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特開2024-114874空気圧制御装置、空気圧回路及びブレーキ制御システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114874
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】空気圧制御装置、空気圧回路及びブレーキ制御システム
(51)【国際特許分類】
   B60T 17/18 20060101AFI20240816BHJP
   B60T 7/14 20060101ALI20240816BHJP
   B60T 15/36 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
B60T17/18
B60T7/14
B60T15/36 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024103788
(22)【出願日】2024-06-27
(62)【分割の表示】P 2021519507の分割
【原出願日】2020-05-15
(31)【優先権主張番号】P 2019092731
(32)【優先日】2019-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】510063502
【氏名又は名称】ナブテスコオートモーティブ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106781
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 稔也
(72)【発明者】
【氏名】松原 健一
(72)【発明者】
【氏名】松家 伸成
(57)【要約】
【課題】既存車両にも後付けが容易である異常時対応用の空気圧制御装置、空気圧回路及びブレーキ制御システムを提供する。
【解決手段】圧力制御モジュール20は、車両のエアタンクに接続する第1ポートP1、ブレーキ操作が行われた場合に空気圧信号を出力するブレーキバルブに接続する第2ポートP2、空気圧信号に基づき車輪に制動力を加えるブレーキ機構に接続する第3ポートP3を有し、第2ポートP2から第3ポートP3に空気を連通する第1連通状態と、第1ポートP1から第3ポートP3に空気を連通する第2連通状態とを切り替える空気圧回路22と、運転者の異常を示す異常信号に基づいて空気圧回路22を第1連通状態から第2連通状態に切り替えるサブECU32とを備える。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のエアタンクに接続する第1ポート、ブレーキ操作が行われた場合に空気圧信号を出力するブレーキバルブに接続する第2ポート、前記空気圧信号に基づき車輪に制動力を加えるブレーキ機構に接続する第3ポートを有し、前記第2ポートから前記第3ポートに空気を供給する第1連通状態と、前記第1ポートから前記第3ポートに空気を供給する第2連通状態との間で切り替えられる空気圧回路と、
運転者の異常を示す異常信号に基づいて前記空気圧回路を前記第1連通状態から前記第2連通状態に切り替える制御部と、を備える
空気圧制御装置。
【請求項2】
前記制御部を収容するケースと、前記第1ポート、前記第2ポート及び前記第3ポート、並びに前記第1ポート、前記第2ポート及び前記第3ポートを連通する流路が設けられ且つ前記ケースに連結するボディとを有する
請求項1に記載の空気圧制御装置。
【請求項3】
前記空気圧回路は圧力センサを備え、
車速情報を取得するとともに、前記車速情報と目標値とを比較して目標圧力を算出する第1制御部と、
前記圧力センサの検出値を前記目標圧力に近づけるように前記空気圧回路を制御する第2制御部とを備える
請求項1又は2に記載の空気圧制御装置。
【請求項4】
前記第1制御部は、前記異常信号が入力された後の所定期間において、前記車両の減速度が第1目標減速度に近づくように前記目標圧力を算出し、前記所定期間が経過した後に、前記車両の減速度が前記第1目標減速度よりも絶対値が大きい第2目標減速度に近づくように前記目標圧力を算出する
請求項3に記載の空気圧制御装置。
【請求項5】
前記空気圧回路は、
前記エアタンクに接続された空気圧駆動式の空気圧駆動弁と、
前記空気圧駆動弁に空気圧を加えるための電磁弁と、
前記第2ポート側と前記空気圧駆動弁側とのうち圧力が高い方からの空気の流れを許容する方向切換弁とを備え、
前記空気圧駆動弁は、前記電磁弁によって加えられる空気圧に応じて、前記方向切換弁側に空気を供給する供給状態と、前記方向切換弁側の空気を排出する排気状態とを切り替える
請求項1~4のいずれか1項に記載の空気圧制御装置。
【請求項6】
前記電磁弁は、前記空気圧駆動弁に空気圧を印加するための通路を連通する吸気用電磁弁と、前記通路内の空気を排出可能な排気用電磁弁とからなる
請求項5に記載の空気圧制御装置。
【請求項7】
運転者の異常を示す異常信号に基づいて駆動される空気圧回路であって、
車両のエアタンクに接続された空気圧駆動式の空気圧駆動弁と、
前記空気圧駆動弁に空気圧を加えるための電磁弁と、
ブレーキ操作が行われた場合に空気圧信号を出力するブレーキバルブに接続するポート側と前記空気圧駆動弁側とのうち圧力が高い方からの空気の流れを許容する方向切換弁とを備え、
前記空気圧駆動弁は、前記電磁弁によって加えられる空気圧に応じて、前記エアタンクから前記方向切換弁側に空気を供給する供給状態と、前記方向切換弁側の空気を排出する排気状態とを切り替える
空気圧回路。
【請求項8】
車両のブレーキ制御システムにおいて、
運転者のブレーキ操作に基づいて、車輪に制動力を加えるブレーキ駆動部を制御するブレーキ制御回路と、
前記運転者の異常を検出する検出部と、
前記運転者の異常時に前記ブレーキ駆動部を制御し、前記ブレーキ制御回路とは別体の回路を含む異常時ブレーキ制御回路と、
前記検出部から出力された前記運転者の異常を示す異常信号に基づいて所定の減速度で前記車両が減速するように前記異常時ブレーキ制御回路を作動させる制御部とを有する
ブレーキ制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気圧制御装置、空気圧回路及びブレーキ制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
