(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011478
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/49 20070101AFI20240118BHJP
【FI】
H02M7/49
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113461
(22)【出願日】2022-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】512280080
【氏名又は名称】AZAPA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(72)【発明者】
【氏名】守屋 一成
(72)【発明者】
【氏名】楊 偉佳
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770BA01
5H770DA03
5H770DA23
5H770DA41
5H770DA44
5H770HA02W
5H770HA02Y
5H770HA03X
5H770JA11X
(57)【要約】
【課題】単位モジュールの蓄電部を適切に充電することが容易な電力変換装置を提供する。
【解決手段】電力変換装置1は、レグ2と、直流電圧源4と、制御部5とを備え、上アーム3H及び下アーム3Lの各単位モジュールEMは、端子T1,T2と、第一蓄電部B1と、加入状態と離脱状態とを含む接続状態を切り換える第一切換回路SW1,SW2とを含み、直流電圧源4の各蓄電ブロックBBは、端子T3,T4と、第二蓄電部B2と、加入状態と離脱状態とを含む接続状態を切り換える第二切換回路SW1,SW2とを含み、制御部5は、接続状態の切り替えを制御することによって、レグ2に所定の電力を出力させ、接続状態の切り替えを制御することによって、直流電圧源4とレグ2との間での電荷の移動を制御する電力変換装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上アームとインダクタと下アームとが、この順に直列接続されたレグと、
複数の蓄電ブロックが直列接続された直列回路を含むと共に、前記レグと並列に接続された直流電圧源と、
制御部とを備え、
前記上アーム及び前記下アームのそれぞれは、複数の単位モジュールが直列接続された直列回路を含み、
前記各単位モジュールは、
第一及び第二端子と、
電荷を蓄える第一蓄電部と、
前記第一及び第二端子へ前記第一蓄電部を接続する加入状態と前記第一及び第二端子間を短絡する離脱状態とを含む接続状態を切り換える第一切換回路とを含み、
前記各蓄電ブロックは、
第三及び第四端子と、
電荷を蓄える第二蓄電部と、
前記第三及び第四端子へ前記第二蓄電部を接続する加入状態と前記第三及び第四端子間を短絡する離脱状態とを含む接続状態を切り換える第二切換回路とを含み、
前記制御部は、
前記各第一切換回路による接続状態の切り替えを制御することによって、前記レグに所定の電力を出力させ、
前記各第一切換回路及び/又は前記各第二切換回路による接続状態の切り替えを制御することによって、前記直流電圧源と前記レグとの間での電荷の移動を制御する電力変換装置。
【請求項2】
前記各第一蓄電部及び前記各第二蓄電部は、二次電池であり、
前記各第二蓄電部は、前記各第一蓄電部よりも蓄電容量が大きい請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記各第一蓄電部は、前記各第二蓄電部よりも電流定格が大きい請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記直流電圧源の電圧を相対的に上昇させるように前記各第一切換回路及び/又は前記各第二切換回路による前記接続状態の切り替えを制御することによって、前記直流電圧源から前記レグへ電荷を移動させる請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記レグから外部へ出力された電荷量と略同一の電荷量を、前記直流電圧源から前記レグへ移動させるように、前記各第一切換回路及び/又は前記各第二切換回路による前記接続状態の切り替えを制御する請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記レグに含まれる前記第一蓄電部の開放端電圧の合計が、予め設定された第一基準電圧を下回った場合、前記直流電圧源の出力電圧を相対的に上昇させるように前記各第一切換回路及び/又は前記各第二切換回路による前記接続状態の切り替えを制御することによって、前記直流電圧源から前記レグへ電荷を移動させる請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記直流電圧源の電圧を相対的に低下させるように前記各第一切換回路及び/又は前記各第二切換回路による前記接続状態の切り替えを制御することによって、前記レグから前記直流電圧源へ電荷を移動させる請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記制御部は、外部から前記レグへ入力された電荷量と略同一の電荷量を、前記レグから前記直流電圧源へ移動させるように、前記各第一切換回路及び/又は前記各第二切換回路による前記接続状態の切り替えを制御する請求項7に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記レグに含まれる前記第一蓄電部の開放端電圧の合計が、予め設定された第二基準電圧を上回った場合、前記直流電圧源の出力電圧を相対的に低下させるように前記各第一切換回路及び/又は前記各第二切換回路による前記接続状態の切り替えを制御することによって、前記レグから前記直流電圧源へ電荷を移動させる請求項7に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記制御部は、さらに、前記レグ内における前記上アームの電圧と、前記レグ内における前記下アームの電圧との比率を変化させることによって、前記レグによる電力変換を制御する請求項1~9のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項11】
前記各第一切換回路は、ハーフブリッジ又はフルブリッジのブリッジ回路であり、
前記各第二切替回路は、ハーフブリッジ又はフルブリッジのブリッジ回路である請求項1~9のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項12】
