(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114991
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】ごみ焼却設備の発電システム
(51)【国際特許分類】
F01K 27/02 20060101AFI20240819BHJP
F01D 1/06 20060101ALI20240819BHJP
F01D 5/04 20060101ALI20240819BHJP
F01K 23/12 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
F01K27/02 C
F01D1/06
F01D5/04
F01K23/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020396
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 朝都
(72)【発明者】
【氏名】片山 武
【テーマコード(参考)】
3G081
3G202
【Fターム(参考)】
3G081BA02
3G081BA03
3G081BC11
3G202AA01
(57)【要約】
【課題】中小規模ごみ焼却設備においても高い発電効率で発電でき、かつ、設置するために必要なスペースおよび費用が小さい発電システムを提供する。
【解決手段】複数の焼却炉1を備えるごみ焼却設備の発電システム100は、ボイラ2と、ラジアルタービン3と、再熱器4と、再熱タービン5と、ラジアルタービン用発電機6と、再熱タービン用発電機7とを備える。ボイラ2は、各焼却炉1の廃熱により第1蒸気S1を発生させる。ラジアルタービン3は、各ボイラ2の第1蒸気S1により回転力R1を生じさせる。各再熱器4は、各ラジアルタービン3が排出した第2蒸気S2を加熱して第3蒸気S3にする。再熱タービン5は、複数の再熱器4から第3蒸気S3が供給されて、回転力R2を生じさせる。ラジアルタービン用発電機6は、回転力R1により発電する。再熱タービン用発電機7は、回転力R2により発電する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の焼却炉を備えるごみ焼却設備の発電システムであって、
各焼却炉の廃熱により第1蒸気を発生させるボイラと、
各ボイラの下流に設けられ、前記各ボイラの発生させた前記第1蒸気が供給されることにより、回転力を生じさせるラジアルタービンと、
前記各ラジアルタービンの下流に設けられ、前記ラジアルタービンが排出した第2蒸気を加熱する再熱器と、
複数の前記再熱器の下流に設けられ、前記第2蒸気を加熱した第3蒸気が供給されることにより、回転力を生じさせる、1基の再熱タービンと、
前記ラジアルタービンの回転力により発電するラジアルタービン用発電機と、
前記再熱タービンの回転力により発電する再熱タービン用発電機と
を備えることを特徴とする発電システム。
【請求項2】
前記再熱タービンは、軸流タービンであることを特徴とする請求項1に記載の発電システム。
【請求項3】
前記ラジアルタービン用発電機は、2基の前記ラジアルタービンの回転力により発電することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ごみ焼却設備の焼却炉の廃熱で発生させた蒸気を利用して発電する発電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ごみを焼却するごみ焼却設備の中には、焼却炉の廃熱を有効利用するために、焼却炉の廃熱で発生させた蒸気を利用して発電する発電システムを備える設備がある。このような発電システムは、大型の焼却炉を備えるごみ焼却設備(大規模ごみ焼却設備)に備え付けられるケースが多い。一方で、焼却するごみの量が1日当たり100トン程度の中小型の焼却炉を備えるごみ焼却設備(中小規模ごみ焼却設備)では、上述の発電システムが備え付けられるケースが少なかった。言い換えると、中小規模ごみ焼却設備の焼却炉の廃熱は、発電などの用途として有効に利用されるケースが少なかった。
【0003】
ところが、再生可能エネルギーを積極的に活用する機運が徐々に高まってきている。このため、近年では、中小規模ごみ焼却設備においても、焼却炉の廃熱を利用して発生させた蒸気を利用した発電システムが備え付けられるケースが増えてきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-105854号公報
