、及び自律走行プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
作業車両は、圃場において予め設定された走行経路に沿って自律走行している途中に作業を中断する場合がある。従来、作業車両が作業を中断した場合に、作業車両に中断位置から作業を再開させる技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、作業車両の作業を中断させるために作業車両を停止させる場合、例えばオペレータは操作端末を使用して作業車両に対して停止指示を行う。作業車両は、前記停止指示を取得すると、作業を停止するとともに走行を停止する。この場合に、作業車両は、前記停止指示を取得してから停車するまで多少の時間がかかるため、作業を停止してから停車するまで所定距離だけ走行する。この場合に、作業車両が停車位置から作業を再開すると、前記所定距離に相当する領域が未作業領域となってしまう。
【0005】
本発明の目的は、作業車両が作業を一時的に停止して停車した後に作業を再開する場合において未作業領域の発生を防ぐことが可能な自律走行システム、自律走行方法、及び自律走行プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る自律走行システムは、位置取得処理部と、停止取得処理部と、停止処理部と、再開処理部とを備える。前記位置取得処理部は、作業車両の位置情報を取得する。前記停止取得処理部は、前記作業車両による作業の停止指示を取得する。前記停止処理部は、前記停止取得処理部が前記停止指示を取得した場合に前記作業車両による作業及び走行を停止させる。前記再開処理部は、前記停止指示を取得した位置を示す停止指示位置と、前記作業車両が停車した位置を示す停車位置とに基づいて特定される、前記作業車両が前記作業を再開する再開位置に前記作業車両を移動させて前記作業を再開させる。
【0007】
本発明に係る自律走行方法は、一又は複数のプロセッサーが、作業車両の位置情報を取得することと、前記作業車両による作業の停止指示を取得することと、前記停止指示を取得した場合に前記作業車両による作業及び走行を停止させることと、前記停止指示を取得した位置を示す停止指示位置と、前記作業車両が停車した位置を示す停車位置とに基づいて特定される、前記作業車両が前記作業を再開する再開位置に前記作業車両を移動させて前記作業を再開させることと、を実行する方法である。
【0008】
本発明に係る自律走行プログラムは、作業車両の位置情報を取得することと、前記作業車両による作業の停止指示を取得することと、前記停止指示を取得した場合に前記作業車両による作業及び走行を停止させることと、前記停止指示を取得した位置を示す停止指示位置と、前記作業車両が停車した位置を示す停車位置とに基づいて特定される、前記作業車両が前記作業を再開する再開位置に前記作業車両を移動させて前記作業を再開させることと、を一又は複数のプロセッサーに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、作業車両が作業を一時的に停止して停車した後に作業を再開する場合において未作業領域の発生を防ぐことが可能な自律走行システム、自律走行方法、及び自律走行プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る自律走行システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る作業車両の一例を示す外観図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る作業車両の走行経路の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係る作業車両の位置情報を示す図である。
【
図5A】
図5Aは、本発明の実施形態に係る作業車両の停止指示位置を示す図である。
【
図5B】
図5Bは、本発明の実施形態に係る作業車両の停車位置を示す図である。
【
図5C】
図5Cは、本発明の実施形態に係る作業車両の後進経路を示す図である。
【
図5D】
図5Dは、本発明の実施形態に係る作業車両の再開位置を示す図である。
【
図6A】
図6Aは、本発明の実施形態に係る作業車両の停車位置を示す図である。
【
図6B】
図6Bは、本発明の実施形態に係る作業車両の再開位置を示す図である。
【
図7A】
図7Aは、本発明の実施形態に係る作業車両の停車位置を示す図である。
【
図7B】
図7Bは、本発明の実施形態に係る作業車両の再開位置を示す図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態に係る自律走行システムによって実行される自律走行処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、本発明の実施形態に係る作業車両の走行経路の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0012】
図1に示されるように、本発明の実施形態に係る自律走行システム1は、作業車両10と操作端末20とを含んでいる。作業車両10及び操作端末20は、通信網N1を介して通信可能である。例えば、作業車両10及び操作端末20は、携帯電話回線網、パケット回線網、又は無線LANを介して通信可能である。
【0013】
本実施形態では、作業車両10がトラクタである場合を例に挙げて説明する。なお、他の実施形態として、作業車両10は、田植機、コンバイン、建設機械、又は除雪車などであってもよい。作業車両10は、圃場F(
図3参照)内を予め設定された走行経路Raに沿って自律走行(自動走行)可能な構成を備える、所謂ロボットトラクタである。例えば、作業車両10は、測位装置16により算出される作業車両10の現在位置P1の位置情報に基づいて、圃場Fに対して予め生成された走行経路Raに沿って自律走行することが可能である。
