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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114895
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】トンネル覆工の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/08 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
E21D11/08
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024104326
(22)【出願日】2024-06-27
(62)【分割の表示】P 2020124332の分割
【原出願日】2020-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391023518
【氏名又は名称】一般社団法人日本建設機械施工協会
(71)【出願人】
【識別番号】000198307
【氏名又は名称】株式会社IHI建材工業
(71)【出願人】
【識別番号】000158725
【氏名又は名称】岐阜工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正憲
(72)【発明者】
【氏名】河野 重行
(72)【発明者】
【氏名】古戸 幸博
(72)【発明者】
【氏名】鹿島 竜之介
(72)【発明者】
【氏名】吉武 謙二
(72)【発明者】
【氏名】土谷 勝也
(72)【発明者】
【氏名】小池 悠介
(72)【発明者】
【氏名】真下 英人
(72)【発明者】
【氏名】安井 成豊
(72)【発明者】
【氏名】寺戸 秀和
(72)【発明者】
【氏名】井野 裕輝
(72)【発明者】
【氏名】夏目 岳洋
(72)【発明者】
【氏名】伊勢 善英
(72)【発明者】
【氏名】平野 定雄
(57)【要約】
【課題】複数のPCa板を組み立てた際の連結部分の施工誤差や、自重や裏込め充填時の圧力等による変形を抑制することができるトンネル覆工の施工方法を提供する。
【解決手段】複数のPCa板12をPCa板支持装置3で支えながらトンネルの周方向に沿って組み立てる第1組み立て工程と、トンネルの周方向に沿って組み立てられPCa板支持装置に支持された複数のPCa板を、形状保持ボルトで正位置に保持し、PCa板支持装置による支持を解除する形状保持ボルト設置工程と、既にトンネルの周方向に沿って組み立てられて形状保持ボルトで正位置に保持された複数のPCa板の隣に、新たに複数のPCa板をPCa板支持装置で支えながらトンネルの周方向に沿って組み立てる第2組み立て工程と、を有し、第2組み立て工程と、形状保持ボルト設置工程と、を繰り返し行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地山の掘削面に施工されたトンネルの吹付コンクリートの内周側に、複数のPCa板を前記トンネルの周方向に沿って配列して組み立て、その隣に新たな複数のPCa板を既に組み立てられた前記PCa板に連結させながら前記トンネルの周方向に沿って組み立ててトンネル覆工を構築するトンネル覆工の施工方法において、
前記複数のPCa板をPCa板支持装置で支えながら前記トンネルの周方向に沿って組み立てる第1組み立て工程と、
前記トンネルの周方向に沿って組み立てられ前記PCa板支持装置に支持された前記複数のPCa板を、形状保持ボルトで正位置に保持し、前記PCa板支持装置による支持を解除する形状保持ボルト設置工程と、
既に前記トンネルの周方向に沿って組み立てられて前記形状保持ボルトで正位置に保持された前記複数のPCa板の隣に、新たに複数のPCa板を前記PCa板支持装置で支えながら前記トンネルの周方向に沿って組み立てる第2組み立て工程と、を有し、
前記PCa板支持装置は、
フレームと、
前記フレームに取り付けられて前記トンネルの周方向に沿って組み立てられた前記複数のPCa板を前記トンネルの径方向の内側から外側に向かって押さえる複数のPCa板支持部と、を有し、
前記PCa板支持部は、それぞれ、
1枚のPCa板に対応し、前記1枚のPCa板に接触して前記1枚のPCa板を押さえる少なくとも1個の押さえ部と、