【特許文献2】実開昭58-186104号公報
【特許文献3】特開2020-204318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、焼却炉の廃熱が中小規模ごみ焼却設備で利用されてこなかった背景には、第1に発電システムの発電効率に対する課題があり、第2に発電システムを設置するためのスペースおよび費用の観点での課題があった。
【0006】
第1の課題について、大規模ごみ焼却設備に備え付けられた従来の発電システムの発電効率は20%から25%程度となるのに対して、中小規模ごみ焼却設備に備え付けられた従来の発電システムの発電効率は10%から20%程度に留まる。つまり、従来の発電システムは、中小規模ごみ焼却設備に備え付けられた場合、大規模ごみ焼却設備に備え付けられた場合よりも発電効率が低くなるという課題がある。
【0007】
中小規模ごみ焼却設備に従来の発電システムを備え付けた場合に、その発電システムの発電効率が低くなる課題は、従来の発電システムで採用されている蒸気タービンの特性による。発電システムの発電効率は、発電システムに採用されている蒸気タービンが蒸気から回転力を高い熱効率で取り出すことで高くなる。従来の発電システムでは、蒸気タービンとして、軸流タービンが採用されていた。軸流タービンは、蒸気から取り出される回転力が比較的大きい出力範囲の場合、言い換えると、供給される蒸気の量が比較的大きい場合に、蒸気から回転力を高い熱効率で取り出すことができる。さらに、軸流タービンを含む蒸気タービンの熱効率は、供給される蒸気の温度および圧力が高い程高くなる特性がある。
【0008】
ところが、中小規模ごみ焼却設備の廃熱で発生させることができる蒸気の量は、大規模ごみ焼却設備の廃熱で発生させることができる蒸気の量よりも少ない。さらに、焼却炉の排ガスには、ごみの腐食性成分が含まれる。したがって、蒸気を発生させるための機器をごみの腐食性成分から保護する必要があるため、蒸気の温度の上限には一定の制限が設けられている。また、蒸気の乾き度が一定以下となった場合にも、その蒸気が、発電システムを構成する機器を腐食させる。このため、蒸気の温度の上限だけでなく、蒸気の圧力の上限にも一定の制限が設けられている。以上のような蒸気の量が少ないこと、および、蒸気の温度および圧力の制限が、中小規模ごみ焼却設備の発電システムの発電効率を高める上での制約になっている。
【0009】
第2の課題について、中小規模ごみ焼却設備は、大規模ごみ焼却設備よりも、発電システムを設置するために確保できるスペースが小さく、発電システムを設置するために確保できる費用も少ないという制約がある。
【0010】
上述の2つの課題に対して、特許文献1の廃棄物処理設備は、蒸気から回転力を取り出すための装置として、半径流型のタービンを備える。また、特許文献2の発電装置は、蒸気から回転力を取り出すための装置として、ラジアルタービンである高圧部、および、軸流タービンである低圧部から構成される分割型の蒸気タービンを備える。さらに、特許文献3のごみ発電システムでは、再熱サイクルの形式のタービンで蒸気から回転力を取り出している。
【0011】
しかしながら、特許文献1の半径流型のタービンは、十分な膨張比を単段で得られない。一方で、十分な膨張比を得るために多段化した半径流型のタービンでは、中小規模ごみ焼却設備に設置するには現実的でないサイズになる。さらに、蒸気の発生量が経時的に安定していないごみ焼却設備では、半径流型のタービンの制御が困難となる。このような理由から半径流型のタービンをごみ焼却設備で実用化するのが困難であった。
【0012】
また、特許文献2の発電装置においては、発電効率を高めるために、制限温度の範囲内で高圧部に供給する蒸気の圧力を高めたとしても、高圧部から排出された蒸気を加熱できない。したがって、高圧部から低圧部に供給された蒸気の乾き度が、低圧部の出口側で、低圧部を腐食させる程度まで小さくなる恐れがあり好ましくない。
【0013】
さらに、特許文献3のごみ発電システムにおいては、蒸気から回転力を取り出す装置として主流な軸流タービンを高圧タービンとすると、そのごみ発電システムが中小規模ごみ焼却設備に設置できないサイズとなったり、設置するための費用が大きくなりすぎたりする場合がある。
【0014】
