(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114870
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】走査方法の決定方法
(51)【国際特許分類】
G01S 17/42 20060101AFI20240816BHJP
G01S 7/483 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
G01S17/42
G01S7/483
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024103739
(22)【出願日】2024-06-27
(62)【分割の表示】P 2023001508の分割
【原出願日】2016-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】松田 武浩
(57)【要約】
【課題】計測装置における計測の効率を高める。
【解決手段】計測装置200は計測部202及び制御部204を有する。計測部202は、照射方向を変えながら電磁波を照射して走査を行う。制御部204は、N 回の連続する主走査で合計 M 回電磁波を照射し、前記 N 回の主走査において電磁波の照射タイミングが互いに異なり、各主走査で少なくとも1回電磁波が照射されるように、計測部202を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に設置される計測装置の走査方法の決定方法であって、
前記計測装置は照射方向を変えながら電磁波を照射して走査を行う装置であり、
前記移動体が移動している際に生じる振動の周波数よりも高い周波数を、前記計測装置の主走査の走査周波数として決定し、
決定した前記主走査の走査周波数にて、主走査方向に一列に並んだ複数の画素に対して、複数の連続する主走査の合計で、各画素に1回ずつ電磁波が照射されるように、電磁波の照射タイミングを決定する、走査方法の決定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波を照射して計測を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁波を照射して物体を走査することで障害物などの検出を行う技術が開発されている。特許文献1は、自動車等に設置される装置において、レーザ光を照射して目標領域内でスキャンを行うことで、障害物などの検出を行う技術を開示している。また特許文献1では、自動車の操舵角度に応じて、スキャン領域の横方向の中心軸を変更する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示すような計測装置では、求められる解像度(測定の粒度)以上の粒度で計測が行われることがあり、電力が無駄に消費されるなどの問題がある。
【0005】
本発明は、上述の課題鑑みてなされたものであり、計測装置による計測の効率を高くする技術を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、
移動体に設置される計測装置の走査方法の決定方法であって、
前記計測装置は照射方向を変えながら電磁波を照射して走査を行う装置であり、
前記移動体が移動している際に生じる振動の周波数よりも高い周波数を、前記計測装置の主走査の走査周波数として決定し、
決定した前記主走査の走査周波数にて、主走査方向に一列に並んだ複数の画素に対して、複数の連続する主走査の合計で、各画素に1回ずつ電磁波が照射されるように、電磁波の照射タイミングを決定する、走査方法の決定方法である。
【0007】
第2の発明は、
上記の決定方法で決定された走査方法で、前記計測装置が走査する計測方法である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態1に係る計測装置を例示する図である。
【
図2】一般的な計測装置による揺動走査を概念的に例示する図である。
【
図3】一般的な計測装置による揺動走査の走査範囲を xy 平面について平面視した図である。
【
図4】一般的な計測装置による回転走査を概念的に例示する図である。
【
図5】一般的な計測装置による回転走査の走査範囲を xy 平面に展開して平面視した図である。
【
図7】電磁波のスポットの重なりを例示する図である。
【
図8】本実施形態の計測装置による揺動走査の走査範囲を、xy 平面で平面視した様子を例示する図である。
【
図10】
