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  • 特開-水中観測装置 図1
  • 特開-水中観測装置 図2
  • 特開-水中観測装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114945
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】水中観測装置
(51)【国際特許分類】
   G01L 19/00 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
G01L19/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024105899
(22)【出願日】2024-07-01
(62)【分割の表示】P 2020142546の分割
【原出願日】2020-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 美菜子
(72)【発明者】
【氏名】谷 将介
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 和孝
(72)【発明者】
【氏名】長沢 敏秀
(57)【要約】
【課題】弾性体の引き込みによる過度な変形を解決する水中観測装置を提供すること。
【解決手段】本開示に係る水中観測装置1は、両端が開口した筐体10と、筐体10内に配置され、水中の環境情報を取得可能なセンサ11と、筐体10の第1の開口面を閉塞する閉塞板21と、筐体10の第2の開口面を閉塞するとともに水中の圧力に応じて変形可能な弾性体31と、筐体10内に配置され、弾性体31の内面形状に沿った形状を有する剛性の支持部材41と、筐体10内に充填されたオイル51と、を備え、弾性体31の内面31aと、内面31aに対向する支持部材41の面41aとが互いに離間した状態で配設されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端が開口した筐体と、
前記筐体内に配置され、水中の環境情報を取得可能なセンサと、
前記筐体の第1の開口面を閉塞する閉塞板と、
前記筐体の第2の開口面を閉塞するとともに前記水中の圧力に応じて変形可能な弾性体と、
前記筐体内に配置され、前記弾性体の内面形状に沿った形状を有する剛性の支持部材と、
前記筐体内に充填された液体と、を備え、
前記弾性体の内面と、当該内面に対向する前記支持部材の面とが互いに離間した状態で配設されている、
水中観測装置。
【請求項2】
前記弾性体の内面と、当該内面に対向する前記支持部材の面とで形成される空間の体積をV1とし、
前記水中観測装置を前記水中に配置する前の前記液体の体積から、水圧によって収縮した前記液体の体積を減算して求められる差の体積をV2としたとき、
V1≧V2の関係を満たす、請求項1に記載の水中観測装置。
【請求項3】
前記支持部材は、中密若しくは中空の三次元構造体、又は、板状部材によって構成される、請求項1又は2に記載の水中観測装置。
【請求項4】
前記支持部材は、前記弾性体の内面と、当該内面に対向する前記支持部材の面とで形成される空間と前記筐体内とをつなぐ少なくとも1つの貫通孔を備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の水中観測装置。
【請求項5】
前記センサは、圧力センサ、温度センサ、又は超音波センサである、請求項1~4のいずれか一項に記載の水中観測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水中観測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水中観測装置は、海底や湖底等の水中における圧力の測定や、その微妙な圧力変化を測定することによって、水圧データや音響データなどの収集を行う装置である。水中観測装置が取得したこれらのデータは、津波の予測などの各種用途に使用されている。
【0003】
