(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114885
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】多形化合物およびその使用
(51)【国際特許分類】
C07D 473/24 20060101AFI20240816BHJP
A61K 31/52 20060101ALI20240816BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20240816BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240816BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240816BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240816BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20240816BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240816BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240816BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
C07D473/24 CSP
A61K31/52
A61P1/00
A61P9/00
A61P9/10
A61P25/00
A61P25/24
A61P25/16
A61P25/28
A61P43/00 111
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024104074
(22)【出願日】2024-06-27
(62)【分割の表示】P 2021516916の分割
【原出願日】2019-09-26
(31)【優先権主張番号】62/736,979
(32)【優先日】2018-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518370345
【氏名又は名称】アストロサイト ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ラッセル バーチ ポー
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド ティー. ヨナイティス
(72)【発明者】
【氏名】リサ ミシェル グローブ
(57)【要約】
【課題】多形化合物およびその使用の提供。
【解決手段】本発明は、ある特定の障害および状態、例えば脳損傷、例えば脳卒中または外傷性脳損傷を処置するための化合物およびその使用方法を提供する。本発明は、脳、中枢神経系(CNS)、または心血管系のある特定の状態、例えば、脳損傷、神経変性状態、または心虚血を処置し、改善し、またはそれらからの回復を促進するための化合物およびその使用方法に関する。本発明の化合物、およびその薬学的に許容される組成物は、本明細書に記載されているものを含む、様々な疾患、障害または状態を処置するために有用である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、脳、中枢神経系(CNS)、または心血管系のある特定の状態、例えば、脳損傷、神経変性状態、または心虚血を処置し、改善し、またはそれらからの回復を促進するための化合物およびその使用方法に関する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年9月26日に出願された米国仮出願第62/736,979号の優先権の利益を主張し、その全体はこれにより参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
脳損傷は、一般的な苦痛を伴う病状であり、世界中の罹患率および死亡率の主要な原因の1つである。ニューロンは修復する能力に限界があるため、脳は特に損傷を受けやすい。個体の出生時に、脳は既に人生で有するすべてのニューロンを本質的に有する。体内の他の細胞とは異なり、ニューロンは、出生直後に再生が止まる。これらの細胞が損傷または死滅した場合、置き換えられず、多くの場合、ヒトの認知能力および感覚運動能力を無能力にし、ほとんどは不可逆的な悪化を招く。神経細胞の死滅と傷害をもたらす状態は、虚血性発作(例えば脳卒中)および外傷から変性疾患(例えばアルツハイマー病)にまで及ぶ。
【0004】
中枢神経系(CNS)への損傷は、世界中の死亡および身体障害の実質的な原因である。例えば、CDCによれば、年間で約170万人が外傷性脳損傷(TBI)を負っており、医療費および生産性損失の点において、1年あたり600億ドルを超えるコストが米国経済にかかっている(Finkelstein, E; Corso, P; Miller, T, The Incidence and Economic Burden of Injuries in the United States, Oxford University
Press: New York, 2006)。さらに、脳卒中は米国で3番目の主要死因であり、年間に795,000症例の推定発生率で、身体障害の主な原因となっており、また1年あたり340億ドルを超えるコストが米国経済にかかっている(NINDS, 2014; stroke.nih.gov; and Mozaffarian D, Benjamin EJ, Go AS, et al. "Heart disease and stroke statistics-2015 update: a report from the American Heart Association," Circulation. 2015 ;e29-322)。
【0005】
急性の状況では、傷害の程度を制限することができる、24時間以内に患者に対し処置する機会がある。虚血性脳卒中または出血性脳卒中の直後、脳内の侵襲部位は、典型的には、不可逆的に傷害を受けた組織のコアを含んでおり、ペナンブラと呼ばれるその後生存可能ではあるが危険な状態にある組織の領域も含んでいる。この期間に、脳細胞への酸素およびグルコースの供給が不十分な場合、ペナンブラへのさらなる二次損傷が生じる。酸素およびグルコースの欠乏により、細胞ミトコンドリアによるエネルギー生成が減少する。このエネルギー枯渇の直接的な影響はイオンポンプの故障であり、細胞外カリウム(K+)イオンの上昇により、脳組織内に再発性の広汎性脱分極の波がもたらされる。同時に、ナトリウム(Na+)イオンが細胞に流入し、その後に塩化物(Cl-)イオンが流入すると、浸透圧の上昇に起因する細胞膨潤が起こり、近傍のニューロンおよびその突起に圧力が加えられ、最終的には溶解(細胞破裂)および炎症反応に至る。一般に、イオンホメオスタシスのこの崩壊は、興奮毒性、細胞膨潤、および細胞死をもたらし、傷害を隣接する組織に及ぼし、二次的メカニズムによって病変を拡大する。ストレスを受けた脳細胞を保護するために、最初の24時間の間に効果的な処置を行う必要がある。脳卒中における脳傷害の拡大は、他の形態の脳損傷、例えば、外傷および脳震盪などで確認されるものと類似している。
【0006】
急性期処置以上に、有効な星状膠細胞機能は、脳侵襲後の24~96時間で、神経変性、例えばアルツハイマー病に罹患している患者、最も一般的には高齢者個体においては、数か月~数年内で、より広範な神経修復に重要な役割を果たす。脳細胞が再生できないことにより、機能の任意の喪失を回復させるためには、残っている無傷の脳組織を再編成することが必要となる。この神経を再編成する可能性は、高齢者個体において低くなる。
【0007】
GPCR受容体は、心臓保護効果を媒介することが示唆されている。したがって、これらの受容体のモジュレーションを介した類似の作用メカニズムによって、心臓および心血管の状態が処置される可能性がある。
脳損傷、CNS損傷、心疾患および心血管疾患、ならびに関連する状態をより効果的に処置し、さらに神経変性状態、例えばアルツハイマー病に罹患している患者の神経修復を促進することに対する、差し迫った切実なアンメットメディカルニーズがある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Finkelstein, E; Corso, P; Miller, T, The Incidence and Economic Burden of Injuries in the United States, Oxford University Press: New York, 2006
【非特許文献2】NINDS, 2014; stroke.nih.gov; and Mozaffarian D, Benjamin EJ, Go AS, et al. "Heart disease and stroke statistics-2015 update: a report from the American Heart Association," Circulation. 2015 ;e29-322
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の要旨
本発明の化合物およびその組成物は、脳、中枢神経系(CNS)、または心血管系のある特定の状態、例えば、脳損傷、神経変性状態、または心虚血などを処置し、改善し、またはそれらからの回復を促進するのに有用であることが今回分かった。一般に、遊離塩基形態、およびその薬学的に許容される組成物は、本明細書に詳細に記載されているような様々な疾患または障害の重症度を処置または軽減するために有用である。そのような化合物は、以下の化学構造によって表され、化合物A:
【化1】
として示される。
【0010】
本発明の化合物、およびその薬学的に許容される組成物は、本明細書に記載されているものを含む、様々な疾患、障害または状態を処置するために有用である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、化合物Aの形態AのXRPDパターンを示す。
【0012】
【
図2】
図2は、化合物Aの形態AのDSCトレースを示す。
【0013】
【
図3】
図3は、化合物Aの形態AのTGAトレースを示す。
【0014】
【
図4】
図4は、化合物Aの形態AのDVSトレースを示す。
【0015】
【
図5】
図5は、DVS分析の前(上)および後(下)の化合物Aの形態AのXRPDパターンを示す。
【0016】
【
図6】
図6は、化合物Aの形態AのFT-IRスペクトルを示す。
【0017】
【
図7】
図7は、化合物Aの形態AのFT-ラマンスペクトルを示す。
【0018】
【
図8】
図8は、化合物Aの形態Aの固体
13Cスペクトルを示す。
【0019】
【
図9】
図9は、化合物Aの形態Aの光学顕微鏡画像を示す。
【0020】
【
図10】
図10は、化合物Aの形態BのXRPDパターンを示す。
【0021】
【
図11】
図11は、化合物Aの形態BのDSCトレースを示す。
【0022】
【
図12】
図12は、化合物Aの形態BのTGAトレースを示す。
【0023】
【
図13】
図13は、化合物Aの形態BのDVSトレースを示す。
【0024】
【
図14】
図14は、DVS分析の前(上)および後(下)の化合物Aの形態BのXRPDパターンを示す。
【0025】
【
図15】
図15は、化合物Aの形態BのFT-IRスペクトルを示す。
【0026】
【
図16】
図16は、化合物Aの形態BのFT-ラマンスペクトルを示す。
【0027】
【
図17】
図17は、化合物Aの形態Bの固体
13Cスペクトルを示す。
【0028】
【
図18】
図18は、化合物Aの形態Bの光学顕微鏡画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
発明の詳細な説明
本発明のある特定の態様の一般的な説明
これにより参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2011年4月21日に出願され、2017年10月17日に発行された米国特許第9,789,131号(「’131特許」)、ならびにこれにより参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2017年8月7日に出願された米国特許出願第15/670,738号、および2018年1月25日に公開された米国特許出願公開第2018/0021363号(「’363公開」)は、ある特定の治療上有益な化合物を記載している。そのような化合物は、化合物A:
【化2】
を含む。
【0030】
化合物Aは、’131特許でMRS4322として指定されており、化合物Aの合成は、’131特許の実施例9で詳細に記載されており、参照しやすくするために本明細書で再現されている。化合物Aは、’363公開においてMRS4322として指定されており、化合物Aの合成は、’363公開の実施例9に詳細に記載されており、参照しやすくするために本明細書で再現されている。
【0031】
改善された水溶解度、安定性および製剤の容易性などの特性を付与する化合物Aの固体形態を(例えば、その遊離塩基として)提供することが望まれる。したがって、本発明は、化合物Aの遊離塩基形態を提供する。
化合物Aの遊離塩基形態
【0032】
化合物Aは、様々な物理的形態で存在し得ることが考えられる。例えば、化合物Aは、溶液、懸濁液、または固体形態であり得る。ある特定の実施形態では、化合物Aは固体形態である。化合物Aが固体形態である場合、前記化合物は、非結晶性、結晶性、またはそれらの混合物であり得る。例示的な固体形態は、以下により詳細に記載されている。
【0033】
いくつかの実施形態では、本発明は、不純物を実質的に含まない化合物Aのある形態を提供する。本明細書で使用される場合、用語の「不純物を実質的に含まない」とは、化合物が有意量の異物を含まないことを意味する。そのような異物には、化合物Aの異なる形態、残留溶媒、または化合物Aの調製および/または単離によって生じる可能性のある任意の他の不純物が含まれ得る。ある特定の実施形態では、少なくとも約95重量%の化合物Aのある形態が存在する。本発明のさらに他の実施形態では、少なくとも約99重量%の化合物Aのある形態が存在する。
【0034】
一実施形態によれば、化合物Aのある形態は、少なくとも約97、97.5、98.0、98.5、99、99.5、99.8重量パーセントの量で存在し、ここでパーセンテージは、組成物の総重量に基づく。別の実施形態によれば、化合物Aのある形態は、HPLCクロマトグラムの総面積に対して、約3.0面積パーセントHPLC以下の総有機不純物を含み、ある特定の実施形態では、約1.5面積パーセントHPLC以下の総有機不純物を含む。他の実施形態では、化合物Aのある形態は、HPLCクロマトグラムの総面積に対して、約1.0%面積パーセントHPLC以下の任意の単一の不純物を含み;約0.6面積パーセントHPLC以下の任意の単一不純物を含み、ある特定の実施形態では、約0.5面積パーセントHPLC以下の任意の単一不純物を含む。
【0035】
化合物Aのある形態について示した構造はまた、化合物Aのすべての互変異性形態を含むことも意味する。さらに、本明細書で示した構造は、1つまたは1つより多くの同位体濃縮原子の存在においてのみ異なる化合物を含むことも意味する。例えば、本構造を有する化合物は、水素のジューテリウムもしくはトリチウムによる置換、または炭素の11C、13Cもしくは14C含有炭素による置換を除いて、本発明の範囲内である。
【0036】
化合物Aが様々な固体形態で存在し得ることが分かった。例示的なそのような形態には、本明細書に記載されているような多形が含まれる。
【0037】
本明細書で使用される場合、用語「多形」とは、化合物、またはその塩もしくは溶媒和物が結晶化することができる異なる結晶構造を意味する。
【0038】
ある特定の実施形態では、化合物Aは結晶性固体である。他の実施形態では、化合物Aは、非結晶性化合物Aを実質的に含まない結晶性固体である。本明細書に使用される場合、用語「非結晶性化合物Aを実質的に含まない」とは、化合物が有意量の非結晶性化合物Aを含まないことを意味する。ある特定の実施形態では、少なくとも約95重量%の結晶性化合物Aが存在する。本発明のさらに他の実施形態では、少なくとも約99重量%の結晶性化合物Aが存在する。
【0039】
化合物Aは少なくとも2つの個別の多形形態で存在することができることが確認された。ある特定の実施形態では、本発明は、形態Aと本明細書で呼ばれる化合物Aの多形形態を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、形態Bと本明細書で呼ばれる化合物Aの多形形態を提供する。
【0040】
いくつかの実施形態では、化合物Aは非結晶性である。いくつかの実施形態では、化合物Aは非結晶性であり、結晶性化合物Aを実質的に含まない。
化合物Aの形態A
【0041】
いくつかの実施形態では、化合物Aの形態Aは、以下の表1に挙げたピークから選択される少なくとも1、2、3、4または5つのスペクトルピークを有する。
【表1-1】
【0042】
いくつかの実施形態では、化合物Aの形態Aは、約8.0および約13.1°2θのピークから選択される1つまたは1つより多くのピークをそのX線粉末回折パターンに有することを特徴とする。いくつかの実施形態では、化合物Aの形態Aは、約8.0および約13.1°の2θのピークから選択される2つのピークをそのX線粉末回折パターンに有することを特徴とする。本明細書で使用される場合、用語「約」とは、°2θ値に関して使用される場合、明示した値±0.2°2θを意味する。
【0043】
ある特定の実施形態では、X線粉末回折パターンは、
図1で提供されているXRPDと実質的に類似している。
【0044】
化合物Aの形態Aを調製する方法は以下に記載されている。
化合物Aの形態B
【0045】
いくつかの実施形態では、化合物Aの形態Bは、以下の表2に挙げたピークから選択される少なくとも1、2、3、4または5つのスペクトルピークを有する。
【表2-1】
【0046】
いくつかの実施形態では、化合物Aの形態Bは、約19.0、約20.1、および約21.5°2θのピークから選択される1つまたは1つより多くのピークをそのX線粉末回折パターンに有することを特徴とする。いくつかの実施形態では、化合物Aの形態Bは、約19.0、約20.1、および約21.5°2θのピークから選択される2つまたは2つより多くのピークをそのX線粉末回折パターンに有することを特徴とする。いくつかの実施形態では、化合物Aの形態Bは、約19.0、約20.1、および約21.5°2θのピークから選択される3つのすべてのピークをそのX線粉末回折パターンに有することを特徴とする。
【0047】
いくつかの実施形態では、化合物Aの形態Bは、約9.5、約10.5、および約13.8°2θのピークから選択される1つまたは1つより多くのピークをそのX線粉末回折パターンに有することを特徴とする。いくつかの実施形態では、化合物Aの形態Bは、約9.5、約10.5、および約13.8°2θのピークから選択される2つまたは2つより多くのピークをそのX線粉末回折パターンに有することを特徴とする。いくつかの実施形態では、化合物Aの形態Bは、約9.5、約10.5、および約13.8°2θのピークから選択される3つのすべてのピークをそのX線粉末回折パターンに有することを特徴とする。
【0048】
ある特定の実施形態では、X線粉末回折パターンは、
図10で提供されているXRPDに実質的に類似している。
【0049】
化合物Aの形態Bを調製する方法は以下に記載される。
【0050】
いくつかの実施形態では、本発明は、結晶性である化合物A:
【化3】
を提供する。
【0051】
いくつかの実施形態では、本発明は、非結晶性化合物Aを実質的に含まない、化合物Aの固体形態を提供する。
【0052】
いくつかの実施形態では、本発明は、不純物を実質的に含まない、化合物Aの固体形態を提供する。
【0053】
いくつかの実施形態では、本発明は、約8.0および約13.1°2θのピークから選択される1つまたは1つより多くのピークを化合物のXRPDに有する、化合物Aの固体形態を提供する。いくつかのそのような実施形態では、本発明は、約8.0および約13.1°2θのピークから選択される2つのピークを化合物のXRPDに有する、化合物1を提供する。いくつかのそのような実施形態では、本発明は、形態Aの化合物である化合物Aを提供する。
【0054】
いくつかの実施形態では、本発明は、
図1に示したものと実質的に類似しているXRPDを有する、化合物Aの固体形態を提供する。
【0055】
いくつかの実施形態では、本発明は、約19.0、約20.1および約21.5°2θのピークから選択される1つまたは1つより多くのピークを化合物のXRPDに有する、化合物Aの固体形態を提供する。いくつかのそのような実施形態では、本発明は、約19.0、約20.1、および約21.5°2θのピークから選択される少なくとも2つのピークを化合物のXRPDに有する、化合物Aを提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、約9.5、約10.5、および約13.8°2θのピークから選択される1つまたは1つより多くのピークを化合物のXRPDに有する、化合物Aの固体形態を提供する。いくつかのそのような実施形態では、本発明は、約0.5、約10.5、および約13.8°2θのピークから選択される少なくとも2つのピークを化合物のXRPDに有する、化合物Aを提供する。
【0056】
いくつかのそのような実施形態では、本発明は、形態Bの化合物である化合物Aを提供する。
【0057】
いくつかの実施形態では、本発明は、
図10に示したものと実質的に類似しているXRPDを有する、化合物Aの固体形態を提供する。
【0058】
いくつかの実施形態では、本発明は、化合物Aの固体形態および薬学的に許容される担体または賦形剤を含む組成物を提供する。
【0059】
いくつかの実施形態では、本発明は、化合物A,形態A;および化合物A,形態Bから選択される化合物を提供する。
【0060】
いくつかの実施形態では、本発明は、患者におけるcAMPの蓄積を抑制または予防する方法であって、前記患者に、化合物Aの固体形態またはそれを含む薬学的に許容される組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0061】
いくつかの実施形態では、本発明は、外傷性脳損傷(TBI)、脳振盪、脳卒中、部分的または全体的な脊髄離断、栄養失調、中毒性神経炎、髄膜脳症、遺伝性障害によって引き起こされた神経変性、加齢性神経変性、血管疾患、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、ハンチントン病(HD)、多発性硬化症(MS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、慢性外傷性脳症(CTE)、心血管疾患、自己免疫疾患、アレルギー性疾患、移植拒絶反応、移植片対宿主疾患、眼内高眼圧症、緑内障、臭気過敏症、嗅覚障害、2型糖尿病および/または疼痛管理、呼吸器疾患、CNS機能の欠陥、学習の欠陥、認知の欠陥、耳の障害、メニエール病、内リンパ水腫、進行性聴覚消失、めまい(dizziness
