(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011481
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】トリアゾール誘導体のエナンチオマーの構造決定方法
(51)【国際特許分類】
C07D 249/08 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
C07D249/08 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113475
(22)【出願日】2022-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001100
【氏名又は名称】株式会社クレハ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】萩原 隆介
(72)【発明者】
【氏名】梅野 智大
(72)【発明者】
【氏名】唐澤 悟
(57)【要約】 (修正有)
【課題】トリアゾール誘導体のエナンチオマーについて、絶対配置に関する構造を決定するための方法の提供。
【解決手段】式(I)で表されるトリアゾール誘導体のエナンチオマーに、式(IV)等で表されるキラル分子を添加して共結晶を得る工程、該共結晶の構造解析によりエナンチオマーの絶対配置を決定する工程を含む。
[R
1~R
3は特定の置換基を表す]
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表されるトリアゾール誘導体の(-)-エナンチオマーおよび(+)-エナンチオマーの何れか一方のエナンチオマーを準備する工程、
前記エナンチオマーに下記一般式(II)で表されるキラル分子を添加して結晶化させ、前記エナンチオマーと前記キラル分子との共結晶を得る工程、
得られた共結晶の構造を解析することにより上記エナンチオマーの構造の絶対配置を決定する工程を含む、トリアゾール誘導体のエナンチオマーの構造決定方法。
【化1】
[式(I)中、
R
1は、-OR
4または-NR
5R
6であり;
R
4、R
5およびR
6は、それぞれ独立に、水素、C
1-C
6-アルキル基、C
2-C
6-アルケニル基、C
2-C
6-アルキニル基、C
3-C
8-シクロアルキル基、C
3-C
8-シクロアルキル-C
1-C
4-アルキル基、フェニル基、フェニル-C
1-C
4-アルキル基、フェニル-C
2-C
4-アルケニル基またはフェニル-C
2-C
4-アルキニル基であり、R
5およびR
6はこれらが結合する窒素原子とともに環を形成していてもよく;
ここで、R
4、R
5、およびR
6における脂肪族基は、1、2、3もしくは可能な最大数の同一のまたは異なる基R
aを有していてもよく、R
aは、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、C
1-C
4-アルコキシ基およびC
1-C
4-ハロアルコキシ基から互いに独立して選択され;
R
2はハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、フェニル基、フェニル-オキシ基、C
1-C
4-アルキル基、C
1-C
4-ハロアルキル基、C
1-C
4-アルコキシ基、C
1-C
4-ハロアルコキシ基、-SOR
7または-SF
5であり;
R
3は、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、フェニル基、フェニル-オキシ基、C
1-C
4-アルキル基、C
1-C
4-ハロアルキル基、C
1-C
4-アルコキシ基またはC
1-C
4-ハロアルコキシ基、C
1-C
4-アルキルアミノ基、C
1-C
4-ジアルキルアミノ基、C
1-C
4-アルキルアシルアミノ基、-SOR
7または-SF
5であり;
R
4、R
5、およびR
6におけるシクロアルキル基およびフェニル基部分ならびにR
3におけるフェニル基部分は、1、2、3、4、5もしくは可能な最大数の同一のまたは異なる基R
bを有していてもよく、R
bは、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、C
1-C
4-アルキル基、C
1-C
4-アルコキシ基、C
1-C
4-ハロアルキル基およびC
1-C
4-ハロアルコキシ基から互いに独立して選択され;
ここで、R
7は、C
1-C
4-アルキル基またはC
1-C
4-ハロアルキル基であり;
nは0,1,2,3,または4であり;
mは1,2,3,4または5であり、
アスタリスク(*)は不斉炭素原子を指す。]
【化2】
[式(II)中、
R
8およびR
9は、C
1-C
6-アルキル基であり、R
8およびR
9はこれらが結合する炭素原子とともに環を形成していてもよく;
R
10~R
13は、それぞれ独立に、C
1-C
6-アルキルC
6-C
14-芳香族炭化水素基またはC
5-C
6-芳香族複素環基であり、
アスタリスク(*)は不斉炭素原子を指す。]
【請求項2】
上記一般式(II)で表されるキラル分子が、下記一般式(III)で表されるキラル分子である、請求項1に記載のトリアゾール誘導体のエナンチオマーの構造決定方法。
