(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114919
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】副原料醸造におけるインフュージョン・マッシング用の酵素
(51)【国際特許分類】
C12C 7/04 20060101AFI20240816BHJP
C12N 9/26 20060101ALN20240816BHJP
【FI】
C12C7/04
C12C7/04 ZNA
C12N9/26 A ZNA
C12N9/26 A
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024105025
(22)【出願日】2024-06-28
(62)【分割の表示】P 2021522068の分割
【原出願日】2019-10-21
(31)【優先権主張番号】62/748,739
(32)【優先日】2018-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513207806
【氏名又は名称】デュポン ニュートリション バイオサイエンシス エーピーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110003579
【氏名又は名称】弁理士法人山崎国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100118647
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 利昭
(74)【代理人】
【識別番号】100123892
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169993
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 千裕
(74)【代理人】
【識別番号】100173978
【弁理士】
【氏名又は名称】朴 志恩
(72)【発明者】
【氏名】クレーマー、ジェイコブ、フライホルム
(72)【発明者】
【氏名】ブラット、トゥローヴ
(57)【要約】
【解決手段】
本発明は、100%副原料グリストをマッシングする方法に関する。さらに具体的には、本開示は、副原料によって構成される非モルト麦汁を製造するために、αアミラーゼがマルトジェニックαアミラーゼ及び/又はグルコアミラーゼと組み合わせられる、方法及び組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
100%副原料醸造のマッシング方法であって、
a.)副原料を含むグリストを提供する工程;及び
b.)αアミラーゼと、マルトジェニックαアミラーゼ及び/又はグルコアミラーゼと、前記グリストを接触させて、麦汁を生成する工程;
を含む方法。
【請求項2】
前記αアミラーゼが、配列番号1と少なくとも70%の配列同一性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記αアミラーゼが、配列番号1と少なくとも80%の配列同一性を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記αアミラーゼが、配列番号1と少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記αアミラーゼが、配列番号1と少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記αアミラーゼが、配列番号1による配列を有する酵素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記マルトジェニックαアミラーゼが、配列番号2と少なくとも70%の配列同一性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記マルトジェニックαアミラーゼが、配列番号2と少なくとも80%の配列同一性を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記マルトジェニックαアミラーゼが、配列番号2と少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記マルトジェニックαアミラーゼが、配列番号2と少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記マルトジェニックαアミラーゼが、配列番号2による配列を有する酵素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記グルコアミラーゼが、配列番号3と少なくとも70%の配列同一性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記グルコアミラーゼが、配列番号3と少なくとも80%の配列同一性を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記グルコアミラーゼが、配列番号3と少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記グルコアミラーゼが、配列番号3と少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記グルコアミラーゼが配列番号3による配列を有する酵素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
工程b.)において、前記グリストをαアミラーゼ及びマルトジェニックαアミラーゼと接触させる、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記αアミラーゼが、配列番号1と少なくとも70%の配列同一性を有し、且つ前記マルトジェニックαアミラーゼが、配列番号2と少なくとも70%の配列同一性を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記αアミラーゼが、配列番号1と少なくとも80%の配列同一性を有し、且つ前記マルトジェニックαアミラーゼが、配列番号2と少なくとも80%の配列同一性を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記αアミラーゼが、配列番号1と少なくとも90%の配列同一性を有し、且つ前記マルトジェニックαアミラーゼが、配列番号2と少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記αアミラーゼが、配列番号1と少なくとも95%の配列同一性を有し、且つ前記マルトジェニックαアミラーゼが、配列番号2と少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記αアミラーゼが、配列番号1による配列を有する酵素を含み、且つ前記マルトジェニックαアミラーゼが、配列番号2による配列を有する酵素を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