)、回転性めまい(vertigo)、耳鳴、放射線がん療法に関連する付随的な脳傷害、片頭
痛処置、高齢者の睡眠障害、てんかん、統合失調症、アルコール依存者の回復により経験される症状、手術中の末梢神経系のニューロンまたは神経への傷害、胃腸の状態、CNSによって媒介される疼痛、片頭痛、放射線がん療法に関連する付随的な脳傷害、うつ病、気分変化または行動変化、認知症、異常行動、自殺傾向、振戦、ハンチントン舞踏病、運動協調の喪失、難聴、言語障害、ドライアイ、ハイポミミア(hypomimia)、注意欠陥、
記憶喪失、認知障害、回転性めまい、構音障害、嚥下障害、視覚異常もしくは見当識障害、または依存症から選択される損傷、疾患または状態を処置する方法であって、患者に、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物を投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、外傷性脳損傷(TBI)、脳卒中、神経変性状態、または心疾患もしくは心血管疾患から選択される損傷、疾患、または状態を処置する方法であって、それを必要とする患者に、A3アデノシン受容体(A3R)のアゴニストの有効量を投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、A3アデノシン受容体(A3R)のアゴニストは、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物である。いくつかの実施形態では、A3アデノシン受容体(A3R)のアゴニストは、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物である。いくつかの実施形態では、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物は、A3アデノシン受容体およびA1アデノシン受容体(A1R)でのデュアルアゴニズムによって作用する。
【0062】
いくつかの実施形態では、本発明は、外傷性脳損傷(TBI)、脳卒中、神経変性状態、または心疾患もしくは心血管疾患から選択される損傷、疾患、または状態を処置する方法であって、それを必要とする患者に、A3アデノシン受容体(A3R)のバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストの有効量を投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、A3アデノシン受容体(A3R)のバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストは、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物である。いくつかの実施形態では、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物は、A3RおよびA1Rでのデュアルアゴニズムによって作用する。
【0063】
いくつかの実施形態では、本発明は、外傷性脳損傷(TBI)または脳卒中から選択される脳または中枢神経系(CNS)の損傷または状態を処置する方法であって、それを必要とする患者に、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0064】
いくつかの実施形態では、本発明は、外傷性脳損傷(TBI)、放射線障害、脳卒中、片頭痛、心疾患もしくは心血管疾患、または神経変性障害を処置または改善する方法であって、それを必要とする患者に、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0065】
いくつかの実施形態では、本発明は、外傷性脳損傷(TBI)、放射線障害、脳卒中、片頭痛、心疾患もしくは心血管疾患、または神経変性障害を処置または改善する方法であって、それを必要とする患者に、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0066】
いくつかの実施形態では、本発明は、外傷性脳損傷(TBI)、脳卒中、神経変性状態、または心疾患もしくは心血管疾患から選択される損傷、疾患、または状態を処置する方法であって、それを必要とする患者に、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0067】
いくつかの実施形態では、損傷、疾患、または状態は、TBIである。
【0068】
いくつかの実施形態では、TBIは、脳振盪、爆風損傷、戦闘関連損傷、または頭部への軽度、中等度もしくは重度の衝撃から選択される。
【0069】
いくつかの実施形態では、損傷、疾患、または状態は、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、くも膜下出血、脳血管痙攣、または一過性脳虚血性発作(TIA)から選択される脳卒中である。
【0070】
いくつかの実施形態では、神経保護または神経修復(neurorestoration)は、未処置の患者と比較して、患者において増大される。
【0071】
いくつかの実施形態では、神経変性疾患は、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、ハンチントン病(HD)、多発性硬化症(MS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、慢性外傷性脳症(CTE)、またはウイルス、アルコール依存症、腫瘍、毒素、もしくは反復性脳損傷によって引き起こされる神経変性状態から選択される。
【0072】
いくつかの実施形態では、神経変性疾患は、パーキンソン病である。
【0073】
いくつかの実施形態では、損傷、疾患、または状態は、アルツハイマー病、片頭痛、脳外科手術、またはがん化学療法に関連する神経学的副作用である。
【0074】
いくつかの実施形態では、TBI、脳卒中、心虚血、または心筋梗塞後の回復期間は、未処置の患者と比較して短縮される。
【0075】
いくつかの実施形態では、心疾患または心血管疾患は、心虚血、心筋梗塞、心筋症、冠状動脈疾患、不整脈、心筋炎、心膜炎、狭心症、高血圧性心疾患、心内膜炎、リウマチ性心疾患、先天性心疾患またはアテローム性動脈硬化症から選択される。
【0076】
いくつかの実施形態では、心疾患または心血管疾患は、心虚血または心筋梗塞である。
【0077】
いくつかの実施形態では、化合物または組成物は、脳卒中、心虚血、または心筋梗塞を処置するために、損傷が発生した後に損傷が解消されるまでの期間、長期的に投与される。
【0078】
いくつかの実施形態では、本発明は、TBIまたは脳卒中に罹患しているそれを必要とする患者において神経保護または神経修復を増大する方法であって、患者に、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0079】
いくつかの実施形態では、化合物またはその薬学的に許容される塩は、経口投与、静脈内投与、または非経口投与される。
【0080】
いくつかの実施形態では、化合物または組成物は、TBIまたは脳卒中の24時間以内に投与される。
【0081】
いくつかの実施形態では、化合物または組成物は、TBIまたは脳卒中の8時間以内に投与される。
【0082】
いくつかの実施形態では、化合物または組成物は、TBIまたは脳卒中後の少なくとも最初の8~48時間の間に投与される。
【0083】
いくつかの実施形態では、本発明は、心疾患または心血管疾患を処置する方法であって、それを必要とする患者に、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0084】
いくつかの実施形態では、患者は、心虚血または心筋梗塞に罹患している。
【0085】
いくつかの実施形態では、化合物または組成物は、患者の傷害を受けた心臓組織の心臓保護または再生を増大する。
【0086】
いくつかの実施形態では、化合物または組成物は、未処置の患者と比較して、患者における心虚血または心筋梗塞後の回復期間を短縮する。
【0087】
いくつかの実施形態では、
(i)放射線によって引き起こされる脳傷害、または放射線がん療法もしくは片頭痛処置に関連する付随的な脳傷害;
(ii)片頭痛;
(iii)脳損傷または神経変性状態に関連する状態;または
(iv)自己免疫疾患もしくは状態、緑内障、耳の障害、進行性聴覚消失、耳鳴り、てんかん、疼痛管理、CNSによって媒介される疼痛、神経障害性疼痛、炎症性疼痛、または急性疼痛
から選択される損傷、疾患、障害、または状態を処置する方法であって、
それを必要とする患者に、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0088】
いくつかの実施形態では、化合物または組成物は、未処置の患者と比較して、患者における神経保護または神経修復を増大させる。
【0089】
いくつかの実施形態では、脳損傷または神経変性状態に関連する状態は、てんかん、片頭痛、放射線がん療法に関連する付随的な脳傷害、うつ病、気分変化または行動変化、認知症、異常行動、自殺傾向、振戦、ハンチントン舞踏病、運動協調の喪失、難聴、言語障害、ドライアイ、ハイポミミア、注意欠陥、記憶喪失、認知障害または認知の欠陥、CNS機能の欠陥、学習の欠陥、回転性めまい、構音障害、嚥下障害、視覚異常または見当識障害から選択される。
【0090】
いくつかの実施形態では、心虚血または心筋梗塞に罹患しているそれを必要とする患者における傷害を受けた心臓組織の心臓保護または再生を増大する方法であって、患者に、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0091】
いくつかの実施形態では、本発明は、溶媒を除去し、溶媒を添加する1つまたは1つより多くのステップを含む、化合物Aの固体形態を調製する方法を提供する。いくつかの実施形態では、添加される溶媒は、除去される溶媒と同じである。いくつかの実施形態では、添加される溶媒は、除去される溶媒とは異なる。溶媒除去の手段は、合成分野および化学分野で公知であり、限定するものではないが、本明細書および例示に記載されているもののいずれかを含む。
【0092】
いくつかの実施形態では、化合物Aの固体形態を調製する方法は、調製物を加熱または冷却する1つまたは1つより多くのステップを含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、化合物Aの固体形態を調製する方法は、調製物をかき混ぜるか、または撹拌する1つまたは1つより多くのステップを含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、化合物Aの固体形態を調製する方法は、加熱のステップを含む。
【0095】
ある特定の実施形態では、化合物Aの固体形態は、混合物から沈殿する。別の実施形態では、化合物Aの固体形態は、混合物から結晶化する。他の実施形態では、化合物Aの固体形態は、溶液のシード添加(すなわち、化合物Aの結晶を溶液に加える)の後に溶液から結晶化する。
【0096】
化合物Aの固体形態は、反応混合物から沈殿するか、または蒸発、蒸留、濾過(例えば、ナノ濾過、限外濾過)、逆浸透、吸収および反応などの方法を介して溶媒の一部もしくは全部を除去することによって、ヘプタンなどの貧溶媒を添加することによって、冷却することによって、またはこれらの方法の様々な組合せによって生成することができる。
【0097】
上記で一般的に記載されているように、化合物Aの固体形態は、必要に応じて単離される。固体形態の化合物Aは、当業者に公知の任意の適切な物理的手段によって単離され得ることは理解されよう。ある特定の実施形態では、沈澱した化合物Aの固体形態は、濾過によって上清から分離される。他の実施形態では、沈澱した化合物Aの固体形態は、上清をデカントすることによって上清から分離される。
【0098】
ある特定の実施形態では、化合物Aの固体形態は、濾過によって上清から分離される。
【0099】
ある特定の実施形態では、単離された化合物Aの固体形態は、空気中で乾燥される。他の実施形態では、単離された化合物Aの固体形態は、減圧下で、必要に応じて高温で乾燥される。
【0100】
本発明において有用な適切な溶媒の例には、限定するものではないが、極性溶媒、非プロトン性溶媒、極性非プロトン性溶媒、またはそれらの混合物が含まれる。ある特定の実施形態では、適切な溶媒には、エーテル、エステル、アルコール、ケトン、またはそれらの混合物が含まれる。いくつかの実施形態では、溶媒は、1つまたは1つより多くの有機アルコールである。いくつかの実施形態では、溶媒は塩素化されている。いくつかの実施形態では、溶媒は芳香族溶媒である。
【0101】
ある特定の実施形態では、適切な溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、またはアセトンであり、前記溶媒は、無水であるか、または水もしくはヘプタンとの組合せである。いくつかの実施形態では、適切な溶媒には、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、グリム、ジグリム、メチルt-ブチルエーテル、t-ブタノール、n-ブタノール、およびアセトニトリルが含まれる。いくつかの実施形態では、適切な溶媒は、エタノールである。いくつかの実施形態では、適切な溶媒は、無水エタノールである。いくつかの実施形態では、適切な溶媒は、MTBEである。
【0102】
いくつかの実施形態では、適切な溶媒は、酢酸エチルである。いくつかの実施形態では、適切な溶媒は、メタノールと塩化メチレンの混合物である。いくつかの実施形態では、適切な溶媒は、アセトニトリルと水の混合物である。ある特定の実施形態では、適切な溶媒は、酢酸メチル、酢酸イソプロピル、アセトン、またはテトラヒドロフランである。ある特定の実施形態では、適切な溶媒は、ジエチルエーテルである。ある特定の実施形態では、適切な溶媒は、水である。ある特定の実施形態では、適切な溶媒は、メチルエチルケトンである。ある特定の実施形態では、適切な溶媒は、トルエンである。
化合物およびその薬学的に許容される組成物の使用
【0103】
本明細書で使用される場合、用語の「処置」、「処置する」、および「処置すること」とは、本明細書に記載されているような、疾患もしくは障害、またはその1つもしくは1つより多くの症状を好転させ、緩和し、発症を遅延させ、または進行を抑制することを意味する。いくつかの実施形態では、処置は、1つまたは1つより多くの症状が発症した後に施される。他の実施形態では、処置は症状がない状態で施される。例えば、処置は、症状の発症前に(例えば、症状の病歴に照らして、および/または遺伝的因子もしくは他の感受性因子に照らして)罹患しやすい個体に施される。処置はまた、症状が消失した後も、例えばそれらの再発の重症度を予防、遅延、または軽減するために継続される。
脳、CNS、心血管、および他の損傷および状態
【0104】
いくつかの実施形態では、本発明は、急性脳外傷と関連する脳傷害、ならびに脳およびCNSの長期的疾患、ならびに心臓および心血管の疾患および状態を予防および/または処置する新たなアプローチを提供する。一態様では、本発明は、ニューロンの重要な自然の管理者細胞(caretaker cell)として現在理解されている星状膠細胞、ならびに脳の
エネルギーのかなりの部分を供給する星状膠細胞ミトコンドリアによって媒介される神経保護効果および神経修復効果を利用することによって、そのような傷害、疾患および状態を処置する方法を提供する。別の態様では、本発明は、A3R受容体によって媒介される心臓保護効果および再生効果によって、そのような損傷、疾患、および状態を処置する方法を提供する。神経保護効果および神経修復効果に関しては、理論に拘束されることを望むものではないが、A3R受容体および/またはP2Y1受容体によって媒介される星状膠細胞エネルギー代謝の選択的増強が、星状膠細胞の管理者機能、例えば、それらの神経保護機能および神経修復機能を促進し、次に、ニューロンおよび他の細胞の急性損傷および長期ストレスの両方に対する耐性を増強すると考えられる。いくつかの場合には、A3Rおよび/またはP2Y1および/またはA1R受容体によって媒介される1つまたは1つより多くの経路を、バイアスをかけて、すなわち、選択的または優先的に達成することが有利になり得、この場合、1つまたは1つより多くの望ましくない経路は活性化されないか、または低い程度で活性化される。星状膠細胞に加えて、またはその代替として、グリア、ミクログリア、ニューロン、内皮細胞ならびに他の脳細胞および/またはCNS細胞型の神経保護機能または神経修復機能が活性化され得る。したがって、一態様では、本発明は、例えば、星状膠細胞、グリア、ミクログリア、ニューロン、内皮細胞、または脳および/もしくはCNSの他の細胞によって媒介される神経保護効果および/または神経修復効果を増大させることにより、脳または中枢神経系(CNS)のある特定の状態、例えば脳損傷を処置し、改善し、または回復を促進するための化合物およびその使用方法を提供し、その方法は、その必要のある患者に、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物の有効量を投与することを含む。
【0105】
星状膠細胞は、ニューロンのサポートと保護において重要な役割を果たし、脳傷害、例えば虚血性損傷などを引き起こす脳損傷の予後に大いに影響する。星状膠細胞ミトコンドリア自体がこれらの脳機能において果たす中心的な役割はそれほど十分に理解されていない。例えば、星状膠細胞ミトコンドリアの阻害によって腫脹が増大し、壊死性細胞死をもたらす。ニューロンは、星状膠細胞ミトコンドリア機能が消失した場合にのみ、頻発性の広汎性脱分極によって永久的に損傷を受け、星状膠細胞ミトコンドリアは、広汎性脱分極が始まる、細胞外K+の病態生理学的上昇を低減させるのに必要である。星状膠細胞上のプリン受容体の活性化は、ミトコンドリアのクエン酸回路機能を強化し、呼吸およびATP産生を増大させるミトコンドリアCa2+の増加をもたらす。したがって、一態様では、本発明は、星状膠細胞プリン受容体の活性化が脳細胞生存シグナル伝達経路を増強し、酸化ストレス中の星状膠細胞とニューロンの両方の生存能力を可能にするという発見に関する。さらに、活性化された星状膠細胞は、酸化ストレスに対する星状膠細胞とニューロンの両方の耐性に有用である重要な抗酸化物質の還元型グルタチオンを産生し、供給する。したがって、一態様では、本発明は、星状膠細胞プリン受容体をモジュレートして、酸化ストレス、例えば、脳損傷、虚血再灌流または神経変性状態によって引き起こされる酸化ストレス後の患者の脳内の1つまたは1つより多くの細胞型の生存および生存率を促進する方法であって、それを必要とする患者に、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0106】
いくつかの実施形態では、星状膠細胞の活性化は、1つまたは1つより多くのプリン受容体、例えばアデノシン受容体(AR)、例えば星状膠細胞に会合される受容体または星状膠細胞によって発現される受容体と、開示の化合物を接触させ、それによって1つまたは1つより多くの受容体の活性をモジュレートすることにより達成される。いくつかの実施形態では、星状膠細胞上のアデノシン受容体、例えばA1、A2A、A2BおよびA3などの効果によって、化合物は星状膠細胞を活性化し、1つまたは1つより多くの記載した疾患または状態を処置する。いくつかの実施形態では、それを必要とする患者に投与した後、開示の化合物は、1つまたは1つより多くの機能、例えば、グルタメートの取り込み、反応性ゴリオーシス、腫脹、ならびに代謝ストレスに影響を与える神経栄養因子および神経毒性因子の放出に影響を及ぼし、その結果、それにより1つまたは1つより多くの疾患または状態を処置する。いくつかの実施形態では、化合物は、ARアゴニストである。いくつかの実施形態では、プリン受容体は、A3アデノシン受容体(A3R)である。いくつかの実施形態では、化合物は、A3Rアゴニストである。いくつかの実施形態では、化合物は、A3受容体(A3R)、例えばヒトA3受容体(hA3R)での部分アゴニストまたはバイアス型アゴニストまたはバイアス型部分アゴニストである。いくつかの実施形態では、化合物は、A3受容体でのバイアス型アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、化合物は、A3RおよびA1Rでのデュアルアゴニズムによって作用する。いくつかの実施形態では、化合物は、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物である。
【0107】
P2Y受容体は、Gタンパク質共役型受容体であり、これらの受容体の様々なサブタイプは、シナプス連絡、細胞分化、イオン流量、血管拡張、血液脳関門透過性、血小板凝集、ニューロモジュレーションなどのプロセスで重要な役割がある。プリンP2Y受容体ファミリーの特徴的なメンバーには、アデニンヌクレオチドに結合する、哺乳動物P2Y1、P2Y11、P2Y12およびP2Y13受容体;ウラシルヌクレオチドに結合する、P2Y4、P2Y6、およびP2Y14受容体;ならびに混合型選択性を有する、P2Y2およびげっ歯動物P2Y4受容体が含まれる。いくつかの実施形態では、星状膠細胞の活性化は、1つまたは1つより多くのプリン受容体、例えばP2Y受容体、例えば星状膠細胞と会合される受容体、または星状膠細胞によって発現される受容体と、開示の化合物を接触させ、それによって1つまたは1つより多くの受容体の活性をモジュレートすることにより達成される。いくつかの実施形態では、星状膠細胞と会合されるか、または星状膠細胞によって発現されるP2Y受容体、例えばP2Y1、P2Y11、P2Y12およびP2Y13受容体などの効果によって、化合物は星状膠細胞を活性化し、1つまたは1つより多くの開示の疾患または状態を処置する。いくつかの実施形態では、P2Y受容体は、P2Y1受容体である。いくつかの実施形態では、P2Y1受容体は、細胞内ミトコンドリア膜上に位置している。いくつかの実施形態では、化合物は、P2Yアゴニストである。いくつかの実施形態では、化合物は、例えば、ヒトP2Y1受容体でのP2Y1アゴニストである。いくつかの実施形態では、化合物は、P2Y1受容体、例えばヒトP2Y1受容体でのバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストである。いくつかの実施形態では、化合物は、P2Y1受容体でのバイアス型アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、化合物は、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物である。
