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特開2024-114974ヒト化CD3複合体を発現する非ヒト動物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114974
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】ヒト化CD3複合体を発現する非ヒト動物
(51)【国際特許分類】
   A01K 67/0278 20240101AFI20240816BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240816BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240816BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240816BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240816BHJP
   C07K 14/725 20060101ALI20240816BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240816BHJP
   C12N 15/90 20060101ALN20240816BHJP
   C12N 5/09 20100101ALN20240816BHJP
   A61K 39/395 20060101ALN20240816BHJP
【FI】
A01K67/0278 ZNA
C12N15/62
C12N15/63 Z
C12N15/12
C07K19/00
C07K14/725
C12N5/10
A01K67/0278
C12N15/90 Z
C12N5/09
A61K39/395 D
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024106288
(22)【出願日】2024-07-01
(62)【分割の表示】P 2023090885の分割
【原出願日】2015-11-23
(31)【優先権主張番号】62/083,653
(32)【優先日】2014-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/106,999
(32)【優先日】2015-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】カラ エル. オルソン
(72)【発明者】
【氏名】エリック スミス
(72)【発明者】
【氏名】カ-マン ビーナス ライ
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー ジェイ. マーフィー
(72)【発明者】
【氏名】ギャビン サーストン
(72)【発明者】
【氏名】ダイオン グオ
(57)【要約】
【課題】ヒト化CD3複合体を発現する非ヒト動物の提供。
【解決手段】ヒト化CD3タンパク質を発現する非ヒト動物が提供される。そのゲノム内にヒト化CD3タンパク質を含むように遺伝子改変された非ヒト動物、例えば、げっ歯類などもまた提供される。加えて、提供されるのは、そのような非ヒト動物を作製する方法及び組成物、並びに前記非ヒト動物を使用する方法である。本発明は、例えば、ヒト化CD3ε、CD3δ、CD3γ、及び/又はCD3ζタンパク質などのヒト化CD3タンパク質を発現する遺伝子改変非ヒト動物(例えば、げっ歯類、例えば、マウス又はラット)を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
図面に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2014年11月24日出願の米国特許仮出願第62/083,653号、及び2015年1月23日出願の同第62/106,999号の非仮出願であり、それぞれ全ての目的においてその全体が参照により組み込まれる。
【0002】
(関連出願)
本出願は、2015年11月23日に23,965バイトで作成された470382_SEQLST.txtという名前のtxtファイルにある配列を含み、このファイルは参照により本明細書に援用される。
【0003】
(発明の分野)
そのゲノム内にヒト化CD3タンパク質をコードする核酸配列、例えば、ヒト化CD3ε、ヒト化CD3δ、及び/又はヒト化CD3γを含む遺伝子改変非ヒト動物(例えば、げっ歯類、例えば、マウス又はラット)が提供される。したがって、ヒト化CD3複合体を発現する遺伝子改変非ヒト動物が提供される。本明細書で更に提供されるのは、CD3に基づいた治療(例えば、CD3系抗体、例えば、CD3系二重特異性抗体)の非臨床試験のためのモデルである。
【背景技術】
【0004】
T細胞受容体サブユニット、例えば、非常に多様なTCRα及びTCRβなどに加えて、T細胞の表面にあるT細胞受容体複合体は、不変のCD3ε鎖、CD3δ鎖、及びCD3γ鎖を含み、これらはCD3εδ及びCD3εγからなるヘテロ二量体を形成する。TCR/CD3複合体と更に関連するのは、ζ鎖であり、これはジスルフィド結合ホモ二量体として存在する。
【0005】
CD3鎖は、T細胞受容体会合、細胞表面への輸送、表面受容体のエンドサイトーシス、T細胞発生、及びT細胞シグナル伝達、における重要な役割を担う。例えば、CD3鎖は、ダブルネガティブ(CD4-CD8-又はDN)のダブルポジティブ(CD4+CD8+又はDP)を経たシングルポジティブ(CD4+若しくはCD8+又はSP)へのT細胞の転換にとって重要であることが、様々なCD3サブユニットの欠損の研究を通して実証されてきた。加えて、CD3ε鎖、CD3δ鎖、及びCD3γ鎖のそれぞれは、1つの免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)を含み、一方ζ鎖二量体は全6個のITAMを含む。これらのモチーフは、シグナル伝達モジュールとして機能し、TCR結合時に関連するキナーゼによってリン酸化される。
【0006】
CD3に対する抗体は、T細胞上のCD3をクラスター化し、それによって、ペプチド負荷MHC分子によるTCRの結合と類似の方法でT細胞活性化を生じさせることが示されてきた。したがって、抗CD3抗体は、T細胞の活性化を目的とした治療候補として提案されてきた。加えて、CD3と標的抗原とに結合することができる二重特異性抗体は、標的抗原を発現する組織及び細胞に対するT細胞免疫応答を目的とすることを伴う治療的使用に提案されてきた。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
単一特異性及び二重特異性のCD3系治療用抗体の非臨床試験のための簡便な動物モデルが、特に所望される。
【0008】
本明細書で提供されるのは、ヒトCD3タンパク質の細胞外ドメインをコードするために遺伝子改変された内在性非ヒトCD3遺伝子座を含む遺伝子改変非ヒト動物であり、ヒトCD3タンパク質は、CD3ε、CD3δ、CD3γ、CD3ζ、又はそれらの任意の組み合わせである。一実施形態では、内在性非ヒトCD3遺伝子座は、ヒトCD3εの細胞外ドメイン、ヒトCD3δの細胞外ドメイン、及びヒトCD3γの細胞外ドメインをコードするために遺伝子改変される。一実施形態では、内在性非ヒトCD3遺伝子座は、対応する非ヒトタンパク質の機能性細胞外ドメインを発現しないように遺伝子改変される。一実施形態では、内在性非ヒトCD3遺伝子座は、対応する内在性非ヒト動物CD3タンパク質の膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインを更にコードし、その動物は、T細胞の表面に、ヒトCD3タンパク質の細胞外ドメイン、並びに内在性非ヒト動物CD3タンパク質の膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインを含むキメラCD3タンパク質を発現する。一実施形態では、非ヒト動物においてヒトCD3の細胞外ドメインをコードする核酸配列は、対応する内在性非ヒト動物CD3タンパク質の膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインをコードする核酸配列に作動可能に連結されている。特定の実施形態では、非ヒト動物は、(a)内在性CD3ε遺伝子座において、内在性非ヒト動物CD3εの膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインをコードする核酸配列に作動可能に連結されたヒトCD3εの細胞外ドメインをコードする核酸配列、(b)内在性CD3δ遺伝子座において、内在性非ヒト動物CD3δの膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインをコードする核酸配列に作動可能に連結されたヒトCD3δの細胞外ドメインをコードする核酸配列、並びに(c)内在性CD3γ遺伝子座において、内在性非ヒト動物CD3γの膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインをコードする核酸配列に作動可能に連結されたヒトCD3γの細胞外ドメインをコードする核酸配列を含み、非ヒト動物は、そのT細胞の表面にキメラCD3ε、CD3δ、及びCD3γタンパク質を発現する。いくつかの実施形態では、非ヒト動物におけるヒトCD3タンパク質の細胞外ドメインは、配列番号33、配列番号34、及び配列番号35からなる群から選択される配列を含む。いくつかの実施形態では、動物は、配列番号33、配列番号34、及び配列番号35の配列を含むヒトCD3タンパク質の細胞外ドメインを含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、本明細書に記述された遺伝子改変非ヒト動物は、CD3プロモーターに作動可能に連結されたヒトCD3タンパク質の細胞外ドメインをコードする核酸配列を含む。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記述された非ヒト動物は、CD3プロモーターに作動可能に連結されたヒトCD3εの細胞外ドメイン、CD3プロモーターに作動可能に連結されたヒトCD3δの細胞外ドメイン、及びCD3プロモーターに作動可能に連結されたヒトCD3γの細胞外ドメインをコードする核酸配列を含む。一実施形態では、CD3プロモーターは、非ヒト動物CD3プロモーターである。一実施形態では、CD3プロモーターは、ヒトCD3プロモーターである。一実施形態では、CD3プロモーターは、内在性非ヒトCD3プロモーターである。
【0010】
特定の実施形態では、提供される非ヒト動物は、哺乳類である。一実施形態では、動物は、げっ歯類である。一実施形態では、動物は、ラット又はマウスである。一実施形態では、動物は、マウスである。したがって、一実施形態では、本明細書で提供されるのは、遺伝子改変マウスであり、このマウスは、(a)内在性マウスCD3ε遺伝子座において、内在性マウスCD3εの膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインをコードする核酸配列に作動可能に連結されたヒトCD3εの細胞外ドメインをコードする核酸配列、(b)内在性マウスCD3δ遺伝子座において、内在性マウスCD3δの膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインをコードする核酸配列に作動可能に連結されたヒトCD3δの細胞外ドメインをコードする核酸配列、並びに(c)内在性マウスCD3γ遺伝子座において、内在性マウスCD3γの膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインをコードする核酸配列に作動可能に連結されたヒトCD3γの細胞外ドメインをコードする核酸配列を含み、このマウスは、そのT細胞の表面にヒト化CD3ε、CD3δ、及びCD3γタンパク質を発現する。一実施形態では、前記マウスにおけるヒト化CD3εタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号24に示され、ヒト化CD3δタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号25に示され、ヒト化CD3γタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号26に示されている。一実施形態では、本明細書で提供される遺伝子改変マウスは、マウスCD3プロモーターに作動可能に連結されたヒトCD3の細胞外ドメインをコードする核酸配列を含む。一実施形態では、プロモーターは、内在性マウスCD3プロモーターである。別の実施形態では、本明細書で提供される遺伝子改変マウスは、ヒトCD3プロモーターに作動可能に連結されたヒトCD3の細胞外ドメインをコードする核酸配列を含む。一実施形態では、マウスは、ヒト化CD3タンパク質を発現するように遺伝子改変されていないマウスと比較して、類似の、胸腺におけるCD4+とCD8+細胞の比率を示す。一実施形態では、マウスの胸腺におけるCD4+とCD8+T細胞の比率は、ヒト化CD3タンパク質を発現するように遺伝子改変されていないマウスのCD4+とCD8+細胞の比率の30%以内、25%以内、20%以内、15%以内、12%以内、10%以内、5%以内、又は2%以内である。一実施形態では、マウスは、ヒト化CD3タンパク質を発現するように遺伝子改変されていないマウスと類似の、脾臓、リンパ節、及び末梢血におけるT及びB細胞のパーセンテージを示す。一実施形態では、マウスは、ヒト化CD3タンパク質を発現するように遺伝子改変されていないマウスと類似の数の循環白血球、単球、好中球、好酸球、及び好塩基球を示す。
【0011】
したがって、一態様では、本明細書で提供されるのは、内在性マウスCD3遺伝子座において、ヒトCD3タンパク質の細胞外ドメインをコードする核酸配列を含む遺伝子改変マウスであり、ヒトCD3タンパク質は、CD3ε、CD3δ、CD3γ、CD3ζ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。一実施形態では、マウスは、ヒトCD3ε、CD3δ、及びCD3γの細胞外ドメインを含む。マウスの一実施形態では、ヒトCD3εの細胞外ドメインは、配列番号33で示され、ヒトCD3δの細胞外ドメインは、配列番号34で示され、ヒトCD3γの細胞外ドメインは、配列番号35で示される。一実施形態では、マウスは、ヒト化CD3ε、ヒト化CD3δ、及びヒト化CD3γを発現する。マウスの一実施形態では、ヒト化CD3εは、配列番号24で示され、ヒト化CD3δは、配列番号25で示され、ヒト化CD3γは、配列番号26で示される。一実施形態では、マウスは、マウスCD3ε、CD3δ、及びCD3γの膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインを更に含む。一実施形態では、マウスは、内在性マウスCD3ε、CD3δ、及びCD3γの膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインを更に含む。
【0012】
別の態様では、本明細書で提供されるのは、CD3ε、CD3δ、CD3γ、CD3ζ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるヒトCD3タンパク質の細胞外ドメインをコードする核酸配列を非ヒト動物の細胞のゲノムに導入すること、及び遺伝子改変非ヒト動物を細胞から繁殖させることを含む、ヒト化CD3タンパク質を発現する遺伝子改変非ヒト動物を作製する方法である。方法の一実施形態では、動物は、対応する非ヒトタンパク質の機能性細胞外ドメインを含まない。方法の一実施形態では、動物は、内在性CD3遺伝子座において、ヒトCD3εの細胞外ドメイン、ヒトCD3δの細胞外ドメイン、及びヒトCD3γの細胞外ドメインをコードする核酸配列を含む。方法の一実施形態では、ヒトCD3εの細胞外ドメインは、配列番号33で示され、ヒトCD3δの細胞外ドメインは、配列番号34で示され、ヒトCD3γの細胞外ドメインは、配列番号35で示される。方法の一実施形態では、動物は、対応する非ヒトタンパク質の機能性細胞外ドメインを含まない。1つの特定の実施形態において、方法は、内在性CD3遺伝子座において非ヒトCD3タンパク質の細胞外ドメインを対応するヒトCD3タンパク質の細胞外ドメインで置換することを含む。方法の一実施形態では、動物は、対応する内在性非ヒト動物CD3タンパク質の膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインをコードする核酸配列を更に含む。方法の一実施形態では、非ヒト動物はマウスであり、置換は内在性マウスCD3遺伝子座においてである。動物がマウスである方法の一実施形態では、マウスは、配列番号24で示されるヒト化CD3ε、配列番号25で示されるヒト化CD3δ、配列番号26で示されるヒト化CD3γ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるヒト化CD3タンパク質を発現する。この方法の一実施形態では、置換は、単一ES細胞内で行われ、この単一ES細胞をマウス胚に導入してマウスを作製する。
【0013】
更に別の態様では、本明細書で提供されるのは、非ヒト動物モデル、例えば、CD3系二重特異性抗原結合タンパク質を試験するためのマウスモデルであり、この抗原結合タンパク質は、CD3と所望の抗原の両方に結合することができ、マウスモデルは、ヒトCD3タンパク質の細胞外ドメインをコードするように遺伝子改変されたマウスを含み、ヒトCD3タンパク質は、CD3ε、CD3δ、CD3γ、CD3ζ、又はそれらの任意の組み合わせ(例えば、2つ又は3つ以上のCD3タンパク質)であり、所望の非マウス抗原を発現する細胞を含むか又は所望の非マウス抗原を含む。モデルの非ヒト動物は、上述の又は本明細書の他の部分に記載される非ヒト動物の任意のものであり得る。マウスモデルの一実施形態では、ヒト化CD3タンパク質の核酸配列は、内在性CD3遺伝子座に位置する。マウスモデルの一実施形態では、抗原結合タンパク質が、前記マウスに導入された。マウスモデルの一実施形態では、マウスは、ヒトCD3ε、CD3δ、及びCD3γの細胞外ドメインを発現する。マウスモデルの一実施形態では、マウスは、マウスCD3ε、CD3δ、及びCD3γの膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインを更に発現する。
【0014】
