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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114805
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】最適化第VIII因子遺伝子
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20240816BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240816BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20240816BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240816BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240816BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240816BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240816BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240816BHJP
   C07K 14/755 20060101ALI20240816BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20240816BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20240816BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20240816BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240816BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240816BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
C12N15/62 Z
C12N15/867 Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K14/755
C12P21/02 C
A61P7/04
A61K31/7088
A61K48/00
A61K35/76
A61K38/02
C12N15/12
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024102527
(22)【出願日】2024-06-26
(62)【分割の表示】P 2022068361の分割
【原出願日】2017-01-31
(31)【優先権主張番号】62/289,696
(32)【優先日】2016-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/409,739
(32)【優先日】2016-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】512147244
【氏名又は名称】バイオベラティブ セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】シユアン タン
(72)【発明者】
【氏名】トンヤオ リウ
(57)【要約】
【課題】最適化第VIII因子遺伝子の提供。
【解決手段】本開示は、コドン最適化第VIII因子配列、コドン最適化第VIII因子配列を含むベクター及び宿主細胞、コドン最適化第VIII因子配列によってコードされるポリペプチド、ならびにこのようなポリペプチドの作製方法を提供する。本開示は、血友病のような出血障害の治療方法であって、コドン最適化第VIII因子核酸配列またはその核酸配列によってコードされるポリペプチドを対象に投与することを含む方法も提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電子的に提出した配列表の参照
ASCIIテキストファイルで電子的に提出した配列表(名称:2159_469PC02_SequenceListing_ST25.txt、サイズ:204,138バイト、作成日:2017年1月31日)の内容は、参照により、その全体が本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
血液凝固経路は部分的に、血小板の表面で、第VIIIa因子(FVIIIa)と第IXa因子(FIXa)との酵素複合体(Xase複合体)が形成されることを伴う。FIXaは、その補因子のFVIIIaがない状態では、触媒活性が比較的弱いセリンプロテアーゼである。Xase複合体は、第X因子(FX)を切断して第Xa因子(FXa)にし、そして、このFXaが第Va因子(FVa)と相互作用して、プロトロンビンを切断し、トロンビンを生成する。血友病Aは、FVIII(FVIII)遺伝子の変異及び/または欠失により、FVIII活性が欠損することを原因とする出血障害である(Peyvandi et al.2006)。いくつかのケースでは、患者は、抗FVIII抗体のようなFVIIIインヒビターの存在により、FVIIIレベルが低下している。
【0003】
血友病Aは、自然発生性出血と過度の出血によって特徴付けられている。筋肉内出血と関節内出血の反復(幼児期に開始する場合が多い)により、時間の経過とともに、血友病性関節症と不可逆性の関節損傷に至る。この損傷は進行性であり、この損傷により、関節の運動性が著しく制限されたり、筋肉が萎縮したり、慢性疼痛を起こしたりすることがある(Rodriguez-Merchan,E.C.,Semin.Thromb.Hemost.29:87-96(2003)、参照により、その全体が本明細書に援用される)。
【0004】
この疾患は、FVIII活性を正常レベルの1~5%まで回復させて、自然出血を防止することを目標とする補充療法によって治療できる(例えば、Mannucci,P.M.,et al.,N.Engl.J.Med.344:1773-9(2001)(参照により、その全体が本明細書に援用される)を参照されたい)。オンデマンドで出血エピソードを治療するか、または予防的処置によって、出血エピソードの発生を防ぐ目的で利用できるものには、血漿由来のFVIII製品と、組み換えFVIII製品がある。これらの製品の半減期(10~12時間)に基づき(White G.C.,et al.,Thromb.Haemost.77:660-7(1997)、Morfini,M.,Haemophilia9(suppl 1):94-99;discussion100(2003))、治療レジメンでは、頻回、一般には、予防目的では週に2~3回、オンデマンド治療では1日に1~3回の静脈内投与が必要となる(Manco-Johnson,M.J.,et al.,N.Engl.J.Med.357:535-544(2007))(これらの各文献は、参照により、その全体が本明細書に援用される)。このような頻回投与は、不便であり、費用がかかる。
【0005】
低コストの組み換えFVIIIタンパク質を患者に供給するにあたって、主な障害は、商業生産コストの高さである。FVIIIタンパク質は、異種の発現系では十分に発現せず、その発現は、同様のサイズのタンパク質の2分の1~3分の1である。(Lynch
et al.,Hum.Gene.Ther.;4:259-72(1993)。FVIIIの発現の低さは部分的には、FVIIIコード配列に、FVIIIの発現を阻害するシス作動性エレメント(転写サイレンサーエレメント(Hoeben et al.,
Blood 85:2447-2454(1995))、マトリックス付着様配列(MAR)(Fallux et al.,Mol.Cell.Biol.16:4264-4272(1996))及び転写伸長阻害エレメント(Koeberl et al.,Hum.Gene.Ther.;6:469-479(1995))など)が存在することに起因する。
【0006】
FVIIIの発現生態への我々の理解を深めることによって、さらに強力なFVIIIバリアントの開発に至った。例えば、生化学的な調査により、FVIII BドメインがFVIII補因子活性に必須ではないことが示された。Bドメインの欠失により、完全長野生型FVIIIよりも、mRNAレベルが17倍上昇し、タンパク質の分泌が30%増大した(Toole et al.,Proc Natl Acad Sci USA83:5939-42(1986))。これにより、現在、臨床で広く用いられているBドメイン欠失(BDD)FVIIIタンパク質濃縮物の開発に至った。しかしながら、最近の研究では、完全長hFVIIIとBDD hFVIIIは、ER内腔でミスフォールディングし、その結果、マウス幹細胞の折り畳み不全タンパク質応答(UPR)とアポトーシスが活性化されることが示されている。
したがって、当該技術分野では、異種の系で効率的に発現するFVIII配列に対するニーズが存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Rodriguez-Merchan,E.C.,Semin.Thromb.Hemost.29:87-96(2003)
【非特許文献2】Mannucci,P.M.,et al.,N.Engl.J.Med.344:1773-9(2001)
【非特許文献3】White G.C.,et al.,Thromb.Haemost.77:660-7(1997)
【非特許文献4】Morfini,M.,Haemophilia9(suppl 1):94-99;discussion100(2003)
【非特許文献5】Manco-Johnson,M.J.,et al.,N.Engl.J.Med.357:535-544(2007)
【非特許文献6】Lynch et al.,Hum.Gene.Ther.;4:259-72(1993)
【非特許文献7】Hoeben et al.,Blood 85:2447-2454(1995)
【非特許文献8】Fallux et al.,Mol.Cell.Biol.16:4264-4272(1996)
【非特許文献9】Koeberl et al.,Hum.Gene.Ther.;6:469-479(1995)
【非特許文献10】Toole et al.,Proc Natl Acad Sci USA83:5939-42(1986)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
開示するのは、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするコドン最適化核酸分子である。一態様では、本開示は、第VIII因子(FVIII)ポリペプチドのN末端部分をコードする第1の核酸配列と、FVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第2の核酸配列とを含むヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、(i)配列番号3の58~2277位と2320~1791位のヌクレオチドまたは(ii)配列番号4の58~2277位と2320~1791位のヌクレオチドに対する第1の核酸配列の配
列同一性が少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%であり、そのN末端部分とC末端部分が一体になって、FVIIIポリペプチド活性を有する単離核酸分子を提供する。
【0009】
本開示は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第1の核酸配列と、FVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第2の核酸配列とを含むヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、(i)配列番号5の1792~2277位と2320~4374位のヌクレオチドまたは(ii)配列番号6の1792~2277位と2320~4374位に対する第2の核酸配列の配列同一性が、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%であり、そのN末端部分とC末端部分が一体になって、FVIIIポリペプチド活性を有する単離核酸分子も提供する。
【0010】
いくつかの実施形態では、本開示は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、配列番号1の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチドに対する配列同一性が少なくとも91%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である核酸配列をそのヌクレオチド配列が含む単離核酸分子を提供する。別の実施形態では、本開示は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、配列番号2の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチドに対する配列同一性が少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である核酸配列をそのヌクレオチド配列が含む単離核酸分子を提供する。一実施形態では、本開示は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、配列番号70の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチドに対する配列同一性が少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である核酸配列をそのヌクレオチド配列が含む単離核酸分子を提供する。別の実施形態では、本開示は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、配列番号71の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチドに対する配列同一性が少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である核酸配列をそのヌクレオチド配列が含む単離核酸分子を提供する。
【0011】
いくつかの実施形態では、本開示は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、配列番号3の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチドに対する配列同一性が少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である核酸配列をそのヌクレオチド配列が含む単離核酸分子を提供する。
【0012】
いくつかの実施形態では、本開示は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、配列番号4の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチドに対する配列同一性が少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である核酸配列をそのヌクレオチド配列が含む単離核酸分子を提供する。
【0013】
いくつかの実施形態では、本開示は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、配列番号5の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチドに対する配列同一性が少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である核酸配列をそのヌクレオチド配列が含む単離核酸分子を提供する。
【0014】
いくつかの実施形態では、本開示は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、配列番号6の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチドに対する配列同一性が少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である核酸配列をそのヌクレオチド配列が含む単離核酸分子を提供する。
【0015】
いくつかの実施形態では、本開示は、対象における、FVIII活性を有するポリペプチドの発現の増加方法であって、この発現の増加が必要な対象に、本明細書に開示されている単離核酸分子またはベクターを投与することを含み、配列番号16を含む参照核酸分子またはこの参照核酸分子を含むベクターよりも、そのポリペプチドの発現を増加させる方法を提供する。
【0016】
いくつかの実施形態では、本開示は、出血障害の治療方法であって、その治療が必要な対象に、本明細書に開示されている核酸分子、ベクターまたはポリペプチドを投与することを含む方法を提供する。
【0017】
実施形態
実施形態1.第VIII因子(FVIII)ポリペプチドのN末端部分をコードする第1の核酸配列と、FVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第2の核酸配列とを含むヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、(i)配列番号3の58~2277位と2320~1791位のヌクレオチドまたは(ii)配列番号4の58~2277位と2320~1791位のヌクレオチドに対する第1の核酸配列の配列同一性が少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%であり、そのN末端部分とC末端部分が一体になって、FVIIIポリペプチド活性を有する単離核酸分子。
【0018】
実施形態2.その第1のヌクレオチド配列が、配列番号3の58~1791位のヌクレオチドまたは配列番号4の58~1791位のヌクレオチドを含む、実施形態1に記載の単離核酸分子。
【0019】
実施形態3.配列番号3の1792~2277位と2320~4374位のヌクレオチドまたは配列番号4の1792~2277位と2320~4374位に対する第2のヌクレオチド配列の配列同一性が少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である、実施形態1または実施形態2に記載の単離核酸分子。
【0020】
実施形態4.その第2のヌクレオチド配列が、配列番号3の1792~2277位と2320~4374位または配列番号4の1792~2277位と2320~4374位のヌクレオチドを含む、実施形態1または実施形態2に記載の単離核酸分子。
【0021】
実施形態5.FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第1の核酸配列と、FVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第2の核酸配列とを含むヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、(i)配列番号5の1792~2277位と2320~4374位のヌクレオチドまたは(ii)配列番号6の1792~2277位と2320~4374位に対する第2の核酸配列の配列同一性が、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%であり、そのN末端部分とC末端部分が一体になって、FVIIIポリペプチド活性を有する単離核酸分子。
【0022】
実施形態6.その第2の核酸配列が、配列番号5の1792~2277位と2320~4374位または配列番号6の1792~2277位と2320~4374位のヌクレオチドを含む、実施形態5に記載の単離核酸分子。
【0023】
実施形態7.配列番号5の58~1791位のヌクレオチドまたは配列番号6の58~1791位のヌクレオチドに対する第1の核酸配列の配列同一性が少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である、実施形態5または実施形態6に記載の単離核酸分子。
【0024】
実施形態8.その第1の核酸配列が、配列番号5の58~1791位のヌクレオチドまたは配列番号6の58~1791位のヌクレオチドを含む、実施形態5または実施形態6に記載の単離核酸分子。
【0025】
実施形態9.FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、配列番号1の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチドに対する配列同一性が少なくとも91%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である核酸配列をそのヌクレオチド配列が含む単離核酸分子。
【0026】
実施形態10.そのヌクレオチド配列が、配列番号1の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチドを含む、実施形態9に記載の単離核酸分子。
【0027】
実施形態11.FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、配列番号2の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチドに対する配列同一性が少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である核酸配列をそのヌクレオチド配列が含む単離核酸分子。
【0028】
実施形態12.そのヌクレオチド配列が、配列番号2の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチドを含む、実施形態10に記載の単離核酸分子。
【0029】
実施形態13.FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、配列番号70の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチドに対する配列同一性が少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である核酸配列をそのヌクレオチド配列が含む単離核酸分子。
【0030】
実施形態14.そのヌクレオチド配列が、配列番号70の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチドを含む、実施形態13に記載の単離核酸分子。
【0031】
実施形態15.FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、配列番号71の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチドに対する配列同一性が少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である核酸配列をそのヌクレオチド配列が含む単離核酸分子。
【0032】
実施形態16.そのヌクレオチド配列が、配列番号71の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチドを含む、実施形態15に記載の単離核酸分子。
【0033】
実施形態17.FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、配列番号3の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチドに対する配列同一性が少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である核酸配列をそのヌクレオチド配列が含む単離核酸分子。
【0034】
実施形態18.そのヌクレオチド配列が、配列番号3の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチドを含む、実施形態17に記載の単離核酸分子。
【0035】
実施形態19.FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、配列番号4の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチドに対する配列同一性が少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である核酸配列をそのヌクレオチド配列が含む単離核酸分子。
【0036】
実施形態20.そのヌクレオチド配列が、配列番号4の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチドを含む、実施形態19に記載の単離核酸分子。
【0037】
実施形態21.FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、配列番号5の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチドに対する配列同一性が少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である核酸配列をそのヌクレオチド配列が含む単離核酸分子。
【0038】
実施形態22.そのヌクレオチド配列が、配列番号5の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチドを含む、実施形態21に記載の単離核酸分子。
【0039】
実施形態23.FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、配列番号6の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチドに対する配列同一性が少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である核酸配列をそのヌクレオチド配列が含む単離核酸分子。
【0040】
実施形態24.そのヌクレオチド配列が、配列番号6の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチドを含む、実施形態23に記載の単離核酸分子。
【0041】
実施形態25.そのヌクレオチド配列が、シグナルペプチドをコードする核酸配列をさらに含む、実施形態1~実施形態24のいずれか1つに記載の単離核酸分子。
【0042】
実施形態26.そのシグナルペプチドが、FVIIIシグナルペプチドである、実施形態25に記載の単離核酸分子。
【0043】
実施形態27.シグナルペプチドをコードする核酸配列のコドンが最適化されている、実施形態25または実施形態26に記載の単離核酸分子。
【0044】
実施形態28.シグナルペプチドをコードする核酸配列の、(i)配列番号1の1~57位のヌクレオチド、(ii)配列番号2の1~57位のヌクレオチド、(iii)配列番号3の1~57位のヌクレオチド、(iv)配列番号4の1~57位のヌクレオチド、(v)配列番号5の1~57位のヌクレオチド、(vi)配列番号6の1~57位のヌクレオチド、(vii)配列番号70の1~57位のヌクレオチド、(viii)配列番号71の1~57位のヌクレオチドまたは(ix)配列番号68の1~57位のヌクレオチドに対する配列同一性が少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%である、実施形態25~実施形態27のいずれか1つに記載の単離核酸分子。
【0045】
実施形態29.
(a)核酸分子またはその一部のヒトコドン適応指標が、配列番号16よりも上昇していることと、
(b)ヌクレオチド配列またはその一部の最適コドン頻度が、配列番号16よりも上昇していることと、
(c)ヌクレオチド配列またはその一部が、配列番号16におけるG/Cヌクレオチドの割合よりも高い割合で、G/Cヌクレオチドを含むことと、
(d)ヌクレオチド配列またはその一部の相対的な同義コドン使用頻度が、配列番号16よりも上昇していることと、
(e)ヌクレオチド配列またはその一部のコドンの有効数が、配列番号16よりも減少していることと、
(f)ヌクレオチド配列が、配列番号16よりも少ないMARS/ARS配列(配列番号21及び22)を含むことと、
(g)ヌクレオチド配列が、配列番号16よりも少ない不安定化エレメント(配列番号23及び24)を含むことと、
(h)これらをいずれかに組み合わせたもの、
からなる群から選択した1つ以上の特性をその核酸分子が含む、実施形態1~実施形態28のいずれか1つに記載の単離核酸分子。
【0046】
実施形態30.異種のヌクレオチド配列をさらに含む、実施形態1~実施形態29のいずれか1つに記載の単離核酸分子。
【0047】
実施形態31.その異種のヌクレオチド配列が、半減期延長因子である異種のアミノ酸配列をコードする、実施形態30に記載の単離核酸分子。
【0048】
実施形態32.その異種のアミノ酸配列が、免疫グロブリン定常領域もしくはその一部、トランスフェリン、アルブミンまたはPAS配列である、実施形態30または実施形態31に記載の単離核酸分子。
【0049】
実施形態33.その異種のアミノ酸配列が、Fc領域である、実施形態30または実施
形態31に記載の単離核酸分子。
【0050】
実施形態34.その異種のアミノ酸配列が、上記のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列のN末端もしくはC末端に連結されているか、または上記のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列における2つのアミノ酸の間に挿入されている、実施形態30~実施形態33のいずれか1つに記載の単離核酸分子。
【0051】
実施形態35.その異種のアミノ酸配列が、表3から選択した1つ以上の挿入部位の2つのアミノ酸の間に挿入されている、実施形態34に記載の単離核酸分子。
【0052】
実施形態36.FVIIIを含む単量体-二量体ハイブリッド分子をコードする、実施形態30~実施形態35のいずれか1つに記載の単離核酸分子。
【0053】
実施形態37.そのFVIIIポリペプチドが、完全長FVIIIまたはBドメイン欠失FVIIIである、実施形態1~実施形態36のいずれか1つに記載の単離核酸分子。
【0054】
実施形態38.少なくとも1つの転写制御配列に機能可能に連結されている、実施形態1~実施形態37のいずれか1つに記載の単離核酸分子。
【0055】
実施形態39.実施形態1~実施形態38のいずれか1つに記載の核酸分子を含むベクター。
【0056】
実施形態40.ウイルスベクターである、実施形態39に記載のベクター。
【0057】
実施形態41.実施形態1~実施形態32のいずれか1つに記載の核酸分子、または実施形態39もしくは実施形態40に記載のベクターを含む宿主細胞。
【0058】
実施形態42.CHO細胞、HEK293細胞、BHK21細胞、PER.C6細胞、NS0細胞及びCAP細胞からなる群から選択されている、実施形態41に記載の宿主細胞。
【0059】
実施形態43.実施形態1~実施形態37のいずれか1つに記載の核酸分子、もしくは実施形態39もしくは40に記載のベクターによってコードされるか、または実施形態41もしくは実施形態42に記載の宿主細胞によって産生されるポリペプチド。
【0060】
実施形態44.FVIII活性を有するポリペプチドの作製方法であって、FVIII活性を有するポリペプチドが産生される条件下で、実施形態41または実施形態42に記載の宿主細胞を培養することと、FVIII活性を有するポリペプチドを回収することを含む方法。
【0061】
実施形態45.配列番号16を含む参照ヌクレオチド配列を含む宿主細胞を同じ条件下で培養した場合よりも、FVIII活性を有するポリペプチドの発現を増加させる、実施形態44に記載の方法。
【0062】
実施形態46.対象における、FVIII活性を有するポリペプチドの発現の増加方法であって、その発現の増加が必要な対象に、実施形態1~実施形態38のいずれか1つに記載の単離核酸分子、または実施形態39もしくは実施形態40に記載のベクターを投与することを含み、配列番号16を含む参照核酸分子またはこの参照核酸分子を含むベクターよりも、そのポリペプチドの発現を増加させる方法。
【0063】
実施形態47.FVIII活性を有するポリペプチドの発現の増加方法であって、FVIII活性を有するポリペプチドがその核酸分子によって発現される条件下で、実施形態41または実施形態42に記載の宿主細胞を培養することを含み、配列番号16を含む参照核酸配列を含む宿主細胞を同じ条件下で培養した場合よりも、FVIII活性を有するポリペプチドの発現を増加させる方法。
【0064】
実施形態48.FVIIIポリペプチドの発現を少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約11倍、少なくとも約12倍、少なくとも約13倍、少なくとも約14倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約25倍、少なくとも約30倍、少なくとも約35倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約60倍、少なくとも約70倍、少なくとも約80倍、少なくとも約90倍または少なくとも約100倍増加させる、実施形態44~実施形態47のいずれか1つに記載の方法。
【0065】
実施形態49.FVIII活性を有するポリペプチドの収量の改善方法であって、FVIII活性を有するポリペプチドがその核酸分子によって産生される条件下で、実施形態41または実施形態42に記載の宿主細胞を培養することを含み、配列番号16を含む参照核酸配列を含む宿主細胞を同じ条件下で培養した場合よりも、FVIII活性を有するポリペプチドの収量を増加させる方法。
【0066】
実施形態50.出血障害の治療方法であって、その治療が必要な対象に、実施形態1~実施形態38のいずれか1つに記載の核酸分子、実施形態39もしくは実施形態40に記載のベクター、または実施形態43に記載のポリペプチドを投与することを含む方法。
【0067】
実施形態51.その出血障害が、FVIIIの欠損によって特徴付けられる、実施形態50に記載の方法。
【0068】
実施形態52.その出血障害が血友病である、実施形態50に記載の方法。
【0069】
実施形態53.その出血障害が血友病Aである、実施形態50に記載の方法。
【0070】
実施形態54.配列番号16を含む参照核酸分子、その参照核酸分子を含むベクターまたはその参照核酸分子によってコードされるポリペプチドを投与した対象よりも、投与から24時間後の血漿中FVIII活性を向上させる、実施形態50~実施形態53のいずれか1つに記載の方法。
【0071】
実施形態55.血漿中FVIII活性を少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約11倍、少なくとも約12倍、少なくとも約13倍、少なくとも約14倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約25倍、少なくとも約30倍、少なくとも約35倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約60倍、少なくとも約70倍、少なくとも約80倍、少なくとも約90倍または少なくとも約100倍向上させる、実施形態54に記載の方法。
【0072】
実施形態56.レンチウイルスベクターである、実施形態39または40に記載のベクター。
【0073】
実施形態57.組織特異的プロモーター、組織特異的エンハンサー、または組織特異的
プロモーターと組織特異的エンハンサーの両方をさらに含む、実施形態39、実施形態40及び実施形態56のいずれか1つに記載のベクター。
【0074】
実施形態58.その組織特異的プロモーター及び/または組織特異的エンハンサーが、肝細胞において導入遺伝子の発現を選択的に増強する、実施形態57に記載のベクター。
【0075】
実施形態59.その組織特異的プロモーターが、マウスチレチンプロモーター(mTTR)、内因性ヒト第VIII因子プロモーター(F8)、ヒトα1-アンチトリプシンプロモーター(hAAT)、ヒトアルブミン最小プロモーター及びマウスアルブミンプロモーターからなる群から選択したプロモーター配列を含む、実施形態57または実施形態58に記載のベクター。
【0076】
実施形態60.その組織特異的プロモーターがmTTRプロモーターを含む、実施形態57~実施形態59のいずれか1つに記載のベクター。
【0077】
実施形態61.出血障害の治療方法であって、その治療が必要な対象に、実施形態56~実施形態60のいずれかの1つに記載のベクターを投与することを含む方法。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
第VIII因子(FVIII)ポリペプチドのN末端部分をコードする第1の核酸配列と、FVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第2の核酸配列とを含むヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、
(a)前記第1の核酸配列の、
(i)配列番号3の58~2277位と2320~1791位のヌクレオチドに対する配列同一性が、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%であるか、
(ii)配列番号4の58~2277位と2320~1791位のヌクレオチドに対する配列同一性が、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%であるか、
(iii)配列番号5の58~1791位のヌクレオチドに対する配列同一性が、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%であるか、もしくは
(iv)配列番号6の58~1791位のヌクレオチドに対する配列同一性が、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%であるか、
(b)前記第2のヌクレオチド配列の、
(i)配列番号3の1792~2277位と2320~4374位のヌクレオチドに対する配列同一性が、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%であるか、
(ii)配列番号4の1792~2277位と2320~4374位のヌクレオチドに対する配列同一性が、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%であるか、
(iii)配列番号5の1792~2277位と2320~4374位のヌクレオチドに対する配列同一性が、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%であるか、もしくは
(iv)配列番号6の1792~2277位と2320~4374位のヌクレオチドに対する配列同一性が、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%であるか、または
(c)(a)と(b)がいずれかに組み合わせてあり、
前記N末端部分と前記C末端部分が一体になって、FVIIIポリペプチド活性を有する前記単離核酸分子。
(項目2)
FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、前記ヌクレオチド配列の核酸配列の、
(i)配列番号1の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチドに対する配列同一性が、少なくとも91%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%であるか、
(ii)配列番号2の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチドに対する配列同一性が、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%であるか、
(iii)配列番号70の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチドに対する配列同一性が、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%であるか、
(iv)配列番号71の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチドに対する配列同一性が、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%であるか、
(v)配列番号3の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチドに対する配列同一性が、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%であるか、
(vi)配列番号4の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチドに対する配列同一性が、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%であるか、
(vii)配列番号5の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチドに対する配列同一性が、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%であるか、
(viii)配列番号6の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチドに対する配列同一性が、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%であるか、または
(ix)(i)~(viii)がいずれかに組み合わせてある前記単離核酸分子。
(項目3)
前記ヌクレオチド配列が、シグナルペプチドをコードする核酸配列をさらに含み、シグナルペプチドをコードする前記核酸配列の、
(i)配列番号1の1~57位のヌクレオチド、
(ii)配列番号2の1~57位のヌクレオチド、
(iii)配列番号3の1~57位のヌクレオチド、
(iv)配列番号4の1~57位のヌクレオチド、
(v)配列番号5の1~57位のヌクレオチド、
(vi)配列番号6の1~57位のヌクレオチド、
(vii)配列番号70の1~57位のヌクレオチド、
(viii)配列番号71の1~57位のヌクレオチドまたは
(ix)配列番号68の1~57位のヌクレオチド
に対する配列同一性が、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%である、項目1または2に記載の単離核酸分子。
(項目4)
(a)前記核酸分子またはその一部のヒトコドン適応指標が、配列番号16よりも上昇していること、
(b)前記ヌクレオチド配列またはその一部の最適コドン頻度が、配列番号16よりも上昇していること、
(c)前記ヌクレオチド配列またはその一部が、配列番号16におけるG/Cヌクレオチドの割合よりも高い割合で、G/Cヌクレオチドを含むこと、
(d)前記ヌクレオチド配列またはその一部の相対的な同義コドン使用頻度が、配列番号16よりも上昇していること、
(e)前記ヌクレオチド配列またはその一部のコドンの有効数が、配列番号16よりも減少していること、
(f)前記ヌクレオチド配列が、配列番号16よりも少ないMARS/ARS配列(配列番号21及び22)を含むこと、
(g)前記ヌクレオチド配列が、配列番号16よりも少ない不安定化エレメント(配列番号23及び24)を含むこと、
(h)これらをいずれかに組み合わせたもの、
からなる群から選択した1つ以上の特性を前記核酸分子が含む、項目1~3のいずれか1項に記載の単離核酸分子。
(項目5)
異種のアミノ酸配列をコードする異種のヌクレオチド配列をさらに含む、項目1~4のいずれか1項に記載の単離核酸分子。
(項目6)
前記異種のアミノ酸配列が、免疫グロブリン定常領域もしくはその一部、XTEN、トランスフェリン、アルブミンまたはPAS配列である、項目5に記載の単離核酸分子。
(項目7)
前記異種のアミノ酸配列が、前記ヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列のN末端もしくはC末端に連結しているか、または前記ヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列における2つのアミノ酸の間に、表3から選択した1つ以上の挿入部位において挿入されている、項目5または6に記載の単離核酸分子。
(項目8)
前記FVIIIポリペプチドが、完全長FVIIIまたはBドメイン欠失FVIIIである、項目1~7のいずれか1項に記載の単離核酸分子。
(項目9)
項目1~8のいずれか1項に記載の核酸分子を含むベクター。
(項目10)
レンチウイルスベクターである、項目9に記載のベクター。
(項目11)
項目1~8のいずれか1項に記載の核酸分子、または項目9もしくは10に記載のベクターを含む宿主細胞。
(項目12)
項目11に記載の宿主細胞によって産生されるポリペプチド。
(項目13)
FVIII活性を有するポリペプチドの作製方法であって、FVIII活性を有するポリペプチドが産生される条件下で、項目11に記載の宿主細胞を培養することと、FVIII活性を有する前記ポリペプチドを回収することとを含む前記方法。
(項目14)
FVIII活性を有するポリペプチドの、対象における発現の増加方法であって、前記増加が必要な対象に、項目1~8のいずれか1項に記載の単離核酸分子または項目9または10に記載のベクターを投与することを含み、配列番号16を含む参照核酸分子または前記参照核酸分子を含むベクターよりも、前記ポリペプチドの発現を増加させる前記方法。
(項目15)
出血疾患の治療方法であって、その治療を必要とする対象に、項目1~8のいずれか1項に記載の核酸分子、項目9もしくは10に記載のベクター、または項目12に記載のポリペプチドを投与することを含む前記方法。
【図面の簡単な説明】
【0078】
図1A】Bドメイン欠失第VIII因子(配列番号17)をコードするコドン最適化ヌクレオチド配列を示している。coFVIII-3のヌクレオチド配列(配列番号1)を示している。
図1B】Bドメイン欠失第VIII因子(配列番号17)をコードするコドン最適化ヌクレオチド配列を示している。coFVIII-4のヌクレオチド配列(配列番号2)を示している。
図1C】Bドメイン欠失第VIII因子(配列番号17)をコードするコドン最適化ヌクレオチド配列を示している。coFVIII-5のヌクレオチド配列(配列番号70)を示している。
図1D】Bドメイン欠失第VIII因子(配列番号17)をコードするコドン最適化ヌクレオチド配列を示している。coFVIII-6のヌクレオチド配列(配列番号71)を示している。
図1E】Bドメイン欠失第VIII因子(配列番号17)をコードするコドン最適化ヌクレオチド配列を示している。coFVIII-52のヌクレオチド配列(配列番号3)を示している。
図1F】Bドメイン欠失第VIII因子(配列番号17)をコードするコドン最適化ヌクレオチド配列を示している。coFVIII-62のヌクレオチド配列(配列番号4)を示している。
図1G】Bドメイン欠失第VIII因子(配列番号17)をコードするコドン最適化ヌクレオチド配列を示している。coFVIII-25のヌクレオチド配列(配列番号5)を示している。
図1H】Bドメイン欠失第VIII因子(配列番号17)をコードするコドン最適化ヌクレオチド配列を示している。coFVIII-26のヌクレオチド配列(配列番号6)を示している。
図1I】Bドメイン欠失(BDD-FVIII)のヌクレオチド配列(配列番号16)を示している。
図1J】Bドメイン欠失(BDD-FVIII)のアミノ酸配列(配列番号17)を示している。
図2-1】図2A~Jは、BDD-FVIIIをコードするコドン最適化ヌクレオチド配列におけるコドン使用頻度バイアスの調節を示している。図2Aは、BDD-FVIII、例えば非最適化BDD-FVIIIをコードする野生型ヌクレオチド配列(コドン最適化前)における相対的なコドン頻度を示している。非最適化BDD-FVIIIの配列のヒトコドン適応指標(CAI)は、74%である。図2Bは、ヒトCAIが88%である、バリアントcoFVIII-1の配列における相対的なコドン頻度を示している。図2Cは、ヒトCAIが91%である、バリアントcoFVIII-3の配列における相対的なコドン頻度を示している。図2Dは、ヒトCAIが97%である、バリアントcoFVIII-4の配列における相対的なコドン頻度を示している。図2Eは、ヒトCAIが83%である、バリアントcoFVIII-5の配列における相対的なコドン頻度を示している。図2Fは、ヒトCAIが83%である、バリアントcoFVIII-6の配列における相対的なコドン頻度を示している。図2Gは、ヒトCAIが91%である、バリアントcoFVIII-52の配列における相対的なコドン頻度を示している。図2Hは、ヒトCAIが91%である、バリアントcoFVIII-62の配列における相対的なコドン頻度を示している。図2Iは、ヒトCAIが88%である、バリアントcoFVIII-25の配列における相対的なコドン頻度を示している。図2Jは、ヒトCAIが88%である、バリアントcoFVIII-26の配列における相対的なコドン頻度を示している。
図2-2】図2A~Jは、BDD-FVIIIをコードするコドン最適化ヌクレオチド配列におけるコドン使用頻度バイアスの調節を示している。図2Aは、BDD-FVIII、例えば非最適化BDD-FVIIIをコードする野生型ヌクレオチド配列(コドン最適化前)における相対的なコドン頻度を示している。非最適化BDD-FVIIIの配列のヒトコドン適応指標(CAI)は、74%である。図2Bは、ヒトCAIが88%である、バリアントcoFVIII-1の配列における相対的なコドン頻度を示している。図2Cは、ヒトCAIが91%である、バリアントcoFVIII-3の配列における相対的なコドン頻度を示している。図2Dは、ヒトCAIが97%である、バリアントcoFVIII-4の配列における相対的なコドン頻度を示している。図2Eは、ヒトCAIが83%である、バリアントcoFVIII-5の配列における相対的なコドン頻度を示している。図2Fは、ヒトCAIが83%である、バリアントcoFVIII-6の配列における相対的なコドン頻度を示している。図2Gは、ヒトCAIが91%である、バリアントcoFVIII-52の配列における相対的なコドン頻度を示している。図2Hは、ヒトCAIが91%である、バリアントcoFVIII-62の配列における相対的なコドン頻度を示している。図2Iは、ヒトCAIが88%である、バリアントcoFVIII-25の配列における相対的なコドン頻度を示している。図2Jは、ヒトCAIが88%である、バリアントcoFVIII-26の配列における相対的なコドン頻度を示している。
図2-3】図2A~Jは、BDD-FVIIIをコードするコドン最適化ヌクレオチド配列におけるコドン使用頻度バイアスの調節を示している。図2Aは、BDD-FVIII、例えば非最適化BDD-FVIIIをコードする野生型ヌクレオチド配列(コドン最適化前)における相対的なコドン頻度を示している。非最適化BDD-FVIIIの配列のヒトコドン適応指標(CAI)は、74%である。図2Bは、ヒトCAIが88%である、バリアントcoFVIII-1の配列における相対的なコドン頻度を示している。図2Cは、ヒトCAIが91%である、バリアントcoFVIII-3の配列における相対的なコドン頻度を示している。図2Dは、ヒトCAIが97%である、バリアントcoFVIII-4の配列における相対的なコドン頻度を示している。図2Eは、ヒトCAIが83%である、バリアントcoFVIII-5の配列における相対的なコドン頻度を示している。図2Fは、ヒトCAIが83%である、バリアントcoFVIII-6の配列における相対的なコドン頻度を示している。図2Gは、ヒトCAIが91%である、バリアントcoFVIII-52の配列における相対的なコドン頻度を示している。図2Hは、ヒトCAIが91%である、バリアントcoFVIII-62の配列における相対的なコドン頻度を示している。図2Iは、ヒトCAIが88%である、バリアントcoFVIII-25の配列における相対的なコドン頻度を示している。図2Jは、ヒトCAIが88%である、バリアントcoFVIII-26の配列における相対的なコドン頻度を示している。
図2-4】図2A~Jは、BDD-FVIIIをコードするコドン最適化ヌクレオチド配列におけるコドン使用頻度バイアスの調節を示している。図2Aは、BDD-FVIII、例えば非最適化BDD-FVIIIをコードする野生型ヌクレオチド配列(コドン最適化前)における相対的なコドン頻度を示している。非最適化BDD-FVIIIの配列のヒトコドン適応指標(CAI)は、74%である。図2Bは、ヒトCAIが88%である、バリアントcoFVIII-1の配列における相対的なコドン頻度を示している。図2Cは、ヒトCAIが91%である、バリアントcoFVIII-3の配列における相対的なコドン頻度を示している。図2Dは、ヒトCAIが97%である、バリアントcoFVIII-4の配列における相対的なコドン頻度を示している。図2Eは、ヒトCAIが83%である、バリアントcoFVIII-5の配列における相対的なコドン頻度を示している。図2Fは、ヒトCAIが83%である、バリアントcoFVIII-6の配列における相対的なコドン頻度を示している。図2Gは、ヒトCAIが91%である、バリアントcoFVIII-52の配列における相対的なコドン頻度を示している。図2Hは、ヒトCAIが91%である、バリアントcoFVIII-62の配列における相対的なコドン頻度を示している。図2Iは、ヒトCAIが88%である、バリアントcoFVIII-25の配列における相対的なコドン頻度を示している。図2Jは、ヒトCAIが88%である、バリアントcoFVIII-26の配列における相対的なコドン頻度を示している。
図2-5】図2A~Jは、BDD-FVIIIをコードするコドン最適化ヌクレオチド配列におけるコドン使用頻度バイアスの調節を示している。図2Aは、BDD-FVIII、例えば非最適化BDD-FVIIIをコードする野生型ヌクレオチド配列(コドン最適化前)における相対的なコドン頻度を示している。非最適化BDD-FVIIIの配列のヒトコドン適応指標(CAI)は、74%である。図2Bは、ヒトCAIが88%である、バリアントcoFVIII-1の配列における相対的なコドン頻度を示している。図2Cは、ヒトCAIが91%である、バリアントcoFVIII-3の配列における相対的なコドン頻度を示している。図2Dは、ヒトCAIが97%である、バリアントcoFVIII-4の配列における相対的なコドン頻度を示している。図2Eは、ヒトCAIが83%である、バリアントcoFVIII-5の配列における相対的なコドン頻度を示している。図2Fは、ヒトCAIが83%である、バリアントcoFVIII-6の配列における相対的なコドン頻度を示している。図2Gは、ヒトCAIが91%である、バリアントcoFVIII-52の配列における相対的なコドン頻度を示している。図2Hは、ヒトCAIが91%である、バリアントcoFVIII-62の配列における相対的なコドン頻度を示している。図2Iは、ヒトCAIが88%である、バリアントcoFVIII-25の配列における相対的なコドン頻度を示している。図2Jは、ヒトCAIが88%である、バリアントcoFVIII-26の配列における相対的なコドン頻度を示している。
図3】pcDNA3骨格において、ET(増強トランスチレチン)プロモーター(coFVIII-1翻訳開始部位の上流にあるとともに、合成エンハンサーと、mTIRエンハンサーと、mTIRプロモーターを含む)の制御下で、coFVIII-1を含むFVIII-303のプラスミドマップを示している。
図4】FVIII-303(coFVIII-1、円)を5μgまたはFVIII-311(BDD-FVIII、四角)を5μg水圧注射後のHemAマウスにおける血漿中FVIII活性のグラフ表示を示している。血漿中FVIII活性は、注射の24時間後、48時間後及び72時間後に、FVIII特異的発色アッセイによって割り出した。72時間時点の相対的な活性レベルをFVIII-311の発現レベルで補正したものが示されている。