図9における各電磁波のスポットを例示する図である。
【
図11】本実施形態の計測装置による回転走査の走査範囲を、xy 平面で展開して平面視した様子を例示する図である。
【
図12】
図8で示した計測装置による揺動走査の一部を表す図である。
【
図13】計測装置による回転走査の一部を表す図である。
【
図14】主走査方向の走査周波数を低くした例を示す図である。
【
図15】計測装置によって電磁波が等間隔で照射されるケースを例示する図である。
【
図16】各主走査において最初に電磁波が照射される画素について説明するための図である。
【
図17】各主走査で電磁波が照射される回数の差が1以下であるケースを例示する図である。
【
図18】制御部のハードウエア構成を例示する図である。
【
図19】計測部のハードウエア構成を例示する図である。
【
図20】光を照射する計測部のハードウエア構成を例示する図である。
【
図21】走査器を介さずに反射波が受信される計測装置のハードウエア構成を例示する図である。
【
図23】移動体に設置されている計測装置を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、特に断らない限り、各ブロックは、ハードウエア単位の構成ではなく、機能単位の構成を表している。
【0010】
図1は、実施形態1に係る計測装置200を例示する図である。計測装置200は、計測部202及び制御部204を有する。計測部202は、照射方向を変えながら電磁波を照射し、照射した電磁波の反射波を受信することで、物体を走査する。制御部204は、計測部202による走査を制御する。さらに制御部204は、計測部202によって電磁波が照射されてからその電磁波の反射波が受信されるまでの時間を測定する。この測定結果は、例えば、上記電磁波を反射した物体と計測装置200との距離を把握するため(いわゆる測距)に利用される。計測装置200は、例えばライダ(Lidar:Light Detection and Ranging)センサやミリ波レーダなどである。
【0011】
計測部202は、電磁波の照射方向を、主走査方向と副走査方向という2つの方向について時間と共に変化させることで、物体の走査を行う。副走査方向は主走査方向と交差する方向(例えば主走査方向に略直交する方向)である。
【0012】
電磁波を利用した物体の走査には、例えば、揺動による走査や回転による走査などがある。以下、揺動による走査を揺動走査と呼び、回転による走査を回転走査と呼ぶ。以下、これら2種類の走査について簡単に説明する。
【0013】
図2は、一般的な計測装置60による揺動走査を概念的に例示する図である。
図2において、計測装置60は、円柱形の装置として描かれている。走査範囲300は、計測装置から照射される電磁波が通過しうる範囲を表す。
【0014】
図2(a)は、揺動走査が行われる様子を xz 平面で平面視した図である。
図2(b)は、揺動走査が行われる様子を yz 平面で平面視した図である。例えば計測装置60が自動運転車などの車両に設けられる場合、z 方向は車両の進行方向であり、y 方向は鉛直方向であり、x 方向は y 方向及び z 方向の双方に直交する方向である。
【0015】
揺動走査では、電磁波の照射方向を主走査方向及び副走査方向に揺動させる。ただし、副走査方向について電磁波の照射方向が1回揺動される間に、主走査方向について電磁波の照射方向が複数回揺動される。言い換えれば、主走査方向の揺動の周波数が、副走査方向の揺動の周波数より高い。
【0016】
図3は、一般的な計測装置60による揺動走査の走査範囲300を xy 平面について平面視した図である。軌跡302は、計測装置から照射される電磁波の照射方向の変化を表す。
【0017】
一般に、計測装置は、間欠的に電磁波を照射する。
図3のバツ印は、計測装置から照射された電磁波が通過する位置を表す。言い換えれば、
図3のバツ印は、計測装置から電磁波が照射されるタイミングを表す。なお、計測装置による電磁波の照射は、主走査方向への走査(軌跡302の実線部分)において行われる。ここで以下、揺動走査については、電磁波の照射方向を主走査方向について1回揺動する間に行われる走査を、「1回の主走査」又は「1ラインの主走査」と呼ぶ。
【0018】
図4は、一般的な計測装置60による回転走査を概念的に例示する図である。
図4(a)は、回転走査が行われる様子を xz 平面で平面視した図である。
図4(b)は、回転走査が行われる様子を yz 平面で平面視した図である。
【0019】