そこで、本発明は、中小規模ごみ焼却設備においても高い発電効率で発電でき、かつ、設置するために必要なスペースおよび費用が小さい発電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の発電システムは、複数の焼却炉を備えるごみ焼却設備の発電システムであって、各焼却炉の廃熱により第1蒸気を発生させるボイラと、各ボイラの下流に設けられ、前記各ボイラの発生させた前記第1蒸気が供給されることにより、回転力を生じさせるラジアルタービンと、前記各ラジアルタービンの下流に設けられ、前記ラジアルタービンが排出した第2蒸気を加熱する再熱器と、複数の前記再熱器の下流に設けられ、前記第2蒸気を加熱した第3蒸気が供給されることにより、回転力を生じさせる、1基の再熱タービンと、前記ラジアルタービンの回転力により発電するラジアルタービン用発電機と、前記再熱タービンの回転力により発電する再熱タービン用発電機とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の発電システムによれば、中小規模ごみ焼却設備においても高い発電効率で発電でき、かつ、設置するために必要なスペースおよび費用を小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態1に係る発電システムの概略を示す系統図である。
【
図2】実施形態2に係る発電システムの概略を示す系統図である。
【
図3】本発明に係る発電システムの実施例の概略を示す系統図である。
【
図4】比較例としての発電システムの概略を示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施形態1)
以下、本発明の実施形態1に係る発電システム100の概要について、
図1を参照して説明する。
【0019】
図1に示す発電システム100は、ごみ焼却設備で生み出された熱を利用して発電する。ごみ焼却設備は、複数の焼却炉1を備える。各焼却炉1は、ごみを焼却することで熱H1(廃熱)を生み出す。焼却炉1で生み出された熱H1は、蒸気を発生させるなどの用途で利用できる。そして、焼却炉1の熱H1を利用して発生させた蒸気は、蒸気から回転力を取り出す蒸気サイクルの作動流体として利用される。この蒸気サイクルから取り出される回転力は、発電の用途で利用できる。
【0020】
実施形態1の発電システム100は、蒸気から回転力を取り出す蒸気サイクルの形式を、ランキンサイクルである従来の形式から、再熱サイクルの形式にすることで、回転力を取り出す蒸気の圧力を従来よりも高めることができる。結果、実施形態1の発電システム100は、従来よりも高い熱効率で、蒸気から回転力を取り出せるため、従来よりも高い発電効率で発電できる。
【0021】
かつ、実施形態1の発電システム100は、蒸気サイクルの形式を一般的な再熱サイクルの形式にする場合と比較して、設置するために必要なスペースおよび費用を小さくするような構成としている。具体的には、実施形態1の発電システム100では、再熱サイクルにおける高圧タービンを複数備えるとともに、その高圧タービンを蒸気タービンの一種であるラジアルタービンとしている。
【0022】
ラジアルタービンは、軸流タービンよりも低い膨張比で作動するタービンである。このため、ごみ焼却設備に備え付けられる発電システムのように、高い膨張比で作動する蒸気タービンが要求される発電システムにおいては採用されていなかった。ところで、再熱サイクルにおける高圧タービン単独では、ラジアルタービンでは対応できない程の高い膨張比が要求されない。そして、蒸気から取り出される回転力が数MWの出力範囲の場合、言い換えると、供給される蒸気の量が少ない場合、ラジアルタービンは、熱効率が軸流タービンよりも高いだけでなく、それを設置するために必要なスペースおよび費用が軸流タービンよりも小さい。結果、再熱サイクルにおける高圧タービンを軸流タービンからラジアルタービンにすることで、発電システム100は、それを設置するために必要なスペースおよび費用が小さくなるメリットがある。
【0023】
また、ラジアルタービンを複数備える発電システム100は、複数の焼却炉1の廃熱で発生させた蒸気を各ラジアルタービンに分散して供給できる。つまり、発電システム100では、少ない量の蒸気を各ラジアルタービンに分散して供給できる。結果、発電システム100では、ラジアルタービンが高い熱効率で作動するために適した量の蒸気をラジアルタービンに供給できる。
【0024】
発電システム100の詳細な構成について、