図5】レンチウイルスプラスミドにおいて、ETプロモーター(coFVIII-52翻訳開始部位の上流にあるとともに、合成エンハンサーと、mTTRエンハンサーと、mTTRプロモーターを含む)の制御下で、coFVIII-52を含むpLV-coFVIII-52のプラスミドマップを示している。
図6A】各種FVIIIをコードするヌクレオチドを水圧注射後のHemAマウスにおける血漿中FVIII活性のグラフ表示を示している。血漿中FVIII活性は、注射の24時間後、48時間後及び72時間後に、FVIII特異的発色アッセイによって割り出した。LV-coFVIII-1を5μg(黒丸)、LV-coFVIII-3を5μg(三角)、LV-coFVIII-4を5μg(逆三角)、LV-coFVIII-5を5μg(ひし形)またはLV-coFVIII-6を5μg(白丸)水圧注射後のHemAマウスにおける血漿中FVIII活性を示している。示されているように、各プラスミドにおいて、72時間時点の相対的な活性レベルは、LV-coFVIII-1の発現レベルで補正したものが示されている。
図6B】各種FVIIIをコードするヌクレオチドを水圧注射後のHemAマウスにおける血漿中FVIII活性のグラフ表示を示している。血漿中FVIII活性は、注射の24時間後、48時間後及び72時間後に、FVIII特異的発色アッセイによって割り出した。LV-coFVIII-1を5μg(円)、LV-coFVIII-25を5μg(三角)またはLV-coFVIII-26を5μg(逆三角)水圧注射後のHemAマウスにおける血漿中FVIII活性を示している。示されているように、各プラスミドにおいて、72時間時点の相対的な活性レベルは、LV-coFVIII-1の発現レベルで補正したものが示されている。
図6C】各種FVIIIをコードするヌクレオチドを水圧注射後のHemAマウスにおける血漿中FVIII活性のグラフ表示を示している。血漿中FVIII活性は、注射の24時間後、48時間後及び72時間後に、FVIII特異的発色アッセイによって割り出した。LV-2116を20μg(非コドン最適化(WT)BDD-FVIIIヌクレオチド配列、白丸)、LV-coFVIII-1を20μg(三角)、LV-coFVIII-52を20μg(四角)またはLV-coFVIII-62を20μg(黒丸)水圧注射後のHemAマウスにおける血漿中FVIII活性を示している。示されているように、各プラスミドにおいて、72時間時点の相対的な活性レベルは、LV-coFVIII-1及び/またはLV-2116の発現レベルで補正したものが示されている。
図7】coFVIII-1、coFVIII-5、coFVIII-52、coFVIII-6またはcoFVIII-62を含むレンチウイルスベクターを1E8TU/マウスで注射してから24日後のHemAマウスにおける血漿中FVIII活性を、コントロールのLV-2116(BDD-FVIII)と比較したとともに、FVIII特異的発色アッセイによって測定したものを示している。エラーバーは、標準偏差を示している。
図8A】XTENに融合したBDD-FVIIIをコードする各種のコドン最適化ヌクレオチド配列を示している。coFVIII-52-XTENのヌクレオチド配列(配列番号19)であって、144個のアミノ酸を有するXTEN(「XTEN144」、配列番号18、下線部分)をコードするヌクレオチド配列が、coFVIII-52のヌクレオチド配列に挿入されているヌクレオチド配列を示している。
図8B】XTENに融合したBDD-FVIIIをコードする各種のコドン最適化ヌクレオチド配列を示している。coFVIII-1-XTENのヌクレオチド配列(配列番号20)であって、144個のアミノ酸を有するXTEN(「XTEN144」、配列番号18、下線部分)をコードするヌクレオチド配列が、coFVIII-1のヌクレオチド配列に挿入されているヌクレオチド配列を示している。
図8C】XTENに融合したBDD-FVIIIをコードする各種のコドン最適化ヌクレオチド配列を示している。coFVIII-6-XTENのヌクレオチド配列(配列番号72)であって、144個のアミノ酸を有するXTEN(「XTEN144」、配列番号18、下線部分)をコードするヌクレオチド配列が、coFVIII-6のヌクレオチド配列(例えば、成熟FVIII配列に対応する745位のアミノ酸残基)に挿入されているヌクレオチド配列を示している。
図9】レンチウイルスベクターにおいて、ETプロモーターの制御下で、coFVIII-52-XTENを含むpLV-coFVIII-52-XTENのプラスミドマップを示している。本明細書に記載されているような、FVIII活性を有するポリペプチドをコードする残りの各コドン最適化核酸分子を含むレンチウイルスベクターは、pLV-coFVIII-52-XTENと同じようにして構築し、その際には、同じXTEN配列を挿入して、FVIIIのBドメインを置き換えた。
図10A】BDD-FVIIIをコードする各種のコドン最適化ヌクレオチド配列を含むプラスミドDNAを注射後のHemAマウスにおけるFVIII活性を示している。FVIII-311を5μg(非コドン最適化型、BDD-FVIIIをコードするヌクレオチド配列、四角)、FVIII-303を5μg(coFVIII-1、小さい円)またはFVIII-306を5μg(coFVIII-1-XTEN144、大きい円)を水圧注射後のHemAマウスにおける血漿中FVIII活性のグラフ表示を示している。それぞれのプラスミドにおいて、72時間時点の相対的な活性は、FVIII-311で補正したものが示されている。
図10B】BDD-FVIIIをコードする各種のコドン最適化ヌクレオチド配列を含むレンチウイルスベクターを注射後のHemAマウスにおけるFVIII活性を示している。coFVIII-52またはcoFVIII-52-XTENを含むレンチウイルスベクターを1E8TU/マウスで注射してから21日後のHemAマウスにおける血漿中FVIII活性を、コントロールのLV-2116(BDD-FVIII)と比較したとともに、FVIII特異的発色アッセイによって測定したものを示している。エラーバーは、標準偏差を示している。
図11-1】図11Aは、完全長成熟ヒト第VIII因子のアミノ酸配列を示している。図11Bは、完全長ヒトフォンビルブランド因子のアミノ酸配列(配列番号44)を示している。図11Cは、42個のアミノ酸を有するXTENポリペプチド(XTEN AE42-4、配列番号46)のアミノ酸配列を示している。図11Dは、42個のアミノ酸を有するXTENポリペプチド(XTEN AE42-4、配列番号47)のヌクレオチド配列を示している。144個のアミノ酸を有する各種XTENポリペプチドのアミノ酸配列は、図11E(配列番号48)、図11G(配列番号50)、図11I(配列番号52)、図11K(配列番号54)、図11M(配列番号56)、図11O(配列番号58)、図11Q(配列番号60)、図11S(配列番号62)、図11U(配列番号64)及び図11W(配列番号66)に示されており、それらの対応するヌクレオチド配列はそれぞれ、図11F(配列番号49)、図11H(配列番号51)、図11J(配列番号53)、図11L(配列番号55)、図11N(配列番号57)、図11P(配列番号59)、図11R(配列番号61)、図11T(配列番号63)、図11V(配列番号65)及び図11X(配列番号67)に示されている。図11Yは、ETプロモーターのヌクレオチド配列(配列番号69)を示している。図Zは、coFVIII-1のヌクレオチド配列(配列番号68)を示している(国際公開第2014/127215号、配列番号1を参照されたい)。
図11-2】図11Aは、完全長成熟ヒト第VIII因子のアミノ酸配列を示している。図11Bは、完全長ヒトフォンビルブランド因子のアミノ酸配列(配列番号44)を示している。図11Cは、42個のアミノ酸を有するXTENポリペプチド(XTEN AE42-4、配列番号46)のアミノ酸配列を示している。図11Dは、42個のアミノ酸を有するXTENポリペプチド(XTEN AE42-4、配列番号47)のヌクレオチド配列を示している。144個のアミノ酸を有する各種XTENポリペプチドのアミノ酸配列は、図11E(配列番号48)、図11G(配列番号50)、図11I(配列番号52)、図11K(配列番号54)、図11M(配列番号56)、図11O(配列番号58)、図11Q(配列番号60)、図11S(配列番号62)、図11U(配列番号64)及び図11W(配列番号66)に示されており、それらの対応するヌクレオチド配列はそれぞれ、図11F(配列番号49)、図11H(配列番号51)、図11J(配列番号53)、図11L(配列番号55)、図11N(配列番号57)、図11P(配列番号59)、図11R(配列番号61)、図11T(配列番号63)、図11V(配列番号65)及び図11X(配列番号67)に示されている。図11Yは、ETプロモーターのヌクレオチド配列(配列番号69)を示している。図Zは、coFVIII-1のヌクレオチド配列(配列番号68)を示している(国際公開第2014/127215号、配列番号1を参照されたい)。
図11-3】図11Aは、完全長成熟ヒト第VIII因子のアミノ酸配列を示している。図11Bは、完全長ヒトフォンビルブランド因子のアミノ酸配列(配列番号44)を示している。図11Cは、42個のアミノ酸を有するXTENポリペプチド(XTEN AE42-4、配列番号46)のアミノ酸配列を示している。図11Dは、42個のアミノ酸を有するXTENポリペプチド(XTEN AE42-4、配列番号47)のヌクレオチド配列を示している。144個のアミノ酸を有する各種XTENポリペプチドのアミノ酸配列は、図11E(配列番号48)、図11G(配列番号50)、図11I(配列番号52)、図11K(配列番号54)、図11M(配列番号56)、図11O(配列番号58)、図11Q(配列番号60)、図11S(配列番号62)、図11U(配列番号64)及び図11W(配列番号66)に示されており、それらの対応するヌクレオチド配列はそれぞれ、図11F(配列番号49)、図11H(配列番号51)、図11J(配列番号53)、図11L(配列番号55)、図11N(配列番号57)、図11P(配列番号59)、図11R(配列番号61)、図11T(配列番号63)、図11V(配列番号65)及び図11X(配列番号67)に示されている。図11Yは、ETプロモーターのヌクレオチド配列(配列番号69)を示している。図Zは、coFVIII-1のヌクレオチド配列(配列番号68)を示している(国際公開第2014/127215号、配列番号1を参照されたい)。
図11-4】図11Aは、完全長成熟ヒト第VIII因子のアミノ酸配列を示している。図11Bは、完全長ヒトフォンビルブランド因子のアミノ酸配列(配列番号44)を示している。図11Cは、42個のアミノ酸を有するXTENポリペプチド(XTEN AE42-4、配列番号46)のアミノ酸配列を示している。図11Dは、42個のアミノ酸を有するXTENポリペプチド(XTEN AE42-4、配列番号47)のヌクレオチド配列を示している。144個のアミノ酸を有する各種XTENポリペプチドのアミノ酸配列は、図11E(配列番号48)、図11G(配列番号50)、図11I(配列番号52)、図11K(配列番号54)、図11M(配列番号56)、図11O(配列番号58)、図11Q(配列番号60)、図11S(配列番号62)、図11U(配列番号64)及び図11W(配列番号66)に示されており、それらの対応するヌクレオチド配列はそれぞれ、図11F(配列番号49)、図11H(配列番号51)、図11J(配列番号53)、図11L(配列番号55)、図11N(配列番号57)、図11P(配列番号59)、図11R(配列番号61)、図11T(配列番号63)、図11V(配列番号65)及び図11X(配列番号67)に示されている。図11Yは、ETプロモーターのヌクレオチド配列(配列番号69)を示している。図Zは、coFVIII-1のヌクレオチド配列(配列番号68)を示している(国際公開第2014/127215号、配列番号1を参照されたい)。
図11-5】図11Aは、完全長成熟ヒト第VIII因子のアミノ酸配列を示している。図11Bは、完全長ヒトフォンビルブランド因子のアミノ酸配列(配列番号44)を示している。図11Cは、42個のアミノ酸を有するXTENポリペプチド(XTEN AE42-4、配列番号46)のアミノ酸配列を示している。図11Dは、42個のアミノ酸を有するXTENポリペプチド(XTEN AE42-4、配列番号47)のヌクレオチド配列を示している。144個のアミノ酸を有する各種XTENポリペプチドのアミノ酸配列は、図11E(配列番号48)、図11G(配列番号50)、図11I(配列番号52)、図11K(配列番号54)、図11M(配列番号56)、図11O(配列番号58)、図11Q(配列番号60)、図11S(配列番号62)、図11U(配列番号64)及び図11W(配列番号66)に示されており、それらの対応するヌクレオチド配列はそれぞれ、図11F(配列番号49)、図11H(配列番号51)、図11J(配列番号53)、図11L(配列番号55)、図11N(配列番号57)、図11P(配列番号59)、図11R(配列番号61)、図11T(配列番号63)、図11V(配列番号65)及び図11X(配列番号67)に示されている。図11Yは、ETプロモーターのヌクレオチド配列(配列番号69)を示している。図Zは、coFVIII-1のヌクレオチド配列(配列番号68)を示している(国際公開第2014/127215号、配列番号1を参照されたい)。
図11-6】図11Aは、完全長成熟ヒト第VIII因子のアミノ酸配列を示している。図11Bは、完全長ヒトフォンビルブランド因子のアミノ酸配列(配列番号44)を示している。図11Cは、42個のアミノ酸を有するXTENポリペプチド(XTEN AE42-4、配列番号46)のアミノ酸配列を示している。図11Dは、42個のアミノ酸を有するXTENポリペプチド(XTEN AE42-4、配列番号47)のヌクレオチド配列を示している。144個のアミノ酸を有する各種XTENポリペプチドのアミノ酸配列は、図11E(配列番号48)、図11G(配列番号50)、図11I(配列番号52)、図11K(配列番号54)、図11M(配列番号56)、図11O(配列番号58)、図11Q(配列番号60)、図11S(配列番号62)、図11U(配列番号64)及び図11W(配列番号66)に示されており、それらの対応するヌクレオチド配列はそれぞれ、図11F(配列番号49)、図11H(配列番号51)、図11J(配列番号53)、図11L(配列番号55)、図11N(配列番号57)、図11P(配列番号59)、図11R(配列番号61)、図11T(配列番号63)、図11V(配列番号65)及び図11X(配列番号67)に示されている。図11Yは、ETプロモーターのヌクレオチド配列(配列番号69)を示している。図Zは、coFVIII-1のヌクレオチド配列(配列番号68)を示している(国際公開第2014/127215号、配列番号1を参照されたい)。
図12-1】図12Aは、約1.5E10TU/kgのLV-wtBDD-FVIII(円)、LV-coFVIII-6(四角)またはLV-coFVIII-6XTEN(三角)をIV投与後の14日齢のHemAマウスにおける血漿中FVIII活性(IU/mL)のグラフ表示である。図12Bは、wtBDD-FVIII、coFVIII-1、coFVIII-3、coFVIII-4、coFVIII-5、coFVIII-6、coFVIII-52、coFVIII-62、coFVIII-25またはcoFVIII-26を発現するレンチウイルスベクターを約1.5E10TU/kg、IV投与した14日齢のHemAマウスの、処置から150日後のベクターコピー数(VCN)のグラフ表示である。図12Cは、wtBDD-FVIII、coFVIII-1、coFVIII-3、coFVIII-4、coFVIII-5、coFVIII-6、coFVIII-52、coFVIII-62、coFVIII-25またはcoFVIII-26を発現するレンチウイルスベクターを約1.5E10TU/kg、IV投与した14日齢のHemAマウスの、処置から21日後の血漿中FVIII活性(IU/mL)のグラフ表示である。
図12-2】図12Aは、約1.5E10TU/kgのLV-wtBDD-FVIII(円)、LV-coFVIII-6(四角)またはLV-coFVIII-6XTEN(三角)をIV投与後の14日齢のHemAマウスにおける血漿中FVIII活性(IU/mL)のグラフ表示である。図12Bは、wtBDD-FVIII、coFVIII-1、coFVIII-3、coFVIII-4、coFVIII-5、coFVIII-6、coFVIII-52、coFVIII-62、coFVIII-25またはcoFVIII-26を発現するレンチウイルスベクターを約1.5E10TU/kg、IV投与した14日齢のHemAマウスの、処置から150日後のベクターコピー数(VCN)のグラフ表示である。図12Cは、wtBDD-FVIII、coFVIII-1、coFVIII-3、coFVIII-4、coFVIII-5、coFVIII-6、coFVIII-52、coFVIII-62、coFVIII-25またはcoFVIII-26を発現するレンチウイルスベクターを約1.5E10TU/kg、IV投与した14日齢のHemAマウスの、処置から21日後の血漿中FVIII活性(IU/mL)のグラフ表示である。
図13図13A及び13Bは、coFVIII-5バリアントを発現するレンチウイルスで処置した5匹のHemAマウスにおける血漿中FVIII活性レベル(図13A)と抗FVIII抗体レベル(図13B)を示しているグラフ表示である。14日齢のHemA同腹マウスに、coFVIII-5バリアントを発現するレンチウイルスをおよそ1.5E10TU/kg、静脈内注射によって投与した。各マウスに、番号を割り当てた(すなわち、1、2、3、4及び5、図13A及び13B)。
図14】LV-FVIIIの発現レベル(レンチウイルスによる処置から21日後の血漿中FVIII活性によって示したもの)と、抗FVIII抗体の存在との相関関係のグラフ表示である。各データポイントは、1匹のHemAマウスに対応している。各マウスには、本明細書に開示されているcoFVIIIバリアントのうちの1つを発現するレンチウイルスを1.5E10TU/kgの用量で静脈内注射によって投与した。横線は、平均血漿中FVIII活性を示している。
図15】レンチウイルスによる処置から150日後の細胞1つ当たりのベクターコピー数(VCN)と、抗FVIII抗体の存在との相関関係のグラフ表示である。各データポイントは、1匹のHemAマウスに対応している。各マウスには、本明細書に開示されているcoFVIIIバリアントのうちの1つを発現するレンチウイルスを1.5E10TU/kgの用量で静脈内注射によって投与した。横線は、平均VCNを示している。
図16図16A及び16Bは、coFVIII-52バリアントを発現するレンチウイルスで処置した2匹のHemAマウス(coFVIII-52-A及びcoFVIII-52-B)における血漿中FVIII活性レベル(図16A)と抗FVIII抗体レベル(図16B)を示しているグラフ表示である。14日齢のHemA同腹マウスに、coFVIII-52バリアントを発現するレンチウイルスをおよそ1.5E10TU/kg、静脈内注射によって投与した。図16C及び16Dは、図16A及び16BのcoFVIII-52-Aマウス(図16C)とcoFVIII-52-Bマウス(図16D)から採取した肝組織におけるFVIIIの発現(濃染色)に関するRNAインサイチューハイブリダイゼーション染色結果を示している画像である。
図17】野生型Bドメイン欠失FVIII(wtBDD-FVIII、三角)、バリアントのcoFVIII-52XTEN(円)またはcoFVIII-6XTEN(逆三角)を発現するレンチウイルスで処置したHemA新生マウスにおけるFVIIIの長期的な発現を示しているグラフ表示である。HemA新生マウスには、静脈内注射によって、wtBDD-FVIII、coFVIII-52XTENまたはcoFVIII-6XTENを発現するレンチウイルスをおよそ1.5A10TU/kg投与した。血漿中FVIII活性は、およそ16週間にわたって測定した。
図18】XTENに融合した第VIII因子をコードするヌクレオチドを含むレンチウイルスベクター(配列番号72、LV-coFVIII-6-XTEN)を1.3×10形質導入単位/kgで投与後のHemA新生イヌ(S3またはK4)における循環血液中FVIIIレベルのグラフ表示である。実線で連結されている四角は、aPTT-S3試料を表しており、破線で連結されている三角は、aPTT-K4試料を表している。y軸は、正常なヒトFVIII活性を100%とした場合の正常値に対する割合(%)として、血漿中FVIII活性を示している。x軸は、レンチウイルスによる処置からの経過日数を示しており、レンチウイルスによる処置を行った日が0日目になっている。
図19-1】図19A~19Cは、ナイーブHemAイヌ(図19A)と、レンチウイルスによる処置から2週間後のS3のイヌ(図19B)と、レンチウイルスによる処置から2週間後のK4のイヌ(図19C)において、回転トロンボエラストグラフィー(ROTEM)アッセイによってモニタリングした場合の全血止血のグラフ表示である。図19A~19Cのそれぞれにおいて、凝固時間(CT)は秒で示されており、血餅形成時間(CFT)は秒で示されており、アルファ角(α)は度(°)で示されており、CTの5分後の振幅(A5)は、ミリメートル(mm)で示されており、CTの20分後の振幅(A20)は、ミリメートル(mm)で示されており、最大血餅硬度(MCF)は、ミリメートル(mm)で示されている。図19Dは、図19A~19Cに示されているCT、CFT、α、A5、A2及びMCFの各パラメーターの正常範囲をまとめた表である。
図19-2】図19A~19Cは、ナイーブHemAイヌ(図19A)と、レンチウイルスによる処置から2週間後のS3のイヌ(図19B)と、レンチウイルスによる処置から2週間後のK4のイヌ(図19C)において、回転トロンボエラストグラフィー(ROTEM)アッセイによってモニタリングした場合の全血止血のグラフ表示である。図19A~19Cのそれぞれにおいて、凝固時間(CT)は秒で示されており、血餅形成時間(CFT)は秒で示されており、アルファ角(α)は度(°)で示されており、CTの5分後の振幅(A5)は、ミリメートル(mm)で示されており、CTの20分後の振幅(A20)は、ミリメートル(mm)で示されており、最大血餅硬度(MCF)は、ミリメートル(mm)で示されている。図19Dは、図19A~19Cに示されているCT、CFT、α、A5、A2及びMCFの各パラメーターの正常範囲をまとめた表である。
【発明を実施するための形態】
【0079】
本開示は、第VIII因子(FVIII)活性を有するポリペプチドをコードするコドン最適化遺伝子を説明するものである。本開示は、第VIII因子活性を有するポリペプチドをコードするコドン最適化核酸分子、最適化核酸分子を含むベクター及び宿主細胞、最適化核酸分子によってコードされるポリペプチド、ならびにこのようなポリペプチドの作製方法に対するものである。本開示は、血友病のような出血障害の治療方法であって、その対象に、最適化第VIII因子核酸配列、その最適化核酸配列を含むベクター、またはその最適化核酸配列によってコードされるポリペプチドを投与することを含む方法にも対するものである。本開示は、宿主細胞における発現が増加し、組み換え第VIII因子の作製方法において、第VIII因子タンパク質の収量を改善させ、遺伝子療法で使用したときに、より優れた治療有効性が得られる可能性のある最適化第VIII因子配列を提供することによって、当該技術分野の重要なニーズを満たすものである。特定の実施形態では、本開示は、配列番号1~14、70及び71から選択したヌクレオチド配列に対して配列相同性を有するヌクレオチド配列を含む単離核酸分子を説明するものである。
【0080】
本開示の例示的なコンストラクトは、添付の図面と配列表に示されている。本明細書と特許請求の範囲が明確に理解されるように、以下の定義を下に示す。
【0081】
I.定義
「a」または「an」という用語の付されたものは、そのものが1つ以上であることを指すことに留意されたい。例えば、「a」の付されたヌクレオチド配列は、1つ以上のヌクレオチド配列を表すことが分かる。すなわち、「a」(または「an」)、「1つ以上」及び「少なくとも1つ」という用語は、本明細書では同義的に使用できる。
【0082】
「約」という用語は、本明細書では、およそ、おおまかには、前後またはその領域を意味するものとして使用する。「約」という用語を数値範囲と併せて使用する場合、その用語は、示されている数値の前後まで、その境界を広げることによって、その範囲を修正する。概して、「約」という用語は、本明細書では、示されている値のプラスマイナス(上下)10パーセントの幅で、数値を修正する目的で使用する。
【0083】
「単離」という用語は、本開示の目的においては、生物学的物質(細胞、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、又はその断片、バリアント若しくは誘導体)の元の環境(その物質が天然において存在する環境)から取り出した生物学的物質を指す。例えば、天然の状態で、植物または動物に存在するポリヌクレオチドは単離されていないが、天然においてそのポリヌクレオチドが存在する隣接の核酸から分離した同じポリヌクレオチドは、「単離されている」ものとみなす。特定の精製レベルが求められるわけではない。いずれかの好適な技法によって、分離、分画または部分的もしくは実質的に精製した天然のポリペプチドまたは組み換えポリペプチドと同様に、宿主細胞で発現させた組み換え作製ポリペプチドとタンパク質は、本開示の目的において、単離されているものとみなす。
【0084】
「核酸」、「核酸分子」、「オリゴヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」は、同義
的に用いられており、一本鎖形態または二重らせんのいずれかである、リン酸エステルポリマー形態のリボヌクレオシド(アデノシン、グアノシン、ウリジンもしくはシチジン、「RNA分子」)、もしくはデオキシリボヌクレオシド(デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、デオキシチミジンもしくはデオキシシチジン、「DNA分子」)、またはそれらのいずれかのホスホエステルアナログ(ホスホロチオエート及びチオエステルなど)を指す。DNA-DNA、DNA-RNA及びRNA-RNAの二重らせんも可能である。核酸分子、特にはDNA分子またはRNA分子という用語は、その分子の一次構造と二次構造のみを指し、その分子をいずれかの特定の三次形態に限定するものではない。したがって、この用語には、とりわけ、直鎖状または環状DNA分子(例えば制限断片)、プラスミド、超らせんDNA及び染色体に見られる二本鎖DNAが含まれる。特定の二本鎖DNA分子の構造について論じる際には、本明細書では、DNAの非転写鎖(すなわち、mRNAと相同な配列を有する鎖)に沿って、5’から3’末端方向のみに配列を示す通常の慣例に従って、配列を説明することができる。「組み換えDNA分子」は、分子生物学的な操作を加えたDNA分子である。DNAとしては、cDNA、ゲノムDNA、プラスミドDNA、合成DNA及び半合成DNAが挙げられるが、これらに限らない。本開示の「核酸組成物」は、本明細書に記載されているような核酸を1つ以上含む。
【0085】
本明細書で使用する場合、「コード領域」または「コード配列」は、アミノ酸に翻訳可能なコドンからなるポリヌクレオチド部分である。「終止コドン」(TAG、TGAまたはTAA)は典型的には、アミノ酸に翻訳されないが、コード領域の一部とみなすことができる。ただし、いずれのフランキング配列(例えばプロモーター、リボソーム結合部位、転写ターミネーター、イントロンなど)も、コード領域の一部ではない。コード領域の境界は典型的には、得られるポリペプチドのアミノ末端をコードする、5’末端の開始コドンと、得られるポリペプチドのカルボキシル末端をコードする、3’末端の翻訳終止コドンとによって定められる。2つ以上のコード領域が、1つのポリヌクレオチドコンストラクト、例えば1つのベクター、または別々のポリヌクレオチドコンストラクト、例えば別々の(異なる)ベクターに存在できる。すなわち、1つのベクターは、1つのコード領域のみを含むことも、または2つ以上のコード領域を含むこともできることになる。
【0086】
哺乳動物細胞によって分泌される特定のタンパク質は、成長しているタンパク質鎖が粗面小胞体を経て輸送され始めると、成熟タンパク質から切断される分泌シグナルペプチドと関連付けられている。シグナルペプチドは概して、ポリペプチドのN末端に融合しており、完全なポリペプチド、すなわち「完全長」ポリペプチドから切断されて、そのポリペプチドの分泌形態、すなわち「成熟」形態を作ることは、当業者に知られている。特定の実施形態では、ネイティブシグナルペプチド、またはポリペプチドの分泌を誘導する能力を保持している、その配列の機能的誘導体が、そのポリペプチドと機能可能に関連付けられている。あるいは、異種の哺乳動物シグナルペプチド、例えば、ヒト組織プラスミノーゲンアクチベーター(TPA)もしくはマウスβ-グルクロニダーゼシグナルペプチド、またはそれらの機能的誘導体を用いることができる。
【0087】
「下流」という用語は、参照ヌクレオチド配列の3’側にあるヌクレオチド配列を指す。特定の実施形態では、下流ヌクレオチド配列は、転写開始点に続く配列に関するものである。例えば、遺伝子の翻訳開始コドンは、転写開始部位の下流にある。
【0088】
「上流」という用語は、参照ヌクレオチド配列の5’側のヌクレオチド配列を指す。特定の実施形態では、上流ヌクレオチド配列は、コード領域または転写開始点の5’側にある配列に関するものである。例えば、大半のプロモーターは、転写開始部位の上流にある。
【0089】
本明細書で使用する場合、「遺伝子調節領域」または「調節領域」という用語は、コー
ド領域の上流(5’非コード配列)、コード領域内、またはコード領域の下流(3’非コード配列)にあるヌクレオチド配列であって、関連付けられたコード領域の転写、RNAプロセシング、安定性または翻訳に影響を及ぼすヌクレオチド配列を指す。調節領域としては、プロモーター、翻訳リーダー配列、イントロン、ポリアデニル化認識配列、RNAプロセシング部位、エフェクター結合部位及びステムループ構造を挙げることができる。コード領域が、真核細胞での発現用として意図されている場合、ポリアデニル化シグナルと転写終結配列は通常、コード配列の3’側に位置することになる。
【0090】
遺伝子産物、例えばポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、1つ以上のコード領域と機能可能に関連付けられたプロモーター及び/またはその他の発現(例えば、転写もしくは翻訳)制御エレメントを含むことができる。機能可能な関連付けにおいては、調節領域(複数可)の影響または制御下で、遺伝子産物、例えばポリペプチドの発現が行われるような形で、遺伝子産物のコード領域が、1つ以上の調節領域と関連付けられている。例えば、プロモーター機能が誘導されると、コード領域によってコードされる遺伝子産物をコードするmRNAが転写される場合、また、プロモーターとコード領域との連携の性質によって、プロモーターが遺伝子産物の発現を誘導する能力が干渉されないか、またはDNA鋳型が転写される能力が干渉されない場合、コード領域とプロモーターは、「機能可能に関連付けられている」。プロモーター以外のその他の発現制御エレメント、例えば、エンハンサー、オペレーター、リプレッサー及び転写終結シグナルをコード領域と機能可能に関連付けて、遺伝子産物の発現を誘導することもできる。
【0091】
「転写制御配列」とは、宿主細胞においてコード配列を発現させるDNA調節配列(プロモーター、エンハンサー、ターミネーターなど)を指す。様々な転写制御領域が当業者に知られている。この領域としては、脊椎動物細胞において機能する転写制御領域などが挙げられるが、これらに限らず、このような転写制御領域は、サイトメガロウイルス由来(イントロンAと連動する前初期プロモーター)、シミアンウイルス40由来(初期プロモーター)及びレトロウイルス(ラウス肉腫ウイルスなど)由来のプロモーターセグメント及びエンハンサーセグメントなどであるが、これらに限らない。他の転写制御領域としては、脊椎動物遺伝子(アクチン、熱ショックタンパク質、ウシ成長ホルモン及びウサギβ-グロビンなど)に由来するものと、真核細胞において遺伝子の発現を制御できるその他の配列が挙げられる。さらなる好適な転写制御領域としては、組織特異的なプロモーター及びエンハンサーと、リンフォカイン誘導性プロモーター(例えば、インターフェロンまたはインターロイキンによって誘導可能なプロモーター)が挙げられる。
【0092】
同様に、様々な翻訳制御エレメントが当業者に知られている。このエレメントとしては、リボソーム結合部位、翻訳開始コドン、翻訳終止コドン、及びピコルナウイルスに由来するエレメント(特に、内部リボソーム侵入部位、すなわちIRES、CITE配列ともいう)が挙げられるが、これらに限らない。
【0093】
「発現」という用語は、本明細書で使用する場合、ポリヌクレオチドから遺伝子産物、例えばRNAまたはポリペプチドを産生するプロセスを指す。発現としては、ポリヌクレオチドをメッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)またはその他のいずれかのRNA産物に転写することと、mRNAをポリペプチドに翻訳することが挙げられるが、これらに限らない。発現により、「遺伝子産物」が産生される。本明細書で使用する場合、遺伝子産物は、核酸、例えば、遺伝子の転写によって産生されるメッセンジャーRNA、または転写産物から翻訳されるポリペプチドのいずれかであることができる。本明細書に記載されている遺伝子産物としてはさらに、転写後修飾、例えばポリアデニル化もしくはスプライシングが行われた核酸、または翻訳後修飾、例えばメチル化、糖鎖付加、脂質付加、他のタンパク質サブユニットとの会合、もしくはタンパク質切断が行われた
ポリペプチドが挙げられる。「収量」という用語は、本明細書で使用する場合、遺伝子の発現によって産生されるポリペプチドの量を指す。
【0094】
「ベクター」とは、核酸を宿主細胞にクローニング及び/または移入するためのいずれかのビヒクルを指す。ベクターは、別の核酸セグメントを結合して、結合したセグメントを複製させるようにできるレプリコンであることができる。「レプリコン」とは、インビボで自己複製ユニットとして機能する、すなわち、自己制御下で複製できるいずれかの遺伝子エレメント(例えば、プラスミド、ファージ、コスミド、染色体、ウイルス)を指す。「ベクター」という用語には、インビトロ、エキソビボまたはインビボで核酸を細胞に導入するためのウイルスビヒクルと非ウイルスビヒクルの両方が含まれる。当該技術分野では、例えば、プラスミド、改変真核生物ウイルスまたは改変細菌ウイルスを含め、多くのベクターが知られているとともに、使われている。好適なベクターへのポリヌクレオチドの挿入は、相補的な付着末端を有する選択したベクターに、適切なポリヌクレオチド断片をライゲーションすることによって行うことができる。
【0095】
ベクターを操作して、そのベクターが導入された細胞の選択または同定を行える選択可能なマーカーまたはレポーターをコードするようにできる。選択可能なマーカーまたはレポーターの発現により、ベクターに含まれる他のコード領域を導入及び発現する宿主細胞の同定及び/または選択が可能になる。当該技術分野において知られているとともに、使用されている選択可能なマーカー遺伝子の例としては、アンピシリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ハイグロマイシン、ビアラホス除草剤、スルホンアミドなどに対する耐性を付与する遺伝子と、表現型マーカーとして用いられる遺伝子、すなわち、アントシアニン調節遺伝子、イソペンタニルトランスフェラーゼ遺伝子などが挙げられる。当該技術分野において知られているとともに、使用されているレポーターの例としては、ルシフェラーゼ(Luc)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、β-ガラクトシダーゼ(LacZ)、β-グルクロニダーゼ(Gus)などが挙げられる。選択可能なマーカーは、レポーターであるとみなすこともできる。
【0096】
「選択可能なマーカー」という用語は、そのマーカー遺伝子の作用、すなわち、抗生物質耐性、除草剤耐性に基づき選択できる同定因子、通常は抗生物質耐性または薬品耐性遺伝子、発色マーカー、酵素、蛍光マーカーなどを指し、その作用を用いて、目的の核酸の継承を追跡したり、及び/または目的の核酸を受け継いだ細胞もしくは生物を同定したりできる。当該技術分野において知られているとともに、使用されている選択可能なマーカー遺伝子の例としては、アンピシリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ハイグロマイシン、ビアラホス除草剤、スルホンアミドなどに対する耐性を付与する遺伝子と、表現型マーカーとして使用される遺伝子、すなわち、アントシアニン調節遺伝子、イソペンタニルトランスフェラーゼ遺伝子などが挙げられる。
【0097】
「レポーター遺伝子」という用語は、そのレポーター遺伝子の作用に基づき同定できる同定因子をコードする核酸を指し、その作用を用いて、目的の核酸の継承を追跡したり、目的の核酸を受け継いだ細胞もしくは生物を同定したり、及び/または遺伝子発現の誘導もしくは転写を測定したりする。当該技術分野において知られているとともに、使用されているレポーター遺伝子の例としては、ルシフェラーゼ(Luc)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、β-ガラクトシダーゼ(LacZ)、β-グルクロニダーゼ(Gus)などが挙げられる。選択可能なマーカー遺伝子は、レポーター遺伝子とみなすこともできる。
【0098】
「プロモーター」及び「プロモーター配列」は、同義的に使用されており、コード配列または機能性RNAの発現を制御できるDNA配列を指す。概して、コード配列は、プロ
モーター配列の3’側にある。プロモーターは、その全体が、ネイティブ遺伝子に由来することも、天然において見られる異なるプロモーターに由来する異なるエレメントで構成されていることも、さらには、合成DNAセグメントを含むこともできる。異なるプロモーターは、異なる組織もしくは細胞種においてか、異なる発生期においてか、または異なる環境条件もしくは生理的条件に応答するかして、遺伝子の発現を誘導できることは当業者であれば分かる。大半の細胞種において、大半の時点に、遺伝子を発現させるプロモーターは一般的に、「構成的プロモーター」という。特有の細胞種において遺伝子を発現させるプロモーターは一般的に、「細胞特異的プロモーター」または「組織特異的プロモーター」という。特有の発生期または細胞分化期に遺伝子を発現させるプロモーターは一般的に、「発生特異的プロモーター」または「細胞分化特異的プロモーター」という。プロモーターを誘導する作用剤、生体分子、化学物質、リガンド、光などに細胞が曝露または処置されると誘導されて、遺伝子を発現させるプロモーターは一般的に、「誘導性プロモーター」または「調節性プロモーター」という。大半の場合、調節配列の正確な境界は、完全には定められていないので、長さの異なるDNA断片が、同じプロモーター活性を有する場合があることがさらに認識されている。
【0099】
プロモーター配列は典型的には、その3’末端で転写開始部位と結合し、バックグラウンドを上回る検出可能なレベルで、転写の開始に必要な最小限の数の塩基またはエレメントを含むように、上流(5’方向)に延びている。プロモーター配列内には、転写開始部位(利便的なことに、例えば、ヌクレアーゼS1でマッピングすることによって定められる)と、RNAポリメラーゼの結合に関与するタンパク質結合ドメイン(コンセンサス配列)が見られることになる。
【0100】
「制限エンドヌクレアーゼ」及び「制限酵素」という用語は、同義的に使用されており、二本鎖DNA内の特有のヌクレオチド配列内に結合して切断する酵素を指す。
【0101】
「プラスミド」という用語は、その細胞の中央代謝の一部ではない遺伝子を運ぶことが多いとともに、通常、環状二本鎖DNA分子の形態である染色体外エレメントを指す。このようなエレメントは、いずれかの供給源に由来する自己複製配列、ゲノム組み込み型配列、ファージもしくはヌクレオチド配列、直鎖状、環状もしくは超らせんの一本鎖もしくは二本鎖DNAもしくはRNAであることができ、そのエレメントにおいては、多くのヌクレオチド配列を結合または組み換えて、適切な3’非翻訳配列とともに、選択した遺伝子産物のためのプロモーター断片とDNA配列を細胞に導入できる独自の構築体になっている。
【0102】
使用できる真核生物ウイルスベクターとしては、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ポックスウイルス、例えば、ワクシニアウイルスベクター、バキュロウイルスベクターまたはヘルペスウイルスベクターが挙げられるが、これに限らない。非ウイルスベクターとしては、プラスミド、リポソーム、荷電脂質(サイトフェクチン)、DNA-タンパク質複合体及びバイオポリマーが挙げられる。
【0103】
「クローニングベクター」とは、プラスミド、ファージまたはコスミドなど、順次複製される、ある単位長の核酸であるとともに、複製起点を含む「レプリコン」であって、そのレプリコンに別の核酸セグメントを結合して、結合したセグメントを複製させるようにできる「レプリコン」を指す。特定のクローニングベクターは、一方の細胞種、例えば細菌細胞で複製できるとともに、別の細胞種、例えば真核細胞で発現できる。クローニングベクターは典型的には、そのベクター及び/または目的の核酸配列の挿入用の1つ以上のマルチクローニング部位を含む細胞の選択に使用できる配列を1つ以上含む。
【0104】
「発現ベクター」とは、宿主細胞に挿入後に、挿入核酸配列の発現を可能にするように
設計したビヒクルを指す。挿入核酸配列は、上記のような調節領域と機能可能に関連付けた状態で配置する。
【0105】
ベクターは、当該技術分野において周知の方法、例えば、トランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、トランスダクション、細胞融合、DEAEデキストラン、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション(リソソーム融合)、遺伝子銃の使用またはDNAベクタートランスポーターによって、宿主細胞に導入する。
【0106】
「培養する」、「培養すること」及び「培養」とは、本明細書で使用する場合、細胞の成長もしくは分裂を可能にするか、または細胞を生きた状態に保つインビトロ条件下で、細胞をインキュベートすることを意味する。「培養細胞」とは、本明細書で使用する場合、インビトロで増殖されている細胞を意味する。
【0107】
本明細書で使用する場合、「ポリペプチド」という用語は、単数の「ポリペプチド」と複数の「ポリペプチド」を含むように意図されており、単量体(アミノ酸)がアミド結合(ペプチド結合としても知られている)によって直鎖状に結合されたもので構成された分子を指す。「ポリペプチド」と言う用語は、2つ以上のアミノ酸のいずれかの1本の鎖または複数の鎖を指し、特定の長さの生成物は指すものではない。したがって、ペプチド、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、「タンパク質」、「アミノ酸鎖」または2つ以上のアミノ酸の1本の鎖または複数の鎖を指す目的で使用するいずれかの他の用語が、「ポリペプチド」の定義に含まれ、「ポリペプチド」という用語は、上記の用語のいずれかの代わりに、または上記の用語のいずれかと同義的に使用できる。「ポリペプチド」という用語は、ポリペプチドの発現後修飾(糖鎖付加、アセチル化、リン酸化、アミド化、既知の保護基/ブロック基による誘導体化、タンパク質切断または非天然型アミノ酸による修飾が挙げられるが、これらに限らない)の産物も指すように意図されている。ポリペプチドは、天然の生物源に由来することも、組み換え技術によって作製することもできるが、必ずしも、特定の核酸配列から翻訳されたものである必要はない。ポリペプチドは、化学合成によるものを含むいずれかの方法で生成できる。
【0108】
「アミノ酸」という用語には、アラニン(AlaまたはA)、アルギニン(ArgまたはR)、アスパラギン(AsnまたはN)、アスパラギン酸(AspまたはD)、システイン(CysまたはC)、グルタミン(GlnまたはQ)、グルタミン酸(GluまたはE)、グリシン(GlyまたはG)、ヒスチジン(HisまたはH)、イソロイシン(IleまたはI)、ロイシン(LeuまたはL)、リシン(LysまたはK)、メチオニン(MetまたはM)、フェニルアラニン(PheまたはF)、プロリン(ProまたはP)、セリン(SerまたはS)、トレオニン(ThrまたはT)、トリプトファン(TrpまたはW)、チロシン(TyrまたはY)及びバリン(ValまたはV)が含まれる。従来のアミノ酸以外のアミノ酸も、本開示の範囲内であり、そのようなアミノ酸としては、ノルロイシン、オルニチン、ノルバリン、ホモセリン、及びEllman et al.Meth.Enzym.202:301-336(1991)に記載されているようなその他のアミノ酸残基類似体が挙げられる。このような非天然型アミノ酸残基を生成するには、Noren et al.Science 244:182(1989)及びEllmanらの上記の文献の手順を用いることができる。簡潔には、これらの手順は、非天然型アミノ酸残基を有するサプレッサーtRNAを化学的に活性化してから、RNAのインビトロ転写と翻訳を行うことが伴う。従来のアミノ酸以外のアミノ酸の導入は、当該技術分野で知られているペプチド化学を用いて行うこともできる。本明細書で使用する場合、「極性アミノ酸」という用語には、実効電荷が0であるが、その側鎖のそれぞれ異なる部分における部分電荷が0ではないアミノ酸(例えば、M、F、W、S、Y、N、Q、C)が含まれる。これらのアミノ酸は、疎水性相互作用と静電相互作用に関与することができる。本明細書で使用する場合、「荷電アミノ酸」という用語には、その側鎖の実効電荷
が0以外であることのできるアミノ酸(例えば、R、K、H、E、D)が含まれる。これらのアミノ酸は、疎水性相互作用と静電相互作用に関与することができる。
【0109】
本開示には、ポリペプチドの断片またはバリアントと、これらをいずれかに組み合わせたものも含まれる。本開示のポリペプチド結合ドメインまたは結合分子に言及する場合、「断片」または「バリアント」という用語には、参照ポリペプチドの特性(例えば、FcRn結合ドメインまたはFcバリアントに対するFcRnの結合親和性、FVIIIバリアントの凝固活性、またはVWF断片のFVIII結合活性)の少なくともいくつかを保持しているいずれのポリペプチドも含まれる。ポリペプチドの断片には、本明細書の別の箇所で論じられている特異的抗体断片に加えて、タンパク質分解断片と、欠失断片が含まれるが、天然の完全長ポリペプチド(または成熟ポリペプチド)は含まれない。本開示のポリペプチド結合ドメインまたは結合分子のバリアントには、上記の断片と、アミノ酸の置換、欠失または挿入によりアミノ酸配列が改変されたポリペプチドも含まれる。バリアントは、天然のものであることも、非天然のものであることもできる。非天然のバリアントは、当該技術分野において知られている変異誘発技法を用いて作製できる。バリアントポリペプチドは、保存的または非保存的なアミノ酸の置換、欠失または付加を含むことができる。
【0110】
「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基に置換されている置換である。類似の側鎖を有するアミノ酸残基ファミリーは、当該技術分野において定義されており、塩基性側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分岐側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が挙げられる。したがって、ポリペプチド内のアミノ酸が、同じ側鎖ファミリーの別のアミノ酸に置き換えられている場合には、その置換は、保存的とみなす。別の実施形態では、アミノ酸鎖は、側鎖ファミリーメンバーの順序及び/または組成の異なる構造的に類似の鎖と保存的に置き換えることができる。
【0111】
当該技術分野において知られているような「同一性%」という用語は、2つ以上のポリペプチド配列または2つ以上のポリヌクレオチド配列間の関係を、それらの配列の比較によって割り出したものである。当該技術分野においては、「同一性」とは、場合によっては、ポリペプチド配列またはポリヌクレオチド配列間の配列類縁性の程度を、その配列群間の適合性によって割り出したものも意味する。「同一性」は、既知の方法(Computational Molecular Biology(Lesk,A.M.,ed.)Oxford University Press,New York(1988)、Biocomputing:Informatics and Genome Projects(Smith,D.W.,ed.)Academic Press,New York(1993)、Computer Analysis of Sequence Data,Part I(Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,eds.)Humana Press,New Jersey(1994)、Sequence Analysis in Molecular Biology(von Heinje,G.,ed.)Academic Press(1987)及びSequence Analysis Primer(Gribskov,M.and Devereux,J.,eds.)Stockton Press,New York(1991)に記載されているものが挙げられるが、これらに限らない)によって容易に算出できる。同一性を割り出すための好ましい方法は、調べる配列間の適合性が最大になるように設計されている。同一性を割り出すための方法は、公的に入手可能なコンピュータープロ
グラムで体系化されている。配列アラインメントと同一性%の算出は、LASERGENEバイオインフォマティクス演算スイートのMegalignというプログラム(ウィスコンシン州マディソンのDNASTAR Inc.)、GCGスイートのプログラム(Wisconsin Package Version9.0、ウィスコンシン州マディソンのGenetics Computer Group(GCG))、BLASTP、BLASTN、BLASTX(Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403(1990))及びDNASTAR(DNASTAR,Inc.1228
S.Park St.Madison,WI 53715 USA)のような配列解析ソフトウェアを用いて行うことができる。本願の脈略内では、別段の定めのない限り、配列解析ソフトウェアを解析に用いる場合、解析結果は、参照するプログラムの「デフォルト値」に基づくものとなることが分かるであろう。本明細書で使用する場合、「デフォルト値」とは、初期化したときに、ソフトウェアに最初に搭載されている値またはパラメーターのいずれかのセットを意味することになる。本開示の最適化BDD FVIII配列と参照配列との同一性%を割り出す目的においては、参照配列内のヌクレオチドのうち、本開示の最適化BDD FVIII配列内のヌクレオチドに対応するヌクレオチドのみを用いて、同一性%を算出する。例えば、Bドメインを含む完全長FVIIIヌクレオチド配列と、本開示の最適化Bドメイン欠失(BDD)FVIIIヌクレオチド配列を比較するときには、A1、A2、A3、C1及びC2ドメインを含むアラインメント部分を用いて、同一性%を算出することになる。完全長FVIII配列のうち、Bドメインをコードする部分のヌクレオチド(アラインメントにおいて大きな「ギャップ」となる)は、非適合とはみなさない。加えて、本開示の最適化BDD FVIII配列またはその特定部分(例えば、配列番号3の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチド)と参照配列との同一性%を割り出す際には、同一性%は、適合ヌクレオチドの数を、最適化BDD-FVIII配列の完全配列または本明細書に示されているようなその特定部分内のヌクレオチドの総数で除することによって算出することになる。
【0112】
本明細書で使用する場合、「本開示の最適化BDD FVIII配列内のヌクレオチドに対応するヌクレオチド」は、参照FVIII配列に対する同一性が最大になるように、本開示の最適化BDD FVIII配列をアラインメントすることによって特定する。参照FVIII配列内の等価なアミノ酸を特定するのに用いる数は、本開示の最適化BDD
FVIII配列内の対応するアミノ酸を特定するのに用いる数に基づくものである。
【0113】
「融合」または「キメラ」タンパク質は、天然においては本質的に第1のアミノ酸配列とは連結されない第2のアミノ酸配列に連結された第1のアミノ酸配列を含む。通常は別々のタンパク質に存在するアミノ酸配列を融合ポリペプチドで合わせることができ、または通常は同じタンパク質に存在するアミノ酸配列を融合ポリペプチドで、新たな配列で配置できる(例えば、本開示の第VIII因子ドメインとIg Fcドメインとの融合)。融合タンパク質は、例えば、化学合成によって、またはペプチド領域を所望の関係でコードするポリヌクレオチドを作製もしくは翻訳することによって作製する。キメラタンパク質は、共有結合、非ペプチド結合または非共有結合によって第1のアミノ酸配列と会合した第2のアミノ酸配列をさらに含むことができる。
【0114】
本明細書で使用する場合、「挿入部位」という用語は、FVIIIポリペプチド、またはその断片、バリアントもしくは誘導体における位置のうち、異種の部分を挿入できる位置のすぐ上流の位置を指す。「挿入部位」は、数字で定められており、その数字は、成熟ネイティブFVIII(配列番号15、図11A)内のアミノ酸のうち、挿入位置のすぐN末端側である挿入部位に対応するアミノ酸の数値である。例えば、「a3は、配列番号15の1656位のアミノ酸に対応する挿入部位に、異種の部分を含む」という言い回しは、その異種の部分が、配列番号15の1656位のアミノ酸と1657位のアミノ酸に対応する2つのアミノ酸の間に位置することを示す。
【0115】
「アミノ酸のすぐ下流」という言い回しは、本明細書で使用する場合、そのアミノ酸の末端カルボキシル基のすぐ隣の位置を指す。同様に、「アミノ酸のすぐ上流」という言い回しは、そのアミノ酸の末端アミン基のすぐ隣の位置を指す。
【0116】
「挿入された」、「挿入されている」、「~に挿入された」という用語、または文法的に関連する用語は、本明細書で使用する場合、組み換えFVIIIポリペプチド内の異種の部分の位置を、ネイティブ成熟ヒトFVIIIにおける類似の位置と比較したものを指す。本明細書で使用する場合、これらの用語は、ネイティブ成熟ヒトFVIIIに対する組み換えFVIIIポリペプチドの特徴を指し、組み換えFVIIIポリペプチドを作製したいずれかの方法またはプロセスを示したり、暗示したり、または推測したりするものではない。
【0117】
本明細書で使用する場合、「半減期」という用語は、インビボにおける特定のポリペプチドの生物学的半減期を指す。半減期は、対象に投与した量の半分を、その動物の循環血液及び/またはその他の組織から除去するのに必要な時間によって表すことができる。所定のポリペプチドのクリアランス曲線を時間の関数として構築すると、その曲線は通常、急速なα相と、それよりも長いβ相を有する二相性の曲線となる。α相は典型的には、投与したFcポリペプチドが血管内と血管外で平衡状態となっていることを表し、部分的には、ポリペプチドのサイズによって決まる。β相は典型的には、血管内におけるポリペプチドの異化を表す。いくつかの実施形態では、FVIIIと、FVIIIを含むキメラタンパク質は、単相のものであるので、α相を有さず、1つのβ相のみを有する。したがって、特定の実施形態では、半減期という用語は、本明細書で使用する場合、β相におけるポリペプチドの半減期を指す。
【0118】
「連結された」という用語は、本明細書で使用する場合、第2のアミノ酸配列に共有もしくは非共有結合された第1のアミノ酸配列または第2のヌクレオチド配列に共有もしくは非共有結合された第1のヌクレオチド配列を指す。第1のアミノ酸配列は第2のアミノ酸配列に、または第1のヌクレオチド配列は第2のヌクレオチド配列に、直接結合または並置されていることができ、あるいは、介在配列が、第1の配列を第2の配列に共有結合させることもできる。「連結された」という用語は、C末端またはN末端で、第1のアミノ酸配列が第2のアミノ酸配列に融合されていることを意味するのみならず、第1のアミノ酸配列(または第2のアミノ酸配列)全体が、第2のアミノ酸配列(または第1のアミノ酸配列)内のいずれかの2つのアミノ酸に挿入されていることも含まれる。一実施形態では、第1のアミノ酸配列は、ペプチド結合またはリンカーによって、第2のアミノ酸配列に連結できる。第1のヌクレオチド配列は、ホスホジエステル結合またはリンカーによって、第2のヌクレオチド配列に連結できる。リンカーは、ペプチドもしくはポリペプチド(ポリペプチド鎖の場合)、もしくはヌクレオチドもしくはヌクレオチド鎖(ヌクレオチド鎖の場合)、またはいずれかの化学的部分(ポリペプチド鎖とポリヌクレオチド鎖の両方の場合)であることができる。「連結された」という用語は、ハイフォン(-)によっても示されている。