マウスモデルの一実施形態では、マウスは、所望の抗原を発現する腫瘍の異種移植片を含む。マウスモデルの一実施形態では、所望の抗原を発現する又は含む細胞は、腫瘍細胞である。マウスモデルの一実施形態では、選択された二重特異性抗原結合タンパク質は、ヒト化CD3タンパク質及び所望の抗原の両方に結合する。マウスモデルの一実施形態では、所望の抗原は、ヒト抗原である。マウスモデルの一実施形態では、抗原結合タンパク質は、サルCD3タンパク質に結合することができる。マウスモデルの一実施形態では、所望の抗原は、腫瘍関連抗原である。そのような実施形態では、腫瘍関連抗原は、ALK、BAGEタンパク質、BIRC5(サバイビン)、BIRC7、CA9、CALR、CCR5、CD19、CD20(MS4A1)、CD22、CD27、CD30、CD33、CD38、CD40、CD44、CD52、CD56、CD79、CDK4、CEACAM3、CEACAM5、CLEC12A、EGFR、EGFR変異体III、ERBB2(HER2)、ERBB3、ERBB4、EPCAM、EPHA2、EPHA3、FCRL5、FLT3、FOLR1、GAGEタンパク質、GD2、GD3、GPNMB、GM3、GPR112、IL3RA、KIT、KRAS、LGR5、EBV由来のLMP2、L1CAM、MAGEタンパク質、MLANA、MSLN、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、MUC5、MUC16、MUM1、ANKRD30A、NY-ESO1(CTAG1B)、OX40、PAP、PAX3、PAX5、PLAC1、PRLR、PMEL、PRAME、PSMA(FOLH1)、RAGEタンパク質、RET、RGS5、ROR1、SART1、SART3、SLAMF7、SLC39A6(LIV1)、STEAP1、STEAP2、TERT、TMPRSS2、Thompson-nouvelle抗原、TNFRSF17、TYR、UPK3A、VTCN1、WT1からなる群から選択され得る。
【0015】
別の実施形態では、所望の抗原は、感染症関連抗原である。そのような実施形態では、マウスは、感染因子に感染していてもよい。そのような一実施形態では、感染症関連抗原は、ウイルス抗原であってもよく、このウイルス抗原は、HIV、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、ヘルペスウイルス(例えば、HSV-1、HSV-2、CMV、HAV-6、VZV、エプスタインバールウイルス)、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、フラビウイルス、エコーウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルス、コロナウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ムンプスウイルス、ロタウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、パルボウイルス、ワクシニアウイルス、HTLV、デングウイルス、パピローマウイルス、水いぼウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、JCウイルス、エボラウイルス、及びアルボウイルス脳炎のウイルス抗原からなる群から選択される。そのような別の実施形態では、感染症関連抗原は、細菌性抗原であってもよく、この細菌性抗原は、クラミジア、リケッチア、マイコバクテリア、ブドウ球菌、連鎖球菌、肺炎球菌(pneumonococci)、髄膜炎菌、淋菌、クレブシエラ、プロテウス、セラチア、シュードモナス、レ
ジオネラ菌、ジフテリア、サルモネラ、桿菌、コレラ、破傷風、ボツリズム、炭疽、ペスト、レプトスピラ、及びライム病の細菌性抗原からなる群から選択される。
【0016】
提供されたマウスモデルの一実施形態では、CD3系抗原結合タンパク質は、抗体である。一実施形態では、CD3系抗原結合タンパク質は、ヒト又はヒト化抗原結合タンパク質である。そのようなマウスモデルは、マウスにおける抗原結合タンパク質の有効性及び/又は毒性の試験を可能にし得る。
【0017】
また、本明細書で提供されるのは、(a)ヒトCD3タンパク質の細胞外ドメインをコードするように遺伝子改変された内在性非ヒトCD3遺伝子座を含む遺伝子改変マウスに所望の抗原を導入することであって、このヒトCD3タンパク質は、上記若しくは本明細書の他の部分に定義されたようにCD3ε、CD3δ、CD3γ、CD3ζ、又はそれらの任意の組み合わせであることと、(b)マウスを所望の薬物候補と接触させることであって、この薬物候補が、ヒトCD3及び所望の抗原に対するものであることと、(c)その薬物候補が、所望の抗原の存在又は発現を特徴とする細胞を予防、低減又は排除することに効果があるかどうかを判定することと、を含む、所望の抗原を標的とする薬物候補のスクリーニング方法である。方法の一実施形態では、遺伝子改変マウスは、内在性マウスCD3遺伝子座において、ヒトCD3εの細胞外ドメイン、ヒトCD3δの細胞外ドメイン、及びヒトCD3γの細胞外ドメインをコードする核酸配列を含む。方法の一実施形態では、マウスは、対応するマウスタンパク質の機能性細胞外ドメインを含まない。方法の一実施形態では、マウスは、対応する内在性マウスCD3タンパク質の膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインをコードする核酸配列を含む。方法の一実施形態では、ヒトCD3の細胞外ドメインをコードする核酸配列は、対応する内在性マウスCD3タンパク質の膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインをコードする核酸配列に作動可能に連結される。方法の一実施形態では、ヒトCD3εの細胞外ドメインは、配列番号33で示され、ヒトCD3δの細胞外ドメインは、配列番号34で示され、ヒトCD3γの細胞外ドメインは、配列番号35で示される。したがって、方法の1つの特定の実施形態において、マウスは、配列番号24で示されるアミノ酸配列を含むヒト化CD3εタンパク質、配列番号25で示されるアミノ酸配列を含むヒト化CD3δタンパク質、及び配列番号26で示されるアミノ酸配列を含むヒト化CD3γタンパク質を発現する。
【0018】
本明細書に記述された薬物候補のスクリーニング方法の特定の実施形態では、本明細書に記述されたマウスに所望の抗原を導入する工程は、マウスで所望の抗原を発現することを含む。一実施形態では、マウスで所望の抗原を発現する工程は、所望の抗原を発現するようにマウスを遺伝子改変することを含む。一実施形態では、所望の抗原を導入する工程は、マウスに所望の抗原を感染させることを含む。方法の一実施形態では、導入する工程は、前記マウスに所望の抗原を発現する細胞を導入することを含む。方法の様々な実施形態では、細胞は、腫瘍細胞、細菌細胞、又はウイルスに感染した細胞であり得る。したがって、方法のいくつかの実施形態では、マウスは、ウイルス又は細菌の感染のいずれかである感染を含む。したがって、所望の抗原は、感染症関連抗原であり得る。一実施形態では、所望の抗原は、ウイルス抗原であり、このウイルス抗原は、HIV、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、ヘルペスウイルス(例えば、HSV-1、HSV-2、CMV、HAV-6、VZV、エプスタインバールウイルス)、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、フラビウイルス、エコーウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルス、コロナウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ムンプスウイルス、ロタウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、パルボウイルス、ワクシニアウイルス、HTLV、デングウイルス、パピローマウイルス、水いぼウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、JCウイルス、エボラウイルス、及びアルボウイルス脳炎のウイルス抗原からなる群から選択される。別の実施形態では、所望の抗原は、感染症関連抗原であり、これは、クラミジア、リケッチア、マイコバクテリア、ブドウ球菌、連鎖球菌、肺炎球菌、髄膜炎菌、淋菌、クレブシエラ、プロテウス、セラチア、シュードモナス、レジオネラ菌、ジフテリア、サルモネラ、桿菌、コレラ、破傷風、ボツリズム、炭疽、ペスト、レプトスピラ、及びライム病の細菌性抗原からなる群から選択される細菌性抗原である。
【0019】
薬物候補のスクリーニング方法の別の実施形態では、所望の抗原は、腫瘍関連抗原である。方法の一実施形態では、腫瘍関連抗原は、ALK、BAGEタンパク質、BIRC5(サバイビン)、BIRC7、CA9、CALR、CCR5、CD19、CD20(MS4A1)、CD22、CD27、CD30、CD33、CD38、CD40、CD44、CD52、CD56、CD79、CDK4、CEACAM3、CEACAM5、CLEC12A、EGFR、EGFR変異体III、ERBB2(HER2)、ERBB3、ERBB4、EPCAM、EPHA2、EPHA3、FCRL5、FLT3、FOLR1、GAGEタンパク質、GD2、GD3、GPNMB、GM3、GPR112、IL3RA、KIT、KRAS、LGR5、EBV由来のLMP2、L1CAM、MAGEタンパク質、MLANA、MSLN、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、MUC5、MUC16、MUM1、ANKRD30A、NY-ESO1(CTAG1B)、OX40、PAP、PAX3、PAX5、PLAC1、PRLR、PMEL、PRAME、PSMA(FOLH1)、RAGEタンパク質、RET、RGS5、ROR1、SART1、SART3、SLAMF7、SLC39A6(LIV1)、STEAP1、STEAP2、TERT、TMPRSS2、Thompson-nouvelle抗原、TNFRSF17、TYR、UPK3A、VTCN1、WT1からなる群から選択される。
【0020】
薬物候補のスクリーニング方法のいくつかの実施形態では、マウスは、免疫応答性マウスである。本明細書に記述された方法のいくつかの実施形態では、所望の抗原は、所望のヒト抗原である。
【0021】
方法のいくつかの実施形態では、薬物候補は、抗体である。いくつかの実施形態では、薬物候補は、抗原結合タンパク質である。いくつかの実施形態では、薬物候補は、二重特異性抗体又は二重特異性抗原結合タンパク質である。いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合タンパク質は、ヒトCD3タンパク質と所望の抗原の両方に結合することができる。一実施形態では、薬物候補は、サルCD3タンパク質を認識することができる。
【0022】
薬物候補のスクリーニング方法のいくつかの実施形態では、薬物候補は、所望の抗原を標的としない作用物質と比較して腫瘍の増殖を低減、排除、又は予防することができる。そのような方法のいくつかの実施形態では、薬物候補が所望の抗原の存在又は発現を特徴とする細胞を予防、低減又は排除することに効果があるかどうかを判定する工程は、腫瘍体積アッセイ又はT細胞媒介性腫瘍細胞キリングアッセイを含む。
【0023】
他の実施形態では、薬物候補は、所望の抗原を標的としない作用物質と比較して細菌又はウイルスの感染を低減、排除、又は予防することができる。いくつかのそのような実施形態では、薬物候補が所望の抗原の存在又は発現を特徴とする細胞を予防、低減又は排除することに効果があるかどうかを判定する工程は、ウイルス又は細菌の力価の測定を含む。
【0024】
更に他の実施形態では、本明細書で提供されるのは、併用薬物療法の安全性、有効性、及び薬物動態を試験するための非ヒト動物モデル(例えば、マウスモデル)であり、その併用療法はヒトCD3分子に結合する薬物(例えば、抗原結合タンパク質)を含む。そのような併用療法は、T細胞の漸増及び/又は活性化から利益を受け得る特定の腫瘍、感染症、又は本明細書に記述された他の疾病を標的とすることを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】T細胞受容体複合体の構造を示す。複合体は、2つのCD3εサブユニット、1つのCD3δサブユニット、1つのCD3γサブユニット、及び2つのCD3ζサブユニット(T細胞表面でTCRαβヘテロ二量体と複合体化)を含む。アスタリスクは、ITAMモチーフの位置を示す。
図2A】ヒト化CD3γδεの大型標的化ベクターの模式図(一定の比率の縮小ではない)である。図2Aは、ヒトCD3E、CD3D、及びCD3G配列のノックイン箇所が示された状態の、選択カセット(Neo)欠失前の大型標的化ベクターを示す。A、B、C、D、E、F、及びGは、表1で表される接合核酸配列の位置を示す。
図2B】ヒト化CD3γδεの大型標的化ベクターの模式図(一定の比率の縮小ではない)である。図2Bは、選択カセット(Neo)欠失後の大型標的化ベクターを示しており、図2Aと同様に、ヒトCD3E、CD3D、及びCD3Gの位置を示している。A-B、C、D、E、F、及びGは、表1及び3で表される接合核酸配列の位置を示す。
図3】ヒト化CD3γδεマウスにおけるヒト化CD3タンパク質のアミノ酸配列を示す。ヒト由来のCD3タンパク質配列は、下線が付されている。
図4】マウス及びヒトのCD3e、CD3d、及びCD3g配列間のアライメントを示す。マウスCD3遺伝子座に導入されたヒト配列の5’末端及び3’末端は、及び**がそれぞれ付けられている。
図5A】(最上段)は、野生型(WT)、ヘテロ接合ヒト化CD3γδε(HET)、又はホモ接合ヒト化CD3γδε(HO)マウスにおけるCD4+及びCD8+胸腺細胞の正規分布を示すFACs分析のプロットである。
図5B】(最上段)は、示された動物の末梢血におけるB及びT細胞のパーセンテージ並びに数を示すデータである。図5Bの最下段は、示された動物の脾臓におけるT及びB細胞のパーセンテージを示すデータである。
図5C】CD4+及びCD8+T細胞におけるVβレパートリーの多クローン性を示し、この細胞は、ヒト化CD3γδεマウスの脾臓から得られる。
図6A】マウスにおける野生型コントロール又はヒト化CD3γδεマウスのいずれかの脾臓内のウイルスLCMV力価の実例であり、このマウスは、LCMVクローン13(図6A)に感染させた。
図6B】マウスにおける野生型コントロール又はヒト化CD3γδεマウスのいずれかの脾臓内のウイルスLCMV力価の実例であり、このマウスは、事前LCMV Armstrongクローン感染後にLCMVクローン13(図6B)に感染させた。
図7】サルCD3(ah/mfCD3-2及びah/mfCD3-1)と交差反応もする2種類の抗ヒトCD3抗体、ヒトCD3特異的(ahCD3-1及びahCD3-2)である2種類の抗ヒトCD3抗体、コントロールの抗マウスCD3(amCD3-2C11)、無関係コントロールヒトIgG(control hIgG)、及び二次抗体のみのコントロール(2番目のみ)で分類された野生型(WT)、ヘテロ接合ヒト化CD3γδε(hCD3γδε Het)、又はホモ接合ヒト化CD3γδε(hCD3γδεHo)のマウスの脾細胞のFACS分析からのデータである。MFI値は、各グラフの下の表に列挙されている。
図8A】ヒト化CD3γδεマウスにおける抗CD3抗体に対する反応を実証する。抗CD3抗体で処理されたマウスの血液中の一時的なT及びB細胞の喪失、即ち、示された各抗体に関する1日目のT細胞の喪失(左図)、又は試験された各抗体に関する14日間にわたるT及びB細胞の喪失及び回復(中央及び右図)を実証する。
図8B】ヒト化CD3γδεマウスにおける抗CD3抗体に対する反応を実証する。示された抗体で処理した2時間後の放出されたサイトカインの濃度の増加を示す(IFNγ、KC、TNFα、IL-6、及びIL-10)。
図9】野生型(WT)及びヒト化CD3γδεホモ接合(hCD3γδε Ho)のマウスにおいて示された抗体の量を増加させて処理する際の脾細胞の増殖(細胞上のみの活性化倍数として測定される)を実証する。
図10】ヒト化CD3マウスモデルの様々な特性を要約している表である。
図11A】腫瘍の移植と同時に処置を開始したときのB16F10.9/CD20腫瘍の腫瘍体積における抗CD3抗体(Ab-1;2つの異なる濃度で試験された、CD3及びCD20を認識する二重特異性抗体)の効果を実証する(予防モデル)。
図11B】既に確立されたB16F10.9/CD20腫瘍の腫瘍体積における抗CD3抗体(Ab-1;2つの異なる濃度で試験された、CD3及びCD20を認識する二重特異性抗体)の効果を実証する(治療モデル)。
【発明を実施するための形態】
【0026】
定義
本発明は、例えば、ヒト化CD3ε、CD3δ、CD3γ、及び/又はCD3ζタンパク質などのヒト化CD3タンパク質を発現する遺伝子改変非ヒト動物(例えば、げっ歯類、例えば、マウス又はラット)を提供する。本発明はまた、例えば、キメラヒト/マウスCD3タンパク質などのヒト化CD3タンパク質をコードする遺伝子改変CD3遺伝子座を、例えば、それらの生殖細胞系内などのゲノム内に含む遺伝子改変非ヒト動物にも関連する。また提供されるのは、それを含む胚、細胞、及び組織、それを作製する方法、並びにそれを使用する方法である。特に定義されない限りは、本明細書で使用される全ての用語及び語句は、用語及び語句が使用されている文脈からその反対が明示されない又は明確にわからない限り、用語及び語句が当該技術分野において得てきた意味を含む。
【0027】
本明細書で使用するとき、「CD3」は、多分子T細胞受容体(TCR)複合体の一部としてT細胞で発現する抗原を含み、多分子TCR複合体は、次の受容体鎖:CD3-イプシロン(ε)、CD3-デルタ(δ)、CD3-ゼータ(ζ)、及びCD3-ガンマ(γ)(図1を参照)のうち1つ又は2つ以上を含むホモ二量体及び/又はヘテロ二量体の会合から形成される。ヒト及びマウスCD3-デルタ、CD3-ゼータ、及びCD3-ガンマの配列及びGenBankアクセッション番号は下の表4に示される。本出願を通して、ε又はイプシロンは、Eと書くこともでき、δ又はデルタは、Dと書くこともでき、ζ又はゼータは、Zと書くこともでき、γ又はガンマは、Gと書くこともできる。
【0028】
本明細書で使用するとき、「CD3に結合する抗体」又は「抗CD3抗体」は、単一のCD3サブユニット(例えば、イプシロン、デルタ、ガンマ又はゼータ)を特異的に認識する抗体及びその抗原結合性断片、並びに2つのCD3サブユニットの二量体複合体(例えば、ガンマ/イプシロン、デルタ/イプシロン、及びゼータ/ゼータCD3二量体)を特異的に認識する抗体及びその抗原結合性断片を含む。本発明の抗体及び抗原結合性断片は、可溶性CD3及び/又は細胞表面に発現されるCD3に結合し得る。可溶性CD3は、天然のCD3タンパク質、並びに例えば、単量体及び二量体のCD3構造体などの組み換えCD3タンパク質変異体を含み、これは、膜貫通ドメインが欠損している、ないしは別の方法で細胞膜と関連しない。
【0029】
