(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114973
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】抗BCMA CAR T細胞の製造
(51)【国際特許分類】
C12N 5/10 20060101AFI20240816BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240816BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240816BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20240816BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20240816BHJP
C07K 14/725 20060101ALN20240816BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240816BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240816BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20240816BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
A61K35/17
A61P35/00
C12N5/10
C07K16/28
C07K19/00
C07K14/725
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/62 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024106283
(22)【出願日】2024-07-01
(62)【分割の表示】P 2021560212の分割
【原出願日】2020-04-02
(31)【優先権主張番号】62/830,004
(32)【優先日】2019-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/944,485
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521438515
【氏名又は名称】2セブンティ バイオ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ケビン フリードマン
(72)【発明者】
【氏名】エリック スコット アロンゾ
(57)【要約】
【課題】抗BCMA CAR T細胞の製造の提供。
【解決手段】本発明は、抗BCMA CAR T細胞治療薬の製造のための改善された抗BCMA CAR T細胞組成物および方法を提供する。より詳細には、本発明は、抗BCMA CAR T細胞を製造するための改善された方法に関し、より強力で持続性があり、有効な養子T細胞免疫療法をもたらす。特定の実施形態では、細胞は、多発性骨髄腫またはリンパ腫を有する対象から製造された。様々な実施形態では、少なくとも10%のCD27
+抗BCMA CAR T細胞を含む、抗B細胞成熟抗原(BCMA)キメラ抗原受容体(CAR)T細胞のcGMP製造集団が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119(e)の定めのもと、2019年12月6日に出願された米国仮特許出願第62/944,485号明細書、および2019年4月5日に出願された米国仮特許出願第62/830,004号明細書の利益を主張するものであり、当該出願は、その全体で参照により本明細書に援用される。
【0002】
配列表に関する声明
本出願に関する配列表は紙媒体の代わりにテキストフォーマットで提出され、参照により本明細書に援用される。配列表を含有するテキストファイルの名称は、BLBD_118_02WO_ST25.txtである。テキストファイルは7KBであり、2020年3月27日に作成され、本明細書の出願と同時にEFS-Webを介して電子的に提出される。
【0003】
本発明は、抗BCMA CAR T細胞の製造のための改善された抗BCMA CAR T細胞組成物および方法に関する。より詳細には、本発明は、抗BCMA CAR T細胞を製造するための改善された方法に関し、より強力で持続性があり、有効な養子T細胞免疫療法をもたらす。
【0004】
関連分野に関する記載
養子免疫療法は、Tリンパ球を対象に移し、疾患に対する療法を提供するものである。養子免疫療法は、癌、感染症、自己免疫疾患、炎症性疾患、および免疫不全を含む幅広い疾患を治療するための可能性をまだ実現していない。しかしながら、全ての養子免疫療法戦略が、臨床的に有効な治療用量のT細胞を生成するために、T細胞活性化および増殖工程を必要とするわけではないが、多くが必要としている。操作されたT細胞を含むT細胞の治療用量を生成するための現在の技術は、煩雑なT細胞の製造プロセスによって制限されている。例えば、T細胞増殖は、多くの場合、治療的に関連するT細胞数を達成するために、労働集約的で高価なクローニング、および/または複数回の活性化/増殖を必要とする。さらに、既存のT細胞活性化/増殖方法は、通常、実質的なT細胞分化と連結され、通常、短命生存および持続性の欠如、ならびに移行したT細胞のインビボ増殖の欠如を含む短命効果をもたらす。より最近の製造方法は、より強力かつ持続的なT細胞をもたらしたが、これらの細胞は依然としてエフェクター免疫細胞機能を使い果たし、喪失する傾向がある。
【0005】
T細胞製造およびより強力で持続的なT細胞療法の改善に対するアンメットニーズは依然として存在する。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、概して、改善された能力および持続性を有する養子T細胞免疫療法、ならびにそれを作製する方法を提供する。
【0007】
様々な実施形態では、少なくとも10%のCD27+抗BCMA CAR T細胞を含む、抗B細胞成熟抗原(BCMA)キメラ抗原受容体(CAR)T細胞のcGMP製造集団が提供される。
【0008】
特定の実施形態では、当該集団は、少なくとも15%のCD27+抗BCMA CAR
T細胞を含む。
【0009】
特定の実施形態では、当該集団は、少なくとも20%のCD27+抗BCMA CAR
T細胞を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、当該集団は、少なくとも25%のCD27+抗BCMA CAR T細胞を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、当該集団は、少なくとも30%のCD27+抗BCMA CAR T細胞を含む。
【0012】
特定の実施形態では、CD27+抗BCMA CAR T細胞は、LEF1+および/またはTCF1+抗BCMA CAR T細胞である。
【0013】
追加的実施形態では、CD27+抗BCMA CAR T細胞は、LEF1+およびTCF1+抗BCMA CAR T細胞である。様々な実施形態では、抗BCMA CAR
T細胞のcGMP製造集団は、少なくとも10%のLEF1+および/またはCCR7+およびTCF1+抗BCMA CAR T細胞を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、集団は、少なくとも15%のLEF1+および/またはCCR7+およびTCF1+抗BCMA CAR T細胞を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、集団は、少なくとも20%のLEF1+および/またはCCR7+およびTCF1+抗BCMA CAR T細胞を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、集団は、少なくとも25%のLEF1+および/またはCCR7+およびTCF1+抗BCMA CAR T細胞を含む。
【0017】
さらなる実施形態では、集団は、少なくとも30%のLEF1+および/またはCCR7+およびTCF1+抗BCMA CAR T細胞を含む。
【0018】
追加的実施形態では、LEF1+および/またはCCR7+および/またはTCF1+抗BCMA CAR T細胞は、CD27+抗BCMA CAR T細胞である。
【0019】
いくつかの実施形態では、LEF1+および/またはCCR7+および/またはTCF1+抗BCMA CAR T細胞は、LEF1+CCR7+TCF1+CD27+抗BCMA CAR T細胞である。
【0020】
いくつかの実施形態では、CD27+および/またはLEF1+および/またはCCR7+およびTCF1+抗BCMA CAR T細胞は、CD4+抗BCMA CAR T細胞を含む。
【0021】
特定の実施形態では、CD27+および/またはLEF1+および/またはCCR7+およびTCF1+抗BCMA CAR T細胞は、CD8+抗BCMA CAR T細胞を含む。
【0022】
特定の実施形態では、CD27+および/またはLEF1+および/またはCCR7+およびTCF1+抗BCMA CAR T細胞は、CD4+およびCD8+抗BCMA CAR T細胞を含む。
【0023】
特定の実施形態では、細胞は、多発性骨髄腫またはリンパ腫を有する対象から製造された。
【0024】
特定の実施形態では、細胞は、再発性/難治性の多発性骨髄腫を有する対象から製造された。
【0025】
いくつかの実施形態では、細胞は、抗BCMA CARをコードするポリヌクレオチドを含むレンチウイルスを含む。
【0026】
特定の実施形態では、抗BCMA CARは、配列番号 1に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0027】
さらなる実施形態では、抗BCMA CARは、配列番号 2に記載されるポリヌクレオチド配列によってコードされる。
【0028】
特定の実施形態では、細胞は自己である。
【0029】
特定の実施形態では、細胞は凍結保存される。
【0030】
特定の実施形態では、細胞は、多発性骨髄腫またはリンパ腫を有する対象への投与のために製剤化される。
【0031】
いくつかの実施形態では、約5~約7日間、ホスファチジル-イノシトール-3キナーゼ(PI3K)阻害剤とex vivoで接触されたヒト抗B細胞成熟抗原(BCMA)キメラ抗原受容体(CAR)T細胞が提供され、(i)NR4A2、LY9、LIN7A、WNT5B、BCL6、EGR1、EGR2、ATF3、CCL1、IL-1A、およびCCL5または(ii)CCL1、NR4A2、ATF3、CCL5、およびWNT5Bの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または全ての遺伝子発現は、約10日間、PI3K阻害剤とex vivoで接触した抗BCMA CAR T細胞よりも、抗BCMA CAR T細胞において少なくとも1.5倍または少なくとも2倍多い。
【0032】
特定の実施形態では、約5~約7日間、ホスファチジル-イノシトール-3キナーゼ(PI3K)阻害剤とex vivoで接触されたヒト抗B細胞成熟抗原(BCMA)キメラ抗原受容体(CAR)T細胞が提供され、(i)NQO1、CCNA1、IL17F、EMP1、SNHG19、PRR 22、ILDR2、ATAD3、NKD2およびWDR62または(ii)NKD2およびNQO1の1、2、3、4、5、6、7、8、9、または全ての遺伝子発現は、約10日間、PI3K阻害剤とex vivoで接触した抗BCMA CAR T細胞よりも、抗BCMA CAR T細胞において少なくとも1.5倍または少なくとも2倍少ない。
【0033】
さらなる実施形態では、約5~約7日間、ホスファチジル-イノシトール-3キナーゼ(PI3K)阻害剤とex vivoで接触されたヒト抗B細胞成熟抗原(BCMA)キメラ抗原受容体(CAR)T細胞が提供され、約10日間、PI3K阻害剤とex vivoで接触した抗BCMA CAR T細胞よりも、抗BCMA CAR T細胞において(i)NR4A2、LY9、LIN7A、WNT5B、BCL6、EGR1、EGR2、ATF3、CCL1、IL-1A、およびCCL5または(ii)CCL1、NR4A2、ATF3、CCL5、およびWNT5Bの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または全てのそれぞれの遺伝子発現は、少なくとも1.5または少なくとも2倍多く、(i)NQO1、CCNA1、IL17F、EMP1、SNHG19、PRR 22、ILDR2、ATAD3、NKD2およびWDR62または(ii)NKD2およびNQO1の1、2、3、4、5、6、7、8、9、または全ての遺伝子発現は、少なくとも1.5倍または少なくとも2倍少ない。
【0034】
特定の実施形態では、CD4+抗BCMA CAR T細胞は、中央メモリーT細胞(TCM)様表現型を有する。
【0035】
さらなる実施形態では、CD8+抗BCMA CAR T細胞は、幹細胞メモリーT細胞(TSCM)様表現型を有する。
【0036】
特定の実施形態では、CD4+抗BCMA CAR T細胞は、TCM様表現型を有し、CD8+抗BCMA CAR T細胞は、TSCM様表現型を有する。
【0037】
いくつかの実施形態では、細胞は、多発性骨髄腫またはリンパ腫を有する対象から製造された。
【0038】
特定の実施形態では、細胞は、再発性/難治性の多発性骨髄腫を有する対象から製造された。
【0039】
特定の実施形態では、細胞は、抗BCMA CARをコードするポリヌクレオチドを含むレンチウイルスを含む。
【0040】
特定の実施形態では、抗BCMA CARは、配列番号 1に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0041】
特定の実施形態では、抗BCMA CARは、配列番号 2に記載されるポリヌクレオチド配列によってコードされる。
【0042】
特定の実施形態では、細胞は自己である。
【0043】
特定の実施形態では、細胞は凍結保存される。
【0044】
特定の実施形態では、細胞は、多発性骨髄腫またはリンパ腫を有する対象への投与のために製剤化される。
【0045】
さらなる実施形態において、PI3K阻害剤は、ZSTK474である。
【0046】
特定の実施形態では、本明細書で企図される生理学的に許容可能な賦形剤および治療有効量の抗BCMA CAR T細胞を含む医薬組成物が提供される。
【0047】
いくつかの実施形態では、抗BCMA CAR T細胞の治療有効量は、少なくとも約5.0×107個の抗BCMA CAR T細胞である。
【0048】
特定の実施形態では、治療有効量の抗BCMA CAR T細胞は、少なくとも約15.0×107個の抗BCMA CAR T細胞である。
【0049】
特定の実施形態では、治療有効量は、少なくとも約45.0×107個の抗BCMA CAR T細胞である。
【0050】
特定の実施形態では、治療有効量は、少なくとも約80.0×107個の抗BCMA CAR T細胞である。
【0051】
さらなる実施形態では、組成物は、50:50のCryoStor CS10に対するPlasmaLyte Aを含む溶液中で製剤化される。
【0052】
特定の実施形態では、多発性骨髄腫またはリンパ腫を有する対象を、本明細書で企図される組成物で治療する方法が提供される。
【0053】
特定の実施形態では、対象は、再発性/難治性の多発性骨髄腫を有する。
【0054】
様々な実施形態において、抗BCMA CAR T細胞を製造する方法が提供され、T細胞集団を活性化し、T細胞集団を刺激して増殖させること、配列番号1に記載されるアミノ酸配列を含む抗BCMA CARをコードするレンチウイルスベクターでT細胞を形質導入すること、約5~約7日間、形質導入されたT細胞を培養して増殖させることを含み、前述の工程はPI3K阻害剤の存在下で行われ、(i)NR4A2、LY9、LIN7A、WNT5B、BCL6、EGR1、EGR2、ATF3、CCL1、IL-1A、およびCCL5または(ii)CCL1、NR4A2、ATF3、CCL5、およびWNT5Bの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または全ての遺伝子発現は、配列番号1に記載されるアミノ酸配列を含む抗BCMA CARをコードするレンチウイルスベクターで形質導入され、約10日間培養されて増殖したT細胞に比べて、培養されたT細胞において少なくとも1.5倍または少なくとも2倍多い。
【0055】
特定の実施形態において、抗BCMA CAR T細胞を製造する方法が提供され、T細胞集団を活性化し、T細胞集団を刺激して増殖させること、配列番号1に記載されるアミノ酸配列を含む抗BCMA CARをコードするレンチウイルスベクターでT細胞を形質導入すること、約5~約7日間、形質導入されたT細胞を培養して、増殖させることを含み、前述の工程はPI3K阻害剤の存在下で行われ、(i)NQO1、CCNA1、IL17F、EMP1、SNHG19、PRR 22、ILDR2、ATAD3、NKD2およびWDR62または(ii)NKD2およびNQO1の1、2、3、4、5、6、7、8、9、または全ての遺伝子発現は、配列番号1に記載されるアミノ酸配列を含む抗BCMA CARをコードするレンチウイルスベクターで形質導入され、約10日間培養されて、増殖したT細胞に比べて、培養されたT細胞において少なくとも1.5倍または少なくとも2倍少ない。
【0056】
様々な実施形態において、抗BCMA CAR T細胞を製造する方法が提供され、T細胞集団を活性化し、T細胞集団を刺激して増殖させること、配列番号1に記載されるアミノ酸配列を含む抗BCMA CARをコードするレンチウイルスベクターでT細胞を形質導入すること、約5~約7日間、形質導入されたT細胞を培養して、増殖させることを含み、前述の工程はPI3K阻害剤の存在下で行われ、配列番号1に記載されるアミノ酸配列を含む抗BCMA CARをコードするレンチウイルスベクターで形質導入され、約10日間培養されて、増殖したT細胞に比べて、培養されたT細胞において、(i)NR4A2、LY9、LIN7A、WNT5B、BCL6、EGR1、EGR2、ATF3、CCL1、IL-1A、およびCCL5または(ii)CCL1、NR4A2、ATF3、CCL5、およびWNT5Bの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または全ての遺伝子発現は、少なくとも1.5倍または少なくとも2倍多く、(i)NQO1、CCNA1、IL17F、EMP1、SNHG19、PRR 22、ILDR2、ATAD3、NKD2およびWDR62または(ii)NKD2およびNQO1の1、2、3、4、5、6、7、8、9、またはすべての遺伝子発現は、少なくとも1.5倍または少なくとも2倍少ない。
【0057】
様々な実施形態において、抗BCMA CAR T細胞を製造する方法が提供され、T細胞集団を活性化し、T細胞集団を刺激して増殖させることと、配列番号 1に記載されるアミノ酸配列を含む抗BCMA CARをコードするレンチウイルスベクターでT細胞を形質導入すること、約5~約7日間、形質導入されたT細胞を培養して、増殖させることを含み、前述の工程は、PI3K阻害剤の存在下で行われ、増殖した細胞は、CD27+および/またはLEF1+および/またはCCR7+および/またはTCF1+である。
【0058】
特定の実施形態では、抗BCMA CAR T細胞は、少なくとも10%のCD27+および/またはLEF1+および/またはCCR7+および/またはTCF1+T細胞を含む。
【0059】
さらなる実施形態では、抗BCMA CAR T細胞は、少なくとも15%のCD27+および/またはLEF1+および/またはCCR7+および/またはTCF1+T細胞を含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、抗BCMA CAR T細胞は、少なくとも20%のCD27+および/またはLEF1+および/またはCCR7+および/またはTCF1+T細胞を含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、抗BCMA CAR T細胞は、少なくとも25%のCD27+および/またはLEF1+および/またはCCR7+および/またはTCF1+T細胞を含む。
【0062】
特定の実施形態では、抗BCMA CAR T細胞は、少なくとも30%のCD27+および/またはLEF1+および/またはCCR7+および/またはTCF1+T細胞を含む。
【0063】
追加的実施形態では、CD27+細胞は、LEF1+および/またはCCR7+および/またはTCF1+である。
【0064】
さらなる実施形態では、CD27+細胞は、LEF1+、CCR7+、およびTCF1+である。
【0065】
特定の実施形態では、CD27+および/またはLEF1+および/またはCCR7+およびTCF1+抗BCMA CAR T細胞は、CD4+抗BCMA CAR T細胞を含む。
【0066】
特定の実施形態では、CD27+および/またはLEF1+および/またはCCR7+および/またはTCF1+抗BCMA CAR T細胞は、CD8+抗BCMA CAR
T細胞を含む。
【0067】
追加的実施形態では、CD27+および/またはLEF1+および/またはCCR7+およびTCF1+抗BCMA CAR T細胞は、CD4+およびCD8+抗BCMA CAR T細胞を含む。
【0068】
特定の実施形態では、T細胞は自己である。
【0069】
追加的実施形態において、方法は、末梢血単核細胞(PBMC)をT細胞の供給源として単離することをさらに含む。
【0070】
いくつかの実施形態では、PBMCは、多発性骨髄腫またはリンパ腫を有する対象から単離される。
【0071】
特定の実施形態では、対象は、再発性/難治性の多発性骨髄腫を有する。
【0072】
特定の実施形態では、方法は、活性化及び刺激の前にPBMCを凍結保存することをさらに含む。
【0073】
さらなる実施形態において、T細胞は、凍結保存された増殖培養物である。
【0074】
さらなる実施形態において、T細胞は活性化され、約18~約24時間増殖するようシミュレーションされる。
【0075】
特定の実施形態では、T細胞の活性化は、T細胞を抗CD3抗体またはその抗原結合断片と接触させることを含む。
【0076】
特定の実施形態では、抗CD3抗体またはその抗原結合断片は、可溶性である。
【0077】
追加的実施形態では、抗CD3抗体またはその抗原結合断片は、表面に結合する。
【0078】
いくつかの実施形態では、表面は、ビーズ、任意に常磁性ビーズである。
【0079】
さらなる実施形態では、T細胞を刺激することは、T細胞を抗CD28抗体またはその抗原結合断片と接触させることを含む。
【0080】
特定の実施形態では、抗CD28抗体またはその抗原結合断片は、可溶性である。
【0081】
追加的実施形態では、抗CD28抗体またはその抗原結合断片は、表面に結合する。
【0082】
いくつかの実施形態では、表面は、ビーズであり、任意に常磁性ビーズであり、任意に抗CD3抗体またはその抗原結合断片に結合される常磁性ビーズである。
【0083】
特定の実施形態では、細胞は、HIV-1由来レンチウイルスベクターで形質導入される。
【0084】
いくつかの実施形態では、抗BCMA CARは、配列番号 2に記載されるポリヌクレオチド配列によってコードされる。
【0085】
さらなる実施形態において、PI3K阻害剤は、ZSTK474である。
【0086】
様々な実施形態において、養子細胞療法において、CD4+ TCM様抗BCMA CAR T細胞およびCD8+ TSCM様抗BCMA CAR T細胞を増加させる方法が提供され、約5~約7日間、抗BCMA CAR T細胞をPI3K阻害剤にex vivoで接触させることを含み、CD4+ TCM様抗BCMA CAR T細胞およびCD8+ TSCM様抗BCMA CAR T細胞の数は、約10日間、PI3K阻害剤とex vivoで接触した抗BCMA CAR T細胞よりも、抗BCMA CAR T細胞において少なくとも2倍多い。
【0087】
特定の実施形態では、抗BCMA CAR T細胞は、少なくとも10%のCD27+および/またはLEF1+および/またはCCR7+および/またはTCF1+T細胞を含む。
【0088】
追加的実施形態では、抗BCMA CAR T細胞は、少なくとも15%のCD27+および/またはLEF1+および/またはCCR7+および/またはTCF1+T細胞を含む。
【0089】
いくつかの実施形態では、抗BCMA CAR T細胞は、少なくとも20%のCD27+および/またはLEF1+および/またはCCR7+および/またはTCF1+T細胞を含む。
【0090】
特定の実施形態では、抗BCMA CAR T細胞は、少なくとも25%のCD27+および/またはLEF1+および/またはCCR7+および/またはTCF1+T細胞を含む。
【0091】
さらなる実施形態では、抗BCMA CAR T細胞は、少なくとも30%のCD27+および/またはLEF1+および/またはCCR7+および/またはTCF1+T細胞を含む。
【0092】
特定の実施形態では、T細胞は自己である。
【0093】
特定の実施形態において、方法は、末梢血単核細胞(PBMC)をT細胞の供給源として単離することをさらに含む。
【0094】
追加的実施形態において、PBMCは、多発性骨髄腫またはリンパ腫を有する対象から単離される。