運転者の体調急変等により、運転中に急に運転者が安全運転を継続できなくなった場合に、緊急措置として、運転者以外の乗員の操作により車両を停止させるシステムのガイドラインが策定されている(例えば、非特許文献1参照)。また、このガイドラインに沿って、各種のブレーキシステム等が提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】ドライバー異常時対応システム(減速停止型)基本設計書、平成28年3月、国土交通省自動車局先進安全自動車推進検討会
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既に提案されているブレーキシステムの多くは、EBS(Electronically controlled Brake System、電子制御ブレーキシステム)を搭載する新車への適用が想定されたものである。このため、ブレーキ機構への命令系統を空気圧で制御する車両であって、特に既に使用されている使用過程車両(既存車両)等の異常時対応については、適用が遅れているのが実情である。
【0005】
本開示の目的は、使用過程車両にも容易に取り付けることができる異常時対応用の空気圧制御装置、空気圧回路及びブレーキ制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、上記課題を解決する空気圧制御装置は、車両のエアタンクに接続する第1ポート、ブレーキ操作が行われた場合に空気圧信号を出力するブレーキバルブに接続する第2ポート、前記空気圧信号に基づき車輪に制動力を加えるブレーキ機構に接続する第3ポートを有し、前記第2ポートから前記第3ポートに空気を供給する第1連通状態と、前記第1ポートから前記第3ポートに空気を供給する第2連通状態との間で切り替えられる空気圧回路と、運転者の異常を示す異常信号に基づいて前記空気圧回路を前記第1連通状態から前記第2連通状態に切り替える制御部とを備える。
【0007】
上記空気圧制御装置は、前記制御部を収容するケースと、前記第1ポート、前記第2ポート及び前記第3ポート及びそれらのポートを連通する流路が設けられ且つ前記ケースに連結するボディとを有してよい。
【0008】
上記空気圧制御装置は、車速情報を取得するとともに、前記車速情報と目標値とを比較して目標圧力を算出する第1制御部と、前記圧力センサの検出値を前記目標圧力に近づけるように前記空気圧回路を制御する第2制御部とを備えてよい。
【0009】
上記空気圧制御装置について、前記第1制御部は、前記異常信号が入力された後の所定期間において、前記車両の減速度が第1目標減速度に近づくように前記目標圧力を算出し、前記所定期間が経過した後に、前記車両の減速度が前記第1目標減速度よりも絶対値が大きい前記第2目標減速度に近づくように前記目標圧力を算出してよい。
【0010】
上記空気圧制御装置について、前記空気圧回路は、前記エアタンクに接続された空気圧駆動式の空気圧駆動弁と、前記空気圧駆動弁に空気圧を加えるための電磁弁と、前記第2ポート側と前記空気圧駆動弁側とのうち圧力が高い方からの空気の流れを許容する方向切換弁とを備えてよく、前記空気圧駆動弁は、前記電磁弁によって加えられる空気圧に応じて、前記方向切換弁側に空気を供給する供給状態と、前記方向切換弁側の空気を排出する排気状態とを切り替えてよい。
【0011】
上記空気圧制御装置について、前記電磁弁は、前記空気圧駆動弁に空気圧を印加するための通路を連通する吸気用電磁弁と、前記通路内の空気を排出可能な排気用電磁弁とからなってよい。
【0012】
別の態様では、上記課題を解決する空気圧回路は、運転者の異常を示す異常信号に基づいて駆動される空気圧回路であって、車両のエアタンクに接続された空気圧駆動式の空気圧駆動弁と、前記空気圧駆動弁に空気圧を加えるための電磁弁と、ブレーキ操作が行われた場合に空気圧信号を出力するブレーキバルブに接続するポート側と前記空気圧駆動弁側とのうち圧力が高い方からの空気の流れを許容する方向切換弁とを備え、前記空気圧駆動弁は、前記電磁弁によって加えられる空気圧に応じて、前記エアタンクから前記方向切換弁側に空気を供給する供給状態と、前記方向切換弁側の空気を排出する排気状態とを切り替える。
【0013】
別の態様では、上記課題を解決する車両のブレーキ制御システムは、車両のブレーキ制御システムにおいて、運転者のブレーキ操作に基づいて、車輪に制動力を加えるブレーキ駆動部を制御するブレーキ制御回路と、前記運転者の異常を検出する検出部と、前記運転者の異常時に前記ブレーキ駆動部を制御し、前記ブレーキ制御回路とは別体の回路を含む異常時ブレーキ制御回路と、前記検出部から出力された前記運転者の異常を示す異常信号に基づいて所定の減速度で前記車両が減速するように前記異常時ブレーキ制御回路を作動させる制御部とを有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態における空気圧制御装置圧制御装置を含む空気圧ブレーキシステムの全体構成を示す概略図。
図2】同実施形態の空気圧制御装置の外観を示す斜視図。
図3】同実施形態の空気圧制御装置の外観を示す正面図。
図4】同実施形態の空気圧制御装置の外観を示す平面図。
図5】同実施形態の空気圧制御装置の外観を示す左側の側面図。
図6】同実施形態の空気圧制御装置の外観を示す右側の側面図。
図7】同実施形態の空気圧制御装置の外観を示す底面図。
図8】同実施形態の空気圧制御装置の外観を示す背面図。
図9】同実施形態の異常時対応システムの概略図。
図10】同実施形態の空気圧回路であって、ブレーキバルブをブレーキ機構に連通する第1連通状態における空気圧回路の回路図。
図11】エアタンクをブレーキ機構に連通する第2連通状態における図10の空気圧回路の回路図。
図12】同実施形態の異常時対応システムの処理手順を示すフローチャート。
図13】同実施形態の異常時対応システムの処理手順を示すフローチャート。
図14】空気圧制御装置の変形例について、空気圧制御装置を含む空気圧ブレーキシステムの一部を示す概略図。
図15】空気圧制御装置の変形例について、空気圧制御装置を含む空気圧ブレーキシステムの一部を示す概略図。
図16】空気圧制御装置が第1ケース部材及び第2ケース部材からなるケースを備える変形例における空気圧制御装置の外観を示す斜視図。
図17図16の空気圧制御装置の外観を示す正面図。
図18図16の空気圧制御装置の外観を示す平面図。