【0014】
例えば、作業車両10は、
図3に示す圃場Fの作業領域において、外側に位置する作業開始位置Sから内側に位置する作業終了位置Gに向けて渦巻状に走行し、内側では平行に往復走行する。内側の点線で示す経路は、作業機14を上げて走行する経路(空走り経路)を示している。走行経路Raは、
図3に示す経路に限定されない。
【0015】
[作業車両10]
図1及び
図2に示すように、作業車両10は、車両制御部11、記憶部12、走行装置13、作業機14、通信部15、及び測位装置16などを備える。車両制御部11は、走行装置13、作業機14、及び測位装置16などに電気的に接続されている。なお、車両制御部11及び測位装置16は、無線通信可能であってもよい。
【0016】
記憶部12は、各種の情報を記憶するHDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)などの不揮発性の記憶部である。記憶部12には、車両制御部11に後述の自律走行処理(
図8参照)を実行させるための自律走行プログラムなどの制御プログラムが記憶されている。例えば、前記自律走行プログラムは、CD又はDVDなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に非一時的に記録されており、所定の読取装置(不図示)で読み取られて記憶部12に記憶される。なお、前記自律走行プログラムは、サーバー(不図示)から通信網N1を介して作業車両10にダウンロードされて記憶部12に記憶されてもよい。また、記憶部12には、操作端末20において生成される走行経路Raのデータ、測位装置16により測位される作業車両10の位置情報D1(
図4参照)のデータなどが記憶される。また、記憶部12には、作業情報(刈取量、収穫量など)が記憶されてもよい。
【0017】
走行装置13は、作業車両10を走行させる駆動部である。
図2に示すように、走行装置13は、エンジン131、前輪132、後輪133、トランスミッション134、フロントアクスル135、リアアクスル136、ハンドル137などを備える。なお、前輪132及び後輪133は、作業車両10の左右にそれぞれ設けられている。また、走行装置13は、前輪132及び後輪133を備えるホイールタイプに限らず、作業車両10の左右に設けられるクローラを備えるクローラタイプであってもよい。
【0018】
エンジン131は、不図示の燃料タンクに補給される燃料を用いて駆動するディーゼルエンジン又はガソリンエンジンなどの駆動源である。走行装置13は、エンジン131とともに、又はエンジン131に代えて、電気モーターを駆動源として備えてもよい。なお、エンジン131には、不図示の発電機が接続されており、当該発電機から作業車両10に設けられた車両制御部11等の電気部品及びバッテリー等に電力が供給される。なお、前記バッテリーは、前記発電機から供給される電力によって充電される。そして、作業車両10に設けられている車両制御部11及び測位装置16等の電気部品は、エンジン131の停止後も前記バッテリーから供給される電力により駆動可能である。
【0019】
エンジン131の駆動力は、トランスミッション134及びフロントアクスル135を介して前輪132に伝達され、トランスミッション134及びリアアクスル136を介して後輪133に伝達される。また、エンジン131の駆動力は、PTO軸(不図示)を介して作業機14にも伝達される。作業車両10が自律走行を行う場合、走行装置13は、車両制御部11の命令に従って走行動作を行う。
【0020】
作業機14は、例えば草刈機、耕耘機、プラウ、施肥機、又は播種機などであって、作業車両10に着脱可能である。これにより、作業車両10は、作業機14各々を用いて各種の作業を行うことが可能である。本実施形態では、作業機14は草刈機である場合を例に挙げて説明する。
【0021】
作業機14は、作業車両10において、不図示の昇降機構により昇降可能に支持されてもよい。車両制御部11は、前記昇降機構を制御して作業機14を昇降させることが可能である。例えば、車両制御部11は、作業車両10が圃場Fの作業対象領域において前進する場合に作業機14を下降させ、作業車両10が後進する場合に作業機14を上昇させる。また、車両制御部11は、作業の停止指示を取得した場合に、作業機14に作業の停止命令を出力する。例えば、車両制御部11は、操作端末20においてオペレータが停止指示操作を行った場合に操作端末20から前記停止指示を取得する。車両制御部11は、作業の停止指示を取得すると、PTO軸の駆動を停止させて作業機14の作業を停止させる。車両制御部11の詳細は後述する。
【0022】
ハンドル137は、ユーザー(オペレータ)又は車両制御部11によって操作される操作部である。例えば走行装置13では、車両制御部11によるハンドル137の操作に応じて、不図示の油圧式パワーステアリング機構などによって前輪132の角度が変更され、作業車両10の進行方向が変更される。
【0023】
また、走行装置13は、ハンドル137の他に、車両制御部11によって操作される不図示のシフトレバー、アクセル、ブレーキ等を備える。そして、走行装置13では、車両制御部11による前記シフトレバーの操作に応じて、トランスミッション134のギアが前進ギア又はバックギアなどに切り替えられ、作業車両10の走行態様が前進又は後進などに切り替えられる。また、車両制御部11は、前記アクセルを操作してエンジン131の回転数を制御する。また、車両制御部11は、前記ブレーキを操作して電磁ブレーキを用いて前輪132及び後輪133の回転を制動する。
【0024】
