(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114876
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】投薬装置
(51)【国際特許分類】
A61M 11/00 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
A61M11/00 K
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024103805
(22)【出願日】2024-06-27
(62)【分割の表示】P 2023015922の分割
【原出願日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】P 2019131340
(32)【優先日】2019-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】521421300
【氏名又は名称】草桶 大輝
(71)【出願人】
【識別番号】000206185
【氏名又は名称】大成化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】桑野 光明
(57)【要約】
【課題】本発明は、所定量の微量の液体を吐出できる液体吐出装置を提供する。
【解決手段】液体貯蔵部と、チューブ部材と、衝打部と、操作部を有し、吐出口から液体が吐出されるものであり、チューブ部材は、液体貯蔵部内と一方の端部が連通し、液体貯蔵部から吐出口側に向かって送液するものであり、チューブ部材は、長手方向において、少なくとも一部に弾性変形可能な弾性領域があり、操作部を操作することで、チューブ部材の弾性領域の少なくとも一部が衝打部によって衝打され、チューブ部材内の液体が吐出口から押し出されて吐出される構成とする。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液貯蔵部と、操作部と、吐出口を有し、前記操作部を操作することで前記薬液貯蔵部内の薬液が前記吐出口から眼球の表面に吐出する投薬装置であって、
前記操作部を10回操作したときに、前記吐出口からの一回吐出量が7μL未満であって、かつ標準偏差が0.05以下であることを特徴とする投薬装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微量の液体を吐出する液体吐出装置に関するものである。また、本発明は、特に点眼薬等の微量の薬液を患者の眼球等に投与する場合に好適に使用できる投薬装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、患者の高齢化に伴い、点眼薬を滴下投与するのに上を向いて点眼できない患者や点眼薬を眼球表面に正確に滴下できない患者が増加している。また、リュウマチ患者や握力の乏しい患者の場合には、自ら点眼容器を押圧できなかったり、点眼容器を開封できなかったりする。
【0003】
また、ヒトの眼球表面に保持できる点眼薬は、最大でも7μL程度にすぎないとされている。そのため、従来のように25~50μLもの点眼薬を滴下投与すれば、過剰な点眼薬が必然的に眼外に流出し、薬が有効に活用されないばかりか、眼の周辺組織に吸収されることや全身への移行に伴う副作用が懸念されている。
【0004】
そこで、眼に少量の薬剤を投与する眼鏡型の眼科装置(特許文献1、特許文献2)が提案されている。
特許文献1では、投液手段としてサーマルジェット方式のディスペンサーが採用されており(特許文献1のFIG.5、FIG.6参照)、特許文献2では、ピエゾジェット方式のディスペンサー又はサーマルジェット方式のディスペンサーが採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第1994/003135号
【特許文献2】特開2005-21701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1,2のようなサーマルジェット方式やピエゾジェット方式による薬液の飛距離は、水平方向で数ミリ程度に過ぎず、吐出口を眼球に近接させなければならない。そのため、自己の手で直接投薬する場合や医者等の第三者によって投薬される場合に、正面を向いた状態で投薬しにくく、投与の正確性に劣る問題がある。また、装置等が複雑であり、そのため製品コストは高くなるなどの問題を抱えている。
【0007】
そこで、本発明は、所定量の微量の液体を吐出できる液体吐出装置を提供することを目的とする。また、本発明は、自ら薬液投与が困難な投薬困難者や医者等であっても簡単に所定量の微量薬液を投与できる投薬装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するための請求項1に記載の発明は、薬液貯蔵部と、操作部と、吐出口を有し、前記操作部を操作することで前記薬液貯蔵部内の薬液が前記吐出口から眼球の表面に吐出する投薬装置であって、前記操作部を10回操作したときに、前記吐出口からの一回吐出量が7μL未満であって、かつ標準偏差が0.05以下であることを特徴とする投薬装置である。
請求項2に記載の発明は、前記操作部を10秒以下の間隔で10回操作したときに、前記吐出口からの一回吐出量が7μL未満であって、かつ標準偏差が0.05以下である、請求項1に記載の投薬装置である。
請求項3に記載の発明は、前記操作部を10回操作したときに、前記吐出口からの一回吐出量が1μL未満である、請求項1又は2に記載の投薬装置である。
請求項4に記載の発明は、前記操作部を有する本体部と、前記本体部に対して個別に取り付け可能な複数の薬液カートリッジを有し、前記複数の薬液カートリッジは、薬液貯蔵部と、吐出口をそれぞれ有し、前記複数の薬液カートリッジは、第1薬液カートリッジと第2薬液カートリッジを含み、前記操作部を操作することで、第1薬液カートリッジの吐出口と第2薬液カートリッジの吐出口から同時に薬液を吐出可能である、請求項1~3のいずれか1項に記載の投薬装置である。
請求項5に記載の発明は、前記第1薬液カートリッジと前記第2薬液カートリッジは、異なる種類の薬液を吐出可能である、請求項4に記載の投薬装置である。
請求項6に記載の発明は、上向き方向の姿勢で前記薬液を投与可能な吐出機構を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の投薬装置である。
請求項7に記載の発明は、前記吐出口が水平方向を向いた状態で前記操作部を操作した場合に、前記吐出口から少なくとも0cm超過0.5cm以下の範囲において、薬液が前記吐出口から水平方向に対して1度以下の角度で吐出される、請求項1~6のいずれか1項に記載の投薬装置である。
本発明に関連する発明は、液体貯蔵部と、チューブ部材と、衝打部と、被衝打部と、操作部を有し、吐出口から液体が吐出される液体吐出装置であって、前記チューブ部材は、前記液体貯蔵部内と一方の端部が連通し、前記液体貯蔵部から前記吐出口側に向かって送液するものであり、前記チューブ部材は、長手方向において、少なくとも一部に弾性変形可能な弾性領域があり、前記操作部を操作することで、前記チューブ部材が前記衝打部と前記被衝打部の間にあって前記被衝打部側に位置した状態から、前記被衝打部が前記衝打部に対して動かずに、前記衝打部が前記チューブ部材の前記弾性領域の少なくとも一部を衝打し、前記チューブ部材を前記被衝打部側に押圧して、前記被衝打部とともに前記チューブ部材を挟持し、前記チューブ部材内の液体が前記吐出口から押し出されて吐出されるものであり、前記チューブ部材は、前記衝打部の押圧力によって弾性変形した状態から前記チューブ部材の形状が復元することで、毛細管現象によって前記液体貯蔵部から液体が補充されることを特徴とする液体吐出装置である。
本発明に関連する発明は、液体貯蔵部と、チューブ部材と、衝打部と、操作部を有し、吐出口から液体が吐出される液体吐出装置であって、前記チューブ部材は、前記液体貯蔵部内と一方の端部が連通し、前記液体貯蔵部から前記吐出口側に向かって送液するものであり、前記チューブ部材は、長手方向において、少なくとも一部に弾性変形可能な弾性領域があり、前記操作部を操作することで、前記チューブ部材の前記弾性領域の少なくとも一部が前記衝打部によって衝打され、前記チューブ部材内の液体が前記吐出口から押し出されて吐出される液体吐出装置である。
【0009】
ここでいう「衝打」とは、衝撃を加えて打ちつけることをいう。
ここでいう「液体」とは、流動性を有するものをいい、薬液や、油、水、有機溶剤、水溶液、イオン液体などを含む。
【0010】
本発明に関連する発明は、前記チューブ部材は、毛細管現象によって前記液体貯蔵部から前記吐出口側に向かって送液する液体吐出装置である。
【0011】
本発明に関連する発明は、前記チューブ部材は、全域が前記弾性領域を構成する液体吐出装置である。