図1を参照して説明する。ここで、発電システム100の詳細な構成を説明する前に、以降の説明において使用する用語と、その用語を使用するに当たっての前提について説明する。まず、前提として、蒸気タービンを採用している発電システムには、ボイラ、およびタービンその他の蒸気が通る機器の間に蒸気を流す流路が設けられている。流路は、具体的には、配管の中空部分などである。以降の説明では、便宜上、蒸気は、上流から下流に向かって流れる。上流には、特定の機器に蒸気を供給するための流路という意味が含まれ、下流には、特定の機器から蒸気を排出するための流路という意味が含まれる。
【0025】
図1に示すように、複数の焼却炉1を備えるごみ焼却設備の発電システム100は、各焼却炉1の生み出す熱H1を利用して蒸気を発生させるボイラ2と、各ボイラ2の下流に設けられるラジアルタービン3と、各ラジアルタービン3の下流に設けられる再熱器4と、複数の再熱器4の下流に設けられる、1基の再熱タービン5と、ラジアルタービン3に接続されるラジアルタービン用発電機6と、再熱タービン5に接続される再熱タービン用発電機7とを備える。
【0026】
ボイラ2は、焼却炉1の生み出した熱H1で、水などの作動流体を加熱して第1蒸気S1を発生させる。だだし、焼却炉1から排出される排ガス(図示せず)に含まれる腐食性成分からボイラ2などの機器を保護する必要があるため、第1蒸気S1の温度は、一定以下にする必要がある。さらに、乾き度が一定以下の蒸気は、発電システム100を構成する装置を腐食させる。このため、第1蒸気S1の温度だけでなく、第1蒸気S1の圧力も、第1蒸気S1の乾き度を考慮して、一定以下に制限される。
【0027】
また、ボイラ2は、各焼却炉1に1基ずつ設けられている。このようにすると、特定のボイラ2の発生させる第1蒸気S1の量の調節が容易になる。具体的には、特定のボイラ2の発生させる第1蒸気S1の量を調節するには、そのボイラ2に熱H1を供給する焼却炉1の生み出す熱H1の量を調節するだけでよい。言い換えると、1基の焼却炉1の生み出す熱H1の量を調節するだけで、ボイラ2の発生させる第1蒸気S1の量を調節できる。したがって、各ボイラ2に各焼却炉1から熱H1を供給するための制御系統または各ボイラ2に各焼却炉1から熱H1を供給するための配管系統などが、1基の焼却炉1が複数のボイラ2に熱H1を供給する場合と比べてシンプルになる。結果、発電システム100は、それを設置するために必要なスペースおよび費用を小さくできるメリットがある。
【0028】
ラジアルタービン3には、ボイラ2から第1蒸気S1が供給される。ラジアルタービン3では、供給された第1蒸気S1から回転力R1を生じさせる。
【0029】
また、ラジアルタービン3は、各ボイラ2の下流に1基ずつ設けられている。このようにすると、特定のラジアルタービン3から取り出す回転力R1の大きさを調節するために必要となる制御が容易になる。具体的には、特定のラジアルタービン3から取り出す回転力R1の大きさを調節するには、そのラジアルタービン3に供給する第1蒸気S1の量を調節する必要がある。そして、特定のラジアルタービン3の上流に設けられるボイラ2は1基である。したがって、その1基のボイラ2が発生させる第1蒸気S1の量を調節するだけで、特定のラジアルタービン3に供給する第1蒸気S1の量を調節できる。よって、ラジアルタービン3から取り出す回転力R1の大きさを調節するために必要となる制御系統または各ボイラ2から各ラジアルタービン3に第1蒸気S1を流すために必要となる配管系統などが、1基のボイラ2が複数のラジアルタービン3に第1蒸気S1を供給する場合と比べてシンプルになる。結果、発電システム100は、それを設置するために必要なスペースおよび費用を小さくできるメリットがある。
【0030】
再熱器4は、ラジアルタービン3から排出された第2蒸気S2を加熱して、第3蒸気S3にする。ただし、ボイラ2が第1蒸気S1を発生させるときと同様に、焼却炉1から排出される排ガス(図示せず)に含まれる腐食性成分から再熱器4などの機器を保護するする必要があるため、第3蒸気S3の温度の上限は一定以下に制限される。そして、第3蒸気S3の温度の上限は、第1蒸気S1の温度の上限と同程度であることが好ましい。第3蒸気S3の温度が高くなる程、第3蒸気S3から取り出し可能な回転力が大きくなり、かつ、第3蒸気S3の乾き度が大きくなるためである。
【0031】
また、再熱器4は、各ラジアルタービン3の下流に1基ずつ設けられている。このようにすると、第3蒸気S3の温度の調節が容易になる。具体的に、第3蒸気S3の温度を調節するには、各ラジアルタービン3の下流に設けられた再熱器4を個別に調節するだけでよい。したがって、第3蒸気S3の温度を調節するための制御系統またはラジアルタービン3から再熱器4に第2蒸気S2を流すための配管系統などが、1基の再熱器4が複数のラジアルタービン3から排出された第2蒸気S2を加熱する場合と比べてシンプルになる。結果、発電システム100は、それを設置するために必要なスペースおよび費用を小さくできるメリットがある。