前記フレームに取り付けられ、前記押さえ部を前記トンネルの軸方向および前記トンネルの径方向に移動可能に支持するアームと、を有し、
前記複数のPCa板支持部は、前記トンネルの周方向に1列に配列されており、
前記フレームに取り付けられて、前記トンネルの路盤に設置されるレールに沿って走行可能な走行部を有し、
前記形状保持ボルトは、前記PCa板を貫通するネジ孔に螺合し、一方の端部側が前記PCa板から外方に突出し、その突出寸法を調整することで前記吹付コンクリートの内周面に押し付けられるように構成され、
前記第2組み立て工程と、前記形状保持ボルト設置工程と、を繰り返し行うことを特徴とするトンネル覆工の施工方法。
【請求項2】
前記形状保持ボルトは、前記ネジ孔に挿通されるボルトと、前記ボルトの端部に連結され前記吹付コンクリートの内周面に押し付けられるプレートと、を有し、
前記ボルトと前記プレートとは着脱可能に構成され、
前記トンネルの周方向に沿って組み立てられた前記複数のPCa板によって構築された前記トンネル覆工と、前記吹付コンクリートとの間にグラウト材を充填する裏込め充填工程を有し、
裏込め充填工程では、前記複数のPCa板を前記形状保持ボルトで正位置に保持した状態で前記トンネル覆工と前記吹付コンクリートとの間にグラウト材を充填し、グラウト材が硬化した後に前記ボルトを前記プレートから外すとともに前記PCa板からも外すことを特徴とする請求項1に記載のトンネル覆工の施工方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル覆工の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネル覆工の施工方法として、セントル(移動式型枠)を設置して覆工コンクリートを打ち込んでトンネル覆工を構築する方法や、複数の円弧板状のプレキャストコンクリート板(PCa板)をトンネルの周方向に沿ってアーチ状やリング状に組み立ててトンネル覆工を構築する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-123997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
覆工コンクリートを打ち込んでトンネル覆工を構築する方法では、技能労働者の不足や、技量の差により品質にばらつきが生じる虞がある。また、覆工コンクリートの養生期間が必要であるため、工期短縮には限界がある。
また、複数のPCa板を組み立ててトンネル覆工を構築する方法は、覆工コンクリートの養生期間が必要なく工期短縮に有利な方法であるが、PCa板同士の連結部分に多少のガタが発生し易く、施工誤差が生じる虞がある。特に、トンネル径が大きい場合、トンネルの周方向に配列されるPCa板の数が多くなるため、施工誤差が生じるとPCa板をアーチ状やリング状に組み立てた際に自重や裏込め充填時の圧力等により変形する虞がある。
【0005】
そこで、本発明は、複数のPCa板を組み立てた際の連結部分の施工誤差や、自重や裏込め充填時の圧力等による変形を抑制することができるトンネル覆工の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るトンネル覆工の施工方法は、地山の掘削面に施工されたトンネルの吹付コンクリートの内周側に、複数のPCa板を前記トンネルの周方向に沿って配列して組み立て、その隣に新たな複数のPCa板を既に組み立てられた前記PCa板に連結させながら前記トンネルの周方向に沿って組み立ててトンネル覆工を構築するトンネル覆工の施工方法において、前記複数のPCa板をPCa板支持装置で支えながら前記トンネルの周方向に沿って組み立てる第1組み立て工程と、前記トンネルの周方向に沿って組み立てられ前記PCa板支持装置に支持された前記複数のPCa板を、形状保持ボルトで正位置に保持し、前記PCa板支持装置による支持を解除する形状保持ボルト設置工程と、既に前記トンネルの周方向に沿って組み立てられて前記形状保持ボルトで正位置に保持された前記複数のPCa板の隣に、新たに複数のPCa板を前記PCa板支持装置で支えながら前記トンネルの周方向に沿って組み立てる第2組み立て工程と、を有し、前記PCa板支持装置は、フレームと、前記フレームに取り付けられて前記トンネルの周方向に沿って組み立てられた前記複数のPCa板を前記トンネルの径方向の内側から外側に向かって押さえる複数のPCa板支持部と、を有し、前記PCa板支持部は、それぞれ、1枚のPCa板に対応し、前記1枚のPCa板に接触して前記1枚のPCa板を押さえる少なくとも1個の押さえ部と、前記フレームに取り付けられ、前記押さえ部を前記トンネルの軸方向および前記トンネルの径方向に移動可能に支持するアームと、を有し、前記複数のPCa板支持部は、前記トンネルの周方向に1列に配列されており、前記フレームに取り付けられて、前記トンネルの路盤に設置されるレールに沿って走行可能な走行部を有し、前記形状保持ボルトは、前記PCa板を貫通するネジ孔に螺合し、一方の端部側が前記PCa板から外方に突出し、その突出寸法を調整することで前記吹付コンクリートの内周面に押し付けられるように構成され、前記第2組み立て工程と、前記形状保持ボルト設置工程と、を繰り返し行うことを特徴とする。
【0007】
本発明では、PCa板支持装置で支えながら複数のPCa板を組み立て、組み立て終わったら形状保持ボルトによって複数のPCa板を正位置に保持して、PCa板支持装置による複数のPCa板の支持を解除している。これにより、既にトンネルの周方向に沿って組み立てたPCa板に隣接して新たにPCa板を組み立てる際に、同一のPCa板支持装置を使用して施工を行うことができる。
そして、PCa板を組み立てる際に、既に組み立てられたPCa板がPCa板支持装置によって支持されていなくても、形状保持ボルトによって正位置に保持されている。このため、PCa板どうしの連結部分の施工誤差を抑制でき、自重や裏込め充填時の圧力等による鉛直方向の力を精度よくトンネル覆工の周方向の圧縮力へと変えることができ、確実にアーチアクション効果を得ることによって変形も抑制することができる。
また、PCa板を押さえる押さえ部がトンネルの周方向およびトンネルの軸方向に移動可能に支持されていることにより、所望の位置においてPCa板を支持することができる。これにより、PCa板どうしの連結部分に近い位置など、PCa板を連結する際に安定する位置においてPCa板を支持することができ、連結部分の施工誤差や、自重による変形を抑制することができる。
また、複数のPCa板を押さえる押さえ部は、トンネルの周方向に1列に配列されているため、複数のPCa板支持部(押さえ部)が複数列に配列されたPCa板支持装置と比べて簡便な構造とすることができる。
また、走行部を有していることにより、PCa板支持装置は、トンネルの軸方向に延びるレールに沿って移動可能となるため、PCa板が1列分組み立てられ、PCa板支持装置による支持が不要となったら、PCa板支持装置を新に組み立てられるPCa板を支持可能な位置へ容易に移動させることができる。
【0008】
また、本発明に係るトンネル覆工の施工方法では、前記形状保持ボルトは、前記ネジ孔に挿通されるボルトと、前記ボルトの端部に連結され前記吹付コンクリートの内周面に押し付けられるプレートと、を有し、前記ボルトと前記プレートとは着脱可能に構成され、前記トンネルの周方向に沿って組み立てられた前記複数のPCa板によって構築された前記トンネル覆工と、前記吹付コンクリートとの間にグラウト材を充填する裏込め充填工程を有し、裏込め充填工程では、前記複数のPCa板を前記形状保持ボルトで正位置に保持した状態で前記トンネル覆工と前記吹付コンクリートとの間にグラウト材を充填し、グラウト材が硬化した後に前記ボルトを前記プレートから外すとともに前記PCa板からも外すようにしてもよい。
このような構成とすることにより、ボルトを再利用することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数のPCa板を組み立てた際の連結部分の施工誤差や、自重や裏込め充填時の圧力等による変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態によるPCa支持装置を示す正面図である。
図2】本発明の実施形態によるPCa支持装置を示す平面図である。
図3】本発明の実施形態によるPCa支持装置のPCa板の支持を解除した状態を示す正面図である。
図4】建込装置の正面図である。
図5】トンネル覆工の施工方法を示す図である。
