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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011499
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】レバーホイスト
(51)【国際特許分類】
   B66D 3/14 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
B66D3/14 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113510
(22)【出願日】2022-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000129367
【氏名又は名称】株式会社キトー
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】IAT弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】雨宮 朝宏
(57)【要約】
【課題】外部の駆動手段からの駆動力を伝達する動力伝達機構が設けられていても、操作レバーの操作を行うことが可能なレバーホイストを提供する。
【解決手段】手動により回転操作させる操作レバー50と、操作レバー50からの動力で回転するロードシーブ33と、該ロードシーブ33を回転自在に支持する一対のフレーム31,32と、ロードシーブ33に対して操作レバー50からの駆動力を伝達する駆動軸35と、ロードシーブ33に掛け回されたチェーンC1を早送りすると共に、駆動軸35の一方側の端部に配置されたロードシーブ33を早回しするための早回しニギリ70と、を備え、駆動軸35の他方側の端部に連結される摺動継手170および軸継手180、および外部の電動ドライバー300からの駆動力を減速した状態で摺動継手170および軸継手180に出力する減速機構を備える動力伝達機構100を設けている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手動により回動操作される操作レバーと、
該操作レバーからの動力で回転するロードシーブと、
該ロードシーブを回転自在に支持する一対のフレームと、
前記ロードシーブに対して前記操作レバーからの駆動力を伝達する駆動軸と、
前記ロードシーブに掛け回されたチェーンを早送りすると共に、前記駆動軸の一方側の端部に配置された前記ロードシーブを早回しするための早回しニギリと、を備えるレバーホイストであって、
前記駆動軸の他方側の端部に連結される連結手段、および外部の駆動手段からの駆動力を減速した状態で前記連結手段に出力する減速機構を備える動力伝達機構を設けている、
ことを特徴とするレバーホイスト。
【請求項2】
請求項1記載のレバーホイストであって、
前記動力伝達機構は、
前記減速機構から前記駆動軸へ駆動力を伝達させる連結状態と、前記減速機構から前記駆動軸への駆動力の伝達を不可とする非連結状態とを切り替える連結切り離し機構を備える、
ことを特徴とするレバーホイスト。
【請求項3】
請求項2記載のレバーホイストであって、
前記連結切り離し機構は、
前記駆動軸と一体的に回転すると共に当該駆動軸に取り付けられる軸継手と、
前記減速機構からの駆動力が伝達されると共に前記軸継手と噛み合い状態で前記減速機構からの前記駆動手段の駆動力を伝達する摺動継手と、
を備え、該連結切り離し機構は、
前記軸継手と前記摺動継手との間の噛み合いを手動操作により解除可能とする、
ことを特徴とするレバーホイスト。
【請求項4】
請求項3記載のレバーホイストであって、
前記連結切り離し機構は、
前記駆動軸の軸線方向の前記他方側に向けて前記摺動継手を押圧し、前記駆動軸および前記減速機構に対する回転が不能な状態で配置されていると共に、外周側に向かって突出するカム突起を備える遮断プレートと、
前記遮断プレートの外周側に配置され、内周面に前記カム突起が入り込むカム溝を有するカムリングと、
を備え、前記カムリングは、前記動力伝達機構に対して相対的に回転させられることで、前記軸継手と前記摺動継手との間の噛み合いを解除する、
ことを特徴とするレバーホイスト。
【請求項5】
請求項2記載のレバーホイストであって、
前記連結切り離し機構は、
前記駆動軸と一体的に回転すると共に当該駆動軸に取り付けられる軸継手と、
前記減速機構からの駆動力が伝達されると共に前記軸継手と噛み合い状態で前記減速機構からの前記駆動手段の駆動力を伝達する摺動継手と、
を備えると共に、
前記動力伝達機構は、前記摺動継手が規定の回転方向である正転方向に回転した際には前記軸継手への駆動力の伝達を行う一方、前記正転方向とは逆の逆転方向に回転した際には前記摺動継手と前記軸継手との間の噛み合いの解除によって前記摺動継手からの前記軸継手への駆動力の伝達を行わないワンウェイクラッチ機構を備える、
ことを特徴とするレバーホイスト。
【請求項6】
請求項1記載のレバーホイストであって、
前記駆動手段と前記減速機構の間には、相対的に摺動可能な第1摺動部材と第2摺動部材とを備えるフリクションクラッチ機構が設けられていて、
前記フリクションクラッチ機構は、前記駆動手段から所定トルク以上のトルクが入力された際に、前記第1摺動部材と前記第2摺動部材との間での摺動によって前記減速機構への前記トルクの伝達を遮断する、
ことを特徴とするレバーホイスト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レバーホイストに関する。
【背景技術】
【0002】
荷物を昇降および引き寄せたり、荷物をチェーンやベルト等で固定する(固縛する)等の作業のために、レバーホイストが広く用いられている。このレバーホイストは、手で操作レバーを操作することで、チェーンの巻上げおよび巻下げを行える。このようなレバーホイストにおいて、近年、たとえば比較的非力な作業者でも容易に荷物の昇降や固縛作業が行えるように、電動ドライバーの駆動力を用いて、レバーホイストを操作可能としたものがある。このようなレバーホイストに関するものとして、たとえば特許文献1に示すものがある。
【0003】