【0108】
別の態様では、本発明は、それを必要とする患者における脳損傷、例えばTBIまたは進行性神経変性障害から生じる脳損傷を処置または改善する方法であって、患者に、開示の化合物の有効量を投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、被験体は、TBI、脳振盪、脳卒中、部分的もしくは全体的な脊髄離断、または栄養失調に罹患している。他の実施形態では、被験体は、中毒性神経炎、髄膜脳症、遺伝性障害によって引き起こされた神経変性、加齢性神経変性、もしくは血管疾患;または、これにより参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第8,691,775号に開示されている別の疾患に罹患している。いくつかの実施形態では、本発明は、それを必要とする患者における脳損傷、例えばTBIまたは進行性神経変性障害から生じる脳損傷を処置または改善する方法であって、患者に、A3Rアゴニストの有効量を投与することを含む方法を提供する。他の実施形態では、本発明は、それを必要とする患者における脳損傷、例えばTBIまたは進行性神経変性障害から生じる脳損傷を処置または改善する方法であって、患者に、P2Y1アゴニストの有効量を投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、化合物は、A3受容体でのバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストである。いくつかの実施形態では、化合物は、A3RおよびA1Rでのデュアルアゴニズムによって作用する。いくつかの実施形態では、化合物は、P2Y1受容体でのバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストもしくはアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、化合物は、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物である。
【0109】
別の態様では、本発明は、疾患または状態に罹患している患者における神経保護、神経修復、または神経再生を促進または増大する方法であって、患者に、開示の化合物、例えば化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物の有効量を投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、患者は、神経変性疾患または神経変性状態に罹患している。いくつかの実施形態では、患者は、TBIに罹患していた。
【0110】
別の態様では、本発明は、それを必要とする患者における星状膠細胞媒介性の神経保護または神経修復を促進する方法であって、患者に、開示の化合物の有効量を投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、それを必要とする患者における星状膠細胞媒介性の神経保護または神経修復を促進する方法であって、患者に、A3Rアゴニストの有効量を投与することを含む方法を提供する。他の実施形態では、本発明は、それを必要とする患者における星状膠細胞媒介性の神経保護または神経修復を促進する方法であって、患者に、P2Y1アゴニストの有効量を投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、化合物は、A3受容体でのバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストもしくはアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、化合物は、A3RおよびA1Rでのデュアルアゴニズムによって作用する。いくつかの実施形態では、化合物は、P2Y1受容体でのバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストもしくはアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、化合物は、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物である。
【0111】
別の態様では、本発明は、それを必要とする患者におけるニューロン、グリア細胞、内皮細胞または他の脳細胞、例えば虚血性ペナンブラの脳細胞の生存を促進する方法であって、患者に、本明細書に開示の化合物の有効量を投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、それを必要とする患者におけるニューロン、グリア細胞、または他の脳細胞、例えば虚血性ペナンブラの脳細胞の生存を促進する方法であって、患者に、A3Rアゴニストの有効量を投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、それを必要とする患者におけるニューロン、グリア細胞、内皮細胞または他の脳細胞、例えば虚血性ペナンブラの脳細胞の生存を促進する方法であって、患者に、P2Y1アゴニストの有効量を投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、化合物は、A3受容体でのバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストもしくはアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、化合物は、A3RおよびA1Rでのデュアルアゴニズムによって作用する。いくつかの実施形態では、化合物は、P2Y1受容体でのバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストもしくはアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、化合物は、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物である。
【0112】
さらなる実施形態では、患者は、以下のような脳損傷を有するか、または受けるリスクがある。したがって、以下で論じる状態を処置する方法もまた提供される。
外傷性脳損傷
【0113】
外傷性脳損傷(TBI)は、一般的な苦痛を伴う病状であり、2020年までに、国内外における罹患率および死亡率の第3の主要原因になると予測されている。TBIに対して承認された処置はなく、ほとんどのTBI患者は、薬理学的処置を受けずに退院する(Witt 2006)。反復性TBI、例えば脳振盪は、数十年間にわたって様々な症状および行為無能力をもたらす、加齢に伴う神経変性を引き起こす可能性がある(McKee 2013)。
TBIは、スポーツ関連の損傷、自動車事故、墜落、爆発衝撃、身体的暴行等によって起こる可能性がある。損傷は、精神状態における短時間の変化、認知障害、または意識喪失を伴う「軽度の」脳振盪から、損傷後の長期間の意識消失および/または記憶喪失を伴う「重度の」脳振盪にわたり、それらの複雑性と重症度が広範囲に及ぶ。米国においては、毎年約170万人がTBIをもたらす損傷を受け、医学的介入を求めており(USCSFおよびCDC)、CDCは、スポーツおよび他のレクリエーション目的で、病院または救急科に来ていない脳振盪が毎年さらに160万~380万件発生していると推定している(CDC;Langlois 2006)。アスリートの約5~10%が、各スポーツシーズンで脳振盪を起こしている(Sports Concussion Institute 2012)。フットボールは、男性の
脳振盪リスクが最も高いスポーツであるが(脳振盪の可能性は75%)、サッカーは女性で脳振盪リスクが最も高いスポーツである(脳振盪の可能性は50%)。TBIは、子供および若年成人における死亡および障害の主要原因であり(CDC)、その大部分は、一般的に軍事関連の損傷であった。2003年以降に配置された米国軍人の約20%は、少なくとも1つのTBIを被っていた(Chronic Effects of Neurotrauma Consortium
(CENC); Warden 2006; Scholten 2012; Taylor 2012; Gavett 2011; Guskiewicz 2005; Omalu 2005)。TBI関連の間接医療費および直接医療費の合計は、年間
770億ドルと推定される(UCSFおよびCDC)。少なくとも500万人の米国人が、TBIの結果として、活動を行うのに継続的な毎日の支援を必要としている(CDCおよびThurman 1999)。
【0114】
本発明による星状膠細胞の活性化は、そのような状態に対する新たな処置の選択肢を示す。したがって、本明細書において一態様で提供されるのは、TBIを処置するか、またはTBIからの回復を促進する方法であって、それを必要とする患者に、開示の化合物の有効量を投与することを含む方法である。いくつかの実施形態では、TBIは、脳への外傷性損傷(例えば、脳震盪、爆風損傷、戦闘関連損傷など)または脊髄への外傷性損傷(部分的もしくは全体的な脊髄離断など)から選択される。いくつかの実施形態では、TBIは、頭部への軽度、中等度、もしくは重度の衝撃から生じるか、開放性頭部創傷もしくは閉鎖性頭部創傷を含むか、または頭部への穿通性もしくは非穿通性衝撃から生じる。いくつかの実施形態では、本発明は、TBIを処置するか、またはTBIからの回復を促進する方法であって、それを必要とする患者に、A3Rアゴニストの有効量を投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、TBIを処置するか、またはTBIからの回復を促進する方法であって、それを必要とする患者に、P2Y1アゴニストの有効量を投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、化合物は、A3受容体でのバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストもしくはアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、化合物は、A3RおよびA1Rでのデュアルアゴニズムによって作用する。いくつかの実施形態では、化合物は、P2Y1受容体でのバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストもしくはアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、化合物は、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物である。
脳卒中
【0115】
脳卒中は、酸素と栄養素を脳に輸送する血管が、虚血性閉塞が原因で、または脳内血管の出血性破裂により破壊され、脳の破壊領域内のニューロン、グリア、および内皮細胞の死滅が生じた場合に起こる。脳卒中の転帰は、傷害の位置と幅によって左右され、その傷害の影響は、傷害を受けた脳領域によって調節される身体機能において観察される。脳卒中は、片側または両側の麻痺、発語および言語の身体障害、記憶喪失、行動変化、さらには死亡を引き起こす可能性がある。脳卒中は、米国において4番目の主要な死因であり、成人の身体障害の主たる原因である。毎年、約800,000人が、新たな脳卒中または再発性脳卒中を経験する。毎日、2000人を超える米国人が脳卒中を起こし、これらのインシデントのうち400人を超える人が死亡している。脳卒中は、2010年の米国において、死者19人のうち約1人を占めていた。20歳以上の推定680万人の米国人が脳卒中を起こしていた(AHAおよびGo 2014)。2010年の時点で、脳卒中の年間の直
接的コストおよび間接的コストは、365億ドルと推定された。脳卒中から数分以内に、血流が不足して脳組織のコアに永久的な傷害を与える。この傷害されたコアと正常な脳組織の間には、ペナンブラ組織として公知の組織領域があり、これは、血流の減少とエネルギー代謝の途絶による段階的なストレス下にある組織である。脳卒中インシデント後の最初の24~48時間にわたり、ペナンブラの神経細胞およびグリア細胞へのストレスは、いくらかの回復またはさらなる細胞死のいずれかにより解消する。
【0116】
一態様では、本発明は、脳卒中患者における神経保護療法の方法であって、それを必要とする患者に、開示の化合物の有効量を投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、そのような療法は、できるだけ多くのペナンブラを救い、および/またはさらなる急性組織傷害を制限し、および/またはニューロンの回復を促進する。別の態様では、脳卒中を処置するか、または脳卒中からの回復を促進する方法であって、それを必要とする患者に、開示の化合物の有効量を投与することを含む方法が提供される。別の態様では、脳卒中に罹患した患者の神経保護、神経再生、または神経修復を促進または増大する方法であって、患者に、開示の化合物の有効量を投与することを含む方法が提供される。別の態様では、脳卒中を処置するか、または脳卒中からの回復を促進する方法であって、それを必要とする患者に、A3Rアゴニストの有効量を投与することを含む方法が提供される。いくつかの実施形態では、本発明は、脳卒中を処置するか、または脳卒中からの回復を促進する方法であって、それを必要とする患者に、P2Y1アゴニストの有効量を投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、化合物は、A3受容体でのバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストもしくはアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、化合物は、A3RおよびA1Rでのデュアルアゴニズムによって作用する。いくつかの実施形態では、化合物は、P2Y1受容体でのバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストもしくはアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、化合物は、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物である。
【0117】
いくつかの実施形態では、脳卒中は、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、くも膜下出血、脳血管痙攣、または一過性脳虚血発作(TIA)から選択されから選択される。いくつかの実施形態では、脳卒中は虚血性である。いくつかの実施形態では、脳卒中は出血性である。いくつかの実施形態では、化合物は、脳卒中の48時間以内に投与される。いくつかの実施形態では、化合物は、脳卒中の24時間以内に投与される。いくつかの実施形態では、化合物は、脳卒中の16時間以内に投与される。いくつかの実施形態では、化合物は、脳卒中の8時間、4時間、2時間、または1時間以内に投与される。いくつかの実施形態では、化合物は、脳卒中後の少なくとも最初の1~72時間に投与される。いくつかの実施形態では、化合物は、脳卒中後の少なくとも最初の8~52時間に投与される。いくつかの実施形態では、化合物は、脳卒中後の少なくとも最初の8~48時間に投与される。いくつかの実施形態では、化合物は、脳卒中後の少なくとも最初の24~48時間に投与される。いくつかの実施形態では、化合物は、脳卒中が発症した場合、脳卒中を処置するために長期的に投与される。いくつかの実施形態では、化合物は、一過性脳虚血発作(TIA)を処置するために長期的に投与される。
【0118】
いくつかの実施形態では、化合物は、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、くも膜下出血、脳血管痙攣、一過性脳虚血発作(TIA)を処置するために、または脳卒中のリスクが高い患者、例えば、過去に脳卒中を発症し、さらなる脳卒中のリスクがある患者、例えば年齢が40、45、50、55、60、65、70、75、または80歳を超える患者を処置するために、長期的に投与される。
【0119】
いくつかの実施形態では、化合物は、脳卒中によって引き起こされる虚血再潅流障害を処置する。
神経変性疾患
【0120】
神経変性疾患は、脳および脊髄内のニューロンの進行性変性および/または死滅によりもたらされる、不治の進行性であって、最終的には衰弱させる症候群である。神経変性は、運動障害(運動失調)および/または認知機能障害(認知症)をもたらし、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、ハンチントン病(HD)、多発性硬化症(MS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)および慢性外傷性脳症(CTE)などの様々な疾患を含む。多くの神経変性疾患は、主として起源が遺伝的であり、他の原因には、ウイルス、アルコール依存症、腫瘍または毒素が含まれる可能性があり、また現在明らかになっているように、反復性脳損傷も含まれ得る。
【0121】
ニューロンは、前述の要因により経時的に細胞傷害を蓄積し、これは、長期の細胞ストレスに関連する多くの神経変性疾患、例えばアルツハイマー病およびパーキンソン病が高齢個体において発生する理由であると一般に考えられる。認知症は神経変性疾患の主たる転帰であり、ADは症例の約60~70%を占める(Kandale 2013)。上記で論じたよ
うに、神経保護および神経修復メカニズムを活性化すると、1つまたは1つより多くの神経変性疾患の進行を改善することができる。したがって、一態様では、本発明は、神経変性疾患を処置するか、または神経変性疾患からの回復を促進する方法であって、それを必要とする患者に、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0122】
一態様では、本発明は、神経変性疾患に罹患している患者における神経保護または神経修復を促進する方法であって、患者に開示の化合物の有効量を投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、神経変性疾患に罹患している患者における神経保護または神経修復を促進する方法であって、患者にA3Rアゴニストの有効量を投与することを含む方法が提供される。他の実施形態では、神経変性疾患に罹患している患者における神経保護または神経修復を促進する方法であって、患者にP2Y1アゴニストの有効量を投与することを含む方法が提供される。いくつかの実施形態では、化合物は、A3受容体でのバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストもしくはアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、化合物は、A3RおよびA1Rでのデュアルアゴニズムによって作用する。いくつかの実施形態では、化合物は、P2Y1受容体でのバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストもしくはアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、化合物は、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物である。
アルツハイマー病(AD)
【0123】
すべての年齢の推定520万人の米国人が2014年にはADに罹患していた。65歳およびそれより高齢の人口の11%がADに罹患している(Alzheimer’s Association)。2050年までに、ADに罹患している65歳およびそれより高齢の人々の数は、ほぼ3倍の予測値1,380万人になると予測されている。米国では、AD患者にケアを提供するコストは、年間約2140億ドルである。このコストの70%は、メディケアおよびメディケイドにより負担されている。現在の傾向では、これらのコストは2050年までに年間1.2兆ドルに増大すると予測される。
【0124】
本発明による星状膠細胞の活性化と、神経保護および神経修復の促進は、ADに対する新たな処置の選択肢を示す。したがって、本明細書では、一態様において、ADに罹患している患者のADを処置するか、または神経保護もしくは神経修復を促進する方法であって、患者に本明細書に開示の化合物の有効量を投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、ADに罹患している患者におけるADを処置するか、または神経保護もしくは神経回復を促進する方法であって、患者にA3Rアゴニストの有効量を投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、ADに罹患している患者におけるADを処置するか、または神経保護もしくは神経回復を促進する方法であって、患者にP2Y1アゴニストの有効量を投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、化合物は、A3受容体でのバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストもしくはアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、化合物は、A3RおよびA1Rでのデュアルアゴニズムによって作用する。いくつかの実施形態では、化合物は、P2Y1受容体でのバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストもしくはアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、化合物は、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物である。
パーキンソン病(PD)
【0125】
100万人もの米国人がPDと共に生活しており、毎年約60,000人の米国人が新たに診断されているが、これには検出されていない数千の症例は含まれていない(Parkinson’s Disease Foundation)。医療処置、社会保障費用および損失利益を含む、PDの直接的費用および間接的費用の総費用は、米国では、年間250億ドル近くになると推定される(Parkinson’s Disease FoundationおよびHuse 2005)。
【0126】