図6】トンネル覆工の施工方法を示す図である。
図7】トンネル覆工の施工方法を示す図である。
図8】トンネル覆工の施工方法を示す図である。
図9】トンネル覆工の施工方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態によるPCa板支持装置およびトンネル覆工の施工方法について、図1図9に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態によるトンネル覆工11は、複数の円弧板状のPCa板12(プレキャストコンクリート板)を組み立てて構築されている。トンネルが延びる方向をトンネル軸方向(図中の矢印Aの方向)とし、トンネルの軸線回りの方向でトンネルの内周面に沿った方向をトンネル周方向とする。トンネルの軸線からトンネル軸方向に直交して延びる方向をトンネル径方向とする。トンネル径方向のうち、トンネルの軸線から離れる側を外側とし、トンネルの軸線に近づく側を内側とする。また、トンネルの軸線に直交する面内における水平方向をトンネル幅方向(図中の矢印Bの方向)とする。
【0012】
トンネル覆工11は、トンネル軸方向の一方側から他方側に向かって構築される。トンネル軸方向の一方側を後側とし、他方側を前側とする。トンネル覆工11は、後側から前側に向かって順次構築される。
トンネル覆工11のトンネル径方向の外側には、地山の掘削面13に吹き付けられた吹付コンクリート14が施工され、吹付コンクリート14とトンネル覆工11のPCa板12との間には、グラウト材15が充填されている。
【0013】
複数のPCa板12は、トンネル周方向および軸方向に配列されている。トンネル周方向に隣り合うPCa板12どうし、およびトンネル軸方向に隣り合うPCa板12どうしは、連結されている。トンネル覆工11の複数のPCa板12は、トンネル軸方向から見るとトンネル周方向に沿ったアーチ状に配列されている。以下では、「トンネル周方向に沿ったアーチ状」を「アーチ状」と表記する。
本実施形態によるトンネル覆工の施工方法では、まず。複数のPCa板12をトンネル周方向に沿って順次配置し、1列に組み立てて、複数のPCa板12による1列のアーチを形成する。その後に、このアーチの前側に新たに複数のPCa板12をトンネル周方向に沿って順次配置し、1列に組み立てて、複数のPCa板12による1列のアーチを形成する。そして、1列のアーチを前側に向かって順次形成する。なお、PCa板12を設置位置に配置する毎に、そのPCa板12を、トンネル周方向に隣り合うPCa板12およびトンネル軸方向に隣り合うPCa板12と連結する。
【0014】
トンネル覆工11の施工時には、建込装置2(図4図5参照)を使用してPCa板12を設置位置に配置し、隣り合うPCa板12と連結する。また、PCa板支持装置3および形状保持ボルト4(図3参照)を使用して、設置位置に配置されたPCa板12を位置ずれしないように正位置に支持または保持する。
PCa板支持装置3は、建込装置2によって複数のPCa板12をアーチ状に組み立てる際に、PCa板12が設置位置に配置されたら、そのPCa板12を支持するように構成されている。
形状保持ボルト4は、アーチ状に組み立てられた複数のPCa板12がトンネル周方向に隣り合うPCa板12およびトンネル軸方向に隣り合うPCa板12と連結された後に、複数のPCa板12をそれぞれ正位置に保持し、複数のPCa板12をアーチ状の形状に保持するように構成されている。
すなわち、複数のPCa板12をアーチ状に組み立てる際には、PCa板支持装置3が設置位置に配置された複数のPCa板12を支持する。複数のPCa板12をアーチ状に組み立てて、トンネル軸方向の後側に隣接するPCa板12と連結した後には、形状保持ボルト4が複数のPCa板12をアーチ状の形状に保持する。形状保持ボルト4の詳細については、後述する。
【0015】
PCa板支持装置3は、建込装置2の後側に配置される。トンネルの路盤16には、トンネル軸方向に延びる一対のレール17が設けられている。PCa板支持装置3および建込装置2は、レール17に沿ってトンネル軸方向に走行可能に構成されている。
【0016】