【0119】
本明細書で使用する場合、「~と会合した」という用語は、第1のアミノ酸鎖と第2のアミノ酸鎖との間に形成された共有結合または非共有結合を指す。一実施形態では、「~と会合した」という用語は、共有結合、非ペプチド結合または非共有結合を意味する。この会合は、コロン、すなわち(:)によって示すことができる。別の実施形態では、この会合は、ペプチド結合以外の共有結合を意味する。例えば、アミノ酸のシステインは、第2のシステイン残基のチオール基とジスルフィド結合または架橋を形成できるチオール基を含む。大半の天然のIgG分子では、CH1領域とCL領域は、ジスルフィド結合によって会合しており、2本の重鎖は、Kabatの番号付けシステムを用いた場合、239
位と242位(EUの番号付けシステムでは226位または229位の位置)に対応する位置で、2つのジスルフィド結合によって会合している。共有結合の例としては、ペプチド結合、金属結合、水素結合、ジスルフィド結合、σ結合、π結合、δ結合、グリコシド結合、アゴスチック結合、曲がった結合、双極子結合、π逆供与結合、二重結合、三重結合、四重結合、五重結合、六重結合、共役、超共役、芳香族性、ハプト数または反結合が挙げられるが、これらに限らない。非共有結合の非限定的な例としては、イオン結合(例えば、カチオン-π結合もしくは塩結合)、金属結合、水素結合(例えば、二水素結合、二水素錯体、低障壁水素結合もしくは対称的水素結合)、ファンデルワールス力、ロンドン分散力、機械結合、ハロゲン結合、金-金相互作用、インターカレーション、スタッキング、エントロピー力、または化学極性が挙げられる。
【0120】
本明細書で使用されている「単量体-二量体ハイブリッド」という用語は、ジスルフィド結合によって互いに会合している第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とを含むキメラタンパク質であって、その第1の鎖が、凝固因子、例えば第VIII因子と、第1のFc領域とを含み、第2の鎖が、凝固因子のない状態で、第2のFc領域から本質的になるか、または第2のFc領域からなるキメラタンパク質を指す。したがって、単量体-二量体ハイブリッドコンストラクトは、1つの凝固因子のみを有する単量体部分と、2つのFc領域を有する二量体部分とを含むハイブリッドである。
【0121】
止血とは、本明細書で使用する場合、出血もしくは大量出血を止めるかもしくは遅くするか、または血管もしくは身体部分を通る血流を止めるかもしくは遅くすることを意味する。
【0122】
止血障害とは、本明細書で使用する場合、遺伝的に継承または獲得した状態であって、フィブリン血餅を形成する能力の低下またはその能力がないことが原因で、自然に、または外傷によるかのいずれかで大量出血する傾向によって特徴付けられる状態を意味する。このような障害の例としては、血友病が挙げられる。主要な3つの型は、血友病A(第VIII因子の欠損)と、血友病B(第IX因子の欠損、すなわち「クリスマス病」)と、血友病C(第XI因子の欠損、軽度な出血傾向)である。その他の止血障害としては、例えば、フォンビルブランド病、第XI因子の欠損(PTAの欠損)、第XII因子の欠損、フィブリノゲン、プロトロンビン、第V因子、第VII因子、第X因子または第XIII因子の欠損または構造的異常、ベルナールスーリエ症候群(GPIbの欠陥または欠損)が挙げられる。vWFレセプターであるGPIbに欠陥があると、一次血餅形成(一次止血)が行われなくなり、出血傾向が高くなり、グランツマン及びネーゲリの血小板無力症(グランツマン血小板無力症)に至ることがある。肝不全(急性型及び慢性型)では、肝臓による凝固因子の産生が不十分で、出血リスクが向上し得る。
【0123】
本開示の単離核酸分子、単離ポリペプチド、またはその単離核酸分子を含むベクターは、予防的に用いることができる。本明細書で使用する場合、「予防的治療」という用語は、出血エピソードの前に、分子を投与することを指す。一実施形態では、一般的な止血剤を必要とする対象は、手術を受けているか、または手術を受けようとしている者である。本開示のポリヌクレオチド、ポリペプチドまたはベクターは、手術の前または後に、予防として投与できる。本開示のポリヌクレオチド、ポリペプチドまたはベクターは、急性出血エピソードを制御する目的で、手術の最中または後に投与できる。手術としては、肝移植、肝切除、歯科的処置または幹細胞移植を挙げることができるが、これらに限らない。
【0124】
本開示の単離核酸分子、単離ポリペプチドまたはベクターは、オンデマンド治療にも用いられる。「オンデマンド治療」という用語は、出血エピソードの症状に応じて、または出血の原因となり得る活動の前に、単離核酸分子、単離ポリペプチドまたはベクターを投与することを指す。一態様では、オンデマンド治療は、損傷後のように、出血が開始した
ら、または手術前のように、出血が予測されるときに、対象に行うことができる。別の態様では、オンデマンド治療は、コンタクトスポーツのように、出血リスクを向上させる活動のまえに行うことができる。
【0125】
本明細書で使用する場合、「急性出血」という用語は、根本的な原因にかかわらず、出血エピソードを指す。例えば、対象は、外傷、尿毒症、遺伝性出血障害(例えば第VII因子の欠損)、血小板障害、または凝固因子に対する抗体の発生による耐性を有する者であることができる。
【0126】
治療する、治療、治療することとは、本明細書で使用する場合、例えば、疾患もしくは状態の重症度の低下、疾患経過期間の短縮、疾患もしくは状態と関連する1つ以上の症状の改善、疾患もしくは状態を有する対象への有益な作用の提供(必ずしも、疾患もしくは状態を治癒させる必要はない)、または疾患もしくは状態と関連する1つ以上の症状の予防を指す。一実施形態では、「治療すること」または「治療」という用語は、本開示の単離核酸分子、単離ポリペプチドまたはベクターを投与することによって、対象において、FVIIIトラフレベルを少なくとも約1IU/dL、2IU/dL、3IU/dL、4IU/dL、5IU/dL、6IU/dL、7IU/dL、8IU/dL、9IU/dL、10IU/dL、11IU/dL、12IU/dL、13IU/dL、14IU/dL、15IU/dL、16IU/dL、17IU/dL、18IU/dL、19IU/dLまたは20IU/dLに保つことを意味する。別の実施形態では、治療することまたは治療とは、FVIIIトラフレベルを約1~約20IU/dL、約2~約20IU/dL、約3~約20IU/dL、約4~約20IU/dL、約5~約20IU/dL、約6~約20IU/dL、約7~約20IU/dL、約8~約20IU/dL、約9~約20IU/dLまたは約10~約20IU/dLに保つことを意味する。疾患もしくは状態の治療、または疾患もしくは状態を治療することには、対象において、FVIII活性を、血友病ではない対象におけるFVIII活性の少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%または20%に相当するレベルに保つことを含めることもできる。治療に必要な最低トラフレベルは、1つ以上の既知の方法によって測定でき、それぞれの人に合わせて調節できる(上昇または低下させることができる)。
【0127】
「投与すること」とは、本明細書で使用する場合、製薬学的に許容可能な経路を介して、本開示の第VIII因子をコードする製薬学的に許容可能な核酸分子、第VIII因子ポリペプチド、または第VIII因子をコードする核酸分子を含むベクターを対象に与えることを意味する。投与経路は、静脈内、例えば、静脈内注射及び静脈内注入であることができる。追加の投与経路としては、例えば、皮下投与、筋肉内投与、経口投与、経鼻投与及び経肺投与が挙げられる。本開示の核酸分子、ポリペプチド及びベクターは、少なくとも1つの賦形剤を含む医薬組成物の一部として投与できる。
【0128】
本明細書で使用する場合、「必要とする対象」という言い回しには、例えば、止血を改善する目的で、本開示の核酸分子、ポリペプチドまたはベクターを投与すると、恩恵を受けると見られる対象(哺乳動物の対象など)が含まれる。一実施形態では、対象としては、血友病の個体が挙げられるが、これらに限らない。別の実施形態では、対象としては、FVIIIインヒビターが発生しているために、バイパス療法が必要な個体が挙げられるが、これらに限らない。対象は、成人であることも、未成年(例えば12歳未満)であることもできる。
【0129】
本明細書で使用する場合、「凝固因子」という用語は、天然のものであるか、または組み換え作製した分子またはそのアナログであって、対象において出血エピソードを予防するか、またはその期間を短縮する分子またはそのアナログを指す。換言すると、この因子
は、凝固促進活性を有する分子、すなわち、フィブリノゲンをメッシュ状の不溶性フィブリンに変換して、血液を凝固(coagulate)または凝固(clot)させることを担う分子を意味する。「活性化可能な凝固因子」は、活性形態に変換できる不活性形態(例えば、そのチモーゲン形態)にある凝固因子である。
【0130】
凝固活性とは、本明細書で使用する場合、フィブリン血餅を形成させ、及び/または大量出血もしくは出血エピソードの重症度、期間もしくは頻度を低減する生化学反応カスケードに関与する能力を意味する。
【0131】
本明細書で使用する場合、「異種」または「外因性」という用語は、通常、所定の状況、例えば細胞またはポリペプチドでは見られないような分子を指す。例えば、外因性または異種の分子は、細胞に導入でき、例えばトランスフェクションもしくはその他の形態の遺伝子組み換えによって、その細胞を操作した後のみに存在するか、または異種のアミノ酸配列は、天然においてはその配列が見られないタンパク質に存在できる。
【0132】
本明細書で使用する場合、「異種のヌクレオチド配列」という用語は、天然においては所定のポリヌクレオチド配列で見られないヌクレオチド配列を指す。一実施形態では、異種のヌクレオチド配列は、FVIIIの半減期を延長できるポリペプチドをコードする。別の実施形態では、異種のヌクレオチド配列は、FVIIIの流体力学的半径を増大させるポリペプチドをコードする。別の実施形態では、異種のヌクレオチド配列は、FVIIIの生物学的活性または機能(例えば、その凝固促進活性)に有意な影響を及ぼすことなく、FVIIIの1つ以上の薬物動態特性を改善するポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態では、FVIIIは、異種のヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドに、リンカーによって連結または接合されている。異種のヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド部分の非限定的な例としては、免疫グロブリン定常領域もしくはその一部、アルブミンもしくはその断片、アルブミン結合部分、トランスフェリン、米国特許出願公開第20100292130号のPASポリペプチド、HAP配列、トランスフェリンもしくはその断片、ヒト絨毛性ゴナドトロピンのβサブユニットのC末端ペプチド(CTP)、アルブミン結合低分子、XTEN配列、FcRn結合部分(例えば、完全Fc領域もしくはそのうちのFcRnに結合する部分)、一本鎖Fc領域(例えば、US2008/0260738、WO2008/012543もしくはWO2008/1439545に記載されているようなScFc領域)、ポリグリシンリンカー、ポリセリンリンカー、グリシン(G)、アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T)、グルタメート(E)及びプロリン(P)から選択した2種類のアミノ酸の6~40個のアミノ酸のペプチド及び短いポリペプチドであって、二次構造の程度がとりわけ、50%未満から50%超まで様々であるペプチド及び短いポリペプチド、またはこれらの2つ以上を組み合わせたものが挙げられる。いくつかの実施形態では、異種のヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドは、ポリペプチド以外の部分に連結されている。ポリペプチド以外の部分の非限定的な例としては、ポリエチレングリコール(PEG)、アルブミン結合低分子、ポリシアル酸、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、これらの誘導体またはこれらをいずれかに組み合わせたものが挙げられる。
【0133】
本明細書で使用する場合、「Fc領域」という用語は、ネイティブIgのFc領域に対応するポリペプチド部分、すなわち、2つの重鎖のそれぞれのFcドメインの二量体会合によって形成されるような部分として定義する。ネイティブFc領域は、もう一方のFc領域とホモ二量体を形成する。これに対して、「遺伝子工学によって融合したFc領域」または「一本鎖Fc領域」(scFc領域)という用語は、本明細書で使用する場合、1本のポリペプチド鎖において、遺伝子工学によって連結された(すなわち、1つの連続する遺伝子配列でコードされた)Fcドメインで構成された合成二量体Fc領域を指す。
【0134】
一実施形態では、「Fc領域」とは、1つのIg重鎖の部分のうち、ヒンジ領域において、パパイン切断部位(すなわち、重鎖定常領域の第1の残基を114位としたときのIgGの216位の残基)のすぐ上流から始まり、その抗体のC末端で終わる部分を指す。したがって、完全Fcドメインは少なくとも、ヒンジドメインと、CH2ドメインと、CH3ドメインを含む。
【0135】
Ig定常領域のFc領域は、Igアイソタイプに応じて、CH2ドメインと、CH3ドメインと、CH4ドメインと、ヒンジ領域を含むことができる。IgのFc領域を含むキメラタンパク質は、安定性の向上、血清中半減期の延長(Capon et al.,1989,Nature 337:525を参照されたい)、Fcレセプター(胎児性Fcレセプターなど)(FcRn)への結合(米国特許第6,086,875号、同第6,485,726号、同第6,030,613、WO03/077834、US2003-0235536A1、これらの特許は、参照により、その全体が本明細書に援用される)を含め、いくつかの望ましい特性をキメラタンパク質に付与する。
【0136】
「参照ヌクレオチド配列」とは、本明細書において、本開示のヌクレオチド配列に対する比較配列として用いる場合、FVIII配列に対応する部分が最適化されていない以外は、本開示のヌクレオチド配列と本質的に同一のポリヌクレオチド配列である。例えば、配列番号1のコドン最適化BDD FVIIIと、一本鎖Fc領域をコードする異種のヌクレオチド配列であって、配列番号1にその3’末端で連結された異種のヌクレオチド配列とからなる核酸分子に対する参照ヌクレオチド配列は、配列番号16(図1I)の元の(すなわち「親」)BDD FVIIIと、一本鎖Fc領域をコードする同じ異種のヌクレオチド配列であって、配列番号16にその3’末端で連結された同じ異種のヌクレオチド配列とからなる核酸分子である。
【0137】
「コドン適応指標」とは、本明細書で使用する場合、コドン使用頻度バイアスの尺度を指す。コドン適応指標(CAI)は、所定のタンパク質コード遺伝子配列の参照遺伝子セットに対する偏差を測定するものである(Sharp PM and Li WH,Nucleic Acids Res.15(3):1281-95(1987))。CAIは、下記のように、遺伝子配列の長さ(コドンで測定)にわたって、各コドンに関連付けられた重みの幾何平均を割り出すことによって算出する。
【数1】
【0138】
下記のように、各アミノ酸に関して、CAIにおけるその各コドンの重みは、そのアミノ酸のコドンの観察頻度(fi)と同義コドンの頻度(fj)との比として演算する。
【0139】
式2:
【数2】
【0140】
本明細書で使用する場合、「最適化された」という用語は、ヌクレオチド配列に関しては、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列であって、そのポリヌクレオチド配列の特性が増強されるように変異させたポリヌクレオチド配列を指す。いくつかの実施形
態では、最適化は、転写レベルを高めたり、翻訳レベルを高めたり、定常状態のmRNAレベルを高めたり、調節タンパク質(基本転写因子など)の結合を増大もしくは低減したり、スプライシングを増大もしくは低減したり、またはポリヌクレオチド配列によって産生されるポリペプチドの収量を増加させたりするために行う。ポリヌクレオチド配列を最適化するために、ポリヌクレオチド配列に加えることのできる変更の例としては、コドンの最適化、G/C含有率の最適化、反復配列の除去、ATリッチエレメントの除去、クリプティックスプライス部位の除去、転写または翻訳を抑制するシス作動性エレメントの除去、ポリT配列またはポリA配列の付加または除去、転写を増強する転写開始部位周囲配列(Kozakコンセンサス配列など)の付加、ステムループ構造を形成し得る配列の除去、不安定化配列の除去、及びこれらを2つ以上組み合わせたものが挙げられる。
【0141】
FVIIIタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列
いくつかの実施形態では、本開示は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするコドン最適化核酸分子に対するものである。いくつかの実施形態では、そのポリヌクレオチドは、完全長FVIIIポリペプチドをコードする。別の実施形態では、その核酸分子は、Bドメイン欠失(BDD)FVIIIポリペプチドをコードし、FVIIIのBドメインの全体または一部が欠失している。特定的な一実施形態では、その核酸分子は、配列番号17(図1J)またはその断片に対する配列同一性が少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%であるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする。一実施形態では、その核酸分子は、配列番号17またはその断片のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする。
【0142】
いくつかの実施形態では、本開示の核酸分子は、シグナルペプチドまたはその断片を含むFVIIIポリペプチドをコードする。別の実施形態では、その核酸分子は、シグナルペプチドが欠損しているFVIIIポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態では、シグナルペプチドは、配列番号17の1~19位のアミノ酸を含む。
【0143】
いくつかの実施形態では、本開示は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第1の核酸配列と、FVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第2の核酸配列とを含むヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、(i)配列番号3の58~1791位のヌクレオチドまたは(ii)配列番号4の58~1791位のヌクレオチドに対する第1の核酸配列の配列同一性が少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%であり、そのN末端部分とC末端部分が一体になって、FVIIIポリペプチド活性を有する単離核酸分子を提供する。特定的な一実施形態では、第1の核酸配列は、配列番号3の58~1791位のヌクレオチドに対する配列同一性が少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である。別の実施形態では、第1の核酸配列は、配列番号4の58~1791位のヌクレオチドに対する配列同一性が少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である。別の実施形態では、第1のヌクレオチド配列は、配列番号3の58~1791位のヌクレオチドまたは配列番号4の58~1791位のヌクレオチドを含む。
【0144】
別の実施形態では、本開示は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第1の核酸配列と、FVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第2の核酸配列とを含むヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、(i)配列番号3の1~1791位のヌクレオチドまたは(ii)配列番号4の1~1791位のヌクレオチドに対する第1の
核酸配列の配列同一性が少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%であり、そのN末端部分とC末端部分が一体になって、FVIIIポリペプチド活性を有する単離核酸分子を提供する。一実施形態では、第1のヌクレオチド配列は、配列番号3の1~1791位のヌクレオチドまたは配列番号4の1~1791位のヌクレオチドを含む。別の実施形態では、第2のヌクレオチド配列は、配列番号3の1792~4374位または配列番号4の1792~4374位のヌクレオチドに対する配列同一性が少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である。特定的な一実施形態では、第2のヌクレオチド配列は、配列番号3の1792~4374位または配列番号4の1792~4374位のヌクレオチドを含む。さらに別の実施形態では、第2のヌクレオチド配列は、配列番号3の1792~2277位と2320~4374位または配列番号4の1792~2277位と2320~4374位のヌクレオチド(すなわち、配列番号3の1792~4374位または配列番号4の1792~4374位のヌクレオチドから、BドメインまたはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを除外したもの)に対する配列同一性が少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である。特定的な一実施形態では、第2のヌクレオチド配列は、配列番号3の1792~2277位と2320~4374位または配列番号4の1792~2277位と2320~4374位のヌクレオチド(すなわち、配列番号3の1792~4374位または配列番号4の1792~4374位のヌクレオチドから、BドメインまたはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを除外したもの)を含む。
【0145】
いくつかの実施形態では、本開示は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第1の核酸配列と、FVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第2の核酸配列とを含むヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、(i)配列番号5の1792~4374位または(ii)配列番号6の1792~4374位のヌクレオチドに対する第2の核酸配列の配列同一性が少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%であり、そのN末端部分とC末端部分が一体になって、FVIIIポリペプチド活性を有する単離核酸分子を提供する。特定の実施形態では、第2の核酸配列は、配列番号5の1792~4374位のヌクレオチドに対する配列同一性が少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である。別の実施形態では、第2の核酸配列は、配列番号6の1792~4374位のヌクレオチドに対する配列同一性が少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である。特定的な一実施形態では、第2の核酸配列は、配列番号5の1792~4374位または配列番号6の1792~4374位のヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、上に列挙した第2の核酸配列に連結された第1の核酸配列は、配列番号5の58~1791位のヌクレオチドまたは配列番号6の58~1791位のヌクレオチドに対する配列同一性が少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である。別の実施形態では、上に列挙した第2の核酸配列に連結された第1の核酸配列は、配列番号5の1~1791位のヌクレオチドまたは配列番号6の1~1791位のヌクレオチドに対する配列同一性が少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である。
【0146】
別の実施形態では、本開示は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第1の核酸配列と、FVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第2の核酸配列とを含
むヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、(i)配列番号5の1792~2277位と2320~4374位のヌクレオチド(すなわち、配列番号5の1792~4374位のヌクレオチドから、BドメインもしくはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを除外したもの)または(ii)配列番号6の1792~2277位と2320~4374位のヌクレオチド(すなわち、配列番号6の1792~4374位のヌクレオチドから、BドメインもしくはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを除外したもの)に対する第2の核酸配列の配列同一性が少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%であり、そのN末端部分とC末端部分が一体になって、FVIIIポリペプチド活性を有する単離核酸分子を提供する。特定の実施形態では、第2の核酸配列は、配列番号5の1792~2277位と2320~4374位のヌクレオチド(すなわち、配列番号5の1792~4374位のヌクレオチドから、BドメインまたはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを除外したもの)に対する配列同一性が少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である。別の実施形態では、第2の核酸配列は、配列番号6の1792~2277位と2320~4374位のヌクレオチド(すなわち、配列番号6の1792~4374位のヌクレオチドから、BドメインまたはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを除外したもの)に対する配列同一性が少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である。特定的な一実施形態では、第2の核酸配列は、配列番号5の1792~2277位と2320~4374位または配列番号6の1792~2277位と2320~4374位のヌクレオチド(すなわち、配列番号5の1792~4374位または配列番号6の1792~4374位のヌクレオチドから、BドメインまたはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを除外したもの)を含む。いくつかの実施形態では、上に列挙した第2の核酸配列に連結された第1の核酸配列は、配列番号5の58~1791位のヌクレオチドまたは配列番号6の58~1791位のヌクレオチドに対する配列同一性が少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である。別の実施形態では、上に列挙した第2の核酸配列に連結された第1の核酸配列は、配列番号5の1~1791位のヌクレオチドまたは配列番号6の1~1791位のヌクレオチドに対する配列同一性が少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である。
【0147】
いくつかの実施形態では、本開示は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第1の核酸配列と、FVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第2の核酸配列とを含むヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、(i)配列番号1の58~1791位ヌクレオチド、(ii)配列番号2の58~1791位のヌクレオチド、(iii)配列番号70の58~1791位のヌクレオチドまたは(iv)配列番号71の58~1791位のヌクレオチドに対する第1の核酸配列の配列同一性が少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%であり、そのN末端部分とC末端部分が一体になって、FVIIIポリペプチド活性を有する単離核酸分子を提供する。別の実施形態では、第1のヌクレオチド配列は、配列番号1の58~1791位のヌクレオチド、配列番号2の58~1791位のヌクレオチド、(iii)配列番号70の58~1791位のヌクレオチドまたは(iv)配列番号71の58~1791位のヌクレオチドを含む。
【0148】
別の実施形態では、本開示は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第1の核酸配列と、FVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第2の核酸配列とを含むヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、(i)配列番号1の1~1791位の
ヌクレオチド、(ii)配列番号2の1~1791位のヌクレオチド、(iii)配列番号70の1~1791位のヌクレオチドまたは(iv)配列番号71の1~1791位のヌクレオチドに対する第1の核酸配列の配列同一性が少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%であり、そのN末端部分とC末端部分が一体になって、FVIIIポリペプチド活性を有する単離核酸分子を提供する。一実施形態では、第1のヌクレオチド配列は、配列番号1の1~1791位のヌクレオチド、配列番号2の1~1791位のヌクレオチド、(iii)配列番号70の1~1791位のヌクレオチドまたは(iv)配列番号71の1~1791位のヌクレオチドを含む。別の実施形態では、第1のヌクレオチド配列に連結された第2のヌクレオチド配列は、配列番号1の1792~4374位のヌクレオチド、配列番号2の1792~4374位のヌクレオチド、(iii)配列番号70の1792~4374位のヌクレオチドまたは(iv)配列番号71の1792~4374位のヌクレオチドに対する配列同一性が少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である。特定的な一実施形態では、第1のヌクレオチド配列に連結された第2のヌクレオチド配列は、(i)配列番号1の1792~4374位のヌクレオチド、(ii)配列番号2の1792~4374位のヌクレオチド、(iii)配列番号70の1792~4374位のヌクレオチドまたは(iv)配列番号71の1792~4374位のヌクレオチドを含む。別の実施形態では、第1のヌクレオチド配列に連結された第2のヌクレオチド配列は、(i)配列番号1の1792~2277位と2320~4374位のヌクレオチド、(ii)配列番号2の1792~2277位と2320~4374位のヌクレオチド、(iii)配列番号70の1792~2277位と2320~4374位のヌクレオチドまたは(iv)配列番号71の1792~2277位と2320~4374位のヌクレオチドに対する配列同一性が、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である。一実施形態では、第2のヌクレオチド配列は、(i)配列番号1の1792~2277位と2320~4374位のヌクレオチド、(ii)配列番号2の1792~2277位と2320~4374位のヌクレオチド、(iii)配列番号70の1792~2277位と2320~4374位のヌクレオチドまたは(iv)配列番号71の1792~2277位と2320~4374位のヌクレオチドを含む。
【0149】
別の実施形態では、本開示は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第1の核酸配列と、FVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第2の核酸配列とを含むヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、(i)配列番号1の1792~4374位のヌクレオチド、(ii)配列番号2の1792~4374位のヌクレオチド、(iii)配列番号70の1792~4374位のヌクレオチドまたは(iv)配列番号71の1792~4374位のヌクレオチドに対する第2の核酸配列の配列同一性が少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%であり、そのN末端部分とC末端部分が一体になって、FVIIIポリペプチド活性を有する単離核酸分子を提供する。特定的な一実施形態では、第2の核酸配列は、(i)配列番号1の1792~4374位のヌクレオチド、(ii)配列番号2の1792~4374位のヌクレオチド、(iii)配列番号70の1792~4374位のヌクレオチドまたは(iv)配列番号71の1792~4374位のヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、本開示は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第1の核酸配列と、FVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第2の核酸配列とを含むヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、(i)配列番号1の1792~2277位と2320~4374位のヌクレオチド、(ii)配列番号2の1792~2277位と2320~4374位のヌクレオチド、(iii)配列番号70の1792~2277位と2320~4374位のヌクレオチドまたは(iv)配列番号71
の1792~2277位と2320~4374位のヌクレオチド(すなわち、配列番号1の1792~4374位のヌクレオチド、配列番号2の1792~4374位のヌクレオチド、配列番号70の1792~4374位のヌクレオチドまたは配列番号71の1792~4374位のヌクレオチドから、BドメインまたはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを除外したもの)に対する第2の核酸配列の配列同一性が少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%であり、そのN末端部分とC末端部分が一体になって、FVIIIポリペプチド活性を有する単離核酸分子を提供する。一実施形態では、第2の核酸配列は、(i)配列番号1の1792~2277位と2320~4374位のヌクレオチド、(ii)配列番号2の1792~2277位と2320~4374位のヌクレオチド、(iii)配列番号70の1792~2277位と2320~4374位のヌクレオチドまたは(iv)配列番号71の1792~2277位と2320~4374位のヌクレオチド(すなわち、配列番号1の1792~4374位のヌクレオチド、配列番号2の1792~4374位のヌクレオチド、配列番号70の1792~4374位のヌクレオチドまたは配列番号71の1792~4374位のヌクレオチドから、BドメインまたはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを除外したもの)を含む。
【0150】
いくつかの実施形態では、本開示は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、配列番号1の58~4374位のヌクレオチドに対する配列同一性が少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である核酸配列をそのヌクレオチド配列が含む単離核酸分子を提供する。別の実施形態では、そのヌクレオチド配列は、配列番号1の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチド(すなわち、配列番号1の58~4374位のヌクレオチドから、BドメインまたはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを除外したもの)に対する配列同一性が少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である核酸配列を含む。別の実施形態では、その核酸配列は、配列番号1に対する配列同一性が少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である。別の実施形態では、そのヌクレオチド配列は、配列番号1の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチド(すなわち、配列番号1の58~4374位のヌクレオチドから、BドメインもしくはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを除外したもの)、または配列番号1の58~4374位のヌクレオチドを含む。さらに別の実施形態では、そのヌクレオチド配列は、配列番号1の1~2277位と2320~4374位のヌクレオチド(すなわち、配列番号1の1~4374位のヌクレオチドから、BドメインもしくはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを除外したもの)、または配列番号1の1~4374位のヌクレオチドを含む。
【0151】
いくつかの実施形態では、本開示は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、配列番号2の58~4374位のヌクレオチドに対する配列同一性が少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である核酸配列をそのヌクレオチド配列が含む単離核酸分子を提供する。別の実施形態では、そのヌクレオチド配列は、配列番号2の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチドに対する配列同一性が少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である核酸配列を含む。別の実施形態では、その核酸配列は、配列番号2に対する配列同一性が少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%であ
る。別の実施形態では、そのヌクレオチド配列は、配列番号2の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチド(すなわち、配列番号2の58~4374位のヌクレオチドから、BドメインもしくはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを除外したもの)、または配列番号2の58~4374位のヌクレオチドを含む。さらに別の実施形態では、そのヌクレオチド配列は、配列番号2の1~2277位と2320~4374位のヌクレオチド(すなわち、配列番号2の1~4374位のヌクレオチドから、BドメインもしくはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを除外したもの)、または配列番号2の1~4374位のヌクレオチドを含む。
【0152】
いくつかの実施形態では、本開示は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、配列番号70の58~4374位のヌクレオチドに対する配列同一性が少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である核酸配列をそのヌクレオチド配列が含む単離核酸分子を提供する。別の実施形態では、そのヌクレオチド配列は、配列番号70の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチド(すなわち、配列番号70の58~4374位のヌクレオチドから、BドメインまたはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを除外したもの)に対する配列同一性が少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である核酸配列を含む。別の実施形態では、その核酸配列は、配列番号70に対する配列同一性が少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である。別の実施形態では、そのヌクレオチド配列は、配列番号70の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチド(すなわち、配列番号70の58~4374位のヌクレオチドから、BドメインもしくはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを除外したもの)、または配列番号70の58~4374位のヌクレオチドを含む。さらに別の実施形態では、そのヌクレオチド配列は、配列番号70の1~2277位と2320~4374位のヌクレオチド(すなわち、配列番号70の1~4374位のヌクレオチドから、BドメインもしくはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを除外したもの)、または配列番号70の1~4374位のヌクレオチドを含む。
【0153】
いくつかの実施形態では、本開示は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、配列番号71の58~4374位のヌクレオチドに対する配列同一性が少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である核酸配列をそのヌクレオチド配列が含む単離核酸分子を提供する。別の実施形態では、そのヌクレオチド配列は、配列番号71の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチド(すなわち、配列番号71の58~4374位のヌクレオチドから、BドメインまたはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを除外したもの)に対する配列同一性が少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である核酸配列を含む。別の実施形態では、その核酸配列は、配列番号71に対する配列同一性が少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である。別の実施形態で
は、そのヌクレオチド配列は、配列番号71の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチド(すなわち、配列番号71の58~4374位のヌクレオチドから、BドメインもしくはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを除外したもの)、または配列番号1の58~4374位のヌクレオチドを含む。さらに別の実施形態では、そのヌクレオチド配列は、配列番号71の1~2277位と2320~4374位のヌクレオチド(すなわち、配列番号71の1~4374位のヌクレオチドから、BドメインもしくはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを除外したもの)、または配列番号71の1~4374位のヌクレオチドを含む。
【0154】
いくつかの実施形態では、本開示は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、配列番号3の58~4374位のヌクレオチドに対する配列同一性が少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である核酸配列をそのヌクレオチド配列が含む単離核酸分子を提供する。別の実施形態では、そのヌクレオチド配列は、配列番号3の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチド(すなわち、配列番号3の58~4374位のヌクレオチドから、BドメインまたはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを除外したもの)に対する配列同一性が少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である核酸配列を含む。特定の実施形態では、その核酸配列は、配列番号3に対する配列同一性が少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である。いくつかの実施形態では、そのヌクレオチド配列は、配列番号3の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチド(すなわち、配列番号3の58~4374位のヌクレオチドから、BドメインもしくはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを除外したもの)、または配列番号3の58~4374位のヌクレオチドを含む。さらに別の実施形態では、そのヌクレオチド配列は、配列番号3の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチド(すなわち、配列番号3の1~4374位のヌクレオチドから、BドメインもしくはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを除外したもの)、または配列番号3の1~4374位のヌクレオチドを含む。
【0155】
いくつかの実施形態では、本開示は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、配列番号4の58~4374位のヌクレオチドに対する配列同一性が少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である核酸配列をそのヌクレオチド配列が含む単離核酸分子を提供する。別の実施形態では、そのヌクレオチド配列は、配列番号4の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチド(すなわち、配列番号4の8~4374位のヌクレオチドから、BドメインまたはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを除外したもの)に対する配列同一性が少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である核酸配列を含む。別の実施形態では、その核酸配列は、配列番号4に対する配列同一性が少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である。別の実施形態では、そのヌクレオチド配列は、配列番号4の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチド(すなわち、配列番号4の58~4374位のヌクレオチドから、BドメインもしくはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを除外したもの)、または配列番号4の58~4374位のヌクレオチドを含む。さらに別の実施形態では、そのヌクレオチド配列は、配列番号4の1~2277位と2320~4374位のヌクレオチド(すなわち、配列番号
4の1~4374位のヌクレオチドから、BドメインもしくはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを除外したもの)、または配列番号4の1~4374位のヌクレオチドを含む。
【0156】
いくつかの実施形態では、本開示は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、配列番号5の58~4374位のヌクレオチドに対する配列同一性が少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である核酸配列をそのヌクレオチド配列が含む単離核酸分子を提供する。別の実施形態では、そのヌクレオチド配列は、配列番号5の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチド(すなわち、配列番号5の58~4374位のヌクレオチドから、BドメインまたはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを除外したもの)に対する配列同一性が少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である核酸配列を含む。特定の実施形態では、その核酸配列は、配列番号5に対する配列同一性が少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である。いくつかの実施形態では、そのヌクレオチド配列は、配列番号5の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチド(すなわち、配列番号5の58~4374位のヌクレオチドから、BドメインもしくはBドメイン断片をコードするヌクレオチドから除去したもの)、または配列番号5の58~4374位のヌクレオチドを含む。さらに別の実施形態では、そのヌクレオチド配列は、配列番号5の1~2277位と2320~4374位のヌクレオチド(すなわち、配列番号5の1~4374位のヌクレオチドから、BドメインもしくはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを除外したもの)、または配列番号5の1~4374位のヌクレオチドを含む。
【0157】
いくつかの実施形態では、本開示は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、配列番号6の58~4374位のヌクレオチドに対する配列同一性が少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である核酸配列をそのヌクレオチド配列が含む単離核酸分子を提供する。別の実施形態では、そのヌクレオチド配列は、配列番号6の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチド(すなわち、配列番号6の58~4374位のヌクレオチドから、BドメインまたはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを除外したもの)に対する配列同一性が少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である核酸配列を含む。特定の実施形態では、その核酸配列は、配列番号6に対する配列同一性が少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である。いくつかの実施形態では、そのヌクレオチド配列は、配列番号6の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチド(すなわち、配列番号6の58~4374位のヌクレオチドから、BドメインもしくはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを除外したもの)、または配列番号6の58~4374位のヌクレオチドを含む。さらに別の実施形態では、そのヌクレオチド配列は、配列番号6の1~2277位と2320~4374位のヌクレオチド(すなわち、配列番号6の1~4374位のヌクレオチドから、BドメインもしくはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを除去したもの)、または配列
番号6の1~4374位のヌクレオチドを含む。
【0158】
いくつかの実施形態では、本開示のヌクレオチド配列は、シグナルペプチドをコードする核酸配列を含む。特定の実施形態では、そのシグナルペプチドは、FVIIIシグナルペプチドである。いくつかの実施形態では、シグナルペプチドをコードする核酸配列は、コドンが最適化されている。特定的な一実施形態では、シグナルペプチドをコードする核酸配列は、(i)配列番号1の1~57位のヌクレオチド、(ii)配列番号2の1~57位のヌクレオチド、(iii)配列番号3の1~57位のヌクレオチド、(iv)配列番号4の1~57位のヌクレオチド、(v)配列番号5の1~57位のヌクレオチド、(vi)配列番号6の1~57位のヌクレオチド、(vii)配列番号70の1~57位のヌクレオチド、(viii)配列番号71の1~57位のヌクレオチドまたは(ix)配列番号68の1~57位のヌクレオチドに対する配列同一性が少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%である。
【0159】
配列番号1~6、70及び71は、出発または「親」もしくは「野生型」FVIIIヌクレオチド配列である配列番号16の最適化型である。配列番号16は、Bドメイン欠失ヒトFVIIIをコードする。配列番号1~6、70及び71は、ある特定のBドメイン欠失型のFVIII(配列番号16)に由来するが、本開示は、その他の型のFVIIIをコードする核酸の最適化型に対するものでもあることを理解されたい。例えば、その他の型のFVIIIとしては、完全長FVIII、その他のBドメイン欠失型のFVIII(下記の型)またはFVIII活性を保持しているその他のFVIII断片を挙げることができる。
【0160】
「FVIII活性を有するポリペプチド」とは、本明細書で使用する場合、別段の定めのない限り、凝固の際のその正常な役割における機能性FVIIIポリペプチドを意味する。FVIII活性を有するポリペプチドという用語には、凝固経路における完全長野生型第VIII因子の機能を保持しているその機能性断片、バリアント、アナログまたは誘導体が含まれる。「FVIII活性を有するポリペプチド」は、FVIIIタンパク質、FVIIIポリペプチドまたはFVIIIと同義的に用いられている。FVIIIの機能の例としては、凝固を活性化させる能力、第IX因子の補因子として作用する能力、またはCa2+とリン脂質の存在下で、第IX因子とのテナーゼ複合体を形成させてから、第X因子を活性化形態Xaに変換する能力が挙げられるが、これらに限らない。一実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドは、2本のポリペプチド鎖を含み、その第1の鎖は、FVIII重鎖を有し、第2の鎖は、FVIII軽鎖を有する。別の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドは、一本鎖FVIIIである。一本鎖FVIIIは、成熟FVIII配列に対応する1645位及び/または1648位のアミノ酸残基に、1つ以上の変異または置換を含むことができる。国際出願第PCT/US2012/045784(参照により、その全体が本明細書に援用される)を参照されたい。FVIIIタンパク質は、ヒトFVIIIタンパク質、ブタFVIIIタンパク質、イヌFVIIIタンパク質、ラットFVIIIタンパク質またはマウスFVIIIタンパク質であることができる。加えて、ヒトのFVIIIとその他の種のFVIIIとの比較により、機能するために必要な可能性の高い保存残基が同定されている(Cameron et al.,Thromb.Haemost.79:317-22(1998)、US6,251,632)。