特許文献1には、レバーホイスト(10)に対し、別体的なレバーホイスト用動力伝達装置(100)を取り付ける。このレバーホイスト用動力伝達装置(100)は、電動ドライバー(300)からの駆動力が入力される入力軸(140)を備え、その入力軸(140)に伝達された駆動力は、第1減速ギヤ機構(150)および第2減速ギヤ機構(170)を経て、出力軸(180)へと伝達される。出力軸(180)は、カップリング部(190)へと駆動力を伝達し、そのカップリング部(190)は、遊転ニギリ(60)と噛み合い一体的に回転する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-100462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の特許文献1に開示のレバーホイスト用動力伝達装置(100)は、遊転ニギリ(60)に連結される構成となっている。したがって、レバーホイスト用動力伝達装置(100)をレバーホイスト(10)に取り付けた状態では、操作レバー(40)の操作を行えない、という問題がある。
【0006】
また、作業性を向上させるためには、遊転ニギリ(60)をホイスト本体(30)から離す向きに引いて、ロードシーブ(33)の遊転状態へと切り換えてチェーン(C1)を手引きによって素早く緩めたり、所定までチェーン(C1)を素早く巻き上げることが一般に行われている。なお、ここでいう遊転状態とは、ロードシーブを駆動させるための駆動軸に対し、操作レバー(40)からの駆動の伝達がなされない状態をいう。
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示の構成においては、レバーホイスト用動力伝達装置(100)をレバーホイスト(10)に取り付けて、カップリング部(190)が遊転ニギリ70と連結された状態では、遊転状態へと切り換えることが困難である。また、仮にレバーホイスト用動力伝達装置(100)をレバーホイスト(10)に取り付けた状態で、遊転状態へと切り換えたとしても、チェーン(C1)の手引きの際に、駆動軸、カップリング部(190)等を介して第1減速ギヤ機構(150)および第2減速ギヤ機構(170)も駆動させられる。そのため、チェーン(C1)の手引き力が重くなってしまう、という問題がある。
【0008】
本発明は上記の事情に鑑みなされたもので、外部の電動ドライバー等の駆動手段からの駆動力を伝達する動力伝達機構が設けられていても、操作レバーの操作を行うことが可能なレバーホイストを提供することを目的とする。
また、外部の電動ドライバーからの駆動力を伝達する動力伝達機構が設けられていても、遊転状態において、チェーンの手引き力を軽減することが可能なレバーホイストを提供できることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の第1の観点によると、手動により回動操作される操作レバーと、該操作レバーからの動力で回転するロードシーブと、該ロードシーブを回転自在に支持する一対のフレームと、ロードシーブに対して操作レバーからの駆動力を伝達する駆動軸と、ロードシーブに掛け回されたチェーンを早送りすると共に、駆動軸の一方側の端部に配置されたロードシーブを早回しするための早回しニギリと、を備えるレバーホイストであって、駆動軸の他方側の端部に連結される連結手段、および外部の駆動手段からの駆動力を減速した状態で連結手段に出力する減速機構を備える動力伝達機構を設けている、ことを特徴とするレバーホイストが提供される。
【0010】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、動力伝達機構は、減速機構から駆動軸へ駆動力を伝達させる連結状態と、減速機構から駆動軸への駆動力の伝達を不可とする非連結状態とを切り替える連結切り離し機構を備える、ことが好ましい。
【0011】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、連結切り離し機構は、駆動軸と一体的に回転すると共に当該駆動軸に取り付けられる軸継手と、減速機構からの駆動力が伝達されると共に軸継手と噛み合い状態で減速機構からの駆動手段の駆動力を伝達する摺動継手と、を備え、該連結切り離し機構は、軸継手と摺動継手との間の噛み合いを手動操作により解除可能とする、ことが好ましい。
【0012】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、連結切り離し機構は、駆動軸の軸線方向の他方側に向けて摺動継手を押圧し、駆動軸および減速機構に対する回転が不能な状態で配置されていると共に、外周側に向かって突出するカム突起を備える遮断プレートと、遮断プレートの外周側に配置され、内周面にカム突起が入り込むカム溝を有するカムリングと、を備え、カムリングは、動力伝達機構に対して相対的に回転させられることで、軸継手と摺動継手との間の噛み合いを解除する、ことが好ましい。
【0013】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、連結切り離し機構は、駆動軸と一体的に回転すると共に当該駆動軸に取り付けられる軸継手と、減速機構からの駆動力が伝達されると共に軸継手と噛み合い状態で減速機構からの駆動手段の駆動力を伝達する摺動継手と、を備えると共に、動力伝達機構は、摺動継手が規定の回転方向である正転方向に回転した際には軸継手への駆動力の伝達を行う一方、正転方向とは逆の逆転方向に回転した際には摺動継手と軸継手との間の噛み合いの解除によって摺動継手からの軸継手への駆動力の伝達を行わないワンウェイクラッチ機構を備える、ことが好ましい。
【0014】
また、本発明の他の側面は、駆動手段と減速機構の間には、相対的に摺動可能な第1摺動部材と第2摺動部材とを備えるフリクションクラッチ機構が設けられていて、フリクションクラッチ機構は、駆動手段から所定トルク以上のトルクが入力された際に、第1摺動部材と第2摺動部材との間での摺動によって減速機構へのトルクの伝達を遮断する、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、外部の電動ドライバー等の駆動手段からの駆動力を伝達する動力伝達機構が設けられていても、操作レバーの操作を行うことが可能なレバーホイストを提供することが可能となる。
また、外部の電動ドライバーからの駆動力を伝達する動力伝達機構が設けられていても、遊転状態において、チェーンの手引き力を軽減することが可能なレバーホイストを提供できることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施の形態に係るレバーホイスト用動力伝達装置が取り付けられるレバーホイストの構成を示す正面図である
図2図1に示すレバーホイストの構成を示す背面図である。
図3図1に示すレバーホイストの構成を示す側面図である。
図4図1に示すレバーホイストが備える動力伝達機構の構成を示す側面図である。
図5図4に示す動力伝達機構の構成を示す断面図である。
図6図4に示す動力伝達機構の構成を示す分解斜視図である。
図7図4に示す動力伝達機構が備えるフリクションクラッチ機構の構成を示す断面図である。