【0012】
上記の発明は、前記弾性領域は、ポリエチレン、ポリプロピレン、シリコン、フッ素ゴム、ポリテトラフルオロエチレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、天然ゴム、合成ゴムからなる群から選択される少なくとも一つの弾性材料で構成されている液体吐出装置に関連する。
【0013】
上記の発明は、前記衝打部を前記弾性領域に向かって付勢する付勢部材を有し、前記操作部を操作することで、前記衝打部が前記付勢部材からの付勢力に抗って移動又は姿勢変更され、前記付勢力によって前記弾性領域に向かって前記衝打部が衝打する液体吐出装置に関連する。
【0014】
上記の発明は、前記チューブ部材の前記弾性領域における最大内径は、0.1mm以上2mm以下であり、前記操作部を1回操作したときの前記吐出口からの液体の吐出量は、0.01μL以上7μL以下である液体吐出装置に関連する。
【0015】
ここでいう「最大内径」とは、チューブ部材の延び方向に対して直交する断面におけるチューブ部材の内部空間の最小包含円径をいい、内部空間を全て含む最小円の直径をいう。
【0016】
上記の発明は、前記操作部を1回操作したときの前記吐出口からの液体の吐出量は、0.01μL以上7μL以下である液体吐出装置に関連する。
上記の発明は、前記操作部を1回操作したときの前記吐出口からの液体の吐出量は、1μL未満である液体吐出装置に関連する。
上記の発明は、前記操作部を1回操作したときの前記吐出口からの液体の吐出量は、0.625μL以下である液体吐出装置に関連する。
上記の発明は、前記操作部を1回操作したときの前記吐出口からの液体の吐出量は、0.01μL以上100μL以下である液体吐出装置に関連する。
【0017】
上記の発明は、前記チューブ部材の前記衝打部によって衝打される範囲は、長手方向において1mm以上30mm以下の範囲である液体吐出装置に関連する。
【0018】
上記の発明は、前記吐出口が水平方向を向いた状態で前記操作部を操作した場合に、前記吐出口から少なくとも0cm超過0.5cm以下の範囲は、前記液体が実質的に直線状に吐出される液体吐出装置に関連する。
【0019】
ここでいう「実質的に直線状」とは、完全な直線状である場合だけではなく、重力等の影響により、概ね直線とみなせる程度にわずかに湾曲している場合も含む。具体的には、始点(液体吐出口)と終点を結んだ直線の角度が5度以下の場合をいい、好ましくは3度以下、より好ましくは1度以下である。
【0020】
上記の発明は、本体部と、液体カートリッジを有し、前記本体部は、前記衝打部と前記操作部を含み、前記液体カートリッジは、前記液体貯蔵部と前記チューブ部材を含み、かつ前記本体部に対して着脱可能である液体吐出装置に関連する。
【0021】
上記の発明は、前記吐出口を内蔵するように前記チューブ部材の少なくとも一部を収容するケース部と、前記操作部と連動して前記ケース部に対して相対的に移動又は姿勢変更する閉塞部を有し、前記ケース部は、前記吐出口と対向する位置に液体通過孔を有し、前記閉塞部は、操作側貫通孔を有し、前記操作部を操作することで、前記閉塞部が前記液体通過孔を閉塞した閉塞状態と、前記閉塞部が移動又は姿勢変更して前記操作側貫通孔が前記液体通過孔と直線状に並んで前記液体通過孔を開放する開放状態との間で変更可能である液体吐出装置に関連する。
本発明に関連する発明は、前記吐出口を内蔵するように前記チューブ部材の少なくとも一部を収容するケース部と、前記操作部と連動して前記ケース部に対して相対的に移動又は姿勢変更する閉塞部を有し、前記ケース部は、前記吐出口と対向する位置に液体通過孔を有し、前記操作部を操作することで、前記閉塞部が前記液体通過孔を閉塞した閉塞状態と、前記閉塞部が移動又は姿勢変更して前記液体通過孔を開放する開放状態との間で変更可能である液体吐出装置である。
【0022】
上記の発明は、液体貯蔵部と、チューブ部材と、衝打部と、被衝打部と、操作部を有し、吐出口から液体が吐出される液体吐出装置であって、前記チューブ部材は、前記液体貯蔵部内と一方の端部が連通し、前記液体貯蔵部から前記吐出口側に向かって送液するものであり、前記チューブ部材は、長手方向において、少なくとも一部に弾性変形可能な弾性領域があり、前記操作部を操作することで、前記チューブ部材が前記衝打部と前記被衝打部の間にあって前記被衝打部側に位置した状態から、前記被衝打部が前記衝打部に対して動かずに、前記衝打部が前記チューブ部材の前記弾性領域の少なくとも一部を衝打し、前記チューブ部材を前記被衝打部側に押圧して、前記被衝打部とともに前記チューブ部材を挟持し、前記チューブ部材内の液体が前記吐出口から押し出されて吐出されるものであり、ケース部材と、衝打部材を有し、前記ケース部材は、衝打用固定部を有し、前記操作部は、操作側係合部を有し、前記衝打部材は、前記衝打部と、接続部を有し、前記ケース部材の前記衝打用固定部によって前記接続部が保持されて前記衝打部が前記接続部から延びるように片持ち状に支持されており、前記チューブ部材の前記弾性領域は、前記接続部よりも高い位置にあり、前記操作部を操作することで、前記操作側係合部が前記衝打部を押圧して、前記衝打部が弾性変形し、その復元力によって前記衝打部が前記弾性領域の少なくとも一部を衝打する液体吐出装置に関連する。
本発明に関連する発明は、ケース部材と、前記衝打部を有する衝打部材を有し、前記衝打部材は、接続部を有し、前記ケース部材によって前記接続部が保持されて片持ち状に支持されており、前記チューブ部材の前記弾性領域は、前記接続部よりも高い位置にあり、前記操作部を操作することで、前記衝打部が弾性変形し、その復元力によって前記衝打部が前記弾性領域の少なくとも一部を衝打する液体吐出装置である。
【0023】
上記の発明は、上記の液体吐出装置を使用する投薬装置であって、前記液体は、薬液であることを特徴とする投薬装置である。
【発明の効果】
【0024】
本発明の液体吐出装置によれば、所定量の微量の液体を吐出できる。
本発明の投薬装置によれば、投薬困難者であっても、診察時の医者等によっても容易に投薬が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の第1実施形態の投薬装置の一般的な使用状況を示す側面図である。
【
図4】
図3の第2ケース部を
図3とは別の方向から視た斜視図である。
【
図5】
図3の衝打部材を
図3とは別の方向から視た斜視図である。
【
図7】
図3の薬液ユニットを
図3とは別の方向から視た斜視図である。
【
図9】
図2の第2ケース部を外した状態の投薬装置の側面図である。
【
図10】
図1の投薬装置を用いて薬液を投与する際の投薬装置の説明図であり、(a)は操作部が操作される際の状態を表す側面図であり、(b)は付勢部材の付勢力によって操作部が戻る際の状態を表す側面図であり、(c)はチューブ部材の一部が衝打部に衝打された状態を表す側面図であり、(a)~(c)はいずれも第2ケース部を外して描写している。
【
図11】
図10の投薬装置を用いて薬液を投与する際のチューブ部材付近における薬液の流れを表す断面図であり、(a)~(d)の順に推移する。なお、薬液をドットで示している。
【
図12】本発明の第2実施形態の投薬装置の分解斜視図である。
【
図13】
図12の投薬装置を用いて薬液を投与する際の投薬装置の説明図であり、(a)~(c)は第1操作部が押圧操作された際の各工程を示す側面図であり、(a)~(c)はいずれも第2ケース部を外して描写している。
【
図14】
図12の投薬装置を用いて薬液を投与する際の投薬装置の説明図であり、(d)は第1操作部が押圧操作された際の
図13(c)に続く工程を示す側面図であり、(e),(f)は第1操作部の押圧操作後に第2操作部が押圧操作された際の側面図であり、(d)~(f)はいずれも第2ケース部を外して描写している。
【
図15】本発明の第3実施形態の投薬装置の分解斜視図である。
【
図16】
図15の投薬装置を用いて薬液を投与する際の投薬装置の説明図であり、(a)~(c)は操作部が押圧操作された際の各工程を示す側面図であり、(a)~(c)はいずれも第2ケース部を外して描写している。
【
図17】
図15の投薬装置を用いて薬液を投与する際の投薬装置の説明図であり、(d),(e)は操作部が押圧操作された際の
図16(c)に続く工程を示す側面図であり、(d),(e)はともに第2ケース部を外して描写している。
【
図18】本発明の第4実施形態の投薬装置の斜視図であり、(a)は吐出操作前の閉塞状態の斜視図であり、(b)は吐出時の開放状態の斜視図である。
【
図26】
図18の投薬装置の操作手順の説明図であり、(a),(b)は各手順での位置関係を示す断面図である。
【
図27】
図26に続く投薬装置の操作手順の説明図であり、(c),(d)は各手順での位置関係を示す断面図である。
【
図28】
