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特開2024-114990可変カニューレボディ剛性を有する熱成形カニューレ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114990
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】可変カニューレボディ剛性を有する熱成形カニューレ
(51)【国際特許分類】
   A61M 60/857 20210101AFI20240816BHJP
   A61M 60/13 20210101ALI20240816BHJP
   A61M 60/135 20210101ALI20240816BHJP
   A61M 60/237 20210101ALI20240816BHJP
   A61M 60/414 20210101ALI20240816BHJP
   A61M 60/806 20210101ALI20240816BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
A61M60/857
A61M60/13
A61M60/135
A61M60/237
A61M60/414
A61M60/806
A61M25/00 552
A61M25/00 620
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024106538
(22)【出願日】2024-07-02
(62)【分割の表示】P 2023022150の分割
【原出願日】2017-01-30
(31)【優先権主張番号】62/288,914
(32)【優先日】2016-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】510121444
【氏名又は名称】アビオメド インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】タオ ジェンホン
(72)【発明者】
【氏名】ザリンズ クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ムラーズ ディオン
(72)【発明者】
【氏名】ボーン ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ベッカー ジュリウス スティーブン
(57)【要約】
【課題】ガイドワイヤ上で患者の動脈系中へのカニューレのバックロードを容易にするように構成されている改良されたカニューレの提供。
【解決手段】経皮ポンプを支持するカニューレは、第一の曲げ弾性率を有する近位セクションを含むことができる。カニューレは、第一の曲げ弾性率とは異なる曲げ弾性率を有する1つまたは複数の遠位セクションを含むことができる。材料およびカニューレの長さに沿ったその配置は、曲げ特性に影響するように選択することができる。これにより、たとえば、ガイドワイヤを押し退けることなく、所望の位置へカニューレを効果的に配置することが可能になる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位開口部、近位セクション、第一の遠位セクション、遠位開口部および該遠位開口部と該近位開口部との間に延びるルーメンを有するカニューレ;ならびに
該近位開口部に結合され、経皮ポンプが患者の血管系に配置されたときに該カニューレの該ルーメンを通して血液をポンプするように構成された、該経皮ポンプ;
を含み、
該カニューレが、該近位セクションと該第一の遠位セクションとの間の第一の移行ゾーンを有し、
該近位セクションが、その長さに沿って一定の第一の曲げ弾性率を有し、該第一の遠位セクションが、その長さに沿って一定の、該第一の曲げ弾性率よりも小さい第二の曲げ弾性率を有し、
該近位セクションが、第一の平面において第一の湾曲部を形成し、該第一の遠位セクションが、該第一の平面とは異なる第二の平面において第二の湾曲部を形成し、
該カニューレの該近位セクションが、第一の材料で作製された近位内壁および該第一の材料とは異なる第二の材料で作製された近位外壁を含む、
経皮ポンプシステム。
【請求項2】
第一の移行ゾーンが融着された移行ゾーンである、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
第一の移行ゾーンが熱融着された移行ゾーンである、請求項2記載のシステム。
【請求項4】
ガイドワイヤの長さの少なくとも一部に沿って第三の曲げ弾性率を有する、該ガイドワイヤ
をさらに含み、第一の曲げ弾性率が、カニューレの座屈力を増すように構成され、第二の曲げ弾性率が、該第三の曲げ弾性率より小さいか等しい、
請求項1~3のいずれか一項記載のシステム。
【請求項5】
遠位開口部が、右心室に挿入されるように構成されている、請求項1~4のいずれか一項記載のシステム。
【請求項6】
カニューレの第一の遠位セクションが、第一の材料とは異なる第三の材料で作製された第一の遠位内壁と、第二の材料および該第三の材料とは異なる第四の材料で作製された第一の遠位外壁とを含む、請求項1~5のいずれか一項記載のシステム。
【請求項7】
第一の曲げ弾性率が23,000psi以上であり、第二の曲げ弾性率が15,000psi以下である、請求項1~6のいずれか一項記載のシステム。
【請求項8】
第一の曲げ弾性率が10,000psiよりも大きく、第二の曲げ弾性率が10,000psiよりも小さい、請求項1~7のいずれか一項記載のシステム。
【請求項9】
カニューレの第一の遠位セクションが、第一の材料で作製された第一の遠位内壁と、第二の材料とは異なる第三の材料で作製された第一の遠位外壁とを含む、請求項1~5および7~8のいずれか一項記載のシステム。
【請求項10】
カニューレが、内壁および外壁ならびに該内壁と該外壁との間に位置する強化コイルを含み、該強化コイルが一定のピッチ長を有する、請求項1~9のいずれか一項記載のシステム。
【請求項11】
カニューレが、内壁および外壁ならびに該内壁と該外壁との間に位置する強化コイルを含み、該強化コイルが可変ピッチ長を有する、請求項1~9のいずれか一項記載のシステム。
【請求項12】
近位セクションの長さがカニューレの長さの10%~50%である、請求項1~11のいずれか一項記載のシステム。
【請求項13】
カニューレが、第一の遠位セクションと遠位端との間の第二の遠位セクション、および該第一の遠位セクションと該第二の遠位セクションとの間の第二の融着された移行ゾーンを含む、請求項1~12のいずれか一項記載のシステム。
【請求項14】
第二の遠位セクションが、第三の材料で作製された第二の遠位内壁と第四の材料で作製された第二の遠位外壁とを含み、該第四の材料の曲げ弾性率が、該第三の材料の曲げ弾性率よりも大きい、請求項1~13のいずれか一項記載のシステム。
【請求項15】
第二の遠位セクションが、第一の材料で作製された第二の遠位内壁と第四の材料で作製された第二の遠位外壁とを含み、該第四の材料の曲げ弾性率が、該第一の材料の曲げ弾性率よりも大きい、請求項1~13のいずれか一項記載のシステム。
【請求項16】
第二の遠位セクションの長さがカニューレの長さの10~40%である、請求項1~15のいずれか一項記載のシステム。
【請求項17】
経皮ポンプに結合するように構成された近位開口部;
遠位開口部;
該遠位開口部と該近位開口部との間に延びるルーメンであって、該経皮ポンプが患者の血管系内で作動している時に該近位開口部と該遠位開口部との間で血液を圧送するように構成されている、該ルーメン;
その長さに沿って一定の第一の曲げ弾性率を有する近位セクション;および
該近位セクションに融着された第一の遠位セクション
を含み、該第一の遠位セクションが、その長さに沿って一定の、該第一の曲げ弾性率よりも小さい第二の曲げ弾性率を有し、
該近位セクションが、第一の平面において第一の湾曲部を形成し、該第一の遠位セクションが、該第一の平面とは異なる第二の平面において第二の湾曲部を形成し、
該カニューレの該近位セクションが、第一の材料で作製された近位内壁および該第一の材料とは異なる第二の材料で作製された近位外壁を含む、
経皮ポンプのためのカニューレ。
【請求項18】
ガイドワイヤの長さの少なくとも一部に沿って第三の曲げ弾性率を有する、該ガイドワイヤ
をさらに含み、第一の曲げ弾性率が、カニューレの座屈力を増すように構成され、第二の曲げ弾性率が、該第三の曲げ弾性率より小さいか等しい、請求項17記載のカニューレ。
【請求項19】
カニューレの遠位開口部が、右心室に挿入されるように構成されている、請求項17または18項記載のカニューレ。
【請求項20】
カニューレの第一の遠位セクションが、第一の材料とは異なる第三の材料で作製された第一の遠位内壁と、第二の材料および該第三の材料とは異なる第四の材料で作製された第一の遠位外壁とを含む、請求項17~19のいずれか一項記載のカニューレ。
【請求項21】
カニューレの第一の遠位セクションが、第一の材料で作製された第一の遠位内壁と、第二の材料とは異なる第三の材料で作製された第一の遠位外壁とを含む、請求項17~19のいずれか一項記載のカニューレ。
【請求項22】
第一の曲げ弾性率が23,000psi以上であり、第二の曲げ弾性率が15,000psi以下である、請求項17~21のいずれか一項記載のカニューレ。
【請求項23】
第一の曲げ弾性率が10,000psiよりも大きく、第二の曲げ弾性率が10,000psiよりも低い、請求項17~22のいずれか一項記載のカニューレ。
【請求項24】
内壁および外壁ならびに該内壁と該外壁との間に位置する強化コイルを含み、該強化コイルが一定のピッチ長を有する、請求項17~23のいずれか一項記載のカニューレ。