【0095】
いくつかの実施形態では、対象は、再発性/難治性の多発性骨髄腫を有する。
【0096】
さらなる実施形態において、抗BCMA CAR T細胞は、HIV-1由来レンチウイルスベクターを含む。
【0097】
特定の実施形態では、抗BCMA CARは、配列番号 1に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0098】
追加的実施形態では、抗BCMA CARは、配列番号 2に記載されるポリヌクレオチド配列によってコードされる。
【0099】
いくつかの実施形態では、本明細書で企図される薬学的に許容可能な賦形剤および治療有効量の抗BCMA CAR T細胞を含む医薬組成物が提供される。
【0100】
いくつかの実施形態では、本明細書で企図される薬学的に許容可能な賦形剤および治療有効量のCD4+ TCM抗BCMA CAR T細胞およびCD8+ TSCM 抗BCMA CAR T細胞を含む医薬組成物が提供される。
【0101】
特定の実施形態では、多発性骨髄腫またはリンパ腫を有する対象を治療する方法は、本明細書で企図される組成物を投与することを含む。
【0102】
さらなる実施形態では、対象は、再発性/難治性の多発性骨髄腫を有する。
【0103】
様々な実施形態において、抗BCMA CAR T細胞における(i)NR4A2、LY9、LIN7A、WNT5B、BCL6、EGR1、EGR2、ATF3、CCL1、IL-1A、およびCCL5または(ii)CCL1、NR4A2、ATF3、CCL5、およびWNT5Bのそれぞれの遺伝子発現を増加させる方法が提供され、約5~約7日間、抗BCMA CAR T細胞をPI3K阻害剤とex vivoで接触させることを含み、(i)NR4A2、LY9、LIN7A、WNT5B、BCL6、EGR1、EGR2、ATF3、CCL1、IL-1A、およびCCL5または(ii)CCL1、NR4A2、ATF3、CCL5、およびWNT5Bのそれぞれの遺伝子発現は、約10日間、PI3K阻害剤とex vivoで接触させた抗BCMA CAR T細胞よりも、抗BCMA CAR T細胞において少なくとも1.5倍多い。
【0104】
特定の実施形態では、抗BCMA CAR T細胞における(i)NQO1、CCNA1、IL17F、EMP1、SNHG19、PRR 22、ILDR2、ATAD3、NKD2およびWDR62または(ii)NKD2およびNQO1のそれぞれの遺伝子発現を減少させる方法が提供され、約5~約7日間、抗BCMA CAR T細胞をPI3K阻害剤とex vivoで接触させることを含み、(i)NQO1、CCNA1、IL17F、EMP1、SNHG19、PRR 22、ILDR2、ATAD3、NKD2およびWDR62または(ii)NKD2およびNQO1のそれぞれの遺伝子発現は、約10日間、PI3K阻害剤とex vivoで接触させた抗BCMA CAR T細胞よりも、抗BCMA CAR T細胞において少なくとも1.5倍少ない。
【0105】
特定の実施形態では、抗BCMA CAR T細胞における(i)NR4A2、LY9、LIN7A、WNT5B、BCL6、EGR1、EGR2、ATF3、CCL1、IL-1A、およびCCL5または(ii)CCL1、NR4A2、ATF3、CCL5、およびWNT5Bのそれぞれの遺伝子発現を増加させ、(i)NQO1、CCNA1、IL17F、EMP1、SNHG19、PRR 22、ILDR2、ATAD3、NKD2およびWDR62または(ii)NKD2およびNQO1のそれぞれの遺伝子発現を減少させる方法が提供され、約5~約7日間、抗BCMA CAR T細胞をPI3K阻害剤とex vivoで接触させることを含み、約10日間、PI3K阻害剤とex vivoで接触させた抗BCMA CAR T細胞よりも、抗BCMA CAR T細胞において、(i)NR4A2、LY9、LIN7A、WNT5B、BCL6、EGR1、EGR2、ATF3、CCL1、IL-1A、およびCCL5または(ii)CCL1、NR4A2、ATF3、CCL5、およびWNT5Bのそれぞれの遺伝子発現は、少なくとも1.5倍多く、(i)NQO1、CCNA1、IL17F、EMP1、SNHG19、PRR
22、ILDR2、ATAD3、NKD2およびWDR62または(ii)NKD2およびNQO1のそれぞれの遺伝子発現は、少なくとも1.5倍少ない。
【0106】
いくつかの実施形態において、抗BCMA CAR T細胞の治療有効性を増加させる方法が提供され、約5~約7日間、抗BCMA CAR T細胞をPI3K阻害剤とex
vivoで接触させることを含み、治療有効性の増加は、(i)NR4A2、LY9、LIN7A、WNT5B、BCL6、EGR1、EGR2、ATF3、CCL1、IL-1A、およびCCL5または(ii)CCL1、NR4A2、ATF3、CCL5、およびWNT5Bの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または全ての遺伝子発現の増加が、約10日間、PI3K阻害剤とex vivoで接触させた抗BCMA CAR
T細胞よりも、抗BCMA CAR T細胞において少なくとも1.5倍多いことにより示される。
【0107】
特定の実施形態では、抗BCMA CAR T細胞の治療有効性を増加させる方法が提供され、約5~約7日間、抗BCMA CAR T細胞をPI3K阻害剤とex vivoで接触させることを含み、治療有効性の増加は、(i)NQO1、CCNA1、IL17F、EMP1、SNHG19、PRR 22、ILDR2、ATAD3、NKD2およびWDR62または(ii)NKD2 およびNQO1のそれぞれの遺伝子発現の減少が、約10日間、PI3K阻害剤とex vivoで接触させた抗BCMA CAR T細胞よりも、抗BCMA CAR T細胞において少なくとも1.5倍少ないことにより示される。
【0108】
いくつかの実施形態において、抗BCMA CAR T細胞の治療有効性を増加させる方法が提供され、約5~約7日間、抗BCMA CAR T細胞をPI3K阻害剤とex
vivoで接触させることを含み、治療有効性の増加は、約10日間、PI3K阻害剤とex vivoで接触させた抗BCMA CAR T細胞よりも抗BCMA CAR T細胞において、(i)NR4A2、LY9、LIN7A、WNT5B、BCL6、EGR1、EGR2、ATF3、CCL1、IL-1A、およびCCL5または(ii)CCL1、NR4A2、ATF3、CCL5、およびWNT5Bの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または全ての遺伝子発現の増加が少なくとも1.5倍多く、(i)NQO1、CCNA1、IL17F、EMP1、SNHG19、PRR 22、ILDR2、ATAD3、NKD2およびWDR62または(ii)NKD2およびNQO1のそれぞれの遺伝子発現の減少が少なくとも1.5倍少ないことにより示される。
【0109】
特定の実施形態では、抗BCMA CAR T細胞は、多発性骨髄腫またはリンパ腫を有する対象に由来する。
【0110】
追加的実施形態では、抗BCMA CAR T細胞は、再発性/難治性の多発性骨髄腫を有する対象に由来する。
【0111】
特定の実施形態では、抗BCMA CAR T細胞は、抗BCMA CARをコードするポリヌクレオチドを含むHIV-1由来レンチウイルスベクターを含む。
【0112】
特定の実施形態では、抗BCMA CARは、配列番号 1に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0113】
さらなる実施形態では、抗BCMA CARは、配列番号 2に記載されるポリヌクレオチド配列によってコードされる。
【0114】
いくつかの実施形態では、抗BCMA CAR T細胞は自己である。
【0115】
特定の実施形態では、PI3K阻害剤はZSTK474である。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【
図1】
図1は、PI3K阻害剤を有するT細胞培養物の長さが、T細胞表現型を調節することを示す。PI3K阻害剤の非存在下で抗BCMA CAR T細胞を製造するために五つの多発性骨髄腫PBMCロットを使用したか、または抗BCMA CARをコードするレンチウイルスで形質導入後7日または10日間、PI3K阻害剤と培養した。7日目および10日目に、CD3、CD62L、CCR7、およびCD45RAに対する抗ヒト抗体でT細胞を染色し、フローサイトメトリーにより分析した。各ドットプロットを、生存CD3
+リンパ球上でゲーティングした。
【
図2】
図2は、10日間の培養と比較して、PI3K阻害剤と7日間の培養後に、T細胞がより強力な表現型を示すことを示す。五つの多発性骨髄腫PBMCロットを使用して、PI3K阻害剤の存在下で抗BCMA CAR T細胞を7日間または10日間製造した。7日目および10日目に、CCR7、CD25、CD28、CD122、ICOS、CD45RO、CD57、およびTIM3に対する抗ヒト抗体でT細胞を染色し、CyTOFにより分析した。各ドットプロットを、生存CD3
+リンパ球上でゲーティングした。
【
図3】
図3は、PI3K阻害剤中で7日間製造されたT細胞が、CD27
+T細胞を富化していることを示す。五つの多発性骨髄腫PBMCロットを使用して、PI3K阻害剤の存在下で抗BCMA CAR T細胞を製造した。7日目および10日目に、CD4、CD8、およびCD27に対する抗ヒト抗体でT細胞を染色し、CyTOFにより分析した。VISNEプロットは、異なる細胞集団におけるCD27ゲーティングされた発現を示す。
【
図4A】
図4A~Bは、10日間の培養と比較して、PI3K阻害剤と7日間の培養後に、T細胞がより強力な表現型を示すことを示す。五つの多発性骨髄腫PBMCロットを使用して、PI3K阻害剤の存在下で抗BCMA CAR T細胞を7日間または10日間製造した。7日目および10日目に、(1)CCR7、CD25、CD28、HLA-DR、およびTIM3(
図4A)またはCD45RO、CD57、CD70、CD244、およびPD-1(
図4B)に対する抗ヒト抗体でT細胞を染色し、CyTOFにより分析した。VISNEプロットは、7日間の培養(上段)および10日間の培養(下段)における異なるT細胞表現型マーカーの発現を示す。ゲーティングされた集団は、CD27
+細胞を表す。
【
図5】
図5は、PI3K阻害剤に10日間製造されるCD27
+T細胞が、PI3K阻害剤に7日間製造されるT細胞と比較して、活性化の減少および消耗の増加によって特徴付けられることを示す。五つの多発性骨髄腫PBMCロットを使用して、PI3K阻害剤の存在下で抗BCMA CAR T細胞を7日間または10日間製造した。VISNE分析によって特定されたCD27
+T細胞を、CD28、ICOS、HLA-DR、CD25、およびTIM3に対する抗ヒト抗体で7日目および10日目に染色し、CD4
+T細胞(上)およびCD8
+T細胞(下)中のCyTOFによって分析した。
【
図6】
図6は、抗BCMA CAR T細胞製造の持続時間の結果としての差示的遺伝子発現を示す。多発性骨髄腫PBMCロットを使用して、PI3K阻害剤の非存在下で、7日間(1)または10日間(13)、またはPI3K阻害剤の存在下で7日間(10)または10日間(6)抗BCMA CAR T細胞を製造した。RNAをT細胞から抽出し、転写プロファイルをナノストリング免疫学パネルを使用して分析した。製造条件間の差次的に発現された上位50個の遺伝子のヒートマップを示す。
【
図7】
図7は、PI3K阻害剤に10日間製造される抗BCMA CAR T細胞と比較して、PI3K阻害剤に7日間製造される抗BCMA CAR T細胞の能力の増加を示す。健康なドナーのPBMCを活性化し、抗BCMA CARをコードするレンチウイルスベクターで形質導入し、IL-2およびPI3K阻害剤の存在下で6日間(7日間のプロセス)または9日間(10日間のプロセス)増殖させた。養子細胞療法の10日前に、NSGマウスに、2×10
6個のホタルルシフェラーゼ標識Daudi腫瘍細胞を静脈内注射した。マウスに2.5、5、または10×10
6個の抗BCMA CAR
+ T細胞、またはビヒクルで形質導入されたT細胞を注射した。腫瘍負荷を発光によって監視した。
【
図8】
図8は、PI3Kの存在下で製造されたT細胞が、CD27
+CD4
+TCM様細胞およびCD27
+CD8
+TSCM様細胞について富化されていることを示す。PI3K阻害剤の存在下で多発性骨髄腫PBMCロットから製造された抗BCMA CAR T細胞を、約36個のT細胞表現型抗体のパネルで染色し、CyTOFで分析した。ナイーブT細胞(Tnaive)、中央メモリーT細胞(TCM)、エフェクターメモリーT細胞(EM)、エフェクターT細胞(TEff)、および幹細胞メモリーT細胞(TSCM)を示す。提示されたデータは、T細胞サブセットに対するCD27
+富化細胞の%の関数として分析された各DPロットを示す。
【
図9】
図9は、FlowSOMを用いて分析した
図9からのCD8
+T細胞データを示す。FlowSOMは、20個の別個のT細胞クラスターを特定した。クラスター4(メモリーT細胞マーカーに富化された - 良好)およびクラスター5(エフェクターT細胞マーカーに富化された - 不良)に基づいて、T細胞の主要三つの群を特定した。抗BCMA CAR T細胞で治療を受けた対象の%CD27
+CD8
+T細胞、製造方法、および臨床応答が示されている。
【
図10】
図10は、7日間または10日間のPI3K製造プロセスを使用して、多発性骨髄腫細胞ロットから製造された抗BCMA CAR T細胞の差示的遺伝子発現解析を示す。RNAを12ロットの抗BCMA CAR T細胞から抽出し、転写プロファイルをナノストリング免疫学パネルを使用して分析した。上位25個の差次的に発現された遺伝子のうち7日~10日の製造プロセス間のヒートマップを示す。抗BCMA CAR T細胞で治療を受けた対象の%CD27
+細胞、製造方法、および臨床応答が示されている。
【
図11】
図11Aは、非持続性の応答者と比較して、持続性の応答者における抗BCMA CAR T細胞医薬品中のcyTOF染色されたT細胞集団のvolcanoプロットを示す。このプロットは、持続性のある応答者および非持続性の応答者の間の細胞組成における最も顕著な差異が、ナイーブおよび幹細胞メモリーT細胞であることを示している。一般化線形モデル係数は、X軸上およびY軸上のp値上に示される。
図11Bは、抗BCMA CAR T細胞医薬品中のCD4 TSCM(上側パネル)およびCD8 TSCM(下側パネル)の割合の、持続性のある応答者と非持続性の応答者とを比較した箱ひげ図を示す。TSCM細胞は、持続的な応答を有する患者の医薬品に富化された。
【
図12】
図12Aは、抗BCMA CAR T細胞医薬品中のCD4(左上パネル)およびCD8(上中央パネル)T細胞におけるCyTOFによって決定されたLEF-1発現の割合の、持続性のある応答者と非持続性の応答者とを比較した箱ひげ図を示す。LEF-1発現細胞の割合、ならびにLEF-1の遺伝子発現は、非持続性応答者と比較して持続性応答者において増加しており、これらの医薬品における初期メモリーT細胞の富化を示す。
図12Aは、抗BCMA CAR T細胞による治療の2ヵ月後の患者sBCMAレベルと、医薬品におけるLEF-1遺伝子発現の相関を示す。これらのデータは、医薬品の早期記憶表現型と治療応答の深度との間の関連を示す。
【
図13】
図13は、PBMC中および抗BCMA CAR T細胞(DP)中のCyTOFによって決定される、CCR7(左上のパネル)、LEF1(上中央パネル)、およびCD57(右上パネル)を発現するCD3+生細胞の割合を示す。
図13はさらに、x軸上に抗BCMA CAR T細胞を注入した後の様々な時点で全血から抽出されたCD3+細胞上のPCRによって決定された最大ベクターコピー数(VCN)に対して、y軸上にCCR7(
図13、左下パネル)、LEF-1(
図13、中央下パネル)、およびCD57(
図13、右下パネル)を発現するCD3+生細胞の割合を示す。
【
図14】
図14は、CD57(老化のマーカー)、クラスター化ヒートマップとして、LEF-1、CCR7、およびCD27(メモリー細胞)を発現するCD3+生細胞の割合を示す。データは、平均連鎖階層クラスタリングを使用してグループ化され、クラスターの樹状図によって決定される上位三つのクラスターは、6ヵ月時点で患者の臨床応答と関連していた。
【発明を実施するための形態】
【0117】
配列識別子の簡単な説明
配列番号1は、抗BCMA CARのアミノ酸配列を記載する。
【0118】
配列番号2は、抗BCMA CARをコードするポリヌクレオチド配列を明記する。
【0119】
前述の配列において、Xは、存在する場合、任意のアミノ酸またはアミノ酸の非存在を指す。
【0120】
詳細な説明
A.概要
本発明は概して、T細胞組成物を製造するための改善された方法に関する。T細胞療法は5年前よりも一般的であるが、これらの療法が直面する障害は依然として、特に、有効性が乏しいまたは最適以下の能力であることである。溶液は、細胞療法産物、例えば、CAR T細胞産物の能力を著しく増加させる、本発明の製造方法によって提供される。いかなる特定の理論にも拘束されることを意図するものではないが、発明者らは、PI3K阻害剤を使用したT細胞製造期間の短縮が、PI3K阻害剤を使用したより長い期間の製造プロセスと比較して、細胞用量の減少および細胞能力および持続性の増加のさらなる改善を可能にすることを、予想外に発見した。驚くべきことに、より短いPI3K阻害剤ベースのプロセスを使用して製造された改善された医薬品は、CD27+CD8+幹細胞メモリーT細胞(TSCM)およびCD27+CD4+中央メモリーT細胞(TCM)の富化集団を有する。特定の実施形態では、より短いPI3K阻害剤ベースのプロセスを使用して製造される改善された医薬品は、CD27+、LEF1+、および/またはTCF1+ T細胞の富化集団を有する。製造された細胞はその後、分化し、持続的な免疫エフェクター細胞機能を提供することができる。
【0121】
医薬品表現型解析および遺伝子発現解析はまた、臨床医が特定の医薬品がどのように機能するかの可能性を決定することを可能にする。富化されたT細胞はまた、核受容体サブファミリー4グループAメンバー2(NR4A2)、CD229(LY9)、Lin-7相同体A(LIN7A)、ウイングレス型MMTV統合部位ファミリー、メンバー5B(WNT5B)、B細胞CLL/リンパ腫6(BCL6)、早期増殖応答1(EGR1)、早期増殖応答2(EGR2)、活性化転写因子3(ATF3)、およびC-Cモチーフケモカイン1(CCL1)、インターロイキン1A(IL-1A)、およびC-Cモチーフケモカイン5(CCL5)の一つ以上の遺伝子発現の増加を含み、NAD(P)Hキノンデヒドロゲナーゼ1(NQO1)、CyclinA1(CCNA1)、インターロイキン17F(IL17F)、上皮膜タンパク質1(EMP1)、Small Nucleolar RNA Host Gene19(SNHG19)、プロリンリッチ22(PRR
22)、免疫グロブリン様ドメイン含有受容体2(ILDR2)、ATPaseファミリー、AAAドメイン含有 3(ATAD3)、ネイキッドキューティクルホモログ2(NKD2)およびWD リピートドメイン62(WDR62)の一つ以上の遺伝子発現の減少を含む。
【0122】
特定の実施形態では、富化されたT細胞は、CCL1、NR4A2、ATF3、CCL5、およびWNT5Bの一つ以上の遺伝子発現の増加を含み、ならびに NQO1およびNKD2の一つ以上の遺伝子発現の減少を含む。
【0123】
様々な実施形態において、養子細胞療法の能力を増加させるT細胞を製造する方法が提供される。特に好ましい実施形態では、操作されたCAR T細胞組成物は、操作された細胞の能力を増加させるのに十分な条件下で、ある期間、ホスファチジル-イノシトール-3キナーゼ(PI3K)阻害剤(例えば、ZSTK474(CAS NO.475110-96-4)の存在下で製造される。好ましい実施形態では、T細胞は、PI3K阻害剤の存在下で活性化および刺激され(約24時間、18~24時間)、PI3K阻害剤の存在下でCARをコードするポリヌクレオチドを含むレンチウイルスで形質導入され(約24時間、18~24時間)、PI3K阻害剤の存在下で、形質導入後約4日間または約6日間(例えば、6日間または合計8日間)増殖される。
【0124】
様々な実施形態では、5日間のT細胞の製造プロセスは、PI3K阻害剤の存在下で、T細胞を活性化および刺激し(約24時間、18~24時間)、PI3K阻害剤の存在下で、CARをコードするポリヌクレオチドを含むレンチウイルスで細胞を形質導入し(約24時間、18~24時間)、PI3K阻害剤の存在下で、約4日間(例えば、合計6日間)細胞を増殖する。
【0125】
様々な実施形態では、7日間のT細胞の製造プロセスは、PI3K阻害剤の存在下で、T細胞を活性化および刺激し(約24時間、18~24時間)、PI3K阻害剤の存在下で、CARをコードするポリヌクレオチドを含むレンチウイルスで細胞を形質導入し(約24時間、18~24時間)、PI3K阻害剤の存在下で、約6日間(例えば、合計8日間)細胞を増殖する。
【0126】
特定の実施形態では、T細胞活性化または能力のある遺伝子の発現を増加させる方法、および/またはT細胞分化または消耗遺伝子の発現を減少させる方法が企図される。本明細書で企図される製造されるT細胞組成物は、癌、例えば、血液悪性腫瘍の少なくとも一つの症状の治療、予防、または改善に有用である。
【0127】
様々な実施形態では、PI3K阻害剤の存在下で製造されたCD27+富化抗B細胞成熟抗原(BCMA)キメラ抗原受容体(CAR)T細胞の現行の医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理規則(cGMP)製造組成物が企図される。特定の実施形態では、より短い5日または7日の製造プロセスは、CD27+、LEF1+、CCR7+および/またはTCF1+抗BCMA CAR T細胞の富化された集団を生成する。
【0128】
様々な実施形態では、CD27+富化CD8+ TSCM様T細胞およびCD27+富化CD4+ TCM様T細胞の抗BCMA CAR T細胞組成物が企図される。
【0129】
様々な実施形態では、PI3K阻害剤の存在下で製造されたLEF1+および/またはCCR7+および/またはTCF1+富化抗B細胞成熟抗原(BCMA)キメラ抗原受容体(CAR)T細胞の現行の医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理規則(cGMP)製造組成物が企図される。特定の実施形態では、富化された集団はまた、CD27+抗BCMA CAR T細胞である。
【0130】
様々な実施形態では、CD27+および/またはLEF1+および/またはCCR7+および/またはTCF1+富化CD8+ TSCM様T細胞およびCD27+ および/またはLEF1+ および/またはCCR7+ および/またはTCF1+富化CD4+
TCM様T細胞の抗BCMA CAR T細胞組成物が企図される。
【0131】
したがって、本明細書において企図される方法および組成物は、既存の養子細胞療法と比較して、量的改善を表す。
【0132】
組み換え(すなわち、操作された)DNA、ペプチドおよびオリゴヌクレオチド合成、免疫アッセイ、組織培養、形質変換(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)、酵素反応、精製ならびに関連する技術および手法は、本明細書を通じて引用され、考察される、微生物学、分子生物学、生化学、分子遺伝学、細胞生物学、ウイルス学および免疫学における様々な一般的およびより具体的な参考文献に記載されるように一般的に行われてもよい。例えば、Sambrook et al.、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、3d ed.、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring
Harbor、N.Y.;Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley and Sons、updated July 2008);Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology、Greene Pub.Associates and Wiley-Interscience;Glover、DNA Cloning:A Practical Approach、vol.I & II(IRL Press、Oxford Univ.Press USA、1985);Current Protocols in Immunology(Edited by:John E.Coligan、Ada M.Kruisbeek、David H.Margulies、Ethan M.Shevach、Warren Strober 2001 John Wiley & Sons、NY、NY);Real-Time PCR:Current Technology and Applications、Edited by Julie Logan、Kirstin Edwards and Nick Saunders、2009、Caister