回転走査では、電磁波の照射方向を、主走査方向について一方向に変化させ(回転させ)、なおかつ副走査方向に揺動させる。ただし、副走査方向について電磁波の照射方向が1回揺動される間に、主走査方向について電磁波の照射方向が複数回回転される。言い換えれば、主走査方向の回転の周波数が、副走査方向の揺動の周波数より高い。
【0020】
図5は、一般的な計測装置60による回転走査の走査範囲300を xy 平面に展開して平面視した図である。前述したように、回転走査における電磁波の照射方向は、主走査方向について一方向に変化する。ここで、回転走査については、主走査方向について電磁波の照射方向が360度変化する間に行われる走査を、「1回の主走査」又は「1ラインの主走査」と呼ぶ。
【0021】
揺動走査と回転走査いずれについても、計測装置60は、軌跡302によって表される走査を繰り返し行う。つまり、電磁波の照射方向が軌跡302の終点に達すると、再度電磁波の照射方向が軌跡302の始点に再度設定される。
【0022】
図3及び
図5の走査範囲300において、格子状に区切られた領域である画素304は、計測装置60に求められる解像度(計測の粒度)を表している。すなわち計測装置60は、走査範囲300における各画素304に対し、少なくとも一回電磁波を照射することが求められている。
【0023】
図3及び
図5に示すように、一般的な計測装置60では、複数の主走査それぞれにおいて同じタイミング(各画素304を通過するタイミング)で電磁波が照射される。さらに、1つの画素304に対して電磁波が照射されうる主走査が複数ある。その結果、1つの画素304に対して電磁波が複数回照射される。
図6は、
図3から軌跡302を除いた図である。
図6を見ると、各画素304に対して電磁波が4回ずつ照射されていることが分かる。
【0024】
なお、計測装置から照射される電磁波のスポットの大きさは、例えば、画素304の大きさに合わせて設定される。そのため、1つの画素304に対して複数回電磁波が照射されることは、複数の電磁波のスポットの一部が互いに重なり合うことを意味する。つまり、計測装置によって同じ場所が複数回走査されていることを意味する。
【0025】
図7は、電磁波のスポットの重なりを例示する図である。
図7では、左上端の画素304に対して照射された電磁波のスポット306が示されている。この図から分かるように、複数の電磁波のスポット306の一部が互いに重なりあっている。
【0026】
このように、一般的な計測装置では、求められる解像度以上の解像度で走査が行われている。言い換えれば、計測装置による走査において、必要以上に多くの電磁波が照射されている。その結果、計測装置が必要以上に電力を消費している。また、計測装置の各種の機構(例えば光源など)が必要以上に消耗しており、計測装置の寿命を短くしてしまっている。
【0027】
そこで本実施形態の計測装置200は、計測装置200に求められる解像度を満たすために必要十分な回数の電磁波を照射する。言い換えれば、本実施形態の制御部204は、計測装置200に求められる解像度を表す各画素に対して電磁波が1回ずつ照射されるように、計測部202による電磁波の照射を制御する。
【0028】
こうすることで、本実施形態の計測装置200によれば、計測装置200に求められる解像度を満たすために必要十分な回数の電磁波が照射される。よって、一般的な計測装置と比較し、計測装置200の消費電力が削減される。また、計測装置200の各種の機構(例えば光源)の消耗が少なくすることができるため、計測装置200の寿命を長くすることができる。
【0029】
図8は、本実施形態の計測装置200による揺動走査の走査範囲を、xy 平面で平面視した様子を例示する図である。走査範囲220、軌跡222、画素224の意味はそれぞれ、
図3の走査範囲300、軌跡302、画素304と同様である。
【0030】
図8では、
図3のケースと同様に、1つの画素(画素224)に対して電磁波が照射されうる主走査が4つある。しかし計測部202は、1つの画素224に対して電磁波を照射しうる4つの主走査のうち、いずれか1つの主走査でのみ、電磁波を照射している。
【0031】
図9は、
図8から軌跡222を除いた図である。
図9を見ると分かるように、本実施形態の計測装置200では、各画素224に対して電磁波が照射される回数が1回である。
【0032】
図10は、
図9における各電磁波のスポットを例示する図である。この例では、電磁波のスポットが画素224の大きさに合わせて設定されている。
図10を見ると分かるように、本実施形態の計測装置200では、全ての画素224をスポットが通過しつつ、スポット同士が重なっていない。よって、計測装置200によって同じ場所が複数回スキャンされるということがない。
【0033】
図9及び
図10から、
図8に示すように電磁波を照射することで、計測装置200に求められる解像度を満たすために必要十分な回数の電磁波が照射されていることが分かる。
【0034】
本実施形態の計測装置200が行う走査は、回転走査であってもよい。
図11は、本実施形態の計測装置200による回転走査の走査範囲を、xy 平面で展開して平面視した様子を例示する図である。
図8のケースと同様に、計測部202は、1つの画素224に対して電磁波を照射しうる4つの主走査のうち、いずれか1つの主走査でのみ、電磁波を照射している。
【0035】
本実施形態の制御部204による具体的な制御は、以下の第1及び第2の要件を満たす。第1の要件は、「計測部202が、連続する N 回の主走査において、合計 M 回電磁波を照射する」という要件である。第2の要件は、「上記連続する N 回の主走査それぞれにおいて、計測部202から電磁波が照射されるタイミングが互いに異なる」という要件である。M は、連続する N 回の主走査において計測装置200に求められる解像度の画素数である。例えば
図8では、連続する 4 回の主走査において画素224の数が8である。よって
図8では、N=4 かつ M=8 である。
【0036】
ここで、N と M の具体的な定義は、例えば以下で説明するような定義となる。
図12は、
図8で示した計測装置200による揺動走査の一部を表す図である。A は、副走査方向の1画素の幅(画素224の高さ)を表す。B は、主走査方向の1画素の幅(画素224の横幅)を表す。X は、走査範囲220の横幅を表す。dy は、副走査方向の走査間隔を表す。
【0037】
N は、1つの画素224に対して電磁波を照射しうる主走査の数である。例えば
図8において、N の値は4である。具体的には、N は、A/dy 以下の最大の整数、又はA/dy 以上の最小の整数である。以下では、N が A/dy 以下の最大の整数であるとする。
【0038】
M は、走査範囲220において主走査方向に含まれる画素224の数(連続する N 回の主走査において計測装置200に求められる解像度の画素数)である。例えば
図8において、M の値は8である。具体的には、M は X/B 以上の最小の整数、又は X/B 以下の最大の整数である。以下では、M が X/B 以上の最小の整数であるとする。
【0039】
上述した各記号の意味は、計測装置200が回転走査を行うケースについても同様である。
図13は、計測装置200による回転走査の一部を表す図である。
図13における各記号の意味は、
図12における各記号の意味と同じである。
【0040】
前述した第1の要件を満たすように電磁波が照射されると、走査範囲220の1つの行に含まれる M 個の画素224に対して電磁波を照射しうる複数の走査(連続する N 回の走査)において、M 回の電磁波が照射される。そして、第1の要件に加えて第2の要件も満たすように電磁波が照射されることにより、走査範囲220の1つの行に含まれる M 個の画素224それぞれに対して、1回ずつ電磁波が照射されることとなる。
【0041】
このように、本実施形態の計測装置200によれば、計測装置200に求められる解像度を満たすために必要十分な回数の電磁波が照射される。よって、一般的な計測装置と比較し、計測装置200の消費電力が削減される。また、計測装置200の各種の機構(例えば光源)の消耗が少なくすることができるため、計測装置200の寿命を長くすることができる。
【0042】
ここで、1つの画素に対して電磁波が照射される回数を1回にするための制御としては、主走査方向の走査の頻度を少なくする(主走査方向の走査の周波数を低くする)ことが考えられる。
図14は、主走査方向の走査周波数を低くした例を示す図である。この例では、
図3や
図8のケースと比較し、主走査方向の走査周波数が 1/4 となっており、各画素304を通過する主走査が1回のみである。よって、画素304を通過する全てのタイミングで計測装置が電磁波を照射しても、各画素304に対して電磁波が照射される回数は1回である。
【0043】
しかしこの方法には、計測装置が周囲の振動の影響を受けやすくなるという問題点がある。ライダセンサやミリ波レーダなどの計測装置は、例えば、自動運転車などの移動体に設置される。そのため、移動体が移動している際に生じる種々の振動が、計測装置にも伝わることになる。
【0044】