工程b.)において、前記グリストをαアミラーゼ及びグルコアミラーゼと接触させる、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記αアミラーゼが、配列番号1と少なくとも70%の配列同一性を有し、且つ前記グルコアミラーゼが、配列番号3と少なくとも70%の配列同一性を有する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記αアミラーゼが、配列番号1と少なくとも80%の配列同一性を有し、且つ前記グルコアミラーゼが、配列番号3と少なくとも80%の配列同一性を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記αアミラーゼが、配列番号1と少なくとも90%の配列同一性を有し、且つ前記グルコアミラーゼが、配列番号3と少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記αアミラーゼが、配列番号1と少なくとも95%の配列同一性を有し、且つ前記グルコアミラーゼが、配列番号3と少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記αアミラーゼが、配列番号1による配列を有する酵素を含み、且つ前記グルコアミラーゼが、配列番号3による配列を有する酵素を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記グリストが、トウモロコシ、コメ、モロコシ及びカッサバ又はその混合物からなる群から選択される、請求項1から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記グリストが、モロコシを少なくとも10%含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記グリストが、モロコシを少なくとも25%含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記グリストが、モロコシを少なくとも50%含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記グリストが、モロコシを少なくとも75%含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記グリストが、モロコシを100%含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記グリストが、トウモロコシを少なくとも10%含む、請求項29に記載の方法。
【請求項36】
前記グリストが、トウモロコシを少なくとも25%含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記グリストが、トウモロコシを少なくとも50%含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記グリストが、トウモロコシを少なくとも75%含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記グリストが、トウモロコシを100%含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記グリストが、コメを少なくとも10%含む、請求項29に記載の方法。
【請求項41】
前記グリストが、コメを少なくとも25%含む、請求項35に記載の方法。
【請求項42】
前記グリストが、コメを少なくとも50%含む、請求項36に記載の方法。
【請求項43】
前記グリストが、コメを少なくとも75%含む、請求項37に記載の方法。
【請求項44】
前記グリストが、コメを100%含む、請求項38に記載の方法。
【請求項45】
前記グリストが、カッサバを少なくとも10%含む、請求項29に記載の方法。
【請求項46】
前記グリストが、カッサバを少なくとも25%含む、請求項35に記載の方法。
【請求項47】
前記グリストが、カッサバを少なくとも50%含む、請求項36に記載の方法。
【請求項48】
前記グリストが、カッサバを少なくとも75%含む、請求項37に記載の方法。
【請求項49】
前記グリストが、カッサバを100%含む、請求項38に記載の方法。
【請求項50】
前記麦汁がビールへと転化される、請求項1から49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
醸造におけるαアミラーゼと、マルトジェニックαアミラーゼ及び/又はグルコアミラーゼと、の使用。
【請求項52】
αアミラーゼ及びマルトジェニックαアミラーゼを含む酵素組成物。
【請求項53】
αアミラーゼ及びグルコアミラーゼを含む酵素組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、副原料グリストをマッシュする方法に関する。さらに具体的には、本開示は、マルトジェニックαアミラーゼ及び/又はグルコアミラーゼと併せてαアミラーゼを醸造に用いて、副原料によって構成される非モルト麦汁が提供される、方法及び組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
醸造は一般に、3つの工程:モルティング、マッシング及び発酵を含む。モルティング工程の主な目的は、デンプン及びタンパク質分解における醸造プロセス中の次の役割を有する酵素を発生させることである。従来からビールはオオムギモルト、ホップ及び水から醸造されていたが、優れた品質の穀物、発芽用の水及びキルニングのためのエネルギーが必要であるため、モルトは高価な原料である。原料のコストを下げるために、副原料とも呼ばれる非モルト化穀物、例えばトウモロコシ、コメ、カッサバ、コムギ、オオムギ、ライムギ、オートムギ、キノア及びモロコシなどが醸造プロセスに含まれ得る。容易に入手可能であり、オオムギモルトよりも低いコストで発酵性炭水化物を提供することから、副原料が主に使用される。
【0003】
醸造における副原料の使用によって、従来の醸造プロセスが複雑となる。通常、デンプンを液化するために、副原料は「シリアルクッカー」で別々に処理しなければならない。
したがって、副原料を使用すると原料の全体的なコストは下がるが、シリアルクッカーにおける更なる投資、並びに発酵性糖類を遊離させるための、副原料の加熱及び処理に更なる費用が必要である。これらの更なるコストを低減するために、醸造者は、低い副原料比率(つまり、副原料:モルトの比)を使用する傾向があった。
【0004】
シリアルクッカーを使用する必要なく、ビール製造において副原料を使用することができる方法が引き続き必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の態様に従って、以下の工程:a.)副原料を含むグリストを提供する工程;及びb.)αアミラーゼと、マルトジェニックαアミラーゼ及び/又はグルコアミラーゼと、グリストとを接触させて麦汁を生成する工程;を有する、100%副原料醸造のためのマッシング方法が示される。
【0006】
任意に、αアミラーゼは、配列番号1と少なくとも70%の配列同一性を有する。任意に、αアミラーゼは、配列番号1と少なくとも80%の配列同一性を有する。任意に、αアミラーゼは、配列番号1と少なくとも90%の配列同一性を有する。任意に、αアミラーゼは、配列番号1と少なくとも95%の配列同一性を有する。任意に、αアミラーゼは、配列番号1による配列を有する酵素である。
【0007】
任意に、マルトジェニックαアミラーゼは、配列番号2と少なくとも70%の配列同一性を有する。任意に、マルトジェニックαアミラーゼは、配列番号2と少なくとも80%の配列同一性を有する。任意に、マルトジェニックαアミラーゼは、配列番号2と少なくとも90%の配列同一性を有する。任意に、マルトジェニックαアミラーゼは、配列番号2と少なくとも95%の配列同一性を有する。任意に、マルトジェニックαアミラーゼは、配列番号2による配列を有する酵素である。
【0008】
任意に、グルコアミラーゼは、配列番号3と少なくとも70%の配列同一性を有する。
任意に、グルコアミラーゼは、配列番号3と少なくとも80%の配列同一性を有する。任意に、グルコアミラーゼは、配列番号3と少なくとも90%の配列同一性を有する。任意に、グルコアミラーゼは、配列番号3と少なくとも95%の配列同一性を有する。任意に、グルコアミラーゼは、配列番号3による配列を有する酵素である。
【0009】