図19図16の空気圧制御装置の外観を示す左側の側面図。
図20図16の空気圧制御装置の外観を示す右側の側面図。
図21図16の空気圧制御装置の外観を示す底面図。
図22図16の空気圧制御装置の外観を示す背面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、空気圧制御装置、及び空気圧制御装置に設けられる空気圧回路の一実施形態について説明する。なお、空気圧制御装置は、バス等の車両に搭載された空気圧ブレーキシステムに設けられている。
【0016】
図1に示すように、車両10に搭載された空気圧ブレーキシステム11は、ブレーキ機構の命令系統を空気圧で制御するとともに空気圧駆動式のブレーキ機構を備える、フルエアブレーキのシステムである。空気圧ブレーキシステム11は、コンプレッサ(図示略)が生成した圧縮空気を貯留するエアタンク12を備えている。エアタンク12は、第1タンク12Aと、第2タンク12Bと、第3タンク12Cとを有している。例えば、第1タンク12Aは、車両10の前輪に制動力を加えるための圧縮空気を貯留するタンクであり、第2タンク12Bは、車両10の後輪に制動力を加えるための圧縮空気を貯留するタンクである。また、第3タンク12Cは、その他の用途で用いられる圧縮空気を貯留するタンクである。第1タンク12A及び第2タンク12Bは、ブレーキバルブ13の前方圧力室13A及び後方圧力室13Bに接続されている。また、第1タンク12A及び第2タンク12Bは、プロテクションバルブ14Aを介してエアホーン装置14Bに接続されている。
【0017】
また、ブレーキバルブ13は、一対の空気配管18を介して、一対のリレーバルブ15に接続されている。ブレーキバルブ13のブレーキペダル13Cが運転者によって操作されると、ブレーキバルブ13からリレーバルブ15に空気圧信号が出力される。また、各リレーバルブ15は図示しない空気配管によってエアタンク12に接続されている。ブレーキバルブ13からの空気圧信号がリレーバルブ15に入力されると、エアタンク12に貯留された多量の圧縮空気が、その空気配管を介してリレーバルブ15に供給される。リレーバルブ15に供給された多量の圧縮空気は、ABS(Anti-lock Brake System)コントロールバルブ16を介してブレーキチャンバー17に供給される。ブレーキチャンバー17は、空気が供給されることによって車輪に制動力を発生させる。ABSコントロールバルブ16及びブレーキチャンバー17は、空気圧駆動式のブレーキ機構を構成する。
【0018】
使用過程車両(既存車両)の空気圧ブレーキシステム11に、運転者以外の乗員の操作により車両を停止させる異常時対応システムを搭載する場合、ブレーキバルブ13とリレーバルブ15とを接続する命令系統の空気配管18の途中に、圧力制御モジュール(PCM:Pressure Control Module)20を設ける。圧力制御モジュール20は、エアタンク12(第3タンク12C)に接続する第1ポートP1、ブレーキバルブ13に各々接続する第2ポートP2、リレーバルブ15を含むブレーキ機構に各々接続する第3ポートP3を有している。圧力制御モジュール20は、空気圧制御装置に対応する。なお、圧力制御モジュール20は、ブレーキバルブ13とリレーバルブ15との間に設けられるので、空気圧駆動式以外のブレーキ機構を有する空気圧ブレーキシステム11にも取り付けが可能である。
【0019】
次に図2図8を参照して、圧力制御モジュール20について、その外観を含めて説明する。図2図6に示すように、圧力制御モジュール20は、制御装置等を収容するケース210を備えている。ケース210は、例えば樹脂から形成されている。ケース210には、流路等が形成されたボディ211が連結されている。ボディ211は、例えば、アルミニウムから形成されており、アルミダイカスト等の鋳造法により製造されている。ボディ211には、各種ポートに接続されるポート接続部212が設けられている。ポート接続部212の第1面213には、ブレーキバルブ13の前方空気供給路37及び後方空気供給路38がそれぞれ接続される1対の第2ポートP2が設けられている。
【0020】
ポート接続部212のうち、第2ポートP2が設けられた第1面213に対して垂直な第2面214に、前方信号供給路24A及び後方信号供給路24Bに接続する1対の第3ポートP3が設けられている。第3ポートP3の隣には、エアタンク12からの圧縮空気が供給される第1供給路23が接続する第1ポートP1が設けられている。
【0021】
図7に示すように、ボディ211の下側には、サイレンサ(消音器)が収容された排出部58が設けられている。また、図8に示すように、ボディ211の背面には、ボディ211から突出する突出部215が設けられている。また、ケース210の下面には、ケース210に収容された制御装置等を外部電源又は車載ネットワーク用の電気系統のケーブルに接続する接続部216が設けられている。
【0022】
上述したように、圧力制御モジュール20は、空気圧回路を制御する制御装置及び流路が一体化したユニットである。圧力制御モジュール20を車両10に取り付ける際は、突出部215を車体の所定の位置に固定する。また、第1ポートP1をエアタンク12に接続する配管に接続し、第2ポートP2をブレーキバルブ13に接続する配管に接続し、第3ポートP3をリレーバルブ15に接続する。また、電気系統のケーブルを、接続部216に接続する。つまり、異常時対応のために空気圧ブレーキシステム11に後付けする主要部品は、圧力制御モジュール20のみでよい。
【0023】
図9を参照して、圧力制御モジュール20の空気圧回路について詳細に説明する。圧力制御モジュール20は、空気圧回路22及びサブECU(電子制御装置:Electronic Control Unit)32を備えている。圧力制御モジュール20は、メインECU31とともに、異常時対応システム50を構成する。メインECU31は、ケース210の外部に設けられてもよいし、ケース210内に収容されてもよい。
【0024】
メインECU31及びサブECU32は、演算部、通信インターフェース部、揮発性記憶部、不揮発性記憶部をそれぞれ備えている。演算部は、コンピュータプロセッサであって、不揮発性記憶部(記憶媒体)に記憶された制御プログラムにしたがって、空気圧ブレーキシステム11を制御する。演算部は、自身が実行する処理の少なくとも一部を、ASIC等の回路により実現してもよい。制御プログラムは、一つのコンピュータプロセッサによって実行されてもよいし、複数のコンピュータプロセッサによって実行されてもよい。また、メインECU31及びサブECU32は、CAN(Controller Area Network)33等の車載ネットワークに接続され、互いに各種情報を送受信する。