このような水中観測装置は、内臓の電子部品、例えばセンサ等の電気的絶縁性を向上させるためにオイルが注入されている。特許文献1には、筐体の両端部が開口し、開口部の一端にオイル注入側板、他端に端部封止弾性体を備える水中観測装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-129516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した水中観測装置においては、オイルを注入するために筐体内を真空引きする際に、筐体の一方の開口面に配設された弾性体が筐体内部に引き込まれ、弾性体に過度な変形が生じるという問題点があった。
【0006】
本開示の目的は、上述した課題を鑑み、弾性体の筐体内への引き込みによる過度な変形を解決する水中観測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る水中観測装置は、
両端が開口した筐体と、
前記筐体内に配置され、水中の環境情報を取得可能なセンサと、
前記筐体の第1の開口面を閉塞する閉塞板と、
前記筐体の第2の開口面を閉塞するとともに前記水中の圧力に応じて変形可能な弾性体と、
前記筐体内に配置され、前記弾性体の内面形状に沿った形状を有する剛性の支持部材と、
前記筐体内に充填されたオイルと、を備え、
前記弾性体の内面と、当該内面に対向する前記支持部材の面とが互いに離間した状態で配設されている。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、弾性体の筐体内への引き込みによる過度な変形を解決する水中観測装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態に水中観測装置を示す側面断面図である。
図2】実施の形態に水中観測装置を示す側面断面図である。
図3】実施の形態に係る水中観測装置にオイルを注入する様子を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施の形態>
以下、図面を参照して本開示の実施の形態について説明する。
なお、図に示した右手系xyz座標は、構成要素の位置関係を説明するための便宜的なものである。特に言及のない限り、z軸プラス向きが鉛直上向きである。また、図面中の符号について、同じ構成を複数備えるものについては、一部符号を省略している。
【0011】
図1は、本実施の形態に係る水中観測装置を示す側面断面図である。図1に示す水中観測装置1は、筐体10、センサ11、閉塞板21、弾性体31、支持部材41を備える。以下、筐体10、閉塞板21、弾性体31及び支持部材41によって囲まれた空間を、筐体10内と呼ぶ。
【0012】
筐体10は、両端が開口している。センサ11は、水中の環境情報を取得可能であり、筐体10内に配置されている。閉塞板21は、筐体10の第1の開口面を閉塞する。弾性体31は、筐体10の第2の開口面を閉塞するとともに水中の圧力に応じて変形可能である。支持部材41は剛性であり、筐体10内に配置され、弾性体31の内面形状に沿った形状を有する。筐体10内には、オイル51が充填されている。すなわち、センサ11は、オイル51中に存在する状態である。図1に示すように、弾性体31の内面31aと、内面31aに対向する支持部材41の面41aとが互いに離間した状態で配設されている。
【0013】
以下、図2を参照し、図1の各構成が備える部材の詳細について説明する。
図2は、本実施の形態に係る水中観測装置を示す側面断面図である。図2に示すように、筐体10はx軸方向に延在しており、両端面(x軸正側のyz平面、x軸負側のyz平面)が開口している。筐体10の形状は、例えば円筒状であってもよく、角筒状であってもよく、断面視が多角形状の筒であってもよい。筐体10は剛体である。筐体10は、水中で耐食性、防食性を有する材料で形成してもよいし、水と接触する外表面に腐食防止剤などを塗布したものを用いてもよい。筐体10のx軸負側の第1の開口面は剛体の閉塞板21によって閉塞されており、筐体10のx軸正側の第2の開口面は弾性体31によって閉塞されている。
【0014】
図2に示すように、筐体10内には、水中の環境情報を取得可能なセンサ11が配置されている。センサ11としては、例えば、圧力センサ、温度センサ、又は超音波センサなどを使用することができる。圧力センサは、圧力とともに温度を取得可能なセンサであってもよい。
【0015】
まず、筐体10のx軸負側について説明する。