【0032】
さらに、再熱器4、および、この再熱器4の上流に設けられるボイラ2には、共通の焼却炉1から熱H1,H2が供給されることが好ましい。このようにすると、1基の焼却炉1の生み出す熱の総量を調節するだけで、第3蒸気S3の温度を調節できる。したがって、第3蒸気S3の温度を調節するための制御系統または焼却炉1の発生させた熱をボイラ2および再熱器4に伝達するための配管系統などが、ボイラ2および再熱器4の熱源を別個にする場合と比べてシンプルになる。結果、発電システム100は、それを設置するために必要なスペースおよび費用を小さくできるメリットがある。
【0033】
再熱タービン5は、複数の再熱器4から第3蒸気S3が供給されるように構成される。再熱タービン5では、供給された第3蒸気S3から回転力R2を生じさせる。したがって、発電システム100では、複数の再熱サイクルを単に並べた発電システムよりもタービンの数が少ない。具体的には、発電システム100では、再熱サイクルの低圧タービンに相当する再熱タービン5の数が1基であるのに対し、複数の再熱サイクルの並べた発電システム(図示せず)では、低圧タービンの数は、並べた再熱サイクルの数と同数になる違いがある。結果、発電システム100は、それを設置するために必要なスペースおよび費用を小さくできるメリットがある。
【0034】
再熱タービン5は、軸流タービンであることが好ましい。再熱タービン5が軸流タービンであれば、複数のラジアルタービン3および再熱タービン5は、ごみ焼却設備に備え付けられる発電システムに要求される膨張比で作動できる。また、軸流タービンは、多量の蒸気から回転力を取り出す場合に、ラジアルタービンよりも熱効率が高い。したがって、複数の再熱器4から排出された第3蒸気S3を合わせた量、すなわち多量の第3蒸気S3から回転力を取り出す場合、ラジアルタービンよりも軸流タービンの方が、熱効率が高い。結果、再熱タービン5を軸流タービンとすることで、発電システム100の発電効率が高くなるというメリットがある。また、再熱タービン5が軸流タービンであれば、従来の発電システムの軸流タービンを設計したときの種々のデータをそのまま流用することができ、発電システム100を設計するための費用を小さくできるメリットがある。
【0035】
ラジアルタービン用発電機6は、各ラジアルタービン3に1台ずつ接続される。そして、ラジアルタービン3が回転力R1を生じさせることで、ラジアルタービン用発電機6には、回転力R1が伝達される。ラジアルタービン用発電機6は、ラジアルタービン3から伝達された回転力R1により発電を行う。また、再熱タービン用発電機7には、再熱タービン5の生じさせる回転力R2が伝達される。再熱タービン用発電機7は、再熱タービン5により伝達された回転力R2により発電を行う。
【0036】
発電システム100が発電する流れについて、
図1を参照して説明する。
【0037】
図1に示す複数の焼却炉1は、ごみを焼却することで熱H1を生み出す。生み出された熱H1は、複数の焼却炉1のそれぞれに設けられたボイラ2に供給される。
【0038】
焼却炉1から熱H1を供給された各ボイラ2は、熱H1を利用して、第1蒸気S1を発生させる。前述のように、第1蒸気S1の温度および圧力には、一定の制限が設けられている。
【0039】
各ボイラ2が発生させた第1蒸気S1は、各ボイラ2の下流のラジアルタービン3に供給される。このようにすると、少ない量の蒸気が各ラジアルタービン3に供給される。
【0040】
ボイラ2より第1蒸気S1が供給されたラジアルタービン3は、回転力R1を生じさせる。ラジアルタービン3が生じさせた回転力R1により、ラジアルタービン3に接続されているラジアルタービン用発電機6が発電する。前述のように、ラジアルタービンは、蒸気の量が少ない場合に、軸流タービンよりも熱効率が高い。結果として、ラジアルタービン3、および、ラジアルタービン3に接続されたラジアルタービン用発電機6は、軸流タービン、および、軸流タービンに接続された発電機よりも、高い発電効率で発電できる。
【0041】