Academic Press、Norfolk、UK;Anand、Techniques for the Analysis of Complex Genomes、(Academic Press、New York、1992);Guthrie and Fink、Guide to Yeast Genetics and Molecular Biology(Academic Press、New York、1991);Oligonucleotide Synthesis(N.Gait、Ed.、1984);Nucleic Acid The Hybridization(B.Hames & S.Higgins、Eds.、1985);Transcription and Translation(B.Hames & S.Higgins、Eds.、1984);Animal Cell Culture(R.Freshney、Ed.、1986);Perbal、A Practical Guide to Molecular Cloning(1984);Next-Generation Genome Sequencing(Janitz、2008 Wiley-VCH);PCR Protocols(Methods in Molecular Biology)(Park、Ed.、3rd Edition、2010 Humana Press);Immobilized Cells And Enzymes(IRL Press、1986);the treatise、Methods In Enzymology(Academic Press、Inc.、N.Y.);Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells(J.H.Miller and M.P.Calos eds.、1987、Cold Spring Harbor Laboratory);Harlow and Lane、Antibodies、(Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、1998);Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology(Mayer and Walker、eds.、Academic Press、London、1987);Handbook Of Experimental
Immunology、Volumes I-IV(D.M.Weir and CC
Blackwell、eds.、1986);Roitt、Essential Immunology、6th Edition、(Blackwell Scientific Publications、Oxford、1988);Current Protocols in Immunology(Q.E.Coligan、A.M.Kruisbeek、D.H.Margulies、E.M.Shevach and W.Strober、eds.、1991);Annual Review of Immunology;ならびに例えばAdvances in Immunologyなどの雑誌の研究論文を参照のこと。
【0133】
B.定義
本開示をより詳細に記載する前に、本明細書で使用されるべきある特定の用語の定義を提供することは、その理解に役立ち得る。
【0134】
別段の規定がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって普遍的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似した、または均等の方法および材料を、特定の実施形態の実施または検証に使用することができるが、本明細書においては好ましい組成物、方法および材料の実施形態を開示している。本開示の目的に対し、以下の用語を、以下に規定する。
【0135】
「a」、「an」および「the」といった冠詞は、本明細書において、当該冠詞の文法上の対象の一つまたは複数(すなわち少なくとも一つ)を指すために使用される。例示として、「an element」とは、一つの要素、または一つもしくは複数の要素を意味する。
【0136】
本明細書において使用される場合、「約」または「およそ」という用語は、基準の数量、レベル、値、数、頻度、百分率、寸法、大きさ、量、重さ、または長さに対し、30、25、20、25、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1%までも変化する数量、レベル、値、数、頻度、百分率、寸法、大きさ、量、重さ、または長さを指す。特定の実施形態では、数値に先行する場合の用語「約」または「およそ」は、15%、10%、5%、または1%の範囲を加減する値を示す。
【0137】
本明細書において使用される場合、「実質的に」という用語は、基準の数量、レベル、値、数、頻度、百分率、寸法、大きさ、量、重さ、または長さと比較して、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上である数量、レベル、値、数、頻度、百分率、寸法、大きさ、量、重さ、または長さを指す。一実施形態では、「実質的に同じ」は、参照の量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量または長さとほぼ同じである効果、例えば、生理学的効果を生じる量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量または長さを指す。
【0138】
本明細書全体を通じて、文脈が別段要求しない限り、語句「含む(comprise)」、「含む(comprises)」および「含むこと」は、規定される工程もしくは構成要素または工程もしくは構成要素の群を含むことを暗示するが、任意の他の工程もしくは構成要素または工程もしくは構成要素の群を除外することを暗示しないことは理解されるだろう。「~からなる」とは、語句「からなる」に続くもの全てを含み、それらに限定されることを意味する。ゆえに、「~からなる」という文言は、列記される要素が必要または義務であり、他の要素は存在し得ないことを示す。「本質的に~からなる」とは、当該文言の後に列記される任意の要素、および列記される要素に関して本開示中に特定される活性もしくは作用に干渉しない、または寄与しない他の要素に限定される任意の要素を含むことを意味する。ゆえに、「本質的に~からなる」という文言は、列記される要素が必須または義務であり、しかし列記される要素の活性または作用に実質的に影響を与えるかどうかに依存して、他の要素が任意であり、存在するまたは存在し得ないことを示す。
【0139】
本明細書全体を通じて「一つの実施形態」、「実施形態」、「特定の実施形態」、「関連する実施形態」、「ある実施形態」、「追加的な実施形態」、もしくは「さらなる実施形態」、またはそれらの組み合わせに対する参照は、当該実施形態と関連付けて記載される特定の性質、構造または特徴が、少なくとも一つの本発明の実施形態に含まれることを意味する。ゆえに本明細書全体の様々な箇所での前述の文言の出現は、必ずしもすべてが同じ実施形態を指しているわけではない。さらに特定の性質、構造または特徴は、一つ以上の実施形態において任意の適切な様式で組み合わされ得る。
【0140】
本明細書で使用される場合、用語「T細胞製造」または「T細胞の製造方法」または同等の用語は、T細胞の治療用組成物を作製するプロセスを指し、この製造方法は、採取、刺激、活性化、形質導入、および増殖の工程のうちの一つ以上、またはすべてを含んでもよい。好ましい実施形態では、増殖は、形質導入後、5日~7日以下である。5日間のT細胞製造プロセスは、0日目の活性化および刺激、1日目の形質導入、および5日目の終了時までの増殖を含む。7日間のT細胞製造プロセスは、0日目の活性化および刺激、1日目の形質導入、および7日目の終了時までの増殖を含む。10日間のT細胞製造プロセスは、0日目の活性化および刺激、1日目の形質導入、および10日目の終了時までの増殖を含む。好ましい実施形態では、T細胞製造方法は、製造プロセス全体を通してPI3Kの使用を含む。
【0141】
本明細書で使用される場合、用語「PI3K阻害剤」は、PI3Kの少なくとも一つの活性に結合し、かつ阻害する小さな有機分子を指す。PI3Kタンパク質は、クラス1のPI3K、クラス2のPI3K、およびクラス3のPI3Kの三つのクラスに分けることができる。クラス1のPI3Kは、四つのp110触媒サブユニット(p110α、p110β、p110δ、およびp110γ)のうちの一つと、二つの制御サブユニットファミリーのうちの一つとからなるヘテロ二量体として存在する。特定の実施形態では、PI3K阻害剤は、クラス1のPI3K阻害剤の一つ以上のアイソフォームに対する選択性を示す(すなわち、p110α、p110β、p110δ、およびp110γまたはp110α、p110β、p110δ、およびp110γの一つ以上に対する選択性)。特定の実施形態では、PI3K阻害剤はアイソフォーム選択性を示さず、“汎PI3K阻害剤”とみなされる。
【0142】
「T細胞」または「Tリンパ球」という用語は、当分野において認識されており、胸腺細胞、未成熟Tリンパ球、成熟Tリンパ球、静止Tリンパ球、または活性化Tリンパ球を含むことが意図される。T細胞は、例えばTヘルパー1(Th1)細胞またはTヘルパー2(Th2)細胞などのTヘルパー(Th)細胞であってもよい。T細胞は、ヘルパーT細胞(HTL;CD4+T細胞)CD4+T細胞、細胞障害性T細胞(CTL;CD8+T細胞)、腫瘍浸潤性細胞障害性T細胞(TIL;CD8+T細胞)、CD4+CD8+T細胞、CD4-CD8-T細胞、または任意の他のサブセットのT細胞であり得る。好ましくは、製造されたT細胞は、CD27+T細胞、CD27+CD4+T細胞、および/またはCD27+CD8+T細胞が富化されている。特定の好ましい実施形態では、製造されたT細胞は、LEF1+および/またはCCR7+および/またはTCF1+ T細胞ならびに/またはLEF1+および/またはCCR7+および/またはTCF1+ CD4+ T細胞ならびに/またはLEF1+および/またはCCR7+および/またはTCF1+ CD8+ T細胞が富化されている。特定の好ましい実施形態では、製造されたT細胞は、CD27+ LEF1+および/またはCCR7+および/またはTCF1+ T細胞および/またはCD27+ LEF1+および/またはCCR7+および/またはTCF1+ CD4+ T細胞および/またはCD27+ LEF1+および/またはCCR7+および/またはTCF1+ CD8+ T細胞が富化されている。より好ましくは、製造されたT細胞は、幹細胞メモリーT細胞(TSCM)および中央メモリーT細胞(TCM)が富化されている。
【0143】
“強力なT細胞”および“若いT細胞”は、特定の実施形態では互換的に使用され、T細胞が増殖能力を有し、かつ同時に分化が減少するT細胞表現型を指す。特定の実施形態では、若いT細胞は、ナイーブT細胞TSCMまたはTCMの表現型を有する。様々な実施形態において、本明細書に企図される製造方法は、より強力なT細胞、例えば、ナイーブT細胞、TSCM、またはTCMを産生する。特定の実施形態では、若いT細胞は、以下の生物学的マーカーのうちの一つ以上、または全てについて富化される:CD62L、CCR7、CD28、CD27、CD122、CD127、CD197、CD95、CD45RO、およびCD38。
【0144】
本明細書で使用される場合、用語「増殖」は、細胞の対称的または非対称的な分裂のいずれかである、細胞分裂の増加を指す。特定の実施形態では、“増殖”は、T細胞の対称または非対称の分裂を指す。“増殖の増加”は、未処理試料中の細胞と比較して、処理済み試料中の細胞数が増加する場合に起こる。
【0145】
本明細書で使用される場合、用語「分化」は、細胞の能力または増殖を減少させるか、または細胞をより発生的に制限された状態に移動する方法を指す。特定の実施形態では、分化されたT細胞は、免疫エフェクター細胞機能を取得する。
【0146】
「免疫エフェクター細胞」は、一つ以上のエフェクター機能(例えば細胞傷害性の細胞殺傷活性、サイトカイン分泌、ADCCおよび/またはCDCの誘導など)を有する免疫系の任意の細胞である。本明細書において企図される免疫エフェクター細胞の例示は、Tリンパ球であり、特に細胞障害性T細胞(CTL;CD8+T細胞)、TIL、およびヘルパーT細胞(HTL;CD4+T細胞)である。
【0147】
「改変T細胞」は、本明細書で企図されるCARをコードするポリヌクレオチドの導入によって改変されたT細胞を指す。改変T細胞には、遺伝子改変および非遺伝子改変(例えば、エピソームまたは染色体外)の両方が含まれる。
【0148】
本明細書において使用される場合、「遺伝子操作された」または「遺伝的に改変された」という用語は、DNAまたはRNAの形態の追加的な遺伝物質を、細胞中の総遺伝物質に加えることを指す。
【0149】
「遺伝的に改変された細胞」、「改変細胞」、および「再指向化細胞」という用語は、相互交換可能に使用される。
【0150】
本明細書で使用される、用語「遺伝子療法」は、遺伝子の発現を回復するか、修正するか、または改変する細胞において、または治療用ポリペプチド、例えば、TCRまたはCARおよび/または一つ以上のサイトカインを発現させる目的で、余剰な遺伝物質を総遺伝物質に導入することを指す。特定の実施形態では、T細胞は、例えば、TCRまたはCARを細胞に発現するエピソームベクターを細胞内に導入することによって、細胞のゲノムを改変することなく、CARを発現するように改変される。
【0151】
用語「生体外での」は、一般的に、生物の外側の、好ましくは、自然条件の最小限の変化を伴う、人工環境で行われる実験もしくは測定または生きている組織での実験もしくは測定などの、生物の外側の場所で生じる活動を指す。特定の実施形態では、「生体外での」手法は、生物から採取され、実験装置で、通常、無菌条件下で、典型的には、数時間または最大約24時間であるが、状況に応じて最大48時間または72時間培養されるか、または調節される生きた細胞または組織を含む。ある特定の実施形態では、このような組織または細胞は、収集され、凍結され、その後、生体外での処置のため融解することができる。生きた細胞または組織を使用して数日以上継続する組織培養実験または手法は、典型的には、「インビトロ」であるとみなされるが、ある特定の実施形態では、この用語は、生体外と互換的に使用され得る。
【0152】
用語「インビボ」は、一般的に、自己再生および細胞の増殖等の生物の内部で生じる活動を指す。一実施形態では、用語「インビボ増殖」は、インビボで数を増加させる細胞集団の能力を指す。
【0153】
用語「刺激」は、その同族リガンドとの刺激分子(例えば、TCR/CD3複合体)の結合によって誘導される一次応答を指し、それによって、TCR/CD3複合体を介したシグナル伝達を含むがこれに限定されないシグナル伝達イベントを媒介する。
【0154】
“刺激分子”は、同族刺激リガンドと特異的に結合するT細胞上の分子を指す。
【0155】
本明細書で使用される場合、「刺激リガンド」は、抗原提示細胞(例えば、aAPC、樹状細胞、B細胞など)上に存在するとき、T細胞上の同族結合パートナー(本明細書では「刺激分子」と称される)と特異的に結合することができ、それによって、T細胞による一次応答を媒介し、限定されるものではないが、活性化、免疫反応の開始、増殖等を含む。刺激リガンドには、CD3リガンド、例えば抗CD3抗体およびCD2リガンド、例えば、抗CD2抗体、およびペプチド、例えば、CMV、HPV、EBVペプチドが含まれるが、これらに限定されない。
【0156】
用語「活性化」は、検出可能な細胞増殖を誘導するために十分に刺激されたT細胞の状態を指す。特定の実施形態では、活性化はまた、誘発サイトカイン産生、および検出可能なエフェクター機能と関連し得る。用語「活性化T細胞」は、とりわけ、増殖しているT細胞を指す。TCRのみを通じて生じたシグナルは、T細胞の完全な活性化には不充分であること、および一つ以上の二次シグナルまたは共刺激性シグナルも必要であることが知られている。したがって、T細胞活性化は、TCR/CD3複合体による一次刺激シグナルおよび一つ以上の二次共刺激シグナルを含む。共刺激は、CDCD3/TCR複合体またはCD2を介した刺激など、一次活性化シグナルを受けているT細胞による増殖および/またはサイトカイン産生によって証明され得る。
【0157】
「共刺激シグナル」は、TCR/CD3ライゲーションなどの一次シグナルと組み合わせたシグナルを指し、T細胞増殖、サイトカイン産生、および/または特定の分子(例えば、CD28)の上方制御または下方制御をもたらす。
【0158】
「共刺激リガンド」は、共刺激分子に結合する分子を指す。共刺激性リガンドは、可溶性であってもよく、または表面に提供されてもよい。「共刺激分子」は、共刺激リガンド(例えば、抗CD28抗体)と特異的に結合するT細胞上の同族結合パートナーを指す。
【0159】
本明細書において使用される場合、「自己」とは、同じ対象に由来する細胞を指す。本明細書において使用される場合、「同種」とは、比較した細胞と遺伝的に異なる同じ種の細胞を指す。本明細書において使用される場合、「同系」とは、比較した細胞と遺伝的に同一である、異なる対象の細胞を指す。本明細書において使用される場合、「異種」とは、比較した細胞と異なる種の細胞を指す。好ましい実施形態では、本明細書に企図される方法によって製造される細胞は自己である。
【0160】
本明細書において使用される場合、「個体」および「対象」という用語はしばしば相互交換可能に使用され、本明細書において他の場所で開示される遺伝子療法ベクター、細胞系治療剤、および方法で治療され得る癌の症状を呈する任意の動物を指す。適切な対象(例えば、患者)としては、実験動物(例えば、マウス、ラット、ウサギまたはモルモット)、家畜(farm animal、domestic animal)、またはペット(例えば、ネコまたはイヌ)が挙げられる。非ヒト霊長類、好ましくはヒト患者も含まれる。典型的な対象としては、癌もしくは癌と診断された、またはそのリスクのある、または癌を有するヒト患者が挙げられる。
【0161】
本明細書で使用される場合、用語「患者」は、遺伝子療法ベクター、細胞系治療剤、および本明細書の他の場所で開示される方法を用いて治療され得る特定の適応症と診断された対象を指す。
【0162】
本明細書において使用される場合、「治療」または「治療すること」には、疾患の症状もしくは病理、または病的状態に対する何らかの有益な効果または望ましい効果が含まれ、治療される疾患もしくは病態、例えば癌の一つ以上の測定可能なマーカーの最小の減少であっても含まれ得る。治療には、任意で、疾患もしくは病態の症状の減少または緩和、または疾患もしくは病態の進行の遅延のいずれかが含まれてもよい。「治療」は必ずしも、疾患もしくは状態、またはその関連症状の完全な排除または治癒を示すものではない。
【0163】
本明細書において使用される場合、「予防する」、および例えば「予防される」、「予防すること」といった類似の文言は、疾患もしくは病態、例えば癌の予防、阻害、または発生もしくは再発の可能性の低下を目的としたアプローチを示す。さらに、疾患もしくは状態の発生または再発の遅延、または疾患もしくは状態の症状の発生または再発の遅延も指す。本明細書において使用される場合、「予防」およびその類似文言も、疾患もしくは症状の発生または再発の前の、疾患もしくは状態の強度、作用、症状、および/または負荷量の低下を含む。
【0164】
本明細書において使用される場合、「癌」という用語は概して、異常な細胞が制御されずに分裂し、近傍組織へと浸潤し得る、ある種の疾患または状態に関連する。
【0165】
本明細書において使用される場合、「悪性」という用語は、腫瘍細胞群が制御不能な増殖(すなわち正常限界を超える分裂)、浸潤(すなわち隣接組織への侵入と破壊)、および転移(すなわちリンパまたは血液を介して身体の他の場所へ拡散)のうちの一つ以上を呈する癌を指す。本明細書において使用される場合、「転移する」という用語は、身体の一部分から、別の部分へと癌が拡散することを指す。拡散された細胞により形成された腫瘍は、「転移腫瘍」または「転移癌」と呼ばれる。転移腫瘍は、元の腫瘍(原発腫瘍)の細胞と似た細胞を含有する。
【0166】
本明細書において使用される場合、「良性」または「非悪性」という用語は、大きく成長し得るが、身体の他の部分に拡散しない腫瘍を指す。良性腫瘍は自己限定的であり、多くの場合、浸潤せず、または転移しない。
【0167】
「癌細胞」または「腫瘍細胞」とは、癌性増殖または癌性組織の個々の細胞を指す。「腫瘍」は概して、細胞の異常な増殖による膨張、または細胞の異常な増殖により形成された病変を指し、良性、前癌性、または悪性であり得る。殆どの癌は腫瘍を形成するが、なかには必ずしも腫瘍を形成するわけではない。腫瘍を形成する癌について、癌(細胞)という用語、および腫瘍(細胞)という用語は相互交換可能に使用される。個体中の腫瘍の量は、「全身腫瘍組織量(tumor burden)」であり、腫瘍の数、体積または重量として測定することができる。
【0168】
「強化する」、または「促進する」、または「増加する」、または「拡張する」とは概して、本明細書において予期される組成物が、ビヒクルまたは対照の分子/組成物による反応と比較して、大きな生理学的反応(すなわち下流効果)をもたらす、惹起させる、または発生させる能力を指す。測定可能な生理学的反応としては特にT細胞の拡張、活性化、持続性、および/または癌細胞死殺傷能力の増加が挙げられ、当分野および本明細書の記載の理解から明白である。「増加した」または「強化された」量は、典型的には「統計的に有意な」量であり、ビヒクルまたは対照組成物によりもたらされる反応の1.1、1.2、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30またはそれ以上(例えば500倍、1000倍)(その間および1を超えるすべての整数および小数点を含む、例えば1.5、1.6、1.7、1.8など)である増加を含む場合がある。
【0169】
「減少する」、または「下げる」、または「低める」、または「低下する」、または「弱める」とは概して、本明細書において予期される組成物が、ビヒクルまたは対照の分子/組成物による反応と比較して、小さな生理学的反応(すなわち下流効果)をもたらす、惹起させる、または発生させる能力を指す。「減少」または「低減した」量は、典型的には、「統計上有意な」量であり、ビヒクル、または対照組成物により生じる応答(参照の応答)の1.1、1.2、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30倍以上(例えば、500、1000倍)(中間の全ての整数および小数点、1以上、例えば、1.5、1.6、1.7、1.8など)である減少を含み得る。
【0170】
「維持する」、または「保存する」、または「維持」、または「変化がない」、または「実質的な変化がない」、または「実質的な減少が無い」とは概して、本明細書において予期される組成物が、ビヒクル、または対照の分子/組成物のいずれかにより生じた反応と比較して、細胞において類似した生理学的反応(すなわち、下流効果)をもたらす、惹起させる、または生じさせる能力を指す。同等の反応は、基準反応と実質的に違わない、または測定可能な程度に違わない反応である。
【0171】
「抗原(Ag)」とは、動物へ注射される、または動物に吸収される組成物(例えば腫瘍特異的タンパク質を含む組成物など)を含む、動物において抗体産生またはT細胞反応を刺激し得る化合物、組成物または物質を指す。抗原は、例えば本開示抗原などの異種抗原により誘導される産物を含む、特異的な液性免疫または細胞性免疫の産物と反応する。「標的抗原」または「標的抗原または対象」は、本明細書に予期されるCARの結合ドメインが結合するよう設計された抗原である。
【0172】
「エピトープ」または「抗原性決定基」とは、結合物質が結合する抗原の領域を指す。
【0173】
「ポリペプチド」「ポリペプチド断片」、「ペプチド」および「タンパク質」は、反対であることが明記されない限り、従来的な意味、すなわちアミノ酸配列として相互交換可能に使用される。ポリペプチドは特定の長さに限定されず、例えばポリペプチドは、全長タンパク質配列または全長タンパク質の断片を含有してもよく、ポリペプチドは、例えばグリコシル化、アセチル化、リン酸化などのポリペプチドの翻訳後修飾を含んでもよく、ならびに当分野に公知の天然および非天然の他の修飾を含んでもよい。ポリペプチドは、様々な公知の組み換え技術および/または合成技術のいずれかを使用して調製され得る。本明細書で企図されるポリペプチドは、本開示のCAR、または本明細書に開示されるCARの一つまたは複数のアミノ酸の欠失、付加、および/または置換を有する配列を特異的に包含する。特定の実施形態では、用語「ポリペプチド」は、バリアント、断片、および融合ポリペプチドをさらに含む。
【0174】
本明細書において使用される場合、「単離ペプチド」または「単離ポリペプチド」などは、細胞環境からの、および細胞の他の構成要素との会合からの、ペプチド分子またはポリペプチド分子のインビトロでの単離および/または精製を指す。すなわち、インビボでの物質と実質的に関連づけられていない。同様に、「単離細胞」は、インビボ組織または臓器から取得され、細胞外基質を実質的に含まない細胞を指す。
【0175】
ポリペプチドバリアントは、一つ以上の置換、欠失、付加および/または挿入により、天然ポリペプチドとは異なっている場合がある。そうしたバリアントは、天然であってもよく、または例えば上述のポリペプチド配列の一つ以上を改変することにより合成的に生成されてもよい。例えば特定の実施形態では、一つ以上の置換、欠失、付加および/または挿入を結合ドメイン、ヒンジ、TMドメイン、共刺激シグナル伝達ドメインまたはCARポリペプチドの一次シグナル伝達ドメインに導入することにより、CARの結合親和性および/または他の生物学的特性を改善することが望ましい場合がある。本発明のポリペプチドは、それに対する少なくとも約65%、70%、75%、85%、90%、95%、98%、または99%のアミノ酸同一性を有するポリペプチドを含むことが好ましい。