図27に続く投薬装置の操作手順の説明図であり、(e),(f)は各手順での位置関係を示す断面図である。
【
図29】本発明の第5実施形態の投薬装置の斜視図であり、(a)は吐出操作前の閉塞状態の斜視図であり、(b)は吐出時の開放状態の斜視図である。
【
図31】本発明の他の実施形態のチューブ部材付近の説明図であり、(a),(b)は異なる実施形態を表す。
【
図32】本発明の他の実施形態のチューブ部材の断面斜視図である。
【
図33】本発明の他の実施形態の薬液ユニットの断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、
図1の姿勢(縦姿勢)を基準とし、患者の眼球101側を前側、患者からみて遠位側を後側とする。
【0027】
本発明の第1実施形態の投薬装置1(液体吐出装置)は、
図1,
図2のように、端面に吐出口8を備え、吐出口8から患者の眼球101の表面に液滴状の薬液100を投与するものである。
投薬装置1は、
図1のように、吐出口8が水平方向を向く水平姿勢とした状態で、吐出口8から水平方向に薬液100を吐出可能であり、患者が上を向かずに、すなわち患者がどのような姿勢であっても薬液100を投与できることを特徴の一つとしている。
【0028】
投薬装置1は、主要構成部として、
図3,
図7のように、ケース部材2と、衝打部材3と、薬液ユニット4と、付勢部材7と、吐出口8を備えている。
薬液ユニット4は、主に薬液貯蔵部5(液体貯蔵部)とチューブ部材6で構成されている。
【0029】
ケース部材2は、
図3のように、第1ケース部10と、第2ケース部11で構成されている。
第1ケース部10は、本体壁部20と、側壁部21~24と、軸部25を備えている。
本体壁部20は、略四角形状の壁部であり、側壁部21~24は、本体壁部20の各辺から立ち上がった立壁部である。
軸部25は、本体壁部20に対して立設された棒状部位であり、組み立て時において衝打部材3の回転軸をなす部位である。また、軸部25は、付勢部材7を固定する固定部でもある。
【0030】
第2ケース部11は、
図4のように、本体壁部30と、側壁部31~34と、誘導溝35と、軸固定穴36を備えている。
本体壁部30は、略四角形状の壁部であり、側壁部31~34は、本体壁部30の各辺から立ち上がった立壁部である。
【0031】
誘導溝35は、衝打部材3を誘導する溝であり、本体壁部30に設けられ、本体壁部30を厚み方向に貫通した貫通溝である。誘導溝35は、本体壁部30を正面視したときに、軸固定穴36を中心として周方向に円弧状に延びている。
軸固定穴36は、
図3のように、第1ケース部10の軸部25の端部を受ける軸受け穴であり、本体壁部30を厚み方向に貫通した貫通孔である。
【0032】
衝打部材3は、
図5のように、本体部50と、衝打部51と、操作部52と、軸穴53を備えている。
本体部50は、略「く」字状のハンマー片であり、第1延伸部55と、第1延伸部55の端部から傾斜して延びる第2延伸部56を備えている。
第1延伸部55は、付勢部材7の端部を固定可能な固定部57を備えている。
【0033】
衝打部51は、チューブ部材6の一部を衝打し、吐出口8から薬液100を吐出させる部位である。すなわち、衝打部51は、チューブ部材6を部分的に押圧し、チューブ部材6内の薬液100を吐出口8から強制的に吐出させる部位である。
衝打部51は、
図5のように、平面部58と、平面部58に対して突出した凸部59を備えている。
凸部59は、組み立てたときに、薬液貯蔵部5の凹部69と対をなし、チューブ部材6を横切るように延びた凸条である。すなわち、凸部59は、チューブ部材6の延び方向に対する交差方向に延びており、毛細管現象によるチューブ部材6の薬液100の流れ方向の衝打部51の上流側に設けられている。
【0034】
操作部52は、衝打部51を操作する部位であり、第2延伸部56に設けられ、第2延伸部56に対して立設された棒状部位である。
軸穴53は、軸部25を挿入可能な挿入穴であり、第1延伸部55の基端側に設けられ、第1延伸部55を厚み方向に貫通した貫通孔である。
【0035】
薬液貯蔵部5は、
図6のように、薬液100を貯蔵可能な貯蔵空間65を有する容器である。
【0036】
薬液貯蔵部5は、
図7のように、本体部60と、キャップ部61を備えている。
本体部60は、
図6,
図7のように、被衝打部62と、貯蔵穴63と、連通孔64を備えている。
被衝打部62は、衝打部材3の衝打部51によってチューブ部材6を介して衝打される部位であり、平面部68と、平面部68に対して窪んだ凹部69を備えている。
凹部69は、組み立てたときに、チューブ部材6を横切るように延びた凹溝であり、チューブ部材6の延び方向に対する交差方向に延びている。
【0037】
貯蔵穴63は、薬液貯蔵部5の前端面から前後方向に直線状に深さをもった有底穴であり、貯蔵空間65と外部を連通する穴である。
連通孔64は、貯蔵空間65と外部を連通し、外部から貯蔵空間65に向かって垂直又は斜めに延びた貫通孔であり、チューブ部材6を挿着可能な挿通孔でもある。
【0038】
キャップ部61は、
図7のように、貯蔵穴63を閉塞する閉塞部であり、貫通孔66を有している。
貫通孔66は、外部から貯蔵空間65内に空気を導入する外気導入用の空気孔であって、厚み方向に貫通した貫通孔である。すなわち、貫通孔66は、外気を貯蔵空間65に導入し、常に薬液貯蔵部5内の内圧と外圧を等しく保つための穴である。
なお、貫通孔66は、必要に応じて、周囲に親水加工又は疎水加工を施して貫通孔66から薬液100が漏出しないようにしてもよい。こうすることで、薬液100がより貫通孔66から漏出しにくくできる。
【0039】
チューブ部材6は、
図6のように、一方の端部が薬液貯蔵部5内に挿入され、他方の端部が吐出口8を構成する部材であり、薬液貯蔵部5から吐出口8に薬液100を送り出す送液チューブである。
チューブ部材6は、内部が中空であって、長さを持って延びた筒状体である。本実施形態のチューブ部材6は、円筒状のチューブであり、断面形状が円形状となっている。
チューブ部材6は、長手方向における少なくとも一部が弾性体で構成された弾性領域を有しており、弾性領域では長手方向に対して交差する方向に弾性変形可能となっている。
本実施形態のチューブ部材6は、長手方向の全域が弾性領域となっている。
【0040】
チューブ部材6は、弾性変形可能なものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、シリコン、フッ素ゴム、ポリテトラフルオロエチレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、天然ゴム、合成ゴムからなる群から選択される少なくとも一つの弾性材料で構成できる。
これらの弾性材料を使用することで、所望量の薬液100を再現良く吐出できる。
また、チューブ部材6は、毛細管現象によって薬液100を内部に補充する観点から、薬液が油性製剤であれば親油性を、薬液が水性製剤であれば親水性を有することが好ましい。
【0041】
チューブ部材6の内径(最大内径)、すなわち、チューブ部材6の延び方向に直交する断面におけるチューブ部材6の内部空間の最小包含円径は、毛細管現象により薬液100を移送できる範囲でよく、0.1mm以上2mm以下であることが好ましく、0.3mm以上1mm以下であることがより好ましい。
チューブ部材6の外径(最大外径)、すなわち、チューブ部材6の延び方向に直交する断面におけるチューブ部材6の外面の最小包含円径は、チューブ部材6の内径超過であり、0.2mm以上5mm以下であることが好ましい。
チューブ部材6の厚み(外径と内径の差)は、0.05mm以上3mm以下であることが好ましい。
これらの範囲であれば、衝打部51による押圧力をチューブ部材6内で吸収しすぎず、効率良く内部の薬液100に伝達できる。
【0042】
チューブ部材6の接液内面には、必要に応じて疎水化処理や親水化処理を施してもよい。
【0043】
付勢部材7は、衝打部51を薬液貯蔵部5側に付勢する部材である。
具体的には、付勢部材7は、
図3のように、コイル部80と、コイル部80から延びた腕部81,82を備え、コイル部80の中心軸まわりにねじりモーメントを受けるねじりコイルばねである。
コイル部80は、円環状の部位であり、中心に軸部25を挿入可能となっている。
腕部81,82は、コイル部80から延びる棒状部位である。
【0044】
吐出口8は、薬液100が吐出される開口であり、本実施形態の吐出口8は、チューブ部材6の端部で構成されている。
【0045】
続いて、第1実施形態の投薬装置1の各部材の位置関係について説明する。
【0046】
投薬装置1は、
図3のように、ケース部材2内に衝打部材3、薬液貯蔵部5、及び付勢部材7が配されている。第1ケース部10と第2ケース部11は、本体壁部20,30同士が外側を向くように対向して互いに固定されている。