図8図4に示す動力伝達機構が備えるワンウェイクラッチ機構の概略的な構成を示す断面図である。
図9図4に示す動力伝達機構が備える連結切り離し機構の概略的な構成を示す断面図であり、摺動継手と軸継手とが連結された状態を示している。
図10図4に示す動力伝達機構が備える連結切り離し機構の概略的な構成を示す断面図であり、動継手と軸継手とが切り離された状態を示している。
図11図4に示す動力伝達機構が備える摺動継手の構成を示す斜視図である。
図12図4に示す動力伝達機構が備える軸継手の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態に係る、レバーホイスト10について、図面に基づいて説明する。
【0018】
<レバーホイストについて>
以下の説明においては、X方向は、ギヤケース40と早回しニギリ70(以下「遊転ニギリ」という。)の間に配置される駆動軸35の軸線方向とし、X1側は遊転ニギリ70が取り付けられる側とし、X2側はそれとは逆のギヤケース40側とする。また、Z方向はレバーホイスト10の懸吊状態における鉛直方向(懸吊方向;巻上げ下げ方向)とし、Z1側は懸吊状態における上側とし、Z2側は懸吊状態における下側とする。
【0019】
図1は、本実施の形態に係るレバーホイスト10の構成を示す正面図である。図3はレバーホイスト10の構成を示す背面図である。図3はレバーホイスト10の構成を示す側面図である。図1から図3に示すように、レバーホイスト10は、上フック20と、下フック25と、ホイスト本体30と、操作レバー50と、切換ツマミ60と、遊転ニギリ70と、動力伝達機構100とを有している。上フック20は、リング状の金具や環状のワイヤ等のような掛止部位に掛ける部分である。
【0020】
また、上フック20は、ホイスト本体30に連結されていて、下フック25はチェーンC1の端部側に連結されている。これら上フック20および下フック25は、他の部材に掛け止めする部分である。
【0021】
また、ホイスト本体30は、4本のステイボルトB1および袋ナットN1で連結された一対のフレーム31,32の間に、チェーンC1を掛け回す中空のロードシーブ33を有しているが、このロードシーブ33は、軸線方向(X方向)に沿う軸状の駆動軸35の回転に伴って回転する。なお、ホイスト本体30には、減速ギヤを内蔵するギヤケース40も取り付けられているが、そのギヤケース40は、フレーム32よりも軸方向(X方向)の他方側(X2側)に設けられている。さらに、ホイスト本体30には、図示を省略するブレーキ機構が内蔵されている。このロードシーブ33および駆動軸35の回転方向によって、チェーンC1が巻上げられたり、その逆にチェーンC1が巻下げられる。
【0022】
なお、駆動軸35の軸方向(X方向)の他端側(X2側)には、後述する軸継手180の円柱部181が差し込まれる他端凹部35aが設けられている。また、ギヤケース40には、挿通孔(図示省略)が設けられている。この挿通孔41は、駆動軸35の軸線に沿って、ギヤケース40を貫通していて、後述する軸継手180を差し込み可能となっている。
【0023】
また、操作レバー50は、チェーンC1の巻上げまたは巻下げを行うために、作業者が手で把持して回動させる長尺状の部分である。チェーンC1の巻上げ時に、操作レバー50を回動させると、不図示のブレーキ機構が締め付け状態のまま、後述する操作レバー50とロードシーブ33とが一体的に回転する。一方、チェーンC1の巻下げ時に、操作レバー50を回動させると、その操作レバー50の操作量だけ、ブレーキ機構が緩み、その緩んだ分だけチェーンC1が巻下げられる。しかしながら、巻下げ時に操作レバー50の操作を停止すると、ブレーキ機構の作用によって、ロードシーブ33の回転が即座に停止させられる。
【0024】
また、切換ツマミ60は、操作レバー50のうち遊転ニギリ70に近接する部位に取り付けられている。また、図1に示すように、切換ツマミ60の上方側(Z1側)には一対の係合突部61が設けられている。この切換ツマミ60は、遊転ニギリ70内およびホイスト本体30内に内蔵されているラチェット機構と連動している。すなわち、切換ツマミ60は、駆動軸35とネジ結合された切換歯車に噛み合う切換爪と一体的に回動する。この切換爪は、巻上げ用のラチェット爪と、巻下げ用のラチェット爪が一体化された形態となっている。
【0025】
たとえば、切換ツマミ60の下側(Z2側)を左側に倒すと巻上げ用のラチェット爪が切換歯車と噛み合う。それにより、操作レバー50を回動させる動作を繰り返した場合、切換歯車は巻上げ方向には回転するが巻下げ方向には回転しない。このとき、チェーンC1の巻上げ状態に対応する。加えて、一方の係合突部61が遊転ニギリ70のフランジ部72と係合することで、遊転ニギリ70が軸方向(X方向)の一方側(X1側)に引き出されなくなる。このため、図示を省略する付勢バネがブレーキ機構を押圧する状態を維持できる。
【0026】
一方、たとえば切換ツマミ60の下側(Z2側)を右側に倒すと巻下げ用のラチェット爪が切換歯車と噛み合う。それにより、操作レバー50を回動させる動作を繰り返した場合、切換歯車は巻下げ方向には回転するが巻上げ方向には回転しない。このとき、チェーンC1の巻下げ状態に対応する。加えて、他方の係合突部61が遊転ニギリ70のフランジ部72と係合することで、遊転ニギリ70が軸方向(X方向)の一方側(X1側)に引き出されなくなる。このため、図示を省略する付勢バネがブレーキ機構を押圧する状態を維持できる。
【0027】
また、切換ツマミ60の下側(Z2側)を、巻上げ方向と巻下げ方向の間の位置である、中立位置に位置させると(この場合、操作レバー50の長手方向に沿う方向に切換ツマミ60を位置させる)、切換歯車に対して、巻上げ用のラチェット爪と、巻下げ用のラチェット爪とのいずれも、噛み合わない状態となる。それにより、操作レバー50を回動させる動作を行っても、チェーンC1の巻上げおよび巻下げのいずれの動作も実行されない、フリー(遊転)状態となる。このとき、一対の係合突部61のいずれも、遊転ニギリ70のフランジ部72と係合しない。そのため、遊転ニギリ70が軸方向(X方向)の一方側(X1側)に引き出すことが可能となり、図示を省略する付勢バネがブレーキ機構を押圧する状態を緩めることができる。
【0028】
また、遊転ニギリ70は、駆動軸35と共に回転可能な略円形のハンドル状の部分である。この遊転ニギリ70には、周方向に沿って凹凸を繰り返す握り部分71と、握り部分71の凹部よりも外径側に突出するフランジ部72とが設けられている。このフランジ部72に、上述した一対の係合突部61のいずれかが係合する場合には、遊転ニギリ70を軸方向(X方向)の一方側(X1側)に引き出すことができなくなる。このため、図示を省略する付勢バネがブレーキ機構を押圧する状態を維持できる。