このような周囲の振動の影響を小さくするためには、計測装置において主走査方向の走査周波数をある程度高くすることで、主走査方向の走査周波数と、他の振動の周波数との乖離を大きくすることが好適である。この点、本実施形態の計測装置200では、主走査方向の走査周波数がある程度高く(前述した N が2以上であり)、なおかつ1つの画素224に対して電磁波が照射される回数が1回となる。よって、(1)電磁波が照射される回数を、計測装置200に要求される解像度を満たすことができる必要十分な回数としつつ、(2)計測装置200による走査が、計測装置200の周囲などで発生する振動を受けにくい。
【0045】
ここで、各主走査における電磁波の照射タイミングは、等間隔であってもよいし、等間隔でなくてもよい。
図15は、各主走査において電磁波が等間隔で照射されるケースを例示する図である。
図15では、1行目から4行目の主走査いずれにおいても、「4つの画素224ごとに1つ」という間隔で電磁波が照射されている。
【0046】
なお、連続する N 回の各主走査において電磁波が照射される画素224を異ならせるために、制御部204は、連続する N 回の各主走査において最初に電磁波が照射される画素224を異なるものにする。例えば
図8や
図15では、電磁波の照射方向が走査範囲220の下の行へ移動するごとに、最初に電磁波が照射される画素224の位置を1つ右の画素224へずらしている。具体的には、
図15において、1行目の主走査において最初に電磁波が照射される画素224は、左から1番目の画素224である。一方、2行目の主走査において最初に電磁波が照射される画素224は、左から2番目の画素224である。
【0047】
しかし、各主走査において最初に電磁波が照射される画素224を異なるものにする方法は、上述した「1行下へ移動するごとに1つ右へずらす」という方法に限定されない。
図16は、各主走査において最初に電磁波が照射される画素224について説明するための図である。
図16において、1行目から4行目の主走査において最初に電磁波が照射される画素224はそれぞれ、左から1番目、左から3番目、左から2番目、及び右から4番目の画素224となっている。
【0048】
各主走査で電磁波が照射される回数は、同一であってもよし、同一でなくてもよい。前者の場合、各主走査で照射される電磁波の回数は M/N である。前述した
図8のケースでは、各主走査において電磁波が照射される回数が同一(2回)となっている。
【0049】
なお、M/N が整数でない場合もありうる。この場合、制御部204は、各主走査で電磁波が照射される回数を同一にする代わりに、各主走査で電磁波が照射される回数の差を1以下とする。言い換えれば、制御部204は、各主走査で電磁波が照射される回数を M/N 以上の最小の整数及び M/N 以下の最大の整数のうちのいずれか一方とする。
【0050】
図17は、各主走査で電磁波が照射される回数の差が1以下であるケースを例示する図である。この例では、1つの画素224に対して電磁波を照射しうる主走査の数が4である(N=4)。また、走査範囲220の1行に含まれる画素304の数が7つである(M=7)。そこで計測部202は、1行目から3行目の主走査では2回ずつ電磁波を照射し、なおかつ4行目の主走査では1回電磁波を照射している。
【0051】
<計測装置200のハードウエア構成の例>
計測装置200の各機能構成部は、各機能構成部を実現するハードウエア(例:ハードワイヤードされた電子回路など)で実現されてもよいし、ハードウエアとソフトウエアとの組み合わせ(例:電子回路とそれを制御するプログラムの組み合わせなど)で実現されてもよい。以下、計測装置200の各機能構成部がハードウエアとソフトウエアとの組み合わせで実現される場合について、さらに説明する。
【0052】
<<制御部204のハードウエア構成の例>>
図18は、制御部204のハードウエア構成を例示する図である。集積回路100は、制御部204を実現する集積回路である。例えば、集積回路100は SoC(System On Chip)である。
【0053】
集積回路100は、バス102、プロセッサ104、メモリ106、ストレージデバイス108、入出力インタフェース110、及びネットワークインタフェース112を有する。バス102は、プロセッサ104、メモリ106、ストレージデバイス108、入出力インタフェース110、及びネットワークインタフェース112が、相互にデータを送受信するためのデータ伝送路である。ただし、プロセッサ104などを互いに接続する方法は、バス接続に限定されない。プロセッサ104は、マイクロプロセッサなどを用いて実現される演算処理装置である。メモリ106は、RAM(Random Access Memory)などを用いて実現される主記憶装置である。ストレージデバイス108は、ROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリなどを用いて実現される補助記憶装置である。