保存的アミノ酸置換を説明するために使用されるとき、用語「保存的」は、化学的性質(例えば、電荷又は疎水性)が類似した側鎖R基を有する別のアミノ酸残基によるアミノ酸残基の置換を含む。保存的アミノ酸置換は、保存的置換をコードするヌクレオチド変化を導入するようにヌクレオチド配列を改変することによって実現することができる。一般的には、保存的アミノ酸置換は、例えば、CD3タンパク質がT細胞受容体会合及びシグナル伝達における役割を担う能力などのタンパク質の所望の機能特性を実質的に変更しない。化学的性質が類似した側鎖を有するアミノ酸の基の例として、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、及びイソロイシンなどの脂肪族側鎖;セリン及びスレオニンなどの脂肪族-ヒドロキシル側鎖;アスパラギン及びグルタミンなどのアミド含有側鎖;フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファンなどの芳香族側鎖;リシン、アルギニン、及びヒスチジンなどの塩基性側鎖;アスパラギン酸及びグルタミン酸などの酸性側鎖;並びにシステイン及びメチオニンなどのイオウ含有側鎖が挙げられる。保存的アミノ酸置換基として、例えば、バリン/ロイシン/イソロイシン、フェニルアラニン/チロシン、リシン/アルギニン、アラニン/バリン、グルタメート/アスパルテート、及びアスパラギン/グルタミンが挙げられる。いくつかの実施形態では、例えば、アラニンスキャニング変異誘発などで使用されるとき、保存的アミノ酸置換は、タンパク質内の任意の天然残基をアラニンで置換してもよい。いくつかの実施形態では、参照により本明細書に組み込まれる、Gonnet et al.((1992)Exhaustive Matching
of the Entire Protein Sequence Database,Science 256:1443~45)に開示されたPAM250対数尤度行列内の正の値を有する保存的置換が行われる。いくつかの実施形態では、置換は、中程度の保存的置換であり、その置換はPAM250対数尤度行列内で非負値を有する。
【0030】
したがって、本発明により包含されるのは、本明細書に記述されたアミノ酸配列内に保存的アミノ酸置換を含むヒト化CD3タンパク質を発現する遺伝子改変非ヒト動物(例えば、げっ歯類、例えば、マウス又はラット)である。
【0031】
当業者は、本明細書に記述されたヒト化CD3タンパク質をコードする核酸残基に加え、遺伝暗号の縮重のため、他の核酸が本発明のポリペプチドをコードし得ることを理解するだろう。したがって、本明細書に記述されたヒト化CD3タンパク質をコードするヌクレオチド配列をそのゲノム内に含む遺伝子改変非ヒト動物に加え、遺伝暗号の縮重のために本明細書に記述されたものと異なるヌクレオチド配列をそのゲノム内に含む非ヒト動物もまた提供される。
【0032】
配列に関連して使用されるとき、用語「同一性」は、ヌクレオチド及び/又はアミノ酸配列同一性を測定するために使用され得る当該技術分野において周知の多数の異なるアルゴリズムによって決定されるような同一性を含む。本明細書に記述されたいくつかの実施形態では、同一性は、10.0のopen gap penalty、0.1のextend gap penaltyを使用するClustalW v.1.83(slow)アライメントを用い、かつGonnet類似度マトリックス(MacVector(商標)10.0.2、MacVector Inc.,2008)を用いて決定される。配列の同一性について比較した配列の長さは、特定の配列に依存する。様々な実施形態において、同一性は、成熟タンパク質の配列をN末端からC末端まで比較することによって決定される。様々な実施形態において、ヒト化配列をヒト配列と比較する際、ヒト化配列(ただし非ヒト部分でない)のヒト部分は、ヒト配列とヒト化配列との間の同一性のレベルを確認する目的で比較するのに使用される。
【0033】
「作動可能に連結されている」という用語は、そのように記載される成分が意図される様式で機能することを可能にする関係にある近位を含む。このように、タンパク質をコードする核酸配列は、調節配列(例えばプロモーター、エンハンサー、サイレンサー配列等)に作動可能に連結させてもよく、それにより、適切な転写調節が維持される。加えて、本発明のヒト化タンパク質の様々な部分を作動可能に連結して、適切な折り畳み、プロセッシング、標的化、発現、及び細胞内のタンパク質の他の機能特性を維持することができる。特に明記しない限り、本発明のヒト化タンパク質の様々なドメインは、互いに作動可能に連結されている。CD3タンパク質のヒト細胞外ドメイン並びに非ヒト膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインの作動可能な連結は、核酸コード配列から隣接する融合タンパク質としてこれらの構成要素を発現することによって実現することができる。
【0034】
遺伝子置換に関して「置換」という用語は、外因性遺伝物質を内在性遺伝子座に置き、それにより内在性遺伝子の全て又は一部をオルソロガス又は相同核酸配列で置換することを含む。一例では、内在性非ヒト遺伝子又はその断片は、対応するヒト遺伝子又はその断片で置換されている。例えば、マウス又は他の非ヒトCD3タンパク質の細胞外ドメインをコードするDNAを、対応するヒトタンパク質の細胞外ドメインをコードするDNAで置換することができる。対応するヒト遺伝子又はその断片は、置換される内在性非ヒト遺伝子又はその断片のオルソログ、ホモログである、又は置換される内在性非ヒト遺伝子又はその断片と構造及び/若しくは機能において実質的に同一若しくは同一であるヒト遺伝子又は断片である。下の実施例で実証されるように、内在性非ヒトCD3細胞外ドメインをコードするヌクレオチド配列は、ヒトCD3細胞外ドメインに対応するヌクレオチド配列によって置換された。
【0035】
例えば、機能性タンパク質に関連してなど、本明細書で使用するとき「機能性」は、通常天然タンパク質に関連する少なくとも1つの生物活性を維持するタンパク質を含む。例えば、本発明のいくつかの実施形態では、内在性遺伝子座における置換(例えば、内在性非ヒトCD3遺伝子座における置換)は、機能性内在性タンパク質を発現できない遺伝子座をもたらす。
【0036】
CD3遺伝子座の場合、「遺伝子座」という用語は、CD3コード領域を含むゲノムDNAを含む。異なるCD3遺伝子であるCD3ε、CD3δ、CD3γは、互いに近接して同一の染色体をマップする。このようにして状況により、内在性CD3遺伝子座への言及は、これらのコード領域のいくつか若しくは全て又は個々のコード領域を含む遺伝子座を指す場合もある。例えば、CD3εなどのようなヒトCD3のうちの1つだけが非ヒト動物に導入されている場合、次に、そのCD3をコードする核酸は、好ましくは対応する非ヒトCD3の遺伝子座を改変する。CD3ε、CD3δ、CD3γなどのいくつかのヒトCD3が非ヒト動物に導入されている場合、次に改変された内在性遺伝子座は、CD3ε、CD3δ、及びCD3γのそれぞれのコード領域を含む。CD3遺伝子座はまた、CD3ζの遺伝子座を指すこともあり、それはCD3ε、CD3δ、及びCD3γとは異なる染色体を占位する。ヒトCD3ζが、ヒトCD3ε、CD3δ、又はCD3γのいずれかと共に導入されている場合、2つ又はそれ以上のCD3遺伝子座を異なる染色体上で改変することができる。他の配列は、例えば、選択カセット、制限部位などの遺伝子操作の目的のために導入されたCD3遺伝子座に含まれ得る。
【0037】
免疫グロブリン核酸配列に関する用語「生殖細胞系」には、子孫に継承できる核酸配列が含まれる。
【0038】
語句「免疫グロブリン分子」は、2つの免疫グロブリン重鎖及び2つの免疫グロブリン軽鎖を含む。重鎖は、同一又は異なってもよく、軽鎖は、同一又は異なってもよい。
【0039】
本明細書で使用するとき、用語「抗体」は、ジスルフィド結合によって相互接続された4つのポリペプチド鎖、2つの重(H)鎖、及び2つの軽(L)鎖を含む免疫グロブリン分子を含む。各重鎖は、重鎖可変ドメイン及び重鎖定常領域(C)を含む。重鎖定常領域は、3つのドメイン、C1、C2、及びC3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変ドメイン及び軽鎖定常領域(C)を含む。重鎖及び軽鎖可変ドメインは、超可変性のいわゆる相補性決定領域(CDR)、より保存されている領域が組み入れられている、いわゆるフレームワーク領域(FR)の領域へと更に細分化され得る。各重及び軽鎖可変ドメインは、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順でアミノ末端からカルボキシ末端まで配列された、3つのCDR及び4つのFRを含む(重鎖CDRは、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3と省略することができ、軽鎖CDRは、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3と省略することができる)。
【0040】
「高親和性」抗体という用語は、標的エピトープに対するKが約10-9M以下である抗体を指す(例えば、約1×10-9M、1×10-10M、1×10-11M、又は約1×10-12M)。
【0041】
「二重特異性抗体」という語句は、2つのエピトープに選択的に結合することができる抗体を含む。二重特異性抗体は、通常、2つの異なる分子上(例えば、2つの異なる免疫原上の異なるエピトープ)又は同じ分子上(例えば、同じ免疫原上の異なるエピトープ)のいずれかで、それぞれ異なるエピトープ(例えば、異なる特異性を有する2つの重鎖)に結合する2つのアームを含む。二重特異性抗体が2つの異なるエピトープ(第1のエピトープ及び第2のエピトープ)に選択的に結合することができる場合、第1のエピトープの第1の抗体アームの親和性は、第2のエピトープの第1の抗体アームの親和性より少なくとも1~2又は3又は4又は5桁以上低くなり、逆もまた同様である。二重特異性抗体によって特異的に結合されたエピトープは、同じ又は異なる標的上(例えば、同じ又は異なるタンパク質上)にあり得る。例示の二重特異性抗体は、腫瘍抗原に特異的な第1の抗体アーム及び細胞毒性マーカー、例えば、Fc受容体(例えば、FcγRI、FcγRII、FcγRIIIなど)又はT細胞マーカー(例えば、CD3、CD28など)などに特異的な第2の抗体アームを有するものを含む。本発明の一実施形態では、二重特異性抗体の1つのアームは、CD3に特異的である。更に、腫瘍抗原に特異的な第1のアーム及び毒素に特異的な第2のアームを有する二重特異性抗体は、毒素(例えば、サポリン、ビンカアルカロイドなど)を腫瘍細胞に放出するために対をなすことができる。その他の例示の二重特異性抗体は、活性化受容体(例えば、B細胞受容体、FcγRI、FcγRIIA、FcγRIIIA、FcγRI、T細胞受容体など)に特異的な第1のアーム及び阻害性受容体(例えば、FcγRIIB、CD5、CD22、CD72、CD300aなど)に特異的な第2のアームを有するものを含む。そのような二重特異性抗体は、細胞活性化(例えば、アレルギー及び喘息)に関連する治療的状態のために構成され得る。二重特異性抗体は、例えば、同じ免疫原の異なるエピトープを認識する重鎖を結合することによって作製され得る。例えば、同じ免疫原の異なるエピトープを認識する重鎖可変配列をコードする核酸配列を、同じ又は異なる重鎖定常領域をコードする核酸配列と融合することができ、そのような配列は、免疫グロブリン軽鎖を発現する細胞で発現され得る。典型的な二重特異性抗体は、それぞれ3つの重鎖CDRを有する2つの重鎖、続いて(N末端からC末端へ)C1ドメイン、ヒンジ、C2ドメイン、及びC3ドメイン、並びにエピトープ結合特異性を付与しないが各重鎖と結合することができる、又は各重鎖と結合することができ、重鎖エピトープ結合性領域によって結合されたエピトープのうち1つ若しくは2つ以上に結合することができる、又は各重鎖と結合することができ、重鎖の一方若しくは両方をエピトープの一方若しくは両方に結合可能である、のいずれかである免疫グロブリン軽鎖を有する。同様に、「多重特異性抗体」という語句は、多数のエピトープ(例えば、2つ、3つ、4つのエピトープ)に選択的に結合することができる抗体を含む。
【0042】
「相補的決定領域」という語句又は「CDR」という用語は、通常(即ち野生動物において)免疫グロブリン分子の軽又は重鎖の様々な領域で2つのフレームワーク領域間に現れる有機体の免疫グロブリン遺伝子の核酸配列によってコードされたアミノ酸配列を含む。例えば、生殖細胞系配列又は再配列された若しくは再配列されていない配列によって、及び、例えば、ナイーブ又は成熟B細胞によって、CDRをコードすることができる。CDRは、体細胞変異(例えば、動物の生殖細胞系でコードされた配列と異なる)、ヒト化、及び/又はアミノ酸の置換、付加、若しくは欠失によって変性され得る。いくつかの状況では(例えば、CDR3について)、(例えば、再配列されていない核酸配列では)隣接していないが、例えば、配列のスプライシング又は結合(例えば、重鎖CDR3を形成するためのV-D-J組み換え)の結果としてB細胞核酸配列で隣接している2つ又はそれ以上の配列(例えば、生殖細胞系配列)によってCDRをコードすることができる。
【0043】
「機能性断片」という語句は、発現され、分泌され、マイクロモル、ナノモル又はピコモルの範囲のKでエピトープに特異的に結合することができる抗体などの抗原結合タンパク質の断片を含む。特異的認識は、Kが少なくともマイクロモルの範囲、ナノモルの範囲、又はピコモルの範囲であるものを含む。
【0044】
用語「重鎖」又は「イムノグロブリン重鎖」には、いかなる生物由来の免疫グロブリン重鎖定常領域配列を含む免疫グロブリン重鎖配列も含まれる。特に明記しない限り、重鎖可変ドメインは、3つの重鎖CDR及び4つのFR領域を含む。重鎖の断片は、CDR、CDR及びFRs、並びにその組み合わせを含む。典型的な重鎖は、可変ドメイン(N末端からC末端に向かって)、C1ドメイン、ヒンジ、C2ドメイン、及びC3ドメインを有する。重鎖の機能性断片は、エピトープを特異的に認識(例えばマイクロモル、ナノモル又はピコモルの範囲のKでエピトープを認識)できて、発現された後細胞から分泌されることが可能で、かつ少なくとも1つのCDRを含む断片を含む。重鎖可変ドメインは、可変領域遺伝子配列によってコードされ、通常、生殖細胞系に存在するV、D、及びJセグメントのレパートリーに由来するV、D、及びJセグメントを含む。様々な有機体のV、D、及びJ重鎖セグメント用の配列、位置、及び命名法は、International Immunogenetics Information System(IMGTデータベース)のウェブサイトに見出すことができる。
【0045】
用語「軽鎖」には、あらゆる生物由来の免疫グロブリン軽鎖配列が含まれ、特に明記しない限り、ヒトのカッパ及びラムダ軽鎖及びVpreB、並びに代替軽鎖が含まれる。特に明記しない限り、軽鎖可変ドメインは典型的には3つの軽鎖CDR及び4つのフレームワーク(FR)領域を含む。通常、全長軽鎖は、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4を含む可変ドメインと、軽鎖定常領域と、を含む。軽鎖可変ドメインは、軽鎖可変領域遺伝子配列によってコードされ、通常、生殖細胞系に存在するV及びJセグメントのレパートリーに由来するV及びJセグメントを含む。様々な有機体のV及びJ軽鎖セグメント用の配列、位置、及び命名法は、International Immunogenetics Information System(IMGTデータベース)のウェブサイトに見出すことができる。軽鎖には、例えば、それが現れる抗原結合タンパク質(例えば、抗体)によって認識されるいかなるエピトープにも選択的に結合しないものが含まれる。軽鎖にはまた、それが現れる抗原結合タンパク質(例えば、抗体)によって選択的に結合される1つ又は2つ以上のエピトープに結合及びそのエピトープを認識するもの、又は重鎖がそのエピトープに結合及びそのエピトープを認識することを補助するものが含まれる。
【0046】
本明細書で使用するとき、用語「抗原結合タンパク質」は、所望の抗原に結合することができる抗体並びに様々な天然に産生された分子及び遺伝子操作を受けた分子を含む。そのようなものとして、例えば、ドメイン特異抗体、単一ドメイン抗体(例えば、ラクダ類及び魚類などに由来)、ドメイン欠失抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、ナノボディ(nanabodies)(例えば、一価ナノボディ、二価ナノボディなど)、小モジュラー免疫薬(SMIP)、サメ可変IgNARドメインなどが挙げられる。抗原結合タンパク質はまた、例えば、(i)Fab断片、(ii)F(ab’)2断片、(iii)Fd断片、(iv)Fv断片、(v)単鎖Fv(scFv)分子、(vi)dAb断片、及び(vii)抗体の高度可変領域(例えば、CDR3ペプチドなどの単離された相補的決定領域(CDR))を模倣するアミノ酸残基からなる最小認識単位などの抗原結合性断片も含み得る。
【0047】
用語「細胞」は、遺伝子組み換え型核酸配列を発現するのに好適である任意の細胞を含む。細胞には、原核生物及び真核生物(単細胞又は多重細胞)、細菌細胞(例えば、E.coli、バチルス属、ストレプトマイセス属などの菌株)、マイコバクテリア細胞、真菌細胞、酵母細胞(例えば、S.cerevisiae、S.pombe、P.pastoris、P.methanolicaなど)、植物細胞、昆虫細胞(例えば、SF-9、SF-21、バキュロウイルス感染昆虫細胞、Trichoplusia niなど)、非ヒト動物細胞、ヒト細胞、又は、例えばハイブリドーマ又はクアドローマなどの細胞融合のものが含まれる。いくつかの実施形態では、この細胞は、ヒト、サル、類人猿、ハムスター、ラット、又はマウス細胞である。いくつかの実施形態では、この細胞は、真核であり、CHO(例えば、CHO K1、DXB-11 CHO、Veggie-CHO)、COS(例えば、COS-7)、網膜細胞、Vero、CV1、腎臓(例えば、HEK293、293 EBNA、MSR 293、MDCK、HaK、BHK)、HeLa、HepG2、WI38、MRC 5、Colo205、HB 8065、HL-60、(例えば、BHK21)、ジャーカット、Daudi、A431(表皮性)、CV-1、U937、3T3、L細胞、C127細胞、SP2/0、NS-0、MMT 060562、セルトリ細胞、BRL 3A細胞、HT1080細胞、骨髄腫細胞、腫瘍細胞、及び上記の細胞に由来する細胞株などの細胞から選択される。いくつかの実施形態では、この細胞は、例えば、ウイルス遺伝子(例えば、PER.C6(商標)細胞)を発現する網膜細胞など、1つ又は2つ以上のウイルス遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、この細胞はES細胞である。
【0048】
ヒト化CD3タンパク質は、一実施形態で、細胞外ドメインがヒト配列であるCD3タンパク質を意味する。膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインはまた、ヒトであってもよいが、非ヒト内在性配列であることが好ましい。異なる種、特にヒト細胞外ドメイン、及び非ヒト膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインからの配列を含むACD3タンパク質はまた、キメラCD3タンパク質と呼ばれることもある。
【0049】
遺伝子改変ヒト化CD3動物