【0161】
FVIIIの「Bドメイン」は、本明細書で使用する場合、当該技術分野において知られているBドメインであって、内部アミノ酸配列同一性とトロンビンによるタンパク質切断部位によって定められるBドメイン、例えば、完全長ヒトFVIIIのSer741~Arg1648の残基と同じである。その他のヒトFVIIIドメインは、A1がAla
1~Arg372のアミノ酸残基、A2が、Ser373~Arg740のアミノ酸残基、A3がSer1690~Ile2032のアミノ酸残基、C1がArg2033~Asn2172のアミノ酸残基、C2が、Ser2173~Tyr2332のアミノ酸残基によって定められている。A3-C1-C2の配列には、Ser1690~Tyr2332の残基が含まれる。残りの配列(Glu1649~Arg1689の残基)は通常、FVIII軽鎖活性化ペプチドと称されている。ブタFVIII、マウスFVIII及びイヌFVIIIについても、Bドメインを含むすべてのドメインの境界線の位置が、当該技術分野において知られている。BDD FVIIIの例は、REFACTO(登録商標)という組み換えBDD FVIII(Wyeth Pharmaceuticals,Inc.)である。
【0162】
「Bドメイン欠失FVIII」は、米国特許第6,316,226号、同第6,346,513号、同第7,041,635号、同第5,789,203号、同第6,060,447号、同第5,595,886号、同第6,228,620号、同第5,972,885号、同第6,048,720号、同第5,543,502号、同第5,610,278号、同第5,171,844号、同第5,112,950号、同第4,868,112号及び同第6,458,563(それぞれ、参照により、その全体が本明細書に援用される)に開示されている完全欠失または部分欠失を有することができる。いくつかの実施形態では、本開示のBドメイン欠失FVIII配列は、米国特許第6,316,226号の4列目、4行目~5列目、28行目と、実施例1~5(さらにUS6,346,513)に開示されている欠失のうちのいずれか1つを含む。いくつかの実施形態では、本開示のBドメイン欠失FVIIIは、米国特許第5,789,203号の2列目、26~51行目と、実施例5~8(さらに、US6,060,447、US5,595,886及びUS6,228,620)に開示されている欠失を有する。いくつかの実施形態では、Bドメイン欠失FVIIIは、米国特許第5,972,885号の1列目、25行目~2列目、40行目、米国特許第6,048,720号の6列目、1~22行目と、実施例1、米国特許第5,543,502号の2列目、17~46行目、米国特許第5,171,844号の4列目、22行目~5列目、36行目、米国特許第5,112,950号の2列目、55~68行目と、図2と、実施例1、米国特許第4,868,112号の2列目、2行目~19列目、21行目と、表2、米国特許第7,041,635号の2列目、1行目~3列目、19行目と、3列目、40行目~4列目、67行目と、7列目、43行目~8列目、26行目と、11列目、5行目~13列目、39行目、または米国特許第6,458,563号の4列目、25~53行目に記載されている欠失を有する。いくつかの実施形態では、Bドメイン欠失FVIIIでは、Bドメインの大半が欠失しているが、Bドメイン欠失FVIIIは、WO91/09122(参照により、その全体が本明細書に援用される)に開示されているように、一次翻訳産物をインビボでタンパク質分解処理して、2本のポリペプチド鎖にするのに不可欠であるBドメインアミノ末端配列を含む。いくつかの実施形態では、Bドメイン欠失FVIIIは、747~1638位のアミノ酸を欠失した状態で、すなわち、実質的にBドメインが完全に欠失した状態で構築されている。Hoeben R.C.,et al.J.Biol.Chem.265(13):7318-7323(1990)(参照により、その全体が本明細書に援用される)。Bドメイン欠失FVIIIは、FVIIIの771~1666位のアミノ酸または868~1562位のアミノ酸も欠失していることができる。Meulien P.,et al.Protein Eng.2(4):301-6(1988)(参照により、その全体が本明細書に援用される)。本開示の一部である追加のBドメイン欠失としては、例えば、982~1562位もしくは760~1639位(Toole et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.(1986)83,5939-5942))、797~1562位(Eaton,et al.Biochemistry(1986)25:8343-8347))、741~1646位(Kaufman(国際公開第87/04187号))、747~1560位(Sarver,et al.,DNA(19
87)6:553-564))、741~1648位(Pasek(国際公開第88/00831号))、816~1598位または741~1689位(Lagner(Behring Inst.Mitt.(1988)No82:16-25,EP295597))(これらの各文献は、参照により、その全体が本明細書に援用される)のアミノ酸の欠失が挙げられる。上記の各欠失は、いずれのFVIII配列においても行うこともできる。
【0163】
Bドメイン欠失を含め、多くの機能性FVIII分子が、いずれもBaxterに譲渡されたUS6,316,226及びUS6,346,513、In2Genに譲渡されたUS7,041,635、Chironに譲渡されたUS5,789,203、US6,060,447、US5,595,886及びUS6,228,620、Biovitrumに譲渡されたUS5,972,885及びUS6,048,720、Novo Nordiskに譲渡されたUS5,543,502及びUS5,610,278、Immuno Agに譲渡されたUS5,171,844、Transgene S.A.に譲渡されたUS5,112,950、Genetics Instituteに譲渡されたUS4,868,112(これらの各特許は、参照により、その全体が本明細書に援用される)という特許に開示されている。
【0164】
コドン最適化
一実施形態では、本開示は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、その核酸配列のコドンが最適化されている単離核酸分子を提供する。別の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするとともに、コドンの最適化を行う開始核酸配列は、配列番号16である。いくつかの実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードする配列は、ヒトでの発現用に、コドンが最適化されている。別の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードする配列は、マウスでの発現用に、コドンが最適化されている。配列番号1~6、70及び71は、配列番号16のコドン最適化型であって、ヒトでの発現用に最適化されたものである。
【0165】
「コドン最適化」という用語は、各種宿主のトランスフォーメーション用の核酸分子の遺伝子またはコード領域に関する場合、そのDNAによってコードされるポリペプチドを改変せずに、宿主生物の典型的なコドン使用頻度を反映するように、核酸分子の遺伝子またはコード領域のコドンを改変することを指す。このような最適化としては、少なくとも1つ、2つ以上または有意な数のコドンを、宿主生物の遺伝子での使用頻度がより高い1つ以上のコドンに置き換えることが挙げられる。
【0166】
いずれかのポリペプチド鎖のアミノ酸をコードするコドンを含むヌクレオチド配列における偏差によって、その遺伝子のコード配列の変動が可能になる。各コドンは、3つのヌクレオチドからなり、DNAを構成するヌクレオチドは、4つの特定の塩基に制限されているので、考え得るヌクレオチドの組み合わせは64個あり、そのうちの61個が、アミノ酸をコードする(残りの3つのコドンは、翻訳を停止するシグナルをコードする)。どのコドンがどのアミノ酸をコードするかを示す「遺伝暗号」が表1に示されている。結果として、多くのアミノ酸に、2つ以上のコドンが対応している。例えば、アミノ酸のアラニンとプロリンは、4つのトリプレットによって、セリンとアルギニンは、6つのトリプレットによってコードされるが、トリプトファンとメチオニンは、1つのトリプレットのみによってコードされる。この縮退によって、DNAによってコードされるタンパク質のアミノ酸配列を改変することなく、DNAの塩基組成を広範に変化させることが可能になる。
【表1-1】
【表1-2】
【0167】
多くの生物では、成長しているペプチド鎖において特定のアミノ酸の挿入をコードする特定のコドンの使用で、バイアスが見られる。生物間におけるコドン優先度またはコドンバイアス(コドン使用頻度の差)は、遺伝暗号の縮退により可能になり、多くの生物間において十分に立証されている。コドンバイアスは、メッセンジャーRNA(mRNA)の翻訳効率と相関する場合が多く、ひいては、とりわけ、翻訳されるコドンの特性と、特定のトランスファーRNA(tRNA)分子の利用性に左右されると考えられている。細胞において、選択されるtRNAの優勢は概して、ペプチド合成において最も頻繁に使用されるコドンが反映されたものである。したがって、遺伝子は、コドン最適化に基づき、所定の生物において最適な遺伝子発現が行われるように適合させることができる。
【0168】
多種多様な動物種、植物種及び微生物種に利用可能な多数の遺伝子配列を踏まえて、相対的なコドン使用頻度が算出されている。コドン使用頻度表は、例えば、www.kazusa.or.jp/codon/(2012年6月18日に閲覧)に掲載されている「Codon Usage Database」から入手可能である。Nakamura,Y.,et al.Nucl.Acids Res.28:292(2000)を参照さ
れたい。
【0169】
所定のポリペプチド配列をコードするように、最適化頻度のコドンをランダムに割り当てる作業は、各アミノ酸のコドン頻度を算出してから、それらのコドンをポリペプチド配列にランダムに割り当てることによって、手動で行うことができる。加えて、様々なアルゴリズムとコンピューターソフトウェアプログラムを用いて、最適な配列を算出することができる。
【0170】
いくつかの実施形態では、核酸分子は、(a)その核酸分子もしくはその一部のヒトコドン適応指標が、配列番号16よりも上昇していること、(b)そのヌクレオチド配列もしくはその一部の最適コドン頻度が、配列番号16よりも上昇していること、(c)そのヌクレオチド配列もしくはその一部が、配列番号16におけるG/Cヌクレオチドの割合よりも高い割合で、G/Cヌクレオチドを含むこと、(d)そのヌクレオチド配列もしくはその一部の相対的な同義コドン使用頻度が、配列番号16よりも上昇していること、(e)そのヌクレオチド配列もしくはその一部のコドンの有効数が、配列番号16よりも減少していること、(f)そのヌクレオチド配列が、配列番号16よりも少ないMARS/ARS配列(配列番号21及び22)を含むこと、(g)そのヌクレオチド配列が、配列番号16よりも少ない不安定化エレメント(配列番号23及び24)を含むこと、(i)そのヌクレオチド配列が、ポリT配列を含まないこと、(j)そのヌクレオチド配列が、ポリA配列を含まないこと、または(k)これらをいずれかに組み合わせたもののうちの1つ以上の特性を含む。いくつかの実施形態では、本開示の核酸分子は、(a)~(j)のうちの少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個または10個の特徴を含む。
【0171】
コドン適応指標
一実施形態では、本開示は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードする、本明細書に記載のヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、そのヒトコドン適応指標が、配列番号16よりも上昇している単離核酸分子を提供する。例えば、そのヌクレオチド配列は、ヒトコドン適応指標が、少なくとも約0.75(75%)、少なくとも約0.76(76%)、少なくとも約0.77(77%)、少なくとも約0.78(78%)、少なくとも約0.79(79%)、少なくとも約0.80(80%)、少なくとも約0.81(81%)、少なくとも約0.82(82%)、少なくとも約0.83(83%)、少なくとも約0.84(84%)、少なくとも約0.85(85%)、少なくとも約0.86(86%)、少なくとも約0.87(87%)、少なくとも約0.88(88%)、少なくとも約0.89(89%)、少なくとも約0.90(90%)、少なくとも約0.91(91%)、少なくとも約0.92(92%)、少なくとも約0.93(93%)、少なくとも約0.94(94%)、少なくとも約0.95(95%)、少なくとも約0.96(96%)、少なくとも約0.97(97%)、少なくとも約0.98(98%)または少なくとも約0.99(99%)であることができる。いくつかの実施形態では、そのヌクレオチド配列は、ヒトコドン適応指標が少なくとも約0.88(88%)である。別の実施形態では、そのヌクレオチド配列は、ヒトコドン適応指標が少なくとも約0.91(91%)である。別の実施形態では、そのヌクレオチド配列は、ヒトコドン適応指標が少なくとも約0.91(97%)である。
【0172】
特定的な一実施形態では、本開示は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第1の核酸配列と、FVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第2の核酸配列とを含むヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、(i)配列番号3の58~1791位のヌクレオチド、(ii)配列番号3の1~1791位のヌクレオチド、(iii)配列番号4の58~1791位のヌクレオチドまたは(iv)配列番号4の1~1791位のヌクレオチドに対する第1の核酸配列の配列同一性が少なくとも約80%、少なく
とも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%であり、そのN末端部分とC末端部分が一体になって、FVIIIポリペプチド活性を有し、そのヌクレオチド配列のヒトコドン適応指標が、配列番号16よりも上昇している単離核酸分子を提供する。いくつかの実施形態では、そのヌクレオチド配列は、ヒトコドン適応指標が少なくとも約0.75(75%)、少なくとも約0.76(76%)、少なくとも約0.77(77%)、少なくとも約0.78(78%)、少なくとも約0.79(79%)、少なくとも約0.80(80%)、少なくとも約0.81(81%)、少なくとも約0.82(82%)、少なくとも約0.83(83%)、少なくとも約0.84(84%)、少なくとも約0.85(85%)、少なくとも約0.86(86%)、少なくとも約0.87(87%)、少なくとも約0.88(88%)、少なくとも約0.89(89%)、少なくとも約0.90(90%)または少なくとも約0.91(91%)である。特には、そのヌクレオチド配列は、ヒトコドン適応指標が少なくとも約0.88(88%)である。別の実施形態では、そのヌクレオチド配列は、ヒトコドン適応指標が少なくとも約0.91(91%)である。
【0173】
別の実施形態では、本開示は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第1の核酸配列と、FVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第2の核酸配列とを含むヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、(i)配列番号5の1792~2277位と2320~4374位のヌクレオチドまたは(ii)配列番号6の1792~2277位と2320~4374位のヌクレオチドに対する第2の核酸配列の配列同一性が少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%であり、そのN末端部分とC末端部分が一体になって、FVIIIポリペプチド活性を有し、そのヌクレオチド配列のヒトコドン適応指標が、配列番号16よりも上昇している単離核酸分子を提供する。いくつかの実施形態では、そのヌクレオチド配列は、ヒトコドン適応指標が少なくとも約0.75(75%)、少なくとも約0.76(76%)、少なくとも約0.77(77%)、少なくとも約0.78(78%)、少なくとも約0.79(79%)、少なくとも約0.80(80%)、少なくとも約0.81(81%)、少なくとも約0.82(82%)、少なくとも約0.83(83%)、少なくとも約0.84(84%)、少なくとも約0.85(85%)、少なくとも約0.86(86%)、少なくとも約0.87(87%)または少なくとも約0.88(88%)である。特には、そのヌクレオチド配列は、ヒトコドン適応指標が少なくとも約0.83(83%)である。別の実施形態では、そのヌクレオチド配列は、ヒトコドン適応指標が少なくとも約0.88(88%)である。
【0174】
別の実施形態では、本開示は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、配列番号1、2、3、4、5、6、70及び71から選択したアミノ酸配列の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチド(すなわち、配列番号1、2、3、4、5、6、70または71の58~4374位のヌクレオチドから、BドメインまたはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを除外したもの)に対する配列同一性が少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%である核酸配列をそのヌクレオチド配列が含み、そのヌクレオチド配列のヒトコドン適応指標が、配列番号16よりも上昇
している単離核酸分子を提供する。いくつかの実施形態では、そのヌクレオチド配列は、ヒトコドン適応指標が少なくとも約0.75(75%)、少なくとも約0.76(76%)、少なくとも約0.77(77%)、少なくとも約0.78(78%)、少なくとも約0.79(79%)、少なくとも約0.80(80%)、少なくとも約0.81(81%)、少なくとも約0.82(82%)、少なくとも約0.83(83%)、少なくとも約0.84(84%)、少なくとも約0.85(85%)、少なくとも約0.86(86%)、少なくとも約0.87(87%)または少なくとも約0.88(88%)である。特には、そのヌクレオチド配列は、ヒトコドン適応指標が少なくとも約0.75(75%)である。別の実施形態では、そのヌクレオチド配列は、ヒトコドン適応指標が少なくとも約0.83(83%)である。別の実施形態では、そのヌクレオチド配列は、ヒトコドン適応指標が少なくとも約0.88(88%)である。別の実施形態では、そのヌクレオチド配列は、ヒトコドン適応指標が少なくとも約0.91(91%)である。別の実施形態では、そのヌクレオチド配列は、ヒトコドン適応指標が少なくとも約0.97(97%)である。
【0175】
いくつかの実施形態では、本開示の単離核酸分子は、最適コドン頻度(FOP)が配列番号16よりも上昇している。特定の実施形態では、本開示の単離核酸分子のFOPは、少なくとも約40、少なくとも約45、少なくとも約50、少なくとも約55、少なくとも約60、少なくとも約64、少なくとも約65、少なくとも約70、少なくとも約75、少なくとも約79、少なくとも約80、少なくとも約85または少なくとも約90である。
【0176】
別の実施形態では、本開示の単離核酸分子は、相対的な同義コドン使用頻度(RCSU)が配列番号16よりも上昇している。いくつかの実施形態では、本開示の単離核酸分子のRCSUは、1.5超である。別の実施形態では、本開示の単離核酸分子のRCSUは、2.0超である。特定の実施形態では、本開示の単離核酸分子のRCSUは、少なくとも約1.5、少なくとも約1.6、少なくとも約1.7、少なくとも約1.8、少なくとも約1.9、少なくとも約2.0、少なくとも約2.1、少なくとも約2.2、少なくとも約2.3、少なくとも約2.4、少なくとも約2.5、少なくとも約2.6または少なくとも約2.7である。
【0177】
さらに別の実施形態では、本開示の単離核酸分子は、コドンの有効数が配列番号16よりも減少している。いくつかの実施形態では、本開示の単離核酸分子は、コドンの有効数が、約50個未満、約45個未満、約40個未満、約35個未満、約30個未満または約25個未満である。特定的な一実施形態では、その単離核酸分子は、コドンの有効数が約40、約35、約30、約25または約20である。
【0178】
G/C含有率の最適化
いくつかの実施形態では、本開示は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードする、本明細書に記載のヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、そのヌクレオチド配列が、配列番号16におけるG/Cヌクレオチドの割合よりも高い割合でG/Cヌクレオチドを含む単離核酸分子を提供する。別の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、G/C含有率が少なくとも約45%、少なくとも約46%、少なくとも約47%、少なくとも約48%、少なくとも約49%、少なくとも約50%、少なくとも約51%、少なくとも約52%、少なくとも約53%、少なくとも約54%、少なくとも約55%、少なくとも約56%、少なくとも約57%、少なくとも約58%、少なくとも約59%または少なくとも約60%である。
【0179】
特定的な一実施形態では、本開示は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第1の核酸配列と、FVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第2の核酸配列
とを含むヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、(i)配列番号3の58~1791位のヌクレオチド、(ii)配列番号3の1~1791位のヌクレオチド、(iii)配列番号4の58~1791位のヌクレオチドまたは(iv)配列番号4の1~1791位のヌクレオチドに対する第1の核酸配列の配列同一性が少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%であり、そのN末端部分とC末端部分が一体になって、FVIIIポリペプチド活性を有し、そのヌクレオチド配列が、配列番号16におけるG/Cヌクレオチドの割合よりも高い割合でG/Cヌクレオチドを含む単離核酸分子を提供する。いくつかの実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、G/C含有率が少なくとも約45%、少なくとも約46%、少なくとも約47%、少なくとも約48%、少なくとも約49%、少なくとも約50%、少なくとも約51%、少なくとも約52%、少なくとも約53%、少なくとも約54%、少なくとも約55%、少なくとも約56%、少なくとも約57%または少なくとも約58%である。特定的な一実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、G/C含有率が少なくとも約58%である。
【0180】
別の実施形態では、本開示は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第1の核酸配列と、FVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第2の核酸配列とを含むヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、(i)配列番号5の1792~4374位のヌクレオチド、(ii)配列番号6の1792~4374位のヌクレオチド、(iii)配列番号5の1792~2277位と2320~4374位のヌクレオチド(すなわち、配列番号5の1792~4374位のヌクレオチドから、BドメインもしくはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを除外したもの)または(iv)配列番号6の1792~2277位と2320~4374位(すなわち、配列番号6の1792~4374位のヌクレオチドから、BドメインもしくはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを除外したもの)に対する第2の核酸配列の配列同一性が少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%であり、そのN末端部分とC末端部分が一体になって、FVIIIポリペプチド活性を有し、そのヌクレオチド配列が、配列番号16におけるG/Cヌクレオチドの割合よりも高い割合でG/Cヌクレオチドを含む単離核酸分子を提供する。別の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、G/C含有率が少なくとも約45%、少なくとも約46%、少なくとも約47%、少なくとも約48%、少なくとも約49%、少なくとも約50%、少なくとも約51%、少なくとも約52%、少なくとも約53%、少なくとも約54%、少なくとも約55%、少なくとも約56%または少なくとも約57%である。特定的な一実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、G/C含有率が少なくとも約52%である。別の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、G/C含有率が少なくとも約55%である。別の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、G/C含有率が少なくとも約57%である。
【0181】
別の実施形態では、本開示は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、配列番号1、2、3、4、5、6、70及び71から選択したアミノ酸配列の(i)58~4374位のヌクレオチドまたは(ii)58~2277位と2320~4374位のヌクレオチド(すなわち、配列番号1、2、3、4、5、6、70または71の58~4374位のヌクレオチドから、Bドメインも
しくはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを除外したもの)に対する配列同一性が少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%である核酸配列をそのヌクレオチド配列が含み、そのヌクレオチド配列が、配列番号16におけるG/Cヌクレオチドの割合よりも高い割合でG/Cヌクレオチドを含む単離核酸分子を提供する。別の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、G/C含有率が少なくとも約45%である。特定的な一実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、G/C含有率が少なくとも約52%である。別の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、G/C含有率が少なくとも約55%である。別の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、G/C含有率が少なくとも約57%である。別の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、G/C含有率が少なくとも約58%である。さらに別の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、G/C含有率が少なくとも約60%である。
【0182】
「G/C含有率」(すなわち、グアニン-シトシン含有率)または「G/Cヌクレオチドの割合」とは、DNA分子中の含窒素塩基(グアニンまたはシトシンのいずれかである)の割合を指す。G/C含有率は、下記の式を用いて算出できる。
【数3】
【0183】
ヒト遺伝子は、G/C含有率が大きく異なっており、G/C含有率が20%ほどの低さである遺伝子もあれば、G/C含有率が95%ほどの高さである遺伝子もある。概して、G/Cリッチな遺伝子ほど、多く発現される。実際、遺伝子のG/C含有率が向上すると、主に、転写の増大と、mRNAレベルの安定状態の向上により、遺伝子の発現を増加させることができることが示されている。Kudla et al.,PLoS Biol.,4(6):e180(2006)を参照されたい。
【0184】
マトリックス付着領域様配列
いくつかの実施形態では、本開示は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードする、本明細書に記載のヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、そのヌクレオチド配列が、配列番号16よりも少ないMARS/ARS配列を含む単離核酸分子を提供する。別の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、MARS/ARS配列を最大でも6個、最大でも5個、最大でも4個、最大でも3個または最大でも2個しか含まない。別の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、MARS/ARS配列を最大で1個しか含まない。さらに別の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、MARS/ARS配列を含まない。
【0185】
特定的な一実施形態では、本開示は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第1の核酸配列と、FVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第2の核酸配列とを含むヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、(i)配列番号3の58~1791位のヌクレオチド、(ii)配列番号3の1~1791位のヌクレオチド、(iii)配列番号4の58~1791位のヌクレオチドまたは(iv)配列番号4の1~1791位のヌクレオチドに対する第1の核酸配列の配列同一性が少なくとも約80%、少なく
とも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%であり、そのN末端部分とC末端部分が一体になって、FVIIIポリペプチド活性を有し、そのヌクレオチド配列が、配列番号16よりも少ないMARS/ARS配列を含む単離核酸分子を提供する。別の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、MARS/ARS配列を最大でも6個、最大でも5個、最大でも4個、最大でも3個または最大でも2個しか含まない。別の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、MARS/ARS配列を最大で1個しか含まない。さらに別の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、MARS/ARS配列を含まない。
【0186】
別の実施形態では、本開示は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第1の核酸配列と、FVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第2の核酸配列とを含むヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、(i)配列番号5の1792~4374位のヌクレオチド、(ii)配列番号6の1792~4374位のヌクレオチド、(iii)配列番号5の1792~2277位と2320~4374位のヌクレオチド(すなわち、配列番号5の1792~4374位のヌクレオチドから、BドメインもしくはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを除外したもの)または(iv)配列番号6の1792~2277位と2320~4374位(すなわち、配列番号6の1792~4374位のヌクレオチドから、BドメインもしくはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを除外したもの)に対する第2の核酸配列の配列同一性が少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%であり、そのN末端部分とC末端部分が一体になって、FVIIIポリペプチド活性を有し、そのヌクレオチド配列が、配列番号16よりも少ないMARS/ARS配列を含む単離核酸分子を提供する。別の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、MARS/ARS配列を最大でも6個、最大でも5個、最大でも4個、最大でも3個または最大でも2個しか含まない。別の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、MARS/ARS配列を最大で1個しか含まない。さらに別の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、MARS/ARS配列を含まない。
【0187】
別の実施形態では、本開示は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、(i)配列番号1、2、3、4、5、6、70もしくは71の58~4374位のヌクレオチドまたは(ii)配列番号1、2、3、4、5、6、70もしくは71の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチド(すなわち、配列番号1、2、3、4、5、6、70もしくは71の58~4374位のヌクレオチドから、BドメインもしくはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを除外したもの)に対する配列同一性が少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%である核酸配列をそのヌクレオチド配列が含み、そのヌクレオチド配列が、配列番号16よりも少ないMARS/ARS配列を含む単離核酸分子を提供する。別の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、MARS/ARS配列を最大でも6個、最大でも5個、最大でも4個、最大でも3個または最大でも2個しか含まない。別の実施形態
では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、MARS/ARS配列を最大で1個しか含まない。さらに別の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、MARS/ARS配列を含まない。
【0188】
Saccharomyces cerevisiae自己複製配列(ARS)及び核マトリックス付着領域(MAR)と配列類似性を持つ、ヒトFVIIIヌクレオチド配列におけるATリッチエレメントが同定されている。(Fallux et al.,Mol.Cell.Biol.16:4264-4272(1996)。これらのエレメントの1つは、インビトロで核因子と結合して、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)レポーター遺伝子の発現を抑制することが示されている。上記の文献を参照されたい。これらの配列は、ヒトFVIII遺伝子の転写抑制に寄与する可能性があるという仮説が立てられている。したがって、一実施形態では、本開示のFVIII遺伝子では、すべてのMAR/ARS配列が無効にされている。親FVIII配列(配列番号16)には、4つのMAR/ARS ATATTT配列(配列番号21)と、3つのMAR/ARS AAATAT配列(配列番号22)が存在する。最適化FVIII配列(配列番号1~6)では、これらの部位をすべて変異させて、MAR/ARS配列を破壊した。これらの各エレメントの位置と、最適化配列における対応するヌクレオチドの配列は、下記の表2に示されている。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【0189】
不安定化配列
いくつかの実施形態では、本開示は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードする、本明細書に記載のヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、そのヌクレオチド
配列が、配列番号16よりも少ない不安定化エレメントを含む単離核酸分子を提供する。別の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするこのヌクレオチド配列は、最大でも9個、最大でも8個、最大でも7個、最大でも6個または最大でも5個の不安定化エレメントしか含まない。別の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするこのヌクレオチド配列は、最大でも4個、最大でも3個、最大でも2個または最大でも1個の不安定化エレメントしか含まない。さらに別の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするこのヌクレオチド配列は、不安定化エレメントを含まない。
【0190】
特定的な一実施形態では、本開示は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第1の核酸配列と、FVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第2の核酸配列とを含むヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、(i)配列番号3の58~1791位のヌクレオチド、(ii)配列番号3の1~1791位のヌクレオチド、(iii)配列番号4の58~1791位のヌクレオチドまたは(iv)配列番号4の1~1791位のヌクレオチドに対する第1の核酸配列の配列同一性が少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%であり、そのN末端部分とC末端部分が一体になって、FVIIIポリペプチド活性を有し、そのヌクレオチド配列が、配列番号16よりも少ない不安定化エレメントを含む単離核酸分子を提供する。別の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするこのヌクレオチド配列は、最大でも9個、最大でも8個、最大でも7個、最大でも6個または最大でも5個の不安定化エレメントしか含まない。別の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするこのヌクレオチド配列は、最大でも4個、最大でも3個、最大でも2個または最大でも1個の不安定化エレメントしか含まない。さらに別の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするこのヌクレオチド配列は、不安定化エレメントを含まない。
【0191】
別の実施形態では、本開示は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第1の核酸配列と、FVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第2の核酸配列とを含むヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、(i)配列番号5の1792~4374位のヌクレオチド、(ii)配列番号6の1792~4374位のヌクレオチド、(iii)配列番号5の1792~2277位と2320~4374位のヌクレオチド(すなわち、配列番号5の1792~4374位のヌクレオチドから、BドメインもしくはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを除外したもの)または(iv)配列番号6の1792~2277位と2320~4374位(すなわち、配列番号6の1792~4374位のヌクレオチドから、BドメインもしくはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを除外したもの)に対する第2の核酸配列の配列同一性が少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%であり、そのN末端部分とC末端部分が一体になって、FVIIIポリペプチド活性を有し、そのヌクレオチド配列が、配列番号16よりも少ない不安定化エレメントを含む単離核酸分子を提供する。別の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするこのヌクレオチド配列は、最大でも9個、最大でも8個、最大でも7個、最大でも6個または最大でも5個の不安定化エレメントしか含まない。別の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするこのヌクレオチド配列は、最大でも4個、最大でも3個、最大でも2個または最大でも1個の不安定化エレメントしか含まない。さらに別の実施形態では、FVIII
活性を有するポリペプチドをコードするこのヌクレオチド配列は、不安定化エレメントを含まない。
【0192】
別の実施形態では、本開示は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、(i)配列番号1、2、3、4、5、6、70及び71から選択したアミノ酸配列の58~4374位のヌクレオチドまたは(ii)配列番号1、2、3、4、5、6、70及び71から選択したアミノ酸配列の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチド(すなわち、配列番号1、2、3、4、5、6、70もしくは71の58~4374位のヌクレオチドから、BドメインもしくはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを除外したもの)に対する配列同一性が少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%である核酸配列をそのヌクレオチド配列が含み、そのヌクレオチド配列が、配列番号16よりも少ない不安定化エレメントを含む単離核酸分子を提供する。別の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするこのヌクレオチド配列は、最大でも9個、最大でも8個、最大でも7個、最大でも6個または最大でも5個の不安定化エレメントしか含まない。別の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするこのヌクレオチド配列は、最大でも4個、最大でも3個、最大でも2個または最大でも1個の不安定化エレメントしか含まない。さらに別の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするこのヌクレオチド配列は、不安定化エレメントを含まない。
【0193】
親FVIII配列(配列番号16)には、6個のATTTA配列(配列番号23)と、4個のTAAAT配列(配列番号24)という10個の不安定化エレメントが存在する。一実施形態では、最適化FVIII配列番号1~6、70及び71において、これらの部位の配列を変異させて、不安定化エレメントを破壊した。これらの各エレメントの位置と、最適化配列における対応するヌクレオチドの配列は、表2に示されている。
【0194】
潜在的プロモーター結合部位
いくつかの実施形態では、本開示は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードする、本明細書に記載のヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、そのヌクレオチド配列が、配列番号16よりも少ない潜在的プロモーター結合部位を含む単離核酸分子を提供する。別の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするこのヌクレオチド配列は、最大でも9個、最大でも8個、最大でも7個、最大でも6個または最大でも5個の潜在的プロモーター結合部位しか含まない。別の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするこのヌクレオチド配列は、最大でも4個、最大でも3個、最大でも2個または最大でも1個の潜在的プロモーター結合部位しか含まない。さらに別の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするこのヌクレオチド配列は、潜在的プロモーター結合部位を含まない。
【0195】
特定的な一実施形態では、本開示は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第1の核酸配列と、FVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第2の核酸配列とを含むヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、(i)配列番号3の58~1791位のヌクレオチド、(ii)配列番号3の1~1791位のヌクレオチド、(iii)配列番号4の58~1791位のヌクレオチドまたは(iv)配列番号4の1~1791位のヌクレオチドに対する第1の核酸配列の配列同一性が少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なく
とも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%であり、そのN末端部分とC末端部分が一体になって、FVIIIポリペプチド活性を有し、そのヌクレオチド配列が、配列番号16よりも少ない潜在的プロモーター結合部位を含む単離核酸分子を提供する。別の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするこのヌクレオチド配列は、最大でも9個、最大でも8個、最大でも7個、最大でも6個または最大でも5個の潜在的プロモーター結合部位しか含まない。別の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするこのヌクレオチド配列は、最大でも4個、最大でも3個、最大でも2個または最大でも1個の潜在的プロモーター結合部位しか含まない。さらに別の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするこのヌクレオチド配列は、潜在的プロモーター結合部位を含まない。
【0196】
別の実施形態では、本開示は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第1の核酸配列と、FVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第2の核酸配列とを含むヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、(i)配列番号5の1792~4374位のヌクレオチド、(ii)配列番号6の1792~4374位のヌクレオチド、(iii)配列番号5の1792~2277位と2320~4374位のヌクレオチド(すなわち、配列番号5の1792~4374位のヌクレオチドから、BドメインもしくはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを除外したもの)または(iv)配列番号6の1792~2277位と2320~4374位のヌクレオチド(すなわち、配列番号6の1792~4374位のヌクレオチドから、BドメインもしくはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを除外したもの)に対する第2の核酸配列の配列同一性が少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%であり、そのN末端部分とC末端部分が一体になって、FVIIIポリペプチド活性を有し、そのヌクレオチド配列が、配列番号16よりも少ない潜在的プロモーター結合部位を含む単離核酸分子を提供する。別の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするこのヌクレオチド配列は、最大でも9個、最大でも8個、最大でも7個、最大でも6個または最大でも5個の潜在的プロモーター結合部位しか含まない。別の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするこのヌクレオチド配列は、最大でも4個、最大でも3個、最大でも2個または最大でも1個の潜在的プロモーター結合部位しか含まない。さらに別の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするこのヌクレオチド配列は、潜在的プロモーター結合部位を含まない。
【0197】
別の実施形態では、本開示は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、(i)配列番号1、2、3、4、5、6、70及び71から選択したアミノ酸配列の58~4374位のヌクレオチドまたは(ii)配列番号1、2、3、4、5、6、70及び71から選択したアミノ酸配列の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチド(すなわち、配列番号1、2、3、4、5、6、70もしくは71の58~4374位のヌクレオチドから、BドメインもしくはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを除外したもの)に対する配列同一性が少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%である核酸配列をそのヌクレオチド配列が含み、そのヌクレオチド配列が、配列番号16よりも少ない潜在的プロモーター結合部位を含む単離核酸分子を提供する。別の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするこのヌクレオチド配列は、最大でも9個、最大でも8個、最大でも7個、最大でも6個または最大でも5個の潜在的プロモーター結合部位しか含まない。別の実施形態では、FVIII活性を有
するポリペプチドをコードするこのヌクレオチド配列は、最大でも4個、最大でも3個、最大でも2個または最大でも1個の潜在的プロモーター結合部位しか含まない。さらに別の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするこのヌクレオチド配列は、潜在的プロモーター結合部位を含まない。
【0198】
TATAボックスは、真核生物のプロモーター領域で見られることの多い調節配列である。この配列は、基本転写因子であるTATA結合タンパク質(TBP)の結合部位としての機能を果たす。TATAボックスは通常、TATAAという配列(配列番号28)または近いバリアントを含む。しかしながら、コード配列内のTATAボックスは、完全長タンパク質の翻訳を阻害することがある。野生型BDD FVIII配列(配列番号16)には、5個のTATAA配列(配列番号28)と、5個のTTATA配列(配列番号29)という10個の潜在的プロモーター結合配列が存在する。いくつかの実施形態では、本開示のFVIII遺伝子において、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個または少なくとも4個のプロモーター結合部位が無効にされている。いくつかの実施形態では、本開示のFVIII遺伝子において、少なくとも5個のプロモーター結合部位が無効にされている。別の実施形態では、本開示のFVIII遺伝子において、少なくとも6個、少なくとも7個または少なくとも8個のプロモーター結合部位が無効にされている。一実施形態では、本開示のFVIII遺伝子において、少なくとも9個のプロモーター結合部位が無効にされている。特定的な一実施形態では、本開示のFVIII遺伝子において、すべてのプロモーター結合部位が無効にされている。それぞれの潜在的プロモーター結合部位の位置と、最適化配列における対応するヌクレオチドの配列は、表2に示されている。
【0199】
その他の負のシス作動性調節エレメント
野生型BDD FVIII配列(配列番号16)では、上記のMAR/ARS配列、不安定化エレメント及び潜在的プロモーター部位に加えて、さらなる潜在的阻害配列をいくつか同定できる。非最適化BDD FVIII配列では、ポリA部位(AAAAAAA、配列番号26)、ポリT部位(TTTTTT、配列番号25)及びスプライス部位(GGTGAT、配列番号27)とともに、2つのAUリッチ配列エレメント(ARE)(ATTTTATT(配列番号30)及びATTTTTAA(配列番号31))を同定できる。これらのエレメントのうちの1つ以上を最適化FVIII配列から除去できる。これらの各部位の位置と、最適化配列における対応するヌクレオチドの配列は、表2に示されている。
【0200】
特定の実施形態では、本開示は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第1の核酸配列と、FVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第2の核酸配列とを含むヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、(i)配列番号3の58~1791位のヌクレオチド、(ii)配列番号3の1~1791位のヌクレオチド、(iii)配列番号4の58~1791位のヌクレオチドまたは(iv)配列番号4の1~1791位のヌクレオチドに対する第1の核酸配列の配列同一性が少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%であり、そのN末端部分とC末端部分が一体になって、FVIIIポリペプチド活性を有し、そのヌクレオチド配列が、1つ以上の負のシス作動性調節エレメント、例えば、スプライス部位、ポリT配列、ポリA配列、ARE配列またはこれらをいずれかに組み合わせたものを含まない単離核酸分子を提供する。
【0201】
別の実施形態では、本開示は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第1
の核酸配列と、FVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第2の核酸配列とを含むヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、(i)配列番号5の1792~4374位のヌクレオチド、(ii)配列番号6の1792~4374位のヌクレオチド、(iii)配列番号5の1792~2277位と2320~4374位のヌクレオチド(すなわち、配列番号5の1792~4374位のヌクレオチドから、BドメインもしくはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを除外したもの)または(iv)配列番号6の1792~2277位と2320~4374位(すなわち、配列番号6の1792~4374位のヌクレオチドから、BドメインもしくはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを除外したもの)に対する第2の核酸配列の配列同一性が少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%であり、そのN末端部分とC末端部分が一体になって、FVIIIポリペプチド活性を有し、そのヌクレオチド配列が、1つ以上の負のシス作動性調節エレメント、例えば、スプライス部位、ポリT配列、ポリA配列、ARE配列またはこれらをいずれかに組み合わせたものを含まない単離核酸分子を提供する。
