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特開2024-114906光学フィルムの製造方法及び製造装置
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  • 特開-光学フィルムの製造方法及び製造装置 図1
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  • 特開-光学フィルムの製造方法及び製造装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114906
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】光学フィルムの製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
G02B5/30
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024104754
(22)【出願日】2024-06-28
(62)【分割の表示】P 2021525904の分割
【原出願日】2020-01-20
(31)【優先権主張番号】P 2019108683
(32)【優先日】2019-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】弁理士法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西郷 公史
(72)【発明者】
【氏名】井上 龍一
(57)【要約】
【課題】光学フィルムの幅方向端部に生じたカールを矯正することで、光学フィルムの端部の位置を精度良く検出し、光学フィルムの蛇行を効果的に防止可能な光学フィルムの製造方法等を提供する。
【解決手段】本発明は、長手方向に搬送される光学フィルムF1の幅方向端部に生じたカールCをカール矯正装置20で矯正するカール矯正工程S1と、カール矯正工程を経た光学フィルムの幅方向端部の位置を位置検出装置30で検出する幅方向端部位置検出工程S2と、幅方向端部位置検出工程によって検出した光学フィルムの幅方向端部の位置に基づき、光学フィルムの幅方向の搬送位置を位置調整装置40で調整する幅方向搬送位置調整工程S3と、を含む。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に搬送される光学フィルムの幅方向端部に生じたカールをカール矯正装置で矯正するカール矯正工程と、
前記カール矯正工程を経た前記光学フィルムの幅方向端部の位置を位置検出装置で検出する幅方向端部位置検出工程と、
前記幅方向端部位置検出工程によって検出した前記光学フィルムの幅方向端部の位置に基づき、前記光学フィルムの幅方向の搬送位置を調整する幅方向搬送位置調整工程と、
を含む光学フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記カール矯正装置は、前記光学フィルムの幅方向端部に接触して回転可能な回転ローラを備える、
請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記カール矯正装置は、前記位置検出装置に対して前記光学フィルムの搬送方向上流側に1m以内に位置する、
請求項1又は2に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記カール矯正装置は、前記位置検出装置に取り付けられている。
請求項1から3の何れかに記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記位置検出装置に対して前記光学フィルムの搬送方向上流側に位置する前記光学フィルムを搬送するための搬送ローラが、前記位置検出装置に対して前記光学フィルムの搬送方向上流側に1m以上離れている、
請求項1から4の何れかに記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記光学フィルムは、偏光子であり、