投薬装置1は、
図2のように、第1ケース部10の側壁部21~24と第2ケース部11の側壁部31~34で、ケース部材2の側面部41~44を構成している。
第1ケース部10の軸部25は、
図3のように、衝打部材3の軸穴53及び付勢部材7のコイル部80を挿通し、軸固定穴36に挿入されて固定されている。また、付勢部材7は、腕部81が固定部57に挿入されて固定されており、腕部82がケース部材2の側面部43に当接している。すなわち、付勢部材7は、
図9のように、軸部25を中心として衝打部51が薬液貯蔵部5の被衝打部62を押圧するように衝打部材3を周方向に付勢している。
【0047】
操作部52は、
図2のように、誘導溝35を挿通しており、一部がケース部材2の外部に露出している。すなわち、操作部52は、
図9のように、誘導溝35によって可動範囲が規制されており、軸部25を中心として周方向の移動のみ許容されている。
衝打部51は、付勢部材7による付勢力を受けてチューブ部材6の一部を薬液貯蔵部5側に押圧している。
【0048】
チューブ部材6は、
図9のように薬液貯蔵部5から下方側(本実施形態斜では斜め下方)に向けて延び、一部が屈曲して側面部41に向かって延びている。
チューブ部材6は、薬液貯蔵部5の被衝打部62と衝打部材3の衝打部51によって挟持されており、衝打部51から被衝打部62側への押圧力を受けて被押圧部分85(
図8)が弾性変形して扁平状となっている。すなわち、チューブ部材6は、
図11(a)のように衝打部51の押圧力によって常時内部が弾性変形し、被押圧部分85の内部の流路が閉塞されており、薬液100の吐出口8側への流通が遮断されている。
衝打部51の凸部59は、チューブ部材6の被衝打部62の凹部69に対応する部分を押圧している。
【0049】
図8に示される衝打部51の衝打部分の長さ、すなわち、チューブ部材6の被押圧部分85の長手方向の長さDは、吐出させる薬液100の量によって適宜変更できるが、1mm以上30mm以下であることが好ましく、3mm以上10mm以下であることがより好ましい。
この範囲であれば、チューブ部材6内の薬液100を再現性良く吐出できる。
【0050】
続いて、患者が投薬装置1を用いて眼球101の表面への投与する際の想定される一般的なプロセスについて説明する。なお、投薬装置1は、任意の姿勢を取ることができ、上向き、下向き、横向きなどのどの方向からでも薬液100を投与できるが、本発明の特徴の理解を容易にするために、水平方向に薬液100を吐出可能とする場合について説明する。
【0051】
まず、
図10(a),
図10(b)のように、吐出口8が眼球101と対向し水平方向を向いた状態とし、その状態で操作部52を操作すると、付勢部材7から受ける付勢力に抗って衝打部材3が軸部25を中心として回転し、衝打部51がチューブ部材6から離反する。
【0052】
このとき、
図11(a),
図11(b)のようにチューブ部材6の形状が復元し、円筒状となり、毛細管現象によって薬液100が薬液貯蔵部5からチューブ部材6内に自動的に補充される。
【0053】
そして、
図10(b),
図10(c)のように、使用者が操作部52を離すと、付勢部材7の付勢力によって、衝打部材3が軸部25を中心として回転し、チューブ部材6を衝打する。その結果、
図11(b)~
図11(d)のようにチューブ部材6が弾性変形し、チューブ部材6内の薬液100が押し出されて吐出口8から吐出される。
【0054】
このとき、吐出口8から吐出される薬液100は、少量の薬液100であって、吐出口8から少なくとも0cm超過0.5cm以下の範囲において実質的に直線状に吐出される。
またこのときの吐出口8からの薬液100の吐出量は、0.01μL以上100μL以下であることが好ましく、0.1μL以上10μL以下であることがより好ましく、0.1μL以上7μL以下であることが特に好ましい。
この範囲であれば、過剰の薬液100の投与を防止でき、過剰投与で引き起こされる問題や防腐剤等による副作用等を軽減できる。
吐出口8からの薬液100の吐出量の調整方法は、特に限定されないが、例えば、衝打部51の衝打部分の長さDを変更したり、チューブ部材6の内径を変更したりすることで調整可能である。
【0055】
続いて、投薬装置1で好適に使用できる薬液100について説明する。
【0056】
薬液100は、眼科薬として使用されるものであれば特に限定されない。
薬液100は、油性製剤、水性製剤、懸濁製剤、乳化製剤のいずれかであることが好ましく、油性製剤であることがより好ましい。
薬液100の基剤として使用できる溶剤としては、冷所から室温の温度範囲で液状であれば特に限定されない。溶剤としては、例えば、水、エチルアルコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール類、プロピレングリコール、中鎖脂肪酸トリグリセリド、グリセリン、植物油、動物油、鉱物油、パーフルオロカーボン類など、およびこれらの混合物が挙げられる。
薬液100の薬物としては、例えば、グリチルリチン酸二カリウム、イプシロンアミノカプロン酸、アラントイン、塩化ベルベリン、硫酸ベルベリン等の抗炎症剤、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン等の抗ヒスタミン剤、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、シアノコバラミン、レチノール類、塩酸ピリドキシン、パンテノール、パントテン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム等の角膜治療剤、エピネフリン、塩酸エフェドリン、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、塩酸フェニレフリン、dl-塩酸メチルエフェドリン等の充血除去剤、オフロキサシン、レボフロキサシン、トスフロキサシン、ガチフロキサシン、ゲンタマイシン、スルファメトキサゾール、スルフイソキサゾール等の抗菌剤、セファレキシン、イミペネム、メロペネムなどのβ-ラクタム系抗生剤、アムホテリシンB、ケトコナゾール、フルコナゾール等の抗真菌剤、メントール、ボルネオール、カンフル等の清涼化剤、マレイン酸チモロール、塩酸ピロカルピン、カルテオロール、ラタノプロスト、タフルプロスト、トラボプロスト、リパスジル等の緑内障・高眼圧症治療薬、ファコリジン、グルタチオン、ピレノキシン、ペンタセシルスルホン酸ナトリウム等の白内障治療薬、クロラムフェニコール、コリスチン、エリスロマイシン等の抗生物質、ラパマイシン、タクロリムス、シクロスポリン等の免疫抑制剤、酢酸ヒドロコルチゾン、酢酸プレドニゾロン、デキサメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、フルオロメトロン等の副腎皮質ホルモン剤、ブリンゾラミド、ドルゾラミド、メタゾラミド等の炭酸脱水酵素阻害薬、ブリモニジン等のα2遮断薬、ブナゾシン等のα1遮断薬、トコフェロール類、ビタミンC等の抗酸化薬、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸エステル、ゲファルナート、ビタミンU、レバミピド等の粘膜修復剤(ドライアイ治療剤)、リドカイン塩酸塩、ジブカイン塩酸塩等の局所麻酔剤、フルオレセイン、ローズベンガル、シクロペントラート、トロピカミド等の検査薬、タンパク製剤、抗体製剤、核酸製剤などが挙げられる。
【0057】
薬液100の粘度は、特に限定されないが、10000cps以下であることが好ましく、より好ましくは1000cps以下であり、さらに好ましくは300cps以下である。
【0058】
第1実施形態の投薬装置1によれば、操作部52を操作することで薬液100を吐出口8から吐出させるので、患者が上を向く必要がなく、重力に依存せずにあらゆる方向から薬液100を投与できる。そのため、高齢者、リュウマチ患者、握力の乏しい患者などの投薬困難者であっても、患者の眼球101の表面に所定量の微量の薬液100を正確に投与できる。その結果、患者の利便性向上、過剰の薬液100の投与防止、及び防腐剤等の副作用を軽減できる。
また、第1実施形態の投薬装置1によれば、患者が上を向く必要がないため、眼科検査室で検査薬を点眼投与する場合に、患者が座ったままで薬液100を投与でき、利便性を向上できる。
【0059】
第1実施形態の投薬装置1によれば、吐出される薬液量(例えば0.001~7μL)が従来の点眼薬の滴下投与による液滴量(25~50μL)よりもはるかに少ない。そのため、眼球101の表面に吐出される薬液100は、微量であり、薬液100が眼外に流出するおそれがなく、すべて有効に活用できる。
また、第1実施形態の投薬装置1によれば、従来の点眼容器からの滴下投与より微量の薬液100が投与可能となり、薬液100が生体に及ぼす影響も軽減されるので、薬液設計において広いpHレンジ、広い浸透圧幅、広い粘度幅を持たせることが可能となるなど薬液100の設計の自由度が高い。また、油性の薬液100も違和感なく投与が可能となる。