本発明の一態様において、グリストをαアミラーゼ及びマルトジェニックαアミラーゼと接触させる。任意に、αアミラーゼは、配列番号1と少なくとも70%の配列同一性を有し、且つマルトジェニックαアミラーゼは、配列番号2と少なくとも70%の配列同一性を有する。任意に、αアミラーゼは、配列番号1と少なくとも80%の配列同一性を有し、且つマルトジェニックαアミラーゼは、配列番号2と少なくとも80%の配列同一性を有する。任意に、αアミラーゼは、配列番号1と少なくとも90%の配列同一性を有し、且つマルトジェニックαアミラーゼは、配列番号2と少なくとも90%の配列同一性を有する。任意に、αアミラーゼは、配列番号1と少なくとも95%の配列同一性を有し、且つマルトジェニックαアミラーゼは、配列番号2と少なくとも95%の配列同一性を有する。任意に、αアミラーゼは、配列番号1による配列を有する酵素であり、マルトジェニックαアミラーゼは、配列番号2による配列を有する酵素である。
【0010】
本発明の他の態様において、グリストをαアミラーゼ及びグルコアミラーゼと接触させる。任意に、αアミラーゼは、配列番号1と少なくとも70%の配列同一性を有し、且つグルコアミラーゼは、配列番号3と少なくとも70%の配列同一性を有する。任意に、αアミラーゼは、配列番号1と少なくとも80%の配列同一性を有し、且つグルコアミラーゼは、配列番号3と少なくとも80%の配列同一性を有する。任意に、αアミラーゼは、配列番号1と少なくとも90%の配列同一性を有し、且つグルコアミラーゼは、配列番号3と少なくとも90%の配列同一性を有する。任意に、αアミラーゼは、配列番号1と少なくとも95%の配列同一性を有し、且つグルコアミラーゼは、配列番号3と少なくとも95%の配列同一性を有する。任意に、αアミラーゼは、配列番号1による配列を有する酵素であり、且つグルコアミラーゼは、配列番号3による配列を有する酵素である。
【0011】
任意に、グリストは、トウモロコシ、コメ、モロコシ及びカッサバ又はその混合物からなる群から選択される。任意に、グリストは少なくとも10%のモロコシである。任意に、グリストは少なくとも25%のモロコシである。任意に、グリストは少なくとも50%のモロコシである。任意に、グリストは少なくとも75%のモロコシである。任意に、グリストは100%モロコシである。
【0012】
本発明の他の態様において、グリストは少なくとも10%のトウモロコシである。任意に、グリストは少なくとも25%のトウモロコシである。任意に、グリストは少なくとも50%のトウモロコシである。任意に、グリストは少なくとも75%のトウモロコシである。任意に、グリストは100%トウモロコシである。
【0013】
他の態様において、グリストは少なくとも10%のコメである。任意に、グリストは少なくとも25%のコメである。任意に、グリストは少なくとも50%のコメである。任意に、グリストは少なくとも75%のコメである。任意に、グリストは100%コメである。
【0014】
他の態様において、グリストは少なくとも10%のカッサバである。任意に、グリストは少なくとも25%のカッサバである。任意に、グリストは少なくとも50%のカッサバである。任意に、グリストは少なくとも75%のカッサバである。任意に、グリストは100%カッサバである。
【0015】
任意に、麦汁がビールに転化される。
【0016】
本発明の一態様において、醸造におけるαアミラーゼと、マルトジェニックαアミラーゼ及び/又はグルコアミラーゼと、の使用が提供される。
【0017】
本発明の他の態様において、αアミラーゼ及びマルトジェニックαアミラーゼを有する酵素組成物が提供される。
【0018】
本発明のさらに他の態様において、αアミラーゼ及びグルコアミラーゼを有する酵素組成物が提供される。
【0019】
生物学的配列の簡単な説明
配列番号1は、ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)、GsAA1由来のαアミラーゼ変異体の成熟アミノ酸配列を示す。
【0020】
配列番号2は、ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)、GsAA2由来のマルトジェニックαアミラーゼの成熟アミノ酸配列を示す。
【0021】
配列番号3は、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)由来のグルコアミラーゼの成熟アミノ酸配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実行は、別途指示しない限り、分子生物学(組み換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学及び生化学の従来の技術を用いることができ、これらは当技術分野の技術範囲内である。かかる技術は、文献に、例えばMolecular Cloning:A Laboratory Manual,second edition(Sambrook et al.,1989);Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait,ed.,1984;Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubel et al.,eds.,1994);PCR:The Polymerase Chain Reaction(Mullis et al.,eds.,1994);Gene Transfer and Expression:A Laboratory Manual(Kriegler,1990)、及びThe Alcohol Textbook(Ingledew et al.,eds.,Fifth Edition,2009)及びEssentials of Carbohydrate Chemistry and Biochemistry(Lindhorste,2007)に説明されている。
【0023】
別途本明細書で定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本開示が属する当技術分野の当業者により一般に理解されるのと同じ意味を有する。Singleton,et al.,Dictionary of Microbiology and Molecular Biology,second ed.,John Wiley and Sons,New York(1994)及びHale & Markham,The Harper Collins Dictionary of Biology,Harper Perennial,NY(1991)は、本発明で使用する用語の多くの一般的な辞書を当業者に提供する。本明細書で説明する方法及び材料と類似の又は等価のあらゆる方法及び材料を、本発明の実施又は試験で使用することができる。
【0024】
本明細書に記載する数値範囲は、この範囲を定義する数字を含む。
【0025】
定義
ポリペプチドに関する「野生型」、「親」又は「参照」という用語は、1つ以上のアミノ酸の位置での人為的な置換、挿入又は欠失を含まない天然型ポリペプチドを指す。同様に、ポリヌクレオチドに関する「野生型」、「親」又は「参照」という用語は、人為的なヌクレオシド変化を含まない天然型ポリヌクレオチドを指す。しかし、野生型、親又は参照ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、天然に存在するポリヌクレオチドに限定されず、野生型、親又は参照ポリペプチドをコードする任意のポリヌクレオチドを包含することに留意されたい。
【0026】
野生型ポリペプチドへの言及は、ポリペプチドの成熟形を含むと理解される。「成熟」ポリペプチド又はその変異体は、例えば、そのポリペプチドの発現中又は発現後のポリペプチドの未熟型から切断されて、シグナル配列が存在しないものである。
【0027】
ポリペプチドに関する用語「変異体」は、アミノ酸の1つ以上の天然型又は人為的置換、挿入若しくは欠失を含むという点で特定の野生型、親又は参照ポリペプチドと異なるポリペプチドを指す。同様に、ポリヌクレオチドに関する用語「変異体」は、ヌクレオチド配列において特定の野生型、親又は参照ポリヌクレオチドと異なるポリヌクレオチドを指す。野生型、親又は参照ポリペプチド又はポリヌクレオチドの同一性は、文脈から明らかになるであろう。
【0028】