図1および図2に示すように、PCa板支持装置3は、フレーム31と、フレーム31に取り付けられた複数のPCa板支持部32と、フレーム31に取り付けられた走行部33と、フレーム31に取り付けられた足場34と、を有している。PCa板支持部32は、アーチ状に組み立てられた複数のPCa板12をトンネルの径方向の内側から外側に向かって押さえるように構成されている。走行部33は、トンネルの路盤16に設置されるレール17に沿って走行可能に構成されている。走行部33は、レール17に沿って走行可能な台車部35と、台車部35の上に取り付けられて台車部35に支持される架台部36と、を有している。レール17に沿って移動可能なPCa板支持装置3は、所定の位置に停止可能に構成されている。
【0017】
フレーム31は、幅方向に対称となる門型に形成されている、フレーム31は、前側に位置する前フレーム311と、後側に位置する後フレーム312と、前フレーム311と後フレーム312との間に架設された架設材313と、を有している。前フレーム311と後フレーム312とは、前後方向に間隔をあけて配置されている。前フレーム311と後フレーム312とは、略同じ形状に形成されている。
前フレーム311および後フレーム312は、それぞれ幅方向の一方側の端部に位置する第1柱部314と、幅方向の他方側の端部に位置する第2柱部315と、第1柱部314の上端部と第2柱部315の上端部の間に架設された梁部37と、を有している。前フレーム311の第1柱部314の後方に間隔をあけて後フレーム312の第1柱部314が配置され、前フレーム311の第2柱部315の後方に間隔をあけて後フレーム312の第2柱部315が配置され、前フレーム311の梁部37の後方に間隔をあけて後フレーム312の梁部37が配置されている。
第1柱部314、第2柱部315および梁部37は、それぞれ鉄骨材で製作されている。架設材313は、鋼板や鉄骨材などの鋼材で製作されている。
【0018】
第1柱部314および第2柱部315は、鉛直方向に延びている。第1柱部314および第2柱部315は、走行部33の架台部36の上に建てられている。第1柱部314および第2柱部315の下端部は、架台部36に接合されている。
梁部37は、幅方向の中央が幅方向の両端部よりも高く、幅方向に対称となる山型に形成されている。
図1に示すように、梁部37は、第1梁部371、第2梁部372、第3梁部373および第4梁部374を有している。第1梁部371、第2梁部372、第3梁部373および第4梁部374は、この順に幅方向の一方側から他方側に向かって配列されている。
【0019】
第1梁部371は、第1柱部314の上端部に接合され、幅方向の他方側に向かって漸次上側に向かう斜め方向に延びている。第2梁部372は、第1梁部371の幅方向の他方側の端部に接合され、幅方向一方側から他方側に向かって第1梁部371よりも緩い勾配漸次上側に向かう斜め方向に延びている。第3梁部373は、第2梁部372の幅方向の他方側の端部に接合され、幅方向一方側から他方側に向かって漸次下側に向かう斜め方向に延びている。第4梁部374は、第3梁部373の幅方向の他方側の端部に接合され、幅方向一方側から他方側に向かって第3梁部373よりも急な勾配で漸次下側に向かう斜め方向に延びている。第4梁部374の幅方向の他方側の端部は、第2柱部315の上端部と接合されている。
第1梁部371と第4梁部374とが、幅方向に対称となり、第2梁部372と第4梁部374とが、幅方向に対称となる。
【0020】
図1および図2に示すように、PCa板支持部32は、PCa板12に接触してPCa板12を押さえる押さえ部321と、フレーム31に取り付けられ、押さえ部321をトンネル軸方向およびトンネル径方向に移動可能に支持するアーム322と、を有している。
【0021】
図2に示すように、アーム322は、梁部37に接合されトンネル軸方向に延びる第1アーム323と、第1アーム323の先端部に接合されトンネル径方向に延びる第2アーム324と、を有している。第1アーム323と第2アーム324とは直交するように配置されている。
第1アーム323は、トンネル軸方向に伸縮可能に構成されている。第2アーム324は、トンネル径方向に伸縮可能に構成されている。第1アーム323および第2アーム324は、例えば、油圧式シリンダなどで構成されている。
【0022】
押さえ部321は、第2アーム324の先端部に連結されている。