【請求項25】
内壁および外壁ならびに該内壁と該外壁との間に位置する強化コイルを含み、該強化コイルが可変ピッチ長を有する、請求項17~23のいずれか一項記載のカニューレ。
【請求項26】
近位セクションの長さがカニューレの長さの10%~50%である、請求項17~24のいずれか一項記載のカニューレ。
【請求項27】
第一の遠位セクションと遠位端との間の第二の遠位セクション、および該第一の遠位セクションと該第二の遠位セクションとの間の融着された移行ゾーンを含む、請求項17~26のいずれか一項記載のカニューレ。
【請求項28】
第二の遠位セクションが、第三の材料で作製された第二の遠位内壁と第四の材料で作製された第二の遠位外壁とを含み、該第四の材料の曲げ弾性率が、該第三の材料の曲げ弾性率よりも大きい、請求項17~27のいずれか一項記載のカニューレ。
【請求項29】
第二の遠位セクションが、第一の材料で作製された第二の遠位内壁と第四の材料で作製された第二の遠位外壁とを含み、該第四の材料の曲げ弾性率が、該第一の材料の曲げ弾性率よりも大きい、請求項17~27のいずれか一項記載のカニューレ。
【請求項30】
第二の遠位セクションの長さがカニューレの長さの10~40%である、請求項17~29のいずれか一項記載のカニューレ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連技術の相互参照
本出願は、一定の壁厚さを有しながらも遠位の可撓性が増すカニューレに関する米国特許第6,007,478号と関連し、この特許の内容が全体として参照により本明細書に組み入れられる。本出願はまた、内容が全体として参照により本明細書に組み入れられる、2016年1月29日に出願された米国特許仮出願第62/288,914号への優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
背景
循環系または心臓内の位置の間で血液を送り出すために、血液ポンプアセンブリが循環系に導入される。たとえば、血液ポンプアセンブリが動脈系中に配備されると、血液ポンプアセンブリは、左心室から血液を引き出し、その血液を大動脈に押し込む。もう1つの例において、血液ポンプが静脈系中に配備されると、血液ポンプは、下大静脈から血液を引き出し、または右心房または上大静脈から血液を引き出し、その血液を肺動脈に押し込む。血液ポンプアセンブリは、心臓処置中に外科的または経皮的に導入される。1つの手法において、静脈系または右心にアクセスするとき、ポンプアセンブリは、アクセスシース(イントロデューサ)およびガイドワイヤを使用するカテーテル挿入処置により、大腿静脈を介して挿入される。
【0003】
カテーテル挿入処置中、イントロデューサを静脈切開部に通して大腿静脈に挿入して挿入経路を形成する。挿入経路は、配置ガイドワイヤを動脈中に進めるために使用される。たとえば、挿入経路は、配置ガイドワイヤを右心に通して肺動脈中に進めるために使用される。ガイドワイヤを動脈(たとえば肺動脈)に挿入したならば、ポンプアセンブリをガイドワイヤの近位端にバックロードし、ガイドワイヤに沿って患者の中に押し込む。ポンプアセンブリは、インペラ、カニューレおよびカテーテルを含むポンプヘッドを含み得る。
【0004】
ポンプアセンブリは一般に、ガイドワイヤの近位端をカニューレの遠位端に挿入し、次いで、ポンプヘッドが指定の位置に配されるまでカニューレをガイドワイヤ上で遠位方向に進めることを含む、バックロード(backloading)と呼ばれるプロセスによって装填される。ポンプアセンブリのバックロードは、処置の過程中にガイドワイヤが患者内で所定の位置にとどまることを許す。しかし、一般に使用されるポンプアセンブリのカニューレは曲がりくねった形を有し、状況によっては、カニューレの剛性が、ガイドワイヤを押し退けることなく、または処置の長さを増すことなく、カニューレがガイドワイヤ上を遠位方向に進むことを妨げるおそれがある。たとえば、下大静脈からの血液を肺動脈中の開口に送り出すシステムの場合、一般に使用されるカニューレは、一定の剛性と、2つの「S」字ターンを有する3D形状とを有する。これは、カニューレおよびポンプアセンブリのバックロードおよび患者への挿入を特に困難にする可能性がある。たとえば挿入中にカニューレを曲げるために必要な力は、3点曲げ剛性試験中にカニューレサンプルの15mmのたわみを得るために必要なニュートン単位の力として計測することができる。
【発明の概要】
【0005】
経皮ポンプを支持するカニューレは、第一の曲げ弾性率を有する近位セクションを含む。カニューレはまた、第一の曲げ弾性率とは異なる曲げ弾性率を有する1つまたは複数の遠位セクションを含む。曲げ弾性率は、ガイドワイヤを押し退けることなく、所望の位置へカニューレを効果的に配置することを可能にするように構成されている。
【0006】
本明細書に記載されるシステム、方法および装置は、ガイドワイヤ上で患者の静脈系中へのポンプアセンブリのバックロードを容易にするように構成されている改良されたカニューレを提供する。本明細書に開示されるカニューレは、動脈切開部を通して、または静脈切開術もしくは他の処置により、患者の系に挿入することができる。カニューレは、ガイドワイヤを押し退けることなく、心臓(たとえば患者の右心)内の所望の位置へのカニューレのバックロードを容易にするために、その長さに沿って変化する剛性を有する。特に、カニューレは、その遠位端が、ガイドワイヤを不必要に押し退けることなくガイドワイヤに追従するのに十分なほど可撓性であるが、その近位端が、バックロード中にカニューレを所定の位置に誘導するのに十分なほど剛性である。この可変剛性を達成するために、カニューレの近位セクションは、ガイドワイヤの遠位セクションの材料または材料の組み合わせよりも剛性である材料または材料の組み合わせで作られ得る。遠位セクションのより低い剛性は、カニューレがガイドワイヤの経路をたどることを支援し、近位セクションのより高い剛性は、カニューレを座屈させるために必要な力を増す。初期の送り出しを容易にすることに加えて、近位セクションのより高い剛性は、カニューレが患者内部に挿入されたならば、カニューレをより誘導しやすくし、それにより、挿入中に近位端に加えるのに要する力の量を減らす。カニューレの近位セクションの剛性を変化させることによって必要とされる力の量を減らすことはまた、挿入中のカニューレの捻転または座屈の可能性を減らす。カニューレ剛性を変化させることはまた、特定の患者の解剖学的構造への適応性および適合を改善することにより、または患者解剖学的構造のより広い変化への適合を改善することにより、送り出し時間の短縮に寄与する。改良されたカニューレは、複雑な、または曲がりくねった形状を有するカニューレ、たとえば、IMPELLA RP(登録商標)ポンプまたは右心中で(たとえば下大静脈と肺動脈との間で)使用されるように適合された任意の他のポンプとで使用されるカニューレとして特に役立つ。
【0007】
本明細書に開示される改良されたカニューレはさらなる利点をいくつか提供することができる。たとえば、カニューレの異なる部分が異なる剛性を有するようにカニューレの剛性を変化させることは、カニューレを特定の患者の解剖学的構造により良く合わせることを許し、このより良好なフィットが、送り出し時間を短縮するのに役立つ。さらに、可変剛性カニューレは、製造可能性を改善することができ、かつパーツまたはプロセスに関してより大きな許容差をより良く受け入れることができる。
【0008】
1つの局面において、経皮ポンプの挿入のためのシステムは、近位吸入口、近位セクション、第一の遠位セクションおよび遠位吐出口を有するカニューレを含む。システムはまた、近位吸入口に結合された経皮ポンプ、および近位セクションと第一の遠位セクションとの間の移行ゾーンを含む。近位セクションは、第一の曲げ弾性率を有し、第一の遠位セクションは、第一の曲げ弾性率よりも小さい第二の曲げ弾性率を有する。
【0009】
特定の実施形態において、移行ゾーンは融着された移行ゾーンである。いくつかの実施形態において、融着された移行ゾーンは、10センチメートルまでの長さを有し得る。移行ゾーンの長さにかけて材料特性が徐々に変化し得る。
【0010】
特定の実施形態において、融着された移行ゾーンは熱融着された移行ゾーンである。
【0011】
特定の実施形態において、第一の曲げ弾性率は、カニューレの座屈力を増すように構成され、第二の曲げ弾性率は、カニューレがバックロードされるガイドワイヤの曲げ弾性率と一致する(たとえば近似する)またはそれ未満であるように構成されている。いくつかの実施形態において、第二の曲げ弾性率は、カニューレがバックロードされるガイドワイヤの曲げ弾性率よりも有意に低くなるように構成されてもよい。
【0012】
特定の実施形態において、遠位吐出口は、心室に挿入されるように構成されている。いくつかの実施形態において、遠位吐出口は、右心を通して肺動脈に挿入されるように構成されている。
【0013】
特定の実施形態において、カニューレの近位セクションは、第一の材料で作製された近位内壁と第二の材料で作製された近位外壁とを含み、第二の材料の曲げ弾性率は、第一の材料の曲げ弾性率よりも大きい。
【0014】
特定の実施形態において、第一の曲げ弾性率は21,000psiよりも大きく、第二の曲げ弾性率は21,000psiよりも低い。いくつかの実施形態において、第一の曲げ弾性率は23,000psi~29,000psiであり、第二の曲げ弾性率は15,000psi~21,000psiである。いくつかの実施形態において、第一の曲げ弾性率は20,000psi~35,000psiであり、第二の曲げ弾性率は5,000psi~15,000psiである。