【0025】
操作スイッチ51及び解除スイッチ52がオン操作された場合に、それらから出力されるオン信号がメインECU31に入力される。操作スイッチ51及び解除スイッチ52は、運転者によって操作されることが想定されたスイッチであって、運転席近傍に設けられている。操作スイッチ51がオン操作された場合には、異常時対応システム50が作動する。解除スイッチ52は、異常時対応システム50が誤って発動された場合等に、その動作を停止するためのスイッチである。
【0026】
また、客席操作スイッチ53がオン操作された場合に、それから出力されるオン信号がメインECU31に入力される。客席操作スイッチ53は、運転者以外の乗員によって操作されることが想定されたスイッチである。客席操作スイッチ53は、運転席以外の位置であって、運転者以外の乗員であっても操作可能な位置に設けられている。
【0027】
メインECU31は、CAN33を介して車速センサ55から車速を表す車速情報を取得する。メインECU31は、異常時対応システム50が作動を開始する場合に、車速情報から得られる減速度を目標値である目標減速度に近づけるように、空気圧ブレーキシステム11の空気圧を算出し、サブECU32に算出した空気圧を指示する。この目標減速度は、メインECU31等の記憶部に記憶されたデータを更新することによって変更することができる。例えば、車両10が乗合バスである場合には、車内に立ったままの乗客が存在することが想定されるため、目標減速度の絶対値を小さくする。また、車両10が、乗客全員が着座する高速バスである場合には、乗合バスに比べ、目標減速度の絶対値を大きくしてもよい。また、車両10の重量や車長に応じて、目標減速度を変更することも可能である。
【0028】
さらに、メインECU31は、異常時対応システム50が発動した場合に、車室内装置56及び車室外装置57に指示信号を出力する。車室内装置56は、例えばアクセルペダルの操作を不能にするアクセルインターロック機構である。メインECU31は、異常が発生した場合にはアクセルインターロック機構を作動させる。他にも、車室内装置56として、報知ブザー、報知ランプ等を車室内に設けてもよい。例えば、メインECU31は、異常が発生した場合には、報知ブザーから音を出力させ、報知ランプを点灯又は点滅させる。車室外装置57は、例えば、エアホーン装置14B、ハザードランプ、ブレーキランプ等である。例えば、メインECU31は、異常が発生した場合には、プロテクションバルブ14A等を駆動して、エアホーン装置14Bに空気を供給して警告音を発生させるとともに、ハザードランプ及びブレーキランプを点灯又は点滅させる。
【0029】
サブECU32は、圧力制御モジュール20のケース210内に収容され、圧力制御モジュール20の各種バルブを制御する。圧力制御モジュール20は、エアタンク12に接続する第1供給路23を有している。第1供給路23は、前方の車輪に設けられたブレーキチャンバー17にリレーバルブ15を介して接続する前方空気供給路37と、後方の車輪に設けられたブレーキチャンバー17に接続する後方空気供給路38とに接続されている。
【0030】
第1供給路23の途中には、リレーバルブ25が接続されている。リレーバルブ25は、排出口25Aを有し、排出口25Aは、サイレンサを有する排出部58に接続されている。また、リレーバルブ25は、パイロットポート25Bを有する。パイロットポート25Bは、第1供給路23から分岐する分岐路26に接続されている。分岐路26からパイロットポート25Bに印加される空気圧が大気圧等の所定圧の場合には、付勢ばね等の付勢力により、リレーバルブ25は、第1供給路23が遮断された排気状態である。リレーバルブ25が排気状態であると、エアタンク12から前方空気供給路37及び後方空気供給路38への空気の流れが遮断される。また、リレーバルブ25が排気状態であると、第1供給路23のうちリレーバルブ25の下流側である第1部分が排出部58に連通されて、第1供給路23の第1部分から圧縮空気が排出される。これによって、第1供給路23の第1部分の圧力は、大気圧等の所定圧になる。
【0031】
一方、分岐路26からパイロットポート25Bに印加される空気圧が大気圧等の所定圧よりも大きい駆動圧力に達している場合には、リレーバルブ25は、付勢ばね等の付勢力に抗して、第1供給路23を連通する供給状態にある。リレーバルブ25が供給状態であると、エアタンク12から前方空気供給路37及び後方空気供給路38へ空気が供給される。リレーバルブ25が供給状態であると、第1供給路23が前方空気供給路37及び後方空気供給路38に連通する。また、リレーバルブ25は、出口側(二次側)の圧力が過度に高い場合、第1供給路23の連通状態を遮断する排気状態にある。
【0032】
分岐路26は、第1供給路23に接続されている第1の端部と、排出部58に接続されている第2の端部とを有する。この分岐路26の途中には、吸気用バルブ27及び排気用バルブ28が設けられている。吸気用バルブ27及び排気用バルブ28は電磁弁であり、サブECU32によって駆動される。吸気用バルブ27は、分岐路26のうち排気用バルブ28よりも上流寄り(エアタンク12寄り)に設けられている。吸気用バルブ27は、サブECU32から配線27Aを介しての電源の入り切り(駆動/非駆動)にしたがって動作が切り換わる。吸気用バルブ27は、電源が切られた非駆動の状態で分岐路26を閉じる閉位置となる。また、吸気用バルブ27は、電源が入れられた駆動の状態で分岐路26を開く開位置となる。
【0033】
排気用バルブ28は、サブECU32から配線28Aを介しての電源の入り切り(駆動/非駆動)にしたがって動作が切り換わる電磁弁である。排気用バルブ28は、電源が切られた非駆動の状態で分岐路26を連通する開位置となる。また、排気用バルブ28は、電源が入れられた駆動の状態で分岐路26を閉塞する閉位置となる。つまり、排気用バルブ28は、吸気用バルブ27が非駆動の状態で閉位置になると、吸気用バルブ27よりも下流及び信号供給路29を大気開放する。また、排気用バルブ28は、その駆動状態では、分岐路26のうち吸気用バルブ27よりも上流及び第1供給路23のうちリレーバルブ25より上流を大気圧とする。