押さえ部321は、第1アーム323の伸縮に伴ってトンネル軸方向に移動し、第2アーム324を伸縮に伴ってトンネル径方向に移動する。PCa板支持部32は、第1アーム323および第2アーム324の伸縮を調整することで押さえ部321を任意の位置に配置することができる。
押さえ部321は、その位置が調整されて、トンネル径方向の外側の面がアーチ状に組まれたPCa板12のトンネル径方向の内側の面と面接触してPCa板12を押さえるように構成されている。押さえ部321のトンネル径方向の外側の面を押さえ面321aとする。
図3では、押さえ部321がPCa板12のトンネル径方向の内側の面と離れた状態を示している。
【0023】
本実施形態では、1つのPCa板支持装置3に、4つのPCa板支持部32が設けられている。4つのPCa板支持部32は、トンネル周方向に配列されている。
4つのPCa板支持部32を、第1PCa板支持部326、第2PCa板支持部327、第3PCa板支持部328、第4PCa板支持部329とする。
第1PCa板支持部326は、前フレーム311および後フレーム312の第1梁部371に接合されている。第2PCa板支持部327は、前フレーム311および後フレーム312の第2梁部372に接合されている。第3PCa板支持部328は、前フレーム311および後フレーム312の第3梁部373に接合されている。第4PCa板支持部329は、前フレーム311および後フレーム312の第4梁部374に接合されている。第1-第4PCa板支持部329は、互いに同じ構成となり、設置される位置および向きが異なっている。
各PCa板支持部32(第1-第4PCa板支持部329)の第2アーム324が延びる方向および押さえ面321aが向く方向は、各PCa板支持部32が接合された梁部37(第1-第4梁部374)に直交する方向となっている。
【0024】
4つのPCa板支持部32が設けられていることにより、トンネル周方向に配列された4つのPCa板12を1つずつPCa板支持部32が支持することができる。
4つのPCa板支持部32の第1アーム323および第2アーム324の伸縮は、一括で動作するように操作可能であってもよいし、個別に動作するように操作可能であってもよい。また、一括の動作と、個別の動作とを切り替え可能に構成されていてもよい。
【0025】
足場34は、前フレーム311の前側、および前フレーム311と後フレーム312との間の架設部に取り付けられている。足場34は、フレーム31の門型に沿った形状に形成されている。足場34は、PCa板支持部32の操作やPCa板支持部32の支持状態の確認や、保守点検などに使用される。
【0026】
図4に示すように、建込装置2は、ガイド部21と、ガイド部21に取り付けられたPCa板保持部22と、ガイド部21に取り付けられた走行部23と、を有している。走行部23は、レール17に沿って走行可能な台車部24と、台車部24の上に取り付けられて台車部24に支持される架台部25と、を有している。レール17に沿って移動可能な建込装置2は、所定の位置に停止可能に構成されている。
ガイド部21は、アーチ状に形成されている。ガイド部21は、架台部25の上に設置されている。建込装置2は、ガイド部21のアーチがトンネル周方向に沿った向きとなるように配置されている。
PCa板保持部22は、PCa板12を着脱可能で、1つのPCa板12を取り付けた状態でガイド部21に沿ってトンネル周方向に移動可能に構成されている。
【0027】
建込装置2は、PCa板保持部22でPCa板12を保持してトンネル周方向に移動し、保持したPCa板12を取り付け位置に配置して、トンネル周方向またはトンネル軸方向に隣接する既に設置されているPCa板12と連結可能に構成されている。
【0028】
図3に示す形状保持ボルト4は、PCa板12に形成されたネジ孔121に挿通されたボルト41と、PCa板12の外側においてボルト41の先端部に着脱可能に取り付けられたプレート42と、を有している。プレート42は、その面が吹付コンクリート14と接触している。ボルト41をネジ孔121にねじ込み、PCa板12の外側に突出させることで、ボルト41の先端部に取り付けられたプレート42が吹付コンクリート14に押し付けられる。これにより、吹付コンクリート14に対するボルト41の位置が固定され、複数のPCa板12で構成されたアーチ状の形状が保持される。
【0029】
