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特開2024-11476医療データ処理システム、医療データ処理装置、医療データ処理方法、プログラム、及び記録媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011476
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】医療データ処理システム、医療データ処理装置、医療データ処理方法、プログラム、及び記録媒体
(51)【国際特許分類】
   G16H 10/00 20180101AFI20240118BHJP
【FI】
G16H10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】40
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113458
(22)【出願日】2022-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100124626
【弁理士】
【氏名又は名称】榎並 智和
(72)【発明者】
【氏名】竹田 徳泰
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA21
(57)【要約】
【課題】医療データの品質向上を図る。
【解決手段】1つの実施形態の医療データ処理システムは、評価部を含む。評価部は、第1の医療データと第2の医療データとの間の整合性の評価を実行するように構成されている。第1の医療データは、医療従事者により入力された第1の入力データ、医学検査により取得されたデータに基づき取得された第1の検査データ、及び、予め作成された標準データのいずれかを含んでいる。また、第2の医療データは、医療従事者により入力された第2の入力データ、及び、医学検査により取得されたデータに基づき取得された第2の検査データのいずれかを含んでいる。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療データを処理するシステムであって、
第1の医療データと第2の医療データとの間の整合性の評価を実行する評価部を含み、
前記第1の医療データは、医療従事者により入力された第1の入力データ、医学検査により取得されたデータに基づき取得された第1の検査データ、及び、予め作成された標準データのいずれかを含み、
前記第2の医療データは、医療従事者により入力された第2の入力データ、及び、医学検査により取得されたデータに基づき取得された第2の検査データのいずれかを含む、
システム。
【請求項2】
前記評価部により実行された前記整合性の前記評価の結果に基づいて、前記第1の医療データ及び/又は前記第2の医療データにアノテーション情報を付与するアノテーション部を更に含む、
請求項1のシステム。
【請求項3】
前記評価部は、前記第1の医療データに含まれている情報が前記第2の医療データに含まれているか判定する第1判定部を含む、
請求項1のシステム。
【請求項4】
前記評価部は、前記第1の医療データに含まれている情報と前記第2の医療データに含まれている情報とが一致しているか判定する第2判定部を含む、
請求項1のシステム。
【請求項5】
前記評価部は、前記第1の医療データに含まれている情報に対応する情報が前記第2の医療データに含まれているか判定する第3判定部を含む、
請求項1のシステム。
【請求項6】
前記第2の医療データは、前記第2の入力データとして、医療従事者が現在実施している作業において入力された新たなデータを含み、
前記評価部は、前記新たなデータを受け付けたことに対応して、前記第1の医療データと前記新たなデータとの間の整合性の評価を実行する、
請求項1のシステム。
【請求項7】
前記第1の医療データと前記新たなデータとの間の前記整合性の前記評価の結果が前記評価部により得られたことに対応して前記結果を出力する出力部を更に含む、
請求項6のシステム。
【請求項8】
前記出力部は、表示装置に前記結果を表示させる表示制御部を含む、
請求項7のシステム。
【請求項9】
前記出力部は、前記作業を実施している前記医療従事者が使用しているコンピュータに前記結果を送信する送信部を含む、
請求項7のシステム。
【請求項10】
医学検査により取得されたデータに基づき検査データを取得する検査データ取得部を更に含み、
前記第1の医療データが前記第1の検査データを含む場合、前記第1の検査データは、前記検査データ取得部により取得され、及び/又は、
前記第2の医療データが前記第2の検査データを含む場合、前記第2の検査データは、前記検査データ取得部により取得される、
請求項1のシステム。
【請求項11】
前記医学検査により取得された前記データは、医用画像データを含み、
前記検査データ取得部は、前記医用画像データに基づき画像情報及び/又は数値情報を取得する、
請求項10のシステム。
【請求項12】
前記第1の医療データは、2つ以上のデータからなる第1のデータ群を含み、及び/又は、前記第2の医療データは、2つ以上のデータからなる第2のデータ群を含み、
前記評価部は、前記第1のデータ群及び/又は前記第2のデータ群に基づいて前記整合性の前記評価を実行する、
請求項1のシステム。
【請求項13】
前記第1のデータ群は、所定項目の検査の標準範囲情報と、前記所定項目の検査と所定の医療行為との間の関係を示す関係情報とを含み、
前記第2のデータ群は、前記所定項目の検査を患者に適用して取得された検査データと、前記患者に実施された医療行為を示す医療行為情報とを含み、
前記評価部は、
前記所定項目の検査と前記医療行為情報に示された前記医療行為との間に関係があるか否かの判定を前記関係情報に基づき実行し、
前記関係がないと判定された場合には、前記標準範囲情報と前記検査データとの比較を行い、当該比較の結果に基づき前記整合性の前記評価を実行し、
前記関係があると判定された場合には、前記標準範囲情報と前記検査データとの比較を行い、前記関係情報に基づく加工を当該比較の結果に施し、当該加工の結果に基づき前記整合性の前記評価を実行する、
請求項12のシステム。
【請求項14】
前記所定の医療行為は、所定の手術を含み、
前記医療行為情報は、前記患者に実施された手術を示す手術情報を含み、
前記評価部は、前記関係情報に基づく前記判定として、前記所定項目の検査と前記手術情報に示された前記手術との間に関係があるか否かの判定を実行する、
請求項13のシステム。
【請求項15】
前記所定の医療行為は、所定の薬剤の投与を含み、
前記医療行為情報は、前記患者に処方された薬剤を示す薬剤情報を含み、
前記評価部は、前記関係情報に基づく前記判定として、前記所定項目の検査と前記薬剤情報に示された前記薬剤との間に関係があるか否かの判定を実行する、
請求項13のシステム。
【請求項16】
前記第1の医療データは、前記第1の入力データとして、患者の治療対象部位情報を含み、
前記第2の医療データは、前記第2の検査データとして、前記患者の治療において取得された治療時画像データを含み、
前記評価部は、前記治療時画像データに基づいて前記治療の対象部位を特定し、特定された前記対象部位と前記治療対象部位情報とを照合することによって前記整合性の前記評価を実行する、
請求項1のシステム。
【請求項17】
前記第1の医療データは、前記第1の入力データとして、患者の治療器具情報を含み、
前記第2の医療データは、前記第2の検査データとして、前記患者の治療において取得された治療時データを含み、
前記評価部は、前記治療時データに基づいて前記治療における使用器具を特定し、特定された前記使用器具と前記治療器具情報とを照合することによって前記整合性の前記評価を実行する、
請求項1のシステム。
【請求項18】
前記評価部は、前記第1の医療データと同種の第1の種類のデータ及び前記第2の医療データと同種の第2の種類のデータを含む訓練データを用いた機械学習によって、少なくとも前記第1の医療データ及び前記第2の医療データの入力を受けて整合性評価情報を出力するように構築された第1の機械学習モデルを含む、
請求項1のシステム。
【請求項19】
前記第2の医療データは、特定の医療従事者により新たに入力されたデータを含み、
前記第2の種類のデータは、前記特定の医療従事者により過去に入力されたデータを含む、
請求項18のシステム。
【請求項20】
前記第1の医療データは、前記標準データとして、特定の疾患の診療ガイドラインを含み、
前記評価部は、前記診療ガイドラインを含む訓練データを用いた機械学習によって、少なくとも前記第2の医療データの入力を受けて整合性評価情報を出力するように構築された第2の機械学習モデルを含む、
請求項1のシステム。
【請求項21】
前記第1の医療データは、前記標準データとして、特定の疾患の診療ガイドラインを含み、
前記評価部は、前記診療ガイドラインに記載されている所定の事項に関する情報が前記第2の医療データに含まれているか判定することによって前記整合性の前記評価を実行する、
請求項1のシステム。
【請求項22】
前記所定の事項は、問診項目を含み、
前記評価部は、前記問診項目に対応する問診データが前記第2の入力データに含まれているか判定することによって前記整合性の前記評価を実行する、
請求項21のシステム。
【請求項23】
前記所定の事項は、検査種別を含み、
前記評価部は、前記検査種別に対応する検査データが前記第2の検査データに含まれているか判定することによって前記整合性の前記評価を実行する、
請求項21のシステム。
【請求項24】
前記医学検査は、眼科検査を含み、
前記眼科検査により得られる検査データは、眼圧データ、光コヒーレンストモグラフィデータ、撮影画像データ、斜視データ、斜位データ、視力データ、深視力データ、眼屈折力データ、眼収差データ、視野データ、角膜形態データ、眼底形態データ、角膜内皮細胞データ、眼軸長データ、両眼視機能データ、及び、色覚データのうちの少なくとも1つを含む、
請求項1のシステム。
【請求項25】
医療データを処理する装置であって、
第1の医療データと第2の医療データとを受け付ける受付部と、
前記第1の医療データと前記第2の医療データとの間の整合性の評価を実行する評価部と
を含み、
前記第1の医療データは、医療従事者により入力された第1の入力データ、医学検査により取得されたデータに基づき取得された第1の検査データ、及び、予め作成された標準データのいずれかを含み、
前記第2の医療データは、医療従事者により入力された第2の入力データ、及び、医学検査により取得されたデータに基づき取得された第2の検査データのいずれかを含む、
装置。
【請求項26】
前記評価部により実行された前記整合性の前記評価の結果に基づいて、前記第1の医療データ及び/又は前記第2の医療データにアノテーション情報を付与するアノテーション部を更に含む、
請求項25の装置。
【請求項27】
前記受付部は、前記第2の医療データの前記第2の入力データとして、医療従事者が現在実施している作業において入力された新たなデータを受け付け、
前記評価部は、前記受付部により前記新たなデータが受け付けられたことに対応して、前記第1の医療データと前記新たなデータとの間の整合性の評価を実行する、
請求項25の装置。
【請求項28】
前記受付部は、医学検査により取得されたデータを受け付け、
前記受付部により受け付けられた前記医学検査により取得された前記データに基づき検査データを取得する検査データ取得部を更に含み、
前記第1の医療データが前記第1の検査データを含む場合、前記第1の検査データは、前記検査データ取得部により取得され、及び/又は、
前記第2の医療データが前記第2の検査データを含む場合、前記第2の検査データは、前記検査データ取得部により取得される、
請求項25の装置。
【請求項29】
前記評価部は、前記第1の医療データと同種の第1の種類のデータ及び前記第2の医療データと同種の第2の種類のデータを含む訓練データを用いた機械学習によって、少なくとも前記第1の医療データ及び前記第2の医療データの入力を受けて整合性評価情報を出力するように構築された第1の機械学習モデルを含む、
請求項25の装置。
【請求項30】
前記第1の医療データは、前記標準データとして、特定の疾患の診療ガイドラインを含み、
前記評価部は、前記診療ガイドラインを含む訓練データを用いた機械学習によって、少なくとも前記第2の医療データの入力を受けて整合性評価情報を出力するように構築された第2の機械学習モデルを含む、
請求項25の装置。
【請求項31】
前記第1の医療データは、前記標準データとして、特定の疾患の診療ガイドラインを含み、
前記評価部は、前記診療ガイドラインに記載されている所定の事項に関する情報が前記第2の医療データに含まれているか判定することによって前記整合性の前記評価を実行する、
請求項25の装置。
【請求項32】
患者の診療を支援するために医療データを処理する方法であって、
医療従事者により入力された第1の入力データ、医学検査により取得されたデータに基づき取得された第1の検査データ、及び、予め作成された標準データのいずれかを含む第1の医療データを準備し、
医療従事者により入力された第2の入力データ、及び、医学検査により取得されたデータに基づき取得された第2の検査データのいずれかを含む第2の医療データを準備し、
前記第1の医療データと前記第2の医療データとの間の整合性の評価を実行する、
方法。
【請求項33】
更に、前記整合性の前記評価の結果に基づいて、前記第1の医療データ及び/又は前記第2の医療データにアノテーション情報を付与する、
請求項32の方法。
【請求項34】
前記第2の医療データを準備する工程は、前記第2の入力データとして、医療従事者が現在実施している作業において入力された新たなデータを受け付ける工程を含み、
前記整合性の前記評価を実行する工程は、前記新たなデータが受け付けられたことに対応して、前記第1の医療データと前記新たなデータとの間の整合性の評価を実行する工程を含む、
請求項32の方法。
【請求項35】
前記第1の検査データを準備する工程、及び/又は、前記第2の検査データを準備する工程は、
医学検査により取得されたデータを準備する工程と、
前記医学検査により取得された前記データに基づき検査データを取得する工程と
を含む、
請求項32の方法。
【請求項36】
前記整合性の前記評価を実行する工程は、第1の機械学習モデルを用いて実行され、
前記第1の機械学習モデルは、前記第1の医療データと同種の第1の種類のデータ及び前記第2の医療データと同種の第2の種類のデータを含む訓練データを用いた機械学習によって、少なくとも前記第1の医療データ及び前記第2の医療データの入力を受けて整合性評価情報を出力するように構築される、
請求項32の方法。
【請求項37】
前記第1の医療データは、前記標準データとして、特定の疾患の診療ガイドラインを含み、
前記整合性の前記評価を実行する工程は、第2の機械学習モデルを用いて実行され、
前記第2の機械学習モデルは、前記診療ガイドラインを含む訓練データを用いた機械学習によって、少なくとも前記第2の医療データの入力を受けて整合性評価情報を出力するように構築される、
請求項32の方法。
【請求項38】
前記第1の医療データは、前記標準データとして、特定の疾患の診療ガイドラインを含み、
前記整合性の前記評価を実行する工程は、前記診療ガイドラインに記載されている所定の事項に関する情報が前記第2の医療データに含まれているか判定する工程を含む、
請求項32の方法。
【請求項39】
患者の診療を支援するための医療データの処理をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記コンピュータに、
医療従事者により入力された第1の入力データ、医学検査により取得されたデータに基づき取得された第1の検査データ、及び、予め作成された標準データのいずれかを含む第1の医療データを準備する工程と、
医療従事者により入力された第2の入力データ、及び、医学検査により取得されたデータに基づき取得された第2の検査データのいずれかを含む第2の医療データを準備する工程と、
前記第1の医療データと前記第2の医療データとの間の整合性の評価を実行する工程と
を実行させる、
プログラム。
【請求項40】