様々な実施形態において、本発明は、ヒト化CD3タンパク質(例えば、ヒト化CD3ε、CD3γ、CD3δ、又はそれらの組み合わせ)をコードする核酸配列をそのゲノム内(例えば、その生殖細胞系ゲノム内)に含む遺伝子改変非ヒト動物(例えば、げっ歯類、例えば、マウス又はラット)を提供する。一実施形態では、本発明は、ヒト化CD3δ、ヒト化CD3γ、及びヒト化CD3εタンパク質をコードするヌクレオチド配列をそのゲノム内に含む遺伝子改変非ヒト動物(例えば、げっ歯類、例えば、マウス又はラット)を提供する。したがって、本発明のいくつかの実施形態では、マウスは、ヒト化CD3γδεが同じT細胞で発現されたT細胞受容体を有する複合体を形成するように、ヒト化CD3γδε複合体をそのT細胞の表面で発現する。
【0050】
CD3分子は、一般にT細胞免疫を調節することを目的とする作用物質の標的であり、いくつかの抗CD3抗体は、その目的のために開発されてきた(例えば、ムロモナブ-CD3又はOKT3)。OKT3などの抗CD3抗体は、(例えば、移植拒絶において)免疫抑制薬として使用されるが、自己免疫疾患(例えば、クローン病、I型糖尿病、潰瘍性大腸炎など)における治療可能性についても研究されている。
【0051】
加えて、CD3分子はまた、抗CD3二重特異性抗体が、例えば、特定の所望の抗原を発現する細胞など標的細胞にT細胞を補充する能力のために、例えば、二重特異性抗体など二重特異性物質の標的としても研究されている。例示の抗CD3二重特異性抗体は、米国特許出願公開第2014/0088295号、及び同第2015/0266966号に記述されており、その両方が参照により本明細書に援用される。
【0052】
薬物の非臨床開発段階の間に、候補作用物質は、通常それらの有効性、毒性、並びに他の薬物動態学及び薬力学特性に基づいて研究される。研究の最終目標は、ヒトの治療を開発することであるので、抗体などの候補作用物質は、通常ヒト抗原を標的にする。多くの非臨床試験は、それらの生理機能及び薬物代謝がヒトに最も類似しているので、霊長類などの大型動物で行われる。CD3(例えば、OKT3)に対して生じるいくつかの抗体は、非ヒトCD3、特に霊長類CD3に対して交差反応しないと知られている。薬物候補の有効性、毒性、及び他のパラメータに関する効果的な非臨床試験を行うために、まず、薬物候補を決定して霊長類CD3分子を認識する必要がある。
【0053】
しかしながら、抗CD3治療の開発を複雑にする別個の因子は、チンパンジーなどの大型霊長類が、絶滅寸前であり、多くの国でチンパンジーにおける研究は禁止されている一方、他の霊長類(例えば、カニクイザル(Macaca fascicularis))における研究が倫理的な問題を引き起こし得ることである。例えば、上記理由の全てのために、今までヒト腫瘍の有効な霊長類モデルは存在しない。したがって、げっ歯類、例えば、マウスなどのより小型の動物モデルで得ることができる特異的な治療候補での任意の予備的データは、大型霊長類における非臨床試験の更なる進歩を決定するのに有用であり得る。
【0054】
マウスなどの小型動物モデルにおける非臨床試験は、伝統的に薬物代用物を使用して行われてきた。例えば、特異的ヒト抗原を標的にする臨床上の候補が開発中であるとき、いくつかの非臨床データは、例えば、抗原結合タンパク質又は抗体などの分子を使用してマウスで生成され、その分子は所望の抗原のマウスホモログを特異的に標的にする。有効性、様々な投与計画、毒性及び副作用、並びに薬物投与の他の態様に関する情報は、そのような薬物代用物の研究から集められる。しかしながら、開発中であるのが実際の薬物ではない、又は研究されているのがヒト標的であることから、そのような所見は制限される。
【0055】
したがって、予備的な非臨床試験を行うのに最も有用な小型動物モデルは、ヒト又はヒト化CD3タンパク質を発現し、後続の霊長類の非臨床試験を可能にするカニクイザルCD3と交差反応もする抗CD3薬物候補を試験することができる、例えば、げっ歯類などの非ヒト動物である。本発明は、そのような複雑な動物モデルを提供する。
【0056】
したがって、本明細書で提供されるのは、ヒトCD3タンパク質の細胞外ドメインをコードする核酸配列をそのゲノム内に含む遺伝子改変非ヒト動物である。本発明のいくつかの実施形態では、CD3タンパク質は、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、CD3タンパク質は、CD3γ、CD3δ、CD3ε、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、CD3タンパク質は、CD3γ、CD3δ、及びCD3εポリペプチド鎖を含む。したがって、いくつかの実施形態では、遺伝子改変非ヒト動物は、そのゲノム内にヒトCD3γの細胞外ドメイン、ヒトCD3δの細胞外ドメイン、及びヒトCD3εの細胞外ドメインをコードする核酸配列を含む。そのような実施形態のいくつかにおいて、ヒトCD3γ、CD3δ、及びCD3εの細胞外ドメインは、単一の核酸によってコードされ得る。いくつかの実施形態では、ヒトCD3γ、CD3δ、及びCD3εの細胞外ドメインは、別個の核酸によってコードされる。
【0057】
いくつかの実施形態では、本明細書に記述された非ヒト動物は、内在性非ヒトCD3プロモーター及び/又は調節因子(例えば、内在性非ヒトのCD3γ、CD3δ、及び/又はCD3εプロモーター及び/又は調節因子)を維持する。他の実施形態では、非ヒト動物は、ヒトCD3プロモーター及び調節因子を含む。
【0058】
CD3に対して生成された抗体の大多数がCD3εエピトープを認識すると仮定されてきたが(Tunnacliffe et al.(1989)International Immunology,1(5):546~50を参照)、他のCD3サブユニット(例えば、CD3γ又はCD3δ)を認識し得るか、又は結合するためにCD3複合体の会合を必要とし得る多数の作用物質が存在する。したがって、ヒトCD3γの細胞外ドメイン、ヒトCD3δの細胞外ドメイン、及びヒトCD3εの細胞外ドメインをコードする核酸配列をそのゲノム内に含む遺伝子改変非ヒト動物は、CD3サブユニット又はCD3複合体のいずれかに結合する作用物質を調節することができるので、利点を提供する。
【0059】
例示のCD3タンパク質は、図4のアライメントに示されている。マウスCD3εタンパク質配列は、GenBankアクセッション番号NP_031674及び配列番号27に見出すことができるが、ヒトCD3εタンパク質配列は、GenBankアクセッション番号NP_000724及び配列番号28に見出すことができる。マウスCD3δタンパク質配列は、GenBankアクセッション番号NP_038515及び配列番号29に見出すことができるが、ヒトCDδタンパク質配列は、GenBankアクセッション番号NP_000723及び配列番号30に見出すことができる。マウスCD3γタンパク質配列は、GenBankアクセッション番号NP_033980及び配列番号31に見出すことができるが、ヒトCD3γタンパク質配列は、GenBankアクセッション番号NP_000064及び配列番号32に見出すことができる。
【0060】
本発明のいくつかの実施形態では、例えば、ヒトCD3γ、ヒトCD3δ、及びヒトCD3εの細胞外ドメインなど、ヒトCD3の細胞外ドメインをコードする核酸配列は、内在性非ヒトCD3遺伝子座に位置している。換言すれば、そのような核酸は、ヒトCD3ポリペプチドをコードするように内在性CD3遺伝子座を改変する。本発明のいくつかの実施形態では、非ヒト動物は、内在性遺伝子座の遺伝子改変のために、対応する非ヒトCD3タンパク質の機能性細胞外ドメインを含まず、その結果、機能性細胞外ドメインは、発現されない。本発明のいくつかの実施形態では、ヒトCD3の細胞外ドメインをコードする核酸配列は、内在性非ヒトCD3をコードする対応の核酸配列を置換する。したがって、いくつかの実施形態では、ヒトCD3γの細胞外ドメインをコードする核酸配列は、内在性非ヒトCD3γの細胞外ドメインをコードする核酸配列を置換し、ヒトCD3δの細胞外ドメインをコードする核酸配列は、内在性非ヒトCD3δの細胞外ドメインをコードする核酸配列を置換し、ヒトCD3εの細胞外ドメインをコードする核酸配列は、内在性非ヒトCD3εの細胞外ドメインをコードする核酸配列を置換する。いくつかの実施形態では、この置換は、内在性シグナル配列をコードする核酸配列の置換を含まない。別の実施形態では、この置換は、内在性シグナル配列をコードする核酸配列のヒトシグナル配列をコードする核酸配列との置換を含む。
【0061】
本発明のいくつかの態様では、細胞外ドメインは、例えば、細胞の表面に現れるタンパク質の領域など、膜貫通又は細胞質ドメインではなく、一部分において複合体での会合時に、例えば、TCRα及びβ細胞外ドメインなどTCRシグナル伝達複合体の他の構成要素の細胞外ドメインと相互作用する、タンパク質の領域を含む。本明細書に記述された様々な実施形態において、細胞外ドメインは、細胞表面で発現されたタンパク質のドメインを指し、別途記載のない限り、通常、細胞(sell)表面発現の前にタンパク質分解的に分解されるシグナル配列を含まない。本発明のいくつかの実施形態では、CD3εの細胞外ドメインは、配列番号24で示されるアミノ酸配列のアミノ酸17~130を含む(配列番号33として別途示される)。いくつかのそのような実施形態において、この動物は、内在性CD3εシグナル配列(例えば、配列番号24のアミノ酸1~16におけるシグナル配列)をコードする核酸配列を含む。本発明の他の実施形態では、この動物は、ヒトCD3εシグナル配列をコードする核酸配列を含む。本発明のいくつかの実施形態では、CD3δの細胞外ドメインは、配列番号25で示されるアミノ酸配列のアミノ酸19~105を含む(配列番号34として別途示される)。いくつかのそのような実施形態において、この動物は、内在性CD3δシグナル配列(例えば、配列番号25のアミノ酸1~18におけるシグナル配列)をコードする核酸配列を含む。本発明の他の実施形態では、この動物は、ヒトCD3δシグナル配列をコードする核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CD3γの細胞外ドメインは、配列番号26で示されるアミノ酸配列のアミノ酸20~116(配列番号35として別途示される)。いくつかのそのような実施形態において、この動物は、内在性CD3γシグナル配列(例えば、配列番号26のアミノ酸1~19におけるシグナル配列)をコードする核酸配列を含む。本発明の他の実施形態では、この動物は、ヒトCD3γシグナル配列をコードする核酸配列を含む。
【0062】
本発明のいくつかの態様では、この非ヒト動物は、例えば、対応する内在性CD3タンパク質などの内在性CD3タンパク質の膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインをコードする核酸配列を含む。したがって、一実施形態では、この非ヒト動物は、ヒトCD3タンパク質の細胞外ドメイン、並びに対応する内在性非ヒトCD3タンパク質の膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインを含むキメラタンパク質が発現されるように、対応する内在性非ヒトCD3タンパク質の膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインをコードする核酸配列に作動可能に連結されたヒトCD3タンパク質の細胞外ドメインをコードする核酸配列を含む。したがって、一態様では、この動物は、内在性CD3遺伝子座において、内在性非ヒトCD3の膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインをコードする核酸配列に作動可能に連結されたヒトCD3タンパク質の細胞外ドメインをコードする核酸配列を含む。一実施形態では、動物は、内在性CD3ε遺伝子座において、内在性非ヒト動物CD3εの膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインをコードする核酸配列に作動可能に連結されたヒトCD3εの細胞外ドメインをコードする核酸配列、内在性CD3δ遺伝子座において、内在性非ヒト動物CD3δの膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインをコードする核酸配列に作動可能に連結されたヒトCD3δの細胞外ドメインをコードする核酸配列、並びに内在性CD3γ遺伝子座において、内在性非ヒト動物CD3γの膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインをコードする核酸配列に作動可能に連結されたヒトCD3γの細胞外ドメインをコードする核酸配列を含む。ヒト細胞外ドメイン並びに内在性膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインと共にキメラCD3タンパク質を使用することは、薬物とヒトCD3の特異性との相互作用を可能にするが、完全なヒトCD3タンパク質と比較して、内在性T細胞受容体及びそのシグナル伝達構成要素との相互作用を再現することもまた可能にし得る。
【0063】
本発明のいくつかの態様では、非ヒト動物は、ヒトCD3タンパク質の細胞外ドメインを発現する。いくつかの態様では、非ヒト動物は、配列番号33で示されるヒトCD3εの細胞外ドメインを発現する。いくつかの態様では、非ヒト動物は、配列番号34で示されるヒトCD3δの細胞外ドメインを発現する。いくつかの態様では、非ヒト動物は、配列番号35で示されるヒトCD3γの細胞外ドメインを発現する。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態では、非ヒト動物は哺乳類である。一態様では、非ヒト動物は、例えば、トビネズミ科又はネズミ上科の小型哺乳動物である。一実施形態では、遺伝子改変動物はげっ歯類である。一実施形態では、げっ歯類は、マウス、ラット、及びハムスターから選択される。一実施形態では、げっ歯類は、ネズミ上科から選択される。一実施形態では、遺伝子改変動物は、カンガルーハムスター科(例えば、マウス様ハムスター)、キヌゲネズミ科(例えば、ハムスター、新世界ラット及びマウス、ハタネズミ)、ネズミ科(真正マウス及びラット、スナネズミ、トゲマウス、タテガミネズミ)、アシナガマウス科(キノボリマウス、イワマウス、オジロラット、マダガスカルラット及びマウス)、トゲヤマネ科(例えば、トゲヤマネ)、及びメクラネズミ科(例えば、デバネズミ、タケネズミ、及びモグラネズミ)から選択される科に属する。特定の実施形態では、遺伝子改変げっ歯類は、真正マウス又はラット(ネズミ科)、スナネズミ、トゲマウス、及びタテガミネズミから選択される。一実施形態では、遺伝子改変マウスはネズミ科に属する。一実施形態では、動物は、げっ歯類である。特定の実施形態では、げっ歯類は、マウス及びラットから選択される。一実施形態では、この非ヒト動物はマウスである。
【0065】
一実施形態では、この非ヒト動物は、C57BL/A、C57BL/An、C57BL/GrFa、C57BL/KaLwN、C57BL/6、C57BL/6J、C57BL/6ByJ、C57BL/6NJ、C57BL/10、C57BL/10ScSn、C57BL/10Cr、及びC57BL/Olaから選択されるC57BL系統のマウスであるげっ歯類である。別の実施形態では、マウスは、129P1、129P2、129P3、129X1、129S1(例えば、129S1/SV、129S1/SvIm)、129S2、129S4、129S5、129S9/SvEvH、129S6(129/SvEvTac)、129S7、129S8、129T1、129T2である系統からなる群から選択される129系統である(例えば、Festing et al.(1999)Revised nomenclature for strain 129 mice,Mammalian Genome 10:836を参照されたく、Auerbach
et al(2000)Establishment and Chimera Analysis of 129/SvEv-and C57BL/6-Derived Mouse Embryonic Stem Cell Linesも参照のこと)。特定の実施形態では、遺伝子改変マウスは、上記129系統と上記C57BL/6系統との混合物である。別の特定の実施形態では、マウスは、上記の129系統の混合、又は上記のBL/6系統の混合である。特定の実施形態では、混合の129系統は、129S6(129/SvEvTac)系統である。別の実施形態では、このマウスは、BALB系統、例えばBALB/c系統である。更に別の実施形態では、このマウスは、BALB系統と別の上記系統との混合物である。
【0066】
一実施形態では、この非ヒト動物はラットである。一実施形態では、ラットは、ウィスターラツト、LEA系統、Sprague Dawley系統、Fischer系統、F344、F6、及びDark Agoutiから選択される。一実施形態では、ラット系統は、ウィスター、LEA、Sprague Dawley、Fischer、F344、F6、及びDark Agoutiからなる群から選択される、2つ又はそれ以上の系統の混合体である。
【0067】
したがって、一実施形態では、この遺伝子改変非ヒト動物はげっ歯類である。一実施形態では、この遺伝子改変非ヒト動物は、ラット又はマウスである。一実施形態では、動物は、マウスである。したがって、一実施形態では、この遺伝子改変動物は、マウスであり、このマウスは、内在性マウスCD3遺伝子座において、ヒトCD3タンパク質の細胞外ドメインをコードするヌクレオチド配列を含む。一実施形態では、マウスは、ヒトCD3εの細胞外ドメインをコードする核酸配列、ヒトCD3δの細胞外ドメインをコードする核酸配列、及びヒトCD3γの細胞外ドメインをコードする核酸配列を含む。本発明のいくつかの実施形態では、ヒトCD3εの細胞外ドメインは、配列番号33で示される配列を含み、ヒトCD3δの細胞外ドメインは、配列番号34で示される配列を含み、ヒトCD3γの細胞外ドメインは、配列番号35で示される配列を含む。いくつかの実施形態では、マウスは、内在性マウスCD3シグナル配列をコードする配列を含む。他の実施形態では、マウスは、ヒトCD3シグナル配列をコードする配列を含む。
【0068】
本発明のいくつかの実施形態では、本発明のマウスは、ヒト化CD3タンパク質を発現する。一実施形態では、マウスは、ヒト化CD3ε、ヒト化CD3δ、及びヒト化CD3γタンパク質を発現する。本発明のいくつかの実施形態では、マウスは、ヒトCD3ε細胞外ドメイン並びに内在性マウスCD3ε膜貫通ドメイン及び細胞質ドメイン、ヒトCD3δ細胞外ドメイン並びに内在性マウスCD3δ膜貫通ドメイン及び細胞質ドメイン、並びにヒトCD3γ細胞外ドメイン並びに内在性マウスCD3γ膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインを発現する。いくつかのそのような実施形態において、マウスは、ヒト化CD3タンパク質を発現し、このヒト化CD3タンパク質は、配列番号24で示されるヒト化CD3ε、配列番号25で示されるヒト化CD3δ、及び配列番号26で示されるヒト化CD3γである。