測位装置16は、測位制御部161、記憶部162、通信部163、及び測位用アンテナ164などを備える通信機器である。例えば、測位装置16は、
図2に示すように、オペレータが搭乗するキャビン18の上部に設けられている。また、測位装置16の設置場所はキャビン18に限らない。さらに、測位装置16の測位制御部161、記憶部162、通信部163、及び測位用アンテナ164は、作業車両10において異なる位置に分散して配置されていてもよい。なお、前述したように測位装置16には前記バッテリーが接続されており、当該測位装置16は、エンジン131の停止中も稼働可能である。また、測位装置16として、例えば携帯電話端末、スマートフォン、又はタブレット端末などが代用されてもよい。
【0025】
測位制御部161は、一又は複数のプロセッサーと、不揮発性メモリ及びRAMなどの記憶メモリとを備えるコンピュータシステムである。記憶部162は、測位制御部161に測位処理を実行させるためのプログラム、及び測位情報、移動情報などのデータを記憶する不揮発性メモリなどである。例えば、前記プログラムは、CD又はDVDなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に非一時的に記録されており、所定の読取装置(不図示)で読み取られて記憶部162に記憶される。なお、前記プログラムは、サーバー(不図示)から通信網N1を介して測位装置16にダウンロードされて記憶部162に記憶されてもよい。
【0026】
通信部163は、測位装置16を有線又は無線で通信網N1に接続し、通信網N1を介して基地局サーバーなどの外部機器との間で所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行するための通信インターフェースである。
【0027】
測位用アンテナ164は、衛星から発信される電波(GNSS信号)を受信するアンテナである。
【0028】
測位制御部161は、測位用アンテナ164が衛星から受信するGNSS信号に基づいて作業車両10の位置(現在位置P1)を算出する。例えば、作業車両10が圃場F内を自律走行する場合に、測位用アンテナ164が複数の衛星のそれぞれから発信される電波(発信時刻、軌道情報など)を受信すると、測位制御部161は、測位用アンテナ164と各衛星との距離を算出し、算出した距離に基づいて作業車両10の現在位置P1(緯度及び経度)を算出する。また、測位制御部161は、作業車両10に近い基地局(基準局)に対応する補正情報を利用して作業車両10の現在位置P1を算出する、リアルタイムキネマティック方式(RTK-GPS測位方式、以下「RTK方式」という。)による測位を行ってもよい。このように、作業車両10は、RTK方式による測位情報を利用して自律走行を行う。
【0029】
車両制御部11は、CPU、ROM、及びRAMなどの制御機器を有する。前記CPUは、各種の演算処理を実行するプロセッサーである。前記ROMは、前記CPUに各種の演算処理を実行させるためのBIOS及びOSなどの制御プログラムが予め記憶される不揮発性の記憶部である。前記RAMは、各種の情報を記憶する揮発性又は不揮発性の記憶部であり、前記CPUが実行する各種の処理の一時記憶メモリー(作業領域)として使用される。そして、車両制御部11は、前記ROM又は記憶部12に予め記憶された各種の制御プログラムを前記CPUで実行することにより作業車両10を制御する。車両制御部11は、作業車両10に対する各種のユーザー操作に応じて当該作業車両10の動作を制御する。また、車両制御部11は、測位装置16により算出される作業車両10の現在位置P1と、予め生成される走行経路Raとに基づいて、当該作業車両10の自律走行処理を実行する。
【0030】
図1に示すように、車両制御部11は、位置取得処理部111、停止取得処理部112、停止処理部113、算出処理部114、及び再開処理部115などの各種の処理部を含む。なお、車両制御部11は、前記CPUで前記自律走行プログラムに従った各種の処理を実行することによって前記各種の処理部として機能する。また、一部又は全部の前記処理部が電子回路で構成されていてもよい。なお、前記自律走行プログラムは、複数のプロセッサーを前記処理部として機能させるためのプログラムであってもよい。
【0031】
位置取得処理部111は、作業車両10の位置情報を取得する。具体的には、位置取得処理部111は、測位装置16により測位される測位情報に基づいて作業車両10の現在位置P1を取得する。位置取得処理部111は、現在位置P1を取得すると、記憶部12の位置情報D1に登録する。
図4に示すように、位置情報D1には、時刻情報、位置情報、停止指示位置情報、及び停車位置情報などのデータが含まれる。前記時刻情報は、測位装置16が測位する所定のサンプリング間隔に応じた時刻情報である。前記位置情報は、前記時刻情報に対応する作業車両10の現在位置P1を示す位置情報である。位置取得処理部111は、本発明の位置取得処理部の一例である。
【0032】
停止取得処理部112は、作業車両10による作業(例えば作業機14による草刈作業)の停止指示を取得する。具体的には、停止取得処理部112は、操作端末20においてオペレータが停止指示操作を行った場合に操作端末20から前記停止指示を取得する。また、停止取得処理部112は、作業車両10に搭載される障害物検知センサー(不図示)が障害物を検知した場合に当該障害物検知センサーから前記停止指示を取得する。また、停止取得処理部112は、作業車両10が走行経路Raから逸脱した場合に前記停止指示を取得する。また、停止取得処理部112は、作業車両10の通信が遮断された場合に前記停止指示を取得する。停止取得処理部112は、本発明の停止取得処理部の一例である。
【0033】