【0015】
特定の実施形態において、カニューレの第一の遠位セクションは、第一の材料で作製された第一の遠位内壁と第二の材料で作製された第一の遠位外壁とを含み、第二の材料の曲げ弾性率は、第一の材料の曲げ弾性率よりも大きい。
【0016】
特定の実施形態において、カニューレは、内壁および外壁ならびに内壁と外壁との間に位置する強化コイルを含む。いくつかの実施形態において、強化コイルは一定のピッチ長を有する。
【0017】
特定の実施形態において、近位セクションの長さはカニューレの長さの約10%~50%である。
【0018】
特定の実施形態において、カニューレは、第一の遠位セクションと遠位端との間に遠位セクションを含む。いくつかの実施形態において、第一の遠位セクションと遠位端との間の第二の遠位セクション。特定の実施形態においては、第一の遠位セクションと第二の遠位セクションとの間に第二の融着移行部がある。いくつかの実施形態においては、第一の遠位セクションと第二の遠位セクションとの間に第二の熱融着移行部がある。
【0019】
特定の実施形態において、第二の遠位セクションの長さはカニューレの長さの約10~40%である。
【0020】
特定の実施形態において、近位セクションの第一の材料は熱可塑性ポリウレタンである。いくつかの実施形態において、近位セクションの第一の材料はTT1065(商標)ポリウレタンである。特定の実施形態において、遠位セクションの第二の材料は熱可塑性ポリウレタンである。いくつかの実施形態において、遠位セクションの第二の材料はTT1055(商標)ポリウレタンである。
【0021】
もう1つの局面において、経皮ポンプを挿入するためにカニューレが使用され、カニューレは、経皮ポンプに結合された近位吸入口、第一の曲げ弾性率を有する近位セクション、および近位セクションに熱融着された第一の遠位セクションを含み、第一の遠位セクションは、第一の曲げ弾性率よりも小さい第二の曲げ弾性率を有する。
【0022】
特定の実施形態において、第一の曲げ弾性率は、カニューレの座屈力を増すように構成され、第二の曲げ弾性率は、カニューレがバックロードされるガイドワイヤの曲げ弾性率と一致するように構成されている。
【0023】
特定の実施形態において、移行ゾーンは融着された移行ゾーンである。
【0024】
特定の実施形態において、融着された移行ゾーンは熱融着された移行ゾーンである。
【0025】
特定の実施形態において、第一の曲げ弾性率は、カニューレの座屈力を増すように構成され、第二の曲げ弾性率は、カニューレがバックロードされるガイドワイヤの曲げ弾性率と一致する(たとえば近似する)ように構成されている。
【0026】
特定の実施形態において、遠位吐出口は、心室に挿入されるように構成されている。いくつかの実施形態において、遠位吐出口は、右心室に挿入されるように構成されている。
【0027】
特定の実施形態において、カニューレの近位セクションは、第一の材料で作製された近位内壁と第二の材料で作製された近位外壁とを含み、第二の材料の曲げ弾性率は、第一の材料の曲げ弾性率よりも大きい。
【0028】
特定の実施形態において、第一の曲げ弾性率は21,000psiよりも大きく、第二の曲げ弾性率は21,000psiよりも低い。いくつかの実施形態において、第一の曲げ弾性率は23,000psi~29,000psiであり、第二の曲げ弾性率は15,000psi~21,000psiである。いくつかの実施形態において、第一の曲げ弾性率は20,000psi~35,000psiであり、第二の曲げ弾性率は5,000psi~15,000psiである。
【0029】
特定の実施形態において、カニューレの第一の遠位セクションは、第一の材料で作製された第一の遠位内壁と第二の材料で作製された第一の遠位外壁とを含み、第二の材料の曲げ弾性率は、第一の材料の曲げ弾性率よりも大きい。
【0030】
特定の実施形態において、カニューレは、内壁および外壁ならびに内壁と外壁との間に位置する強化コイルを含む。いくつかの実施形態において、強化コイルは一定のピッチ長を有する。
【0031】
特定の実施形態において、近位セクションの長さはカニューレの長さの約10%~50%である。
【0032】
特定の実施形態において、カニューレは、第一の遠位セクションと遠位端との間に遠位セクションを含む。いくつかの実施形態において、第一の遠位セクションと遠位端との間の第二の遠位セクション。特定の実施形態においては、第一の遠位セクションと第二の遠位セクションとの間に第二の融着移行部がある。いくつかの実施形態においては、第一の遠位セクションと第二の遠位セクションとの間に第二の熱融着移行部がある。
【0033】
特定の実施形態において、第二の遠位セクションの長さはカニューレの長さの約10~40%である。
【0034】
特定の実施形態において、近位セクションの第一の材料は熱可塑性ポリウレタンである。いくつかの実施形態において、近位セクションの第一の材料はTT1065(商標)ポリウレタンである。特定の実施形態において、遠位セクションの第二の材料は熱可塑性ポリウレタンである。いくつかの実施形態において、遠位セクションの第二の材料はTT1055(商標)ポリウレタンである。
【0035】
もう1つの局面において、カニューレを心室に経皮的に挿入する方法は、カニューレの遠位セクションをガイドワイヤ上で心室に挿入する工程、およびカニューレの近位セクションをガイドワイヤ上で心室に押し込む工程を含み、カニューレの近位セクションの曲げ弾性率は、弾性率の遠位セクションの曲げ弾性率よりも大きい。いくつかの実施形態において、心室は右心室である。
【0036】
[本発明1001]
近位吸入口、近位セクション、第一の遠位セクションおよび遠位吐出口を有するカニューレ;
該近位吸入口に結合するように構成された経皮ポンプ;ならびに
該近位セクションと該第一の遠位セクションとの間の移行ゾーン
を含み、該近位セクションが、第一の曲げ弾性率を有し、該第一の遠位セクションが、該第一の曲げ弾性率よりも小さい第二の曲げ弾性率を有する、
経皮ポンプの挿入のためのシステム。
[本発明1002]
移行ゾーンが融着された移行ゾーンである、本発明1001のシステム。
[本発明1003]
融着された移行ゾーンが熱融着された移行ゾーンである、本発明1002のシステム。
[本発明1004]
第一の曲げ弾性率が、カニューレの座屈力を増すように構成され、第二の曲げ弾性率が、該カニューレがバックロードされるガイドワイヤの曲げ弾性率と一致するように構成されている、本発明1001~1003のいずれかのシステム。
[本発明1005]
遠位吐出口が、右心室に挿入されるように構成されている、本発明1001~1004のいずれかのシステム。
[本発明1006]
カニューレの近位セクションが、第一の材料で作製された近位内壁と第二の材料で作製された近位外壁とを含み、該第二の材料の曲げ弾性率が、該第一の材料の曲げ弾性率よりも大きい、本発明1001~1005のいずれかのシステム。
[本発明1007]
第一の曲げ弾性率が23,000psi以上であり、第二の曲げ弾性率が15,000psi以下である、本発明1001~1006のいずれかのシステム。
[本発明1008]
第一の曲げ弾性率が10,000psiよりも大きく、第二の曲げ弾性率が10,000psiよりも小さい、本発明1001~1007のいずれかのシステム。
[本発明1009]
カニューレの第一の遠位セクションが、第一の材料で作製された第一の遠位内壁と第二の材料で作製された第一の遠位外壁とを含み、該第二の材料の曲げ弾性率が、該第一の材料の曲げ弾性率よりも大きい、本発明1001~1008のいずれかのシステム。
[本発明1010]
カニューレが、内壁および外壁ならびに該内壁と該外壁との間に位置する強化コイルを含み、該強化コイルが一定のピッチ長を有する、本発明1001~1009のいずれかのシステム。
[本発明1011]
カニューレが、内壁および外壁ならびに該内壁と該外壁との間に位置する強化コイルを含み、該強化コイルが可変ピッチ長を有する、本発明1001~1010のいずれかのシステム。
[本発明1012]
近位セクションの長さがカニューレの長さの10%~50%である、本発明1001~1011のいずれかのシステム。
[本発明1013]
カニューレが、第一の遠位セクションと遠位端との間の第二の遠位セクション、および該第一の遠位セクションと該第二の遠位セクションとの間の第二の熱融着移行部を含む、本発明1001~1012のいずれかのシステム。
[本発明1014]
第二の遠位セクションが、第三の材料で作製された第二の遠位内壁と第四の材料で作製された第二の遠位外壁とを含み、該第四の材料の曲げ弾性率が、該第三の材料の曲げ弾性率よりも大きい、本発明1001~1013のいずれかのシステム。
[本発明1015]
第二の遠位セクションが、第一の材料で作製された第二の遠位内壁と第四の材料で作製された第二の遠位外壁とを含み、該第四の材料の曲げ弾性率が、該第一の材料の曲げ弾性率よりも大きい、本発明1001~1013のいずれかのシステム。
[本発明1016]
第二の遠位セクションの長さがカニューレの長さの10~40%である、本発明1001~1015のいずれかのシステム。
[本発明1017]
経皮ポンプに結合するように構成された近位吸入口;
第一の曲げ弾性率を有する近位セクション;および
該近位セクションに熱融着された第一の遠位セクション
を含み、該第一の遠位セクションが、該第一の曲げ弾性率よりも小さい第二の曲げ弾性率を有する、
経皮ポンプを挿入するためのカニューレ。[本発明1018]
第一の曲げ弾性率が、カニューレの座屈力を増すように構成され、第二の曲げ弾性率が、カニューレがバックロードされるガイドワイヤの曲げ弾性率と一致するように構成されている、本発明1017のカニューレ。