前記レグを複数備え、
前記複数のレグは並列接続され、
前記制御部は、さらに、前記各レグに含まれる前記第一蓄電部の開放端電圧の合計値を比較し、相対的に前記合計値が大きいレグの電圧を相対的に上昇させるように前記各レグの第一切換回路による前記接続状態の切り替えを制御することによって、前記相対的に前記合計値が大きいレグから、前記相対的に前記合計値が小さいレグへ電荷を移動させる請求項1~9のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項13】
前記レグを三つ備え、
前記三つのレグは、互いに並列接続されて三相インバータを構成する請求項1~9のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換を行う電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、直流-交流変換を行うインバータとして、単位モジュールを複数直列接続したモジュールを組み合わせる、モジュラーマルチレベル変換器(MMC:Modular Multilevel Converter)が用いられている(例えば、特許文献1参照。)。モジュラーマルチレベル変換器は、単位モジュールに含まれるキャパシタの端子電圧を加算することによって、任意の出力電圧を出力可能とされている。モジュラーマルチレベル変換器を用いたインバータは、電気自動車やハイブリッド車等の電動車両に、好適に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、単位モジュールのキャパシタは、放電すると端子電圧が低下する。そのため、モジュラーマルチレベル変換器を継続動作させるためには、単位モジュールのキャパシタを適切に充電する必要がある。
【0005】
本発明の目的は、単位モジュールの蓄電部を適切に充電することが容易な電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電力変換装置は、上アームとインダクタと下アームとが、この順に直列接続されたレグと、複数の蓄電ブロックが直列接続された直列回路を含むと共に、前記レグと並列に接続された直流電圧源と、制御部とを備え、前記上アーム及び前記下アームのそれぞれは、複数の単位モジュールが直列接続された直列回路を含み、前記各単位モジュールは、第一及び第二端子と、電荷を蓄える第一蓄電部と、前記第一及び第二端子へ前記第一蓄電部を接続する加入状態と前記第一及び第二端子間を短絡する離脱状態とを含む接続状態を切り換える第一切換回路とを含み、前記各蓄電ブロックは、第三及び第四端子と、電荷を蓄える第二蓄電部と、前記第三及び第四端子へ前記第二蓄電部を接続する加入状態と前記第三及び第四端子間を短絡する離脱状態とを含む接続状態を切り換える第二切換回路とを含み、前記制御部は、前記各第一切換回路による接続状態の切り替えを制御することによって、前記レグに所定の電力を出力させ、前記各第一切換回路及び/又は前記各第二切換回路による接続状態の切り替えを制御することによって、前記直流電圧源と前記レグとの間での電荷の移動を制御する。
【0007】
この構成によれば、加入状態とされた単位モジュールの第一蓄電部は直列接続され、離脱状態とされた単位モジュールの第一蓄電部は直列接続されない。従って、第一切換回路によって、加入状態の単位モジュールの数を増減することによって、レグの電圧を制御することが可能となる。同様に、加入状態とされた蓄電ブロックの第二蓄電部は直列接続され、離脱状態とされた蓄電ブロックの第二蓄電部は直列接続されない。従って、第一切換回路によって、加入状態の単位モジュールの数を増減することによって、レグの電圧を制御することが可能となる。第二切換回路によって、加入状態の蓄電ブロックの数を増減することによって、直流電圧源の電圧を制御することが可能となる。そして、レグと直流電圧源とは並列に接続されているので、直流電圧源の電圧をレグの電圧より相対的に高くすれば直流電圧源からレグへ電荷を移動させてレグの単位モジュールを充電することができる。従って、単位モジュールの蓄電部を適切に充電することが容易となる。
【0008】
また、前記各第一蓄電部及び前記各第二蓄電部は、二次電池であり、前記各第二蓄電部は、前記各第一蓄電部よりも蓄電容量が大きいことが好ましい。
【0009】
この構成によれば、外部へ電力を出力するレグ内の第一蓄電部は、第二蓄電部よりも蓄電容量が小さくてよいので、蓄電容量よりもレグによる電力変換に適した性能の二次電池を第一蓄電部として用いることが容易となる。
【0010】
また、前記各第一蓄電部は、前記各第二蓄電部よりも電流定格が大きいことが好ましい。
【0011】
この構成によれば、負荷変動に応じてレグから供給可能な瞬時電力を増大させつつ、直流電圧源の第二蓄電部からレグへ平均電力に相当する電荷を移動させ、レグ内の第一蓄電部を充電することが容易となる。
【0012】
また、前記制御部は、前記直流電圧源の電圧を相対的に上昇させるように前記各第一切換回路及び/又は前記各第二切換回路による前記接続状態の切り替えを制御することによって、前記直流電圧源から前記レグへ電荷を移動させることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、制御部は、加入状態の蓄電ブロック数を増加させることによって直流電圧源の電圧を上昇させることができ、加入状態の単位モジュール数を減少させることによってレグの電圧を低下させることができる。従って、制御部は、各第一切換回路及び/又は各第二切換回路による接続状態の切り替えを制御して直流電圧源の電圧を相対的に上昇させることによって、直流電圧源からレグへ電荷を移動させることができる。
【0014】
また、前記制御部は、前記レグから外部へ出力された電荷量と略同一の電荷量を、前記直流電圧源から前記レグへ移動させるように、前記各第一切換回路及び/又は前記各第二切換回路による前記接続状態の切り替えを制御することが好ましい。
【0015】
この構成によれば、レグから外部へ出力された電荷量と略同一の電荷量を、直流電圧源からレグへ移動させることができるので、レグによる外部への電力出力を継続することが可能となる。
【0016】
また、前記制御部は、前記レグに含まれる前記第一蓄電部の開放端電圧の合計が、予め設定された第一基準電圧を下回った場合、前記直流電圧源の出力電圧を相対的に上昇させるように前記各第一切換回路及び/又は前記各第二切換回路による前記接続状態の切り替えを制御することによって、前記直流電圧源から前記レグへ電荷を移動させることが好ましい。