【0069】
本発明のいくつかの態様では、遺伝子組み換えされたマウスは、免疫応答性マウスである。本発明のいくつかの実施形態では、ヒト化CD3タンパク質の導入は、マウスの免疫系機能に影響を与えない。本発明のいくつかの実施形態では、マウスは、通常のT及びB細胞比を含む。本発明のいくつかの実施形態では、マウスは、マウス感染に対する正常な応答を開始することができる。いくつかの態様では、マウスは、例えば、ヒト化CD3タンパク質を発現するように遺伝子改変されていないマウスなどの野生型マウスと比較して、類似の、胸腺におけるCD4+とCD8+細胞の比率を示す。本発明のいくつかの実施形態では、マウスの胸腺におけるCD4+とCD8+細胞の比率は、ヒト化CD3タンパク質を発現するように遺伝子改変されていないマウスのCD4+とCD8+細胞の比率の30%以内、例えば20%以内、例えば15%以内、例えば12%以内、例えば10%以内、例えば5%以内、例えば2%以内である。いくつかの態様では、マウスは、例えば、ヒト化CD3タンパク質を発現するように遺伝子改変されていないマウスなどの野生型マウスと類似の、脾臓、リンパ節、及び末梢血におけるT及びB細胞のパーセンテージを示す。いくつかの態様では、マウスは、例えば、ヒト化CD3タンパク質を発現するように遺伝子改変されていないマウスなどの野生型マウスと類似の数の循環白血球、単球、好中球、好酸球、及び好塩基球を示す。
【0070】
また、本明細書で提供されるのは、本明細書に記述された遺伝子改変非ヒト動物を作製する方法である。いくつかの実施形態では、ヒト化CD3タンパク質を発現する遺伝子改変非ヒト動物を作製する方法は、内在性非ヒト動物CD3遺伝子座において、ヒトCD3タンパク質の細胞外ドメインをコードする核酸配列を含み、ヒトCD3タンパク質は、CD3ε、CD3δ、CD3γ、CD3ζ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。複数のヒトCD3タンパク質が導入される場合、それらを単一の核酸に共に(本実施例におけるように)又は別個に導入することができる。後者の場合、単一細胞株(例えば、ES細胞株)は、所望されるヒトCD3のそれぞれをコードする核酸を含むように改変されるまで連続した改変を受けることができる。一実施形態では、動物は、対応する非ヒトCD3タンパク質の機能性細胞外ドメインを含まない。一態様では、動物は、内在性非ヒトCD3遺伝子座において、ヒトCD3εの細胞外ドメイン、ヒトCD3δの細胞外ドメイン、及びヒトCD3γの細胞外ドメインをコードする核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ヒトCD3εの細胞外ドメインは、配列番号33で示され、ヒトCD3δの細胞外ドメインは、配列番号34で示され、ヒトCD3γの細胞外ドメインは、配列番号35で示される。一実施形態では、動物は、対応する非ヒトCD3タンパク質の機能性細胞外ドメインを含まない。
【0071】
いくつかの実施形態では、本発明の遺伝子改変非ヒト動物を作製する方法は、内在性CD3遺伝子座において、非ヒトCD3タンパク質の細胞外ドメインをコードするヌクレオチド配列を、対応するヒトCD3タンパク質の細胞外ドメインをコードするヌクレオチド配列と置換することを含む。一実施形態では、動物は、非ヒトCD3タンパク質の膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインを維持する。いくつかの実施形態では、置換は、ヒトCD3タンパク質の細胞外ドメイン並びに対応する内在性非ヒトCD3タンパク質の膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインを含むキメラタンパク質をもたらす。
【0072】
ヒトCD3タンパク質をコードする核酸は、通常、細胞に導入され、非ヒト動物はその細胞から繁殖される。いくつかの実施形態では、置換方法は、実施例に記述されるように、VELOCIGENE(登録商標)技術を使用して作製された標的化構築物を利用し、この構築物をES細胞に導入し、標的化されたES細胞クローンをVELOCIMOUSE(登録商標)技術を使用してマウス胚に導入する。
【0073】
方法が、内在性非ヒトCD3εの細胞外ドメインをコードするヌクレオチド配列の、ヒトCD3εタンパク質の細胞外ドメインをコードするヌクレオチド配列との置換を含む一実施形態では、この方法は、マウスCD3ε遺伝子の内在性のマウスコーディングエクソン2~4の部分配列の、ヒトCD3ε遺伝子のヒトコーディングエクソン2~5の部分配列との置換を含む。方法が、内在性非ヒトCD3δの細胞外ドメインをコードするヌクレオチド配列の、ヒトCD3δの細胞外ドメインをコードするヌクレオチド配列との置換を含む一実施形態では、この方法は、マウスCD3δの内在性のマウスコーディングエクソン2~3の部分配列の、ヒトCD3δ遺伝子のヒトコーディングエクソン2~3の部分配列との置換を含む。方法が、内在性非ヒトCD3γの細胞外ドメインをコードするヌクレオチド配列の、ヒトCD3γの細胞外ドメインをコードするヌクレオチド配列との置換を含む一実施形態では、この方法は、マウスCD3γのマウスコーディングエクソン2~4の部分配列の、ヒトCD3γ遺伝子のヒトコーディングエクソン2~4の部分配列との置換を含む。本発明の一実施形態では、置換は、CD3ε、CD3δ、及びCD3γの配列の置換を含む。そのような実施形態では、置換は、3つの遺伝子座全てにおける連続的な遺伝子改変を包含する大型標的化ベクターを作り出すこと、及び次に大型標的化ベクターをマウスES細胞に導入して、例えば、実施例1に記述されるようにマウスを作製することにより実現され得る。
【0074】
したがって、一実施形態では、本明細書で提供されるのは、本発明の遺伝子改変動物を作製するための大型標的化ベクターである。一実施形態では、大型標的化ベクターは、5’及び3’マウスホモロジーアームと、マウスCD3εのコーディングエクソン2~4の部分配列の、ヒトCD3εのコーディングエクソン2~5の部分配列との置換を含むCD3ε遺伝子を含むDNA断片と、マウスCD3δのコーディングエクソン2~3の部分配列の、ヒトCD3δのコーディングエクソン2~3の部分配列との置換を含むCD3δ遺伝子を含むDNA断片と、マウスCD3γのコーディングエクソン2~4の部分配列の、ヒトCD3γのコーディングエクソン2~4の部分配列との置換を含むCD3γ遺伝子を含むDNA断片と、選択カセットと、を含む。
【0075】
選択カセットは、所望の構築物を統合した細胞(例えば、細菌細胞、ES細胞)の選択を容易にするために標的化構築物に挿入されたヌクレオチド配列である。多数の好適な選択カセットが当該技術分野において周知である(Neo、Hyg、Pur、CM、SPECなど)。加えて、選択カセットは、組み換え部位に隣接してもよく、これは、リコンビナーゼ酵素による処理の際に選択カセットの欠失を可能にする。一般的に用いられる組み換え部位は、それぞれCre及びFlp酵素によって認識されるloxP及びFrtであるが、その他は当該技術分野において周知である。選択カセットは、コード領域の外側の構築物内のどこに位置してもよい。一実施形態では、選択カセットは、ヒトCD3εの挿入配列の上流に挿入される。
【0076】
遺伝子ターゲティングの完了時、ES細胞又は遺伝子改変非ヒト動物をスクリーニングして、所望の外因性ヌクレオチド配列の成功した取り込み又は外因性ポリペプチドの発現を確認する。多数の技術が当業者に知られており、(これらに限定されるものではないが)サザンブロッティング、long PCR、定量PCR(例えば、TAQMAN(登録商標)を使用するリアルタイムPCR)、蛍光インサイチューハイブリダイゼーション、ノーザンブロッティング、フローサイトメトリー、ウエスタン分析、免疫細胞化学、免疫組織化学などが挙げられる。一例では、所望の遺伝子改変を有する非ヒト動物(例えば、マウス)は、Valenzuela et al.(2003)High-throughput engineering of the mouse genome coupled with high-resolution expression analysis,Nature Biotech.21(6):652~659に記載された対立遺伝子アッセイの改変を用いて、マウス対立遺伝子の喪失及び/又はヒト対立遺伝子の獲得のスクリーニングによって同定され得る。遺伝子改変動物における特定のヌクレオチド又はアミノ酸配列を同定するその他のアッセイは、当業者に周知である。
【0077】
上記方法から生じるヘテロ接合体を繁殖してホモ接合体を発生させることができる。
【0078】
一態様では、単一細胞中で本明細書に記述されるようにヌクレオチド構築物からキメラCD3タンパク質を発現させることを含む、キメラヒト/非ヒトCD3分子を作製するための方法が提供される。一実施形態では、ヌクレオチド構築物は、ウイルスベクターであり、特定の実施形態では、このウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである。一実施形態では、細胞は、CHO、COS、293、HeLa、及びウイルス核酸配列(例えば、PERC.6(商標)細胞)を発現する網膜細胞から選択される。
【0079】
一態様では、キメラヒト/非ヒトCD3タンパク質を発現する細胞が提供される。一実施形態では、細胞は、本明細書に記述されるようにキメラCD3配列を含む発現ベクターを含む。一実施形態では、細胞は、CHO、COS、293、HeLa、及びウイルス核酸配列(例えば、PERC.6(商標)細胞)を発現する網膜細胞から選択される。
【0080】
本明細書に記述されるように非ヒト動物によって作製されるキメラCD3分子もまた提供され、一実施形態では、このキメラCD3分子は、ヒトCD3タンパク質の細胞外ドメインの全て又は実質的に全てのアミノ酸配列、並びに、例えば、マウスCD3タンパク質など非ヒトCD3タンパク質から少なくとも膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインを含む。
【0081】
遺伝子組み換えされた非ヒト動物に加えて、非ヒト胚(例えば、げっ歯類、例えば、マウス又はラット胚)もまた提供され、この胚は、本明細書に記述されるように非ヒト動物(例えば、げっ歯類、例えば、マウス又はラット)に由来するドナーES細胞を含む。一態様では、胚は、キメラCD3遺伝子及び宿主胚細胞を含むESドナー細胞を含む。
【0082】
また提供されるのは、組織であり、この組織は、本明細書に記述されるように非ヒト動物(例えば、げっ歯類、例えば、マウス又はラット)に由来し、キメラCD3タンパク質を発現する。
【0083】
加えて、本明細書に記述されるように、非ヒト動物から単離された非ヒト細胞が提供される。一実施形態では、細胞はES細胞である。一実施形態では、細胞はT細胞である。一実施形態では、細胞は、CD8+T細胞である。別の実施形態では、細胞は、CD4+T細胞である。
【0084】
いくつかの実施形態では、また本明細書で提供されるのは、本明細書に記述されたヒト化CD3タンパク質をコードする核酸配列を含む遺伝子座である。
【0085】
ヒトの治療を試験するためのマウスモデル
いくつかの態様では、本明細書で提供されるのは、CD3を標的とした(「抗CD3」)治療薬を試験するためのマウスモデルである。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、抗CD3抗原結合タンパク質を試験するためのマウスモデルである。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、抗CD3抗体を試験するためのマウスモデルである。いくつかのそのような実施形態において、提供されるのは、抗CD3多重特異性、例えば二重特異性の抗原結合タンパク質又は抗CD3二重特異性抗体を試験するためのマウスモデルである。このように、抗CD3多重特異性抗原結合タンパク質、例えば、抗CD3二重特異性抗原結合タンパク質などは、前記ヒト化CD3タンパク質及び少なくとも1つの他の所望の抗原を標的にするか、又はそれに特異的に結合する。様々な態様では、抗原結合タンパク質がCD3と所望の抗原の両方に結合することができる抗CD3二重特異性抗原結合タンパク質を試験するためのマウスモデルは、CD3ε、CD3δ、CD3γ、CD3ζ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるヒト化CD3タンパク質をコードする核酸配列と、所望の抗原を発現又は含む細胞と、を含む。一実施形態では、マウスは、前記ヒト化CD3タンパク質を発現するT細胞を含む。
【0086】
実施形態において、単一特異性又は二重特異性抗原結合タンパク質の試験は、前記ヒト化CD3タンパク質を発現するT細胞上の抗原結合タンパク質の効果の判定を可能にするアッセイ又は研究を実行することを伴う。別の実施形態では、二重特異性抗原結合タンパク質の試験は、前記ヒト化CD3タンパク質を発現するT細胞、及び所望の抗原を発現するか若しくは含む細胞の両方の上での抗原結合タンパク質の効果、又は前記CD3を発現するT細胞と所望の抗原を発現するか若しくは含む細胞との間の相互作用の判定を可能にするアッセイ又は研究を実行することを伴う。一実施形態では、単一特異性又は二重特異性抗原結合タンパク質の試験は、前記所望の抗原を発現するか又は含む細胞上で前記ヒト化CD3タンパク質を発現するT細胞の効果の判定を可能にするアッセイ又は研究を実行することを伴う。一実施形態では、そのようなアッセイは、例えば、所望の抗原を発現する細胞の数、免疫応答、細胞間相互作用、細胞傷害性、サイトカイン放出、細胞の活性化、細胞増殖、腫瘍成長又は退行、病理学における変化などを測定する。様々なアッセイには、補体誘導性細胞傷害(CDC)、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞貪食(ADCP)、PMBC増殖、CD69活性化、組織学的組織分析、組織及び細胞バイオマーカーの分析(例えば、細胞又は組織は、マウスからアッセイの目的のために抽出されてもよいか又はX線撮影、MRI、PET、SPECT、BLI、及び蛍光系画像診断法によって分析されてもよい)の測定が挙げられるがそれらに限定されない。
【0087】
本発明のいくつかの実施形態では、そのようなマウスモデルにおいて、所望の抗原が、前記マウスに導入された。所望の抗原は、当業者に既知のいくつかの方法により導入され得る。いくつかの非限定的な方法として、遺伝子導入、注入、感染、組織又は細胞の移植が挙げられる。所望の抗原又はその断片(例えば、試験されている抗原結合タンパク質によって認識される断片)は、特定の細胞タイプに対して標的化され得るか又は特定の細胞タイプによって発現され得る。いくつかの実施形態では、所望の抗原は、マウスゲノムによってコードされる所望のヒト化抗原である。
【0088】
所望の抗原は、それが細胞表面上のみで発現されるような膜結合型タンパク質であってもよい。あるいは、所望の抗原又はその断片(例えば、試験されている抗原結合タンパク質によって認識される断片)は、別のタンパク質又は部分と複合体化された細胞表面に示され得る。いくつかの細胞表面抗原は、共受容体の複合体として他のタンパク質と結合するか、又は細胞外分子と結合するか若しくは細胞外分子との親和性を有してもよい。したがって、マウスモデルを利用して、様々な細胞系においてT細胞と相互作用する二重特異性抗原結合分子を試験することができる。
【0089】
一実施形態では、マウスモデルは、ヒトCD3ε、CD3δ、CD3γの細胞外ドメインを発現する。一実施形態では、マウスは、マウスのCD3ε、CD3δ、及びCD3γの膜貫通及び細胞質ドメインを発現し、一実施形態では、膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインは、内在性のマウスドメインである。一実施形態では、マウスモデルは、CD3ε、CD3δ、及びCD3γを発現し、それぞれは、ヒト細胞外ドメイン及びマウス(例えば内在性のマウス)膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインを含む。
【0090】
本発明の様々な実施形態において、抗原結合タンパク質は、CD3及びマウスモデル中の所望の抗原の両方に結合する。一実施形態では、所望の抗原は、ヒト抗原である。一実施形態では、所望の抗原は、例えばカニクイザル抗原などの霊長類抗原である。一実施形態では、抗原結合タンパク質は、ヒト及びサル由来の両方の同じ所望の抗原に結合することができる。一実施形態では、抗原結合タンパク質は、ヒト及びサルCD3の両方に結合することができる。
【0091】
一実施形態では、マウスモデルは、所望の抗原を発現する腫瘍の異種移植片を含む。一実施形態では、前記マウスにおいて所望の抗原を発現するか又は含む細胞は、腫瘍細胞などの不死化細胞である。したがって、マウスモデルを利用して、所望の抗原を発現する腫瘍細胞を阻害又はこれに作用する際の抗CD3二重特異性抗原結合タンパク質の活性を試験する。
【0092】
したがって、所望の抗原を発現するか又は含む細胞が腫瘍細胞である本発明の実施形態において、所望の抗原は、腫瘍関連抗原(TAA)であり得る。様々な腫瘍抗原が、T cell defined tumor antigens(van der Bruggen P,Stroobant V,Vigneron N,Van den Eynde B.Peptide database:T cell-defined tumor antigens.Cancer Immun 2013)のデータベースに列挙されている。例示の腫瘍関連抗原としては、ALK、BAGEタンパク質、BIRC5(サバイビン)、BIRC7、CA9、CALR、CCR5、CD19、CD20(MS4A1)、CD22、CD27、CD30、CD33、CD38、CD40、CD44、CD52、CD56、CD79、CDK4、CEACAM3、CEACAM5、CLEC12A、EGFR、EGFR変異体III、ERBB2(HER2)、ERBB3、ERBB4、EPCAM、EPHA2、EPHA3、FCRL5、FLT3、FOLR1、GAGEタンパク質、GD2、GD3、GPNMB、GM3、GPR112、IL3RA、KIT、KRAS、LGR5、EBV由来のLMP2、L1CAM、MAGEタンパク質、MLANA、MSLN、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、MUC5、MUC16、MUM1、ANKRD30A、NY-ESO1(CTAG1B)、OX40、PAP、PAX3、PAX5、PLAC1、PRLR、PMEL、PRAME、PSMA(FOLH1)、RAGEタンパク質、RET、RGS5、ROR1、SART1、SART3、SLAMF7、SLC39A6(LIV1)、STEAP1、STEAP2、TERT、TMPRSS2、Thompson-nouvelle抗原、TNFRSF17、TYR、UPK3A、VTCN1、WT1が挙げられるがこれらに限定されない。一例では、本明細書の実施例3に記載されるように、所望の抗原は、例えば、ヒト又はヒト化CD20などのCD20であり得る。
【0093】