【化3】
[式(III)中、
R
8およびR
9は、上記一般式(II)におけるR
8およびR
9と同義であり、;
アスタリスク(*)は不斉炭素原子を指す。]
【請求項3】
上記一般式(I)において、
R1が、-OR4であり;
R2が、ハロゲン基、シアノ基、C1-C4-アルキル基、C1-C4-ハロアルキル基、C1-C4-アルコキシ基、-SOR7または-SF5であり;
R3が、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、C1-C4-アルキル基、C1-C4-ハロアルキル基、C1-C4-アルコキシ基、C1-C4-ハロアルコキシ基、C1-C4-アルキルアミノ基、C1-C4-ジアルキルアミノ基、C1-C4-アルキルアシルアミノ基、-SOR7または-SF5である、請求項1に記載のトリアゾール誘導体のエナンチオマーの構造決定方法。
【請求項4】
上記一般式(I)において、
R4が、C1-C6-アルキル基であり;
R2が、ハロゲン基、シアノ基、C1-C4-アルキル基、C1-C4-ハロアルキル基またはC1-C4-アルコキシ基であり;
R3が、ハロゲン基、シアノ基、C1-C4-アルキル基、C1-C4-ハロアルキル基、C1-C4-アルコキシ基またはC1-C4-ハロアルコキシ基である、請求項2に記載のトリアゾール誘導体のエナンチオマーの構造決定方法。
【請求項5】
上記一般式(II)で表されるキラル分子が、((2S,3S)-1,4-ジオキサスピロ[4.5]デカン-2,3-ジイル)ビス(ジフェニルメタノール)または((2R,3R)-1,4-ジオキサスピロ[4.5]デカン-2,3-ジイル)ビス(ジフェニルメタノール)である、請求項1~4のいずれか1項に記載のトリアゾール誘導体のエナンチオマーの構造決定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリアゾール誘導体のエナンチオマーの構造決定方法に関し、詳細にはエナンチオマーの絶対配置の構造を決定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人畜に対する毒性が低く取扱い安全性に優れ、かつ広範な植物病害に対して高い防除効果を示す農園芸用薬剤が求められている。このような状況下、特許文献1において、植物病菌に対する高い抗菌性を有するトリアゾール誘導体、ならびにこれを有効成分として含む農園芸用薬剤および工業用材料保護剤が開示されている。また、特許文献2において、より活性の高いトリアゾール誘導体の(-)-エナンチオマーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO2019/093522
【特許文献2】国際公開WO2021/230382
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2に記載されているトリアゾール誘導体のエナンチオマーについて、その絶対配置に関する構造については明らかになっていない。一般的に、エナンチオマーの構造の絶対配置を知ることは、エナンチオマーとタンパク質などの生体分子との嵌合、すなわち作用機作の詳細の解明に資するものである。また、作用機作の詳細の解明により、薬剤の効果の改良、新たな薬剤の創出にも資するものとなる。
【0005】
エナンチオマーの構造の絶対配置を知るには、エナンチオマーの結晶を作製し、結晶構造解析を行う必要がある。しかしながら本発明者らが検討した結果、上記のトリアゾール誘導体のエナンチオマーは非晶質性の化合物であるため、従来の方法では結晶化されず、それゆえ絶対配置に関する構造決定をすることができなかった。そこで、本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、上記トリアゾール誘導体のエナンチオマーの絶対配置に関する構造を決定するための方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、特定のキラル分子をエナンチオマーに添加することで、エナンチオマーとキラル分子との共結晶が得られることを見出し、本発明に想到するに至った。
【0007】
すなわち、上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るトリアゾール誘導体のエナンチオマーの構造決定方法は、下記一般式(I)で表されるトリアゾール誘導体の(-)-エナンチオマーおよび(+)-エナンチオマーの何れか一方のエナンチオマーを準備する工程、エナンチオマーに下記一般式(II)で表されるキラル分子を添加して結晶化させ、エナンチオマーとキラル分子との共結晶を得る工程、得られた共結晶の構造を解析することにより上記エナンチオマーの構造の絶対配置を決定する工程を含む。
【化1】
[式(I)中、
R
1は、-OR
4または-NR
5R
6であり;
R
4、R
5およびR
6は、それぞれ独立に、水素、C
1-C
6-アルキル基、C
2-C
6-アルケニル基、C
2-C
6-アルキニル基、C
3-C
8-シクロアルキル基、C
3-C
8-シクロアルキル-C
1-C
4-アルキル基、フェニル基、フェニル-C
1-C
4-アルキル基、フェニル-C
2-C
4-アルケニル基またはフェニル-C
2-C
4-アルキニル基であり、R
5およびR