図2に示すように、閉塞板21は、筐体10のx軸負側の第1の開口面(yz平面)を閉塞する部材である。閉塞板21は、平板状であって、筐体10に嵌合可能な凸部21a(図2の破線部よりx軸正側)を備える。筐体10と閉塞板21とは、Oリング21bを介して嵌合することができる。Oリング21bは、筐体10と閉塞板21との気密性を高めることができる部材である。すなわち、Oリング21bは、筐体10内と外部空間との連通を遮断可能な部材である。
【0016】
閉塞板21は、上述のセンサ11に関連する部材として、シャフト12、絶縁リング13、センサ側端子14、信号線15、筐体側端子16及び信号取出端子17を備える。閉塞板21が備える他の構成は後述する。
【0017】
シャフト12及び絶縁リング13は、センサ11を支持する部材である。図2に示すように、シャフト12は、閉塞板21のx軸正側のyz平面に取り付けられており、x軸方向に延在している。絶縁リング13は、シャフト12のx軸正側の先端に取り付けられている。センサ11は、絶縁リング13を介してシャフト12に固定される。
【0018】
センサ側端子14、信号線15、筐体側端子16及び信号取出端子17は、センサ11が取得した検出信号を水中観測装置1の外部に出力するための部材である。図2に示すように、センサ側端子14、信号線15、筐体側端子16及び信号取出端子17は、例えば、閉塞板21の中央部に2個ずつ配置することができる。センサ11が取得した検出信号は、センサ側端子14、信号線15及び筐体側端子16を介して、水中観測装置1の外部に出力される。筐体側端子16は、閉塞板21に取り付けられた信号取出端子17によって外部に引き出される。
【0019】
本実施の形態では、一例としてシャフト12を2本、絶縁リング13を2個示しているが、各本数および個数はセンサ11のサイズ等に応じて適宜変更可能である。また、センサ11を筐体10内に支持可能であれば、支持機構としてシャフト12以外の他の構成を用いてもよい。また、センサ側端子14、信号線15、筐体側端子16及び信号取出端子17は、センサ11が取得した環境情報を外部へ出力可能な位置に配置すればよい。例えば、センサ側端子14、信号線15、筐体側端子16及び信号取出端子17は、筐体10に対向するセンサ11の表面に設けてもよい。
【0020】
閉塞板21はさらに、図2に示すように、エアー排気孔22、オイル注入孔23、気密部材24、Oリング24a、及び固定部材25a、25bを備える。
【0021】
エアー排気孔22及びオイル注入孔23は、閉塞板21に配設されたx軸方向に延在する貫通孔である。エアー排気孔22は、筐体10内からエアーを排気するための孔である。すなわち、エアー排気孔22は、筐体10内を真空引きするための孔である。オイル注入孔23は、筐体10内にオイル51を注入するための孔である。エアー排気孔22及びオイル注入孔23を用いた筐体10内のエアーの排気方法および筐体10内へのオイル51の注入方法は、図3を用いて後述する。
【0022】
気密部材24は、エアー排気孔22及びオイル注入孔23を密閉可能な栓である。気密部材24は、エアー排気孔22及びオイル注入孔23にねじ込み又は圧入することができる。気密部材24は、金属などの剛体で構成されたネジやボルトであってもよいし、ゴムなどの弾性体で形成されたネジやボルトであってもよい。弾性体で形成された気密部材24を用いる場合は、下記のOリング24aは用いなくてもよい。図2に示すように、気密部材24がネジやボルトなどの場合、当該気密部材24の頭部が閉塞板21のx軸負側に形成された凹部に嵌まるようにねじ込み又は圧入する。なお、閉塞板21のx軸負側に凹部を形成せずに、気密部材24の頭部が閉塞板21のx軸負側に突出するように構成してもよい。
【0023】
Oリング24aは、気密部材24がエアー排気孔22及びオイル注入孔23を閉塞する際に、気密性をより高めることができる部材である。Oリング24aは、環状の部材である。Oリング24aとして、例えばゴムなどで形成された弾性体のものを用いることができる。図2に示すように、Oリング24aが備える径は、エアー排気孔22及びオイル注入孔23より大きい径であって、気密部材24の頭部の径より小さい。このような径を有するOリング24aは、筐体10内と外部空間との連通を遮断し、オイル51が充填された筐体10内を密閉することができる。
【0024】
固定部材25a、25bは、筐体10と閉塞板21とをOリング21bを介して密着させた状態で固定可能な部材である。固定部材25a、25bは、例えば、ネジやボルトなどである。ボルトを用いる場合、ワッシャを組み合わせて使用してもよい。