前記カール矯正装置及び前記位置検出装置は、前記偏光子を乾燥させる乾燥装置の出側に位置する、
請求項1から5の何れかに記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項7】
長手方向に搬送される光学フィルムの幅方向端部に生じたカールを矯正するカール矯正装置と、
前記カール矯正装置によってカールが矯正された前記光学フィルムの幅方向端部の位置を検出する位置検出装置と、
前記位置検出装置によって検出した前記光学フィルムの幅方向端部の位置に基づき、前記光学フィルムの幅方向の搬送位置を調整する位置調整装置と、
を備える光学フィルムの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルムを製造する方法及びその製造装置に関する。特に、本発明は、光学フィルムの幅方向端部に生じたカールを矯正することで、光学フィルムの端部の位置を精度良く検出し、光学フィルムの蛇行を効果的に防止可能な光学フィルムの製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光学フィルムは、液晶表示装置や有機EL表示装置等の画像表示装置等に用いられている。光学フィルムとしては、例えば、偏光子、偏光子を含む偏光フィルム、位相差フィルム、アンチグレアフィルム等が挙げられる。
光学フィルムは、通常、長尺帯状の原反フィルムを用いて製造される。通常、搬送ローラを有する搬送設備で原反フィルムを長手方向に搬送しながら、順次各種の処理を施すことで、製品としての長尺帯状の光学フィルムが製造される(例えば、特許文献1参照)。長尺帯状の光学フィルムは、用途に応じたサイズや形状に切断され、画像表示装置等に用いられる。
以下、本明細書では、製品としての光学フィルムのみならず、原反フィルム及び中間製品のフィルムも含めて光学フィルムと称する。
【0003】
上記のような光学フィルムの製造過程では、光学フィルムの厚みのムラや張力の不均一性に起因して、光学フィルムの幅方向の搬送位置が変動する蛇行が生じる場合がある。蛇行が生じると、光学フィルムの切断位置や切断角度にズレが生じることになる。したがい光学フィルムの幅方向端部の位置を位置検出装置で検出し、その位置が常に一定となるように、光学フィルムを搬送する搬送ローラの姿勢(位置や角度等)を調整(制御)する、いわゆるエッジポジションコントローラが適用されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
一方、光学フィルムの製造過程では、光学フィルムが熱収縮や吸湿することで、幅方向端部にカールが生じる場合がある。例えば、偏光子は、ポリビニルアルコール系フィルム等の原反フィルムに、膨潤処理、染色処理、架橋処理、延伸処理、洗浄処理等の一連の処理を施した後、乾燥装置(オーブン)で乾燥させることで製造される。この乾燥装置で乾燥させる際、偏光子の幅方向端部が熱収縮することで、カールが生じる場合がある。
【0005】
上記のカールが生じた状態の光学フィルムが位置検出装置に到達すると、光学フィルムの幅方向端部の位置を精度良く検出できないことに起因して、光学フィルムの蛇行を効果的に防止できないおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-092186号公報
【特許文献2】特開2014-164002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、光学フィルムの幅方向端部に生じたカールを矯正することで、光学フィルムの端部の位置を精度良く検出し、光学フィルムの蛇行を効果的に防止可能な光学フィルムの製造方法及び製造装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、長手方向に搬送される光学フィルムの幅方向端部に生じたカールをカール矯正装置で矯正するカール矯正工程と、前記カール矯正工程を経た前記光学フィルムの幅方向端部の位置を位置検出装置で検出する幅方向端部位置検出工程と、前記幅方向端部位置検出工程によって検出した前記光学フィルムの幅方向端部の位置に基づき、前記光学フィルムの幅方向の搬送位置を調整する幅方向搬送位置調整工程と、を含む光学フィルムの製造方法を提供する。