【0034】
また、分岐路26のうち、吸気用バルブ27及び排気用バルブ28の途中には、リレーバルブ25に空気圧信号を供給する信号供給路29と、第1圧力センサ35とが接続されている。第1圧力センサ35は、分岐路26のうち吸気用バルブ27及び排気用バルブ28の間の圧力を検知して、検知した圧力を示す信号をサブECU32に出力する。
【0035】
また、第1供給路23は、第3供給路30に接続されている。第3供給路30は、1対のダブルチェックバルブ36、すなわち、ダブルチェックバルブ36A,36Bに接続されている。ダブルチェックバルブ36Aは、第3供給路30と、ブレーキバルブ13の前方圧力室13Aに接続する前方信号供給路24Aと、前方の車輪に制動力を発生させるための前方空気供給路37とに接続されている。このダブルチェックバルブ36Aは、第3供給路30及び前方信号供給路24Aのうちの一方、すなわち、圧力が高い方からの圧縮空気の供給を許容し、他方、すなわち、圧力が低い方からの圧縮空気の供給を遮断する。前方空気供給路37には、第2圧力センサ39が接続されている。第2圧力センサ39は、検知した圧力を示す信号をサブECU32に出力する。
【0036】
ダブルチェックバルブ36Bは、第3供給路30と、ブレーキバルブ13の後方圧力室13Bに接続する後方信号供給路24Bと、後方の車輪に制動力を加える後方空気供給路38とに接続されている。このダブルチェックバルブ36Bは、第3供給路30及び後方信号供給路24Bのうちの一方、すなわち、圧力が高い方からの圧縮空気の供給を許容し、他方、すなわち、圧力が低い方からの圧縮空気の供給を遮断する。
【0037】
次に図10及び図11を参照して、圧力制御モジュール20の動作について説明する。図10は、操作スイッチ51及び客席操作スイッチ53がオン操作されていない場合の空気圧回路22を示す。図10では、空気圧回路22は、ブレーキバルブ13をブレーキ機構に連通して第2ポートP2から第3ポートP3に空気を供給する第1連通状態にある。
【0038】
図10に示すように、操作スイッチ51及び客席操作スイッチ53がオン操作されていない場合、サブECU32は、吸気用バルブ27及び排気用バルブ28を非駆動とする。この場合、吸気用バルブ27は閉位置となり、排気用バルブ28は開位置となる。これにより、分岐路26のうち、吸気用バルブ27よりも下流の圧力は、排気用バルブ28が開位置となることにより大気圧等の所定圧となる。このため、パイロットポート25Bに加わる空気圧も所定圧となることから、リレーバルブ25が排気状態になる。リレーバルブ25が排気状態となると、第3供給路30及び第1供給路23のうちリレーバルブ25よりも下流の圧縮空気が排出部58から排出され、第3供給路30の圧力が所定圧となる。さらにブレーキペダル13Cに対し踏み込み操作等がなされると、前方信号供給路24A及び後方信号供給路24Bに空気圧信号が供給される。これにより、第3供給路30の圧力よりも前方信号供給路24A及び後方信号供給路24Bの圧力が高くなるため、ダブルチェックバルブ36A,36Bは、第3供給路30から前方空気供給路37及び後方空気供給路38への空気の流れをそれぞれ遮断する。これによって、前方信号供給路24A及び後方信号供給路24Bから前方空気供給路37及び後方空気供給路38に空気圧信号が供給される。その結果、リレーバルブ15に空気圧信号が供給されることによって、エアタンク12からリレーバルブ15に多量の圧縮空気が供給される。リレーバルブ15がブレーキチャンバー17に圧縮空気を供給すると、車輪に制動力が加わる。なお、前方信号供給路24A及び後方信号供給路24Bを含む空気圧回路がブレーキ制御回路に対応する。
【0039】
図11は、操作スイッチ51及び客席操作スイッチ53の少なくとも一方がオン操作された場合の空気圧回路22を示す。図11では、空気圧回路22は、エアタンク12をブレーキ機構に連通して第1ポートP1から第3ポートP3に空気を供給する第2連通状態にある。操作スイッチ51及び客席操作スイッチ53の少なくとも一方がオン操作された場合、サブECU32は、メインECU31から送信された圧力指示を受信する。サブECU32は、圧力指示に基づいて、吸気用バルブ27及び排気用バルブ28を駆動する。これにより、吸気用バルブ27は開位置、排気用バルブ28は閉位置となる。エアタンク12の圧縮空気は、第1供給路23を介して、吸気用バルブ27と排気用バルブ28の間の分岐路26に供給される。吸気用バルブ27と排気用バルブ28の間の分岐路26の圧力が駆動圧力に到達すると、この圧力がパイロットポート25Bを介してリレーバルブ25に加わることにより、リレーバルブ25は供給状態になる。これにより、第1供給路23、リレーバルブ25を介して第3供給路30に圧縮空気が供給される。
【0040】
第3供給路30に圧縮空気が供給されると、第3供給路30の圧力が、前方信号供給路24A及び後方信号供給路24Bの圧力よりも高くなる。このため、ダブルチェックバルブ36は、第3供給路30から、前方空気供給路37及び後方空気供給路38への空気の流れを許容し、前方信号供給路24A及び後方信号供給路24Bから前方空気供給路37及び後方空気供給路38への空気の流れを遮断する。なお、吸気用バルブ27、排気用バルブ28、及びリレーバルブ25を接続する流路(第1供給路23、分岐路26等)、第3供給路30を含む空気圧回路が、異常時ブレーキ制御回路に対応する。
【0041】
このように、ブレーキバルブ13とリレーバルブ15との間に圧力制御モジュール20を設けることにより、操作スイッチ51及び客席操作スイッチ53がオン操作された場合には、空気圧駆動式の命令系統が、ブレーキバルブ13を介する系統から、エアタンク12から直接的に空気が供給される系統に切り替わる。このため、ブレーキバルブ13からの空気圧信号をリレーバルブ15に入力しなくても、ブレーキチャンバー17を動作させてブレーキ力を発生させることができる。
【0042】