患者の診療を支援するための医療データの処理をコンピュータに実行させるプログラムが記録されたコンピュータ可読な非一時的記録媒体であって、
前記プログラムは、前記コンピュータに、
医療従事者により入力された第1の入力データ、医学検査により取得されたデータに基づき取得された第1の検査データ、及び、予め作成された標準データのいずれかを含む第1の医療データを準備する工程と、
医療従事者により入力された第2の入力データ、及び、医学検査により取得されたデータに基づき取得された第2の検査データのいずれかを含む第2の医療データを準備する工程と、
前記第1の医療データと前記第2の医療データとの間の整合性の評価を実行する工程と
を実行させる、
記録媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療データ処理システム、医療データ処理装置、医療データ処理方法、プログラム、及び記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野では、多種多様なデータが生成され、参照される。ほんの一部の例を挙げるだけでも、電子カルテ、手術計画、手術記録、治療計画、入院診療計画、処方箋、検査オーダー、医事会計データ、看護記録、患者に移植される人工物の種類(型番)、患者の測定データ、撮影画像、生化学検査データ、生検データ、遺伝子検査データ、特定疾患の診療ガイドライン、クリニカルパス、ノーマティブデータなどがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-218691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の1つの目的は、医療データの品質向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つの実施形態は、医療データを処理するシステムであって、第1の医療データと第2の医療データとの間の整合性の評価を実行する評価部を含み、前記第1の医療データは、医療従事者により入力された第1の入力データ、医学検査により取得されたデータに基づき取得された第1の検査データ、及び、予め作成された標準データのいずれかを含み、前記第2の医療データは、医療従事者により入力された第2の入力データ、及び、医学検査により取得されたデータに基づき取得された第2の検査データのいずれかを含む。
【0006】
別の実施形態は、医療データを処理する装置であって、第1の医療データと第2の医療データとを受け付ける受付部と、前記第1の医療データと前記第2の医療データとの間の整合性の評価を実行する評価部とを含み、前記第1の医療データは、医療従事者により入力された第1の入力データ、医学検査により取得されたデータに基づき取得された第1の検査データ、及び、予め作成された標準データのいずれかを含み、前記第2の医療データは、医療従事者により入力された第2の入力データ、及び、医学検査により取得されたデータに基づき取得された第2の検査データのいずれかを含む。
【0007】
更に別の実施形態は、患者の診療を支援するために医療データを処理する方法であって、医療従事者により入力された第1の入力データ、医学検査により取得されたデータに基づき取得された第1の検査データ、及び、予め作成された標準データのいずれかを含む第1の医療データを準備し、医療従事者により入力された第2の入力データ、及び、医学検査により取得されたデータに基づき取得された第2の検査データのいずれかを含む第2の医療データを準備し、前記第1の医療データと前記第2の医療データとの間の整合性の評価を実行する。
【0008】
更に別の実施形態は、患者の診療を支援するための医療データの処理をコンピュータに実行させるプログラムであって、前記コンピュータに、医療従事者により入力された第1の入力データ、医学検査により取得されたデータに基づき取得された第1の検査データ、及び、予め作成された標準データのいずれかを含む第1の医療データを準備する工程と、医療従事者により入力された第2の入力データ、及び、医学検査により取得されたデータに基づき取得された第2の検査データのいずれかを含む第2の医療データを準備する工程と、前記第1の医療データと前記第2の医療データとの間の整合性の評価を実行する工程とを実行させる。
【0009】
更に別の実施形態は、患者の診療を支援するための医療データの処理をコンピュータに実行させるプログラムが記録されたコンピュータ可読な非一時的記録媒体であって、前記プログラムは、前記コンピュータに、医療従事者により入力された第1の入力データ、医学検査により取得されたデータに基づき取得された第1の検査データ、及び、予め作成された標準データのいずれかを含む第1の医療データを準備する工程と、医療従事者により入力された第2の入力データ、及び、医学検査により取得されたデータに基づき取得された第2の検査データのいずれかを含む第2の医療データを準備する工程と、前記第1の医療データと前記第2の医療データとの間の整合性の評価を実行する工程とを実行させる。
【発明の効果】
【0010】
実施形態によれば、医療データの品質向上を図ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態の例示的な態様に係る医療データ処理システムを含む医療機関内情報システムの例を表すブロック図である。
図2】実施形態の例示的な態様に係る医療データ処理システムの構成を表すブロック図である。
図3】実施形態の例示的な態様に係る医療データ処理システムにより処理される医療データの種類を示す表である。
図4】実施形態の例示的な態様に係る医療データ処理システムの構成を表すブロック図である。
図5】実施形態の例示的な態様に係る医療データ処理システムの構成を説明するためのブロック図である。
図6】実施形態の例示的な態様に係る医療データ処理システムの構成を表すブロック図である。
図7】実施形態の例示的な態様に係る医療データ処理システムの動作を説明するためのフローチャートである。
図8】実施形態の例示的な態様に係る医療データ処理システムの動作を説明するためのフローチャートである。
図9】実施形態の例示的な態様に係る医療データ処理システムの動作を説明するためのフローチャートである。
図10】実施形態の例示的な態様に係る医療データ処理システムの動作を説明するためのフローチャートである。
図11】実施形態の例示的な態様に係る医療データ処理システムの動作を説明するためのフローチャートである。
図12】実施形態の例示的な態様に係る医療データ処理システムの動作を説明するためのフローチャートである。
図13】実施形態の例示的な態様に係る医療データ処理システムの動作を説明するためのフローチャートである。
図14】実施形態の例示的な態様に係る医療データ処理システムの動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示に係る非限定的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
本開示に係る実施形態の幾つかの例示的な態様では、眼科分野への応用について説明するが、実施形態の応用分野は眼科に限定されるものではなく、医療分野一般(例えば、任意の診療科)への応用が可能であることは当業者であれば理解できるであろう。
【0014】
本開示に係る実施形態に任意の公知技術を組み合わせることができる。例えば、本開示で引用する文献に記載された任意の事項など、本開示に関連する技術分野に係る任意の公知技術を、本開示に係る実施形態に組み合わせることができる。
【0015】
更に、本開示に関連する技術について本願の出願人により開示された任意の事項(例えば、本願の出願人により為された特許出願、論文などにおける開示事項のうちから自由に選択された事項)を、本開示に係る実施形態に組み合わせることができる。
【0016】
本開示に係る実施形態の様々な例示的態様のうちのいずれか2つ以上を組み合わせることができる。なお、幾つかの技術事項の組み合わせは、それらの技術事項の全体的な組み合わせでもよいし、部分的な組み合わせでもよい。
【0017】
本開示に係る実施形態の1つの目的は、医療データの品質を向上させることにある。本開示に係る実施形態は、医療データ間の整合性に着目することによってこの目的を達成しようとするものである。より具体的に説明すると、本開示に係る実施形態は、基準となるデータ(基準データ、第1の医療データ)と他のデータ(対象データ、第2の医療データ)との間の整合性を評価することによって、医療データ全体(例えば、或る患者に関する医療データ全体)としての品質を向上させるものである。
【0018】
この「整合性」には様々な態様がある。データ間の整合性の例として、対象データの有無、対象データの過不足、基準データと対象データとの一致/不一致、基準データに基づく対象データの必然性、基準データに基づく対象データの可能性などがある。
【0019】
対象データの有無は、例えば、基準データに対応する対象データが存在すること又は存在しないことである。対象データの過不足は、基準データに対応する対象データが過分に存在すること又は不足していることである。基準データと対象データとの一致/不一致は、基準データとこれに対応する対象データとが一致していること又は一致していないことである。
【0020】
基準データに基づく対象データの必然性は、「有無」や「過不足」に類似した事項であり、基準データの存在が特定の対象データの存在を必然的に示唆していることである。この必然性の例として次のものがある:基準データとしての検査オーダーが存在する場合、この検査オーダーに対応するデータ(例えば、当該オーダーに対応する検査で得られたデータ(検査データ)、当該オーダーに対応する検査が実施されたことを示す検査実施情報など)が必然的に存在しているはずである;逆に、基準データとしての検査データ(検査結果)が存在する場合、この検査データを取得するために実施された検査に対応するオーダー情報や、この検査データを取得するための検査が実施されたことを示す検査実施情報が存在するはずである。
【0021】
基準データに基づく対象データの可能性は、「有無」や「過不足」に類似した事項であり、或る可能性を示す基準データの存在が特定の対象データの存在を示唆していることである。この可能性の例として次のものがある:画像や検査データから候補疾患が特定されたことが或る記録(基準データ)に記載されている場合、疾患名、対応する検査名、対応するデータなどが他の記録(対象データ)に記載されている可能性がある。
【0022】
整合性の評価に用いられるデータの種類には、ユーザーが入力したデータ(入力データ)、医療データを処理して得られたデータ(処理データ)、判断基準や行動指針などを示したデータ(指針データ)などがある。
【0023】
入力データの例として、医師が作成した電子カルテデータ、放射線科医が作成した読影レポートなどがある。処理データの例として、検査データや画像データを処理(加工、解析など)して生成されたデータ、検査データや画像データから抽出されたデータなどがある。指針データの例として、診療ガイドライン、クリニカルパスなどがある。
【0024】
このように、本開示に係る実施形態は、基準データと対象データとの間の整合性を評価することによって医療データの品質を向上させるものである。
【0025】
基準データは、例えば、医療従事者により入力された第1の入力データ(例えば、電子カルテデータ、手術計画、手術記録、治療計画、入院診療計画、処方箋データ、検査オーダー、医事会計データ、看護記録、患者に適用されるデバイス(眼内レンズ、低侵襲緑内障手術(MIGS)デバイス、人工血管、人工臓器、人工網膜など)の種類・型番など)、医学検査により取得されたデータに基づき取得された第1の検査データ(測定データ、撮影画像データ、内視鏡データ、生化学検査データ、生検データ、遺伝子検査データなど)、及び、予め作成された標準データ(例えば、診療ガイドライン、クリニカルパス、ノーマティブデータなど)、のうちのいずれか1つ以上を含んでいてよい。
【0026】
ここで、標準データは、標準的な医療行為(診断、検査、治療、手術、薬剤処方、入退院、リハビリテーション、医事会計、看護など)に関する情報を含んでいる。つまり、標準データは、医療行為を標準化した情報を含んでいる。前述の指針データは、判断基準や行動指針を標準化したものであり、標準データとして扱うことができる。
【0027】
一方、対象データは、医療従事者により入力された第2の入力データ(例えば、電子カルテデータ、手術計画、手術記録、治療計画、入院診療計画、処方箋データ、検査オーダー、医事会計データ、看護記録、患者に適用されるデバイスの種類・型番など)、及び/又は、医学検査により取得されたデータに基づき取得された第2の検査データ(測定データ、撮影画像データ、内視鏡データ、生化学検査データ、生検データ、遺伝子検査データなど)を含んでいてよい。
【0028】
第1の検査データ及び/又は第2の検査データを取得するために実施される医学検査は、眼科検査を含んでいてよい。この眼科検査により得られる検査データは、例えば、以下に列挙するデータのうちの少なくとも1つを含んでいてよい:眼圧計により取得されるデータ(眼圧データ);光コヒーレンストモグラフィ(OCT)装置により取得されるデータ(OCTデータ);眼科イメージング装置(スリットランプ顕微鏡、眼底カメラ、走査型レーザー検眼鏡、眼科手術用顕微鏡、前眼部観察装置、後眼部観察装置など)により取得されるデータ(撮影画像データ);斜視検査で取得されるデータ(斜視データ);斜位検査で取得されるデータ(斜位データ);視力検査で取得されるデータ(視力データ);深視力検査で取得されるデータ(深視力データ);屈折測定で取得されるデータ(眼屈折力データ);収差測定で取得されるデータ(眼収差データ);視野検査で取得されるデータ(視野データ);角膜形態解析で取得されるデータ(角膜形態データ);眼底形態解析で取得されるデータ(眼底形態データ);スペキュラーマイクロスコープで取得されるデータ(角膜内皮細胞データ);眼軸長測定で取得されるデータ(眼軸長データ);両眼視機能検査で取得されるデータ(両眼視機能データ);色覚検査で取得されるデータ(色覚データ)。なお、眼科検査データはこれらの種類に限定されるものではなく、任意の種類であってよい。また、眼科以外の分野においても、第1の検査データ及び/又は第2の検査データは、当該分野において参照することが可能な任意の種類の検査データを含んでいてよい。
【0029】
本開示に係る実施形態は、医療データ間の整合性に問題があると評価された場合に、この整合性の問題を解消するための処理を実行することができる。例えば、幾つかの態様は、整合性の問題に対応したアノテーション情報の生成及び付与を行うことができる。アノテーション情報には、例えば、整合性の問題を修正する情報、整合性の問題の修正を提案する情報、整合性の問題を解消するための追記情報、ユーザーに問題解消作業を実施するように要求する情報などがある。
【0030】
医療データ間の整合性評価を実行するタイミングは任意であってよいが、幾つかの例示的な態様は、医療データ間の整合性評価をリアルタイムで行うことができる。
【0031】
例えば、医師が電子カルテに情報を入力しているときに、医療データ間の整合性評価をリアルタイムで実行することができる。つまり、電子カルテ作成作業と並行して医療データ間の整合性評価を実行することができる。電子カルテには、様々な情報が十分に、漏れなく、且つ正しく記載されていなければならない。しかし、医療機関の規模を問わず、実際の医療現場(特に外来現場)では診療の効率化やスループットの向上が求められており、電子カルテの記載に漏れや誤入力が発生する可能性が常に伴う。電子カルテの記載漏れや誤入力を自動で検知するために本開示に係る医療データ間の整合性評価を利用することは、診療の効率化だけでなく、医療提供の品質向上にも寄与すると考えられる。そして、電子カルテ作成作業と並行して整合性評価を実行することにより(つまり、リアルタイムで整合性評価を行うことにより)、診療の効率化や医療提供の品質向上を更に進めることができると考えられる。なお、リアルタイム整合性評価の対象は電子カルテ作成に限定されず、任意の作業や任意の処理であってよい。
【0032】