[本発明1019]
カニューレの遠位吐出口が、右心室に挿入されるように構成されている、本発明1017または1018項のカニューレ。
[本発明1020]
カニューレの近位セクションが、第一の材料で作製された近位内壁と第二の材料で作製された近位外壁とを含み、該第二の材料の曲げ弾性率が、該第一の材料の曲げ弾性率よりも大きい、本発明1017~1019のいずれかのカニューレ。
[本発明1021]
カニューレの第一の遠位セクションが、第一の材料で作製された第一の遠位内壁と第二の材料で作製された第一の遠位外壁とを含み、該第二の材料の曲げ弾性率が、該第一の材料の曲げ弾性率よりも大きい、本発明1017~1020のいずれかのカニューレ。
[本発明1022]
第一の曲げ弾性率が23,000psi以上であり、第二の曲げ弾性率が15,000psi以下である、本発明1017~1021のいずれかのカニューレ。
[本発明1023]
第一の曲げ弾性率が10,000psiよりも大きく、第二の曲げ弾性率が10,000psiよりも低い、本発明1017~1022のいずれかのカニューレ。
[本発明1024]
内壁および外壁ならびに該内壁と該外壁との間に位置する強化コイルを含み、該強化コイルが一定のピッチ長を有する、本発明1017~1023のいずれかのカニューレ。
[本発明1025]
内壁および外壁ならびに該内壁と該外壁との間に位置する強化コイルを含み、該強化コイルが可変ピッチ長を有する、本発明1017~1023のいずれかのカニューレ。
[本発明1026]
近位セクションの長さがカニューレの長さの10%~50%である、本発明1017~1024のいずれかのカニューレ。
[本発明1027]
第一の遠位セクションと遠位端との間の第二の遠位セクション、および該第一の遠位セクションと該第二の遠位セクションとの間の第二の熱融着移行部を含む、本発明1017~1026のいずれかのカニューレ。
[本発明1028]
第二の遠位セクションが、第三の材料で作製された第二の遠位内壁と第四の材料で作製された第二の遠位外壁とを含み、該第四の材料の曲げ弾性率が、該第三の材料の曲げ弾性率よりも大きい、本発明1017~1027のいずれかのカニューレ。
[本発明1029]
第二の遠位セクションが、第一の材料で作製された第二の遠位内壁と第四の材料で作製された第二の遠位外壁とを含み、該第四の材料の曲げ弾性率が、該第一の材料の曲げ弾性率よりも大きい、本発明1017~1027のいずれかのカニューレ。
[本発明1030]
第二の遠位セクションの長さがカニューレの長さの10~40%である、本発明1017~1029のいずれかのカニューレ。
[本発明1031]
カニューレを右心室に経皮的に挿入する方法であって、
カニューレの遠位セクションをガイドワイヤ上で該右心室に挿入する工程;および
該カニューレの近位セクションを該ガイドワイヤ上で該右心室に押し込む工程
を含み、該カニューレの該近位セクションの曲げ弾性率が、該弾性率の該遠位セクションの曲げ弾性率よりも大きい、
方法。
本開示を考察したのち、当業者には変形および改変が思い浮かぶであろう。開示された特徴は、本明細書に記載される1つまたは複数の他の特徴との任意の組み合わせおよび部分的組み合わせ(複数の従属的な組み合わせおよび部分的組み合わせを含む)で実現されてもよい。先に説明されたまたは図示された様々な特徴は、それらの任意の構成部品を含め、他のシステムとして組み合わされてもよいし、一体化されてもよい。そのうえ、特定の特徴が省略されてもよいし、実現されなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
前記および他の目的および利点は、以下の詳細な説明を添付図面と併せて考察することによって明らかになる。全図を通して類似の参照番号が類似のパーツを指す。
【0038】
図1】カニューレアセンブリの例示的態様を示す。
図2】従来のカニューレの側方断面図を示す。
図3】カニューレの第一の例示的態様の側方断面図を示す。
図4】カニューレの第二の例示的態様の側方断面図を示す。
図5】カニューレの第三の例示的態様の側方断面図を示す。
図6】カニューレの第四の例示的態様の側方断面図を示す。
図7】カニューレの第五の例示的態様の側方断面図を示す。
図8】カニューレの第六の例示的態様の側方断面図を示す。
図9】カニューレの第七の例示的態様の側方断面図を示す。
図10図2~9のカニューレの性質に関するデータの表を示す。
図11】カニューレを挿入する例示的プロセスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
詳細な説明
本明細書に記載されるシステム、方法および装置の全体的理解を提供するために、特定の例示的態様を記載する。本明細書に記載される態様および特徴は、右心のための経皮血液ポンプシステムとの関連における使用に関して具体的に記載されるが、以下に概説されるすべての構成部品および他の特徴は、任意の適当なやり方で互いに組み合わされてもよく、かつ左心、左心室のための血液ポンプシステムまたはバルーンポンプ、外科的切開を使用して埋め込まれる心臓補助装置などを含む他のタイプの心臓治療および心臓補助装置に適合され、適用されてもよいことが理解されよう。主として例示目的のために特定の実施形態および適用の例が提供される。
【0040】
本明細書に記載されるシステム、方法および装置は、ガイドワイヤ上で患者の動脈系中へのカニューレのバックロードを容易にするように構成されている改良されたカニューレを提供する。特に、カニューレは、その遠位領域が、ガイドワイヤを不必要に押し退けることなくガイドワイヤに追従するのに十分なほど可撓性であるが、その近位端が、バックロード中にカニューレを所定の位置に誘導するのに十分なほど剛性である。この可変剛性を達成するために、カニューレの近位セクションは、ガイドワイヤの遠位セクションの材料または材料の組み合わせよりも剛性である材料または材料の組み合わせで作られ得る。遠位セクションのより低い剛性は、カニューレがガイドワイヤの経路をたどることを支援し、近位セクションのより高い剛性は、カニューレを座屈させるために必要な力を増す。初期の送り出しを容易にすることに加えて、近位セクションのより高い剛性は、カニューレが患者内部に挿入されたならば、カニューレをより誘導しやすくし、それにより、挿入中に医師が近位端に加えなければならない力の量を減らす。力の量を減らすことはまた、挿入中のカニューレの捻転または座屈の可能性を減らす。カニューレ剛性を変化させることはまた、特定の患者の解剖学的構造への適合を改善することにより、またはより広い範囲の患者解剖学的構造への適合を改善することにより、送り出し時間の短縮に寄与する。改良されたカニューレは、複雑な、または曲がりくねった形状を有するカニューレ、たとえば、IMPELLA RP(登録商標)ポンプまたは右心中で(たとえば下大静脈と肺動脈との間で)使用されるように適合された任意の他のポンプと使用されるカニューレとして特に役立つ。さらに、改良されたカニューレを製造する方法は、既存のカニューレの製造方法よりも大きな許容差を許す。
【0041】
図1は、血液ポンプアセンブリ100の例示的態様を示す。当業者は、図1の態様が例示的であり、本明細書に記載される主題の範囲を限定するためのものではないことを理解するであろう。血液ポンプアセンブリ100は、ポンプ101、ポンプハウジング103、近位端105、遠位端107、カニューレ108、インペラ(図示せず)、カテーテル112、吸入口区域110、吐出口区域106およびセンサ117を含む。カテーテル112はカニューレ108の吸入口区域110に接続されている。吸入口区域110はカニューレの近位端105の近くに位置し、吐出口区域106はカニューレ108の遠位端107の近くに位置する。吸入口区域110はポンプハウジング103を含み、その周壁111が、インペラブレード(図示せず)の回転軸から半径方向外側に位置し、インペラブレードの回転軸を中心に延びている。インペラ(図示せず)は、吸入口区域110の、ポンプハウジング103の壁111上のセンサ117に隣接するところでポンプ101に回転可能に結合される。実施形態にしたがって、ポンプハウジング103は金属で構成され得る。
【0042】
図2~9に記す態様は、図1に示すような血液ポンプアセンブリに適用することもできるし、任意の他の血液ポンプアセンブリ構成、たとえば、ドライブシャフトの近位端に位置する外部モータ(ドライブシャフトの遠位端に位置するブレードを制御する)を含む血液ポンプアセンブリに適用することもできる。
【0043】
カニューレ108は、患者の右心の解剖学的構造に適合する形状を有する。この例示的態様において、カニューレは、患者の下大静脈の近くに位置するように構成された近位端105と、肺動脈の近くに位置するように構成された遠位端107とを有する。カニューレ108は、流入区域から吸入口区域110と吐出口区域106との間の点Bまで延びる第一のセグメントS1を含む。カニューレ108はまた、吸入口区域110と吐出口区域106との間の変曲点である点Cから吐出口区域106まで延びる第二のセグメントS2を含む。いくつかの実施形態において、BとCとはカニューレ108沿いの同じ位置であってもよい。カニューレの第一のセグメントS1は、カーブしている、たとえば、第一の平面において「S」字形を形成する。いくつかの実施形態において、セグメントS1は約30°~180°(たとえば40°、50°、60°、70°、80°、90°、100°、110°、120°、130°、140°、150°、160°または170°)の曲率を有することができる。カニューレの第二のセグメントS2は、カーブしている、たとえば第二の平面において「S」字形を形成する。いくつかの実施形態において、セグメントS2は約30°~180°(たとえば40°、50°、60°、70°、80°、90°、100°、110°、120°、130°、140°、150°、160°または170°)の曲率を有することができる。第二の平面は第一の平面とは異なることができる。いくつかの実施形態において、第二の平面は第一の平面と平行または同一である。特定の実施形態において、第二の平面は第一の平面に対して斜めまたは垂直である。