【0202】
別の実施形態では、本開示は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、(i)配列番号1、2、3、4、5、6、70及び71から選択したアミノ酸配列の58~4374位のヌクレオチドまたは(ii)配列番号1、2、3、4、5、6、70及び71から選択したアミノ酸配列の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチド(すなわち、配列番号1、2、3、4、5、6、70もしくは71の58~4374位のヌクレオチドから、BドメインもしくはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを除外したもの)に対する配列同一性が少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%である核酸配列をそのヌクレオチド配列が含み、そのヌクレオチド配列が、1つ以上の負のシス作動性調節エレメント、例えば、スプライス部位、ポリT配列、ポリA配列、ARE配列またはこれらをいずれかに組み合わせたものを含まない単離核酸分子を提供する。
【0203】
いくつかの実施形態では、本開示は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第1の核酸配列と、FVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第2の核酸配列とを含むヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、(i)配列番号3の58~1791位のヌクレオチド、(ii)配列番号3の1~1791位のヌクレオチド、(iii)配列番号4の58~1791位のヌクレオチドまたは(iv)配列番号4の1~1791位のヌクレオチドに対する第1の核酸配列の配列同一性が少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%であり、そのN末端部分とC末端部分が一体になって、FVIIIポリペプチド活性を有し、そのヌクレオチド配列が、スプライス部位GGTGAT(配列番号27)を含まない単離核酸分子を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第1の核酸配列と、FVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第2の核酸配列とを含むヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、(i)配列番号3の58~1791位のヌクレオチド、(ii)配列番号3の1~1791位のヌクレオチド、(iii)配列番号4の58~1791位のヌクレオチドまたは(iv)配列番号4の1~1791
位のヌクレオチドに対する第1の核酸配列の配列同一性が少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%であり、そのN末端部分とC末端部分が一体になって、FVIIIポリペプチド活性を有し、そのヌクレオチド配列が、ポリT配列(配列番号25)を含まない単離核酸分子を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第1の核酸配列と、FVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第2の核酸配列とを含むヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、(i)配列番号3の58~1791位のヌクレオチド、(ii)配列番号3の1~1791位のヌクレオチド、(iii)配列番号4の58~1791位のヌクレオチドまたは(iv)配列番号4の1~1791位のヌクレオチドに対する第1の核酸配列の配列同一性が少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%であり、そのN末端部分とC末端部分が一体になって、FVIIIポリペプチド活性を有し、そのヌクレオチド配列が、ポリA配列(配列番号26)を含まない単離核酸分子を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第1の核酸配列と、FVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第2の核酸配列とを含むヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、(i)配列番号3の58~1791位のヌクレオチド、(ii)配列番号3の1~1791位のヌクレオチド、(iii)配列番号4の58~1791位のヌクレオチドまたは(iv)配列番号4の1~1791位のヌクレオチドに対する第1の核酸配列の配列同一性が少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%であり、そのN末端部分とC末端部分が一体になって、FVIIIポリペプチド活性を有し、そのヌクレオチド配列が、AREエレメント(配列番号30または配列番号31)を含まない単離核酸分子を提供する。
【0204】
いくつかの実施形態では、本開示は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、(i)配列番号1、2、3、4、5、6、70及び71から選択したアミノ酸配列の58~4374位のヌクレオチドまたは(ii)配列番号1、2、3、4、5、6、70及び71から選択したアミノ酸配列の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチド(すなわち、配列番号1、2、3、4、5、6、70もしくは71の58~4374位のヌクレオチドから、BドメインもしくはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを除外したもの)に対する配列同一性が少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%である核酸配列をそのヌクレオチド配列が含み、そのヌクレオチド配列が、スプライス部位GGTGAT(配列番号27)を含まない単離核酸分子を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、(i)配列番号1、2、3、4、5、6、70及び71から選択したアミノ酸配列の58~4374位のヌクレオチドまたは(ii)配列番号1、2、3、4、5、6、70及び71から選択したアミノ酸配列の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチド(すなわち、配列番号1、2、3、4、5、6、70もしくは71の58~4374位のヌクレオチドから、Bドメインも
しくはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを除外したもの)に対する配列同一性が少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%である核酸配列をそのヌクレオチド配列が含み、そのヌクレオチド配列が、ポリT配列(配列番号25)を含まない単離核酸分子を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、(i)配列番号1、2、3、4、5、6、70及び71から選択したアミノ酸配列の58~4374位のヌクレオチドまたは(ii)配列番号1、2、3、4、5、6、70及び71から選択したアミノ酸配列の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチド(すなわち、配列番号1、2、3、4、5、6、70もしくは71の58~4374位のヌクレオチドから、BドメインもしくはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを除外したもの)に対する配列同一性が少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%である核酸配列をそのヌクレオチド配列が含み、そのヌクレオチド配列が、ポリA配列(配列番号26)を含まない単離核酸分子を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、(i)配列番号1、2、3、4、5、6、70及び71から選択したアミノ酸配列の58~4374位のヌクレオチドまたは(ii)配列番号1、2、3、4、5、6、70及び71から選択したアミノ酸配列の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチド(すなわち、配列番号1、2、3、4、5、6、70もしくは71の58~4374位のヌクレオチドから、BドメインもしくはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを除外したもの)に対する配列同一性が少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%である核酸配列をそのヌクレオチド配列が含み、そのヌクレオチド配列が、AREエレメント(配列番号30または配列番号31)を含まない単離核酸分子を提供する。
【0205】
別の実施形態では、本開示の最適化FVIII配列は、抗ウイルスモチーフ、ステムループ構造及び反復配列のうちの1つ以上を含まない。
【0206】
さらに別の実施形態では、転写開始部位周辺のヌクレオチドは、Kozakコンセンサス配列(
【化1】
(配列番号32)、下線部分のヌクレオチドは、開始コドンである)に変更されている。別の実施形態では、クローニングプロセスを促進するために、制限部位を付加または除去することができる。
【0207】
異種のヌクレオチド配列
いくつかの実施形態では、本開示の単離核酸分子は、異種のヌクレオチド配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、本開示の単離核酸分子は、少なくとも1つの異種のヌクレオチド配列をさらに含む。この異種のヌクレオチド配列は、本開示の最適化BDD-FVIIIヌクレオチド配列と、5’末端、3’末端で連結することも、最適化BDD-FVIIIヌクレオチド配列の中間に挿入することもできる。したがって、いくつかの実施形態では、この異種のヌクレオチド配列によってコードされる異種のアミノ酸配列は、本開示のヌクレオチド配列によってコードされるFVIIIアミノ酸配列のN末端もしくは
C末端に連結されるか、FVIIIアミノ酸配列内の2つのアミノ酸の間に挿入される。いくつかの実施形態では、この異種のアミノ酸配列は、表3から選択した1つ以上の挿入部位の2つのアミノ酸の間に挿入できる。いくつかの実施形態では、この異種のアミノ酸配列は、本開示の核酸分子によってコードされるFVIIIポリペプチド内に、国際公開第2013/123457A1号、同第2015/106052A1号または米国特許出願公開第2015/0158929A1号(これらは、参照により、その全体が本明細書に援用される)に開示されているいずれかの部位で挿入できる。
【0208】
いくつかの実施形態では、この異種のヌクレオチド配列によってコードされる異種のアミノ酸配列は、Bドメインまたはその断片内に挿入される。いくつかの実施形態では、この異種のアミノ酸配列は、FVIII内に、成熟ヒトFVIII(配列番号15)の745位のアミノ酸に対応するアミノ酸のすぐ下流で挿入される。特定的な一実施形態では、本開示のFVIIIは、成熟ヒトFVIII(配列番号15)の746~1646位に対応するアミノ酸の欠失を含むとともに、異種のヌクレオチド配列によってコードされる異種のアミノ酸配列が、成熟ヒトFVIII(配列番号15)の745位に対応するアミノ酸のすぐ下流に挿入される。
【表3-1】
【表3-2】
注:挿入部位は、成熟ヒトFVIII(配列番号15)のアミノ酸の位置に対応するアミノ酸の位置を示している。
【0209】
別の実施形態では、本開示の単離核酸分子はさらに、異種のヌクレオチド配列を2個、3個、4個、5個、6個、7個または8個含む。いくつかの実施形態では、異種のヌクレオチド配列はすべて同じである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの異種のヌクレオチド配列は、他の異種のヌクレオチド配列と異なる。いくつかの実施形態では、本開示は、異種のヌクレオチド配列を2個、3個、4個、5個または7個超、タンデムに含むことができる。
【0210】
いくつかの実施形態では、異種のヌクレオチド配列は、アミノ酸配列をコードする。いくつかの実施形態では、異種のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列は、FVIII分子の半減期を延長できる異種の部分(「半減期延長因子」)である。
【0211】
いくつかの実施形態では、異種の部分は、本開示のタンパク質に組み込まれると、インビボ半減期の延長と関連する非構造化の特徴または構造化の特徴のいずれかを有するペプチドまたはポリペプチドである。非限定的な例としては、アルブミン、アルブミン断片、免疫グロブリンのFc断片、ヒト絨毛性ゴナドトロピンのβサブユニットのC末端ペプチド(CTP)、HAP配列、XTEN配列、トランスフェリンもしくはその断片、PASポリペプチド、ポリグリシンリンカー、ポリセリンリンカー、アルブミン結合部分、またはこれらのポリペプチドのいずれかの断片、誘導体、バリアントもしくは組み合わせたものが挙げられる。特定的な一実施形態では、異種のアミノ酸配列は、免疫グロブリン定常領域もしくはその一部、トランスフェリン、アルブミン、またはPAS配列である。いくつかの態様では、異種の部分は、フォンビルブランド因子またはその断片を含む。その他の関連する態様では、異種の部分は、ポリペプチド以外の部分(ポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、ポリシアル酸、またはこれらのエレメントのいずれかの誘導体、バリアントもしくは組み合わせたものなど)に対する付着部位(例えば、システインアミノ酸)を含むことができる。いくつかの態様では、異種の部分は、ポリペプチド以外の部分(ポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、ポリシアル酸、またはこれらのエレメントのいずれかの誘導体、バリアントもしくは組み合わせなど)に対する付着部位として機能するシステインアミノ酸を含む。
【0212】
具体的な一実施形態では、第1の異種のヌクレオチド配列は、当該技術分野において知られている半減期延長分子である第1の異種の部分をコードし、第2の異種のヌクレオチド配列は、同様に、当該技術分野において知られている半減期延長分子であることができる第2の異種の部分をコードする。特定の実施形態では、第1の異種の部分(例えば第1のFc部分)と第2の異種の部分(例えば第2のFc部分)は、互いに会合して、二量体を形成する。一実施形態では、第2の異種の部分は、第2のFc部分であり、この第2のFc部分は、第1の異種の部分、例えば第1のFc部分と連結または会合している。例えば、第2の異種の部分(例えば第2のFc部分)は、リンカーによって、第1の異種の部分(例えば第1のFc部分)に連結することも、共有結合または非共有結合によって、第1の異種の部分と会合することもできる。
【0213】
いくつかの実施形態では、異種の部分は、少なくとも約10個、少なくとも約100個、少なくとも約200個、少なくとも約300個、少なくとも約400個、少なくとも約500個、少なくとも約600個、少なくとも約700個、少なくとも約800個、少なくとも約900個、少なくとも約1000個、少なくとも約1100個、少なくとも約1200個、少なくとも約1300個、少なくとも約1400個、少なくとも約1500個、少なくとも約1600個、少なくとも約1700個、少なくとも約1800個、少なくとも約1900個、少なくとも約2000個、少なくとも約2500個、少なくとも約3000個または少なくとも約4000個のアミノ酸を含むか、これらから本質的になるか、またはこれらからなるポリペプチドである。別の実施形態では、異種の部分は、約10
0~約200個のアミノ酸、約200~約300個のアミノ酸、約300~約400個のアミノ酸、約400~約500個のアミノ酸、約500~約600個のアミノ酸、約600~約700個のアミノ酸、約700~約800個のアミノ酸、約800~約900個のアミノ酸または約900~約1000個のアミノ酸を含むか、これらから本質的になるか、またはこれらからなるポリペプチドである。
【0214】
特定の実施形態では、異種の部分は、FVIIIタンパク質の生物学的活性または機能に有意な影響を及ぼさずに、FVIIIタンパク質の1つ以上の薬物動態特性を改善する。
【0215】
特定の実施形態では、異種の部分は、本開示のFVIIIタンパク質のインビボ及び/またはインビトロ半減期を延長する。別の実施形態では、異種の部分は、本開示のFVIIIタンパク質またはその断片(例えば、FVIIIタンパク質のタンパク質切断後の、異種の部分を含む断片)の可視化または局在化を促す。本開示のFVIIIタンパク質またはその断片の可視化及び/または位置は、インビボ、インビトロ、エキソビボまたはこれらを組み合わせたものであることができる。
【0216】
別の実施形態では、異種の部分は、本開示のFVIIIタンパク質またはその断片(例えば、FVIIIタンパク質のタンパク質切断後の、異種の部分を含む断片)の安定性を向上させる。本明細書で使用する場合、「安定性」という用語は、環境条件(例えば、高温または低温)に応じて、FVIIIタンパク質の1つ以上の物理的特性が保持されていることの尺度のうち、当該技術分野において認識されている尺度を指す。特定の態様では、この物理的特性は、FVIIIタンパク質の共有構造の維持(例えば、タンパク質切断、不要な酸化または脱アミド化が行われてないこと)であることができる。別の態様では、この物理的特性は、FVIIIタンパク質が適切に折り畳まれた状態で存在すること(例えば、可溶性または不溶性の凝集体または沈殿物が存在しないこと)であることもできる。一態様では、FVIIIタンパク質の安定性は、FVIIIタンパク質の生物物理的特性、例えば、熱安定性、pHアンフォールディングプロファイル、糖鎖付加の安定な除去、溶解性、生化学的機能(例えば、タンパク質、レセプターもしくはリガンドに結合する能力)など、及び/またはこれらを組み合わせたものをアッセイすることによって測定する。別の態様では、生化学的機能は、相互作用の結合親和性によって示される。一態様では、タンパク質の安定性の尺度は、熱安定性、すなわち、熱変化に対する耐性である。安定性は、当該技術分野において知られている方法(HPLC(高速液体クロマトグラフィー)、SEC(サイズ排除クロマトグラフィー)、DLS(動的光散乱)など)を用いて測定できる。熱安定性を測定する方法としては、示差走査熱量測定法(DSC)、示差走査蛍光定量法(DSF)、円偏光二色性(CD)及び熱変化アッセイが挙げられるが、これらに限らない。
【0217】
特定の態様では、本開示の核酸分子によってコードされるFVIIIタンパク質は、少なくとも1つの半減期延長因子、すなわち、異種の部分であって、その異種の部分が欠乏している対応するFVIIIタンパク質のインビボ半減期よりも、FVIIIタンパク質のインビボ半減期を延長させる異種の部分を含む。FVIIIタンパク質のインビボ半減期は、当業者に知られているいずれかの方法、例えば、活性アッセイ(発色アッセイまたは一段階凝固aPTTアッセイ)、ELISA、ROTEM(商標)などによって割り出すことができる。
【0218】
いくつかの実施形態では、1つ以上の半減期延長因子が存在すると、そのような1つ以上の半減期延長因子が欠損している対応するタンパク質の半減期よりも、FVIIIタンパク質の半減期が長くなる。半減期延長因子を含むFVIIIタンパク質の半減期は、そのような半減期延長因子が欠損している対応するFVIIIタンパク質のインビボ半減期
よりも、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約11倍または少なくとも約12倍長い。
【0219】
一実施形態では、半減期延長因子を含むFVIIIタンパク質の半減期は、そのような半減期延長因子が欠損している対応するタンパク質のインビボ半減期よりも、約1.5倍~約20倍、約1.5倍~約15倍または約1.5倍~約10倍長い。別の実施形態では、半減期延長因子を含むFVIIIタンパク質の半減期は、そのような半減期延長因子が欠損している対応するタンパク質のインビボ半減期と比べて、約2倍~約10倍、約2倍~約9倍、約2倍~約8倍、約2倍~約7倍、約2倍~約6倍、約2倍~約5倍、約2倍~約4倍、約2倍~約3倍、約2.5倍~約10倍、約2.5倍~約9倍、約2.5倍~約8倍、約2.5倍~約7倍、約2.5倍~約6倍、約2.5倍~約5倍、約2.5倍~約4倍、約2.5倍~約3倍、約3倍~約10倍、約3倍~約9倍、約3倍~約8倍、約3倍~約7倍、約3倍~約6倍、約3倍~約5倍、約3倍~約4倍、約4倍~約6倍、約5倍~約7倍または約6倍~約8倍長くなる。
【0220】
別の実施形態では、半減期延長因子を含むFVIIIタンパク質の半減期は、少なくとも約17時間、少なくとも約18時間、少なくとも約19時間、少なくとも約20時間、少なくとも約21時間、少なくとも約22時間、少なくとも約23時間、少なくとも約24時間、少なくとも約25時間、少なくとも約26時間、少なくとも約27時間、少なくとも約28時間、少なくとも約29時間、少なくとも約30時間、少なくとも約31時間、少なくとも約32時間、少なくとも約33時間、少なくとも約34時間、少なくとも約35時間、少なくとも約36時間、少なくとも約48時間、少なくとも約60時間、少なくとも約72時間、少なくとも約84時間、少なくとも約96時間または少なくとも約108時間である。
【0221】
さらに別の実施形態では、半減期延長因子を含むFVIIIタンパク質の半減期は、約15時間~約2週間、約16時間~約1週間、約17時間~約1週間、約18時間~約1週間、約19時間~約1週間、約20時間~約1週間、約21時間~約1週間、約22時間~約1週間、約23時間~約1週間、約24時間~約1週間、約36時間~約1週間、約48時間~約1週間、約60時間~約1週間、約24時間~約6日、約24時間~約5日、約24時間~約4日、約24時間~約3日または約24時間~約2日である。
【0222】
いくつかの実施形態では、半減期延長因子を含むFVIIIタンパク質の、対象1人当たりの平均半減期は、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、約24時間(1日)、約25時間、約26時間、約27時間、約28時間、約29時間、約30時間、約31時間、約32時間、約33時間、約34時間、約35時間、約36時間、約40時間、約44時間、約48時間(2日)、約54時間、約60時間、約72時間(3日)、約84時間、約96時間(4日)、約108時間、約120時間(5日)、約6日、約7日(1週間)、約8日、約9日、約10日、約11日、約12日、約13日または約14日である。
【0223】
1つ以上の半減期延長因子は、FVIIIのC末端またはN末端に融合することも、FVIII内に挿入することもできる。
【0224】
1.免疫グロブリン定常領域またはその一部
別の態様では、異種の部分は、1つ以上の免疫グロブリン定常領域またはその一部(例えばFc領域)を含む。一実施形態では、本開示の単離核酸分子は、免疫グロブリン定常領域またはその一部をコードする異種の核酸配列をさらに含む。いくつかの実施形態では
、免疫グロブリン定常領域またはその一部は、Fc領域である。
【0225】
免疫グロブリン定常領域は、CH(定常重鎖)ドメイン(CH1、CH2など)であるドメインで構成されている。アイソタイプ(すなわち、IgG、IgM、IgA、IgDまたはIgE)に応じて、定常領域は、3つまたは4つのCHドメインで構成されることもある。いくつかのアイソタイプ(例えばIgG)の定常領域は、ヒンジ領域も含む。Janeway et al.2001,Immunobiology,Garland Publishing,N.Y.,N.Y.を参照されたい。
【0226】
本開示のFVIIIタンパク質を作製するための免疫グロブリン定常領域またはその一部は、多種多様な供給源から得ることができる。一実施形態では、免疫グロブリン定常領域またはその一部は、ヒト免疫グロブリンに由来する。しかしながら、免疫グロブリン定常領域またはその一部は、別の哺乳動物種(例えば、齧歯動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、モルモット)またはヒト以外の霊長類動物(例えば、チンパンジー、マカク)の種を含む)の免疫グロブリンに由来し得ることが分かる。さらに、免疫グロブリン定常領域またはその一部は、IgM、IgG、IgD、IgA及びIgEを含むいずれかの免疫グロブリンクラスと、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を含むいずれかの免疫グロブリンアイソタイプに由来し得る。一実施形態では、ヒトアイソタイプIgG1を用いる。
【0227】
公的に入手可能な寄託物の形態で、様々な免疫グロブリン定常領域遺伝子配列(例えば、ヒト定常領域遺伝子配列)が利用可能である。定常領域ドメイン配列は、特定のエフェクター機能を有するように(もしくは、特定のエフェクター機能が欠損するように)、または免疫原性を低下させる特定の改変を有するように選択することができる。抗体と、抗体をコードする遺伝子の多くの配列が公開されており、これらの配列から、当該技術分野で認識されている技法を用いて、好適なIg定常領域配列(例えば、ヒンジ配列、CH2配列及び/もしくはCH3配列、またはその一部)を導き出すことができる。そして、上記の方法のいずれかを用いて得た遺伝物質を改変または合成して、本開示のポリペプチドを得ることができる。さらに、本開示の範囲には、定常領域DNA配列のアレル、バリアント及び変異が含まれることは明らかであろう。
【0228】
免疫グロブリン定常領域またはその一部の配列は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応と、目的のドメインを増幅する目的で選択されるプライマーとを用いてクローニングすることができる。抗体の免疫グロブリン定常領域またはその一部の配列をクローニングするには、mRNAをハイブリドーマ細胞、脾臓細胞またはリンパ細胞から単離して、DNAに逆転写して、抗体遺伝子をPCRによって増幅できる。PCR増幅法は、米国特許第4,683,195号、同第4,683,202号、同第4,800,159号、同第4,965,188号と、例えば、“PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications”Innis et al.eds.,Academic Press,San Diego,CA(1990)、Ho et al.1989.Gene 77:51、Horton et al.1993.Methods Enzymol.217:270)に詳細に説明されている。PCRは、公表されている、重鎖及び軽鎖のDNA配列とアミノ酸配列に基づき、コンセンサス定常領域プライマーによって、またはより特異性の高いプライマーによって開始できる。PCRを用いて、抗体の軽鎖と重鎖をコードするDNAクローンを単離することもできる。この場合には、ライブラリーは、コンセンサスプライマーまたはさらに大きい相同プローブ(マウス定常領域プローブなど)によってスクリーニングできる。抗体遺伝子の増幅に適するプライマーセットは、当該技術分野において数多く知られている(例えば、精製抗体のN末端配列(Benhar and Pastan.1994.Protein Engineering 7:1509)、cDNA末端の迅速な増幅(Ruberti,F.e
t al.1994.J.Immunol.Methods 173:33)、抗体リーダー配列(Larrick et al.1989 Biochem.Biophys.Res.Commun.160:1250)に基づく5’プライマー)。抗体配列のクローニングはさらに、1995年1月25日に提出された、Newmanらの米国特許第5,658,570号(参照により、本明細書に援用される)に説明されている。
【0229】
本発明で使用する免疫グロブリン定常領域は、すべてのドメインとヒンジ領域、またはその一部を含むことができる。一実施形態では、免疫グロブリン定常領域またはその一部は、CH2ドメインと、CH3ドメインと、ヒンジ領域、すなわち、Fc領域またはFcRn結合パートナーを含む。
【0230】
本明細書で使用する場合、「Fc領域」という用語は、ネイティブIgのFc領域に対応するポリペプチド部分、すなわち、2つの重鎖のそれぞれのFcドメインの二量体会合によって形成されるような部分として定義する。ネイティブFc領域は、もう一方のFc領域とホモ二量体を形成する。これに対して、「遺伝子工学によって融合したFc領域」または「一本鎖Fc領域」(scFc領域)という用語は、本明細書で使用する場合、1本のポリペプチド鎖において、遺伝子工学によって連結された(すなわち、1つの連続する遺伝子配列でコードされた)Fcドメインで構成された合成二量体Fc領域を指す。国際公開第2012/006635号(参照により、その全体が本明細書に援用される)を参照されたい。
【0231】
一実施形態では、「Fc領域」とは、1つのIg重鎖の部分のうち、ヒンジ領域において、パパイン切断部位(すなわち、重鎖定常領域の第1の残基を114位としたときのIgGの216位の残基)のすぐ上流から始まり、その抗体のC末端で終わる部分を指す。したがって、完全Fc領域は少なくとも、ヒンジドメインと、CH2ドメインと、CH3ドメインを含む。
【0232】
免疫グロブリン定常領域またはその一部は、FcRn結合パートナーであることができる。FcRnは、成人上皮組織において活性を有し、腸の内腔、肺気道、鼻腔内表面、膣表面、大腸表面及び直腸表面で発現する(米国特許第6,485,726号)。FcRn結合パートナーは、FcRnに結合する免疫グロブリン部分である。
【0233】
FcRnレセプターは、ヒトを含むいくつかの哺乳動物種から単離されている。ヒトFcRn、サルFcRn、ラットFcRn及びマウスFcRnの配列は、既知である(Story et al.1994,J.Exp.Med.180:2377)。FcRnレセプターは、比較的低いpHにおいてIgGに結合し(ただし、IgA、IgM、IgD及びIgEのような他の免疫グロブリンクラスには結合しない)、IgGを経細胞的に、内腔から漿膜への方向に能動的に輸送し、そして、間質液で見られる相対的に高いpHにおいて、IgGを放出する。FcRnレセプターは、成人上皮組織(米国特許第6,485,726号、同第6,030,613号、同第6,086,875号、WO03/077834、US2003-0235536A1)(肺及び腸上皮(Israel et al.1997,Immunology 92:69)、近位尿細管上皮(Kobayashi et al.2002,Am.J.Physiol.Renal Physiol.282:F358)を含む)と、鼻上皮と、膣表面と、胆道系表面で発現する。
【0234】
本開示において有用なFcRn結合パートナーには、全IgG、IgGのFc断片、及び完全なFcRnレセプター結合領域を含むその他の断片を含め、FcRnレセプターが特異的に結合できる分子が含まれる。IgGのFc部分のうち、FcRnレセプターに結合する領域は、X線結晶構造解析に基づき説明されている(Burmeister et
al.1994,Nature 372:379)。FcとFcRnとの主な接触区域
は、CH2ドメインとCH3ドメインとの連結部の近くである。Fc-FcRn接触部はすべて、1つのIg重鎖内に存在する。FcRn結合パートナーとしては、全IgGと、IgGのFc断片と、完全なFcRn結合領域を含むその他のIgG断片が挙げられる。主な接触部位には、CH2ドメインの248位、250~257位、272位、285位、288位、290~291位、308~311位及び314位のアミノ酸残基と、CH3ドメインの385~387位、428位及び433~436位のアミノ酸残基が含まれる。免疫グロブリン、または免疫グロブリンの断片もしくは領域のアミノ酸の番号に言及している場合には、いずれも、Kabat et al.1991,Sequences
of Proteins of Immunological Interest,U.S.Department of Public Health,Bethesda,Md.に基づいている。
【0235】
FcRnに結合したFc領域またはFcRn結合パートナーは、FcRnによって、上皮バリアを越えて効率的に運ぶことができるので、所望の治療的分子を全身投与するための非侵襲的手段が得られる。加えて、Fc領域またはFcRn結合パートナーを含む融合タンパク質は、FcRnを発現している細胞に貪食される。しかし、これらの融合タンパク質は、分解の対象にはならずに、リサイクルされて、再度血液循環に入るので、これらのタンパク質のインビボ半減期は長くなる。特定の実施形態では、免疫グロブリン定常領域部分は、典型的にはジスルフィド結合とその他の非特異的相互作用を介して、別のFc領域または別のFcRn結合パートナーと会合して、二量体以上の多量体を形成するFc領域またはFcRn結合パートナーである。
【0236】
2つのFcRnレセプターが1つのFc分子と結合することができる。結晶学的データから、各FcRn分子が、Fcホモ二量体の1つのポリペプチドと結合することが示唆されている。一実施形態では、FcRn結合パートナー、例えばIgGのFc断片を生物活性分子に連結することで、その生物活性分子の経口送達、口腔内送達、舌下送達、直腸送達、膣内送達、経鼻投与を行うエアゾール剤としての送達、経肺経路による送達または眼局所経路による送達を行う手段が得られる。別の実施形態では、FVIIIタンパク質は、侵襲的に投与、例えば、皮下投与、静脈内投与できる。
【0237】
FcRn結合パートナー領域は、FcRnレセプターが特異的に結合し、その結果、Fc領域をFcRnレセプターによって能動輸送できる分子またはその一部である。特異的な結合とは、生理的条件下で比較的安定である複合体を形成する2つの分子を指す。通常、親和性が高く、容量が中度から高度な非特異的な結合と区別される形で、特異的な結合は、高い親和性と、低度から中度の容量によって特徴付けられる。典型的には、親和性定数KAが、10-1超または10-1超であるときに、結合は特異的であるとみなす。必要な場合、結合条件を変えることによって、特異的な結合に実質的な影響を及ぼすことなく、非特異的な結合を低減できる。適切な結合条件(分子の濃度、溶液のイオン強度、温度、結合させる時間、ブロッキング剤(例えば、血清アルブミン、ミルクカゼイン)の濃度など)は、当業者であれば、常法を用いて最適化できる。
【0238】
特定の実施形態では、本開示の核酸分子によってコードされるFVIIIタンパク質は、トランケート型Fc領域であって、トランケート型にもかかわらず、Fcレセプター(FcR)結合特性をFc領域に付与するのに十分であるトランケート型Fc領域を1つ以上含む。例えば、FcRnに結合するFc領域部分(すなわち、FcRn結合部分)は、EUの番号付けで、IgG1の282~438位周辺のアミノ酸を含む(主要な接触部位は、CH2ドメインの248位、250~257位、272位、285位、288位、290~291位、308~311位及び314位のアミノ酸と、CH3ドメインの385~387位、428位及び433~436位のアミノ酸残基である)。すなわち、本開示のFc領域は、FcRn結合部分を含むか、またはFcRn結合部分からなることができ
る。FcRn結合部分は、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を含め、いずれかのアイソタイプの重鎖に由来することができる。一実施形態では、ヒトアイソタイプIgG1の抗体のFcRn結合部分が用いられている。別の実施形態では、ヒトアイソタイプIgG4の抗体のFcRn結合部分が用いられている。
【0239】
Fc領域は、多種多様な供給源から得ることができる。一実施形態では、本開示のポリペプチドのFc領域は、ヒト免疫グロブリンに由来している。しかしながら、Fc部分は、別の哺乳動物種(例えば、齧歯動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、モルモット)またはヒト以外の霊長類動物(例えば、チンパンジー、マカク)の種を含む)の免疫グロブリンに由来し得ることが分かる。さらに、Fcドメインまたはその一部のポリペプチドは、IgM、IgG、IgD、IgA及びIgEを含むいずれかの免疫グロブリンクラスと、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を含むいずれかの免疫グロブリンアイソタイプに由来し得る。別の実施形態では、ヒトアイソタイプIgG1を用いる。
【0240】
特定の実施形態では、Fcバリアントによって、前記野生型Fcドメインを含むFc部分によって付与される少なくとも1つのエフェクター機能が変化する(例えば、Fc領域がFcレセプター(例えば、FcγRI、FcγRIIもしくはFcγRIII)もしくは補体タンパク質(例えばC1q)に結合したり、または抗体依存性細胞障害性(ADCC)、食作用もしくは補体依存性細胞障害性(CDCC)を誘発したりする能力が改善または低下する)。別の実施形態では、Fcバリアントは、操作されたシステイン残基をもたらす。
【0241】
本開示のFc領域は、当該技術分野において認識されているFcバリアントのうち、エフェクター機能及び/またはFcRもしくはFcRnの結合を変化させる(例えば、増強または低減させる)ことが知られているFcバリアントを用いることができる。具体的には、本開示のFc領域は例えば、国際公開第88/07089A1号、同第96/14339A1号、同第98/05787A1号、同第98/23289A1号、同第99/51642A1号、同第99/58572A1号、同第00/09560A2号、同第00/32767A1号、同第00/42072A2号、同第02/44215A2号、同第02/060919A2号、同第03/074569A2号、同第04/016750A2号、同第04/029207A2号、同第04/035752A2号、同第04/063351A2号、同第04/074455A2号、同第04/099249A2号、同第05/040217A2号、同第04/044859号、同第05/070963A1号、同第05/077981A2号、同第05/092925A2号、同第05/123780A2号、同第06/019447A1号、同第06/047350A2号及び同第06/085967A2号、米国特許出願公開第US2007/0231329号、同第2007/0231329号、同第2007/0237765号、同第2007/0237766号、同第2007/0237767号、同第2007/0243188号、同第20070248603号、同第20070286859号、同第20080057056号、または米国特許第5,648,260号、同第5,739,277号、同第5,834,250号、同第5,869,046号、同第6,096,871号、同第6,121,022号、同第6,194,551号、同第6,242,195号、同第6,277,375号、同第6,528,624号、同第6,538,124号、同第6,737,056号、同第6,821,505号、同第6,998,253号、同第7,083,784号、同第7,404,956号及び同第7,317,091号(それぞれ、参照により、本明細書に援用される)に開示されているアミノ酸位置のうちの1つ以上に、変更(例えば置換)を含むことができる。一実施形態では、この具体的な変更(例えば、当該技術分野において開示されている1つ以上のアミノ酸の具体的な置換)は、開示されているアミノ酸位置のうちの1つ以上において施すことができる。別の実施形態では、開示されているアミノ酸位置のうちの1つ以上において、異なる変更(例えば、当該技術分野におい
て開示されている1つ以上のアミノ酸位置において、異なる置換)を施すことができる。
【0242】
十分に認識されている手順(部位特異的変異誘発など)に従って、IgGのFc領域またはFcRn結合パートナーを改変して、改変型IgGもしくはFc断片、またはその一部のうち、FcRnが結合することになる一部を得ることができる。このような改変としては、FcRn接触部位から離れた場所の改変と、FcRnへの結合を保持させるか、またはさらにはFcRnへの結合を増強する、接触部位内の改変が挙げられる。例えば、P238A、S239A、K246A、K248A、D249A、M252A、T256A、E258A、T260A、D265A、S267A、H268A、E269A、D270A、E272A、L274A、N276A、Y278A、D280A、V282A、E283A、H285A、N286A、T289A、K290A、R292A、E293A、E294A、Q295A、Y296F、N297A、S298A、Y300F、R301A、V303A、V305A、T307A、L309A、Q311A、D312A、N315A、K317A、E318A、K320A、K322A、S324A、K326A、A327Q、P329A、A330Q、P331A、E333A、K334A、T335A、S337A、K338A、K340A、Q342A、R344A、E345A、Q347A、R355A、E356A、M358A、T359A、K360A、N361A、Q362A、Y373A、S375A、D376A、A378Q、E380A、E382A、S383A、N384A、Q386A、E388A、N389A、N390A、Y391F、K392A、L398A、S400A、D401A、D413A、K414A、R416A、Q418A、Q419A、N421A、V422A、S424A、E430A、N434A、T437A、Q438A、K439A、S440A、S444A及びK447A(例えば、P238Aは、238位の野生型プロリンのアラニンへの置換を表す)のように、FcRnに対するFc結合親和性を有意に喪失することなく、ヒトIgG1 Fc(Fcγ1)における1つのアミノ酸残基を置換できる。一例としては、具体的な実施形態では、N297Aの変異を組み込んで、高度に保存されたN糖鎖付加部位を除去している。アラニンに加えて、上で定めた位置の野生型アミノ酸を他のアミノ酸で置換できる。変異を個々にFcに組み込んで、ネイティブFcと異なるFc領域を100個超もたらすことができる。加えて、これらの個々の変異を2つ、3つまたは4つ以上を組み合わせたものを一緒に組み込んで、100個以上のFc領域をもたらすことができる。
【0243】
上記のうちの特定の変異により、Fc領域またはFcRn結合パートナーに、新たな機能を付与できる。例えば、一実施形態では、N297Aを組み込んで、高度に保存されたN糖鎖付加部位を除去している。この変異の作用は、免疫原性を低減することによって、Fc領域の循環血液中半減期を延長することと、FcRnに対する親和性を損なうことなく、Fc領域がFcγRI、FcγRIIA、FcγRIIB及びFcγRIIIAに結合できないようにすることである(Routledge et al.1995,Transplantation 60:847、Friend et al.1999,Transplantation 68:1632、Shields et al.1995,J.Biol.Chem.276:6591)。上記の変異に起因する新たな機能のさらなる例として、いくつかのケースでは、FcRnに対する親和性を野生型の親和性よりも向上させることができる。この親和性の向上は、「会合」速度の上昇、「解離」速度の低下、または「会合」速度の上昇と「解離」速度の低下の両方の反映であり得る。FcRnに対する親和性を向上させると考えられる変異の例としては、T256A、T307A、E380A及びN434Aが挙げられるが、これらに限らない(Shields et
al.2001,J.Biol.Chem.276:6591)。
【0244】
加えて、少なくとも3つのヒトFcγレセプターは、下流のヒンジ領域、概して234~237位のアミノ酸内の、IgG上の結合部位を認識すると見られる。したがって、新たな機能と、免疫原性の潜在的な低減の別の例は、例えば、ヒトIgG1の233~23
6位のアミノ酸「ELLG」(配列番号45)を、IgG2の対応する配列「PVA」(アミノ酸が1つ欠失している)で置換することによるなど、この領域の変異に起因し得る。このような変異を導入すると、様々なエフェクター機能を媒介するFcγRI、FcγRII及びFcγRIIIが、IgG1に結合しなくなることが示されている。Ward
and Ghetie 1995,Therapeutic Immunology 2:77及びArmour et al.1999,Eur.J.Immunol.29:2613。
【0245】
別の実施形態では、免疫グロブリン定常領域またはその一部は、ヒンジ領域またはその一部に、第2の免疫グロブリン定常領域またはその一部と1つ以上のジスルフィド結合を形成するアミノ酸配列を含む。この第2の免疫グロブリン定常領域またはその一部は、第2のポリペプチドに連結して、FVIIIタンパク質と第2のポリペプチドを一体にするようにできる。いくつかの実施形態では、この第2のポリペプチドは、エンハンサー部分である。本明細書で使用する場合、「エンハンサー部分」という用語は、FVIIIの凝固促進活性を増強できる分子、その断片またはポリペプチドの構成要素を指す。このエンハンサー部分は、補因子(可溶性組織因子(sTF)など)または凝固促進ペプチドであることができる。したがって、FVIIIの活性化の際に、このエンハンサー部分は、FVIII活性を増強する目的で利用可能である。
【0246】
特定の実施形態では、本開示の核酸分子によってコードされるFVIIIタンパク質は、免疫グロブリン定常領域またはその一部(例えばFcバリアント)に対するアミノ酸置換であって、Ig定常領域の抗原依存性エフェクター機能、特には、タンパク質の循環血液中半減期を変化させるアミノ酸置換を含む。
【0247】
2.scFc領域
別の態様では、異種の部分は、scFc(一本鎖Fc)領域を含む。一実施形態では、本開示の単離核酸分子は、ScFc領域をコードする異種の核酸配列をさらに含む。このscFc領域は、同じ直鎖状ポリペプチド鎖内に、フォールディング(例えば分子内または分子間フォールディング)して、Fcペプチドリンカーによって連結されている1つの機能性scFc領域を形成できる少なくとも2つの免疫グロブリン定常領域またはその一部(例えば、Fc部分もしくはFcドメイン(例えば、2個、3個、4個、5個、6個もしくは7個以上のFc部分もしくはドメイン))を含む。例えば、一実施形態では、半減期を改善したり、免疫エフェクター機能(例えば、抗体依存性細胞障害性(ADCC)、食作用もしくは補体依存性細胞障害性(CDCC))を誘発したり、及び/または製造性を改善したりする目的で、本開示のポリペプチドは、そのScFc領域を介して、少なくとも1つのFcレセプター(例えば、FcRn、FcγRレセプター(例えば、FcγRIII)または補体タンパク質(例えばC1q))に結合できる。
【0248】
3.CTP
別の態様では、異種の部分は、ヒト絨毛性ゴナドトロピンのβサブユニットのC末端ペプチド(CTP)、またはその断片、バリアントもしくは誘導体を1つ含む。組み換えタンパク質に挿入された1つ以上のCTPペプチドは、そのタンパク質のインビボ半減期を延長することが知られている。例えば、米国特許第5,712,122号(参照により、その全体が本明細書に援用される)を参照されたい。
【0249】
例示的なCTPペプチドとしては、DPRFQDSSSSKAPPPSLPSPSRLPGPSDTPIL(配列番号33)またはSSSSKAPPPSLPSPSRLPGPSDTPILPQ(配列番号34)が挙げられる。例えば、米国特許出願公開第2009/0087411A1号(参照により、援用される)を参照されたい。
【0250】
4.XTEN配列
いくつかの実施形態では、異種の部分は、1つ以上のXTEN配列、その断片、バリアントまたは誘導体を含む。本明細書で使用する場合、「XTEN配列」とは、非天然かつ実質的に非反復の配列であって、低分子親水性アミノ酸で主に構成されている配列を有する伸展長ポリペプチドを指し、この配列は、生理的条件下では、二次構造もしくは三次構造を取る程度が低いか、または二次構造もしくは三次構造を取らない。異種の部分として、XTENは、半減期延長部分としての機能を果たすことができる。加えて、XTENは、所望の特性(薬物動態パラメーターと溶解性特性の増強が挙げられるが、これらに限らない)をもたらすことができる。
【0251】
XTEN配列を含む異種の部分を本開示のタンパク質に導入すると、そのタンパク質に、コンフォメーション柔軟性、水溶解性の向上、高度なプロテアーゼ耐性、低免疫原性、哺乳動物レセプターへの低結合性、または流体力学的(もしくはストークス)半径の増大という有益な特性のうちの1つ以上を付与できる。
【0252】
特定の態様では、XTEN配列は、インビボ半減期の延長または曲線下面積(AUC)の増大など、薬物動態特性を向上させることができ、その結果、本開示のタンパク質は、インビボに留まり、XTENという異種の部分を有さないこと以外は同じであるタンパク質よりも長期間にわたって、凝固促進活性を有する。
【0253】
いくつかの実施形態では、本開示で有用なXTEN配列は、約20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個、100個、150個、200個、250個、300個、350個、400個、450個、500個、550個、600個、650個、700個、750個、800個、850個、900個、950個、1000個、1200個、1400個、1600個、1800個または2000個超のアミノ酸残基を有するペプチドまたはポリペプチドである。特定の実施形態では、XTENは、約20~約3000個超のアミノ酸残基、30~約2500個超の残基、40~約2000個の残基、50~約1500超の残基、60~約1000個の残基、70~約900個の残基、80~約800個の残基、90~約700個の残基、100~約600個の残基、110~約500個の残基または120~約400個の残基を有するペプチドまたはポリペプチドである。特定的な一実施形態では、XTENは、42個超のアミノ酸の長さ、かつ144個未満のアミノ酸の長さであるアミノ酸配列を含む。
【0254】
本開示のXTEN配列は、5~14個(例えば9~14個)のアミノ酸残基の1つ以上の配列モチーフ、またはその配列モチーフと少なくとも80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含むことができ、そのモチーフは、グリシン(G)、アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T)、グルタメート(E)及びプロリン(P)からなる群から選択した4~6種類のアミノ酸(例えば5種類のアミノ酸)を含むか、これらから本質的になるか、またはこれらからなる。US2010-0239554A1を参照されたい。
【0255】
いくつかの実施形態では、XTENは、配列の約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%または約100%が、表4から選択した1つのモチーフファミリーから選択した非重複配列の複数ユニットからなる(その結果、ファミリー配列が得られる)非重複配列モチーフを含む。本明細書で使用する場合、「ファミリー」とは、XTENが、表4の1つのモチーフカテゴリー、すなわち、AD、AE、AF、AG、AM、AQ、BCまたはBDのXTENのみから選択したモチーフを有することと、XTENにおけるアミノ酸のうち、ファミリーモチーフに由来しないいずれかの他のアミノ酸は、必要な特性を得られるように、例えば、コードヌクレオチドによって制限部位を導入できるよ
うに、切断配列を導入できるように、またはFVIIIへの連結を向上させるように選択されていることを意味する。XTENファミリーのいくつかの実施形態では、XTEN配列は、ADモチーフファミリー、AEモチーフファミリー、AFモチーフファミリー、AGモチーフファミリー、AMモチーフファミリー、AQモチーフファミリー、BCファミリーまたはBDファミリーの非重複配列モチーフを複数ユニット含み、得られたXTENは、上記の範囲の相同性を示す。別の実施形態では、XTENは、表2Aのモチーフファミリーのうちの2つ以上からのモチーフ配列を複数ユニット含む。これらの配列は、下にさらに詳しく説明されている、そのモチーフのアミノ酸組成物によって付与される実効電荷、親水性、二次構造の欠乏または反復性の欠乏のような特性を含む所望の物理的/化学的特徴を得られるように選択できる。この段落で説明されている上記の実施形態では、本明細書に記載されている方法を用いて、XTENに導入するモチーフを選択及びアセンブルして、約36~約3000個のアミノ酸残基のXTENを得ることができる。
【表4-1】
【表4-2】
様々な並べ替えで併せて用いると、「ファミリー配列」が得られる個々のモチーフ配列を示している。
【0256】
本開示のキメラタンパク質において、異種の部分として使用できるXTEN配列の例は、例えば、米国特許出願公開第2010/0239554A1号、同第2010/0323956A1号、同第2011/0046060A1号、同第2011/0046061A1号、同第2011/0077199A1号もしくは同第2011/0172146A1号、または国際公開第2010091122A1号、同第2010144502A2号、同第2010144508A1号、同第2011028228A1号、同第2011028229A1もしくは同第2011028344A2号(それぞれ、参照により、その全体が本明細書に援用される)に開示されている。
【0257】
FVIIIに挿入または連結するために、XTENの長さは様々であることができる。一実施形態では、XTEN配列(複数可)の長さは、融合タンパク質において実現したい特性または機能に基づいて選択する。意図する特性または機能に応じて、XTENは、長さが短いかもしくは中程度の配列、または担体としての役割を果たすことができるさらに長い配列であることができる。特定の実施形態では、XTENは、約6~約99個のアミノ酸残基という短いセグメント、約100~約399個のアミノ酸残基という中程度の長さ、約400~約1000個、かつ最大で約3000個のアミノ酸残基というさらに長い長さを含む。したがって、FVIIIに挿入または連結するXTENは、長さが、約6個、約12個、約36個、約40個、約42個、約72個、約96個、約144個、約288個、約400個、約500個、約576個、約600個、約700個、約800個、約
864個、約900個、約1000個、約1500個、約2000個、約2500または最大で約3000個のアミノ酸残基の長さであることができる。別の実施形態では、XTEN配列は、約6~約50個、約50~約100個、約100~150個、約150~250個、約250~400個、約400~約500個、約500~約900個、約900~1500個、約1500~2000個または約2000~約3000個のアミノ酸残基の長さである。FVIIIに挿入または連結するXTENの正確な長さは、FVIIIの活性に有意な影響を及ぼさなければ、様々であることができる。一実施形態では、本発明で用いるXTENの1つ以上は、42個のアミノ酸、72個のアミノ酸、144個のアミノ酸、288個のアミノ酸、576個のアミノ酸または864個のアミノ酸の長さであり、XTENファミリー配列、すなわち、AD、AE、AF、AG、AM、AQ、BCまたはBDのうちの1つ以上から選択できる。
【0258】
いくつかの実施形態では、本開示で用いるXTEN配列は、AE42、AG42、AE48、AM48、AE72、AG72、AE108、AG108、AE144、AF144、AG144、AE180、AG180、AE216、AG216、AE252、AG252、AE288、AG288、AE324、AG324、AE360、AG360、AE396、AG396、AE432、AG432、AE468、AG468、AE504、AG504、AF504、AE540、AG540、AF540、AD576、AE576、AF576、AG576、AE612、AG612、AE624、AE648、AG648、AG684、AE720、AG720、AE756、AG756、AE792、AG792、AE828、AG828、AD836、AE864、AF864、AG864、AM875、AE912、AM923、AM1318、BC864、BD864、AE948、AE1044、AE1140、AE1236、AE1332、AE1428、AE1524、AE1620、AE1716、AE1812、AE1908、AE2004A、AG948、AG1044、AG1140、AG1236、AG1332、AG1428、AG1524、AG1620、AG1716、AG1812、AG1908、AG2004及びこれらをいずれかに組み合わせたものからなる群から選択した配列と少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一である。US2010-0239554A1を参照されたい。特定的な一実施形態では、XTENは、AE42、AE72、AE144、AE288、AE576、AE864、AG42、AG72、AG144、AG288、AG576、AG864またはこれらをいずれかに組み合わせたものを含む。