さらに、第1実施形態の投薬装置1によれば、眼球101の表面に投与される薬液100を微量の液滴にできるので、患者は眼球101に違和感が生じたり刺激を感じたりすることを防止できる。
【0060】
第1実施形態の投薬装置1によれば、操作部52を操作することで、チューブ部材6の一部が衝打部51によって衝打され、チューブ部材6内の薬液100の一部が吐出口8から押し出されて吐出される。そのため、微量の薬液100を直線状に吐出できる。
【0061】
第1実施形態の投薬装置1によれば、チューブ部材6は、毛細管現象によって薬液貯蔵部5から吐出口8側に向かって送液する。そのため、自動で容易に薬液100をチューブ部材6内に薬液100を補充できる。
【0062】
第1実施形態の投薬装置1によれば、チューブ部材6は、全域が弾性領域を構成するため、チューブ部材6に複数種類の弾性材料を組み合わせる必要がなく、製造が容易である。
【0063】
第1実施形態の投薬装置1によれば、操作部52を操作することで、衝打部51が付勢部材7からの付勢力に抗って姿勢変更され、付勢力によってチューブ部材6に向かって衝打部51が衝打する。すなわち、付勢部材7の付勢力によって衝打できるため、より正確に薬液100を吐出口8から吐出できる。
【0064】
第1実施形態の投薬装置1によれば、吐出口8が水平方向を向いた状態で操作部52を操作することで、薬液100は吐出口8から少なくとも0cm超過0.5cm以下の範囲が実質的に直線状に吐出される。そのため、医者、看護師、介助支援者等の第三者が投薬する場合でも容易に投薬できる。
【0065】
第1実施形態の投薬装置1によれば、毛細管現象によるチューブ部材6の薬液100の流れ方向の衝打部51の上流側に凸部59が設けられている。そのため、衝打部51によってチューブ部材6を衝打したときに、凸部59が薬液貯蔵部5側への薬液100の移動を堰き止めることができ、より正確に薬液100を吐出口8から吐出できる。
【0066】
続いて、本発明の第2実施形態の投薬装置200について説明する。なお、第1実施形態の投薬装置1と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。以下、同様とする。
【0067】
本発明の第2実施形態の投薬装置200は、
図12のように、ケース部材2と、操作ユニット203と、薬液貯蔵部5と、チューブ部材6と、吐出口8を備えている。
【0068】
操作ユニット203は、第1操作部210と、第2操作部211と、第1係合部212と、第2係合部213と、第1付勢部材215と、第2付勢部材216を備えている。
第1操作部210は、使用者が押圧操作する部位であって、使用者の押圧操作に伴って第1係合部212を押圧する部位である。
第2操作部211は、使用者が押圧操作する部位であって、使用者の押圧操作に伴って第2係合部213を押圧する部位である。
第1係合部212は、
図12のように、所定の方向に延びた板状又は棒状部位であり、第1軸部217と、第1延伸部218と、第2延伸部219で構成されている。
第1軸部217は、ケース部材2の本体壁部20,30に固定され、第1係合部212の長手方向の中間部を軸支する部位である。
第1延伸部218は、第1軸部217を基準として長手方向の一方の端部側に位置する部位であり、チューブ部材6を衝打する衝打部51を備えている。
第2延伸部219は、第1軸部217を基準として長手方向の他方の端部側に位置する部位であり、第1操作部210から押圧される被押圧部221を備えている。
被押圧部221は、第1付勢部材215によって第1操作部210からの押圧方向に対して逆方向側に付勢される被付勢部でもある。
【0069】
第2係合部213は、
図12のように、所定の方向に延びた板状又は棒状部位であり、被押圧部231と、係合片232と、連結部233と、第2軸部235を備えている。
被押圧部231は、第2操作部211から押圧される部位であって、第2付勢部材216によって第2操作部211からの押圧方向に対して逆方向側に付勢される部位である。
係合片232は、第1係合部212と係合する部位であり、連結部233を介して被押圧部231に対して方向性をもって回動可能に連結されている。
連結部233は、具体的には、ヒンジであり、被押圧部231の第2操作部211側の面と、係合片232の第2操作部211側の面を接続している。すなわち、連結部233は、係合片232の被押圧部231に対する第2操作部211側への移動を許容し、係合片232の被押圧部231に対するチューブ部材6側への移動を規制している。
なお、連結部233はピンであってもよい。
第2軸部235は、ケース部材2に固定され、被押圧部231の長手方向の一方の端部(外側端部)を軸支する部位である。
【0070】
続いて、第1操作部210及び第2操作部211を操作していない状態の投薬装置200の各部材の位置関係について説明する。
【0071】
チューブ部材6は、一部が薬液貯蔵部5内に挿入されており、先端部が薬液貯蔵部5内の薬液に浸かっている。
第1操作部210及び第2操作部211は、ケース部材2の側面部42から突出しており、押圧操作可能な状態となっている。
第1係合部212は、中間部が第1軸部217によって回転可能に軸支されている。
第1係合部212は、第1付勢部材215と、第1操作部210との間に配されており、第1付勢部材215から上方側(第1操作部210側)に向けて付勢されている。
衝打部51は、第1付勢部材215による付勢力を受けてチューブ部材6の一部を薬液貯蔵部5の被衝打部62側に押圧している。
【0072】
第2係合部213は、外側端部が第2軸部235によって回転可能に軸支されている。すなわち、第2係合部213は、第2軸部235によって片持ち状に支持されている。
第2係合部213は、第2付勢部材216と、第2操作部211との間に配されており、第2付勢部材216から上方側(第2操作部211側)に向けて付勢されている。
第2係合部213は、係合片232が連結部233を介して被押圧部231と一列に並んでおり、板状又は棒状となっている。
第2軸部235は、第1軸部217に比べて上方側(側面部42側)に位置している。
【0073】
続いて、投薬装置200を用いて使用者に投与する際の投薬方法について説明する。
【0074】
図13(a)のように、使用者が第1操作部210を押圧操作すると、第1付勢部材215の付勢力に逆らって、第1係合部212が第1軸部217を中心として回動し、第2係合部213の係合片232と接触する。
さらに第1操作部210が押圧操作されると、
図13(b)のように係合片232が被押圧部231に対して連結部233を中心として回動して第1係合部212の先端部が第2係合部213の端部よりも上側に位置する。その後、
図13(c)のように第1係合部212が重力によって第1軸部217を中心として逆方向に回動し、使用者が第1操作部210の押圧操作を止めると、第1係合部212と第2係合部213が係合する。
【0075】
このとき、使用者の第1操作部210の押圧操作に伴って衝打部51がチューブ部材6から離反するため、毛細管現象によってチューブ部材6内に薬液100が導入され、チューブ部材6内に薬液100が充填される。
【0076】
続いて、第2操作部211を押圧操作すると、
図14(d)のように、第2係合部213が第2操作部211に押圧され、第2付勢部材216の付勢力に逆らって第2係合部213が第2軸部235を中心として回動する。そして、
図14(e)のように第1係合部212と第2係合部213の係合が解除されると、第1付勢部材215によって第1係合部212が第1軸部217を中心として回動し、
図14(f)のように衝打部51がチューブ部材6の一部を衝打する。そうすると、その衝打力によってチューブ部材6内の薬液100が吐出口8から直線状に吐出される。
【0077】
続いて、本発明の第3実施形態の投薬装置300について説明する。
【0078】
本発明の第3実施形態の投薬装置300は、
図15のように、ケース部材2と、操作ユニット303と、薬液貯蔵部5と、チューブ部材6と、吐出口8を備えている。
【0079】
操作ユニット303は、操作部310と、第1係合部312と、第2係合部313と、第1付勢部材215と、第2付勢部材216を備えている。
操作部310は、使用者が押圧操作する部位であって、使用者の押圧操作に伴って第1係合部312を押圧する部位である。
【0080】
第1係合部312は、所定の方向に延びた板状又は棒状部位であり、被押圧部321と、第1軸部322を備えている。
被押圧部321は、操作部310から押圧される部位であって、第1付勢部材215によって操作部310からの押圧方向に対して逆方向側に付勢される部位である。