【0044】
図2は、従来技術と標識された従来のカニューレ200の側方断面図を示す。当業者は、図2の態様が例示的であり、かつ本明細書に記載される主題の範囲を限定するためのものではないことを理解するであろう。従来のカニューレは、主セクション210と、コイルワイヤ212と、血液がその中を循環し、ガイドワイヤ216がその中を通過する、ルーメン214と呼ばれる内腔とを含む。コイルワイヤ212は主セクション210の壁内に位置する。コイルワイヤ212は、円形断面のワイヤ、たとえば丸いワイヤを含む。図2の態様および図2~9で本明細書に記された任意の他の態様において、コイルワイヤ212またはその均等物は第一の内層の上に配置され、第二の層、たとえばラミネーション層によって覆われ、封止されている。コイルワイヤ212の下および上にそれぞれ位置する第一の内層および第二の外層の材料は、異なる材料であってもよいし、同じ材料でできていてもよい。たとえば、コイルワイヤ212は、内層(たとえば、Dermopanのような熱可塑性ポリウレタン)と外層(たとえば、TT1065のような熱可塑性ポリウレタン)との間に位置する。主セクション210は単一の材料、たとえばディスペンスされた55Dポリウレタンでできている。主セクション210は一定の外径および一定の内径を有し、コイルワイヤ212は、単一の材料で作られて一定のピッチ218を有する。その結果、主セクション210は一定の曲げ弾性率を有する。
【0045】
上記のように、カニューレ(たとえば図2のカニューレ200)が剛性すぎるとき、患者へのポンプアセンブリ(たとえば図1のポンプアセンブリ100)のバックロードおよび挿入は、望ましくないほど困難になる得る。したがって、一部の医師は、カニューレの剛性を変化させ、かつガイドワイヤ216を肺動脈弁の外に押し退けることなくカニューレを配置するために、可変ピッチ長を有するコイルワイヤを有するカニューレを使用することがある。しかし、コイルワイヤピッチ長はカニューレの最小曲げ半径に影響するため、コイルワイヤピッチ長さが変化すると、カニューレの抗捻転性が損なわれるおそれがある。さらに、カーブしたカニューレ(たとえば、図1のカニューレ108)と組み合わせて使用されるIMPELLA RP(登録商標)ポンプのような特定のポンプの場合、コイルワイヤピッチ長を変化させることによって抗捻転性が低下すると、コイルワイヤピッチ長の変化はカニューレのばね定数に影響し、カニューレをより制御しにくくするため、患者の動脈への損傷を生じさせるおそれがある。
【0046】
図3は、カニューレ108(図1)と類似の一般構造を有するが、その長さに沿って可変剛性を含むカニューレ300の第一の例示的態様の側方断面図を示す。当業者は、図3の態様が例示的であり、本明細書に記載される主題の範囲を限定するためのものではないことを理解するであろう。カニューレ300は、その長さに沿って可変剛性を有する。カニューレ300の剛性は、異なる材料の使用、可変直径もしくはコイルピッチの使用および/または異なる材料の使用と可変直径もしくはコイルピッチの使用との組み合わせにより、その長さに沿って変化し得る。カニューレ300は、インペラの近くにある近位セクション309、ポンプヘッドの近くにある第一の遠位セクション311、移行領域321、カニューレに巻き付けられたコイルワイヤ312、ルーメン314およびガイドワイヤ316を含む。ガイドワイヤ316はルーメン314の中を通過する。従来のカニューレ200のような単一の主セクション210の代わりに、カニューレ300は、2つのセクション、すなわち近位セクション309および第一の遠位セクション311を含む。近位セクション309は、カニューレをガイドワイヤ316に押し当てるために使用される。第一の遠位セクション311は、ガイドワイヤ316に追従して患者に入り、移行領域321によって近位セクション309に結合されている。いくつかの態様において、移行領域は、カニューレ長の10~20%に及び、その近位端から遠位端までで変化するフレキシビリティ弾性率を有し、それにより、可変曲げ弾性率を有するカニューレの近位領域と遠位領域とを接合する。コイルワイヤ312は、近位セクション309および第一の遠位セクション311の壁301内に位置する。
【0047】
近位セクション309は第一の材料でできている。第一の材料は、約20,000psi~30,000psi、好ましくは23,000psi~29,000psiの曲げ弾性率を有し得る。第一の材料は、20,000psi~35,000psiの第一の曲げ弾性率を有し得る。たとえば、近位セクション309は、TT1065(商標)TPU(熱可塑性ポリウレタン)、熱可塑性樹脂、ポリマーまたは特定の温度よりも上では柔軟になり、冷却されると凝固する任意の他の材料でできていてもよい。たとえば、近位セクション309は、広範囲の硬度にわたって耐溶剤性および生体安定性を示す好ましい熱可塑性樹脂(たとえばポリウレタン)で構成され得、かつ様々な硬度レベルを有するように構成されることができる。近位セクション309は一定の直径を有し、コイルワイヤ312は一定のピッチ318を有し、近位セクション309は第一の曲げ弾性率を有する。
【0048】
第一の遠位セクション311は、第二の材料、たとえば、約10,000psi~22,000psi、好ましくは15,000psi~21,000psiの曲げ弾性率を有する材料でできている。第二の材料は、5,000psi~15,000psiの第二の曲げ弾性率を有し得る。たとえば、第一の遠位セクション311はTT1055(商標)TPUでできていてもよい。第一の遠位セクション311は一定の直径を有し、コイルワイヤ312は一定のピッチ318を有し、第一の遠位セクション311は第二の曲げ弾性率を有する。第二の曲げ弾性率は、近位セクション309の第一の曲げ弾性率よりも小さい。いくつかの実施形態において、コイルワイヤはカニューレ300に含まれない(それにより、カニューレが座屈する傾向を減らす)。
【0049】
第一の遠位セクション311のより低い剛性は、カニューレ300がガイドワイヤ316の経路をたどることを支援する。同時に、近位セクション309のより高い剛性は、カニューレ300の座屈力を増すことによってカニューレ300の送り出しを改善する。近位セクション309のより高い剛性はまた、カニューレ300に加えられる力を患者内へのカニューレの動きに伝達することをより容易にし、それにより、挿入中に近位端に加えるのに要する力の量を減らす。近位セクションのより高い剛性はまた、挿入中にカニューレ300が捻転または座屈する可能性を減らす。
【0050】
挿入中の捻転または座屈の可能性をさらに減らすために、カニューレの剛性を、その長さに沿って、たとえば、図4に示すように3つの異なるセクションにかけて変化させることができる。図4は、カニューレ400の第二の例示的態様の側方断面図を示す。当業者は、図4の態様が例示的であり、本明細書に記載される主題の範囲を限定するためのものではないことを理解するであろう。カニューレ400は、その長さに沿って可変剛性を有する。カニューレ400の剛性は、異なる材料の使用、可変直径もしくはコイルピッチの使用および/または異なる材料の使用と可変直径もしくはコイルピッチの使用との組み合わせにより、その長さに沿って変化し得る。カニューレ400は、近位セクション409、第一の移行領域421、第一の遠位セクション411、第二の移行領域422、第二の遠位セクション413、カニューレに巻き付けられたコイルワイヤ412、ルーメン414およびガイドワイヤ416を含む。ガイドワイヤ416はルーメン414の中を通過する。
【0051】
従来のカニューレ200におけるような単一の主セクション210の代わりに、図4のカニューレ400は、3つのセクション、すなわち近位セクション409、第一の遠位セクション411および第二の遠位セクション413を含む。図示するように、第一の遠位セクションは、近位セクションと第二の遠位セクションとの間に嵌め込まれている。近位セクション、第一の遠位セクションおよび第二の遠位セクションの剛性は、好ましくは異なる。近位セクション409は、カニューレをガイドワイヤ416に押し当てるために医師によって使用されることができ、第一の遠位セクション411は、患者内部でその形状を保持するが、ガイドワイヤに追従し、第二の遠位セクション413はガイドワイヤ416に追従して患者に入る。近位セクション409と第一の遠位セクション411とは、熱融着移行領域、熱収縮スリーブまたは重ね接合であり得る第一の移行領域421によって結合されている。第一の遠位セクション411と第二の遠位セクション413とは、熱融着移行部であり得る第二の移行領域422によって結合されている。本明細書の中で参照される「熱融着」とは、材料間の熱反応の結果として接続されることをいう。たとえば、プラスチック製の第一の遠位セクション411は、プラスチック製の第二の遠位セクション413とで熱融着され得る。移行部とは、2つの要素を接続する領域、たとえば、第一の遠位セクションのプラスチックが熱反応によって第二の遠位セクションのプラスチックと融着している領域をいう。
【0052】