【0009】
本発明によれば、幅方向端部位置検出工程を実行する前に、光学フィルムの幅方向端部に生じたカールをカール矯正装置で矯正するカール矯正工程を実行するため、光学フィルムの幅方向端部の位置を精度良く検出できる。このため、幅方向搬送位置調整工程において、光学フィルムの幅方向の搬送位置を適切に調整可能であり、光学フィルムの蛇行を効果的に防止可能である。
【0010】
好ましくは、前記カール矯正装置は、前記光学フィルムの幅方向端部に接触して回転可能な回転ローラを備える。
【0011】
上記の好ましい方法によれば、カール矯正装置が光学フィルムの幅方向端部に接触して回転可能な回転ローラを備えるため、カール矯正装置によって光学フィルムの搬送に支障が生じることなく、光学フィルムを長手方向に連続的に搬送しながらカールを矯正可能である。
【0012】
好ましくは、前記カール矯正装置は、前記位置検出装置に対して前記光学フィルムの搬送方向上流側に1m以内に位置する。
【0013】
上記の好ましい方法によれば、カール矯正装置と位置検出装置との離間距離(光学フィルムの搬送方向についての離間距離)が比較的短い(1m以内)ため、カール矯正装置によってカールを矯正された光学フィルムが位置検出装置に到達するまでに、光学フィルムの幅方向端部にカールが再び生じるおそれが少なく、光学フィルムの幅方向端部の位置をより一層精度良く検出可能である。
【0014】
好ましくは、前記カール矯正装置は、前記位置検出装置に取り付けられている。
【0015】
上記の好ましい方法によれば、カール矯正装置と位置検出装置との離間距離が極めて短いため、カール矯正装置によってカールを矯正された光学フィルムが位置検出装置に到達するまでに、光学フィルムの幅方向端部にカールが再び生じるおそれがなく、光学フィルムの幅方向端部の位置をより一層精度良く検出可能である。
【0016】
本発明は、前記位置検出装置に対して前記光学フィルムの搬送方向上流側に位置する前記光学フィルムを搬送するための搬送ローラが、前記位置検出装置に対して前記光学フィルムの搬送方向上流側に1m以上離れている場合に有効である。
【0017】
搬送方向上流側に位置する搬送ローラが、位置検出装置に対して光学フィルムの幅の1.5倍以上、具体的には、例えば1m以上離れている場合、光学フィルムが位置検出装置に到達するまでに、光学フィルムの幅方向端部が搬送ローラで拘束されないため、光学フィルムの幅方向端部にカールが生じるおそれが高まると考えられる。このようなカールが生じ易い状況においても、本発明を適用することで、カールを矯正し、光学フィルムの幅方向端部の位置を精度良く検出可能である。
なお、「搬送ローラが、・・・(中略)・・・1m以上離れている」とは、位置検出装置に対して光学フィルムの搬送方向上流側に位置する搬送ローラが複数ある場合、これら複数の搬送ローラのうち最も搬送方向下流側に位置する搬送ローラが位置検出装置に対して1m以上離れていることを意味する。
【0018】
また、本発明は、光学フィルムにカールが生じ易い状況、例えば、光学フィルムが偏光子であり、偏光子を乾燥させる乾燥装置の出側において幅方向端部の位置を検出する場合に有効である。
すなわち、前記光学フィルムが偏光子である場合、例えば、前記カール矯正装置及び前記位置検出装置は、前記偏光子を乾燥させる乾燥装置の出側に位置する。
【0019】
また、前記課題を解決するため、本発明は、長手方向に搬送される光学フィルムの幅方向端部に生じたカールを矯正するカール矯正装置と、前記カール矯正装置によってカールが矯正された前記光学フィルムの幅方向端部の位置を検出する位置検出装置と、前記位置検出装置によって検出した前記光学フィルムの幅方向端部の位置に基づき、前記光学フィルムの幅方向の搬送位置を調整する位置調整装置と、を備える光学フィルムの製造装置としても提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、光学フィルムの幅方向端部に生じたカールを矯正することで、光学フィルムの端部の位置を精度良く検出し、光学フィルムの蛇行を効果的に防止可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る製造方法によって製造される偏光子から得られる偏光フィルムの製造設備全体の概略構成例を示す模式図である。