第1軸部322は、ケース部材2に固定され、被押圧部321の長手方向の一方の端部(外側端部)を軸支する部位である。
【0081】
第2係合部313は、所定の方向に延びた板状又は棒状部位であり、第2軸部335と、第1延伸部336と、第2延伸部337で構成されている。
第2軸部335は、ケース部材2に固定され、第2係合部313の長手方向の中間部を軸支する部位である。
第1延伸部336は、第2軸部335を基準として長手方向の一方の端部側に位置する部位であり、チューブ部材6を衝打する衝打部51を備えている。
【0082】
第2延伸部337は、第2軸部335を基準として長手方向の他方の端部側に位置する部位であり、本体部341と、係合片342と、連結部343で構成されている。
本体部341は、第1延伸部336と連続して延びる部位である。
係合片342は、第1係合部312と係合する部位であり、連結部343を介して本体部341に対して方向性をもって回動可能に連結されている。
連結部343は、具体的には、ヒンジであり、本体部341の操作部310側の面と、係合片342の操作部310側の面を接続している。なお、連結部343はピンであってもよい。
【0083】
続いて、操作部310を操作していない状態の投薬装置300の各部材の位置関係について説明する。
【0084】
チューブ部材6は、一部が薬液貯蔵部5内に挿入されており、先端部が薬液貯蔵部5内の薬液に浸かっている。
操作部310は、
図16(a)のように、ケース部材2の側面部42から突出しており、押圧操作可能な状態となっている。
第1係合部312は、一方の端部が第1軸部322によって回転可能に軸支されている。すなわち、第1係合部312は、第1軸部322によって片持ち状に支持されている。
第1係合部312は、第1付勢部材215と、操作部310との間に配されており、第1付勢部材215から上方側に向けて付勢されている。
【0085】
第2係合部313は、中間部が第2軸部335によって回転可能に軸支されている。
第2係合部313は、チューブ部材6と上下方向に重なる位置であって、薬液貯蔵部5と第2付勢部材216の間に配されている。
第2係合部313は、衝打部51が第2付勢部材216による付勢力を受けてチューブ部材6の一部を薬液貯蔵部5側に押圧している。
第2係合部313は、係合片342が連結部343を介して本体部341と一列に並んでいる。
第2軸部335は、第1軸部322に比べて下方側(側面部44側)に位置している。
【0086】
続いて、投薬装置300を用いて使用者に投与する際の動作について説明する。
【0087】
使用者が操作部310を押圧操作すると、
図16(a),
図16(b)のように、第1係合部312が操作部310に押圧され、第1付勢部材215の付勢力に逆らって第1係合部312が第1軸部322を中心として回動する。第1係合部312が回動すると、第2係合部313は、内側端部が下方側に押圧され、第2付勢部材216の付勢力に逆らって第2軸部335を中心として第1係合部312から離反する方向に回動する。
【0088】
このとき、使用者の押圧操作に伴って衝打部51がチューブ部材6から離反するため、毛細管現象によってチューブ部材6内に薬液100が導入され、チューブ部材6内に薬液100が充填される。
【0089】
そして、
図16(b),
図16(c)のように、第1係合部312と第2係合部313がともに回動し、互いに離反して係合が解除されると、第2付勢部材216の付勢力によって第2係合部313が回動し、衝打部51がチューブ部材6の一部を衝打する。そうすると、チューブ部材6内の薬液100が吐出口8から吐出される。
【0090】
図17(d),
図17(e)のように使用者が操作部310への押圧操作を止めると、第1付勢部材215の付勢力によって第1係合部312が反転し、係合片342を押圧する。係合片342が押圧されると、係合片342が連結部343を介して回動し、第1係合部312の押圧力を逃がし、第1係合部312が第2係合部313よりも上方に位置する。
【0091】
第3実施形態の投薬装置300によれば、操作部310を押圧操作するだけで、吐出口8から薬液100を吐出させることができ、操作性が良好である。
【0092】
続いて、本発明の第4実施形態の投薬装置500について説明する。なお、投薬装置500もまた、上記の実施形態と同様、任意の姿勢を取ることができ、上向き、下向き、横向きなどのどの方向からでも薬液100を投与できるが、本発明の特徴の理解を容易にするために、水平方向に薬液100を吐出可能とする状態であって、操作部材512が上側となる姿勢を基準として説明する。
【0093】
第4実施形態の投薬装置500は、
図18,
図19のように、本体部501と、薬液カートリッジ502(液体カートリッジ)を備えており、薬液カートリッジ502が本体部501に対して着脱可能となっている。
本体部501は、
図20のように、ケース部材510と、衝打部材511と、操作部材512を備えている。
ケース部材510は、
図20のように、一対のケース部520,521で構成されている。
ケース部材510は、
図19,
図20,
図22から読み取れるように正面壁部530(530a,530b)と、背面壁部531(531a,531b)と、天面壁部532(532a,532b)と、底面壁部533(533a、533b)と、側面壁部535(535a,535b)と、正面側誘導壁部536(536a,536b)と、背面側誘導壁部537(537a,537b)と、位置固定部538(538a,538b)と、衝打用固定部540と、嵌合部541(541a,541b)を備えている。
また、ケース部材510は、各壁部530~535によって囲繞された内部空間542を備えている。
【0094】
正面壁部530は、
図20,
図21のように、外側から内部空間542に向かって前後方向に貫通した薬液通過孔550(液体通過孔)と、上下方向に延びたケース側規制溝551を備えている。
薬液通過孔550は、薬液カートリッジ502の吐出口8から吐出される薬液を通過させる孔である。
ケース側規制溝551は、操作部材512の薬液カートリッジ502の吐出口8を塞ぐ閉塞部583の移動方向を規制する溝であり、その深さは、操作部材512の閉塞部583の長さよりも長い。
【0095】
背面壁部531は、
図19のように、薬液カートリッジ502を装着可能な装着部555を備えている。
装着部555は、
図20のように、外側から内部空間542に向かって延びた装着孔であり、内部空間542と連続した連通孔である。
装着部555は、
図19,
図22のように、薬液カートリッジ502の向きを規制する規制溝556を備えている。
【0096】
天面壁部532は、外側から内部空間542に向かって上下方向に貫通し、内部空間542と連通する連通孔560を備えている。
連通孔560は、操作部材512の操作側押圧部585及び操作側係合部586を挿入可能な挿入孔であり、装着部555の規制溝556とも連続している。
【0097】
一方のケース部521の底面壁部533bには、
図23のように、誘導部561を備えている。
誘導部561は、操作部材512の本体板部595を側面壁部535b側に誘導する三角形状の板状部位である。
本実施形態の誘導部561は、複数の直角三角形状の板状片が前後方向に並んで構成されており、各板状片の斜面によって、側面壁部535b側に傾斜部562が形成されている。
【0098】
側面壁部535は、
図20のように、外側面に上下方向の上端部から下端部側に向かって延びたスライド溝565,566と、係止溝567,568を備えている。
スライド溝565,566は、操作部材512の脚部588,589のスライド方向を上下方向に規制する規制溝である。
係止溝567,568は、上下方向に延び、側壁部581,582の係止爪590,591と係合し、操作部材512のケース部材510からの離反を防止する部位である。
すなわち、係止溝567,568は、係止溝567,568の上端部に位置する内壁部が側壁部581,582の係止爪590,591を係止する係止面を構成している。
【0099】
誘導壁部536,537は、操作部材512の移動方向を上下方向に誘導する部位であり、天面壁部532から上方に突出した壁部である。
位置固定部538は、吐出口8と使用者の眼球101の距離や位置を固定する部位である。
衝打用固定部540は、衝打部材511の接続部572を保持する部位である。
【0100】
嵌合部541(541a,541b)は、互いに嵌合し、ケース部520,521を固定する部位である。
ケース部520,521のうち、一方のケース部520の嵌合部541aは、
図20のように凹部であり、他方のケース部521の嵌合部541bは
図23のように凸部である。
【0101】
衝打部材511は、
図20のように、衝打部570と、弾性部571と、接続部572を備えている。
衝打部570は、平面部58と、平面部58に対して突出した凸部59と、係合部575を備えている。