本発明による神経保護および神経修復の活性化は、PDに対する新たな処置の選択肢を示す。したがって、本明細書において、一態様では、PDに罹患している患者におけるPDを処置するか、または神経保護もしくは神経修復を促進する方法であって、患者に、開示の化合物の有効量を投与することを含む方法が提供される。いくつかの実施形態では、本発明は、PDに罹患している患者におけるPDを処置するか、または神経保護もしくは神経回復を促進する方法であって、患者に、A3Rアゴニストの有効量を投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、PDに罹患している患者におけるPDを処置するか、または神経保護もしくは神経回復を促進する方法であって、患者に、P2Y1アゴニストの有効量を投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、化合物は、A3受容体でのバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストもしくはアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、化合物は、A3RおよびA1Rでのデュアルアゴニズムによって作用する。いくつかの実施形態では、化合物は、P2Y1受容体でのバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストもしくはアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、化合物は、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物である。
多発性硬化症(MS)
【0127】
米国では400,000人を超える人がMSに罹患している。若年成人において、MSは、中枢神経系の最も一般的な疾患である(Multiple Sclerosis Foundation)。星状膠細胞は、MSによって引き起こされる神経細胞ミエリンコーティングの破壊を、MS患者の傷害を受けたCNSにおける神経修復効果と治癒の促進によって好転させる可能性を有する。
【0128】
本発明によるCNSの神経保護および神経修復の活性化は、したがって、MSに対する新たな処置の選択肢を示す。したがって、本明細書において、一態様では、MSに罹患している患者におけるMSを処置するか、または神経保護もしくは神経修復を促進する方法であって、患者に、開示の化合物の有効量を投与することを含む方法が提供される。いくつかの実施形態では、本発明は、MSに罹患している患者におけるMSを処置するか、または神経保護もしくは神経回復を促進する方法であって、患者に、A3Rアゴニストの有効量を投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、MSに罹患している患者におけるMSを処置するか、または神経保護もしくは神経回復を促進する方法であって、患者に、P2Y1アゴニストの有効量を投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、化合物は、A3受容体でのバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストもしくはアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、化合物は、A3RおよびA1Rでのデュアルアゴニズムによって作用する。いくつかの実施形態では、化合物は、P2Y1受容体でのバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストもしくはアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、化合物は、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物である。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)/ルー・ゲーリッグ病
【0129】
米国では毎年およそ5,600人の人がALSと診断されており、同時に30,000人もの米国人がその病気に罹患している可能性がある(ALS Association)。星状膠細胞の活性化は、ALS患者におけるニューロンの回復および修復ならびにそれらの連結の刺激を提供し得る。
【0130】
したがって、本明細書において、一態様では、ALSに罹患している患者におけるALSを処置するか、または神経保護もしくは神経修復を促進する方法であって、患者に、開示の化合物の有効量を投与することを含む方法が提供される。また他の実施形態では、ALS患者におけるニューロンの回復および修復ならびにそれらの連結を刺激する方法であって、患者に、本明細書に開示の化合物の有効量を投与することを含む方法が提供される。いくつかの実施形態では、本発明は、ALSに罹患している患者におけるALSを処置するか、または神経保護もしくは神経回復を促進する方法であって、患者にA3Rアゴニストの有効量を投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、ALSに罹患している患者におけるALSを処置するか、または神経保護もしくは神経回復を促進する方法であって、患者にP2Y1アゴニストの有効量を投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、化合物は、A3受容体でのバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストもしくはアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、化合物は、A3RおよびA1Rでのデュアルアゴニズムによって作用する。いくつかの実施形態では、化合物は、P2Y1受容体でのバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストもしくはアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、化合物は、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物である。
慢性外傷性脳症(CTE)
【0131】
CTE(タウオパチーの一形態)は、頭部に1回または1回より多くの(多くの場合、多数回、または時間の経過と共に繰り返される)重度の衝撃を受けた個体で確認される進行性の神経変性疾患である。CTEは、アメリカンフットボール、サッカー、ホッケー、プロレスリング、スタントパフォーマンス、雄牛乗りおよびロデオパフォーマンス、モトクロス、ならびに脳外傷および脳震盪を繰り返し経験している他の接触型スポーツのプロのスポーツ選手で最も頻繁に診断される。CTE罹患者の亜集団は、ALSに似た運動ニューロン疾患症状を特徴とする、慢性外傷性脳筋症(CTEM)に罹患している。進行性筋力低下ならびに運動異常および歩行異常は、CTEMの初期兆候であると考えられている。CTEの第1ステージの症状には、進行性の注意欠陥、見当識障害、めまい、および頭痛が含まれる。第2ステージの症状には、記憶喪失、社会不安、異常行動、および判断力低下が含まれる。第3ステージおよび第4ステージでは、患者は、進行性認知症、動作鈍化、振戦、ハイポミミア、回転性めまい、言語障害、難聴、および自殺傾向を患っており、また構音障害、嚥下障害、および視覚異常、例えば眼瞼下垂がさらに含まれ得る。
【0132】
したがって、本明細書において、一態様では、CTEに罹患している患者におけるCTEを処置もしくは予防するか、または神経保護もしくは神経修復を促進する方法であって、患者に、開示の化合物の有効量を投与することを含む方法が提供される。また他の実施形態では、CTE患者におけるニューロンの回復および修復ならびにそれらの連結を刺激する方法であって、患者に、開示の化合物の有効量を投与することを含む方法が提供される。いくつかの実施形態では、化合物は、CTEの第1ステージ、第2ステージ、第3ステージ、または第4ステージの1つまたは1つより多くの症状を処置する。いくつかの実施形態では、本発明は、CTEに罹患している患者のCTEを処置するか、または神経保護もしくは神経回復を促進する方法であって、患者にA3Rアゴニストの有効量を投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、CTEに罹患している患者のCTEを処置するか、または神経保護もしくは神経回復を促進する方法であって、患者にP2Y1アゴニストの有効量を投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、化合物は、A3受容体でのバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストもしくはアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、化合物は、A3RおよびA1Rでのデュアルアゴニズムによって作用する。いくつかの実施形態では、化合物は、P2Y1受容体でのバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストもしくはアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、化合物は、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物である。
【0133】
顕微鏡的スケールでは、この病理には、神経細胞死、タウ沈着、TAR DNA結合タンパク質43(TDP43)ベータアミロイド沈着、白質変化、および他の異常が含まれる。タウ沈着には、高密度神経原線維変化(NFT)、神経突起、および星状膠細胞および他のグリア細胞から構成されるグリアタングル(glial tangle)の存在の増加が含ま
れる。したがって、いくつかの実施形態では、本方法は、神経細胞死、タウ沈着、TAR
DNA結合タンパク質43(TDP43)ベータアミロイド沈着、白質変化、およびCTEに関連する他の異常を処置し、排除を増強し、または予防する。
【0134】
いくつかの実施形態では、本発明は、神経変性疾患、例えば、上記および下記で論じた疾患を処置するための、本明細書に開示の化合物、例えば、A3Rのバイアス型アゴニスト、部分アゴニストもしくはバイアス型部分アゴニスト、A3RおよびA1Rでのデュアルアゴニスト、またはP2Y1のバイアス型アゴニスト、部分アゴニストもしくはバイアス型部分アゴニストの長期投与を提供する。
心血管疾患
【0135】
また、開示の化合物は、様々な心血管疾患および状態の処置においても有用である。いくつかの実施形態では、本発明は、心疾患(心臓疾患)または心血管疾患、例えば、心虚血、心筋梗塞、心筋症、冠状動脈疾患、不整脈、心筋炎、心膜炎、狭心症、高血圧性心疾患、心内膜炎、リウマチ性心疾患、先天性心疾患、またはアテローム性動脈硬化症を処置する方法であって、それを必要とする患者に、開示の化合物、例えば、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物の有効量を投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、開示の化合物は、例えば、A3R受容体のバイアス型アゴニズム、部分アゴニズム、もしくはバイアス型部分アゴニズムを介して、またはA3RおよびA1Rでのデュアルアゴニズムを介して、ATP感受性カリウムチャネルのモジュレーションを提供する。
【0136】
いくつかの実施形態では、心疾患または心血管疾患は、心虚血または心筋梗塞である。
【0137】
いくつかの実施形態では、本発明は、心(心臓)または心血管の疾患または状態に罹患している患者における心臓保護、心臓修復、または心臓再生を促進または増大する方法であって、患者に、開示の化合物、例えば、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0138】
いくつかの実施形態では、患者が罹患している心疾患(心臓疾患)または心血管疾患は、心虚血、心筋梗塞、心筋症、冠状動脈疾患、不整脈、心筋炎、心膜炎、狭心症、高血圧性心疾患、心内膜炎、リウマチ性心疾患、先天性心疾患、またはアテローム性動脈硬化症である。
【0139】
いくつかの実施形態では、開示の化合物は、例えば、A3R受容体のバイアス型アゴニズム、部分アゴニズム、バイアス型部分アゴニズムを介して、またはA3RおよびA1Rでのデュアルアゴニズムを介して、ATP感受性カリウムチャネルのモジュレーションを提供する。
他の疾患
【0140】
神経保護などの有益な効果を、例えば星状膠細胞ミトコンドリア活性を増大させることによってモジュレートする化合物もまた、他の様々な疾患を処置する可能性を有する。例えば、本発明に開示の神経保護における星状膠細胞の役割により、例えば、A3Rおよび/またはP2Y1受容体のモジュレーションを介した星状膠細胞の活性化は、下記で論じる様々な疾患および状態を処置するのに有用となり得る。
【0141】
したがって、いくつかの実施形態では、本発明は、疾患または状態に罹患している患者における神経変性を処置する方法であって、患者に開示の化合物、例えば、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0142】
いくつかの実施形態では、本発明は、疾患または状態に罹患している患者における神経保護、神経修復、または神経再生を促進または増大する方法であって、患者に開示の化合物、例えば、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0143】
いくつかの実施形態では、疾患または状態は、自己免疫疾患、アレルギー性疾患、および/または移植片拒絶反応および移植片対宿主疾患から選択される(これらの状態の処置におけるある特定のヌクレオシドおよびヌクレオチド化合物の使用については、例えば、これにより参照により本明細書に組み込まれる、WO2007/20018を参照)。他の実施形態では、疾患または状態は、眼内高眼圧症および/または緑内障から選択される(これらの状態の処置におけるある特定のヌクレオシドおよびヌクレオチド化合物の使用については、例えば、これにより参照により本明細書に組み込まれる、WO2011/77435を参照)。他の実施形態では、疾患または状態は、臭気過敏症および/または嗅覚障害から選択される(これらの状態の処置におけるある特定のヌクレオシドおよびヌクレオチド化合物の使用については、例えば、これにより参照により本明細書に組み込まれる、EP1624753を参照)。他の実施形態では、疾患または状態は、2型糖尿病および/または疼痛管理から選択される(これらの状態の処置におけるある特定のヌクレオシドおよびヌクレオチド化合物の使用については、例えば、これにより参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2010/0256086号を参照)。
【0144】
他の実施形態では、疾患または状態は、呼吸器疾患および/または心血管(CV)疾患から選択される(これらの状態の処置におけるある特定のヌクレオシドおよびヌクレオチド化合物の使用については、例えば、これにより参照により本明細書に組み込まれる、FASEB J. (2013) 27:1118.4(会合の抄録)を参照)。他の実施形態では、疾患または状態は、CNS機能の欠陥、学習の欠陥および/または認知の欠陥から選択される(これらの状態の処置におけるある特定のヌクレオシドおよびヌクレオチド化合物の使用については、例えば、これにより参照により本明細書に組み込まれる、Neuropsychopharmacology.
2015 Jan;40(2):305-14. doi: 10.1038/npp.2014.173. Epub 2014 Jul 15. "Impaired cognition after stimulation of a P2Y1 receptor in the rat medial prefrontal cortex," Koch, H. et al. PMID: 25027332を参照)。他の実施形態では、疾患または状態は、神経変性疾患、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、プリオン病、および/または筋萎縮性側索硬化症から選択される(これらの状態の処置におけるある特定のヌクレオシドおよびヌクレオチド化合物の使用については、例えば、これにより参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第8,691,775号を参照)。他の実施形態では、疾患または状態は、耳の障害、メニエール病、内リンパ水腫、進行性聴覚消失、めまい、回転性めまい、耳鳴、放射線がん療法に関連する付随的な脳傷害、および/または片頭痛処置から選択される(これらの状態の処置におけるある特定のヌクレオシドおよびヌクレオチド化合物の使用については、例えば、そのそれぞれがこれにより参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2009/0306225号;UY31779;および米国特許第8,399,018号を参照)。他の実施形態では、疾患または状態は、病的睡眠撹乱、うつ病、高齢者の睡眠障害、パーキンソン病、アルツハイマー病、てんかん、統合失調症、および/またはアルコール依存者の回復により経験される症状から選択される(これらの状態の処置におけるある特定のヌクレオシドおよびヌクレオチド化合物の使用については、例えば、これにより参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2014/0241990号を参照)。他の実施形態では、疾患または状態は、手術中の末梢神経系のニューロンまたは神経への傷害から選択される(これらの状態の処置におけるある特定のヌクレオシドおよびヌクレオチド化合物の使用については、例えば、これにより参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第8,685,372号を参照)。他の実施形態では、疾患または状態は、がん、例えば前立腺がんなどである(これらの状態の処置におけるある特定のヌクレオシドおよびヌクレオチド化合物の使用については、例えば、これにより参照により本明細書に組み込まれる、Biochem Pharmacol. 2011 August 15; 82(4): 418-425. doi:10.1016/j.bcp.2011.05.013. "Activation of the P2Y1 Receptor Induces Apoptosis and Inhibits Proliferation of Prostate Cancer Cells," Qiang Wei et al.を参照)。他の実施形態では、疾患または状態は、1つまたは1つより多くの胃腸の状態、例えば、便秘および/または下痢などから選択される(これらの状態の処置におけるある特定のヌクレオシドおよびヌクレオチド化合物の使用については、例えば、これにより参照により本明細書に組み込まれる、Acta Physiol (Oxf). 2014 Dec; 212(4):293-305. doi: 10.1111/apha.12408. "Differential functional role of purinergic and nitrergic inhibitory cotransmitters in human colonic relaxation," Mane N1, Gil V, Martinez-Cutillas M, Clave P, Gallego D, Jimenez
M.;およびNeurogastroenterol. Motil. 2014 Jan;26(1):115-23. doi: 10.1111/nmo.12240. Epub 2013 Oct 8. "Calcium responses in subserosal interstitial cells of the guinea-pig proximal colon," Tamada H., Hashitani H. PMID: 24329947を参照)。他の実施形態では、疾患または状態は、CNSによって媒介さ
れる疼痛、例えば、神経障害性疼痛、炎症性疼痛、および/または急性疼痛などから選択される(これらの状態の処置におけるある特定のヌクレオシドおよびヌクレオチド化合物の使用については、例えば、Br J Pharmacol. 2010 Mar;159(5):1106-17. doi: 10.1111/j.1476-5381.2009.00596.x. Epub 2010 Feb 5. "A comparative analysis
of the activity of ligands acting at P2X and P2Y receptor subtypes
in models of neuropathic, acute and inflammatory pain." Ando RD1, Mehesz B, Gyires K, Illes P, Sperlagh B. PMID: 20136836)を参照)。
【0145】
他の実施形態では、疾患または状態は、脳のがん、例えば膠芽腫から選択される(これらの状態の処置におけるある特定のヌクレオシドおよびヌクレオチド化合物の使用については、例えば、これにより参照により本明細書に組み込まれる、Purinergic Signal. 2015 Sep;11(3):331-46. doi: 10.1007/s11302-015-9454-7. Epub 2015 May 15. "Potentiation of temozolomide antitumor effect by purine receptor ligands able to restrain the in vitro growth of human glioblastoma stem cells." D'Alimonte, I. et al. PMID: 25976165を参照)。他の実施形態では、疾患または状態は、疼痛である(疼痛の処置におけるある特定のヌクレオシドおよびヌクレオチド化合物の使用については、例えば、そのそれぞれがこれにより参照により本明細書に組み込まれる、Pharmacol Biochem Behav. 2015 Jan;128:23-32. doi: 10.1016/j.pbb.2014.11.001. Epub 2014 Nov 6. "Participation of peripheral P2Y1, P2Y6 and P2Y11 receptors in formalin-induced inflammatory pain in rats."
Barragan-Iglesias P. et al. PMID: 25449358;およびNeuropharmacology. 2014
Apr;79:368-79. doi: 10.1016/j.neuropharm.2013.12.005. Epub 2013 Dec 12.