【0176】
ポリペプチドには「ポリペプチド断片」が含まれる。ポリペプチド断片は、単量体または多量体であってもよく、アミノ末端欠失、カルボキシル末端欠失、および/または自然発生的または組み換えにより産生されたポリペプチドの内部欠失または置換を有する、生物学的に活性なポリペプチドの断片を指す。ある実施形態では、ポリペプチド断片は、少なくとも5~約500アミノ酸の長さのアミノ酸鎖を含有し得る。ある実施形態では、断片は、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、150、200、250、300、350、400、または450それ以上のアミノ酸の長さである。
【0177】
融合ポリペプチドおよび融合タンパク質とは、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9または10個以上のポリペプチドセグメントを有するポリペプチドを指す。
【0178】
本明細書で使用される場合、用語「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、メッセンジャーRNA(mRNA)、RNA、ゲノムRNA(gRNA)、プラス鎖RNA(RNA(+))、マイナス鎖RNA(RNA(-))、ゲノムDNA(gDNA)、相補的DNA(cDNA)、または組換えDNAを指す。ポリヌクレオチドは、一本鎖および二本鎖ポリヌクレオチドを含む。好ましくは、本発明のポリヌクレオチドは、本明細書に記載される参照配列(例えば、配列表を参照のこと)のいずれかに対して少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するポリヌクレオチドまたはバリアントが含まれ、典型的には、バリアントは、参照配列の少なくとも一つの生物学的活性を維持する。様々な例示的な実施形態において、本発明は、部分的に、発現ベクター、ウイルスベクター、およびトランスフェクトプラスミド、並びに組成物、並びにそれらを含む細胞を含むポリヌクレオチドを企図する。
【0179】
本明細書において使用される場合、「単離ポリヌクレオチド」とは、自然状態で隣接する配列から精製されたポリヌクレオチドを指し、例えば、通常では当該断片と隣接する配列から取り出されたDNA断片を指す。「単離ポリヌクレオチド」はさらに、自然界では存在せず、ヒトの手により作製された相補的DAN(cDNA)、組み換えDNA、または他のポリヌクレオチドも指す。
【0180】
発現ベクター中に存在する「制御要素」、「制御配列」は、ベクターの非翻訳領域であり、複製起源、選択カセット、プロモーター、エンハンサー、翻訳開始シグナル(Shine Dalgarno配列またはKozak配列)、イントロン、ポリアデニル化配列、5’および3’の非翻訳領域が挙げられ、宿主の細胞タンパク質と相互作用して、転写と翻訳を実行する。そうした因子は、その強度および特異性を変化させてもよい。利用するベクターシステムおよび宿主に応じて、ユビキタスプロモーターおよび誘導性プロモーターをはじめとする任意の数の適切な転写因子および翻訳因子を使用してもよい。
【0181】
「内因性」制御配列は、ゲノム中で所与の遺伝子と自然に連結される配列である。「外因性」制御配列は、その遺伝子の転写が連結されたエンハンサー/プロモーターによって指向されるように、遺伝子操作の手段(すなわち、分子生物学的技法)によって遺伝子と並立に配置されるものである。「異種」制御配列は、遺伝子操作される細胞とは異なる種に由来する外因性配列である。
【0182】
本明細書において使用される場合、「プロモーター」という用語は、RNAポリメラーゼが結合するポリヌクレオチド(DNAまたはRNA)の認識部位を指す。RNAポリメラーゼは、プロモーターに操作可能に連結されたポリヌクレオチドの転写を開始させる。特定の実施形態では、哺乳動物細胞で動作するプロモーターは、転写が開始される部位からおよそ25~30塩基上流に位置するAT-リッチ領域、および/または転写開始部位から70~80塩基上流に存在する別の配列であるCNCAAT領域を含有し、式中、Nは任意のヌクレオチドであり得る。
【0183】
「エンハンサー」という用語は、転写の強化を提供することができる配列を含むDNAセグメントを指し、一部の場合では、別の制御配列に対する方向性に関係なく機能することができる。エンハンサーは、プロモーター因子および/または他のエンハンサー因子と協働して、または相加的に機能することができる。「プロモーター/エンハンサー」という用語は、プロモーター機能とエンハンサー機能の両方を提供することができる配列を含むDNAセグメントを指す。
【0184】
「操作可能に連結した」という用語は、記載される構成要素が、それらが意図された様式で機能することができるような関係にある並置を意味する。一実施形態では、用語は、核酸発現制御配列(プロモーターおよび/またはエンハンサーなど)と第二のポリヌクレオチド配列、例えば、対象のポリヌクレオチドとの間の機能的結合を指し、ここで、発現制御配列は、第二の配列に対応する核酸の転写を指示する。
【0185】
「ベクター」という用語は、本明細書において、もう一つの核酸分子を移送または輸送することができる核酸分子を指すために使用される。
【0186】
追加の定義は、本開示全体を通じて記載されている。
【0187】
C.T細胞製造方法
本明細書に企図される方法によって製造されるT細胞は、改善された養子免疫療法組成物を提供する。本発明は、PI3K阻害剤を使用した既存の10日間のT細胞製造プロセスと比較して、より強力なT細胞を生成する、PI3K阻害剤を使用した5日~7日のT細胞製造プロセスを企図する。任意の特定の理論に束ねられることを意図するものではないが、本明細書に企図される方法によって製造されたT細胞組成物、例えば抗BCMA CAR T細胞が、より強力な(富化された)T細胞集団の数の増加を含むと考えられる。特定の実施形態では、本明細書で企図される5日~7日の製造方法は、CD27+および/またはLEF1+および/またはCCR7+および/またはTCF1+ T細胞の富化された集団をもたらす。特定の実施形態では、本明細書で企図される5日~7日の製造方法は、CD27+およびLEF1+および/またはCCR7+および/またはTCF1+ T細胞の富化された集団をもたらす。特定の実施形態では、本明細書で企図される5日~7日の製造方法は、CD27+およびLEF1+およびCCR7+および/またはTCF1+ T細胞の富化された集団をもたらす。特定の実施形態では、本明細書で企図される5日~7日の製造方法は、CD27+およびLEF1+およびCCR7+およびTCF1+ T細胞の富化された集団をもたらす。特定の実施形態では、本明細書で企図される5日間~7日間の製造方法は、CD27+CD8+幹細胞メモリーT細胞(TSCM)およびCD27+CD4+中央メモリーT細胞(TCM)の富化された集団をもたらす。特定の実施形態では、本明細書で企図される5日間~7日間の製造方法は、LEF1+CD8+幹細胞メモリーT細胞(TSCM)およびLEF1+CD4+中央メモリーT細胞(TCM)の富化された集団をもたらす。特定の実施形態では、本明細書で企図される5日間~7日間の製造方法は、CD27+LEF1+CD8+幹細胞メモリーT細胞(TSCM)およびCD27+LEF1+CD4+中央メモリーT細胞(TCM)の富化された集団をもたらす。特定の実施形態では、本明細書で企図される5日間~7日間の製造方法は、CD27+LEF1+CCR7+CD8+幹細胞メモリーT細胞(TSCM)およびCD27+LEF1+CCR7+CD4+中央メモリーT細胞(TCM)の富化された集団をもたらす。特定の実施形態では、本明細書で企図される5日間~7日間の製造方法は、CD27+LEF1+TCF1+CD8+幹細胞メモリーT細胞(TSCM)およびCD27+LEF1+ TCF1+CD4+中央メモリーT細胞(TCM)の富化された集団をもたらす。特定の実施形態では、本明細書で企図される5日間~7日間の製造方法は、CD27+LEF1+CCR7+TCF1+CD8+幹細胞メモリーT細胞(TSCM)およびCD27+LEF1+CCR7+TCF1+CD4+中央メモリーT細胞(TCM)の富化された集団をもたらす。さらに、PI3K阻害剤を使用した5日間~7日間のT細胞製造プロセスは、PI3K阻害剤を使用した10日間のプロセスで製造されたT細胞と比較して、差次的な遺伝子発現シグネチャーを含む。養子細胞療法、例えば、これらの富化された細胞集団を含むCAR T細胞療法は、治療の有効性を含むことなく、臨床医が細胞用量を減少させ、細胞効力および持続性を増加させることを可能にする。
【0188】
様々な実施形態において、T細胞を製造する方法は、T細胞集団を活性化すること、T細胞集団を刺激して増殖させること、CARをコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターでT細胞を形質導入すること、および形質導入したT細胞を培養して約4日~約6日間増殖させることを含み、全ての方法ステップは、PI3K阻害剤の存在下で実施される。
【0189】
本明細書に企図されるT細胞製造方法の特定の実施形態での使用に適したPI3K阻害剤の例には、限定されるものではないが、BKM120(クラス1 PI3K阻害剤、ノバルティス社)、XL147(クラス1 PI3K阻害剤、エキセリキシス社)、(汎PI3K阻害剤、グラクソスミスクライン社)、およびPX-866(クラス1 PI3K阻害剤、p110α、p110β、およびp110γアイソフォーム、オンコセリオン社)が含まれる。選択的PI3K阻害剤のその他の例示的な例としては、限定されるものではないが、BYL719、GSK2636771、TGX-221、AS25242、CAL-101、ZSTK474、およびIPI-145が挙げられる。汎PI3K阻害剤のさらなる例示的な例としては、限定されるものではないが、BEZ235、LY294002、GSK1059615、TG100713、およびGDC-0941が挙げられる。
【0190】
本明細書で企図される最も好ましい実施形態では、製造方法は、PI3K阻害剤ZSTK474(CAS NO.475110-96-4)を使用する。
【0191】
様々な実施形態において、PI3K阻害剤は、製造プロセス全体を通して、少なくとも1nM、少なくとも2nM、少なくとも5nM、少なくとも10nM、少なくとも50nM、少なくとも100nM、少なくとも200nM、少なくとも500nM、少なくとも1μM、少なくとも10μM、少なくとも50μM、少なくとも100μM、または少なくとも1Mの濃度で使用される。
【0192】
好ましい実施形態では、PI3K阻害剤は、製造プロセス全体を通して約1μMの濃度で使用される。
【0193】
T細胞は、限定されないが、末梢血単核細胞(PBMC)、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位の組織、腹水、胸水、脾臓組織および腫瘍を含むいくつかの源から取得することができる。ある実施形態では、T細胞は、例えばFICOLL(商標)分離などの沈殿作用といった当業者に公知の任意の数の技術を使用して対象から採取された血液ユニットから取得されることができる。
【0194】
特定の実施形態では、PBMCは、本明細書で企図されるT細胞製造方法においてT細胞の供給源として使用される。PBMCは、CD4+、CD8+、またはCD4+およびCD8+であり得るTリンパ球の異種の集団を形成し、単球、B細胞、NK細胞、およびNKT細胞などの他の単核細胞を含み得る。
【0195】
好ましい実施形態では、T細胞製造プロセスは、個体の循環血液からPBMCの供給源をアフェレーシスにより得ることから始まる。アフェレーシス産物は、典型的には、T細胞、単球、顆粒球、B細胞、他の有核白血球、赤血球、および血小板を含むリンパ球を含有する。一つの実施形態では、アフェレーシスによって収集された細胞は、洗浄して、血漿画分を除去し、その後の処理のために細胞を適切な緩衝液または培地に定置してもよい。細胞は、PBS、またはカルシウム、マグネシウム、および他の全ての二価カチオンではないにしてもほとんどの二価カチオンを欠く別の適切な溶液で洗浄することができる。当業者であれば理解するように、洗浄工程は、半自動フロースルー遠心分離器を使用することなど、当業者に周知の方法によって達成され得る。例えば、Cobe 2991細胞プロセッサ、Baxter CytoMate、または類似のものが挙げられる。洗浄後、細胞は、緩衝液と共に、または緩衝液なしで、様々な生体適合性緩衝液または他の生理食塩水中に再懸濁されてもよい。特定の実施形態では、アフェレーシス試料の望ましくない成分は、細胞中で直接再懸濁培地中で除去されてもよい。T細胞製造の方法は、2016年10月25日に出願された“Improved Methods for Manufacturing Adoptive Cell Therapies”と題する米国特許出願第15/306,729号、米国特許出願 2016年12月6日出願の“Improved T Cell Compositions”と題する米国特許出願第15/316,792号、2018年6月7日に出願された“Improved T Cell Compositions”と題する米国特許出願第16/060,184号に開示され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。特定の実施形態では、T細胞、例えば、PBMCを含む細胞の集団が、本明細書で企図される製造方法で使用される。他の実施形態では、単離された、または精製されたT細胞集団が本明細書で企図される製造方法に使用される。
【0196】
PBMCは、T細胞組成物の十分な治療用量を達成するために、その中に含まれるT細胞集団を活性化および刺激するように処理されてもよい。特定の実施形態では、T細胞は一般的に、例えば米国特許第6,352,694号、第6,534,055号、第6,905,680号、第6,692,964号、第5,858,358号、第6,887,466号、第6,905,681号、第7,144,575号、第7,067,318号、第7,172,869号、第7,232,566号、第7,175,843号、第5,883,223号、第6,905,874号、第6,797,514号、および第6,867,041号に記載される方法を使用して活性化および拡張され得る。それら特許はその全体で参照により本明細書に援用される。
【0197】
好ましい実施形態では、T細胞は、PI3K阻害剤、例えば、ZSTK474の存在下で活性化され、刺激される。本明細書で意図される方法は、活性化および刺激の単一のラウンドのみが実施されるという点で既存の方法とは異なり、当分野の方法は、通常、活性化および増殖のラウンドを2回、3回、4回、または5回以上使用する。
【0198】
T細胞活性化は、T細胞TCR/CD3複合体によって、またはCD2表面タンパク質を刺激することによって、一次共刺激シグナルを提供することによって達成され得る。TCR/CD3複合体は、T細胞を、適切なCD3結合剤、例えばCD3リガンドまたは抗CD3モノクローナル抗体に接触させることにより刺激されてもよい。CD3抗体の例示としては限定されないが、OKT3、G19-4、BC3および64.1が挙げられる。TCR/CD3複合体を介して提供される一次刺激シグナルに加えて、またはCD2を介して、T細胞反応の誘導には二次的な共刺激性シグナルを必要とする。特定の実施形態では、CD28結合剤を使用して、共刺激性シグナルを提供してもよい。CD28結合物質の例示としては限定されないが、天然CD28リガンド、例えばCD28に対する天然リガンド(例えばタンパク質のB7ファミリーのメンバー、例えばB7-1(CD80)およびB7-2(CD86);および抗CD28モノクローナル抗体、またはCD28分子と交差結合することができるその断片、例えばモノクローナル抗体の9.3、B-T3、XR-CD28、KOLT-2、15E8、248.23.2、およびEX5.3D10が挙げられる。
【0199】
好ましい実施形態では、T細胞は、可溶性抗CD3抗体で活性化され、抗CD28抗体で増殖するように刺激される。特定の実施形態では、抗CD3抗体および抗CD8抗体は、例えば、Dynabeadなどの常磁性ビーズなどのビーズに固定、係留、または結合される。
【0200】
特定の実施形態では、抗CD3抗体および抗CD8抗体は、細胞の表面に局在している。好ましい実施形態では、一次リガンドおよび共刺激性リガンド、例えば、抗CD3抗体および抗CD28抗体は、PBMC画分に存在する抗原提示細胞(例えば、aAPC、樹状細胞、B細胞など)上に提示される。
【0201】
特定の実施形態では、T細胞は、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、約24時間、約25時間、約26時間、約27時間、約28時間、約29時間、または約30時間、活性化および刺激される。特定の実施形態では、約24時間、T細胞は活性化され、刺激される。
【0202】
特定の実施形態では、T細胞は、約16時間~約30時間、約16時間~約24時間、約18時間~約24時間、または約20時間~約24時間にわたって活性化および刺激される。
【0203】
好ましい実施形態では、活性化および刺激工程に供される細胞は、PI3K阻害剤、例えば、ZSTK474の存在下で形質導入される。プロセスのこの工程の目的は、免疫エフェクター細胞を形質導入することであるが、他の細胞が存在し、形質導入されてもよく、例えば、PBMCを出発物質として使用する場合、CD4+、CD8+、またはCD4+およびCD8+は、単球、B細胞、NK細胞、およびNKT細胞などの他の単核細胞と同様に形質導入される。好ましい実施形態では、活性化および刺激されたT細胞は、CARをコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターで形質導入される。特定の実施形態において企図される特定の実施形態での使用に適したウイルスベクター系の例示としては限定されないが、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レトロウイルスベクター、例えば、レンチウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、アデノウイルスベクター、およびワクシニアウイルスベクターが挙げられる。
【0204】
好ましい実施形態では、細胞は、CARをコードするポリヌクレオチドを含むレンチウイルスで形質導入される。本明細書において使用される場合、「レンチウイルス」という用語は、複合的なレトロウイルスの群(または属)を指す。レンチウイルスの例としては限定されないが、HIV(ヒト免疫不全ウイルス、HIV1型およびHIV2型を含む)、ビスナ-マエディウイルス(VMV)、ヤギ関節炎-脳炎ウイルス(CAEV)、ウマ感染性貧血ウイルス(EIAV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)、およびサル免疫不全ウイルス(SIV)が挙げられる。一つの実施形態では、HIV-1をベースとしたベクター骨格(すなわちHIVシス作用性配列因子)が好ましい。
【0205】
様々な実施形態では、本明細書に企図されるレンチウイルスベクターは、キメラ5’長末端リピート(LTR)、例えば、キメラCMV/5’LTRプロモーター、および以下のアクセサリ要素の1つ以上または全て:cPPT/FLAP(Zennouら、2000、Cell、101:173)、Psi(Ψ)パッケージングシグナル(Cleverら、1995.J.of Virology、Vol.69、No.4;pp.2101-2109)、排出要素、例えば、RRE(Cullenら、1991.J.Virol.65:1053;およびCullenら、1991.Cell 58:423)、ポリ(A)配列、任意にWPRE(Zuffereyら、1999、J.Virol.、73:2886)またはHPRE(Huangら、Mol.Cell.Biol.、5:3864)、絶縁体要素、選択マーカー、または細胞自殺遺伝子、および改変自己不活化(SIN)3’LTRを含む。「自己不活性化型」(SIN)ベクターとは、U3領域として知られる右(3’)LTRエンハンサー・プロモーター領域が1回目のウイルス複製以降のウイルス転写を防止するように(例えば欠失または置換によって)修飾されている、複製欠損ベクター、例えば、レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターを指す。特定の実施形態では、レンチウイルスベクターは、小胞性口内炎ウイルスG-タンパク質(VSV-G)エンベロープタンパク質を用いてシュードタイプ化され、ベクターが広範囲の細胞に感染することを可能にする。ある実施形態では、レンチウイルスベクターは、公知の方法により産生される。例えば、Kutnerら、BMC Biotechnol.2009;9:10.doi:10.1186/1472-6750-9-10;Kutnerら Nat.Protoc.2009;4(4):495-505.doi:10.1038/nprot.2009.22を参照のこと。
【0206】
特定の実施形態では、活性化および刺激の後、細胞は、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、約24時間、約25時間、約26時間、約27時間、約28時間、約29時間、または約30時間、形質導入される。特定の実施形態では、細胞は約24時間形質導入される。
【0207】
特定の実施形態では、活性化および刺激の後、細胞は、約16時間~約30時間、約16時間~約24時間、約18時間~約24時間、または約20時間~約24時間形質導入される。
【0208】
好ましい実施形態では、形質導入後、細胞は、PI3K阻害剤、例えばZSTK474の存在下で、例えば、T細胞、CAR T細胞、または抗BCMA CAR T細胞などの免疫エフェクター細胞、増殖を促進する条件下で培養される。予想外に、発明者らは、(形質導入後)1日、2日、3日、4日、5日、または6日の極端に短い増殖または増殖期間で、CD27+細胞、TCM、およびTSCMが富化された非常に強力な細胞療法産物が産生されることを発見した。
【0209】
特定の実施形態では、T細胞培養に適した条件または増殖培地には、適切な培地(例えばMinimal Essential MediaまたはRPMI Media 1640またはX-vivo 15(Lonza社))、および増殖と活性に必要な一つ以上の因子が含まれ、当該因子としては限定されないが血清(例えばウシ胎児血清またはヒト血清)、インターロイキン-2(IL-2)、インスリン、IFN-γ、IL-4、IL-7、IL-21、GM-CSF、IL-10、IL-12、IL-15、TGFβおよびTNF-αまたは当業者に公知の細胞増殖に適した任意の他の添加物が挙げられる。細胞培養培地のさらなる例示としては限定されないが、RPMI 1640、Clicks、AIM-V、DMEM、MEM、a-MEM、F-12、X-Vivo 1 5、およびX-Vivo 20、Optimizerが挙げられ、それらにアミノ酸、ピルビン酸ナトリウムおよびビタミン類が添加され、無血清であるか、または適切な量の血清(または血漿)もしくは所定のホルモンの組み合わせ、および/またはT細胞の増殖と拡張に充分な量のサイトカインが補充される。T細胞増殖のための他の添加剤の例には、限定されるものではないが、界面活性剤、血漿タンパク質分画、HEPESなどのpH緩衝剤、およびN-アセチル-システインおよび2-メルカプトエタノールなどの還元剤が含まれる。
【0210】
好ましい実施形態では、T細胞は、T細胞増殖培地(TCGM)中で、1、2、3、4、5、または6日間、増殖のために培養され、10mMのHEPES、2mMのGlutaMax、および5%のヒトAB血清を補充したX-VIVO 15で調製した。好ましい実施形態では、製造プロセスは、一つ以上のサイトカイン、好ましくはIL-2、IL-7、および/またはIL-15、より好ましくはIL-2の存在下で実施される。
【0211】
特定の実施形態では、細胞増殖または増殖期は、約1日~約6日、約2日~約6日、約3日~約6日、または約4日~約6日の間実施される。好ましい実施形態では、細胞増殖または増殖期は、約4日間~約6日間実施される。
【0212】
特定の実施形態では、細胞増殖または増殖期は、約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、または約6日間実施される。好ましい実施形態では、細胞増殖または増殖期は、約4日間実施される。特に好ましい実施形態では、細胞増殖または増殖期は、約6日間実施される。
【0213】
様々な実施形態において、T細胞組成物は、PI3K経路の一つ以上の阻害剤の存在下で製造される。阻害剤は、経路内の一つまたは複数の活性または単一の活性を標的としうる。いかなる特定の理論にも束ねられることを意図するものではないが、製造プロセスの刺激、活性化、および/または増殖期の間に、T細胞を、PI3K経路の一つまたは複数の阻害剤と処置または接触させることは、若いT細胞を優先的に増加させ、それによって優れた治療用T細胞組成物を産生することになる。
【0214】