係合部575は、操作部材512に対して無負荷の状態で操作部材512の係止面597と係合する部位である。
【0102】
弾性部571は、弾性変形可能な部材であり、具体的には板ばねである。
弾性部571は、接続部572を介してケース部材510によって片持ち状に支持されており、接続部572から衝打部570と同方向(前方方向)に向かって延伸している。
接続部572は、衝打用固定部540に固定され、ケース部材510と接続する部位でり、衝打部570の基端部と、弾性部571の基端部を接続する部位でもある。
【0103】
操作部材512は、
図20,
図24のように、操作面部580と、側壁部581,582と、閉塞部583と、操作側押圧部585と、操作側係合部586を備えている。
操作面部580は、使用者が押圧操作する部位であり、投薬装置500の天面を構成する板状部位である。
側壁部581,582は、
図24のように、操作面部580から下方に向けて垂下した壁部であり、本体部587と、脚部588,589を備えている。
本体部587は、前後方向に延びた板状の部位であり、下端部又は下端部近傍に操作部材512のケース部材510からの離反を係止する係止爪590,591を備えている。
脚部588,589は、本体部587の下端部から下方に向けて張り出した張出部である。
【0104】
閉塞部583は、
図24のように、薬液カートリッジ502の吐出口8を塞ぐ部位である。
閉塞部583は、操作面部580から下方に向かって延びた板状体であり、厚み方向に貫通した操作側貫通孔592を備えている。
操作側貫通孔592は、操作部材512を操作したときに薬液カートリッジ502の吐出口8を開放する開放孔である。
操作側押圧部585は、操作面部580から下方に向かって延びた突出部であり、延び方向の端部で衝打部材511の弾性部571を押圧する部位である。
【0105】
操作側係合部586は、
図24のように、本体板部595と、係止部596を備えている。
本体板部595は、操作面部580から下方に向かって延びた突出部であり、延び方向の端部でケース部521の誘導部561を押圧する部位である。
係止部596は、本体板部595の延び方向の中間部に設けられ、衝打部材511の衝打部570の係合部575と係合し、衝打部材511の上方側への移動を係止する部位である。
係止部596は、本体板部595の延び方向に対して交差する方向に突出した凸部であり、係止面597と、傾斜面598を備えている。
係止面597は、下方を向き衝打部570の係合部575に当接して係止する面であり、本体板部595の内側面に対して垂直に立ち上がった垂直面である。
傾斜面598は、本体板部595の内側面に対して鋭角に傾斜した面である。
【0106】
薬液カートリッジ502は、
図25のように、薬液貯蔵部601とチューブ部材6で構成されている。
薬液貯蔵部601は、内部に貯蔵空間65を有し、薬液カートリッジ502の挿入方向に延びた直方体状の部材である。
薬液貯蔵部601は、挿入方向の先端部側から基端部側に向けて切り欠き部602を備えており、チューブ部材6は、切り欠き部602内に配されている。
切り欠き部602の内面には、被衝打部62があり、平面部68と凹部69が形成されている。
薬液貯蔵部601は、
図19のように、挿入方向の基端部から先端部に向けて凸条部603を備えている。
【0107】
続いて、操作部材512を操作していない状態、すなわち、無負荷状態の投薬装置500の各部材の位置関係について説明する。
【0108】
投薬装置500は、
図21のように、ケース部材510内に衝打部材511及び薬液カートリッジ502が配されており、ケース部材510に外側に操作部材512が覆っている。
ケース部材510は、
図20のように、ケース部520,521が側面壁部535a,535bが外側となるように接続されている。
ケース部520の嵌合部541aは、ケース部521の嵌合部541bが挿入されて嵌合している。
衝打部材511は、
図21のように、接続部572がケース部材510の衝打用固定部540に固定されており、ケース部材510によって衝打部570及び弾性部571が片持ち状に支持されている。すなわち、衝打部570及び弾性部571の基端部は衝打用固定部540に固定され、先端部は自由端となっている。
操作部材512は、
図18,
図19のように、操作面部580がケース部材510の誘導壁部536,537の突出方向の先端面と同一平面を構成して面一となっている。
操作部材512は、閉塞部583がケース部材510のケース側規制溝551に挿入されており、薬液通過孔550を閉塞している。すなわち、投薬装置500は、薬液通過孔550が閉塞部583によって閉塞された閉塞状態となっている。
薬液カートリッジ502は、装着部555に装着されており、凸条部603がケース部材510の規制溝556に挿入されている。
【0109】
続いて、投薬装置500を用いて使用者に投与する際の投薬方法について説明する。
【0110】
まず、
図19から読み取れるように、本体部501の装着部555に所望の薬液が封入された薬液カートリッジ502を挿入する。
【0111】
このとき、薬液カートリッジ502は、装着部555の規制溝556に沿って直線状に移動し、チューブ部材6が衝打部570と対向するように配置される。
また、このとき、投薬装置500は
図18(a)のように閉塞状態であるから、薬液通過孔550が閉塞部583によって閉塞されており、チューブ部材6の吐出口8は閉塞部583と対向する。
【0112】
続いて、
図26(a),
図26(b)のように、使用者が指で操作部材512の操作面部580を押圧操作すると、操作部材512の操作側押圧部585が弾性部571を押圧し、操作側係合部586の係止部596の係止面597が衝打部570の係合部575を押圧して弾性部571及び衝打部570が接続部572を中心として回転する。
【0113】
操作部材512の操作面部580を押圧操作していき、
図26(b)のように、本体板部595の先端面がケース部材510の誘導部561に接触した状態でさらに弾性部571及び衝打部570がさらに回転すると、誘導部561の傾斜部562に沿って本体板部595が外側に移動し、係止部596の係止面597と衝打部570の係合部575の係合が解除される。
【0114】
このとき、操作側貫通孔592が薬液通過孔550と直線状に並び、薬液通過孔550が開放され、
図18(b)に示される開放姿勢となる。
【0115】
係止部596の係止面597と衝打部570の係合部575の係合が解除されると、
図27(c)のように、衝打部570が自身の復元力によって接続部572を中心として回動し、衝打部570がチューブ部材6の一部を衝打する。
そうすると、その衝打力によってチューブ部材6内の薬液100が吐出口8から直線状に吐出され、薬液通過孔550及び操作側貫通孔592を通過して使用者の眼球101に至る。
【0116】
このとき、衝打部570に接続部572を回転中心とした遠心力が働き、衝打部570は、接続部572の高さを超えて慣性によりチューブ部材6の弾性領域を衝打する。
【0117】
衝打部570は、
図27(d)のように、チューブ部材6を衝打後、再度、逆向きの復元力により閉塞状態における位置に戻ろうとする。
【0118】
使用者が操作面部580の押圧操作をやめると、
図27(d),
図28(e)のように、弾性部571の復元力によって操作部材512が上方へ移動し、
図28(e)のように、傾斜面598に沿って衝打部570の係合部575が移動し、傾斜面598を乗り越えて係止面597と衝打部570の係合部575が係合する。また、操作部材512の上方への移動に伴って閉塞部583がケース側規制溝551に沿って移動し、
図18(a)に示される薬液通過孔550が閉塞部583によって閉塞された閉塞状態に戻る。
【0119】
本実施形態の投薬装置500によれば、薬液カートリッジ502が本体部501に対して着脱可能であるため、薬液切れの場合や異なる薬液を点眼したいときに容易に交換できる。
【0120】
本実施形態の投薬装置500によれば、押圧操作をしないときには、薬液通過孔550を閉塞部583が閉塞した閉塞状態となり、押圧操作を行ったときには、押圧操作に伴って閉塞部583が移動して薬液通過孔550を自動で開放する。すなわち、押圧操作をしないときは、常時、チューブ部材6の吐出口8が閉塞部583で保護された状態となっているため、薬液カートリッジ502を交換するときや点眼のとき以外は吐出口8が外部に晒されず、吐出口8が汚染されにくい。
【0121】
本実施形態の投薬装置500によれば、押圧操作することで、衝打部570が弾性変形し、その復元力によって衝打部570が接続部572よりも高い位置にある弾性領域の少なくとも一部を衝打する。すなわち、振り子のように、衝打部570の復元力及び慣性力によって衝打部570がチューブ部材6を衝打するため、衝打用の付勢部材をさらに設ける必要がなく、コストを軽減できる。