【0029】
また、遊転ニギリ70は、巻上げ時および巻下げ時には、図2に示すように、軸方向(X方向)の他方側(X2側)に向かって押し込まれている。しかしながら、中立位置(中立状態)では、軸方向(X方向)の一方側(X1側)に引き出すことができる。遊転ニギリ70を軸方向(X方向)の一方側(X1側)に引き出した場合、不図示のブレーキ機構を付勢している付勢バネの押圧力が弱まることで、ブレーキ解除状態となり、手等でチェーンC1を把持しながら巻上げ側および巻下げ側のいずれの方向にも自由に引き出すことができる。
【0030】
しかしながら、上述した中立位置(中立状態)において、遊転ニギリ70を軸方向(X方向)の一方側(X1側)に引き出さずに他方側(X2側)に押し込んだ状態を維持したままでは、チェーンC1を巻上げ方向にしか引き出せない。
【0031】
<レバーホイスト用動力伝達装置について>
次に、上述したレバーホイスト10に固定されている、動力伝達機構100について、以下に説明する。この動力伝達機構100は、電動工具である電動ドライバー300から与えられる駆動力を、駆動軸35に伝達するための機器である。
【0032】
図4は、レバーホイスト10が備える動力伝達機構100の構成を示す側面図である。図5は、動力伝達機構100の構成を示す断面図である。図6は、動力伝達機構100の構成を示す分解斜視図である。
【0033】
図4から図6に示すように、動力伝達機構100は、レバーホイスト10の軸線方向(X方向)のうち、遊転ニギリ70側(X1側)ではなく、ギヤケース40側(X2側)に設けられている。この動力伝達機構100の後述する固定プレート220は、ギヤケース40と共に、たとえばステイボルトB1や袋ナットN1等の固定手段によって、フレーム32に対して固定されている。
【0034】
動力伝達機構100は、入力部110と、フリクションクラッチ機構120と、第1減速ギヤ機構130と、第2減速ギヤ機構150と、ワンウェイクラッチ機構W1と、連結切り離し機構D1とを有している。
【0035】
入力部110は、入力軸111と、軸ホルダ112とを備えている。入力軸111は、電動ドライバー300の駆動力が伝達される軸状の部材である。具体的には、入力軸111は、嵌合凹部111aと、固定プレート部111bとを有している(図7参照)。嵌合凹部111aは、工具先端の形状に対応した形状の凹部であり、その工具先端が回り止めされた状態で差し込まれる部分である。たとえば、電動ドライバー300に取り付けられている工具が六角レンチである場合には、嵌合凹部111aは、当該六角レンチに対応した六角穴となっている。また、固定プレート部111bは、後述する筒状支持部材122に対して、たとえばネジ等を介して固定されるプレート状の部分である。かかる固定プレート部111bの筒状支持部材122への固定により、電動ドライバー300からの駆動力を、フリクションクラッチ機構120側へ伝達可能となっている。
【0036】
また、軸ホルダ112は、入力軸111を保持するプレート状の部材である。この軸ホルダ112は、軸ホルダ112が軸線方向(X方向)の他方側(X2側)に抜けないように入力軸111を保持している。
【0037】
また、フリクションクラッチ機構120は、電動ドライバー300から定格より大きな所定トルク以上のトルクが付与された場合に、そのトルクの伝達を遮断する機構である。このフリクションクラッチ機構120は、たとえば図7に示すような構成となっている。図7は、フリクションクラッチ機構120の構成を示す断面図である。このフリクションクラッチ機構120は、支持スペーサ121と、筒状支持部材122と、押圧ネジ部材123と、皿バネ124と、摩擦ホイール125とを備えている。
【0038】
支持スペーサ121は、リング状に設けられているスペーサである。この支持スペーサ121は、軸ホルダ112の内筒段部112aに係止されると共に、筒状支持部材122の外周段部122aに係止される。それにより、支持スペーサ121は、軸ホルダ112と筒状支持部材122の間に挟み込まれる状態となるが、この支持スペーサ121を介して筒状支持部材122の軸方向(X方向)の他方側(X2側)における位置決めを行える。
【0039】
また、筒状支持部材122は、上述した入力軸111に対し、たとえばネジ等によって固定されることで、入力軸111と一体的に回転する部材である。この筒状支持部材122は、支持スペーサ121の内孔に嵌め込まれる筒状部材であり、その外周側に支持スペーサ121が係止される外周段部122aを備えている。また、筒状支持部材122の内筒部122bには、押圧ネジ部材123、皿バネ124および摩擦ホイール125が配置されるが、その内筒部122bには、押圧ネジ部材123の雄ネジ部123aと噛み合う雌ネジ部122cが形成されている。
【0040】
さらに、内筒部122bの一方側(X1側)には、内径側にフランジ状に突出する内周段部122dが設けられていて、その内周段部122dに摩擦ホイール125が係止されている。それにより、押圧ネジ部材123、皿バネ124および摩擦ホイール125が、軸方向(X方向)の一方側(X1側)へ移動するのが規制される。
【0041】
また、押圧ネジ部材123には、その外周面に上記の雌ネジ部122cと噛み合う雄ネジ部123aが設けられている。したがって、入力軸111および筒状支持部材122が巻上げ方向に回転すると、雄ネジ部123aは、雌ネジ部122cに対して、軸方向(X方向)の一方側(X1側)に向かうように捻じ込み可能となっている。また、押圧ネジ部材123の軸方向(X方向)の一方側(X1側)には摩擦面123bが設けられていて、その摩擦面123bは、皿バネ124との間で付勢力を及ぼしつつ、摩擦力を生じさせる部分となっている。
【0042】
また、皿バネ124は、内筒部122bにおいて、押圧ネジ部材123と摩擦ホイール125の間に配置されていて、これらの間に挟み込まれることで、両者に付勢力を及ぼしている。
【0043】
また、摩擦ホイール125は、軸方向(X方向)の一方側(X1側)が内周段部122dに受け止められると共に、軸方向(X方向)の他方側(X2側)が皿バネ124を受け止める部材である。この摩擦ホイール125は、筒状に設けられていて、その内筒部には、後述する入力軸131aと噛み合うギヤ部125bが設けられている。また、摩擦ホイール125の軸方向(X方向)の他方側(X2側)には摩擦面125cが設けられていて、その摩擦面125cは、皿バネ124との間で付勢力を及ぼしつつ、摩擦力を生じさせる部分となっている。
【0044】
なお、押圧ネジ部材123および摩擦ホイール125は、第1摺動部材に対応すると共に、皿バネ124は、第2摺動部材に対応する。しかしながら、皿バネ124が、第1摺動部材に対応すると共に、押圧ネジ部材123および摩擦ホイール125が、第2摺動部材に対応するものとしても良い。