本発明の別の実施形態では、マウスモデルを使用して、候補の二重特異性抗原結合タンパク質が、感染症関連抗原である所望の抗原を阻害するか又はこれに作用することができるかどうかを判断する。本発明の一実施形態では、マウスは、感染因子に感染している。本発明の一実施形態では、感染症関連抗原は、ウイルス抗原である。一態様では、ウイルス抗原は、HIV、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、ヘルペスウイルス(例えば、HSV-1、HSV-2、CMV、HAV-6、VZV、エプスタインバールウイルス)、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、フラビウイルス、エコーウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルス、コロナウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ムンプスウイルス、ロタウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、パルボウイルス、ワクシニアウイルス、HTLV、デングウイルス、パピローマウイルス、水いぼウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、JCウイルス、エボラウイルス、及びアルボウイルス脳炎のウイルス抗原からなる群から選択される。
【0094】
所望の抗原が感染症関連抗原である本発明の別の実施形態では、所望の抗原は、細菌性抗原である。本発明のいくつかの態様では、細菌性抗原は、クラミジア、リケッチア、マイコバクテリア、ブドウ球菌、連鎖球菌、肺炎球菌、髄膜炎菌、淋菌、クレブシエラ、プロテウス、セラチア、シュードモナス、レジオネラ菌、ジフテリア、サルモネラ、桿菌、コレラ、破傷風、ボツリズム、炭疽、ペスト、レプトスピラ、及びライム病の細菌性抗原からなる群から選択される。
【0095】
本発明のいくつかの態様では、CD3系二重特異性抗原結合タンパク質は、ヒトCD3系抗原結合タンパク質である。一実施形態では、抗原結合タンパク質は、例えばヒト抗体などの抗体又はその抗原結合断片である。
【0096】
本発明のいくつかの実施形態では、マウスモデルは、免疫応答性マウスモデルである。本発明のいくつかの実施形態では、マウスモデルは、所望の抗原結合タンパク質の有効性及び/又は毒性の試験を可能にする。有効性の測定は、二重特異性物質によって標的化される所望の抗原によって異なるだろう。いくつかの実施形態では、有効性の測定は、抗原を発現する細胞のT細胞死滅である。他の実施形態では、有効性の測定は、ウイルスの中和である。他の実施形態では、有効性の測定は、動物の生存性であってもよい。更に別の実施形態では、有効性の測定は、所望の抗原を発現する細胞の除去、T細胞の増殖、サイトカイン(例えば、IFNg、TNFa、IL-1、IL-2、IL-10、IL4、IL-6、グランザイム、パーフォリンなど)の産生であってもよい。
【0097】
本発明のいくつかの実施形態では、動物における毒性は、例えば、体重の変化、食欲、消化性の変化、血球算定の変化、脾腫、器官の組織構造の変化、肝臓酵素機能の変化、尿分析における変化、器官の毒性、出血、脱水、毛の喪失及びみすぼらしさ、又は病的状態の他の兆候など、動物における有害事象として測定され得る。1つの測定は、無関係な抗原との抗原結合タンパク質の交差反応性の判定であってもよい。これは、一実施形態では、器官の組織学的検査、具体的には所望の抗原を発現すると知られていない組織又は細胞のタイプでの抗原結合タンパク質の検出によって、検出することができる。
【0098】
遺伝子改変非ヒト動物の使用
本発明はまた、本明細書に記述された遺伝子改変非ヒト動物を使用する様々な方法も提供する。
【0099】
一実施形態では、本明細書で提供されるのは、(a)内在性マウスCD3遺伝子座において、CD3ε、CD3δ、CD3γ、CD3ζ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるヒトCD3タンパク質の細胞外ドメインをコードする核酸配列を含む遺伝子改変マウスを提供すること又は受容することと、(b)所望の抗原を前記遺伝子改変マウスに導入することと、(c)前記マウスを所望の薬物候補と接触させることであって、その薬物候補がヒトCD3及び所望の抗原に対するものであることと、(d)その薬物候補が、所望の抗原の存在又は発現を特徴とする細胞を予防、低減又は排除することに効果があるかどうかを判定することと、を含む、所望の抗原を標的とする治療用薬物候補のスクリーニング方法である。様々な実施形態において、マウスは、そのT細胞の表面上に機能性ヒト化CD3タンパク質を発現する。方法の一実施形態では、遺伝子改変マウスは、内在性マウスCD3遺伝子座において、ヒトCD3εの細胞外ドメイン、ヒトCD3δの細胞外ドメイン、及びヒトCD3γの細胞外ドメインをコードする核酸配列を含む。本明細書に記述された方法の一実施形態では、マウスは、対応するマウスタンパク質の機能性細胞外ドメインをコードする核酸配列を含まない。方法のいくつかの実施形態では、ヒトCD3タンパク質の細胞外ドメインは、対応する内在性マウスCD3タンパク質の膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインに作動可能に連結されている。方法の多様なかかる実施形態では、ヒトCD3εの細胞外ドメインは、配列番号33で示され、ヒトCD3δの細胞外ドメインは、配列番号34で示され、ヒトCD3γの細胞外ドメインは、配列番号35で示される。ここに記載された方法の様々な実施形態では、マウスは、配列番号24で示されるヒト化CD3εタンパク質、配列番号25で示されるヒト化CD3δタンパク質、及び配列番号26で示されるヒト化CD3γを発現し得る。
【0100】
本明細書に記述された方法の様々な実施形態では、所望の抗原の本明細書に記述された遺伝子改変マウスへの導入は、当業者に既知の任意の方法により実現することができ、それには、遺伝子導入、注入、感染、組織又は細胞の移植を制限なく挙げることができる。このように、導入は、マウスで所望の抗原を発現することによって実現することができ、所望の抗原を発現するように前記マウスを遺伝子改変することを含み得る。あるいは、導入は、例えば、組織又は細胞の移植の場合など、前記マウスへの所望の抗原を発現する細胞の導入を含み得る。導入はまた、例えば、細菌又はウイルス感染の場合など、前記マウスに所望の抗原を感染させることも含み得る。一実施形態では、所望の抗原は、所望のヒト抗原であり得る。別の実施形態では、それは、所望の細菌又はウイルス抗原であり得る。
【0101】
所望の抗原は、上に詳細に記述されるように腫瘍関連抗原であり得る。抗原はまた、上に詳細に記述されるように、例えば、細菌又はウイルス抗原など感染症関連抗原であり得る。
【0102】
治療用薬物候補のスクリーニング方法の様々な実施形態では、薬物候補は、例えば、抗体、例えば、二重特異性抗体など、抗原結合タンパク質であり得る。様々な態様において、そのような薬物候補は、ヒトCD3及び所望の抗原の両方に結合することができる。所望の抗原は、ヒト抗原であり得る。所望の抗原はまた、例えば、サルなど霊長類の抗原であり得る。したがって、スクリーニングに使用される薬物候補は、ヒトCD3に結合することに加えて、ヒト抗原及び対応する霊長類抗原の両方に結合することが可能であり得る。薬物候補はまた、霊長類(例えば、サル)CD3に結合することも可能であり得る。したがって、薬物候補は、ヒト及び霊長類(例えば、サル)CD3の両方に結合することが可能であり得、また、一実施形態では、所望のヒト抗原に結合することが可能であり得る。別の実施形態では、所望の抗原は、細菌又はウイルス抗原であり得、薬物候補は、ヒト及び霊長類(例えば、サル)CD3並びに所望の細菌又はウイルス抗原の両方に結合することが可能であり得る。
【0103】
いくつかの態様では、治療候補は、抗体であり、それはヒト抗体である。他の態様では、それはヒト化抗体であってもよい。例えば、治療候補は、VELOCIMMUNE(登録商標)マウス(参照により本明細書に援用される米国特許第8,502,018号)で生成された抗体であってもよく、したがって、初期の抗体候補は、ヒト可変領域及びマウス定常領域を含んでもよい。抗体候補のマウス定常領域は、ヒト定常領域と作動可能に連結したVELOCIMMUNE(登録商標)マウスで選択されたヒト可変領域を発現することによってヒト由来であるように再設計され得る。
【0104】
本明細書に記述された方法の様々な実施形態では、治療候補は、病気を低減、排除、又は予防することができる。一実施形態では、病気は腫瘍であり、治療候補は、所望の抗原を標的としない作用物質と比較して腫瘍の増殖を低減、排除、又は予防することができる。方法のそのような実施形態では、薬物候補が所望の抗原の存在又は発現を特徴とする細胞を予防、低減又は排除することに効果があるかどうかの判定は、腫瘍体積アッセイ、腫瘍細胞キリングアッセイ、腫瘍におけるアポトーシスマーカーの導入、腫瘍内での血管の増大の低減、腫瘍への免疫細胞の浸潤などを使用して実行することができる。別の実施形態では、病気は感染症であり、治療候補は、所望の抗原を標的としない作用物質と比較して細菌又はウイルス感染を低減、排除、又は予防することができる。方法のそのような実施形態では、薬物候補が所望の抗原の存在又は発現を特徴とする細胞を予防、低減又は排除することに効果があるかどうかの判定は、細菌又はウイルスの力価の測定、感染した細胞におけるアポトーシスマーカーの導入などを使用して実行することができる。
【0105】
本発明のヒト化CD3マウスの使用の他の方法もまた提供される。例えば、本明細書に記述された非ヒト動物、例えば、ヒト化CD3マウスを使用して、薬物作用の機序を研究することができる。本動物の開発の前には、そのような研究は通常ヒト及び霊長類で行われず、多くの場合、免疫応答性動物モデルを必要とするので、薬物作用の機序を研究することは困難であった。薬物作用の機序の理解は、より良好な抗体の開発につながり得る。本発明の様々な実施形態では、ヒト化CD3マウスは、免疫応答性マウスである。例えば、本発明のヒト化CD3マウスは、無傷の発達及び全ての免疫細胞のタイプの完全相補及び無傷の免疫シグナル伝達経路を有する健康で正常な免疫系を含み、特定の細胞タイプ、サイトカイン、ケモカインなどで様々な治療候補の効果を研究するのに使用することができる。それからマウスを使用して、薬物候補機能に関する機構的な問題に回答することができる。
【0106】
加えて、このヒト化CD3マウスを、腫瘍移植片上での二重特異性抗CD3の薬物候補の効果の試験を含む方法で使用することができる。以前に開発されたマウスモデルは、正常なヒト腫瘍の生着を可能にするために免疫無防備状態のマウスモデルであった。ヒト化CD3マウスは、完全に免疫応答性であり、所望の抗原を発現する腫瘍細胞の導入及び成長を可能にするので、機構的な問題、早期の毒性の問題、早期の有効性の問題などに回答することが挙げられるがこれらに限定されない免疫応答での十分な効果(affect)を研究することができる。
【0107】
更に他の実施形態では、ヒト化CD3マウスを使用して動物モデルにおける併用薬物療法、特に、例えば、1つの薬物がCD3に結合する抗原結合タンパク質であり、別の薬物が以前に特定の適応症のために許可された物質である併用薬物療法の効果を研究することができる。薬物の投与に関連する特定の問題及びその効果を、何らかのヒトの実験の前に動物モデルで処理することができる。
【実施例0108】
次の実施例は、本発明の方法及び組成物を、どのように作りどのように使用するかを当業者に説明するために提供され、本発明者らが彼らの発明と見なすものの範囲を限定しようとするものではない。使用された数字(例えば、量、温度など)に対する精度を確保する努力がなされたが、ある程度の実験誤差及び偏差が考慮されるべきである。実施例は、当業者には周知であろう従来の方法の詳細な説明を含まない(分子クローニング技術など)。別途記載のない限り、部は重量部であり、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏で示され、圧力は大気又はほぼ大気である。
【0109】
実施例1.ヒト化CD3遺伝子座のコンストラクション
実施例1.1.ヒト化CD3γδεのコンストラクション
VELOCIGENE(登録商標)技術を使用して、ヒト及びマウスの細菌人工染色体(BAC)DNAからの固有の標的化ベクターのコンストラクションによりマウスCD3遺伝子座をヒト化した。(例えば、両者とも参照により本明細書に援用される、米国特許第6,586,251号及びValenzuela et al.(2003)High-throughput engineering of the mouse genome couple with high-resolution expression analysis.Nat.Biotech.21(6):652~659を参照されたい)。マウスBAC bMQ-425K11からのDNAを相同組み換えによって改変して、マウスCD3ε、CD3δ、及びCD3γ遺伝子(染色体9上で互いにごく近接して位置するマウスCD3遺伝子)の部分をコードするゲノムDNAを、ヒトBAC RP11-414G21(ヒトCD3遺伝子は、染色体11上で互いにごく近接して位置している)に由来するCD3ε、CD3δ、及びCD3γ遺伝子の対応する部分とそれぞれ置換した。
【0110】
具体的には、ヒト化CD3γδεマウスを生成するために、マウスホモロジーアームを使用するSpecカセットを含む標的化ベクターを使用する単一の標的化事象においてマウスCd3d配列の714bp(Cd3d遺伝子のマウスコーディングエクソン2~3の部分配列に対応)をヒトCD3D配列の939bp(CD3D遺伝子のヒトコーディングエクソン2~3の部分配列に対応)と置換することにより、マウスBACをまず改変した。
【0111】
CD3d遺伝子のマウスコーディングエクソン2~3の部分配列の、対応するヒト配列との置換を含むマウスBACを、また別のSpecカセット含有ベクター及びマウスホモロジーアームを使用する単一の標的化事象において、続けてマウスCd3g配列の1,738bp(Cd3g遺伝子のマウスコーディングエクソン2~4の部分配列に対応)の、ヒトCD3G配列の1,639bp(CD3G遺伝子のヒトコーディングエクソン2~4の部分配列に対応)との置換によって改変した。
【0112】
最後に、マウスCD3d及びCD3g遺伝子の、対応するヒト遺伝子との置換を含むBACを、6,213bpマウスCD3e配列の、ヒト配列の6,817bpとの置換によって(マウスCD3e遺伝子のマウスコーディングエクソン2~4の部分配列の、ヒトCD3E遺伝子のヒトコーディングエクソン2~5の部分配列との置換に対応)、更に改変した。4,996bpのloxPが導入されたネオマイシンカセットを、ヒトCD3E配列のノックインの上流に挿入した。
【0113】
結果として得られるES細胞に挿入するためのヒト化された大型標的化ベクターは、図2Aに示されており、A、B、C、D、E、F、及びGは、様々なマウス/ヒト又はマウス/NEOカセット又はヒト/NEOカセットの接合部を示している。接合部における配列を、下の表1に示す。
【0114】
【表1-1】
【0115】
【表1-2】
【0116】
そのT細胞の表面にヒト化CD3ε、CD3δ、及びCD3γを発現するマウスを生成するための改変されたES細胞を作製するために、標的化BAC DNAを使用して、マウスCD3遺伝子座内に欠失を含むマウスES細胞を電気穿孔した。ヒトCD3ε、CD3δ、及びCD3γ配列の挿入を含むES細胞を、定量TAQMAN(商標)アッセイによって同定した(例えば、参照により本明細書に援用されるLie and Petropoulos,1998.Curr.Opin.Biotechnology 9:43~48を参照)。特定のプライマーセット及びプローブを、ヒト配列の挿入(gain-of-allele、GOA)及びマウス配列の欠失(loss-of-allele、LOA)の検出のために設計した。表2は、定量PCRアッセイで使用されるプライマー/プローブセットのそれぞれの名前及び位置を識別する。
【0117】
【表2】
【0118】
上記の標的化ES細胞をドナーES細胞として使用し、VELOCIMOUSE(登録商標)法によって8細胞段階マウス胚に導入した(例えば、米国特許第7,294,754号及びPoueymirou et al.(2007)F0 generation
mice that are essentially fully derived
from the donor gene-targeted ES cells allowing immediate phenotypic analyses Nature Biotech.25(1):91~99を参照)。ヒト化CD3遺伝子を独立して有するVELOCIMICE(登録商標)(ドナーES細胞に完全に由来するF0マウス)は、特異的なヒトCD3遺伝子配列の存在を検出する対立遺伝子アッセイ(上記参照)の改変を使用した遺伝子型判定によって同定した。
【0119】
選択カセットは、当業者によって既知の方法で除去され得る。例えば、ヒト化CD3遺伝子座を有するES細胞は、loxPが導入されたカセットを除去するためにCreを発現する構築物でトランスフェクトされ得る。選択カセットは、Creリコンビナーゼを発現するマウスとの交配によって任意追加的に除去することができる。所望により、選択カセットをマウス内に保持する。選択カセット除去後のヒト化CD3ε対立遺伝子のマウス/ヒト接合部(図2BにA-Bとして示される)は、下の表3に示される。残りの接合部配列は、標的化ベクターの場合と同じであり、上の表1に示されている。
【0120】
【表3】
【0121】
結果として得られるヒト化CD3ε、CD3δ、及びCD3γタンパク質の配列は、図3に示され、配列表に含まれている。加えて、マウス-ヒト配列のアライメント及び挿入されたヒト配列の5’及び3’の接合部は、それぞれ及び**として図4に示されている。CD3ε、CD3δ、及びCD3γタンパク質のGenBankタンパク質アクセッション番号は、下の表4にまとめられている。
【0122】
【表4】
【0123】
実施例2.ヒト化CD3マウスの特性化
実施例2.1.ヒト化CD3マウスにおける免疫細胞の発生
蛍光活性化細胞分類(FACS)分析及び細胞分画を使用して、ヒトCD3εδγマウスの胸腺及び末梢での免疫細胞の発生を評価した。野生型(WT、非ヒトCD3γδε)、ヘテロ接合(Het、1つのhCD3γδε対立遺伝子)、及びホモ接合(Ho、2つのhCD3γδε対立遺伝子)マウスの同時発生集団から胸腺、脾臓、及びリンパ節を回収した。末梢血を、EDTAコーティングしたMicrotainer管(BD)内に心臓穿刺又は眼窩後方出血によって得た。機械的破壊を使用して脾臓、LN、及び胸腺から単一細胞懸濁液を調製し、AKC Lysis bufferを用いた溶解によって脾臓、胸腺、及び全血から赤血球を除去した。Fc受容体による非特異的結合をブロックするために、CD16/CD32(FcBlock)に対する精製された抗体を用いて、細胞を室温で10分間インキュベートし、それから、T及びB細胞マーカーに直接結合された抗体のカクテルを用いて、4℃で30分間インキュベートした。細胞を、1% BSAを含有する冷却PBSで2回洗浄し、緩衝液に再懸濁させ、FACSCanto II(商標)フローサイトメーター(BD Biosciences)上のフローサイトメトリーで分析した。胸腺細胞を、まず、前方及び側方散乱ゲーティングによって、次にB220-集団でのゲーティングによって同定した。末梢では、T細胞をCD45+/TCRb+/B220-として同定し、B細胞をCD45+/TCRb-/B220+として同定した。絶対計数を、Hemavet 950FS Hematology Analyzerで得た。