停止処理部113は、停止取得処理部112が前記停止指示を取得した場合に作業車両10による作業及び走行を停止させる停止処理を実行する。具体的には、停止処理部113は、停止取得処理部112が前記停止指示を取得すると、PTO軸の駆動を停止させて作業機14の作業を停止させる。また、停止処理部113は、前記ブレーキを操作して電磁ブレーキを用いて前輪132及び後輪133の回転を制動して作業車両10を停車させる。停止処理部113は、本発明の停止処理部の一例である。
【0034】
ここで、作業車両10は、前記停止指示を取得すると作業を停止するとともに走行を停止する停止処理を実行するが、前記停止指示を取得してから停車するまで多少の時間がかかるため、作業を停止してから停車するまで所定距離だけ走行することになる。例えば、
図5Aに示すように、作業車両10が位置Pa1において前記停止指示を取得して前記停止処理を実行すると、作業機14は位置Pa1において作業を停止する。これに対して、作業車両10は、
図5Bに示すように、所定距離L2(数m)だけ走行(惰性走行)して位置Pa2で停車する。この場合に、例えば作業車両10が位置Pa2から作業及び走行を再開すると、所定距離L2に相当する領域が未作業領域になる問題が生じる。
【0035】
なお、
図5A及び
図5Bに示すように、実際には、作業車両10は、圃場Fの状態などの影響により、目標の走行経路Raから所定距離L1(数cm)だけ横方向にずれた位置を走行する場合がある。
【0036】
車両制御部11は、前記未作業領域の発生を防ぐために以下の処理を実行する。
【0037】
位置取得処理部111は、前記停止指示を取得した時点の作業車両10の位置を示す停止指示位置Pa1を取得して位置情報D1(
図4参照)に登録する。また、位置取得処理部111は、作業車両10が停車した位置を示す停車位置Pa2を取得して位置情報D1(
図4参照)に登録する。
図4に示す例では、「X8,Y8」が停止指示位置Pa1を示し、「X13,Y13」が停車位置Pa2を示している。「X8,Y8」から「X13,Y13」までの距離が所定距離L2(
図5B参照)に相当する。
【0038】
算出処理部114は、停止指示位置Pa1と停車位置Pa2とに基づいて、作業車両10に作業を再開させる再開位置を算出する。再開処理部115は、停止指示位置Pa1と停車位置Pa2とに基づいて特定される、作業車両10が前記作業を再開する再開位置に作業車両10を移動させて前記作業を再開させる。具体的には、再開処理部115は、作業車両10を算出処理部114により算出される再開位置に移動させて前記作業を再開させる。なお、再開処理部115は、作業車両10の作業を再開させる指示(再開指示)を取得した場合に前記作業を再開させる再開処理を実行してもよい。例えばオペレータが操作端末20において前記再開指示の操作を行った場合に、再開処理部115は操作端末20から前記再開指示を取得して前記再開処理を実行する。算出処理部114は、本発明の算出処理部の一例である。再開処理部115は、本発明の再開処理部の一例である。
【0039】
具体的には、算出処理部114は、
図5Cに示すように、停止指示位置Pa1及び停車位置Pa2を通る直線La1に直交する直交線であって停止指示位置Pa1を通る直交線La2と、走行経路Raを示す直線との交点Pb1を再開位置として算出する。なお、算出処理部114は、停止指示位置Pa1に最も近い走行経路Ra上の位置を再開位置として算出してもよい。
【0040】
再開処理部115は、
図5Cに示すように、作業車両10を停車位置Pa2から再開位置Pb1まで経路Rb(後進経路)に沿って後進移動させる。なお、経路Rbは、直進経路(前進、後進)及び旋回経路を含んでもよい。作業車両10が再開位置Pb1に到着すると、
図5Dに示すように、再開処理部115は、走行経路Raに沿って、作業車両10を前進走行させるとともに作業機14に作業を再開させる。このように、再開処理部115は、作業車両10を停車位置Pa2から再開位置Pb1まで後進移動させる際に走行経路Raを利用する。すなわち、再開位置Pb1は、走行経路Ra上に設定される。また、再開処理部115は、作業車両10を、周知の技術により停車位置Pa2から再開位置Pb1まで例えば最短経路を走行させる。このため、作業車両10を停車位置Pa2から再開位置Pb1に移動させる際に、停車位置Pa2から再開位置Pb1までの新たな経路を生成する必要がない。よって、車両制御部11の処理負担を軽減することができる。
【0041】
ここで、作業車両10の現在の作業経路における作業幅と次の作業経路における作業幅とは10cm程度のオーバーラップ幅を設定している。このため、前記再開位置を走行経路Ra上に設定して作業車両10を走行経路Ra上に後進移動させたとしても未作業領域が生じることはない。また、作業車両10を走行経路Ra上に戻すことにより横方向の位置ずれを解消することができる。
【0042】
なお、走行経路Raからの位置ずれ(所定距離L1)が生じない又は無視できる場合には、算出処理部114は、停止指示位置Pa1を再開位置として算出してもよい。この場合、再開処理部115は、作業車両10を停止指示位置Pa1(再開位置)まで移動(後進)させて停止指示位置Pa1から前記作業を再開させる。
【0043】
ところで、圃場Fに作業を必要としない非作業領域が含まれる場合において、作業車両10が非作業領域を跨いで惰性走行した場合には、算出処理部114は、作業領域に前記再開位置を設定することが望ましい。例えば
図6Aに示す圃場Fには、作業領域F2と、作業領域F2の周囲の非作業領域F1(例えば枕地領域)とが含まれる。この場合において、
図6Aに示すように、位置取得処理部111が作業領域F2内の停止指示位置Pa1を取得し、非作業領域F1内の停車位置Pa2を取得した場合には、算出処理部114は、作業領域F2内の走行経路Ra上の位置Pb1を再開位置として算出する。そして、再開処理部115は、