【0045】
以上のような構成のフリクションクラッチ機構120においては、電動ドライバー300から巻上げ方向の定格よりも小さいトルクが作用すると、入力軸111および筒状支持部材122は一体的に回転する。しかしながら、押圧ネジ部材123の摩擦面123bは、皿バネ124によって付勢力が及ぼされている。電動ドライバー300から巻上げ方向の駆動力が与えられると、上記の付勢力によって、雄ネジ部123aが雌ネジ部122cに対し、軸方向(X方向)の一方側(X1側)に向かうように捻じ込まれるのを規制しつつ、摩擦面123bと皿バネ124の間の摩擦力、および皿バネ124と摩擦面125cの間の摩擦力の作用によって、そのトルクを摩擦ホイール125へと伝達する。そして、摩擦ホイール125のギヤ部125bと、第1減速ギヤ機構130の入力側キャリア131の入力軸131aとの間の噛み合いにより、そのトルクを、第1減速ギヤ機構130へと伝達する。
【0046】
また、上記のフリクションクラッチ機構120において、定格以上のトルクが作用すると、雄ネジ部123aが雌ネジ部122cに対し、軸方向(X方向)の一方側(X1側)に向かうように所定だけ捻じ込まれるが、所定以上捻じ込まれると、摩擦面123bと皿バネ124の間、および/または皿バネ124と摩擦面125cの間で、滑りが生じて、定格以上のトルクが伝達されない状態となる。それにより、定格以上の過負荷が、摩擦ホイール125および第1減速ギヤ機構130側へ伝達されるのが阻止されている。
【0047】
また、第1減速ギヤ機構130は、本実施の形態では、入力側キャリア131(図7参照)と、不図示の太陽ギヤと、不図示の遊星ギヤと、不図示のリング状部材の内周面に形成された内歯車等を備える遊星ギヤ機構となっている。なお、入力側キャリア131には、上記の摩擦ホイール125のギヤ部125bと噛み合う、入力軸131aが設けられている。
【0048】
たとえば、リング状部材が回転しない状態で、太陽ギヤに対して電動ドライバー300から駆動力が与えられると、遊星ギヤは太陽ギヤおよび内歯車との噛み合いによって自転しつつ太陽ギヤの周りを公転するものの、その際に、大きな減速比が得られる状態となっている。
【0049】
また、遊星ギヤを支持する、不図示の出力側キャリアは、上述した噛合部121aと同様の凹状の部分の内周面にギヤ部が形成された噛合部を有していて、その噛合部には、出力軸140のギヤ部141が噛み合っている。出力軸140は、第2減速ギヤ機構150を構成する、不図示の太陽ギヤと一体的に設けられている。
【0050】
なお、本実施の形態では、第2減速ギヤ機構150は、上述した第1減速ギヤ機構130と同様の構成となっている。具体的には、第2減速ギヤ機構150は、入力側キャリアと、太陽ギヤと、不図示の遊星ギヤと、不図示のリング状部材の内周面に形成された内歯車等を備える遊星ギヤ機構となっている。たとえば、リング状部材が回転しない状態で、上記の第1減速ギヤ機構130の出力側キャリアからの駆動力が出力軸140に伝達されると、第2減速ギヤ機構150の太陽ギヤが回転する。すると、第2減速ギヤ機構150の遊星ギヤは、この太陽ギヤおよび内歯車との噛み合いによって自転しつつ太陽ギヤの周りを公転するものの、その際に、大きな減速比が得られる状態となっている。
【0051】
また、第2減速ギヤ機構150の出力側キャリアは、上述した噛合部121aと同様の凹状の部分の内周面にギヤ部が形成された噛合部を有していて、その噛合部には、出力軸160のギヤ部161が噛み合っている。
【0052】
また、出力軸160は、上述した噛合部と噛み合うギヤ部161と、筒状に設けられている筒状部162とを有している。この筒状部162には、軸線方向(X方向)に沿って所定の長さを有するように切り欠かれた複数(たとえば180度間隔で2つ)のスリット163が設けられている。このスリット163には、摺動継手170の外周突起172が軸線方向(X方向)に摺動可能な状態で挿入されている。
【0053】
また、摺動継手170は、図8に示すようなワンウェイクラッチ機構W1の構成要素である。図8は、ワンウェイクラッチ機構W1の概略的な構成を示す断面図である。このワンウェイクラッチ機構W1は、上記の摺動継手170と、軸継手180と、付勢バネ190とを備えている。また、摺動継手170は、図9および図10に示すような連結切り離し機構D1の構成要素でもある。図9は、連結切り離し機構D1の概略的な構成を示す断面図であり、摺動継手170と軸継手180とが連結された状態を示している。また、図10は、連結切り離し機構D1の概略的な構成を示す断面図であり、摺動継手170と軸継手180とが切り離された状態を示している。この連結切り離し機構D1は、上記の摺動継手170と、軸継手180と、付勢バネ190と、遮断プレート200と、カムリング210とを有している。
【0054】
摺動継手170は、円筒状の筒状部171を有していて、その筒状部171の外周側には、当該筒状部171から外径側に突出する外周突起172が設けられている。外周突起172は、上記のスリット163に挿入されると共にスリット163を摺動する部分である。図11は、摺動継手170の構成を示す斜視図である。図11に示す構成では、外周突起172は一対設けられているが、外周突起172は3つ以上設けられていても良い。この外周突起172はスリット163に挿入されているものの、組付け時には外周突起172がスリット163から外れないように設けられている。したがって、摺動継手170は出力軸160と一体的に回転するものの、摺動継手170の軸線方向(X方向)の摺動によって、摺動継手170の外周突起172は、出力軸160のスリット163内で軸線方向に移動する。
【0055】
なお、外周突起172と入力押圧板部173の間には、後述する遮断プレート200が位置するための隙間S1が設けられている。
【0056】
また、摺動継手170には、円板状の入力押圧板部173が設けられている。入力押圧板部173は、筒状部171と同軸上に設けられていると共に、後述する軸継手180の出力押圧板部182と対向する部分である。この入力押圧板部173の外周側には、係合凸部174が設けられている。係合凸部174は、当該係合凸部174の内周側よりも入力押圧板部173の表面(当接面)から突出している部分である。
【0057】
この係合凸部174の周方向における一端側には、テーパ凸壁部174aが設けられていると共に、係合凸部174の周方向における他端側には、立上がり壁部174bが設けられている。テーパ凸壁部174aは、軸線方向(X方向)に対して若干傾斜する壁面であり、後述するテーパ凹壁部183aと当接する壁面である。また、立上がり壁部174bは、軸線方向(X方向)に沿うように設けられている壁面であり、後述する規制壁部183bと衝突する壁面である。
