(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114881
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】飼料用組成物及びその製造方法、飼料、家畜への給餌方法、並びに家畜の飼料に対する嗜好性向上方法
(51)【国際特許分類】
A23K 20/20 20160101AFI20240816BHJP
A23K 10/16 20160101ALI20240816BHJP
A23K 10/38 20160101ALI20240816BHJP
【FI】
A23K20/20
A23K10/16
A23K10/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024103993
(22)【出願日】2024-06-27
(62)【分割の表示】P 2023129001の分割
【原出願日】2023-08-08
(31)【優先権主張番号】P 2022154062
(32)【優先日】2022-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591118775
【氏名又は名称】白鶴酒造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100213403
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 いぶき
(72)【発明者】
【氏名】宍倉 竜樹
(72)【発明者】
【氏名】窪寺 隆文
(72)【発明者】
【氏名】明石 貴裕
(57)【要約】
【課題】醸造酒の製造において使用された活性炭を有効活用することができ、炭が有する糞の臭気低減効果、下痢の防止効果、及び体重増加効果を保持しつつ、さらには嗜好性が良好な飼料用組成物及びその製造方法、前記飼料用組成物を含む飼料、並びに前記飼料用組成物を用いた家畜への給餌方法及び家畜の飼料に対する嗜好性向上方法の提供。
【解決手段】醸造酒の製造工程で生じる発酵物における液体に含まれる成分を吸着させた活性炭を含む飼料用組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
醸造酒の製造工程で生じる発酵物における液体に含まれる成分を吸着させた活性炭を含むことを特徴とする飼料用組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の飼料用組成物の製造方法であって、
醸造酒の製造工程で生じた発酵物における液体を活性炭で処理する処理工程と、
前記処理工程後の活性炭を回収する回収工程とを含むことを特徴とする飼料用組成物の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の飼料用組成物を含むことを特徴とする飼料。
【請求項4】
請求項1に記載の飼料用組成物を飼料に添加することを含むことを特徴とする家畜への給餌方法。
【請求項5】
請求項1に記載の飼料用組成物を飼料に添加することを含むことを特徴とする家畜の飼料に対する嗜好性向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飼料用組成物及びその製造方法、飼料、家畜への給餌方法、並びに家畜の飼料に対する嗜好性向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
醸造酒の製造では、活性炭が使用されている。例えば、清酒の製造では、清酒の清澄濾過において、活性炭が使用されている。この清澄濾過に使用された活性炭(以下、「清酒処理炭」と称することがある。)は堆肥や肥料として利用されている。しかしながら、清酒処理炭は非常に安価で引き取りされているため、さらなる有効活用が課題として挙げられる。
【0003】
清酒処理炭については、pol阻害活性があることなどが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
他方で、炭には家畜が食べることで、糞の臭気の低減(例えば、非特許文献2参照)、下痢の防止(例えば、非特許文献3参照)、体重の増加効果(例えば、非特許文献4参照)があることが知られている。
【0005】
家畜類の排泄物を改善し環境衛生を向上させると共に、家畜類の食欲を増進させる技術として、焼成ゼオライトと、果物搾汁粕発酵物と、米糠熱水抽出液と、木炭粉末と、乳酸菌水と、果汁と、を含む飼料補助剤が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
酒粕には粗飼料の消化を促進する効果があるが、一方で牛によって嗜好性に差が見られることが報告されている(例えば、非特許文献5参照)。
【0007】
上記したように、醸造酒の製造において使用された活性炭の新たな活用方法が求められている。また、家畜に与える飼料には嗜好性が高いことが求められるが、既存の飼料用の炭では嗜好性が十分とはいえず、嗜好性が良好であり、飼料として有用な新たな素材の開発が求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】水品善之、兵庫県内の食品産業廃棄物の有効利用を目指した新規な健康機能性食品の開発、ひょうご科学技術協会 学術研究助成成果報告書(2013)