図2図1に示す製造装置が備えるエッジポジションコントローラ近傍の概略構成例を示す模式図である。
図3】本発明の一実施形態に係る偏光子の製造方法の概略手順を説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を適宜参照しつつ、本発明の一実施形態に係る光学フィルムの製造方法及び製造装置について、光学フィルムが偏光子である場合を例に挙げて説明する。
なお、各図は、参考的に表したものであり、各図に表された部材などの寸法、縮尺及び形状は、実際のものとは異なっている場合があることに留意されたい。
【0023】
図1は、本実施形態に係る製造方法によって製造される偏光子から得られる偏光フィルムの製造設備全体の概略構成例を示す模式図である。図1に示す矢符は、各フィルムの搬送方向を意味する。
図1に示す製造設備を用いて偏光フィルムFを製造するにあたっては、まず、繰出ローラ1に巻回されたポリビニルアルコール系フィルム等の原反フィルムF0を繰り出し、処理槽2内の処理浴に浸漬して染色・延伸等の各種の処理を施す。次いで、乾燥装置(オーブン)3で乾燥させることで、偏光子F1が得られる。なお、偏光子F1の厚みは、特に限定されるものではないが、一般的に、1~80μm程度であり、1~20μmが好ましい。偏光子F1は、原反フィルムF0として、ポリビニルアルコール系フィルムなどの親水性ポリマーフィルム単体を用いて、これに各種の処理を施したものであってもよいし、原反フィルムF0として、ポリエチレンテレフタレート系などの非親水性ポリマーフィルムからなる基材にポリビニルアルコール系フィルムなどの親水性ポリマーフィルムが積層されたものを用いて、これに各種の処理を施したものであってもよい。
【0024】
処理槽2は、例えば、原反フィルムF0の搬送方向上流側から順に、図示を省略する膨潤処理槽、染色処理槽、架橋処理槽、延伸処理槽及び洗浄処理槽を備える。
膨潤処理槽では、原反フィルムF0に膨潤処理を施す。膨潤処理内の処理浴としては、例えば水が用いられる。膨潤処理槽内の処理浴に原反フィルムF0が浸漬することで、原反フィルムF0を洗浄することができると共に、原反フィルムF0を膨潤させることで染色ムラ等の不均一性を防止する効果が期待できる。処理浴中には、グリセリンやヨウ化カリウム等を適宜加えてもよい。処理浴の温度は、20~45℃であることが好ましく、25~40℃であることがより好ましい。原反フィルムF0の処理浴への浸漬時間は、2~180秒間であることが好ましく、10~150秒間であることがより好ましく、60~120秒間であることが特に好ましい。なお、この膨潤処理槽内の処理浴中で原反フィルムF0を延伸してもよく、このときの延伸倍率は、膨潤による伸展も含めて1.1~3.5倍程度である。
【0025】
染色処理槽では、膨潤処理を施された原反フィルムF0に染色処理を施す。染色処理槽内の処理浴としては、例えばヨウ素等の二色性物質を溶媒に溶解した溶液が用いられる。溶媒としては、水が一般的に使用されるが、水と相溶性のある有機溶媒が更に添加されてもよい。染色処理槽内の処理浴に原反フィルムF0が浸漬することで、原反フィルムF0に二色性物質が吸着する。処理浴の温度は、5~42℃であることが好ましく、10~35℃であることがより好ましい。原反フィルムF0の処理浴への浸漬時間は、1~20分であることが好ましく、2~10分であることがより好ましい。なお、この染色処理槽内の処理浴中で原反フィルムF0を延伸してもよく、このときの累積した総延伸倍率は、1.1~4.0倍程度である。
【0026】