【0058】
なお、摺動継手170には、軸線方向(X方向)に沿う挿通孔(符号省略)も設けられている。挿通孔には、軸継手180のピン軸184が挿入される。そのため、摺動継手170は、軸継手180に対し、軸線方向(X方向)には移動するが、その軸線方向(X方向)以外の方向への移動が規制されている。
【0059】
図12は、軸継手180の構成を示す斜視図である。軸継手180は、円柱部181を備えていて、この円柱部181が上述した駆動軸35の他端凹部35aに差し込まれる。この円柱部181には、キー溝181aが設けられている。一方、駆動軸35の他端凹部35aには、上記のキー溝181aに挿入されるキーが設けられている。これらのキーおよびキー溝181aの嵌まり込みにより、軸継手180は駆動軸35と一体的に回転する。
【0060】
また、軸継手180には、上記の円柱部181と一体的な出力押圧板部182を備えている。出力押圧板部182は、円柱部181と同軸上に設けられていると共に、上述した入力押圧板部173と対向する部分である。この出力押圧板部182の外周側には、係合凹部183が設けられている。この係合凹部183は、出力押圧板部182の内周側よりも出力押圧板部182の表面(当接面)から凹んでいる部分である。
【0061】
この係合凹部183の周方向における一端側には、テーパ凹壁部183aが設けられていると共に、係合凹部183の周方向における他端側には、規制壁部183bが設けられている。テーパ凹壁部183aは、軸線方向(X方向)に対して若干傾斜する壁面であり、上述したテーパ凸壁部174aと当接する壁面である。このテーパ凹壁部183aの傾斜角度は、上記のテーパ凸壁部174aと同程度となっている。また、規制壁部183bは、軸線方向(X方向)に沿うように設けられている壁面であり、上述した立上がり壁部174bと衝突する壁面である。
【0062】
このため、通常は、係合凹部183に係合凸部174が嵌まり込んでいるが、電動ドライバー300から既定の回転方向とは逆向き(逆転方向)の回転トルクが作用すると、テーパ凸壁部174aが、付勢バネ190の付勢力に抗しつつテーパ凹壁部183aに沿って移動することで摺動継手170が軸線方向(X方向)の他方側(X2側)に移動する。それにより、電動ドライバー300からの、逆転方向の回転トルクを逃がすことが可能となっている。
【0063】
一方、通常、係合凹部183に係合凸部174が嵌まり込んでいる状態で、電動ドライバー300から既定の回転方向(正転方向)の回転トルクが作用すると、立上がり壁部174bと規制壁部183bとの衝突によって、摺動継手170から軸継手180へと回転トルクが伝達される。それにより、電動ドライバー300から与えられる正転方向の回転トルクによって、動力伝達機構100を介しての、チェーンC1の巻上げが可能となっている。
【0064】
なお、軸継手180には、ピン軸184も設けられている。ピン軸184は、摺動継手170の不図示の挿通孔に挿入される軸状の部分であり、その挿入によって、摺動継手170と軸継手180とが軸線方向(X方向)からずれてしまうのを防止している。
【0065】
また、付勢バネ190は、摺動継手170の筒状部171の内筒部(符号省略)に挿入されると共に、その内筒から軸線方向(X方向)の他方側(X2側)に突出している。この付勢バネ190は、たとえば圧縮バネであり、その他方側(X2側)が、出力軸160の内筒部(符号省略)に圧縮状態で挿入されている。そのため、この付勢バネ190の付勢力によって、係合凸部174が係合凹部183に嵌まり込んだ状態を維持し、電動ドライバー300から正転方向の回転トルクが作用した際に、立上がり壁部174bと規制壁部183bとの衝突状態を実現する。
【0066】
また、連結切り離し機構D1を構成する遮断プレート200は、径方向中央にリング孔201を有するリング状のプレートである。この遮断プレート200は、通常は、外周突起172と入力押圧板部173の間の隙間S1に位置している。しかも、リング孔201の半径は、隙間S1が位置する部位の筒状部171の半径よりも大きく設けられている。しかしながら、リング孔201の半径は、筒状部171の径方向中心から外周突起172の先端までの距離よりも小さく設けられている。したがって、通常の状態では、遮断プレート200が軸線方向(X方向)の他方側(X2側)に移動すると、摺動継手170は付勢バネ190の付勢力に抗しつつ、遮断プレート200によって軸線方向(X方向)の他方側(X2側)に押し込まれる。
【0067】
また、遮断プレート200の外周側からは、外径側に向かってカム突起202が突出している。カム突起202は、後述するカムリング210のカム溝211に入り込む凸状の部分である。このカム突起202は、遮断プレート200の周方向において、その外周から複数(たとえば180度間隔で2つ)突出している。
【0068】
なお、遮断プレート200は、レバーホイスト10や動力伝達機構100の他の部位に対して、相対的な回転が阻止されている。このような、遮断プレート200の回転を阻止するために、遮断プレート200には、たとえば適宜の孔部が設けられていて、その孔部に対し、たとえば第2減速ギヤ機構150側または固定プレート220側から、不図示の凸状部が挿入されている。
【0069】
また、連結切り離し機構D1を構成するカムリング210は、動力伝達機構100の中で、外部側から回転させることが可能なリング状の部材であり、遮断プレート200の外周側に位置している。このカムリング210の内周面には、上記のカム突起202が入り込むカム溝211が設けられている。図5に示すように、カム溝211は、軸線方向(X方向)に対して傾斜するように設けられている。したがって、作業者が、レバーホイスト10および動力伝達機構100の他の部位に対して、指でカムリング210を相対的に回転させると、遮断プレート200が軸線方向(X方向)に移動する。
【0070】
このようなカムリング210の回転によって、摺動継手170の係合凸部174と軸継手180の係合凹部183の嵌合が解かれる。このため、たとえばチェーンC1を手引する際に、駆動軸35からの回転が第2減速ギヤ機構150および第1減速ギヤ機構130側に伝達させない状態とすることが可能となる。それにより、チェーンC1を手引する際に、駆動軸35と共に第2減速ギヤ機構150および第1減速ギヤ機構130を回転させずに済むので、チェーンC1の手引き力を小さくすることが可能となる。
【0071】
また、カムリング210の外周側には、グリップ用突起212が設けられている。グリップ用突起212は、作業者が指でカムリング210を容易に回転させるために、動力伝達機構100の他の部位よりも外径側に突出している突起状の部分である。