「組み換え」という用語は、対象細胞、核酸、タンパク質又はベクターに関して使用される場合には、対象がその天然状態から改変されていることを示す。したがって、例えば、組み換え細胞は、天然(非組み換え)型の細胞内では見出されない遺伝子を発現するか、又は異なるレベルで、若しくは天然に見出される条件と異なる条件下で天然遺伝子を発現する。組み換え核酸は、天然配列とは1つ以上のヌクレオチドが異なり、且つ/又は、異種配列、例えば発現ベクター内の異種プロモーターと動作可能に連結している。組み換えタンパク質は、天然配列とは1つ以上のアミノ酸が異なり得、且つ/又は異種配列と融合している。アミラーゼをコードする核酸を含むベクターは、組み換えベクターである。
【0029】
「回収(された)」、「単離(された)」及び「分離(された)」という用語は、化合物、タンパク質(ポリペプチド)、細胞、核酸、アミノ酸若しくは他の特定の物質又は構成要素であって、天然に見出されるようにそれが自然に同伴している少なくとも1つの他の物質又は構成要素から除去されるものを指す。それらの「単離された」ポリペプチドには、異種宿主細胞内で発現した分泌ポリペプチドを含有する細胞培養ブロスが含まれるが、それに限定されない。
【0030】
「アミノ酸配列」という用語は、用語「ポリペプチド」、「タンパク質」及び「ペプチド」と同義であり、互換的に使用される。そのようなアミノ酸配列が活性を示す場合、それらは「酵素」と呼ぶことができる。アミノ酸残基に対して従来の1文字コード又は3文字コードが使用され、アミノ酸配列は、標準のアミノからカルボキシ末端方向(すなわち、N→C)に表示される。
【0031】
「核酸」という用語は、ポリペプチドをコードできるDNA、RNA、ヘテロ二本鎖及び合成分子を含む。核酸は一本鎖であっても二本鎖であってもよいし、化学改変を有してもよい。用語「核酸」及び「ポリヌクレオチド」は、互換的に使用される。遺伝コードは縮重しているため、特定のアミノ酸をコードするために2個以上のコドンを使用し得、本発明の組成物及び方法は、特定のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を包含する。他に規定しない限り、核酸配列は、5’-から-3’の方向に表示される。
【0032】
細胞に関連して使用される「形質転換(された)」、「安定に形質転換(された)」及び「トランスジェニック」という用語は、細胞が、そのゲノム内に組み込まれた非天然の(例えば、異種の)核酸配列を、又は複数世代を通して維持されるエピソームとして保持している核酸配列を含有していることを意味する。
【0033】
細胞内へ核酸配列を挿入することに関連して、「導入(された)」という用語は、当技術分野において知られているように「遺伝子導入」、「形質転換」又は「形質導入」を意味する。
【0034】
「宿主株」又は「宿主細胞」は、その中に目的のポリペプチド(例えば、アミラーゼ)をコードするポリヌクレオチドを含む、発現ベクター、ファージ、ウイルス又は他のDNA構築物が導入されている生物である。宿主株の例としては、対象とするポリペプチドを発現することができる微生物細胞(例えば、細菌、糸状菌及び酵母)がある。「宿主細胞」という用語には、細胞から作成されたプロトプラストが含まれる。
【0035】
ポリヌクレオチド又はタンパク質に関連する「異種の」という用語は、宿主細胞中で自然には生じないポリヌクレオチド又はタンパク質を指す。
【0036】
ポリヌクレオチド又はタンパク質に関連する「内在性の」という用語は、宿主細胞中で自然に生じるポリヌクレオチド又はタンパク質を指す。
【0037】
「発現」という用語は、核酸配列に基づいてポリペプチドが生成されるプロセスを指す。このプロセスには、転写及び翻訳の両方が含まれる。
【0038】
「選択的マーカー」又は「選択可能なマーカー」は、遺伝子を運ぶ宿主細胞の選択を容易にするために宿主内で発現させることのできる遺伝子を指す。選択可能なマーカーの例としては、抗生物質(例えば、ハイグロマイシン、ブレオマイシン又はクロラムフェニコール)及び/又は宿主細胞に代謝上の利点、例えば栄養上の利点を付与する遺伝子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
「ベクター」は、核酸を1種以上の細胞型に導入するように設計されたポリヌクレオチド配列を指す。ベクターには、クローニングベクター、発現ベクター、シャトルベクター、プラスミド、ファージ粒子、カセットなどが含まれる。
【0040】
「発現ベクター」は、関心対象のポリペプチドをコードするDNA配列を含むDNA構築物を意味するが、そのコーディング配列は、好適な宿主内のDNAの発現を実施できる好適な制御配列に機能的に連結している。そのような制御配列には、転写を生じさせるプロモーター、転写を制御する任意選択的オペレーター配列、mRNA上の好適なリボソーム結合部位をコードする配列、エンハンサー並びに転写及び翻訳の終了を制御する配列が含まれ得る。
【0041】
「作動可能に連結した」という用語は、特定の構成成分が意図された方法で機能することを許容する関係(並列を含むがそれには限定されない)にあることを意味する。例えば、調節配列は、コーディング配列の発現が調節配列の制御下にあるようにコーディング配列に機能的に連結している。
【0042】
「シグナル配列」は、細胞外部へのタンパク質の分泌を容易にする、タンパク質のN末端部分に付着しているアミノ酸の配列である。細胞外タンパク質の成熟形は、分泌プロセス中に切断して除かれるシグナル配列を欠いている。
【0043】
「生物活性」は、例えば酵素活性などの特定の生物活性を有する配列を指す。
【0044】
「比活性」という用語は、特定条件下で単位時間当たりに、酵素又は酵素調製物によって生成物へと転化され得る基質のモル数を指す。比活性は、一般に、単位数(U)/mgタンパク質で表される。
【0045】
本明細書で使用する場合、「配列同一性パーセント」は、特定の配列を、CLUSTAL Wアルゴリズムをデフォルトパラメータで使用して整列させた場合、特定の参照配列内のものと同一のアミノ酸残基を少なくとも一定のパーセンテージで有することを意味する。Thompson et al.(1994)Nucleic Acids Res.22:4673-4680を参照されたい。CLUSTAL Wアルゴリズムのデフォルトパラメータは、次のとおりである:
ギャップ開始ペナルティ:10.0
ギャップ伸長ペナルティ:0.05
タンパク質ウエイトマトリックス:BLOSUMシリーズ
DNAウエイトマトリックス:IUB
ディレイ発散配列(%):40
ギャップ分離距離:8
DNAトランジションウエイト:0.50
親水性残基のリスト:GPSNDQEKR
ネガティブマトリックスの使用:オフ
トグル残基特異的ペナルティ:オン
トグル親水性ペナルティ:オン
トグル末端ギャップ分離ペナルティ オフ。
【0046】
欠失は、参照配列と比較して非同一の残基として計数される。いずれかの末端で発生している欠失が含まれる。例えば、成熟した617個の残基ポリペプチドのC末端の5つのアミノ酸欠失を有する変異体は、成熟ポリペプチドに対して99%の配列同一性率(612/617個の同一残基×100、最も近い整数に丸めた)を有するであろう。そのような変異体は、成熟ポリペプチドに対して「少なくとも99%の配列同一性」を有する変異体に包含されるであろう。
【0047】
「融合(した)」ポリペプチド配列は、2つの対象ポリペプチド配列間のペプチド結合によって接続されている、すなわち動作可能に連結されている。
【0048】
「糸状菌」という用語は、ユウミコチナ(Eumycotina)亜門のすべての糸状体、特にペジゾミコチナ(Pezizomycotina)種を指す。
【0049】
「約」という用語は、参照値の±5%を指す。
【0050】
更なる突然変異
一部の実施形態において、本発明のアミラーゼはさらに、更なる性能又は安定性の利点を提供する1つ又は複数の突然変異を含む。例示的な性能の利点としては、限定されないが、増加した熱安定性、増加した貯蔵安定性、増加した溶解性、変化したpHプロファイル、増加した比活性、改質された基質特異性、改質された基質結合性、改質されたpH依存性活性、改質されたpH依存性安定性、増加した酸化安定性、及び増加した発現が挙げられる。一部の場合には、性能の利点は、比較的低い温度で実現される。一部の場合には、性能の利点は、比較的高い温度で実現される。