図4に示す態様において、コイルワイヤ412は、近位セクション409、第一の遠位セクション411および第二の遠位セクション413の壁内に位置する。いくつかの実施形態において、コイルワイヤは含まれない。近位セクション409は第一の材料でできていることができる。たとえば、第一の材料はTT1065(商標)ポリウレタンであり得る。近位セクション409は一定の直径を有し得、コイルワイヤ412は一定のピッチ418を有し得、近位セクション409は第一の曲げ弾性率を有し得る。第一の遠位セクション411は第二の材料でできている。たとえば、第二の材料はTT1055(商標)ポリウレタンであり得る。第一の遠位セクション411は一定の直径を有し、コイルワイヤ412は一定のピッチ418を有し、第一の遠位セクション411は第二の曲げ弾性率を有する。第二の曲げ弾性率は、近位セクション409の第一の曲げ弾性率よりも小さい。第二の遠位セクション413は第三の材料でできている。たとえば、第三の材料はTT1055(商標)ポリウレタンであり得る。第二の遠位セクション413は一定の直径を有し、コイルワイヤ412は一定のピッチ418を有し、第二の遠位セクション413は第三の曲げ弾性率を有する。第三の曲げ弾性率は、近位セクション409の第一の曲げ弾性率および第一の遠位セクション411の第二の曲げ弾性率よりも小さい。いくつかの実施形態において、移行部421および422は、任意の他のタイプの移行部、たとえば、接着剤もしくはファスナを使用する移行部、締り嵌めによって形成される移行部または溶接もしくはオーバーモールディングの結果として形成される移行部であってもよい。
【0053】
または、図2~9に記された任意の移行部、たとえば図4の第一の遠位セクション411と第二の遠位セクション413との間の移行領域422において、2つのセクションは、溶媒材料または接着材料を使用することによって接続されてもよい。または、熱収縮スリーブを移行領域上に配置して、両セクションをいっしょに封止してもよい。重ね接合を使用して両セクションを接続してもよい。移行領域は、垂直方向の移行部、たとえば図4に示すような移行領域422を使用してもよいし、移行領域で捻転が発生する可能性を減らすために、テーパ状または傾斜した断面を有する移行部を使用してもよい。
【0054】
図4の態様において、2つのセクションではなく3つのセクションの存在は、図2の態様に対してカニューレをさらに改善する。たとえば、3つのセクションを使用すると、特定の患者の解剖学的構造に適合し得る、または異なるタイプの患者解剖学的構造に適合し得る。上記のように、カニューレ剛性の変化が送り出しを容易にすることができる。第二の遠位セクション413のより低い剛性は、カニューレ400がガイドワイヤ416の経路をたどることを支援する。第一の遠位セクション411の剛性は、第一の遠位セクションもまた、ガイドワイヤの経路をたどり、同時に、近位セクション409に加えられた力をより良好に伝達することを可能にする。上記のように、近位セクション409のより高い剛性はカニューレ400の送り出しを改善する。
【0055】
図5は、カニューレの長さに沿って変化する剛性を提供する複数のセクションを有するカニューレ500の第三の例示的態様の側方断面図を示す。当業者は、図5の態様が例示的であり、本明細書に記載される主題の範囲を限定するためのものではないことを理解するであろう。カニューレ500は、その長さに沿って可変剛性を有する。カニューレ500の剛性は、異なる材料の使用、可変直径もしくはコイルピッチの使用および/または異なる材料の使用と可変直径もしくはコイルピッチの使用との組み合わせにより、その長さに沿って変化し得る。カニューレ500は、近位セクション509、移行部521、第一の遠位セクション511、コイルワイヤ512、ルーメン514およびガイドワイヤ516を含む。ガイドワイヤ516はルーメン514の中を通過する。従来のカニューレ200におけるような単一の主セクション210の代わりに、カニューレ500は、2つの部セクション、すなわち近位セクション509および第一の遠位セクション511を含む。近位セクション509は、カニューレをガイドワイヤ516に押し当てるために医師によって使用されることができる。第一の遠位セクション511は、ガイドワイヤ516に追従して患者に入り、移行領域521によって近位セクション509に結合されている。コイルワイヤ512は、近位セクションおよび第一の遠位セクションの壁内に位置する。近位セクション509は第一の材料でできている。たとえば、第一の材料はTT1065(商標)ポリウレタンであり得る。第一の遠位セクション511は第二の材料でできている。たとえば、第二の材料はTT1055(商標)ポリウレタンであり得る。近位セクション509および第一の遠位セクション511は一定の直径を有する。コイルワイヤ512は、カニューレの縦軸に沿って増大する可変ピッチを有し、コイルワイヤピッチ518は、コイルワイヤピッチ519よりも小さく、コイルワイヤピッチ520よりも大きく、より小さなピッチがより高い剛性を生じさせる。いくつかの実施形態において、コイルワイヤピッチは、近位セクション509の場合には一定であり得、コイルワイヤピッチは、第一の遠位セクション511の場合には一定であり得るが、近位セクション509のコイルワイヤピッチよりも小さいピッチであり得る。近位セクション509は第一の曲げ弾性率を有し、第一の遠位セクション511は第二の曲げ弾性率を有する。第二の曲げ弾性率は、近位セクション509の第一の曲げ弾性率よりも小さい。カニューレの剛性(およびその送り出し性)は、ピッチが減少したコイルワイヤ512を使用することにより、また、近位セクション509と第一の遠位セクション511とで異なる曲げ弾性率を有する材料を選択することにより、改善される。これらの特徴の組み合わせがカニューレの剛性を変化させ、それによって送り出しを容易にする。
【0056】
図6は、カニューレ600の第四の例示的態様の側方断面図を示す。当業者は、図6の態様が例示的であり、本明細書に記載される主題の範囲を限定するためのものではないことを理解するであろう。カニューレ600は、その長さに沿って可変剛性を有する。カニューレ600の剛性は、異なる材料の使用、可変直径もしくはコイルピッチの使用および/または異なる材料の使用と可変直径もしくはコイルピッチの使用との組み合わせにより、その長さに沿って変化し得る。カニューレ600は、近位セクション609、第一の遠位セクション611、コイルワイヤ612、ルーメン614およびガイドワイヤ616を含む。カニューレは、図2~5および後続の図7~9に関連して記載されるコイルワイヤに類似するコイルワイヤ612を含み得る。ガイドワイヤ616はルーメン614の中を通過する。従来のカニューレ200におけるように近位セクション壁のために均一な材料を使用するかつ第一の遠位セクション壁のためにも均一な材料を使用する代わりに、カニューレ500は、セクションごとに内層および外層を含み、これらの層は、同心的であり、かつ異なる材料(内層における第一の材料および外層における第二の材料)を使用する。近位セクション609は内層667および外層665でできている。第一の遠位セクション611は内層677および外層675でできている。近位セクション609は第一の曲げ弾性率を有し、第一の遠位セクション611は第二の曲げ弾性率を有する。第二の曲げ弾性率は、近位セクション609の第一の曲げ弾性率よりも小さい。異なる材料特性を有する内層667および外層675の存在が、異なる曲げ弾性率を有する近位セクション609および第一の遠位セクション611と組み合わさって、カニューレの送り出しをさらに改善する。カニューレの剛性は、縦(近位-遠位)方向および半径(内-外)方向の両方で材料特性を選択することによって変化させることができる。たとえば、第一のセクションの曲げ弾性率は10,000psiよりも大きく、第二のセクションの曲げ弾性率は10,000psiよりも小さい。もう1つの例において、第一のセクションの曲げ弾性率は23,000psi以上であり、第二のセクションの曲げ弾性率は15,000psi以下である。上記のように、カニューレ剛性の変化が送り出し時間を短縮することができる。
【0057】
図7は、カニューレ700の第五の例示的態様の側方断面図を示す。当業者は、図7の態様が例示的であり、本明細書に記載される主題の範囲を限定するためのものではないことを理解するであろう。カニューレ700は、主セクション710と、コイルワイヤ712と、血液がその中を循環し、ガイドワイヤ716がその中を通過する、ルーメン714と呼ばれる内腔とを含む。コイルワイヤ712は主セクション710の壁内に位置する。この第五の態様において、コイルワイヤ712は、長方形断面のワイヤ、たとえばワイヤリボンを含む。図7の態様および図2~6および8~9で本明細書に記される任意の他の態様において、コイルワイヤ712またはその均等物は第一の内層の上に配置され、第二の層、たとえばラミネーション層によって覆われ、封止されている。コイルワイヤ712の下および上にそれぞれ位置する第一の内層および第二の外層の材料は、異なる材料であってもよいし、または同じ材料でできていてもよい。たとえば、コイルワイヤ712は、内層(たとえば、Dermopanのような熱可塑性ポリウレタン)と外層(たとえば、TT1065のような熱可塑性ポリウレタン)との間に位置する。主セクション710は単一の材料、たとえばディスペンスされた55Dポリウレタンでできている。主セクション710は一定の外径および一定の内径を有し、コイルワイヤ712は、単一の材料で作られて一定のピッチ718を有する。その結果、主セクション710は一定の曲げ弾性率を有する。
【0058】