【0072】
なお、カムリング210と第2減速ギヤ機構150の間には、スペーサSP1が配置されている。このスペーサSP1の内周側には、内径側に向かってリング状のフランジ部SP1aが突出していて、そのフランジ部SP1aには、分割スペーサSP2の軸方向(X方向)の他端側(X2側)が取り付けられている。分割スペーサSP2は、平面視したときに円弧状をなす湾曲した板状部材であり、たとえば円周方向に所定の個数(図6では3つ)設けられている。この分割スペーサSP2の軸方向(X方向)の一端側(X1側)は、固定プレート220に取り付けられている。これらスペーサSP1、分割スペーサSP2の存在により、連結切り離し機構D1や出力軸160を配置するための空間が確保されている。
【0073】
また、カムリング210の回転位置を保持するために、回転位置保持部材を設けるようにしても良い。かかる回転位置保持部材としては、たとえば、先端からピンが突出可能なプランジャを設けると共に、そのプランジャのピンが入り込むことが可能な凹部(例えば平面視したときに円状をなす凹部)を、スペーサSP1または固定プレート220のうちプランジャが対向する部位に設けるようにしても良い。
【0074】
また、固定プレート220は、上述したフレーム32に対して、たとえばステイボルトやナット等の固定手段を介して固定される部材である。また、固定プレート220には、動力伝達機構100の他の部材が固定されていて、当該動力伝達機構100の全体を支持している。
【0075】
<作用について>
以上のような構成の動力伝達機構100においては、電動ドライバー300からの駆動力が、入力軸111に伝達され、さらにフリクションクラッチ機構120に伝達された後に、第1減速ギヤ機構130へと伝達される。ここで、定格よりも大きな所定トルク以上のトルクが電動ドライバー300から入力されると、雄ネジ部123aが雌ネジ部122cに対し、皿バネ124の付勢力に抗して所定以上捻じ込まれた後に、摩擦面123bと皿バネ124の間、および/または皿バネ124と摩擦面125cの間で滑りが生じる。そのため、フリクションクラッチ機構120から出力軸140への、過負荷の伝達が防止される。
【0076】
上記の第1減速ギヤ機構130に伝達された駆動力が、所定の減速比で減速された後に、出力軸140から第2減速ギヤ機構150へと伝達される。この第2減速ギヤ機構150においても所定の減速比で減速され、その後に出力軸160から摺動継手170へと伝達される。
【0077】
ここで、電動ドライバー300から正転方向への駆動力が与えられている場合には、摺動継手170の立上がり壁部174bと、軸継手180の規制壁部183bとの衝突により、摺動継手170から軸継手180へと駆動力が伝達され、駆動軸35を回転させることが可能となる。このため、電動ドライバー300を作動させて、レバーホイスト10の巻上動作を行える。
【0078】
しかしながら、電動ドライバー300から逆転方向の駆動力が与えられると、摺動継手170は、付勢バネ190の付勢力に抗しながら、摺動継手170のテーパ凸壁部174aは、軸継手180のテーパ凹壁部183aに対して摺動して(乗り上げて)、摺動継手170から軸継手180への駆動力伝達を遮断する。それにより、電動ドライバー300の操作ミスによる、レバーホイスト10の破損を防止している。
【0079】
また、チェーンC1を手引きする場合、カムリング210を規定の方向に回転させる。すると、遮断プレート200が軸線方向(X方向)の他方側(X2側)に移動し、それによって、軸継手180の係合凹部183と、摺動継手170の係合凸部174の間の嵌まり込みが解除される。そのため、チェーンC1の手引きの際に駆動軸35および軸継手180が回転しても、その回転力が、摺動継手170へは伝達されない状態となる。そのため、チェーンC1の手引きの際に、比較的大きな減速比の第1減速ギヤ機構130および第2減速ギヤ機構150を回転させずに済み、チェーンC1の手引きに要する力を軽減することが可能となる。
【0080】
<効果について>
以上のような構成のレバーホイスト10は、手動により回動操作される操作レバー50と、該操作レバー50からの動力で回転するロードシーブ33と、該ロードシーブ33を回転自在に支持する一対のフレーム31,32と、ロードシーブ33に対して操作レバー50からの駆動力を伝達する駆動軸35と、ロードシーブ33に掛け回されたチェーンC1を早送りすると共に、駆動軸35の一方側(X1側)の端部に配置されたロードシーブ33を早回しするための早回しニギリ70と、を備えている。また、レバーホイスト10は、駆動軸35の他方側(X2側)の端部に連結される摺動継手170および軸継手180(連結手段)、および外部の電動ドライバー300(駆動手段)からの駆動力を減速した状態で摺動継手170および軸継手180(連結手段)に出力する第1減速ギヤ機構130および第2減速ギヤ機構150(減速機構)を備える動力伝達機構100を備えている。
【0081】
このような構成のレバーホイスト10では、動力伝達機構100は、軸線方向(X方向)の他方側(X2側)の端部に配置されているので、外部の電動ドライバー300(駆動手段)からの駆動力を伝達する動力伝達機構100がレバーホイスト10に設けられていても、操作レバー50の操作を行うことが可能となる。したがって、たとえば電動ドライバー300(駆動手段)を用いてチェーンC1の巻上げ作業を行った後に、操作レバー50を操作して、チェーンC1の張力等の確認をしながらのチェーンC1の巻上げ等の作業を行い易くなり、作業者の作業の利便性を向上させることが可能となる。
【0082】
また、本実施の形態では、動力伝達機構100は、第1減速ギヤ機構130および第2減速ギヤ機構150(減速機構)から駆動軸35へ駆動力を伝達させる連結状態と、第1減速ギヤ機構130および第2減速ギヤ機構150(減速機構)から駆動軸35への駆動力の伝達を不可とする非連結状態とを切り替える連結切り離し機構D1を備えている。
【0083】
このため、駆動軸35へ駆動力を伝達しない非連結状態へと切り替えることにより、チェーンC1を手引する際に、駆動軸35と共に第2減速ギヤ機構150および第1減速ギヤ機構130(減速機構)を回転させずに済むので、チェーンC1の手引き力を小さくすることが可能となる。
【0084】
また、本実施の形態では、連結切り離し機構D1は、駆動軸35と一体的に回転すると共に当該駆動軸35に取り付けられる軸継手180と、第1減速ギヤ機構130および第2減速ギヤ機構150(減速機構)からの駆動力が伝達されると共に軸継手180と噛み合い状態で第1減速ギヤ機構130および第2減速ギヤ機構150(減速機構)からの電動ドライバー300(駆動手段)の駆動力を伝達する摺動継手170と、を備える。また、連結切り離し機構D1は、軸継手180と摺動継手170との間の噛み合いを手動操作により解除可能としている。