架橋処理槽では、染色処理を施された原反フィルムF0に架橋処理を施す。架橋処理槽内の処理浴としては、例えばホウ酸等の架橋剤を溶媒に溶解した溶液が用いられる。溶媒としては、水が一般的に使用されるが、水と相溶性のある有機溶媒が更に添加されてもよい。架橋処理槽内の処理浴に原反フィルムF0が浸漬することで、原反フィルムF0が架橋する。処理浴の温度は、通常、20~70℃である。原反フィルムF0の処理浴への浸漬時間は、通常、1秒~15分であり、5秒~10分であることが好ましい。なお、この架橋処理槽内の処理浴中で原反フィルムF0を延伸してもよく、このときの累積した総延伸倍率は、1.1~4.0倍程度である。
【0027】
延伸処理槽では、架橋処理を施された原反フィルムF0に延伸処理を施す。延伸処理槽内の処理浴としては、例えば、各種金属塩や、ヨウ素、ホウ素又は亜鉛の化合物を添加した溶液が用いられる。溶媒としては、水、エタノール又は各種有機溶媒が適宜使用される。延伸処理槽内の処理浴に原反フィルムF0が浸漬した状態で、累積した総延伸倍率が2~7倍程度になるように原反フィルムF0が延伸される。処理浴の温度は、40~67℃であることが好ましく、50~62℃であることがより好ましい。
【0028】
洗浄処理槽では、延伸処理を施された原反フィルムF0に洗浄処理を施す。洗浄処理槽内の処理浴としては、例えば、ヨウ化ナトリウムやヨウ化カリウム等のヨウ化物を添加した水溶液が用いられる。洗浄処理槽内の処理浴に原反フィルムF0が浸漬することで、原反フィルムF0が洗浄(水洗)される。処理浴の温度は、10~60℃であることが好ましく、15~40℃であることがより好ましい。
【0029】
次いで、図1に示す例では、偏光子F1の両面にグラビアコータ6で活性エネルギー線硬化型接着剤を塗工する。そして、繰出ローラ5から繰り出された保護フィルムF2を、貼り合わせローラ7によって、活性エネルギー線硬化型接着剤が塗工された偏光子F1の両面に貼り合わせる。次いで、活性エネルギー線照射装置8で活性エネルギー線硬化型接着剤を硬化させた後、乾燥装置(オーブン)9で乾燥させる。最後に、両面に保護フィルムF2が貼り合わせられた偏光子F1の片面に、繰出ローラ10から繰り出された表面保護フィルムF3を貼り合わせローラ11によって貼り合わせることで、偏光フィルムFが得られる。得られた偏光フィルムFは、巻取ローラ12で巻き取られる。
【0030】
本実施形態に係る偏光子F1の製造装置200は、以上に説明した製造設備のうちの繰出ローラ1、処理槽2及び乾燥装置3と、乾燥装置3の出側に配置されたエッジポジションコントローラ100と、を備えている。
【0031】
図2は、製造装置200が備えるエッジポジションコントローラ100近傍の概略構成例を示す模式図である。図2(a)は、正面図である。図2(b)は、図2(a)の矢符Aの方向(偏光子F1の長手方向)から見た平面図である。図2(c)は、図2(a)の矢符Bの方向(偏光子F1のフィルム面の法線方向)から見た側面図である。
図2に示すように、エッジポジションコントローラ100は、カール矯正装置20と、位置検出装置30と、位置調整装置40と、を備えている。
【0032】
カール矯正装置20は、長手方向に搬送される偏光子F1の幅方向端部に生じたカールCを矯正する装置である。
本実施形態のカール矯正装置20は、偏光子F1の幅方向(長手方向に直交する方向)端部に接触して回転可能な回転ローラ21を備える。具体的には、カール矯正装置20は、軸部22と、軸部22に軸受(図示せず)を介して取り付けられた回転ローラ21と、を備える。回転ローラ21は、偏光子F1が長手方向に搬送されるのに伴い、図2(a)に示すθ方向に回転可能である。
カール矯正装置20が上記の構成を有することで、カール矯正装置20によって偏光子F1の搬送に支障が生じることなく、偏光子F1を長手方向に連続的に搬送しながらカールCを矯正可能である。ただし、本発明は必ずしもこれに限るものではなく、偏光子F1のカールCを矯正可能な構成である限りにおいて、回転ローラ21を備えない(回転可能な部分を有しない)カール矯正装置を用いることも可能である。
【0033】