本開示では、医療データ処理システムの実施形態、医療データ処理装置の実施形態、医療データ処理方法の実施形態、プログラムの実施形態、及び記録媒体の実施形態について説明するが、実施形態はこれらのカテゴリに限定されるものではない。
【0033】
本開示に係る実施形態において説明される要素の機能の少なくとも一部は、回路構成(circuitry)又は処理回路構成(processing circuitry)を用いて実装される。回路構成又は処理回路構成は、開示された機能の少なくとも一部を実行するように構成及び/又はプログラムされた、汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス(例えば、SPLD(Simple Programmable Logic Device)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、従来の回路構成、及びそれらの任意の組み合わせのいずれかを含む。プロセッサは、トランジスタ及び/又は他の回路構成を含む、処理回路構成又は回路構成とみなされる。本開示において、回路構成、ユニット、手段、又はこれらに類する用語は、開示された機能の少なくとも一部を実行するハードウェア、又は、開示された機能の少なくとも一部を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本開示に係る実施形態に記載されたハードウェアであってよく、或いは、記載された機能の少なくとも一部を実行するようにプログラム及び/又は構成された既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが或るタイプの回路構成とみなされ得るプロセッサである場合、回路構成、ユニット、手段、又はこれらに類する用語は、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせであり、このソフトウェアはハードウェア及び/又はプロセッサを構成するために使用される。本開示に係る実施形態において説明される要素の機能の少なくとも一部は、機械学習等の人工知能技術を利用して構成されてもよい。
【0034】
<医療データ処理システム>
実施形態に係る医療データ処理システムについて、その幾つかの例示的な態様を説明する。
【0035】
図1は、医療機関内に構築された情報システムの例を示す。この情報システムは、通信回線2000を介して接続された複数の装置(コンピュータ、医療機器、サブシステムなど)を含むネットワークである。
【0036】
本例の情報システムは、例示的な要素として、少なくとも1つの医療データ処理システム1000、少なくとも1つの病院情報システム(HIS)2100、少なくとも1つの放射線科情報システム(RIS)2200、少なくとも1つの画像保存通信システム(PACS)2300、少なくとも1つの部門システム2400、少なくとも1つの検査装置2500、少なくとも1つの医療従事者端末2600などを含んでいる。
【0037】
医療機関用の情報システムに含まれる要素の種類は図1に示したものに限定されず、例えば、臨床検査情報システム(LIS)やレポートシステムなどが情報システムに含まれていてもよい。
【0038】
医療データ処理システム1000は、実施形態に係る医療データ処理システムの1つの例示的な態様である。医療データ処理システム1000の機能、構成、動作などについては後述する
【0039】
病院情報システム2100は、医療機関の複数の部門を結ぶことによって業務支援を行う情報ネットワークである。病院情報システム2100に含まれるサブシステムの例として、自動受付システム、電子カルテシステム、オーダーエントリーシステム(オーダリングシステム)、医事会計システム、入退院管理システム、薬局管理システム、診療予約システムなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
放射線科情報システム2200は、放射線機器を始めとする各種の医用イメージング装置を用いた検査に関する情報管理を行うシステムである。放射線科情報システム2200は、患者情報、予約情報、検査情報などの内容を病院情報システム2100から取得することで情報管理を行う。放射線科情報システム2200は、例えば、医用画像のフォーマットや医用画像を扱う機器間の通信プロトコルを定義した標準規格であるDigital Imaging and Communications in Medicine(DICOM)に準拠して構築される。
【0041】
放射線科情報システム2200によって画像管理がなされる医用イメージング装置の例として、X線診断装置、X線コンピュータ断層撮影装置、磁気共鳴イメージング装置、陽電子放射断層撮影装置、単一光子放射断層撮影装置、超音波診断装置、内視鏡、眼科イメージング装置などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
画像保存通信システム2300は、各種の医用イメージング装置から画像を受信してデータベースへ保存する機能と、保存された画像を端末(医療従事者端末2600など)に提供する機能とを有する。
【0043】
部門システム2400は、医療機関の各部門に設けられた情報システムである。医療機関の部門としては、例えば、診療部門(各種の診療科)、看護部門、薬剤部門、検査部門、放射線部門、栄養部門、リハビリテーション部門、事務部門、情報管理部門、経営企画部門、医療相談部門などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
検査装置2500は、医学的検査を行うための装置である。検査装置2500の例として、身体検査装置、検体検査装置、培養検査装置、機能検査装置、医用イメージング装置、電気生理学検査装置、呼吸生理学検査装置、内視鏡装置、感覚器検査装置、運動機能検査装置、病理診断装置、心理検査装置、遺伝子検査装置などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
医療従事者端末2600は、医療従事者が使用するコンピュータ端末である。医療従事者端末2600を使用する医療従事者の例として、医師、歯科医師、薬剤師、看護師、助産師、保健師、公認心理士、管理栄養士、臨床検査技師、診療放射線技師、臨床工学技士、歯科衛生士、理学療法士、作業療法士、義肢装具士、歯科技工士、救急救命士、言語聴覚士、視能訓練士などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
次に、医療データ処理システム1000について詳しく説明する。医療データ処理システム1000は、医療データ間の整合性評価を実行するように構成された情報処理システムである。医療データ処理システム1000の構成の一例を図2に示す。
【0047】
本例の医療データ処理システム1000は、医療データ取得部1100、評価部1200、アノテーション部1300、出力部1400、及びユーザーインターフェイス(UI)1500を含んでいる。
【0048】
なお、実施形態に係る医療データ処理システムが含む要素は、図2に示す要素に限定されない。例えば、幾つかの例示的な態様の医療データ処理システムは、図2に示す要素のうち、評価部1200の少なくとも一部又はこれと同等の機能を有する要素のみを含んでいてよい。また、幾つかの例示的な態様の医療データ処理システムは、評価部1200の少なくとも一部又はこれと同等の機能と、評価部1200以外の図2に示す要素のいずれか1つ以上を含んでいてよい。また、幾つかの例示的な態様の医療データ処理システムは、評価部1200の少なくとも一部又はこれと同等の機能と、図2に示されていない任意の要素を含んでいてよい。
【0049】
さて、本例の医療データ処理システム1000の各要素について説明する。まず、医療データ取得部1100は、整合性評価が適用される医療データを取得する。医療データ取得部1100は、例えば、病院情報システム2100、放射線科情報システム2200、画像保存通信システム2300、部門システム2400、検査装置2500、及び医療従事者端末2600のうちのいずれか1つ以上から、医療データを取得する。
【0050】
幾つかの例示的な態様において、医療データ取得部1100は、これらのデータ提供元(データソース)に対し、通信回線2000を介して、所定の医療データの提供を要求することによって、そのデータソースから所定の医療データを取得することができる。医療データの指定は、例えば、患者識別子(患者IDなど)、日付、医療行為識別子(検査ID、画像ID、手術ID、処方箋ID、医師会計IDなど)、それらの組み合わせ、などによって為される。要求を受けたデータソースは、この要求に対応する医療データを医療データ処理システム1000に送る。
【0051】
幾つかの例示的な態様において、ユーザー(医師などの医療従事者)は、医療従事者端末2600を用いて、整合性評価の適用を希望する医療データを指定し、指定された医療情報を医療データ処理システム1000に送ることができる。
【0052】
幾つかの例示的な態様において、医療従事者端末2600は、ユーザーが使用している医療データのうちから予め決められた種類の医療データ(例えば、ユーザーにより入力、加工、編集、又は削除された医療データ)を抽出する処理と、抽出された医療データを医療データ処理システム1000に送信する処理とを自動で行うように構成されていてもよい。
【0053】
幾つかの例示的な態様において、医療従事者端末2600は、ユーザーが使用している医療データのうちから予め決められた種類の医療データ(例えば、ユーザーにより入力、加工、編集、又は削除された医療データ)を抽出する処理と、抽出された医療データをユーザーに提示する処理と、提示された医療データに対するユーザーの操作内容を受け付ける処理と、提示された医療データからユーザーが指定した医療データを医療データ処理システム1000に送信する処理とを自動で行うように構成されていてもよい。
【0054】
医療データ取得部1100の機能は、医療データ取得プログラム等のソフトウェアと、プロセッサ等のハードウェアとの協働によって実現される。医療データ取得部1100は、例えば、図示しない制御プロセッサ(制御ユニット)の制御の下に動作する。この制御プロセッサは、例えば、図示しない制御プログラムに基づいて医療データ取得部1100の制御を実行するように構成されている。
【0055】
更に、医療データ取得部1100は、通信回線2000を介して他の機器との間でデータ通信を行うための通信インターフェイスを含んでいる。幾つかの例示的な態様の医療データ取得部1100は、記録媒体に記録されているデータを読み出すためのデータリーダーを含んでいてもよく、及び/又は、紙葉類に記録されている情報を読み取るためのスキャナーや光学文字認識(OCR)ソフトウェアを含んでいてもよい。より一般に、医療データ取得部1100は、外部から医療データを取得するために利用可能な、任意の機能、任意のハードウェア、任意のソフトウェアなどを備えていてよい。
【0056】
医療データ取得部1100により取得される医療データについて説明する。医療データ取得部1100は、評価部1200により実行される整合性評価において基準として用いられる医療データ(基準データ)と、この基準データに対する比較対象として用いられる医療データ(対象データ)とを取得する。なお、幾つかの例示的な態様では、医療データ取得部1100により取得された様々なデータのうちから、医療データ処理システム1000(例えば、評価部1200)が基準データと対象データとを選択してもよい。
【0057】
前述したように、整合性評価に用いられる医療データの種類には、ユーザーが入力したデータ(入力データ)、医療データを処理して得られたデータ(処理データ)、判断基準や行動指針などを示したデータ(指針データ)などがある。
【0058】
同じく前述したように、本態様の基準データは、医療従事者により入力された入力データ(基準入力データ、第1の入力データ)、医学検査により取得されたデータに基づき取得された検査データ(基準検査データ、第1の検査データ)、及び、予め作成された標準データのうちのいずれか1つ以上を含む。更に、本態様の対象データは、医療従事者により入力された入力データ(対象入力データ、第2の入力データ)、及び/又は、医学検査により取得されたデータに基づき取得された検査データ(対象検査データ、第2の検査データ)を含む。本態様の整合性評価において比較される基準データと対象データとの組み合わせを図3に示す。
【0059】
幾つかの例示的な態様において、医療データ取得部1100は、検査データ取得部1110を含んでいてよい。医療データ取得部1100が検査データ取得部1110を含んでいる場合、医療データ取得部1100は、医学検査により取得されたデータを外部から取得し、検査データ取得部1110を用いてこのデータを処理することによって検査データ(基準検査データ又は対象検査データ)を生成することができる。
【0060】
すなわち、検査データ取得部1110を有しない医療データ取得部1100が、評価部1200に提供される検査データ(基準データ、対象データ)を外部から取得するように機能するのに対して、検査データ取得部1110を有する医療データ取得部1100は、評価部1200に提供される検査データ(基準データ、対象データ)を外部から取得することもできるし、評価部1200に提供される検査データ(基準データ、対象データ)を外部から取得したデータに基づき生成することもできる。
【0061】
医療データ取得部1100が検査データ取得部1110を含んでいる場合において、基準データが基準検査データを含む場合には、この基準検査データは、検査データ取得部1110によって取得(生成)されたものであってよく、及び/又は、対象データが対象検査データを含む場合には、この対象検査データは、検査データ取得部1110によって取得(生成)されたものであってよい。
【0062】
検査データ取得部1110は、医学検査により生成されて医療データ取得部1100により取得されたデータから検査データを生成するための処理として、例えば、データから検査データを抽出する抽出処理、データを加工して検査データを生成する加工処理、データに演算を適用して検査データを算出する演算処理、データに基づく推論を実行して検査データを求める推論処理などを実行するように構成されてよい。これらの処理は、所定のアルゴリズムに基づき実行される。推論処理は、人工知能技術を利用して実行されてもよい。例えば、特定の種類のデータの入力を受けて検査データを出力するように訓練された機械学習モデルを用いて推論処理を実行することができる。この機械学習は、例えば、特定の種類のデータと検査データとのペアの集合を含む訓練データを用いて実行される。
【0063】
医療データ取得部1100が検査データ取得部1110を含んでいる場合において、医学検査により生成されて医療データ取得部1100により取得されたデータが医用画像データを含んでいる場合、検査データ取得部1110は、この医用画像データに基づき画像情報及び/又は数値情報を生成することができる。医用画像データから画像情報及び/又は数値情報を生成するための処理として、検査データ取得部1110は、例えば、所定の解析アルゴリズムを用いて医用画像データを解析する処理、所定の比較アルゴリズムを用いて医用画像データを所定の医用画像データと比較する処理、医用画像データの入力を受けて画像情報及び/又は数値情報を出力するように訓練された機械学習モデルを用いた推論処理などを実行するように構成されてよい。この機械学習は、例えば、医用画像データと検査データ(画像情報及び/又は数値情報)とのペアの集合を含む訓練データを用いて実行される。
【0064】
例えば、検査データ取得部1110は、患者の眼にOCTスキャンを適用することによって取得された眼底OCT画像から層データ(例えば、網膜厚データ、脈絡膜厚データ、標準データベース(正常眼データベース、病眼データベースなど)との比較結果など)を生成することができる。
【0065】