ラジアルタービン3から排出された第2蒸気S2は、再熱器4で加熱されて第3蒸気S3となる。第3蒸気S3は、第2蒸気S2よりも温度が高く、第2蒸気S2と同程度の圧力であり、第2蒸気S2よりも乾き度が大きくなる。ここで、ボイラが軸流タービンに供給していた蒸気の圧力を従来より高く設定すると、第2蒸気S2の乾き度が腐食の発生させる恐れがある程度の近傍まで小さくなることがあった。このように乾き度が小さくなった蒸気は、タービンに供給されると、乾き度がさらに小さくなるため、そのタービンを腐食させる恐れがあり、好ましくない。しかし、再熱器4により第2蒸気S2の乾き度が再び大きくなるため、ラジアルタービン3の下流に再熱器4を設けない場合よりも、ラジアルタービン3の下流に再熱器4を設けた方が、第1蒸気S1の圧力を、より高く設定できる。第1蒸気S1の圧力が高い程、ラジアルタービン3の熱効率は高くなる。結果として、ラジアルタービン3、および、ラジアルタービン3に接続されたラジアルタービン用発電機6による発電の発電効率が再熱器4を備えない発電システムよりも高くなる。
【0042】
再熱器4より排出された第3蒸気S3は、再熱タービン5に供給される。そして、再熱タービン5には、複数の再熱器4から第3蒸気S3が供給される。したがって、再熱タービン5に供給される蒸気の量は、ラジアルタービン3に供給される蒸気の量よりも多い。ここで、蒸気の量が多い場合には、ラジアルタービンよりも軸流タービンの方が、熱効率が高くなる。よって、軸流タービンである再熱タービン5は、再熱タービン5がラジアルタービンである場合よりも熱効率が高くなる。
【0043】
再熱タービン5は、第3蒸気S3により回転力R2を生じさせる。再熱タービン5により生じた回転力R2により、再熱タービン5に接続された再熱タービン用発電機7は発電する。
【0044】
以上の説明より、各ラジアルタービン3の熱効率は、従来の蒸気タービンの熱効率よりも高い。そして、再熱タービン5の熱効率は、従来の蒸気タービンの熱効率と同程度である。よって、複数のラジアルタービン3の生じさせる回転力R1、および、再熱タービン5の生じさせる回転力R2により発電する発電システム100は、従来の発電システムよりも高い発電効率で発電できる。
【0045】
[実施形態2]
実施形態2に係る発電システム200について、
図2を参照して説明する。
【0046】
図2に示すように、実施形態2に係る発電システム200は、複数のラジアルタービン3が1台のラジアルタービン用発電機6に接続されている点で実施形態1に係る発電システム100と異なる。実施形態2の説明は、実施形態1と主に異なる部分について行い、実施形態2と実施形態1との間で一致する部分については説明を省略する。また、以降において、説明の便宜上、複数のラジアルタービン3が接続されているラジアルタービン用発電機6を主発電機61と称する。
【0047】
主発電機61は、ラジアルタービン3から回転力R1を取り出すための回転軸611を有する。複数のラジアルタービン3は、それぞれの回転軸310の軸心が、回転軸611の軸心に沿うように設けられる。このように複数のラジアルタービン3を設けることで、各ラジアルタービン3の回転軸310は、主発電機61の回転軸611と接続できる。また、図示しないが、複数のラジアルタービンは、それらが発生させる回転力R1を互いに伝達できるように直列に接続することもできる。この場合、主発電機61の回転軸611が、直列に接続された複数のラジアルタービン3のうち、それらの端の1基の回転軸311と接続することで、主発電機61には、複数のラジアルタービン3が生じさせる回転力R1が伝達される。
【0048】
複数のラジアルタービン3が主発電機61に接続されることで、主発電機61は、複数のラジアルタービン3の回転力R1により発電できる。したがって、ごみ焼却設備の発電システム100は、ラジアルタービン3の数よりも少ない数のラジアルタービン用発電機6で発電を行うことができる。結果、ごみ焼却設備の発電システム100は、それを設置するために必要なスペースおよび費用を小さくできる。
【0049】
主発電機61に接続するラジアルタービン3の数は、
図2に示すように、2基であることが好ましい。ラジアルタービン3の数が2基であれば、主発電機61の本体610から二方向に向かって突出する回転軸611を有する主発電機61を使用できる。このような主発電機61では、一方向に突出する回転軸611の外側端部に、2基のうちの一方のラジアルタービン31の回転軸311が接続され、他方向に突出する回転軸611の外側端部に、2基のうちの他方のラジアルタービン32の回転軸312が接続される。このような2基のラジアルタービン3を主発電機61に接続すると、2基のラジアルタービン3と主発電機61とを接続するための構造がシンプルになるメリットがある。結果、発電システム200は、それを設置するために必要な費用を小さくできる。