図8は、カニューレの長さに沿って変化する剛性を提供する複数のセクションを有するカニューレ800の第六の例示的態様の側方断面図を示す。当業者は、図8の態様が例示的であり、本明細書に記載される主題の範囲を限定するためのものではないことを理解するであろう。カニューレ800は、その長さに沿って可変剛性を有する。カニューレ800の剛性は、異なる材料の使用、可変直径もしくはコイルピッチの使用および/または異なる材料の使用と可変直径もしくはコイルピッチの使用との組み合わせにより、その長さに沿って変化し得る。カニューレ800は、近位セクション809、第一の移行部821、第一の遠位セクション811、第二の移行部822、第二の遠位セクション813、コイルワイヤ812、ルーメン814およびガイドワイヤ816を含む。ガイドワイヤ816はルーメン814の中を通過する。図2に示す従来のカニューレ200におけるような単一の主セクション810の代わりに、カニューレ800は、3つのセクション、すなわち近位セクション809、第一の遠位セクション811および第二の遠位セクション813を含む。近位セクション809は、カニューレをガイドワイヤ816に押し当てるために医師によって使用されることができる。第一の遠位セクション811および第二の遠位セクション813は、ガイドワイヤ816に追従して患者に入り、第一の遠位セクション811は第一の移行部821によって近位セクション809に結合されている。コイルワイヤ812は、近位セクション809、第一の遠位セクション811および第二の遠位セクション813の壁内に位置する。コイルワイヤ812は丸いワイヤを含み得る。近位セクション809は第一の材料でできている。たとえば、第一の材料はTT1065(商標)ポリウレタンであり得る。第一の遠位セクション811は第二の材料でできている。たとえば、第二の材料はTT1055(商標)ポリウレタンであり得る。第二の遠位セクション813は第三の材料でできている。たとえば、第三の材料はTT1065(商標)ポリウレタンであり得る。近位セクション809、第一の遠位セクション811および第二の遠位セクション813は一定の直径を有する。コイルワイヤ812は、カニューレの縦軸に沿って増大する可変ピッチを有し、コイルワイヤピッチ818は、コイルワイヤピッチ819よりも小さく、コイルワイヤピッチ820よりも大きく、より小さなピッチがより高い剛性を生じさせる。いくつかの実施形態において、コイルワイヤピッチは、近位セクション809の場合には一定であり得、コイルワイヤピッチは、第一の遠位セクション811の場合には一定であり得るが、近位セクション809のコイルワイヤピッチよりも小さいピッチであり得、さらに、コイルワイヤピッチは、第二の遠位セクション813の場合には一定であり得るが、近位セクション809のコイルワイヤピッチよりも小さいピッチであり得る。近位セクション509は第一の曲げ弾性率を有し、第一の遠位セクション811は第二の曲げ弾性率を有し、第二の遠位セクション813は第三の曲げ弾性率を有する。第二の曲げ弾性率および第三の曲げ弾性率はそれぞれ、近位セクション809の第一の曲げ弾性率よりも小さい。カニューレの剛性(およびその送り出し性)は、ピッチが減少したコイルワイヤ812を使用することにより、また、近位セクション809と第一の遠位セクション811とで異なる曲げ弾性率を有する材料を選択することにより、改善される。これらの特徴の組み合わせがカニューレの剛性を変化させ、それによって送り出しを容易にする。特定の態様において、コイルワイヤ812はワイヤリボンを含み得る。特定の態様において、コイルワイヤピッチ818~820は互いに異なり得、他の態様において、ピッチ818~820の少なくとも2つは同じであり得る。
【0059】
図9は、カニューレ900の第七の例示的態様の側方断面図を示す。当業者は、図9の態様が例示的であり、本明細書に記載される主題の範囲を限定するためのものではないことを理解するであろう。カニューレ900は、その長さに沿って可変剛性を有する。カニューレ900の剛性は、異なる材料の使用、可変直径もしくはコイルピッチの使用および/または異なる材料の使用と可変直径もしくはコイルピッチの使用との組み合わせにより、その長さに沿って変化し得る。カニューレ900は、近位セクション909、第一の遠位セクション911、コイルワイヤ912、ルーメン914およびガイドワイヤ916を含む。カニューレは、図2~8に関連して記載されたコイルワイヤに類似するコイルワイヤ912を含み得る(すなわち、コイルワイヤ812は丸いワイヤまたはワイヤリボンを含み得る)。ガイドワイヤ916はルーメン914の中を通過する。従来のカニューレ200におけるように近位セクション壁のために均一な材料を使用するかつ第一の遠位セクション壁のためにも均一な材料を使用する代わりに、カニューレ900は、セクションごとに内層および外層を含み、両層は同心的であり、かつ異なる材料(内層における第一の材料および外層における第二の材料)を使用する。近位セクション909は内層967および外層965でできている。第一遠位セクション911は同じ内層967および外層975でできている。したがって、この態様において、内層967は、近位セクション909および第一の遠位セクション911の内面をライニングする。カニューレ900の内層967は、近位セクション909と第一の遠位セクション911の両方と同じであるため、カニューレ900は、改善された製造可能性を提供する。近位セクション909は第一の曲げ弾性率を有し、第一の遠位セクション911は第二の曲げ弾性率を有する。第二の曲げ弾性率は、近位セクション909の第一の曲げ弾性率よりも小さい。異なる材料特性を有する内層967および外層975の存在が、異なる曲げ弾性率を有する近位セクション909および第一の遠位セクション911と組み合わさって、カニューレの送り出しをさらに改善する。カニューレの剛性は、縦(近位-遠位)方向および半径(内-外)方向の両方で材料特性を選択することによって変化させることができる。たとえば、第一のセクションの曲げ弾性率は10,000psiよりも大きく、第二のセクションの曲げ弾性率は10,000psiよりも小さい。もう1つの例において、第一のセクションの曲げ弾性率は23,000psi以上であり、第二のセクションの曲げ弾性率は15,000psi以下である。上記のように、カニューレ剛性の変化が送り出し時間を短縮することができる。
【0060】
図10は、図2~9に示すカニューレの例示的態様の材料特性をまとめた表を示す。当業者は、図10の表が例示的であり、本明細書に記載される主題の範囲を限定するためのものではないことを理解するであろう。表は、カニューレの内層、たとえば図6の層667に使用される材料と、カニューレの外層、たとえば図6の層665に使用される材料との組み合わせを、結果的なカニューレセクションの剛性、たとえば、一定のコイルピッチ長を有するカニューレサンプルに対する3点曲げ剛性試験中に15mmのたわみを得るために必要なニュートン単位の力として計測される、図6の近位セクション609の剛性とともに示す。図10に示すように、内側および外側の材料の特定の組み合わせは、15mmのたわみを得るために必要な力が従来のカニューレセクションよりも小さい。たとえば、TT1055(商標)内層およびTT1055(商標)外層の場合、同じディスペンスされた55D材料で作製された内層および外層を有する従来のカニューレの場合に必要な2.2Nに対し、1.6Nしか必要とされない。TT1055(商標)の曲げ弾性率は、21,000psiよりも低く、たとえば15,000psi~21,000psiであり得、TT1065(商標)の曲げ弾性率は、21,000psiよりも大きく、たとえば23,000psi~29,000psiであり得る。第二の材料(たとえばTT1055(商標))の曲げ弾性率は18,000psiであり得、第一の材料(たとえばTT1065(商標))の曲げ弾性率は26,000psiであり得る。
【0061】
図11は、特定の実施形態にしたがってカニューレを挿入する方法1100を示す。当業者は、図11の方法が例示的であり、本明細書に記載される主題の範囲を限定するためのものではないことを理解するであろう。方法1100は、開示される、または本開示によって可能にされるようなカニューレ、たとえば、図2~9における前記実施形態のいずれかに記載されたカニューレを使用して、ポンプアセンブリ(たとえば、図1に示すポンプアセンブリ100)の一部であるカニューレをガイドワイヤ上に挿入するために実施され得る。図2~9の前記実施形態におけるカニューレは、その長さに沿って可変剛性を有する。カニューレの剛性は、異なる材料の使用、可変直径もしくはコイルピッチの使用および/または異なる材料の使用と可変直径もしくはコイルピッチの使用との組み合わせにより、その長さに沿って変化し得る。カニューレは、心臓の解剖学的構造に一致する形状を有し得る。たとえば、カニューレは、右心に一致する形状、たとえば右心室の形状を有し得る。
【0062】
ステップ1110において、カニューレの遠位端をガイドワイヤ上に挿入する。カニューレは、近位セクションと、1よりも多い遠位セクション、たとえば第一および第二の遠位セクションまたはより多くを含むことができる遠位セクションとを含む。近位セクションは、カニューレをガイドワイヤに押し当てるために使用され得る。遠位セクションは、ガイドワイヤに追従して患者に入り、近位セクションに結合されている。近位セクションは遠位セクションよりも剛性であり得る。遠位セクションのより低い剛性が、カニューレがガイドワイヤの経路をたどることを支援する。同時に、近位セクションのより高い剛性が、カニューレの座屈力を増すことによってカニューレの送り出しを改善する。近位セクションのより高い剛性はまた、カニューレに加えられる力を患者内へのカニューレの動きに伝達することをより容易にし、それにより、挿入中に医師が近位端に加えなければならない力の量を減らす。カニューレの可変剛性は、送り出し時間を、約5分~15分(患者および処置に依存する)の平均送り出し時間から約2分~5分以下の平均へと短縮することができる。