様々な実施形態において、CAR T細胞を製造する方法は、T細胞集団を活性化すること、T細胞集団を刺激して増殖させること、CARをコードするポリヌクレオチドを含むレンチウイルスベクターでT細胞を形質導入すること、および形質導入したT細胞を培養して約4日~約6日間増殖させることを含み、全ての方法ステップは、PI3K阻害剤の存在下で実施され、増殖されたCAR T細胞は、形質導入細胞をPI3K阻害剤において、約9日間培養する製造プロセスに比べて、TCMおよびTSCM細胞が富化している。
【0215】
特定の実施形態では、抗BCMA CAR T細胞を製造する方法は、約4日~約6日の増殖または増殖培養することを含み、形質導入細胞をPI3K阻害剤において約9日間培養する製造プロセスに比べて、TCM表現型を有するCD4+ T細胞が約1.5倍、約2.0、約2.5倍、約3倍、約3.5倍、約4倍、約4.5倍、または約5倍富化し、TSCM表現型を有するCD8+ T細胞が約1.5倍、約2.0、約2.5倍、約3倍、約3.5倍、約4倍、約4.5倍、または約5倍富化している。
【0216】
様々な実施形態において、CAR T細胞を製造する方法は、T細胞集団を活性化すること、T細胞集団を刺激して増殖させること、CAR、例えば、配列番号1(例えば配列番号2)に記載されるアミノ酸配列を含む抗BCMA CARをコードするポリヌクレオチドを含むレンチウイルスベクターでT細胞を形質導入すること、約4日~約6日間、形質導入したT細胞を培養して増殖させることを含み、全ての方法ステップは、PI3K阻害剤の存在下で実施され、増殖されたCAR T細胞は、形質導入細胞をPI3K阻害剤において約9日間培養する製造プロセスに比べて、CD27+細胞が富化している。
【0217】
特定の実施形態では、約4日~約6日間の増殖または増殖培養を含む抗BCMA CAR T細胞を製造する方法は、形質導入細胞がPI3K阻害剤で約9日間培養される製造プロセスと比較して、CD27+ T細胞が約1.5倍、約2.0倍、約2.5倍、約3倍、約3.5倍、約4倍、約4.5倍、または約5倍富化される。
【0218】
特定の実施形態では、約4日~約6日間の増殖または増殖培養を含む抗BCMA CAR T細胞を製造する方法は、形質導入細胞がPI3K阻害剤で約9日間培養される製造プロセスと比較して、1つ以上のCD27、CD25、CD127、TCF1、LEF1、CD28、および/またはCCR7発現T細胞の数が約1.5倍、約2.0倍、約2.5倍、約3倍、約3.5倍、約4倍、約4.5倍、または約5倍富化または増加する。特定の実施形態では、約4日~約6日間の増殖または増殖培養を含む抗BCMA CAR T細胞を製造する方法は、形質導入細胞がPI3K阻害剤で約9日間培養される製造プロセスと比較して、1つ以上のCD27、CD25、CD127、TCF1、および/またはLEF1、および/またはCCR7発現T細胞の数が約1.5倍、約2.0倍、約2.5倍、約3倍、約3.5倍、約4倍、約4.5倍、または約5倍富化または増加する。特定の実施形態では、約4日~約6日間の増殖または増殖培養を含む抗BCMA CAR T細胞を製造する方法は、形質導入細胞がPI3K阻害剤で約9日間培養される製造プロセスと比較して、1つ以上のグランザイムA、グランザイムB、パーフォリン、T-bet、およびEOMESを発現するT細胞の数が約1.5倍、約2.0倍、約2.5倍、約3倍、約3.5倍、約4倍、約4.5倍、または約5倍減少する。
【0219】
様々な実施形態において、抗BCMA CAR T細胞を製造する方法は、T細胞集団を活性化し、T細胞集団を刺激して増殖させること、配列番号1(例えば配列番号2)に記載されるアミノ酸配列を含む抗BCMA CARをコードするポリヌクレオチドを含むレンチウイルスベクターでT細胞を形質導入すること、約4日~約6日間、形質導入したT細胞を培養して増殖させることを含み、全ての方法の工程は、PI3K阻害剤の存在下で実施され、増殖されたT細胞は、形質導入細胞をPI3K阻害剤において約9日間培養する製造プロセスに比べて、CD27+CD4+ TCMおよびCD27+CD8+ TSCM細胞が富化している。
【0220】
特定の実施形態では、抗BCMA CAR T細胞を製造する方法は、約4日~約6日の増殖または増殖培養することを含み、形質導入細胞をPI3K阻害剤において約9日間培養する製造プロセスに比べて、TCM表現型を有するCD27+CD4+ T細胞が約1.5倍、約2.0、約2.5倍、約3倍、約3.5倍、約4倍、約4.5倍、または約5倍富化し、TSCM表現型を有するCD27+CD8+ T細胞が約1.5倍、約2.0、約2.5倍、約3倍、約3.5倍、約4倍、約4.5倍、または約5倍富化している。
【0221】
様々な実施形態において、抗BCMA CAR T細胞を製造する方法は、T細胞集団を活性化し、T細胞集団を刺激して増殖させること、配列番号1(例えば配列番号2)に記載されるアミノ酸配列を含む抗BCMA CARをコードするポリヌクレオチドを含むレンチウイルスベクターでT細胞を形質導入すること、約4日~約6日間、形質導入したT細胞を培養して増殖させることを含み、全ての方法ステップは、PI3K阻害剤の存在下で実施され、増殖されたT細胞は、形質導入細胞をPI3K阻害剤において約9日間培養する製造プロセスに比べて、CD27+および/またはLEF1+ および/またはCCR7+ および/またはTCF1+ CD4+ TCM およびCD27+ および/またはLEF1+ および/またはCCR7+ および/またはTCF1+ CD8+ TSCM細胞が富化している。
【0222】
特定の実施形態では、抗BCMA CAR T細胞を製造する方法は、約4日~約6日の増殖または増殖培養することを含み、形質導入細胞をPI3K阻害剤において約9日間培養する製造プロセスに比べて、TCM表現型を有するCD27+ および/またはLEF1+ および/またはCCR7+ および/またはTCF1+ CD4+ T細胞が約1.5倍、約2.0、約2.5倍、約3倍、約3.5倍、約4倍、約4.5倍、または約5倍富化し、TSCM表現型を有するCD27+ および/または LEF1+ および/または CCR7+ および/または TCF1+ CD8+ T細胞が約1.5倍、約2.0、約2.5倍、約3倍、約3.5倍、約4倍、約4.5倍、または約5倍富化している。
【0223】
様々な実施形態において、抗BCMA CAR T細胞を製造する方法は、T細胞集団を活性化し、T細胞集団を刺激して増殖させること、配列番号 1(例えば、配列番号2)に記載されるアミノ酸配列を含む抗BCMA CARをコードするポリヌクレオチドを含むレンチウイルスベクターでT細胞を形質導入すること、形質導入されたT細胞を培養して、約4日~約6日間増殖させることを含み、方法の工程のすべてが、PI3K阻害剤の存在下で行われ、増殖T細胞の遺伝子発現シグネチャーが、核受容体サブファミリー4グループAメンバー2(NR4A2)、CD229(LY9)、Lin-7ホモログA(LIN7A)、ウィングレスタイプのMMTV統合サイトファミリー、メンバー5B(WNT5B)、B細胞性CLL/リンパ腫6(BCL6)、早期成長応答1(EGR1)、早期成長応答2(EGR2)、活性化転写因子3(ATF3)、C-Cモチーフケモカイン1(CCL1)、インターロイキン1A(IL-1A)、およびC-Cモチーフケモカイン5(CCL5)の1つ以上またはすべての発現を富化または増加させ、NAD(P)Hキノンデヒドロゲナーゼ1(NQO1)、サイクリンA1(CCNA1)、インターロイキン17F(IL17F)、上皮膜タンパク質1(EMP1)、Small Nucleolar RNA Host Gene 19(SNHG19)、プロリンリッチ22(PRR22)、免疫グロブリン様ドメイン含有受容体2(ILDR2)、ATPaseファミリー、AAAドメイン含有3(ATAD3)、ネイキッドキューティクルホモログ2(NKD2)およびWDリピートドメイン62(WDR62)の1つ以上またはすべての発現を減少させた。
【0224】
様々な実施形態において、抗BCMA CAR T細胞を製造する方法は、T細胞集団を活性化し、T細胞集団を刺激して増殖させること、配列番号1(例えば配列番号2)に記載されるアミノ酸配列を含む抗BCMA CARをコードするポリヌクレオチドを含むレンチウイルスベクターでT細胞を形質導入すること、約4日~約6日間、形質導入したT細胞を培養して増殖させることを含み、方法の工程の全ては、PI3K阻害剤の存在下で実施され、増殖されたT細胞の遺伝子発現シグネチャーが、CCL1、NR4A2、ATF3、CCL5、およびWNT5Bの発現を富化または増加させ、NKD2 およびNQO1の発現を減少させた。
【0225】
「遺伝子発現」は、PI3K阻害剤の存在下または非存在下で製造され、またはPI3K阻害剤の存在下で異なる長さの時間に製造される、生体試料、T細胞集団、例えば、抗BCMA CAR T細胞の遺伝子の相対的発現レベルおよび/または発現パターンを指す。遺伝子発現は、cDNA、RNA、mRNA、またはそれらの組み合わせのレベルで測定されてもよい。遺伝子発現を測定する方法には、定量的リアルタイム、PCR、高密度オリゴヌクレオチドアレイ、ナノストリングトランスクリプトームプロファイリング、またはRNAシーケンシング(RNA-Seq)が含まれるが、これらに限定されない。
【0226】
特定の実施形態では、本明細書に企図されるPI3K阻害剤を使用した7日間の製造プロセスを使用して製造されたCAR T細胞、例えば抗BCMA CAR T細胞を含むT細胞は、本明細書に企図される10日間の製造プロセスを使用して製造されたT細胞に比べて、(i)NR4A2、LY9、LIN7A、WNT5B、BCL6、EGR1、EGR2、ATF3、CCL1、IL-1A、およびCCL5または(ii)CCL1、NR4A2、ATF3, CCL5、およびWNT5Bの発現が少なくとも1.5倍または少なくとも2倍増加することを特徴とする。PI3K阻害剤を使用した7日間のプロセスを使用して製造されたT細胞は、固有の遺伝子発現シグネチャーによってさらに特徴付けられ、以下:NR4A2、LY9、LIN7A、WNT5B、BCL6、EGR1、EGR2、ATF3、CCL1、IL-1A、およびCCL5からなる群から選択される1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または11個のシグネチャー遺伝子の発現が、PI3K阻害剤を使用して10日間のプロセスを使用して製造されたT細胞と比較して、少なくとも1.5倍または少なくとも2倍に増加する。
【0227】
特定の実施形態では、本明細書に企図されるPI3K阻害剤を使用した7日間の製造プロセスを使用して製造されたCAR T細胞、例えば抗BCMA CAR T細胞を含むT細胞は、本明細書に企図される10日間の製造プロセスを使用して製造されたT細胞に比べて、(i)NQO1、CCNA1、IL17F、EMP1、SNHG19、PRR 22、ILDR2、ATAD3、NKD2およびWDR62または(ii)NKD2およびNQO1の発現が少なくとも1.5倍または少なくとも2倍減少することを特徴とする。PI3K阻害剤を使用した7日間のプロセスを使用して製造されたT細胞は、固有の遺伝子発現シグネチャーによってさらに特徴付けられ、以下:NQO1、CCNA1、IL17F、EMP1、SNHG19、PRR 22、ILDR2、ATAD3、NKD2、およびWDR62からなる群から選択される1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個すべてのシグネチャー遺伝子の発現が、PI3K阻害剤を使用した10日間のプロセスを使用して製造されたT細胞と比較して、少なくとも1.5倍または少なくとも2倍減少する。
【0228】
特定の実施形態では、本明細書に企図されるPI3K阻害剤を使用した7日間の製造プロセスを使用して製造されたCAR T細胞、例えば抗BCMA CAR T細胞を含むT細胞は、(i)NR4A2、LY9、LIN7A、WNT5B、BCL6、EGR1、EGR2、ATF3、CCL1、IL-1A、およびCCL5または(ii)CCL1、NR4A2、ATF3、CCL5、およびWNT5Bの発現を少なくとも1.5倍または少なくとも2倍増加させることを特徴とし、本明細書に企図される10日間の製造プロセスを使用して製造されたT細胞に比べて、(i)NQO1、CCNA1、IL17F、EMP1、SNHG19、PRR 22、ILDR2、ATAD3、NKD2およびWDR62または(ii)NKD2およびNQO1の発現が少なくとも1.5倍または少なくとも2倍減少することを特徴とする。PI3K阻害剤を使用した7日間のプロセスを使用して製造されたT細胞は、固有の遺伝子発現シグネチャーによってさらに特徴付けられ、以下:NR4A2、LY9、LIN7A、WNT5B、BCL6、EGR1、EGR2、ATF3、CCL1、IL-1A、およびCCL5からなる群から選択される1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または11個すべてのシグネチャー遺伝子の発現が、少なくとも1.5倍または少なくとも2倍増加し、以下:NQO1、CCNA1、IL17F、EMP1、SNHG19、PRR 22、ILDR2、ATAD3、NKD2、およびWDR62からなる群から選択される1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個すべてのシグネチャー遺伝子の発現が、PI3K阻害剤を使用した10日間のプロセスを使用して製造されたT細胞と比較して、少なくとも1.5倍または少なくとも2倍減少する。
【0229】
様々な実施形態において、抗BCMA CAR T細胞を製造する方法は、T細胞集団を活性化し、T細胞集団を刺激して増殖させることと、配列番号1(例えば配列番号2)に記載されるアミノ酸配列を含む抗BCMA CARをコードするポリヌクレオチドを含むレンチウイルスベクターでT細胞を形質導入すること、形質導入されたT細胞を培養して、約4~約6日間増殖させることを含み、方法のすべての工程は、PI3K阻害剤の存在下で行われ、増殖されたT細胞は、TCMおよびTSCM細胞が富化され、(i)NR4A2、LY9、LIN7A、WNT5B、BCL6、EGR1、EGR2、ATF3、CCL1、IL-1A、およびCCL5または(ii)CCL1、NR4A2、ATF3、CCL5、およびWNT5Bの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはすべての遺伝子発現は、約9日間培養されて増殖したT細胞に比べて、約4~約6日間培養されて増殖した培養されたT細胞において少なくとも1.5倍多い。
【0230】
様々な実施形態において、抗BCMA CAR T細胞を製造する方法は、T細胞集団を活性化し、T細胞集団を刺激して増殖させることと、配列番号1(例えば配列番号2)に記載されるアミノ酸配列を含む抗BCMA CARをコードするポリヌクレオチドを含むレンチウイルスベクターでT細胞を形質導入すること、約4~約6日間、形質導入されたT細胞を培養して、増殖させることを含み、方法のすべての工程は、PI3K阻害剤の存在下で行われ、増殖されたT細胞は、TCM、TSCM細胞を富化し、(i)NQO1、CCNA1、IL17F、EMP1、SNHG19、PRR 22、ILDR2、ATAD3、NKD2およびWDR62または(ii)NKD2およびNQO1の1、2、3、4、5、6、7、8、9またはすべての遺伝子発現は、約9日間培養されて増殖したT細胞に比べて、約4~約6日間培養されて増殖した培養されたT細胞において少なくとも1.5倍少ない。
【0231】
様々な実施形態において、抗BCMA CAR T細胞を製造する方法は、T細胞集団を活性化し、T細胞集団を刺激して増殖させること、配列番号1(例えば配列番号2)に記載されるアミノ酸配列を含む抗BCMA CARをコードするポリヌクレオチドを含むレンチウイルスベクターでT細胞を形質導入すること、約4~約6日間、形質導入されたT細胞を培養して、増殖させることを含み、方法のすべての工程は、PI3K阻害剤の存在下で行われ、増殖されたT細胞は、TCMおよびTSCM細胞を富化し、(i)NR4A2、LY9、LIN7A、WNT5B、BCL6、EGR1、EGR2、ATF3、CCL1、IL-1A、およびCCL5または(ii)CCL1、NR4A2、ATF3、CCL5、およびWNT5Bの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはすべての遺伝子発現は、少なくとも1.5倍多く、(i)NQO1、CCNA1、IL17F、EMP1、SNHG19、PRR 22、ILDR2、ATAD3、NKD2およびWDR62または(ii)NKD2およびNQO1の1、2、3、4、5、6、7、8、9またはすべての遺伝子発現は、約9日間培養されて増殖したT細胞に比べて、約4~約6日間培養されて増殖した培養されたT細胞において、少なくとも1.5倍少ない。
【0232】
本明細書で企図される製造方法は、製造プロセスの開始前のPBMCの凍結保存および/または製造されたT細胞組成物の凍結保存をさらに含みうる。養子細胞療法の凍結保存は、ヒト対象における使用のための治療薬の保存、試験、輸送、および放出を可能にする。T細胞は、解凍時に細胞が生存し続けるように凍結保存される。必要に応じて、凍結保存された細胞を解凍し、増殖させ、より多くのそのような細胞に対して増殖させることができる。本明細書で使用される場合、「凍結保存」とは、(典型的には)77Kまたは-196℃(液体窒素の沸点)など、ゼロ以下の温度に冷却することによって細胞を保存することを指す。凍結保存剤は、保存されている細胞を低温での凍結または室温への加熱により損傷しないように、ゼロ以下の温度で使用されることが多い。凍結保存剤および最適な冷却速度は、細胞損傷から保護することができる。使用するできる凍結保護剤としては、以下に限定されないが、ジメチルスルホキシド(DMSO)(Lovelock and Bishop、Nature、1959;183:1394-1395;Ashwood-Smith、Nature、1961;190:1204-1205)、グリセロール、ポリビニルピロリジン(Rinfret、Ann.N.Y.Acad.Sci.、1960;85:576)、ポリエチレングリコール(Sloviter and Ravdin、Nature、1962;196:48)、ならびにCryoStor CS10、CryoStor CS5、およびCryoStor CS2を含む。好ましい実施形態では、製造されたT細胞は、50:50のPlasmaLyte AとCryoStor CS10を含む溶液中で製剤化される。好ましい冷却速度は、1°~3℃/分である。少なくとも2時間後、T細胞は、-80℃の温度に達し、長期低温貯蔵容器など、永久保存のために液体窒素(-196℃)に直接配置することができる。
【0233】
D.キメラ抗原受容体
本明細書で企図される方法は、免疫エフェクター細胞の細胞傷害性を標的抗原を発現する癌細胞に再指示する、より強力な養子細胞療法を製造するために使用される。好ましい実施形態では、本明細書に企図される製造方法は、活性化および刺激されたT細胞を、キメラ抗原受容体(CAR)をコードするウイルスベクターで形質導入して、免疫エフェクター細胞を再指示することを含む。
【0234】
CARは、標的抗原(例えば、腫瘍抗原)に対する抗体ベースの特異性を、T細胞受容体活性化細胞内ドメインと組み合わせて、特異的な抗腫瘍細胞免疫活性を呈するキメラタンパク質を生成する分子である。本明細書に企図されるCARは、シグナルペプチド、特異的標的抗原に結合する細胞外ドメイン(結合ドメイン、または抗原特異的結合ドメインとも呼称される)、膜貫通ドメイン、および一つ以上の細胞内シグナル伝達ドメインに結合する細胞外ドメインを含む。
【0235】
特定の実施形態では、CARは、標的ポリペプチドに特異的に結合する細胞外結合ドメインを含有する。特定の実施形態では、細胞外結合ドメインは、抗体またはその抗原結合断片を含有する。一つの好ましい実施形態では、結合ドメインは、scFvを含む。別の好ましい実施形態では、結合ドメインは、一つ以上のラクダVHH抗体またはシングルドメイン抗体を含む。
【0236】
特定の実施形態では、CARは、アルファ葉酸受容体(FRα)、αvβ6インテグリン、B細胞成熟抗原(BCMA)、B7-H3(CD276)、B7-H6、炭酸脱水酵素IX(CAIX)、CD16、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD37、CD38、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD70、CD79a、CD79b、CD123、CD133、CD138、CD171、癌胎児性抗原(CEA)、C型レシチン様分子-1(CLL-1)、CD2サブセット1(CS-1)、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4(CSPG4)、皮膚T細胞リンパ腫関連抗原1(CTAGE1)、上皮成長因子受容体(EGFR)、上皮成長因子受容体バリアントIII(EGFRvIII)、上皮糖タンパク質2(EGP2)、上皮糖タンパク質40(EGP40)、上皮細胞接着分子(EPCAM)、エフリン型A受容体2(EPHA2)、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、Fc受容体様5(FCRL5)、胎児アセチルコリンエステラーゼ受容体(AchR)、ガングリオシドG2(GD2)、ガングリオシドG3(GD3)、グリピカン-3(GPC3)、ErbB2(HER2)を含むEGFRファミリー、IL-10Rα、IL-13Rα2、カッパー、癌/精巣抗原2(LAGE-1A)、ラムダ、ルイス-Y(LeY)、L1細胞接着分子(L1-CAM)、メラノーマ抗原遺伝子(MAGE)-A1、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A6、MAGEA10、T細胞1により認識されるメラノーマ抗原(MelanAまたはMART1)、メソテリン(MSLN)、MUC1、MUC16、MHCクラスI鎖関連タンパク質A(MICA)、MHCクラスI鎖関連タンパク質B(MICB)、神経細胞接着分子(NCAM)、癌/精巣抗原1(NY-ESO-1)、ポリシアル酸;胎盤特異的1(PLAC1)、メラノーマにおいて優先的に発現する抗原(PRAME)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、滑膜肉腫、X切断ポイント2(SSX2)、サバイビン、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、腫瘍内皮マーカー1(TEM1/CD248)、腫瘍内皮マーカー7関連(TEM7R)、栄養膜糖タンパク質(TPBG)、UL16-結合タンパク質(ULBP)1、ULBP2、ULBP3、ULBP4、ULBP5、ULBP6、血管内皮増殖因子受容体2(VEGFR2)、およびウィルムス腫瘍1(WT-1)からなる群から選択される抗原に結合する細胞外ドメインを含む。
【0237】
好ましい実施形態では、CARは、B細胞成熟抗原に結合する細胞外ドメインを含む。
【0238】
特定の実施形態では、CARはヒンジドメインを含む。ヒンジドメインの例示としては、限定されないが、CD8αおよびCD4といった1型膜タンパク質の細胞外領域に由来するヒンジ領域が挙げられ、これらの分子の野生型ヒンジ領域であってもよく、または改変されてもよい。好ましい実施形態では、CARは、CD8αヒンジ領域を含む。
【0239】
CARの膜貫通(TM)ドメインは、細胞外結合部分と細胞内シグナル伝達ドメインを結合させ、CARを、免疫エフェクター細胞の細胞膜に固定する。TMドメインは、天然源、合成源、半合成源、または組み換え源のいずれかから誘導されてもよい。例示的なTMドメインは、T細胞受容体のアルファ、ベータ、ガンマ、またはデルタ鎖の少なくとも膜貫通領域(複数可)、CD3ε、CD3ζ、CD4、CD5、CD8α、CD9、CD16、CD22、CD27、CD28、CD33、CD37、CD45、CD64、CD71、CD80、CD86、CD134、CD137、CD152、CD154、AMN、およびPDCD1に由来し得る(すなわち、それらを含む。
【0240】
好ましい実施形態では、CARは、CD8α由来のTMドメインを含有する。別の実施形態では、本明細書において予期されるCARは、CD8α由来のTMドメインと、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9または10アミノ酸の長さの短オリゴリンカーまたはポリペプチドリンカーを含有し、当該リンカーは、CARのTMドメインと細胞内シグナル伝達ドメインを連結させる。グリシン-セリンリンカーが、特に適切なリンカーを提供する。
【0241】
好ましい実施形態において、CARは、一つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインおよび主要シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含む。
【0242】
刺激性に作用する一次シグナル伝達ドメインは、免疫受容体チロシン系活性化モチーフ(immunoreceptor tyrosine-based activation motifs)またはITAMとして知られているシグナル伝達モチーフを含有してもよい。
【0243】