別の例として、検査データ取得部1110は、電子カルテや読影レポートから候補疾患名(診断名)を取得し、抽出された候補疾患名に基づいて当該患者の様々な医療データのうちから検査データ(基準検査データ及び/又は対象検査データ)を抽出及び/又は生成することができる。候補疾患名に基づく検査データの抽出及び/又は生成は、例えば、機械学習の手法を用いて及び/又は用いずに実行されてよい。機械学習の手法を用いる場合、検査データ取得部1110は、例えば、多数の文献(医学論文など)を用いて訓練を行った機械学習モデルであって、疾患名の入力を受けて検査の種類(検査データの種類)を出力するように訓練された機械学習モデルを用いた推論処理などを実行するように構成されてよい。機械学習の手法を用いない処理として、検査データ取得部1110は、例えば、多数の疾患名と多数の検査の種類との対応付けを示すテーブルを用いることで、電子カルテや読影レポートから取得された候補疾患名に対応する検査の種類を特定するように構成されてよい。
【0066】
幾つかの例示的な態様において、検査データ取得部1110と同様の構成を有するコンピュータ(検査データ生成装置)を、医療データ処理システムとは別に設けてもよい。このような態様では、医療データ処理システムは、検査データ生成装置によって生成された検査データを取得して整合性評価に提供することができる。
【0067】
評価部1200は、基準データと対象データとの間の整合性の評価を実行するように構成されている。
【0068】
評価部1200の機能は、整合性評価プログラム等のソフトウェアと、プロセッサ等のハードウェアとの協働によって実現される。評価部1200は、例えば、図示しないプロセッサ(制御ユニット)の制御の下に動作する。このプロセッサは、例えば、図示しない制御プログラムによって評価部1200の制御を実行するように構成されている。
【0069】
前述したように、基準データと対象データとの間の整合性には様々な態様があり、その例として、対象データの有無、対象データの過不足、基準データと対象データとの一致/不一致、基準データに基づく対象データの必然性、基準データに基づく対象データの可能性などがある。整合性の幾つかの例及び整合性評価の幾つかの例を以下に説明する。
【0070】
幾つかの例示的な態様において、評価部1200は、判定部1210を含んでいてよい。評価部1200が判定部1210を含んでいる場合、評価部1200は、判定部1210により取得された情報(判定結果)を整合性評価の結果として求めることができ、及び/又は、判定部1210により取得された情報を処理して整合性評価の結果を求めることができる。
【0071】
判定部1210の機能は、判定プログラム等のソフトウェアと、プロセッサ等のハードウェアとの協働によって実現される。判定部1210は、例えば、図示しないプロセッサ(制御ユニット)の制御の下に動作する。このプロセッサは、例えば、図示しない制御プログラムによって判定部1210の制御を実行するように構成されている。
【0072】
判定部1210の機能及び構成について、幾つかの例を以下に説明する。
【0073】
判定部1210は、基準データに含まれている情報が対象データに含まれているか判定するように構成されていてよい(第1判定部)。これにより、対象データに含まれているべき情報の漏れを検知することが可能になる。
【0074】
例えば、或る患者の医用画像に基づき作成された読影レポートが基準データとして採用され、且つ、この読影レポートを参照して作成された当該患者の電子カルテが対象データとして採用された場合、判定部1210は、この読影レポートから候補疾患名を抽出する処理と、抽出された候補疾患名をこの電子カルテから検索する処理とを実行することができる。電子カルテから候補疾患名が検索された場合、判定部1210は、読影レポートに基づく候補疾患名の電子カルテへの記入漏れは無いと判定する。これに対し、電子カルテから候補疾患名が検索されなかった場合、判定部1210は、読影レポートに基づく候補疾患名の電子カルテへの記入漏れが有ると判定する。
【0075】
別の例として、或る疾患の疑いのある患者に対して第1の検査を実施して取得された結果を受けて、第2の検査を行うべきことが当該疾患の診療ガイドラインに記載されている場合において、判定部1210は、診療ガイドライン(基準データ)と、当該疾患を有する患者の電子カルテ(対象データ)とを対照することにより、第2の検査に関する事項(例えば、第2の検査のオーダー)が当該電子カルテに記載されているか否か判定することができる。これにより、電子カルテの記載漏れを検知することができ、第2の検査の実施漏れを防止することができる。
【0076】
判定部1210は、基準データに含まれている情報と対象データに含まれている情報とが一致しているか判定するように構成されていてよい(第2判定部)。これにより、基準データに含まれている情報と対象データに含まれている情報との間における内容の不一致を検知することが可能になる。
【0077】
例えば、或る患者に対して或る検査が実施された場合において、判定部1210は、当該検査の検査オーダー(基準データ)と、当該検査の後に作成された当該患者の電子カルテ(対象データ)とを対照することにより、当該検査オーダーが示す検査の種類と、当該電子カルテに記載されている検査の種類とが一致しているか判定することができる。これにより、電子カルテの記載漏れや誤入力を検知することができる。
【0078】
判定部1210は、基準データに含まれている情報に対応する情報が対象データに含まれているか判定するように構成されていてよい(第3判定部)。これにより、基準データにより示唆される内容が対象データに含まれているか判定することが可能になる。
【0079】
例えば、或る患者に対して或る検査が実施された場合、当該検査の検査オーダーが存在し、更に、この検査オーダーの存在は、当該検査により取得された検査データが存在することや、当該検査が実施されたことを示す検査実施情報が存在することを示唆する。すなわち、検査オーダーが存在するならば、この検査オーダーが示す検査日時よりも後の任意の日時において、当該患者の医療データ(例えば、電子カルテ)には検査データや検査実施情報が必然的に含まれていることになる。判定部1210は、この検査オーダー(基準データ)と、当該患者の電子カルテ(対象データ)とを対照することにより、この検査オーダーが示す検査に対応する検査データ及び/又は検査実施情報が含まれているか否か判定することができる。これにより、電子カルテの記入漏れを検知することができる。
【0080】
逆に、或る患者の医療データに或る検査の検査データ(又は検査実施情報)が含まれている場合、当該検査の検査オーダーが存在するはずである。判定部1210は、この検査データ(基準データ)と、当該患者に関連付けられた検査オーダーとを対照することにより、この検査データに対応する検査オーダーが存在するか否か判定することができる。これにより、検査オーダーの漏れや、検査フローのミスを検知することができる。
【0081】
別の例として、或る患者の医用画像から候補疾患が特定された場合、特定された候補疾患の名称、この候補疾患に対応する検査の名称、当該検査で得られた検査データなどが、当該患者の医療データ(電子カルテなど)に含まれていることが想定される。すなわち、候補疾患が特定されたならば、この候補疾患に対応するデータが当該患者の医療データに含まれている可能性がある。判定部1210は、医用画像から特定された候補疾患名を含む医療データ(基準データ:例えば、当該患者の読影レポート)と、当該患者の様々な医療データ(対象データ:例えば、当該患者の電子カルテ)とを対照することにより、この候補疾患に対応する情報が当該患者の医療データに含まれているか否か判定することができる。これにより、医療データに漏れや誤りが存在する可能性を示唆することが可能になる。
【0082】
医療データには様々な種類があるが、異なる医療データの間に関係(因果関係、相関関係など)が存在する場合がある。そのような場合には、それらの医療データの組み合わせを考慮して整合性評価を行うことが望ましいと考えられる。
【0083】
例えば、或る医療行為が或る検査の結果に影響を与えることがある。具体的には、手術の影響で血圧が高くなることや、手術後の長期臥床により凝固亢進状態(血栓形成傾向)になることがある。また、投与された薬剤の副作用で腎機能や肝機能が低下することがある。したがって、或る患者について実際に得られた検査データが或る医療行為の影響を受けているか否かを識別することは重要である。しかしながら、医療行為と検査結果との組み合わせの個数は極めて多数であり、また、医療行為が検査結果に与える影響も極めて広範にわたることを考慮すると、医療行為と検査結果との関係が見逃される可能性が無いとは言えない。
【0084】
そこで、幾つかの例示的な態様は、患者に対して実施された医療行為とその患者の検査データとの組み合わせを考慮することによって、電子カルテの記載漏れや誤入力を検知することができるように構成される。また、患者に対して実施された医療行為とその患者の検査データとの組み合わせについての情報ユーザーに提示したり、医療行為が検査データに与える影響についての情報をユーザーに提示したりすることによって、電子カルテの記載漏れや誤入力を防止することが可能になる。これにより、医療データ間の整合性評価の品質向上を図ることができる。また、これらの情報を患者に提供することで、検査データに疑問や不安を有する患者への説明を好適に行うことができると考えられる。
【0085】
このような効果を得るために、幾つかの例示的な態様では、基準データは、2つ以上のデータからなる基準データ群(第1のデータ群)含み、及び/又は、対象データは、2つ以上のデータからなる対象データ群(第2のデータ群)を含む。更に、評価部は、基準データ群及び/又は対象データ群に基づいて整合性の評価を実行するように構成される。
【0086】
1つの具体例を説明する。幾つかの例示的な態様では、基準データ群は、所定項目の検査の標準範囲情報と、この所定項目の検査と所定の医療行為との間の関係を示す関係情報とを含んでいる。また、本例の対象データ群は、標準範囲情報に示された所定項目の検査を患者に適用して取得された検査データと、この患者に実施された医療行為を示す医療行為情報とを含んでいる。基準データ群の標準範囲情報及び関係情報は、例えば、標準データとして予め作成されたものである。また、対象データ群の検査データ及び医療行為情報は、例えば、患者の電子カルテデータから取得される。
【0087】
本例の評価部1200は、まず、基準データ群の関係情報を参照することによって、基準データ群の標準範囲情報に示された所定項目の検査と、対象データ群の医療行為情報に示された医療行為との間に関係があるか判定する。この判定処理は、例えば、対象データ群の医療行為情報に示された医療行為と、基準データ群の関係情報に示された医療行為とを対照する処理を含む。医療行為情報に含まれるいずれかの医療行為と、関係情報に示されたいずれかの医療行為とが一致する場合、基準データ群の標準範囲情報に示された所定項目の検査と、対象データ群の医療行為情報に示された医療行為との間に関係があると判定される。それ以外の場合には、基準データ群の標準範囲情報に示された所定項目の検査と、対象データ群の医療行為情報に示された医療行為との間に関係はないと判定される。
【0088】
上記判定処理により、基準データ群の標準範囲情報に示された所定項目の検査と、対象データ群の医療行為情報に示された医療行為との間に「関係がない」と判定された場合、本例の評価部1200は、基準データ群の標準範囲情報と、対象データ群の検査データとを比較する。この比較処理は、例えば、対象データ群の検査データが示す値が、基準データ群の標準範囲情報が示す範囲(例えば、正常範囲、異常範囲)に含まれるか否か判定するものである。本例の評価部1200は、この比較処理で得られた結果に基づいて、基準データと対象データとの間の整合性を評価する。この整合性評価は、例えば、対象データに含まれる当該患者の電子カルテの記載内容と当該比較結果との間の整合性(記載漏れ、ご入力など)を評価するものであってよい。具体例として、この整合性評価は、当該患者の電子カルテの記載内容に当該比較結果が反映されているか否かを判定するものであってよい。
【0089】
他方、上記判定処理により、基準データ群の標準範囲情報に示された所定項目の検査と、対象データ群の医療行為情報に示された医療行為との間に「関係がある」と判定された場合、本例の評価部1200は、まず、上記した「関係がない」の場合と同様に、基準データ群の標準範囲情報と、対象データ群の検査データとの比較を行う。次に、本例の評価部1200は、この比較処理で得られた結果に対して、基準データ群の関係情報に基づく加工を施すことができる。この加工処理は、例えば、当該比較結果を関係情報に基づき変更する処理、当該比較結果に関係情報に示された情報(当該検査と当該医療行為との間の関係を示す情報)を付帯する処理、当該比較結果にフラグを立てる処理、当該比較結果の表示態様を変更(例えば、ハイライト化)するための処理などがある。本例の評価部1200は、この加工処理で得られた結果に基づいて、基準データと対象データとの間の整合性を評価する。この整合性評価は、例えば、対象データに含まれる当該患者の電子カルテの記載内容と当該加工処理で得られた結果との間の整合性(記載漏れ、ご入力など)を評価するものであってよい。具体例として、この整合性評価は、当該患者の電子カルテの記載内容に当該加工処理で得られた結果が反映されているか否かを判定するものであってよい。
【0090】
このように構成された態様によれば、患者に実施された医療行為が検査結果に与える影響を考慮して医療データ間の整合性評価を行うことが可能である。なお、患者に実施された医療行為が検査結果に与えるものでない場合には、他の態様と同様の整合性評価を行うことができる。
【0091】
幾つかの例示的な態様では、基準データ群の関係情報に示された所定の医療行為は、所定の手術(手術名、術式、手術の種類、手術識別子など)を含んでいてよく、且つ、対象データ群の医療行為情報は、患者に実施された手術を示す手術情報(手術名、術式、手術の種類、手術識別子など)を含んでいてよい。本例の評価部1200は、このような関係情報に基づく判定処理として、基準データ群の標準範囲情報に示された所定項目の検査と、対象データ群の医療行為情報の手術情報に示された手術との間に関係があるか否かの判定を実行することができる。更に、本例の評価部1200は、この判定処理の結果に基づいて、前述した「関係がある」場合と同様の処理、又は、前述した「関係がない」場合と同様の処理を実行することができる。本態様によれば、患者に実施された手術が検査結果に与える影響を考慮して医療データ間の整合性評価を行うことが可能である。なお、患者に実施された手術が検査結果に与えるものでない場合には、他の態様と同様の整合性評価を行うことができる。
【0092】
幾つかの例示的な態様では、基準データ群の関係情報に示された所定の医療行為は、所定の薬剤の投与(薬剤名、薬剤識別子など)を含んでいてよく、且つ、対象データ群の医療行為情報は、患者に処方された薬剤を示す薬剤情報(薬剤名、薬剤識別子、薬剤履歴など)を含んでいてよい。本例の評価部1200は、このような関係情報に基づく判定処理として、基準データ群の標準範囲情報に示された所定項目の検査と、対象データ群の医療行為情報の薬剤情報に示された薬剤との間に関係があるか否かの判定を実行することができる。更に、本例の評価部1200は、この判定処理の結果に基づいて、前述した「関係がある」場合と同様の処理、又は、前述した「関係がない」場合と同様の処理を実行することができる。本態様によれば、患者に投与された薬剤が検査結果に与える影響を考慮して医療データ間の整合性評価を行うことが可能である。なお、患者に投与された薬剤が検査結果に与えるものでない場合には、他の態様と同様の整合性評価を行うことができる。
【0093】