6はこれらが結合する窒素原子とともに環を形成していてもよく;
ここで、R
4、R
5、およびR
6における脂肪族基は、1、2、3もしくは可能な最大数の同一のまたは異なる基R
aを有していてもよく、R
aは、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、C
1-C
4-アルコキシ基およびC
1-C
4-ハロアルコキシ基から互いに独立して選択され;
R
2はハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、フェニル基、フェニル-オキシ基、C
1-C
4-アルキル基、C
1-C
4-ハロアルキル基、C
1-C
4-アルコキシ基、C
1-C
4-ハロアルコキシ基、-SOR
7または-SF
5であり;
R
3は、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、フェニル基、フェニル-オキシ基、C
1-C
4-アルキル基、C
1-C
4-ハロアルキル基、C
1-C
4-アルコキシ基またはC
1-C
4-ハロアルコキシ基、C
1-C
4-アルキルアミノ基、C
1-C
4-ジアルキルアミノ基、C
1-C
4-アルキルアシルアミノ基、-SOR
7または-SF
5であり;
R
4、R
5、およびR
6におけるシクロアルキル基およびフェニル基部分ならびにR
3におけるフェニル基部分は、1、2、3、4、5もしくは可能な最大数の同一のまたは異なる基R
bを有していてもよく、R
bは、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、C
1-C
4-アルキル基、C
1-C
4-アルコキシ基、C
1-C
4-ハロアルキル基およびC
1-C
4-ハロアルコキシ基から互いに独立して選択され;
ここで、R
7は、C
1-C
4-アルキル基またはC
1-C
4-ハロアルキル基であり;
nは0,1,2,3,または4であり;
mは1,2,3,4または5であり、
アスタリスク(*)は不斉炭素原子を指す。]
【化2】
[式(II)中、
R
8およびR
9は、C
1-C
6-アルキル基であり、R
8およびR
9はこれらが結合する炭素原子とともに環を形成していてもよく;
R
10~R
13は、それぞれ独立に、C
1-C
6-アルキル基、C
6-C
14-芳香族炭化水素基またはC
5-C
6-芳香族複素環基であり、
アスタリスク(*)は不斉炭素原子を指す。]
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、トリアゾール誘導体のエナンチオマーを結晶化でき、当該エナンチオマーの絶対配置の構造を決定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施例に係る、化合物1(-)の単結晶X線構造解析結果を示す図である。
【
図2】本発明の実施例に係る、化合物1(+)の単結晶X線構造解析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0011】
本発明の一実施形態に係るトリアゾール誘導体のエナンチオマーの構造決定方法は、トリアゾール誘導体の(-)-エナンチオマーおよび(+)-エナンチオマーの何れか一方を準備する工程、エナンチオマーにキラル分子を添加して結晶化させることにより共結晶を得る工程、得られた共結晶の構造を解析することによりエナンチオマーの構造の絶対配置を決定する工程を含む。
【0012】
ここで、本実施形態に係るトリアゾール誘導体のエナンチオマーは、下記一般式(I)で示されるトリアゾール誘導体(以下、トリアゾール誘導体(I)と称する)における(-)-エナンチオマー(以下、トリアゾール誘導体(-)-エナンチオマーと称する)、または(+)-エナンチオマー(以下、トリアゾール誘導体(+)-エナンチオマーと称する)である。なお、(-)-エナンチオマーと(+)-エナンチオマーとを区別する必要のない場合には、単に、トリアゾール誘導体エナンチオマーと称する。下記一般式(I)におけるアスタリスク(*)が不斉炭素原子を指す。なお、本明細書において、「(-)-エナンチオマー」とは、ナトリウムD線の直線偏光の振動面を左に回転させるエナンチオマーのことを指し、「(+)-エナンチオマー」とは、ナトリウムD線の直線偏光の振動面を右に回転させるエナンチオマーのことを指す。
【化3】
【0013】
一般式(I)中、
R1は、-OR4または-NR5R6であり、好ましくは-OR4である。
【0014】
R4、R5およびR6は、それぞれ独立に、水素、C1-C6-アルキル基、C2-C6-アルケニル基、C2-C6-アルキニル基、C3-C8-シクロアルキル基、C3-C8-シクロアルキル-C1-C4-アルキル基、フェニル基、フェニル-C1-C4-アルキル基、フェニル-C2-C4-アルケニル基またはフェニル-C2-C4-アルキニル基である。R5とR6とは、R5およびR6が結合している窒素原子とともに環を形成していてもよい。
【0015】