【0259】
本開示のキメラタンパク質において、異種の部分として使用できる例示的なXTEN配列としては、XTEN AE42-4(配列番号47(11D)によってコードされる配列番号46(図11C))、XTEN 144-2A(配列番号49(図11F)によってコードされる配列番号48(図11E))、XTEN A144-3B(配列番号51(図11H)によってコードされる配列番号50(図11G))、XTEN AE144-4A(配列番号53(図11J)によってコードされる配列番号52(図11I))、XTEN AE144-5A(配列番号55(11L)によってコードされる配列番号54(図11K))、XTEN AE144-6B(配列番号57(11N)によってコードされる配列番号56(図11M))、XTEN AG144-1(配列番号59(11P)によってコードされる配列番号58(図11O))、XTEN AG144-A(配列番号61(図11R)によってコードされる配列番号60(図11Q))、XTEN AG144-B(配列番号63(図11T)によってコードされる配列番号62(図11S))、XTEN AG144-C(配列番号65(図11V)によってコードされる配列番号64(図11U))及びXTEN AG144-F(配列番号67(図11X)によってコードされる配列番号66(図11W))が挙げられる。特定的な一実施形態では、XTENは、配列番号18によってコードされる。
【0260】
いくつかの実施形態では、XTENのアミノ酸の100%未満が、グリシン(G)、アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T)、グルタメート(E)及びプロリン(P)から選択されているか、または配列の100%未満が、表2Aの配列モチーフまたは本発明で提供するXTEN配列からなっている。このような実施形態では、XTENの残りのアミノ酸残基は、その他の14個の天然L-アミノ酸のうちのいずれかから選択されているが、XTEN配列が、親水性アミノ酸を少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または少なくとも約99%含むように、親水性アミノ酸から優先的に選択できる。本開示の共役コンストラクトで用いるXTENにおける疎水性アミノ酸の含有率は、5%未満、2%未満または1%未満であることができる。XTENの構築の際に、あまり好ましくない疎水性残基としては、トリプトファン、フェニルアラニン、チロシン、ロイシン、イソロイシン、バリン及びメチオニンが挙げられる。加えて、XTEN配列は、メチオニン(例えば、酸化を回避する目的)またはアスパラギン及びグルタミン(脱アミド化を回避する目的)というアミノ酸を5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満または0%含むことができる。
【0261】
1つ以上のXTEN配列は、本開示のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列のC末端またはN末端に挿入することも、本開示のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列内の2つのアミノ酸の間に挿入することもできる。例えば、XTENは、表3から選択した1つ以上の挿入部位で、2つのアミノ酸の間に挿入できる。FVIII内の部位のうち、XTENの挿入部位として許容できる例は、例えば、国際公開第2013/123457A1号または米国特許出願公開第2015/0158929A1号(これらは、参照により、その全体が本明細書に援用される)に見ることができる。
【0262】
5.アルブミン、またはその断片、誘導体もしくはバリアント
いくつかの実施形態では、異種の部分は、アルブミンまたはその機能性断片を含む。完全長形態では609個のアミノ酸のタンパク質であるヒト血清アルブミン(HSAまたはHA)は、血清の浸透圧のかなりの部分を担っており、内因性リガンドと外因性リガンドの担体としても機能する。本明細書で使用する場合、「アルブミン」という用語には、完全長アルブミン、またはその機能性断片、バリアント、誘導体もしくはアナログが含まれる。アルブミン、またはその断片もしくはバリアントの例は、米国特許出願公開第2008/0194481A1号、同第2008/0004206A1号、同第2008/0161243A1号、同第2008/0261877A1号もしくは同第2008/0153751A1号、または国際公開第2008/033413A2号、同第2009/058322A1号もしくは同第2007/021494A2号(参照により、その全体が本明細書に援用される)に開示されている。
【0263】
一実施形態では、本開示の核酸分子によってコードされるFVIIIタンパク質は、免疫グロブリン定常領域またはその一部(例えばFc領域)、PAS配列、HES及びPEGからなる群から選択した第2の異種の部分にさらに連結されたアルブミン、その断片またはバリアントを含む。
【0264】
6.アルブミン結合部分
特定の実施形態では、異種の部分は、アルブミン結合ペプチド、細菌アルブミン結合ドメイン、アルブミン結合抗体断片またはこれらをいずれかに組み合わせたものを含むアルブミン結合部分を含む。
【0265】
例えば、アルブミン結合タンパク質は、細菌アルブミン結合タンパク質、ドメイン抗体を含む抗体または抗体断片であることができる(米国特許第6,696,245号を参照されたい)。アルブミン結合タンパク質は例えば、細菌アルブミン結合ドメイン(連鎖球
菌プロテインGの細菌アルブミン結合ドメインなど)であることができる(Konig,T.and Skerra,A.(1998)J.Immunol.Methods218,73-83)。共役パートナーとして使用できるアルブミン結合ペプチドの他の例は例えば、米国特許出願公開第2003/0069395号またはDennis et al.(Dennis et al.(2002)J.Biol.Chem.277,35035-35043)に記載されているように、Cys-Xaa-Xaa-Xaa-Xaa-Cysというコンセンサス配列を有するアルブミン結合ペプチドであり、このXaaは、Asp、Asn、Ser、ThrまたはTrpであり、Xaaは、Asn、Gln、His、Ile、LeuまたはLysであり、Xaaは、Ala、Asp、Phe、TrpまたはTyrであり、Xaaは、Asp、Gly、Leu、Phe、SerまたはThrである。
【0266】
Kraulis et al.,FEBS Lett.378:190-194(1996)及びLinhult et al.,Protein Sci.11:206-213(2002)によって開示されているように、連鎖球菌プロテインGのドメイン3は、細菌アルブミン結合ドメインの一例である。アルブミン結合ペプチドの例としては、コア配列DICLPRWGCLW(配列番号35)を有する一連のペプチドが挙げられる。例えば、Dennis et al.,J.Biol.Chem.2002,277:35035-35043(2002)を参照されたい。アルブミン結合抗体断片の例は、Muller and Kontermann,Curr.Opin.Mol.Ther.9:319-326(2007)、Roovers et al.,Cancer Immunol.Immunother.56:303-317(2007)及びHolt et al.,Prot.Eng.Design Sci.,21:283-288(2008)(参照により、その全体が本明細書に援用される)に開示されている。このようなアルブミン結合部分の例は、Trussel et al.,Bioconjugate Chem.20:2286-2292(2009)によって開示されているような2-(3-マレイミドプロパンアミド)-6-(4-(4-ヨードフェニル)ブタンアミド)ヘキサノエート(「Albu」タグ)である。
【0267】
脂肪酸、特に、長鎖脂肪酸(LCFA)及び長鎖脂肪酸様アルブミン結合化合物を用いて、本開示のFVIIIタンパク質のインビボ半減期を延長できる。LCFA様アルブミン結合化合物の例は、16-(1-(3-(9-(((2,5-ジオキソピロリジン-1-イルオキシ)カルボニルオキシ)-メチル)-7-スルホ-9H-フルオレン-2-イルアミノ)-3-オキソプロピル)-2,5-ジオキソピロリジン-3-イルチオ)ヘキサデカン酸である(例えば、WO2010/140148を参照されたい)。
【0268】
7.PAS配列
別の実施形態では、異種の部分は、PAS配列である。PAS配列とは、本明細書で使用する場合、アラニン残基とセリン残基を主に含むか、またはアラニン残基と、セリン残基と、プロリン残基を主に含むアミノ酸配列であって、生理的条件下でランダムコイル構造を形成するアミノ酸配列を意味する。したがって、PAS配列は、アラニン、セリン及びプロリンを含むか、これらから本質的になるか、またはこれらからなるビルディングブロック、アミノ酸ポリマーまたは配列カセットであって、本開示のキメラタンパク質における異種の部分の一部として使用できるビルディングブロック、アミノ酸ポリマーまたは配列カセットである。ただし、PAS配列における微量成分として、アラニン、セリン及びプロリン以外の残基が付加されていても、アミノ酸ポリマーがランダムコイル構造を形成できることは当業者であれば分かる。「微量成分」という用語は、本明細書で使用する場合、PAS配列に、アラニン、セリン及びプロリン以外のアミノ酸を特定の程度まで、例えば、最大で約12%、すなわち、PAS配列の100個のアミノ酸のうちの約12個、最大で約10%、すなわち、PAS配列の100個のアミノ酸のうちの約10個、最大
で約9%、すなわち、100個のアミノ酸のうちの約9個、最大で約8%、すなわち、100個のアミノ酸のうちの約8個、約6%、すなわち、100個のアミノ酸のうちの約6個、約5%、すなわち、100個のアミノ酸のうちの約5個、約4%、すなわち、100個のアミノ酸のうちの約4個、約3%、すなわち、100個のアミノ酸のうちの約3個、約2%、すなわち、100個のアミノ酸のうちの約2個、約1%、すなわち、100個のアミノ酸うちの約1個付加できることを意味する。アラニン、セリン及びプロリンとは異なるアミノ酸は、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Thr、Trp、Tyr及びValからなる群から選択できる。
【0269】
生理的条件下では、PAS配列伸長体は、ランダムコイル構造を形成することによって、FVIIIタンパク質に対して、インビボ及び/またはインビトロ安定性の向上を媒介できる。ランダムコイルドメインは、単独では安定な構造または機能を持たないので、FVIIIタンパク質によって媒介される生物学的活性は、本質的に保持される。別の実施形態では、ランダムコイルドメインを形成するPAS配列は、特に、血漿中でのタンパク質分解、免疫原性、等電点/静電挙動、細胞表面レセプターへの結合またはインターナリゼーションに関して、生物学的に不活性であるが、生分解性を有し、それにより、PEGなどの合成ポリマーを上回る明らかな利点をもたらす。
【0270】
ランダムコイル構造を形成するPAS配列の非限定的な例は、ASPAAPAPASPAAPAPSAPA(配列番号36)、AAPASPAPAAPSAPAPAAPS(配列番号37)、APSSPSPSAPSSPSPASPSS(配列番号38)、APSSPSPSAPSSPSPASPS(配列番号39)、SSPSAPSPSSPASPSPSSPA(配列番号40)、AASPAAPSAPPAAASPAAPSAPPA(配列番号41)及びASAAAPAAASAAASAPSAAA(配列番号42)またはこれらをいずれかに組み合わせたものからなる群から選択したアミノ酸配列を含む。PAS配列のさらなる例は、例えば、米国特許出願公開第2010/0292130A1号及び国際公開第2008/155134A1号から知られている。
【0271】
8.HAP配列
特定の実施形態では、異種の部分は、グリシンリッチホモアミノ酸ポリマー(HAP)である。HAP配列は、少なくとも50個のアミノ酸、少なくとも100個のアミノ酸、120個のアミノ酸、140個のアミノ酸、160個のアミノ酸、180個のアミノ酸、200個のアミノ酸、250個のアミノ酸、300個のアミノ酸、350個のアミノ酸、400個のアミノ酸、450個のアミノ酸または500個のアミノ酸の長さであるグリシン反復配列を含むことができる。一実施形態では、HAP配列は、そのHAP配列に融合または連結された部分の半減期を延長できる。HAP配列の非限定的な例としては、(Gly)、(GlySer)またはS(GlySer)(nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20である)が挙げられるが、これらに限らない。一実施形態では、nは、20、21、22、23、24、25、26、26、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39または40である。別の実施形態では、nは、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190または200である。
【0272】
9.トランスフェリンまたはその断片
特定の実施形態では、異種の部分は、トランスフェリンまたはその断片である。いずれかのトランスフェリンを用いて、本開示のFVIIIタンパク質を作製できる。一例としては、野生型ヒトTF(TF)は、およそ75KDaの679個のアミノ酸タンパク質(糖鎖付加は考慮していない)であり、2つの主要ドメインと、N(約330個のアミノ酸
)と、C(約340個のアミノ酸)を有する(これは、遺伝子重複に起因すると見られる)。GenBankアクセッション番号NM001063、XM002793、M12530、XM039845、XM039847及びS95936(www.ncbi.nlm.nih.gov/)(これらはすべて、参照により、その全体が本明細書に援用される)を参照されたい。トランスフェリンは、2つのドメインと、Nドメインと、Cドメインを含む。Nドメインは、N1ドメインとN2ドメインという2つのサブドメインを含み、Cドメインは、C1ドメインとC2ドメインというという2つのサブドメインを含む。
【0273】
一実施形態では、トランスフェリンという異種の部分としては、トランスフェリンスプライスバリアントが挙げられる。一例では、トランスフェリンスプライスバリアントは、ヒトトランスフェリンのスプライスバリアント、例えばGenBankアクセッションAAA61140であることができる。別の実施形態では、本開示のキメラタンパク質のトランスフェリン部分は、トランスフェリン配列の1つ以上のドメイン、例えば、Nドメイン、Cドメイン、N1ドメイン、N2ドメイン、C1ドメイン、C2ドメインまたはこれらをいずれかに組み合わせたものを含む。
【0274】
10.クリアランスレセプター
特定の実施形態では、異種の部分は、クリアランスレセプター、その断片、バリアントまたは誘導体である。LRP1は、様々なタンパク質(第X因子など)のレセプター媒介性クリアランスに関与する600KDaの膜内在性タンパク質である。例えば、Narita et al.,Blood 91:555-560(1998)を参照されたい。
【0275】
11.フォンビルブランド因子またはその断片
特定の実施形態では、異種の部分は、フォンビルブランド因子(VWF)またはその1つ以上の断片である。
【0276】
VWF(F8VWFとして知られている)は、血漿に存在するとともに、内皮(バイベルパラーデ小体内)、巨核球(血小板のα顆粒)及び内皮下結合組織で構成的に産生される巨大な多量体糖タンパク質である。基本的なVWF単量体は、2813個のアミノ酸のタンパク質である。各単量体は、D’及びD3ドメイン(一体になって、第VIII因子に結合する)、A1ドメイン(血小板GPIbレセプター、ヘパリン及び/またはおそらくはコラーゲンに結合する)、A3ドメイン(コラーゲンに結合する)、C1ドメイン(このドメインが活性化すると、RGDドメインが血小板インテグリンαIIbβ3に結合する)、そのタンパク質のC末端にある「システインノット」ドメイン(VWFは、このドメインを血小板由来成長因子(PDGF)、形質転換成長因子-β(TGFβ)及びβ-ヒト絨毛性ゴナドトロピン(βHCG)と共有する)という、特有の機能を有する多くの特有のドメインを含む。
【0277】
ヒトVWFの2813個の単量体アミノ酸配列は、GenBankでアクセッション番号NP000543.2として報告されている。ヒトVWFをコードするヌクレオチド配列は、GenBankでアクセッション番号NM00552.3として報告されている。配列番号44(図11B)は、配列番号43によってコードされるアミノ酸配列である。D’ドメインは、配列番号44の764~866位のアミノ酸を含む。D3ドメインは、配列番号44の867~1240位のアミノ酸を含む。
【0278】
血漿では、FVIIIの95~98%は、完全長VWFとの強固な非共有複合体で循環する。インビボでFVIIIIの適切な血漿中レベルを保つには、この複合体の形成が重要である。Lenting et al.,Blood.92(11):3983-96(1998)、Lenting et al.,J.Thromb.Haemost.5(7):1353-60(2007)。重鎖の372位及び740位と、軽鎖の1689
位におけるタンパク質分解により、FVIIIが活性化するときには、FVIIIに結合していたVWFが、活性化FVIIIから外れる。
【0279】
特定の実施形態では、異種の部分は、完全長フォンビルブランド因子である。別の実施形態では、異種の部分は、フォンビルブランド因子断片である。本明細書で使用する場合、本明細書で使用している「1つのVWF断片」または「複数のVWF断片」という用語は、FVIIIと相互作用するとともに、完全長VWFによってFVIIIに通常もたらされる特性(例えば、FVIIIaの尚早な活性化の防止、尚早なタンパク質分解の防止、尚早なクリアランスをもたらすことのある、リン脂質膜との会合の防止、ネイキッドFVIIIとは結合できるが、VWFの結合したFVIIIには結合できないFVIIIクリアランスレセプターへの結合の防止、及び/またはFVIIIの重鎖と軽鎖の相互作用の安定化)を少なくとも1つ以上保持するいずれかのVWF断片を意味する。具体的な実施形態では、異種の部分は、VWFのD’ドメインとD3ドメインを含む(VWF)断片である。D’ドメインとD3ドメインを含むVWF断片は、A1ドメイン、A2ドメイン、A3ドメイン、D1ドメイン、D2ドメイン、D4ドメイン、B1ドメイン、B2ドメイン、B3ドメイン、C1ドメイン、C2ドメイン、CKドメイン、これらの1つ以上の断片、及びこれらをいずれかに組み合わせたものからなる群から選択したVWFドメインをさらに含むことができる。FVIII活性を有するポリペプチドであって、VWF断片に融合したポリペプチドのさらなる例は、2012年7月3日に提出された米国特許仮出願第61/667,901号と、米国特許出願公開第2015/0023959A1号(いずれも、参照により、その全体が本明細書に援用される)に開示されている。
【0280】
12.リンカー部分
特定の実施形態では、異種の部分は、ペプチドリンカーである。
【0281】
本明細書で使用する場合、「ペプチドリンカー」または「リンカー部分」という用語は、ポリペプチド鎖の直鎖状アミノ酸配列で2つのドメインを連結するペプチドまたはポリペプチド配列(例えば、合成ペプチドまたはポリペプチド配列)を指す。
【0282】
いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーをコードする異種のヌクレオチド配列は、本開示の最適化FVIIIポリヌクレオチド配列と、例えば、上記の異種の部分のうちの1つ(アルブミンなど)をコードする異種のヌクレオチド配列との間に挿入できる。ペプチドリンカーは、キメラポリペプチド分子に柔軟性をもたらすことができる。リンカーは、典型的には切断されないが、リンカーの切断が望ましいことがある。一実施形態では、これらのリンカーは、プロセシング中に除去されない。
【0283】
本開示のキメラタンパク質に存在できるタイプのリンカーは、プロテアーゼで切断可能なリンカーであって、切断部位(すなわち、プロテアーゼ切断部位基質、例えば、第XIa因子、第Xa因子またはトロンビン切断部位)を含むとともに、その切断部位のN末端もしくはC末端のいずれか、または両側に、追加のリンカーを含むことができるリンカーである。これらの切断可能なリンカーは、本開示のコンストラクトに導入すると、異種の切断部位を有するキメラ分子が得られる。
【0284】
一実施形態では、本開示の核酸分子によってコードされるFVIIIポリペプチドは、1本のポリペプチド鎖で構成されるFc領域を形成するように、cscFcリンカーを介して連結されている2つ以上のFcドメインまたはFc部分を含む。cscFcリンカーは、少なくとも1つの細胞内プロセシング部位、すなわち、細胞内酵素によって切断される部位に隣接している。少なくとも1つの細胞内プロセシング部位で、ポリペプチドが切断されると、少なくとも2本のポリペプチド鎖を含むポリペプチドが得られる。
【0285】
本開示のコンストラクトにおいて、その他のペプチドリンカーを任意に応じて用いて、例えば、FVIIIタンパク質をFc領域に連結できる。本開示との関連で使用できるいくつかの例示的なリンカーとしては、例えば、下にさらに詳細に説明されているGlySerアミノ酸を含むポリペプチドが挙げられる。
【0286】
一実施形態では、ペプチドリンカーは、合成、すなわち、非天然のものである。一実施形態では、ペプチドリンカーは、アミノ酸からなる第1の直鎖状配列を、天然の状態においては連結されないか、または天然では遺伝的に融合されないアミノ酸からなる第2の直鎖状配列に連結または遺伝的に融合するアミノ酸配列を含むペプチド(またはポリペプチド)(天然のものであることも、天然のものでないこともできる)を含む。例えば、一実施形態では、ペプチドリンカーは、天然のポリペプチドの改変型である(例えば、付加、置換または欠失のような変異を含む)非天然のポリペプチドを含むことができる。別の実施形態では、ペプチドリンカーは、非天然型アミノ酸を含むことができる。別の実施形態では、ペプチドリンカーは、天然では見られない直鎖状配列で存在させた天然のアミノ酸を含むことができる。さらに別の実施形態では、ペプチドリンカーは、天然のポリペプチド配列を含むことができる。
【0287】
例えば、特定の実施形態では、ペプチドリンカーを用いて、同じFc部分を融合することによって、ホモ二量体のscFc領域を形成できる。別の実施形態では、ペプチドリンカーを用いて、異なるFc部分(例えば、野生型Fc部分と、Fc部分バリアント)を融合することによって、ヘテロ二量体のscFc領域を形成できる。
【0288】
別の実施形態では、ペプチドリンカーは、gly-serリンカーを含むか、またはgly-serリンカーからなる。一実施形態では、scFcまたはcscFcリンカーは、免疫グロブリンヒンジとgly-serリンカーの少なくとも一部を含む。本明細書で使用する場合、「gly-serリンカー」という用語は、グリシン残基とセリン残基からなるペプチドを指す。特定の実施形態では、前記gly-serリンカーは、ペプチドリンカーの2つの別の配列の間に挿入できる。別の実施形態では、gly-serリンカーは、ペプチドリンカーの別の配列の一端または両端に結合する。さらに別の実施形態では、2つ以上のgly-serリンカーは、ペプチドリンカーに直列に導入する。一実施形態では、本開示のペプチドリンカーは、(例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4分子に由来する)ヒンジ領域上流の少なくとも一部と、(例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4分子に由来する)ヒンジ領域中央の少なくとも一部と、一連のgly/serアミノ酸残基を含む。
【0289】
本開示のペプチドリンカーは、少なくとも1つのアミノ酸の長さであり、様々な長さのものであることができる。一実施形態では、本開示のペプチドリンカーは、約1~約50個のアミノ酸の長さである。この関連で使用する場合、「約」という用語は、+/-2個のアミノ酸残基を示す。リンカーの長さは、正の整数でなければならないので、約1~約50個のアミノ酸の長さ分の長さは、1~3個から48~52個までのアミノ酸の長さ分の長さである。別の実施形態では、本開示のペプチドリンカーは、約10~約20個のアミノ酸の長さである。別の実施形態では、本開示のペプチドリンカーは、約15~約50個のアミノ酸の長さである。別の実施形態では、本開示のペプチドリンカーは、約20~約45個のアミノ酸の長さである。別の実施形態では、本開示のペプチドリンカーは、約15~約35個または約20~約30個のアミノ酸の長さである。別の実施形態では、本開示のペプチドリンカーは、約1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個、100個、500個、1000個または2000個のアミノ酸の長さである。一実施形態では、本開示のペプチド
リンカーは、20個または30個のアミノ酸の長さである。
【0290】
いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、少なくとも60個、少なくとも70個、少なくとも80個、少なくとも90個または少なくとも100個のアミノ酸を含むことができる。別の実施形態では、ペプチドリンカーは、少なくとも200個、少なくとも300個、少なくとも400個、少なくとも500個、少なくとも600個、少なくとも700個、少なくとも800個、少なくとも900個または少なくとも1,000個のアミノ酸を含むことができる。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、少なくとも約10個、20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個、100個、150個、200個、300個、400個、500個、600個、700個、800個、900個、1000個、1100個、1200個、1300個、1400個、1500個、1600個、1700個、1800個、1900個または2000個のアミノ酸を含むことができる。ペプチドリンカーは、1~5個のアミノ酸、1~10個のアミノ酸、1~20個のアミノ酸、10~50個のアミノ酸、50~100個のアミノ酸、100~200個のアミノ酸、200~300個のアミノ酸、300~400個のアミノ酸、400~500個のアミノ酸、500~600個のアミノ酸、600~700個のアミノ酸、700~800個のアミノ酸、800~900個のアミノ酸または900~1000個のアミノ酸を含むことができる。
【0291】
ペプチドリンカーは、当該技術分野において知られている技法を用いて、ポリペプチド配列に導入できる。改変は、DNA配列解析によって確認できる。プラスミドDNAを用いて、産生させるポリペプチドを安定な産生するように、宿主細胞をトランスフォーメーションできる。
【0292】
単量体-二量体ハイブリッド
いくつかの実施形態では、異種のヌクレオチド配列をさらに含む、本開示の単離核酸分子は、FVIIIを含む単量体-二量体ハイブリッド分子をコードする。
【0293】
本明細書で使用する「単量体-二量体ハイブリッド」という用語は、ジスルフィド結合によって互いに会合している第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖を含むキメラタンパク質を指し、この第1の鎖は、第VIII因子と第1のFc領域を含み、第2の鎖は、FVIIIのない第2のFc領域を含むか、その領域から本質的になるか、またはその領域からなる。したがって、単量体-二量体ハイブリッドコンストラクトは、1つの凝固因子のみを有する単量体部分と、2つのFc領域を有する二量体部分とを含むハイブリッドである。
【0294】
発現制御エレメント
いくつかの実施形態では、本開示の核酸分子またはベクターは、少なくとも1つの発現制御配列をさらに含む。発現制御配列とは、本明細書で使用する場合、プロモーター配列、またはプロモーターとエンハンサーを組み合わせたもののようないずれかの調節ヌクレオチド配列であって、その配列が機能可能に連結しているコード核酸の効率的な転写と翻訳を促す配列である。例えば、本開示の単離核酸分子は、少なくとも1つの転写制御配列に機能可能に連結できる。遺伝子発現制御配列は、例えば、構成的または誘導性プロモーターなどの哺乳動物プロモーターまたはウイルスプロモーターであることができる。哺乳動物構成的プロモーターとしては、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)、アデノシンデアミナーゼ、ピルベートキナーゼ、βアクチンプロモーターという遺伝子のプロモーター、及びその他の構成的プロモーターが挙げられるが、これらに限らない。真核細胞において構成的に機能する例示的なウイルスプロモーターとしては、
例えば、サイトメガロウイルス(CMV)、シミアンウイルス(例えばSV40)、パピローマウイルス、アデノウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ラウス肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、モロニー白血病ウイルスの長鎖末端反復配列(LTR)及びその他のレトロウイルスのプロモーター、ならびに単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼプロモーターが挙げられる。その他の構成的プロモーターは、当業者に知られている。本開示の遺伝子発現配列として有用なプロモーターとしては、誘導性プロモーターも挙げられる。誘導性プロモーターは、誘導剤の存在下で発現する。例えば、メタロチオネインプロモーターは、特定の金属イオンの存在下で誘導されて、転写と翻訳を促す。その他の誘導性プロモーターは、当業者に知られている。
【0295】
一実施形態では、本開示は、組織特異的プロモーター及び/またはエンハンサーの制御下で、導入遺伝子を発現させることを含む。別の実施形態では、プロモーターまたはその他の発現制御配列は、肝細胞における導入遺伝子の発現を選択的に増強する。肝特異的プロモーターの例としては、マウスチレチンプロモーター(mTTR)、内因性ヒト第VIII因子プロモーター(F8)、ヒトα1-アンチトリプシンプロモーター(hAAT)、ヒトアルブミン最小プロモーター及びマウスアルブミンプロモーターが挙げられるが、これらに限らない。特定的な実施形態では、プロモーターは、mTTRプロモーターを含む。mTTRプロモーターは、R.H.Costa et al.,1986,Mol.Cell.Biol.6:4697に記載されている。F8プロモーターは、Figueiredo and Brownlee,1995,J.Biol.Chem.270:11828-11838に記載されている。
【0296】
1つ以上のエンハンサーを用いて、発現レベルをさらに高めて、治療効果を得ることができる。1つ以上のエンハンサーは、単独で供給することも、1つ以上のプロモーターエレメントとともに供給することもできる。典型的には、発現制御配列は、複数のエンハンサーエレメントと組織特異的プロモーターを含む。一実施形態では、エンハンサーは、1コピー以上のα1-ミクログロブリン/ビクニンエンハンサーを含む(Rouet et
al.,1992,J.Biol.Chem.267:20765-20773、Rouet et al.,1995,Nucleic Acids Res.23:395-404、Rouet et al.,1998,Biochem.J.334:577-584、Ill et al.,1997,Blood Coagulation Fibrinolysis 8:S23-S30)。別の実施形態では、エンハンサーは、EBP、DBP、HNF1、HNF3、HNF4、HNF6などの肝特異的転写因子結合部位に由来し、Enh1は、HNF1、(センス)-HNF3、(センス)-HNF4、(アンチセンス)-HNF1、(アンチセンス)-HNF6、(センス)-EBP、(アンチセンス)-HNF4(アンチセンス)を含む。
【0297】
特定的な例では、本開示に有用なプロモーターは、配列番号69(すなわち、ETプロモーター、図11Y)を含み、この配列は、GenBank番号AY661265としても知られている。Vigna et al.,Molecular Therapy 11(5):763(2005)も参照されたい。その他の好適なベクターと遺伝子調節エレメントの例は、WO02/092134、EP1395293、または米国特許第6,808,905号、同第7,745,179号もしくは同第7,179,903号(参照により、その全体が本明細書に援用される)に記載されている。
【0298】
概して、発現制御配列は、必要に応じて、転写の開始に関与する5’非転写配列と、翻訳の開始に関与する5’非翻訳配列(TATAボックス、キャッピング配列、CAAT配列など)を含むことになる。特に、このような5’非転写配列は、機能可能に接合したコード核酸の転写制御のためのプロモーター配列を含むプロモーター領域を含むことになる。遺伝子発現配列は任意に応じて、所望の場合、エンハンサー配列または上流アクチベー
ター配列を含む。
【0299】
ベクター系
本開示のいくつかの実施形態は、本明細書に記載の、FVIII活性を有するポリペプチドをコードする1つ以上のコドン最適化核酸分子を含むベクターと、そのベクターを含む宿主細胞と、そのベクターを用いて出血障害を治療する方法に対するものである。本開示は、対象における発現が増加する最適化FVIII配列であって、遺伝子療法で用いると、治療効果を高める可能性のある最適化FVIII配列を含むベクターを提供することによって、当該技術分野における重要なニーズを満たす。
【0300】
いくつかの実施形態では、本開示は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第1の核酸配列と、FVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第2の核酸配列とを含むヌクレオチド配列を含む単離核酸分子を含むベクターであって、(i)配列番号3の58~1791位のヌクレオチドまたは(ii)配列番号4の58~1791位のヌクレオチドに対する第1の核酸配列の配列同一性が少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%であり、そのN末端部分とC末端部分が一体になって、FVIIIポリペプチド活性を有するベクターを提供する。別の実施形態では、その核酸分子は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第1の核酸配列と、FVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第2の核酸配列とを含むヌクレオチド配列であって、(i)配列番号5の1792~4374位のヌクレオチド、(ii)配列番号6の1792~4374位のヌクレオチド、(iii)配列番号5の1792~2277位と2320~4374位のヌクレオチドまたは(iv)配列番号6の1792~2277位と2320~4374位のヌクレオチドに対する第2の核酸配列の配列同一性が少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%であり、そのN末端部分とC末端部分が一体になって、FVIIIポリペプチド活性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0301】
いくつかの実施形態では、本開示は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子を含むベクターであって、(i)配列番号1の58~4374位のヌクレオチドまたは(ii)配列番号1の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチドに対する配列同一性が少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%である核酸配列をそのヌクレオチド配列が含み、そのヌクレオチド配列が、プロモーター、標的配列またはこれらの両方に機能可能に連結されているベクターを提供する。別の実施形態では、その核酸配列は、(i)配列番号1の58~4374位のヌクレオチドまたは(ii)配列番号1の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチドを含む。
【0302】
いくつかの実施形態では、本開示は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子を含むベクターであって、(i)配列番号2の58~4374位のヌクレオチドまたは(ii)配列番号2の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチドに対する配列同一性が少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%である核酸配列をそのヌクレオチド配列が含み、そのヌクレオチド配列が、プロ
モーター、標的配列またはこれらの両方に機能可能に連結されているベクターを提供する。別の実施形態では、その核酸配列は、(i)配列番号2の58~4374位のヌクレオチドまたは(ii)配列番号2の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチドを含む。
【0303】
いくつかの実施形態では、本開示は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子を含むベクターであって、(i)配列番号70の58~4374位のヌクレオチドまたは(ii)配列番号70の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチドに対する配列同一性が少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である核酸配列をそのヌクレオチド配列が含み、そのヌクレオチド配列が、プロモーター、標的配列またはこれらの両方に機能可能に連結されているベクターを提供する。別の実施形態では、その核酸配列は、(i)配列番号70の58~4374位のヌクレオチドまたは(ii)配列番号70の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチドを含む。
【0304】
いくつかの実施形態では、本開示は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子を含むベクターであって、(i)配列番号71の58~4374位のヌクレオチドまたは(ii)配列番号71の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチドに対する配列同一性が少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である核酸配列をそのヌクレオチド配列が含み、そのヌクレオチド配列が、プロモーター、標的配列またはこれらの両方に機能可能に連結されているベクターを提供する。別の実施形態では、その核酸配列は、(i)配列番号71の58~4374位のヌクレオチドまたは(ii)配列番号71の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチドを含む。
【0305】
いくつかの実施形態では、本開示は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子を含むベクターであって、(i)配列番号3の58~4374位のヌクレオチドまたは(ii)配列番号3の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチドに対する配列同一性が少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%である核酸配列をそのヌクレオチド配列が含み、そのヌクレオチド配列が、プロモーター、標的配列またはこれらの両方に機能可能に連結されているベクターを提供する。別の実施形態では、その核酸配列は、(i)配列番号3の58~4374位のヌクレオチドまたは(ii)配列番号3の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチドを含む。
【0306】
いくつかの実施形態では、本開示は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子を含むベクターであって、(i)配列番号4の58~4374位のヌクレオチドまたは(ii)配列番号4の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチドに対する配列同一性が少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%である核酸配列をそのヌクレオチド配列が含み、そのヌクレオチド配列が、プロモーター、標的配列またはこれらの両方に機能可能に連結されているベクターを提供する。別の実施形態では、その核酸配列は、(i)配列番号4の58~4374位のヌクレオチドまたは(ii)配列番号4の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチドを含む。
【0307】
いくつかの実施形態では、本開示は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子を含むベクターであって、(i)配列番号5の58~4374位のヌクレオチドまたは(ii)配列番号5の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチドに対する配列同一性が少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%である核酸配列をそのヌクレオチド配列が含み、そのヌクレオチド配列が、プロモーター、標的配列またはこれらの両方に機能可能に連結されているベクターを提供する。別の実施形態では、その核酸配列は、(i)配列番号5の58~4374位のヌクレオチドまたは(ii)配列番号5の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチドを含む。
【0308】
いくつかの実施形態では、本開示は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子を含むベクターであって、(i)配列番号6の58~4374位のヌクレオチドまたは(ii)配列番号6の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチドに対する配列同一性が少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%である核酸配列をそのヌクレオチド配列が含み、そのヌクレオチド配列が、プロモーター、標的配列またはこれらの両方に機能可能に連結されているベクターを提供する。別の実施形態では、その核酸配列は、(i)配列番号6の58~4374位のヌクレオチドまたは(ii)配列番号6の58~2277位と2320~4374位のヌクレオチドを含む。
【0309】
本開示に適するベクターとしては、発現ベクター、ウイルスベクター及びプラスミドベクターが挙げられる。一実施形態では、ベクターは、ウイルスベクターである。
【0310】
本明細書で使用する場合、発現ベクターとは、挿入されているコード配列の転写と翻訳に必要なエレメント、またはRNAウイルスベクターの場合には、適切な宿主細胞に導入したときに、複製と翻訳に必要なエレメントを含むいずれかの核酸コンストラクトを指す。発現ベクターとしては、プラスミド、ファージミド、ウイルス及びこれらの誘導体を挙げることができる。
【0311】
本開示の発現ベクターは、本明細書に記載されているBDD FVIIIタンパク質をコードする最適化ポリヌクレオチドを含むことになる。一実施形態では、このBDD FVIIIタンパク質の最適化コード配列は、発現制御配列に機能可能に連結されている。本明細書で使用する場合、構成要素の核酸配列のそれぞれが、その機能を保持できるような形で、2つの核酸配列が共有結合しているときに、2つの核酸配列は、機能可能に連結されている。遺伝子発現制御配列の影響下または制御下で、コード配列の発現、転写及び/または翻訳が行われるような形で、コード配列と遺伝子発現制御配列が共有結合しているときに、コード配列と遺伝子発現制御配列は、機能可能に連結しているという。5’遺伝子発現配列内のプロモーターの誘導によって、コード配列が転写される場合と、2つのDNA配列間の連結の性質により、(1)フレームシフト変異が導入されたり、(2)プロモーター領域がコード配列の転写を誘導する能力が妨げられたり、または(3)対応するRNA転写物をタンパク質に翻訳する能力が妨げられたりしない場合に、2つのDNA配列は、機能可能に連結しているという。したがって、遺伝子発現配列が、コード核酸配列の転写をもたらして、得られた転写産物が所望のタンパク質またはポリペプチドに翻訳されるようにできる場合、その遺伝子発現配列は、そのコード核酸配列に機能可能に連結されていることになる。
【0312】
ウイルスベクターとしては、レトロウイルス(モロニーマウス白血病ウイルス、ハーベイマウス肉腫ウイルス、マウス乳癌ウイルス及びラウス肉腫ウイルスなど)、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、SV40型ウイルス、ポリオーマウイルス、エプスタインバーウイルス、パピローマウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポリオウイルス、ならびにRNAウイルス(レトロウイルスなど)というウイルスの核酸配列が挙げられるが、これらに限らない。当該技術分野において周知のその他のベクターを容易に採用できる。特定のウイルスベクターは、非必須遺伝子が、目的の遺伝子に置き換えられている非細胞変性真核ウイルスに基づいている。非細胞変性ウイルスとしては、ウイルスのゲノムRNAがDNAに逆転写された後に、プロウイルスが宿主細胞DNAに組み込まれることが生活環に含まれるレトロウイルスが挙げられる。レトロウイルスは、ヒト遺伝子療法の試験用に認可されている。最も有用なのは、複製欠損性(すなわち、所望のタンパク質の合成を誘導できるが、感染性粒子を産生できない)レトロウイルスである。遺伝子改変したこのようなレトロウイルス発現ベクターには、インビボで遺伝子を高効率にトランスダクションするための一般的な有用性がある。複製欠損性レトロウイルスを作製するための標準的なプロトコール(外因性遺伝物質をプラスミドに導入し、パッケージング細胞株にプラスミドをトランスフェクションし、パッケージング細胞株によって組み換えレトロウイルスを産生させ、組織培養培地からウイルス粒子を回収し、標的細胞にウイルス粒子を感染させる工程を含む)は、Kriegler,M.,Gene
Transfer and Expression,A Laboratory Manual,W.H.Freeman Co.,New York(1990)及びMurry,E.J.,Methods in Molecular Biology,Vol.7,Humana Press,Inc.,Cliffton,N.J.(1991)に示されている。
【0313】
一実施形態では、ウイルスは、アデノ随伴ウイルス、二本鎖DNAウイルスである。アデノ随伴ウイルスは、操作して複製欠損性にできるとともに、広範なタイプ及び種の細胞に感染できる。アデノ随伴ウイルスはさらに、熱安定性、脂質溶媒安定性、造血細胞を含む多様な系列の細胞における高いトランスダクション頻度、重感染阻害の欠如(これにより、複数回のトランスダクションが可能になる)などの利点を有する。報告によると、アデノ随伴ウイルスは、ヒト細胞DNAに、部位特異的な形で組み込まれることによって、レトロウイルス感染の特徴である挿入変異誘発の可能性と挿入遺伝子の発現のばらつきを最小限にできる。加えて、野生型アデノ随伴ウイルス感染は、組織培養において、選択圧の非存在下で、100回を超える継代で追跡されており、アデノ随伴ウイルスゲノムの組み込みが比較的安定なイベントであることが示唆されている。アデノ随伴ウイルスは、染色体外でも機能することができる。
【0314】
別の実施形態では、ウイルスベクターは、本明細書に開示されているように、FVIIIタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むように操作したアデノ随伴ウイルス(AAV)である。組み換えAAV(rAAV)を得るための一般的な方法は、開示されている。例えば、USP8,734,809と、2013/0195801と、これらで引用されている参照文献を参照されたい。いくつかの実施形態では、rAAVベクターは、1つ以上のAAV逆位末端反復配列(ITR)と、目的の導入遺伝子(例えば、最適化FVIIIポリヌクレオチド配列)を含む。特定の実施形態では、rAAVの作製方法には、AAVキャプシドタンパク質またはその断片をコードする核酸配列と、機能性rep遺伝子と、AAV逆位末端反復配列(ITR)と目的の導入遺伝子とで構成されたrAAVベクターと、組み換えAAVベクターをAAVキャプシドタンパク質にパッケージング可能にするのに十分なヘルパー機能とを含む所望の宿主細胞を培養することが伴う。これらの手順と、関連する手順を行うための材料と方法は例えば、USP8,734,809、2013/0195801、PCT/US1997/015692、PCT/US200
2/033692、PCT/US2002/033630、WO2007/148971、WO00/20561、WO03/042361及びWO2007/04670に開示されている。
【0315】
ほぼいずれの抗原型にも由来する異なるAAVベクター配列のうちの1つ以上を本開示に従って用いることができる。特定のAAVベクター配列の選択は、目的のトロピズム、所要ベクター収量などのような既知のパラメーターによって導き出すことになる。概して、AAV抗原型は、アミノ酸レベルと核酸レベルの相同性がかなりの程度であるゲノム配列を有し、関連する一連の遺伝機能をもたらし、関連するビリオンを産生し、同様の形式で複製とアセンブルを行う。各種のAAV抗原型のゲノム配列と、ゲノム類似性の概要については、例えば、GenBankアクセッション番号U89790、GenBankアクセッション番号J01901、GenBankアクセッション番号AF043303、GenBankアクセッション番号AF085716、Chlorini et al.(1997,J.Vir.71:6823-33)、Srivastava et al.(1983,J.Vir.45:555-64)、Chlorini et al.(1999,J.Vir.73:1309-1319)、Rutledge et al.(1998,J.Vir.72:309-319)及びWu et al.(2000,J.Vir.74:8635-47)を参照されたい。AAV抗原型1、2、3、4及び5は、本開示の関連で使用するためのAAVヌクレオチド配列の例示的な供給源である。特定の開示用途には、AAV6、AAV7、AAV8もしくはAAV9、または例えばキャプシドシャッフリング法と、AAVキャプシドライブラリー、もしくは新たに設計、開発もしくは進化したITRライブラリーによって得られる新開発のAAV様粒子も適している。Dalkara,D et al.(2013),Sci.Transl.Med.5(189):189ra76、Kotterman,MA Nat.Rev.Genet.(2014)5(7):455を参照されたい。
【0316】
しかしながら、特定の実施形態では、本明細書に開示されているFVIIIタンパク質を発現させるためには、肝臓と関連組織に対するトロピズムが有意なAAVベクターが対象となる。非限定的な例としては、AAV抗原型1、2、6及び8が挙げられる。例えば、Torres-Torranteras et al.(2014)22:901と、その文献で引用されている参照文献を参照されたい。
【0317】
別の実施形態では、ベクターは、レンチウイルスに由来する。特定の実施形態では、ベクターは、非分裂細胞に感染できる組み換えレンチウイルスのベクターである。
【0318】
レンチウイルスゲノムとプロウイルスDNAは典型的には、レトロウイルスで見られる3つの遺伝子(gag、pol及びenv)を有し、これらの遺伝子は、2つの長鎖末端反復(LTR)配列に挟まれている。gag遺伝子は、内部構造(マトリックス、キャプシド及びヌクレオキャプシド)タンパク質をコードし、pol遺伝子は、RNA依存型DNAポリメラーゼ(逆転写酵素)と、プロテアーゼと、インテグラーゼをコードし、env遺伝子は、ウイルスエンベロープ糖タンパク質をコードする。5’LTRと3’LTRは、ビリオンRNAの転写とポリアデニル化を促す働きをする。このLTRは、ウイルス複製に必要なすべての他のシス作動性配列を含む。レンチウイルスは、(HIV-1、HIV-2及び/またはSIVにおける)vif、vpr、tat、rev、vpu、nef及びvpxを含むさらなる遺伝子を有する。
【0319】
5’LTRに隣接するのは、ゲノムを逆転写する際に必要な配列(tRNAプライマー結合部位)と、ウイルスRNAを効率的にキャプシドに包んで粒子にする際に必要な配列(Psi部位)である。キャプシドに包む際(またはレトロウイルスRNAをパッケージングして感染性ビリオンにする際)に必要な配列が、ウイルスゲノムから欠損している場
合には、シス欠損により、ゲノムRNAのキャプシド包囲が阻止される。
【0320】
しかしながら、得られる変異体は、依然として、すべてのビリオンタンパク質の合成を誘導できる。本開示は、非分裂細胞に感染できる組み換えレンチウイルスの作製方法であって、好適な宿主細胞に、パッケージング機能、すなわち、gag、pol及びenvと、rev及びtatを有する2つ以上のベクターをトランスフェクションすることを含む方法を提供する。下記に開示するように、特定の用途では、機能性tat遺伝子が欠損しているベクターが望ましい。したがって、例えば、第1のベクターは、ウイルスgagとウイルスpolをコードする核酸を備えることができ、もう一方のベクターは、パッケージング細胞を産生するように、ウイルスenvをコードする核酸を備えることができる。異種の遺伝子を備えるベクター(本明細書では、トランスファーベクターと定める)をそのパッケージング細胞に導入すると、目的の外来遺伝子を有する感染性ウイルス粒子を放出するプロデューサー細胞が得られる。
【0321】
ベクターと外来遺伝子の上記の構成に従って、第2のベクターは、ウイルスエンベロープ(env)遺伝子をコードする核酸を備えることができる。env遺伝子は、レトロウイルスを含め、ほぼすべての好適なウイルスに由来することができる。いくつかの実施形態では、envタンパク質は、ヒトとその他の種の細胞のトランスダクションを可能にするアンフォトロピックエンベロープタンパク質である。
【0322】
レトロウイルス由来のenv遺伝子の例としては、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLVまたはMMLV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス(HaMuSVまたはHSV)、マウス乳癌ウイルス(MuMTVまたはMMTV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLVまたはGALV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)及びラウス肉腫ウイルス(RSV)が挙げられるが、これらに限らない。水疱性口内炎ウイルス(VSV)プロテインG(VSV G)、肝炎ウイルスのenv遺伝子、インフルエンザのenv遺伝子のような他のenv遺伝子も使用できる。
【0323】
ウイルスenv核酸配列を備えるベクターは、本明細書の別の箇所に記載されている調節配列と機能可能に関連付けられている。
【0324】