【非特許文献2】佐々木浩一、他、籾殻炭添加飼料給与による豚糞からの臭気低減効果、秋田県農林水産技術センター畜産試験場、23号、48~53ページ、2009年3月
【非特許文献3】青木康浩、他、炭の給与が子牛の糞性状、健康状態および発育に及ぼす影響、日本家畜管理学会・応用動物行動学会合同2010年度春季研究発表会(2010)
【非特許文献4】飛岡 久弥、濃厚飼料多給下の褐毛和種肥育牛の成長に及ぼす活性炭給与の効果、九州東海大学農学部紀要、九州東海大学農学部、14巻、49~55ページ、1995年3月
【非特許文献5】酒粕給与による黒毛和種肥育技術、あたらしい農業技術 No.671、静岡県経済産業部、令和2年度
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、醸造酒の製造において使用された活性炭を有効活用することができ、炭が有する糞の臭気低減効果、下痢の防止効果、及び体重増加効果を保持しつつ、さらには嗜好性が良好な飼料用組成物及びその製造方法、前記飼料用組成物を含む飼料、並びに前記飼料用組成物を用いた家畜への給餌方法及び家畜の飼料に対する嗜好性向上方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、醸造酒の製造において使用された活性炭を飼料に配合すると、家畜の糞の臭気を低減し、下痢を防止し、体重を増加させつつ、さらには家畜の飼料に対する嗜好性を向上することができることを知見した。
【0012】
本発明は、本発明者らの前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 醸造酒の製造工程で生じる発酵物における液体に含まれる成分を吸着させた活性炭を含むことを特徴とする飼料用組成物である。
<2> 前記<1>に記載の飼料用組成物の製造方法であって、
醸造酒の製造工程で生じた発酵物における液体を活性炭で処理する処理工程と、
前記処理工程後の活性炭を回収する回収工程とを含むことを特徴とする飼料用組成物の製造方法である。
<3> 前記<1>に記載の飼料用組成物を含むことを特徴とする飼料である。
<4> 前記<1>に記載の飼料用組成物を飼料に添加することを含むことを特徴とする家畜への給餌方法である。
<5> 前記<1>に記載の飼料用組成物を飼料に添加することを含むことを特徴とする家畜の飼料に対する嗜好性向上方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、醸造酒の製造において使用された活性炭を有効活用することができ、炭が有する糞の臭気低減効果、下痢の防止効果、及び体重増加効果を保持しつつ、さらには嗜好性が良好な飼料用組成物及びその製造方法、前記飼料用組成物を含む飼料、並びに前記飼料用組成物を用いた家畜への給餌方法及び家畜の飼料に対する嗜好性向上方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(飼料用組成物及びその製造方法)
本発明の飼料用組成物は、醸造酒の製造工程で生じる発酵物における液体に含まれる成分を吸着させた活性炭を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。
前記飼料用組成物は、本発明の飼料用組成物の製造方法により、好適に製造することができる。
以下、本発明の飼料用組成物の製造方法の説明と併せて本発明の飼料用組成物を説明する。
【0015】
<飼料用組成物の製造方法>
本発明の飼料用組成物の製造方法は、本発明の飼料用組成物の製造方法であって、処理工程と、回収工程とを少なくとも含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
【0016】
-処理工程-
前記処理工程は、醸造酒の製造工程で生じた発酵物における液体を活性炭で処理する工程である。
前記処理工程は、醸造酒に含まれる不要成分を除去するために行われる清澄化工程と同様にして行うことができる。例えば、清酒の製造工程では、上槽後の清酒を清澄化するための工程が、前記処理工程に相当する。
前記処理工程により、醸造酒の製造において不要とされる成分を活性炭に吸着させることができる。
【0017】
前記醸造酒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、清酒、みりん、梅酒、ワイン、ビールなどが挙げられる。
【0018】
前記醸造酒の製造において不要とされる成分とは、例えば、酒類の着色の原因となるフラビン系やメラニン系の色素など、蛋白混濁(白ボケ)の原因となる蛋白質などが挙げられる。
【0019】
前記処理の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記醸造酒の製造工程で生じた発酵物における液体に、前記活性炭を添加し、撹拌した後、静置する方法などが挙げられる。
前記醸造酒の製造工程で生じた発酵物における液体は、前記発酵物を固液分離することにより、調製することができる。
【0020】
前記活性炭としては、特に制限はなく、醸造酒の製造に用いられるものを目的に応じて適宜選択することができる。
前記活性炭は、市販品を用いてもよいし、公知の方法により調製した活性炭を用いてもよい。
【0021】
前記活性炭の製造に用いる植物原料としては、特に限定はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、杉、ヒノキ、白樺、カエデ、ブナ、竹、ナラ、クヌギ、カシ、ウバメガシなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