【0025】
続いて、筐体10のx軸正側について説明する。
図2に示すように、弾性体31は、筐体10のx軸正側の第2の開口面(yz平面)を閉塞する部材である。弾性体31は、水中の圧力に応じて変形可能な弾性体である。弾性体31は、例えばシリコーンゴムを用いて形成することができる。図2に示すように、弾性体31は、断面視ハット状とすることができる。弾性体31の外縁部32は、x軸正側及びx軸負側に延在する凸形状を有している。リング44は、弾性体31の外縁部32を、後述する支持部材41の端部43に固定する。リング44は、外縁部32のx軸正側の凸形状を固定可能な形状を有している。リング44は、外縁部32を全周にわたって支持部材41の端部43に固定することができる。リング44と支持部材41の端部43の接触面は弾性体31によって密閉されている。また、支持部材41の端部43と筐体10との接触面もОリング等によって密閉されている(不図示)。
【0026】
図2に示すように、支持部材41は、筐体10内のx軸正側に配置されている。支持部材41は、図2では一例として中密の支持部材41を示しているが、これに限定されない。他に例えば、中空の三次元構造体、又は、板状部材によって形成することができる。支持部材41は剛体であり、圧力が加わった際に変形されにくい金属を用いて形成することができる。より具体的には、例えば、ステンレス鋼などを用いて形成することができる。
【0027】
図2に示すように、支持部材41は、弾性体31の内面31aと当該内面31aに対向する支持部材41の面41aとで形成される空間Sと、筐体10内とをつなぐ、少なくとも1つの貫通孔42を備える。貫通孔42は、オイル51が通過できるように設けられた孔である。貫通孔42は、支持部材41が水圧によって変形しない程度の強度を維持できるように設ける。
【0028】
ここで、図2に示す弾性体31の内面31aと、当該内面31aに対向する支持部材41の面41aとで形成される空間Sの体積をV1とする。また、水中観測装置1を水中に配置する前のオイル51の体積から、水圧によって収縮したオイル51の体積を減算して求められる差の体積をV2とする。このとき、V1≧V2の関係を満たすように、弾性体31及び支持部材41の形状を定める。
上記によって、弾性体31と支持部材41が接触しないメリットがある。
【0029】
図2に示すように、支持部材41の端部43は、筐体10に密着して固定されている。端部43の筐体10への固定方法は特に限定されず、任意の方法で固定することができる。例えば、ねじやボルト等の固定部材で固定してもよいし、接着剤で固定してもよいし、固定部材と接着剤とを併用して固定してもよい。端部43は、弾性体31の外縁部32に対応する形状を備える。例えば、図2に示すように、端部43は、外縁部32の凸形状に対応する凹形状を備えることができる。なお、支持部材41の端部43のうち、水に接触する側の面については、腐食防止剤などを塗布してもよい。
【0030】
なお、支持部材41を中空の三次元構造体若しくは板状部材によって形成する場合は、面41aが弾性体31の内面31a形状に沿った形状かつ水圧によって変形しない程度の強度を有するものを用いる。支持部材41を板状部材によって形成する場合、例えば、弾性体31と同様の形状を有してもよい。また、筐体10内に配置するセンサ11が圧力センサの場合、圧力センサの受圧面側が弾性体31及び支持部材41側に向くように配置すると、他の面側に向くように配置した場合と比べ、より正確な受圧が可能である。
【0031】
また、貫通孔42は、流体であるオイル51が通過可能であればよい。したがって、貫通孔42の大きさおよび形状は、支持部材41の強度を維持可能な範囲内で任意に設定可能である。例えば、貫通孔42の形状は、断面視で円形、楕円形、矩形、多角形とすることができる。また、図2では、面41cから面41aへとx軸方向に延在する貫通孔42を1つ示しているが、これに限定されない。例えば、面41cから任意の方向に延在し、支持部材41の内部で任意の方向に湾曲する形状であってもよい。
【0032】
上記貫通孔を複数設ける場合、各貫通孔の配置が等間隔となるように配置してもよいし、任意の間隔で配置してもよい。各貫通孔の配置を等間隔とした場合は、筐体10内にオイル51を注入し充填する際に、空間Sに対してオイル51をより均等に充填することができる。