図6Bに示すように、作業車両10を停車位置Pa2から再開位置Pb1まで経路Pbに沿って後進移動させる。作業車両10が再開位置Pb1に到着すると、再開処理部115は、走行経路Raに沿って、作業車両10を前進走行させるとともに作業機14に作業を再開させる。
【0044】
これに対して、
図7Aに示すように、位置取得処理部111が非作業領域F1内の停止指示位置Pa1を取得し、作業領域F2内の停車位置Pa2を取得した場合には、算出処理部114は、作業領域F2内の走行経路Ra上の端部Pb3を再開位置として算出する。すなわち、算出処理部114は、非作業領域F1内の走行経路Ra上の位置Pb1(又は停止指示位置Pa1)を再開位置に設定しない。そして、再開処理部115は、
図7Bに示すように、作業車両10を停車位置Pa2から再開位置Pb3まで経路Pbに沿って後進移動させる。作業車両10が再開位置Pb3に到着すると、再開処理部115は、走行経路Raに沿って、作業車両10を前進走行させるとともに作業機14に作業を再開させる。この構成によれば、作業車両10を非作業領域F1まで戻す必要がないため、作業効率の低下を防ぐことができる。
【0045】
また、停止指示位置Pa1及び停車位置Pa2の両方が非作業領域F1に位置する場合には、作業車両10は作業を行わないため、再開処理部115は、作業車両10の走行を再開させる場合には、停車位置Pa2から走行を再開させる。
【0046】
このように、再開処理部115は、停止指示位置Pa1及び停車位置Pa2のうち少なくともいずれか一方が作業領域F2に位置する場合に、作業車両10を再開位置に移動(後進移動)させて作業を再開させる。また、算出処理部114は、作業領域F2内に前記再開位置を設定する。
【0047】
なお、作業車両10が走行する走行経路Raは、例えば操作端末20により生成される。作業車両10は、操作端末20から走行経路Raを取得して、走行経路Raに従って圃場F内を自律走行しながら作業機14による作業を行う。
【0048】
[操作端末20]
図1に示すように、操作端末20は、操作制御部21、記憶部22、操作表示部23、及び通信部24などを備える情報処理装置である。操作端末20は、タブレット端末、スマートフォンなどの携帯端末で構成されてもよい。
【0049】
通信部24は、操作端末20を有線又は無線で通信網N1に接続し、通信網N1を介して一又は複数の作業車両10などの外部機器との間で所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行するための通信インターフェースである。
【0050】
操作表示部23は、各種の情報を表示する液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイのような表示部と、操作を受け付けるタッチパネル、マウス、又はキーボードのような操作部とを備えるユーザーインターフェースである。オペレータは、前記表示部に表示される操作画面において、前記操作部を操作して各種情報(後述の作業車両情報、圃場情報、作業情報など)を登録する操作を行うことが可能である。また、オペレータは、前記操作部を操作して作業車両10に対する自律走行指示を行うことが可能である。さらに、オペレータは、作業車両10から離れた場所において、操作端末20に表示される走行軌跡により、圃場F内を走行経路Raに従って自律走行する作業車両10の走行状態を把握することが可能である。
【0051】
記憶部22は、各種の情報を記憶するHDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)などの不揮発性の記憶部である。記憶部22には、操作制御部21に所定の制御処理を実行させるための制御プログラムが記憶されている。例えば、前記制御プログラムは、CD又はDVDなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に非一時的に記録されており、操作端末20が備える所定の読取装置(不図示)で読み取られて記憶部22に記憶される。なお、前記制御プログラムは、サーバー(不図示)から通信網N1を介して操作端末20にダウンロードされて記憶部22に記憶されてもよい。また、記憶部22は、作業車両10から送信される作業情報(刈取量、収穫量など)を記憶してもよい。
【0052】
また、記憶部22には、作業車両10を自律走行させるための専用アプリケーションがインストールされている。操作制御部21は、前記専用アプリケーションを起動させて、作業車両10に関する各種情報の設定処理、作業車両10の走行経路の生成処理、作業車両10に対する自律走行指示などを行う。
【0053】
操作制御部21は、CPU、ROM、及びRAMなどの制御機器を有する。前記CPUは、各種の演算処理を実行するプロセッサーである。前記ROMは、前記CPUに各種の演算処理を実行させるためのBIOS及びOSなどの制御プログラムが予め記憶される不揮発性の記憶部である。前記RAMは、各種の情報を記憶する揮発性又は不揮発性の記憶部であり、前記CPUが実行する各種の処理の一時記憶メモリー(作業領域)として使用される。そして、操作制御部21は、前記ROM又は記憶部22に予め記憶された各種の制御プログラムを前記CPUで実行することにより操作端末20を制御する。
【0054】
図1に示すように、操作制御部21は、車両設定処理部211、圃場設定処理部212、作業設定処理部213、経路生成処理部214、出力処理部215、及び受付処理部216などの各種の処理部を含む。なお、操作制御部21は、前記CPUで前記制御プログラムに従った各種の処理を実行することによって前記各種の処理部として機能する。また、一部又は全部の前記処理部が電子回路で構成されていてもよい。なお、前記制御プログラムは、複数のプロセッサーを前記処理部として機能させるためのプログラムであってもよい。
【0055】