また、サブECU32は、第1圧力センサ35及び第2圧力センサ39から所定のタイミングで検知圧力を取得する。例えば、サブECU32は、リレーバルブ25を供給状態に維持する場合には、第1圧力センサ35が検知した圧力が所定範囲となるように、吸気用バルブ27及び排気用バルブ28の駆動又は非駆動を制御する。また、メインECU31が、車両10を緩やかに停車させるため段階的に圧力を上昇させるようにサブECU32に対して圧力指示を送信する場合には、サブECU32は、第2圧力センサ39が検知した圧力が第1圧力閾値に到達したか否かを判断する。サブECU32が、検知圧力が第1圧力閾値に到達していないと判断した場合には、吸気用バルブ27及び排気用バルブ28を駆動してリレーバルブ25を供給状態に維持する。一方、サブECU32は、第2圧力センサ39が検知した圧力が第1圧力閾値に到達した場合には、吸気用バルブ27及び排気用バルブ28を非駆動にしてリレーバルブ25を遮断状態とする。そして、サブECU32はメインECU31からの次の圧力指示を待機する。
【0043】
次に図12及び図13を参照して、メインECU31が行う異常時対応の処理の手順について説明する。図12に示す処理は、空気系統を制御する処理であって、操作スイッチ51又は客席操作スイッチ53が操作され、それらのスイッチから送信された操作信号がメインECU31に入力されることを契機に開始されるものとする。また、メインECU31は、所定のタイミングで車速センサ55から車速情報を取得していることを前提とする。
【0044】
図12に示すように、メインECU31は、操作信号が入力されると、客席操作スイッチ53が操作されたか否かを判断する(ステップS1)。メインECU31は、入力された操作信号が、操作スイッチ51からの信号であるか又は客席操作スイッチ53からの信号であるかを判断する。
【0045】
メインECU31は、客席操作スイッチ53が操作されたと判断すると(ステップS1:YES)、緩制動に必要な圧力をサブECU32に指示する(ステップS2)。緩制動とは、減速度の絶対値が比較的小さい制動、又はブレーキのかかる時間が短い制動であって、直後に解除スイッチ52の操作が行われた場合に通常の走行に戻ることを可能とする。メインECU31は、自身の記憶部に記憶された緩制動のための目標減速度を取得し、取得した車速情報から得られる減速度と比較して、目標空気圧を算出する。そして、メインECU31は、算出した目標空気圧を圧力指示としてサブECU32に送信する。サブECU32は、圧力指示に基づき、上述したように吸気用バルブ27及び排気用バルブ28を駆動する(図11参照)。
【0046】
メインECU31は、サブECU32に圧力指示を送信した時点、車両10が減速を開始した時点又はサブECU32から所定の応答信号を受信した時点から所定時間が経過したか否かを判断する(ステップS3)。この所定時間は、運転者が正常な状態であるにもかかわらず客席操作スイッチ53が誤操作された場合に、運転者が解除スイッチ52を操作するために要する時間である。メインECU31は、所定時間が経過していない場合(ステップS3:NO)、車速に応じた空気圧をサブECU32に指示しながら緩制動を継続する(ステップS2)。
【0047】
一方、メインECU31は、所定時間が経過したと判断すると(ステップS3:YES)、本制動に必要な圧力をサブECU32に指示する(ステップS4)。本制動とは、車両10を緩制動の減速度よりも絶対値が大きい減速度で減速させ、最終的に停止させるためのものである。メインECU31は、自身の記憶部に記憶された本制動のための目標減速度を取得し、取得した車速情報から得られる減速度と比較して目標空気圧を算出する。そして、メインECU31は、算出した目標空気圧を圧力指示としてサブECU32に送信する。サブECU32は、圧力指示に基づき、吸気用バルブ27及び排気用バルブ28を駆動する(図11参照)。
【0048】
メインECU31は、本制動を実行すると、異常時対応が終了したか否かを判断する(ステップS5)。異常時対応は、車両10が停止し非常ブレーキが作動した場合等に終了したと判断されてもよいし、イグニッションスイッチがオフされた場合に終了したと判断されてもよいし、その他のタイミングで終了したと判断されてもよい。メインECU31は、異常時対応が終了していないと判断すると(ステップS5:NO)、車速に応じた空気圧をサブECU32に指示しながら本制動を継続する(ステップS4)。メインECU31は、異常時対応が終了したと判断すると(ステップS5:YES)、異常時対応の処理を終了する。
【0049】
また、メインECU31は、空気系統の異常時対応とは別に、本制動を実行開始するタイミング等の所定のタイミングで、車室内装置56及び車室外装置57を作動させる。これにより、車両10の乗員に異常が発生したことを報知するとともに、車両10の周辺を走行する他車両にも注意喚起を促すことができる。
【0050】
次に図13にしたがって、解除スイッチ52が操作された場合の解除処理の手順について説明する。図13に示す処理は、操作スイッチ51又は客席操作スイッチ53が操作され、その操作信号がメインECU31に入力されることを契機に開始されるものとする。
【0051】
図13に示すように、メインECU31は、解除スイッチ52が操作されたか否かを判断する(ステップS20)。メインECU31は、解除スイッチ52から操作信号が入力されたと判断すると(ステップS20:YES)、サブECU32に制動の解除指示を送信する(ステップS21)。解除指示を受信したサブECU32は、吸気用バルブ27及び排気用バルブ28を非駆動に切り替えて、エアタンク12からブレーキチャンバー17への空気の供給を遮断する。
【0052】
一方、メインECU31は、解除スイッチ52から操作信号が入力されていないと判断すると(ステップS20:NO)、異常時対応が終了したか否かを判断する(ステップS22)。メインECU31は、異常時対応が終了していないと判断すると(ステップS22:NO)、ステップS20に戻る。一方、ECU31は、異常時対応が終了したと判断すると(ステップS22:YES)、解除処理を終了する。
【0053】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)サブECU32は、運転者の異常を示す異常信号に基づいて、空気圧回路22を、エアタンク12に接続する第1ポートP1から第3ポートP3に空気を供給する第2連通状態に切り替える。このため、運転者の体調変化等の異常が発生した場合に、エアタンク12からブレーキチャンバー17に自動的に空気を供給して制動力を発生させることができる。また、車両のブレーキ機構が空気圧駆動式か液圧駆動式かによらず、圧力制御モジュール20の各ポートP1~P3を対応する空気配管に接続することで、圧力制御モジュール20を空気圧ブレーキシステム11に容易に後付けすることができる。