【0033】
続いて、図3を用いて、本実施の形態に係る水中観測装置にオイルを注入する流れについて説明する。図3は、本実施の形態に係る水中観測装置にオイルを注入する様子を示す側面断面図である。図3では、スペーサ27及びパイプ28、29以外の構成は、図2と同様の構成であり、同じ構成は同じ符号で示す。なお、図3に示すように、水中観測装置1にオイル51を注入する際には、図2を用いて上述した気密部材24、固定部材25a、25b及びOリング24aは備えていない。
【0034】
図3に示すように、オイル51を注入している間、筐体10と閉塞板21との間にスペーサ27を挟んだ状態で、筐体10と閉塞板21とを一時的に固定することができる。オイル51の注入時に筐体10と閉塞板21との間にスペーサ27を挟むことにより、筐体10内の空間の体積を拡大することができる。すなわち、スペーサ27を設けることにより、スペーサ27を設けなかった場合と比べて、より多くのオイル51を筐体10内の空間へ注入することができる。なお、筐体10と閉塞板21とを一時的に固定する固定部材は、図2を用いて上述した固定部材25a、25bを用いることができる(図3では不図示)。
【0035】
スペーサ27は、例えば、C型部材を複数組み合わせた環状体を用いることができる。スペーサ27を構成する各C型部材同士は強固に連結されていない。したがって、オイル51を筐体10内に充填後、筐体10と閉塞板21とを固定する際に、スペーサ27を引き抜くことができる。スペーサ27として、他に例えば、圧縮可能な環状の弾性部材で形成してもよい。
【0036】
筐体10内へのオイル51の注入は、オイル注入装置(不図示)を用いて行うことができる。オイル注入装置は、筐体10内を真空引きするためのポンプバルブ及びエアー吸引ポンプと、筐体10内へオイル51を注入するためのオイルバルブ及びオイル貯蔵部を備える(不図示)。エアー吸引ポンプは、筐体10内のエアーを吸引する、すなわち真空引きを行うポンプである。オイル貯蔵部は、オイル51を貯蔵している。エアー吸引後に筐体10内の空間が負圧となることを利用して、オイル貯蔵部から筐体10内へとオイル51を送り出すことができる。
【0037】
パイプ28及びパイプ29は、それぞれ閉塞板21及びオイル注入装置に接続されている。より具体的には、閉塞板21のエアー排気孔22に連結されているパイプ28には、ポンプバルブを介してエアー吸引ポンプが接続されている。また、閉塞板21のオイル注入孔23に連結されているパイプ29には、オイルバルブを介してオイル貯蔵部が接続されている。
【0038】
続いて、オイル注入装置が備えるエアー吸引ポンプを用いて、筐体10内のエアーを吸引し、筐体10内へオイル51を注入する作業手順を説明する。
【0039】
まず、作業者は、筐体10と閉塞板21との間にスペーサ27を挟み、筐体10と閉塞板21とを固定部材を用いて固定する。次に、ポンプバルブを介してエアー吸引ポンプに接続されたパイプ28を、エアー排気孔22に連結する。また、オイルバルブを介してオイル貯蔵部に接続されたパイプ29を、オイル注入孔23に連結する。この時点では、ポンプバルブ及びオイルバルブは閉じられた状態である。
【0040】
次に、作業者は、エアー吸引ポンプを作動させ、ポンプバルブを開くことにより、筐体10内の空間を真空引きする。筐体10内のエアーを吸引すると、弾性体31がエアー引き込み方向(x軸負方向)に引き込まれるが、剛体である支持部材41によって当該引き込みが抑制される。続いてオイル51の注入を行う。オイル51の注入は、水中観測装置1を縦置き状態にして行ってもよいし、横置き状態にして行ってもよい。縦置き状態とは、弾性体31側がz軸負側に、閉塞板21側がz軸正側になるように配置することを意味する。縦置き状態でオイル51を注入した場合、筐体10内にオイル51を充填しやすく、筐体10内全体にわたってより均等に充填することができる。
【0041】
なお、図3に示す状態で、弾性体31及び支持部材41はx軸正方向に突出している。したがって、水中観測装置1を縦置きにする場合、当該突出部を収容可能な凹部形状を有する台などに配置して、オイル51の注入を行うことができる。また、エアー吸引の際も、水中観測装置1を縦置き状態にして行ってもよい。
【0042】