眼科における例を説明する。本例において、基準データ群の標準範囲情報は、眼圧値の正常範囲及び/又は異常範囲を示す情報を含み、且つ、基準データ群の関係情報は、眼圧検査と、眼圧値に影響を与える可能性のある薬剤(例えば、副腎皮質ステロイド薬など)との間の関係を示す関係情報を含む。また、本例の対象データ群は、患者の眼圧データと、この患者に投与された薬剤を示す薬剤情報とを含む。評価部1200は、眼圧検査と、この薬剤情報に示された薬剤との間に関係があるか否か判定する。これにより、当該患者に投与された薬剤が眼圧値に影響を与えるものであるか否かが分かる。当該患者に投与された薬剤が眼圧値に影響を与えるものでない場合、評価部1200は、眼圧検査の結果が電子カルテの記載内容に正しく反映されているか評価することができる。他方、当該患者に投与された薬剤が眼圧値に影響を与えるものである場合、評価部1200は、例えば、対象データ群の眼圧データに対して前述した加工処理を施し、それにより得られた情報に基づいて電子カルテの評価を行うことができる。本例によれば、患者に投与された薬剤がいずれも眼圧値に影響を与えるものでない場合には、眼圧検査で得られた眼圧値を標準範囲情報と比較するという通常の眼圧値判定を行うことができる一方、患者に投与された薬剤のいずれかが眼圧値に影響を与えるものである場合には、その旨を医療従事者や患者に提示することや、この影響を考慮して眼圧値判定を行うことができる。
【0094】
幾つかの例示的な態様において、評価部1200は、治療(手術など)の対象部位が計画された部位と一致しているか判断するように構成されていてよい。
【0095】
本例において、基準データは、医療従事者により入力された入力データ(基準入力データ、第1の入力データ)として、患者の治療対象部位情報を含む。治療対象部位情報は、治療の対象となる部位を示す情報であり、例えば、病院情報システム2100により管理されている医療データ(例えば、手術計画書、治療計画書、診療計画書、電子カルテなど)に含まれている。
【0096】
また、本例において、対象データは、医学検査により取得されたデータに基づき取得された検査データ(対象検査データ、第2の検査データ)として、患者の治療において取得された画像データ(治療時画像データ)を含む。治療時画像データは、例えば、画像保存通信システム2300により管理される。なお、病院情報システム2100、部門システム2400、検査装置2500、医療従事者端末2600、又は、他の装置が、少なくとも一時的に治療時画像データを保持していてもよい。
【0097】
本例の評価部1200は、まず、治療時画像データに基づいて、当該患者の治療対象部位を特定する。この特定処理は、例えば、治療時画像データの画像解析、及び/又は、機械学習モデルを用いた推論を含んでいてよい。この画像解析は、例えば、画像セグメンテーションを含む。また、この機械学習モデルは、例えば、治療対象部位を示すアノテーション情報が付帯された医用画像の集合を用いた機械学習によって構築され、医用画像(治療時画像データ)の入力を受けて治療対象部位を出力するように機能する。
【0098】
更に、本例の評価部1200は、上記特定処理により特定された治療対象部位と、基準データに含まれる治療対象部位情報とを照合することによって、基準データと対象データとの間の整合性評価を実行する。この照合処理は、例えば、治療時画像データから特定された治療対象部位が、治療対象部位情報に示された部位と一致するか否か判定する処理を含んでいる。
【0099】
本例の評価部1200は、このような治療対象部位の照合を、当該治療を行っているときに実行することができる。すなわち、本例の治療対象部位の照合処理は、リアルタイム処理であってもよい。例えば、患者に対する治療を行いながら、図示しないイメージング装置により患者を撮影して治療時画像データを取得し、取得された治療時画像データを評価部1200に入力することで、評価部1200は治療対象部位の照合をリアルタイムで行うことができる。このようなリアルタイム処理によれば、計画された治療対象部位を治療時に医療従事者に提示することができ、また、計画された治療対象部位と異なる部位に治療を施そうとしたときに警告を発することができる。
【0100】
また、本例の評価部1200は、患者の治療が終了した後に、治療対象部位の照合を実行することができる。すなわち、本例の治療対象部位の照合処理は、事後的な処理(治療後処理)であってもよい。例えば、評価部1200は、図示しないイメージング装置により治療中に撮影された治療時画像データを受けて治療対象部位の照合を行うことができる。このような治療後処理によれば、例えば、計画された治療対象部位が正しく治療されたか判断することができ、また、当該患者の電子カルテや手術記録の内容について評価を行うことができる。
【0101】
幾つかの例示的な態様において、評価部1200は、治療(手術など)に使用される器具が計画されたものと一致しているか判断するように構成されていてよい。治療器具の例として、眼内レンズ、低侵襲緑内障手術(MIGS)デバイス、人工血管、人工臓器、人工網膜などがある。治療器具には、固有の識別子(型番など)が付与されている。
【0102】
本例において、基準データは、医療従事者により入力された入力データ(基準入力データ、第1の入力データ)として、患者の治療器具情報を含む。治療器具情報は、治療器具に関する情報であり、例えば、治療器具識別子を含んでいる。治療器具情報は、例えば、病院情報システム2100により管理されている医療データ(例えば、手術計画書、治療計画書、診療計画書、電子カルテなど)に含まれている。
【0103】
また、本例において、対象データは、医学検査により取得されたデータに基づき取得された検査データ(対象検査データ、第2の検査データ)として、患者の治療において取得されたデータ(治療時データ)を含む。治療時データは、例えば、治療時に治療器具を撮影して得られた画像データ(治療器具画像データ)、治療時に治療器具に付された識別子(バーコードなど)を読み取って得られたデータ(治療器具識別子データ)を含む。治療時データは、例えば、病院情報システム2100、画像保存通信システム2300などにより管理される。なお、部門システム2400、検査装置2500、医療従事者端末2600、又は、他の装置が、少なくとも一時的に治療時データを保持していてもよい。
【0104】
本例の評価部1200は、まず、治療時データに基づいて、当該患者の治療における使用器具(当該治療で使用される又は使用された治療器具)を特定する。治療時データが治療器具識別子データを含む場合、この特定処理は、この治療器具識別子データから使用器具を特定する処理を含んでいてよい。また、治療時データが治療時画像データを含む場合、この特定処理は、この治療時画像データの画像解析、及び/又は、機械学習モデルを用いた推論を含んでいてよい。この画像解析は、例えば、治療時画像データに画像セグメンテーションを適用して治療器具像を検出する処理と、検出された治療器具像を解析して当該治療器具(使用器具)を特定する処理とを含む。また、この機械学習モデルは、例えば、治療器具の識別子(種類、型番など)を示すアノテーション情報が付帯された治療器具像を含む画像の集合を用いた機械学習によって構築され、治療時画像データの入力を受けて治療器具の識別子を出力するように機能する。
【0105】
更に、本例の評価部1200は、上記特定処理により特定された使用器具と、基準データに含まれる治療器具情報とを照合することによって、基準データと対象データとの間の整合性評価を実行する。この照合処理は、例えば、治療時データから特定された使用器具が、治療器具情報に示された治療器具と一致するか否か判定する処理を含んでいる。
【0106】
本例の評価部1200は、このような治療器具の照合を、当該治療を行っているときに実行することができる。すなわち、本例の治療器具の照合処理は、リアルタイム処理であってもよい。例えば、患者に対する治療を行っているときに、図示しない識別子リーダーによって治療器具に付された識別子を読み取って治療器具識別子データを取得し、又は、図示しないイメージング装置により患者を撮影して治療時画像データを取得する。更に、取得された治療時データ(治療器具識別子データ、治療時画像データなど)を評価部1200に入力することで、評価部1200は治療器具の照合をリアルタイムで行うことができる。このようなリアルタイム処理によれば、計画された治療器具の種類を治療時に医療従事者に提示することができ、また、計画された治療器具と異なる治療器具が使用されようとしたときに警告を発することができる。
【0107】
また、本例の評価部1200は、患者の治療が終了した後に、治療器具の照合を実行することができる。すなわち、本例の治療器具の照合処理は、事後的な処理(治療後処理)であってもよい。例えば、評価部1200は、治療中に取得された治療時データを受けて治療器具の照合を行うことができる。このような治療後処理によれば、例えば、計画された通りの治療器具が使用されたか判断することができ、また、当該患者の電子カルテや手術記録の内容について評価を行うことができる。
【0108】
幾つかの例示的な態様において、評価部1200は、機械学習モデルを用いて医療データ間の整合性評価を行うように構成されていてもよい。そのような評価部1200の幾つかの例を以下に説明する。
【0109】
幾つかの例示的な態様において、評価部1200は、基準データと同種のデータ(第1の種類のデータ)及び対象データと同種のデータ(第2の種類のデータ)を含む訓練データを用いた機械学習によって構築された機械学習モデル(第1の機械学習モデル)を含む。この機械学習モデル(推論モデル)は、少なくとも基準データと対象データとのペアの入力を受けて、当該基準データと当該対象データとの間の整合性の評価結果を示す情報(整合性評価情報)を出力するように機能する。
【0110】
図4に示す評価部1200Aは、図2の評価部1200の1つの構成例である。本例の評価部1200Aは、推論モデル(機械学習モデル、数理モデル、学習済みモデル)1220を用いて整合性評価を実行する。推論モデル1220は、少なくとも基準データと対象データとのペアの入力を受けて、このデータペアについての整合性評価情報を出力するように機械学習によって訓練されたニューラルネットワーク1221を含む。
【0111】
推論モデル1220は、図4に示すように評価部1200の内部に配置されていてもよいし、評価部1200以外の医療データ処理システム1000の箇所(例えば、図示しない記憶装置内)に配置されていてもよいし、医療データ処理システム1000の外部に配置されていてもよい。後者の例として、医療データ処理システム1000によりアクセス可能なコンピュータ又は記憶装置の内部に推論モデル1220を配置してもよい。
【0112】
推論モデル1220を構築する装置(推論モデル構築装置)は、医療データ処理システム1000に設けられていてもよいし、医療データ処理システム1000の周辺機器(コンピュータなど)に設けられてもよいし、他のコンピュータであってもよい。
【0113】
図5に示す推論モデル構築装置1600は、推論モデル1220を構築する装置の例であり、学習処理部1610とニューラルネットワーク1620とを含む。
【0114】
ニューラルネットワーク1620の構造や構成は、入力されるデータ(第1の種類のデータ、第2の種類のデータ)の種類、出力される情報(整合性評価情報)の種類などに基づき決定される。例えば、入力されるデータに画像データが含まれている場合、ニューラルネットワーク1620は、典型的には、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を含む。図5の符号1630は、この畳み込みニューラルネットワークの構造の一例を示している。
【0115】
畳み込むニューラルネットワーク1630の入力層には、画像が入力される。入力層の後ろには、畳み込み層とプーリング層とのペアが複数配置されている。図5に示す例には畳み込み層とプーリング層とのペアが3つ設けられているが、ペアの個数は任意であってよい。
【0116】
畳み込み層では、画像から特徴(輪郭など)を把握するための畳み込み演算が行われる。畳み込み演算は、入力された画像に対する、この画像と同じ次元のフィルタ関数(重み係数、フィルタカーネル)の積和演算である。畳み込み層では、入力された画像の複数の部分にそれぞれ畳み込み演算を適用する。より具体的には、畳み込み層では、フィルタ関数が適用された部分画像の各ピクセルの値に、そのピクセルに対応するフィルタ関数の値(重み)を乗算して積を算出し、この部分画像の複数のピクセルにわたって積の総和を求める。このように得られた積和値は、出力される画像における対応ピクセルに代入される。フィルタ関数を適用する箇所(部分画像)を移動させながら積和演算を行うことで、入力された画像の全体についての畳み込み演算結果が得られる。このような畳み込み演算によれば、多数の重み係数を用いて様々な特徴が抽出された画像が多数得られる。つまり、平滑化画像やエッジ画像などの多数のフィルタ処理画像が得られる。畳み込み層により生成される多数の画像は特徴マップと呼ばれる。
【0117】
プーリング層では、直前の畳み込み層により生成された特徴マップの圧縮(データの間引きなど)が行われる。より具体的には、プーリング層では、特徴マップ内の注目ピクセルの所定の近傍ピクセルにおける統計値を所定のピクセル間隔ごとに算出し、入力された特徴マップよりも小さな寸法の画像を出力する。なお、プーリング演算に適用される統計値は、例えば、最大値(max pooling)又は平均値(average pooling)である。また、プーリング演算に適用されるピクセル間隔は、ストライド(stride)と呼ばれる。
【0118】
畳み込みニューラルネットワークは、畳み込み層とプーリング層との複数のペアによって処理を行うことにより、入力された画像から多くの特徴を抽出することができる。
【0119】
畳み込み層とプーリング層との最後のペアの後ろには、全結合層が設けられている。図5に示す例においては2つの全結合層が設けられているが、全結合層の個数は任意であってよい。全結合層では、畳み込みとプーリングとの組み合わせによって圧縮された特徴量を用いて、画像分類、画像セグメンテーション、回帰などの処理を行う。最後の全結合層の後ろには、出力結果を提供する出力層が設けられている。
【0120】
幾つかの例示的な態様において、畳み込みニューラルネットワークは、全結合層を含まなくてもよいし(例えば、全層畳み込みネットワーク(FCN))、及び/又は、サポートベクターマシンや再帰型ニューラルネットワーク(RNN)などを含んでいてもよい。また、ニューラルネットワーク1620に対する機械学習は、転移学習を含んでいてもよい。つまり、ニューラルネットワーク1620は、他の訓練データを用いた学習が既に行われてパラメータ調整が為されたニューラルネットワークを含んでいてもよい。また、推論モデル構築装置1600(学習処理部1610)は、学習済みのニューラルネットワーク(ニューラルネットワーク1620)にファインチューニングを適用可能に構成されてもよい。ニューラルネットワーク1620は、公知のオープンソースのニューラルネットワークアーキテクチャを用いて構築されたものであってもよい。
【0121】
学習処理部1610は、後述する要領で作成された訓練データ1670を用いた機械学習をニューラルネットワーク1620に適用する。ニューラルネットワーク1620が畳み込みニューラルネットワークを含んでいる場合、学習処理部1610によって調整されるパラメータは、例えば、畳み込み層のフィルタ係数と、全結合層の結合重み及びオフセットとを含む。
【0122】
訓練データ1670に含まれるデータの種類は、入力されるデータ(第1の種類のデータ、第2の種類のデータ)の種類、出力される情報(整合性評価情報)の種類などに基づき決定される。入力されるデータは、前述したいずれかの種類の基準データと、前述したいずれかの種類の対象データとのペアであってよい。訓練データ1670に含まれるデータの種類は、任意であってよく、例えば、医療従事者により作成されたデータ、医療従事者により入力されたデータ、医療装置(検査装置2500など)により取得されたデータ、医療装置により生成されたデータ、これらのいずれかのデータを加工して作成されたデータ、コンピュータにより生成されたデータ、擬似的なデータなどを含んでいてもよい。また、データ拡張(データオーギュメンテーション)などの技術を利用して、訓練データ1670に含まれるデータの個数を増加させてもよい。
【0123】
ニューラルネットワーク1221を構築するための訓練の手法(機械学習の手法)は、例えば、教師あり学習であってよいが、これに限定されるものではない。幾つかの例示的な態様では、ニューラルネットワーク1221を構築するための機械学習において、教師あり学習に加えて、又は、教師あり学習に代えて、教師なし学習、強化学習、半教師あり学習、トランスダクション、マルチタスク学習など、任意の公知の手法を利用することができる。