【0051】
さらに、本アミラーゼは、任意の数の保存的アミノ酸置換を含み得る。例示的な保存的アミノ酸置換を表1に列挙する。
【0052】
保存的アミノ酸置換
【0053】
【0054】
読者は、上述の保存的突然変異の一部を遺伝子操作によって生成することができ、他の保存的突然変異が、遺伝的又は他の手段によって合成アミノ酸をポリペプチド内に導入することによって生成されることを理解するであろう。
【0055】
本発明のアミラーゼは、シグナル配列を含む「前駆体」、「未成熟」若しくは「完全長」、又はシグナル配列が欠如した「成熟」であり得る。ポリペプチドの成熟形態が、一般に、最も有用である。特に記載がない限り、本明細書で使用するアミノ酸残基の番号付けは、それぞれのアミラーゼポリペプチドの成熟形態を指す。本発明のアミラーゼポリペプチドはまた、得られたポリペプチドがアミラーゼ活性を保持する限り、N末端又はC末端を切断して除去してもよい。
【0056】
本発明のアミラーゼは、それが第1のアミラーゼポリペプチドの少なくとも一部分及び、第2のアミラーゼポリペプチドの少なくとも一部分を含むという点で、「キメラ」、「ハイブリッド」ポリペプチドであり得る。本発明のアミラーゼは、異種シグナル配列、トラッキング又は精製を可能にするエピトープなどをさらに含んでもよい。代表的な異種シグナル配列は、B.リケニフォルミス(B.licheniformis)アミラーゼ(LAT)、B.スブチリス(B.subtilis)(AmyE又はAprE)及びストレプトマイセス属(Streptomyces)CelA由来である。
【0057】
アミラーゼの産生
本発明のアミラーゼは、例えば分泌又は細胞内発現により、宿主細胞内中で産生され得る。アミラーゼを含む培養細胞材料(例えば、全細胞ブロス)は、アミラーゼの細胞培地への分泌後に得ることができる。任意選択により、アミラーゼを、最終的なアミラーゼの所望の純度に応じて、宿主細胞から単離し得るか、又はさらに細胞ブロスから単離し得る。プロリン特異性アミラーゼをコードする遺伝子を、当技術分野で公知の方法に従って、クローニングして発現させ得る。好適な宿主細胞としては、細菌、真菌(酵母及び糸状菌を含む)及び植物細胞(藻類を含む)が挙げられる。特に有用な宿主細胞としては、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、コウジカビ(Aspergillus oryzae)又はトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)が挙げられる。他の宿主細胞として、細菌細胞、例えば、枯草菌(Bacillus subtilis)又はB.リケニフォルミス(B.licheniformis)、並びにストレプトマイセス属(Streptomyces)、及び大腸菌(E.Coli)が挙げられる。
【0058】
宿主細胞はさらに、宿主細胞と同じ種ではない相同若しくは異種アミラーゼ、又は1種若しくは複数種の他の酵素をコードする核酸を発現し得る。アミラーゼは変異体アミラーゼであり得る。さらに、宿主は、1つ以上のアクセサリー酵素、タンパク質、ペプチドを発現し得る。
【0059】
ベクター
アミラーゼをコードする核酸を含むDNA構築物は、宿主細胞において発現されるように作成され得る。遺伝子コードの既知の縮重のために、同一のアミノ酸配列をコードする変異体ポリヌクレオチドを、通常の技術を用いて設計し、作製し得る。特定の宿主細胞に対してコドン使用を最適化することは当技術分野でよく知られている。アミラーゼをコードする核酸は、ベクターに組み込むことができる。ベクターは、既知の形質転換技術、例えば、下記に開示される技術などを使用して宿主細胞に導入することができる。
【0060】
ベクターは、宿主細胞へ形質転換され宿主細胞内で複製され得るなら、いかなるベクターであってもよい。例えば、アミラーゼをコードする核酸を含むベクターは、ベクターの増殖及び増幅の手段として細菌宿主細胞内で形質転換及び複製することができる。さらに、コード核酸を機能性アミラーゼとして発現することができるように、ベクターを発現宿主中に形質転換することもできる。発現宿主としての役割を果たす宿主細胞は、例えば糸状菌を含み得る。
【0061】
アミラーゼをコードする核酸は、宿主細胞中で転写を可能にする好適なプロモーターと作動可能に連結することができる。プロモーターは、選択された宿主細胞中で転写活性を示すあらゆるDNA配列であり得、且つ宿主細胞に対して相同又は異種のいずれかのタンパク質をコードする遺伝子由来であり得る。特に細菌宿主において、アミラーゼをコードするDNA配列の転写を指示する例示的なプロモーターは、大腸菌(E.coli)のラクオペロンのプロモーター、ストレプトマイセス・セリカラー(Streptomyces coelicolor)アガラーゼ遺伝子dagA若しくはcelAプロモーター、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)αアミラーゼ遺伝子(amyL)のプロモーター、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)マルトジェニックアミラーゼ遺伝子(amyM)のプロモーター、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)αアミラーゼ(amyQ)のプロモーター、枯草菌(Bacillus subtilis)xylA及びxylB遺伝子等のプロモーターである。真菌宿主における転写のために、有用なプロモーターの例は、コウジカビ(Aspergillus oryzae)TAKAアミラーゼ、リゾムコール・ミーハイ(Rhizomucor miehei)アスパラギン酸プロテイナーゼ、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)天然αアミラーゼ、A.ニガー(A.niger)酸安定性αアミラーゼ、A.ニガー(A.niger)グルコアミラーゼ、リゾムコール・ミーハイ(Rhizomucor miehei)リパーゼ、コウジカビ(A.oryzae)アルカリ性プロテアーゼ、コウジカビ(A.oryzae)トリオースホスフェートイソメラーゼ、又はアスペルギルス・ニデュランス(A.nidulans)アセトアミダーゼをコードする遺伝子に由来するプロモーターである。アミラーゼをコードする遺伝子が大腸菌(E.coli)などの細菌種において発現される場合、例えば、T7プロモーター及びファージラムダプロモーターなどのバクテリオファージプロモーターから適切なプロモーターを選択することができる。酵母種中での発現に適切なプロモーターの例として、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)のGal1及びGal10プロモーター並びにピキア・パストリス(Pichia pastoris)AOX1又はAOX2プロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。cbh1は、トリコデルマ・リーゼイ(T.reesei)由来の内因性、誘導プロモーターである。Liu et al.(2008)Improved heterologous gene expression in Trichoderma reesei by cellobiohydrolase I gene(cbh1)promoter optimization,Acta Biochim.Biophys.Sin(Shanghai)40(2):158-65を参照されたい。
【0062】
このコード配列は、シグナル配列と作動可能に連結され得る。シグナル配列をコードするDNAは、発現されるべきアミラーゼ遺伝子と天然に関連付けられる、又は様々な属若しくは種に由来するDNA配列であり得る。DNA構築物又はベクターを含むシグナル配列及びプロモーター配列は、真菌宿主細胞に導入され得、且つ同一起源に由来し得る。例えば、シグナル配列は、cbh1プロモーターに作動可能に連結されるcbh1シグナル配列である。
【0063】