前記活性炭の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、醸造酒の製造工程で生じた発酵物における液体1kLに対して、活性炭を0.1~2kg使用するなどが挙げられる。
【0023】
前記撹拌の条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0024】
前記静置の期間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一晩などが挙げられる。
【0025】
なお、前記処理工程では、活性炭以外に、濾過助剤や滓下げ剤を更に用いてもよい。
【0026】
前記濾過助剤としては、特に制限はなく、醸造酒の製造に用いられるものを目的に応じて適宜選択することができ、例えば、植物由来のセルロース、珪藻土などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記濾過助剤は、市販品を用いてもよいし、公知の方法により調製した濾過助剤を用いてもよい。
前記濾過助剤の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0027】
前記滓下げ剤としては、特に制限はなく、醸造酒の製造に用いられるものを目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルギン酸ナトリウム、活性白土、ベントナイト、二酸化ケイ素、柿渋などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記滓下げ剤は、市販品を用いてもよいし、公知の方法により調製した滓下げ剤を用いてもよい。
前記滓下げ剤の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0028】
-回収工程-
前記回収工程は、前記処理工程後の活性炭を回収する工程である。
【0029】
前記回収の方法としては、固体と液体とを分離することができれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、濾過などが挙げられる。
【0030】
前記濾過の方法としては、特に制限はなく、公知の装置を用いて行うことができる。
前記濾過においては、上記した濾過助剤などのその他の成分を更に用いてもよい。
【0031】
前記濾過助剤の使用方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、濾過機の濾布や網目に貼り付けて使用する方法などが挙げられる。
【0032】
-その他の工程-
前記飼料用組成物の製造方法におけるその他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記醸造酒の製造工程で生じた発酵物における液体を調製する調製工程などが挙げられる。
【0033】
--調製工程--
前記調製工程は、醸造酒の製造工程で生じた発酵物を液体と、固体とに分け、前記醸造酒の製造工程で生じた発酵物における液体を調製する工程である。
【0034】
例えば、前記醸造酒が清酒の場合、前記調製工程は、清酒の製造工程における上槽に相当する。前記上槽は、製造工程で生じた発酵物である醪を、液体の清酒と、固体の酒粕とに分け、清酒を調製する工程である。
【0035】
前記調製工程の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、自動圧搾機を用いる方法、袋吊りによる方法、槽搾りによる方法などが挙げられる。
【0036】
<飼料用組成物>
本発明の飼料用組成物は、醸造酒の製造工程で生じる発酵物における液体に含まれる成分を吸着させた活性炭を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。
【0037】
-醸造酒の製造工程で生じる発酵物における液体に含まれる成分を吸着させた活性炭-
前記醸造酒の製造工程で生じる発酵物における液体に含まれる成分を吸着させた活性炭に予想外に栄養成分が含まれていることや家畜の飼料に対する嗜好性を向上することができること、さらには、前記醸造酒の製造工程で生じる発酵物における液体に含まれる成分を吸着させた活性炭が、醸造酒の製造工程で使用済みの活性炭でありながら、従来の炭が有する糞の臭気低減効果、下痢の防止効果、及び体重増加効果を保持していることは、従来は全く知られておらず、本発明者らによる新たな知見である。
【0038】
前記醸造酒の製造工程で生じる発酵物における液体に含まれる成分を吸着させた活性炭に含まれる栄養成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0039】
前記醸造酒の製造工程で生じる発酵物における液体に含まれる成分を吸着させた活性炭における栄養成分の一例としては、例えば、下記が挙げられる。なお、水分は乾燥法、粗蛋白質はケルダール法、粗脂肪はジエチルエーテル抽出法、粗繊維は静置法、粗灰分は直接灰化法を用いて分析を行うことができる。
・ 水分 ・・・ 50~55質量%
・ 粗蛋白質(CP) ・・・ 5~11質量%
・ 粗脂肪(EE) ・・・ 1~3質量%
・ 粗繊維(CF) ・・・ 7~31質量%
・ 粗灰分(CA) ・・・ 1~7質量%