C1-C6-アルキル基は、炭素原子数が1~6個である直鎖または分岐鎖状アルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、1-メチルエチル基、1,1-ジメチルエチル基、プロピル基、1-メチルプロピル基、2-メチルプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、ブチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、1,1-ジメチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、ペンチル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基および4-メチルペンチル基が挙げられる。
【0016】
C2-C6-アルケニル基は、炭素原子数が2~6個である直鎖または分岐鎖状のアルケニル基であり、例えば、エテニル基、2-プロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-メチル-2-ブテニル基、1-メチル-2-ブテニル基、3-ブテニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、1-ヘキセニル基および5-ヘキセニル基が挙げられる。
【0017】
C2-C6-アルキニル基は、炭素原子数が2~6個である直鎖または分岐鎖状のアルキニル基であり、例えば、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、ペンチニル基および1-ヘキシニル基が挙げられる。
【0018】
C3-C8-シクロアルキル基は、炭素原子数3~8個の環状のアルキルであり、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、およびシクロオクチル基が挙げられる。
【0019】
C3-C8-シクロアルキル-C1-C4-アルキル基は、炭素原子数3~8個の環状のシクロアルキル基が直鎖または分岐鎖状の炭素数1~4個のアルキル基に結合していることを示す。例えば、シクロプロピルメチル基、シクロブチルメチル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、2-シクロプロピルエチル基、1-シクロプロピルエチル基、2-シクロヘキシルエチル基、3-シクロプロピルプロピル基、2-シクロプロピルプロピル基、4-シクロプロピルブチル基が挙げられる。
【0020】
フェニル-C1-C4-アルキル基は、炭素原子数1~4個の直鎖または分岐鎖状のアルキル基にフェニル基が置換しており、例えば、フェニルメチル基、2-フェニルエチル基、3-フェニルプロピル基、および4-フェニルブチル基が挙げられる。
【0021】
フェニル-C2-C4-アルケニル基は、フェニル基に炭素原子数2~4個の直鎖または分岐鎖状のアルケニル基が結合しており、例えば、フェニルエテニル基、フェニル-1-プロペニル基、フェニルイソプロペニル基、およびフェニルブテニル基が挙げられる。
【0022】
フェニル-C2-C4-アルキニル基は、フェニル基に炭素原子数2~4個のアルキニル基が結合しており、例えば、フェニルエチニル基、フェニル-1-プロピニル基、フェニル-2-プロピニル基、フェニル-1-ブチニル基、フェニル-2-ブチニル基、およびフェニル-3-ブチニル基が挙げられる。
【0023】
R4は、好ましくは、C1-C6-アルキル基である。
【0024】
R1、R4、R5、およびR6における脂肪族基は、1、2、3もしくは可能な最大数の同一のまたは異なる基Raを有していてもよく、Raは、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、C1-C4-アルコキシ基およびC1-C4-ハロアルコキシ基から互いに独立して選択される。
【0025】
ハロゲン基としては塩素基、臭素基、ヨウ素基またはフッ素基が挙げられる。例えば、クロロメチル基、2-クロロエチル基、2,3-ジクロロプロピル基、ブロモメチル基、クロロジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、および3,3,3-トリフルオロプロピル基が挙げられる。
【0026】
C1-C4-アルコキシ基は、炭素原子数1~4個の直鎖または分岐鎖状のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基が挙げられる。
【0027】
C1-C4-ハロアルコキシ基は、上述のC1-C4-アルコキシ基の置換し得る位置に1または2以上のハロゲン原子が置換されており、置換されるハロゲン基が2以上の場合においてハロゲン基は同一または異なっても良い。
【0028】
R2は、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、フェニル基、フェニル-オキシ基、C1-C4-アルキル基、C1-C4-ハロアルキル基、C1-C4-アルコキシ基、C1-C4-ハロアルコキシ基、-SOR7または-SF5である。
【0029】
ハロゲン基、C1-C4-アルキル基、C1-C4-ハロアルキル基、C1-C4-アルコキシ基、およびC1-C4-ハロアルコキシ基は、Raで表される有機基の例示として挙げた基を挙げることができる。
【0030】