発現ベクターはまた、好適な転写ターミネーターと、真核生物中では、変異体アミラーゼをコードするDNA配列に作動可能に連結されているポリアデニル化配列と、を含み得る。終結配列及びポリアデニル化配列は、適切には、プロモーターと同一の供給源に由来し得る。
【0064】
ベクターは、宿主細胞中でのベクターの複製を可能とするDNA配列をさらに含み得る。このような配列の例は、プラスミドpUC19、pACYC177、pUB110、pE194、pAMB1、及びpIJ702の複製開始点である。
【0065】
ベクターは、選択可能マーカーも含み得、例えば、産物が単離宿主細胞の欠陥を補う遺伝子も含み得、例えば、B.スブチリス(B.subtilis)若しくはB.リケニフォルミス(B.licheniformis)に由来するdal遺伝子、又は抗生物質耐性(例えば、アンピシリン耐性、カナマイシン耐性、クロラムフェニコール耐性、若しくはテトラサイクリン耐性)を付与する遺伝子も含み得る。さらに、ベクターは、アスペルギルス属(Aspergillus)選択マーカー(例えば、amdS、argB、niaD及びxxsC)、ハイグロマイシン耐性を生じさせるマーカーを含んでもよいし、又は当技術分野で既知の同時形質転換により選択が達成されてもよい。例えば、国際公開第91/17243号パンフレットを参照されたい。
【0066】
一部の観点からは、例えば、その後の富化若しくは精製のために、大量のアミラーゼを産生するため、宿主細胞として特定の細菌又は真菌を使用した場合に、細胞内発現は有利であり得る。培地中へのアミラーゼの細胞外分泌を用いて、単離されたアミラーゼを含む培養細胞材料を作製することもできる。
【0067】
発現ベクターは、通常、クローニングベクターの成分、例えば、選択宿主生物中でのベクターの自己複製を許容するエレメント、及び選択目的のための表現型により検出可能な1種以上のマーカーなどを含む。発現ベクターは、通常、制御ヌクレオチド配列、例えば、プロモーター、オペレーター、リボソーム結合部位、翻訳開始シグナル及び任意に、リプレッサー遺伝子又は1種若しくは複数種のアクチベーター遺伝子を含む。さらに、発現ベクターは、ペルオキシソームなどの宿主細胞オルガネラ、又は特定の細胞コンパートメントにアミラーゼを標的化することができるアミノ酸配列をコードする配列を含み得る。
かかる標的化配列としては、現令されないが、配列SKLが挙げられる。制御配列の指向下での発現のため、アミラーゼの核酸配列は、発現に関して適切な方法で制御配列に作動可能に連結されている。
【0068】
それぞれ、アミラーゼ、プロモーター、ターミネーター及び他のエレメントをコードするDNA構築物をライゲートし、且つ複製に必要な情報を含有する適切なベクター内にそれらを挿入するため、用いられる手順は当業者にはよく知られている(例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed.,Cold Spring Harbor,1989,and 3rd ed.,2001を参照されたい)。
【0069】
宿主細胞の形質転換及び培養
DNA構築物又は発現ベクターのいずれかを含む単離細胞は、アミラーゼの組み換え産生における宿主細胞として有利に使用される。この細胞は、この酵素をコードするDNA構築物で、便宜的にはこのDNA構築物を宿主の染色体に(1つ又は複数のコピー数で)組み込むことにより形質転換され得る。このDNA配列は細胞中で安定して維持され易いことから、この組込みは有利であると一般に考えられている。宿主の染色体へのDNA構築物の組込みを、従来方法に従って実施し得、例えば、相同組み換え又は非相同組み換えにより実施し得る。代替方法としては、細胞は、異なるタイプの宿主細胞と関連した上述の発現ベクターを用いて形質転換させることができる。
【0070】
適切な細菌宿主生物の例は、グラム陽性菌種、例えば枯草菌(Bacillus subtilis)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・レンタス(Bacillus lentus)、ブレビバチルス(Bacillus brevis)、ゲオバチルス(以前はバチルス(Bacillus))・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)、バチルス・アルカリフィルス(Bacillus alkalophilus)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、バチルス・ラウタス(Bacillus lautus)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)及びバチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)などのバチルス科(Bacillaceae);ストレプトマイセス・ムリナス(Streptomyces murinus)などのストレプトマイセス(Streptomyces)種;ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)などのラクトコッカス(Lactococcus)属;;ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)などのラクトバチルス属(Lactobacillus);ロイコノストック(Leuconostoc)属;ペジオコックス(Pediococcus)属;及び連鎖球菌(Streptococcus)属を含む乳酸細菌種である。その代わりとして、大腸菌(E.coli)を含む腸内細菌科(Enterobacteriaceae)又はシュードモナス(Pseudomonadaceae)に属する、グラム陰性菌種の株を宿主生物として選択することができる。
【0071】
好適な酵母宿主生物は、バイオテクノロジー関連の酵母種から選択され得、この酵母種として下記が挙げられるが、これらに限定されない:酵母種、例えば、ピキア種(Pichia sp.)、ハンゼヌラ種(Hansenula sp.)、若しくはクリベロマイセス属(Kluyveromyces)、ヤロウイニア属(Yarrowinia)、シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)種、又はサッカロマイセス属(Saccharomyces)の種、例えば、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、又はシゾサッカロマイセス属(Schizosaccharomyces)に属する種、例えば、S.ポンベ(S.pombe)種。宿主生物として、メチロトローフ酵母種であるピキア・パストリス(Pichia pastoris)の株を使用し得る。或いは、宿主生物はハンゼヌラ(Hansenula)種であり得る。糸状菌中の好適な宿主生物として、アスペルギルス属(Aspergillus)の種が挙げられ、例えば、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・ツビゲンシス(Aspergillus tubigensis)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、又はアスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)が挙げられる。或いは、宿主生物として、フサリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)等のフサリウム(Fusarium)種の株、又はリゾムコール・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)等のリゾムコール(Rhizomucor)種の株を使用し得る。他の好適な株として、サーモマイセス属(Thermomyces)及びムコール属(Mucor)の種が挙げられる。加えて、宿主として、トリコデルマ種(Trichoderma sp.)を使用し得る。アスペルギルス属(Aspergillus)宿主細胞を形質転換する適切な手順としては、例えば欧州特許第238023号明細書に記載の手順が挙げられる。真菌宿主細胞により発現されたアミラーゼはグリコシル化され得、即ちグリコシル部分を含むであろう。グリコシル化パターンは、野生型アミラーゼに存在するものと同一であり得るか、又は異なり得る。グリコシル化のタイプ及び/又は程度により、酵素的特性及び/又は生化学的特性の変化が付与され得る。