【0124】
ニューラルネットワーク1221の特定のユニットに処理が集中することを避けるために、学習処理部1610は、ニューラルネットワーク1620の幾つかのユニットをランダムに選んで無効化し、残りのユニットを用いて機械学習を実施するようにしてもよい(ドロップアウト)。
【0125】
推論モデル構築に用いられる手法は、ここに示した例に限定されない。幾つかの例示的な態様では、サポートベクターマシン、ベイズ分類器、ブースティング、k平均法、カーネル密度推定、主成分分析、独立成分分析、自己組織化写像、ランダムフォレスト、敵対的生成ネットワーク(GAN)など、任意の公知の手法を、推論モデルを構築するために利用することが可能である。
【0126】
訓練データ1670の作成方法について、幾つかの例を説明する。図5に示す例では、訓練データ1670を作成するために、データソース1640、データ収集装置1650、及びアノテーション装置1660が用いられる。本態様において使用されるデータソース1640の個数は、1つ以上の任意の個数であってよい。データ収集装置1650及びアノテーション装置1660についても同様である。
【0127】
データソース1640は、訓練データ1670を作成するためのデータの提供元である。データソース1640の種類及び個数はいずれも任意であってよい。データソース1640は、例えば、病院情報システム2100、放射線科情報システム2200、画像保存通信システム2300、部門システム2400、検査装置2500、医療従事者端末2600、当該医療機関内に設けられた他の装置及び/又は他のシステム、当該医療機関の外部に設けられた装置及び/又はシステム、記録媒体などを含んでいてよい。
【0128】
データ収集装置1650は、訓練データ1670を作成するためのデータをデータソース1640から収集する機能を有するコンピュータを含む。幾つかの例示的な態様では、データ収集装置1650は、評価部1200Aによって処理されるデータと同種のデータをデータソース1640から収集するように構成されてよい。すなわち、データ収集装置1650は、基準データと同種のデータ(第1の種類のデータ)及び対象データと同種のデータ(第2の種類のデータ)をデータソース1640から収集するように構成されてよい。データ収集装置1650によって収集されたデータの集合(データセット)は、アノテーション装置1660に送られる。
【0129】
アノテーション装置1660は、アノテーションのために使用される。このアノテーションは、例えば、データ収集装置1650により収集されたデータに対してメタデータ(ラベル、タグ)を付す作業又は処理である。このラベルは、前述した整合性評価情報に相当する情報、つまり、整合性評価情報と同種の情報である。アノテーションは、データ収集装置1650により収集されたデータセットに含まれる各データについて行われてもよいし、このデータセットに含まれる複数のデータの一部についてのみ行われてもよい。
【0130】
アノテーション作業(手作業でのアノテーション)は、一般的に、医師によって行われる。アノテーション作業に使用されるアノテーション装置1660は、アノテーション作業を行うためのハードウェア及びソフトウェアを備えている。このハードウェアは、例えば、コンピュータに加え、ユーザーインターフェイスハードウェア(例えば、表示デバイス、操作デバイス、入力デバイスなど)を含んでいる。また、このソフトウェアは、例えば、アノテーション作業のための処理(例えば、表示、操作の受け付け、入力の受け付け、アノテーション情報の生成、アノテーション情報とデータとの関連付けなど)を実行するためのグラフィカルユーザーインターフェイス(GUI)アプリケーションを含んでいる。
【0131】
例えば、医師は、アノテーション作業に使用されるアノテーション装置1660を用いて、データを表示させるための操作と、表示されたデータを参照してアノテーション情報の内容を決定する作業と、決定された内容のアノテーション情報を入力する操作とを行う。更に、本例のアノテーション装置1660は、医師により入力されたアノテーション情報を対応するデータに関連付ける処理を実行する。
【0132】
アノテーション処理(自動アノテーション)は、コンピュータによって行われる。アノテーション処理に使用されるアノテーション装置1660は、アノテーション処理を実行するためのハードウェア及びソフトウェアを備えている。このハードウェアは、少なくともコンピュータを含んでいる。また、このソフトウェアは、例えば、アノテーション処理(例えば、データ解析、アノテーション情報の生成、アノテーション情報とデータとの関連付けなど)を実行するためのアプリケーションを含んでいる。
【0133】
アノテーション装置1660は、自動的なアノテーション処理によって取得されたアノテーション結果(例えば、アノテーション情報、アノテーション情報とデータとのペアなど)を医師又は他のコンピュータ(他のソフトウェア)によって検証するための機能を有していてもよい。医師による検証作業に使用されるアノテーション装置1660は、例えば、アノテーション作業用のアノテーション装置1660と同様の構成を有していてよい。また、他のコンピュータ(他のソフトウェア)による検証処理に使用されるアノテーション装置1660は、例えば、アノテーション処理用のアノテーション装置1660と同様の構成を有していてよい。
【0134】
以上に説明したように、データソース1640、データ収集装置1650、及びアノテーション装置1660によって、データとアノテーション情報とのペアが形成される。訓練データ1670は、データとアノテーション情報との複数のペアを含んでいる。つまり、訓練データ1670は、データとアノテーション情報とのペアの集合を含んでいる。
【0135】
訓練データ1670に含まれるデータは、データソース1640、データ収集装置1650、及びアノテーション装置1660を用いて生成されたデータ(データ収集装置1650により取得されたデータ、アノテーション装置1660を用いて取得されたアノテーション情報)に限定されない。例えば、訓練データ1670は、次のいずれかの種類のデータを含んでいてもよい:データ収集装置1650以外の装置によって取得されたデータ;データ収集装置1650又は他の装置により取得されたデータを加工して生成されたデータ;コンピュータにより生成されたデータ;擬似的なデータ;データオーギュメンテーションにより生成されたデータ。また、訓練データ1670は、これらのデータに付帯されたアノテーション情報を含んでいてもよい。
【0136】
学習処理部1610は、このような訓練データ1670を用いた教師あり学習(及び/又は半教師あり学習)をニューラルネットワーク1620に適用することによってニューラルネットワーク1221を構築することができる。この教師あり学習は、例えば、訓練データ1670に含まれる各ペア(データとアノテーション情報とのペア)について、当該データの入力に対応する出力として当該アノテーション情報が得られるように実行される。
【0137】
前述したように、本例の訓練データ1670に含まれる各ペアにおけるデータ(つまり、アノテーション情報と関連付けられたデータ)は、基準データと同種のデータ(第1の種類のデータ)及び対象データと同種のデータ(第2の種類のデータ)とを含んでいる。また、本例の訓練データ1670に含まれる各ペアにおけるアノテーション情報(つまり、データと関連付けられたアノテーション情報)は、整合性評価情報と同種の情報を含んでいる。
【0138】
したがって、本例のニューラルネットワーク1221を含む推論モデル1220は、第1の種類のデータと第2の種類のデータとのペアの入力を受けて整合性評価情報を出力するように機能する。すなわち、本例のニューラルネットワーク1221を含む推論モデル1220は、基準データと対象データとのペアの入力を受けて整合性評価情報を出力するように構成されている。
【0139】
機械学習モデルを用いた整合性評価を評価部1200が実行可能である場合において、機械学習モデルを作成するための機械学習をユーザー(医療従事者)ごとに実行することができる。すなわち、特定のユーザーに対応する機械学習モデルを用いてそのユーザーが生成した医療データの整合性評価を行うことができる。
【0140】
本例において、訓練データは、第2の種類のデータ(対象データと同種のデータ)として、特定の医療従事者により過去に入力されたデータを含んでいる。更に、この訓練データを用いた機械学習により構築された機械学習モデルは、この医療従事者により新たに入力されたデータを対象データとして受けて整合性評価情報を出力する。
【0141】
1つの具体例として、訓練データは、或る医師が過去に作成した電子カルテデータの集合を含む。この訓練データを用いて機械学習を行うことで、この医師の癖や傾向を学習した機械学習モデルが得られる。この機械学習モデルを搭載した評価部1200にこの医師が新たに作成した電子カルテデータを入力することで、この医師の癖や傾向が反映された整合性評価情報が得られる。少なくとも、複数の医師により作成された電子カルテデータの集合を用いた機械学習で作成された機械学習モデルを使用する場合よりも、当該医師の癖や傾向が反映された整合性評価情報が得られると考えられる。
【0142】
幾つかの例示的な態様において、評価部1200は、特定の疾患の診療ガイドラインを学習した機械学習モデルを用いて整合性評価を実行するように構成されていてよい。
【0143】
本例において、訓練データは、第1の種類のデータ(基準データと同種のデータ)として、医療行為を標準化した情報を含む標準データを含んでおり、更に、この標準データは、特定の疾患の診療ガイドラインを含んでいる。この訓練データを用いた機械学習により構築された機械学習モデル(第2の機械学習モデル)は、この疾患に関する対象データの入力を受けて整合性評価情報を出力する。
【0144】
本例の機械学習モデルを搭載した評価部1200に対象データ(例えば、電子カルテデータ)を入力することで、入力された対象データの内容が当該疾患の診療ガイドラインに則したものであるかどうか評価することができる。換言すると、入力された対象データの内容と当該疾患の診療ガイドラインとの間の整合性を評価することが可能である。これにより、例えば、診療ガイドラインにより推奨されている検査が抜けていること、診療ガイドラインに示された基準に合わない判断がなされたこと、などを検知することができる。また、前述したリアルタイム処理と組み合わせることで、診療ガイドラインに基づく情報提供や警告を行うことができる。
【0145】
診療ガイドラインに基づく医療データの整合性評価は、上記のような機械学習モデルを利用したものに限定されず、機械学習モデルを利用することなく整合性評価を実装することも可能である。次に説明する幾つかの例では、少なくとも部分的に機械学習モデルを利用してもよいし、機械学習モデルを利用しなくてもよい。
【0146】
幾つかの例示的な態様において、基準データは、標準データとして、特定の疾患の診療ガイドラインを含んでいてよい。更に、評価部1200は、対象データの入力を受けて、この診療ガイドラインに記載されている所定の事項に関する情報がこの対象データに含まれているか判定することによって整合性評価を行うように構成されていてよい。
【0147】
診療ガイドラインに記載されている上記「所定の事項」は、予め設定され、及び/又は、整合性評価ごとに設定される。
【0148】
診療ガイドラインにおける所定の事項が問診項目(問診において確認すべき項目)を含む場合、評価部1200は、この問診項目に対応する問診データ(問診結果)が対象データ(例えば、医師により入力された電子カルテデータなどの対象入力データ)に含まれているか判定することによって整合性評価を実行することができる。これにより、診療ガイドラインに則した問診が行われたか判定することや、診療ガイドラインに則した問診の結果が記録されているか判定することが可能になる。
【0149】
診療ガイドラインにおける所定の事項が検査種別(実施するべき検査の種別)を含んでいる場合、評価部1200は、この検査種別に対応する検査データ(検査結果)が対象データ(例えば、医師により入力された電子カルテデータなどの対象入力データ)に含まれているか判定することによって整合性評価を実行することができる。これにより、診療ガイドラインに則した検査が行われたか判定することや、診療ガイドラインに則した検査の結果が記録されているか判定することが可能になる。
【0150】
アノテーション部1300は、評価部1200により実行された医療データ間の整合性評価の結果に基づいて、基準データ及び/又は対象データにアノテーション情報を付与するように構成されている。
【0151】
アノテーション部1300によって整合性評価結果に付与されるアノテーション情報は、訓練データ1670を作成するためにアノテーション装置1660によってデータに付されるアノテーション情報とは異なるものであり、評価部1200により得られた整合性評価結果に基づき生成され、情報評価部1200に入力されたデータ(基準データ、対象データ)に付される情報である。
【0152】
幾つかの例示的な態様において、アノテーション部1300は、評価部1200に入力された基準データと対象データとの間に整合性が無い(整合性に疑いが有る)と判断された場合にアノテーション情報の生成及び付与を実行するように構成されてよい。このアノテーション情報に含まれる情報の例として、警告、報知、整合性を高めるための追記の提案及び/又は追記内容の提案、整合性を高めるための修正の提案及び/又は修正内容の提案などがある。
【0153】
幾つかの例示的な態様において、アノテーション部1300は、評価部1200に入力された基準データと対象データとの間に整合性が有る(整合性に疑いが無い)と判断された場合にもアノテーション情報の生成及び付与を実行するように構成されてよい。この場合のアノテーション情報に含まれる情報の例として、医療データの整合性に問題が無いことを示すメッセージやアイコンなどがある。
【0154】
このようなアノテーション情報は、典型的には対象データに付与されるが、例えば、多数の対象データとの間において整合性が無いと判定された基準データに対してアノテーション情報を付与するようにしてもよい。すなわち、このアノテーション情報は、臨床現場で収集された多数のデータに整合しない基準データに対して疑問を呈するものと言える。
【0155】
アノテーション部1300の機能は、アノテーションプログラム等のソフトウェアと、プロセッサ等のハードウェアとの協働によって実現される。アノテーション部1300は、例えば、図示しないプロセッサ(制御ユニット)の制御の下に動作する。このプロセッサは、例えば、図示しない制御プログラムによってアノテーション部1300の制御を実行するように構成されている。
【0156】
出力部1400は、医療データ処理システム1000からデータを出力するための構成を有する。本態様の出力部1400は、表示制御部1410を含んでいる。表示制御部1410は、ユーザーインターフェイス1500の表示装置1510に情報を表示させるための制御を実行する。出力部1400(表示制御部1410)の機能は、出力プログラム(表示制御プログラム)等のソフトウェアと、プロセッサ等のハードウェアとの協働によって実現される。
【0157】
ユーザーインターフェイス1500は、表示装置1510と操作装置1520とを含んでいる。操作装置1520は各種の操作デバイスや入力デバイスを含んでいる。ユーザーインターフェイス1500は、例えばタッチパネルのような表示機能と操作機能とが一体となったデバイスを含んでいてもよい。ユーザーインターフェイス1500の少なくとも一部は、医療データ処理システム1000の外部に設けられていてもよい。例えば、表示装置1510及び操作装置1520は、医療データ処理システム1000の周辺機器であってもよい。
【0158】
ここで、リアルタイム処理に関する幾つかの例を説明する。
【0159】