【実施例0050】
以下、実施例1から実施例3、および、比較例1から比較例3を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は、以降にて説明する実施例に限定されるものではない。
【0051】
実施例1から実施例3は、
図3に示すように、
図1に示す実施形態1に係る発電システム100の具体例であって、焼却炉1、ボイラ2、ラジアルタービン3、および、再熱器4の数をそれぞれ2基とした発電システム500である。そして、各焼却炉1には、ボイラ2を1基ずつ設けた。各ボイラ2の下流には、ラジアルタービン3を1基ずつ設けた。各ラジアルタービン3の下流には、再熱器4を1基ずつ設けた。
【0052】
実施例1から実施例3に係る発電システム500における熱効率の計算を行った。下表1に、実施例1から実施例3に係る発電システム500の熱効率を計算するにあたっての条件を示す。この条件としては、ラジアルタービン3入口の蒸気(第1蒸気S1)の温度ならびに圧力、ラジアルタービン3の断熱効率、再熱タービン5の入口の蒸気(第3蒸気S3)の温度ならびに圧力、および再熱タービン5の断熱効率がある。
【0053】
各ボイラ2の発生させる第1蒸気S1の温度(実施例1から実施例3では、ラジアルタービン3の入口の蒸気の温度に相当する)は、前述のように、発電システムを構成する装置の腐食の恐れから400℃から450℃を上限として制限されている。
【0054】
また、実施例1から実施例3に係る発電システム500は、再熱器4を備える。再熱器4を備えなければ、従来の蒸気タービンに供給される蒸気よりも高い圧力かつ同程度の温度の蒸気をラジアルタービン3に供給すると、ラジアルタービン3の下流に設けた再熱タービン5には、従来の蒸気タービンに供給される蒸気と同程度の圧力かつ温度の低い蒸気を供給しなければならなかった。言い換えると、再熱器4を備えないにもかかわらず、従来の蒸気タービンに供給される蒸気よりも高い圧力かつ同程度の蒸気をラジアルタービン3に供給した場合、再熱タービン5には、従来の蒸気タービンに供給される蒸気よりも乾き度が小さい蒸気を供給しなければならなかった。このような蒸気を再熱タービン5に供給すると、再熱タービン5を腐食させる恐れがあり、好ましくない。しかし、第2蒸気S2が再熱器4で加熱されるので、従来の蒸気タービンに供給される蒸気よりも高い圧力かつ同程度の温度の蒸気をラジアルタービン3に供給しても、従来の蒸気タービンに供給される蒸気と同程度の圧力かつ同程度の温度の蒸気を再熱タービン5に供給できた。言い換えると、再熱器4により、従来の蒸気タービンに供給される蒸気よりも高い圧力かつ同程度の温度の蒸気をラジアルタービン3に供給しても、従来の蒸気タービンに供給される蒸気と同程度の乾き度の蒸気を再熱タービン5に供給できた。よって、第1蒸気S1の圧力の上限は、従来の蒸気タービンに供給される蒸気よりも高い圧力、具体的には、9MPaから12MPaにすることができた。
【0055】
熱効率の計算の結果、実施例1から実施例3に係る発電システム500の熱効率は、下表1に示すようになった。
【0056】
【0057】
[比較例]
実施例1から実施例3の比較例として、軸流タービンを備える従来の発電システムで熱効率の計算を行った。具体的には、
図4に示すように、比較例に係る発電システム900は、焼却炉1と、ボイラ2と、ボイラ2の発生させる第1蒸気S1が供給される軸流タービンMTと、軸流タービンMTに生じる回転力RMTにより発電する発電機8とを備える。
【0058】
比較例1から比較例3に係る発電システム900の熱効率を計算するにあたっての条件を下表2に示す。この条件には、軸流タービンMTの入口の蒸気(第1蒸気S1)の温度ならびに圧力、ならびに軸流タービンMTの断熱効率がある。
【0059】
【0060】
表1および表2に示した熱効率の計算の結果から、実施例1から実施例3に係る発電システム500の熱効率は、比較例1から比較例3に係る発電システム900の熱効率よりも高かった。よって、実施例1から実施例3に係る発電システム500は、比較例1から比較例3に係る発電システム900よりも高い発電効率で発電できる。
【0061】
1 :焼却炉
2 :ボイラ
3 :ラジアルタービン
4 :再熱器
5 :再熱タービン
6 :ラジアルタービン用発電機
7 :再熱タービン用発電機
100 :発電システム
200 :発電システム
S1 :第1蒸気
S2 :第2蒸気
S3 :第3蒸気
R1 :回転力
R2 :回転力