【0054】
入出力インタフェース110は、集積回路100を周辺デバイスと接続するためのインタフェースである。
図18において、入出力インタフェース110には照射器の駆動回路30及び走査器の駆動回路32が接続されている。照射器の駆動回路30及び走査器の駆動回路32については後述する。
【0055】
ネットワークインタフェース112は、集積回路100を通信網に接続するためのインタフェースである。この通信網は、例えば CAN(Controller Area Network)通信網である。なお、ネットワークインタフェース112が通信網に接続する方法は、無線接続であってもよいし、有線接続であってもよい。
【0056】
ストレージデバイス108は、制御部204の機能を実現するためのプログラムモジュールを記憶している。プロセッサ104は、このプログラムモジュールをメモリ106に読み出して実行することで、制御部204の機能を実現する。
【0057】
集積回路100のハードウエア構成は
図18に示した構成に限定されない。例えば、プログラムモジュールはメモリ106に格納されてもよい。この場合、集積回路100は、ストレージデバイス108を備えていなくてもよい。
【0058】
<<計測部202のハードウエア構成例>>
図19は、計測部202のハードウエア構成を例示する図である。計測部202は、照射器10、走査器12、照射器の駆動回路30、走査器の駆動回路32、及び受信器50を有する。照射器10は、物体の走査に用いる電磁波を照射する。走査器12は、照射器10から照射された電磁波の進行方向を、所望の方向へ変更する。このように、照射器10及び走査器12により、計測部202は、計測部202の外部の様々な場所へ電磁波を照射することができる。走査器12によって進行方向が変更された電磁波は、計測装置200の外部へ照射される。
【0059】
計測装置200の外部において物体により反射された電磁波(以下、反射波)は、計測装置200の内部に入射した後、走査器12によって進行方向を変更される。受信器50は、走査器12によって進行方向が変更された反射波を受信する。
【0060】
照射器の駆動回路30は、照射器10を駆動させる回路である。より具体的には、照射器の駆動回路30は、電磁波を照射する機構(例えば光源)を駆動する回路を有する。走査器の駆動回路32は、走査器12を駆動させる回路である。より具体的には、走査器の駆動回路32は、電磁波の照射方向を変更する機構(例えばミラー)を駆動する回路を有する。
【0061】
制御部204は、受信器50によって反射波が受信されたことを検出する。例えば受信器50は、反射波を受信したことに応じて制御部204へ所定の信号を送信するように構成される。制御部204は、この所定の信号を受信することにより、受信器50によって反射波が受信されたことを検出する。
【0062】
制御部204は、照射器10から電磁波が照射されてからその電磁波の反射波が受信器50によって受信されるまでの経過時間を計測し、その計測時間を電磁波の照射方向(電磁波の照射タイミング)と対応づけて記憶装置(例えばストレージデバイス108)に記憶させる。この経過時間は、例えば照射器10から電磁波が照射されてからその電磁波の反射波が受信されるまでの間にカウントされたクロック信号の数にクロック周期を乗算した値で表される。また例えば、この経過時間は、上記カウントされたクロック信号の数で表されてもよい。この経過時間に基づいて、例えば、走査された物体と計測装置200との距離を算出することができる。
【0063】
照射器10によって照射される電磁波は、レーザ光などの光であってもよいし、ミリ波などの電波であってもよい。以下、照射器10が光を照射する場合における計測部202のハードウエア構成について例示する。照射器10が電磁波を照射する場合の計測部202についても、同様の構成を採用することが可能である。
【0064】
図20は、光を照射する計測部202のハードウエア構成を例示する図である。
図20の光源14、可動反射部16、光源の駆動回路36、及び可動反射部の駆動回路34はそれぞれ、
図19における照射器10、走査器12、照射器の駆動回路30、及び走査器の駆動回路32の一例である。
【0065】
光源14は、光を照射する任意の光源である。光源の駆動回路34は、光源14への電力の供給を制御することによって光源14を駆動させる回路である。光源14によって照射される光は、例えばレーザ光である。この場合、例えば光源14は、レーザ光を照射する半導体レーザである。