R2は、好ましくは、ハロゲン基、シアノ基、C1-C4-アルキル基、C1-C4-ハロアルキル基、C1-C4-アルコキシ基、-SOR7または-SF5であり、さらに好ましくは、ハロゲン基、シアノ基、C1-C4-アルキル基、C1-C4-ハロアルキル基またはC1-C4-アルコキシ基である。
【0031】
R7は、C1-C4-アルキル基またはC1-C4-ハロアルキル基である。R2の置換位置は2位、3位、5位または6位であり、好ましくは2位である。nは、0、1、2、3または4であり、好ましくは1である。
【0032】
R3は、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、フェニル基、フェニル-オキシ基、C1-C4-アルキル基、C1-C4-ハロアルキル基、C1-C4-アルコキシ基、C1-C4-ハロアルコキシ基、C1-C4-アルキルアミノ基、C1-C4-ジアルキルアミノ基、C1-C4-アルキルアシルアミノ基、-SOR7または-SF5であり、ハロゲン基、C1-C4-アルキルC1-C4-ハロアルキル基、C1-C4-アルコキシ基またはC1-C4-ハロアルコキシ基、および-SOR7はR2で表される有機基の例示として挙げた基を挙げることができる。
【0033】
R3は、好ましくは、ハロゲン基、ニトロ基、アミノ基、C1-C4-アルキル基、C1-C4-ハロアルキル基、C1-C4-アルコキシ基、C1-C4-ハロアルコキシ基、C1-C4-アルキルアミノ基、C1-C4-ジアルキルアミノ基、C1-C4-アルキルアシルアミノ基、-SOR7または-SF5であり、さらに好ましくは、ハロゲン基、C1-C4-アルキル基、C1-C4-ハロアルキル基、C1-C4-アルコキシ基またはC1-C4-ハロアルコキシ基である。
【0034】
C1-C4-アルキルアミノ基は、アミノ基が有する水素原子の1つが炭素原子数1~4個の直鎖または分岐鎖状のアルキル基に置換されたアミノ基であり、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n-プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、およびtert-ブチルアミノ基が挙げられる。
【0035】
C1-C4-ジアルキルアミノ基は、アミノ基が有する水素原子2つ共が炭素原子数1~4個の直鎖または分岐鎖状のアルキル基に置換されたアミノ基であり、例えば、N,N-ジメチルアミノ基、N,N-ジエチルアミノ基、N,N-ジ-n-プロピルアミノ基、N,N-ジイソプロピルアミノ基、およびN,N-ジ-tert-ブチルアミノ基が挙げられる。
【0036】
C1-C4-アルキルアシルアミノ基は、アミノ基が有する水素原子の1つまたは2つが炭素原子数1~4個の直鎖または分岐鎖状のアルキルアシル基に置換されたアミノ基であり、例えば、メチルアシルアミノ基、エチルアシルアミノ基、n-プロピルアシルアミノ基、イソプロピルアシルアミノ基、tert-ブチルアシルアミノ基、N,N-ジメチルアシルアミノ基、N,N-ジエチルアシルアミノ基、N,N-ジ-n-プロピルアシルアミノ基、N,N-ジイソプロピルアシルアミノ基、およびN,N-ジ-tert-ブチルアシルアミノ基が挙げられる。
【0037】
R4、R5、R6におけるシクロアルキル基もしくはフェニル基部分、またはR3におけるフェニル基部分は、1、2、3、4、5もしくは可能な最大数の同一のまたは異なる基Rbを有していてもよく、Rbは、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、C1-C4-アルキル基、C1-C4-アルコキシ基、C1-C4-ハロアルキル基およびC1-C4-ハロアルコキシ基から互いに独立して選択される。ハロゲン基、C1-C4-アルキル基、C1-C4-アルコキシ基、C1-C4-ハロアルキル基およびC1-C4-ハロアルコキシ基は、Raで表される有機基の例示として挙げた基を挙げることができる。
【0038】
以上から、トリアゾール誘導体(-)-エナンチオマーおよびトリアゾール誘導体(+)-エナンチオマーの好ましい一態様としては、一般式(I)において、R1が、-OR4であり;R2が、ハロゲン基、シアノ基、C1-C4-アルキル基、C1-C4-ハロアルキル基、C1-C4-アルコキシ基、-SOR7または-SF5であり;R3が、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、C1-C4-アルキル基、C1-C4-ハロアルキル基、C1-C4-アルコキシ基、C1-C4-ハロアルコキシ基、C1-C4-アルキルアミノ基、C1-C4-ジアルキルアミノ基、C1-C4-アルキルアシルアミノ基、-SOR7または-SF5である、トリアゾール誘導体(-)-エナンチオマーおよびトリアゾール誘導体(+)-エナンチオマーが挙げられる。
【0039】
また、トリアゾール誘導体(-)-エナンチオマーおよびトリアゾール誘導体(+)-エナンチオマーのより好ましい一態様としては、一般式(I)において、R1が、-OR4であり、かつR4が、C1-C6-アルキル基であり;R2が、ハロゲン基、シアノ基、C1-C4-アルキル基、C1-C4-ハロアルキル基またはC1-C4-アルコキシ基であり;R3が、ハロゲン基、シアノ基、C1-C4-アルキル基、C1-C4-ハロアルキル基、C1-C4-アルコキシ基またはC1-C4-ハロアルコキシ基である、トリアゾール誘導体(-)-エナンチオマーおよびトリアゾール誘導体(+)-エナンチオマーが挙げられる。