車両設定処理部211は、作業車両10に関する情報(以下、作業車両情報という。)を設定する。車両設定処理部211は、作業車両10の機種、作業車両10において測位用アンテナ164が取り付けられている位置、作業機14の種類、作業機14のサイズ及び形状、作業機14の作業車両10に対する位置、作業車両10の作業中の車速及びエンジン回転数、作業車両10の旋回中の車速及びエンジン回転数等の情報について、オペレータが操作端末20において登録する操作を行うことにより当該情報を設定する。
【0056】
圃場設定処理部212は、圃場Fに関する情報(以下、圃場情報という。)を設定する。圃場設定処理部212は、圃場Fの位置及び形状、作業を開始する作業開始位置S及び作業を終了する作業終了位置G、作業方向等の情報について、操作端末20において登録する操作を行うことにより当該情報を設定する。
【0057】
なお、作業方向とは、圃場Fから枕地、非耕作地等の非作業領域を除いた領域である作業領域において、作業機14で作業を行いながら作業車両10を走行させる方向を意味する。
【0058】
圃場Fの位置及び形状の情報は、例えばオペレータが作業車両10に搭乗して圃場Fの外周に沿って一回り周回するように運転し、そのときの測位用アンテナ164の位置情報の推移を記録することで、自動的に取得することができる。また、圃場Fの位置及び形状は、操作端末20に地図を表示させた状態でオペレータが操作端末20を操作して当該地図上の複数の点を指定することで得られた多角形に基づいて取得することもできる。取得された圃場Fの位置及び形状により特定される領域は、作業車両10を走行させることが可能な領域(走行領域)である。
【0059】
作業設定処理部213は、作業を具体的にどのように行うかに関する情報(以下、作業情報という。)を設定する。作業設定処理部213は、作業情報として、作業車両10(無人トラクタ)と有人の作業車両10の協調作業の有無、作業車両10が枕地において旋回する場合にスキップする作業経路の数であるスキップ数、枕地の幅、及び非耕作地の幅等を設定可能に構成されている。
【0060】
経路生成処理部214は、前記設定情報に基づいて、作業車両10を自律走行させる経路である走行経路Raを生成する。走行経路Raは、例えば作業開始位置Sから作業終了位置Gまでの作業経路である(
図3参照)。
図3に示す走行経路Raは、圃場Fの作業領域において作業車両10を外側から内側に向けて渦巻状に走行させ、内側において平行に往復走行させる経路である。
図3に示す例では、作業車両10が圃場F内の全領域を草刈作業するため、外周側から内周に向かう全経路が作業経路となっている。経路生成処理部214は、車両設定処理部211、圃場設定処理部212及び作業設定処理部213で設定された前記各設定情報に基づいて、作業車両10の走行経路Raを生成して記憶することができる。
【0061】
具体的には、経路生成処理部214は、圃場設定で登録した作業開始位置S及び作業終了位置Gに基づいて走行経路Ra(
図3参照)を生成する。なお、
図3に示す走行経路Raにおいて、内側の走行経路Raに含まれる点線で示す経路は、作業機14を上げて走行する経路(空走り経路)を示している。走行経路Raは、
図3に示す経路に限定されない。
【0062】
作業車両10は、操作端末20において生成された走行経路Raのデータが作業車両10に転送され、記憶部12に記憶されるとともに、測位用アンテナ164により作業車両10の現在位置P1を検出しつつ走行経路Raに沿って自律的に走行可能に構成されている。なお、作業車両10の現在位置P1は、通常は測位用アンテナ164の位置と一致している。
【0063】
本実施形態に係る作業車両10は、
図3に示すような略長方形状の圃場Fを走行する。作業車両10は、現在位置P1が圃場F内に位置している場合に自律走行できるように構成されており、現在位置P1が圃場F外(公道等)に位置している場合には自律走行できないように構成されている。また、作業車両10は、例えば現在位置P1が作業開始位置Sと一致している場合に、自律走行できるように構成されている。
【0064】
作業車両10は、現在位置P1が作業開始位置Sと一致している場合に、オペレータにより操作画面において作業開始ボタンが押されて「作業開始」の指示が与えられると、車両制御部11によって、作業機14(
図2参照)による作業を開始する。すなわち、操作制御部21は、現在位置P1が作業開始位置Sと一致していることを条件に作業車両10の自律走行を許可する。なお、作業車両10の自律走行を許可する条件は、前記条件に限定されない。
【0065】
出力処理部215は、経路生成処理部214が生成した走行経路Raの情報を作業車両10に出力する。また、出力処理部215は、通信部24を介して制御信号を作業車両10に送信することにより、作業車両10に対して自律走行の開始及び停止等を指示することができる。これにより、作業車両10を自律走行させることが可能となる。
【0066】
例えば、車両制御部11は、操作端末20から取得する走行経路Raに基づいて、作業車両10を作業開始位置Sから作業終了位置Gまで自律走行させる。また、車両制御部11は、作業車両10が作業を終了すると、作業終了位置Gから圃場Fの入口まで自律走行させてもよい。作業車両10が自律走行している場合、操作制御部21は、作業車両10の状態(位置、走行速度等)を作業車両10から受信して操作表示部23に表示させることができる。
【0067】
受付処理部216は、オペレータから、自律走行している作業車両10の作業を停止させる操作(停止指示操作)を受け付ける。例えばオペレータが操作表示部23において前記停止指示操作を行った場合に、受付処理部216は、前記停止指示操作を受け付ける。受付処理部216が前記停止指示操作を受け付けると、出力処理部215が前記停止指示を作業車両10に出力する。これにより、作業車両10の車両制御部11(停止取得処理部112)は、操作端末20から前記停止指示を取得する。車両制御部11は、前記停止指示を取得すると、作業車両10の作業及び走行を停止させる。