【0124】
図5A及び5Bに例証するように、ヒト化CD3γδεマウスは、正常な胸腺細胞の発生及び胸腺、末梢血、及び脾臓において正常なT細胞及びB細胞の割合を有するように見えた。加えて、T及びB細胞のパーセンテージは、リンパ節で正常に見え、脾臓及びリンパ節の絶対細胞計数(データは図示せず)は正常範囲内であった。血液中のCD4及びCD8細胞数は、WT、Het、及びHoマウス間で同様であった。循環白血球、リンパ球、単球、好中球、好酸球、及び好塩基球は全て正常範囲内に見えた(データは図示せず)。したがって、正常な免疫細胞の発生が、ヒト化CD3εδγマウスにおいて観察される。
【0125】
ヒト化CD3εδγマウスが、ポリクローナルVβCD4+及びCD8+T細胞のレパートリーを呈したかどうかを判定するために、脾細胞を4種類のヒト化マウス、及び5種類の系統を一致させたコントロールマウスから分離し、TCR Vβの利用について検査した。脾臓を回収し、単一細胞の脾細胞を上述のように調製した。Fc受容体による非特異的結合をブロックするために、CD16/CD32(FcBlock;Biolegend)に対する精製された抗体を用いて、細胞を室温で10分間インキュベートし、それから、マウスCD4(Biolegend)及びマウスCD8(Biolegend)に直接結合された抗体のカクテルを用いて、再懸濁した。TCR Vβに直接結合された抗体を次に個々のウェルに添加し、4℃で30分間インキュベートした。細胞を冷却PBSで洗浄し、生存率判定用染料(LIVE/DEAD Fixable Aqua Dead cell stain,Life Technologies)を用いて室温で15分間インキュベートした。細胞を、2% FBSを含有する冷却PBSで洗浄し、次に緩衝液に再懸濁させ、LSR Fortessa(商標)フローサイトメーター(BD Biosciences)上のフローサイトメトリーで分析する前に、BD固定化緩衝液で固定した。CD4及びCD8T細胞を、まず、前方及び側方散乱ゲーティングによって、次に生存集団でのゲーティングによって同定した。CD4T細胞(CD4+CD8-)及びCD8T細胞(CD4-CD8+)を次にTCR Vβの利用について検査した。
【0126】
図5Cからわかるように、CD4及びCD8T細胞の両方によって使用されるVβレパートリー(この細胞は、ヒト化CD3εδγマウス中にある)は、系統を一致させたコントロールマウスと著しい違いのない利用による多クローン性を示す。
【0127】
実施例2.2.ヒト化CD3マウスでの感染に対するT細胞の応答
ヒト化CD3マウス(ヒト化CD3γδεマウス)が感染に対して正常な応答を呈したかどうかを判定するために、ヒト化マウスのリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)を取り除く能力を試験した。LCMVは、マウス指向性ウイルスであり、感染の成り行きはウイルスの株に依存する。Armstrong株による感染は、急性の感染をもたらし、マウスは、ウイルスに対するT細胞応答を迅速に開始し、約1週間で感染を取り除くことができる。他方では、クローン13ウイルスを取り除くことはできず、T細胞は「疲弊」になり、慢性感染を確立する。慢性及び急性感染は両方とも、T細胞活性に依存するので、LCMVは、T細胞の機能を試験するには理想のモデルである。
【0128】
生後6~8週のヒト化CD3又は系統を一致させたコントロールマウスを、2×10ffuのArmstrong(腹腔内投与)及び/又はクローン13の感染のために2×10ffuのクローン13(静脈内投与)に感染させ、感染の2週間後に脾臓を回収し、ウイルス力価をプラークアッセイにより測定した。ウイルスの力価は、コントロール及びhuCD3マウスの両方で同様であった(図6A)。このことは、T-細胞がマウスの両系統で類似のレベルまでウイルスを制御できるので、CD3のヒト化は、T-細胞の疲弊表現型に影響がなかったことを示す。Armstrong株の感染に関しては、初期のAmstrong株の感染の2週間後に、マウスをクローン13でチャレンジさせ、クローン13チャレンジの2週間後のウイルス力価を脾臓内で測定した。ウイルスは、コントロール又はヒト化CD3マウスのどちらでも検出されなかった(図6B)。このデータは、急性Armstrong感染が取り除かれたことを示唆している。加えて、これは、両方の系統のマウスにおいてArmstrong感染から誘導されたT-細胞の記憶が、マウスを後続のクローン13の感染から保護するのに十分であったことを実証している。
【0129】
実施例3.抗CD3系治療候補を試験するためのモデルとしてのヒト化CD3マウス
実施例3.3.カニクイザル交差反応性抗ヒトCD3抗体を試験するためのヒト化CD3マウス
特別なヒトに限定された、又はカニクイザル交差反応性抗CD3抗体の、野生型(WT)又はヒト化CD3γδε(Ho=ホモ接合、Het=ヘテロ接合)マウスの脾細胞と結合する能力を、蛍光活性化細胞分類(FACS)分析を使用して試験した。
【0130】
新鮮分離した脾細胞(ウェルあたり2×10)を、抗CD3抗体(15μg/mLを用いて、4℃で30分間インキュベートした。インキュベーション後、細胞を2回洗浄し、適切な二次抗体(例えば、蛍光のタグを付けたPE抗ヒトIgG及びT細胞マーカーに直接結合された抗体)を添加し、4℃で更に30分間インキュベートしてから、2回洗浄した。次の抗体を使用した。ah/mfCD3-2及びah/mfCD3-1は、ヒト及びサルCD3の両方を認識する2つの抗体であり、ahCD3-2及びahCD3-1は、ヒトCD3だけを認識する2つの抗体であり、amCD3-2C11は、マウスCD3だけを認識する抗体であり、コントロールヒトIgGは、無関係のコントロール抗体であり、2番目だけは、コントロールのみの二次抗体である。細胞を、1% BSAを含有する冷却PBSで2回洗浄し、緩衝液に再懸濁させ、FACSCanto II(商標)フローサイトメーター(BD Biosciences)上のフローサイトメトリーで分析した。T細胞を、CD45+/TCRb+/B220-として同定した。hIgG1を含有するように遺伝子操作を受けた抗mCD3-2C11を使用して、WTマウス脾細胞上のT細胞を同定した。
【0131】
図7に例証するように、ヒトCD3だけを認識する抗CD3抗体は、ヒト化CD3γδεマウスの脾細胞の表面でCD3と結合することができ、同様にヒト及びサルCD3を認識する抗CD3抗体は、ヒト化CD3γδεマウスの表面でCD3と結合することができた。したがって、3つのCD3ε、CD3δ、及びCD3γの全てについてヒト化されたマウスは、カニクイザルでの有効性及び毒性の研究によって追跡調査することができるCD3系薬物候補の早期の非臨床試験に関係するものである。
【0132】
実施例3.2.ヒト化CD3マウスにおけるT細胞活性化
抗ヒトCD3抗体の、ヒト化CD3マウスにおいて免疫応答を誘導する能力を試験した。CD3γδε(2/群のn)についてヒト化されたマウスに、特別なヒトに限定された、又はカニクイザル交差反応性抗CD3抗体(全てのhIgG1)10μgを腹腔内注射した。細胞構成及び血漿サイトカインレベルを得るために、注射2時間後に開始して血液を眼窩後方洞からEDTAコーティングしたMicrotainer管(BD)内に引き込んだ。末梢T及びB細胞の数をFACSによって評価した。簡潔に、全血50uLを、T及びB細胞マーカーに直接結合された抗体のカクテルを用いて、4℃で30分間インキュベートした。AKC Lysis bufferを用いた溶解によって赤血球を除去し、標識した細胞を、1%BSAを含有する冷却PBSで1回洗浄した。洗浄後、細胞を冷却緩衝液に再懸濁させ、FACSCANTO II(商標)フローサイトメーター(BD
Biosciences)上のフローサイトメトリーで分析した。T細胞を生存CD45+/TCRb+/B220-として同定し、B細胞を生存CD45+/TCRb-/B220+として同定した。既知量のCountBright(商標)Absolute Counting Beadsを添加することによって絶対細胞計数を測定した。Mouse ProInflammatory 7-Plex Ultra-Sensitive Kit(Meso-Scale Discovery)を使用して、注射2時間後に採取した血液から血漿サイトカインレベルを評価した。
【0133】
図8Aに例証するように、抗CD3抗体10μgの注射は、一時的なT及びB細胞の喪失を誘発し、それは初期の抗体処置後4日後までに大きく回復した。加えて、抗CD3抗体の注射(ヒトCD3(ahCD3-1及びahCD3-3)だけを認識する抗CD3抗体、並びにヒト及びサルCD3(ah/mfCD3-1及びah/mfCD3-2)を両方認識する抗CD3抗体の両方)は、CD3γδεヒト化マウスにおけるサイトカイン産生を誘発した(図8B)。
【0134】
加えて、抗ヒトCD3、抗ヒト/カニクイザルCD3、又は抗マウス抗体の、野生型又はヒト化CD3γδεマウスから得られた脾細胞の増殖を誘発する能力をATP触媒定量(CellTiter Glo(登録商標))を使用して評価した。マウス脾細胞の活性化は、サイトカインの放出をもたらし、それは細胞増殖を推進する。増殖データを次の実験計画書を使用して取得した。野生型(WT)又はヒト化ホモ接合CD3γδε(hCD3γδεHo)に由来する脾細胞(5×10/ウェル)を、ヒトに限定された、カニクイザル交差反応性、又はマウス特異的抗CD3抗体の量を減少させて4℃で一晩コーティングしていた96ウェルプレートに添加した。500ng/mLの抗マウスCD28を培養物に添加し、プレートを37℃で72時間インキュベートした。インキュベーションに続いて、CellTiter Glo(登録商標)を添加し、VICTOR X5マルチラベルプレートリーダー(PerkinElmer)を使用して輝度を測定した。Prism(GraphPad Software(San Diego,CA))を使用して、EC50の細胞生存性(ATP触媒定量)を測定した。4パラメータ非線形回帰分析を使用して、値を計算した。
【0135】
図9に例証するように、ヒト化CD3γδεマウスの脾細胞をカニクイザル交差性CD3抗体によって増殖するように誘導した。
【0136】
WT及びCD3γδεマウスの様々な特性の概要を図10に示す。見られるように、CD3γδεマウスのリンパ球は、抗ヒトCD3抗体と結合し、抗ヒトCD3抗体、特にサルCD3と交差反応することが知られているもの、に応答することができる。このことは、薬物候補の非臨床試験が多くの場合、カニクイザルのような大型動物で行われるので、治療薬にとって重要な態様である。
【0137】
実施例3.3.ヒト化CD3マウスにおける腫瘍喪失の研究
CD3遺伝子座でヒト化されたマウスを、CD20遺伝子座でヒト化されたマウスと交配することによって、CD3(上述のヒト化CD3γδεマウス)及びCD20の両方について二重にヒト化されたマウスを創出した。得られた動物は、両方のヒト化タンパク質を発現した。具体的には、ヒト化CD20マウスを創出するために、マウスMs4a1(Cd20)全コード領域の2番目のアミノ酸(1番目はMetであり共通している)から167bp下流の3’非翻訳領域まで、スパン9312bp(マウス19番染色体)を、対応するCD20ヒトコード領域の2番目のアミノ酸から107bp下流の3’非翻訳領域まで、スパン8482bp(ヒト11番染色体)と置換した。マウス及びヒトCD20は両方とも、6個のエクソンを有する。後述の実験で使用される動物は、CD3とCD20遺伝子座両方での置換についてはホモ接合であり、また個々の遺伝子座で改変されたマウスを交配することによって創出された。
【0138】
ヒト化CD3/CD20マウスの皮下にヒトCD20が導入された2×10のB16F10.9黒色腫腫瘍細胞を移植した。0日目(腫瘍移植の日)に開始して、溶媒(PBS;n=5)、0.4mg/kgのコントロールAb 2(CD20抗原に交差反応性を示さないコントロール抗体;n=5)、0.4mg/kgのAb1(抗CD3/CD20二重特異性抗体、2014年8月7日公開の国際公開第2014121087(A1)号を参照、N=5)、又は0.004mg/kgのAb1(n=5)のいずれも週2回マウスに腹腔内処置をした。腫瘍体積を、図11Aに示されるように測定した。腫瘍が約1500mmを超える体積に達すると、マウスを犠牲にした。図11Aに例証されるように、腫瘍移植により処置を同時に開始したとき、Ab 1による処置は、腫瘍の成長を遅延させた。
【0139】
別個の実験において、Ab 1の、既に定着した腫瘍における腫瘍成長を阻害する能力もまた試験した(図11B)。ヒト化CD3/CD20マウスの皮下にヒトCD20を発現する2×10のB16F10.9黒色腫腫瘍細胞を移植した。腫瘍移植後10日目に、マウスを腫瘍のサイズに基づきランダム化し、各群5匹のマウスを含む次の処置群に分けた。溶媒(PBS)、4mg/kgのコントロールAb 2(CD20抗原に交差反応性を示さないコントロール抗体)、4mg/kgのAb1、0.4mg/kgのAb 1.全てのマウスを週2回腹腔内処置した。腫瘍が約1500mmを超える体積に達すると、マウスを犠牲にした。図11Bに例証されるように、Ab 1による処置は、既に定着した腫瘍における腫瘍成長を遅延させた。このことは、ヒト化CD3マウスが早期の薬物候補研究にとって有利であることを示している。
【0140】
等価物
当業者は、単に日常的な実験を使用して、本明細書に記載の発明の特定の実施形態の多くの等価物を認識するか、確認することが可能であろう。かかる等価物は、以下の「特許請求の範囲」によって包含されることが意図される。
【0141】
本願を通して引用される全ての非特許文献、アクセッション番号、ウェブサイトなど、特許出願及び特許の内容全体は、あたかも個々に示されたかのようにあらゆる目的のために同じ程度まで全体にわたり参照により本明細書に援用される。アクセッション番号又はその他の引用が、異なる時期に異なる内容と関連する場合、有効な出願日に有効な内容が意味されるものであって、その有効な出願日とは、その引用を参照する優先権出願の最も早い出願日であり、又はない場合は実際の出願日である。
【0142】
任意の実施形態の文脈から特に明らかではない限り、態様、要素、特徴、工程など互いと組み合わせることができる。
【0143】
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
ヒトCD3タンパク質の細胞外ドメインをコードするために遺伝子改変された内在性非ヒトCD3遺伝子座を含み、前記ヒトCD3タンパク質がCD3ε、CD3δ、CD3γ、CD3ζ、又はそれらの任意の組み合わせである、遺伝子改変非ヒト動物。
(項目2)
前記内在性非ヒトCD3遺伝子座が、ヒトCD3εの細胞外ドメイン、ヒトCD3δの細胞外ドメイン、及びヒトCD3γの細胞外ドメインをコードするために遺伝子改変される、項目1に記載の動物。
(項目3)
前記内在性非ヒトCD3遺伝子座が、前記ヒトCD3タンパク質に対応する非ヒトCD3タンパク質の機能性細胞外ドメインを発現しないように遺伝子改変される、項目1又は2に記載の動物。
(項目4)
前記内在性遺伝子座が、前記内在性非ヒト動物のCD3タンパク質の膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインを更にコードし、前記動物が、そのT細胞の表面に、前記ヒトCD3タンパク質の前記細胞外ドメインと、前記内在性非ヒト動物CD3タンパク質の前記膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインと、を含むキメラCD3タンパク質を発現する、項目1に記載の動物。
(項目5)
前記動物が、
内在性CD3ε遺伝子座において、前記内在性非ヒト動物のCD3εの膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインをコードする核酸配列に作動可能に連結されたヒトCD3εの細胞外ドメインをコードする核酸配列と、
内在性CD3δ遺伝子座において、前記内在性非ヒト動物のCD3δタンパク質の膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインをコードする核酸配列に作動可能に連結されたヒトCD3δの細胞外ドメインをコードする核酸配列と、
内在性CD3γ遺伝子座において、内在性非ヒト動物CD3γのCD3γタンパク質の膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインをコードする核酸配列に作動可能に連結されたヒトCD3γの細胞外ドメインをコードする核酸配列と、を含み、
前記非ヒト動物が、そのT細胞の前記表面に、キメラCD3ε、CD3δ、及びCD3γタンパク質を発現する、項目2に記載の動物。
(項目6)
前記動物が、配列番号33、配列番号34、及び配列番号35の配列を含むヒトCD3タンパク質の細胞外ドメインを含む、項目1~5のいずれか一項に記載の動物。
(項目7)
前記動物が哺乳類である、項目1~6のいずれか一項に記載の動物。
(項目8)
前記動物がげっ歯類である、項目1~7のいずれか一項に記載の動物。
(項目9)
前記動物がマウスである、項目8に記載の動物。
(項目10)
前記マウスが、
内在性マウスCD3ε遺伝子座において、内在性マウスCD3εの膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインをコードする核酸配列に作動可能に連結されたヒトCD3εの細胞外ドメインをコードする核酸配列と、
内在性マウスCD3δ遺伝子座において、内在性マウスCD3δの膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインをコードする核酸配列に作動可能に連結されたヒトCD3δの細胞外ドメインをコードする核酸配列と、
内在性マウスCD3γ遺伝子座において、内在性マウスCD3γの膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインをコードする核酸配列に作動可能に連結されたヒトCD3γの細胞外ドメインをコードする核酸配列と、を含み、
前記マウスが、そのT細胞の前記表面にキメラCD3ε、CD3δ、及びCD3γタンパク質を発現する、項目9に記載のマウス。
(項目11)
前記キメラCD3εタンパク質の前記アミノ酸配列が、配列番号24に示され、前記キメラCD3δタンパク質の前記アミノ酸配列が、配列番号25に示され、前記キメラCD3γタンパク質の前記アミノ酸配列が、配列番号26に示されている、項目10に記載のマウス。
(項目12)