【0040】
〔1.トリアゾール誘導体(-)-エナンチオマーおよび(+)-エナンチオマーの準備〕
トリアゾール誘導体(-)-エナンチオマーおよび(+)-エナンチオマーは、例えば、トリアゾール誘導体(I)のラセミ体からキラルクロマトグラフィーにより分取分離する方法によって、何れか一方を準備することができる。具体的には、アミローストリス(3,5-ジメチルフェニルカルバメート)、セルローストリス(3,5-ジメチルフェニルカルバメート)、セルローストリス(3,5-ジクロロフェニルカルバメート)、アミローストリス[(S)-α-メチルベンジルカルバメート]、セルローストリス(4-メチルベンゾエート)、アミローストリス(5-クロロ-2-メチルフェニルカルバメート)またはセルローストリス(3-クロロ-4-メチルフェニルカルバメート)をシリカゲル担体に固定化した固定相上で、ヘキサン/エタノール(100/0~0/100)、ヘキサン/イソプロパノール(100/0~0/100)、エタノール、メタノールまたはアセトニトリルを移動相として用いて、トリアゾール誘導体(I)のラセミ体から分取分離を行うことにより、トリアゾール誘導体エナンチオマーを分離できる。分取分離された一方のエナンチオマーの旋光度は、従来公知の方法に従って決定することができる。
【0041】
トリアゾール誘導体(I)のラセミ体は、例えば、特許文献1に記載の方法に従い得ることができる。なお、特許文献1に記載の方法に従ってトリアゾール誘導体を製造した場合、得られるトリアゾール誘導体はラセミ体となる。
【0042】
〔2.キラル分子添加による、エナンチオマーとキラル分子との共結晶の調製〕
得られたトリアゾール誘導体(-)-エナンチオマーまたは(+)-エナンチオマーを溶媒中で下記一般式(II)で示されるキラル分子と混合することによって、エナンチオマーとキラル分子との共結晶を形成させる。下記一般式(II)におけるアスタリスク(*)が不斉炭素原子を指す。
【化4】
【0043】
ここで一般式(II)中、R8およびR9は、C1-C6-アルキル基であり、R8およびR9はこれらが結合する炭素原子とともに環を形成していてもよい。また、R10~R13は、それぞれ独立に、C1-C6-アルキル基、C6-C14-芳香族炭化水素基またはC5-C6-芳香族複素環基である。アスタリスク(*)は不斉炭素原子を指す。
【0044】
C1-C6-アルキル基は、炭素原子数が1~6個である直鎖または分岐鎖状アルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、1-メチルエチル基、1,1-ジメチルエチル基、プロピル基、1-メチルプロピル基、2-メチルプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、ブチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、1,1-ジメチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、ペンチル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基および4-メチルペンチル基が挙げられる。
【0045】
C6-C14-芳香族炭化水素基は、炭素原子数が6~14個である芳香族炭化水素環から誘導される基であり、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基およびフェナントリル基が挙げられ、フェニル基が好ましい。
【0046】
C5-C6-芳香族複素環基は、O、NもしくはSから選択されるヘテロ原子を1~4つ含む5員または6員の芳香族複素環から誘導される基であり、例えば、フリル基、ピラゾリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基およびトリアジニル基が挙げられる。
【0047】
R10~R13は全て同じ基であってもよく、互いに相違していてもよい。典型的には、R10~R13は全て同じ基である。
【0048】
一般式(II)で示されるキラル分子は、好ましくは、下記一般式(III)で表されるキラル分子である。
【化5】
ここで一般式(III)中、R
8およびR
9は、一般式(II)におけるR
8およびR
9と同義である。アスタリスク(*)は不斉炭素原子を指す。
【0049】
一般式(II)で示されるキラル分子は、さらに好ましくは、下記一般式(IV)または(V)で表されるキラル分子である。
【化6】
(一般式(IV):((2R,3R)-1,4-ジオキサスピロ[4.5]デカン-2,3-ジイル)ビス(ジフェニルメタノール))
【化7】
(一般式(V):((2S,3S)-1,4-ジオキサスピロ[4.5]デカン-2,3-ジイル)ビス(ジフェニルメタノール))
【0050】
添加するキラル分子の量は、トリアゾール誘導体エナンチオマー1モルに対して、0.01~100モルが好ましく、0.1~10モルがより好ましく、0.5~5モルがさらに好ましい。
【0051】