特定の実施形態で予期されるCARにおける使用に適したITAM含有一次シグナル伝達ドメインの例示としては、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ、CD22、CD79a、CD79b、およびCD66dに由来するものが挙げられる。特に好ましい実施形態において、CARは、CD3ζ主要シグナル伝達ドメインと一つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインとを含む。細胞内主要シグナル伝達ドメインおよび共刺激シグナル伝達ドメインは、任意の順序でタンデムに膜貫通ドメインのカルボキシル末端と連結され得る。
【0244】
特定の実施形態において、CARは、CAR受容体を発現するT細胞の有効性および拡大を強化するための一つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインを含む。
【0245】
特定の実施形態において企図されるCARにおいて使用するのに好適なかかる共刺激分子の例示的な例としては、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、CARD11、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54(ICAM)、CD83、CD94、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD278(ICOS)、DAP10、LAT、SLP76、TRAT1、TNFR2、およびZAP70が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、CARは、CD28、CD137、およびCD134からなる群から選択される一つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインと、CD3ζ主要シグナル伝達ドメインとを含む。
【0246】
好ましい実施形態では、CARは、CD8αシグナルペプチド、BCMAに結合する細胞外ドメイン、CD8αヒンジおよび膜貫通ドメイン、CD137共刺激ドメイン、およびCD137、ならびにCD3ζ一次シグナル伝達ドメインを含む。より好ましい実施形態では、抗BCMA CARは、配列番号1に記載されるアミノ酸配列を含み、さらに好ましい実施形態では、抗BCMA CARは、配列番号2に記載されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0247】
E.組成物および製剤
本明細書で企図される組成物は、治療有効量のCAR T細胞を含む。好ましい実施形態では、本明細書で企図される組成物は、治療有効量の抗BCMA CAR T細胞を含む。組成物としては限定されないが、医薬組成物が挙げられる。「医薬組成物」とは、細胞または動物への投与に対し、薬学的に許容可能な溶液または生理学的に許容可能な溶液中で、単独で、または一つ以上の他の治療モダリティと併用されて製剤化される組成物を指す。所望の場合には、組成物は、例えばサイトカイン、増殖因子、ホルモン、低分子、化学療法剤、プロドラッグ、薬剤、抗体、または他の様々な薬学的に活性な剤などの他の剤も同様に併用されて投与され得ることも理解されたい。事実上、組成物に含有され得る他の構成要素に制限はないが、追加される剤は、意図される療法を送達する組成物の能力に有害な影響を与えないものとする。
【0248】
好ましい実施形態では、本明細書で企図される組成物は、細胞表面上でCD27、LEF1、およびTCF1のうちの一つ以上を発現するT細胞が富化されたCAR T細胞のcGMP製造集団を含む。好ましい実施形態では、PI3K阻害剤の存在下で5日~7日のプロセスを使用して製造されたCAR T細胞が富化された集団は、少なくとも10%のCD27+、少なくとも15%のCD27+、少なくとも20%のCD27+、少なくとも25%のCD27+、少なくとも30%のCD27+、少なくとも35%のCD27+、少なくとも40%のCD27+、少なくとも45%のCD27+、または少なくとも50%のCD27+ CAR T細胞を含む。特定の実施形態では、PI3K阻害剤の存在下で5日~7日のプロセスを使用して製造されたCAR T細胞が富化された集団は、少なくとも10%のCD27+を含み、LEF1+、および/またはTCF1+、少なくとも15%のCD27+、LEF1+、および/またはTCF1+、少なくとも20%のCD27+、LEF1+、および/またはTCF1+、少なくとも25%のCD27+、LEF1+、および/またはTCF1+、少なくとも30%のCD27+、LEF1+、および/またはTCF1+、少なくとも35%のCD27+、LEF1+、および/またはTCF1+、少なくとも40%のCD27+、LEF1+、および/またはTCF1+、少なくとも45%のCD27+、LEF1+、および/またはTCF1+、または少なくとも50%のCD27+、LEF1+、および/またはTCF1+ CAR T細胞を含む。特定の実施形態では、PI3K阻害剤の存在下で5日~7日のプロセスを使用して製造されたCAR T細胞が富化された集団は、少なくとも10% CD27+LEF1+TCF1+、少なくとも15% CD27+LEF1+TCF1+、少なくとも20%
CD27+LEF1+TCF1+、少なくとも25% CD27+LEF1+TCF1+、少なくとも30% CD27+LEF1+TCF1+、少なくとも35% CD27+LEF1+TCF1+、少なくとも40% CD27+LEF1+TCF1+、少なくとも45% CD27+LEF1+TCF1+、または少なくとも50% CD27+LEF1+TCF1+ CAR T細胞を含む。特定の実施形態では、T細胞はCCR7+でもある。
【0249】
本明細書において、「薬学的に許容可能」という文言は、適切な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を伴わずにヒトおよび動物の組織と接触して使用することに適し、合理的な利益/リスク比に見合った、それら化合物、物質、組成物および/または剤型を指すために採用される。
【0250】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容可能な担体」は、限定されないが、ヒトまたは家畜での使用に許容されるものとして米国食品医薬品局によって承認されている、アジュバント、担体、賦形剤、滑剤、甘味剤、希釈剤、保存剤、染料/着色剤、香味剤、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁剤、安定剤、等張剤、溶媒、界面活性剤、または乳化剤を含む。例示的な薬学的に許容可能な担体としては、これらに限定されないが、ラクトース、グルコースおよびスクロース等の糖類;トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプン等のデンプン、セルロース、および誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース等のセルロースおよびその誘導体;トラガカンス;麦芽;ゼラチン;タルク;ココアバター、ワックス、動物性および植物性脂肪、パラフィン、シリコン、ベントナイト、ケイ酸、酸化亜鉛、落花生油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブオイル、トウモロコシ油および大豆油等の油、プロピレングリコール等のグリコール、グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール等のポリオール;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル等のエステル、寒天;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム等の緩衝剤、アルギン酸、パイロジェンを含まない水、等張生理食塩水、リンゲル液、エチルアルコール;リン酸緩衝液、および医薬製剤に採用されるその他の適合性物質が挙げられる。
【0251】
特定の実施形態では、組成物は、ある量の、より好ましくは、治療有効量の本明細書に企図されるCAR発現T細胞を含む。
【0252】
本明細書で使用される場合、用語「量」または「用量」は、臨床結果を含む、有益または所望の予防または治療結果を達成するのに十分なCAR T細胞の「有効な量」、「有効な用量」、「有効な量」、または「有効な用量」を指す。
【0253】
CAR T細胞の「治療有効量」または「治療有効用量「はまた、治療上有益な効果がCAR T細胞、例えば、CRSの任意の毒性または有害効果に優る量である。用語「治療有効量」は、対象(例えば、患者)を「治療する」のに有効な量を含む。一実施形態では、治療有効用量は、対象における多発性骨髄腫を治療するためのCAR T細胞の最小有効量(MED)である。一実施形態では、治療有効用量は、対象において解決不可能なCRSをもたらさない抗BCMA CAR T細胞の最大耐量(MTD)である。好ましい実施形態では、治療有効量のCAR T細胞、例えば、PI3K阻害剤の存在下で5日または7日の製造プロセスを使用して製造された抗BCMA CAR T細胞が、対象に投与され、細胞の量は、PI3K阻害剤を使用して10日の製造プロセスを使用して製造されたCAR T細胞から同等の結果を達成するために必要な細胞量よりも少ない。
【0254】
特定の実施形態では、組成物は、非経口投与、例えば、血管内(静脈内または動脈内)投与のために製剤化されることが好ましい。好ましい実施形態では、本明細書で意図される組成物は、単回用量で対象に静脈内注入される。
【0255】
一実施形態では、対象に投与される組成物中のCAR+ T細胞の量は、少なくとも約5.0×107細胞、少なくとも約15.0×107細胞、少なくとも約45.0×107細胞、少なくとも約80.0×107細胞、または少なくとも約12.0×108細胞である。
【0256】
一実施形態では、対象に投与される組成物中のCAR+ T細胞の量は、約5.0×107細胞超、約15.0×107細胞超、約45.0×107細胞超、約80.0×107細胞超、または約12.0×108細胞超である。
【0257】
一実施形態では、対象に投与される組成物中のCAR+ T細胞の量は、約5.0×107細胞~約15.0×107細胞、約5.0×107細胞~約45.0×107細胞、約5.0×107細胞~約80.0×107細胞、または約5.0×107細胞~約12.0×108細胞である。
【0258】
本明細書において提示される用途に関し、細胞は一般的に、リットル以下の量であり、500mL以下、さらには250mLまたは100mL以下であり得る。
【0259】
特定の実施形態では、医薬組成物は、一つ以上の薬学的もしくは生理学的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤と組合わせて、治療有効量のCAR T細胞を含む。
【0260】
治療有効用量のCAR T細胞を含む医薬組成物は、中性緩衝生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水などの緩衝剤、グルコース、マンノース、スクロースまたはデキストランなどの炭水化物、マンニトール、タンパク質、ポリペプチドまたはグリシンなどのアミノ酸、抗酸化物質、EDTAまたはグルタチオンなどのキレート剤、アジュバント(例えば水酸化アルミニウム)、および保存剤を含みうる。
【0261】
液体医薬組成物、溶液、懸濁液またはその他の同様の形態であっても、以下のうちの一つ以上を含み得る:注射用水などの滅菌希釈剤、生理食塩水、好ましくは、生理食塩水、リンゲル液、等張性塩化ナトリウム、溶媒または懸濁媒体として提供され得る合成モノまたはジグリセリドなどの固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の溶媒、ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌剤、アスコルビン酸または亜硫酸ナトリウムなどの抗酸化物質、エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤、酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩等の緩衝液、および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの張性の調整のための薬剤。非経口調製物は、アンプル、使い捨てシリンジ、またはガラスもしくはプラスチックで作製された複数回用量バイアルに封入され得る。注射用医薬組成物は、滅菌であることが好ましい。
【0262】
特定実施形態では、本明細書に企図されるCAR T細胞組成物は、薬学的に許容可能な細胞培養培地中で製剤化される。そうした組成物は、ヒト対象への投与に適している。特定の実施形態では、薬学的に許容可能な細胞培養培地は、無血清培地である。
【0263】
無血清培地は、血清含有培地を超える利点をいくつか有しており、シンプルでより明白な組成、汚染物質量の低下、感染性実体の源となる可能性の排除、およびコスト低下が挙げられる。様々な実施形態では、無血清培地は、動物質を含まず、任意で無タンパク質であってもよい。任意で培地はバイオ医薬品的に受容可能な組み換えタンパク質を含有してもよい。「動物質を含まない」培地とは、構成要素が非動物源に由来する培地を指す。組み換えタンパク質は、動物質を含まない培地中で天然動物性タンパク質を置き換え、その栄養素は合成、植物または微生物の源から取得される。「タンパク質を含まない」培地は、対照的に、実質的にタンパク質を含まないと規定される。
【0264】
特定の組成物において使用される無血清培地の例示としては限定されないが、QBSF-60(Quality Biological、Inc.)、StemPro-34(Life Technologies社)、およびX-VIVO 10が挙げられる。
【0265】
好ましい一実施形態では、本明細書に企図されるCAR T細胞を含む組成物は、PlasmaLyte Aを含む溶液中で製剤化される。
【0266】
別の好ましい実施形態では、本明細書で企図されるCAR T細胞を含む組成物は、凍結保存媒体を含む溶液中で製剤化される。例えば凍結保存剤を含む凍結保存培地を使用して、融解後の高い細胞活性成績を維持してもよい。特定の組成物において使用される凍結保存培地の例示としては限定されないが、CryoStor CS10、CryoStor CS5、およびCryoStor CS2が挙げられる。
【0267】
より好ましい実施形態では、本明細書で企図されるCAR T細胞を含む組成物は、CryoStor CS10に対してPlasmaLyte Aを50:50で含む溶液中で製剤化される。
【0268】
F.治療方法
本明細書で企図される方法によって製造される改変T細胞は、癌、感染症、自己免疫疾患、炎症性疾患、および免疫不全を含むがこれらに限定されない様々な状態の治療に使用するための改善された養子免疫療法を提供する。特定の実施形態では、一次T細胞の特異性は、本明細書に企図されるCARで一次T細胞を遺伝子改変することによって、腫瘍または癌細胞に再指示される。
【0269】
特定の実施形態では、本明細書において企図される方法で製造されたCAR T細胞組成物は、限定されないが、肝癌、膵臓癌、肺癌、乳癌、膀胱癌、脳腫瘍、骨癌、甲状腺癌、腎癌または皮膚癌を含む固形腫瘍または癌の治療に使用される。
【0270】
特定の実施形態では、本明細書に企図される方法を用いて製造されたCAR T細胞組成物は、急性白血病(例えば、ALL、AML、および骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性および赤白血病)、慢性白血病(例えば、CLL、SLL、CML、HCL)、真性多血症、リンパ腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症および重鎖病の治療に使用される。
【0271】
特定の実施形態では、本明細書で企図される方法を用いて製造されたCAR T細胞組成物は、限定されるものではないが、多発性骨髄腫(MM)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、および慢性リンパ性白血病(CLL)を含むB細胞悪性腫瘍の治療に使用される。
【0272】
多発性骨髄腫は、これらのタイプの細胞の単一クローンの腫瘍性形質転換を特徴とする成熟形質細胞形態のB細胞悪性腫瘍である。これらの形質細胞はBMで増殖し、隣接する骨、時には血液に侵入する場合がある。多発性骨髄腫のバリアント形態としては、明白な多発性骨髄腫、くすぶり型多発性骨髄腫、形質細胞白血病、非分泌性骨髄腫、IgD骨髄腫、骨硬化性骨髄腫、骨の孤立性形質細胞腫、および髄外形質細胞腫が挙げられる(例えば、Braunwaldら(eds)、Harrison’s Principles of Internal Medicine、15th Edition(McGraw-Hill 2001)を参照のこと)。
【0273】
非ホジキンリンパ腫は、リンパ球(白血球)の癌の大きな群を包含する。非ホジキンリンパ腫は、どの年齢でも発生する可能性があり、通常よりも大きなリンパ節、発熱、および体重減少によって特徴付けられることが多い。非ホジキンリンパ腫には多くの異なるタイプがある。例えば、非ホジキンリンパ腫は、攻撃的(急速に成長する)型と緩徐な(緩徐に成長する)型に分けることができる。非ホジキンリンパ腫は、B細胞およびT細胞に由来し得るが、本明細書で使用される場合、用語「非ホジキンリンパ腫」および「B細胞非ホジキンリンパ腫」は互換的に使用される。B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)には、バーキットリンパ腫、慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫(CLL/SLL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、免疫芽球性大細胞リンパ腫、前駆B細胞性リンパ腫、およびマントル細胞リンパ腫が含まれる。骨髄移植または幹細胞移植後に発生するリンパ腫は通常、B細胞性非ホジキンリンパ腫である。
【0274】
慢性リンパ性白血病(CLL)は、Bリンパ球またはB細胞と呼ばれる未成熟の白血球のゆっくりとした増加を引き起こす、緩徐な(成長の遅い)癌である。癌細胞は、血液および骨髄を通して広がり、リンパ節または肝臓および脾臓などの他の器官にも影響し得る。CLLは最終的に骨髄を機能不全に陥れる。疾患の後期では、疾患は小リンパ球性リンパ腫と呼ばれることがある。
【0275】
特定の実施形態では、治療有効量の抗BCMA CAR T細胞を含む組成物は、多発性骨髄腫またはリンパ腫を治療するために対象に投与される。
【0276】
特定の実施形態では、治療有効量の抗BCMA CAR T細胞を含む組成物は、再発性/難治性多発性骨髄腫を治療するために対象に投与される。「再発」は、ある期間の改善または寛解の後に、癌の復活の診断、または癌の復活の徴候および症状の診断がされたことを指す。「難治性」とは、特定の治療剤を用いた療法に抵抗性である、または非反応性である癌を指す。癌は、治療の開始時から難治性である場合(すなわち治療剤の初回暴露に非反応性)、または最初の治療期間、もしくはその後の治療期間のいずれかのうちに治療剤に対して抵抗性を発現した結果として難治性となる場合がある。
【0277】
特定の実施形態では、本明細書に企図される組成物は、少なくとも一つのプロテアソーム阻害剤および/または免疫調節薬(IMiD)を含む、一つ、二つ、三つ、またはそれ以上の治療で治療に成功しなかった再発性/難治性多発性骨髄腫の対象に投与される。一実施形態では、対象の多発性骨髄腫は、少なくとも一つのプロテアソーム阻害剤およびIMiDを含む三つの治療レジメンに対して難治性である。一実施形態では、対象の多発性骨髄腫は、一つ以上の治療レジメンに対して二重不応性である。
【0278】
対象の多発性骨髄腫が難治性であるプロテアソーム阻害剤の例には、限定されるものではないが、ボルテゾミブおよびカルフィルゾミブが含まれる。
【0279】
対象の多発性骨髄腫が難治性であるIMiDの例には、サリドマイド、レナリドミド、およびポマリドマイドが含まれるが、これらに限定されない。
【0280】
多発性骨髄腫が難治性である可能性のある他の治療の例には、以下に限定されないが、デキサメタゾン、およびエロツズマブ、ダラツムマブ、MOR03087、イサツキシマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、シルツキシマブ、トシリズマブ、エルシリモマブ、アジントレル、リツキシマブ、トシツマブ、ミラツズマブ、ルカツズマブ、ダセツズマブ、フィギツムマブ、ダロツズマブ、AVE1642、タバルマブ、ペンブロリズマブ、ピディリズマブおよびニボルマブからなる群から選択される抗体に基づく療法が挙げられる。
【0281】
一実施形態では、対象の多発性骨髄腫は、ダラツムマブによる治療に対して難治性である。
【0282】
特定の実施形態では、対象の多発性骨髄腫は、IMiD、プロテアソーム阻害剤、およびデキサメタゾンを用いた治療に難治性である。
【0283】
本明細書で企図される方法は、抗BCMA CAR T細胞組成物の投与前に、再発性/難治性の多発性骨髄腫の対象を自己造血幹細胞移植で治療することをさらに含んでもよい。
【0284】
本明細書に企図される方法は、本明細書に企図される抗BCMA CAR T細胞組成物の投与前に対象をリンパ球枯渇させること、例えば、リンパ球枯渇化学療法は、投与前に1~4日(例えば、1、2、3、または4日)で終了することをさらに含みうる。特定の実施形態では、リンパ球枯渇は、メルファラン、サイトキサン、シクロホスファミド、およびフルダラビンのうちの一つ以上を投与することを含む。一実施形態では、対象は、本明細書に企図される抗BCMA CAR T細胞組成物の投与前にシクロホスファミド300mg/m2およびフルダラビン30mg/m2でリンパ球枯渇される。
【0285】
本明細書に引用されるすべての公表文献、特許出願および登録特許が、個々の公表文献、特許出願または登録特許のそれぞれが具体的に、および個々に参照により援用されることが示されているように、参照により本明細書に援用される。
【0286】
前述の発明は、明確性および理解を目的として、図および実施例により詳細に記載されているが、本発明の教示に照らし、特定の変化および改変が、添付の請求の範囲の主旨または範囲から逸脱することなく実施され得ることが当業者には容易に明らかであろう。以下の実施例は、説明の目的のみで提供され、限定の目的で提供されるものではない。当業者であれば、本質的に類似した結果をもたらすために変更または修正され得る様々な非臨界パラメータを容易に認識するであろう。
【実施例0287】
実施例1
製造プロセスの改善
白血球アフェレーシスにより多発性骨髄腫ドナーから細胞を採取し、Cell Saver Elite上で密度勾配を使用してPBMCを単離した。PBMCを洗浄し、次いでT細胞増殖培地(TCGM)中に250IU IU/mL IL-2で再懸濁した。洗浄前および洗浄後の細胞数、生存率、およびPBMC FACS分析を実施した。洗浄されたPBMCを、活性化まで凍結保存するか、または新鮮に使用した。0日目に、T細胞を、培養物に対して、250IU/mLのIL-2、1 μmのZSTK474(CAS
NO.475110-96-4)、50ng/mLの抗CD3抗体、および50ng/mLの抗CD28抗体を用いてTCGM中で培養することによって活性化および刺激し、約18~24時間培養した。PBMC培養物を、抗BCMA CAR(例えば、配列番号1、配列番号2)をコードするレンチウイルスで約18~約24時間形質導入した。次いで、PBMC培養物を、4日間、6日間、または9日間(それぞれ5日間、7日間、10日間の製造プロセス)、250IU/mLのIL-2および1μm ZSTK474を含有するTCGM中でT細胞増殖のために培養した。増殖の1日以上の各々で、細胞のアリコートを任意に採取し、FACS分析を使用してPBMCについて細胞を計数し、生存率を決定し、凍結保存し、特徴解析した。増殖した細胞を回収し、洗浄し、少なくとも-80℃の温度で制御された速度冷凍庫中で凍結保存し、液体窒素貯蔵タンクの気相中に保存した。
【0288】
実施例2
改善された製造プロセスはT細胞表現型を調節する
五つの多発性骨髄腫ドナーのPBMC細胞ロットを使用して、PI3K阻害剤ZSTK474の存在下または非存在下で、実施例1に記載される7日または10日の製造プロセスを使用して抗BMCA CAR T細胞を製造した。T細胞増殖培養の終了時に、細胞を、CD3、CD62L、CCR7、およびCD45RAに対する抗ヒト抗体で染色し、フローサイトメトリーにより分析した。各ドットプロットを、生存CD3
+リンパ球上でゲーティングした。ZSTK474の存在下で7日間製造される抗BCMA CAR T細胞医薬品(DP)は、ZSTK474の存在下で10日間製造されるか、またはPI3K阻害剤の非存在下で製造される抗BCMA CAR T細胞DPと比較して、より強力なT細胞表現型に対するマーカー発現を増加させた。
図1。
【0289】
実施例3
改善された製造プロセスはT細胞の分化を調節する
五つの多発性骨髄腫ドナーのPBMC細胞ロットを使用して、PI3K阻害剤ZSTK474の存在下で、実施例1に記載される7日または10日の製造プロセスを使用して抗BMCA CAR T細胞を製造した。T細胞増殖培養の終了時に、細胞を、CCR7、CD25、CD28、CD122、ICOS、CD45RO、CD57、およびTIM3に対する金属標識抗ヒト抗体で染色し、CyTOFにより分析した。各ドットプロットを、生存CD3