【0054】
(2)圧力制御モジュール20は、サブECU32を収容するケース210と、第1ポートP1、第2ポートP2及び第3ポートP3、並びにそれらのポートを連通する流路が設けられ且つケース210に連結するボディ211と、を備える。つまり、圧力制御モジュール20は、空気圧回路22及びサブECU32が一体化したユニットであるため、既に使用されている使用過程車両に対しても、容易に後付けすることができる。
【0055】
(3)圧力制御モジュール20は、車速を取得するとともに、車速情報から得られる減速度と目標減速度とを比較して目標圧力を算出するメインECU31を備える。また、圧力制御モジュール20は、第1圧力センサ35及び第2圧力センサ39の検知圧力を目標圧力に近づけるように空気圧回路22を制御するサブECU32を備える。これによれば、目標減速度に合わせて空気圧回路22の空気圧力が制御されるので、乗合バスや高速バスといった車種等に応じて目標減速度を変更することにより、車種や乗客数等を配慮したきめ細やかな異常時対応を実行することができる。
【0056】
(4)客席操作スイッチ53がオン操作された場合、異常信号が入力された後の所定期間内においては緩制動を行い、所定期間経過後は、より大きい減速度となる本制動を行うことができる。これにより、誤って客席操作スイッチ53が操作された場合であっても、解除スイッチ52を操作することにより、所定期間内に異常時対応を解除することができる。
【0057】
(5)空気圧回路22に、ブレーキバルブ13からブレーキチャンバー17への空気の供給と、エアタンク12からブレーキチャンバー17への空気の供給とを切り替えるダブルチェックバルブ36を設けたので、圧力制御モジュール20を、空気圧回路によって命令系統が構成されている空気圧ブレーキシステム11に適用することができる。また、少ない電力で、空気圧ブレーキシステム11の命令系統を制御することができる。
【0058】
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、フルエアブレーキのブレーキシステムを有する車両10に、空気圧制御装置及び空気圧回路を適用した。これに限らず、空気圧制御装置及び空気圧回路は、その他の形式のブレーキシステムを有する車両にも適用可能である。図14に示すように、圧力制御モジュール20は、エアオーバーハイドロリック式のブレーキ機構を有する車両10に適用することができる。このブレーキ機構は、圧力制御モジュール20を、ABSコントロールバルブ16を介して、ブレーキブースター100~102に接続する。ブレーキブースター100~102は、それぞれ前輪用、左後輪用、右後輪用のブースターであり、空気圧を利用して液圧回路の液圧を高めることによって車輪に制動力を発生させる。また、図15に示すように、圧力制御モジュール20を、前輪用のブレーキブースター103と、後輪用のブレーキブースター104と、液圧回路に設けられたABSコントロールバルブ105とを備えたブレーキ機構に適用してもよい。又は、空気圧制御装置及び空気圧回路は、図14及び図15以外のブレーキ機構にも適用可能である。
【0059】
・上記実施形態では、ボディ211を金属製としたが、これに代えて、ボディ211が樹脂製であってもよい。例えばまた、ボディ211は鋳造法により形成されたものとしたが、これに代えて若しくは加えてプレス加工や切削加工により形成された部品を組み合わせてボディ211を構成してもよい。
【0060】
・上記実施形態では、エアタンク12は3つのタンクに分かれていたが、エアタンク12は1つのタンクでもよく、2つ又は4つ以上のタンク分かれていてもよい。また、エアタンク12と空気圧機器との接続関係は適宜変更可能である。例えば圧力制御モジュール20の第1ポートP1は、第3タンク12C以外のタンクに接続されてもよい。
【0061】
図16図22に示すように、圧力制御モジュール20は、アルミダイカスト製の第1ケース部材217及び樹脂製の第2ケース部材218からなるケース210を備えていてもよい。第1ケース部材217及びボディ211は一体に形成されている。また、第1ケース部材217及び第2ケース部材218は、締結部材により互いに連結される。
【0062】
・メインECU31は、操作スイッチ51、解除スイッチ52、客席操作スイッチ53から、CAN33等の車載ネットワークを介してオン信号などを受信してもよい。車載ネットワークとして、CAN33以外に、FlexRay(登録商標)、Ethernet(登録商標)等のネットワークを用いてもよい。
【0063】
・上記実施形態では、メインECU31は、車速センサ55から車速情報を取得するようにしたが、これに代えて若しくは加えて、メインECU31が加速度センサから加速度情報を取得するようにしてもよい。言い換えれば、車速情報は、車速に関連する情報であって、車速自体を表す情報に代えて又は加えて、加速度を表す情報を含んでよい。
【0064】
・上記実施形態では、異常時対応システム50は、第1制御部の機能を実行するメインECU31及び第2制御部の機能を実行するサブECU32を備えるようにした。これに代えて、メインECU31及びサブECU32を、第1制御部の機能と第2制御部の機能とを有する1つのECU又は1つの他の制御回路から構成してもよい。又は、これらの機能を3つ以上のECU又は3つ以上の他の制御回路に分散させて構成してもよい。
【0065】
・異常時対応システム50は、当該システムの機能をオン/オフできる主スイッチ(図示略)を備えていてもよい。主スイッチに対して所定の操作を行うこと、又は主スイッチを所定の制御装置等により制御することで、例えば操作スイッチ51、解除スイッチ52及び客席操作スイッチ53の操作を無効にすることができる。
【0066】
・空気圧回路22は、吸気用バルブ27及び排気用バルブ28によって空気圧駆動式のリレーバルブ25を駆動するようにした。これに代えて、第1供給路23に電磁弁を設け、この電磁弁により、第1供給路23を開閉するようにしてもよい。
【0067】
・空気圧回路22は、空気圧によって空気の供給方向を切り替えるダブルチェックバルブ36を備えるようにした。ダブルチェックバルブ36に代えて、サブECU32によって駆動及び非駆動とされる電磁弁を設けるようにしてもよい。操作スイッチ51又は客席操作スイッチ53がオン操作されると、サブECU32は、その電磁弁を駆動(又は非駆動)して、空気の供給方向を切り替える。