用いられる溶媒については特に限定されないが、メタノールおよびエタノールなどのアルコール類が好ましく、その他例えばベンゼン、トルエン、キシレンおよびクロロベンゼンなどの芳香族炭化水素類、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンおよびN,N-ジメチルホルムアルデヒドなどのアミド類、ならびにジメチルスルホキシドを挙げることができる。溶媒の種類によりトリアゾール誘導体エナンチオマーの可溶範囲が異なり得るため、使用する溶媒の量は、エナンチオマーの可溶範囲に応じて適宜決定すればよい。例えば溶媒としてメタノールを使用する場合、メタノールの量は、トリアゾール誘導体エナンチオマー1モルに対して、10~1,000,000モルが好ましく、50~500,000モルがより好ましく、100~10,000モルがさらに好ましい。
【0052】
溶媒は、加温してもよく、加温しなくてもよい。溶媒を加熱しない場合、トリアゾール誘導体エナンチオマーを溶解した後、しばらくの間静置しておくことにより結晶が析出してくる。加温をせずに結晶化を行うことで、構造解析に適したより良質の結晶を得ることができる。溶媒を加温する場合、トリアゾール誘導体のエナンチオマーを添加する前に予め加温しておいてもよく、トリアゾール誘導体のエナンチオマーを添加した後に加温してもよい。ラセミ体を添加した後に加温する場合、トリアゾール誘導体のエナンチオマーおよびキラル分子の両方を添加した後に加温するものであってもよい。その後キラル分子が添加された、加温された溶媒を冷却することにより結晶化が行われる。
【0053】
共結晶を析出させる方法はこれに限らず、溶媒を蒸発させる方法等、従来公知の析出方法を採用することができる。
【0054】
析出した結晶は、濾過などの従来公知の単離方法により単離して、結晶構造解析に用いることができる。
【0055】
トリアゾール誘導体(-)-エナンチオマーおよび(+)-エナンチオマーは非晶質性の化合物であるが、上述のキラル分子を添加することによって、エナンチオマーとキラル分子との共結晶として結晶化させることができる。
【0056】
〔3.共結晶の構造解析による、エナンチオマーの構造の絶対配置決定〕
エナンチオマーとキラル分子との共結晶を構造解析することにより、共結晶におけるエナンチオマーおよびキラル分子の立体構造を明らかにする。そして、共結晶中の立体構造に基づき、当該エナンチオマーの構造の絶対配置を決定することができる。共結晶の構造解析の方法は、単結晶X線構造解析等、公知の方法であれば特に限定されないが、単結晶X線構造解析が好ましい。
【0057】
<まとめ>
本発明の態様1に係るトリアゾール誘導体のエナンチオマーの構造決定方法は、上述の一般式(I)で表されるトリアゾール誘導体の(-)-エナンチオマーおよび(+)-エナンチオマーの何れか一方のエナンチオマーを準備する工程、前記エナンチオマーに上述の一般式(II)で表されるキラル分子を添加して結晶化させ、前記エナンチオマーと前記キラル分子との共結晶を得る工程、得られた共結晶の構造を解析することにより上記エナンチオマーの構造の絶対配置を決定する工程を含む。
【0058】
本発明の態様2に係るトリアゾール誘導体のエナンチオマーの構造決定方法は、本発明の態様1のいずれかの構成に加え、一般式(II)で表されるキラル分子が、上述の一般式(III)で表されるキラル分子である。
【0059】
本発明の態様3に係るトリアゾール誘導体のエナンチオマーの構造決定方法は、本発明の態様1の構成に加え、一般式(I)において、
R1が、-OR4であり;
R2が、ハロゲン基、シアノ基、C1-C4-アルキル基、C1-C4-ハロアルキル基、C1-C4-アルコキシ基、-SOR7または-SF5であり;
R3が、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、C1-C4-アルキル基、C1-C4-ハロアルキル基、C1-C4-アルコキシ基、C1-C4-ハロアルコキシ基、C1-C4-アルキルアミノ基、C1-C4-ジアルキルアミノ基、C1-C4-アルキルアシルアミノ基、-SOR7または-SF5である。
【0060】
本発明の態様4に係るトリアゾール誘導体のエナンチオマーの構造決定方法は、本発明の態様3の構成に加え、一般式(I)において、
R4が、C1-C6-アルキル基であり;
R2が、ハロゲン基、シアノ基、C1-C4-アルキル基、C1-C4-ハロアルキル基またはC1-C4-アルコキシ基であり;
R3が、ハロゲン基、シアノ基、C1-C4-アルキル基、C1-C4-ハロアルキル基、C1-C4-アルコキシ基またはC1-C4-ハロアルコキシ基である。
【0061】
本発明の態様5に係るトリアゾール誘導体のエナンチオマーの構造決定方法は、本発明の態様1~3のいずれかの構成に加え、一般式(II)で表されるキラル分子が、((2S,3S)-1,4-ジオキサスピロ[4.5]デカン-2,3-ジイル)ビス(ジフェニルメタノール)または((2R,3R)-1,4-ジオキサスピロ[4.5]デカン-2,3-ジイル)ビス(ジフェニルメタノール)である。
【0062】
以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。さらに、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された文献の全てが参考として援用される。
【実施例0063】
<実施例1:トリアゾール誘導体(-)-エナンチオマーの構造決定>