+リンパ球上でゲーティングした。ZSTK474の存在下で7日間製造された抗BCMA CAR T細胞DPは、ZSTK474の存在下で10日間製造された抗BCMA CAR T細胞DPと比較して、より分化の少ないT細胞表現型に対するマーカー発現を増加させ、より分化したT細胞表現型に対するマーカー発現を減少させた。
図2。
【0290】
実施例4
改善された製造プロセスはCD27
+T細胞を富化する
五つの多発性骨髄腫ドナーのPBMC細胞ロットを使用して、PI3K阻害剤ZSTK474の存在下または非存在下で、実施例1に記載される7日または10日の製造プロセスを使用して抗BMCA CAR T細胞を製造した。T細胞増殖培養の終了時に、細胞を、CD4、CD8、およびCD27に対する金属標識抗ヒト抗体で染色し、CyTOFにより分析した。VISNEプロットは、異なる細胞集団におけるCD27発現を示す。ゲーティングされた集団は、CD27
+が富化されたT細胞を表す。ZSTK474の存在下で7日間製造される抗BCMA CAR T細胞DPは、ZSTK474の存在下で10日間またはPI3K阻害剤の非存在下で製造される抗BCMA CAR T細胞DPと比較して、CD27
+、LEF1
+、および/またはTCF1
+が富化されたT細胞の予想外の劇的な増加を有する。
図3。
【0291】
実施例5
富化されたCD27
+T細胞集団は、強力なT細胞表現型を有する
五つの多発性骨髄腫ドナーのPBMC細胞ロットを使用して、PI3K阻害剤ZSTK474の存在下で、実施例1に記載される7日または10日の製造プロセスを使用して抗BMCA CAR T細胞を製造した。T細胞増殖培養の終了時に、細胞を、CCR7、CD25、CD28、HLA-DR、およびTIM3(
図4A)、ならびにCD45RO、CD57、CD70、CD244、およびPD-1(
図4B)に対する金属標識抗ヒト抗体で染色し、CyTOFにより分析した。VISNEプロットは、異なる細胞集団におけるマーカー発現を示す。ゲーティングされた集団は、CD27
+が富化されたT細胞を表す。ZSTK474の存在下で7日間製造された抗BCMA CAR T細胞DPは、ZSTK474の存在下で10日間製造された抗BCMA CAR T細胞DPと比較して、より分化の少ないT細胞表現型に対するマーカー発現を増加させ、より分化したT細胞表現型に対するマーカー発現を減少させた。
図4A~4B。
【0292】
実施例6
改善された製造プロセスはCD27
+ T細胞活性化プロファイルを調節する
五つの多発性骨髄腫ドナーのPBMC細胞ロットを使用して、PI3K阻害剤ZSTK474の存在下で、実施例1に記載される7日または10日の製造プロセスを使用して抗BMCA CAR T細胞を製造した。T細胞増殖培養の終了時に、細胞を、CD27、CD28、ICOS、HLA-DR、CD25、およびTIM3に対する金属標識抗ヒト抗体で染色し、CyTOFにより分析した。VISNEによって特定されたCD27
+富化細胞のT細胞表現型を、CD4
+T細胞(
図5、上)およびCD8
+T細胞(
図5、下)におけるマーカー発現について分析した。ZSTK474の存在下で10日間製造される抗BCMA CAR T細胞DPは、ZSTK474の存在下で7日間製造される抗BCMA CAR T細胞DPと比較して、活性化プロファイルの減少と消耗プロファイルの増加を有する。
【0293】
実施例7
改善された製造プロセスはT細胞遺伝子発現を調節する
多発性骨髄腫PBMCロットを使用して、PI3K阻害剤ZSTK474の非存在下で7日間(n=1)または10日間(n=13)、またはPI3K阻害剤の存在下で7日間(n=10)または10日間(n=6)、実施例1に記載される抗BCMA CAR T細胞を製造した。約100ngの総RNAを、抗BCMA CAR T細胞DPから抽出し、Nanostring社のImmunology V2プローブキットで混合し、転写プロファイルを分析した。製造条件間の差次的に発現された上位50個の遺伝子のヒートマップを
図6に示す。7日間製造された抗BCMA CAR T細胞DPは、概して、10日間製造されるDPと比較して、T細胞活性化および増殖に関連するT細胞メモリー表現型遺伝子および遺伝子の発現の増加、ならびに細胞死に関連する遺伝子の発現の減少を示す。
【0294】
実施例8
Daudi腫瘍マウスモデルにおける抗BCMA CAR T細胞
Daudi腫瘍マウスモデルを確立して、7日のプロセスで製造された医薬品の有効性と10日のプロセスで製造された医薬品の有効性とを比較した。健康なドナーPBMCを活性化および刺激し、抗BCMA CARをコードするレンチウイルスベクターで形質導入し、IL-2およびPI3K阻害剤の存在下で7日間または10日間増殖させた(実施例1を参照)。養子細胞療法の10日前に、NSGマウスに、2×10
6個のホタルルシフェラーゼ標識Daudi腫瘍細胞を静脈内注射した。マウスに2.5、5、または10×10
6個の抗BCMA CAR
+ T細胞、またはビヒクルで形質導入されたT細胞を注射した。腫瘍負荷を発光によって監視した。7日間のプロセスで製造された抗BCMA
CAR T細胞は、10日間のプロセスで製造された細胞よりも、より低いCAR
+用量で腫瘍の増殖を制御する能力の増加によって実証される、より良い有効性を示す。
図7。
【0295】
実施例9
抗BCMA CAR T細胞表現型
15個の多発性骨髄腫ドナーのPBMC細胞ロットを使用して、PI3K阻害剤ZSTK474の存在下で、実施例1に記載される7日または10日の製造プロセスを使用して抗BMCA CAR T細胞を製造した。T細胞増殖培養の終了時に、約36個のT細胞表現型金属標識抗ヒト抗体のパネルで細胞を染色し、CyTOFで分析した。表現型抗体は、以下のT細胞表現型間の識別を可能にする:ナイーブT細胞(Tnaive)、中央メモリーT細胞(TCM)、エフェクターメモリーT細胞(EM)、エフェクターT細胞(TEff)、および幹細胞メモリーT細胞(TSCM)。T幹細胞メモリーサブセットは、ナイーブT細胞四分円(CCR7
+CD45RO
-)におけるCD95発現によって特定される。提示されたデータは、T細胞サブセットに対するCD27
+富化細胞の%の関数として分析された各DPロットを示す。CD27
+CD4
+T細胞は、TCM様表現型と正に相関するのに対し、CD27
+CD8
+T細胞は、TSCM様表現型と正に相関する。
図8。
【0296】
実施例10
CD8
+ 抗BCMA CAR T細胞表現型
実施例9で生成されたCD8
+ T細胞データを、FlowSOMを使用して分析した。FlowSOMは、20個の別個のT細胞クラスターを特定した。T細胞の三つの主要群を、クラスター4(メモリーT細胞マーカー、例えば、CD27、CD25、CD127、TCF1、LEF1、CD28、CCR7に富化された)およびクラスター5(エフェクターT細胞マーカー、例えば、グランザイムA、グランザイムB、パーフォリン、T-bet、EOMESに富化された)に基づいて特定した。抗BCMA CAR T細胞で治療を受けた対象について、%CD27
+CD8
+抗BCMA CAR T細胞製造方法、および臨床応答を解析した。7日間の製造プロセスは、概して、10日間の製造プロセスと比較して、T細胞メモリーマーカーの発現の増加およびCD27
+濃縮細胞集団の増加を伴う抗BCMA CAR T細胞をもたらした。
図9。
【0297】
実施例11
抗BCMA CAR T細胞遺伝子発現解析
12個の多発性骨髄腫ドナーのPBMC細胞ロットを使用して、PI3K阻害剤ZSTK474の存在下で、実施例1に記載される7日(n=8)または10日(n=4)の製造プロセスを使用して抗BMCA CAR T細胞を製造した。約100ngの総RNAを、抗BCMA CAR T細胞DPから抽出し、Nanostring社のImmunology V2プローブキットで混合した。データはNSolverソフトウェア(ナノストリング)でQCされ、差次的遺伝子発現 解析が実施された。7日の製造プロセスと10日の製造プロセスとの間で、上位25個の差次的に発現された遺伝子(p値0.05)のヒートマップを生成した。抗BCMA CAR T細胞で治療を受けた対象について、%CD27
+抗BCMA CAR T細胞製造方法、および臨床応答を解析した。7日間の製造プロセスは、概して、10日間の製造プロセスと比較して、T細胞メモリーマーカーの発現の増加およびCD27
+濃縮細胞集団の増加を伴う抗BCMA CAR T細胞をもたらした。
図10。
【0298】
実施例12
抗BCMA CAR T細胞遺伝子発現解析
五つの多発性骨髄腫ドナーのPBMC細胞ロットをそれぞれ二つの群に分割し、一つの群を使用して7日間の製造プロセスを使用して抗BMCA CAR T細胞を製造し、他方の群を使用して10日間の製造プロセスを使用して抗BMCA CAR T細胞を製造した。CAR T細胞は、実施例1に記載されるように、PI3K阻害剤ZSTK4の存在下で製造された。
【0299】
約100ngの総RNAを、抗BCMA CAR T細胞DPから抽出し、Nanostring社のImmunology V2プローブキットで混合した。データはNSolverソフトウェア(ナノストリング)でQCされ、差次的遺伝子発現 解析が実施された。
【0300】
抗BCMA CAR T細胞DP総RNAのアリコートを使用して、RNAシーケンシング(RNA-Seq)も行った。細胞を解凍/洗浄/計数し、生存率(>70%の生存率が必要)を試験した。2~3×106個の細胞からの総RNAを、TRIAZOLを使用して抽出した。総RNAについて、フェノール/クロロホルム抽出およびQiagen
miRNA-easyキットを使用してRNAを採取した。RNAを、ポリAビーズ捕捉戦略を使用して単離した。RNAの品質/量を、Tapestation 2200によって決定した(RIN値>7が必要)。配列決定ライブラリーをIllumina TruSeq RNAによって調製した。Tapestation 2200(DNAキット)によりライブラリーの品質チェックを行い、NextSeq550機器を使用して配列決定した。データは、QC/アライメント方法を使用して分析された。
【0301】
7日目の製造プロセスに対する倍率変化(FC)による上位11個の上方制御された遺伝子と、上位9個の下方制御された遺伝子を表1に示す。
【表1】
【0302】
実施例13
抗BCMA CAR T細胞遺伝子発現解析
五つの多発性骨髄腫ドナーのPBMC細胞ロットをそれぞれ二つの群に分割し、一つの群を使用して7日間の製造プロセスを使用して抗BMCA CAR T細胞を製造し、他方の群を使用して10日間の製造プロセスを使用して抗BMCA CAR T細胞を製造した。CAR T細胞は、実施例1に記載されるように、PI3K阻害剤ZSTK4の存在下で製造された。
【0303】
抗BCMA CAR T細胞DP総RNAのアリコートを使用して、RNAシーケンシング(RNA-Seq)を実施した。細胞を解凍/洗浄/計数し、生存率(>70%の生存率が必要)を試験した。2~3×106個の細胞からの総RNAを、TRIAZOLを使用して抽出した。総RNAについて、フェノール/クロロホルム抽出およびQiagen miRNA-easyキットを使用してRNAを採取した。rRNA枯渇にRiboEraseを使用した。RNAの品質/量を、Tapestation 2200によって決定する(RIN値>7が必要)。RNAの品質/量を、Tapestation 2200によって決定した(RIN値>7が必要)。配列決定ライブラリーをIllumina TruSeq RNAによって調製した。Tapestation 2200(DNAキット)によりライブラリーの品質チェックを行い、NextSeq550機器を使用して配列決定した。データは、QC/アライメント方法を使用して分析された。
【0304】
CCL1、NR4A2、ATF3、CCL5、およびWNT5Bは、上方制御された上位25個の遺伝子であり、NKD2およびNQO1は、7日目の製造プロセスと比較して、倍率変化(FC)による下方制御された上位10個の遺伝子であった。
【0305】
実施例14
抗BCMA CAR T細胞療法
多発性骨髄腫の患者からPBMCを採取し、洗浄し、T細胞増殖培地(TCGM)中に250IU IU/mL IL-2で再懸濁した。洗浄前および洗浄後の細胞数、生存率、およびPBMCフローサイトメトリー分析を実施した。洗浄されたPBMCを、活性化まで凍結保存するか、または新鮮に使用した。0日目に、TCGM中に250IU IU/mL IL-2、50 ng/mLの抗CD3抗体、および50 ng/mLの抗CD28抗体でPBMCを培養することによって、T細胞を活性化し、刺激し、約18~24時間培養した。PBMC培養物を、抗BCMA CAR(例えば、配列番号1、配列番号2)をコードするレンチウイルスで約18~約24時間形質導入した。次いで、PBMC培養物を、9日間(10日間の製造プロセス)、250IU/mLのIL-2を含有するTCGM中でT細胞増殖のために培養した。増殖した細胞を回収し、洗浄し、少なくとも-80℃の温度で制御された速度冷凍庫中で凍結保存し、続いて、液体窒素貯蔵タンクの気相中に保存した。
【0306】
凍結した細胞を続いて解凍/洗浄/計数し、生存率(>70%の生存率が必要)を試験した。次いで、細胞をCyTOF実験に使用したか、または後のRNA抽出および遺伝子発現解析のためにTRIzolに保存された細胞ペレットとして凍結させた。
【0307】
EXPT.1.細胞を、T細胞マーカーに対する金属標識抗ヒト抗体で染色し、Fluidigm CyTOF Helios Mass Cytometerを使用して分析した。タンパク質マーカー発現は、抗体染色前に各サンプルにスパイクされた参照試料中の確立された陰性集団と比較して、単一マーカーベースでゲーティングされた。細胞は、マーカーの組み合わせを使用してメモリー細胞タイプに分類され、シルエット法によって陽性マーカー発現でゲーティングされた。CD4およびCD8 T細胞のメモリー集団をそれぞれ、以下のマーカーの組み合わせを使用してゲーティングした:T
Naive(CCR7+CD45RO-CD95-)、T
SCM(CCR7+CD45RO-CD95+)、T
CM(CCR7+CD45RO+CD95+)、T
EM(CCR7-CD45RO+CD95+)、T
EF(CCR7-CD45RO-CD95+)。主要な免疫集団を、以下のマーカーの組み合わせを使用してゲーティングした:CD4 T細胞(CD3+CD4+CD8-CD14-CD19-CD56-)、CD8 T細胞(CD3+CD4-CD8+CD14-CD19-CD56-)、NK細胞(CD3-CD19-CD14-CD56+)、NKT細胞(CD3+CD56+CD19-CD14-)、B細胞(CD3-CD19+CD14-CD56-)および単球(CD3-CD19-CD14+CD56-)。細胞比率の差異存在量を、性別に対して調整された準二項式一般化線形モデルを使用して推測した。各細胞型における個々のマーカーの割合の差を、Wilcoxon順位和検定を使用して推定した。CAR T細胞組成物は、18か月未満の奏功期間を有する全患者(非持続的応答者)に比べて、18か月よりも優れた奏功期間を有する患者(持続的応答者)の間で比較された。
図11Aおよび
図11B。
【0308】
EXPT 2.細胞を、LEF-1を含むT細胞マーカーに対する金属標識抗ヒト抗体で染色し、CyTOFにより分析した。CyTOFデータを品質チェックし、分析して、CD4およびCD8免疫細胞集団に対する個々のマーカーの発現をもたらした。各細胞型における個々のマーカーの割合の差を、Wilcoxon順位和検定を使用して推定した。製剤試料からの遺伝子レベルの計数の分析は、非持続的応答者と比較して、男性対女性で、持続的応答者において差示的発現分析を使用して実施された。
図12A。
【0309】
総RNAについて、フェノール/クロロホルム抽出およびQiagen miRNA-easyキットを使用してRNAを抽出し、RiboEraseを有するKapa RNA HyperPrepキットを用いてrRNAを枯渇させた。RNAの品質/量を、Tapestation 2200によって決定した(RNA Integrity NumberまたはRIN値>7が必要)。配列決定ライブラリーを、Illumina TruSeq RNA Library Preparation Kitを使用して調製した。ライブラリーの品質および量は、Tapestation 2200(DNAキット)により決定され、Illumina NextSeq550機器を使用して配列決定された。シーケンシングデータを解析した。血清BCMA(sBCMA)レベルとのLEF1遺伝子発現の相関を、スピアマンの順位相関を使用して決定した。
図12B。
【0310】
実施例15
抗BCMA CAR T細胞療法
多発性骨髄腫の患者からPBMCを採取し、洗浄し、T細胞増殖培地(TCGM)中に250IU IU/mL IL-2で再懸濁した。洗浄前および洗浄後の細胞数、生存率、およびPBMCフローサイトメトリー分析を実施した。洗浄されたPBMCを、活性化まで凍結保存するか、または新鮮に使用した。0日目に、250IU/mLのIL-2、50ng/mLの抗CD3抗体、50ng/mLの抗CD28抗体を用いてTCGM中でPBMCを培養することによって、T細胞を活性化および刺激し、1MのZSTK474(PI3K阻害剤、CAS NO.475110-96-4)の存在下で、約18~24時間、培養した。PBMC培養物を、抗BCMA CAR(例えば、配列番号1、配列番号2)をコードするレンチウイルスで約18~約24時間形質導入した。次いで、PBMC培養物を、9日間(10日間の製造プロセス)、250IU/mLのIL-2および 1 μMのZSTK474を含有するTCGM中でT細胞増殖のために培養した。増殖した細胞を回収して洗浄し、少なくとも-80℃の温度で制御された速度冷凍庫中で凍結保存し、続いて、液体窒素貯蔵タンクの気相中に保存した。
【0311】
凍結保存した試料を解凍し、CD3、CD27、CCR7、およびCD57を含むT細胞マーカーに対する金属標識抗ヒト抗体で染色した。標識細胞を、Fluidigm CyTOF Helios Mass Cytometerを使用して分析した。FlowJoソフトウェアパッケージを使用して、CyTOF表現型の手動解析を実施した。タンパク質マーカーの発現は、抗体染色前に各対象の試料にスパイクされた参照試料中の確立された陰性集団に基づいて、単一マーカーベースでゲーティングされた。CCR7(
図13、左上パネル)、LEF1(
図13、上中央パネル)、およびCD57(
図13、右上パネル)を発現するCD3+生細胞の割合が、PBMCとDPの間に示される。これは、PI3-K阻害剤ベースの製造プロセスが、早期メモリー、低分化細胞について富化することを示した。
【0312】
CCR7を発現するCD3+生細胞の割合(
図13、左下パネル)、LEF-1(
図13、左下中央パネル)、およびCD57(
図13、右下パネル)がy軸上に示される。注入後の様々な時点で全血から抽出されたCD3+細胞上のPCRによって決定される最大ベクターコピー数(VCN)は、x軸上に示される。これらのグラフは、注入後の抗BCMA CAR+細胞の最大の増殖における正の相関、およびLEF-1を発現するCD3+ DP細胞のパーセンテージ、ならびにCD57を発現するCD3+ DPのパーセンテージとの負の相関を示す。これは、DPにおけるCCR7およびLEF-2の富化が、in vivoでの抗BCMA CARのより堅牢な増殖をもたらすことを示す。
【0313】
CD57(老化のマーカー)、LEF-1、CCR7、およびCD27(メモリー細胞)を発現するCD3+生細胞の割合を、クラスターヒートマップとして示す。
図14.赤色は、マーカーの他の飼料と比較して、試料中の細胞の割合が比較的高いことを示す。青色は、マーカーの他の飼料と比較して、試料中の細胞の割合が比較的低いことを示す。データは、平均連結法階層クラスタリング(average linkage hierarchical clustering)を使用してグループ化され、クラスターの樹状図によって決定される上位3つのクラスターは、6ヵ月時点での患者の臨床応答と関連した(進行性疾患または非進行性疾患)。6ヵ月時点での応答の臨床評価を行うための利用可能な追跡データを有する患者のみが、この解析に含まれた。教師なしクラスタリングは、6か月(4/6進行)で進行者を有する高CD57発現、低LEF-1/CCR7/CD27発現群との関連を示す一方、高LEF-1/CCR7/CD27発現および低CD57発現を有する群は、主に非進行者(1/7進行)である。中間体群は、1/5の進行者を有する。これは、医薬品中のメモリーマーカーと老化マーカーとの間の相関関係と持続的な臨床応答を示すものである。
【0314】
全般に、以下の特許請求の範囲において、使用された用語は、特許請求の範囲を、本明細書および特許請求の範囲に開示されている特定の実施形態に限定させるものと解釈されるべきではないが、かかる特許請求の範囲が権利を与える等価物の完全な範囲と共に全ての可能な実施形態を含むものと解釈されるべきである。したがって、請求の範囲は、本開示により限定されない。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
少なくとも10%のCD27+抗BCMA CAR T細胞を含む、抗B細胞成熟抗原(BCMA)キメラ抗原受容体(CAR)T細胞のcGMP製造集団。
(項目2)
前記集団が、少なくとも15%のCD27+抗BCMA CAR T細胞を含む、項目1に記載の抗BCMA CAR T細胞のcGMP製造集団。
(項目3)
前記集団が、少なくとも20%のCD27+抗BCMA CAR T細胞を含む、項目1に記載の抗BCMA CAR T細胞のcGMP製造集団。
(項目4)
前記集団が、少なくとも25%のCD27+抗BCMA CAR T細胞を含む、項目1に記載の抗BCMA CAR T細胞のcGMP製造集団。
(項目5)
前記集団が、少なくとも30%のCD27+抗BCMA CAR T細胞を含む、項目1に記載の抗BCMA CAR T細胞のcGMP製造集団。
(項目6)
前記CD27+抗BCMA CAR T細胞がLEF1+および/またはCCR7+および/またはTCF1+抗BCMA CAR T細胞である、項目1~5のいずれか一項に記載の抗BCMA CAR T細胞のcGMP製造集団。
(項目7)
前記CD27+抗BCMA CAR T細胞がLEF1+およびCCR7+およびTCF1+抗BCMA CAR T細胞である、項目1~5のいずれか一項に記載の抗BCMA CAR T細胞のcGMP製造集団。
(項目8)
前記CD27+抗BCMA CAR T細胞が、CD4+抗BCMA CAR T細胞を含む、項目1~5のいずれか一項に記載の抗BCMA CAR T細胞のcGMP製造集団。
(項目9)
前記CD27+抗BCMA CAR T細胞が、CD8+抗BCMA CAR T細胞を含む、項目1~5のいずれか一項に記載の抗BCMA CAR T細胞のcGMP製造集団。
(項目10)
前記CD27+抗BCMA CAR T細胞がCD4+およびCD8+抗BCMA CAR T細胞を含む、項目1~5のいずれか一項に記載の抗BCMA CAR T細胞のcGMP製造集団。
(項目11)
少なくとも10%のLEF1+および/またはCCR7+およびTCF1+の抗BCMA CAR T細胞を含む、抗BCMA CAR T細胞のcGMP製造集団。
(項目12)
前記集団が、少なくとも15%のLEF1+および/またはCCR7+およびTCF1+の抗BCMA CAR T細胞を含む、項目11に記載の抗BCMA CAR T細胞のcGMP製造集団。
(項目13)
前記集団が、少なくとも20%のLEF1+および/またはCCR7+およびTCF1+の抗BCMA CAR T細胞を含む、項目11に記載の抗BCMA CAR T細胞のcGMP製造集団。
(項目14)
前記集団が、少なくとも25%のLEF1+および/またはCCR7+およびTCF1+の抗BCMA CAR T細胞を含む、項目11に記載の抗BCMA CAR T細胞のcGMP製造集団。
(項目15)
前記集団が、少なくとも30%のLEF1+および/またはCCR7+およびTCF1+の抗BCMA CAR T細胞を含む、項目11に記載の抗BCMA CAR T細胞のcGMP製造集団。
(項目16)
前記LEF1+および/またはCCR7+および/またはTCF1+抗BCMA CAR T細胞が、CD27+抗BCMA CAR T細胞である、項目11~15のいずれか一項に記載の抗BCMA CAR T細胞のcGMP製造集団。
(項目17)
前記LEF1+および/またはCCR7+および/またはTCF1+抗BCMA CAR T細胞がLEF1+CCR7+TCF1+CD27+抗BCMA CAR T細胞である、項目11~15のいずれか一項に記載の抗BCMA CAR T細胞のcGMP製造集団。
(項目18)
前記抗BCMA CAR T細胞がCD4+抗BCMA CAR T細胞を含む、項目11~15のいずれか一項に記載の抗BCMA CAR T細胞のcGMP製造集団。
(項目19)
前記抗BCMA CAR T細胞がCD8+抗BCMA CAR T細胞を含む、項目11~15のいずれか一項に記載の抗BCMA CAR T細胞のcGMP製造集団。
(項目20)
前記抗BCMA CAR T細胞がCD4+およびCD8+抗BCMA CAR T細胞を含む、項目11~15のいずれか一項に記載の抗BCMA CAR T細胞のcGMP製造集団。
(項目21)
前記細胞が、多発性骨髄腫またはリンパ腫を有する対象から製造された、項目1~20のいずれか一項に記載の抗BCMA CAR T細胞のcGMP製造集団。
(項目22)