【0017】
第一蓄電部が放電すると開放端電圧が低下する。従って、レグに含まれる第一蓄電部の開放端電圧の合計が第一基準電圧を下回った場合、直流電圧源の出力電圧を相対的に上昇させて直流電圧源からレグへ電荷を移動させることによって、レグによる外部への電力出力を継続することが可能となる。
【0018】
また、前記制御部は、前記直流電圧源の電圧を相対的に低下させるように前記各第一切換回路及び/又は前記各第二切換回路による前記接続状態の切り替えを制御することによって、前記レグから前記直流電圧源へ電荷を移動させることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、制御部は、加入状態の蓄電ブロック数を減少させることによって直流電圧源の電圧を低下させることができ、加入状態の単位モジュール数を増加させることによってレグの電圧を上昇させることができる。従って、制御部は、各第一切換回路及び/又は各第二切換回路による接続状態の切り替えを制御して直流電圧源の電圧を相対的に低下させることによって、レグから直流電圧源へ電荷を移動させることができる。
【0020】
また、前記制御部は、外部から前記レグへ入力された電荷量と略同一の電荷量を、前記レグから前記直流電圧源へ移動させるように、前記各第一切換回路及び/又は前記各第二切換回路による前記接続状態の切り替えを制御することが好ましい。
【0021】
例えばモータの回生電力等、外部からレグへ電力が入力される場合がある。この構成によれば、外部からレグへ入力された電荷量と略同一の電荷量を、レグから直流電圧源へ移動させることができるので、外部からの電力の受け入れを継続することが可能となる。
【0022】
また、前記制御部は、前記レグに含まれる前記第一蓄電部の開放端電圧の合計が、予め設定された第二基準電圧を上回った場合、前記直流電圧源の出力電圧を相対的に低下させるように前記各第一切換回路及び/又は前記各第二切換回路による前記接続状態の切り替えを制御することによって、前記レグから前記直流電圧源へ電荷を移動させることが好ましい。
【0023】
第一蓄電部の充電量が増大すると開放端電圧が上昇する。従って、レグに含まれる第一蓄電部の開放端電圧の合計が第二基準電圧を上回った場合、直流電圧源の出力電圧を相対的に低下させてレグから直流電圧源へ電荷を移動させることによって、レグによる外部からの電力受け入れを継続することが可能となる。
【0024】
また、前記制御部は、さらに、前記レグ内における前記上アームの電圧と、前記レグ内における前記下アームの電圧との比率を変化させることによって、前記レグによる電力変換を制御することが好ましい。
【0025】
レグ内における上アームの電圧と、レグ内における下アームの電圧との比率は、レグの両端電圧とは独立して変化させることが可能である。従って、この構成によれば、レグの両端電圧とは独立してレグの出力電圧を変化させ、電力変換を行うことが可能となる。その結果、レグによる電力変換動作と、直流電圧源とレグの間での電荷の移動とを並行して行うことが可能となる。
【0026】
また、前記各第一切換回路は、ハーフブリッジ又はフルブリッジのブリッジ回路であり、前記各第二切替回路は、ハーフブリッジ又はフルブリッジのブリッジ回路であることが好ましい。
【0027】
ハーフブリッジの第一切換回路は、単位モジュールの接続状態を、加入状態と離脱状態とに切り替えることができる。フルブリッジの第一切換回路は、単位モジュールの接続状態を、加入状態及び離脱状態に加えて、加入状態とは逆極性で第一及び第二端子へ第一蓄電部を接続する反転状態に切り替えることができる。ハーフブリッジの第二切換回路は、蓄電ブロックの接続状態を、加入状態と離脱状態とに切り替えることができる。フルブリッジの第二切換回路は、蓄電ブロックの接続状態を、加入状態及び離脱状態に加えて、加入状態とは逆極性で第三及び第四端子へ第二蓄電部を接続する反転状態に切り替えることができる。
【0028】
また、前記レグを複数備え、前記複数のレグは並列接続され、前記制御部は、さらに、前記各レグに含まれる前記第一蓄電部の開放端電圧の合計値を比較し、相対的に前記合計値が大きいレグの電圧を相対的に上昇させるように前記各レグの第一切換回路による前記接続状態の切り替えを制御することによって、前記相対的に前記合計値が大きいレグから、前記相対的に前記合計値が小さいレグへ電荷を移動させることが好ましい。
【0029】
この構成によれば、レグが複数並列接続されているので、複数のレグによる、より複雑な電力変換を行うことが可能となる。
【0030】
また、前記レグを三つ備え、前記三つのレグは、互いに並列接続されて三相インバータを構成することが好ましい。
【0031】
この構成によれば、三相交流電力を出力することが可能となる。
【発明の効果】
【0032】
このような構成の電力変換装置は、単位モジュールの蓄電部を適切に充電することが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電力変換装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示す単位モジュールEM及び蓄電ブロックBBの構成の一例を示す概念的な回路図である。
【
図3】第一切換回路、第二切換回路としてフルブリッジを用いた単位モジュールEM、蓄電ブロックBBの一例を示す概念的な回路図である。
【
図4】
図1に示す電力変換装置の出力制御に係る動作の一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図1に示す電力変換装置の回生制御に係る動作の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図1に示す電力変換装置のバランス制御に係る動作の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図1に示す電力変換装置の動作を説明するための説明図である。
【
図8】
図1に示す電力変換装置の動作を説明するための説明図である。
【
図9】
図1に示す電力変換装置の動作を説明するための説明図である。
【
図10】
図1に示す電力変換装置の動作を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係る電力変換装置の構成の一例を示すブロック図である。
【0035】