・ 可溶無窒素物(NFE) ・・・ 4~26質量%
【0040】
前記飼料用組成物における前記醸造酒の製造工程で生じる発酵物における液体に含まれる成分を吸着させた活性炭の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記飼料用組成物は、前記醸造酒の製造工程で生じる発酵物における液体に含まれる成分を吸着させた活性炭のみからなるものであってもよい。
【0041】
-その他の成分-
前記飼料用組成物におけるその他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、家畜の飼料に利用される成分などが挙げられる。前記その他の成分は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記飼料用組成物における前記その他の成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0042】
前記飼料用組成物が前記その他の成分を含むものである場合の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記醸造酒の製造工程で生じる発酵物における液体に含まれる成分を吸着させた活性炭と、前記その他の成分とを混合することにより製造することができる。
【0043】
本発明の飼料用組成物は、炭が有する糞の臭気低減効果、下痢の防止効果、及び体重増加効果を保持しつつ、さらには家畜の飼料に対する嗜好性を向上することができる。
前記飼料用組成物は、後述の本発明の飼料、家畜への給餌方法、家畜の飼料に対する嗜好性向上方法に好適に用いることができる。
【0044】
(飼料)
本発明の飼料は、本発明の飼料用組成物を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。
【0045】
前記飼料は、家畜の飼料に好適に用いることができる。
前記家畜としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、牛、豚、鶏、山羊、羊などが挙げられる。前記家畜の年齢としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0046】
<飼料用組成物>
前記飼料用組成物は、上述した本発明の飼料用組成物である。
【0047】
前記飼料における前記飼料用組成物の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記醸造酒の製造工程で生じる発酵物における液体に含まれる成分を吸着させた活性炭の量として、0.5~40質量%が好ましく、0.5~30質量%がより好ましく、1~20質量%が特に好ましい。
【0048】
<その他の成分>
前記飼料におけるその他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、家畜の飼料に利用される成分などが挙げられる。前記その他の成分は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記飼料における前記その他の成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0049】
前記飼料の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の家畜の飼料に添加し、混合する方法などが挙げられる。
前記飼料の形状、構造、大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0050】
前記飼料の家畜への給餌量、給餌期間、給餌頻度(給餌間隔)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0051】
本発明の飼料は、炭が有する糞の臭気低減効果、下痢の防止効果、及び体重増加効果を保持しつつ、さらには家畜の飼料に対する嗜好性を向上することができる。
【0052】
(家畜への給餌方法、家畜の飼料に対する嗜好性向上方法)
本発明の家畜への給餌方法(以下、「給与方法」と称することもある。)は、本発明の飼料用組成物を飼料に添加する添加工程を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
本発明の家畜の飼料に対する嗜好性向上方法は、本発明の飼料用組成物を飼料に添加する添加工程を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
【0053】
<添加工程>
前記添加工程は、本発明の飼料用組成物を飼料に添加する工程である。
【0054】
-飼料用組成物-
前記飼料用組成物は、上述した本発明の飼料用組成物である。
【0055】
-飼料-
前記飼料としては、特に制限はなく、公知の家畜の飼料を目的に応じて適宜選択することができる。
【0056】
前記飼料用組成物の前記飼料への添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記飼料用組成物と前記飼料との合計量における前記醸造酒の製造工程で生じる発酵物における液体に含まれる成分を吸着させた活性炭の量として、0.5~40質量%が好ましく、0.5~30質量%がより好ましく、1~20質量%が特に好ましい。
【0057】