特定の実施形態では、ベクターとしては、ベクターが非分裂細胞をトランスダクションする能力を損なわずに、HIV病原性遺伝子env、vif、vpr、vpu及びnefを欠失させたレンチウイルスベクターが挙げられる。
【0325】
いくつかの実施形態では、ベクターとしては、3’LTRのU3領域の欠失を含むレンチウイルスベクターが挙げられる。U3領域の欠失は、完全な欠失であることも、部分的な欠失であることもできる。
【0326】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているFVIIIヌクレオチド配列を含む本開示のレンチウイルスベクターは、(a)gag遺伝子、pol遺伝子、またはgag遺伝子とpol遺伝子を含む第1のヌクレオチド配列と、(b)異種のenv遺伝子を含む第2のヌクレオチド配列とともに、細胞にトランスフェクションでき、このレンチウイルスベクターは、機能性tat遺伝子が欠損している。別の実施形態では、細胞には、rev遺伝子を含む第4のヌクレオチド配列をさらにトランスフェクションする。特定の実施形態では、レンチウイルスベクターは、vif、vpr、vpu、vpx及びnef、またはこれらを組み合わせたものから選択した機能性遺伝子が欠損している。
【0327】
特定の実施形態では、レンチウイルスベクターは、gagタンパク質、Rev応答エレメント、セントラルポリプリントラック(cPPT)またはこれらをいずれかに組み合わ
せたものをコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含む。
【0328】
レンチウイルスベクターの例は、WO9931251、WO9712622、WO9817815、WO9817816及びWO9818934(参照により、その全体が本明細書に援用される)に開示されている。
【0329】
その他のベクターとしては、プラスミドベクターが挙げられる。プラスミドベクターは、当該技術分野において詳細に説明されており、当業者には周知である。例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989を参照されたい。この数年で、プラスミドベクターが、インビボで遺伝子を細胞に送達するのに特に有用であることが分かった。プラスミドベクターは、宿主ゲノム内で複製したり、宿主ゲノムに組み込んだりできないからである。しかしながら、宿主細胞と適合するプロモーターを有するこれらのプラスミドは、プラスミド内で機能可能にコードされる遺伝子からペプチドを発現できる。広く用いられているプラスミドのうち、市販業者から入手可能ないくつかのプラスミドとしては、pBR322、pUC18、pUC19、各種pcDNAプラスミド、pRC/CMV、各種pCMVプラスミド、pSV40及びpBlueScriptが挙げられる。具体的なプラスミドのさらなる例としては、いずれもInvitrogen(カリフォルニア州カールスバッド)から得られるpcDNA3.1(カタログ番号V79020)、pcDNA3.1/hygro(カタログ番号V87020)、pcDNA4/myc-His(カタログ番号V86320)及びpBudCE4.1(カタログ番号V53220)が挙げられる。その他のプラスミドは、当業者に周知である。加えて、プラスミドは、DNAの特定の断片を除去及び/または付加するように、標準的な分子生物学的技法を用いて、カスタム設計することができる。
【0330】
組織特異的発現
特定の実施形態では、例えば、最適化FVIII導入遺伝子に機能可能に連結されている1つ以上のmiRNA標的配列をベクター内に含めるのが有用となる。したがって、本開示は、最適化FVIIIヌクレオチド配列に機能可能に連結されているか、または別段の形で、ベクター内に挿入されている少なくとも1つのmiRNA配列標的も提供する。ベクターに含まれるmiRNA標的配列が2コピー以上であると、そのベクター系の有効性を高めることができる。異なるmiRNA標的配列も含まれる。例えば、2つ以上の導入遺伝子を発現するベクターは、2つ以上のmiRNA標的配列(同じであることも、異なることもできる)の制御下で、それらの導入遺伝子を有することができる。miRNA標的配列は、タンデムに存在することができるが、その他の並べ方も含まれる。miRNA標的配列を含む導入遺伝子発現カセットは、ベクター内にアンチセンス方向で挿入できる。アンチセンス方向は、ウイルス粒子の産生において、その発現を回避しなければ、プロデューサー細胞に対して毒性を示すことのある遺伝子産物の発現を回避するのに有用である場合がある。別の実施形態では、ベクターは、同じまたは異なるmiRNA標的配列を1コピー、2コピー、3コピー、4コピー、5コピー、6コピー、7コピーまたは8コピー含む。しかしながら、特定の別の実施形態では、ベクターは、いずれのmiRNA標的配列も含まないことになる。miRNA標的配列を含めるか否か(及び何個のmiRNA標的配列を含めるか)の選択は、意図する組織標的、所要発現レベルなどの既知のパラメーターによって導き出すことになる。
【0331】
一実施形態では、標的配列は、骨髄系コミット前駆細胞において、発現を最も有効にブロックするとともに、より初期のHSPCにおいて、発現を少なくとも部分的にブロックすることが報告されているmiR-223標的である。miR-223標的は、顆粒球、単球、マクロファージ、骨髄樹状細胞を含め、分化した骨髄系細胞における発現をブロッ
クできる。miR-223標的は、リンパ球系統または赤血球系統における導入遺伝子の活発な発現に依存する遺伝子療法用途に適することもできる。miR-223標的は、ヒトHSCにおける発現も非常に有効にブロックできる。
【0332】
別の実施形態では、標的配列は、miR142標的(tccataaagt aggaaacact aca(配列番号43))である。一実施形態では、ベクターは、miR-142標的配列を4コピー含む。特定の実施形態では、造血特異的マイクロRNA(miR-142(142T)など)の相補配列をベクター、例えばレンチウイルスベクター(LV)の3’非翻訳領域に導入して、導入遺伝子のコードする転写物に対して、miRNA媒介性ダウンレギュレーションを起こすようにする。この方法によって、非造血細胞における導入遺伝子の発現を保持したまま、造血系統抗原提示細胞(APC)において、導入遺伝子の発現を阻止することができる(Brown et al.,Nat Med
2006)。この方策によって、導入遺伝子の発現に対してストリンジェントな転写後制御が行われるようにできるので、導入遺伝子の安定な送達と長期的な発現が可能になる。いくつかの実施形態では、miR-142による制御により、トランスダクションした細胞の免疫媒介性クリアランスが阻止されたり、及び/または抗原特異的調節T細胞(T
reg)が誘導されて、導入遺伝子のコードする抗原に対する強固な免疫寛容が媒介されたりする。
【0333】
いくつかの実施形態では、標的配列は、miR181標的である。Chen C-Z and Lodish H,Seminars in Immunology(2005)17(2):155-165には、miR-181(マウス骨髄内のB細胞で特異的に発現するmiRNA)が開示されている(Chen and Lodish,2005)。いくつかのヒトmiRNAが、白血病に関連することも開示されている。
【0334】
標的配列は、そのmiRNAに完全または部分的に相補的であることができる。「完全に相補的な」という用語は、標的配列が、その配列を認識するmiRNAの配列に対して100%相補的な核酸配列を有することを意味する。「部分的に相補的な」という用語は、標的配列が、その配列を認識するmiRNAの配列に対して一部分のみ相補的であることによって、部分的に相補的な配列が依然として、miRNAによって認識されることを意味する。換言すると、本開示の関連において、部分的に相補的な標的配列は、対応するmiRNAを認識するのに有効であるとともに、そのmiRNAを発現する細胞における導入遺伝子の発現を阻止または抑制するのに有効である。miRNA標的配列の例は、WO2007/000668、WO2004/094642、WO2010/055413またはWO2010/125471(参照により、その全体が本明細書に援用される)に記載されている。
【0335】
宿主細胞
本開示は、本開示の核酸分子またはベクターを含む宿主細胞も提供する。本明細書で使用する場合、「トランスフォーメーション」という用語は、広い意味で、レシピエント宿主細胞へのDNAの導入のうち、遺伝型を変化させ、その結果、レシピエント細胞を変化させる導入を指す目的で用いるものとする。
【0336】
「宿主細胞」とは、組み換えDNA技法を用いて構築したとともに、少なくとも1つの異種の遺伝子をコードするベクターでトランスフォーメーションした細胞を指す。本開示の宿主細胞は、好ましくは、哺乳動物起源のものであり、最も好ましくは、ヒトまたはマウス起源のものである。当業者には、目的に最も適する具体的な宿主細胞株を選択的に割り出す能力がある。例示的な宿主細胞株としては、CHO、DG44及びDUXB11(チャイニーズハムスター卵巣株、DHFRマイナス)、HELA(ヒト子宮頸癌)、CVI(サル腎臓株)、COS(SV40T抗原を有するCVIの誘導体)、R1610(チ
ャイニーズハムスター線維芽細胞)、BALBC/3T3(マウス線維芽細胞)、HAK(ハムスター腎臓株)、SP2/O(マウス骨髄腫)、P3.times.63-Ag3.653(マウス骨髄腫)、BFA-1C1BPT(ウシ内皮細胞)、RAJI(ヒトリンパ球)、PER.C6(登録商標)、NS0、CAP、BHK21及びHEK293(ヒト腎臓)が挙げられるが、これらに限らない。特定的な一実施形態では、宿主細胞は、CHO細胞、HEK293細胞、BHK21細胞、PER.C6(登録商標)細胞、NS0細胞及びCAP細胞からなる群から選択されている。宿主細胞株は典型的には、商業サービスのAmerican Tissue Culture Collectionまたは公の文献から入手可能である。
【0337】
宿主細胞への、本開示の単離核酸分子またはベクターの導入は、当業者に周知の様々な技法によって行うことができる。これらの技法としては、トランスフェクション(電気泳動及びエレクトロポレーションを含む)、プロトプラスト融合、リン酸カルシウム沈殿、エンベロープ化DNAとの細胞融合、マイクロインジェクション、ならびにインタクトウイルスへの感染が挙げられるが、これらに限らない。Ridgway,A.A.G.“Mammalian Expression Vectors”Chapter 24.2,pp.470-472 Vectors,Rodriguez and Denhardt,Eds.(Butterworths,Boston,Mass.1988)を参照されたい。最も好ましくは、宿主へのプラスミドの導入は、エレクトロポレーションによるものである。トランスフォーメーションした細胞を、軽鎖と重鎖の産生に適する条件下で培養して、重鎖タンパク質及び/または軽鎖タンパク質の合成についてアッセイする。例示的なアッセイ技法としては、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、放射線免疫アッセイ(RIA)、蛍光活性化セルソーター解析(FACS)、免疫組織化学などが挙げられる。
【0338】
本開示の単離核酸分子またはベクターを含む宿主細胞は、適切な培養培地で培養する。本明細書で使用する場合、「適切な培養培地」という用語は、細胞の成長に必要な栄養素を含む培地を意味する。細胞の成長に必要な栄養素としては、炭素源、窒素源、必須アミノ酸、ビタミン、ミネラル及び成長因子を挙げることができる。任意に応じて、培地は、1つ以上の選択因子を含むことができる。任意に応じて、培地は、仔ウシ血清またはウシ胎仔血清(FCS)を含むことができる。一実施形態では、培地は、IgGを実質的に含まない。培養培地では概して、例えば、薬物選択、またはDNAコンストラクト上の選択可能なマーカーもしくはDNAコンストラクトとコトランスフェクションした選択可能なマーカーによって相補される必須栄養素の欠損によって、DNAコンストラクトを含む細胞を選択する。培養哺乳動物細胞は概して、市販の血清含有培地または無血清培地(例えば、MEM、DMEM、DMEM/F12)で増殖させる。一実施形態では、培地は、CDoptiCHO(カリフォルニア州カールスバッドのInvitrogen)である。別の実施形態では、培地は、CD17(カリフォルニア州カールスバッドのInvitrogen)である。使用する具体的な細胞株に適する培地の選択は、当業者のレベルの範囲内である。
【0339】
ポリペプチドの調製
本開示は、本開示の核酸分子によってコードされるポリペプチドも提供する。別の実施形態では、本開示のポリペプチドは、本開示の単離核酸分子を含むベクターによってコードされる。さらに別の実施形態では、本開示のポリペプチドは、本開示の単離核酸分子を含む宿主細胞によって産生させる。
【0340】
別の実施形態では、本開示は、FVIII活性を有するポリペプチドの作製方法であって、FVIII活性を有するポリペプチドが産生される条件下で、本開示の宿主細胞を培養することと、FVIII活性を有するポリペプチドを回収することを含む方法も提供す
る。いくつかの実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドの発現は、同じ条件下で培養するが、配列番号16(親FVIII遺伝子配列)を含む参照ヌクレオチド配列を含む宿主細胞よりも増加する。
【0341】
別の実施形態では、本開示は、FVIII活性を有するポリペプチド発現の増加方法であって、FVIII活性を有するポリペプチドが核酸分子によって発現される条件下で、本開示の宿主細胞を培養することを含み、FVIII活性を有するポリペプチドの発現が、同じ条件下で培養するとともに、配列番号16を含む参照核酸分子を含む宿主細胞よりも増加する方法を提供する。
【0342】
別の実施形態では、本開示は、FVIII活性を有するポリペプチドの収量の改善方法であって、FVIII活性を有するポリペプチドが核酸分子によって産生される条件下で、宿主細胞を培養することを含み、FVIII活性を有するポリペプチドの収量が、同じ条件下で培養するとともに、配列番号16を含む参照核酸配列を含む宿主細胞よりも増加する方法を提供する。
【0343】
別の実施形態では、本開示は、FVIII活性を有するポリペプチドの収量の改善方法であって、そのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む宿主細胞を培養することを含み、そのヌクレオチド配列の3’部分のコドン適応指標が、そのヌクレオチド配列の5’部分よりも上昇し、FVIII活性を有するポリペプチドの収量が、同じ条件下で培養するとともに、配列番号16を含む参照核酸配列を含む宿主細胞よりも増加する方法を提供する。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド配列の5’部分のコドン適応指標は、配列番号16のコドン最適化指標と比べて、上昇するか、低下するかまたは不変である。
【0344】
別の実施形態では、本開示は、FVIII活性を有するポリペプチドの収量の改善方法であって、そのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む宿主細胞を培養することを含み、そのヌクレオチド配列の5’部分のコドン適応指標が、そのヌクレオチド配列の3’部分よりも上昇し、FVIII活性を有するポリペプチドの収量が、同じ条件下で培養するとともに、配列番号16を含む参照核酸配列を含む宿主細胞よりも増加する方法を提供する。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド配列の3’部分のコドン適応指標は、配列番号16のコドン最適化指標と比べて、上昇するか、低下するかまたは不変である。
【0345】
別の実施形態では、本開示は、FVIII活性を有するポリペプチドの収量の改善方法であって、そのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む宿主細胞を培養することを含み、そのポリペプチドのC末端部分をコードするヌクレオチド部分のコドン適応指標が、そのポリペプチドのN末端部分をコードするヌクレオチド部分よりも上昇し、FVIII活性を有するポリペプチドの収量が、同じ条件下で培養するとともに、配列番号16を含む参照核酸配列を含む宿主細胞よりも増加する方法を提供する。いくつかの実施形態では、そのポリペプチドのN末端部分をコードするヌクレオチド部分のコドン適応指標は、配列番号16のコドン最適化指標と比べて、上昇するか、低下するかまたは不変である。
【0346】
別の実施形態では、本開示は、FVIII活性を有するポリペプチドの収量の改善方法であって、そのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む宿主細胞を培養することを含み、そのポリペプチドのN末端部分をコードするヌクレオチド部分のコドン適応指標が、そのポリペプチドのC末端部分をコードするヌクレオチド部分よりも上昇し、FVIII活性を有するポリペプチドの収量が、同じ条件下で培養するとともに、配列番号16を含む参照核酸配列を含む宿主細胞よりも増加する方法を提供する。いくつかの実施形
態では、そのポリペプチドのC末端部分をコードするヌクレオチド部分のコドン適応指標は、配列番号16のコドン最適化指標と比べて、上昇するか、低下するかまたは不変である。
【0347】
FVIII活性を有するポリペプチドの収量を増加させる特定の実施形態では、そのヌクレオチド配列の5’部分は、適切にアラインメントすると、大体、配列番号1の1~1791位のヌクレオチド、配列番号1の58~1791位のヌクレオチド、またはそれらの断片と一致する。別の実施形態では、本開示のヌクレオチドの5’部分によってコードされるポリペプチドは、適切にアラインメントすると、大体、配列番号17の1~497位のアミノ酸、配列番号17の20~497位のアミノ酸またはそれらの断片と一致する。特定の実施形態では、そのポリペプチドのN末端部分をコードするヌクレオチド配列部分は、大体、適切にアラインメントすると、配列番号1の1~1791位のヌクレオチド、配列番号1の58~1791位のヌクレオチドまたはそれらの断片と一致する。いくつかの実施形態では、本開示のヌクレオチド配列の3’部分は、適切にアラインメントすると、大体、配列番号1の1792~4374位のヌクレオチドまたはその断片と一致する。別の実施形態では、本開示のヌクレオチドの3’部分によってコードされるポリペプチドは、適切にアラインメントすると、大体、配列番号17の498~1458位のアミノ酸またはその断片と一致する。特定の実施形態では、本開示のポリペプチドのC末端部分をコードするヌクレオチド配列部分は、適切にアラインメントすると、大体、配列番号1の1792~4374位のヌクレオチドまたはその断片と一致する。
【0348】
いくつかの実施形態では、FVIIIポリペプチドの発現は、同じ条件下で培養するとともに、配列番号16を含む参照核酸配列を含む宿主細胞よりも、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約11倍、少なくとも約12倍、少なくとも約13倍、少なくとも約14倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約25倍、少なくとも約30倍、少なくとも約35倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約60倍、少なくとも約70倍、少なくとも約80倍、少なくとも約90倍、少なくとも約100倍、少なくとも約150倍または少なくとも約200倍向上する。
【0349】
本開示の最適化核酸分子からFVIIIタンパク質を組み換え産生させるには、様々な方法が利用可能である。所望の配列のポリヌクレオチドは、デノボ固相DNA合成または事前に調製したポリヌクレオチドのPCR変異誘発によって作製できる。オリゴヌクレオチド媒介性変異誘発は、ヌクレオチド配列に置換、挿入、欠失または改変(例えば改変コドン)を行う方法の1つである。.例えば、所望の変異をコードするオリゴヌクレオチドを一本鎖DNAテンプレートにハイブリダイズすることによって、出発DNAを改変する。ハイブリダイゼーション後、DNAポリメラーゼを用いて、オリゴヌクレオチドプライマーが組み込まれているテンプレートの第2の相補鎖全体を合成する。一実施形態では、遺伝子組み換え、例えばプライマーベースのPCR変異誘発は、本明細書に定められているように、本開示のポリヌクレオチドを作製するための改変を組み込むのに十分である。
【0350】
組み換えタンパク質の作製のためには、FVIIIタンパク質をコードする本開示の最適化ポリヌクレオチド配列を適切な発現ビヒクル、すなわち、挿入されるコード配列の転写と翻訳に必要なエレメントを含むベクター、またはRNAウイルスベクターの場合には、複製と翻訳に必要なエレメントを含むベクターに挿入する。
【0351】
本開示のポリヌクレオチド配列は、ベクターに、適切なリーディングフレーム内で挿入する。続いて、本開示のポリペプチドを発現することになる好適な標的細胞に、発現ベクターをトランスフェクションする。当該技術分野において知られているトランスフェクシ
ョン技法としては、リン酸カルシウム沈殿(Wigler et al.1978,Cell14:725)及びエレクトロポレーション(Neumann et al.1982,EMBO,J.1:841)が挙げられるが、これらに限らない。様々な宿主発現ベクター系を用いて、本明細書に記載されているFVIIIタンパク質を真核細胞において発現させることができる。一実施形態では、真核細胞は、哺乳動物細胞を含む動物細胞である(例えば、HEK293細胞、PER.C6(登録商標)細胞、CHO細胞、BHK細胞、Cos細胞、HELA細胞)。本開示のポリヌクレオチド配列は、FVIIIタンパク質を分泌可能にするシグナル配列もコードできる。当業者であれば、FVIIIタンパク質が翻訳される際、シグナル配列が細胞によって切断されて、成熟タンパク質が形成されることは分かる。様々なシグナル配列(例えば、ネイティブ第VII因子シグナル配列、ネイティブ第IX因子シグナル配列及びマウスIgK軽鎖シグナル配列)が当該技術分野において知られている。あるいは、シグナル配列が含まれない場合には、FVIIIタンパク質は、細胞を溶解することによって回収できる。
【0352】
本開示のFVIIIタンパク質は、トランスジェニック動物(齧歯動物、ヤギ、ヒツジ、ブタまたはウシなど)で合成できる。「トランスジェニック動物」という用語は、そのゲノムに外来遺伝子が組み込まれた、ヒト以外の動物を指す。この遺伝子は、生殖系組織に存在するので、親から子孫に伝わる。外因性遺伝子は、単一細胞胚に導入する(Brinster et al.1985,Proc.Natl.Acad.Sci.USA82:4438)。トランスジェニック動物の作製方法は、免疫グロブリン分子を産生するトランスジェニック動物を含め、当該技術分野において知られている(Wagner et al.1981,Proc.Natl.Acad.Sci.USA78:6376、McKnight et al.1983,Cell 34:335、Brinster
et al.1983,Nature306:332、Ritchie et al.1984,Nature 312:517、Baldassarre et al.2003,Theriogenology 59:831、Robl et al.2003,Theriogenology 59:107、Malassagne et al.2003,Xenotransplantation10(3):267)。
【0353】
発現ベクターは、組み換え作製したタンパク質を容易に精製または同定できるようにするタグをコードできる。例としては、ベクターpUR278(Ruther et al.1983 EMBO J.2:1791)(本明細書に記載のFVIIIタンパク質のコード配列をそのベクターに、lacZコード領域とインフレームでライゲーションして、ハイブリッドタンパク質が産生されるようにできる)が挙げられるが、これに限らず、pGEXベクターを用いて、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)タグとともに、タンパク質を発現できる。これらのタンパク質は通常、可溶性であり、グルタチオン-アガロースビーズに吸着させてから、遊離グルタチオンの存在下で溶出することによって、細胞から容易に精製できる。これらのベクターは、精製後にタグを除去しやすいように、切断部位(例えばPreCission Protease(ニュージャージー州ピーパックのPharmacia))を含む。
【0354】
本開示の目的においては、数多くの発現ベクター系を用いることができる。これらの発現ベクターは典型的には、宿主生物において、エピソームとして、または宿主染色体DNAの一体部分のいずれかとして複製可能である。発現ベクターは、発現制御配列を含むことができ、その配列としては、プロモーター(例えば、天然において関連付けらているプロモーターまたは異種のプロモーター)、エンハンサー、シグナル配列、スプライスシグナル、エンハンサーエレメント及び転写終結配列が挙げられるが、これらに限らない。好ましくは、発現制御配列は、真核宿主細胞をトランスフォーメーションまたはトランスフェクションできるベクターにおける真核生物プロモーター系である。発現ベクターでは、ウシパピローマウイルス、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、
バキュロウイルス、レトロウイルス(RSV、MMTVもしくはMOMLV)、サイトメガロウイルス(CMV)、またはSV40ウイルスのような動物ウイルスに由来するDNAエレメントも用いることができる。その他のベクターでは、内部リボソーム結合部位を有するポリシストロニックな系の使用を伴う。
【0355】
一般的に、発現ベクターは、所望のDNA配列でトランスフォーメーションされた細胞を検出できるように、選択マーカー(例えば、アンピシリン耐性、ハイグロマイシン耐性、テトラサイクリン耐性またはネオマイシン耐性)を含む(例えば、Itakuraらの米国特許第4,704,362号を参照されたい)。所望のDNAが染色体に組み込まれた細胞は、トランスフェクションされた宿主細胞を選択可能にする1つ以上のマーカーを導入することによって選択できる。このマーカーは、栄養要求性宿主に原栄養性を付与したり、殺生物剤(例えば抗生物質)耐性または重金属(銅など)耐性を付与したりできる。選択可能なマーカー遺伝子は、発現されるDNA配列に直接連結することも、コトランスフォーメーションによって、同じ細胞に導入することもできる。
【0356】
最適化FVIII配列を発現させるための有用なベクターの例は、NEOSPLA(米国特許第6,159,730号)である。このベクターは、サイトメガロウイルスプロモーター/エンハンサーと、マウスβグロビン主要プロモーターと、SV40複製起点と、ウシ成長ホルモンポリアデニル化配列と、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼエキソン1及びエキソン2と、ジヒドロフォレートレダクターゼ遺伝子と、リーダー配列を含む。このベクターは、可変及び定常領域遺伝子に導入し、細胞にトランスフェクションしてから、G418含有培地で選択し、メトトレキセート増幅をすると、非常に高い抗体発現レベルが得られることが分かっている。ベクター系は、米国特許第5,736,137号及び同第5,658,570号(それぞれ、参照により、その全体が本明細書に援用される)にも教示されている。この系は、高い発現レベル(例えば、>30pg/細胞/日)をもたらす。その他の例示的なベクター系は、例えば米国特許第6,413,777号に開示されている。
【0357】
別の実施形態では、本開示のポリペプチドは、ポリシストロニックなコンストラクトを用いて発現させることができる。これらの発現系では、複数の目的遺伝子産物(多量体結合タンパク質の複数のポリペプチドなど)を1つのポリシストロニックなコンストラクトから作製できる。これらの系は、有益なことに、内部リボソーム侵入部位(IRES)を用いて、真核宿主細胞において、比較的高いレベルのポリペプチドをもたらす。適合性のあるIRES配列は、米国特許第6,193,980号(この特許も本明細書に援用される)に開示されている。
【0358】
より一般的には、ポリペプチドをコードするベクターまたはDNA配列を調製したら、発現ベクターを適切な宿主細胞に導入できる。すなわち、宿主細胞をトランスフォーメーションできる。宿主細胞へのプラスミドの導入は、上で論じたように、当業者に周知の様々な技法によって行うことができる。トランスフォーメーションした細胞を、FVIIIポリペプチドの産生に適する条件下で増殖させて、FVIIIポリペプチドの合成についてアッセイする。例示的なアッセイ技法としては、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、放射線免疫アッセイ(RIA)、蛍光活性化セルソーター解析(FACS)、免疫組織化学などが挙げられる。
【0359】
組み換え宿主からポリペプチドを単離するプロセスの説明においては、「細胞」及び「細胞培養液」という用語は、明らかに別段の定めのない限り、ポリペプチド源を示す目的で同義的に使用する。換言すると、「細胞」からのポリペプチドの回収は、スピンダウンした全細胞、または培地と懸濁細胞の両方を含む細胞培養液のいずれかからの回収を意味することができる。
【0360】
本開示の単離核酸は、ヒト細胞において発現するように最適化されているので、タンパク質発現で用いる宿主細胞株は、好ましくは哺乳動物起源の株、最も好ましくは、ヒトまたはマウス起源の株である。例示的な宿主細胞株は、上記されている。FVIII活性を有するポリペプチドの作製方法の一実施形態では、宿主細胞は、HEK293細胞である。FVIII活性を有するポリペプチドの作製方法の別の実施形態では、宿主細胞は、CHO細胞である。
【0361】
本開示のポリペプチドをコードする遺伝子は、哺乳動物以外の細胞(細菌細胞、酵母細胞または植物細胞など)でも発現できる。この関連においては、哺乳動物以外の様々な単細胞微生物(細菌など)もトランスフォーメーションでき、すなわち、これらの微生物を培養または発酵で増殖させることができることは分かるであろう。トランスフォーメーションを行える細菌としては、Enterobacteriaceae(Escherichia coliまたはSalmonellaの株など)、Bacillaceae(Bacillus subtilisなど)、Pneumococcus、Streptococcus及びHaemophilus influenzaeのメンバーが挙げられる。さらに、細菌で発現させると、ポリペプチドは典型的には、封入体の一部になることが分かるであろう。そのポリペプチドは、単離、精製してから、機能性分子にアセンブルする必要がある。
【0362】
あるいは、本開示の最適化ヌクレオチド配列は、トランスジェニック動物のゲノムに導入してから、トランスジェニック動物のミルクで発現させるための導入遺伝子に組み込むことができる(例えば、DeboerらのUS5,741,957、RosenのUS5,304,489及びMeadeらのUS5,849,992を参照されたい)。好適な導入遺伝子は、カゼインまたはβラクトグロブリンなどの乳腺特異的遺伝子のプロモーター及びエンハンサーと機能可能に連結したポリペプチドコード配列を含む。
【0363】
インビトロ産生により、所望のポリペプチドを大量に得るためのスケールアップが可能になる。組織培養条件下で哺乳動物細胞を培養する技法は、当該技術分野において知られており、この技法としては、例えば、エアリフト反応器もしくは連続撹拌反応器での均質懸濁培養、または例えば、中空繊維内、マイクロカプセル内、アガロースマイクロビーズ上もしくはセラミックカートリッジ上に固定または捕捉した細胞の培養が挙げられる。必要及び/または所望の場合、例えば、合成ヒンジ領域ポリペプチドの選択的生合成後、または本明細書に記載されているHICクロマトグラフィー工程の前もしくは後に、慣例的なクロマトグラフィー方法、例えばゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィー、DEAEセスロースクロマトグラフィーまたは(免疫)アフィニティークロマトグラフィーによって、ポリペプチドの溶液を精製できる。アフィニティータグ配列(例えばHis(6)タグ)を任意に応じて、ポリペプチド配列に結合させたり、含めたりして、下流精製を促すことができる。
【0364】
FVIIIタンパク質は、発現したら、当該技術分野の標準的な手順(硫安分画、アフィニティーカラムクロマトグラフィー、HPLC精製、ゲル電気泳動などを含む)に従って精製できる(概して、Scopes,Protein Purification(Springer-Verlag,N.Y.,(1982)を参照されたい)。医薬用途には、均質性が少なくとも約90~95%の実質的に純粋なタンパク質が好ましく、98~99%以上の均質性が最も好ましい。
【0365】
医薬組成物
本開示の単離核酸分子、FVIII活性を有するポリペプチドであって、その核酸分子によってコードされるポリペプチド、ベクターまたは宿主細胞を含む組成物は、製薬学的
に許容可能な好適な担体を含むことができる。例えば、この組成物は、活性化合物を処理して、作用部位への送達用に設計された調製物にするのを容易にする賦形剤及び/または補助剤を含むことができる。
【0366】
この医薬組成物は、ボーラス注射による非経口投与(すなわち、静脈内投与、皮下投与または筋肉内投与)用に調合できる。注射用製剤は、例えば、投与単位形態でアンプル内に、または複数回用量容器内に保存剤を加えた状態で供給できる。この組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁剤、液剤または乳剤のような形態を取ることができ、製剤化剤(懸濁化剤、安定化剤及び/または分散化剤など)を含む。あるいは、活性成分は、好適なビヒクル、例えばパイロジェンフリー水で構成される粉末形態であることができる。
【0367】
非経口投与用の好適な製剤としては、水溶性形態、例えば水溶性塩である、活性化合物の水性液剤も挙げられる。加えて、適切な油性注射用懸濁剤としての活性化合物懸濁剤を投与できる。好適な親油性溶媒またはビヒクルとしては、脂肪酸、例えば、ゴマ油または合成脂肪酸エステル、例えばエチルオレエートまたはトリグリセリドが挙げられる。水性注射用懸濁剤は、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール及びデキストランを含め、懸濁剤の粘度を向上させる物質を含むことができる。任意に応じて、その懸濁剤は、安定剤も含むことができる。リポソームを用いて、細胞または間質腔への送達用に、本開示の分子を封入することもできる。例示的な製薬学的に許容可能な担体は、生理学的に適合可能な溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤、抗真菌剤、等張化剤、吸収遅延剤、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどである。いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、等張化剤、例えば、糖、多価アルコール(マンニトール、ソルビトールなど)、または塩化ナトリウムを含む。別の実施形態では、本開示の組成物は、製薬学的に許容可能な物質(湿潤剤など)、または活性成分の貯蔵寿命もしくは有効性を向上させる少量の補助物質(湿潤剤、乳化剤、保存剤もしくは緩衝剤など)を含む。
【0368】
本開示の組成物は、例えば、液体(例えば、注射用溶液及び注入用溶液)、分散液、懸濁液、半固体及び固体の剤形を含め、様々な形態であることができる。好ましい形態は、投与方法と治療用途に左右される。
【0369】
本開示の組成物は、液剤、マイクロエマルジョン剤、分散剤、リポソームまたは高い薬物濃度に適するその他の規則構造体として調合できる。滅菌注射用液剤は、必要に応じて、上で列挙した成分を1つ以上組み合わせたものとともに、活性成分を所要量で適切な溶媒に組み込んでから、ろ過滅菌することによって調製できる。概して、分散剤は、塩基性分散媒と、上で列挙したその他の成分のうちの必要な成分とを含む滅菌ビヒクルに活性成分を組み込むことによって調製する。滅菌注射用液剤を調製するための滅菌散剤の場合には、好ましい調製方法は、事前に滅菌ろ過した溶液から、活性成分と、いずれかの所望の追加成分との粉末をもたらす真空乾燥と凍結乾燥である。溶剤の適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティングを使用することによって、分散剤の場合には、所要粒径を保持することによって、また、界面活性剤を使用することによって保持できる。注射用組成物の吸収時間の延長は、吸収を遅延させる作用剤、例えば、モノステアレート塩及びゼラチンをその組成物に含めることによって実現できる。
【0370】
活性成分は、放出制御製剤または放出制御器具で調合できる。このような製剤と器具の例としては、インプラント、軽皮パッチ及びマイクロカプセル化送達システムが挙げられる。生分解性生体適合性ポリマー、例えば、エチレンビニルアセテート、ポリアンハイドライド、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル及びポリ乳酸を用いることができる。このような製剤と器具の調製方法は、当該技術分野において知られている。例えば、Sustained and Controlled Release Drug
Delivery Systems,J.R.Robinson,ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,1978を参照されたい。
【0371】
注射用デポー製剤は、生分解性ポリマー(ポリラクチド-ポリグリコリドなど)内の薬物のマイクロカプセル化マトリックスを形成することによって作製できる。薬物とポリマーとの比率と、使用するポリマーの性質に応じて、薬物放出速度を制御できる。その他の例示的な生分解性ポリマーは、ポリオルトエステルとポリアンハイドライドである。注射用デポー製剤は、薬物をリポソームまたはマイクロエマルジョン中に捕捉することによっても調製できる。
【0372】
本開示の組成物には、補足的な活性化合物を組み込むことができる。一実施形態では、本開示のキメラタンパク質は、別の凝固因子、またはそのバリアント、断片、アナログもしくは誘導体とともに調合する。例えば、その凝固因子としては、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、第XIII因子、プロトロンビン、フィブリノゲン、フォンビルブランド因子、またはこれらのいずれかの組み換え可溶性組織因子(rsTF)または活性化形態が挙げられるが、これらに限らない。止血剤の凝固因子としては、抗線溶薬、例えば、ε-アミノカプロン酸、トラネキサム酸も挙げることができる。
【0373】
投与レジメンを調節して、最適な所望の応答をもたらすことができる。例えば、単回ボーラス投与を行うことも、経時的に、数回の分割投与を行うことも、治療状況の緊急性によって示されるのに応じて、用量を比例的に減少または増加させることもできる。投与のしやすさと、用量の均一化のために、非経口組成物を投与単位形態で調合するのが有益である。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Pub.Co.,Easton,Pa.1980)を参照されたい。
【0374】
液体剤形は、活性化合物に加えて、水、エチルアルコール、エチルカーボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、及びソルビタンの脂肪酸エステルのような不活性成分を含むことができる。
【0375】
好適な製剤用担体の非限定的な例は、E.W.MartinによるRemington’s Pharmaceutical Sciencesにも記載されている。賦形剤のいくつかの例としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ナトリウムステアレート、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。本開示の組成物は、pH緩衝試薬と、湿潤剤または乳化剤を含むことができる。
【0376】
経口投与用には、医薬組成物は、従来の手段によって調製した錠剤またはカプセル剤の形態を取ることができる。本開示の組成物は、液剤、例えば、シロップ剤または懸濁剤として調製することもできる。この液体は、懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ剤、セルロース誘導体または水素添加食用脂)、乳化剤(レシチンまたはアカシア)、非水性ビヒクル(例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコールまたは分別植物油)及び保存剤(例えば、メチルもしくはプロピル-p-ヒドロキシベンゾエートまたはソルビン酸)を含むことができる。この調製剤は、矯味矯臭剤、着色剤及び甘味剤も含むことができる。あるいは、本開示の組成物は、水またはその他の好適なビヒクルで構成するための乾燥生成物として供給できる。
【0377】
口腔内投与用では、本開示の組成物は、従来のプロトコールに従って、錠剤またはロゼンジ剤の形態を取ることができる。
【0378】
吸入による投与用では、本開示に従って使用する化合物は、利便的には、賦形剤を含むかもしくは含まない霧状化エアゾール剤の形態、または任意に応じて、噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロメタン、二酸化炭素もしくはその他の好適な気体とともに、圧縮パックもしくはネブライザーから出るエアゾールスプレーの形態で送達する。加圧エアゾール剤の場合には、投与単位は、バルブを搭載して、定量した量を送達することによって定めることができる。吸入器または注入器で用いるための、例えばゼラチンのカプセル剤及びカートリッジは、本開示の化合物と、好適な粉末基剤(ラクトースまたはデンプン)との混合粉末を含めて調合できる。
【0379】
本開示の医薬組成物は、直腸投与用に、例えば、従来の坐剤基剤(ココアバターまたはその他のグリセリド)を含む坐剤または保持型浣腸剤として調合することもできる。
【0380】
一実施形態では、医薬組成物は、第VIII因子活性を有するポリペプチド、第VIII因子活性を有するポリペプチドをコードする最適化核酸分子、この核酸分子を含むベクター、またはこのベクターを含む宿主細胞と、製薬学的に許容可能な担体とを含む。いくつかの実施形態では、この組成物は、局所投与、眼内投与、非経口投与、髄腔内投与、硬膜下投与及び経口投与からなる群から選択した経路によって投与する。非経口投与は、静脈内投与または皮下投与であることができる。
【0381】
別の実施形態では、本開示の組成物を用いて、出血疾患または出血状態の治療が必要な対象において、出血疾患または出血状態を治療する。出血疾患または出血状態は、出血凝固障害、関節血症、筋肉出血、口腔出血、大量出血、筋肉への大量出血、口腔大量出血、外傷、頭部の外傷、胃腸出血、頭蓋内大量出血、腹腔内大量出血、胸腔内大量出血、骨折、中枢神経系出血、咽頭後隙内の出血、腹膜後隙内の出血、腸腰筋鞘内の出血及びこれらをいずれかに組み合わせたものからなる群から選択されている。さらに別の実施形態では、対象は、手術を受ける予定である。さらに別の実施形態では、この治療は、予防またはオンデマンドのものである。
【0382】
治療方法
本開示は、出血障害の治療方法であって、出血障害の治療が必要な対象に、本開示の核酸分子、ベクターまたはポリペプチドを投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、出血障害は、FVIIIの欠損によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、出血障害は、血友病である。いくつかの実施形態では、出血障害は、血友病Aである。出血障害の治療方法のいくつかの実施形態では、投与から24時間後の血漿中FVIII活性が、配列番号16を含む参照核酸分子、その参照核酸分子を含むベクター、またはその参照核酸分子によってコードされるポリペプチドを投与した対象よりも向上する。
【0383】
いくつかの実施形態では、血漿中FVIII活性は、配列番号16を含む参照核酸分子、その参照核酸分子を含むウイルスベクター、またはその参照核酸分子によってコードされるポリペプチドを投与した対象よりも、投与から約6時間後、約12時間後、約18時間後、約24時間後、約36時間後、約48時間後、約3日後、約4日後、約5日後、約6日後、約7日後、約8日後、約9日後、約10日後、約11日後、約12日後、約13日後、約14日後、約15日後、約16日後、約17日後、約18日後、約19日後、約20日後、約21日後、約22日後、約23日後、約24日後、約25日後、約26日後、約27日後または約28日後に向上する。特定の実施形態では、血漿中FVIII活性
は、配列番号16を含む参照核酸分子、その参照核酸分子を含むウイルスベクター、またはその参照核酸分子によってコードされるポリペプチドを投与した対象よりも、投与から約24時間後に向上する。別の実施形態では、血漿中FVIII活性は、配列番号16を含む参照核酸分子、その参照核酸分子を含むウイルスベクター、またはその参照核酸分子によってコードされるポリペプチドを投与した対象よりも、投与から約21日後に向上する。
【0384】
いくつかの実施形態では、投与後の血漿中FVIII活性は、配列番号16を含む参照核酸分子、その参照核酸分子を含むウイルスベクター、またはその参照核酸分子によってコードされるポリペプチドを投与した対象よりも、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約11倍、少なくとも約12倍、少なくとも約13倍、少なくとも約14倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約25倍、少なくとも約30倍、少なくとも約35倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約60倍、少なくとも約70倍、少なくとも約80倍、少なくとも約90倍、少なくとも約100倍、少なくとも約150倍、少なくとも約200倍、少なくとも約250倍、少なくとも約300倍、少なくとも約350倍、少なくとも約400倍、少なくとも約450倍または少なくとも約500倍向上する。いくつかの実施形態では、投与後の血漿中FVIII活性は、生理学的に正常な循環血液中FVIIIレベルよりも、少なくとも約150%、少なくとも約200%、少なくとも約250%、少なくとも約300%、少なくとも約350%、少なくとも約400%、少なくとも約450%、少なくとも約500%、少なくとも約550%、少なくとも約600%、少なくとも約650%、少なくとも約700%、少なくとも約750%、少なくとも約800%、少なくとも約850%、少なくとも約900%、少なくとも約950%、少なくとも約1000%、少なくとも約1500%、少なくとも約2000%、少なくとも約2500%、少なくとも約3000%、少なくとも約3500%、少なくとも約4000%、少なくとも約4500%、少なくとも約5000%、少なくとも約5500%、少なくとも約6000%、少なくとも約7000%、少なくとも約8000%、少なくとも約9000%、少なくとも約10,000%向上する。一実施形態では、投与後の血漿中FVIII活性は、生理学的に正常な循環血液中FVIIIレベルよりも、少なくとも約3000~約5000%向上する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている、第VIII因子(FVIII)活性を有するポリペプチドをコードするコドン最適化遺伝子を含むプラスミドの投与から24時間後に、または本明細書に記載されている、第VIII因子(FVIII)活性を有するポリペプチドをコードするコドン最適化遺伝子を含むレンチウイルスベクターもしくはAAVベクターの投与から21日後に、血漿中FVIII活性が、配列番号16を含む参照核酸分子、その参照核酸分子を含むベクター、またはその参照核酸分子によってコードされるポリペプチドを投与した対象よりも少なくとも約6倍向上する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている、第VIII因子(FVIII)活性を有するポリペプチドをコードするコドン最適化遺伝子を含むプラスミドの投与から24時間後に、または本明細書に記載されている、第VIII因子(FVIII)活性を有するポリペプチドをコードするコドン最適化遺伝子を含むレンチウイルスベクターもしくはAAVベクターの投与から21日後に、血漿中FVIII活性が、配列番号16を含む参照核酸分子、その参照核酸分子を含むベクター、またはその参照核酸分子によってコードされるポリペプチドを投与した対象よりも少なくとも約10倍向上する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている、第VIII因子(FVIII)活性を有するポリペプチドをコードするコドン最適化遺伝子を含むプラスミドの投与から24時間後に、または本明細書に記載されている、第VIII因子(FVIII)活性を有するポリペプチドをコードするコドン最適化遺伝子を含むレンチウイルスベクターもしくはAAVベクターの投与から21日後に、血漿中FVIII活性が、配列番号16を含む参照核酸分子、その参照核酸分子を含むベクター、また
はその参照核酸分子によってコードされるポリペプチドを投与した対象よりも少なくとも約23倍向上する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている、第VIII因子(FVIII)活性を有するポリペプチドをコードするコドン最適化遺伝子を含むプラスミドの投与から24時間後に、または本明細書に記載されている、第VIII因子(FVIII)活性を有するポリペプチドをコードするコドン最適化遺伝子を含むレンチウイルスベクターもしくはAAVベクターの投与から21日後に、血漿中FVIII活性が、配列番号16を含む参照核酸分子、その参照核酸分子を含むベクター、またはその参照核酸分子によってコードされるポリペプチドを投与した対象よりも少なくとも約18倍向上する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている、第VIII因子(FVIII)活性を有するポリペプチドをコードするコドン最適化遺伝子を含むプラスミドの投与から24時間後に、または本明細書に記載されている、第VIII因子(FVIII)活性を有するポリペプチドをコードするコドン最適化遺伝子を含むレンチウイルスベクターもしくはAAVベクターの投与から21日後に、血漿中FVIII活性が、配列番号16を含む参照核酸分子、その参照核酸分子を含むベクター、またはその参照核酸分子によってコードされるポリペプチドを投与した対象よりも少なくとも約30倍向上する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている、第VIII因子(FVIII)活性を有するポリペプチドをコードするコドン最適化遺伝子を含むプラスミドの投与から24時間後に、または本明細書に記載されている、第VIII因子(FVIII)活性を有するポリペプチドをコードするコドン最適化遺伝子を含むレンチウイルスベクターもしくはAAVベクターの投与から21日後に、血漿中FVIII活性が、配列番号16を含む参照核酸分子、その参照核酸分子を含むベクター、またはその参照核酸分子によってコードされるポリペプチドを投与した対象よりも少なくとも約50倍向上する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている、第VIII因子(FVIII)活性を有するポリペプチドをコードするコドン最適化遺伝子を含むプラスミドの投与から24時間後に、または本明細書に記載されている、第VIII因子(FVIII)活性を有するポリペプチドをコードするコドン最適化遺伝子を含むレンチウイルスベクターもしくはAAVベクターの投与から21日後に、血漿中FVIII活性が、配列番号16を含む参照核酸分子、その参照核酸分子を含むベクター、またはその参照核酸分子によってコードされるポリペプチドを投与した対象よりも少なくとも約100倍向上する。
【0385】
本開示は、対象の止血障害の治療、改善または予防方法であって、本開示の単離核酸分子、またはFVIII活性を有するポリペプチドであって、本開示の核酸分子によってコードされるポリペプチドを治療有効量投与することを含む方法にも関する。本開示の単離核酸分子またはコードされるポリペプチドによる治療、改善及び予防は、バイパス療法であることができる。バイパス療法を受ける対象は、凝固因子、例えばFVIIIに対するインヒビターをすでに発現していることも、凝固因子インヒビターを発現する傾向があることもできる。
【0386】
本開示の核酸分子、ベクターまたはポリペプチドは、フィブリン血餅の形成を促すことによって、止血障害を治療または予防する。FVIII活性を有するポリペプチドであって、本開示の核酸分子によってコードされるポリペプチドは、凝固カスケードのメンバーを活性化できる。この凝固因子は、外因経路、内因経路またはこれらの両方に関与できる。
【0387】
本開示の核酸分子、ベクターまたはポリペプチドを用いて、FVIIIで治療可能であることが知られている止血障害を治療できる。本開示の方法を用いて治療できる止血障害としては、血友病A、血友病B、フォンビルブランド病、第XI因子欠損(PTA欠損)、第XII因子欠損、フィブリノゲン、プロトロンビン、第V因子、第VII因子、第X因子または第XIII因子の欠損または構造的異常、関節血症、筋肉出血、口腔出血、大量出血、筋肉への大量出血、口腔大量出血、外傷、頭部の外傷、胃腸出血、頭蓋内出血、
腹腔内出血、胸腔内出血、骨折、中枢神経系出血、咽頭後隙内の出血、腹膜後隙内の出血及び腸腰筋鞘内の出血が挙げられるが、これらに限らない。対象に投与するための組成物としては、FVIII凝固因子をコードする本開示の最適化ヌクレオチド配列を含む核酸分子(遺伝子療法用途用)と、FVIIIポリペプチド分子が挙げられる。
【0388】
いくつかの実施形態では、止血障害は、遺伝性障害である。一実施形態では、対象は、血友病Aである。別の実施形態では、止血障害は、FVIIIの欠損によるものである。別の実施形態では、止血障害は、異常なFVIII凝固因子によるものであることができる。
【0389】
別の実施形態では、止血障害は、後天性障害であることができる。この後天性障害は、裏に潜む二次的な疾患または状態によるものであることができる。この無関連の状態は、一例としては、がん、自己免疫疾患または妊娠であることができるが、これらに限らない。後天性障害は、加齢、または裏に潜む二次的な障害を治療するための投薬(例えば、がんへの化学療法)によるものであることができる。
【0390】
本開示は、止血障害ではないか、または止血障害の発症の原因となる二次的な疾患もしくは状態である対象の治療方法に関するものでもある。したがって、本開示は、一般的な止血剤を必要とする対象の治療方法であって、本開示の単離核酸分子、ベクターまたはFVIIIポリペプチドを治療有効量投与することを含む方法に関するものである。例えば、一実施形態では、一般的な止血剤を必要とする対象は、手術を受けているか、または手術を受けようとしている者である。本開示の単離核酸分子、ベクターまたはFVIIIポリペプチドは、手術の前または後に、予防として投与できる。本開示の単離核酸分子、ベクターまたはFVIIIポリペプチドは、手術の最中または後に投与して、急性出血エピソードを制御できる。手術としては、肝移植、肝切除または幹細胞移植を挙げることができるが、これらに限らない。
【0391】
別の実施形態では、本開示の単離核酸分子、ベクターまたはFVIIIポリペプチドを用いて、急性出血エピソードを有する対象であって、止血障害ではない対象を治療できる。急性出血エピソードは、無制御な出血を引き起こす重大な外傷、例えば、手術、自動車事故、創傷、裂傷、銃創またはいずれかの他の外傷イベントに起因することができる。
【0392】
単離核酸分子、ベクターまたはFVIIIタンパク質を用いて、止血障害の対象を予防的に治療できる。単離核酸分子、ベクターまたはFVIIIタンパク質を用いて、止血障害の対象の急性出血エピソードを治療できる。
【0393】