特許文献1を参照し、2-(2-クロロ-4-(4-クロロフェノキシフェニル)フェニル)-2-ヒドロキシ-3-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)プロパン酸メチルの(-)-エナンチオマー(以下、化合物1(-)と称する)を得た。
【0064】
化合物1(-)20mgをメタノール3mLに溶解し、そこに((2R,3R)-1,4-ジオキサスピロ[4.5]デカン-2,3-ジイル)ビス(ジフェニルメタノール)24.8mgを添加し、25℃にて白色結晶が析出するまで静置した。析出した白色針状結晶について単結晶X線構造解析を行った。
【0065】
X線結晶構造解析の具体的な測定条件は以下の通りである。
装置:R-AXIS RAPID II diffractometer(株式会社リガク製)
X線源:Cu-Kα
測定温度:93K
Solve:SHELXT
Refinement:SHELXL
【0066】
解析結果(ORTEP図)を
図1に示す。また、析出した結晶のパラメータを以下表1に示す。
図1中、中央部(矢印参照)に化合物1(-)の分子が示されている。単位格子中の化合物1(-)と((2R,3R)-1,4-ジオキサスピロ[4.5]デカン-2,3-ジイル)ビス(ジフェニルメタノール)との比率は1:2であった。これにより、化合物1(-)は、2-(2-クロロ-4-(4-クロロフェノキシフェニル)フェニル)-2-ヒドロキシ-3-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)プロパン酸メチル(R)体であると決定することができた。
【表1】
【0067】
<実施例2:トリアゾール誘導体(+)-エナンチオマーの構造決定>
特許文献1を参照し、2-(2-クロロ-4-(4-クロロフェノキシフェニル)フェニル)-2-ヒドロキシ-3-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)プロパン酸メチルの(+)-エナンチオマー(以下、化合物1(+)と称する)を得た。
【0068】
化合物1(+)20mgをメタノール3mLに溶解し、さらに((2R,3R)-1,4-ジオキサスピロ[4.5]デカン-2,3-ジイル)ビス(ジフェニルメタノール)24.8mgを添加し、25℃にて白色結晶が析出するまで静置した。析出した白色針状結晶について単結晶X線構造解析を行った。
【0069】
X線結晶構造解析の具体的な測定条件は実施例1と同様である。
【0070】
解析結果(ORTEP図)を
図2に示す。また、析出した結晶のパラメータを以下表2に示す。
図2中、中央上部および中央下部(矢印参照)に化合物1(+)の分子が示されている。単位格子中の化合物1(+)と((2R,3R)-1,4-ジオキサスピロ[4.5]デカン-2,3-ジイル)ビス(ジフェニルメタノール)との比率は1:1であった。これにより、化合物1(+)は、2-(2-クロロ-4-(4-クロロフェノキシフェニル)フェニル)-2-ヒドロキシ-3-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)プロパン酸メチル(S)体であると決定することができた。
【表2】
【0071】
<比較例>
使用するキラル分子を((2R,3R)-1,4-ジオキサスピロ[4.5]デカン-2,3-ジイル)ビス(ジフェニルメタノール)に換えて、以下に示す比較キラル分子A~Kの何れかを用いた以外は実施例1および実施例2と同様にして、化合物1(-)および化合物1(+)の結晶化を試みた。しかしながら比較キラル分子A~Kの何れのキラル分子を用いた場合にも、化合物1(-)および化合物1(+)のエナンチオマー構造を決定しうる結晶、ならびに化合物1(-)または化合物1(+)とキラル分子との共結晶は析出しなかった。
・比較キラル分子A:(R)-(+)-1,1-ビ-2-ナフトール
【化8】
・比較キラル分子B:(R)-3,3-ジブロモ-1,1-ビ-2-ナフトール
【化9】
・比較キラル分子C:(R)-2,2,3,3-テトラヒドロ-1,1-スピロビ[インデン]-7,7-ジオール
【化10】
・比較キラル分子D:(R)-(-)-1-フェニルエタン-1,2-ジオール
【化11】
・比較キラル分子E:(R)-1-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エタノール
【化12】
・比較キラル分子F:(3S,4S)-(フェニルメチル)-3,4-ピロリジンジオール
【化13】
・比較キラル分子G:(1R,2R)-N,N-ビス(3,5-ジ-フェルト-ブチルサリシリデン)
【化14】
・比較キラル分子H:(11bR)-4-ヒドロキシ-4-オキシド-ジナフト[2,1-d:1,2-f][1,3,2]ジオキサフォスフェピン
【化15】
・比較キラル分子I:(1R,2R)-1,2-ジフェニルエチレンジアミン
【化16】
・比較キラル分子J:4-フルオロ-L-フェニルアラニン
【化17】
・比較キラル分子K:(R)-(+)-1,1’-ビナフチル-2,2’-ジアミン
【化18】
本発明に係るトリアゾール誘導体のエナンチオマーの構造決定方法は、当該エナンチオマーを有効成分として含む、農園芸用の殺菌剤および工業用材料保護剤の改良に利用することができる。