筐体10内の空間が負圧に(真空状態に)なったところで、ポンプバルブを閉じ、オイルバルブを開く。これにより、負圧となっている筐体10内の空間に、オイル貯蔵部からオイル51が注入される。エアー吸引とオイル注入は、一回の工程で行ってもよいし、エアー吸引とオイル注入の工程を複数回繰り返して行ってもよい。エアー吸引とオイル注入の工程を複数回行う場合、2回目以降のエアー吸引を行うことによって、先の工程で筐体10内に注入されたオイル51の真空脱泡も行うことができる。すなわち、オイル51に含まれ得る気体を脱泡することができる。
【0043】
筐体10内の空間にオイル51が充填されたか否かを判断するには、オイル貯蔵部に貯蔵されているオイル51の量の変化を確認することによって判断できる。または、エアー排気孔22若しくはオイル注入孔23からオイル51が溢れ出た場合、筐体10内の空間にオイル51が充填されたと判断することができる。
【0044】
筐体10内の空間にオイル51が充填されたと判断した場合、作業者はポンプバルブ及びオイルバルブを共に閉じ、エアー排気孔22からパイプ28を取り外し、オイル注入孔23からパイプ29を取り外す。
【0045】
その後、作業者は、エアー排気孔22及びオイル注入孔23に気密部材24をねじ込みまたは圧入して止栓する(図2参照)。
【0046】
ただし、この時点では、筐体10内の空間には、エアーが残存している可能性がある。そこで、まず、気密部材24を装着した後、スペーサ27を取り外す。スペーサ27としてC型部材を複数組み合わせたものを用いた場合、各C型部材は強固に固定されていないため、容易に取り外すことができる。ここで、筐体10内の空間の気密性は、Oリング21bによって達成されている。したがって、スペーサ27を外した場合であっても、筐体10内の空間の気密性は損なわれない。
【0047】
続いて作業者は、スペーサ27を取り外した状態で、固定部材25a、25bを用いて筐体10と閉塞板21とを固定する(図2参照)。固定する際に、閉塞板21を筐体10の方向(x軸正方向)へと押し込みつつ、固定を行う。閉塞板21を押し込みつつ固定を行うと、筐体10内の空間の体積が圧縮され、筐体10内の圧力が上昇する。これにより、筐体10内の空間に残存するエアーの体積を縮小させることができる。また、オイルが多く注入されたことで弾性体31が膨らみ支持部材41との空間Sと体積V1が大きくなりV1≧V2の関係を満たしやすくなる。
【0048】
なお、スペーサ27として圧縮可能な弾性体を用いた場合は、スペーサ27を押し潰すようにして、固定部材によってx軸正方向へと押し込みつつ、固定することができる。
【0049】
特許文献1に記載の水中観測装置では、オイルを注入するために筐体内を真空引きする際に、筐体の一方の開口面に配設された弾性体が筐体内部に引き込まれ、弾性体に過度な変形が生じるという問題点があった。
【0050】
これに対し、本実施の形態に係る水中観測装置は、筐体内に支持部材を備える。支持部材は剛性であり、弾性体の内面形状に沿った形状を有する。筐体内に支持部材を設けることで、弾性体が支持部材にあたり、過度な変形を防ぐことができる。
【0051】
具体的には、水中観測装置を水中で使用する際に、水圧強度に対して弾性体の変形量を小さくすることができる。また、筐体内を真空引きしつつオイルを筐体内に注入する際に、弾性体の筐体内への引き込みを防止するための治具を装置外に用いることなく、弾性体の過度な変形を防止することができる。したがって、弾性体への負荷を低減することができる。
【0052】
さらに、筐体内に支持部材を設けることにより、支持部材の体積によって筐体内のオイルが充填される空間の体積を減少させることができる。したがって、充填するオイル量を削減することも可能である。
【0053】
なお、本開示は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 水中観測装置
10 筐体
11 センサ
12 シャフト
13 絶縁リング
14 センサ側端子
15 信号線
16 筐体側端子
17 信号取出端子
21 閉塞板
21a 凸部
21b Oリング
22 エアー排気孔
23 オイル注入孔
24 気密部材
24a Oリング
25a、25b 固定部材
27 スペーサ
28、29 パイプ
31 弾性体
31a 内面
32 外縁部
41 支持部材
41a 面
41c 面
42 貫通孔
43 端部
44 リング
51 オイル
S 空間
図1
図2
図3