本実施形態のカール矯正装置20は、位置検出装置30に対して偏光子F1の搬送方向上流側に1m以内に位置する。特に、本実施形態のカール矯正装置20は、位置検出装置30に取り付けられている。具体的には、カール矯正装置20の軸部22が、取り付け治具23によって、位置検出装置30(偏光子F1の搬送方向上流側に面する位置検出装置30の部位)に取り付けられている。
本実施形態では、カール矯正装置20と位置検出装置30との離間距離(偏光子F1の搬送方向についての離間距離)が短いため、カール矯正装置20によってカールCを矯正された偏光子F1が位置検出装置30に到達するまでに、偏光子F1の幅方向端部にカールCが再び生じるおそれがなく、偏光子F1の幅方向端部の位置をより精度良く検出可能である。
【0034】
なお、本実施形態のカール矯正装置20が備える軸部22は、図2(b)に示すように、偏光子F1の長手方向から見た場合に、偏光子F1の幅方向(図2(b)の上下方向)に対して、予め予測可能なカールCが生じる方向(図2(b)に示す例では右方向)に向けて角度αだけ傾けて取り付けられている。また、本実施形態のカール矯正装置20が備える軸部22は、図2(c)に示すように、偏光子F1のフィルム面に直交する方向から見た場合に、偏光子F1の幅方向(図2(b)の左右方向)に対して、偏光子F1の搬送方向上流側(図2(b)の上側)に向けて角度βだけ傾けて取り付けられている。
好ましくは、角度αは、0°≦α≦20°に設定され、角度βは、0°≦β≦15°に設定される。
【0035】
軸部22ひいては回転ローラ21を偏光子F1の幅方向に平行に取り付ける(α=β=0°に設定する)ことも可能であるものの、上記のように角度α、β(α>0°、β>0°)だけ傾けて取り付ける方が、カールCのみを効果的に矯正し易い点で好ましい。すなわち、角度α(α>0°)だけ傾けて取り付けることで、回転ローラ21がカールCのみに接触する可能性が高まり、カールCが生じていない偏光子F1の端部の摩擦による損傷を回避することが可能である。また、角度β(β>0°)だけ傾けて取り付けることで、回転ローラ21からカールCに対して偏光子F1の幅方向外側に向いた力が作用し易くなり、偏光子F1の幅方向内側に向けて屈曲しているカールCを元に戻し易くなる。
【0036】
位置検出装置30は、カール矯正装置20に対して偏光子F1の搬送方向下流側に位置し、カール矯正装置20によってカールCが矯正された偏光子F1の幅方向端部の位置を検出する装置である。
本実施形態の位置検出装置30としては、例えば、超音波式の位置検出装置が用いられる。具体的には、位置検出装置30は、例えば、超音波Uを送信する超音波送信部31と、超音波送信部31に対向する位置にあり、超音波Uを受信する超音波受信部32と、を備える。位置検出装置30は、超音波送信部31と超音波受信部32との間に偏光子F1が存在するか否かに応じて、超音波受信部32で受信する超音波Uの強度が変化することに基づき、偏光子F1の幅方向端部の位置を検出可能である。
なお、位置検出装置30としては、超音波式に限るものではなく、光学式など、公知の構成を種々適用可能である。
【0037】
位置調整装置40は、位置検出装置30によって検出した偏光子F1の幅方向端部の位置に基づき、偏光子F1の幅方向の搬送位置を調整する装置である。
本実施形態の位置調整装置40は、偏光子F1を搬送する搬送ローラ41と、搬送ローラ41に接続され、搬送ローラ41の姿勢(位置や傾き)を調整可能な油圧シリンダ等の駆動手段42と、駆動手段42に電気的に接続され、駆動手段42を制御する制御手段43と、を備える。図2(a)に示す例では、位置調整装置40を構成する搬送ローラ41が、位置検出装置30に対して偏光子F1の搬送方向上流側に配置されているが、本発明はこれに限るものではなく、位置検出装置30に対して偏光子F1の搬送方向下流側に配置することも可能である。制御手段43は、位置検出装置30にも電気的に接続されており、位置検出装置30で検出した偏光子F1の幅方向端部の位置が入力される。
【0038】