次に、トンネル覆工の施工方法について説明する。
トンネル覆工11を施工する前には、掘削された地山の掘削面13に吹付コンクリート14を施工し、H形鋼による支保工(不図示)およびロックボルト(不図示)の一方または両方を施工する。必要に応じて吹付コンクリートの内周面に防水シート(不図示)を施工する。トンネル覆工の施工方法を説明する図5図9では、PCa板12の外側の吹付コンクリート14および地山を省略している。
【0030】
トンネル覆工11の施工では、トンネル覆工11におけるトンネル軸方向の後側から前側に向かって複数のPCa板12をアーチ状に組み立てる。
まず、後側に位置する複数のPCa板12を、1列のアーチ状に組み立てる第1組み立て工程を行う。
まず、建込装置2およびPCa板支持装置3を、レール17上を走行させてPCa板12をアーチ状に組み立てる位置に移動させる。
続いて、図5に示すように、PCa板12を建込装置2で保持し、図6に示すように、建込装置2で保持したPCa板12を設置位置に配置する。
PCa板12を設置位置に配置したら、図3に示すように、そのPCa板12をPCa板支持装置3のPCa板支持部32で支える。PCa板支持部32のアーム322(図1、2参照)を伸縮させて押さえ部321の位置を調整し、押さえ部321の押さえ面321aをPCa板12に接触させ、PCa板12を支持する。
同様に、図8に示すように、同様にして、1列のアーチを形成する複数のPCa板12を順次設置位置に配置し、PCa板支持部32で支持してからトンネル周方向およびトンネル軸方向に隣接するPCa板12と連結する。
本実施形態のPCa板支持装置3は、トンネル周方向に配列された4つのPCa板支持部32を有しているため、トンネル周方向に配列された4つのPCa板12を個別に支持することができる。
【0031】
続いて、図9に示すように、アーチ状に組み立てられ、PCa板支持装置3に支持された複数のPCa板12を形状保持ボルト4で正位置に保持し、PCa板支持装置3による支持を解除する形状保持ボルト設置工程を行う。
形状保持ボルト設置工程では、形状保持ボルト4のボルト41をネジ孔121にねじ込んで、PCa板12の外側に突出させ、図3に示すように、ボルト41の先端部に取り付けられたプレート42を吹付コンクリート14に押し付ける。これにより、吹付コンクリート14に対するボルト41の位置が固定される。その結果、複数のPCa板12が正位置に保持され、複数のPCa板12で構成されたアーチ状の形状が保持される。
PCa板12が形状保持ボルト4に正位置に保持されたら、PCa板支持装置3のアーム322(図3参照)を収縮させて押さえ部321をPCa板12から離し、PCa板支持装置3による支持を解除する。
【0032】
続いて、既にアーチ状に組み立てられて形状保持ボルト4によって正位置に保持された複数のPCa板12の隣に、新たに複数のPCa板12をPCa板支持装置3で支えながら建込装置2でアーチ状に1列分組み立てる第2組み立て工程を行う。
第2組み立て工程は、第1組み立て工程と同様に行い、PCa板12を連結する際に、トンネル周方向に隣接するPCa板12およびトンネル軸方向に隣接するPCa板12それぞれと連結する。
【0033】
上記の形状保持ボルト設置工程と第2組み立て工程とを交互に行い、トンネル軸方向全体にわたってPCa板12をアーチ状に組み立ててトンネル覆工11を構築する。
【0034】
アーチ状に組み立てられた複数のPCa板12によって構築されたトンネル覆工11と、吹付コンクリート14との間にグラウト材15(図3参照)を充填する裏込め充填工程を行う。
裏込め充填工程では、複数のPCa板12が形状保持ボルト4によってアーチ状の形状に保持された状態で、トンネル覆工11と吹付コンクリート14との間にグラウト材15を充填する。
グラウト材15が硬化した後にボルト41をプレート42から外すとともにPCa板12からも外す。プレート42はグラウト材15とともに吹付コンクリート14とPCa板12との間に残される。
【0035】
次に、上記の本実施形態によるPCa板支持装置3およびトンネル覆工の施工方法の作用・効果について説明する。