【0068】
・上記実施形態では、操作スイッチ51及び客席操作スイッチ53のオン操作により異常時対応を実行するようにした。これに代えて若しくは加えて、運転者の疲労状態又は健康状態を検知する生体検知装置を用いてもよい。生体検知装置は、運転者の顔や頭部の位置、姿勢、瞼、視線等の目の状態、脈拍数、心拍数、体温等、1又は複数のパラメータを用いて運転者の運転状態を検知する。この態様においては、生体検知装置が運転者の異常を検知した場合に異常信号を送信する。或いは、車両に搭載されたECUが、車速、アクセルペダルやブレーキペダルの操作の有無等の車両状態と道路情報とを比較して、運転操作の異常を検知した場合には異常信号を送信してもよい。
【0069】
・上記実施形態では、空気圧制御装置は、ブレーキの命令系統を空気圧で制御する使用過程車両に後付けされるものとして説明したが、空気圧制御装置は、EBSを搭載した車両に後付けされてもよい。また、空気圧制御装置は、新車に搭載されてもよい。
【0070】
・上記実施形態では、空気圧制御装置は、バス等の車両に搭載されるものとして説明した。車両は、トラック、建機等、バス以外であってもよい。また、空気圧制御装置は、乗用車、鉄道車両等、他の車両に搭載されてもよい。
【0071】
・油圧回路でブレーキ機構を制御する新車又は使用過程車両においても運転者の異常は発生し得るため、同様な課題が存在する。このため、上記実施形態の圧力制御モジュール20を、ブレーキ機構への命令系統を油圧で制御する車両に適用してもよい。油圧回路においても圧力制御モジュール20は上記実施形態と同様に作動する。この態様において、制御対象となるブレーキ機構は、ブレーキチャンバー以外の機構でもよい。なお、油圧回路及び空気圧回路は、流体の圧力によって駆動する回路としての一例である。
【0072】
・ECU31,32は、自身が実行する全ての処理についてソフトウェア処理を行うものに限られない。たとえば、ECU31,32は、自身が実行する処理の少なくとも一部についてハードウェア処理を行う専用のハードウェア回路(たとえば特定用途向け集積回路:ASIC)を備えてもよい。すなわち、ECU31,32は、1)コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ、2)各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する1つ以上の専用のハードウェア回路、或いは3)それらの組み合わせ、を含む回路(circuitry)として構成し得る。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリを含み、メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【符号の説明】
【0073】
10…車両、11…空気圧ブレーキシステム、12…エアタンク、13…ブレーキバルブ、13A…前方圧力室、13B…後方圧力室、13C…ブレーキペダル、14A…プロテクションバルブ、14B…エアホーン装置、15…リレーバルブ、16…ABSコントロールバルブ、17…ブレーキチャンバー、18…空気配管、20…圧力制御モジュール、21…ケース、21A…ポート接続部、21D…突出部、22…空気圧回路、23…第1供給路、24A…前方信号供給路、24B…後方信号供給路、25…リレーバルブ、25A…排出口、25B…パイロットポート、26…分岐路、27…吸気用バルブ、27A…配線、28…排気用バルブ、28A…配線、29…信号供給路、30…第3供給路、31…メインECU、32…サブECU、33…CAN、35…第1圧力センサ、36,36A,36B…ダブルチェックバルブ、37…前方空気供給路、38…前方空気供給路、39…第2圧力センサ、39…圧力センサ、50…異常時対応システム、51…操作スイッチ、52…解除スイッチ、53…客席操作スイッチ、55…車速センサ、56…車室内装置、57…車室外装置、58…排出部、100~104…ブレーキブースター、105…ABSコントロールバルブ、P1…第1ポート、P2…第2ポート、P3…第3ポート。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
【手続補正書】
【提出日】2024-07-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のブレーキ制御システムにおいて、
運転者のブレーキ操作に基づいて、車輪に制動力を加えるブレーキ駆動部を制御するブレーキ制御回路と、
前記運転者の異常を検出する検出部と、
前記運転者の異常時に前記ブレーキ駆動部を制御し、前記ブレーキ制御回路とは別体の回路を含む異常時ブレーキ制御回路と、
前記検出部から出力された前記運転者の異常を示す異常信号に基づいて所定の減速度で前記車両が減速するように前記異常時ブレーキ制御回路を作動させる制御部とを有し、
前記制御部は、異常時対応システムが発動した場合に、報知装置に指示信号を出力する
ブレーキ制御システム。
【請求項2】
前記報知装置は、前記車両の車室内に設けられている、アクセルペダルの操作を不能にするアクセルインターロック機構を含み、
前記制御部は、前記異常時対応システムが発動した場合に、前記アクセルインターロック機構を作動させる
請求項1に記載のブレーキ制御システム。
【請求項3】
前記報知装置は、前記車両の車室内に設けられている、報知ブザー、報知ランプ、又はその両方を含み、
前記制御部は、前記異常時対応システムが発動した場合に、前記報知ブザーから音を出力させるか、前記報知ランプを点灯若しくは点滅させるか、又はその両方を行わせる
請求項1又は2に記載のブレーキ制御システム。
【請求項4】
前記報知装置は、前記車両の車室外に設けられている、エアホーン装置、ハザードランプ、及びブレーキランプを含み、
前記制御部は、前記異常時対応システムが発動した場合に、前記エアホーン装置に空気を供給して警告音を発生させるとともに、前記ハザードランプ及び前記ブレーキランプを点灯又は点滅させる
請求項1~3のいずれか一項に記載のブレーキ制御システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記異常時対応システムが発動してから所定時間が経過した後、前記報知装置を作動させる
請求項1~4のいずれか一項に記載のブレーキ制御システム。