【0066】
可動反射部16は、光源14から照射された光を反射することで、光源14から照射された光の進行方向を変更する。可動反射部16によって反射された光は、計測装置200の外部へ照射される。また可動反射部16は、計測装置200の外部において物体により反射された光(以下、反射光)の進行方向を変更する。
【0067】
可動反射部の駆動回路36は、可動反射部16を駆動させる回路である。可動反射部16は、例えば2軸方向それぞれに回転可能なように構成されている1つのミラーを有する。
上記2軸はそれぞれ、光の照射方向を主走査方向について変更するための第1軸、及び光の照射方向を副走査方向について変更するための第2軸である。上記ミラーは、例えば MEMS(Micro Electro Mechanical System)ミラーである。
【0068】
可動反射部16の構成は、
図20に示す構成に限定されない。例えば可動反射部16は、回転軸が互いに交わる2つのミラーで構成されていてもよい。この2つのミラーの回転軸はそれぞれ、上記第1軸及び第2軸である。
【0069】
光源の駆動回路34及び可動反射部の駆動回路36の動作は、制御部204によって制御される。具体的には、制御部204は、光源の駆動回路34に対し、光源14の駆動を指示する駆動信号を送信する。この駆動信号は、例えばストレージデバイス108から読み出される。光源の駆動回路34は、受信した駆動信号に基づいて、光源14を駆動させる。例えば駆動信号がハイとローという2値で構成されるパルス信号である場合、光源の駆動回路34は、パルス信号がローからハイに変化するタイミングで光源14を駆動させる(光源14から光を照射させる)。
【0070】
同様に、制御部204は、可動反射部の駆動回路36に対し、可動反射部16の駆動を指示する駆動信号を送信する。この駆動信号も、例えばストレージデバイス108から読み出される。可動反射部の駆動回路36は、この駆動信号に基づいて、可動反射部16の姿勢を制御する。この制御により、光の照射方向が制御される。例えば光の照射方向は、
図8の軌跡222のように制御される。
【0071】
さらに計測部202は、受光器52を有する。受光器52は、
図19における受信器50の一例である。例えば受光器52は、APD(Avalanche Photodiode)を用いて構成される。受光器52は、可動反射部16によって進行方向が変更された反射光を受光する。
【0072】
なお、計測部202の構成は
図19や
図20に示す構成に限定されない。例えば
図19において、計測部202は、物体によって反射された反射波が、走査器12を介して受信器50に受信されるように構成されている。しかし、物体によって反射された反射波は、走査器12を介さずに受信器50に受信されてもよい。
図21は、走査器12を介さずに反射波が受信される計測装置200のハードウエア構成を例示する図である。
【0073】
その他にも例えば、
図19において、計測部202は、照射器10から照射された電磁波の進行方向を走査器12によって変更することにより、様々な方向へ電磁波を照射できるように構成されている。しかし、様々な方向へ電磁波を照射する構成は、
図19に示す構成に限定されない。例えば、照射器10自体が、上述の2軸それぞれに回転する機構を有していてもよい。この場合、計測部202は、照射器10の姿勢を制御することによって様々な方向へ光を照射できる。またこの場合、計測部202は、走査器12及び走査器の駆動回路32を有さなくてもよい。さらにこの場合、照射器の駆動回路30は、照射器10に電磁波を照射させる駆動回路と、照射器10の姿勢を変更する駆動回路とを含む。
【0074】
なお、制御部204を実現するハードウエア(
図18参照)と計測部202を実現するハードウエア(
図19や
図20参照)は、同一の筐体にパッケージされていてもよいし、別々の筐体にパッケージされていてもよい。
【0075】
<計測部202が電磁波を照射するタイミングを制御する方法>
計測装置200から電磁波が照射されるタイミングは、光源の駆動回路34に対して送信する駆動信号(以下、光源駆動信号)によって制御できる。そこで、前述した第1の要件及び第2の要件を満たすように計測部202が制御される光源駆動信号を予め生成しておく。この光源駆動信号は、例えばストレージデバイス108に記憶させておく。制御部204は、この光源駆動信号をストレージデバイス108から読み出し、光源の駆動回路34へ送信する。こうすることで、上記第1の要件及び第2の要件を満たすように、計測部202が制御される。光源駆動信号の生成は、例えば計測装置200の運用開始前(例えば計測装置200の出荷前)に行っておく。