【0072】
形質転換された発現ベクターにより遺伝子欠損が治癒され得る発現宿主から遺伝子を欠失させることが有利である。既知の方法を使用して、1種又は複数種の不活性化遺伝子を有する真菌宿主細胞を得ることができる。遺伝子の不活性化は、遺伝子が機能性タンパク質の発現を防止するように、完全若しくは部分欠失によって、挿入不活性化によって又は本来の目的で遺伝子を非機能的にさせる任意の他の手段によって実施することができる。
クローニングされている、トリコデルマ種(Trichoderma sp.)又は他の糸状菌宿主からの任意の遺伝子(例えば、cbh1遺伝子、cbh2遺伝子、egl1遺伝子、及びegl2遺伝子)を欠失させ得る。遺伝子欠失を、当技術分野で既知の方法により、不活性化する所望の遺伝子のある形態をプラスミドに挿入することにより達成させ得る。
【0073】
宿主細胞中へのDNA構築物又はベクターの導入として、形質転換;電気穿孔;核マイクロインジェクション;形質導入;遺伝子導入、例えば、リポフェクション媒介及びDEAE-デキストリン媒介遺伝子導入;リン酸カルシウムDNA沈殿物とのインキュベーション;DNA被覆マイクロプロジェクティル(microprojectile)による高速衝突;並びにプロトプラスト融合等の技術が挙げられる。一般的な形質転換技術は、当技術分野において公知である。例えば、上記のSambrook et al.(2001)を参照されたい。トリコデルマ属(Trichoderma)での異種タンパク質の発現は、例えば、米国特許第6,022,725号明細書で説明されている。アスペルギルス属(Aspergillus)株の形質転換については、Cao et al.(2000)Science 9:991-1001も参照されたい。遺伝子的に安定な形質転換体を、アミラーゼをコードする核酸が宿主細胞の染色体に安定的に組み込まれる、ベクターシステムにより構築し得る。次いで、既知の技術により、形質転換体を選択して精製する。
【0074】
発現
アミラーゼを製造する方法は、この酵素の産生を促す条件下で宿主細胞を培養すること、及びこの細胞及び/又は培養培地からこの酵素を回収することを含み得る。
【0075】
細胞を培養するために使用される培地は、当該宿主細胞の増殖及びアミラーゼの発現の取得に好適な従来の任意の培地であってよい。好適な培地及び培地成分は、商業的供給業者から入手可能であるか、公開されたレシピ(例えば米国菌株保存機関(American Type Culture Collection)のカタログに記載される)に従って調製され得る。
【0076】
宿主細胞から分泌される酵素はブロス調製全体に使用することができる。本発明の方法において、組み換え微生物の使用済み全発酵ブロスの調製は、当技術分野で公知の任意の培養法を使用して達成することができ、アミラーゼが発現される。したがって、発酵は、好適な培地中で、且つ酵素の発現又は単離が可能な条件下における、振盪フラスコ培養、実験室用又は産業用発酵槽内での、小規模又は大規模発酵(連続、バッチ、流加バッチ若しくは固体発酵を含む)を含むと理解することができる。「使用済み全発酵ブロス」という用語は、本明細書では培養培地、細胞外タンパク質(例えば、酵素)及び細胞バイオマスを含む発酵材料の未分画内容物であると定義されている。「使用済み全発酵ブロス」という用語は、さらに当分野において周知の方法を使用して溶解若しくは透過化されている細胞バイオマスも含むと理解されている。
【0077】
宿主細胞から分泌される酵素は便利なことに、硫酸アンモニウムなどの塩を用いて培地のタンパク質性成分を遠心、若しくは濾過、及び沈殿させ、続いてイオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等のクロマトグラフ手順の使用によって、培地から細胞を分離することなど、既知の手順によって培地から回収され得る。
【0078】
ベクターにおけるアミラーゼをコードするポリヌクレオチドは、ベクターによってコード配列の発現を提供することができる制御配列に作動可能に連結することができ、つまりベクターは発現ベクターである。制御配列によって指示される転写のレベルを転写修飾因子に対してより応答性にするために、制御配列は、例えば更なる転写調節因子を添加することによって修飾され得る。制御配列は特に、プロモーターを含み得る。
【0079】
宿主細胞は、アミラーゼの発現を可能にするのに適した条件下で培養することができる。酵素の発現は、酵素が連続的に生成されるように構成的であってよく、又は発現を開始するためには刺激を必要とする誘導性であってよい。誘導性発現の場合には、タンパク質生成は、必要とされる場合は、例えば培養培地への誘導物質、例えばデキサメタゾン又はIPTG又はソホロースの添加によって開始することができる。ポリペプチドはまた、例えばTNT(商標)(プロメガ社(Promega))ウサギ網状赤血球系などのインビトロの無細胞系内で組み換え技術により産生することができる。
【0080】
アミラーゼを濃縮及び精製する方法
発酵、分離、及び濃縮技術は当技術分野でよく知られており、アミラーゼポリペプチド含有溶液を調製するために、従来の方法を用いることができる。
【0081】
発酵後に発酵ブロスが得られ、アミラーゼ溶液を得るために、微生物細胞及び残留発酵原料を含む様々な懸濁固体が従来型分離技術によって除去される。濾過、遠心分離、精密濾過、回転真空ドラム濾過、限外濾過、遠心分離後に行われる限外濾過、抽出又はクロマトグラフィーなどが一般に使用される。
【0082】
回収率を最適化するために、アミラーゼポリペプチド含有溶液を濃縮することが望ましい。未濃縮溶液の使用には、典型的には、濃縮又は精製酵素沈殿物を収集するためのインキュベーション時間の増加が必要である。
【0083】
酵素含有溶液は、所望の酵素レベルが得られるまで、従来型の濃縮技術を使用して濃縮される。酵素含有溶液の濃縮は、本明細書で考察した手法のいずれかによって達成し得る。濃縮及び精製の例示的な方法には、回転真空濾過及び/又は限外濾過が含まれるがそれらに限定されない。
【0084】
本発明の好ましい実施形態
本発明の態様に従って、αアミラーゼと、マルトジェニックαアミラーゼ及び/又はグルコアミラーゼとを組み合わせることによって、かかるデンプンタイプに従来から使用される温度よりも低い処理温度で、高いゲル化温度を有する副原料デンプンを効率的に液化し、糖化して、本明細書に記載の、且つ特許請求の範囲に記載の発酵性麦汁を製造することができることを発見した。したがって、内因性モルト酵素なしで、且つ(好ましくは)いわゆるインフュージョン法において事前のゲル化なしに、デンプン供給源の中でもトウモロコシグリスト、トウモロコシデンプン、コメデンプン、モロコシデンプン又はカッサバなどの副原料を処理することができる。かかる副原料デンプンの液化及び糖化には、外因的に供給された酵素組成物によってマッシュを補足することが必要である。これらのデンプン副原料は通常、高い開始ゲル化温度など、高ゲル化温度を特徴とする。意外なことに、酵素の正しい組み合わせによって、前記デンプン材料を高度にデンプン可溶化/液化及び糖化することが可能となり、上昇温度でそのプロセス中に抽出されたデンプンは徐々に、発酵性糖類及びより小さなデキストリンへと加水分解される。好ましくは、最終的なマッシュは、ヨウ素試験に対してデンプンネガティブであり、得られた麦汁において高いエキス濃度値(extract value)とも相関する。酵母発酵によってエタノールへと前記糖類を適切に転化するために、DP4+デキストリンの画分は好ましくは、可溶性糖類の合計の30%未満、又はより好ましくは可溶性糖類の合計の25%未満であるべきである。マッシングは、70℃以上の温度;好ましくは少なくとも80℃でのマッシュアウトによって仕上げられる。