【0085】
このような構成のレバーホイスト10では、連結切り離し機構D1を用いて軸継手180と摺動継手170の間の噛み合いを解除することにより、すなわち遊転ニギリの操作により駆動軸を遊転状態にしてチェーンC1を手引する際に、駆動軸35と共に第2減速ギヤ機構150および第1減速ギヤ機構130(減速機構)を回転させずに済むので、チェーンC1の手引き力を小さくすることが可能となる。
【0086】
また、本実施の形態では、連結切り離し機構D1は、駆動軸35の軸線方向(X方向)の他方側に向けて摺動継手170を押圧し、駆動軸35、第1減速ギヤ機構130および第2減速ギヤ機構150(減速機構)に対する回転が不能な状態で配置されていると共に、外周側に向かって突出するカム突起202を備える遮断プレート200と、遮断プレート200の外周側に配置され、内周面にカム突起202が入り込むカム溝211を有するカムリング210と、を備えている。そして、カムリング210は、動力伝達機構100に対して相対的に回転させられることで、軸継手180と摺動継手170との間の噛み合いを解除する。
【0087】
このような構成とすることで、作業者は、外部からカムリング210を回転させるだけで、軸継手180と摺動継手170との間の噛み合いを解除することが可能となる。そのため、チェーンC1を手引する際に、そのチェーンC1の手引き力を容易に軽減することが可能となる。
【0088】
また、本実施の形態では、連結切り離し機構D1は、駆動軸35と一体的に回転すると共に当該駆動軸35に取り付けられる軸継手180と、第1減速ギヤ機構130および第2減速ギヤ機構150(減速機構)からの駆動力が伝達されると共に軸継手180と噛み合い状態で第1減速ギヤ機構130および第2減速ギヤ機構150(減速機構)からの電動ドライバー300(駆動手段)の駆動力を伝達する摺動継手170と、を備える。

また、動力伝達機構100は、摺動継手170が規定の回転方向である正転方向に回転した際には軸継手180への駆動力の伝達を行う一方、正転方向とは逆の逆転方向に回転した際には摺動継手170と軸継手180との間の噛み合いの解除によって、摺動継手170からの軸継手180への駆動力の伝達を行わないワンウェイクラッチ機構W1を備える。
【0089】
このように、ワンウェイクラッチ機構W1を備えることで、電動ドライバー300(駆動手段)から逆転方向の駆動力が与えられると、摺動継手170から軸継手180への駆動力伝達が遮断される。それにより、電動ドライバー300の操作ミスによる、レバーホイスト10の破損を防止可能となる。
【0090】
また、本実施の形態では、電動ドライバー300(駆動手段)と第1減速ギヤ機構130および第2減速ギヤ機構150(減速機構)の間には、相対的に摺動可能な押圧ネジ部材123(第1摺動部材)と皿バネ124(第2摺動部材)、および相対的に摺動可能なおよび摩擦ホイール125(第1摺動部材)と皿バネ124(第2摺動部材)とを備えるフリクションクラッチ機構が設けられていて、フリクションクラッチ機構120は、電動ドライバー300(駆動手段)から定格より大きな所定トルク以上のトルクが入力された際に、押圧ネジ部材123(第1摺動部材)と皿バネ124(第2摺動部材)の間、および/または摩擦ホイール125(第1摺動部材)と皿バネ124(第2摺動部材)の間での滑りによって、第1減速ギヤ機構130および第2減速ギヤ機構150(減速機構)へのトルクの伝達を遮断している。
【0091】
このように、ワンウェイクラッチ機構W1を備えることで、定格よりも大きな所定トルク以上のトルクが駆動手段(電動ドライバー300)から入力されても、押圧ネジ部材123(第1摺動部材)と皿バネ124(第2摺動部材)の間、および/または摩擦ホイール125(第1摺動部材)と皿バネ124(第2摺動部材)の間で滑りが生じる。そのため、フリクションクラッチ機構120から出力軸140への、過負荷(トルク)の伝達が防止されるので、レバーホイスト10の破損を防止することが可能となる。
【0092】
<変形例>
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明はこれ以外にも種々変形可能となっている。以下、それについて述べる。
【0093】
上述の実施の形態では、第1減速ギヤ機構130と第2減速ギヤ機構150の2つの減速ギヤ機構を備えている。しかしながら、減速ギヤ機構は、1つのみ存在しても良く、3つ以上存在しても良い。
【符号の説明】
【0094】
10…レバーホイスト、20…上フック、25…下フック、30…ホイスト本体、31,32…フレーム、33…ロードシーブ、35…駆動軸、40…ギヤケース、41…挿通孔、50…操作レバー、60…切換ツマミ、61…係合突部、70…遊転ニギリ、71…握り部分、72…フランジ部、100…動力伝達機構、110…入力部、111…入力軸、111a…嵌合凹部、111b…固定プレート部、112…軸ホルダ、120…フリクションクラッチ機構、121…支持スペーサ、121a…噛合部、122…筒状支持部材、122a…外周段部、122b…内筒部、122c…雌ネジ部、122d…内周段部、123…押圧ネジ部材(第1摺動部材に対応)、123a…雄ネジ部、123b…摩擦面、124…皿バネ、125…摩擦ホイール、125b…ギヤ部、125c…摩擦面、130…第1減速ギヤ機構(減速機構の一部に対応)、131…入力側キャリア、131a…入力軸、140…出力軸、141…ギヤ部、150…第2減速ギヤ機構(減速機構の一部に対応)、160…出力軸、161…ギヤ部、162…筒状部、163…スリット、170…摺動継手(連結手段の一部に対応)、171…筒状部、172…外周突起、173…入力押圧板部、174…係合凸部、174a…テーパ凸壁部、174b…立上がり壁部、180…軸継手(連結手段の一部に対応)、181…円柱部、181a…キー溝、182…出力押圧板部、183…係合凹部、183a…テーパ凹壁部、183b…規制壁部、184…ピン軸、190…付勢バネ、200…遮断プレート、201…リング孔、202…カム突起、210…カムリング、211…カム溝、212…グリップ用突起、220…固定プレート、300…電動ドライバー(駆動手段に対応)、B1…ステイボルト(連結手段の一部に対応)、C1…チェーン、D1…連結切り離し機構、N1…袋ナット、S1…隙間、SP1…スペーサ、SP1a…フランジ部、SP2…分割スペーサ、W1…ワンウェイクラッチ機構
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