前記細胞が、再発/難治性多発性骨髄腫を有する対象から製造された、項目1~21のいずれか一項に記載の抗BCMA CAR T細胞のcGMP製造集団。
(項目23)
前記細胞が、前記抗BCMA CARをコードするポリヌクレオチドを含むレンチウイルスを含む、項目1~22のいずれか一項に記載の抗BCMA CAR T細胞のcGMP製造集団。
(項目24)
前記抗BCMA CARが、配列番号1に記載されるアミノ酸配列を含む、項目1~23のいずれか一項に記載の抗BCMA CAR T細胞のcGMP製造集団。
(項目25)
前記抗BCMA CARが、配列番号2に記載されるポリヌクレオチド配列によってコードされる、項目1~24のいずれか一項に記載の抗BCMA CAR T細胞のcGMP製造集団。
(項目26)
前記細胞が自己である、項目1~25のいずれか一項に記載の抗BCMA CAR T細胞のcGMP製造集団。
(項目27)
前記細胞が凍結保存される、項目1~26のいずれか一項に記載の抗BCMA CAR
T細胞のcGMP製造集団。
(項目28)
前記細胞が、多発性骨髄腫またはリンパ腫を有する対象への投与のために製剤化される、項目1~27のいずれか一項に記載の抗BCMA CAR T細胞のcGMP製造集団。
(項目29)
約5~約7日間、ホスファチジル-イノシトール-3キナーゼ(PI3K)阻害剤とex vivoで接触されたヒト抗B細胞成熟抗原(BCMA)キメラ抗原受容体(CAR)T細胞であって、(i)NR4A2、LY9、LIN7A、WNT5B、BCL6、EGR1、EGR2、ATF3、CCL1、IL-1A、およびCCL5または(ii)CCL1、NR4A2、ATF3、CCL5、WNT5Bの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または全ての遺伝子発現が、約10日間、前記PI3K阻害剤とex vivoで接触した抗BCMA CAR T細胞よりも、前記抗BCMA CAR T細胞において少なくとも1.5倍または少なくとも2倍多い、ヒト抗B細胞成熟抗原(BCMA)キメラ抗原受容体(CAR)T細胞。
(項目30)
約5~約7日間、ホスファチジル-イノシトール-3キナーゼ(PI3K)阻害剤とex vivoで接触されたヒト抗B細胞成熟抗原(BCMA)キメラ抗原受容体(CAR)T細胞であって、(i)NQO1、CCNA1、IL17F、EMP1、SNHG19、PRR 22、ILDR2、ATAD3、NKD2およびWDR62または(ii)NKD2およびNQO1の1、2、3、4、5、6、7、8、9、または全ての遺伝子発現が、約10日間、前記PI3K阻害剤とex vivoで接触した抗BCMA CAR T細胞よりも、前記抗BCMA CAR T細胞において少なくとも1.5倍または少なくとも2倍少ない、ヒト抗B細胞成熟抗原(BCMA)キメラ抗原受容体(CAR)T細胞。
(項目31)
約5~約7日間、ホスファチジル-イノシトール-3キナーゼ(PI3K)阻害剤とex vivoで接触されたヒト抗B細胞成熟抗原(BCMA)キメラ抗原受容体(CAR)T細胞であって、約10日間、前記PI3K阻害剤とex vivoで接触した抗BCMA CAR T細胞よりも、前記抗BCMA CAR T細胞において(i)NR4A2、LY9、LIN7A、WNT5B、BCL6、EGR1、EGR2、ATF3、CCL1、IL-1A、およびCCL5または(ii)CCL1、NR4A2、ATF3、CCL5、およびWNT5Bの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または全てのそれぞれの遺伝子発現が、少なくとも1.5または少なくとも2倍多く、(i)NQO1、CCNA1、IL17F、EMP1、SNHG19、PRR22、ILDR2、ATAD3、NKD2およびWDR62または(ii)NKD2およびNQO1の1、2、3、4、5、6、7、8、9、または全ての遺伝子発現は、少なくとも1.5倍または少なくとも2倍少ない、ヒト抗B細胞成熟抗原(BCMA)キメラ抗原受容体(CAR)T細胞。
(項目32)
CD4+抗BCMA CAR T細胞が、中央メモリーT細胞(TCM)様表現型を有する、項目29~31のいずれか一項に記載のヒト抗BCMA CAR T細胞。
(項目33)
CD8+抗BCMA CAR T細胞が、幹細胞メモリーT細胞(TSCM)様表現型を有する、項目29~31のいずれか一項に記載のヒト抗BCMA CAR T細胞。
(項目34)
CD4+抗BCMA CAR T細胞が、TCM様表現型を有し、CD8+抗BCMA
CAR T細胞が、TSCM様表現型を有する、項目29~31のいずれか一項に記載のヒト抗BCMA CAR T細胞。
(項目35)
前記細胞が、多発性骨髄腫またはリンパ腫を有する対象から製造された、項目29~34のいずれか一項に記載のヒト抗BCMA CAR T細胞。
(項目36)
対象から製造された前記細胞が、再発性/難治性多発性骨髄腫を有する、項目29~35のいずれか一項に記載のヒト抗BCMA CAR T細胞。
(項目37)
前記細胞が、前記抗BCMA CARをコードするポリヌクレオチドを含むレンチウイルスを含む、項目29~36のいずれか一項に記載のヒト抗BCMA CAR T細胞。
(項目38)
前記抗BCMA CARが配列番号 1に記載されるアミノ酸配列を含む、項目29~37のいずれか一項に記載のヒト抗BCMA CAR T細胞。
(項目39)
前記抗BCMA CARが配列番号 2に記載されるポリヌクレオチド配列によってコードされる、項目29~38のいずれか一項に記載のヒト抗BCMA CAR T細胞。
(項目40)
前記細胞が自己である、項目29~39のいずれか一項に記載のヒト抗BCMA CAR T細胞。
(項目41)
前記細胞が凍結保存される、項目29~40のいずれか一項に記載のヒト抗BCMA
CAR T細胞。
(項目42)
前記細胞が、多発性骨髄腫またはリンパ腫を有する対象への投与のために製剤化される、項目29~41のいずれか一項に記載のヒト抗BCMA CAR T細胞。
(項目43)
前記PI3K阻害剤が、ZSTK474である、項目29~42のいずれか一項に記載のヒト抗BCMA CAR T細胞。
(項目44)
生理学的に許容可能な賦形剤と、項目29~43のいずれか一項に記載の抗BCMA
CAR T細胞の治療有効量とを含む、医薬組成物。
(項目45)
前記抗BCMA CAR T細胞の前記治療有効量が、少なくとも約5.0×107個の抗BCMA CAR T細胞である、項目44に記載の組成物。
(項目46)
前記抗BCMA CAR T細胞の前記治療有効量が、少なくとも約15.0×107個の抗BCMA CAR T細胞である、項目44に記載の組成物。
(項目47)
前記治療有効量が、少なくとも約45.0×107個の抗BCMA CAR T細胞である、項目44に記載の組成物。
(項目48)
前記治療有効量が、少なくとも約80.0×107個の抗BCMA CAR T細胞である、項目44に記載の組成物。
(項目49)
50:50のCryoStor CS10に対するPlasmaLyte Aを含む溶液中で製剤化される、項目44~48のいずれか一項に記載の組成物。
(項目50)
多発性骨髄腫またはリンパ腫を有する対象を、項目44~49のいずれか一項に記載の組成物で治療する方法。
(項目51)
前記対象が、再発性/難治性の多発性骨髄腫を有する、項目50に記載の方法。
(項目52)
抗BCMA CAR T細胞を製造する方法であって、
(a)T細胞集団を活性化し、前記T細胞集団を刺激して増殖させること、
(b)配列番号1に記載のアミノ酸配列を含む抗BCMA CARをコードするレンチウイルスベクターで前記T細胞を形質導入すること、
(c)約5~約7日間、前記形質導入T細胞を培養して増殖させることを含み、
工程(a)~(c)が、PI3K阻害剤の存在下で実施され、(i)NR4A2、LY9、LIN7A、WNT5B、BCL6、EGR1、EGR2、ATF3、CCL1、IL-1A、およびCCL5または(ii)CCL1、NR4A2、ATF3、CCL5、およびWNT5Bの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または全ての遺伝子発現が、約10日間、工程(b)に従って形質導入され、培養されて増殖されたT細胞に比べて、工程(c)の前記培養されたT細胞において、少なくとも1.5倍または少なくとも2倍多い、抗BCMA CAR T細胞を製造する方法。
(項目53)
抗BCMA CAR T細胞を製造する方法であって、
(a)T細胞集団を活性化し、前記T細胞集団を刺激して増殖させること、
(b)配列番号1に記載のアミノ酸配列を含む抗BCMA CARをコードするレンチウイルスベクターで前記T細胞を形質導入すること、
(c)約5~約7日間、前記形質導入T細胞を培養して増殖させることを含み、
工程(a)~(c)が、PI3K阻害剤の存在下で実施され、(i)NQO1、CCNA1、IL17F、EMP1、SNHG19、PRR22、ILDR2、ATAD3、NKD2およびWDR62または(ii)NKD2およびNQO1の1、2、3、4、5、6、7、8、9または全ての遺伝子発現が、約10日間、工程(b)に従って形質導入され、培養されて増殖されたT細胞に比べて、工程(c)の前記培養されたT細胞において、少なくとも1.5倍または少なくとも2倍少ない、抗BCMA CAR T細胞を製造する方法。
(項目54)
抗BCMA CAR T細胞を製造する方法であって、
(a)T細胞集団を活性化し、前記T細胞集団を刺激して増殖させること、
(b)配列番号1に記載のアミノ酸配列を含む抗BCMA CARをコードするレンチウイルスベクターで前記T細胞を形質導入すること、
(c)約5~約7日間、前記形質導入T細胞を培養して増殖させることを含み、
工程(a)~(c)が、PI3K阻害剤の存在下で実施され、
約10日間、工程(b)に従って形質導入され、培養されて増殖されたT細胞に比べて、工程(c)の前記培養されたT細胞において、(i)NR4A2、LY9、LIN7A、WNT5B、BCL6、EGR1、EGR2、ATF3、CCL1、IL-1A、およびCCL5または(ii)CCL1、NR4A2、ATF3、CCL5、およびWNT5Bの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または全ての遺伝子発現が少なくとも1.5倍または少なくとも2倍多く、(i)NQO1、CCNA1、IL17F、EMP1、SNHG19、PRR22、ILDR2、ATAD3、NKD2およびWDR62または(ii)NKD2およびNQO1の1、2、3、4、5、6、7、8、9、または全ての遺伝子発現が、少なくとも1.5倍または少なくとも2倍少ない、抗BCMA CAR
T細胞を製造する方法。
(項目55)
抗BCMA CAR T細胞を製造する方法であって、
(a)T細胞集団を活性化し、前記T細胞集団を刺激して増殖させること、
(b)配列番号 1に記載のアミノ酸配列を含む抗BCMA CARをコードするレンチウイルスベクターで前記T細胞を形質導入すること、
(c)約5~約7日間、前記形質導入T細胞を培養して増殖させることを含み、
工程(a)~(c)が、PI3K阻害剤の存在下で実施され、前記増殖細胞がCD27+および/またはLEF1+および/またはCCR7+および/またはTCF1+である、抗BCMA CAR T細胞を製造する方法。
(項目56)
前記抗BCMA CAR T細胞が、少なくとも10%のCD27+および/またはLEF1+および/またはCCR7+および/またはTCF1+ T細胞を含む、項目52~55のいずれか一項に記載の方法。
(項目57)
前記抗BCMA CAR T細胞が、少なくとも15%のCD27+および/またはLEF1+および/またはCCR7+および/またはTCF1+T細胞を含む、項目52~55のいずれか一項に記載の方法。
(項目58)
前記抗BCMA CAR T細胞が、少なくとも20%のCD27+および/またはLEF1+、および/またはCCR7+および/またはTCF1+T細胞を含む、項目52~55のいずれか一項に記載の方法。
(項目59)
前記抗BCMA CAR T細胞が、少なくとも25%のCD27+細胞および/またはLEF1+細胞および/またはCCR7+細胞および/またはTCF1+T細胞を含む、項目52~55のいずれか一項に記載の方法。
(項目60)
前記抗BCMA CAR T細胞が、少なくとも30%のCD27+および/またはLEF1+および/またはCCR7+および/またはTCF1+T細胞を含む、項目52~55のいずれか一項に記載の方法。
(項目61)
前記CD27+細胞が、LEF1+および/またはCCR7+および/またはTCF1+である、項目52~60のいずれか一項に記載の方法。
(項目62)
前記CD27+細胞が、LEF1+および/またはCCR7+およびTCF1+である、項目52~60のいずれか一項に記載の方法。
(項目63)
前記CD27+抗BCMA CAR T細胞が、CD4+抗BCMA CAR T細胞を含む、項目52~62のいずれか一項に記載の方法。
(項目64)
前記CD27+抗BCMA CAR T細胞が、CD8+抗BCMA CAR T細胞を含む、項目52~62のいずれか一項に記載の方法。
(項目65)
前記CD27+抗BCMA CAR T細胞が、CD4+およびCD8+抗BCMA CAR T細胞を含む、項目52~62のいずれか一項に記載の方法。
(項目66)
前記T細胞が自己である、項目52~65のいずれか一項に記載の方法。
(項目67)
前記方法が、末梢血単核細胞(PBMC)を前記T細胞源として単離することをさらに含む、項目52~66のいずれか一項に記載の方法。
(項目68)
前記PBMCが、多発性骨髄腫またはリンパ腫を有する対象から単離される、項目67に記載の方法。
(項目69)
前記対象が、再発性/難治性の多発性骨髄腫を有する、項目68に記載の方法。
(項目70)
前記方法が、工程(a)の前に前記PBMCを凍結保存することをさらに含む、項目52~69のいずれか一項に記載の方法。
(項目71)
前記T細胞が、工程(c)後に凍結保存される、項目52~70のいずれか一項に記載の方法。
(項目72)
前記T細胞が活性化され、約18~約24時間、刺激して増殖される、項目52~71のいずれか一項に記載の方法。
(項目73)
前記T細胞の活性化が、前記T細胞を抗CD3抗体またはその抗原結合断片と接触させることを含む、項目52~72のいずれか一項に記載の方法。
(項目74)
前記抗CD3抗体またはその抗原結合断片が、可溶性である、項目73に記載の方法。
(項目75)
前記抗CD3抗体またはその抗原結合断片が、表面に結合される、項目73に記載の方法。
(項目76)
前記表面が、ビーズ、任意に常磁性ビーズである、項目75に記載の方法。
(項目77)
前記T細胞の刺激が、前記T細胞を抗CD28抗体またはその抗原結合断片と接触させることを含む、項目52~76のいずれか一項に記載の方法。
(項目78)
前記抗CD28抗体またはその抗原結合断片が、可溶性である、項目77に記載の方法。
(項目79)
前記抗CD28抗体またはその抗原結合断片が、表面に結合される、項目77に記載の方法。
(項目80)
前記表面がビーズ、任意に常磁性ビーズであり、任意に、前記抗CD3抗体またはその抗原結合断片に結合される前記常磁性ビーズである、項目79に記載の方法。
(項目81)
前記細胞が、HIV-1由来レンチウイルスベクターで形質導入される、項目52~80のいずれか一項に記載の方法。
(項目82)
前記抗BCMA CARが、配列番号2に記載されるポリヌクレオチド配列によってコードされる、項目52~81のいずれか一項に記載の方法。
(項目83)
前記PI3K阻害剤がZSTK474である、項目52~82のいずれか一項に記載の方法。
(項目84)
養子細胞療法において、CD4+ TCM様抗BCMA CAR T細胞およびCD8+ TSCM様抗BCMA CAR T細胞を増加させる方法であって、約5~約7日間、抗BCMA CAR T細胞をPI3K阻害剤とex vivoで接触させることを含み、CD4+ TCM様抗BCMA CAR T細胞およびCD8+ TSCM様抗BCMA CAR T細胞の数は、約10日間、前記PI3K阻害剤とex vivoで接触した抗BCMA CAR T細胞よりも、前記抗BCMA CAR T細胞において少なくとも2倍多い、方法。
(項目85)
前記抗BCMA CAR T細胞が、少なくとも10%のCD27+および/またはLEF1+および/またはCCR7+および/またはTCF1+T細胞を含む、項目84に記載の方法。
(項目86)
前記抗BCMA CAR T細胞が、少なくとも15%のCD27+および/またはLEF1+および/またはCCR7+および/またはTCF1+T細胞を含む、項目84または項目85に記載の方法。
(項目87)
前記抗BCMA CAR T細胞が、少なくとも20%のCD27+および/またはLEF1+および/またはCCR7+および/またはTCF1+T細胞を含む、項目84~86のいずれか一項に記載の方法。
(項目88)
前記抗BCMA CAR T細胞が、少なくとも25%のCD27+および/またはLEF1+および/またはCCR7+および/またはTCF1+T細胞を含む、項目84~87のいずれか一項に記載の方法。
(項目89)
前記抗BCMA CAR T細胞が、少なくとも30%のCD27+および/またはLEF1+および/またはCCR7+および/またはTCF1+T細胞を含む、項目84~88のいずれか一項に記載の方法。
(項目90)
前記T細胞が自己である、項目84~89のいずれか一項に記載の方法。
(項目91)
前記方法が、末梢血単核細胞(PBMC)を前記T細胞源として単離することをさらに含む、項目84~90のいずれか一項に記載の方法。
(項目92)
前記PBMCが、多発性骨髄腫またはリンパ腫を有する対象から単離される、項目91に記載の方法。
(項目93)
前記対象が、再発性/難治性の多発性骨髄腫を有する、項目92に記載の方法。
(項目94)
前記抗BCMA CAR T細胞が、HIV-1由来レンチウイルスベクターを含む、項目84~93のいずれか一項に記載の方法。
(項目95)
前記抗BCMA CARが配列番号1に記載されるアミノ酸配列を含む、項目84~94のいずれか一項に記載の方法。
(項目96)
前記抗BCMA CARが、配列番号2に記載されるポリヌクレオチド配列によってコードされる、項目84~95のいずれか一項に記載の方法。
(項目97)
薬学的に許容可能な賦形剤および項目52~83のいずれか一項に記載の方法による前記抗BCMA CAR T細胞の治療有効量を含む、医薬組成物。
(項目98)
薬学的に許容可能な賦形剤および項目84~96のいずれか一項に記載のCD4+ TCM 抗BCMA CAR T細胞およびCD8+ TSCM 抗BCMA CAR T細胞の治療有効量を含む、医薬組成物。
(項目99)
多発性骨髄腫またはリンパ腫を有する対象を、項目97または項目98に記載の組成物で治療する方法。
(項目100)
前記対象が、再発性/難治性の多発性骨髄腫を有する、項目99に記載の方法。
(項目101)
抗BCMA CAR T細胞における(i)NR4A2、LY9、LIN7A、WNT5B、BCL6、EGR1、EGR2、ATF3、CCL1、IL-1A、およびCCL5または(ii)CCL1、NR4A2、ATF3、CCL5、およびWNT5Bのそれぞれの遺伝子発現を増加させる方法であって、約5~約7日間、抗BCMA CAR T細胞をPI3K阻害剤とex vivoで接触させることを含み、(i)NR4A2、LY9、LIN7A、WNT5B、BCL6、EGR1、EGR2、ATF3、CCL1、IL-1A、およびCCL5または(ii)CCL1、NR4A2、ATF3、CCL5、およびWNT5Bのそれぞれの前記遺伝子発現が、約10日間、前記PI3K阻害剤とex vivoで接触される抗BCMA CAR T細胞よりも、前記抗BCMA CAR T細胞において少なくとも1.5倍多い、方法。
(項目102)
抗BCMA CAR T細胞における(i)NQO1、CCNA1、IL17F、EMP1、SNHG19、PRR 22、ILDR2、ATAD3、NKD2およびWDR62または(ii)NKD2およびNQO1のそれぞれの遺伝子発現を減少させる方法であって、約5~約7日間、抗BCMA CAR T細胞をPI3K阻害剤とex vivoで接触させることを含み、(i)NQO1、CCNA1、IL17F、EMP1、SNHG19、PRR 22、ILDR2、ATAD3、NKD2およびWDR62または(ii)NKD2およびNQO1のそれぞれの前記遺伝子発現が、約10日間、前記PI3K阻害剤とex vivoで接触される抗BCMA CAR T細胞よりも、前記抗BCMA CAR T細胞において少なくとも1.5倍少ない、方法。
(項目103)
抗BCMA CAR T細胞における(i)NR4A2、LY9、LIN7A、WNT5B、BCL6、EGR1、EGR2、ATF3、CCL1、IL-1A、およびCCL5または(ii)CCL1、NR4A2、ATF3、CCL5、およびWNT5Bのそれぞれの遺伝子発現を増加させ、(i)NQO1、CCNA1、IL17F、EMP1、SNHG19、PRR 22、ILDR2、ATAD3、NKD2およびWDR62または(ii)NKD2およびNQO1のそれぞれの遺伝子発現を減少させる方法であって、約5~約7日間、抗BCMA CAR T細胞をPI3K阻害剤とex vivoで接触させることを含み、約10日間、前記PI3K阻害剤とex vivoで接触される抗BCMA CAR T細胞よりも、前記抗BCMA CAR T細胞において、(i)NR4A2、LY9、LIN7A、WNT5B、BCL6、EGR1、EGR2、ATF3、CCL1、IL-1A、およびCCL5または(ii)CCL1、NR4A2、ATF3、CCL5、およびWNT5Bのそれぞれの前記遺伝子発現は、少なくとも1.5倍多く、(i)NQO1、CCNA1、IL17F、EMP1、SNHG19、PRR 22、ILDR2、ATAD3、NKD2およびWDR62または(ii)NKD2およびNQO1のそれぞれの前記遺伝子発現は、少なくとも1.5倍少ない、方法。
(項目104)
抗BCMA CAR T細胞の治療有効性を増加させる方法であって、約5~約7日間、抗BCMA CAR T細胞をPI3K阻害剤とex vivoで接触させることを含み、治療有効性の前記増加は、(i)NR4A2、LY9、LIN7A、WNT5B、BCL6、EGR1、EGR2、ATF3、CCL1、IL-1A、およびCCL5または
(ii)CCL1、NR4A2、ATF3、CCL5、およびWNT5Bの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはすべてのそれぞれの遺伝子発現の増加が、約10日間、前記PI3K阻害剤とex vivoで接触される抗BCMA CAR T細胞よりも、前記抗BCMA CAR T細胞において少なくとも1.5倍多いことにより示される、方法。
(項目105)
抗BCMA CAR T細胞の治療有効性を増加させる方法であって、約5~約7日間、抗BCMA CAR T細胞をPI3K阻害剤とex vivoで接触させることを含み、治療有効性の前記増加は、(i)NQO1、CCNA1、IL17F、EMP1、SNHG19、PRR 22、ILDR2、ATAD3、NKD2およびWDR62または(ii)NKD2およびNQO1のそれぞれの遺伝子発現の減少が、約10日間、前記PI3K阻害剤とex vivoで接触される抗BCMA CAR T細胞よりも、前記抗BCMA CAR T細胞において少なくとも1.5倍少ないことにより示される、方法。
(項目106)
抗BCMA CAR T細胞の治療有効性を増加させる方法であって、約5~約7日間、抗BCMA CAR T細胞をPI3K阻害剤とex vivoで接触させることを含み、治療有効性の前記増加は、約10日間、前記PI3K阻害剤とex vivoで接触される抗BCMA CAR T細胞よりも前記抗BCMA CAR T細胞において、(i)NR4A2、LY9、LIN7A、WNT5B、BCL6、EGR1、EGR2、ATF3、CCL1、IL-1A、およびCCL5または(ii)CCL1、NR4A2、ATF3、CCL5、およびWNT5Bの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはすべてのそれぞれの遺伝子発現の増加が少なくとも1.5倍多く、(i)NQO1、CCNA1、IL17F、EMP1、SNHG19、PRR22、ILDR2、ATAD3、NKD2およびWDR62または(ii)NKD2およびNQO1のそれぞれの遺伝子発現の減少が1.5倍少ないことにより示される、方法。
(項目107)
前記抗BCMA CAR T細胞が、多発性骨髄腫またはリンパ腫を有する対象からのものである、項目101~106のいずれか一項に記載の方法。
(項目108)
前記抗BCMA CAR T細胞が、再発性/難治性の多発性骨髄腫を有する対象からのものである、項目101~107のいずれか一項に記載の方法。
(項目109)
前記抗BCMA CAR T細胞が、前記抗BCMA CARをコードするポリヌクレオチドを含むHIV-1由来レンチウイルスベクターを含む、項目101~108のいずれか一項に記載の方法。
(項目110)
前記抗BCMA CARが配列番号 1に記載されるアミノ酸配列を含む、項目101~109のいずれか一項に記載の方法。
(項目111)
前記抗BCMA CARが、配列番号 2に記載されるポリヌクレオチド配列によってコードされる、項目101~110のいずれか一項に記載の方法。
(項目112)
前記抗BCMA CAR T細胞が自己である、項目101~111のいずれか一項に記載の方法。
(項目113)
前記PI3K阻害剤がZSTK474である、項目101~112のいずれか一項に記載の方法。