"Blockade of peripheral P2Y1 receptors prevents the induction of thermal hyperalgesia via modulation of TRPV1 expression in carrageenan-induced inflammatory pain rats: involvement of p38 MAPK phosphorylation in DRGs." Kwon SG, Roh DH, Yoon SY, Moon JY, Choi SR, Choi HS, Kang SY, Han HJ, Beitz AJ, Lee JH. PMID: 24333674を参照)。他の実施形態では、
疾患または状態は、胃腸障害、例えば下痢などから選択される(これらの状態の処置におけるある特定のヌクレオシドおよびヌクレオチド化合物の使用については、これにより参照により本明細書に組み込まれる、Acta Physiol (Oxf). 2014 Dec;212(4):293-305.
doi: 10.1111/apha.12408. "Differential functional role of purinergic and nitrergic inhibitory cotransmitters in human colonic relaxation," Mane
N., Gil V, Martinez-Cutillas M, Clave P, Gallego D, Jimenez M.を参照)。他の実施形態では、疾患または状態は、認知障害である(この状態の処置におけるある特定のヌクレオシドおよびヌクレオチド化合物の使用については、例えば、これにより参照により本明細書に組み込まれる、Neuropsychopharmacology. 2015 Jan;40(2):305-14. doi: 10.1038/npp.2014.173. Epub 2014 Jul 15. "Impaired cognition after stimulation of P2Y1 receptors in the rat medial prefrontal cortex," Koch H, Bespalov A, Drescher K, Franke H, Krugel U. PMID: 25027332を参照)。
【0146】
いくつかの実施形態では、本発明は、脳損傷または神経変性状態に関連する疾患または状態を処置する方法であって、例えば、てんかん、片頭痛、放射線がん療法に関連する付随的な脳傷害、うつ病、気分変化または行動変化、認知症、異常行動、自殺傾向、振戦、ハンチントン舞踏病、運動協調の喪失、難聴、言語障害、ドライアイ、ハイポミミア、注意欠陥、記憶喪失、認知障害、回転性めまい、構音障害、嚥下障害、視覚異常、または見当識障害を処置する方法であって、それを必要とする患者に、開示の化合物の有効量を投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、化合物は、A3Rアゴニストである。いくつかの実施形態では、化合物は、P2Y1アゴニストである。いくつかの実施形態では、化合物は、A3受容体でのバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストもしくはアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、化合物は、A3RおよびA1Rでのデュアルアゴニズムによって作用する。いくつかの実施形態では、化合物は、P2Y1受容体でのバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストもしくはアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、化合物は、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物である。
【0147】
さらなる実施形態では、本発明は、それを必要とする患者におけるアルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、およびプリオン病からなる群から選択される神経変性疾患を処置する方法であって、開示の化合物の有効量を投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、化合物は、A3Rアゴニストである。いくつかの実施形態では、化合物は、P2Y1アゴニストである。いくつかの実施形態では、化合物は、A3受容体でのバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストもしくはアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、化合物は、A3RおよびA1Rでのデュアルアゴニズムによって作用する。いくつかの実施形態では、化合物は、P2Y1受容体でのバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストもしくはアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、化合物は、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物である。
【0148】
いくつかの実施形態では、認知機能または神経機能の改善は、改訂版のウェクスラー記憶尺度の遅延言語再生課題において約1%~20%の間のスコア増加として測定される。例えば、認知機能の改善は、約1%~10%の間、または約1%~5%の間のスコアの増加として測定することができる。
【0149】
いくつかの実施形態では、本発明は、外傷性脳損傷(TBI)または脳卒中から選択される脳もしくは中枢神経系(CNS)の損傷または状態を処置する方法であって、それを必要とする患者に、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0150】
いくつかの実施形態では、脳または中枢神経系(CNS)の損傷または状態は、TBIである。いくつかの実施形態では、TBIは、脳震盪、爆風損傷、戦闘関連損傷、または頭部への軽度、中等度もしくは重度の衝撃から選択される。
【0151】
いくつかの実施形態では、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物は、TBIまたは脳卒中の24時間以内に投与される。
【0152】
いくつかの実施形態では、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物は、TBIまたは脳卒中の8時間以内に投与される。
【0153】
いくつかの実施形態では、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物は、TBIまたは脳卒中後の少なくとも最初の8~48時間の間に投与される。
【0154】
いくつかの実施形態では、脳または中枢神経系(CNS)の損傷または状態は、脳卒中である。
【0155】
いくつかの実施形態では、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物は、脳卒中を処置するために、脳卒中が発症した後に脳卒中が解消されるまでの期間、長期的に投与される。
【0156】
いくつかの実施形態では、神経保護または神経修復は、未処置の患者と比較して、患者において増大される。
【0157】
いくつかの実施形態では、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物は、ヒトA3アデノシン受容体(A3R)でのバイアス型部分アゴニストである。いくつかの実施形態では、化合物は、A3RおよびA1Rでのデュアルアゴニズムによって作用する。
【0158】
いくつかの実施形態では、A3Rは、A3R受容体の神経保護機能に向けてバイアスされた方式で部分的にアゴナイズされる。
【0159】
いくつかの実施形態では、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物は、経口投与、静脈内投与、または非経口的投与される。
【0160】
一態様では、本発明は、TBIまたは脳卒中に罹患した患者において神経保護または神経修復を増大する方法であって、それを必要とする患者に、化合物Aの固形形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0161】
いくつかの実施形態では、神経保護または神経修復は、未処置の患者と比較して、TBIまたは脳卒中後の回復期間を短縮させる。
【0162】
いくつかの実施形態では、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物は、ヒトA3アデノシン受容体(A3R)でのバイアス型部分アゴニストであり、A3Rは、A3R受容体の神経保護機能に向けてバイアスされた方式で部分的にアゴナイズされる。いくつかの実施形態では、化合物は、A3RおよびA1Rでのデュアルアゴニズムによって作用する。
【0163】
いくつかの実施形態では、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物は、経口投与、静脈内投与、または非経口的投与される。
【0164】
一態様では、本発明は、外傷性脳損傷(TBI)、脳卒中、神経変性状態、または心疾患もしくは心血管疾患から選択される損傷、疾患、または状態を処置する方法であって、それを必要とする患者に、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0165】
いくつかの実施形態では、損傷、疾患、または状態は、TBIである。いくつかの実施形態では、TBIは、脳震盪、爆風損傷、戦闘関連損傷、または頭部への軽度、中等度もしくは重度の衝撃から選択される。
【0166】
いくつかの実施形態では、損傷、疾患、または状態は、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、くも膜下出血、脳血管痙攣、または一過性脳虚血発作(TIA)から選択される脳卒中である。
【0167】
いくつかの実施形態では、神経変性疾患は、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、ハンチントン病(HD)、多発性硬化症(MS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、慢性外傷性脳症(CTE)、またはウイルス、アルコール依存症、腫瘍、毒素、もしくは反復性脳損傷によって引き起こされる神経変性状態から選択される。
【0168】
いくつかの実施形態では、損傷、疾患または状態は、パーキンソン病である。
【0169】
いくつかの実施形態では、損傷、疾患、または状態は、アルツハイマー病、片頭痛、脳外科手術、またはがん化学療法に関連する神経学的副作用である。
【0170】
いくつかの実施形態では、心疾患または心血管疾患は、心虚血、心筋梗塞、心筋症、冠動脈疾患、不整脈、心筋炎、心膜炎、狭心症、高血圧性心疾患、心内膜炎、リウマチ性心疾患、先天性心疾患またはアテローム性動脈硬化症から選択される。
【0171】
いくつかの実施形態では、心疾患または心血管疾患は、心虚血または心筋梗塞である。
【0172】
いくつかの実施形態では、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物は、脳卒中、心虚血、または心筋梗塞を処置するために、損傷が発症した後に損傷が解消されるまでの期間、長期的に投与される。
【0173】
いくつかの実施形態では、神経保護または神経修復は、未処置の患者と比較して、患者において増大される。
【0174】
いくつかの実施形態では、A3Rは、他のA3R媒介性経路をほとんど、もしくはまったく活性化することなく細胞内カルシウム動員を優先的に活性化することを介して、またはGq11媒介性細胞内カルシウム動員、cAMP生成のGi媒介性モジュレーションもしくはERK1/2およびAktのGi媒介性リン酸化を優先的に活性化することを介して、A3R受容体の神経保護機能に向けてバイアスされた方式でアゴナイズされる。
【0175】
いくつかの実施形態では、A3Rは、他のA3R媒介性経路をほとんど、もしくはまったく活性化することなく細胞内カルシウム動員を優先的に活性化することを介して、またはGq11媒介性細胞内カルシウム動員、cAMP生成のGi媒介性モジュレーションもしくはERK1/2およびAktのGi媒介性リン酸化を優先的に活性化することを介して、A3R受容体の心臓保護機能に向けてバイアスされた方式で部分的にアゴナイズされる。
【0176】
いくつかの実施形態では、この方法は、がん化学療法または脳外科手術と関連するか、またはそれからもたらされる神経学的副作用に罹患している患者における神経保護または神経修復を増大させる。
【0177】
いくつかの実施形態では、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物は、経口投与される。
【0178】
一態様では、本発明は、TBIまたは脳卒中に罹患している患者における神経保護または神経修復を増大させ、それによってTBIまたは脳卒中を処置する方法であって、それを必要とする患者に、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0179】
一態様では、本発明は、心虚血または心筋梗塞に罹患している患者における傷害を受けた心臓組織の心臓保護または再生を増大させ、それによって心虚血または心筋梗塞を処置する方法であって、それを必要とする患者に、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0180】
いくつかの実施形態では、TBI、脳卒中、心虚血、または心筋梗塞の後の回復期間は、未処置患者と比較して、短縮される。
【0181】
いくつかの実施形態では、A3Rは、A3R受容体の神経保護機能に向けてバイアスされた方式で部分的にアゴナイズされる。
【0182】
いくつかの実施形態では、A3Rは、A3R受容体の心臓保護機能に向けてバイアスされた方式で部分的にアゴナイズされる。
【0183】
いくつかの実施形態では、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物は、経口投与される。
【0184】
いくつかの実施形態では、化合物は、完全なA3Rアゴニストと比較して改善された心臓保護機能を有するA3Rのバイアス型アゴニストである。
【0185】
いくつかの実施形態では、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物は、以下のA3R媒介性経路:Gq11媒介性細胞内カルシウム動員の活性化、cAMP生成のGi媒介性モジュレーション、ERK1/2およびAktのGi媒介性リン酸化、またはベータ-アレスチン活性化のモジュレーションの1つまたは1つより多くを優先的に活性化することを介して、完全なA3Rアゴニストと比較して改善された心臓保護機能を有するA3Rのバイアス型アゴニストである。
【0186】
いくつかの実施形態では、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物は、他のA3R媒介性経路をほとんど、またはまったく活性化することなく細胞内カルシウム動員を優先的に活性化することを介して、完全なA3Rアゴニストと比較して改善された心臓保護機能を有するA3Rのバイアス型アゴニストである。
【0187】
いくつかの実施形態では、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物は、完全なA3Rアゴニストと比較して改善された心臓保護機能を有するA3Rの部分アゴニストである。
依存性障害
【0188】
開示の化合物はまた、依存症、依存性行動、行動依存症、強迫性障害および行動、ならびに関連する状態を処置するのに有用である。
【0189】
そのような依存症、行動、および障害の処置における化合物Aなどの化合物の使用は、その内容がこれにより参照により本明細書に組み込まれる、WO/2019/157317に開示されている。
【0190】
コカイン自己投与マウスは、脳のVTA(腹側被蓋野)において有意に高いグルタメートレベルを示す。VTA、特にVTAドーパミンニューロンは、報酬系、動機づけ、認知、および薬物依存においていくつかの機能を果たしており、いくつかの精神障害の病巣となり得る。グルタメートレベルの上昇は、少なくとも部分的に、グルタメートの星状膠細胞への取り込みの喪失に起因するものと思われる。理論に拘束されることを望むものではないが、グルタメートの利用可能性の減少が星状膠細胞機能に対してマイナスの影響を及ぼし、この機能の喪失がニューロン活動および薬物探索行動に影響を及ぼすものと考えられる。本明細書に開示の化合物は、例えば、そのような星状膠細胞機能の喪失を好転させることによって、依存個体における再発を処置または予防することが今回確認された。そのような星状膠細胞機能の喪失は、部分的には、星状膠細胞におけるグルタメートトランスポーター(GLT-1)の発現の低下に起因し得る。星状膠細胞はグルタメートを代謝してATPを生成するので、これはおそらくグルタメートの取り込みを損ない、星状膠細胞の酸化的代謝および下流のATP依存性プロセスを弱めて、VTAニューロン活動のための最適な環境を維持する能力を弱める。
【0191】
したがって、一態様では、本発明は、依存症、依存性行動、行動依存症、脳報酬系障害、強迫性障害、または関連する状態を予防、改善、処置、またはそれらからの回復を促進する方法であって、その必要性のある被験体に、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0192】
いくつかの実施形態では、依存症は、依存性物質に対するものである。いくつかの実施形態では、依存性物質は、処方薬または嗜好用薬物である。
【0193】
いくつかの実施形態では、依存性物質は、アルコール、ニコチン、覚醒剤、カンナビノイドアゴニスト、またはオピオイドアゴニストから選択される。いくつかの実施形態では、依存性物質は、ヘロイン、コカイン、アルコール、吸入剤、オピオイド、ニコチン、アンフェタミン、もしくはそれらの合成類似体、塩、組成物、またはそれらの組合せから選択される。
【0194】
いくつかの実施形態では、アンフェタミンは、ブプロピオン、カチノン、MDMA、またはメタンフェタミンから選択される。
【0195】
いくつかの実施形態では、処方薬または嗜好用薬物は、カンナビノイドアゴニストまたはオピオイドアゴニストから選択される。
【0196】
いくつかの実施形態では、依存症は、アルコール依存症またはニコチン依存症である。
【0197】
いくつかの実施形態では、被験体は、多剤乱用者である。
【0198】
いくつかの実施形態では、処方薬または嗜好用薬物は、コカイン、ヘロイン、ブプロピオン、カチノン、MDMA、もしくはメタンフェタミンモルヒネ、オキシコドン、ヒドロモルフォン、フェンタニル、またはそれらの組合せから選択される。
【0199】
いくつかの実施形態では、開示の化合物は、星状膠細胞、例えば星状膠細胞ミトコンドリアによって媒介されるエネルギー代謝を増大させる。いくつかの実施形態では、化合物は、乱用の可能性のある物質によって引き起こされる星状膠細胞へのグルタメート取り込みの喪失を好転させる。いくつかの実施形態では、化合物は、少なくとも部分的に、依存症によって引き起こされる脳報酬系のリモデリングを好転させる。いくつかの実施形態では、そのような効果は、脳またはCNSのアデノシンA3受容体、例えばVTAの星状膠細胞A3R;またはミクログリアA3Rによって媒介される。
【0200】
別の態様では、本発明は、依存症、依存症行動、行動依存症、脳報酬系障害、強迫性障害、または関連する状態を、星状膠細胞、グリア、ミクログリア、ニューロン、内皮細胞、または脳および/もしくはCNSの他の細胞によって媒介されるエネルギー代謝を増大させることによって、予防、改善、処置し、または回復を促進する方法であって、それを必要とする被験体に、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0201】
いくつかの実施形態では、本方法は、被験体における依存症または依存症行動の再発を処置または予防する。いくつかの実施形態では、被験体は、1つまたは1つより多くの依存性物質、例えば、依存性薬物(乱用の可能性のある薬物)に依存している。下記に記載しているように、そのような薬物には、処方薬、および嗜好用薬物、例えばヘロイン、コカイン、ニコチン、またはオピオイドアゴニストが含まれる。
【0202】