別の実施形態では、本開示の単離核酸分子またはベクターを投与することによって、FVIIIタンパク質を発現させる際には、対象において免疫応答を誘導しない。いくつかの実施形態では、この免疫応答は、FVIIIに対する抗体の発現を含む。いくつかの実施形態では、この免疫応答は、サイトカインの分泌を含む。いくつかの実施形態では、この免疫応答は、B細胞、T細胞またはB細胞とT細胞の両方の活性化を含む。いくつかの実施形態では、この免疫応答は、抑制性免疫応答であり、対象におけるこの免疫応答は、免疫応答を発現していない対象におけるFVIII活性よりも、FVIIIタンパク質の活性を低下させる。特定の実施形態では、本開示の単離核酸分子またはベクターを投与することによって、FVIIIタンパク質を発現させると、FVIIIタンパク質または本開示の単離核酸分子もしくはベクターから発現するFVIIIタンパク質に対する抑制性免疫応答が阻止される。
【0394】
いくつかの実施形態では、止血を促す少なくとも1つの他の薬剤と組み合わせて、本開示の単離核酸分子、ベクターまたはFVIIIタンパク質組成物を投与する。前記その他
の薬剤は、凝固活性が示されている治療において、止血を促す。止血剤としては、一例として、第V因子、第VII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、第XIII因子、プロトロンビンもしくはフィブリノゲン、またはこれらのいずれかの活性化形態を挙げることができるが、これらに限らない。この凝固因子または止血剤としては、抗線溶薬、例えば、ε-アミノカプロン酸、トラネキサム酸も挙げることができる。
【0395】
本開示の一実施形態では、本開示の組成物(例えば、単離核酸分子、ベクターまたはFVIIIポリペプチド)は、対象に投与したときに、FVIIIが活性化可能な形態で存在する組成物である。このような活性化可能な分子は、対象に投与後、インビボにおいて、凝固部位で活性化できる。
【0396】
本開示の単離核酸分子、ベクターまたはFVIIIポリペプチドは、静脈内投与、皮下投与、筋肉内投与、または粘膜表面を介した投与、例えば、経口投与、舌下投与、口腔内投与、舌下投与、経鼻投与、直腸投与、膣内投与もしくは経肺経路を介した投与を行うことができる。本開示のFVIIIタンパク質は、そのキメラタンパク質を所望の部位に徐放できるようにするバイオポリマー固体支持体に埋め込んだり、連結したりすることができる。
【0397】
経口投与用には、本開示の医薬組成物は、従来の手段によって調製した錠剤またはカプセル剤の形態を取ることができる。本開示の組成物は、液剤、例えば、シロップ剤または懸濁剤として調製することもできる。この液剤は、懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ剤、セルロース誘導体または水素添加食用脂)、乳化剤(レシチンまたはアカシア)、非水性ビヒクル(例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコールまたは分別植物油)及び保存剤(例えば、メチルもしくはプロピル-p-ヒドロキシベンゾエート、またはソルビン酸)を含むことができる。この調製剤は、矯味矯臭剤、着色剤及び甘味剤も含むことができる。あるいは、本開示の組成物は、水またはその他の好適なビヒクルで構成するための乾燥生成物として供給できる。
【0398】
口腔内及び舌下投与用では、本開示の組成物は、従来のプロトコールに従って、錠剤、ロゼンジ剤または速溶性フィルムの形態を取ることができる。
【0399】
吸入による投与用では、FVIII活性を有するポリペプチドであって、本開示に従って使用するためのポリペプチドは、利便的なことに、好適な噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロメタン、二酸化炭素またはその他の好適な気体とともに、圧縮パックまたはネブライザーから出るエアゾールスプレー(例えばPBS中)の形態で送達する。加圧エアゾール剤の場合には、投与単位は、バルブを搭載して、定量した量を送達することによって定めることができる。吸入器または注入器で用いるための、例えばゼラチンのカプセル剤及びカートリッジは、本開示の化合物と好適な粉末基剤(ラクトースまたはデンプン)との混合粉末を含めて調合できる。
【0400】
一実施形態では、本開示の単離核酸分子、ベクターまたはFVIIIポリペプチドの投与経路は、非経口経路である。本明細書で使用する場合、非経口という用語には、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、皮下投与、直腸投与または膣内投与が含まれる。静脈内形態の非経口投与が好ましい。これらのすべての投与形態は明らかに、本開示の範囲内と想定されているが、投与形態は、注射用液剤、特に静脈内注射、動脈内注射または点滴用の液剤となる。通常、好適な注射用医薬組成物は、緩衝剤(例えば、酢酸緩衝剤、リン酸緩衝剤またはクエン酸緩衝剤)、界面活性剤(例えばポリソルベート)、任意に応じて安定化剤(例えばヒトアルブミン)などを含むことができる。しかしながら、本発明の教示と適合する他の方法では、本開示の単離核酸分子、ベクターまたはFVII
Iポリペプチドは、有害な細胞集団の部位に直接送達することによって、その治療剤への疾患組織の曝露を増大できる。
【0401】
非経口投与用調製剤としては、滅菌水性液剤、非水性液剤、懸濁剤及び乳剤が挙げられる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(オリーブ油など)及び注射用有機エステル(エチルオレエートなど)である。水性担体としては、水、アルコール溶液/水溶液、乳剤または懸濁液(生理食塩水及び緩衝化媒体を含む)が挙げられる。本開示では、製薬学的に許容可能な担体としては、0.01~0.1M、好ましくは0.05Mのリン酸緩衝剤、または0.8%生理食塩水が挙げられるが、これらに限らない。その他の一般的な非経口ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸リンゲルまたは固定油が挙げられる。静脈内ビヒクルとしては、流体及び栄養補給液、電解質補液(リンゲルデキストロースベースのものなど)などが挙げられる。保存剤及びその他の添加剤(例えば、抗微生物剤、抗酸化剤、キレート剤及び不活性ガスなど)も存在することができる。
【0402】
さらに詳細には、注射用に適する医薬組成物としては、滅菌水溶液剤(水溶性の場合)または分散液剤と、滅菌注射用液剤または分散液剤の用時調製用の滅菌粉末が挙げられる。このようなケースでは、医薬組成物は、無菌でなければならず、容易に注射可能な程度の流体でなければならない。医薬組成物は、製造条件及び保管条件下で安定でなければならず、微生物(細菌及び真菌など)の汚染作用から保護するのが好ましい。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコールなど)、ならびにこれらの好適な混合物を含む溶媒または分散媒であることができる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングを用いることによって、分散剤の場合には、所要の粒径を保つことによって、また、界面活性剤を用いることによって保つことができる。
【0403】
微生物作用の阻止は、様々な抗細菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって行うことができる。多くの場合、等張化剤、例えば、糖、多価アルコール(マンニトール、ソルビトールなど)または塩化ナトリウムを組成物に含めるのが好ましい、注射用組成物の持続的な吸収は、吸収を遅らせる作用剤、例えば、アルミニウムモノステアレート及びゼラチンをその組成物に含めることによって実現できる。
【0404】
いずれのケースでも、滅菌注射用液剤は、必要に応じて、本明細書に列挙されている成分の1つまたはそれらの成分を組み合わせたものとともに、活性化合物(例えば、ポリペプチド単独、またはその他の活性剤と組み合わせたもの)を所要量で、適切な溶媒に組み込んでから、ろ過滅菌を行うことによって調製できる。概して、分散剤は、塩基性分散媒と、上に列挙されているその他の成分のうちの必要な成分とを含む滅菌ビヒクルに活性化合物を組み込むことによって調製する。滅菌注射用液剤を調製するための滅菌粉末の場合には、好ましい調製方法は、活性成分と、いずれかの所望の追加成分との溶液を事前に滅菌ろ過したものから、活性成分と、いずれかの所望の追加成分との粉末をもたらす真空乾燥と凍結乾燥である。注射用の調製剤は、当該技術分野において知られている方法に従って、処理して、アンプル、バッグ、ボトル、シリンジまたはバイアルなどの容器に詰め、無菌条件下で密封する。さらに、その調製剤は、キットの形態で包装して販売することができる。このような製造品には、凝固障害を罹患しているかまたは凝固障害に対する素因を有する対象を治療するのに有用である関連組成物を示しているラベルまたは添付文書があるのが好ましい。
【0405】
本開示の医薬組成物は、直腸投与用に、例えば従来の坐剤基剤(ココアバターまたはその他のグリセリド)を含む坐剤または保持型浣腸剤として調合することもできる。
【0406】
状態を治療する際の、本開示の組成物の有効な用量は、投与手段、標的部位、患者の生理的状態、患者がヒトであるか動物であるか、投与される他の薬剤、及び処置が予防的なものであるか治療的なものであるかを含む多くの異なる要因によって変化する。通常、患者はヒトであるが、トランスジェニック哺乳動物を含むヒト以外の哺乳動物も治療できる。当業者に知られている常法を用いて、処置用量を漸増・漸減して、安全性と効能を最適化できる。
【0407】
本明細書に記載されているような、第VIII因子(FVIII)活性を有するポリペプチドをコードするコドン最適化遺伝子を含むプラスミド、またはそのコドン最適化遺伝子によってコードされるポリペプチドの投与用量は、体重1kg当たり1000μg~体重1kg当たり0.1ngの範囲であることができる。一実施形態では、この用量の範囲は、1μg/kg~100μg/kgである。本明細書に記載されているような、第VIII因子(FVIII)活性を有するポリペプチドをコードするコドン最適化遺伝子を含むレンチウイルスベクターの投与用量は、10~1015TU/kgの範囲であることができる。本明細書に記載されているような、第VIII因子(FVIII)活性を有するポリペプチドをコードするコドン最適化遺伝子を含むAAVベクターの投与用量は、10~1018VG/kgの範囲であることができる。
【0408】
本開示の単離核酸分子、プラスミド、ベクターまたはFVIIIポリペプチドは、単回用量または多回数用量として投与でき、多回数用量は、連続して、または特定の時間間隔を置いて投与できる。インビトロアッセイを用いて、最適な用量範囲及び/または投与スケジュールを割り出すことができる。凝固因子活性を測定するインビトロアッセイは、当該技術分野において知られている。加えて、有効な用量は、動物モデル、例えば血友病のイヌから得た用量反応曲線から推定できる(Mount et al.2002,Blood 99(8):2670)。
【0409】
上記範囲の間にある用量も、本開示の範囲内であるように意図されている。対象には、上記のような用量を毎日、1日置き、週に1回または実証的な解析によって定めたいずれかの他のスケジュールに従って投与できる。例示的な治療には、長期間、例えば少なくとも6カ月にわたって、多回数用量で投与することを伴う。いくつかの方法では、2つ以上のポリペプチドを同時に投与でき、その場合、各ポリペプチドの投与用量は、示した範囲内に収まる。
【0410】
本開示の単離核酸分子、ベクターまたはFVIIIポリペプチドは、多くの状況で投与できる。単回投与間の間隔は、1日、1週間、1カ月または1年であることができる。間隔は、患者における改変ポリペプチドまたは抗原の血中レベルを測定することによって示されるのに従って、不規則であることもできる。あるいは、ポリペプチドは、徐放製剤として投与でき、その場合、頻度の低い投与が必要となる。用量と頻度は、患者におけるポリペプチドまたはポリヌクレオチドの半減期によって変化する。
【0411】
投与用量と投与頻度は、処置が予防的なものであるか、治療的なものであるかによって変化し得る。予防的用途では、まだ病態にない患者に、本開示の単離核酸分子、ベクターもしくはFVIIIポリペプチドを含む組成物、またはそのカクテルを投与して、患者の耐性を高めるか、または疾患の作用を最小限にする。このような量は、「予防上有効な用量」であると定義する。比較的低い用量を比較的低頻度な間隔で、長期間にわたって投与する。一部の患者では、一生にわたって治療を継続する。
【0412】
本開示の単離核酸分子、ベクターまたはFVIIIポリペプチドは、任意に応じて、処置(例えば、予防的処置または治療的処置)の必要な障害または状態の処置に有効である
他の薬剤と組み合わせて投与できる。
【0413】
本明細書で使用する場合、補助療法と併せて、または補助療法と組み合わせて、本開示の単離核酸分子、ベクターまたはFVIIIポリペプチドを投与することは、その療法と開示されているポリペプチドを順次に、同時に、同域に、併用で、共存でまたは同時期に投与または適用することを意味する。治療の全体的な有効性を高めるように、併用療法レジメンの各種成分の投与または適用のタイミングを決定することになることは当業者には分かるであろう。当業者(例えば医師)は、過度の実験なしに、所定の補助療法と、本明細書の教示に基づき、有効な併用療法レジメンを容易に識別できるであろう。
【0414】
さらに、(例えば、併用療法レジメンを提供する目的で、)1つの薬剤または複数の薬剤と併せて、または組み合わせて、本開示の単離核酸分子、ベクターまたはFVIIIポリペプチドを使用できることは明らかであろう。本開示のポリペプチドまたはポリヌクレオチドと組み合わせることのできる例示的な薬剤としては、治療する特定の疾患に対する最新の標準ケアとなる薬剤が挙げられる。このような薬剤は、本質的に化学的または生物学的なものであることができる。「生物学的」または「生物学的薬剤」という用語は、生物及び/またはその産物から作られるいずれかの製薬学的活性剤であって、治療剤として用いるように意図されている製薬学的活性剤を指す。
【0415】
本開示のポリヌクレオチドまたはポリペプチドと組み合わせて用いる薬剤の量は、対象によって変化し得るか、または当該技術分野において知られている事象に従って投与できる。例えば、Bruce A Chabner et al.,Antineoplastic Agents,in GOODMAN & GILMAN’S THE PHARMACOLOGICAL BASIS OF THERAPEUTICS 1233-1287((Joel G.Hardman et al.,eds.,9thed.1996)を参照されたい。別の実施形態では、このような薬剤は、標準ケアと整合する量で投与する。
【0416】
すでに考察したように、本開示のポリヌクレオチドとポリペプチドは、凝固障害のインビボ治療用として製薬学的に有効な量で投与できる。この関連においては、本開示のポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、投与を容易にするとともに、活性剤の安定性を促すように調合できることは明らかであろう。好ましくは、本開示による医薬組成物は、製薬学的に許容可能な無毒の滅菌担体(生理食塩水など)、無毒の緩衝剤、保存剤などを含む。当然ながら、本開示の医薬組成物は、製薬学的に有効な量のポリペプチドを供給するように、単回用量または多回数用量で投与できる。
【0417】
凝固系の機能の評価には、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)検査、発色アッセイ、ROTEM(登録商標)アッセイ、プロトロンビン時間(PT)検査(INRを割り出すのにも使用する)、フィブリノゲン検査(クラウス方法による場合が多い)、血小板数、血小板機能検査(PFA-100による場合が多い)、TCT、出血時間、ミキシングテスト(患者の血漿を正常な血漿と混合した場合に、異常が補正されるか)、凝固因子アッセイ、抗リン脂質抗体、D-二量体、遺伝子検査(例えば、第V因子Leiden、プロトロンビン変異G20210A)、希釈ラッセル蛇毒時間(dRVVT)、多面的な血小板機能検査、トロンボエラストグラフィー(TEGまたはSonoclot)、トロンボエラストメトリー(TEM(登録商標)、例えばROTEM(登録商標))、またはオイグロブリン溶解時間(ELT)といった多くの検査が利用可能である。
【0418】
aPTT検査は、「内因性」凝固経路(接触活性化経路ともいう)と共通凝固経路の両方の効力を測定する能力指標である。この検査は、市販の組み換え凝固因子、例えばFVIIIまたはFIXの凝固活性を測定する目的で、広く用いられている。この検査は、外
因性経路を測定するプロトロンビン時間(PT)と併せて用いられている。
【0419】
ROTEM(登録商標)解析は、止血の全体的な動態に関する情報、すなわち、凝固時間、血餅形成、凝固安定性及び溶解を提供するものである。トロンボエラストメトリーにおける様々なパラメーターは、血漿凝固系の活性、血小板機能、線維素溶解またはこれらの相互作用に影響を及ぼす多くの要因に左右される。このアッセイによって、二次止血の包括的概観を得ることができる。
【0420】
遺伝子療法
本開示は、対象において、FVIII活性を有するポリペプチドの発現を増大させる方法であって、この増大を必要とする対象に、本開示の単離核酸分子を投与することを含み、そのポリペプチドの発現が、配列番号16を含む参照核酸分子よりも増大する方法を提供する。本開示は、対象において、FVIII活性を有するポリペプチドの発現を増大させる方法であって、この増大を必要とする対象に、本開示のベクターを投与することを含み、そのポリペプチドの発現が、参照核酸分子を含むベクターよりも増大する方法も提供する。
【0421】
血友病Aの考え得る治療法として、体細胞遺伝子療法が探求されている。遺伝子療法は、血友病に対する特に魅力的な治療法である。ベクターを1回投与後、FVIIIを継続的に内因性産生させることを通じて、血友病を治癒させる可能性があるからである。血友病Aは、遺伝子置換アプローチにかなり適している。その臨床症状が全面的に、血漿においてわずかな量(200ng/ml)で循環する1つの遺伝子産物(FVIII)の欠損に起因するからである。
【0422】
本開示のFVIIIタンパク質は、哺乳動物、例えばヒトの患者において、インビボで産生させることができる。出血凝固障害、関節血症、筋肉出血、口腔出血、大量出血、筋肉への大量出血、口腔大量出血、外傷、頭部の外傷、胃腸出血、頭蓋内出血、腹腔内出血、胸腔内大量出血、骨折、中枢神経系出血、咽頭後隙内の出血、腹膜後隙内の出血及び腸腰筋鞘内の出血からなる群から選択した出血疾患または出血障害の治療に対する遺伝子療法アプローチを用いることは、治療上、有益と見られる。一実施形態では、出血疾患または出血障害は、血友病である。別の実施形態では、出血疾患または出血障害は、血友病Aである。上記のアプローチには、好適な発現制御配列に機能可能に連結された最適化FVIIIコード核酸の投与を伴う。特定の実施形態では、これらの配列は、ウイルスベクターに組み込まれている。このような遺伝子療法のための好適なウイルスベクターとしては、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、エプスタインバーウイルスベクター、パポバウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、及びアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターが挙げられる。このウイルスベクターは、複製能欠失型ウイルスベクターであることができる。別の実施形態では、アデノウイルスベクターは、そのE1遺伝子またはE3遺伝子が欠失している。別の実施形態では、当業者に知られている非ウイルスベクターに、配列が組み込まれている。
【0423】
本明細書に記載されている様々な態様、実施形態及び選択肢はいずれも、あらゆる変形形態で組み合わせることができる。
【0424】
本明細書で言及されている文献、特許及び特許出願はいずれも、個々の文献、特許または特許出願が、参照により援用されることが具体的かつ個々に示されている場合と同程度に、参照により本明細書に援用される。
【0425】
本開示について概ね説明してきたが、本明細書に示されている実施例を参照することに
よって、さらに深く理解できる。これらの実施例は、例示するためのものに過ぎず、限定するようには意図されていない。
【実施例0426】
実施例1.コドン最適化の方策
コドン使用頻度バイアスを制御することによって、coFVIII-3(配列番号1、図1A)、coFVIII-4(配列番号2、図1B)、coFVIII-5(配列番号70、図1C)、coFVIII-6(配列番号71、図1D)、coFVIII-52(配列番号3、図1E)、coFVIII-62(配列番号4、図1F)、coFVIII-25(配列番号5、図1G)及びcoFVIII-26(配列番号6、図1H)を含む8つのコドン最適化BDD FVIIIバリアントを作製した。すでに説明されているように、オンラインツールのEugeneを用いて、コドン最適化を促し(Gaspar
et al.,“EuGene:maximizing synthetic gene design for heterologous expression,”Bioinformatics28:2683-84(2012)を参照されたい)、コドン適応指標(CAI)及び相対的な同義コドン使用頻度(RSCU)のようないくつかのコドン使用頻度パラメーターをモニタリングした(表5)。いずれのバリアントも、CAI≧83%及びRSCU≧1.63に調整したが、最適化前のBドメイン欠失親FVIII配列は、CAIが74%、RSCUが1.12である(表5)。
【表5】
【0427】
CAIの全体的な向上に加えて、これらの8つのバリアントは、図2に示されているように、コード領域にわたるCAIの分布を非最適化BDD FVIII配列(図2A)と比較したものに基づき、3つのクラスに設計した。第1のクラスは、コード領域全体にわたり、高いCAIが均一に分布しているBDD FVIIIバリアントを含む(図2C~2Fを参照されたい)。第1のクラスには、coFVIII-3(図2C)と、coFVIII-4(図2D)と、coFVIII-5(図2E)と、coFVIII-6(図2F)と、以前に説明されたcoFVIII-1(国際公開第2014/127215号(配列番号1)を参照されたい)(図2B)が含まれる。第2のクラスは、コード配列のN末端側半分のCAIの方が低く、コード配列のC末端側半分のCAIの方が高いBDD-FVIIIバリアントを含む(図2G及び2Hを参照されたい)。第2のクラスには、coFVIII-52(図2G)とcoFVIII-62(図2H)が含まれる。第3のクラスは、コード配列のN末端側半分のCAIの方が高く、コード配列のC末端側半分のCAIの方が低いBDD FVIIIバリアントを含む(図2I及び2Jを参照されたい)。第3のクラスには、coFVIII-25(図2I)とcoFVIII-26(図2J)が含まれる。
【0428】
いずれかの理論に拘束される訳ではないが、CAIが高いほど、タンパク質への翻訳が速くなるとともに、これらの3つのクラスでは、最初から最後まで、異なるタンパク質合成速度を示すのではないかと推測した。例えば、CAIの低い方の領域の翻訳は、CAIの高い方の領域の翻訳よりもゆっくり進むと見られる。その場合、例えば、まず、coFVIII-52またはcoFVIII-62のN末端側半分(CAIが低い)の翻訳がゆっくり進み、その後、CAIが高いC末端側半分の翻訳が、より速く進むと見られる。翻訳の際、タンパク質合成の全体を遅くすることなく、タンパク質のフォールディングと翻訳後修飾を行うには、これが好ましいことがある。coFVIII-25バリアントとcoFVIII-26バリアント(N末端側半分の方がCAIが高く、C末端側半分の方がCAIが低い)では、逆の作用が見られると推測した。
【0429】
mRNAの安定性を確保するために、すべてのFVIIIコドン最適化バリアントを調整して、クリプティックスプライス部位、未成熟ポリA部位、RNA不安定モチーフ(ARE)及び反復配列を含む多くの部位を取り除いたとともに、GC含有率を調整した(表2を参照されたい)。
【0430】
実施例2.pcDNA3プラスミドからのcoFVIIIバリアントのクローニングと発現
各種のFVIIIバリアントを含む発現プラスミドをインビボ発現用に設計した。非最適化BDD FVIII(図1I、配列番号16)とcoFVIII-1(図11Z、配列番号68)のポリヌクレオチドをpcDNA3骨格(Invitrogen)(CMVプロモーターをETプロモーターに置き換えたもの)にクローニングした(図3を参照されたい)。得られたプラスミドのFVIII-311(BDD FVIII)は、非最適化BDD FVIIIの発現を、FVIII-303(coFVIII-1)は、coFVIII-1の発現を駆動するものである。
【0431】
HemAマウスにおいて、FVIII-303またはFVIII-311をマウス1匹当たり5μgのDNA、水圧注射することによって、FVIII-311とFVIII-303のインビボ発現を評価した。注射から24時間、48時間及び72時間後に、血漿試料を採取し、FVIII特異的発色アッセイによって、FVIII活性を割り出した。
【0432】
図4に示されているように、FVIII-311で処置したマウスの血漿中FVIII活性(BDD FVIII、四角)は、注射から72時間後において74±43mU/m
Lであったのに対して、FVIII-303で処置したマウスの血漿中FVIII活性(coFVIII-1、円)は、注射から72時間後において452±170mU/mLであった(図4)。このことから、coFVIII-1の発現が、非最適化BDD FVIIIと比べて、およそ6倍増大したことが示されている。
【0433】
実施例3.レンチウイルスベクター系を用いた、coFVIIIバリアントのクローニングと発現
コドン最適化BDD FVIIIバリアントの発現レベルをさらに評価するために、ETプロモーターの制御下で、コード配列をレンチウイルスプラスミドにクローニングした(Amendola et al.,“Coordinate dual-gene transgenesis by lentiviral vectors carrying synthetic bidirectional promoters,”Nature Biol.23:108-16(2005)、国際公開第2000/066759A1号を参照されたい)。pLV-coFVIII-52のプラスミドマップは、図5に示されており、非最適化BDD FVIII(LV-2116)、coFVIII-1(LV-coFVIII-1)、coFVIII-3(LV-coFVIII-3)、coFVIII-4(LV-coFVIII-4)、coFVIII-5(LV-coFVIII-5)、coFVIII-6(LV-coFVIII-6)、coFVIII-62(LV-coFVIII-62)、coFVIII-25(LV-coFVIII-25)及びcoFVIII-26(LV-coFVIII-26)を含むプラスミドは、NheI部位とSalI部位を用いて、coFVIII-52断片を、示されている各コード配列で置き換えた以外は、同様にして構築した(表6)。
【表6-1】
【表6-2】
【0434】
レンチウイルスコドン最適化FVIIIバリアントは、HemAマウスにおいて、マウス1匹当たり5μgのDNA(図6A、6B)またはマウス1匹当たり20μgのDNA(図6C)の用量で水圧注射することによって評価した。図6に示されているように、coFVIII-3(図6A、三角)、coFVIII-4(図6A、逆三角)、coFVIII-5(図6A、ダイヤモンド)、coFVIII-6(図6A、白丸)、coFVIII-25(図6B、三角)、coFVIII-26(図6B、逆三角)、coFVIII-52(図6C、四角)及びcoFVIII-62(図6C、黒丸)はそれぞれ、FVIII活性が、coFVIII-1(図6A:円、図6B:円、図6C:三角)よりも高かった。詳細には、coFVIII-25とcoFVIII-26は、注射から72時間後の発現レベルが同程度で、coFVIII-1の活性よりも約3倍高い活性に達し(図6B)、これは、換算すると、非最適化親BDD FVIIIと比べて24倍高いFVIII活性となる(図4を参照されたい)。coFVIII-52(四角)とcoFVIII-62(黒丸)はいずれも、注射から72時間後の発現がさらに高く、coFVIII-1(三角)よりも、coFVIII-52は6倍、coFVIII-62は4倍高く、非最適化親BDD FVIII(白丸)よりも、coFVIII-52は50倍、coFVIII-62や30倍高かった(図6C)。これらのデータから、FVIIIを発現させる際には、コード配列のN末端側半分のCAIの方が低いことと、コード配列のC末端側半分のCAIの方が高いことを組み合わせると、CAIの分布がこれと反対である場合よりも有益と見られることが示されている。
【0435】
実施例4:HemAマウスにおけるコドン最適化FVIIIバリアントの、レンチウイルスによる長期的な発現
水圧注射から72時間後に、HemAマウスにおいて、FVIIIの高い発現を駆動することが分かったバリアントにおいて、レンチウイルスベクターの媒介による遺伝子移入による長期的なFVIII発現について評価した。レンチウイルスベクターを293T細胞において、一過性トランスフェクションによって作製し、超遠心分離によって、約5E9TU/mlまで濃縮した。続いて、そのレンチウイルスベクターを12~14日齢のHemAマウスに、後眼窩注射によって、1E8TU/マウスの用量で投与した。LV-2116(BDD FVIII、図7)を注射したマウスでは、レンチウイルスの注射から
21日目に、平均血漿中FVIII活性は、約0.04IU/mlであった。coFVIII-1、coFVIII-5、coFVIII-52、coFVIII-6及びcoFVIII-62ではそれぞれ、注射から21日目の循環血液中FVIIIレベルが、コントロールのLV-2116(非最適化Bドメイン欠失FVIII)よりも高くなった。詳細には、注射から21日目に、coFVIII-1とcoFVIII-5の注射では、血漿中FVIII活性レベルは、約1.8IU/mLとなり、coFVIII-52では、血漿中FVIII活性レベルは、約4.9IU/mLとなり、coFVIII-6では、血漿中FVIII活性レベルは、約4.6IU/mLとなり、coFVIII-62では、血漿中FVIII活性レベルは、約2.5IU/mLとなった(図7)。LV-coFVIII-6を注射したマウスで観察された血漿中FVIIIレベルは4.6IU/ml、LV-coFVIII-52を注射したマウスでは、4.9IU/mlであり、これらは、コントロールのLV-2116(非最適化BDD-FVIII)を注射したマウスで観察された血漿中レベルよりも100倍超高い。
【0436】
実施例5.coFVIII-XTEN融合コンストラクト
XTENが、定常状態のFVIII発現を向上させる能力について試験した。まず、coFVIII-52及びcoFVIII-1の1193位のヌクレオチドに(または、コードされるポリペプチドの最初の764個のアミノ酸の後に)、144個のアミノ酸のXTENのコード配列(「XTEN144」、配列番号18)を挿入して、それぞれ、coFVIII-52-XTEN(図8A、配列番号19)とcoFVIII-1-XTEN(図8B、配列番号20)を作製した。続いて、上記のように、ETプロモーターの制御下で、coFVIII-1-XTEN配列をpcDNA3骨格(Invitrogen)にクローニングして、FVIII-306発現プラスミドを作製し、上記のように、ETプロモーターの制御下で、coFVIII-52-XTEN配列をレンチウイルスプラスミドにクローニングして、pLV-coFVIII-52-XTENを作製した(図9)。FVIII-306(coFVIII-1-XTEN)をHemAマウスに、マウス1匹当たり5μgのDNAで、水圧注射によって投与した。coFVIII-1へのXTEN144の融合(FVIII-306、図10A、大円)により、FVIIIの発現は、HemAマウスにおいて、注射から72時間の時点で、FVIII-303(coFVIII-1、図10A、小円)と比べて約5倍、FVIII-311(BDD FVIII、図10A、四角)と比べて約33倍高くなった。XTENの挿入がFVIIIの発現に及ぼす作用は、HemAマウスにおいて、レンチウイルスベクターを用いても評価した(図10B)。LV-coFVIII-52-XTENを12~14日齢のHemAマウスに、マウス1匹当たり1E8TUで、後眼窩注射によって投与した。coFVIII-52へのXTEN144の挿入により(図10B)、FVIIIの発現は、HemAマウスにおいて、注射から21日目の時点で、LV-coFVIII52と比べて約4倍、LV-2116(BDD-FVIII)と比べて450倍高くなった。
【0437】
coFVIII-3、co-FVIII-4、coFVIII-5、coFVIII-6、coFVIII-62、coFVIII-25及びcoFVIII-26をそれぞれXTEN144に融合したとともに、ETプロモーターに融合したものを含むレンチウイルスベクターを、上記のように作製することになる。このベクターにおいて、FVIIIタンパク質の発現について試験する。
【0438】
実施例6.coFVIIIコンストラクトの発現
図9に示されているように、標準的な分子クローニング技法によって、コドン最適化FVIIIバリアントをレンチウイルスプラスミドにクローニングした。続いて、一過性トランスフェクションを通じて、レンチウイルスベクターをHEK293細胞で作製し、超遠心分離によって単離した。
【0439】
FVIIIレンチウイルスベクターを14日齢のHemA仔マウスに、静脈内注射によって、1.5E10TU/kgのLV-FVIIIバリアントという用量で投与した。LV-FVIIIによる処置から21日目に、血漿中FVIII活性を測定し、LV-FVIIIによる処置からから150日目に、LV-FVIIIで処置したマウスから採取した検死肝臓試料において、細胞1個当たりのベクターコピー数(VCN)を測定した。投与したLV-FVIIIバリアントにかかわらず、VCN値は、すべてのマウスにおいて同程度であったが(図12B)、coFVIIIバリアントで処置したマウスにおけるFVIII活性レベルは、wtBDD-FVIIIで処置したマウスよりも30~100倍高かった(図12A及び12C、表7)。これらのデータから、FVIIIコドンの最適化が、レンチウイルスベクターによる設定において、FVIIIの発現を向上させることが示されている。
【表7】
【0440】
実施例7.レンチウイルスによる処置後のHemAマウスにおける、FVIII導入遺伝子発現媒介性の免疫応答
実施例6でLV-FVIIIによって処置したマウスにおいて、FVIIIの長期的な発現と抗FVIII抗体の形成について評価した。FVIIIの発現は、血漿中FVIII活性によって示されるように、同じ処置群内のマウス間で異なっていた(図13A)。例えば、coFVIII-5バリアントを発現するレンチウイルスベクターで処置した3匹のマウス(1、2及び3という番号が付されている)では、およそ16週間にわたって、FVIIIの一貫した発現が見られたが、同じレンチウイルスベクターで処置した3匹の同腹マウス(4、5及び6という番号が付されている)では、処置から約10週間後までに、血漿中FVIII活性レベルが急落した(図13A)。マウス1、2及び3で一貫した血漿中FVIII活性が観察されたことは、抗FVIII抗体のレベルが検出不能であったか、または非常に低かったことと相関していた(図13B、マウス1、2及び3)。これに対して、血漿中FVIII活性が急落したマウスでは、抗FVIII抗体のレベルも向上した(図13B、マウス4、5及び6)。これらのデータから、マウスのサブセットの1つでは、FVIII導入遺伝子の発現により、抗FVIII抗体の形成が誘導され、その結果生じた抗FVIII抗体が、遺伝子組み換えFVIIIタンパク質を循環血液から消失させることが示唆されている。
【0441】
FVIIIの発現と抗FVIII抗体の形成との関係を評価した。実施例6でLV-FVIIIによって処置したマウスを、抗FVIII抗体陰性マウスと、抗FVIII抗体陽性マウスという2つの群に分けた。図14に示されているように、生理的なレベルにおける遺伝子組み換えFVIIIの発現によっては、遺伝子組み換えFVIIIに対する免疫応答が誘導されない(図14、円)。しかしながら、超生理的なレベルにおけるFVIIIの発現によっては、抗FVIII抗体の形成が誘導され、FVIII発現レベルが高いほど、抗FVIII抗体が誘導される可能性が高くなるようである。これらのデータから、FVIII遺伝子治療を行う患者において、生理的なレベルにおけるFVIIIの発現を保つことが有益であり得ることが示唆されている。
【0442】
FVIIIの発現によって誘導される免疫応答によって、肝細胞を発現する導入遺伝子が消失するか確かめるために、抗FVIII抗体陽性マウスと抗FVIII抗体陰性マウスから得た検死体肝臓試料において、ベクターコピー数(図15)とFVIII RNA転写レベル(図16)を評価した。図15に示されているように、ベクターコピー数の分布は、抗FVIII抗体陽性マウスと抗FVIII抗体陰性マウスにおいて同じであったことから、抗FVIII抗体の発現にかかわらず、LV-FVIIIが組み込まれた細胞が維持されたことが示された。このことから、LV-FVIII媒介性のFVIII導入遺伝子の発現によっては、FVIII発現肝細胞に対する細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答が誘導されないことが示唆されている。これらの結果を更に確認するために、FVIII RNAの転写をRNAインサイチューハイブリダイゼーションによって評価した(図16C及び16D)。肝臓摘出時、coFVIII-52-Bマウスは、循環血液中FVIIIが検出不能であったとともに、抗FVIII抗体のレベルが高かった(図16A及び16B)。しかしながら、coFVIII-52-Bマウスから得た肝組織におけるRNA転写シグナルとFVIII-RNA陽性細胞の数は、FVIII-52-Aマウス(検死時の循環血液中FVIIIが約4IU/mlであった)と同程度であった。したがって、実験用のHemAマウスでは、FVIIIの発現によっては、CTL応答は誘導されなかった。
【0443】
実施例8.LV-FVIIIで処置したHemA新生マウスにおけるFVIIIの長期的な発現
肝臓を標的にすることを通じて、小児のHemA患者の治療にレンチウイルス系を使用することの有効性を評価するために、2日齢のHemAマウスに、側頭静脈注射によって、LV-coFVIII-52XTEN、LV-coFVIII6-XTEN、またはwtBDD-FVIIIを発現するレンチウイルスベクターを約1.5E10TU/kg投与した。バリアントとコントロールの両方において、FVIIIの一貫した長期的な発現が観察されたことから、処置したマウスの分裂肝細胞において、組み込みFVIII発現カスケードが維持されたことが示された(図17)。これらのデータから、LV-FVIIIを用いて、小児のHemA患者と成人のHemA患者の両方を治療できる可能性のあることが示唆されている。
【0444】
実施例9.HemA新生イヌにおけるLV-FVIIIの評価
マウスよりも大きい動物モデルにおいてLV-FVIIIの有効性をさらに評価するために、1週齢のHemA新生イヌ2匹(S3及びK4とした)に、静脈内注射によって、LV-coFVIII-6-XTENを1.3×10TU/kg投与した。この用量は、前述のHemAマウスモデルで用いた用量の10分の1であった。レンチウイルスベクターの投与後、血漿中FVIII活性を一段階凝固アッセイ(aPTT)によってモニタリングし(図18)、全血止血を回転トロンボエラストグラフィ(ROTEM)アッセイによってモニタリングした(図19A~19D)。LV-FVIIIによる処置の前には、S3のFVIIIレベルは、正常レベルの0.7%であった(図18)。レンチウイル
スベクターによる処置後には、S3のFVIIIレベルは、7日目には、正常レベルの79%、14日目には、正常レベルの103%まで上昇した(図18)。K4では、投与前のFVIIIレベルは、正常レベルの1.4%であった(図18)。レンチウイルスベクターによる処置後には、FVIIIレベルは、6日目には、正常レベルの22%、14日目には、正常レベルの25%まで上昇した(図18)。
【0445】
FVIIIレベルに相関して、両方のイヌにおいて、処置から2週間後に、正規化ROTEMを観察した(図19A~19C)ところ、LV-FVIIIによって媒介される治療効果が示された。HemAイヌにおいて、LV-FVIIIによって、治療効果のあるFVIII発現レベルが得られたことから、血友病Aの治療にLV-FVIIIを使用できる可能性が確認されている。
【0446】
実施例10.HemA新生マウスにおけるLV-FVIIIの評価
遺伝子置換のためのレンチウイルスベクター(LV)によるエキソビボ遺伝子療法によって、複数の適応症に関して、処置した患者のうち、腫瘍形成のエビデンスが見られなかった患者における複数年のフォローアップによって、臨床効果が示されている。LV-FIXの全身送達は、FIXの持続的な発現を媒介するとともに、血友病動物モデルにおいて十分に耐えられるものである。高いパッケージング能、遺伝子組み込みを介した、導入遺伝子の長期的な発現を維持する能力、ヒト集団における既存の抗LV抗体(abs)の欠損、臨床前及び臨床現場において示された有望なインビボプロファイルにより、LVは、インビボ遺伝子送達用、特に、cDNAサイズの大きい候補遺伝子(FVIIIなど)用の有望なビヒクルとなっている。
【0447】
血友病A(HemA)の治療にLV-FVIIIを使用できる可能性を評価するために、マイクロRNA-142標的配列を複数コピー含むLV系に、肝細胞特異的プロモーターの制御下に置いたコドン最適化ヒトFVIII(hFVIII)バリアントを構築して、抗原提示細胞におけるFVIIIの発現を最小限にし、抗FVIII抗体を誘導する可能性を低下させた。293T細胞の一過性トランスフェクションによって、LV-hFVIIIベクターを作製してから、超遠心分離によって1000倍に濃縮し、HemAマウスモデルにおいて評価した。LV-hFVIIIの静脈内投与後、FVIII活性及び抗原アッセイによって、循環血液中hFVIIIレベルをモニタリングし、定量PCRを介して、LV DNAコピーを測定するとともに、インサイチューハイブリダイゼーションを介して、導入遺伝子RNAを測定することによって、肝臓におけるLV形質導入効率を評価し、全抗hFVIII抗体ELISAによって、抗hFVIII抗体を測定した。
【0448】
新生期に処置したHemAマウスでは、すべてのLV-hFVIIIバリアントにおいて、FVIIIの持続的な発現が観察された。用量1kg当たり1.5E10形質導入単位において、コドン最適化hFVIIIをコードするLV(LV-cohFVIII)によって、循環血液中FVIIIは、野生型hFVIIIをコードするLVよりも、30~100倍高くなったが(図12C)、肝細胞におけるベクターコピー数と、FVIII RNA陽性細胞の割合は、すべての試験群において同程度であった(図12B)。コドン最適化と、XTEN(ペイロードの流体力学的サイズを増大させることによって、循環血液中半減期を改善すると推定される非構造化親水性ポリペプチド)とを組み合わせたところ(LV-cohFVIII-XTEN)、血漿において、30~50IU/mLのFVIII活性が得られ、この値は、正常な循環血液中FVIIIレベルの3,000~5,000%である(図12A図17)。さらに、hFVIIIが超生理的なレベルのマウスのみで、抗hFVIII absが検出されたが(図14)、抗hFVIII抗体陽性マウスにおいて、LV形質導入細胞に対する細胞傷害性Tリンパ球応答は、観察されなかった(図15及び16A~16D)。我々の結果は、血友病Aのインビボ遺伝子療法用LV-FVIIIのさらなる開発を後押しするものである。
【0449】
具体的な実施形態の上記説明は、本開示の一般的な性質を十分に明らかにするものであるので、他者は、当該技術分野の技術の範囲内の知見を適用することによって、過度の実験なしに、本開示の一般的概念から逸脱せずに、このような具体的な実施形態を容易に修正したり、及び/または様々な用途に適合させたりできる。したがって、このような適合形態と修正形態は、本明細書に示されている教示及び手引きに基づく、本開示の実施形態の均等物の意義及び範囲内であるように意図されている。本明細書における言い回しまたは専門用語は、説明するためのものであって、限定するためのものではなく、当業者は、本開示の教示及び手引きに鑑みれば、本明細書の専門用語または言い回しを解釈するはずであることを理解されたい。
【0450】
本開示のその他の実施形態は、本明細書と、本明細書に開示されている本開示の実践を考察すれば、当業者に明らかとなる。本明細書と実施例は、単なる例示的なものとみなすように意図されており、本開示の真の範囲及び趣旨は、下記の請求項によって示されている。
【0451】
本明細書に引用されているすべての特許及び文献は、参照により、その全体が本明細書に援用される。
【0452】
本願は、2016年2月1日に提出された米国特許仮出願第62/289,696号と、2016年10月18日に提出された同第62/409,739号(参照により、その全体が本明細書に援用される)に基づく優先権の利益を主張するものである。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図1I
図1J
図2-1】
図2-2】
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図2-4】
図2-5】
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図6B
図6C
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図8A
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図10A
図10B
図11-1】
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【配列表】
2024114805000001.app
【手続補正書】
【提出日】2024-07-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第VIII因子(FVIII)ポリペプチドのN末端部分をコードする第1の核酸配列およびFVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第2の核酸配列を含むヌクレオチド配列を含む、単離核酸分子であって、
(a)前記第1の核酸配列は:
(i)配列番号3のヌクレオチド58~2277に対する、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性;
(ii)配列番号4のヌクレオチド58~2277に対する、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、もしくは97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性;
(iii)配列番号5のヌクレオチド58~2277に対する、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性;または
(iv)配列番号6のヌクレオチド58~2277に対する、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性、を含むか;
(b)前記第2の核酸配列は:
(i)配列番号3のヌクレオチド2320~4374に対する、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性;
(ii)配列番号4のヌクレオチド2320~4374に対する、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性;
(iii)配列番号5のヌクレオチド2320~4374に対する、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性;または
(iv)配列番号6のヌクレオチド2320~4374に対する、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性、を含むか;または
(c)(a)と(b)との任意の組み合わせ、であって、
前記N末端部分と前記C末端部分は一体になってFVIIIポリペプチド活性を有する、前記単離された核酸分子。
【請求項2】
FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、前記ヌクレオチド配列は、
(i)配列番号1のヌクレオチド58~2277および2320~4374に対する、少なくとも91%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性;
(ii)配列番号2のヌクレオチド58~2277および2320~4374に対する少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性;
(iii)配列番号70のヌクレオチド58~2277および2320~4374に対する、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性;
(iv)配列番号71のヌクレオチド58~2277および2320~4374に対する、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性;
(v)配列番号3のヌクレオチド58~2277および2320~4374に対する、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性;
(vi)配列番号4のヌクレオチド58~2277および2320~4374に対する、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性;
(vii)配列番号5のヌクレオチド58~2277および2320~4374に対する、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性;
(viii)配列番号6のヌクレオチド58~2277および2320~4374に対する、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性;または
(ix)(i)~(viii)の任意の組み合わせ、を含む、前記単離核酸分子
【請求項3】
前記ヌクレオチド配列がシグナルペプチドをコードする核酸配列をさらに含み、該シグナルペプチドをコードする核酸配列は、
(i)配列番号1の1~57位のヌクレオチド;
(ii)配列番号2の1~57位のヌクレオチド;
(iii)配列番号3の1~57位のヌクレオチド;
(iv)配列番号4の1~57位のヌクレオチド;
(v)配列番号5の1~57位のヌクレオチド;
(vi)配列番号6の1~57位のヌクレオチド;
(vii)配列番号70の1~57位のヌクレオチド;
(viii)配列番号71の1~57位のヌクレオチド;または
(ix)配列番号68の1~57位のヌクレオチド、
に対する、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する、請求項1または2に記載の単離核酸分子。
【請求項4】
前記核酸分子が以下からなる群より選択される1つ以上の特性を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の単離核酸分子であって;
(a)前記核酸分子またはその一部のヒトコドン適応指標が、配列番号16よりも上昇していること;
(b)前記ヌクレオチド配列またはその一部の最適コドン頻度が、配列番号16よりも上昇していること;
(c)前記ヌクレオチド配列またはその一部が、配列番号16におけるG/Cヌクレオチドの割合よりも高い割合で、G/Cヌクレオチドを含むこと;
(d)前記ヌクレオチド配列またはその一部の相対的な同義コドン使用頻度が、配列番号16よりも上昇していること;
(e)前記ヌクレオチド配列またはその一部のコドンの有効数が、配列番号16よりも減少していること;
(f)前記ヌクレオチド配列が、配列番号16よりも少ないMARS/ARS配列(配列番号21及び22)を含むこと;
(g)前記ヌクレオチド配列が、配列番号16よりも少ない不安定化エレメント(配列番号23及び24)を含むこと;および
(h)これらの任意の組み合わせ、
である、前記単離核酸分子。
【請求項5】
異種のアミノ酸配列をコードする異種のヌクレオチド配列をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の単離核酸分子。
【請求項6】
前記異種のアミノ酸配列は、免疫グロブリン定常領域もしくはその一部、XTEN、トランスフェリン、アルブミン、またはPAS配列である、請求項5に記載の単離核酸分子。
【請求項7】
前記異種のアミノ酸配列は、前記ヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列のN末端またはC末端に連結されるか、または前記ヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列中の2つのアミノ酸間であって表3から選択される1つ以上の挿入部位において挿入される。請求項5または6に記載の単離核酸分子。
【請求項8】
前記FVIIIポリペプチドは、完全長FVIIIまたはBドメイン欠失FVIIIである、請求項1~7のいずれか1項に記載の単離核酸分子。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の単離核酸分子を含む、ベクター。
【請求項10】
前記ベクターはレンチウイルスベクターである、請求項9に記載のベクター。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか1項に記載の単離核酸分子、または請求項9もしくは10に記
載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項12】
請求項11に記載の宿主細胞が産生する、ポリペプチド。
【請求項13】
FVIII活性を有するポリペプチドの作製方法であって、FVIII活性を有するポリペプチドが産生される条件下で請求項11に記載の宿主細胞を培養すること、およびFVIII活性を有する前記ポリペプチドを回収することを含む、前記方法。
【請求項14】
対象においてFVIII活性を有するポリペプチドの発現を増加させるための組成物であって、該組成物は請求項1~8のいずれか1項に記載の単離核酸分子または請求項9または10に記載のベクターを含み、ここで前記ポリペプチドの発現は、配列番号16を含む参照核酸分子または前記参照核酸分子を含むベクターよりも増加する、前記組成物。
【請求項15】
請求項1~8のいずれか1項に記載の核酸分子、請求項9もしくは10に記載のベクター、または請求項12に記載のポリペプチドを含む、出血疾患を治療するための医薬組成物。
【請求項16】
FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、単離核酸分子であって、該ヌクレオチド配列は、
(i)配列番号71に対する少なくとも90%の配列同一性;
(ii)配列番号1に対する少なくとも90%の配列同一性;
(iii)配列番号2に対する少なくとも90%の配列同一性
(iv)配列番号70に対する少なくとも90%の配列同一性;
(v)配列番号3に対する少なくとも90%の配列同一性;
(vi)配列番号4に対する少なくとも90%の配列同一性
(vii)配列番号5に対する少なくとも90%の配列同一性;または
(viii)配列番号6に対する少なくとも90%の配列同一性、を含む、前記単離核酸分子。
【請求項17】
異種アミノ酸配列をコードする異種ヌクレオチド配列をさらに含む、請求項16に記載の単離核酸分子。
【請求項18】
前記異種アミノ酸配列が、免疫グロブリン定数領域またはその一部、XTEN、トランスフェリン、アルブミン、またはPAS配列である、請求項17に記載の単離核酸分子。
【請求項19】
対象におけるFVIII活性を有するポリペプチドの発現を増加させるための方法であって、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子を含む医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、前記単離核酸分子は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む参照核酸分子よりも、FVIII活性レベルを少なくとも1.8倍、1.9倍、2.2倍、3倍、3.9倍、4倍、5倍、または6倍増加させる、前記方法。
【請求項21】
前記FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む参照核酸分子は配列番号68である、請求項20に記載の方法。