【0085】
配列番号1は、ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)、GsAA1由来のαアミラーゼ変異体の成熟アミノ酸配列を示す。
【0086】
配列番号2は、ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)、GsAA2由来のマルトジェニックαアミラーゼの成熟アミノ酸配列を示す。
【0087】
配列番号3は、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)由来のグルコアミラーゼの成熟アミノ酸配列を示す。
【0088】
【0089】
本発明の態様に従って、以下の工程:a.)副原料を含むグリストを提供する工程;及びb.)αアミラーゼと、マルトジェニックαアミラーゼ及び/又はグルコアミラーゼとをグリストと接触させて、麦汁を製造する工程;を有する、100%副原料醸造のマッシング方法が示される。
【0090】
好ましくは、αアミラーゼは、配列番号1と少なくとも70%の配列同一性を有する。
より好ましくは、αアミラーゼは、配列番号1と少なくとも80%の配列同一性を有する。またより好ましくは、αアミラーゼは、配列番号1と少なくとも90%の配列同一性を有する。より好ましい態様において、αアミラーゼは、配列番号1と少なくとも95%の配列同一性を有する。最も好ましい態様において、αアミラーゼは、配列番号1による配列を有する酵素である。
【0091】
好ましくは、マルトジェニックαアミラーゼは、配列番号2と少なくとも70%の配列同一性を有する。より好ましくは、マルトジェニックαアミラーゼは、配列番号2と少なくとも80%の配列同一性を有する。またより好ましくは、マルトジェニックαアミラーゼは、配列番号2と少なくとも90%の配列同一性を有する。より好ましい態様において、マルトジェニックαアミラーゼは、配列番号2と少なくとも95%の配列同一性を有する。最も好ましい態様において、マルトジェニックαアミラーゼは、配列番号2による配列を有する酵素である。
【0092】
好ましくは、グルコアミラーゼは、配列番号3と少なくとも70%の配列同一性を有する。より好ましくは、グルコアミラーゼは、配列番号3と少なくとも80%の配列同一性を有する。またより好ましくは、グルコアミラーゼは、配列番号3と少なくとも90%の配列同一性を有する。より好ましい態様において、グルコアミラーゼは、配列番号3と少なくとも95%の配列同一性を有する。最も好ましい態様において、グルコアミラーゼは、配列番号3による配列を有する酵素である。
【0093】
本発明の好ましい態様において、αアミラーゼ及びマルトジェニックαアミラーゼとグリストを接触させる。好ましくは、αアミラーゼは、配列番号1と少なくとも70%の配列同一性を有し、且つマルトジェニックαアミラーゼは、配列番号2と少なくとも70%の配列同一性を有する。より好ましくは、αアミラーゼは、配列番号1と少なくとも80%の配列同一性を有し、且つマルトジェニックαアミラーゼは、配列番号2と少なくとも80%の配列同一性を有する。またより好ましくは、αアミラーゼは、配列番号1と少なくとも90%の配列同一性を有し、且つマルトジェニックαアミラーゼは、配列番号2と少なくとも90%の配列同一性を有する。より好ましい態様において、αアミラーゼは、配列番号1と少なくとも95%の配列同一性を有し、且つマルトジェニックαアミラーゼは、配列番号2と少なくとも95%の配列同一性を有する。最も好ましい態様において、αアミラーゼは、配列番号1による配列を有する酵素であり、且つマルトジェニックαアミラーゼは、配列番号2による配列を有する酵素である。
【0094】
本発明の他の好ましい実施形態において、αアミラーゼ及びグルコアミラーゼとグリストを接触させる。好ましくは、αアミラーゼは、配列番号1と少なくとも70%の配列同一性を有し、且つグルコアミラーゼは、配列番号3と少なくとも70%の配列同一性を有する。より好ましくは、αアミラーゼは、配列番号1と少なくとも80%の配列同一性を有し、且つグルコアミラーゼは、配列番号3と少なくとも80%の配列同一性を有する。
またより好ましくは、αアミラーゼは、配列番号1と少なくとも90%の配列同一性を有し、且つグルコアミラーゼは、配列番号3と少なくとも90%の配列同一性を有する。より好ましい態様において、αアミラーゼは、配列番号1と少なくとも95%の配列同一性を有し、且つグルコアミラーゼは、配列番号3と少なくとも95%の配列同一性を有する。最も好ましい態様において、αアミラーゼは、配列番号1による配列を有する酵素であり、且つグルコアミラーゼは、配列番号3による配列を有する酵素である。
【0095】
好ましくは、グリストは、トウモロコシ、コメ、モロコシ及びカッサバ、又はその混合物からなる群から選択される。より好ましくは、グリストは少なくとも10%のモロコシである。より好ましくは、グリストは少なくとも25%のモロコシである。またより好ましくは、グリストは少なくとも50%のモロコシである。より好ましい実施形態において、グリストは少なくとも75%のモロコシである。最も好ましい実施形態において、グリストは100%モロコシである。
【0096】
他の好ましい実施形態において、グリストは少なくとも10%のトウモロコシである。
より好ましくは、グリストは少なくとも25%のトウモロコシである。またより好ましくは、グリストは少なくとも50%のトウモロコシである。より好ましい実施形態において、グリストは少なくとも75%のトウモロコシである。最も好ましい実施形態において、グリストは100%トウモロコシである。
【0097】
他の好ましい実施形態において、グリストは少なくとも10%のコメである。より好ましくは、グリストは少なくとも25%のコメである。またより好ましくは、グリストは少なくとも50%のコメである。より好ましい実施形態において、グリストは少なくとも75%のコメである。最も好ましい実施形態において、グリストは100%コメである。
【0098】
他の好ましい実施形態において、グリストは少なくとも10%のカッサバである。より好ましくは、グリストは少なくとも25%のカッサバである。またより好ましくは、グリストは少なくとも50%のカッサバである。より好ましい実施形態において、グリストは少なくとも75%のカッサバである。最も好ましい実施形態において、グリストは100%カッサバである。
【0099】
好ましくは、麦汁はビールに転化される。
【0100】
本発明の一態様において、醸造におけるαアミラーゼと、マルトジェニックαアミラーゼ及び/又はグルコアミラーゼとの使用が提供される。
【0101】
本発明の他の態様において、αアミラーゼ及びマルトジェニックαアミラーゼを有する酵素組成物が提供される。
【0102】
本発明のさらに他の態様において、αアミラーゼ及びグルコアミラーゼを有する酵素組成物が提供される。
【0103】
以下の実施例は、請求の範囲に記載の開示を説明するために提示されたものであって、その開示を限定するものではない。
[実施例]
【実施例0104】
-酵素
GsAA1:配列番号1に示すアミノ酸配列を有する、ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)由来のαアミラーゼ変異体
GsAA2:配列番号2に示すアミノ酸配列を有する、ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)由来のマルトジェニックαアミラーゼ
TrGA:配列番号3に示すアミノ酸配列を有する、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)由来のグルコアミラーゼ
【0105】
αアミラーゼの一例として、デュポン(DuPont)社からのAMYLEX(登録商標)5T(A 5T)を使用した。マルトジェニックαアミラーゼの一例として、デュポン社からのDIAZYME(登録商標)MA(D MA)を使用した。グルコ-アミラーゼの一例として、デュポン社からのDIAZYME(登録商標)TGA(D TGA)を使用した。