【0068】
また、受付処理部216は、作業車両10の走行を再開させる操作(再開指示操作)を受け付ける。例えばオペレータが操作表示部23において前記再開指示操作を行った場合に、受付処理部216は、前記再開指示操作を受け付ける。受付処理部216が前記再開指示操作を受け付けると、出力処理部215が前記再開指示を作業車両10に出力する。これにより、作業車両10の車両制御部11(再開処理部115)は、操作端末20から前記再開指示を取得する。車両制御部11は、前記再開指示を取得すると、作業車両10の作業及び走行を再開させる。
【0069】
また、受付処理部216は、作業車両10の作業を再開させる場合に作業車両10を再開位置に戻す処理を実行するか否かをオペレータが予め設定(選択)可能に構成されてもよい。例えば、受付処理部216は、設定画面において、作業車両10の作業を再開させる場合に作業車両10を再開位置に戻す処理を実行させる第1選択ボタンと、作業車両10の作業を再開させる場合に作業車両10を再開位置に戻す処理を実行させない第2選択ボタンとを表示させて、オペレータの選択操作を受け付ける。作業車両10の車両制御部11は、前記設定画面においてオペレータが前記第1選択ボタンを選択した場合に、作業車両10を再開位置に戻す処理を実行する。一方、作業車両10の車両制御部11は、前記設定画面においてオペレータが前記第2選択ボタンを選択した場合には、作業車両10を停車位置Pa2から作業を再開する処理を実行する。
【0070】
なお、操作端末20は、サーバー(不図示)が提供する農業支援サービスのウェブサイト(農業支援サイト)に通信網N1を介してアクセス可能であってもよい。この場合、操作端末20は、操作制御部21によってブラウザプログラムが実行されることにより、前記サーバーの操作用端末として機能することが可能である。そして、前記サーバーは、上述の各処理部を備え、各処理を実行する。
【0071】
他の実施形態として、上述した車両制御部11の各機能は、操作端末20の操作制御部21に含まれてもよい。
【0072】
[自律走行処理]
以下、
図8を参照しつつ、車両制御部11によって実行される前記自律走行処理の一例について説明する。例えば、前記自律走行処理は、作業車両10が自律走行を開始した場合に車両制御部11によって開始される。
【0073】
なお、本願発明は、車両制御部11が前記自律走行処理の一部又は全部を実行する自律走行方法の発明、又は、当該自律走行方法の一部又は全部を車両制御部11に実行させるための自律走行プログラムの発明として捉えてもよい。また、前記自律走行処理は、一又は複数のプロセッサーが実行してもよい。
【0074】
作業車両10が走行経路Raに従って自律走行を開始すると、車両制御部11は、作業車両10の位置情報(現在位置P1)を取得する。
【0075】
ステップS1において、車両制御部11は、作業の停止指示を取得したか否かを判定する。例えば、車両制御部11は、オペレータが停止指示操作を行った場合、障害物検知センサーが障害物を検知した場合、作業車両10が走行経路Raから逸脱した場合、作業車両10の通信が遮断された場合などに前記停止指示を取得する。車両制御部11は、前記停止指示を取得すると、当該停止指示を取得した時点の作業車両10の位置(停止指示位置Pa1)を取得する。そして、車両制御部11は、停止指示位置Pa1を位置情報D1(
図4参照)に登録する。車両制御部11が前記停止指示を取得した場合(S1:Yes)、処理はステップS2に移行する。車両制御部11が前記停止指示を取得しない場合(S1:No)、処理はステップS10に移行する。
【0076】
ステップS2において、車両制御部11は、作業車両10による作業及び走行を停止させる停止処理を実行する。具体的には、車両制御部11は、PTO軸の駆動を停止させて作業機14の作業を停止させるとともに、前記ブレーキを操作して電磁ブレーキを用いて前輪132及び後輪133の回転を制動して作業車両10を停車させる。
【0077】
次に、ステップS3において、車両制御部11は、作業車両10が停車したか否かを判定する。例えば、車両制御部11は、作業車両10の位置情報の変化、前輪132及び後輪133の回転状況などに基づいて、作業車両10が停車したか否かを判定する。作業車両10が停車した場合(S3:Yes)、処理はステップS4に移行する。車両制御部11は、作業車両10が停車するまで待機する(S3:No)。車両制御部11は、作業車両10が停車したと判定した場合、その時点の作業車両10の位置(停車位置Pa2)を取得する。そして、車両制御部11は、停車位置Pa2を位置情報D1(
図4参照)に登録する。作業車両10は、停止指示位置Pa1から停車位置Pa2までの所定距離L2だけ、作業を停止した状態で走行する(
図5B参照)。
【0078】
ステップS4では、車両制御部11は、作業車両10の作業及び走行を再開させる再開指示を取得したか否かを判定する。例えばオペレータが操作端末20において前記再開指示の操作を行った場合に、車両制御部11は、操作端末20から前記再開指示を取得する。車両制御部11が前記再開指示を取得した場合(S4:Yes)、処理はステップS5に移行する。車両制御部11は、前記停止指示を取得するまで待機する(S4:No)。
【0079】
ステップS5において、車両制御部11は、停止指示位置Pa1から停車位置Pa2までの間の走行経路において未作業領域があるか否かを判定する。具体的には、車両制御部11は、停止指示位置Pa1及び停車位置Pa2のうち少なくともいずれか一方が作業領域に位置する場合に未作業領域があると判定する。
【0080】