前記改変された内在性非ヒトCD3遺伝子座がヘテロ接合である、項目1~11のいずれか一項に記載の動物。
(項目13)
前記改変された内在性非ヒトCD3遺伝子座がホモ接合である、項目1~11のいずれか一項に記載の動物。
(項目14)
項目1~13のいずれか一項に定義されるような遺伝子改変非ヒト動物を作製する方法であって、
CD3ε、CD3δ、CD3γ、CD3ζ、又はそれらの任意の組み合わせであるヒトCD3タンパク質の細胞外ドメインをコードする核酸配列を、内在性CD3遺伝子座において非ヒト動物の細胞のゲノムに導入することと、
前記遺伝子改変非ヒト動物を前記細胞から繁殖させることと、を含む方法。
(項目15)
前記細胞が、単一ES細胞であり、前記単一ES細胞をマウス胚に導入してマウスを繁殖させる、項目14に記載の方法。
(項目16)
抗原結合タンパク質がCD3と所望の非マウス抗原の両方に結合することができる、CD3系二重特異性抗原結合タンパク質を試験するためのマウスモデルであって、ヒトCD3タンパク質の細胞外ドメインをコードするために遺伝子改変されたマウスを含み、前記ヒトCD3タンパク質が、CD3ε、CD3δ、CD3γ、CD3ζ、又はそれらの任意の組み合わせであり、前記所望の非マウス抗原を発現する細胞を含むか又は前記所望の非マウス抗原を含む、マウスモデル。
(項目17)
前記マウスが、項目1~16のいずれか一項により定義されるとおりである、項目16に記載のマウスモデル。
(項目18)
a.項目1~17のいずれか一項に定義されるような遺伝子改変マウスに前記所望の抗原を導入することと、
b.前記マウスを所望の薬物候補と接触させることであって、前記薬物候補が前記ヒトCD3及び前記所望の抗原に対するものであることと、
c.前記薬物候補が、前記所望の抗原の存在又は発現を特徴とする細胞を予防、低減又は排除することに効果があるかどうかを判定することと、を含む、所望の抗原を標的にする薬物候補のスクリーニング方法。
(項目19)
前記導入する工程が、前記マウスで前記所望の抗原を発現することを含む、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記導入する工程が、前記マウスに前記所望の抗原を感染させることを含む、項目18又は19に記載の方法。
(項目21)
前記マウスで前記所望の抗原を発現する工程が、前記所望の抗原を発現するように前記マウスを遺伝子改変することを含む、項目19に記載の方法。
(項目22)
前記導入する工程が、前記マウスに前記所望の抗原を発現する細胞を導入することを含む、項目18~21のいずれか一項に記載の方法。
(項目23)
前記細胞が腫瘍細胞である、項目16又は22に記載の方法又はマウスモデル。
(項目24)
前記細胞が細菌細胞である、項目16又は22に記載の方法又はマウスモデル。
(項目25)
前記感染させることが、ウイルス又は細菌感染を実行することを含む、項目20に記載の方法。
(項目26)
前記マウスが免疫応答性マウスである、項目16~25のいずれか一項に記載の方法又はマウスモデル。
(項目27)
前記所望の抗原が腫瘍関連抗原である、項目16~26のいずれか一項に記載の方法又はマウスモデル。
(項目28)
前記腫瘍関連抗原が、ALK、BAGEタンパク質、BIRC5(サバイビン)、BIRC7、CA9、CALR、CCR5、CD19、CD20(MS4A1)、CD22、CD27、CD30、CD33、CD38、CD40、CD44、CD52、CD56、CD79、CDK4、CEACAM3、CEACAM5、CLEC12A、EGFR、EGFR変異体III、ERBB2(HER2)、ERBB3、ERBB4、EPCAM、EPHA2、EPHA3、FCRL5、FLT3、FOLR1、GAGEタンパク質、GD2、GD3、GPNMB、GM3、GPR112、IL3RA、KIT、KRAS、LGR5、EBV由来のLMP2、L1CAM、MAGEタンパク質、MLANA、MSLN、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、MUC5、MUC16、MUM1、ANKRD30A、NY-ESO1(CTAG1B)、OX40、PAP、PAX3、PAX5、PLAC1、PRLR、PMEL、PRAME、PSMA(FOLH1)、RAGEタンパク質、RET、RGS5、ROR1、SART1、SART3、SLAMF7、SLC39A6(LIV1)、STEAP1、STEAP2、TERT、TMPRSS2、Thompson-nouvelle抗原、TNFRSF17、TYR、UPK3A、VTCN1、及びWT1からなる群から選択される、項目27に記載の方法又はマウスモデル。
(項目29)
前記所望の抗原が感染症抗原である、項目16~26のいずれか一項に記載の方法又はマウスモデル。
(項目30)
前記感染症抗原がウイルス抗原である、項目29に記載の方法又はマウスモデル。
(項目31)
前記ウイルス抗原が、HIV;A型肝炎;B型肝炎;C型肝炎;HSV-1、HSV-2、CMV、HAV-6、VZV、エプスタインバールウイルスなどのヘルペスウイルス;アデノウイルス;インフルエンザウイルス;フラビウイルス;エコーウイルス;ライノウイルス;コクサッキーウイルス;コロナウイルス;呼吸器合胞体ウイルス;ムンプスウイルス;ロタウイルス;麻疹ウイルス;風疹ウイルス;パルボウイルス;ワクシニアウイルス;HTLV;デングウイルス;パピローマウイルス;水いぼウイルス;ポリオウイルス;狂犬病ウイルス;JCウイルス;エボラウイルス、及びアルボウイルス脳炎のウイルス抗原からなる群から選択される、項目30に記載の方法又はマウスモデル。
(項目32)
前記感染症抗原が細菌性抗原である、項目29に記載の方法又はマウスモデル。
(項目33)
前記細菌性抗原が、クラミジア、リケッチア、マイコバクテリア、ブドウ球菌、連鎖球菌、肺炎球菌、髄膜炎菌、淋菌、クレブシエラ、プロテウス、セラチア、シュードモナス、レジオネラ菌、ジフテリア、サルモネラ、桿菌、コレラ、破傷風、ボツリズム、炭疽、ペスト、レプトスピラ、及びライム病の細菌性抗原からなる群から選択される、項目32に記載の方法又はマウスモデル。
(項目34)
前記薬物候補が抗体である、項目18~33のいずれか一項に記載の方法。
(項目35)
前記薬物候補が抗原結合タンパク質である、項目18~33のいずれか一項に記載の方法。
(項目36)
前記薬物候補が、二重特異性抗体又は二重特異性抗原結合タンパク質である、項目34又は35に記載の方法。
(項目37)
前記二重特異性抗体又は前記二重特異性抗原結合タンパク質が、ヒトCD3タンパク質と前記所望の抗原の両方に結合することができる、項目36に記載の方法。
(項目38)
前記薬物候補が、サルCD3タンパク質を認識することができる、項目18~37のいずれか一項に記載の方法。
(項目39)
前記薬物候補が、前記所望の抗原を標的としない作用物質と比較して腫瘍の増殖を低減、排除、又は予防することができる、項目23に記載の方法。
(項目40)
前記判定する工程が、腫瘍体積アッセイを含む、項目23に記載の方法。
(項目41)
前記判定する工程が、T細胞媒介性腫瘍細胞キリングアッセイを含む、項目23に記載の方法。
(項目42)
前記薬物候補が、前記所望の抗原を標的としない作用物質と比較して細菌又はウイルスの感染を低減、排除、又は予防することができる、項目25に記載の方法。
(項目43)
前記判定する工程が、ウイルス又は細菌の力価の測定を含む、項目25に記載の方法。(項目44)
前記所望の抗原が、所望のヒト抗原である、項目16~18に記載の方法又はマウスモデル。
別の態様では、本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目A1)
ヒトCD3εの細胞外ドメイン、ヒトCD3δの細胞外ドメイン、及びヒトCD3γの細胞外ドメインに遺伝子改変された内在性非ヒトCD3遺伝子座を含む、遺伝子改変非ヒト動物。
(項目A3)
前記内在性非ヒトCD3遺伝子座が、前記ヒトCD3タンパク質に対応する非ヒトCD3タンパク質の機能性細胞外ドメインを発現しないように遺伝子改変される、項目A1又は2に記載の動物。
(項目A5)
前記動物が、
内在性CD3ε遺伝子座において、前記内在性非ヒト動物のCD3εの膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインをコードする核酸配列に作動可能に連結されたヒトCD3εの細胞外ドメインをコードする核酸配列と、
内在性CD3δ遺伝子座において、前記内在性非ヒト動物のCD3δタンパク質の膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインをコードする核酸配列に作動可能に連結されたヒトCD3δの細胞外ドメインをコードする核酸配列と、
内在性CD3γ遺伝子座において、内在性非ヒト動物CD3γのCD3γタンパク質の膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインをコードする核酸配列に作動可能に連結されたヒトCD3γの細胞外ドメインをコードする核酸配列と、を含み、
前記非ヒト動物が、そのT細胞の前記表面に、キメラCD3ε、CD3δ、及びCD3γタンパク質を発現する、項目A1に記載の動物。
(項目A6)
前記動物が、配列番号33、配列番号34、及び配列番号35の配列を含むヒトCD3タンパク質の細胞外ドメインを含む、項目A1~5のいずれか一項に記載の動物。
(項目A7)
前記動物が哺乳類である、項目A1~6のいずれか一項に記載の動物。
(項目A8)
前記動物がげっ歯類である、項目A1~7のいずれか一項に記載の動物。
(項目A9)
前記動物がマウスである、項目A8に記載の動物。
(項目A10)
前記マウスが、
内在性マウスCD3ε遺伝子座において、内在性マウスCD3εの膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインをコードする核酸配列に作動可能に連結されたヒトCD3εの細胞外ドメインをコードする核酸配列と、
内在性マウスCD3δ遺伝子座において、内在性マウスCD3δの膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインをコードする核酸配列に作動可能に連結されたヒトCD3δの細胞外ドメインをコードする核酸配列と、
内在性マウスCD3γ遺伝子座において、内在性マウスCD3γの膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインをコードする核酸配列に作動可能に連結されたヒトCD3γの細胞外ドメインをコードする核酸配列と、を含み、
前記マウスが、そのT細胞の前記表面にキメラCD3ε、CD3δ、及びCD3γタンパク質を発現する、項目A9に記載のマウス。
(項目A11)
前記キメラCD3εタンパク質の前記アミノ酸配列が、配列番号24に示され、前記キメラCD3δタンパク質の前記アミノ酸配列が、配列番号25に示され、前記キメラCD3γタンパク質の前記アミノ酸配列が、配列番号26に示されている、項目A10に記載のマウス。
(項目A12)
前記改変された内在性非ヒトCD3遺伝子座がヘテロ接合である、項目A1~11のいずれか一項に記載の動物。
(項目A13)
前記改変された内在性非ヒトCD3遺伝子座がホモ接合である、項目A1~11のいずれか一項に記載の動物。
(項目A14)
項目A1~13のいずれか一項に記載の遺伝子改変非ヒト動物を作成する方法であって、
ヒトCD3ε、CD3δ、及びCD3γの細胞外ドメインをコードする核酸配列を、内在性CD3遺伝子座において非ヒト動物の細胞のゲノムに導入することと、
前記遺伝子改変非ヒト動物を前記細胞から繁殖させることと、を含む方法。
(項目A15)
前記細胞が、単一ES細胞であり、前記単一ES細胞をマウス胚に導入してマウスを繁殖させる、項目A14に記載の方法。
(項目A16)
抗原結合タンパク質がCD3と所望の非マウス抗原の両方に結合することができる、CD3系二重特異性抗原結合タンパク質を試験するためのマウスモデルであって、ヒトCD3ε、CD3δ、及びCD3γの細胞外ドメインをコードするために遺伝子改変されたマウスを含み、前記所望の非マウス抗原を発現する細胞を含むか又は前記所望の非マウス抗原を含む、マウスモデル。
(項目A17)
前記マウスが項目A1~16のいずれか一項に記載される、項目A16に記載のマウスモデル。
(項目A18)
a.前記所望の抗原を、項目A1~17のいずれか一項に記載の遺伝子改変マウスに導入することと、
b.前記マウスを所望の薬物候補と接触させることであって、前記薬物候補が前記ヒトCD3及び前記所望の抗原に対するものであることと、
c.前記薬物候補が、前記所望の抗原の存在又は発現を特徴とする細胞を予防、低減又は排除することに効果があるかどうかを判定することと、を含む、所望の抗原を標的にする薬物候補のスクリーニング方法。
(項目A19)
前記導入する工程が、前記マウスで前記所望の抗原発現させることを含む、項目A18に記載の方法。
(項目A20)
前記導入する工程が、前記マウスに前記所望の抗原を感染させることを含む、項目A18又は19に記載の方法。
(項目A21)
前記マウスで前記所望の抗原を発現する工程が、前記所望の抗原を発現するように前記マウスを遺伝子改変することを含む、項目A19に記載の方法。
(項目A22)
前記導入する工程が、前記マウスに前記所望の抗原を発現している細胞を導入することを含む、項目A18~21のいずれか一項に記載の方法。
(項目A23)
前記細胞が腫瘍細胞である、項目A16又は22に記載の方法又はマウスモデル。
(項目A24)
前記細胞が細菌細胞である、項目A16又は22に記載の方法又はマウスモデル。
(項目A25)
前記感染させることが、ウイルス感染又は細菌感染を行うことを含む、項目A20に記載の方法。
(項目A26)
前記マウスが免疫応答性マウスである、項目A16~25のいずれか一項に記載の方法又はマウスモデル。
(項目A27)
前記所望の抗原が、腫瘍関連抗原である、項目A16~26のいずれか一項に記載の方法又はマウスモデル。
(項目A28)
前記腫瘍関連抗原が、ALK、BALEタンパク質、BIRC5(サバイビン)、BIRC7、CA9、CALR、CCR5、CD19、CD20(MS4A1)、CD22、CD27、CD30、CD33、CD38、CD40、CD44、CD52、CD56、CD79、CDK4、CEACAM3、CEACAM5、CLEC12A、EGFR、EGFR変異体III、ERBB2(HER2)、ERBB3、ERBB4、EPCAM、EPHA2、EPHA3、FCRL5、FLT3、FOLR1、GAGEタンパク質、GD2、GD3、GPNMB、GM3、GPR112、IL3RA、KIT、KRAS、LGR5、EBV由来のLMP2、L1CAM、MAGEタンパク質、MLANA、MSLN、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、MUC5、MUC16、MUM1、ANKRD30A、NY-ES01(CTAG1B)、0X40、PAP、PAX3、PAX5、PLAC1、PRLR、PMEL、PRAME、PSMA(FOLH1)、RAGEタンパク質、RET、RGS5、ROR1、SART1、SART3、SLAMF7、SLC39A6(LIV1)、STEAP1、STEAP2、TERT、TMPRSS2、Thompson-nouvelle抗原、TNFRSF17、TYR、UPK3A、VTCN1、及びWT1からなる群から選択される、項目A27に記載の方法又はマウスモデル。
(項目A29)
前記所望の抗原が、感染症抗原である、項目A16~26のいずれか一項に記載の方法又はマウスモデル。
(項目A30)
前記感染症抗原がウイルス抗原である、項目A29に記載の方法又はマウスモデル。
(項目A31)
前記ウイルス抗原が、HIV、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、ヘルペスウイルス、例えば、HSV-1、HSV-2、CMV、HAV-6、VZV、及びエプスタインバールウイルス、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、フラビウイルス、エコーウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルス、コロナウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ムンプスウイルス、ロタウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、パルボウイルス、ワクシニアウイルス、HTLV、デングウイルス、パピローマウイルス、水いぼウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、JCウイルス、エボラウイルス、並びにアルボウイルス脳炎のウイルス抗原からなる群から選択される、項目A30に記載の方法又はマウスモデル。
(項目A32)
前記感染症抗原が細菌性抗原である、項目A29に記載の方法又はマウスモデル。
(項目A33)
前記細菌性抗原が、クラミジア、リケッチア、マイコバクテリア、ブドウ球菌、連鎖球菌、肺炎球菌、髄膜炎菌、淋菌、クレブシエラ、プロテウス、セラチア、シュードモナス、レジオネラ菌、ジフテリア、サルモネラ、桿菌、コレラ、破傷風、ボツリズム、炭疽、ペスト、レプトスピラ、及びライム病の細菌性抗原からなる群から選択される、項目A32に記載の方法又はマウスモデル。
(項目A34)
前記薬物候補が抗体である、項目A18~33のいずれか一項に記載の方法。
(項目A35)
前記薬物候補が抗原結合タンパク質である、項目A18~33のいずれか一項に記載の方法。
(項目A36)
前記薬物候補が二重特異性抗体又は二重特異性抗原結合タンパク質である、項目A34又は35に記載の方法。
(項目A37)
前記二重特異性抗体又は前記二重特異性抗原結合タンパク質が、ヒトCD3タンパク質と前記所望の抗原の両方に結合することができる、項目A36に記載の方法。
(項目A38)
前記薬物候補が、サルCD3タンパク質を認識することができる、項目A18~37のいずれか一項に記載の方法。
(項目A39)
前記薬物候補が、前記所望の抗原を標的としない作用物質と比較して腫瘍の増殖を低減、排除、又は予防することができる、項目A23に記載の方法。
(項目A40)
前記判定する工程が、腫瘍体積アッセイを含む、項目A23に記載の方法。
(項目A41)
前記判定する工程が、T細胞媒介性腫瘍細胞キリングアッセイを含む、項目A23に記載の方法。
(項目A42)
前記薬物候補が、前記所望の抗原を標的としない作用物質と比較して細菌又はウイルスの感染を低減、排除、又は予防することができる、項目A25に記載の方法。
(項目A43)
前記判定する工程が、ウイルス又は細菌の力価の測定を含む、項目A25に記載の方法。
(項目A44)
前記所望の抗原が所望のヒト抗原である、項目A16~18のいずれか一項に記載の方法又はマウスモデル。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11A
図11B
【配列表】
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【外国語明細書】