図1に示す電力変換装置1は、大略的に、レグ2u,2v,2wと、直流電圧源4と、キャパシタCと、制御部5と、電流センサ7と、外部端子Tu,Tv,Twとを備えている。レグ2u,2v,2wが並列接続されて、三相インバータ6が構成されている。三相インバータ6、キャパシタC、及び直流電圧源4は、高電位側の電力線WHと、低電位側の電力線WLによって、並列接続されている。
【0036】
電流センサ7は、直流電圧源4と三相インバータ6との間を流れる電流を検出し、その電流値を制御部5へ送信する。キャパシタCは、平滑や電圧安定化等を行う。なお、電力変換装置1は、必ずしもキャパシタCを備えていなくてもよく、電流センサ7を備えていなくてもよい。
【0037】
レグ2uは、上アーム3HとインダクタLと下アーム3Lとが、この順に直列接続されて構成されている。レグ2v,2wは、レグ2uと同様に構成されているのでその説明を省略する。以下、レグ2u,2v,2wを総称してレグ2と称する。
【0038】
レグ2uのインダクタLの中点が外部端子Tuと接続され、レグ2vのインダクタLの中点が外部端子Tvと接続され、レグ2wのインダクタLの中点が外部端子Twと接続されている。これにより、外部端子Tu,Tv,Twが、電力変換装置1の三相電力出力端子、又は三相回生電流入力端子として機能する。外部端子Tu,Tv,Twには、例えば三相モータ等の、種々の三相電力負荷を接続することができ、電力変換装置1を電動車両に搭載してもよい。
【0039】
インダクタLは、例えばセンタータップ付リアクトルであってもよく、二つのインダクタを直列接続し、その接続点を外部端子Tu,Tv,Twに接続したものであってもよい。
【0040】
上アーム3H及び下アーム3Lのそれぞれは、複数の単位モジュールEMが直列接続された直列回路を含んでいる。
図1に示す例では、上アーム3H及び下アーム3Lは、複数の単位モジュールEMが直列接続された直列回路のみから構成される例を示しているが、上アーム3H及び下アーム3Lは、単位モジュールEMの直列回路を含んでいればよく、単位モジュールEMの直列回路以外のものを含んでいてもよい。
【0041】
直流電圧源4は、複数の蓄電ブロックBBが直列接続された直列回路を含んでいる。
図1に示す例では、直流電圧源4は、複数の蓄電ブロックBBが直列接続された直列回路のみから構成される例を示しているが、直流電圧源4は、蓄電ブロックBBの直列回路を含んでいればよく、蓄電ブロックBBの直列回路以外のものを含んでいてもよい。
【0042】
図2は、
図1に示す単位モジュールEM及び蓄電ブロックBBの構成の一例を示す概念的な回路図である。
図2では、蓄電ブロックBBに係る構成の符号を括弧書きで示している。
【0043】
レグ2の単位モジュールEMは、端子T1(第一端子)、端子T2(第二端子)、電荷を蓄える第一蓄電部B1、端子T1及び端子T2への第一蓄電部B1の電気的な接続状態を切り換えるスイッチング素子SW1,SW2(第一切換回路)とを含んでいる。スイッチング素子SW1,SW2は、第一切換回路及び第二切換回路の一例であり、
図2に示す例では、ハーフブリッジを構成している。
【0044】
具体的には、第一蓄電部B1とスイッチング素子SW1とが直列接続され、第一蓄電部B1とスイッチング素子SW1の直列回路と並列にスイッチング素子SW2が接続されている。スイッチング素子SW1とスイッチング素子SW2の接続点が端子T1に接続され、スイッチング素子SW2と第一蓄電部B1の接続点が端子T2に接続されている。
【0045】
端子T1は、自モジュールよりも高電位側の単位モジュールEMの端子T2に接続され、端子T2は、自モジュールよりも低電位側の単位モジュールEMの端子T1に接続される。これにより、複数の単位モジュールEMが直列接続されている。
【0046】
上アーム3H内で最も高電位側の単位モジュールEMの端子T1は電力線WHに接続され、上アーム3H内で最も低電位側の単位モジュールEMの端子T2はインダクタLの一端に接続される。下アーム3L内で最も高電位側の単位モジュールEMの端子T1はインダクタLの他端に接続され、下アーム3L内で最も低電位側の単位モジュールEMの端子T2は電力線WLに接続される。
【0047】
スイッチング素子SW1,SW2としては、種々のスイッチング素子を用いることができ、例えばトランジスタ等の半導体スイッチング素子を好適に用いることができる。スイッチング素子SW1,SW2は、制御部5からの制御信号に応じてオン、オフする。
【0048】
第一蓄電部B1としては、種々の二次電池を好適に用いることができ、単電池に限られず、複数の二次電池を組み合わせた組電池を第一蓄電部B1として用いてもよい。
【0049】
直流電圧源4の蓄電ブロックBBは、単位モジュールEMとは、第一蓄電部B1の代わりに第二蓄電部B2を用いる点、端子T1及び端子T2の代わりに端子T3(第三端子)及び端子T4(第四端子)を用いる点が異なる。その他の点では蓄電ブロックBBは、単位モジュールEMと同様に構成されているのでその説明を省略する。
【0050】
第二蓄電部B2としては、種々の二次電池を好適に用いることができ、単電池に限られず、複数の二次電池を組み合わせた組電池を第二蓄電部B2として用いてもよい。
【0051】
第一蓄電部B1としては、第二蓄電部B2よりも電流定格が大きい二次電池が用いられ、第二蓄電部B2としては、第一蓄電部B1よりも蓄電容量が大きい二次電池が用いられる。
【0052】
レグ2u,2v,2wの第一蓄電部B1は、三相交流等に変換された電圧波形で負荷へ電力を供給するので、負荷変動に追従して瞬間的に大電流を流す必要がある。そのため、第一蓄電部B1は、電流定格が大きい二次電池であることが好ましい。しかしながら、電流定格と、蓄電容量とが共に大きな二次電池は、入手が困難であったり、高価であったりする。
【0053】
そこで、第一蓄電部B1を、電流定格が大きく、蓄電容量が小さな二次電池とすれば、負荷変動への追従性を確保しつつ、入手性やコスト低減が容易となる。
【0054】
一方、直流電圧源4は、略直流電圧でレグ2u,2v,2wへ電力を供給するので、直流電圧源4の第二蓄電部B2は、略平均的な電流を出力すればよく、第一蓄電部B1のように、瞬間的に大電流を出力する必要性は低い。電流定格が小さく蓄電容量が大きい二次電池は、電流定格が大きく蓄電容量が大きい二次電池よりも、入手し易く、安価である。
【0055】
そこで、第二蓄電部B2を、第一蓄電部B1よりも、電流定格が小さく蓄電容量が大きい二次電池とすれば、第一蓄電部B1の蓄電容量の小ささを、第二蓄電部B2の大きな蓄電容量で補いつつ、電流定格が大きい第一蓄電部B1によって、負荷変動への追従性を確保することが容易となる。