【0122】
続いて、本発明の第5実施形態の投薬装置700について説明する。
【0123】
第5実施形態の投薬装置700は、
図29,
図30のように、本体部501の装着部555に対して複数の薬液カートリッジ502a,502bを個別に着脱可能となっている。
投薬装置700は、第4実施形態の投薬装置500と同様、閉塞状態では各薬液カートリッジ502a,502bの吐出口8,8が閉塞部583で遮られており、操作面部580を押圧操作することで開放状態に変更されて、各薬液カートリッジ502a,502bの吐出口8,8が操作側貫通孔592と重なって開放され、各薬液カートリッジ502a,502bの薬液が同時に吐出口8,8から吐出可能となる。
【0124】
第5実施形態の投薬装置700によれば、本体部501に対して複数の薬液カートリッジ502a,502bを取り付け可能であるため、異なる種類の薬液を同時に投与することができ、多剤投与の煩わしさから患者を解放することができる。
【0125】
第5実施形態の投薬装置700によれば、各薬液カートリッジ502a,502bを個別に交換できるので、薬液カートリッジ502a,502b内の薬液を最後まで使用できる。
【0126】
上記した実施形態では、チューブ部材6は、薬液貯蔵部5から吐出口8まで一律の内径を有していたが、本発明はこれに限定されるものではない。チューブ部材6の薬液貯蔵部5内から吐出口8までの間の一部に狭窄部を設けてもよい。例えば、チューブ部材6の被衝打部分の吐出口8側の端部にオリフィスを設けてもよい。こうすることで、薬液100の吐出距離を向上させることができる。
【0127】
上記した実施形態では、被衝打部62に凹部69を設け、衝打部51に凸部59を設けていたが、本発明はこれに限定されるものではない。
図31(a)のように被衝打部62に凸部59を設け、衝打部51に凹部69を設けてもよいし、
図31(b)のようにチューブ部材6の内部に凸部400を設けてもよい。
また、被衝打部62及び衝打部51に、凸部59や凹部69を設けなくてもよい。すなわち、被衝打部62や衝打部51が平面部68や平面部58のみで構成されていてもよい。
【0128】
上記した実施形態では、チューブ部材6の断面形状が円形状であったが、本発明はこれに限定されるものではない。チューブ部材6の断面形状は、三角形や、四角形、五角形、六角形等の多角形状であってもよいし、扁平状や、楕円状、オーバル状であってもよい。
【0129】
上記した実施形態では、チューブ部材6は、肉厚が均一であったが、本発明はこれに限定されるものではない。部分的に薄肉の部分があってもよい。例えば、チューブ部材6の被衝打部分を他の部分に比べて厚肉としてもよい。
【0130】
上記した実施形態では、チューブ部材6全体が弾性材料で構成され、全域が弾性領域となっていたが、本発明はこれに限定されるものではない。チューブ部材6の長手方向の少なくとも一部、例えば、チューブ部材6の衝打部51に衝打される領域のみ又は衝打される領域の近傍のみが弾性領域となっていてもよい。
【0131】
上記した実施形態では、チューブ部材6は、一つの弾性材料で構成されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。チューブ部材6は、
図32のように、弾性材料で構成される弾性層420と硬質材料で構成される硬質層421の2層構造となっていてもよいし、3層以上であってもよい。すなわち、チューブ部材6は、多層構造となっていてもよい。この場合、少なくとも衝打部51による被押圧部分85は、弾性領域として弾性層420が露出することが好ましい。
【0132】
上記した実施形態では、衝打部材3が付勢部材7からの付勢力に抗って姿勢変更して、その反力を利用して衝打部51で衝打したが、本発明はこれに限定されるものではない。衝打部材3が付勢部材7からの付勢力に抗って移動して、その反力を利用して衝打部51で衝打してもよい。
【0133】
上記した実施形態では、投薬装置1,200,300,500,700を点眼に用いた場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。投薬装置1,200,300,500,700を点鼻や、点耳、経口、経皮投与に用いてもよい。
【0134】
上記した実施形態では、薬液貯蔵部5の貯蔵空間65は、投薬装置1の吐出口8が水平方向を向く姿勢において水平方向に延びていたが、本発明はこれに限定されるものではない。薬液貯蔵部5の貯蔵空間65は、例えば、
図33のように、投薬装置1の吐出口8が水平方向を向く姿勢において鉛直方向に延びていてもよい。この場合、薬液貯蔵部5の底部の一部又は全部は、チューブ部材6に向かって下り傾斜し、薬液100をチューブ部材6に導く導入部450を備えていることが好ましい。
【0135】
上記した第1~第3実施形態では、薬液ユニット4は、ケース部材2に対して着脱不能となっていたが、本発明はこれに限定されるものではない。薬液ユニット4は、ケース部材2に対して着脱可能となっていてもよい。こうすることで、カートリッジ方式のように、使用済みの薬液ユニット4を新品の薬液ユニット4に交換することができる。そのため、薬液ユニット4以外の他の部材を再利用することができる。
【0136】
上記した実施形態の投薬装置1は、必要に応じて、吐出口8とチューブ部材6を保護する保護カバーを設けてもよい。
【0137】
上記した第1~第3実施形態の投薬装置1は、必要に応じて、吐出口8と眼球101の距離や位置を固定する固定治具等を設けてもよい。
【0138】
上記した実施形態では、衝打部51,570が姿勢変更することで、チューブ部材6を衝打していたが、本発明はこれに限定されるものではない。衝打部51,570がチューブ部材6に対して相対移動することで、チューブ部材6を衝打してもよい。
【0139】
上記した第4実施形態では、操作部材512を操作することで、閉塞部583が薬液通過孔550を閉塞した閉塞状態と、閉塞部583がケース部材510に対して相対移動して薬液通過孔550を開放する開放状態との間で変更したが、本発明はこれに限定されるものではない。操作部材512を操作することで、閉塞部583がケース部材510に対して姿勢変更して、閉塞状態から開放状態に変更してもよい。
【0140】
上記した実施形態では、液体吐出装置を投薬装置として使用する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の液体吐出装置は、他の用途でも使用可能である。例えば、液体分注ピペットの代わりや接着剤塗布具、アロマオイル、香水等の滴下器、精密部品の注油装置、動物薬投与装置、殺虫剤吐出装置としても使用できる。
【0141】
上記した実施形態は、本発明の技術的範囲に含まれる限り、各実施形態間で各構成部材を自由に置換や付加できる。
【実施例0142】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施できる。
【0143】
(実施例1)
チューブ部材として、内径が0.5mm、外形が0.6mmのシリコンチューブを用い、衝打部の衝打部分の長さ(チューブ部材の被押圧部分の長さD)を6mmとした。また、薬液として中鎖脂肪酸トリグリセリド(比重0.953g/cm3)を用いた。これを実施例1とした。
【0144】
(実施例2)
実施例1において、チューブ部材の吐出口にオリフィス径が0.15mmのオリフィスを設けたこと以外同様にし、これを実施例2とした。
【0145】
(吐出量試験)
薬液貯留部からチューブ部材へは、毛細管現象で薬液を移送することからその吐出間隔(投与間隔:1秒、5秒、10秒、20秒)を変更した際に吐出量に及ぼす影響を検討した。
その際、薬液として中鎖脂肪酸トリグリセリドを用い、セミミクロ天秤を用いて吐出量を重量として測定した後、薬液の比重より吐出量(μL)を算出した(試験温度は室温)。具体的には、10回吐出し、総重量(mg)を測定したものから一回吐出量(μL)を算出した。
その結果を表1に示す。
【0146】
【0147】
表1のように、実施例1の吐出量は、通常の点眼ボトルからの吐出量(約40μL~50μL程度)に比べて1/80以下であり、十分に微量な量となった。オリフィスありの実施例2では、オリフィスにより吐出抵抗が発生するため、オリフィスなしの実施例1よりも吐出量が少なくなった。
実施例1,2は、表1のように、繰り返し吐出した場合でもいずれも一回吐出量(一滴量)の標準偏差が0.05以下になり、精度が高かった。また、実施例1,2は、繰り返し吐出する際の吐出間隔を1秒、5秒、10秒、20秒と変更した場合、吐出量がわずかに上昇する傾向にあるが、問題になるレベルではなかった。
【0148】
以上により、微量の薬液を高精度で定量的に投与可能であることがわかった。また、薬液の軌跡から微量の薬液を直線的に吐出できることがわかった。