【0076】
図22は、光源駆動信号を例示する図である。
図22(a)及び
図22(b)の双方において、グラフは光源駆動信号を表している。また、グラフの矢印は、光源駆動信号の値が0から1に変化する箇所(パルス)を表している。光源は、この矢印のタイミングで電磁波を照射する。グラフの上には、光源駆動信号によって制御される計測装置による走査の軌跡が示されている。
【0077】
図22(a)は、
図2に示した一般的な計測装置による走査を実現する光源駆動信号を表している。これに対し、
図22(b)は、
図8に示した本実施形態の計測装置200による走査を実現する光源駆動信号を表している。
【0078】
<計測装置200の設置例>
計測装置200は、例えば自動車や電車などの移動体に設置される。
図23は、移動体に設置されている計測装置200を例示する図である。
図23において、計測装置200は、移動体240の上部に固定されている。また、計測装置200は制御装置244と接続されている。制御装置244は、移動体240を制御する制御装置である。例えば制御装置244は、ECU(Electronic Control Unit)である。
【0079】
ここで制御部204は、移動体240を制御する制御装置244の一部として実現されてもよい。この場合、制御装置244が有するストレージデバイスに、前述した制御部204を実現するプログラムモジュールが記憶される。
【0080】
なお、計測装置200が設置される場所は移動体240の上部に限定されない。例えば計測装置200は、移動体240の内部(例えば室内)に設置されてもよい。また計測装置200は、移動しない物体に設置されてもよい。
【0081】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記各実施形態の組み合わせ、又は上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記各実施形態の組み合わせ、又は上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、参考形態の例を付記する。
1.
照射方向を変えながら電磁波を照射して走査を行う計測部と、
N 回の連続する主走査で合計 M 回電磁波を照射し、前記 N 回の主走査において電磁波の照射タイミングが互いに異なり、各主走査で少なくとも1回電磁波が照射されるように、前記計測部を制御する制御部と、を有する計測装置。
2.
前記 M は、前記 N 回の連続する主走査において求められる解像度の画素数である、1.に記載の計測装置。
3.
副走査方向の走査間隔を dy とし、前記副走査方向の1画素の幅を A とすると、前記 N は、A/dy 以下の最大の整数及び A/dy 以上の最小の整数のいずれか一方であり、
主走査方向のスキャン範囲の幅を X とし、前記主走査方向の1画素の幅を B とすると、前記 M は、X/B 以上の最小の整数及び X/B 以下の最大の整数のいずれか一方である、1.又は2.に記載の計測装置。
4.
前記制御部は、各主走査において電磁波を等間隔に照射させる、1.~3.の何れか一つに記載の制御装置。
5.
前記制御部は、前記 N 回の主走査それぞれにおける電磁波の照射回数を、M/N 以上の最小の整数及び M/N 以下の最大の整数のうちのいずれか一方とする、1.~4.の何れか一つに記載の制御装置。
6.
照射方向を変えながら電磁波を照射して走査を行う計測装置をコンピュータが制御する制御方法であって、
N 回の連続する主走査で合計 M 回電磁波を照射し、前記 N 回の主走査において電磁波の照射タイミングが互いに異なり、各主走査で少なくとも1回電磁波が照射されるように、前記計測装置を制御する、制御方法。
【符号の説明】
【0082】
10 照射器
12 走査器
14 光源
16 可動反射部
30 照射器の駆動回路
32 走査器の駆動回路
34 光源の駆動回路
36 可動反射部の駆動回路
50 受信器
52 受光器
100 集積回路
102 バス
104 プロセッサ
106 メモリ
108 ストレージデバイス
110 入出力インタフェース
112 ネットワークインタフェース
200 計測装置
202 計測部
204 制御部
220 走査範囲
222 軌跡
224 画素
240 移動体
244 制御装置
300 走査範囲
302 軌跡
304 画素
306 スポット