幾つかの例示的な態様において、医療データ処理システム1000は、ユーザーが行っているデータ入力作業と並行して整合性評価を実行することができる。本例では、対象データは、対象入力データとして、医療従事者が現在実施している作業において入力された新たなデータを含む。そして、評価部1200は、この新たなデータを受け付けたことに対応して、基準データとこの新たなデータとの間の整合性の評価を実行することができる。
【0160】
具体例として、対象データは、医師が現在実施している電子カルテ入力作業において入力された新たなデータを含み、更に、評価部1200は、この新たなデータを受け付けたことに対応して、基準データとこの新たなデータとの間の整合性の評価を実行することができる。医療データ処理システム1000は、医師が新たなデータを電子カルテに入力するごとに、このような整合性評価を実行するように構成されてもよい。
【0161】
このようなリアルタイム整合性評価によれば、医療従事者が現在実施している作業において新たに入力したデータの正しさをリアルタイムで評価することが可能になる。更に、アノテーション部1300によるアノテーション情報生成をリアルタイムで実行することにより、医療従事者が現在実施している作業において新たに入力したデータの正しさをリアルタイムで評価するとともに、この評価の結果に基づくアノテーション情報をリアルタイムで提供することが可能になる。
【0162】
このようなリアルタイム整合性評価(及びリアルタイムアノテーション情報生成)に加えて、医療データ処理システム1000は、リアルタイム処理で得られた整合性評価結果をリアルタイムで出力するように構成されてもよい。
【0163】
本例では、評価部1200は、医療従事者が現在実施している作業において入力された新たなデータと基準データとの間の整合性評価をリアルタイムで実行し、出力部1400は、このリアルタイム処理で得られた整合性評価結果をリアルタイムで出力する。
【0164】
このようなリアルタイム整合性評価とリアルタイム出力との組み合わせによれば、医療従事者が現在実施している作業において新たに入力したデータの正しさをリアルタイムで評価するとともに、この評価の結果を当該医療従事者などに対してリアルタイムで提供することが可能になる。また、リアルタイムアノテーション情報生成を更に組み合わせることにより、医療従事者が現在実施している作業において新たに入力したデータの正しさをリアルタイムで評価するとともに、この評価の結果とそれに基づくアノテーション情報とを当該医療従事者などに対してリアルタイムで提供することが可能になる。
【0165】
整合性評価結果のリアルタイムで出力する態様は任意であってよい。図2に示す構成の医療データ処理システム1000では、表示制御部1410が整合性評価結果を表示装置1510にリアルタイムで表示させることができる。
【0166】
別の例として、図6に示す医療データ処理システム1000Aの出力部1400Aは、送信部1420を含んでいる。送信部1420は、モデム、ルーター、通信回路などの通信デバイスを含む。
【0167】
本例では、評価部1200は、医療従事者が現在実施している作業において入力された新たなデータと基準データとの間の整合性評価をリアルタイムで実行し、送信部1420は、このリアルタイム処理で得られた整合性評価結果(及びアノテーション情報)をこの医療従事者が使用しているコンピュータ2700にリアルタイムで送信する。コンピュータ2700は、例えば、医療従事者端末2600である。
【0168】
コンピュータ2700は、医療データ処理システム1000Aから送信された情報を通信部2710によって受信する。受信された情報は、記憶部2720に保存され、表示部2730に表示される。
【0169】
このようなリアルタイム整合性評価とリアルタイム送信との組み合わせによれば、医療従事者が現在実施している作業において新たに入力したデータの正しさをリアルタイムで評価するとともに、この評価の結果を当該医療従事者などに対してリアルタイムで提供することが可能になる。また、リアルタイムアノテーション情報生成を更に組み合わせることにより、医療従事者が現在実施している作業において新たに入力したデータの正しさをリアルタイムで評価するとともに、この評価の結果とそれに基づくアノテーション情報とを当該医療従事者などに対してリアルタイムで提供することが可能になる。特に、医療データ処理システム1000Aから離れた場所(例えば、遠隔地)で医療従事者が作業を行う場合であっても同様の効果が得られる点が、本例の特徴の1つである。
【0170】
本態様の医療データ処理システム1000の動作について、幾つかの例を説明する。これらの動作例のうちから任意に選択された2つ以上の動作例を、少なくとも部分的に組み合わせることができる。また、医療データ処理システム1000の動作は、これらの動作例に限定されるものではなく、例えば、本開示において説明された任意の事項をこれらの動作例に組み合わせることが可能である。
【0171】
図7を参照しつつ第1の動作例を説明する。本動作例は、実施形態に係る医療データ処理方法の1つの態様を提供するものである。
【0172】
まず、基準データと対象データとを準備する(S1、S2)。基準データは、基準入力データ、基準検査データ、及び標準データのいずれか1つ以上を含んでいる。また、対象データは、対象入力データ及び/又は対象検査データを含んでいる。基準データを取得するタイミング、及び、対象データを取得するタイミングは、いずれも任意である。ステップS1及びS2は、医療データ取得部1100によって実行される。
【0173】
次に、ステップS1で取得された基準データと、ステップS2で取得された対象データとの間の整合性の評価が実行される(S3)。ステップS3は、評価部1200によって実行される。
【0174】
本動作例によれば、基準データと対象データとの間の整合性を評価することによって医療データ全体(例えば、或る患者に関する医療データ全体)としての品質向上を図ることが可能である。
【0175】
図8を参照しつつ第2の動作例を説明する。本動作例は、実施形態に係る医療データ処理方法の1つの態様を提供するものである。
【0176】
第1の動作例と同様に、医療データ取得部1100によって基準データと対象データとが準備され(S11、S12)、ステップS11で取得された基準データとステップS12で取得された対象データとの間の整合性の評価が評価部1200によって実行される(S13)。
【0177】
更に、ステップS13で実行された整合性評価の結果に基づいて、ステップS11で取得された基準データ及び/又はステップS12で取得された対象データに対してアノテーション情報が付与される(S14)。ステップS14は、アノテーション部1300によって実行される。
【0178】
本動作例によれば、基準データと対象データとの間の整合性を評価することによって医療データ全体(例えば、或る患者に関する医療データ全体)としての品質向上を図ることが可能であることに加え、整合性評価の結果に応じた情報(アノテーション情報)を基準データ及び/又は対象データに付すことができる。例えば、基準データと対象データとの間に整合性が無い場合には、警告や提案を含むアノテーション情報を基準データ及び/又は対象データに付すことができ、基準データと対象データとの間に整合性が有る場合には、医療データの整合性に問題が無いことを示すメッセージやアイコンを含むアノテーション情報を基準データ及び/又は対象データに付すことができる。
【0179】
図9を参照しつつ第3の動作例を説明する。本動作例は、実施形態に係る医療データ処理方法の1つの態様を提供するものであり、前述したリアルタイム処理の1つの態様を提供するものである。
【0180】
まず、医療従事者が医療従事者端末2600を用いてデータ入力作業を開始する(S21)。例えば、医師が電子カルテ入力作業を開始する。データ入力作業においては様々な情報が参照される。例えば、電子カルテ入力作業においては、検査データや読影レポートなどが参照される。
【0181】
本動作例においても、第1の動作例と同様に、医療データ取得部1100によって基準データが準備される(S22)。基準データを準備するタイミングは任意であってよい。
【0182】
基準データは、例えば、データ入力作業において参照されているデータであってよいが、これに限定されない。例えば、入力中の電子カルテデータに疾患名が記載されている場合、この疾患の診療ガイドラインを基準データとして準備することができる。この準備処理は、例えば、次に示す一連の工程によって実行される:(1)医療従事者端末2600が、電子カルテデータ中の疾患名を検索する;(2)医療データ取得部1100が、検索された疾患名を医療データ処理システム1000に送信する;(3)医療データ処理システム1000の医療データ取得部1100が、この疾患名に対応する診療ガイドラインを取得する。
【0183】
ここで、診療ガイドラインの格納箇所は任意であってよく、例えば、医療データ処理システム1000、病院情報システム2100、又は、部門システム2400であってよい。或いは、診療ガイドラインが医療従事者端末2600に格納されている場合には、医療従事者端末2600が、電子カルテデータ中の疾患名を検索し、検索された疾患名に対応する診療ガイドラインを取得し、取得された診療ガイドラインを医療データ処理システム1000へ送信するようにしてもよい。
【0184】
ステップS21でデータ入力作業を開始した医療従事者が新たなデータを医療従事者端末2600に入力すると(S23)、この新たな入力データが医療データ処理システム1000に送られる。医療データ処理システム1000の医療データ取得部1100は、この新たな入力データを対象データとして受け付ける(S24)。
【0185】
対象データとして採用される入力データの種類は任意であってよいが、医療従事者により入力された全てのデータを対象データとすることは医療データ処理システム1000の処理負荷を無駄に大きくする可能性がある。これを考慮し、医療従事者端末2600(又は、医療従事者端末2600と医療データ処理システム1000との間で動作する中継装置)が、医療データ処理システム1000に提供されるデータを選択する処理を行うように構成されていてよい。
【0186】
例えば、医療従事者端末2600は、予め作成された文字列リスト(単語や文章などのリスト)を保持しており、この文字列リストに含まれる文字列又はそれに類似する文字列が入力されたときに、その文字列を新たな入力データとして医療データ処理システム1000に送信するように構成されてよい。文字列リストは、例えば、診療科ごと、疾患ごと、疾患群ごと、医療従事者ごとに設けられてもよい。
【0187】
別の例として、医療従事者端末2600は、医療従事者により入力されたデータのうちから、医療データ処理システム1000に送信するデータを選択するように機能する機械学習モデルを有していてもよい。
【0188】
評価部1200は、ステップS22で取得された基準データと、ステップS24で取得された対象データとの間の整合性の評価を実行する(S25)。
【0189】
本動作例によれば、基準データと対象データとの間の整合性を評価することによって医療データ全体(例えば、或る患者に関する医療データ全体)としての品質向上を図ることができることに加え、データ入力作業を行っている医療従事者に対して整合性に関する警告や提案をリアルタイムで提供することが可能である。
【0190】
図10を参照しつつ第4の動作例を説明する。本動作例は、実施形態に係る医療データ処理方法の1つの態様を提供するものであり、検査データの整合性を評価する処理の1つの態様を提供するものである。
【0191】
まず、検査装置2500を用いて患者に対する第1の医学検査が行われ、第1のデータが取得される(S31)。この第1のデータは、検査装置2500から医療データ処理システム1000に送られる。医療データ処理システム1000の検査データ取得部1110は、ステップS31で取得された第1のデータから第1の検査データを生成し(S32)、更に、医療データ取得部1100は、この第1の検査データを含む基準データを生成する(S33)。
【0192】
同様に、検査装置2500を用いて患者に対する第2の医学検査が行われ、第2のデータが取得される(S34)。この第2のデータは、検査装置2500から医療データ処理システム1000に送られる。医療データ処理システム1000の検査データ取得部1110は、ステップS34で取得された第2のデータから第2の検査データを生成し(S35)、更に、医療データ取得部1100は、この第2の検査データを含む対象データを生成する(S36)。
【0193】
評価部1200は、ステップS33で取得された基準データと、ステップS36で取得された対象データとの間の整合性の評価を実行する(S37)。
【0194】
本動作例によれば、検査データを含む基準データと、別の検査データを含む対象データとの間の整合性を評価することによって医療データ全体(例えば、或る患者に関する医療データ全体)としての品質向上を図ることができる。
【0195】
図11を参照しつつ第5の動作例を説明する。本動作例は、実施形態に係る医療データ処理方法の1つの態様を提供するものであり、機械学習モデルを用いて整合性を評価する処理の1つの態様を提供するものである。
【0196】
まず、データ収集装置1650が、訓練データ作成用のデータをデータソース1640から収集する(S41)。ステップS41で収集されるデータの種類は、本動作例で構築される機械学習モデルの設計に基づき決定されるものであり、ステップS41では、後述のステップS46で準備される基準データと同種の第1の種類のデータと、後述のステップS47で準備される対象データと同種の第2の種類のデータとが収集される。
【0197】
ステップS41で収集されたデータは、アノテーション装置1660に送られる。アノテーション装置1660は、収集されたデータにアノテーション情報を付与する処理を実行する(S42)。ステップS41で収集されたデータとステップS42で付与されたアノテーション情報とに基づき訓練データ1670が作成される(S43)。作成された訓練データ1670は、推論モデル構築装置1600に提供される。
【0198】
推論モデル構築装置1600の学習処理部1610は、ステップS43で作成された訓練データ1670を用いた機械学習をニューラルネットワーク1620に適用することにより、機械学習モデルを構築する(S44)。構築された機械学習モデルは、医療データ処理システム1000の評価部1200に提供される(S45)。
【0199】
第1の動作例と同様に、医療データ取得部1100によって基準データと対象データとが準備される(S46、S47)。評価部1200は、ステップS46で取得された基準データとステップS47で取得された対象データとを、ステップS44で構築された機械学習モデルに入力する(S48)。機械学習モデルは、基準データ及び対象データの入力に対応して整合性評価情報を生成する(S49)。評価部1200は、ステップS49で生成された整合性評価情報に基づいて整合性評価結果を作成してもよい。
【0200】
本動作例によれば、機械学習モデルを用いて基準データと対象データとの間の整合性を評価することができるので、医療データ全体(例えば、或る患者に関する医療データ全体)としての品質の更なる向上を図ることが可能である。
【0201】
図12を参照しつつ第6の動作例を説明する。本動作例は、実施形態に係る医療データ処理方法の1つの態様を提供するものであり、診療ガイドラインに対する医療データの整合性を機械学習モデルを用いて評価する処理の1つの態様を提供するものである。
【0202】
まず、データ収集装置1650が、特定の疾患の診療ガイドラインをデータソース1640から取得する(S51)。ステップS51で取得される診療ガイドラインの種類は、本動作例で構築される機械学習モデルの設計に基づき決定される。
【0203】
ステップS51で取得された診療ガイドラインに基づき訓練データ1670が作成される(S52)。作成された訓練データ1670は、推論モデル構築装置1600に提供される。
【0204】
なお、ステップS51で取得された診療ガイドラインに基づくアノテーションを行う場合には、この診療ガイドラインはアノテーション装置1660に送られる。この場合、ステップS51で取得された診療ガイドラインとアノテーション装置1660により生成されたアノテーション情報とに基づいて訓練データ1670が作成される(S52)。