【0056】
なお、第一蓄電部B1は、電荷を蓄えることができればよく、必ずしも二次電池に限られない。例えば、第一蓄電部B1を、電気二重層コンデンサ等のキャパシタで構成してもよい。
【0057】
しかしながら、第一蓄電部B1をキャパシタで構成した場合、第一蓄電部B1を二次電池で構成した場合よりも蓄電容量が小さくなる。第一蓄電部B1の蓄電容量が小さいと、第一蓄電部B1が瞬間的に大電流を放電した場合、速やかに直流電圧源4から第一蓄電部B1へ電荷を移動させて充電する必要が生じるため、電力線WL,WHを流れる電流の瞬時値が大きくなる。電力線WL,WHを流れる電流の瞬時値が大きくなると、電力線WL,WHで生じる電力損失が大きくなる。
【0058】
そこで、第一蓄電部B1を、キャパシタよりも蓄電容量を大きくすることが容易な二次電池とすることによって、第一蓄電部B1が瞬間的に大電流を放電した場合であっても、第一蓄電部B1の蓄電量で賄うことが容易となる。その結果、直流電圧源4から電力線WL,WHを介してレグ2u,2v,2wへ供給される電流の瞬時値が低減され、電力線WL,WHで生じる電力損失を低減することが容易となる。従って、第一蓄電部B1は、キャパシタよりも二次電池であることがより好ましい。
【0059】
端子T3は、自ブロックよりも高電位側の蓄電ブロックBBの端子T4に接続され、端子T4は、自モジュールよりも低電位側の蓄電ブロックBBの端子T3に接続される。これにより、複数の蓄電ブロックBBが直列接続されている。
【0060】
直流電圧源4内で最も高電位側の蓄電ブロックBBの端子T3は電力線WHに接続され、直流電圧源4内で最も低電位側の蓄電ブロックBBの端子T4は電力線WLに接続される。
【0061】
符号Aで示す単位モジュールEM及び蓄電ブロックBBは、接続状態が加入状態とされており、符号Bで示す単位モジュールEM及び蓄電ブロックBBは、接続状態が離脱状態とされている。加入状態ではスイッチング素子SW1がオン、スイッチング素子SW2がオフし、離脱状態ではスイッチング素子SW1がオフ、スイッチング素子SW2がオンする。
【0062】
加入状態の単位モジュールEMにおける第一蓄電部B1は、上アーム3H及び下アーム3Lにおいて直列接続され、離脱状態の単位モジュールEMは短絡される。これにより、上アーム3H、下アーム3Lにおける両端電圧は、上アーム3H、下アーム3Lにおける加入状態の第一蓄電部B1の合計電圧となる。
【0063】
同様に、加入状態の蓄電ブロックBBにおける第二蓄電部B2は直列接続され、離脱状態の蓄電ブロックBBは短絡される。これにより、蓄電ブロックBBから電力線WL,WH間へ出力される電圧は、蓄電ブロックBBにおける加入状態の第二蓄電部B2の合計電圧となる。
【0064】
なお、単位モジュールEMは第一切換回路としてフルブリッジを用いてもよく、蓄電ブロックBBは第二切換回路としてフルブリッジを用いてもよい。
図3は、第一切換回路、第二切換回路としてフルブリッジを用いた単位モジュールEM、蓄電ブロックBBの一例を示す概念的な回路図である。
【0065】
図3に示すフルブリッジの単位モジュールEM、蓄電ブロックBBは、
図2に示すハーフブリッジの単位モジュールEM、蓄電ブロックBBに加えて、さらにスイッチング素子SW3,SW4を備える。スイッチング素子SW3,SW4としては、スイッチング素子SW1,SW2と同様のスイッチング素子を用いることができる。
【0066】
具体的には、スイッチング素子SW3,SW4の直列回路がスイッチング素子SW1,SW2の直列回路と並列に接続されている。スイッチング素子SW1,SW2の接続点が端子T1又は端子T3に接続され、スイッチング素子SW3,SW4の接続点が端子T2又は端子T4に接続されている。スイッチング素子SW1,SW2,SW3,SW4は、フルブリッジの第一切換回路、第二切換回路の一例に相当する。
【0067】
図3に示すフルブリッジの単位モジュールEM、蓄電ブロックBBは、符号Aで示す加入状態、符号Bで示す離脱状態に加えて、符号Cで示す反転状態とすることができる。反転状態の単位モジュールEM、蓄電ブロックBBでは、第一蓄電部B1、第二蓄電部B2が、極性を反転させて接続される。
【0068】
加入状態ではスイッチング素子SW1,SW4がオン、スイッチング素子SW2,SW3がオフし、離脱状態ではスイッチング素子SW1,SW3がオフ、スイッチング素子SW2,SW4がオンし、反転状態ではスイッチング素子SW1,SW4がオフ、スイッチング素子SW2,SW3がオンする。なお、離脱状態ではスイッチング素子SW1,SW3をオン、スイッチング素子SW2,SW4をオフさせてもよい。
【0069】
以下、制御部5が、スイッチング素子SW1,SW2を制御して加入状態及び離脱状態を含む接続状態を制御すること、又はスイッチング素子SW1~SW4を制御して加入状態、離脱状態、及び反転状態を含む接続状態を制御することを、単に、接続状態を制御する、と記載する。
【0070】
図3に示すフルブリッジの単位モジュールEMを用いた場合、上アーム3H、下アーム3Lにおける両端電圧は、上アーム3H、下アーム3Lにおける加入状態の単位モジュールEMの第一蓄電部B1の合計電圧から、反転状態の単位モジュールEMの第一蓄電部B1の合計電圧を減算した電圧となる。
【0071】
同様に、
図3に示すフルブリッジの蓄電ブロックBBを用いた場合、直流電圧源4から電力線WL,WH間へ出力される電圧は、直流電圧源4における加入状態の蓄電ブロックBBの第二蓄電部B2の合計電圧から、反転状態の蓄電ブロックBBの第二蓄電部B2の合計電圧を減算した電圧となる。
【0072】
図1に示す制御部5は、例えば、所定の論理演算を実行するCPU(Central Processing Unit)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)、不揮発性の記憶装置、及びこれらの周辺回路等を備えて構成され、所定のプログラムを実行することによって動作する。
【0073】
制御部5は、各単位モジュールEMにおけるスイッチング素子SW1,SW2(SW3,SW4)による接続状態の切り替えを制御することによって、直流電圧源4から得られた電力をレグ2u,2v,2wで変換させ、あるいは外部から外部端子Tu,Tv,Twで取り込まれた回生電力をレグ2u,2v,2wの第一蓄電部B1に充電する。
【0074】