前記飼料用組成物は、前記飼料と混合した状態で使用してもよいし、前記飼料にふりかけた状態で使用してもよい。
【0058】
<その他の工程>
前記家畜への給餌方法又は家畜の飼料に対する嗜好性向上方法におけるその他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0059】
本発明の家畜への給餌方法によれば、家畜の糞の臭気を低減し、下痢を防止し、体重を増加させつつ、さらには家畜の飼料に対する嗜好性を向上することができる。
【0060】
本発明の家畜の飼料に対する嗜好性向上方法によれば、家畜の飼料に対する嗜好性を向上することができる。
【0061】
本発明において、家畜の飼料に対する嗜好性が向上するとは、前記飼料用組成物を含む飼料を給餌した場合に、前記飼料用組成物を含まない飼料を給餌した場合と比べて飼料を摂取する速度又は摂取する量が増加することをいう。
【実施例0062】
以下に製造例、試験例などを挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの製造例、試験例などに何ら限定されるものではない。
【0063】
(製造例1)
醸造酒の製造工程で生じた発酵物における液体として上槽後の清酒(普通酒、白鶴酒造株式会社製)を用い、下記のようにして、飼料用組成物を製造した。
濾過助剤(セリッシュ、川北化学株式会社製)30kgを水に懸濁後、濾過圧搾機で濾過を行い、濾過機の濾布に前記濾過助剤を貼り付けた。
前記上槽後の清酒300kLに、活性炭(くじゃく特選 YV-特、川北化学株式会社製)を300kg添加し、十分撹拌し、一晩静置した後、濾過機で濾過を行い、清酒と活性炭とを分離し、醸造酒の製造工程で生じる発酵物における液体に含まれる成分を吸着させた活性炭(飼料用組成物、以下、「清酒処理炭」と称することがある。)を回収した。
【0064】
上記で得られた清酒処理炭の栄養成分を測定した結果を下記に示す。なお、水分は乾燥法、粗蛋白質はケルダール法、粗脂肪はジエチルエーテル抽出法、粗繊維は静置法、粗灰分は直接灰化法を用いて分析を行った。
・ 水分 ・・・ 51質量%
・ 粗蛋白質(CP) ・・・ 10質量%
・ 粗脂肪(EE) ・・・ 1質量%
・ 粗繊維(CF) ・・・ 27質量%
・ 粗灰分(CA) ・・・ 1質量%
・ 可溶無窒素物(NFE) ・・・ 10質量%
【0065】
<評価>
-糞の臭気低減-
製造例1で得た清酒処理炭を、畜舎の肥育牛の飼料に質量比1%で混合し、毎日与え続けた。3ヵ月後に、新鮮糞中の悪臭成分(硫化水素、メルカプタン類)の濃度を検知管で測定した。
その結果、対照区(清酒処理炭なし)では、硫化水素の濃度は4.0ppm/100g、メルカプタン類の濃度は8.0ppm/100gであった。一方、試験区(清酒処理炭あり)では、硫化水素の濃度は0.5ppm/100g、メルカプタン類の濃度は0.6ppm/100gであり、大幅に臭気が低減していることが分かった。
【0066】
-下痢の抑制-
製造例1で得た清酒処理炭を、離乳後すぐから生後3ヵ月までの子牛の飼料に質量比1%で混合し、出荷まで毎日与え続けた。
その結果、期間中の下痢の発生率は、前記清酒処理炭を与える前は3割ほどであったが、投与開始後は1割未満に低下した。
【0067】
-体重の増加-
月齢2~3ヵ月の仔牛に対して、製造例1で得た清酒処理炭を飼料の質量比1%になるように飼料へ混合し、仔牛の出荷まで約6ヵ月間給与した。
その結果、前記清酒処理炭を給与した仔牛の体重増加は、前記清酒処理炭添加なしの仔牛と比べて約1割増しで推移した。
【0068】
-嗜好性-
製造例1で製造した清酒処理炭を牛に与えることにより、その嗜好性を調べた。具体的には、1群4頭の牛に対して、(1)清酒処理炭、(2)活性炭、(3)酒粕各100gを同時に与え、5分間で食べた量(以下、「食込量」と称する。)を測定した。試験は2群に対して行い、その平均値を算出した。結果を表1に示す。
【0069】
【0070】
表1の結果からも明らかなように、清酒処理炭は、活性炭や酒粕よりも高い嗜好性を持つことが分かった。
【0071】
(製造例2)
醸造酒の製造工程で生じた発酵物における液体として上槽後の清酒(普通酒、白鶴酒造株式会社製)を用い、下記のようにして、飼料用組成物を製造した。
濾過助剤(セリッシュ、川北化学株式会社製)30kgを水に懸濁後、濾過圧搾機で濾過を行い、濾過機の網目に前記濾過助剤を貼り付けた。
前記上槽後の清酒200kLに、活性炭(くじゃく特選 YV-特、川北化学株式会社製)を200kg添加した後、滓下げ剤(コポロック、大塚食品株式会社製)を60kg添加して1時間よく撹拌して清酒中の蛋白質と反応させた。続いて、滓下げ剤(サケライト、株式会社武蔵野化学研究所製)を10kg添加し、一晩静置した後、濾過機で濾過を行い、清酒と活性炭とを分離し、清酒処理炭を回収した。
【0072】
上記で得られた清酒処理炭の栄養成分を製造例1と同様にして測定した。結果を下記に示す。
・ 水分 ・・・ 52質量%
・ 粗蛋白質(CP) ・・・ 6質量%
・ 粗脂肪(EE) ・・・ 2質量%
・ 粗繊維(CF) ・・・ 11質量%
・ 粗灰分(CA) ・・・ 6質量%
・ 可溶無窒素物(NFE) ・・・ 23質量%
【0073】
製造例2で得られた清酒処理炭について、製造例1と同様にして評価したところ、製造例1の清酒処理炭と同様に、糞の臭気が低減され、下痢を抑制し、体重を増加させ、また、嗜好性が良好であることが確認された。