【0205】
推論モデル構築装置1600の学習処理部1610は、ステップS52で作成された訓練データ1670を用いた機械学習をニューラルネットワーク1620に適用することにより、機械学習モデルを構築する(S53)。構築された機械学習モデルは、医療データ処理システム1000の評価部1200に提供される(S54)。
【0206】
第1の動作例と同様に、医療データ取得部1100によって対象データが準備される(S55)。評価部1200は、ステップS55で取得された対象データを、ステップS53で構築された機械学習モデルに入力する(S56)。機械学習モデルは、対象データの入力に対応して整合性評価情報を生成する(S57)。評価部1200は、ステップS57で生成された整合性評価情報に基づいて整合性評価結果を作成してもよい。
【0207】
本動作例によれば、機械学習モデルを用いて診療ガイドライン(基準データ)に対する対象データの整合性を評価することができるので、医療データ全体(例えば、或る患者に関する医療データ全体)としての品質の更なる向上を図ることが可能である。
【0208】
図13を参照しつつ第7の動作例を説明する。本動作例は、実施形態に係る医療データ処理方法の1つの態様を提供するものであり、診療ガイドラインに対する医療データの整合性を評価する処理の1つの態様を提供するものである。
【0209】
まず、医療データ取得部1100が、特定の疾患の診療ガイドラインを取得し(S61)、この診療ガイドラインを含む基準データを準備する(S62)。また、第1の動作例と同様に、医療データ取得部1100によって対象データが準備される(S63)。
【0210】
評価部1200は、ステップS62で作成された基準データ中の診療ガイドラインに含まれる所定の事項が、ステップS63で取得された対象データに含まれているか判定する(S64)。更に、評価部1200は、ステップS64の判定の結果に基づいて、ステップS62で作成された基準データ中の診療ガイドラインと、ステップS63で取得された対象データとの間の整合性の評価を実行する(S65)。
【0211】
本動作例によれば、対象データが診療ガイドライン(基準データ)に則したものであるか評価することができるので、医療データ全体(例えば、或る患者に関する医療データ全体)としての品質の向上を図ることが可能である。
【0212】
図14を参照しつつ第8の動作例を説明する。本動作例は、実施形態に係る医療データ処理方法の1つの態様を提供するものであり、診療ガイドラインに対する医療データの整合性を機械学習モデルを用いて評価する処理の1つの態様を提供するものである。
【0213】
まず、第6の動作例と同様に、データ収集装置1650は、特定の疾患の診療ガイドラインをデータソース1640から取得する(S71)。更に、データ収集装置1650は、第5の動作例と同様に、訓練データ作成用のデータをデータソース1640から収集する(S72)。ステップS72で収集されるデータは、後述のステップS76で準備される対象データと同種のデータであってよい。
【0214】
ステップS71で取得された診療ガイドラインとステップS72で収集されたデータとに基づいて訓練データ1670が作成される(S73)。作成された訓練データ1670は、推論モデル構築装置1600に提供される。
【0215】
ステップS71で取得された診療ガイドライン及び/又はステップS72で取得されたデータに基づくアノテーションを行う場合、当該診療ガイドライン及び/又は当該データがアノテーション装置1660に送られる。この場合、ステップS71で取得された診療ガイドライン、ステップS72で収集されたデータ、及びアノテーション装置1660により生成されたアノテーション情報に基づいて、訓練データ1670が作成される(S73)。
【0216】
推論モデル構築装置1600の学習処理部1610は、ステップS73で作成された訓練データ1670を用いた機械学習をニューラルネットワーク1620に適用することにより、機械学習モデルを構築する(S74)。この機械学習モデルは、医療データと診療ガイドラインとを対照する(比較する)機能を有するものである。ステップS74で構築された機械学習モデルは、医療データ処理システム1000の評価部1200に提供される(S75)。
【0217】
第1の動作例と同様に、医療データ取得部1100によって対象データが準備される(S76)。評価部1200は、ステップS76で取得された対象データを、ステップS74で構築された機械学習モデルに入力する(S77)。機械学習モデルは、対象データの入力に対応して整合性評価情報を生成する(S78)。この整合性評価情報は、ステップS76で取得された対象データと、ステップS71で取得された診療ガイドラインとを対照した結果を示す情報(対照情報)を含む。評価部1200は、ステップS78で生成された整合性評価情報に基づいて整合性評価結果を作成する(S79)。
【0218】
本動作例によれば、対象データが診療ガイドライン(基準データ)に則したものであるか否かの評価を機械学習モデルを用いて実行することができるので、医療データ全体(例えば、或る患者に関する医療データ全体)としての品質の更なる向上を図ることが可能である。
【0219】
<医療データ処理装置>
実施形態に係る医療データ処理装置の幾つかの例示的な態様について説明する。
【0220】
幾つかの例示的な態様において、医療データ処理装置は、図2の医療データ処理システム1000又は図6の医療データ処理システム1000Aと同様の構成を備えていてよい。なお、医療データ処理装置は、図1の医療データ処理システム1000のように医療機関内情報システムの要素であってもよいが、インターネットなどの広域ネットワーク上に設けられていてもよい。広域ネットワーク上に配置された医療データ処理装置は、例えば、複数の医療機関内情報システムに対してクラウドサービスを提供するように構成されていてもよい。
【0221】
実施形態に係る医療データ処理装置の動作、作用、及び効果は、実施形態に係る医療データ処理システムのそれらと同様であるから、上記した様々な例示的な態様の医療データ処理システムに関する記載を参照されたい。また、医療データ処理システムに関する任意の事項を医療データ処理装置に組み合わせることができる。
【0222】
実施形態に係る医療データ処理装置は、第1の医療データ(基準データ)と第2の医療データ(対象データ)とを受け付ける受付部を含んでいる。この受付部は、図2の医療データ取得部1100と同様であってよい。なお、複数の医療機関内情報システムに対してクラウドサービスを提供する医療データ処理装置においては、受付部は、広域ネットワークを介して各医療機関内情報システムとの間でデータ通信を行うための通信デバイスを備えている。
【0223】
医療データ処理装置の評価部は、図2の評価部1200と同様に、第1の医療データと第2の医療データとの間の整合性の評価を実行するように構成されている。ここで、第1の医療データは、医療従事者により入力された第1の入力データ(基準入力データ)、医学検査により取得されたデータに基づき取得された第1の検査データ(基準検査データ)、及び、予め作成された標準データのいずれかを含んでおり、また、第2の医療データは、医療従事者により入力された第2の入力データ(対象入力データ)、及び/又は、医学検査により取得されたデータに基づき取得された第2の検査データ(対象検査データ)を含んでいる(図3を参照)。
【0224】
幾つかの例示的な態様において、医療データ処理装置は、評価部により実行された整合性評価の結果に基づいて第1の医療データ及び/又は第2の医療データにアノテーション情報を付与するアノテーション部を更に含んでいてもよい。このアノテーション部は、図2のアノテーション部1300と同様であってよい。
【0225】
幾つかの例示的な態様において、医療データ処理装置の受付部は、第2の医療データの第2の入力データとして、医療従事者が現在実施している作業において入力された新たなデータを受け付けることができる。更に、評価部は、受付部により新たなデータが受け付けられたことに対応して、第1の医療データと当該新たなデータとの間の整合性の評価を実行するように構成されていてよい。
【0226】
幾つかの例示的な態様において、医療データ処理装置の受付部は、医学検査により取得されたデータを受け付けることができる。更に、医療データ処理装置は、受付部により受け付けられた当該データに基づき検査データを取得する検査データ取得部を更に含んでいてよい。この検査データ取得部は、図2の検査データ取得部1110と同様であってよい。本態様において、第1の医療データが第1の検査データを含む場合、この第1の検査データは検査データ取得部により取得されてよく、及び/又は、第2の医療データが第2の検査データを含む場合、この第2の検査データは検査データ取得部により取得されてよい。
【0227】
幾つかの例示的な態様において、医療データ処理装置の評価部は、第1の機械学習モデルを含んでいてよい。第1の機械学習モデルは、第1の医療データと同種の第1の種類のデータ及び第2の医療データと同種の第2の種類のデータを含む訓練データを用いた機械学習によって構築される。更に、第1の機械学習モデルは、少なくとも第1の医療データ及び第2の医療データの入力を受けて整合性評価情報を出力するように機能するものである。
【0228】
幾つかの例示的な態様において、第1の医療データは、標準データとして、特定の疾患の診療ガイドラインを含んでいてよい。更に、医療データ処理装置の評価部は、第2の機械学習モデルを含んでいてよい。第2の機械学習モデルは、この診療ガイドラインを含む訓練データを用いた機械学習によって構築され、少なくとも第2の医療データの入力を受けて整合性評価情報を出力するように機能するものである。
【0229】
幾つかの例示的な態様において、第1の医療データは、標準データとして、特定の疾患の診療ガイドラインを含んでいてよい。更に、医療データ処理装置の評価部は、この診療ガイドラインに記載されている所定の事項に関する情報が第2の医療データに含まれているか判定することによって、この診療ガイドラインに対する第2の医療データの整合性の評価を行うように構成されていてよい。本態様の評価部は、少なくとも部分的に機械学習モデルを用いて整合性評価を行うように構成されてもよいし、機械学習モデルを用いることなく整合性評価を行うように構成されてもよい。
【0230】
<医療データ処理方法>
実施形態の医療データ処理システム、その例示的な態様、実施形態の医療データ処理装置、その例示的な態様などによれば、様々な医療データ処理方法を実現することが可能である。その幾つかの例示的な態様を以下に説明する。
【0231】
実施形態に係る医療データ処理方法の工程、作用、及び効果は、実施形態に係る医療データ処理システムのそれらと同様であるから、上記した様々な例示的な態様の医療データ処理システムに関する記載を参照されたい。また、医療データ処理システムに関する任意の事項を医療データ処理方法に組み合わせることができる。
【0232】
実施形態に係る医療データ処理方法は、患者の診療を支援するために医療データを処理する方法であって、以下に示す工程を含んでいる:(1)コンピュータが、医療従事者により入力された第1の入力データ、医学検査により取得されたデータに基づき取得された第1の検査データ、及び、予め作成された標準データのいずれかを含む第1の医療データを準備する工程;(2)コンピュータが、医療従事者により入力された第2の入力データ、及び、医学検査により取得されたデータに基づき取得された第2の検査データのいずれかを含む第2の医療データを準備する工程;(3)コンピュータが、第1の医療データと第2の医療データとの間の整合性の評価を実行する工程。図7に示す医療データ処理システム1000の動作例は、この医療データ処理方法の1つの例を提供するものである。
【0233】
幾つかの例示的な態様において、医療データ処理方法は、コンピュータが、整合性の評価の結果に基づいて第1の医療データ及び/又は第2の医療データにアノテーション情報を付与する工程を更に含んでいてもよい。図8に示す医療データ処理システム1000の動作例は、この医療データ処理方法の1つの例を提供するものである。
【0234】
幾つかの例示的な態様において、第2の医療データを準備する工程は、コンピュータが、第2の入力データとして、医療従事者が現在実施している作業において入力された新たなデータを受け付ける工程を含んでいてもよい。更に、整合性の評価を実行する工程は、コンピュータが、この新たなデータが受け付けられたことに対応して、第1の医療データとこの新たなデータとの間の整合性の評価を実行する工程を含んでいてもよい。図9に示す医療データ処理システム1000の動作例は、この医療データ処理方法の1つの例を提供するものである。
【0235】
幾つかの例示的な態様において、第1の検査データを準備する工程、及び/又は、第2の検査データを準備する工程は、コンピュータが、医学検査により取得されたデータを準備する工程と、コンピュータが、この医学検査により取得されたこのデータに基づき検査データを取得する工程とを含んでいてもよい。図10に示す医療データ処理システム1000の動作例は、この医療データ処理方法の1つの例を提供するものである。
【0236】
幾つかの例示的な態様において、整合性の評価を実行する工程は、第1の機械学習モデルを用いて実行されてもよい。この第1の機械学習モデルは、第1の医療データと同種の第1の種類のデータ及び第2の医療データと同種の第2の種類のデータを含む訓練データを用いた機械学習によって構築され、少なくとも第1の医療データ及び第2の医療データの入力を受けて整合性評価情報を出力するように機能するものである。図11に示す医療データ処理システム1000の動作例は、この医療データ処理方法の1つの例を提供するものである。
【0237】
幾つかの例示的な態様において、第1の医療データは、標準データとして、特定の疾患の診療ガイドラインを含んでいてもよい。更に、整合性の評価を実行する工程は、第2の機械学習モデルを用いて実行されてもよい。この第2の機械学習モデルは、この診療ガイドラインを含む訓練データを用いた機械学習によって構築され、少なくとも第2の医療データの入力を受けて整合性評価情報を出力するように機能するものである。図12に示す医療データ処理システム1000の動作例は、この医療データ処理方法の1つの例を提供するものである。
【0238】
幾つかの例示的な態様において、第1の医療データは、標準データとして、特定の疾患の診療ガイドラインを含んでいてもよい。更に、整合性の評価を実行する工程は、コンピュータが、この診療ガイドラインに記載されている所定の事項に関する情報が第2の医療データに含まれているか判定する工程を含んでいてもよい。図13及び図14に示す医療データ処理システム1000の動作例は、この医療データ処理方法の2つの例を提供するものである。
【0239】
<プログラム・記録媒体>
本開示で説明された任意の1つ以上の処理(工程)をコンピュータに実行させるプログラムを構成することが可能である。また、そのようなプログラムを記録した記録媒体を作成することが可能である。記録媒体は、コンピュータによって読み取り可能な非一時的記録媒体である。このような記録媒体の形態は任意であり、その例として、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリなどがある。
【0240】
本開示は、実施形態の幾つかの例示的な態様を提示するものである。これらの態様は、本発明の例示に過ぎない。したがって、本発明の要旨の範囲内における任意の変形(省略、置換、付加など)を本開示に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0241】
1000 医療データ処理システム
1100 医療データ取得部
1110 検査データ取得部
1200、1200A 評価部
1210 判定部
1220 推論モデル
1300 アノテーション部
1400、1400A 出力部
1410 表示制御部
1420 送信部
1500 ユーザーインターフェイス
1510 表示装置
1520 操作装置

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