三相インバータ6、すなわちレグ2u,2v,2wによって、電圧や電圧波形等を変換又は回生する制御方法としては、公知のインバータ制御方法を用いることができ、例えばモジュラーマルチレベル変換器に関する制御方法を用いることができる。
【0075】
また、制御部5は、各蓄電ブロックBB及び/又は各単位モジュールEMにおけるスイッチング素子SW1,SW2(SW3,SW4)による接続状態の切り替えを制御することによって、直流電圧源4とレグ2u,2v,2wとの間での電荷の移動を制御する。また、制御部5は、レグ2u,2v,2w毎の単位モジュールEMにおけるスイッチング素子SW1,SW2(SW3,SW4)による接続状態の切り替えを制御することによって、レグ2u,2v,2w相互間での電荷の移動を制御する。
【0076】
図4は、
図1に示す電力変換装置1の出力制御に係る動作の一例を示すフローチャートである。まず、電力変換装置1から、外部端子Tu,Tv,Twに接続された三相電力負荷へ電力を出力する際の出力制御について説明する。
【0077】
図7~
図10は、
図1に示す電力変換装置1の動作を説明するための説明図である。
図7~
図10では、説明を容易にするため、以下の仮定条件を設定している。すなわち、単位モジュールEM及び蓄電ブロックBBはハーフブリッジを用いるものとし、上アーム3H及び下アーム3Lは、それぞれ単位モジュールEMを四個ずつ備えるものとする。また、直流電圧源4は、レグ2の単位モジュールEMの数と同じ八個の蓄電ブロックBBを備えるものとする。また、各単位モジュールEM及び各蓄電ブロックBBの電圧は、すべて同一として説明する。さらに、各単位モジュールEM及び各蓄電ブロックBBの接続状態について、加入状態をON、離脱状態をOFFと記載している。
【0078】
なお、以上の仮定条件は、説明の都合上設定したものであり、電力変換装置1は、この仮定条件に限定されるものではない。
【0079】
レグ2u,2v,2wと、直流電圧源4とは並列接続されているので、レグ2u,2v,2wの出力電圧(両端電圧)と、直流電圧源4の出力電圧(両端電圧)とは、互いに等しい。しかしながら、レグ2u,2v,2w及び直流電圧源4の開放端電圧は、それぞれ、加入状態の単位モジュールEM又は蓄電ブロックBBの開放端電圧の合計となる。
【0080】
図7~
図10では、レグ2uの開放端電圧をVOu、レグ2vの開放端電圧をVOv、レグ2wの開放端電圧をVOw、直流電圧源4の開放端電圧をVOpsとして示している。
【0081】
開放端電圧VOu,VOv,VOwは、以下のようにして測定することができる。すなわち、電力変換装置1が各第一蓄電部B1の電圧を検出する電圧センサを備え、離脱状態にした単位モジュールEMの第一蓄電部B1の電圧を電圧センサで測定することによって、各第一蓄電部B1の開放端電圧、すなわち各単位モジュールEMの開放端電圧を測定することができる。開放端電圧VOu,VOv,VOwは、レグ2u,2v,2wにおける、レグ毎の加入状態の単位モジュールEMの開放端電圧を合計することによって得られる。
【0082】
開放端電圧VOpsは、以下のようにして測定することができる。すなわち、電力変換装置1が各第二蓄電部B2の電圧を検出する電圧センサを備え、離脱状態にした蓄電ブロックBBの第二蓄電部B2の電圧を電圧センサで測定することによって、各第二蓄電部B2の開放端電圧、すなわち各蓄電ブロックBBの開放端電圧を測定することができる。開放端電圧をVOpsは、直流電圧源4における加入状態の蓄電ブロックBBの開放端電圧を合計することによって得られる。
【0083】
まず、レグ2u,2v,2wの各第一蓄電部B1は、予め充電されている。この状態で、制御部5は、例えば公知のモジュラーマルチレベル変換制御に基づき各単位モジュールEMの接続状態を制御することによって、レグ2u,2v,2wで所定の三相交流電力を生成し、外部端子Tu,Tv,Twに接続された三相電力負荷へ出力する(ステップS1)。
【0084】
図7では、レグ2u,2v,2wにおける加入状態(ON)の単位モジュールEMの数は、それぞれ四個であり、各単位モジュールEMの電圧は同一である。従って、開放端電圧VOu,VOv,VOwは互いに等しく、レグ2u,2v,2w相互間では電荷の移動は原則生じない。また、直流電圧源4における加入状態(ON)の蓄電ブロックBBの数は、レグ2u,2v,2wと同じ四個であり、開放端電圧VOu,VOv,VOwと開放端電圧VOpsとは等しい。従って、直流電圧源4とレグ2との間でも、電荷の移動は原則生じない。
【0085】
この状態で、ステップS1において、制御部5は、レグ2u,2v,2w内における上アーム3Hの電圧と、レグ2u,2v,2w内における下アーム3Lの電圧との比率を変化させることによって、レグ2u,2v,2wによる電力変換を制御する。
図7では、レグ2uにおける上アーム3Hと下アーム3Lの電圧比率は1:3、レグ2vにおける上アーム3Hと下アーム3Lの電圧比率は2:2、レグ2wにおける上アーム3Hと下アーム3Lの電圧比率は3:1となっている。
【0086】
このように、制御部5は、開放端電圧VOu,VOv,VOwが一定のまま、レグ2u,2v,2wから外部端子Tu,Tv,Twへ出力される電圧を互いに異ならせることができる。さらに制御部5は、時間の経過に応じてレグ2u,2v,2w内における上アーム3Hの電圧と、レグ2u,2v,2w内における下アーム3Lの電圧との比率を変化させることによって、外部端子Tu,Tv,Twへ、120度ずつ位相がずれた三相交流電力を出力させることができる。
【0087】
次に、制御部5は、レグ2u,2v,2wが外部端子Tu,Tv,Twから外部へ出力された電荷量Qoを取得する(ステップS2)。例えば電力変換装置1が電動車両に搭載され、外部端子Tu,Tv,Twが電動車両のモータに接続されている場合、制御部5は、電動車両側から、電荷量Qoを表すデータとしてモータに流れた電気量AhやWhを取得してもよい。また、制御部5は、モータに流れた電流値を電動車両等から取得してこれを積算することによって、電荷量Qoを算出してもよい。あるいは、電力変換装置1が、レグ2u,2v,2wと外部端子Tu,Tv,Twとの間に流れる電流を検出する電流センサを備え、制御部5は、この電流センサで検出された電流値を積算することによって、電荷量Qoを算出してもよい。
【0088】
ステップS1で外部端子Tu,Tv,Twから外部へ電力が供給されると、レグ2u,2v,2w内の第一蓄電部B1が放電する。そこで、制御部5は、直流電圧源4の開放端電圧VOpsを相対的に上昇させるように各蓄電ブロックBB及び/又は単位モジュールEMの接続状態を制御することによって、直流電圧源4からレグ2u,2v,2w内の第一蓄電部B1へ電荷を移動させ、各第一蓄電部B1を充電する(ステップS3)。