別の態様では、本発明は、1つまたは1つより多くの依存性物質または依存性薬物への依存によって引き起こされる離脱を処置または予防する方法であって、それを必要とする被験体に、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物の有効量を投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、本化合物は、離脱にある依存個体の離脱症状を軽減する。いくつかの実施形態では、本化合物は、離脱にある依存個体の離脱を処置する。いくつかの実施形態では、本方法は、離脱を処置するための別の薬物を共投与することと、必要に応じて、心理療法などのカウンセリングを行うことをさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、認知行動療法をさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、デジタル療法をさらに含む。デジタル療法には、例えば、reSETまたはreSET-O(Pear Therapeutics)が含まれる。
【0203】
いくつかの実施形態では、本発明は、強迫性障害または強迫性行動の再発を処置または予防する方法であって、それを必要とする被験体に、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0204】
いくつかの実施形態では、強迫性障害は、強迫神経症(OCD)、トゥーレット症候群、抜毛癖、食欲不振、過食症、不安障害、精神病、または外傷後ストレス障害である。
【0205】
別の態様によれば、本発明は、1つまたは1つより多くの行動依存症および依存性行動または障害を処置するための方法であって、それを必要とする被験体に、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物を投与することを含む方法を提供する。行動依存症および依存性障害は、ある特定の活動中に脳内化学物質(例えばセロトニン、アドレナリン、エピネフリンなど)が放出されることにより感じられる中毒症状に起因する。そのような障害は当技術分野では公知であり、数例を挙げると、ギャンブル、性依存症、ポルノ依存症、摂食障害、買い物依存症、激怒/憤怒、仕事依存症、運動依存症、リスクテイク依存症(例えば盗癖および放火癖)、完全主義、インターネットまたはビデオゲーム依存症、ならびに電子機器の強迫的使用、例えばメール送受信およびソーシャルメディアのチェックなどを含む。
【0206】
いくつかの実施形態では、星状膠細胞の活性化は、開示の化合物と、1つまたは1つより多くのプリン受容体、例えばアデノシン受容体(AR)、例えば、星状膠細胞もしくはミクログリアと会合される受容体、またはそれらによって発現される受容体と接触させ、それによって1つまたは1つより多くの受容体の活性をモジュレートすることを介して達成される。いくつかの実施形態では、星状膠細胞上のアデノシン受容体、例えばA1、A2A、A2BおよびA3への効果を介して、化合物は星状膠細胞を活性化し、1つまたは1つより多くの開示の疾患または状態を処置する。いくつかの実施形態では、開示の化合物は、それを必要とする被験体に投与された後、1つまたは1つより多くの機能、例えば、星状膠細胞のエネルギー代謝または神経機能に対して影響のあるグルタメート取り込みなどに影響を及ぼし、それにより1つまたは1つより多くの疾患または状態を処置する。いくつかの実施形態では、化合物は、ARアゴニストである。いくつかの実施形態では、プリン受容体は、アデノシンA3受容体(A3R)である。いくつかの実施形態では、化合物は、A3Rアゴニストである。いくつかの実施形態では、化合物は、A3受容体(A3R)、例えばヒトA3受容体(hA3R)での部分アゴニストまたはバイアス型アゴニストまたはバイアス型部分アゴニストである。いくつかの実施形態では、化合物は、A3受容体におけるバイアス型アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、化合物は、A3RおよびA1Rでのデュアルアゴニズムによって作用する。いくつかの実施形態では、化合物は、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物である。
【0207】
P2Y受容体は、Gタンパク質共役型受容体であり、これらの受容体の様々なサブタイプは、シナプス連絡、細胞分化、イオン流量、血管拡張、血液脳関門透過性、血小板凝集、およびニューロモジュレーションなどのプロセスで重要な役割がある。プリンP2Y受容体ファミリーの特徴的なメンバーには、アデニンヌクレオチドに結合する、哺乳動物P2Y1、P2Y11、P2Y12およびP2Y13受容体;ウラシルヌクレオチドに結合する、P2Y4、P2Y6、およびP2Y14受容体;ならびに混合型選択性を有する、P2Y2およびげっ歯動物P2Y4受容体が含まれる。いくつかの実施形態では、星状膠細胞の活性化は、1つまたは1つより多くのプリン受容体、例えばP2Y受容体、例えば星状膠細胞と会合される受容体、または星状膠細胞によって発現される受容体と、開示の化合物を接触させ、それによって1つまたは1つより多くの受容体の活性をモジュレートすることにより達成される。いくつかの実施形態では、星状膠細胞と会合されるか、または星状膠細胞によって発現されるP2Y受容体、例えばP2Y1、P2Y11、P2Y12およびP2Y13などの効果によって、化合物は星状膠細胞を活性化し、1つまたは1つより多くの開示の疾患または状態を処置する。いくつかの実施形態では、P2Y受容体は、P2Y1受容体である。いくつかの実施形態では、P2Y1受容体は、細胞内ミトコンドリア膜上に位置している。いくつかの実施形態では、化合物は、P2Yアゴニストである。いくつかの実施形態では、化合物は、例えば、ヒトP2Y1受容体でのP2Y1アゴニストである。いくつかの実施形態では、化合物は、P2Y1受容体、例えばヒトP2Y1受容体でのバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストである。いくつかの実施形態では、化合物は、P2Y1受容体でのバイアス型アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、化合物は、化合物Aの固体形態、またはそれを含む薬学的に許容される組成物である。
【0208】
本明細書で使用される場合、用語「依存症」には、特段の明示のない限り、物質に対する身体的依存または精神的依存が含まれる。依存症は、物質が離脱された場合、離脱症状または精神的苦痛もしくは肉体的苦痛を伴い得る。依存症には、薬物嗜好、薬物依存、習慣形成、神経学的変化および/またはシナプス変化、脳報酬系障害の発症、行動変化、または被験体における依存症の他の徴候または症状が含まれる。
【0209】
本明細書で使用される場合、用語の「依存性薬物」または「乱用の可能性のある薬物」には、疾患の処置のために規制機関によって承認されているか否かにかかわらず、依存症または強迫行動の臨床的、行動的または神経学的な症状をもたらすことが知られている薬物および他の物質、例えばニコチンが含まれる。いくつかの実施形態では、依存性薬物には、ニコチン、カンナビノイドアゴニスト、覚醒剤、またはオピオイドアゴニストが含まれる。「依存性物質」は、依存性薬物、ならびにアルコールなどの他の乱用物質を意味する。依存性物質の例には、したがって、ヘロイン、コカイン、アルコール、アヘン剤、ニコチン、吸入剤、アンフェタミン、およびそれらの合成類似体が含まれる。
薬学的に許容される組成物
【0210】
別の実施形態によれば、本発明は、開示の化合物、および薬学的に許容される担体、アジュバントまたはビヒクルを含む組成物を提供する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、そのような組成物を必要とする患者に投与するために製剤化される。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、患者に経口投与するために製剤化される。
【0211】
用語「生物学的試料」には、本明細書で使用される場合、限定するものではないが、細胞培養物またはその抽出物;哺乳動物またはその抽出物から得られる生検材料;および血液、唾液、尿、糞便、精液、涙もしくは他の体液またはそれらの抽出物が含まれる。
【0212】
用語「患者」とは、本明細書で使用される場合、動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトを意味する。
【0213】
用語の「薬学的に許容される担体、アジュバント、またはビヒクル」とは、一緒に製剤化される化合物の薬理活性を破壊しない、非毒性の担体、アジュバントまたはビヒクルを意味する。本発明の組成物において使用することができる薬学的に許容される担体、アジュバントまたはビヒクルには、限定するものではないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えばリン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂が含まれる。
【0214】
「薬学的に許容される誘導体」とは、レシピエントに投与された際に、本発明の化合物、またはその抑制的な(inhibitorily)活性代謝産物もしくは残基を直接的または間接的に提供することができる、本発明の化合物の任意の非毒性の塩、エステル、エステルの塩または他の誘導体を意味する。
【0215】
本発明の方法による化合物および組成物は、上記で提供した障害の重症度を処置または軽減するのに有効な任意の量および任意の投与経路を使用して投与される。必要とされる正確な量は、被験体の種、年齢、および全身状態、感染の重症度、特定の薬剤、その投与様式などに応じて、被験体の間で変わる。本発明の化合物は、好ましくは、投与を容易にし、投薬量を均一にするための投与単位剤形で製剤化される。本明細書で使用される場合の「投与単位剤形」という表現は、処置しようとする患者に対して適切な物理的に個別の薬剤単位を意味する。しかし、本発明の化合物および組成物の毎日の総使用量が主治医によって健全な医学的判断の範囲内で決定されることは理解されよう。任意の特定の患者または生物体の特定の有効量レベルは、処置している障害および障害の重症度;用いられる特定の化合物の活性;用いられる特定の組成物;患者の年齢、体重、一般的な健康状態、性別、および食事;投与時間、投与経路、および用いられる特定の化合物の排出速度;処置の期間;用いられる特定の化合物と組み合わせて使用されるか、または同時に使用される薬物、ならびに医学分野で周知の同様の要因を含む様々な要因に応じて変わる。
【0216】
本発明の薬学的に許容される組成物は、ヒトおよび他の動物に、処置される感染症の重症度に応じて、経口投与、直腸内投与、非経口投与、嚢内投与、腟内投与、腹腔内投与、局所投与(粉末剤、軟膏、または点滴剤として)、経口もしくは鼻腔用スプレーなどとして頬側投与され得る。ある特定の実施形態では、本発明の化合物は、望ましい治療効果を得るために、1日1回または1回より多く、約0.01mg/kg~約50mg/kg、好ましくは約0.01mg/kg~約25mg/kgの1日当たりの被験体体重の投与量レベルで、経口投与または非経口投与される。ある特定の実施形態では、本発明の化合物は、望ましい治療効果を得るために、1日1回または1回より多く、約0.01mg/kg~約50mg/kg、または約0.01mg/kg~約25mg/kg、または約0.05mg/kg~約10mg/kg、または約0.05mg/kg~約5mg/kg、または約0.1mg/kg~約2.5mg/kgの1日当たりの被験体体重の投与量レベルで、経口投与または非経口投与される。
【0217】
経口投与用の液体剤形には、限定するものではないが、薬学的に許容されるエマルジョン剤、リポソーム剤、マイクロエマルジョン剤、溶液剤、懸濁液剤、シロップ剤およびエリキシル剤が含まれる。活性化合物に加えて、液体投与剤形は、当技術分野で一般に使用される不活性希釈剤、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物を含むことができる。不活性希釈剤に加えて、経口組成物はまた、アジュバント、例えば、湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、甘味剤、香味剤、および香料剤も含むことができる。
【0218】
注射可能な調製物、例えば、滅菌された注射可能な水性懸濁剤または油性懸濁剤は、公知の技術に従って、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を使用して製剤化することができる。また滅菌された注射可能な調製物は、例えば1,3-ブタンジオールの溶液として、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の滅菌された注射可能な溶液剤、懸濁液剤またはエマルジョン剤であり得る。用いることができる許容されるビヒクルおよび溶媒の中には、水、リンゲル液、U.S.P.および等張塩化ナトリウム溶液がある。さらに、滅菌された固定油が、従来、溶媒または懸濁化媒体として用いられている。この目的において、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む任意の無刺激性固定油を用いることができる。さらに、脂肪酸、例えばオレイン酸が注射剤の調製に使用される。
【0219】
注射可能な製剤は、例えば、細菌保持フィルターを介して濾過することによって、または使用前に滅菌水もしくは他の滅菌注射可能媒体に溶解または分散させることができる滅菌固体組成物の形態での滅菌剤を組み込むことによって滅菌することができる。
【0220】
本発明の化合物の効果を引き伸ばすために、多くの場合、皮下注射または筋肉内注射からの化合物の吸収を遅くさせることが望ましい。これは、水溶度の低い結晶性または非結晶性材料の液体懸濁液を使用することによって達成することができる。その後、化合物の吸収速度はその溶解速度に依存し、これは次に、結晶のサイズおよび結晶の形態に依存し得る。あるいは、非経口投与される化合物形態の遅延吸収は、化合物を油性ビヒクルに溶解または懸濁させることによって達成される。注射可能なデポー形態は、生分解性ポリマー、例えばポリラクチド-ポリグリコリドなどで化合物のマイクロカプセルマトリックスを形成することによって形成される。化合物のポリマーに対する比および用いられる特定のポリマーの性質に応じて、化合物の放出速度は調節することができる。他の生分解性ポリマーの例には、ポリ(オルトエステル)、ポリ(無水物)、ならびにシクロデキストリンおよび修飾シクロデキストリン(例えばSBE-bCD)が含まれる。注射可能なデポー製剤はまた、体内組織と適合性のあるリポソームまたはマイクロエマルジョンに化合物を捕捉させることによって調製される。
【0221】
直腸投与または膣投与用の組成物は、好ましくは、周囲温度では固体であるが体温では液体であることにより直腸または膣腔内で溶融し活性化合物を放出する適切な非刺激性賦形剤または担体、例えばカカオバター、ポリエチレングリコールまたは坐剤ワックスなどと、本発明の化合物とを混合することによって調製することができる坐剤である。
【0222】
経口投与用の固体剤形には、カプセル剤、錠剤、丸剤、粉末剤、および顆粒剤が含まれる。そのような固体剤形において、活性化合物は、少なくとも1つの不活性で薬学的に許容される賦形剤または担体、例えば、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウム、ならびに/または、a)充填剤もしくは増量剤、例えばデンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸、b)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロース、およびアカシア、c)保湿剤、例えばグリセロール、d)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、バレイショデンプンもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、ある特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウム、e)溶解遅延剤、例えばパラフィン、f)吸収促進剤、例えば第4級アンモニウム化合物、g)湿潤剤、例えば、セチルアルコールおよびグリセロールモノステアレート、h)吸収剤、例えば、カオリンおよびベントナイト粘土、i)滑沢剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物と混合される。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合には、剤形はまた緩衝剤を含むこともできる。
【0223】
類似のタイプの固体組成物はまた、ラクトースまたは乳糖ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を使用し、軟質および硬質充填ゼラチンカプセルの充填剤として使用することができる。錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤、および顆粒剤の固体剤形は、コーティングおよびシェル、例えば、腸溶性コーティングおよび医薬製剤分野で周知の他のコーティングを用いて調製することができる。それらは、必要に応じて乳白剤を含むことができ、またそれらが活性成分(複数可)のみで、または優先的には、腸管のある特定の部分において、必要に応じて遅延様式で放出される組成物であり得る。使用することができる包埋組成物の例には、ポリマー物質およびワックスが含まれる。類似のタイプの固体組成物はまた、ラクトースまたは乳糖ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を使用し、軟質および硬質充填ゼラチンカプセルの充填剤として使用することができる。
【0224】
活性化合物はまた、上記で記載したように、1つまたは1つより多くの賦形剤を含むマイクロカプセル化剤形であり得る。錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤、および顆粒剤の固形剤形は、コーティングおよびシェル、例えば、腸溶性コーティング、放出制御コーティング、および医薬製剤分野で周知の他のコーティングを用いて調製することができる。そのような固体剤形において、活性化合物は、少なくとも1つの不活性希釈剤、例えば、スクロース、ラクトースまたはデンプンと混合することができる。そのような剤形はまた、通常の慣行のように、不活性希釈剤以外の追加の物質、例えば、打錠滑沢剤および他の打錠助剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムおよび微結晶性セルロースを含むこともできる。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合には、剤形は緩衝剤を含むこともできる。それらは、必要に応じて乳白剤を含むことができ、またそれらが活性成分(複数可)のみで、または優先的には、腸管のある特定の部分において、必要に応じて遅延様式で放出される組成物であり得る。使用することができる包埋組成物の例には、ポリマー物質およびワックスが含まれる。
【0225】
本発明の化合物の局所投与または経皮投与用の剤形には、軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、粉末剤、溶液剤、スプレー剤、吸入剤またはパッチ剤が含まれる。活性成分は、滅菌条件下で、薬学的に許容される担体、および必要とされ得る場合には任意の必要な防腐剤または緩衝剤と混合される。眼科用製剤、点耳薬、および点眼薬もまた、本発明の範囲内であるものと考えられる。さらに、本発明は、経皮パッチの使用を考慮しており、これは化合物の身体への送達の制御を提供するというさらなる利点を有する。そのような剤形は、化合物を適切な媒体に溶解または分配することによって作製することができる。また吸収促進剤を使用して、皮膚を介した化合物の流量を増加させることができる。この速度は、速度制御膜を提供することによって、または化合物をポリマーマトリックスもしくはゲルに分散させることによって制御することができる。
【0226】
本発明の化合物はまた、眼に、例えば点眼薬または眼科用軟膏として、局所投与、例えば直接投与することもできる。点眼薬は、典型的には、本発明の少なくとも1つの化合物の有効量と、眼に安全に適用することが可能な担体とを含む。例えば、点眼薬は等張液の剤形をしており、眼の刺激がないように溶液のpHが調整される。多くの事例では、上皮バリアが眼への分子の浸透を妨げる。したがって、最も現在使用されている眼科薬には、何らかの形態の浸透促進剤が補充されている。これらの浸透促進剤は、最も上の上皮細胞の密着結合を緩めることによって作用する(Burstein, 1985, Trans Ophthalmol Soc