【0063】
方法1100はさらに、カニューレの遠位セクションをガイドワイヤ上に配置し、カニューレの近位セクションに圧力を加えて、ガイドワイヤを押し退けることなくカニューレを所望の位置に配置する工程(工程1120)を含む。近位セクションは、カニューレを所望の位置に押すために使用され得る。近位セクションは遠位セクションよりも剛性であり得る。近位セクションのより高い剛性はまた、カニューレに加えられる力を患者内へのカニューレの動きに伝達することをより容易にし、それにより、挿入中に近位端に加えるのに要する力の量を減らす。同時に、遠位セクション(たとえば第一の遠位セクション)のより低い剛性が、カニューレがガイドワイヤの経路に沿って押されるとき、より低い抵抗を提供する。カニューレの可変剛性は、送り出し時間を、約5分~15分(患者および処置に依存する)の平均送り出し時間から約2分~5分以下の平均へと短縮することができる。
【0064】
本開示を考察したのち、当業者には変形および改変が思い浮かぶであろう。たとえば、いくつかの実施形態においては、図2~11に記載された代替態様のいずれかが組み合わされてもよい。たとえば、図5のカニューレの可変ピッチコイル構造が、図2~10に関して記載された様々なガイドワイヤ材料と組み合わされてもよい。もう1つの例においては、図6の異なる外層および内層が、図2~5および7~9に示された近位および遠位材料の組み合わせのいずれかと組み合わされてもよい。開示された特徴は、本明細書に記載された1つまたは複数の他の特徴との任意の組み合わせおよび部分的組み合わせ(複数の従属的組み合わせおよび部分的組み合わせを含む)で実現されてもよい。さらに、前記セクションに記載されたカニューレは様々なグレードのポリウレタンを含むが、他の材料選択が利用可能であることが理解されよう。これらは、高密度ポリエチレン(HDPE)材料、中密度ポリエチレン(MDPE)材料、低密度ポリエチレン(LDPE)材料、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルブロックアミド(たとえばPEBAX)およびポリエステルを含む。先に説明されたまたは図示された様々な特徴は、それらの任意の構成部品を含め、他のシステムとして組み合わされてもよいし、一体化されてもよい。そのうえ、特定の特徴が省略されてもよいし、実現されなくてもよい。たとえば、前記態様に記載されたカニューレの内部構造が、たとえば、米国特許出願第15/156,570号(内容が全体として参照により本明細書に組み入れられる)に記載されているような熱成形法を使用して作ることもできるコルクスクリュー形カニューレに採用されてもよい。
【0065】
様々な例示的実施形態に示されるような装置またはその構成部品の構造および配置が例示的でしかないことに留意することが重要である。いくつかの実施形態だけが本開示において詳細に説明されているが、本開示を考察する当業者は、開示された主題の新規な教示および利点を実質的に逸脱することなく数多くの改変(たとえば、様々な要素のサイズ、寸法、構造、形状および割合、パラメータの値、取り付け構造、材料使用、色、向きなどの変更)が可能であることを容易に理解するであろう。たとえば、一体に形成されているように示された要素が複数のパーツまたは要素で構成されてもよく、要素の配置が逆転または他のやり方で変更されてもよく、別々の要素または位置の性質または数が変更されてもよい。代替実施形態にしたがって任意のプロセスまたは方法工程の順序が変更または再順序付けされてもよい。また、本開示の範囲を逸脱することなく、様々な例示的実施形態の設計、作動条件および構成において他の置換、改変、変更および省略が加えられてもよい。
【0066】
様々な発明的実施形態が本明細書に記載され、例示されたが、当業者は、機能を実行するための、および/または結果および/または本明細書に記載される利点の1つまたは複数を得るための多様な他の機構および/または構造を容易に構想し、そのような変更および/または改変それぞれが、本明細書に記載される発明的実施形態様の範囲内であるとみなされる。より一般的に、当業者は、別段記されない限り、本明細書に記載された任意のパラメータ、寸法、材料および構成は例示的であることを意図したものであり、実際のパラメータ、寸法、材料および/または構成は、発明的教示が使用される具体的な用途に依存するということを容易に理解するであろう。当業者は、慣例的でしかない実験を使用するだけで、本明細書に記載される特定の発明的実施形態の多くの均等物を認識する、または確認することができるであろう。したがって、前記実施形態は実例として提示されただけであり、特許請求の範囲およびその均等物の範囲内で、発明的実施形態を、具体的に記載され、特許請求される以外のやり方で実施し得るということが理解されよう。本開示の発明的実施形態は、本明細書に記載される個々の特徴、システム、物品、材料、キットおよび/または方法それぞれに関する。加えて、そのような特徴、システム、物品、材料、キットおよび/または方法が相反するためのものではないならば、二つ以上のそのような特徴、システム、物品、材料、キットおよび/または方法の任意の組み合わせが本開示の発明的範囲に含まれる。
【0067】
本開示に関して、用語「結合」とは、二つの部材の互いに対する直接的または間接的な接合を意味する。そのような接合は、静止的または可動的な性質であり得る。そのような接合は、2つの部材または2つの部材および任意のさらなる中間部材が互いと1つの一体ボディとして一体に形成されることで、または2つの部材または2つの部材および任意のさらなる中間部材が互いに取り付けられることで達成され得る。そのような接合は、永久的な性質であってもよいし、取り外し可能または解放可能な性質であってもよい。
【0068】
本明細書および特許請求の範囲の中で使用される不定冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」は、そうではないことが明らかに指示されない限り、「少なくとも1つの」を意味するためのものと理解されるべきである。本明細書および特許請求の範囲の中で使用される「または」は、先に定義した「および/または」と同じ意味を有するものと理解されるべきである。たとえば、リスト中の項目を分けるとき、「または」または「および/または」は、包括的である、すなわち、要素の数またはリスト中の少なくとも1つを含むが、1つより多くも含み、任意で、リストにないさらなる項目も含むものと解釈されなければならない。そうではないことが明らかに示される語、たとえば「~の1つのみ」または「~の厳密に1つ」だけが、要素の数またはリスト中の厳密に1つの要素の包含を指す。概して、本明細書の中で使用される用語「または」は、排他性を示す語、たとえば「~のいずれか」、「~の1つ」、「~の1つのみ」または「~の厳密に1つ」が続く場合のみ、排他的選択(すなわち「両方ではなく一方または他方のみ」)を示すものと解釈されなければならない。
【0069】
特許請求の範囲および上記明細書において、すべての表現、たとえば「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(carrying)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」、「伴う(involving)」、「保持する(holding)」、「構成された(composed of)」などは、非限定的である、すなわち、「~を含むが、それに限定されない」と理解されなければならない。
【0070】
特許請求の範囲は、その旨が述べられない限り、記載される順序または要素に限定されるものと読まれるべきではない。特許請求の範囲の精神および範囲を逸脱することなく、形態および詳細における様々な変更が当業者によって加えられ得ることが理解されるべきである。特許請求の範囲およびその均等物の精神および範囲に入るすべての実施形態が特許請求される。
【0071】
変更、置換および変形の例は当業者によって確認可能であり、本明細書に開示された情報の範囲を逸脱することなく実施することもできる。本明細書の中で引用されるすべての参考文献は、参照により全体として組み入れられ、本出願の一部を構成する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2024-08-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位開口部、近位セクション、第一の遠位セクション、遠位開口部および該遠位開口部と該近位開口部との間に延びるルーメンを有するカニューレ;ならびに<BR>
該近位開口部に結合され、経皮ポンプが患者の血管系に配置されたときに該カニューレの該ルーメンを通して血液をポンプするように構成された、該経皮ポンプ;
を含み、
該カニューレが、該近位セクションと該第一の遠位セクションとの間の第一の移行ゾーンを有し、
該近位セクションが、その長さに沿って一定の第一の曲げ弾性率を有し、該第一の遠位セクションが、その長さに沿って一定の、該第一の曲げ弾性率よりも小さい第二の曲げ弾性率を有し、
該近位セクションが、第一の平面において第一の湾曲部を形成し、該第一の遠位セクションが、該第一の平面とは異なる第二の平面において第二の湾曲部を形成し、
該カニューレの該近位セクションが、第一の材料で作製された近位内壁および該第一の材料とは異なる第二の材料で作製された近位外壁を含む、
経皮ポンプシステム。