【0089】
具体的には、例えば
図8に示すように、直流電圧源4における加入状態の蓄電ブロックBBの数を、四個から五個に増加させることによって、開放端電圧VOpsを上昇させる。これにより、開放端電圧VOu,VOv,VOwよりも開放端電圧VOpsの方が相対的に高くなり、直流電圧源4からレグ2u,2v,2wへ電流が流れ、移動した電荷によって各第一蓄電部B1が充電される。
【0090】
なお、制御部5は、直流電圧源4の開放端電圧VOpsを開放端電圧VOu,VOv,VOwに対して相対的に上昇させることができればよく、例えばレグ2u,2v,2w内の加入状態の単位モジュールEMの数を減少させることによって開放端電圧VOu,VOv,VOwを低下させてもよく、開放端電圧VOpsの上昇と開放端電圧VOu,VOv,VOwの低下とを組み合わせてもよい。
【0091】
次に、制御部5は、直流電圧源4からレグ2u,2v,2wへ移動した電荷量Qmを取得する(ステップS4)。制御部5は、電流センサ7によって検出された、直流電圧源4からレグ2u,2v,2wへ流れる電流値を積算することによって、電荷量Qmを取得することができる。
【0092】
次に、制御部5は、電荷量Qmと電荷量Qoとを比較する(ステップS5)。そして、電荷量Qmが電荷量Qoに満たなければ(ステップS5でNO)、ステップS1~S4を繰り返し、直流電圧源4からレグ2u,2v,2wへの電荷の移動を継続する。一方、電荷量Qmが電荷量Qoに達すれば(ステップS5でYES)、制御部5は、各蓄電ブロックBB及び/又は単位モジュールEMの接続状態を制御し、開放端電圧VOpsと開放端電圧VOu,VOv,VOwとを略等しくすることによって、直流電圧源4からレグ2u,2v,2wへの電荷を移動を停止させ(ステップS6)、再びステップS1へ処理を移行する。
【0093】
ステップS5において、電荷量Qoと電荷量Qmとは、略同一であればよく、正確に同一でなくてもよい。例えば、電荷量Qmは、0.8×Qo~1.2×Qoであればよい。
【0094】
ステップS1~S6によって、制御部5は、レグ2u,2v,2wから外部へ出力された電荷量Qoと略同一の電荷量Qmを、直流電圧源4からレグ2u,2v,2wへ移動させることができる。これにより、各第一蓄電部B1の放電量を補充することができ、レグ2u,2v,2wによる三相電力出力動作を継続することが可能となる。従って、ステップS1~S6によれば、各単位モジュールEMの第一蓄電部B1を適切に充電することが容易となる。
【0095】
なお、ステップS2、S4、S5で、レグ2から外部へ出力された電荷量Qoに基づいて、直流電圧源4からレグ2へ電荷を移動させる例を示したが、制御部5は、レグ2u,2v,2wに関する電圧に基づいて直流電圧源4からレグ2へ電荷を移動させてもよい。具体的には、制御部5は、レグ2u,2v,2wに含まれる第一蓄電部B1の開放端電圧の合計値SVu,SVv,SVwをそれぞれ算出する。そして制御部5は、合計値SVu,SVv,SVwのうちいずれかが予め設定された第一基準電圧Vref1を下回った場合、ステップS3と同様、直流電圧源4の開放端電圧VOpsを相対的に上昇させるように各蓄電ブロックBB及び/又は単位モジュールEMの接続状態を制御することによって、直流電圧源4からレグ2u,2v,2w内の第一蓄電部B1へ電荷を移動させ、各第一蓄電部B1を充電してもよい。
【0096】
合計値SVu,SVv,SVwは、各レグにおけるすべての単位モジュールEMが加入状態のときの開放端電圧VOu,VOv,VOwに相当する。電力変換装置1は、各第一蓄電部B1の電圧を検出する電圧センサを備え、制御部5は、電圧センサで検出された各第一蓄電部B1の開放端電圧を取得することによって、合計値SVu,SVv,SVwを算出することができる。第一基準電圧Vref1としては、レグ2u,2v,2wを充電する必要が生じる合計値SVu,SVv,SVwの値を予め適宜設定することができる。
【0097】
合計値SVu,SVv,SVwは、レグ2u,2v,2wにおける充電量が減少すると低下する。従って、レグ2u,2v,2wが放電して合計値SVu,SVv,SVwのうちいずれかが第一基準電圧Vref1を下回った場合に直流電圧源4からレグ2u,2v,2w内の第一蓄電部B1へ電荷を移動させることによって、各単位モジュールEMの第一蓄電部B1を適切に充電することが容易となる。
【0098】
次に、外部端子Tu,Tv,Twに接続された外部負荷から電力を回収する回生制御について説明する。
図5は、
図1に示す電力変換装置の回生制御に係る動作の一例を示すフローチャートである。外部端子Tu,Tv,Twに接続された外部負荷から回生電流が外部端子Tu,Tv,Twに入力された場合、制御部5は、レグ2u,2v,2wの各単位モジュールEMの接続状態を制御することによって、外部端子Tu,Tv,Twで得られた回生電流を、レグ2u,2v,2wの各第一蓄電部B1に充電する(ステップS11)。
【0099】
次に、制御部5は、レグ2u,2v,2wに充電された電荷量Qiを取得する(ステップS12)。制御部5は、ステップS2と同様、例えば電動車両等の外部から得られたデータに基づき電荷量Qiを取得してもよく、図略の電流センサで検出された電流値を積算することによって、電荷量Qiを算出してもよい。
【0100】
次に、制御部5は、直流電圧源4の開放端電圧VOpsを相対的に低下させるように各蓄電ブロックBB及び/又は単位モジュールEMの接続状態を制御することによって、レグ2u,2v,2w内の第一蓄電部B1から直流電圧源4へ電荷を移動させ、直流電圧源4の各第二蓄電部B2を充電する(ステップS13)。
【0101】
具体的には、例えば
図9に示すように、直流電圧源4における加入状態の蓄電ブロックBBの数を、四個から三個に減少させることによって、開放端電圧VOpsを低下させる。これにより、開放端電圧VOu,VOv,VOwよりも開放端電圧VOpsの方が相対的に低くなり、レグ2u,2v,2wから直流電圧源4へ電流が流れ、移動した電荷によって各第二蓄電部B2が充電される。
【0102】
なお、制御部5は、直流電圧源4の開放端電圧VOpsを開放端電圧VOu,VOv,VOwに対して相対的に低下させることができればよく、例えばレグ2u,2v,2w内の加入状態の単位モジュールEMの数を増加させることによって開放端電圧VOu,VOv,VOwを上昇させてもよく、開放端電圧VOpsの低下と開放端電圧VOu,VOv,VOwの上昇とを組み合わせてもよい。