U K 104(Pt 4): 402-9; Ashton et al., 1991, J Pharmacol Exp Ther 259(2): 719-24; Green et al., 1971, Am J Ophthalmol 72(5): 897-905)。
最も一般的に使用される浸透促進剤は塩化ベンザルコニウムであり(Tang et al., 1994, J Pharm Sci 83(1): 85-90; Burstein et al, 1980, Invest Ophthalmol
Vis Sci 19(3): 308-13)、これはまた微生物汚染に対する防腐剤としても作用する。これは、典型的には、0.01~0.05%の最終濃度になるよう添加される。
他の治療剤との組合せ
【0227】
処置しようとする特定の状態または疾患に応じて、その状態を処置するために通常投与される追加の治療剤もまた、本発明の組成物中に存在させることができる。本明細書で使用される場合、特定の疾患または状態を処置するために通常投与される追加の治療剤は、「処置される疾患または状態に適切である」と知られている。
【0228】
ある特定の実施形態では、提供した化合物またはその組成物は、他の治療剤、例えば、組織プラスミノーゲン活性化因子、抗凝血剤、スタチン、ACE阻害剤、アンジオテンシンII受容体遮断薬(ARB)、ベータ遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬または利尿薬と組み合わせて、それを必要としている患者に投与される。
【0229】
ある特定の実施形態では、本発明の化合物または組成物と組み合わせて使用される組織プラスミノーゲン活性化因子には、限定するものではないが、アルテプラーゼ、デスモテプラーゼ、レテプラーゼ、テネクテプラーゼ、または上記のいずれかの組合せが含まれる。
【0230】
ある特定の実施形態では、本発明の化合物または組成物と組み合わせて使用される抗凝血剤には、限定するものではないが、ワルファリン、ヘパリン、アピキサバン(apixabam)、クロピドグレル、アスピリン、リバーロキサバン、ダビガトラン、または上記のいずれかの組合せが含まれる。
【0231】
ある特定の実施形態では、本発明の化合物または組成物と組み合わせて使用されるスタチンには、限定するものではないが、アトルバスタチン、ロスバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチン、シンバスタチンおよびピタバスタチン、セリバスタチン、メバスタチン、または上記のいずれかの組合せが含まれる。
【0232】
ある特定の実施形態では、本発明の化合物または組成物と組み合わせて使用されるACE阻害剤には、限定するものではないが、カプトプリル、エナラプリル、フォシノプリル、リシノプリル、モエキシプリル、ペリンドプリル、キナプリル、ラミプリル、トランドラプリル、ベナゼプリル、または上記のいずれかの組合せが含まれる。
【0233】
ある特定の実施形態では、本発明の化合物または組成物と組み合わせて使用されるアンジオテンシンII受容体遮断薬(ARB)には、限定するものではないが、アジルサルタン、カンデサルタン、エプロサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、オルメサルタン、テルミサルタン、バルサルタン、フィマサルタン、または上記のいずれかの組合せが含まれる。
【0234】
ある特定の実施形態では、本発明の化合物または組成物と組み合わせて使用されるベータ遮断薬には、限定するものではないが、アテノロール、ビソプロロール、ベタキソロール、カルテオロール、カルベジロール、ラベタロール、メトプロロール、ナドロール、ネビボロール、オクスプレノロール、ペンブトロール、ピンドロール、プロプラノロール、チモロール、または上記のいずれかの組合せが含まれる。
【0235】
ある特定の実施形態では、本発明の化合物または組成物と組み合わせて使用されるカルシウムチャネル遮断薬には、限定するものではないが、ジヒドロピリジン、アムロジピン、シルニジピン、クレビジピン、フェロジピン、イスラジピン、レルカニジピン、レバムロジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニモジピン、ニソルジピン、ニトレンジピン、ジルチアゼム、ベラパミル、または上記のいずれかの組合せが含まれる。
【0236】
ある特定の実施形態では、本発明の化合物または組成物と組み合わせて使用される利尿薬には、限定するものではないが、ループ利尿薬、チアジド利尿薬、チアジド様利尿薬およびカリウム保持性利尿薬、または上記のいずれかの組合せが含まれる。
【0237】
ある特定の実施形態では、本発明の化合物または組成物と組み合わせて使用されるループ利尿薬には、限定するものではないが、ブメタニド、エタクリン酸、フロセミド、トルセミド、または上記のいずれかの組合せが含まれる。
【0238】
ある特定の実施形態では、本発明の化合物または組成物と組み合わせて使用されるチアジド利尿薬には、限定するものではないが、エピチジド、ヒドロクロロチアジドおよびクロロチアジド、ベンドロフルメチアジド、メチクロチアジド、ポリチアジド、または上記のいずれかの組合せが含まれる。
【0239】
ある特定の実施形態では、本発明の化合物または組成物と組み合わせて使用されるチアジド様利尿薬には、限定するものではないが、インダパミド、クロルサリドン、メトラゾン、または上記のいずれかの組合せが含まれる。
【0240】
ある特定の実施形態では、本発明の化合物または組成物と組み合わせて使用されるカリウム保持性利尿薬には、限定するものではないが、アミロライド、トリアムテレン、スピロノラクトン、エプレレノン、または上記のいずれかの組合せが含まれる。
【0241】
ある特定の実施形態では、提供した化合物またはその組成物は、機械式血栓除去デバイス(mechanical thrombectomy device)と組み合わせて、それを必要とする患者に投与される。ある特定の実施形態では、機械式血栓除去デバイスは、脳卒中血栓除去デバイスまたは脳動脈瘤用のコイル塞栓デバイスである。ある特定の実施形態では、そのようなデバイスには、限定するものではないが、コイルレトリーバー、吸引デバイス、またはステントレトリーバーが含まれる。
【0242】
ある特定の実施形態では、2つまたは2つより多くの治療剤の組合せは、本発明の化合物または組成物と一緒に投与され得る。ある特定の実施形態では、3つまたは3つより多くの治療剤の組合せは、本発明の化合物または組成物と一緒に投与され得る。
【0243】
それらの追加の薬剤は、複数回投与レジメンの一部として、本発明の化合物を含有する組成物とは別々に投与することができる。あるいは、それらの薬剤は、単一組成物中の本発明の化合物と一緒に混合される、単一剤形の一部であってもよい。複数回投与レジメンの一部として投与される場合、2つの活性剤は、同時に、逐次的に、または互いに一定期間内に、通常は、互いに5時間以内に出され得る。
【0244】
本明細書で使用される場合、用語の「組合せ」、「組み合わせた」、および関連する用語は、本発明による治療剤の同時投与または逐次投与を意味する。例えば、本発明の化合物は、別の治療剤と共に、個別の単位剤形で同時にもしくは逐次的に、または単一の単位剤形で一緒に投与され得る。したがって、本発明は、本発明の化合物、追加の治療剤、および薬学的に許容される担体、アジュバント、またはビヒクルを含む単一の単位剤形を提供する。
【0245】
単一の剤形を生成するために担体材料と組み合わせることができる、(上記で説明した追加の治療剤を含む組成物中の)提供した化合物と追加の治療剤の両方の量は、処置しようとする宿主および特定の投与様式に応じて変わる。好ましくは、本発明の組成物は、1日当たり体重1kgにつき0.01~100mgの投与量の本発明の化合物を投与できるように製剤化されるべきである。
【0246】
追加の治療剤を含むこれらの組成物では、その追加の治療剤および本発明の化合物は、相乗的に作用し得る。したがって、そのような組成物中の追加の治療剤の量は、その治療剤を単独で利用する単剤療法において必要とされる量よりも少ない。そのような組成物では、1日当たり体重1kgにつき約0.001~100mgの追加の治療剤の用量を投与することができるか、または1日当たり体重1kgにつき約0.001mg~約500μg、もしくは約0.005mg~約250μg、もしくは約0.01mg~約100μgの追加の治療剤の用量を投与することができる。
【0247】
本発明の組成物中に存在する追加の治療剤の量は、その治療剤を単独の活性剤として含む組成物において通常投与される量を超えない。好ましくは、今回開示した組成物中の追加の治療剤の量は、単独の治療活性剤としてその薬剤を含む組成物において通常存在する量の約50%~100%の範囲にある。
【0248】
一実施形態では、本発明は、本発明の化合物および1つまたは1つより多くの追加の治療剤を含む組成物を提供する。治療剤は、本発明の化合物と一緒に投与することができるか、または本発明の化合物の投与前もしくは投与後に投与することができる。適切な治療剤は、以下でさらに詳細に説明される。ある特定の実施形態では、本発明の化合物は、治療剤の最大5分、10分、15分、30分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、または18時間前までに投与することができる。他の実施形態では、本発明の化合物は、治療剤の最大5分、10分、15分、30分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、または18時間後までに投与することができる。
【0249】
いくつかの実施形態では、本発明は、本発明の少なくとも1つの化合物またはその薬学的に許容される塩および薬学的に許容される担体を含む医薬を提供する。
【0250】
本発明のそれぞれの態様のすべての特徴は、準用して他のすべての態様に適用される。
【0251】
本明細書に記載されている本発明がより完全に理解されるように、以下の実施例を記載する。これらの実施例は、単なる例示を目的としており、いかなる方法においても本発明を限定するものとして解釈されるものではないことを理解されたい。
【実施例0252】
以下の実施例に示したように、ある特定の例示的な実施形態では、化合物は、以下の一般的な手順に従って調製される。一般的な方法は、本発明のある特定の化合物の合成について示しているが、以下の一般的な方法、および当業者に公知の他の方法は、本明細書に記載されているようなすべての化合物およびこれらの化合物のそれぞれのサブクラスおよび種に適用され得ることは理解されよう。
一般的な手順
【0253】
X線粉末回折(XRPD)分析は、Rigaku Smart-LabのX線回折システムで実施した。Rigaku Smart-LabのX線回折システムは、線源X線ビームを使用して、Bragg-Brentanoジオメオトリを反射するように設定した。X線源は、40kVおよび44maで操作されるCu Long Fine Focusチューブである。その光源は、高角度での細線から低角度での広い長方形に変化する試料での入射ビームプロファイルを提供する。ラインX線源ではビームコンディショニングスリットが使用されており、ラインに沿って、またラインの垂直方向の両方で、最大ビームサイズが10mm未満になるように保証されている。Bragg-Brentanoジオメトリは、パッシブ・ダイバージェンスと受信スリットによって制御されるパラ・フォーカシングジオメトリであり、試料自体が光学系のフォーカシングコンポーネントとして機能する。Bragg-Brentanoジオメトリの固有の解像度は、使用される回折計の半径と受信スリットの幅によって部分的に調節される。典型的には、Rigaku Smart-Labは、ピーク幅が0.1°2θまたはそれ未満になるように操作される。X線ビームの軸方向の発散は、入射ビーム経路と回折ビーム経路の両方に設けられた5.0°のソラースリットによって制御される。この機器は、分析の当日にASTMケイ素標準を使用して適格化される。
【0254】
粉末試料は、低バックグラウンドSiホルダーで、軽く手で押しながら、試料表面を平らにし、試料ホルダーの基準面と同じ高さに保った。それぞれの試料は、0.02°2θの有効ステップサイズで、1分間に6°2θの連続スキャンを使用し、2~40°2θで分析した。
【0255】
熱重量分析(TGA)は、TA Instruments Q50機器を使用して実施した。機器の天秤はクラスMの重りを使用して較正し、温度較正はミョウバンを使用して実施した。窒素パージは、天秤では毎分約40mLであり、炉では毎分約60mLであった。それぞれの試料(約2~5mg)を、予め計量したプラチナパンに入れ、20℃~350℃まで毎分10℃の速度で加熱した。加熱速度は、分析結果の結果に影響を与える可能性がある。窒素パージ率は、特定の機器の仕様に対して適宜変えることができる。
【0256】
示差走査熱量測定(DSC)分析は、TA Instruments Q2000機器を使用して実施した。機器の温度較正は、インジウムを使用して実施した。DSCセルは、各分析中、毎分約50mLの窒素パージ下で維持した。試料(約1~2mg)は標準の圧着型アルミニウムパンに入れ、25℃~350℃まで毎分10℃の速度で加熱した。このパンの種類、分析用のパンの調製、および加熱速度は、分析結果の結論に影響を与える可能性がある。窒素パージ率は、特定の機器の仕様に対して適宜変えることができる。
【0257】
動的蒸気吸着(DVS)分析は、TA Instruments Q5000動的蒸気吸着分析装置を使用して実施した。この機器は、標準の重りと湿度用の臭化ナトリウム標準で較正した。約20mgの試料を、分析用の金属コーティング石英パンに入れた。試料は、25℃で最大平衡時間1時間、10%相対湿度(RH)ステップにおいて、5~95%RH(吸着サイクル)および95~5%RH(脱着サイクル)で分析した。あるステップから次のステップへの移動は、0.01%の重量変化という平衡基準を満たした後であるか、または平衡基準が満たされなかった場合には1時間後に行われた。重量変化率の値は、Microsoft Excel(登録商標)を使用して計算した。DVS分析の温度は、結果の結論に影響を与える可能性がある。
【0258】
カールフィッシャー(KF)分析は、Mettler-Toledo C20電量法KF滴定装置を使用して実施した。この機器は、1%の水を含むHydranal水標準を使用して較正した。滴定液は、Hydranalメタノール溶液であった。試料は、3回繰り返して分析した。
【0259】
光学顕微鏡(OM)分析は、10倍接眼レンズと10倍対物レンズを装着したLeica DM 2500 P複合顕微鏡で、合計100倍の倍率で実施した。画像は、QImaging MicroPublisher 3.3 RTVカメラを使用してキャプチャーした。偏光顕微鏡画像(カラー)は、顕微鏡からの透過光と偏光板を配置して、鉱油中の試料で得た。
【0260】
赤外線(IR)スペクトルは、重水素化硫酸トリグリシン(DTGS)検出器、臭化カリウム(KBr)ビームスプリッター、および電子温度制御(ETC)Ever-Glo(登録商標)IR光源を備えたThermo Nicoletモデル6700フーリエ変換(FT)IR分光光度計を使用して得た。この機器は、SMART iTRダイヤモンド減衰全反射(ATR)サンプリングアクセサリーが装着されていた。バックグラウンド(空気)と試料のシングルビームスキャンは、4000~400cm-1のスペクトル範囲にわたって、2cm-1の解像度で128回のシグナル平均化スキャンにより収集した。最終試料スペクトルは自動的に計算され、Log1/R単位で示した。波長較正は、認証されたポリスチレン標準を使用して検証した。データの収集および処理は、Omnic
9.7.46ソフトウェアを使用して実施した。
【0261】
FT-ラマンスペクトルは、Nexusラマンアクセサリーモジュールに接続されたNicoletモデル6700分光計で得た。この機器は、1024nmで作動するNd:YAGレーザー、CaF2ビームスプリッター、およびインジウム・ガリウム・ヒ素検出器が装備されている。試料は、分析用の3インチのガラスNMRチューブに詰めた。FT-ラマンスペクトルは、3700~100cm-1のスペクトル範囲にわたって、4cm-1の解像度で256回のシグナル平均スキャンにより収集した。データの収集および処理は、Omnic 9.7.46ソフトウェアを使用して実施した。
【0262】
13C核磁気共鳴(NMR)スペクトルは、固体
13C交差分極マジック角回転法(CPMAS)によって得られ、実験は363MHzのTecmagベースの分光計で実施した。それぞれの試料(約200mg)は、その後のデータ収集のために、kel-Fエンドキャップで閉めた7mmのジルコニアローターに詰めた。176.0ppmに設定したグリシンを外部標準として使用した。使用した収集パラメータおよび処理パラメータを以下の表3に示す。
【表3】
【0263】
粉砕は、Retschミルを使用して実施した。約20mgの材料をプラスチック製の磨砕カップに入れ、続いて10μLの水およびステンレススチールのボールを入れた。次いで、試料を20分間、100%の出力で粉砕した。
(実施例A)
化合物Aの一般的な調製
【化4】
【0264】
表題の化合物は、下記ならびにそれぞれの全体がこれにより参照により本明細書に組み込まれる、’131特許および’363公開に記載されているステップおよび中間体(例えば、スキーム1およびスキーム2)に従って調製した。
スキーム1-化合物Aの合成
【化5】
【0265】
Zhan cat-1Bは、以下の構造を有する:
【化6】
【0266】
スキーム2は、合成の残りの部分を示す。
スキーム2-化合物Aの合成(続き)
【化7】
(実施例1)
化合物Aの遊離塩基形態Aの調製
【化8】
【0267】
化合物Aは、そのそれぞれの全体がこれにより参照により本明細書に組み込まれる、’131特許および’363公開の実施例9に詳細に記載されている方法に従って調製される。下記のスキーム3は、化合物Aの合成の詳細を提供する。スキーム3に示した合成の中間体を使用して、化合物Aの形態Aを調製した。
スキーム3-化合物Aの合成
【化9】
【化10】
化合物Aの形態A
【0268】
化合物Aの形態Aは、下記に記載されているように調製した。
化合物Aの形態A-調製方法1
【0269】
スキーム3の化合物13(350g、0.58mol)および水(2L)を3Lの丸底フラスコに加えた。200mLのトリフルオロ酢酸(TFA)を加え、混合物を60℃で12時間撹拌した。HPLCにより、反応が完了したことが示された。混合物を室温に冷却し、塩化メチレン(MC、300mL×3)で洗浄し、濃縮した。塩基性樹脂のAmberlyst 21を混合物に加えてpHが約9に達するようにし、混合物を16時間、室温で撹拌した。次いで、混合物を濾過し、メタノール(MeOH)で洗浄し、濃縮した。カラムクロマトグラフィーによる精製を実施し[SiO2(5X)、MC/MeOH=15/1~5/1(100V))、化合物Aを淡黄色の固体として得た。次いで、化合物Aを透明溶液になるまでHPLCグレードMeOHに溶解させ、ロータリーエバポレーションを行った(ウォーターポンプ、浴温35℃)。化合物Aの形態Aが濃縮中に徐々に形成された。ほとんどのMeOHを除去した後(重量変化はなし)、脱イオン水を加え、ロータリーエバポレーションによる乾固を3回行い(オイルポンプ、浴温35℃)、残留MeOHを除去した。得られた化合物をロータリーエバポレーション(オイルポンプ、浴温35℃)により重量変化がなくなるまで(約16時間)さらに乾燥させ、化合物Aの形態Aを得た。
化合物Aの形態A-調製方法2
【0270】
プラスチック製の磨砕カップに、18.4mgの化合物Aおよび10μLの水を加えた。ステンレススチールのボールを加えた。次いで、試料をRetschミルで、20分間、室温で100%の出力により粉砕した。
化合物Aの形態A-調製方法3
【0271】
20mLのガラスバイアルに、200.0mgの化合物Aおよび3.0mLの水を加えた。マグネチックスターラーのバーを加え、バイアルに蓋をした。バイアルを加熱/撹拌プレートに置き、スラリーを7日間、周囲温度で磁気的に撹拌した。バイアルを10分間遠心分離にかけ、母液をデカントした。乾燥空気パージを10分間バイアルに向けて固体を乾燥させた。次いで、バイアルを室温の真空デシケーターに2時間置いた。
化合物Aの形態A-調製方法4
【0272】
20mLのガラス製バイアルに、200.0mgの化合物Aおよび3.0mLの水を加えた。マグネチックスターラーのバーを加え、バイアルに蓋をした。バイアルを60℃に設定した加熱/撹拌プレートに置き、スラリーを3日間、磁気的に撹拌した。バイアルを10分間遠心分離にかけ、母液をデカントした。乾燥空気パージを10分間バイアルに向けて固体を乾燥させた。次いで、バイアルを室温の真空デシケーターに2時間置いた。
【0273】
上記の表1を下記に再現し、化合物Aの形態Aで観察されたX線回折ピークを示す。
【表1-2】
【0274】
下記に示す表4は、化合物Aの形態Aで観察されたFT-IRピークを示す。