上記の本実施形態によるPCa板12を押さえる押さえ部321がトンネル周方向およびトンネル軸方向に移動可能に支持されていることにより、所望の位置においてPCa板12を支持することができる。これにより、PCa板12どうしの連結部分に近い位置など、PCa板12を連結する際に安定する位置においてPCa板12を支持することができ、連結部分の施工誤差や、自重や裏込め充填時の圧力等による変形を抑制することができる。
また、複数のPCa板12を押さえる押さえ部321は、トンネル周方向に配列されていることにより、トンネル周方向に配列された複数のPCa板12をそれぞれ支持することができる。また、本実施形態の複数のPCa板12を押さえる押さえ部321は、トンネル周方向に1列に配列されているため、複数のPCa板支持部32が複数列に配列されたPCa板支持装置3と比べて簡便な構造とすることができる。
【0036】
また、本実施形態によるPCa板支持装置3は、フレーム31が取り付けられて、トンネルの路盤16に設置されるレール17に沿って走行可能な走行部33を有している。
このような構成とすることにより、PCa板支持装置3は、トンネル軸方向に延びるレール17に沿って移動可能となるため、PCa板12が1列分組み立てられ、PCa板支持装置3による支持が不要となったら、PCa板支持装置3を新に組み立てられるPCa板12を支持可能な位置へ容易に移動させることができる。
【0037】
また、本実施形態によるトンネル覆工の施工方法は、PCa板支持装置3で支えながら複数のPCa板12を組み立て、組み立て終わったら形状保持ボルト4によって複数のPCa板12で構成されるアーチ状の形状を保持して、PCa板支持装置3による複数のPCa板12の支持を解除している。これにより、既にアーチ状に組み立てたPCa板12に隣接して新たにPCa板12を組み立てる際に、同一のPCa板支持装置3を使用して施工を行うことができる。
そして、PCa板12を組み立てる際に、既に組み立てられたPCa板12がPCa板支持装置3によって支持されていなくても、形状保持ボルト4によって正位置に保持されているため、連結部分の施工誤差を抑制でき、自重や裏込め充填時の圧力等による変形も抑制することができる。
【0038】
また、本実施形態によるトンネル覆工の施工方法では、裏込め充填工程では、複数のPCa板12が形状保持ボルト4によってアーチ状の形状に保持された状態でトンネル覆工11と、吹付コンクリート14との間にグラウト材15を充填し、グラウト材15が硬化した後にボルト41をプレート42から外すとともにPCa板12からも外している。
このような構成とすることにより、ボルト41を再利用することができる。
【0039】
以上、本発明によるPCa板支持装置3およびトンネル覆工の施工方法の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記の実施形態では、PCa板支持装置3は、フレーム31が取り付けられて、トンネルの路盤16に設置されるレール17に沿って走行可能な走行部33を有しているが、PCa板支持装置3を移動させる機構は、上記以外であってもよい。
また、上記の実施形態では、形状保持ボルト4は、ネジ孔121に挿通されるボルト41と、ボルト41の端部に連結され吹付コンクリート14の内周面に押し付けられるプレート42と、を有し、ボルト41とプレート42とは着脱可能に構成されているが、形状保持ボルト4は、吹付コンクリート14の内周面に押し付けられる構成であれば、上記以外であってもよい。
また、本発明の「複数のPCa板支持部がトンネル周方向に1列に配列されている」とは、複数のPCa板支持部が必ずしも同一線上に並んでいることを意味せず、複数のPCa板の配置形状によっては、隣り合う複数のPCa板支持部どうしが同一線上から多少のずれがあってもよい。例えば、複数のPCa板支持部が、トンネル周方向に延びる直線の両側に交互にジグザグに位置するようにトンネル周方向に沿って配列されていてもよい。
【符号の説明】
【0040】
3 PCa板支持装置
4 形状保持ボルト
11 トンネル覆工
12 PCa板
13 掘削面
14 吹付コンクリート
15 グラウト材
16 路盤
17 レール
23 走行部
31 フレーム
32 PCa板支持部
33 走行部
41 ボルト
42 プレート
121 ネジ孔
321 押さえ部
321a 押さえ面
322 アーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9