例えば、停止指示位置Pa1及び停車位置Pa2が作業領域に位置する場合には、停止指示位置Pa1から停車位置Pa2までの間(所定距離L2)は作業車両10が作業をしないで走行することになるため、車両制御部11は未作業領域があると判定する。例えば、走行経路Raのうち作業を要する経路に停止指示位置Pa1及び停車位置Pa2が位置する場合には、当該経路に未作業部分が生じるため、車両制御部11は未作業領域があると判定する。また例えば
図6に示すように、停止指示位置Pa1が作業領域F2に位置し、停車位置Pa2が非作業領域F1に位置する場合、又は、
図7に示すように、停止指示位置Pa1が非作業領域F1に位置し、停車位置Pa2が作業領域F2に位置する場合には、停止指示位置Pa1から停車位置Pa2までの間(所定距離L2)に含まれる作業領域F2において作業車両10が作業をしないで走行することになるため、車両制御部11は未作業領域があると判定する。これに対して、車両制御部11は、停止指示位置Pa1及び停車位置Pa2の両方が非作業領域F1に位置する場合には、作業車両10による作業が不要であるため未作業領域がないと判定する。例えば、走行経路Raのうち作業を要しない経路に停止指示位置Pa1及び停車位置Pa2が位置する場合には、車両制御部11は未作業領域がないと判定する。
【0081】
車両制御部11が前記未作業領域があると判定した場合(S5:Yes)、処理はステップS6に移行する。一方、車両制御部11が前記未作業領域がないと判定した場合(S5:No)、処理はステップS9に移行する。
【0082】
ステップS6において、車両制御部11は、停止指示位置Pa1及び停車位置Pa2(
図4参照)に基づいて、作業車両10に作業を再開させる再開位置を算出する。例えば、車両制御部11は、
図5Cに示すように、停止指示位置Pa1及び停車位置Pa2を通る直線La1に直交する直交線であって停止指示位置Pa1を通る直交線La2と、走行経路Raを示す直線との交点Pb1を再開位置として算出する。
【0083】
ステップS7において、車両制御部11は、作業車両10を前記再開位置まで移動させる。例えば
図5Cに示すように、車両制御部11は、作業車両10を停車位置Pa2から再開位置Pb1まで経路Rb(後進経路)に沿って後進移動させる。
【0084】
ステップS8において、車両制御部11は、作業車両10が前記再開位置に到着したか否かを判定する。作業車両10が前記再開位置に到着した場合(S8:Yes)、処理はステップS9に移行する。車両制御部11は、作業車両10が前記再開位置に到着するまで移動処理(後進走行)を継続する(S8:No)。
【0085】
ステップS9において、車両制御部11は、作業車両10に作業及び走行を再開させる。具体的には、車両制御部11は、作業車両10の走行経路Raに沿って、作業車両10を前進走行させるとともに作業機14に作業を再開させる(
図5D参照)。なお、ステップS5において、車両制御部11が前記未作業領域がないと判定した場合、車両制御部11は、停車位置Pa2から作業車両10に作業及び走行を再開させる。
【0086】
ステップS10において、車両制御部11は、作業車両10が作業を終了したか否かを判定する。車両制御部11は、作業車両10が作業終了位置Gに到達した場合に、作業を終了したと判定する。車両制御部11は、作業車両10が作業を終了するまでステップS1~S9の処理を繰り返し実行する(S10:No)。
【0087】
以上説明したように、本実施形態に係る自律走行システム1は、作業車両10の位置情報を取得し、作業車両10による作業の停止指示を取得した場合に作業車両10による作業及び走行を停止させる。また、自律走行システム1は、前記停止指示を取得した位置を示す停止指示位置Pa1と、作業車両10が停車した位置を示す停車位置Pa2とに基づいて、前記作業を再開させる再開位置を算出し、作業車両10を前記再開位置に移動させて前記作業を再開させる。これにより、作業車両10が作業を停止してから停車するまでの間に所定距離(
図5Bに示す所定距離L2)走行した場合であっても、作業車両10は停車位置Pa2よりも手前の作業を停止した位置(再開位置)に戻って走行及び作業を再開するため、前記所定距離L2に相当する未作業領域の発生を防ぐことができる。
【0088】
上述の実施形態では、作業車両10は、前記停止指示を取得すると停車位置Pa2で停車し、停車位置Pa2において前記再開指示を取得すると停車位置Pa2から再開位置に後進走行している(
図5C等参照)。他の実施形態として、作業車両10は、
図9に示すように、前記停止指示を取得して停車位置Pa2で停車した後に圃場F外に移動してもよい。また、作業車両10は、前記停止指示を取得すると停車することなく圃場F外まで移動してもよい。例えば、作業車両10は、作業中に施肥用の肥料が無くなると作業を中断して経路Rb1に沿って圃場F外に移動して肥料を補充する。作業車両10は、作業を再開する場合には、圃場F外から経路Rb2に沿って再開位置(停止指示位置Pa1)まで前進走行する。そして、作業車両10は、前記再開指示(停止指示位置Pa1)から走行経路Raに沿って作業及び走行を再開する。
【符号の説明】
【0089】
1 :自律走行システム
10 :作業車両
14 :作業機
20 :操作端末
111 :位置取得処理部
112 :停止取得処理部
113 :停止処理部
114 :算出処理部
115 :再開処理部
161 :測位制御部
211 :車両設定処理部
212 :圃場設定処理部
213 :作業設定処理部
214 :経路生成処理部
215 :出力処理部
216 :受付処理部
F :圃場
F1 :非作業領域
F2 :作業領域
L1 :所定距離
L2 :所定距離
La2 :直交線
P1 :現在位置
Pa1 :停止指示位置
Pa2 :停車位置
Pb1 :再開位置
Ra :走行経路