【表4】
【0275】
下記に示す表5は、化合物Aの形態Aで観察されたFT-ラマンピークを示す。
【表5】
【0276】
下記に示す表6は、化合物Aの形態Aについて観察された
13C NMRピークを示す。
【表6】
【0277】
下記に示す表7は、選択した
13C NMRピークと化合物Aの形態Aで観察されたダウンフィールドピークからの化学シフトを示す。
【表7】
【0278】
図1は、化合物Aの形態AのXRPDパターンを示す。
【0279】
【0280】
【0281】
【0282】
図5は、DVS分析の前(上図)および後(下図)の化合物Aの形態AのXRPDパターンを示す。
【0283】
図6は、化合物Aの形態AのFT-IRスペクトルを示す。
【0284】
図7は、化合物Aの形態AのFT-ラマンスペクトルを示す。
【0285】
図8は、化合物Aの形態Aの固体
13Cスペクトルを示す。
【0286】
【0287】
化合物Aの形態Aは、下記に示した特徴を有することが観察された。
【0288】
XRPDデータに基づけば、化合物Aの形態Aは結晶性であり、シャープで解像度の高いX線回折シグナルを示す。
【0289】
光学顕微鏡画像に基づけば、化合物Aの形態Aは、類似のサイズと形状のブレード型結晶を示す。
【0290】
化合物Aの形態Aは水和水を失い、DSCデータに基づいた196℃付近の融点を示す。
【0291】
化合物Aの形態Aは、TGデータおよびKFデータに基づけば、水和されており、化合物Aの形態Aの1モル当たり1.2~1.4モルの水を含む。
【0292】
化合物Aの形態Aは、様々な湿度条件下で安定している。それは適度に吸湿性であり、DVSデータに基づけば、吸湿時に約9.3%の水分増加が観察され、放湿サイクル中では約2%の水分損失が観察された。結晶形態は、試料が95%のRH(相対湿度)まで、および5%のRHまで曝露されたDVS分析の後も変わらなかった。
【0293】
化合物Aの形態Aは、水の存在下で粉砕された場合、または室温から60℃の間の水中で撹拌された場合、安定している。
【0294】
化合物Aの形態Aは、0.72またはそれより大きい水分活性を有する溶媒系で形態Bよりもより安定している。溶媒系が0.72またはそれより大きい水分活性を有し、2つの結晶形態が混合されている場合、混合物は形態Aに変換される。溶媒系は、任意の有機溶媒と有機溶媒を含む水の混合物であり得る。
【0295】
化合物Aの形態Aは、化学構造におけるそれぞれの炭素位置に単一13Cシグナルを含む固体13C NMRスペクトルを有する。したがって、結晶形態Aの非対称ユニットには1つの分子がある。
【0296】
上記に基づけば、化合物Aの形態Aは、適度な吸湿性を有し、安定した水和性の結晶性材料である。
(実施例2)
化合物Aの遊離塩基形態Bの調製
【化11】
化合物Aの形態B
【0297】
化合物Aの形態Bを下記に示したように調製した。
化合物Aの形態B-調製方法1
【0298】
20mLのガラス製バイアルに200.4mgの化合物Aの形態Aおよび3.0mLのアセトンを加えた。マグネチックスターラーのバーを加え、バイアルに蓋をした。バイアルを60℃に設定した加熱/撹拌プレートに置き、スラリーを3日間、磁気的に撹拌した。バイアルを10分間遠心分離にかけ、母液をデカントした。乾燥空気パージを10分間バイアルに向けて固体を乾燥させた。次いで、バイアルを室温の真空デシケーターに2時間置いた。
化合物Aの形態B-調製方法2
【0299】
1ドラム(1-dram)ガラス製バイアルに、17.2mgの化合物Aの形態Aおよび1mLの酢酸エチルを加えた。スラリーを60℃に設定した加熱/撹拌プレート上で磁気的に撹拌し、溶解が起こるまでエタノール(無水)を加えた(1mLを加えた)。スターラーのバーを取り外し、バイアルに蓋をし、加熱を停止した。周囲温度に冷却されても固体は観察されず、バイアルを周囲温度で一晩放置したが、その間、結晶化は起こらなかった。次いで、バイアルを約5℃の冷蔵庫に入れ3日間放置したが、その間に結晶化は起こらなかった。次いで、バイアルを約-15℃の冷凍庫に入れ2日間放置し、その間に結晶化が起こった。固体を濾過により回収した。
化合物Aの形態B-調製方法3
【0300】
プラスチック粉砕カップに、18.4mgの化合物Aの形態Aおよび10μLのエタノールを加えた。ステンレススチールのボールを加えた。次いで、試料をRetschミルで20分間、100%の出力で粉砕した。
化合物Aの形態B-調製方法4
【0301】
1グラムのガラス製バイアルに、3.8mgの化合物Aの形態Aおよび0.7mLのテトラヒドロフランを加えた。固体は溶解した。次いで、バイアルを2mLのヘキサンを含む20mLガラス製バイアルに入れた。20mLバイアルに蓋をし、試料を周囲温度で6日間放置し、その間に結晶化が起こった。溶媒をデカントし、固体を空気乾燥させた。
【0302】
上記の表2を下記に再現しており、化合物Aの形態Bについて観察されたX線回折ピークを示す。
【表2-2】
【0303】
下記に示す表8は、化合物Aの形態Bで観察されたFT-IRピークを示す。
【表8】
【0304】
下記に示す表9は、化合物Aの形態Bで観察されたFT-ラマンピークを示す。
【表9】
【0305】
下記に示す表10は、化合物Aの形態Bで観察された
13C NMRピークを示す。
【表10】
【0306】
下記に示す表11は、選択された
13C NMRピークと化合物Aの形態Bで観察されたダウンフィールドピークからの化学シフトを示す。
【表11】
【0307】
図10は、化合物Aの形態BのXRPDパターンを示す。
【0308】
図11は、化合物Aの形態BのDSCトレースを示す。
【0309】
図12は、化合物Aの形態BのTGAトレースを示す。
【0310】
図13は、化合物Aの形態BのDVSトレースを示す。
【0311】
図14は、DVS分析の前(上図)および後(下図)の化合物Aの形態BのXRPDパターンを示す。
【0312】
図15は、化合物Aの形態BのFT-IRスペクトルを示す。
【0313】
図16は、化合物Aの形態BのFT-ラマンスペクトルを示す。
【0314】
図17は、化合物Aの形態Bの固体
13Cスペクトルを示す。
【0315】
図18は、化合物Aの形態Bの光学顕微鏡画像を示す。
【0316】
化合物Aの形態Bは、下記に示した特徴を有することが観察された。
【0317】
XRPDデータに基づけば、化合物Aの形態Bは結晶性であり、シャープで解像度の高いX線回折シグナルを示す。
【0318】
光学顕微鏡画像に基づけば、化合物Aの形態Bは、類似のサイズと形状の不規則な型の結晶を示す。
【0319】
化合物Aの形態Bは、DSCデータに基づいた196℃付近の融点を示す。
【0320】
化合物Aの形態Bは、TGデータおよびKFデータに基づけば、無水であり非溶媒和である。
【0321】
化合物Aの形態Bは、DVSデータに基づけば、適度に吸湿性であり、吸湿時に約6.4%の水分増加が観察された。放湿サイクル中では、化合物Aの形態Bは、すべての水分増加が損失した。さらに、結晶形態、試料が95%のRHまで、および5%のRHまで曝露されたDVS分析の後も変わらなかった。
【0322】
化合物Aの形態Bは、0.63またはそれより小さい水分活性を有する有機/水溶媒系でスラリー化した場合、形態Aよりも安定している。溶媒系は、任意の有機溶媒と有機溶媒を含む水の混合物であり得る。
【0323】
化合物Aの形態Bは、明らかにダブルになっている、ある特定のピークを含む固体13C NMRスペクトルを有する。したがって、結晶形態Bの非対称ユニットには2つの立体配座的に異なる分子が存在する。
【0324】
上記に基づけば、化合物Aの形態Bは、適度な吸湿性を有し、安定した非溶媒和の無水結晶性材料である。
(実施例3)
化合物Aの単結晶研究
【化12】
【0325】
化合物Aを構造決定するための回折データは、マイクロ電子回折(microED)技術を使用するクライオ電子顕微鏡(Cryo-TEM)による分析によって得られる。microED技術は、Jones et al., ACS Central Science 2018, 4, 1587-1592;Gruene et al., Angew. Chem. Int. Ed. 2018, 57, 16313-16317;およびShi
et al., eLife 2013, 2, e01345, doi: 10.7554/eLife.01345に記載されている。
材料および方法
【0326】
化合物Aは、破砕、粉砕、研和、磨砕、または他の粒子サイズの縮小手段以外の追加の結晶化または化学修飾なく、前掲の上記実施例Aに従って調製する。
【0327】
microED用の化合物Aの試料を調製するために、約1mgの化合物Aを2枚の顕微鏡スライドの間に置き、粉砕して微粉末にする。粉砕した粉末をTEMグリッドと一緒にエッペンドルフチューブに入れ、振盪する。次いで、ロードしたTEMグリッドをエッペンドルフチューブから取り出し、濾紙を穏やかにたたいて余剰の粉末を取り除く。化合物Aの試料グリッドが調製されたら、続いてそれらを液体窒素に投じ、試料カートリッジに入れ、分析のために顕微鏡に装填する。
【0328】
穴状のカーボン銅グリッドを液体窒素温度に冷却し、200kVの加速電圧で作動するクライオ電子顕微鏡(Thermo Fisher Talos Arctica)に移す。140°の回折データは、毎秒0.5°で連続回転させることによって、単一のナノ結晶から収集する。データセット全体は、回折研究用の厚いシンチレータを装着したボトムマウント型CetaD CMOS検出器を使用し、動画として収集する。ムービーフレームをSigmaTel Motion Video(SMV)フォーマットに変換するように作成されたソフトウェアによって、X線検出器ソフトウェア(XDS)で処理できるようにする。
【0329】
本発明者らは、本発明のいくつかの実施形態について説明してきたが、本発明の化合物および方法を利用する他の実施形態を提供するために、本発明者らの基本的な実施例が変更され得ることは明白である。したがって、本発明の範囲は、実施例として示された特定の実施形態ではなく、添付の特許請求の範囲によって定義されるものであることは理解されよう。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
化合物Aの固体形態:
【化13】
であって、前記形態が形態Aまたは形態Bである、化合物Aの固体形態。
(項目2)
前記化合物が結晶性である、項目1に記載の化合物。
(項目3)
前記化合物が非結晶性化合物Aを実質的に含まない結晶性固体である、項目1に記載の化合物。
(項目4)
前記化合物が不純物を実質的に含まない、項目1~3のいずれか一項に記載の化合物。
(項目5)
約8.0および約13.1°2θのピークから選択される1つまたは1つより多くのピークを化合物のXRPDに有する、項目1~4のいずれか一項に記載の化合物。
(項目6)
約8.0および約13.1°2θのピークから選択される2つのピークを化合物のXRPDに有する、項目5に記載の化合物。
(項目7)
前記化合物が形態Aの化合物である、項目1~6のいずれか一項に記載の化合物。
(項目8)
図1で示されているXRPDと実質的に類似しているXRPDを有する、項目1~6のいずれか一項に記載の化合物。
(項目9)
約9.5、約10.5、および約13.8°2θのピークから選択される、1つまたは1つより多くのピークを化合物のXRPDに有する、項目1~4のいずれか一項に記載の化合物。
(項目10)
約9.5、約10.5、および約13.8°2θのピークから選択される、少なくとも2つのピークを化合物のXRPDに有する、項目9に記載の化合物。
(項目11)
前記化合物が形態Bの化合物である、項目10に記載の化合物。
(項目12)
図10に示したXRPDと実質的に類似しているXRPDを有する、項目1に記載の化合物。
(項目13)
項目1~12のいずれか一項に記載の化合物および薬学的に許容される担体、賦形剤、またはアジュバントを含む医薬組成物。
(項目14)
外傷性脳損傷(TBI)、脳振盪、脳卒中、部分的または全体的な脊髄離断、栄養失調、中毒性神経炎、髄膜脳症、遺伝性障害によって引き起こされた神経変性、加齢性神経変性、血管疾患、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、ハンチントン病(HD)、多発性硬化症(MS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、慢性外傷性脳症(CTE)、心血管疾患、自己免疫疾患、アレルギー性疾患、移植拒絶反応、移植片対宿主疾患、眼内高眼圧症、緑内障、臭気過敏症、嗅覚障害、2型糖尿病および/または疼痛管理、呼吸器疾患、CNS機能の欠陥、学習の欠陥、認知の欠陥、耳の障害、メニエール病、内リンパ水腫、進行性聴覚消失、めまい、回転性めまい、耳鳴、放射線がん療法に関連する付随的な脳傷害、片頭痛処置、高齢者の睡眠障害、てんかん、統合失調症、アルコール依存者の回復により経験される症状、手術中の末梢神経系のニューロンまたは神経への傷害、胃腸の状態、CNSによって媒介される疼痛、片頭痛、放射線がん療法に関連する付随的な脳傷害、うつ病、気分変化または行動変化、認知症、異常行動、自殺傾向、振戦、ハンチントン舞踏病、運動協調の喪失、難聴、言語障害、ドライアイ、ハイポミミア、注意欠陥、記憶喪失、認知障害、回転性めまい、構音障害、嚥下障害、視覚異常もしくは見当識障害、または依存症を処置する方法であって、それを必要とする患者に、項目1~12のいずれか一項に記載の化合物または項目13に記載の医薬組成物の有効量を投与することを含む方法。
(項目15)
前記脳卒中が、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、くも膜下出血、脳血管痙攣、または一過性脳虚血性発作(TIA)である、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記心血管疾患が、心虚血、心筋梗塞、心筋症、冠状動脈疾患、不整脈、心筋炎、心膜炎、狭心症、高血圧性心疾患、心内膜炎、リウマチ性心疾患、先天性心疾患、またはアテローム性動脈硬化症である、項目14に記載の方法。
(項目17)
前記胃腸の状態が便秘または下痢である、項目14に記載の方法。
(項目18)
前記CNSによって媒介される疼痛が神経障害性疼痛、炎症性疼痛または急性疼痛である、項目14に記載の方法。
(項目19)
患者におけるcAMPの蓄積を抑制または予防する方法であって、それを必要とする患者に、項目1に記載の化合物またはその組成物の有効量を投与することを含む方法。
(項目20)
前記化合物またはその組成物が、組織プラスミノーゲン活性化因子、抗凝血剤、スタチン、ACE阻害剤、アンジオテンシンII受容体遮断薬(ARB)、ベータ遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、または利尿薬と共に患者に共投与される、項目14に記載の方法。
(項目21)
外傷性脳損傷(TBI)、脳卒中、神経変性状態、または心疾患もしくは心血管疾患から選択される損傷、疾患、または状態を処置する方法であって、それを必要とする患者に、項目1~12のいずれか一項に記載の化合物または項目13に記載の医薬組成物の有効量を投与することを含む方法。
(項目22)
前記損傷、疾患、または状態がTBIである、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記TBIが、脳振盪、爆風損傷、戦闘関連損傷、または頭部への軽度、中等度もしくは重度の衝撃から選択される、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記損傷、疾患、または状態が、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、くも膜下出血、脳血管痙攣、または一過性脳虚血性発作(TIA)から選択される脳卒中である、項目21に記載の方法。
(項目25)
神経保護または神経修復が、未処置の患者と比較して、前記患者において増大される、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記神経変性疾患が、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、ハンチントン病(HD)、多発性硬化症(MS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、慢性外傷性脳症(CTE)、またはウイルス、アルコール依存症、腫瘍、毒素、もしくは反復性脳損傷によって引き起こされる神経変性状態から選択される、項目21に記載の方法。
(項目27)
前記神経変性疾患がパーキンソン病である、項目26に記載の方法。
(項目28)
前記損傷、疾患、または状態が、アルツハイマー病、片頭痛、脳外科手術、またはがん化学療法に関連する神経学的副作用である、項目26に記載の方法。
(項目29)
前記TBI、脳卒中、心虚血、または心筋梗塞後の回復期間が、未処置の患者と比較して短縮される、項目21に記載の方法。
(項目30)
前記心疾患または心血管疾患が、心虚血、心筋梗塞、心筋症、冠状動脈疾患、不整脈、心筋炎、心膜炎、狭心症、高血圧性心疾患、心内膜炎、リウマチ性心疾患、先天性心疾患またはアテローム性動脈硬化症から選択される、項目21に記載の方法。
(項目31)
前記心疾患または心血管疾患が心虚血または心筋梗塞である、項目30に記載の方法。(項目32)
前記化合物または組成物が、脳卒中、心虚血、または心筋梗塞を処置するために、前記損傷が発生した後に損傷が解消されるまでの期間、長期的に投与される、項目21に記載の方法。
(項目33)
TBIまたは脳卒中に罹患しているそれを必要とする患者において神経保護または神経修復を増大する方法であって、前記患者に、項目1~12のいずれか一項に記載の化合物または項目13に記載の医薬組成物の有効量を投与することを含む方法。
(項目34)
前記化合物またはその薬学的に許容される塩が、経口投与、静脈内投与、または非経口投与される、項目21または33に記載の方法。
(項目35)
前記化合物または組成物が、前記TBIまたは脳卒中の24時間以内に投与される、項目21または33に記載の方法。
(項目36)
前記化合物または組成物が、前記TBIまたは脳卒中の8時間以内に投与される、項目21または33に記載の方法。
(項目37)
前記化合物または組成物が、前記TBIまたは脳卒中後の少なくとも最初の8~48時間の間に投与される、項目21または33に記載の方法。
(項目38)
心疾患または心血管疾患を処置する方法であって、それを必要とする患者に、項目1~12のいずれか一項に記載の化合物または項目13に記載の医薬組成物の有効量を投与することを含む方法。
(項目39)
前記患者が心虚血または心筋梗塞に罹患している、項目38に記載の方法。
(項目40)
前記化合物または組成物が、前記患者の傷害を受けた心臓組織の心臓保護または再生を増大する、項目38に記載の方法。
(項目41)
前記化合物または組成物が、未処置の患者と比較して、前記患者における前記心虚血または心筋梗塞後の回復期間を短縮する、項目38に記載の方法。
(項目42)
(i)放射線によって引き起こされる脳傷害、または放射線がん療法もしくは片頭痛処置に関連する付随的な脳傷害;
(ii)片頭痛;
(iii)脳損傷または神経変性状態に関連する状態;または
(iv)自己免疫疾患もしくは状態、緑内障、耳の障害、進行性聴覚消失、耳鳴り、てんかん、疼痛管理、CNSによって媒介される疼痛、神経障害性疼痛、炎症性疼痛、または急性疼痛
から選択される損傷、疾患、障害、または状態を処置する方法であって、
それを必要とする患者に、項目1~12のいずれか一項に記載の化合物または項目13に記載の医薬組成物の有効量を投与することを含む方法。
(項目43)
前記化合物または組成物が、未処置の患者と比較して、前記患者における神経保護または神経修復を増大させる、項目42に記載の方法。
(項目44)
前記脳損傷または神経変性状態に関連する状態が、てんかん、片頭痛、放射線がん療法に関連する付随的な脳傷害、うつ病、気分変化または行動変化、認知症、異常行動、自殺傾向、振戦、ハンチントン舞踏病、運動協調の喪失、難聴、言語障害、ドライアイ、ハイポミミア、注意欠陥、記憶喪失、認知障害または認知の欠陥、CNS機能の欠陥、学習の欠陥、回転性めまい、構音障害、嚥下障害、視覚異常または見当識障害から選択される、項目42に記載の方法。
(項目45)
心虚血または心筋梗塞に罹患しているそれを必要とする患者における傷害を受けた心臓組織の心臓保護または再生を増大する方法であって、前記患者に、項目1~12のいずれか一項に記載の化合物または項目13に記載の医薬組成物の有効量を投与することを含む方法。
(項目46)
依存症、依存性行動、行動依存症、脳報酬系障害、強迫性障害、または関連する状態を予防、改善、処置、またはそれらからの回復を促進する方法であって、それを必要とする患者に、項目1~12のいずれか一項に記載の化合物または項目13に記載の医薬組成物の有効量を投与することを含む方法。