なお、図2(a)に示す例では、位置検出装置30に対して偏光子F1の搬送方向上流側に位置する搬送ローラが複数存在する(搬送ローラ41以外は図示せず)が、これら複数の搬送ローラのうち、搬送ローラ41が最も搬送方向下流側に位置する。そして、搬送ローラ41は、位置検出装置30に対して偏光子F1の搬送方向上流側に距離Lだけ離れている。この距離Lが1m以上である場合には、偏光子F1が位置検出装置30に到達する(超音波送信部31と超音波受信部32との間に到達する)までに、偏光子F1の幅方向端部が搬送ローラで拘束されないため、偏光子F1の幅方向端部にカールCが生じるおそれが高まると考えられる。このようなカールCが生じ易い状況においても、本実施形態のエッジポジションコントローラ100を適用することで、カールCを矯正し、偏光子F1の幅方向端部の位置を精度良く検出可能である。
【0039】
以下、上記の構成を有する製造装置200(エッジポジションコントローラ100)を用いた本実施形態に係る偏光子F1の製造方法(幅方向端部位置の調整方法)について説明する。
【0040】
図3は、本実施形態に係る偏光子F1の製造方法の概略手順を説明するフロー図である。
図3に示すように、本実施形態に係る偏光子F1の製造方法は、カール矯正工程S1と、幅方向端部位置検出工程S2と、幅方向搬送位置調整工程S3と、を含んでいる。
【0041】
カール矯正工程S1では、乾燥装置3で乾燥した後、長手方向に搬送される偏光子F1の幅方向端部に生じたカールCをカール矯正装置20で矯正する。
幅方向端部位置検出工程S2では、カール矯正工程S1を経た偏光子F1の幅方向端部の位置を位置検出装置30で検出する。
【0042】
幅方向搬送位置調整工程S3では、幅方向端部位置検出工程S2によって検出した偏光子F1の幅方向端部の位置に基づき、偏光子F1の幅方向の搬送位置を位置調整装置40で調整する。
具体的には、幅方向端部位置検出工程S2によって検出した偏光子F1の幅方向端部の位置が、位置調整装置40の制御手段43に入力される。制御手段43には、偏光子F1の幅方向端部の位置に応じて、搬送ローラ41の姿勢をどのように変更するべきかが予め記憶されている。具体的には、例えば、偏光子F1の幅方向端部の位置と、搬送ローラ41の適切な姿勢(位置や傾き)との対応関係が、関数やテーブル形式で記憶されている。搬送ローラ41の適切な姿勢は、例えば、偏光子F1の幅方向端部が常に位置検出装置30の中心を通ることになるように決められる。制御手段43は、入力された偏光子F1の幅方向端部の位置に応じて、これに対応する搬送ローラ41の姿勢を選択し、これを制御信号として駆動手段42に出力する。駆動手段42は、入力された制御信号に応じて搬送ローラ41の姿勢を調整する。
【0043】
本実施形態に係る偏光子F1の製造方法は、上記の各工程S1~S3を、搬送する偏光子F1が無くなるまで繰り返し実行する。
以上に説明した本実施形態に係る偏光子F1の製造方法によれば、幅方向端部位置検出工程S2を実行する前に、偏光子F1の幅方向端部に生じたカールCをカール矯正装置20で矯正するカール矯正工程S1を実行するため、偏光子F1の幅方向端部の位置を精度良く検出できる。このため、幅方向搬送位置調整工程S3において、偏光子F1の幅方向の搬送位置を適切に調整可能であり、偏光子F1の蛇行を効果的に防止可能である。
【0044】
なお、本実施形態では、光学フィルムが偏光子F1であり、乾燥装置3の出側にエッジポジションコントローラ100を配置する例について説明したが、本発明はこれに限るものではなく、図1に示す他の位置にエッジポジションコントローラ100を配置したり、対象とする光学フィルムが偏光フィルムFである場合や、位相差フィルム、アンチグレアフィルム等である場合にも、同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0045】
20・・・カール矯正装置
21・・・回転ローラ
22・・・軸部
30・・・位置検出装置
40・・・位置調整装置
41・・・搬送ローラ
42・・・駆動手段
43・・・制御手段
100・・・エッジポジションコントローラ
200・・・光学フィルム(偏光子)の製造装置
C・・・カール
F1・・・偏光子
F・・・偏光フィルム
図1
図2
図3