【0103】
次に、制御部5は、レグ2u,2v,2wから直流電圧源4へ移動した電荷量Qnを取得する(ステップS14)。制御部5は、電流センサ7によって検出された、レグ2u,2v,2wから直流電圧源4へ流れる電流値を積算することによって、電荷量Qnを取得することができる。
【0104】
次に、制御部5は、電荷量Qnと電荷量Qiとを比較する(ステップS15)。そして、電荷量Qnが電荷量Qiに満たなければ(ステップS15でNO)、ステップS11~S14を繰り返し、レグ2u,2v,2wから直流電圧源4への電荷の移動を継続する。一方、電荷量Qnが電荷量Qiに達すれば(ステップS15でYES)、制御部5は、各蓄電ブロックBB及び/又は単位モジュールEMの接続状態を制御し、開放端電圧VOpsと開放端電圧VOu,VOv,VOwとを略等しくすることによって、レグ2u,2v,2wから直流電圧源4への電荷を移動を停止させ(ステップS16)、再びステップS11へ処理を移行する。
【0105】
ステップS15において、電荷量Qiと電荷量Qnとは、略同一であればよく、正確に同一でなくてもよい。例えば、電荷量Qnは、0.8×Qi~1.2×Qiであればよい。
【0106】
ステップS11~S16によって、制御部5は、外部からレグ2u,2v,2wへ回生された電荷量Qiと略同一の電荷量Qnを、レグ2u,2v,2wから直流電圧源4へ移動させることができる。これにより、外部からレグ2u,2v,2wへ回生され、各第一蓄電部B1に充電された充電量を、直流電圧源4の各第二蓄電部B2に移動させることができるので、各第一蓄電部B1が過充電になることを防止しつつ、外部から回生電力を受け入れることが可能となる。
【0107】
なお、ステップS12、S14、S15で、外部からレグ2へ充電された電荷量Qiに基づいて、レグ2から直流電圧源4へ電荷を移動させる例を示したが、制御部5は、レグ2u,2v,2wに関する電圧に基づいてレグ2から直流電圧源4へ電荷を移動させてもよい。
【0108】
具体的には、制御部5は、レグ2u,2v,2wに含まれる第一蓄電部B1の開放端電圧の合計値SVu,SVv,SVwをそれぞれ算出する。そして制御部5は、合計値SVu,SVv,SVwのうちいずれかが予め設定された第二基準電圧Vref2を上回った場合、ステップS13と同様、直流電圧源4の開放端電圧VOpsを相対的に低下させるように各蓄電ブロックBB及び/又は単位モジュールEMの接続状態を制御することによって、レグ2u,2v,2w内の第一蓄電部B1から直流電圧源4へ電荷を移動させ、各第二蓄電部B2を充電してもよい。
【0109】
第二基準電圧Vref2としては、レグ2u,2v,2wに回生電流が充電された場合にレグ2u,2v,2wを放電させる必要が生じる合計値SVu,SVv,SVwの値を予め適宜設定することができる。
【0110】
合計値SVu,SVv,SVwは、レグ2u,2v,2wにおける充電量が増大すると上昇する。従って、レグ2u,2v,2wが充電されて合計値SVu,SVv,SVwのうちいずれかが第二基準電圧Vref2を上回った場合にレグ2u,2v,2wから直流電圧源4の第二蓄電部B2へ電荷を移動させることによって、外部から回生電力を適切に回収することが容易となる。
【0111】
次に、レグ2u,2v,2w相互間の充電量を均衡させるためのバランス制御について説明する。電力変換装置1による電力変換や電力回生を行う過程で、レグ2u,2v,2w相互間の第一蓄電部B1による充電量が不均衡になる場合がある。レグ2u,2v,2w相互間の充電量が不均衡になると、相間で電圧に差が生じ、不都合である。そこで、下記のバランス制御を行うことによって、レグ2u,2v,2w相互間の充電量の不均衡を低減する。
【0112】
図6は、
図1に示す電力変換装置のバランス制御に係る動作の一例を示すフローチャートである。まず、制御部5は、レグ2u,2v,2wに含まれる第一蓄電部B1の開放端電圧の合計値SVu,SVv,SVwをそれぞれ算出して比較する(ステップS21)。
【0113】
次に、制御部5は、合計値SVが最大のレグ2の開放端電圧VOを相対的に上昇させるように、レグ2u,2v,2wの各単位モジュールEMの接続状態を制御する(ステップS22)。
【0114】
図10は、レグ2uの合計値SVuが最大、レグ2wの合計値SVwが最小の場合を示す説明図である。レグ2uの合計値SVuが最大の場合、制御部5は、
図10に示すように、レグ2uの加入状態の単位モジュールEMの数を増加させることによって、開放端電圧VOuを相対的に上昇させる。これにより、合計値SVuが最も大きく、従って充電量が最も多いレグ2uから、他のレグ2v,2wへ電荷が移動するので、レグ2u,2v,2w相互間の充電量の不均衡が低減する。
【0115】
制御部5は、さらに、合計値SVが最小のレグ2wの加入状態の単位モジュールEMの数を、
図10に示すように減少させてもよい。これにより、レグ2wへの電荷の移動量が、レグ2vへの電荷の移動量よりも増大するので、レグ2u,2v,2w相互間の充電量の不均衡の低減効果がさらに増大する。
【0116】
なお、制御部5は、合計値SVが最大のレグ2の開放端電圧VOを相対的に上昇させればよく、合計値SVが最大のレグ2の開放端電圧VOそのものを上昇させる例に限らない。制御部5は、合計値SVが最大のレグ2以外の開放端電圧VOを低下させることによって、合計値SVが最大のレグ2の開放端電圧VOを相対的に上昇させてもよい。
【0117】
また、電力変換装置1は、三つのレグ2u,2v,2wを備える例に限らない。電力変換装置1は、レグを一つ備える単相の電力変換装置であってもよく、レグを二つ、あるいは四つ以上備える電力変換装置であってもよい。
【符号の説明】
【0118】
1 電力変換装置
2,2u,2v,2w レグ
3H 上アーム
3L 下アーム
4 直流電圧源
5 制御部
6 三相インバータ
7 電流センサ
B1 第一蓄電部
B2 第二蓄電部
BB 蓄電ブロック
C キャパシタ
EM 単位モジュール
L インダクタ
Qi,Qm,Qn,Qo 電荷量
SW1,SW2,SW3,SW4 スイッチング素子(第一切換回路、第二切換回路)
SV,SVu,SVv,SVw 合計値
T1 端子(第一端子)
T2 端子(第二端子)
T3 端子(第三端子)
T4 端子(第四端子)
Tu,Tv,Tw 外部端子
VO,VOps,VOu,VOv,VOw 開放端電圧
Vref1 第一基準電圧
WL,WH 電力線